(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】受信装置、量子鍵配送システム及び量子信号の検出方法
(51)【国際特許分類】
H04L 9/12 20060101AFI20240930BHJP
H04B 10/70 20130101ALI20240930BHJP
【FI】
H04L9/12
H04B10/70
(21)【出願番号】P 2022578362
(86)(22)【出願日】2022-01-24
(86)【国際出願番号】 JP2022002431
(87)【国際公開番号】W WO2022163575
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2023-07-11
(31)【優先権主張番号】P 2021013984
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)事業「光・量子を活用したSociety5.0実現化技術/社会実装に向けた量子暗号装置の研究開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(73)【特許権者】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】吉野 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】藤原 幹生
(72)【発明者】
【氏名】富田 章久
(72)【発明者】
【氏名】小芦 雅斗
(72)【発明者】
【氏名】武岡 正裕
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 雅英
【審査官】青木 重徳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/106971(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第110784485(CN,A)
【文献】特表2013-539327(JP,A)
【文献】特開2007-20013(JP,A)
【文献】国際公開第2014/132609(WO,A1)
【文献】特開2004-104771(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第113328806(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 9/12
H04B 10/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子信号が入射し、前記量子信号を復号する復号部と、
前記復号部から出力される復号された量子信号の光子を検出する複数の検出器と、
前記複数の検出器での光子の検出結果に基づいて、前記復号された量子信号のビットを検出する信号処理部と、
1つの符号化基底に対応する2つの前記復号された量子信号の出力先を、前記1つの符号化基底に対応する、対を構成する2つの前記検出器の中で切り替え、かつ、前記対を構成する2つの検出器のそれぞれでの光子の検出結果に基づいて前記信号処理部が検出するビットを切り替える切替処理を行う制御部と、を備える、
受信装置。
【請求項2】
前記受信装置に入射する前記量子信号に含まれる光パルスは、第1の符号化基底では位相が0又はπだけシフトされ、第2の符号化基底では位相がπ/2又は3π/2だけシフトされ、
前記復号部は、予め位相が変調された第1の光パルスと前記第1の光パルスから所定時間だけ遅延した第2の光パルスを含む量子信号が入射し、前記第1の光パルスを前記所定時間だけ遅延させ、かつ、前記第2の光パルスの位相を変調し、遅延させた前記第1の光パルスと変調した前記第2の光パルスとを逆位相又は同位相で干渉させて、前記復号された量子信号を出力する干渉計として構成され、
前記制御部は、前記切替処理において、前記干渉計での前記第2の光パルスの位相シフトが0又はπとなるように切り替える、
請求項1に記載の受信装置。
【請求項3】
前記復号部は、マッハツェンダ干渉計として構成され、
前記複数の検出器は、前記対となる2つの検出器である第1及び第2の検出器を含み、
前記マッハツェンダ干渉計は、伝搬する前記量子信号を遅延させる第1の経路と、
伝搬する前記量子信号を位相変調する位相変調器が設けられた第2の経路と、
前記量子信号を前記第1及び第2の経路へ分波する分波器と、
前記第1及び第2の経路を通過した前記量子信号が逆位相で干渉して得られた前記復号された量子信号を前記第1の検出器へ出力し、同位相で干渉して得られた前記復号された量子信号を前記第2の検出器へ出力する合分波器と、を備え、
前記制御部は、前記切替処理において、前記位相変調器での前記第2の光パルスの位相シフトが0又はπとなるように切り替え、かつ、前記第1及び第2の検出器のそれぞれでの光子の検出結果に基づいて前記信号処理部が検出するビットを切り替える、
請求項2に記載の受信装置。
【請求項4】
前記量子信号は、第1及び第2の符号化基底に基づいて符号化され、
前記復号部は、前記第1の符号化基底に対応する第1及び第2の復号信号と、前記第2の符号化基底に対応する第3及び第4の復号信号と、を出力し、
前記複数の検出器は、前記第1の符号化基底に対応する第1及び第2の検出器と、前記第2の符号化基底に対応する第3及び第4の検出器と、を含み、
前記制御部は、前記切替処理において、
前記第1及び第2の復号信号の出力先を前記第1及び第2の検出器の中で切り替えるともに、前記第1及び第2の検出器のそれぞれでの光子の検出結果に基づいて前記信号処理部が検出するビットを切り替え、
前記第3及び第4の復号信号の出力先を前記第3及び第4の検出器の中で切り替えるともに、前記第3及び第4の検出器のそれぞれでの光子の検出結果に基づいて前記信号処理部が検出するビットを切り替える、
請求項1に記載の受信装置。
【請求項5】
前記復号部と前記第1及び第2の検出器との間に挿入され、前記制御部からの第1の制御信号に応じて、前記第1及び第2の復号信号のそれぞれの出力先を前記第1及び第2の検出器の中で切り替え可能な第1の光スイッチと、
前記復号部と前記第3及び第4の検出器との間に挿入され、前記制御部からの第2の制御信号に応じて、前記第3及び第4の復号信号のそれぞれの出力先を前記第3及び第4の検出器の中で切り替え可能な第2の光スイッチと、を備え、
前記制御部は、前記切替処理において、
第1のモードでは、前記第1~第4の復号信号の出力先が、それぞれ前記第1~第4の検出器になるように、前記第1及び第2の光スイッチを制御し、
第2のモードでは、前記第1の復号信号の出力先が前記第2の検出器になるように、かつ、前記第2の復号信号の出力先が前記第1の検出器になるように前記第1の光スイッチを制御し、前記第3の復号信号の出力先が前記第4の検出器になるように、かつ、前記第4の復号信号の出力先が前記第3の検出器になるように前記第2の光スイッチを制御し、
前記第1のモードと前記第2のモードとの間での切り替えを行うときに、前記第1及び第2の検出器のそれぞれでの光子の検出結果に基づいて前記信号処理部が検出するビットを入れ替え、前記第3及び第4の検出器のそれぞれでの光子の検出結果に基づいて前記信号処理部が検出するビットを入れ替える、
請求項4に記載の受信装置。
【請求項6】
前記第1の光スイッチは、第1及び第2の入力に前記第1及び第2の復号信号がそれぞれ入力され、第1及び第2の出力が前記第1及び第2の検出器とそれぞれ接続され、
前記第2の光スイッチは、第3及び第4の入力に前記第3及び第4の復号信号がそれぞれ入力され、第3及び第4の出力が前記第3及び第4の検出器とそれぞれ接続され、
前記制御部は、前記切替処理において、
第1のモードでは、前記第1及び第2の入力がそれぞれ前記第1及び第2の出力と接続されるように前記第1の光スイッチを制御し、前記第3及び第4の入力がそれぞれ前記第3及び第4の出力と接続されるように前記第2の光スイッチを制御し
第2のモードでは、前記第1の入力と前記第2の出力とが接続され、かつ、前記第2の入力と前記第1の出力とが接続されるように前記第1の光スイッチを制御し、前記第3の入力と前記第4の出力とが接続され、かつ、前記第4の入力と前記第3の出力とが接続されるように前記第2の光スイッチを制御する、
請求項5に記載の受信装置。
【請求項7】
前記複数の検出器は、前記対となる2つの検出器である第1及び第2の検出器を含み、
前記受信装置に入射する量子信号に含まれる光パルスは、第1の符号化基底では第1又は第2の偏波状態となるように偏波変調され、第2の符号化基底では第3又は第4の偏波状態となるように偏波変調され、
前記復号部は、
前記量子信号の前記光パルスを偏波変調して前記第1及び第2の偏波状態の光パルスを出力する偏波変調器と、
前記第1の偏波状態の光パルスを前記第1の検出器へ出力し、前記第2の偏波状態の光パルスを前記第2の検出器へ出力する偏波分離部と、を備え、
前記制御部は、前記切替処理において、
第1のモードでは、前記第3及び第4の偏波状態の光パルスをそれぞれ前記第1及び第2の偏波状態の光パルスにする偏波変調をランダムに行うように、前記偏波変調器を制御し、
第2のモードでは、前記第1及び第2の偏波状態の光パルスをそれぞれ前記第2及び第1の偏波状態の光パルスにし、前記第3及び第4の偏波状態の光パルスをそれぞれ前記第2及び第1の偏波状態の光パルスにする偏波変調をランダムに行うように、前記偏波変調器を制御し、
前記第1のモードと前記第2のモードとの間での切り替えを行うときに、前記第1及び第2の検出器のそれぞれでの光子の検出結果に基づいて前記信号処理部が検出するビットを入れ替える、
請求項1に記載の受信装置。
【請求項8】
前記受信装置に入射する量子信号に含まれる光パルスは、第1の符号化基底では第1又は第2の偏波状態となるように偏波変調され、第2の符号化基底では第3又は第4の偏波状態となるように偏波変調され、
前記複数の検出器は、前記第1の符号化基底に対応する第1及び第2の検出器と、前記第2の符号化基底に対応する第3及び第4の検出器と、を含み、
前記復号部は、
前記入射する量子信号を分波する分波器と、
前記分波器で分波された一方の光パルスを前記第1及び第2の偏波状態の第1及び第2の光パルスに偏波分離する第1の偏波分離部と、
前記分波器で分波された
他方の光パルスを前記第3及び第4の偏波状態の第3及び第4の光パルスに偏波分離する第2の偏波分離部と、
前記第1の偏波分離部と前記第1及び第2の検出器との間に挿入され、前記制御部からの制御に応じて、前記第1及び第2の光パルスのそれぞれの出力先を前記第1及び第2の検出器の中で切り替え可能な第3の光スイッチと、
前記第2の偏波分離部と前記第3及び第4の検出器との間に挿入され、前記制御部からの制御に応じて、前記第3及び第4の光パルスのそれぞれの出力先を前記第3及び第4の検出器の中で切り替え可能な第4の光スイッチと、を備え、
前記制御部は、前記切替処理において、前記第1及び第2の検出器のそれぞれでの光子の検出結果に基づいて前記信号処理部が検出するビットを切り替え、前記第3及び第4の検出器のそれぞれでの光子の検出結果に基づいて前記信号処理部が検出するビットを切り替える、
請求項1に記載の受信装置。
【請求項9】
量子鍵配送に用いる量子信号を出力する送信装置と、
前記量子信号を受信する受信装置と、を備え、
前記受信装置は、
前記量子信号が入射し、前記量子信号を復号する復号部と、
前記復号部から出力される復号された量子信号の光子を検出する複数の検出器と、
前記複数の検出器での光子の検出結果に基づいて、前記復号された量子信号のビットを検出する信号処理部と、
1つの符号化基底に対応する2つの前記復号された量子信号の出力先を、前記1つの符号化基底に対応する、対を構成する2つの前記検出器の中で切り替え、かつ、前記対を構成する2つの検出器のそれぞれでの光子の検出結果に基づいて前記信号処理部が検出するビットを切り替える切替処理を行う制御部と、を備える、
量子鍵配送システム。
【請求項10】
入射した量子信号を復号し、
復号された量子信号の光子を複数の検出器で検出し、
前記複数の検出器での光子の検出結果に基づいて、前記復号された量子信号のビットを検出し、
1つの符号化基底に対応する2つの前記復号された量子信号の出力先を、前記1つの符号化基底に対応する、対を構成する2つの前記検出器の中で切り替え、かつ、前記対を構成する2つの検出器のそれぞれでの光子の検出結果に基づいて検出するビットを切り替える、
量子信号の検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信装置、量子鍵配送システム及び量子信号の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インターネットの普及が進むにつれて、通信の秘密保持・改竄防止や個人の認証など暗号技術の社会的なニーズが益々高まっている。こうした背景から、通信のセキュリティを確保するため、遠隔地間で乱数からなる安全な秘密鍵を共有する技術である、原理的に盗聴が困難とされる、量子鍵配送の利用が注目されている(特許文献1及び2)。
【0003】
これに対し、量子鍵を用いた量子暗号通信に対し、サイドチャネル攻撃などの様々な盗聴の試みがなされている。その中で、量子信号を検出する光子検出器の脆弱性を利用して、盗聴者が直接量子信号を盗聴することなく、光子検出器への量子信号の到達時間を操作することで盗聴を行う、タイムシフト攻撃と称する盗聴手法(非特許文献1)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-75577号公報
【文献】特開2019-125961号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】Bing Qi, et. Al.,“TIME-SHIFT ATTACK IN PRACTICAL QUANTUM CRYPTOSYSTEMS”, 2007, Quantum Information and Computation, vol. 7, pp. 073-082
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、量子鍵配送においては、量子信号を検出するために複数の光子検出器が用いられる。量子信号を担う光子は理想的には1つが望ましいものの、実際には2個以上の光子である場合もある。しかし、いずれにしても量子信号の強度は微弱であるため、量子検出器には受信した微弱な信号を増幅して出力することができる、アバランシェフォトダイオード(APD:Avalanche PhotoDiode)が用いられる。
【0007】
APDは、ブレークダウン電圧を超える逆バイアスを印加した状態において光子が入射したときに生じる電子をきっかけとして電子雪崩現象が生じ、これにより信号を増幅することができる。そのため、量子鍵配送においては、量子信号の光子の入射タイミングと同期するように、APDに逆バイアスを印加する(例えば、特許文献1)。
図20に、APDへの電圧印加のタイミングと、光子検出効率の時間依存性を模式的に示す。APDへの逆バイアス印加のタイミングと光子の入射タイミングとが一致したとき、APDの光子の検出効率は最大となる。しかし、APDへの逆バイアス印加のタイミングと光子の入射タイミングとを厳密に一致させることは困難であり、APDへの逆バイアス印加のタイミングと光子の入射タイミングとの間には時間差が生じる。この時間差が大きくなるにつれて、APDの光子の検出効率は低下することが知られている。つまり、APDの光子の検出効率には、光子の入射タイミング依存性が存在する。
【0008】
量子鍵配送では複数の光子検出器(APD)を用いるが、量子信号を正確に検出するには、光子検出器での光子の検出効率が等しいことが望ましい。しかし、光子検出器が有する光子の検出効率の入射タイミング依存性は個体差が存在する。
図21に、複数の光子検出器の光子の検出効率の入射タイミング依存性の例を示す。
図21では、
X基底の0及び1ビット、Z基底の0及び1ビットを4つの光子検出器で検出する例を示した。
図21に示すように、同じタイミング(例えば、
図21のタイミングT)で光子が入射したとしても、複数の光子検出器の間では、光子の検出効率がばらついてしまう。
【0009】
複数の光子検出器のそれぞれは、量子信号のいずれかの基底の各ビットに割り当てられるため、光子検出器の光子の検出効率の入射タイミング依存性にばらつきが有ると、タイムシフト攻撃によって各基底の各ビットの検出効率が解析され、結果として盗聴を許す事態が生じ得る。そのため、光子検出器の光子の検出効率の入射タイミング依存性の影響を防止ないしは抑制することが求められる。
【0010】
本発明は、上記の事情に鑑みて成されたものであり、量子鍵配送における盗聴を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様である受信装置は、量子信号が入射し、前記量子信号を復号する復号部と、前記復号部から出力される復号された量子信号の光子を検出する複数の検出器と、前記複数の検出器での光子の検出結果に基づいて、前記復号された量子信号のビットを検出する信号処理部と、1つの符号化基底に対応する2つの前記復号された量子信号の出力先を、前記1つの符号化基底に対応する、対を構成する2つの前記検出器の中で切り替え、かつ、前記対を構成する2つの検出器のそれぞれでの光子の検出結果に基づいて前記信号処理部が検出するビットを切り替える切替処理を行う制御部と、を備えるものである。
【0012】
本発明の一態様である量子鍵配送システムは、量子鍵配送に用いる量子信号を出力する送信装置と、前記量子信号を受信する受信装置と、を備え、前記受信装置は、前記量子信号が入射し、前記量子信号を復号する復号部と、前記復号部から出力される復号された量子信号の光子を検出する複数の検出器と、前記複数の検出器での光子の検出結果に基づいて、前記復号された量子信号のビットを検出する信号処理部と、1つの符号化基底に対応する2つの前記復号された量子信号の出力先を、前記1つの符号化基底に対応する、対を構成する2つの前記検出器の中で切り替え、かつ、前記対を構成する2つの検出器のそれぞれでの光子の検出結果に基づいて前記信号処理部が検出するビットを切り替える切替処理を行う制御部と、を備えるものである。
【0013】
本発明の一態様である量子信号の検出方法は、入射した量子信号を復号し、復号された量子信号の光子を複数の検出器で検出し、前記複数の検出器での光子の検出結果に基づいて、前記復号された量子信号のビットを検出し、1つの符号化基底に対応する2つの前記復号された量子信号の出力先を、前記1つの符号化基底に対応する、対を構成する2つの前記検出器の中で切り替え、かつ、前記対を構成する2つの検出器のそれぞれでの光子の検出結果に基づいて検出するビットを切り替えるものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、量子鍵配送における盗聴を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施の形態1にかかる量子鍵配送システムの構成を模式的に示す図である。
【
図2】実施の形態1にかかる送信装置の構成を模式的に示す図である。
【
図3】符号化基底とビットとの対応関係を示す図である。
【
図4】実施の形態1にかかる受信装置の構成を模式的に示す図である。
【
図5】実施の形態2にかかる量子鍵配送システムの構成を模式的に示す図である。
【
図6】実施の形態2にかかる送信装置の構成を模式的に示す図である。
【
図7】実施の形態2にかかる受信装置の構成を模式的に示す図である。
【
図8】実施の形態2にかかる受信装置での第1のモードにおける光パルスの経路を示す図である。
【
図9】実施の形態2にかかる受信装置での第2のモードにおける光パルスの経路を示す図である。
【
図10】実施の形態2にかかる受信装置の変形例を示す図である。
【
図11】実施の形態2にかかる受信装置の変形例での第1のモードにおける光パルスの経路を示す図である。
【
図12】実施の形態2にかかる受信装置の変形例での第2のモードにおける光パルスの経路を示す図である。
【
図13】実施の形態3にかかる量子鍵配送システムの構成を模式的に示す図である。
【
図14】実施の形態3にかかる送信装置の構成を模式的に示す図である。
【
図15】符号化基底とビットとの対応関係を示す図である。
【
図16】実施の形態3にかかる受信装置の構成を模式的に示す図である。
【
図17】光パルスの偏波面と光パルスを検出する単一光子検出器との関係を示す図である。
【
図18】実施の形態3にかかる受信装置の第1の変形例の構成を模式的に示す図である。
【
図19】実施の形態3にかかる受信装置の第2の変形例の構成を模式的に示す図である。
【
図20】APDへの電圧印加のタイミングと、光子検出効率の時間依存性を模式的に示す図である。
【
図21】複数の光子検出器の光子の検出効率の入射タイミング依存性の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。各図面においては、同一要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略される。
【0017】
実施の形態1
実施の形態1にかかる量子鍵配送システムについて説明する。
図1に、実施の形態1にかかる量子鍵配送システム1000の構成を模式的に示す。量子鍵配送システム1000は、位相エンコードのBB84プロトコルが適用されたものとして構成され、送信装置100、受信装置200、伝送路1001及び1002を有する。
【0018】
送信装置100は、秘匿通信路として構成される伝送路1001を介して、量子信号やその他の信号(例えば、同期信号)を受信装置200へ送信する。また、送信装置100及び受信装置200は、公開通信路である伝送路1002を介して、例えば基底情報、テストビット、誤り訂正の情報などを含む信号を送受信することができる。
【0019】
図2に、実施の形態1にかかる送信装置100の構成を模式的に示す。送信装置100は、光源1及び干渉計10を有する。
【0020】
光源1は、所定の波長の単色光である、所定の強度の光パルスPLを生成する。光源1は、例えば半導体レーザモジュールとして構成してもよいが、これに限定されるものではない。光源1は、制御回路(不図示)によって駆動され、一定間隔(例えば数ナノ秒間隔程度)で光パルスを生成する。なお、光パルスPLの強度は、任意の方法によって所定の強度に調整可能である。例えば、光源1に光アッテネータや強度変調器を設けることで光パルスPLの強度を調整してもよいし、光源1の外部に図示しない光アッテネータや強度変調器を設けて光パルスPLの強度を調整してもよい。なお、ここでいう所定の強度とは、量子鍵配送に用いるのに適した程度に微弱な強度を意味することは、言うまでもない。
【0021】
干渉計10は、光導波路11~14、分波器15及び合波器16を有する、非対称のマッハツェンダ干渉計として構成される。干渉計10の入力10Aと分波器15の入力との間は、光導波路11で接続される。分波器15の2つの出力の一方と、合波器16の2つの入力の一方とは、光導波路12で接続される。分波器15の2つの出力の他方と、合波器16の2つの入力の他方とは、光導波路13で接続される。合波器16の出力と干渉計10の出力10Bとの間は、光導波路14で接続される。例えば、光導波路13は、光導波路12よりも光路長が長い導波路として構成される。
【0022】
光導波路12には、位相変調器17が設けられる。位相変調器17は、例えば一般的なLN変調器などを用いてもよいが、これに限定されるものではない。
【0023】
干渉計10の入力10Aには、光源1から出力された光パルスPLが入射する。入射した光パルスPLは、分波器15によって、光導波路12を伝搬する光パルスPL1と、光導波路13を伝搬する光パルスPL2とに分波される。
【0024】
光導波路13を伝搬する光パルスPL2は、光導波路13が光導波路12よりも光路長が長いため、光導波路12を伝搬する光パルスPL1よりもΔtだけ遅延して、合波器16に入射する。光パルスPL2は、光パルスPL1に対してΔtだけ遅延して伝搬するため、以下では、光パルスPL1を前パルス(第1の光パルスとも称する)PL1、光パルスPL2を後パルス(第2の光パルスとも称する)PL2と称する。
【0025】
光導波路12を伝搬する前パルスPL1は、位相変調器17で位相が変調される。位相変調器17は、前パルスPL1が入力されるごとに、2つの符号化基底の一方をランダムに選択し、選択した符号化基底を用いて前パルスPL1の位相を変調する。
図3に、符号化基底とビットとの対応関係を示す。第1の符号化基底(例えばZ基底)では、前パルスPL1の位相シフトが0の場合がビット「0」、前パルスPL1の位相シフトがπの場合がビット「1」に対応する。第2の符号化基底(例えばY基底)では、前パルスPL1の位相シフトがπ/2の場合がビット「0」、前パルスPL1の位相シフトが3π/2の場合がビット「1」に対応する。
【0026】
第1の符号化基底(例えばZ基底)を選択した場合、位相変調器17は、前パルスPL1を符号化するため、前パルスPL1の位相を0又はπだけシフトさせる。第2の符号化基底(例えばY基底)を選択した場合、位相変調器17は、前パルスPL1を符号化するため、前パルスPL1の位相をπ/2又は3π/2だけシフトさせる。位相が変調された前パルスPL1は、光導波路12を伝搬して合波器16に入射する。
【0027】
合波器16は、前パルスPL1及び後パルスPL2を合波して、光導波路14に結合する。これにより、前パルスPL1及び後パルスPL2は、2連光パルスとなって、伝送路1001を通じて受信装置200へ向けて送信される。
【0028】
図4に、実施の形態1にかかる受信装置200の構成を模式的に示す。受信装置200は、干渉計20、2つの単一光子検出器PD1及びPD2(第1及び第2の検出器とも称する)、制御部2及び信号処理部3を有する。なお、以下では、単一光子検出器としては、アバランシェフォトダイオード(APD)を用いる。
【0029】
干渉計20は、光導波路21~23、分波器25、合分波器26及び位相変調器27を有する、量子信号を復号する非対称のマッハツェンダ干渉計からなる復号部として構成される。干渉計20の入力20Aと分波器25の入力との間は、光導波路21で接続される。分波器25の2つの出力の一方と、合分波器26の2つの入力の一方とは、光導波路22(第1の経路とも称する)で接続される。分波器25の2つの出力の他方と、合分波器26の2つの入力の他方とは、光導波路23(第2の経路とも称する)で接続される。合分波器26の一方の出力は光導波路24Aによって単一光子検出器PD1と接続され、他方の出力は光導波路24Bによって単一光子検出器PD2と接続される。光導波路22は、光導波路23よりも光路長が長い導波路として構成される。
【0030】
光導波路23には、位相変調器27が挿入される。位相変調器27は、例えば一般的なLN変調器などを用いてもよいが、これに限定されるものではない。
【0031】
干渉計20の入力20Aには、送信装置100から出力された2連光パルスが入射する。入射した2連光パルスは、分波器25によって、光導波路22を伝搬する2連光パルスと、光導波路23を伝搬する2連光パルスとに分波される。
【0032】
光導波路22は、伝搬する光パルスが光導波路23を伝搬する光パルスよりもΔtだけ遅延する光路長を有している。これにより、光導波路22を伝搬する2連光パルスは、光導波路23を伝搬する2連光パルスよりもΔtだけ遅延して合分波器26に入射する。
【0033】
光導波路23を伝搬する2連光パルスは、位相変調器27で位相が変調される。位相変調器27は、2連光パルスが入力されるごとに、2つの符号化基底の一方をランダムに選択し、選択した符号化基底を用いて後パルスPL2の位相を0又はπ/2だけ変調する。
【0034】
具体的には、第1の符号化基底(例えばZ基底)を選択した場合、位相変調器27は、光パルスPL2の位相を0だけシフトさせる(すなわち、無変調)。第2の符号化基底(例えばY基底)を選択した場合、位相変調器27は、後パルスPL2の位相をπ/2だけシフトさせる。位相が変調された後パルスPL2は、光導波路23を伝搬して合分波器26に入射する。
【0035】
光導波路22を通過した2連光パルスと光導波路23を通過した2連光パルスとは、合分波器26で合波されて、3連光パルスを形成する。この3連光パルスでは、光導波路23を通過した前パルスPL1が先頭パルスとなり、光導波路22を通過した後パルスPL2が最後尾パルスとなる。光導波路23で変調された後パルスPL2と、光導波路22を通過した前パルスPL1とは、互いに干渉して、先頭パルスと最後尾パルスとの間に中央パルスを形成する。
【0036】
中央パルスの光子が単一光子検出器PD1及びPD2のいずれで検出されるかは、位相変調器17による位相シフトと位相変調器27による位相シフトとに依存する。換言すれば、合分波器26において、位相変調器27で変調された後パルスPL2と光導波路22を通過した前パルスPL1とが、同位相で干渉するか、逆位相で干渉するかに依存する。本構成では同位相で干渉した場合には、中央パルスは光導波路24Aを伝搬して単一光子検出器PD1で光子が検出され、逆位相で干渉した場合には、中央パルスは光導波路24Bを伝搬して単一光子検出器PD2で光子が検出されるものとする。単一光子検出器PD1で光子が検出された場合には、単一光子検出器PD1の検出信号に応じて信号処理部3がビット情報「0」を取得する。単一光子検出器PD2で光子が検出された場合には、単一光子検出器PD2の検出信号に応じて信号処理部3がビット情報「1」を取得する。本構成では、以上のように、2連光パルスとして伝送された量子信号が、干渉計20によって複号される。
【0037】
干渉計10での位相シフトが0、干渉計20での位相シフトが0である場合(第1の組み合わせとも称する)には同位相であるので、単一光子検出器PD1で光子が検出される。干渉計10での位相シフトがπ、干渉計20での位相シフトが0である場合(第2の組み合わせとも称する)には逆位相であるので、単一光子検出器PD2で光子が検出される。この2つのケースは、送信装置100及び受信装置200の両方において、第1の符号化基底(例えば、Z基底)が選択された場合である。
【0038】
干渉計10での位相シフトがπ/2、干渉計20での位相シフトがπ/2である場合(第3の組み合わせとも称する)には同位相であるので、単一光子検出器PD1で光子が検出される。干渉計10での位相シフトが3π/2、干渉計20での位相シフトがπ/2である場合(第4の組み合わせとも称する)には逆位相であるので、単一光子検出器PD2で光子が検出される。この2つのケースは、送信装置100及び受信装置200の両方において、第2の符号化基底(例えば、Y基底)が選択された場合である。
【0039】
上記の位相シフトの4つの組み合わせ以外の位相シフトにて変調が行われる場合(すなわち、送信装置100及び受信装置200で選択された符号化基底が異なる場合)、単一光子検出器PD1及びPD2で光子が検出される確率は、それぞれ50%となる。例えば、干渉計10での位相シフトが0、干渉計20での位相シフトがπ/2である場合、単一光子検出器PD1で光子の検出確率は50%、単一光子検出器PD2で光子の検出確率は50%となる。この場合には、正確な受信はできないので、受信した情報は破棄されて、暗号鍵の生成には用いられない。
【0040】
このように、本構成では、複数の単一光子検出器を用いるが、上述したように、単一光子検出器には、光子検出感度の入射タイミング依存性に個体差が存在する。このような個体差は、例えば、上述のタイムシフト攻撃に対する脆弱性の原因となる。これに対し、複数の単一光子検出器での光子検出感度の入射タイミング依存性を平均化できれば、タイムシフト攻撃などによる盗聴に対する耐性を向上させることが可能となる。
【0041】
そこで、本構成では、制御部2が干渉計20に制御信号CON1を与えて位相シフトモードを切り替えて、干渉計20で光パルスに適用する位相シフトをランダムに反転、換言すれば位相シフトをπだけ変化させ、複数の単一光子検出器での光子検出感度の入射タイミング依存性を平均化する。
【0042】
ここで、上記で説明した4つの組み合わせ(第1~第4の組み合わせ)で位相シフトを行うモードを第1の位相シフトモードと称する。また、第1の位相シフトモードに対して干渉計20の位相変調器27での位相シフトを反転させるモードを第2の位相シフトモードと称する。
【0043】
第1の位相シフトモードにおいて干渉計10での位相シフトが0、干渉計20での位相シフトが0である場合(第1の組み合わせ)には同位相であるので、単一光子検出器PD1で光子(第1の復号信号とも称する)が検出される。これに対して、干渉計20での位相シフトを反転させた第2の位相シフトモードにおいては、干渉計10での位相シフトが0、干渉計20での位相シフトがπで逆位相となるので、単一光子検出器PD2で光子(第1の復号信号とも称する)が検出される。
【0044】
第1の位相シフトモードにおいて干渉計10での位相シフトがπ、干渉計20での位相シフトが0である場合(第2の組み合わせ)には、単一光子検出器PD2で光子(第2の復号信号とも称する)が検出される。これに対して、干渉計20での位相シフトを反転させた第2の位相シフトモードにおいては、干渉計10での位相シフトがπ、干渉計20での位相シフトがπで同位相であるので、単一光子検出器PD1で光子(第2の復号信号とも称する)が検出される。
【0045】
第1の位相シフトモードにおいて干渉計10での位相シフトがπ/2、干渉計20での位相シフトがπ/2である場合(第3の組み合わせ)には、単一光子検出器PD1で光子(第3の復号信号とも称する)が検出される。これに対して、干渉計20での位相シフトを反転させた第2の位相シフトモードにおいては、干渉計10での位相シフトがπ/2、干渉計20での位相シフトが3π/2で逆位相であるので、単一光子検出器PD2で光子(第3の復号信号とも称する)が検出される。
【0046】
第1の位相シフトモードにおいて干渉計10での位相シフトがπ/2、干渉計20での位相シフトが3π/2である場合(第4の組み合わせ)には、単一光子検出器PD2で光子(第4の復号信号とも称する)が検出される。これに対して、干渉計20での位相シフトを反転させた第2の位相シフトモードにおいては、干渉計10での位相シフトがπ/2、干渉計20での位相シフトがπ/2で同位相であるので、単一光子検出器PD1で光子(第4の復号信号とも称する)が検出される。
【0047】
以上のように、第1の位相シフトモード及び第2の位相シフトモードの間で干渉計20での位相シフトを反転させた場合、干渉計10での位相シフトが同じでも、光子を検出する単一光子検出器が入れ替わることとなる。
【0048】
これに応じて、制御部2は、信号処理部3に制御信号CON2を与えることで、第1の位相シフトモードで単一光子検出器PD1及びPD2が検出するビットがそれぞれ0及び1、第2の位相シフトモードで単一光子検出器PD1及びPD2が検出するビットがそれぞれ1及び0になるように、信号処理部3の処理を制御する。
【0049】
よって、制御部2によって第1の位相シフトモードでの動作と第2の位相シフトモードでの動作をランダムに切り替えて、動作の比率を1:1又はこれに近似する比率とすることで、それぞれの単一光子検出器の光子検出感度の入射タイミング依存性を平均化することが可能となる。
【0050】
以上、本構成によれば、単一光子検出器の光子検出感度の入射タイミング依存性を平均化して、盗聴を好適に防止することができる。特に、単一光子検出器の光子検出感度の入射タイミング依存性を利用したタイムシフト攻撃による盗聴を防止することができる。
【0051】
実施の形態2
実施の形態2にかかる量子鍵配送システム2000について説明する。
図5に、実施の形態2にかかる量子鍵配送システム2000の構成を模式的に示す。量子鍵配送システム2000は、量子鍵配送システム1000の変形例であり、量子鍵配送システム1000の送信装置100及び受信装置200を、それぞれ送信装置300及び受信装置400に置換した構成を有する。
【0052】
図6に、実施の形態2にかかる送信装置300の構成を模式的に示す。送信装置300は、送信装置100の干渉計10を干渉計30に置換し、かつ、位相変調器4A及び4Bを追加した構成を有する。
【0053】
干渉計30は、干渉計10から位相変調器17を除去した構成を有する。
【0054】
干渉計30の出力10Bと送信装置300の出力との間には、位相変調器4A及び4Bが並列に挿入されている。ここでは、位相変調器4Aによる位相シフトをφ1、位相変調器4Bによる位相シフトをφ2とする。
【0055】
図7に、実施の形態2にかかる受信装置400の構成を模式的に示す。受信装置400は、受信装置200の干渉計20を干渉計40に置換し、かつ、光スイッチSW1及びSW2を追加した構成を有する。
【0056】
干渉計40は、量子信号を復号する復号部として構成され、干渉計20の位相変調器27を除去し、かつ、光導波路41及び42、分波器43及び44を追加した構成を有する。
【0057】
光スイッチSW1(第1の光スイッチとも称する)は、2つの入力IN1及びIN2(第1及び第2の入力とも称する)と、2つの出力OUT1及びOUT2(第1及び第2の出力とも称する)を有するものとして構成される。光スイッチSW1は、制御部2から与えられる制御信号CON1(第1の制御信号とも称する)に応じて、第1のモードでは入力IN1と出力OUT1とを接続し、入力IN2と出力OUT2とを接続し、第2のモードでは入力IN1と出力OUT2とを接続し、入力IN2と出力OUT1とを接続する。
【0058】
入力IN1には合分波器26の2つの出力の一方が接続され、入力IN2には合分波器26の2つの出力の他方が接続される。出力OUT1は光導波路24Aによって単一光子検出器PD1と接続され、出力OUT2は光導波路24Bによって単一光子検出器PD2と接続される。
【0059】
分波器43は、光導波路22に挿入され、光導波路22を伝搬する光パルスを、光導波路22と光導波路41とに分波する。
【0060】
分波器44は、光導波路23に挿入され、光導波路23を伝搬する光パルスを、光導波路23と光導波路42とに分波する。
【0061】
光導波路22は、実施の形態1と同様に、伝搬する光パルスが光導波路23を伝搬する光パルスよりもΔtだけ遅延する光路長を有している。これにより、光導波路22から光スイッチSW1の入力IN1に入射する2連光パルスの入射タイミングは、光導波路23から光スイッチSW1の入力IN2に入射する2連光パルスの入射タイミングよりもΔtだけ遅延する。
【0062】
光スイッチSW2(第2の光スイッチとも称する)は、2つの入力IN3及びIN4(第3及び第4の入力とも称する)と、2つの出力OUT3及びOUT4(第3及び第4の出力とも称する)を有するものとして構成される。光スイッチSW2は、制御部2から与えられる制御信号CON3(第2の制御信号とも称する)に応じて、第1のモードでは入力IN3と出力OUT3とを接続し、入力IN4と出力OUT4とを接続し、第2のモードでは入力IN3と出力OUT4とを接続し、入力IN4と出力OUT3とを接続する。
【0063】
入力IN3には光導波路41が接続され、入力IN4には光導波路42が接続される。出力OUT3は光導波路28Aによって単一光子検出器PD3(第3の検出器とも称する)と接続され、出力OUT4は光導波路28Bによって単一光子検出器PD4(第4の検出器とも称する)と接続される。
【0064】
単一光子検出器PD1~PD4における光パルス(光子)の検出結果は、信号処理部3へ出力される。
【0065】
次いで、本実施の形態における量子信号の送受信について説明する。まず、送信装置300の動作を説明する。光導波路12を通過した前パルスPL1と光導波路13を通過した後パルスPL2とからなる2連光パルスは、2つに分波されて位相変調器4A及び位相変調器4Bに入力される。位相変調器4A及び位相変調器4Bは、前パルスPL1及び後パルスPL2のそれぞれに対して、個別に位相の変調を行う。本構成では、位相変調器4Aによる位相シフトが0又はπ/2(φ1={0,π/2})、位相変調器4Bによる位相シフトが0又はπ(φ2={0,π})であるものとする。これにより、BB84プロトコルで求められる非直交4状態を生成する。
【0066】
第1の状態は、前パルスPL1に{φ1,φ2}={0、0}の位相変調を、後パルスPL2に{φ1,φ2}={0,π}の位相変調を行う場合である。この場合、位相変調器4A及び4Bから出力される2連光パルスを合波すると、強度が1の前パルスPL1のみが存在する状態となる。
【0067】
第2の状態は、第1の状態と同じ位相変調を逆の順序、つまり、前パルスPL1に{φ1,φ2}={0,π}の位相変調を、後パルスPL2に{φ1,φ2}={0,0}の位相変調を行う場合である。この場合、位相変調器4A及び4Bから出力される2連光パルスを合波すると、強度が1の後パルスPL2のみが存在する状態となる。
【0068】
ここでは、第1及び第2の状態を「Z基底に属する2状態」と称し、第1の状態にビット「0」、第2の状態にビット「1」を割り当てる。第1及び第2の状態は直交状態となっているため、測定によって両者を容易に識別できる。
【0069】
第3の状態は、2連光パルスの前パルスPL1に{φ1 ,φ2}={π/2,0}の位相変調を、後パルスPL2に{φ1,φ2}={π/2,π}の位相変調を行う場合である。この場合、位相変調器4A及び4Bから出力される2連光パルスを合波すると、強度が1/2で位相がπ/4の前パルスPL1と、強度が1/2で位相が-π/4の後パルスPL2とからなる2連光パルスが存在する状態となる。
【0070】
第4の状態は、第3の状態と同じ位相変調を逆の順序、つまり、2連光パルスの前パルスPL1に{φ1 ,φ2}={π/2,π}の位相変調を、後パルスPL2に{φ1,φ2}={π/2,0}の位相変調を行う場合である。この場合、位相変調器4A及び4Bから出力される2連光パルスを合波すると、強度が1/2で位相が-π/4の前パルスPL1と、強度が1/2で位相がπ/4の後パルスPL2とからなる2連光パルスが存在する状態となる。
【0071】
ここでは、第3及び第4の状態を「Y基底に属する2状態」と称し、第3の状態にビット「0」、第4の状態にビット「1」を割り当てる。第3及び第4の状態は直交状態となっているため、測定によって両者を容易に識別できる。
【0072】
なお、Z基底に属する状態とY基底に属する状態とは直交していないため、いかなる測定によっても両者を正確に識別することはできない。
【0073】
以上のように、2連光パルスと並列接続された2つの位相変調器によってBB84プロトコルで求められる非直交4状態を実現することができる。
【0074】
続いて、受信装置400の動作について説明する。干渉計40にY基底に属する状態の2連光パルスが入射された場合の出力は、実施の形態1と同様に3連光パルスとなり、中央パルスは2つの光パルスの干渉によって生じるパルスとなる。2連光パルスの相対位相は、第3の状態では+π/2、第4の状態では-π/2であったので、非対称マッハツェンダ干渉計の長尺の光導波路22を通過した光の位相と、短尺の光導波路23を通過した光の位相差が+π/2となるように設計することで、2連光パルスの相対位相は第3の状態ではπ(逆位相)、第4の状態では0(同位相)となる。よって、単一光子検出器PD1及びPD2のいずれで光子が検出されたかによってY基底の2状態を識別することができる。
【0075】
Z基底に属する状態の光パルスが干渉計40に入射した場合については、当然に識別が可能である。Z基底の第1の状態では、干渉計40に入射する光パルスは前パルスPL1のみである。第2の状態では、干渉計40に入射する光パルスは、入射タイミングが第1の状態での前パルスPL1よりも遅い、後パルスPL2のみである。よって、単一光子検出器PD3の検出タイミングを前パルスPL1、単一光子検出器PD4の検出タイミングを後パルスPL2に合わせることで、Z基底の2状態を識別することができる。
【0076】
次に、本実施の形態における単一光子検出器の光子検出感度の入射タイミング依存性の平均化について説明する。本構成では、実施の形態1と同様に、ビット「0」を検出する単一光子検出器と、ビット「1」を検出する単一光子検出器とをランダムに入れ替えることで、単一光子検出器の光子検出感度の入射タイミング依存性を平均化する。
【0077】
以下、
図8に受信装置400での第1のモードにおける光パルスの経路を示し、
図9に受信装置400での第2のモードにおける光パルスの経路を示す。
【0078】
Z基底にかかる光子検出については、制御部2が光スイッチSW2に制御信号CON3を与えることで入力と出力との間の接続を切り替え、光パルス(光子)の経路を変更することで実現する。第1のモードでは、光スイッチSW2により、第1の状態(ビット0)のときに光導波路41から入力IN3に入力する光パルス(光子)が出力OUT3を介して単一光子検出器PD3に導かれ、第2の状態(ビット1)のときに光導波路42から入力IN4に入力する光パルス(光子)が出力OUT4を介して単一光子検出器PD4に導かれる。一方、第2のモードでは、光スイッチSW2により、第1の状態(ビット0)のときに光導波路41から入力IN3に入力する光パルス(光子)が出力OUT4を介して単一光子検出器PD4に導かれ、第2の状態(ビット1)のときに光導波路42から入力IN4に入力する光パルス(光子)が出力OUT3を介して単一光子検出器PD3に導かれる。
【0079】
Y基底にかかる光子検出については、制御部2が光スイッチSW1に制御信号CON1を与えることで入力と出力との間の接続を切り替え、光パルス(光子)の経路を変更することで実現する。第1のモードでは、光スイッチSW1により、第3の状態(ビット0)のときに中央パルス(光子)が単一光子検出器PD1に導かれ、第4の状態(ビット1)のときに中央パルス(光子)が単一光子検出器PD2に導かれる。第2のモードでは、光スイッチSW1により、第3の状態(ビット0)のときに中央パルス(光子)が単一光子検出器PD2に導かれ、第4の状態(ビット1)のときに中央パルス(光子)は単一光子検出器PD1に導かれる。
【0080】
以上のように、光スイッチを切り替えることで、干渉計10での位相シフトが同じでも、光子を検出する単一光子検出器が入れ替わることとなる。
【0081】
これに応じて、制御部2は、信号処理部3に制御信号CON2を与えることで、第1のモードで単一光子検出器PD1及びPD3が検出するビットが0、単一光子検出器PD2及びPD2が検出するビットが1となるように、かつ、第2のモードで単一光子検出器PD1及びPD2が検出するビットが1、単一光子検出器PD2及びPD2が検出するビットが0となるように、モードを切り替える。
【0082】
よって、制御部2によって第1のモードでの動作と第2のモードでの動作をランダムに切り替えて、動作の比率を1:1又はこれに近似する比率とすることで、それぞれの単一光子検出器の光子検出感度の入射タイミング依存性を平均化することが可能となる。
【0083】
以上、本構成によれば、単一光子検出器の光子検出感度の入射タイミング依存性を平均化して、盗聴を好適に防止することができる。特に、単一光子検出器の光子検出感度の入射タイミング依存性を利用したタイムシフト攻撃による盗聴を防止することができる。
【0084】
以上、本実施の形態では、1つの干渉計から、Z基底に対応する単一光子検出器PD3及びPD4と、Y基底に対応する単一光子検出器PD1及びPD2と、に光パルスを分配していた。これに対し、光パルスを同様に分配できるならば、受信装置は他の構成としてもよい。
【0085】
図10に、実施の形態2にかかる受信装置の変形例を示す。
図10の受信装置410は、受信装置400の干渉計40を干渉計40Aに置換し、かつ、分波器7及び分岐回路40Bを追加した構成を有する。本構成では、干渉計40A及び分岐回路40Bは、量子信号を復号する復号部を構成する。
【0086】
干渉計40Aは、干渉計40に挿入される分波器43及び44を除去した構成を有する。そのため、分波器43及び44に接続される光導波路41及び42も除去されている。よって、本構成では、分岐回路40Bを介して、光スイッチSW2に光パルスを入力している。
【0087】
受信装置410に入力した2連光パルスは、まず分波器7で分波され、分波された2連パルスは、干渉計40A及び分岐回路40Bに入力される。
【0088】
分岐回路40Bは、干渉計20の光導波路22を光導波路29に置換し、かつ、干渉計20から合分波器26を除去した構成を有する。光導波路29は、光導波路22から遅延経路を除去した構成を有する。分岐回路40Bの光導波路29は、光スイッチSW2の入力IN3と接続され、光導波路23は光スイッチSW2の入力IN4に接続される。
【0089】
次に、受信装置410の動作について説明する。
図11に受信装置410での第1のモードにおける光パルスの経路を示し、
図12に受信装置410での第2のモードにおける光パルスの経路を示す。
【0090】
Z基底にかかる光子検出については、受信装置400と同様に、制御部2が光スイッチSW2に制御信号CON3を与えることで入力と出力との間の接続を切り替え、光パルス(光子)の経路を変更することで実現する。第1のモードでは、光スイッチSW2により、第1の状態(ビット0)のときに光導波路29から入力IN3に入力する光パルス(光子)が出力OUT3を介して単一光子検出器PD3に導かれ、第2の状態(ビット1)のときに光導波路23から入力IN4に入力する光パルス(光子)が出力OUT4を介して単一光子検出器PD4に導かれる。一方、第2のモードでは、光スイッチSW2により、第1の状態(ビット0)のときに光導波路29から入力IN3に入力する光パルス(光子)が出力OUT4を介して単一光子検出器PD4に導かれ、第2の状態(ビット1)のときに光導波路23から入力IN4に入力する光パルス(光子)が出力OUT3を介して単一光子検出器PD3に導かれる。
【0091】
Y基底にかかる光子検出については、受信装置400と同様に、制御部2が光スイッチSW1に制御信号CON1を与えることで入力と出力との間の接続を切り替え、光パルス(光子)の経路を変更することで実現する。このときの光パルスの経路は受信装置400と同様であるので、説明を省略する。
【0092】
また、制御部2による信号処理部3の制御についても、受信装置400と同様であるので、説明を省略する。
【0093】
以上、本構成によっても、制御部2によって第1のモードでの動作と第2のモードでの動作をランダムに切り替えて、動作の比率を1:1又はこれに近似する比率とすることで、それぞれの単一光子検出器の光子検出感度の入射タイミング依存性を平均化することが可能となる。かつ、単一光子検出器の光子検出感度の入射タイミング依存性を平均化して、タイムシフト攻撃による盗聴を防止することができる。
【0094】
実施の形態3
上述の実施の形態では、位相エンコードBB84プロトコルが適用される構成について説明したが、本実施の形態では偏波エンコードBB84プロトコルが適用される構成について説明する。
図13に、実施の形態3にかかる量子鍵配送システム3000の構成を模式的に示す。量子鍵配送システム3000は、送信装置500及び受信装置600を有する。
【0095】
図14に、実施の形態3にかかる送信装置500の構成を模式的に示す。送信装置500は、光源1及び偏波変調器5を有する。光源1は、上述の実施の形態のものと同様であるので、説明を省略する。
【0096】
偏波変調器5は、光パルスPLが入力されるごとに、2つの符号化基底の一方をランダムに選択し、選択した符号化基底を用いて光パルスPLを偏波変調する。
図15に、符号化基底とビットとの対応関係を示す。第1の符号化基底(例えば直線基底)では、光パルスPLがH偏波の場合がビット「0」、光パルスPLがV偏波の場合がビット「1」に対応する。第2の符号化基底(例えば斜め基底)では、光パルスPLの偏波面が45°の場合がビット「0」、光パルスPLの偏光面が135°の場合ビット「1」に対応する。以下では、偏波面が0°、90°、45°及び135°の状態を、それぞれ第1~第4の偏波状態と称する。
【0097】
第1の符号化基底(例えば直線基底)を選択した場合、偏波変調器5は、光パルスPLを符号化するため、光パルスPLをH偏波又はV偏波に変調する。第2の符号化基底(例えば斜め基底)を選択した場合、偏波変調器5は、光パルスPLを符号化するため、光パルスPLの偏波面が45°又は135°となるように偏波変調する。偏波変調された光パルスPLは、伝送路1001を介して、量子信号Qとして受信装置600に送信される。
【0098】
図16に、実施の形態3にかかる受信装置600の構成を模式的に示す。受信装置600は、偏波変調器61、偏波ビームスプリッタ62、単一光子検出器PD1及びPD2、制御部2及び信号処理部3を有する。本構成では、偏波変調器61及び偏波ビームスプリッタ62は、量子信号を復号する復号部を構成する。
【0099】
偏波変調器61は、光パルスPLが入力されるごとに、光パルスPLの偏光面を回転させる変調をランダムに行う。偏波面の回転角については、後述する。
【0100】
偏波ビームスプリッタ62は、単一光子検出器PD1へ向けてH偏波の光パルスを選択的に通過させ、かつ、単一光子検出器PD2へ向けてV偏波の光パルスを選択的に反射する。
【0101】
単一光子検出器PD1はH偏波の光パルス(光子)を検出し、単一光子検出器PD2は、V偏波の光パルス(光子)を検出する。
【0102】
制御部2は、制御信号CON1によって偏波変調器61の動作を制御し、制御信号CON2によって単一光子検出器PD1及びPD2の動作を制御する。
【0103】
次いで、受信装置600に動作について説明する。制御部2は、偏波変調を行ったときの偏波面の回転角が0°又は-45°(第1のモード)又は90°又は45°(第2のモード)となるように偏波変調器61を制御する。また、第1のモードでは、制御部2は、単一光子検出器PD1で検出した光パルス(光子)がH偏波又は偏波面が45°の偏波に対応し、単一光子検出器PD2で検出した光パルス(光子)がV偏波又は偏波面が135°の偏波に対応するものとして処理されるように、信号処理部3を制御する。第2のモードでは、制御部2は、単一光子検出器PD1で検出した光パルス(光子)がV偏波又は偏波面が135°の偏波に対応するように、単一光子検出器PD2で検出した光パルス(光子)がH偏波又は偏波面が45°の偏波に対応するものとして処理されるように、信号処理部3を制御する。
【0104】
第1のモードにおける光パルス(光子)の検出について具体的に説明する。送信装置500において直線基底が選択され、かつ、偏波変調器61での偏波の回転角が0°の場合には、H偏波の光パルスが入力されると、単一光子検出器PD1にH偏波の光パルス(光子)がそのまま入射し、単一光子検出器PD1で検出された光パルスはH偏波の光パルスとして処理される。また、V偏波の光パルスが入力されると、単一光子検出器PD2にV偏波の光パルス(光子)がそのまま入射し、単一光子検出器PD2で検出された光パルスはV偏波の光パルスとして処理される。これに対し、偏波変調器61での偏波の回転角が-45°の場合には、偏波ビームスプリッタ62には斜め偏波(-45°(換言すれば、135°)又は45°)の光パルスが入射する。そのため、偏波ビームスプリッタ62で適切な偏波分離を行うことができず、単一光子検出器PD1及びPD2では光パルス(光子)を適切に検出することはできない。
【0105】
送信装置500において斜め基底が選択され、かつ、偏波変調器61での偏波の回転角が0°の場合には、偏波ビームスプリッタ62には斜め偏波(45°又は135°)の光パルスがそのまま入射する。そのため、偏波ビームスプリッタ62で適切な偏波分離を行うことができず、単一光子検出器PD1及びPD2では光パルス(光子)を適切に検出することはできない。これに対し、偏波変調器61での偏波の回転角が-45°の場合には、偏波面が45°の光パルスが入力されると偏波面が-45°回転し、例えばH偏波の光パルス(光子)として単一光子検出器PD1に入射し、単一光子検出器PD1で検出された光パルスは偏波面が45°の光パルスとして処理される。また、偏波面が135°の光パルスが入力されると偏波面が-45°回転し、例えばV偏波の光パルス(光子)として単一光子検出器PD2に入射し、単一光子検出器PD2で検出された光パルスは偏波面が135°の光パルスとして処理される。
【0106】
次いで、第2のモードにおける光パルス(光子)の検出について具体的に説明する。送信装置において直線基底が選択され、かつ、偏波変調器61での偏波の回転角が90°の場合には、H偏波の光パルスが偏波変調器61に入射すると偏波面が90°回転し、V偏波の光パルス(光子)として単一光子検出器PD2に入射し、単一光子検出器PD2で検出された光パルスはH偏波の光パルスとして処理される。また、V偏波の光パルスが偏波変調器61に入射すると偏波面が90°回転し、H偏波の光パルス(光子)として単一光子検出器PD1に入射し、単一光子検出器PD1で検出された光パルスはV偏波の光パルスとして処理される。これに対し、偏波変調器61での偏波の回転角が45°の場合には、偏波ビームスプリッタ62には斜め偏波(45°又は135°)の光パルスが入射する。そのため、偏波ビームスプリッタ62で適切な偏波分離を行うことができず、単一光子検出器PD1及びPD2では光パルス(光子)を適切に検出することはできない。
【0107】
送信装置において斜め基底が選択され、かつ、偏波変調器61での偏波の回転角が90°の場合には、偏波ビームスプリッタ62には斜め偏波(45°又は135°)の光パルスが入射する。そのため、偏波ビームスプリッタ62で適切な偏波分離を行うことができず、単一光子検出器PD1及びPD2では光パルス(光子)を適切に検出することはできない。これに対し、偏波変調器61での偏波の回転角が45°の場合には、偏波面が45°の光パルスが入力されると偏波面が45°回転し、例えばV偏波の光パルス(光子)として単一光子検出器PD2に入射し、単一光子検出器PD2で検出された光パルスは偏波面が45°の光パルスとして処理される。また、偏波面が135°の光パルスが入力されると偏波面が45°回転し、例えばH偏波の光パルス(光子)として単一光子検出器PD1に入射し、単一光子検出器PD1で検出された光パルスは偏波面が135°の光パルスとして処理される。
【0108】
図17に、光パルスの偏波面と光パルスを検出する単一光子検出器との関係を示す。
図16に示すように、第1のモードと第2のモードとで、単一光子検出器PD1と単一光子検出器PD2とが検出する光パルスの偏波、すなわちビットが入れ替わっている。また、第1のモードと第2のモードとで、単一光子検出器PD3と単一光子検出器PD4とが検出する光パルスの偏波、すなわちビットが入れ替わっている。
【0109】
本構成によれば、制御部2によって第1のモードでの動作と第2のモードでの動作をランダムに切り替えて、動作の比率を1:1又はこれに近似する比率とすることで、上述の実施の形態と同様に、それぞれの単一光子検出器の光子検出感度の入射タイミング依存性を平均化することが可能となる。かつ、上述の実施の形態と同様に、単一光子検出器の光子検出感度の入射タイミング依存性を平均化して、タイムシフト攻撃による盗聴を防止することができる。
【0110】
なお、受信装置は、
図7に示す受信装置400のように、4つの単一光子検出器PD1~PD4を設ける構成とすることも可能である。
図18に、実施の形態3にかかる受信装置の変形例である受信装置610の構成を模式的に示す。
【0111】
受信装置610は、分波器63、偏波ビームスプリッタ64及び65、1/2波長板66、単一光子検出器PD1~PD4、光スイッチSW10及びSW20、制御部2及び信号処理部3を有する。本構成では、分波器63、偏波ビームスプリッタ64及び65、1/2波長板66、光スイッチSW10及びSW20、量子信号を復号する復号部を構成する。
【0112】
分波器63は、量子信号Qを、偏波ビームスプリッタ64(第1の偏波分離部とも称する)及び1/2波長板66へ分波する。
【0113】
偏波ビームスプリッタ64は、量子信号QのH偏波(0°)の光パルスとV偏波の光パルス(90°)とを分離して光スイッチSW10へ出力する。
【0114】
1/2波長板66は、量子信号Qの偏波面を-45°だけ回転させる。これにより、例えば、偏波面が45°の光パルスはH偏波(0°)の光パルスに、偏波面が135°の光パルスはV偏波(90°)の光パルスに変換される。
【0115】
偏波ビームスプリッタ65は、1/2波長板66から入射するH偏波(0°)の光パルスとV偏波の光パルス(90°)とを分離して光スイッチSW20へ出力する。
【0116】
なお、本構成では、1/2波長板66及び偏波ビームスプリッタ65を、第2の偏波分離部とも称する。
【0117】
光スイッチSW10(第3の光スイッチとも称する)は、2つの入力IN11及びIN12(第5及び第6の入力とも称する)と、2つの出力OUT11及びOUT12(第5及び第6の出力とも称する)を有するものとして構成される。入力IN11には偏波ビームスプリッタ64からH偏波(0°)の光パルスが入射し、入力IN12には偏波ビームスプリッタ64からV偏波(90°)の光パルスが入射する。出力OUT11は単一光子検出器PD1と接続され、出力OUT12は単一光子検出器PD2と接続される。
【0118】
光スイッチSW10は、制御部2から与えられる制御信号CON1(第1の制御信号とも称する)に応じて、第1のモードでは入力IN11と出力OUT11とを接続し、入力IN12と出力OUT12とを接続し、第2のモードでは入力IN11と出力OUT12とを接続し、入力IN12と出力OUT11とを接続する。
【0119】
光スイッチSW20(第4の光スイッチとも称する)は、2つの入力IN21及びIN22(第7及び第8の入力とも称する)と、2つの出力OUT21及びOUT22(第7及び第8の出力とも称する)を有するものとして構成される。入力IN21には1/2波長板66からH偏波(0°)の光パルスが入射し、入力IN22には1/2波長板66からV偏波(90°)の光パルスが入射する。出力OUT21は単一光子検出器PD3と接続され、出力OUT22は単一光子検出器PD4と接続される。
【0120】
光スイッチSW20は、制御部2から与えられる制御信号CON1に応じて、第1のモードでは入力IN21と出力OUT21とを接続し、入力IN22と出力OUT22とを接続し、第2のモードでは入力IN21と出力OUT22とを接続し、入力IN22と出力OUT21とを接続する。
【0121】
本構成によれば、単一光子検出器PD1~PD4は、それぞれH偏波(0°の偏波面)、V偏波(90°の偏波面)、45°の偏波面、及び135°の偏波面の量子信号Qを検出することができる。以下、受信装置610の動作について説明する。
【0122】
第1のモードにおける光パルス(光子)の検出について具体的に説明する。第1のモードでは、光スイッチSW10の入力IN11と出力OUT11とが接続され、入力IN12と出力OUT12とが接続される。また、光スイッチSW20の入力IN21と出力OUT21とが接続され、入力IN22と出力OUT22とが接続される。
【0123】
量子信号QとしてH偏波の光パルス(光子)が入力されると、H偏波の光パルスは偏波ビームスプリッタ64、光スイッチSW10の入力IN11及び出力OUT11を介して単一光子検出器PD1に入射し、単一光子検出器PD1で検出された光パルスはH偏波の光パルスとして処理される。
【0124】
量子信号QとしてV偏波の光パルス(光子)が入力されると、V偏波の光パルスは偏波ビームスプリッタ64、光スイッチSW10の入力IN12及び出力OUT12を介して単一光子検出器PD2に入射し、単一光子検出器PD2で検出された光パルスはV偏波の光パルスとして処理される。
【0125】
量子信号Qとして偏波面が45°の光パルス(光子)が入力されると、偏波面が45°の光パルスは1/2波長板66によりH偏波の光パルスとなる。このH偏波の光パルスは、偏波ビームスプリッタ65、光スイッチSW20の入力IN21及び出力OUT21を介して単一光子検出器PD3に入射し、単一光子検出器PD3で検出された光パルスは偏波面が45°の光パルスとして処理される。
【0126】
量子信号Qとして偏波面が135°の光パルス(光子)が入力されると、偏波面が135°の光パルスは1/2波長板66によりV偏波の光パルスとなる。このV偏波の光パルスは、偏波ビームスプリッタ65、光スイッチSW20の入力IN22及び出力OUT22を介して単一光子検出器PD4に入射し、単一光子検出器PD4で検出された光パルスは偏波面が135°の光パルスとして処理される。
【0127】
次に、第2のモードにおける光パルス(光子)の検出について具体的に説明する。第2のモードでは、光スイッチSW10の入力IN11と出力OUT12とが接続され、入力IN12と出力OUT11とが接続される。また、光スイッチSW20の入力IN21と出力OUT22とが接続され、入力IN22と出力OUT21とが接続される。
【0128】
量子信号QとしてH偏波の光パルスが入力されると、H偏波の光パルスは偏波ビームスプリッタ64、光スイッチSW10の入力IN11及び出力OUT12を介して単一光子検出器PD2に入射し、単一光子検出器PD2で検出された光パルスはH偏波の光パルスとして処理される。
【0129】
量子信号QとしてV偏波の光パルスが入力されると、V偏波の光パルスは偏波ビームスプリッタ64、光スイッチSW10の入力IN12及び出力OUT11を介して単一光子検出器PD1に入射し、単一光子検出器PD1で検出された光パルスはV偏波の光パルスとして処理される。
【0130】
量子信号Qとして偏波面が45°の光パルスが入力されると、偏波面が45°の光パルスは1/2波長板66によりH偏波の光パルスとなる。このH偏波の光パルスは、偏波ビームスプリッタ65、光スイッチSW20の入力IN21及び出力OUT22を介して単一光子検出器PD4に入射し、単一光子検出器PD4で検出された光パルスは偏波面が45°の光パルスとして処理される。
【0131】
量子信号Qとして偏波面が135°の光パルスが入力されると、偏波面が135°の光パルスは1/2波長板66によりV偏波の光パルスとなる。このV偏波の光パルスは、偏波ビームスプリッタ65、光スイッチSW20の入力IN22及び出力OUT21を介して単一光子検出器PD3に入射し、単一光子検出器PD3で検出された光パルスは偏波面が135°の光パルスとして処理される。
【0132】
よって、本構成によれば、
図16に示したように、第1のモードと第2のモードとで、単一光子検出器PD1と単一光子検出器PD2とが検出する光パルスの偏波、すなわちビットが入れ替わっている。また、第1のモードと第2のモードとで、単一光子検出器PD3と単一光子検出器PD4とが検出する光パルスの偏波、すなわちビットを入れ替えることができる。
【0133】
よって、本構成によれば、制御部2によって第1のモードでの動作と第2のモードでの動作をランダムに切り替えて、動作の比率を1:1又はこれに近似する比率とすることで、それぞれの単一光子検出器の光子検出感度の入射タイミング依存性を平均化することが可能となる。かつ、単一光子検出器の光子検出感度の入射タイミング依存性を平均化して、タイムシフト攻撃による盗聴を防止することができる。
【0134】
なお、受信装置610における入射タイミング依存性の平均化は、他の構成により実現することも可能である。
図19に、受信装置610の変形例である受信装置620の構成を模式的に示す。
【0135】
受信装置620は、受信装置610の光スイッチSW10及びSW20を除去し、かつ、偏波変調器67を追加した構成を有する。本構成では、分波器63、偏波ビームスプリッタ64及び65、1/2波長板66及び偏波変調器67は、量子信号を復号する復号部を構成する。
【0136】
偏波変調器67は、量子信号Qに対して、制御信号CON1に応じて偏波面を回転させる変調を行う。第1のモードにおける回転角は0°(すなわち無変調)、第2のモードにおける回転角は90°である。
【0137】
偏波ビームスプリッタ64は、単一光子検出器PD1へ向けてH偏波の量子信号Qを選択的に通過させ、かつ、単一光子検出器PD2へ向けてV偏波の量子信号Qを選択的に反射する。
【0138】
偏波ビームスプリッタ65は、単一光子検出器PD3へ向けてH偏波の光パルスを選択的に通過させ、かつ、単一光子検出器PD4へ向けてV偏波の光パルスを選択的に反射する。
【0139】
受信装置620のその他の構成は、受信装置610と同様であるので、説明を省略する。以下、受信装置620の動作について説明する。
【0140】
第1のモードにおける光パルス(光子)の検出について具体的に説明する。第1のモードでは、偏波変調器67よる偏波面の回転は0°であるので、H偏波、V偏波、偏波面が45°及び偏波面が135°の光パルスは、そのまま分波器63に入射する。
【0141】
量子信号QとしてH偏波の光パルス(光子)が入力されると、H偏波の光パルスは偏波ビームスプリッタ64を介して単一光子検出器PD1に入射し、単一光子検出器PD1で検出された光パルスはH偏波の光パルスとして処理される。
【0142】
量子信号QとしてV偏波の光パルス(光子)が入力されると、V偏波の光パルスは偏波ビームスプリッタ64を介して単一光子検出器PD2に入射し、単一光子検出器PD2で検出された光パルスはV偏波の光パルスとして処理される。
【0143】
量子信号Qとして偏波面が45°の光パルス(光子)が入力されると、偏波面が45°の光パルスは1/2波長板66によりH偏波の光パルスとなる。このH偏波の光パルスは偏波ビームスプリッタ65を介して単一光子検出器PD3に入射し、単一光子検出器PD3で検出された光パルスは偏波面が45°の光パルスとして処理される。
【0144】
量子信号Qとして偏波面が135°の光パルス(光子)が入力されると、偏波面が135°の光パルスは1/2波長板66によりV偏波の光パルスとなる。このV偏波の光パルスは偏波ビームスプリッタ65を介して単一光子検出器PD4に入射し、単一光子検出器PD4で検出された光パルスは偏波面が135°の光パルスとして処理される。
【0145】
次に、第2のモードにおける光パルス(光子)の検出について具体的に説明する。第2のモードでは、偏波変調器67よる偏波面の回転は90°である。
【0146】
量子信号QとしてH偏波の光パルスが入力されると偏波変調器67で偏波面が90°回転され、V偏波の光パルスとなる。このV偏波の光パルスは偏波ビームスプリッタ64を介して単一光子検出器PD2に入射し、単一光子検出器PD2で検出された光パルスはH偏波の光パルスとして処理される。
【0147】
量子信号QとしてV偏波の光パルスが入力されると偏波変調器67で偏波面が90°回転され、H偏波の光パルスとなる。このH偏波の光パルスは偏波ビームスプリッタ64を介して単一光子検出器PD1に入射し、単一光子検出器PD1で検出された光パルスはV偏波の光パルスとして処理される。
【0148】
量子信号Qとして偏波面が45°の光パルスが入力されると偏波変調器67で偏波面が90°回転され、偏波面が135°の光パルスとなる。この偏波面が135°の光パルスは、1/2波長板66によりV偏波の光パルスとなる。このV偏波の光パルスは偏波ビームスプリッタ65を介して単一光子検出器PD4に入射し、単一光子検出器PD4で検出された光パルスは偏波面が45°の光パルスとして処理される。
【0149】
量子信号Qとして偏波面が135°の光パルスが入力されると偏波変調器67で偏波面が90°回転され、偏波面が45°(225°)の光パルスとなる。この偏波面が45°の光パルスは、1/2波長板66によりH偏波の光パルスとなる。このH偏波の光パルスは偏波ビームスプリッタ65を介して単一光子検出器PD3に入射し、単一光子検出器PD3で検出された光パルスは偏波面が135°の光パルスとして処理される。
【0150】
よって、本構成によれば、受信装置610と同様に、第1のモードと第2のモードとで、単一光子検出器PD1と単一光子検出器PD2とが検出する光パルスの偏波、すなわちビットが入れ替わっている。また、第1のモードと第2のモードとで、単一光子検出器PD3と単一光子検出器PD4とが検出する光パルスの偏波、すなわちビットを入れ替えることができる。
【0151】
よって、本構成によれば、受信装置610と同様に、制御部2によって第1のモードでの動作と第2のモードでの動作をランダムに切り替えて、動作の比率を1:1又はこれに近似する比率とすることで、それぞれの単一光子検出器の光子検出感度の入射タイミング依存性を平均化することが可能となる。かつ、単一光子検出器の光子検出感度の入射タイミング依存性を平均化して、タイムシフト攻撃による盗聴を防止することができる。
【0152】
その他の実施の形態
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、上述の実施の形態では、単一光子検出器としてアバランシェフォトダイオードを用いるものとして説明したが、光子検出効率が光子の入射タイミングに依存する単一光子検出器であるかぎり、他の構成の単一光子検出器を適用してもよい。
【0153】
上述の実施の形態において、位相エンコードBB84プロトコルを実現する構成及び偏波エンコードBB84プロトコルを実現する構成は例示に過ぎず、同様の量子鍵配送を実現できる限り、適宜他の構成を取りうることは、言うまでもない。
【0154】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0155】
(付記1)量子信号が入射し、前記量子信号を復号する復号部と、前記復号部から出力される復号された量子信号の光子を検出する複数の検出器と、前記複数の検出器での光子の検出結果に基づいて、前記復号された量子信号のビットを検出する信号処理部と、1つの符号化基底に対応する2つの前記復号された量子信号の出力先を、前記1つの符号化基底に対応する、対を構成する2つの前記検出器の中で切り替え、かつ、前記対を構成する2つの検出器のそれぞれでの光子の検出結果に基づいて前記信号処理部が検出するビットを切り替える切替処理を行う制御部と、を備える、受信装置。
【0156】
(付記2)前記受信装置に入射する前記量子信号に含まれる光パルスは、第1の符号化基底では位相が0又はπだけシフトされ、第2の符号化基底では位相がπ/2又は3π/2だけシフトされ、前記復号部は、予め位相が変調された第1の光パルスと前記第1の光パルスから所定時間だけ遅延した第2の光パルスを含む量子信号が入射し、前記第1の光パルスを前記所定時間だけ遅延させ、かつ、前記第2の光パルスの位相を変調し、遅延させた前記第1の光パルスと変調した前記第2の光パルスとを逆位相又は同位相で干渉させて、前記復号された量子信号を出力する干渉計として構成され、前記制御部は、前記切替処理において、前記干渉計での前記第2の光パルスの位相シフトが0又はπとなるように切り替える、付記1に記載の受信装置。
【0157】
(付記3)前記復号部は、マッハツェンダ干渉計として構成され、前記複数の検出器は、前記対となる2つの検出器である第1及び第2の検出器を含み、前記マッハツェンダ干渉計は、伝搬する前記量子信号を遅延させる第1の経路と、伝搬する前記量子信号を位相変調する位相変調器が設けられた第2の経路と、前記量子信号を前記第1及び第2の経路へ分波する分波器と、前記第1及び第2の経路を通過した前記量子信号が逆位相で干渉して得られた前記復号された量子信号を前記第1の検出器へ出力し、同位相で干渉して得られた前記復号された量子信号を前記第2の検出器へ出力する合分波器と、を備え、前記制御部は、前記切替処理において、前記位相変調器での前記第2の光パルスの位相シフトが0又はπとなるように切り替え、かつ、前記第1及び第2の検出器のそれぞれでの光子の検出結果に基づいて前記信号処理部が検出するビットを切り替える、付記2に記載の受信装置。
【0158】
(付記4)前記量子信号は、第1及び第2の符号化基底に基づいて符号化され、前記復号部は、前記第1の符号化基底に対応する第1及び第2の復号信号と、前記第2の符号化基底に対応する第3及び第4の復号信号と、を出力し、前記複数の検出器は、前記第1の符号化基底に対応する第1及び第2の検出器と、前記第2の符号化基底に対応する第3及び第4の検出器と、を含み、前記制御部は、前記切替処理において、前記第1及び第2の復号信号の出力先を前記第1及び第2の検出器の中で切り替えるともに、前記第1及び第2の検出器のそれぞれでの光子の検出結果に基づいて前記信号処理部が検出するビットを切り替え、前記第3及び第4の復号信号の出力先を前記第3及び第4の検出器の中で切り替えるともに、前記第3及び第4の検出器のそれぞれでの光子の検出結果に基づいて前記信号処理部が検出するビットを切り替える、付記1に記載の受信装置。
【0159】
(付記5)前記復号部と前記第1及び第2の検出器との間に挿入され、前記制御部からの第1の制御信号に応じて、前記第1及び第2の復号信号のそれぞれの出力先を前記第1及び第2の検出器の中で切り替え可能な第1の光スイッチと、前記復号部と前記第3及び第4の検出器との間に挿入され、前記制御部からの第2の制御信号に応じて、前記第3及び第4の復号信号のそれぞれの出力先を前記第3及び第4の検出器の中で切り替え可能な第2の光スイッチと、を備え、前記制御部は、前記切替処理において、第1のモードでは、前記第1~第4の復号信号の出力先が、それぞれ前記第1~第4の検出器になるように、前記第1及び第2の光スイッチを制御し、第2のモードでは、前記第1の復号信号の出力先が前記第2の検出器になるように、かつ、前記第2の復号信号の出力先が前記第1の検出器になるように前記第1の光スイッチを制御し、前記第3の復号信号の出力先が前記第4の検出器になるように、かつ、前記第4の復号信号の出力先が前記第3の検出器になるように前記第2の光スイッチを制御し、前記第1のモードと前記第2のモードとの間での切り替えを行うときに、前記第1及び第2の検出器のそれぞれでの光子の検出結果に基づいて前記信号処理部が検出するビットを入れ替え、前記第3及び第4の検出器のそれぞれでの光子の検出結果に基づいて前記信号処理部が検出するビットを入れ替える、付記4に記載の受信装置。
【0160】
(付記6)前記第1の光スイッチは、第1及び第2の入力に前記第1及び第2の復号信号がそれぞれ入力され、第1及び第2の出力が前記第1及び第2の検出器とそれぞれ接続され、前記第2の光スイッチは、第3及び第4の入力に前記第3及び第4の復号信号がそれぞれ入力され、第3及び第4の出力が前記第3及び第4の検出器とそれぞれ接続され、前記制御部は、前記切替処理において、第1のモードでは、前記第1及び第2の入力がそれぞれ前記第1及び第2の出力と接続されるように前記第1の光スイッチを制御し、前記第3及び第4の入力がそれぞれ前記第3及び第4の出力と接続されるように前記第2の光スイッチを制御し、第2のモードでは、前記第1の入力と前記第2の出力とが接続され、かつ、前記第2の入力と前記第1の出力とが接続されるように前記第1の光スイッチを制御し、前記第3の入力と前記第4の出力とが接続され、かつ、前記第4の入力と前記第3の出力とが接続されるように前記第2の光スイッチを制御する、付記5に記載の受信装置。
【0161】
(付記7)前記複数の検出器は、前記対となる2つの検出器である第1及び第2の検出器を含み、前記受信装置に入射する量子信号に含まれる光パルスは、第1の符号化基底では第1又は第2の偏波状態となるように偏波変調され、第2の符号化基底では第3又は第4の偏波状態となるように偏波変調され、前記復号部は、前記量子信号の前記光パルスを偏波変調して前記第1及び第2の偏波状態の光パルスを出力する偏波変調器と、前記第1の偏波状態の光パルスを前記第1の検出器へ出力し、前記第2の偏波状態の光パルスを前記第2の検出器へ出力する偏波分離部と、を備え、前記制御部は、前記切替処理において、第1のモードでは、前記第3及び第4の偏波状態の光パルスをそれぞれ前記第1及び第2の偏波状態の光パルスにする偏波変調をランダムに行うように、前記偏波変調器を制御し、第2のモードでは、前記第1及び第2の偏波状態の光パルスをそれぞれ前記第2及び第1の偏波状態の光パルスにし、前記第3及び第4の偏波状態の光パルスをそれぞれ前記第2及び第1の偏波状態の光パルスにする偏波変調をランダムに行うように、前記偏波変調器を制御し、前記第1のモードと前記第2のモードとの間での切り替えを行うときに、前記第1及び第2の検出器のそれぞれでの光子の検出結果に基づいて前記信号処理部が検出するビットを入れ替える、付記1に記載の受信装置。
【0162】
(付記8)前記受信装置に入射する量子信号に含まれる光パルスは、第1の符号化基底では第1又は第2の偏波状態となるように偏波変調され、第2の符号化基底では第3又は第4の偏波状態となるように偏波変調され、前記複数の検出器は、前記第1の符号化基底に対応する第1及び第2の検出器と、前記第2の符号化基底に対応する第3及び第4の検出器と、を含み、前記復号部は、前記入射する量子信号を分波する分波器と、前記分波器で分波された一方の光パルスを前記第1及び第2の偏波状態の第1及び第2の光パルスに偏波分離する第1の偏波分離部と、前記分波器で分波された他方の光パルスを前記第3及び第4の偏波状態の第3及び第4の光パルスに偏波分離する第2の偏波分離部と、前記第1の偏波分離部と前記第1及び第2の検出器との間に挿入され、前記制御部からの制御に応じて、前記第1及び第2の光パルスのそれぞれの出力先を前記第1及び第2の検出器の中で切り替え可能な第3の光スイッチと、前記第2の偏波分離部と前記第3及び第4の検出器との間に挿入され、前記制御部からの制御に応じて、前記第3及び第4の光パルスのそれぞれの出力先を前記第3及び第4の検出器の中で切り替え可能な第4の光スイッチと、を備え、前記制御部は、前記切替処理において、前記第1及び第2の検出器のそれぞれでの光子の検出結果に基づいて前記信号処理部が検出するビットを切り替え、前記第3及び第4の検出器のそれぞれでの光子の検出結果に基づいて前記信号処理部が検出するビットを切り替える、付記1に記載の受信装置。
【0163】
(付記9)前記第3の光スイッチは、第5及び第6の入力に前記第1及び第2の光パルスがそれぞれ入力され、第5及び第6の出力が前記第1及び第2の検出器とそれぞれ接続され、前記第4の光スイッチは、第7及び第8の入力に前記第3及び第4の光パルスがそれぞれ入力され、第7及び第8の出力が前記第3及び第4の検出器とそれぞれ接続され、前記制御部は、前記切替処理において、第1のモードでは、前記第5及び第6の入力がそれぞれ前記第5及び第6の出力と接続されるように前記第3の光スイッチを制御し、前記第7及び第8の入力がそれぞれ前記第7及び第8の出力と接続されるように前記第4の光スイッチを制御し、第2のモードでは、前記第5の入力と前記第6の出力とが接続され、かつ、前記第6の入力と前記第5の出力とが接続されるように前記第3の光スイッチを制御し、前記第7の入力と前記第8の出力とが接続され、かつ、前記第8の入力と前記第7の出力とが接続されるように前記第4の光スイッチを制御し、前記第1のモードと前記第2のモードとの間での切り替えを行うときに、前記第1及び第2の検出器のそれぞれでの光子の検出結果に基づいて前記信号処理部が検出するビットを入れ替え、前記第3及び第4の検出器のそれぞれでの光子の検出結果に基づいて前記信号処理部が検出するビットを入れ替える、付記8に記載の受信装置。
【0164】
(付記10)前記受信装置に入射する量子信号に含まれる光パルスは、第1の符号化基底では第1又は第2の偏波状態となるように偏波変調され、第2の符号化基底では第3又は第4の偏波状態となるように偏波変調され、前記複数の検出器は、前記第1の符号化基底に対応する第1及び第2の検出器と、前記第2の符号化基底に対応する第3及び第4の検出器と、を含み、前記復号部は、前記量子信号の前記光パルスの前記第1及び第2の偏波状態がそれぞれ前記第2及び第1の偏波状態になるように、前記第3及び第4の偏波状態をそれぞれ前記第4及び第3の偏波状態になるように偏波変調可能な偏波変調器と、前記偏波変調器から出力される光パルスを分波する分波器と、前記分波器で分波された一方の光パルスを前記第1及び第2の偏波状態の光パルスに偏波分離し、前記第1の偏波状態の光パルスを前記第1の検出器へ出力し、前記第2の偏波状態の光パルスを前記第2の検出器へ出力する第1の偏波分離部と、前記分波器で分波された他方の光パルスを前記第3及び第4の偏波状態の光パルスに偏波分離し、前記第3の偏波状態の光パルスを前記第3の検出器へ出力し、前記第4の偏波状態の光パルスを前記第4の検出器へ出力する第2の偏波分離部と、前記制御部は、前記切替処理において、前記偏波変調器が前記偏波変調を行うか否かを切り替え、かつ、前記第1及び第2の検出器のそれぞれでの光子の検出結果に基づいて前記信号処理部が検出するビットを切り替え、前記第3及び第4の検出器のそれぞれでの光子の検出結果に基づいて前記信号処理部が検出するビットを切り替える、付記1に記載の受信装置。
【0165】
(付記11)量子鍵配送に用いる量子信号を出力する送信装置と、前記量子信号を受信する受信装置と、を備え、前記受信装置は、前記量子信号が入射し、前記量子信号を復号する復号部と、前記復号部から出力される復号された量子信号の光子を検出する複数の検出器と、前記複数の検出器での光子の検出結果に基づいて、前記復号された量子信号のビットを検出する信号処理部と、1つの符号化基底に対応する2つの前記復号された量子信号の出力先を、前記1つの符号化基底に対応する、対を構成する2つの前記検出器の中で切り替え、かつ、前記対を構成する2つの検出器のそれぞれでの光子の検出結果に基づいて前記信号処理部が検出するビットを切り替える切替処理を行う制御部と、を備える、量子鍵配送システム。
【0166】
(付記12)入射した量子信号を復号し、復号された量子信号の光子を複数の検出器で検出し、前記複数の検出器での光子の検出結果に基づいて、前記復号された量子信号のビットを検出し、1つの符号化基底に対応する2つの前記復号された量子信号の出力先を、前記1つの符号化基底に対応する、対を構成する2つの前記検出器の中で切り替え、かつ、前記対を構成する2つの検出器のそれぞれでの光子の検出結果に基づいて検出するビットを切り替える、量子信号の検出方法。
【0167】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記によって限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0168】
この出願は、2021年1月29日に出願された日本出願特願2021-13984を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0169】
1 光源
2 制御部
3 信号処理部
4A、4B、17、27 位相変調器
5 偏波変調器
10、20、30、40、40A、40B 干渉計
10A、20A 入力
10B 出力
11~14、11~13、41、42 光導波路
15、25、43、44 分波器
16 合波器
26 合分波器
61 偏波変調器
62 偏波ビームスプリッタ
63 分波器
64、65 偏波ビームスプリッタ
66 1/2波長板
67 偏波変調器
100、300、500 送信装置
200、410、600、610、620 受信装置
1000 量子鍵配送システム
1001 伝送路
1002 伝送路
2000 量子鍵配送システム
3000 量子鍵配送システム
PD1~PD4 単一光子検出器
PL 光パルス
PL1 前パルス(光パルス)
PL2 後パルス(光パルス)
Q 量子信号
SW1、SW2、SW10、SW20 光スイッチ