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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】真空冷却装置
(51)【国際特許分類】
   F25D 7/00 20060101AFI20240930BHJP
   F25D 21/04 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
F25D7/00 A
F25D21/04 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020062825
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021162207
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-12-20
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110685
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 方宜
(72)【発明者】
【氏名】佐▲土▼ 克也
(72)【発明者】
【氏名】蔵野 雅夫
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-063255(JP,A)
【文献】特開平09-269068(JP,A)
【文献】特開2000-346405(JP,A)
【文献】特開平08-029036(JP,A)
【文献】特開2014-074518(JP,A)
【文献】特開平10-073364(JP,A)
【文献】特開2007-292420(JP,A)
【文献】特開平09-196494(JP,A)
【文献】登録実用新案第3014630(JP,U)
【文献】特開2017-187233(JP,A)
【文献】特開平07-008187(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 1/00-31/00
F16J 1/00-15/56
F25B 1/00-49/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品が収容される缶体と、この缶体内の気体を外部へ吸引排出する減圧手段と、減圧された前記缶体内へ外気を導入する復圧手段と、前記各手段を制御する制御手段とを備える真空冷却装置であって、
前記缶体は、略矩形の中空ボックス状に形成され、前面の開口部がドアで開閉可能とされ、
前記缶体の上壁の外面には、補強材としての板材が板面を前後へ向けて且つ前後に離隔して複数枚設けられ、その板材間に加熱手段が設けられ、
この加熱手段も、前記制御手段により制御され、
前記制御手段は、前記加熱手段による前記上壁の加熱を伴う冷却運転の開始後、設定タイミングで、前記加熱手段による加熱を停止させ、
前記設定タイミングは、食品の温度が所定値を下回り且つ前記上壁の温度が規定温度以上の時とされる
ことを特徴とする真空冷却装置。
【請求項2】
前記缶体の上壁と左右側壁とは、円弧状部を介して連接されており、
前記缶体の上壁および左右側壁の外面には、補強材としての板材が板面を前後へ向けて且つ前後に離隔して複数枚設けられ、
前記板材間において、少なくとも前記上壁および前記円弧状部を覆うように、前記加熱手段としてのシート状のヒータが設けられる
ことを特徴とする請求項1に記載の真空冷却装置。
【請求項3】
前記減圧手段は、排気管を介して前記缶体内から気体を吸引排出する一方、前記復圧手段は、給気管を介して前記缶体内へ外気を導入し、
前記排気管および前記給気管は、前記缶体の側壁に接続される
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の真空冷却装置。
【請求項4】
前記加熱手段に温度センサが設けられ、
前記制御手段は、前記温度センサの検出温度を設定範囲に維持するように、前記加熱手段を制御し、前記設定タイミングで、前記加熱手段による加熱を停止させる
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の真空冷却装置。
【請求項5】
前記缶体の上壁に温度センサが設けられ、
前記制御手段は、前記温度センサの検出温度を設定範囲に維持するように、前記加熱手段を制御し、前記設定タイミングで、前記加熱手段による加熱を停止させる
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の真空冷却装置。
【請求項6】
前記加熱手段による前記上壁の加熱は、冷却運転開始前から行われ、
前記ドアを開放中、前記加熱手段による加熱を停止させる
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の真空冷却装置。
【請求項7】
前記缶体には、上壁に加えて、左右側壁および/または後壁にも、前記加熱手段が設けられる
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の真空冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶体内に食品を収容して減圧することで、食品を冷却する真空冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
缶体内に食品を収容して減圧することで、食品からの水分蒸発を促し、その気化潜熱により食品を冷却する真空冷却装置が知られている。この装置では、冷却運転中、食品から蒸気が発生するが、その蒸気が缶体の壁面で結露し、結露水(特に上壁で生じた結露水)が食品に落下するおそれがある。単に結露水が食品に混入する以外に、特に食品がパンなどの場合、水分の影響により仕上がりに悪影響が出るおそれもある。そこで、下記特許文献1に開示されるように、缶体の上壁にヒータを設けて結露を防止することが提案されている。
【0003】
しかしながら、真空冷却装置は、缶体内を減圧する装置であるため、減圧に耐えるように、缶体の外壁には各種の補強材が設けられている。たとえば、上壁の外面には、チャンネル材(断面コ字形状の溝形鋼)が設けられている。具体的には、上壁の上面には、左右方向へ延出してチャンネル材が設けられると共に、複数のチャンネル材が前後に離隔して平行に設けられている。その際、各チャンネル材は、その開口部(断面コ字の開放両端部)を下方へ向けて、上壁に溶接されて固定されている。
【0004】
そのため、従来の缶体構造のままで缶体の上面にヒータを設けた場合、チャンネル材部分では壁面温度が低く、ヒータを設けた部分では壁面温度が高くなり、壁面温度の低い部分では結露が発生するおそれがある。結露を防ぐためにヒータの加熱温度を高める場合は、必要以上のエネルギを消費することになる。また、従来の缶体構造のままでは、缶体の上壁にヒータを設けることは容易ではない。チャンネル材間の隙間において、上壁の外面にヒータを設けるにしても、設置できる面積が少なく、缶体内の壁面温度を短時間に均一に上昇させることは難しい。缶体の上壁だけでなく、左右側壁や下壁にも、同様に、チャンネル材で補強されており、これらの箇所へのヒータの設置も容易ではない。一方、缶体の内面にヒータを設けるのでは、缶体内を減圧(缶体内の気体を外部へ吸引排出)した際、缶体からヒータが剥がれ落ちるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-346405号公報(段落0047-0048)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、缶体の外壁への加熱手段の設置を容易に行うことができる真空冷却装置を提供することにある。また、缶体内の壁面温度を、より短時間に温度ムラを抑制しつつ上昇させることができ、省エネルギを図ると共に、壁面への結露を防止して、結露水の食品への落下を低減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、食品が収容される缶体と、この缶体内の気体を外部へ吸引排出する減圧手段と、減圧された前記缶体内へ外気を導入する復圧手段と、前記各手段を制御する制御手段とを備える真空冷却装置であって、前記缶体は、略矩形の中空ボックス状に形成され、前面の開口部がドアで開閉可能とされ、前記缶体の上壁の外面には、補強材としての板材が板面を前後へ向けて且つ前後に離隔して複数枚設けられ、その板材間に加熱手段が設けられ、この加熱手段も、前記制御手段により制御され、前記制御手段は、前記加熱手段による前記上壁の加熱を伴う冷却運転の開始後、設定タイミングで、前記加熱手段による加熱を停止させ、前記設定タイミングは、食品の温度が所定値を下回り且つ前記上壁の温度が規定温度以上の時とされることを特徴とする真空冷却装置である。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、缶体の上壁の外面には、補強材としての板材が板面を前後へ向けて且つ前後に離隔して複数枚設けられる。そのため、補強材としてチャンネル材を用いた場合と比較して、加熱手段の設置スペースを確保しやすく、缶体の上壁への加熱手段の設置を容易に行うことができる。また、加熱手段の設置スペースを広げて、缶体の上壁の温度を、比較的短時間に、温度ムラを抑制しつつ上昇させることができる。これにより、上壁への結露を防止して、結露水の食品への落下を低減することができる。
請求項1に記載の発明によれば、冷却運転開始後、設定タイミングで、加熱手段による加熱を停止させる。壁面への結露は、主として冷却運転の初期段階で生じるため、冷却運転の途中で加熱手段を停止することができる。それにより、省エネルギを図ることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記缶体の上壁と左右側壁とは、円弧状部を介して連接されており、前記缶体の上壁および左右側壁の外面には、補強材としての板材が板面を前後へ向けて且つ前後に離隔して複数枚設けられ、前記板材間において、少なくとも前記上壁および前記円弧状部を覆うように、前記加熱手段としてのシート状のヒータが設けられることを特徴とする請求項1に記載の真空冷却装置である。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、缶体の上壁と左右側壁とは、円弧状部を介して連接されるが、少なくとも上壁および円弧状部を覆うように加熱手段を設けることで、缶体上部における結露を防止して、結露水の食品への落下を低減することができる。なお、缶体内に投入する台車の幅によっては円弧状部の下部にも食品が置かれたり、台車の一部がかかったりする場合もあり得るが、仮にその場合でも、上壁だけでなく円弧状部も覆うように加熱手段を設けておくことで、より確実に結露の発生や、結露水の食品への落下を防止することができる。その他、加熱手段として、シート状のヒータを用いることで、コンパクトな構成とできると共に、缶体への設置を容易に行うことができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記減圧手段は、排気管を介して前記缶体内から気体を吸引排出する一方、前記復圧手段は、給気管を介して前記缶体内へ外気を導入し、前記排気管および前記給気管は、前記缶体の側壁に接続されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の真空冷却装置である。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、減圧手段の排気管や、復圧手段の給気管は、缶体の上壁ではなく側壁に接続される。そのため、缶体の上壁への加熱手段の設置スペースを確保して、加熱手段の設置を容易に行うことができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、前記加熱手段に温度センサが設けられ、前記制御手段は、前記温度センサの検出温度を設定範囲に維持するように、前記加熱手段を制御し、前記設定タイミングで、前記加熱手段による加熱を停止させることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の真空冷却装置である。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、加熱手段による発熱を制御して、缶体の壁面温度を所望に上昇させることができる。これにより、壁面への結露を防止して、結露水の食品への落下を低減することができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、前記缶体の上壁に温度センサが設けられ、前記制御手段は、前記温度センサの検出温度を設定範囲に維持するように、前記加熱手段を制御し、前記設定タイミングで、前記加熱手段による加熱を停止させることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の真空冷却装置である。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、加熱手段による上壁の加熱を制御して、缶体の壁面温度を所望に上昇させることができる。これにより、壁面への結露を防止して、結露水の食品への落下を低減することができる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、前記加熱手段による前記上壁の加熱は、冷却運転開始前から行われ、前記ドアを開放中、前記加熱手段による加熱を停止させることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の真空冷却装置である。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、冷却運転開始前から上壁を加熱しておくことで、冷却運転開始後には、壁面への結露を防止して、結露水の食品への落下を低減することができる。但し、ドアを開放中には加熱手段による加熱を停止させることで、安全性を高めると共に、省エネルギを図ることができる。
【0021】
さらに、請求項7に記載の発明は、前記缶体には、上壁に加えて、左右側壁および/または後壁にも、前記加熱手段が設けられることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の真空冷却装置である。
【0022】
請求項7に記載の発明によれば、上壁に加えて、左右側壁および/または後壁も、加熱手段により加熱することで、缶体の壁面への結露を一層防止して、結露水の食品への落下を低減することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の真空冷却装置によれば、缶体の外壁への加熱手段の設置を容易に行うことができる。また、缶体内の壁面温度を、より短時間に温度ムラを抑制しつつ上昇させることができ、省エネルギを図ると共に、壁面への結露を防止して、結露水の食品への落下を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施例の真空冷却装置の缶体構造を示す概略図であり、上部の分解斜視図である。
図2図1の缶体の概略平面図である。
図3図1の缶体の概略右側面図である。
図4図3のIV-IV断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
以下、まずは真空冷却装置の全体構成について概略を説明した後、本発明の特徴部である缶体1と、この缶体1に設けられる加熱手段2およびその制御について説明する。
【0026】
図1図4は、本発明の一実施例の真空冷却装置の缶体構造を示す概略図であり、図1は上部の分解斜視図、図2は平面図、図3は右側面図、図4図3のIV-IV断面図である。
【0027】
本実施例の真空冷却装置は、食品が収容される缶体1の他、図示しないが、この缶体1内の気体を外部へ吸引排出する減圧手段と、減圧された缶体1内へ外気を導入する復圧手段と、缶体1内の圧力を検出する圧力センサと、缶体1内に収容された食品の温度(品温)を検出する品温センサと、これらセンサの検出信号や経過時間などに基づき前記各手段を制御する制御手段とを備える。さらに、詳細は後述するが、缶体1の内、少なくとも上壁1aを加熱する加熱手段2を備え、この加熱手段2も制御手段により制御される。
【0028】
減圧手段は、図示しないが、缶体1に排気管を介して、真空発生装置が接続されて構成される。真空発生装置は、その具体的構成を特に問わないが、典型的には、蒸気凝縮用の熱交換器(排気管内の流体と冷却水との熱交換器)と、その下流に配置される水封式の真空ポンプとを備える。熱交換器の上流に、さらに蒸気エゼクタを備えてもよい。真空発生装置を作動させることで、缶体1内の気体を外部へ吸引排出して、缶体1内を減圧することができる。
【0029】
復圧手段は、図示しないが、缶体1に給気管を介して、給気弁およびエアフィルタが接続されて構成される。缶体1内が減圧された状態で、給気弁を開けると、外気がエアフィルタを介して缶体1内へ導入され、缶体1内を復圧することができる。
【0030】
制御手段は、前記各センサの検出信号や経過時間などに基づき、前記各手段を制御する制御器(図示省略)である。具体的には、真空発生装置および給気弁の他、圧力センサおよび品温センサなどは、制御器に接続される。そして、制御器は、所定の手順(プログラム)に従い、缶体1内の食品の真空冷却を図る。
【0031】
真空冷却装置を用いて食品を冷却するには、まず、缶体1内に食品を収容してドアを気密に閉じる。そして、スタートボタンを押すなど、運転開始を指示すると、制御器は、冷却運転を開始する。冷却運転では、給気弁を閉じた状態で、減圧手段により缶体1内を減圧する。典型的には、品温センサの検出温度が冷却目標温度(たとえば30℃)になるまで、缶体1内を減圧する。冷却運転中(つまり缶体1内を減圧中)、所望により、真空発生装置の排気能力を変更したり、給気弁の開度を調整したりしてもよい。たとえば、品温または経過時間に基づき、真空ポンプや熱交換器への給水を、常温水から冷水に切り替えてもよい。
【0032】
いずれにしても、缶体1内を減圧することで、食品は、水分蒸発を伴いながら、その気化熱で冷却される。所定の冷却終了条件を満たすと、減圧手段を停止する。そして、給気弁を開けて、缶体1内を大気圧まで復圧する。缶体1内が大気圧まで復圧したら、ドアを開けて、缶体1内から食品を取り出すことができる。
【0033】
次に、本実施例の缶体1と、この缶体1に設けられる加熱手段2およびその制御について、説明する。
【0034】
缶体1は、略矩形状の中空ボックス状に形成され、前面の開口部がドア(図示省略)で開閉可能とされる。より具体的には、缶体1は、正面視略矩形の筒体を備え、この筒体の上下左右の各面により、上壁1a、下壁1b、および左右の側壁1c,1dが形成される。また、筒体は、後方の開口部が後壁1e(背面板)で閉塞される一方、前方の開口部がドアで開閉可能とされる。なお、缶体1は、金属製であり、たとえばステンレスなどの鉄鋼材料から形成される。
【0035】
缶体1の本体部としての前記筒体は、複数の部材を組み合わせて構成されてもよい。たとえば、一対の略コ字形状材から構成される。この略コ字形状材は、上下方向へ沿う中央片に対し略垂直に、上片および下片が屈曲されて形成される。そして、一対の略コ字形状材は、開口部同士を向かい合わせ、上片の先端部同士および下片の先端部同士を突き合せて、溶接されて一体化される。
【0036】
いずれにしても、缶体1は、正面視で略矩形状とされ、上壁1a、下壁1bおよび左右側壁1c,1dを備える。上壁1aと左右側壁1c,1dとは、円弧状部1xを介して連接され、下壁1bと左右側壁1c,1dとも、円弧状部1xを介して連接される。缶体1が一対の前記略コ字形状材から構成される場合、円弧状部1xは、前記中央片に対する上下片の屈曲部である。
【0037】
缶体1の本体部としての前記筒体は、前述したとおり、後方の開口部が後壁1e(背面板)で閉塞される。一方、前端部の外周面には、フランジ状に戸当たり板3が設けられる。戸当たり板3は、金属(たとえばステンレス)製であり、正面視略矩形状とされ、缶体1の前端部外周部から外方へ板状に延出して形成される。この戸当たり板3も、複数の部材を組み合わせて構成されてもよい。たとえば、上端部には、下向き略コ字形状材を配置する一方、下端部には、上向き略コ字形状板を配置し、上下の略コ字形状板の開放端部同士を細長い略矩形状板により接続して構成されてもよい。戸当たり板3には、缶体1の前方開口部を取り囲むように、パッキン溝3aが形成され、このパッキン溝3aにはパッキン(図示省略)が装着される。
【0038】
缶体1の一方の側壁(図示例では右側壁1d)には、前記排気管が接続される排気口4と、前記給気管が接続される給気口5とが設けられる。排気口4および給気口5は、図示例では、いずれも右側壁1dの上方(上方の円弧状部1xの下部)に設けられる。
【0039】
排気口4は、横向き略円筒材から形成され、その中空穴を介して缶体1の内外が連通される。排気口4を構成する横向き略円筒材は、一端部が缶体1の側壁1dに気密に固定される一方、他端部にはフランジ4aが設けられている。このフランジ4aを介して、排気口4に排気管が接続される。
【0040】
給気口5は、横向き略円管材から形成され、その中空穴を介して缶体1の内外が連通される。給気口5は、排気口4よりも十分小径で、本実施例では、前後に離隔して二つ設けられる。図示例の場合、各給気口5は、排気口4よりも前方に配置されている。
【0041】
缶体1には、上壁1aおよび下壁1bの他、左右の側壁1c,1dに、それぞれ補強材が設けられる。この内、少なくとも上壁1aに設けられる補強材は、補強板6(つまり板状の補強材)とされる。具体的には、本実施例では、金属(たとえば鉄鋼)製のフラットバーから構成される。なお、補強板6の板厚は、たとえば20mm~30mm程度が好ましい。補強板6を比較的薄くすることで、加熱手段2による加熱領域が広くなり効率的に上壁1aなどを加熱することができる。
【0042】
本実施例では、上下左右の各壁体1a~1dに、補強板6が設けられる。補強板6は、板面を前後へ向けて、前後に離隔して(好ましくは等間隔に)複数枚設けられる。各補強板6は、缶体1の外周部を取り囲むように、略矩形の枠状に形成されており、その内周部が缶体1の外面(上壁1a、下壁1bおよび左右側壁1c,1dの外面)に当接されて溶接される。各補強板6は、戸当たり板3と同様に、複数の板材が組み合わされて構成されてもよい。
【0043】
缶体1の外周部に前後に離隔して複数の補強板6を設けるが、排気口4となる箇所には、補強板6を切り欠いておくことで、補強板6の設置が省略される。一方、各給気口5は、補強板6と補強板6との隙間に設置されている。
【0044】
缶体1の後壁1eにも、補強材7が設けられる。図示例では、断面略コ字形状の形材(チャンネル材)が用いられ、左右方向へ延出して配置される。そして、複数の補強材7が上下に離隔して複数本設けられる。各補強材7は、その開口部(断面コ字の開放両端部)を前方へ向けて、後壁1eに溶接されて固定される。その他、図示例の場合、缶体1の左右側壁1c,1dには、最後方の補強板6よりも後方に、上下に離隔して複数の板材8が設けられている。
【0045】
図示しないが、缶体1の前方開口部を開閉するドアは、本実施例では、左右に開閉するスライドドアとされる。この場合、缶体1の上部には、左右へ延出してドアレールが固定され、このドアレールにドアが吊り下げられて左右にスライドする。本実施例では、缶体1の前方上部に、ドアレールの脚部が固定される。具体的には、最前方の補強板6の前後両端部には、それぞれ略矩形ブロック状のブラケット9が固定されており、このブラケット9に脚部を介してドアレールが保持され、そのドアレールにドアが吊り下げられる。ブラケット9は、缶体1の上壁1a上面との間に隙間をあけて保持されている。缶体1の開口部と対応した位置までドアを配置して、図示しない締付機構により、ドアを缶体1側へ押し付けて、パッキンを介してドアを気密に閉じることができる。
【0046】
缶体1には、少なくとも上壁1aに、加熱手段2が設けられる。加熱手段2は、特に問わないが、本実施例では、可撓性を有するシート状の電気ヒータ(たとえばシリコンラバーヒータ)10である。缶体1の外面には、前後に離隔して複数の補強板6が設けられるが、各補強板6間において、缶体1の上壁1a上面にヒータ10が重ね合されて貼付される。各補強板6の間だけでなく、最後方の補強板6よりも後方(すなわち後壁1eと最後方の補強板6との間)において、缶体1の上壁1aにヒータ10を設けてもよい。また、図示例では設置していないが、最前方の補強板6よりも前方(すなわち戸当たり板3と最前方の補強板6との間)において、缶体1の上壁1aにヒータ10を設けてもよい。いずれにしても、各ヒータ10は、隣接する補強板6間(あるいは前後の補強板6と缶体1の前後端部)との空間をフルに生かした幅寸法(前後方向寸法)とされるのが好ましい。
【0047】
また、ヒータ10は、缶体1の上壁1aだけでなく、左右側壁1c,1d(特にその上部)にも設けてもよい。缶体1の上壁1aと左右側壁1c,1dとは円弧状部1xを介して連接され、上壁1aおよび左右側壁1c,1dには前後に離隔して複数の補強板6が設けられるが、この補強板6間において、少なくとも上壁1aおよび円弧状部1xを覆うように、ヒータ10が設けられるのが好ましい。
【0048】
ヒータ10には温度センサ(図示省略)が設けられてもよい。また、これに代えてまたはこれに加えて、缶体1には温度センサ(図示省略)が設けられてもよい。缶体1に温度センサを設ける場合、缶体1の上壁1aに設けるのが好ましく、特に上壁1aの内面温度(つまり缶体1内側での上壁1aの壁面温度、言い換えれば上壁1aの下面温度)を検出可能に、温度センサを設けるのが好ましい。
【0049】
ヒータ10や温度センサは、制御手段としての制御器により制御される。具体的には、冷却運転を実行中、ヒータ10により、少なくとも上壁1aを加熱する。基本的には、缶体1内圧力における飽和温度以上に加熱する。但し、缶体1内の減圧開始初期(たとえば1分以内)は、缶体1内の圧力低下速度が速く、結露が発生しても滴下する大きさに成長する前に蒸発するため、簡易には次のように制御することができる。すなわち、本実施例では、上壁1aの内面温度を所定温度(たとえば70℃)以上にするように、上壁1aを加熱する。この場合において、缶体1内の減圧が進むに連れて、この所定温度を下げてもよい。
【0050】
また、次に述べる第一制御または第二制御を実行してもよい。なお、缶体1に複数のヒータ10を設ける場合でも、通常、各ヒータ10をセットでオンオフ制御などすればよい。
【0051】
第一制御を実行する場合、ヒータ10には温度センサが設けられる。そして、この温度センサの検出温度を設定範囲に維持するように、ヒータ10を制御する。たとえば、上限温度(たとえば110℃)と下限温度(たとえば90℃)とを設定しておき、下限温度以下でヒータ10をオンする一方、上下温度以上でヒータ10をオフして、ヒータ10の温度を設定範囲に維持する。但し、場合により、温度センサの検出温度を設定温度(たとえば100℃)に維持するように、比例制御(PID制御)してもよい。
【0052】
第二制御を実行する場合、缶体1の上壁1a(好ましくは缶体1の内面側)に温度センサが設けられる。そして、この温度センサの検出温度を設定範囲に維持するように、ヒータ10を制御する。たとえば、第一制御の場合と同様に、上限温度と下限温度とを設定しておき、下限温度以下でヒータ10をオンする一方、上下温度以上でヒータ10をオフして、上壁1aの内面温度を設定範囲に維持する。但し、場合により、温度センサの検出温度を設定温度に維持するように、比例制御(PID制御)してもよい。
【0053】
本実施例の真空冷却装置によれば、缶体1の上壁1aの外面には、補強板6が板面を前後へ向けて且つ前後に離隔して複数枚設けられる。そのため、補強材としてチャンネル材を用いた場合と比較して、ヒータ10の設置スペースを確保しやすく、缶体1の上壁1aへのヒータ10の設置を容易に行うことができる。また、ヒータ10の設置スペースを確保して、缶体1の上壁1aを、比較的短時間に、温度ムラなく昇温することができる。これにより、上壁1aへの結露を防止して、結露水の食品への落下を低減することができる。
【0054】
また、食品への結露水の落下を防止するために、缶体1内上部に露よけ板(上壁1aからの滴下水を側壁1c,1dへ導く傾斜板)を設置する必要もなく、缶体1内における食品の収容スペースを広く確保することができる。また、露よけ板の場合、上壁1aへの結露を防止できるものではないし、上壁1aからの結露水を確実に側壁1c,1dへ誘導できるとも限らないが、本実施例では、ヒータ10を用いて結露自体の発生を有効に防止できるので、食品への結露水の落下をより確実に防止することができる。
【0055】
なお、食品の冷却運転中に、ヒータ10により缶体1の壁面を加熱することになるが、缶体1内は減圧されて真空状態となるため、真空断熱効果により、ヒータ10から食品への伝熱の影響は、最小限に抑えられる。
【0056】
ところで、食品からの水分蒸発や、それによる缶体1の壁面への結露の発生は、冷却運転の初期段階(つまり比較的品温が高い状態)に生じやすい。冷却運転開始直後でも結露の発生を防止するために、ヒータ10による加熱は、冷却運転の開始前から行っておくのが好ましい。たとえば、真空冷却装置の起動(電源オン)に伴い、ヒータ10による加熱を開始してもよい。これにより、冷却運転の開始時点において、缶体1の上壁1aを所定温度以上に加熱することができ、壁面への結露、ひいては結露水の食品への落下を防止することができる。
【0057】
但し、冷却運転開始前からヒータ10で加熱する場合でも、ドアを開放中にはヒータ10を停止させるのが好ましい。この場合、ドアの閉鎖状態をリミットスイッチなどで監視して、それに基づき、ドアの開放中にはヒータ10を停止させればよい。ドアを開放中、ヒータ10による加熱を停止することで、缶体に食品を出し入れする際の安全性を確保(作業者のやけどを防止)することができる。また、ヒータ10による無駄な放熱を防止して、省エネルギを図ることができる。その後、ドアが閉じられると、ヒータ10での加熱を再開すればよい。
【0058】
また、冷却運転開始後、設定タイミングで、ヒータ10を停止させてもよい。ここでいう設定タイミングとして、たとえば、下記の(a)~(f)のいずれかを用いることができる。前述したとおり、食品からの蒸気の発生および壁面への結露は、冷却運転の初期段階で多く発生するので、缶体1内の減圧が進んだ段階(圧力や品温がある程度下がった段階)では、ヒータ10を停止させることができる。また、缶体1の壁面温度がある程度以上であれば、結露が発生しないし、ヒータ10の停止後もしばらく余熱があることを考慮して、ヒータ10を停止させることができる。なお、(f)に関連して、前述したとおり、熱交換器や真空ポンプへの給水について、常温水から冷水への切替えは、減圧がある程度進んだ段階でなされる。
【0059】
(a)缶体1内圧力が所定値を下回った時
(b)品温が所定値を下回った時
(c)上壁1a(好ましくは缶体1の内面側)温度が規定温度以上の時
(d)品温が所定値を下回り且つ上壁1a(好ましくは缶体1の内面側)温度が規定温度以上の時
(e)減圧開始から所定時間経過した時
(f)減圧手段の給水系統が冷水に切り替わった時
【0060】
本発明の真空冷却装置は、前記実施例の構成に限らず適宜変更可能である。特に、食品が収容される缶体1と、この缶体1内の気体を外部へ吸引排出する減圧手段と、減圧された缶体1内へ外気を導入する復圧手段とを備える真空冷却装置であって、缶体1は、略矩形の中空ボックス状に形成され、前面の開口部がドアで開閉可能とされ、缶体1の上壁1aの外面には、補強材としての板材(補強板6)が板面を前後へ向けて且つ前後に離隔して複数枚設けられ、その板材間に加熱手段2が設けられるのであれば、その他の構成は適宜に変更可能である。下記に各種変形例を示すが、変形例同士の組合せも可能である。
【0061】
まず、前記実施例では、ヒータ10を、缶体1の主として上壁1aに設けたが、さらに、左右の側壁1c,1dに設けたり、後壁1eに設けたりしてもよい。場合により、缶体1の全体をヒータ10で加熱するようにしてもよい。
【0062】
また、前記実施例では、シート状のヒータ10を缶体1の外面に貼付したが、場合により、缶体1の外面と押え板との間で、ヒータ10を挟み込んで固定してもよい。
【0063】
また、ヒータ10は、シート状に限らず、その他の形状の電気ヒータでもよい。また、加熱手段2は、電気ヒータに限らず、蒸気または温水などで缶体を加熱するようにしてもよい。たとえば、缶体1の少なくとも上壁1aをジャケット構造(言い換えれば中空構造)として、そのジャケット内に、蒸気または温水を供給して、上壁1aを加熱するようにしてもよい。ジャケットは、上壁1aに限らず、左右側壁1c,1dや後壁1eにも設置可能である。
【0064】
また、前記実施例では、缶体1の前面をドアで開閉可能としたが、場合により、缶体1の前後をドアで開閉可能としてもよい。
【0065】
さらに、前記実施例では、真空冷却装置は、冷却専用機として説明したが、真空冷却機能を有するのであれば、適宜に変更可能である。たとえば、缶体1内への給蒸手段を備えることで、蒸煮冷却装置や飽和蒸気調理装置のように構成されてもよい。あるいは、冷凍機やファンを用いた冷風冷却機能を備えることで、冷風真空複合冷却装置のように構成されてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 缶体(1a:上壁、1b:下壁、1c:左側壁、1d:右側壁、1e:後壁、1x:円弧状部)
2 加熱手段
3 戸当たり板(3a:パッキン溝)
4 排気口(4a:フランジ)
5 給気口
6 補強板(補強材)
7 補強材
8 板材(補強材)
9 ブラケット
10 ヒータ
図1
図2
図3
図4