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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】軸組補強構造の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/56 20060101AFI20240930BHJP
【FI】
E04B2/56 605A
E04B2/56 604F
E04B2/56 611C
E04B2/56 622D
E04B2/56 643A
E04B2/56 643B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020135640
(22)【出願日】2020-08-11
(65)【公開番号】P2022032129
(43)【公開日】2022-02-25
【審査請求日】2023-07-10
(73)【特許権者】
【識別番号】307042385
【氏名又は名称】ミサワホーム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】801000027
【氏名又は名称】学校法人明治大学
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】梶川 久光
(72)【発明者】
【氏名】岡田 由佳
【審査官】坪内 優佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-137311(JP,A)
【文献】特開2019-065482(JP,A)
【文献】特開2014-020103(JP,A)
【文献】特開2000-110399(JP,A)
【文献】特開2018-084050(JP,A)
【文献】特開2019-196634(JP,A)
【文献】特開2012-246744(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/56
E04B 1/26
E04B 1/58
E04G 23/02
E04H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに間隔を空けて隣り合う既設の柱材を少なくとも含んで構成された既設の軸組構造を補強する軸組補強構造を施工する方法であって、
前記軸組補強構造は、
前記隣り合う既設の柱材同士を連結する補強フレーム材と、
前記既設の軸組構造における表裏面のうち少なくとも一方に設けられるパネル材と、を備えており、
前記柱材と前記補強フレーム材は、前記柱材と前記補強フレーム材との接合部に埋め込まれた複数の接合用棒材によって接合されており、
前記複数の接合用棒材は、少なくとも上下方向に並んで設けられていて、
前記隣り合う既設の柱材と前記補強フレーム材との接合部には、外力を受けて前記パネル材に破壊が生じた後にも、前記外力に抵抗するモーメント抵抗接合が適用されており、
前記柱材のうち前記補強フレーム材が配置される位置には、前記複数の接合用棒材の一端が差し込まれる複数の接合用差込穴が形成され、
前記補強フレーム材における前記柱材側の端部には、前記複数の接合用棒材の他端が差し込まれる複数の接合用差込穴が形成され、
前記柱材側の前記接合用差込穴及び前記補強フレーム材側の前記接合用差込穴は、穴径が、前記接合用棒材の直径よりも大きく設定されることで前記接合用棒材との間に空隙が形成され、当該空隙には接着剤が充填されており、
前記補強フレーム材は、前記隣り合う既設の柱材における一方の柱材側と他方の柱材側に分割されて前記一方の柱材側の第一分割体と、前記他方の柱材側の第二分割体と、を有し、
前記第一分割体と前記第二分割体は、隣接する互いの端部同士が接合されているものであって、
前記接着剤を前記空隙に充填するよりも前の工程で、
前記隣り合う既設の柱材に形成された前記接合用差込穴に前記接合用棒材を差し込み、
前記第一分割体を、前記一方の柱材における前記複数の接合用差込穴に差し込まれた前記複数の接合用棒材に仮取り付けし、
前記第一分割体を、前記接合用棒材を軸にして前方又は後方に傾けてずらしてから、前記第二分割体を、前記他方の柱材における前記複数の接合用差込穴に差し込まれた前記複数の接合用棒材に仮取り付けし、
前記第一分割体と前記第二分割体とを、前記隣接する互いの端部同士を接合して一体化することを特徴とする軸組補強構造の施工方法
【請求項2】
請求項に記載の軸組補強構造の施工方法において、
前記隣接する互いの端部同士の間には、制振部材が設けられ、当該制振部材を介して前記隣接する互いの端部同士が接合されていることを特徴とする軸組補強構造の施工方法
【請求項3】
請求項1又は2に記載の軸組補強構造の施工方法において、
前記補強フレーム材は複数備えられ、これら複数の補強フレーム材は、上下方向に間隔を空けて配置されていることを特徴とする軸組補強構造の施工方法
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の軸組補強構造の施工方法において、
前記補強フレーム材の上面又は/及び下面に接して設けられた補強材を更に備えることを特徴とする軸組補強構造の施工方法
【請求項5】
請求項に記載の軸組補強構造の施工方法において、
前記パネル材は、前記補強材に接着されて固定されていることを特徴とする軸組補強構造の施工方法
【請求項6】
請求項1~のいずれか一項に記載の軸組補強構造の施工方法において、
前記パネル材は、前記隣り合う既設の柱材間に位置し、前記補強フレーム材に固定されていることを特徴とする軸組補強構造の施工方法
【請求項7】
請求項に記載の軸組補強構造の施工方法において、
前記パネル材は、前記補強フレーム材に接着されて固定されていることを特徴とする軸組補強構造の施工方法
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載の軸組補強構造の施工方法において、
前記既設の軸組構造は、
前記既設の柱材における上端部同士を連結する既設の上側横架材と、
前記上側横架材の上方に間隔を空けて設けられた梁と、を更に含んで構成されており、
少なくとも前記上側横架材から前記梁にかけて設けられ、少なくとも前記上側横架材から前記梁までを連結する剪断補強構造部を更に備えることを特徴とする軸組補強構造の施工方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸組補強構造の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
木造建物においては、地震時や台風時の水平荷重に抵抗するため、必要壁量を満たすように耐力壁が設けられる。
このような耐力壁としては、隣り合う柱材間の開口部に筋交いを架け渡したり、隣り合う柱材間の開口部全面を覆うように構造用合板を張り付けたりすることで構成されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-293367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、寺社建築に代表される伝統的な木造建物における軸組構造の耐震改修を行う場合は、大がかりな解体作業と復元作業が不可欠であった。そのため、これまでに行われてきた改修の事例は高コストになりがちで、一般寺院では改修を行うことが難しいという問題があった。
そこで、近年では、特許文献1に記載のような耐力壁の構造を、上記のような伝統的な木造建物を始めとする種々の木造建物の軸組構造に使用することが求められている。しかしながら、従来知られている通常の耐力壁の構造を適用しても、上記のような伝統的な木造建物を始めとする種々の木造建物の規模や屋根の重さを考慮すると、耐力や剛性が不十分である。さらに、従来公知の接着パネルに係る技術を採用しても、粘り強さを発揮するための性質である靭性が十分でない場合があり、耐震性を維持しにくい。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その課題は、軸組構造における靭性を向上させ、伝統的な木造建物を始めとする種々の木造建物が十分な耐震性を維持できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、例えば図1図7に示すように、互いに間隔を空けて隣り合う既設の柱材2を少なくとも含んで構成された既設の軸組構造1を補強する軸組補強構造を施工する方法であって、
前記軸組補強構造は、
前記隣り合う既設の柱材2同士を連結する補強フレーム材7と、
前記既設の軸組構造1における表裏面のうち少なくとも一方に設けられるパネル材11と、を備えており、
前記柱材2と前記補強フレーム材7は、前記柱材2と前記補強フレーム材7との接合部に埋め込まれた複数の接合用棒材8によって接合されており、
前記複数の接合用棒材8は、少なくとも上下方向に並んで設けられていて、
前記隣り合う既設の柱材2と前記補強フレーム材7との接合部には、外力を受けて前記パネル材11に破壊が生じた後にも、前記外力に抵抗するモーメント抵抗接合が適用されており、
前記柱材2のうち前記補強フレーム材7が配置される位置には、前記複数の接合用棒材8の一端が差し込まれる複数の接合用差込穴2aが形成され、
前記補強フレーム材7における前記柱材2側の端部には、前記複数の接合用棒材8の他端が差し込まれる複数の接合用差込穴7aが形成され、
前記柱材2側の前記接合用差込穴2a及び前記補強フレーム材7側の前記接合用差込穴7aは、穴径が、前記接合用棒材8の直径よりも大きく設定されることで前記接合用棒材8との間に空隙が形成され、当該空隙には接着剤が充填されており、
前記補強フレーム材7は、前記隣り合う既設の柱材2における一方の柱材2側と他方の柱材2側に分割されて前記一方の柱材2側の第一分割体70と、前記他方の柱材2側の第二分割体71と、を有し、
前記第一分割体70と前記第二分割体71は、隣接する互いの端部70a,71a同士が接合されているものであって、
前記接着剤を前記空隙に充填するよりも前の工程で、
前記隣り合う既設の柱材2に形成された前記接合用差込穴2aに前記接合用棒材8を差し込み、
前記第一分割体70を、前記一方の柱材2における前記複数の接合用差込穴2aに差し込まれた前記複数の接合用棒材8に仮取り付けし、
前記第一分割体70を、前記接合用棒材8を軸にして前方又は後方に傾けてずらしてから、前記第二分割体71を、前記他方の柱材2における前記複数の接合用差込穴2aに差し込まれた前記複数の接合用棒材8に仮取り付けし、
前記第一分割体70と前記第二分割体71とを、前記隣接する互いの端部70a,71a同士を接合して一体化することを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、隣り合う柱材2と補強フレーム材7との接合部には、外力を受けてパネル材11に破壊が生じた後にも、外力に抵抗するモーメント抵抗接合が適用されているので、隣り合う柱材2と補強フレーム材7からなるフレーム(本体フレーム1a)の耐力・靭性を向上させることができる。
そのため、パネル材11に破壊が生じた後にも、隣り合う柱材2と補強フレーム材7からなるフレームが靭性の高い状態を確保・維持し、外力に抵抗できることとなる。これにより、伝統的な木造建物を始めとする種々の木造建物でも十分な耐震性を維持することができる。
また、柱材2と補強フレーム材7は、柱材2と補強フレーム材7との接合部に埋め込まれた複数の接合用棒材8によって接合されており、複数の接合用棒材8は、少なくとも上下方向に並んで設けられているので、補強フレーム材7を、柱材2に対して確実にモーメント抵抗接合することができ、隣り合う既設の柱材2と補強フレーム材7からなるフレーム(本体フレーム1a)の変形性能を格段に向上させることができる。
また、柱材2側の接合用差込穴2a及び補強フレーム材7側の接合用差込穴7aは、穴径が、接合用棒材8の直径よりも大きく設定されることで接合用棒材8との間に空隙が形成され、当該空隙には接着剤が充填されているので、接合用棒材を保持した状態で接着剤が硬化すると、応力を接着剤の付着力と接合用棒材8を介して伝達し、接合耐力を発生させる。そのため、補強フレーム材7を、柱材2に対して確実にモーメント抵抗接合することができ、隣り合う既設の柱材2と補強フレーム材7からなるフレーム(本体フレーム1a)の変形性能を格段に向上させることができる。
また、補強フレーム材7は、隣り合う既設の柱材2における一方の柱材2側と他方の柱材2側に分割されて一方の柱材2側の第一分割体70と、他方の柱材2側の第二分割体71と、を有し、第一分割体70と第二分割体71は、隣接する互いの端部70a,71a同士が接合されているので、第一分割体70を、一方の柱材2側に設けられた複数の接合用棒材8に仮取り付けした後に、第二分割体71を、他方の柱材2に設けられた複数の接合用棒材8に仮取り付けし、その上で、第一分割体70と第二分割体71とを一体化することができる。そのため、補強フレーム材7を、既設の軸組構造1に組み込みやすくなり、軸組構造1をリフォームしやすくなる。
そして、接着剤を空隙に充填するよりも前の工程で、第一分割体70を、一方の柱材2における複数の接合用差込穴2aに差し込まれた複数の接合用棒材8に仮取り付けし、第一分割体70を、接合用棒材8を軸にして前方又は後方に傾けてずらしてから、第二分割体71を、他方の柱材2における複数の接合用差込穴2aに差し込まれた複数の接合用棒材8に仮取り付けし、第一分割体70と第二分割体71とを、隣接する互いの端部70a,71a同士を接合して一体化するので、柱材2に対して貫通孔を形成しなくても、複数の接合用棒材8を用いた柱材2と補強フレーム材7とのモーメント抵抗接合が可能となる。そのため、補強フレーム材7を、既設の軸組構造1に組み込みやすくなり、軸組構造1をリフォームしやすくなる。
【0008】
請求項に記載の発明は、例えば図2図3に示すように、請求項1又は2に記載の軸組補強構造の施工方法において、
前記補強フレーム材7は複数備えられ、これら複数の補強フレーム材7は、上下方向に間隔を空けて配置されていることを特徴とする。
【0009】
請求項に記載の発明によれば、補強フレーム材7は複数備えられ、これら複数の補強フレーム材7は、上下方向に間隔を空けて配置されているので、隣り合う既設の柱材2は、複数の補強フレーム材7が設けられた複数の箇所で連結された状態となる。そのため、隣り合う既設の柱材2と複数の補強フレーム材7からなるフレーム(本体フレーム1a)の変形性能を向上させることができる。
【0010】
請求項に記載の発明は、例えば図2図3に示すように、請求項1から3のいずれか一項に記載の軸組補強構造の施工方法において、
前記補強フレーム材7の上面又は/及び下面に接して設けられた補強材9を更に備えることを特徴とする。
【0011】
請求項に記載の発明によれば、補強フレーム材7の上面又は/及び下面に接して設けられた補強材9を更に備えるので、隣り合う柱材2と補強フレーム材7との接合部の剪断力を負担することができ、補強フレーム材7が上方に移動しようとする動きと、下方に移動しようとする動きを抑制できる。そのため、隣り合う既設の柱材2と補強フレーム材7からなるフレーム(本体フレーム1a)の変形性能を格段に向上させることができる。
【0012】
請求項に記載の発明は、例えば図3に示すように、請求項に記載の軸組補強構造の施工方法において、
前記パネル材11は、前記補強材9に接着されて固定されていることを特徴とする。
【0013】
請求項に記載の発明によれば、パネル材11が、補強材9に接着されて固定されているので、パネル材11と補強材9とが一体化され、隣り合う柱材2と補強フレーム材7からなるフレーム(本体フレーム1a)の剛性及び耐力を格段に向上させることができる。
【0020】
請求項に記載の発明は、例えば図6に示すように、請求項に記載の軸組補強構造の施工方法において、
前記隣接する互いの端部70a,71a同士の間には、制振部材72が設けられ、当該制振部材72を介して前記隣接する互いの端部70a,71a同士が接合されていることを特徴とする。
【0021】
請求項に記載の発明によれば、隣接する互いの端部70a,71a同士の間には、制振部材72が設けられ、当該制振部材72を介して隣接する互いの端部70a,71a同士が接合されているので、伝統的な木造建物を始めとする種々の木造建物でも十分な耐震性に加えて靭性(エネルギー吸収能力)を発揮することができる。
すなわち、軸組構造1が外力を受けた場合に、隣り合う既設の柱材2は、同一の方向に傾くように動こうとし、それに合わせて、補強フレーム材7は上方や下方に回転しようとするが、当該補強フレーム材7における第一分割体70及び第二分割体71の、隣接する互いの端部70a,71a同士の間に制振部材72が設けられているので、この制振部材72によって、補強フレーム材7の動作時に生じる振動を抑制することができる。それに伴い、補強フレーム材7によって連結された隣り合う既設の柱材2の動作も抑制することができるので、軸組構造1、ひいては当該軸組構造1を備えた木造建物の耐震性、靭性を向上させることができる。
【0022】
請求項に記載の発明は、例えば図3に示すように、請求項1~のいずれか一項に記載の軸組補強構造の施工方法において、
前記パネル材11は、前記隣り合う既設の柱材2間に位置し、前記補強フレーム材7に固定されていることを特徴とする。
【0023】
請求項に記載の発明によれば、パネル材11は、隣り合う既設の柱材2間に位置し、補強フレーム材7に固定されているので、補強フレーム材7を下地材にして確実に取り付けることができる。さらに、パネル材11が、隣り合う既設の柱材2間に位置するので、既設の軸組構造1を真壁のように見せることができる。
【0024】
請求項に記載の発明は、例えば図3に示すように、請求項に記載の軸組補強構造の施工方法において、
前記パネル材11は、前記補強フレーム材7に接着されて固定されていることを特徴とする。
【0025】
請求項に記載の発明によれば、パネル材11が、補強フレーム材7に接着されて固定されているので、パネル材11と補強フレーム材7とが一体化され、隣り合う柱材2と補強フレーム材7からなるフレーム(本体フレーム1a)の剛性及び耐力を格段に向上させることができる。
【0026】
請求項に記載の発明は、例えば図2図3に示すように、請求項1~のいずれか一項に記載の軸組補強構造の施工方法において、
前記既設の軸組構造1は、
前記既設の柱材2における上端部同士を連結する既設の上側横架材4と、
前記上側横架材4の上方に間隔を空けて設けられた梁6と、を更に含んで構成されており、
少なくとも前記上側横架材4から前記梁6にかけて設けられ、少なくとも前記上側横架材4から前記梁6までを連結する剪断補強構造部10を更に備えることを特徴とする。
【0027】
請求項に記載の発明によれば、少なくとも上側横架材4から梁6にかけて設けられ、少なくとも上側横架材4から梁6までを連結する剪断補強構造部10を更に備えるので、軸組構造1が強い外力(水平力)を受けて、当該軸組構造1に付与される水平剪断力に対して軸組構造1を補強することができる。そのため、隣り合う既設の柱材2と補強フレーム材7からなるフレーム(本体フレーム1a)の変形性能を格段に向上させることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、軸組構造における靭性を向上させ、伝統的な木造建物を始めとする種々の木造建物が十分な耐震性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】木造建物における既設の軸組構造の例を示す斜視図である。
図2】既設の軸組構造が改修される状態を示す立面図である。
図3】既設の軸組構造が改修される状態を示す斜視図である。
図4】既設の柱材を補強フレームで連結した状態を示す断面図である。
図5】既設の柱材を補強フレームで連結する方法を説明する断面図である。
図6】第一分割体と第二分割体との間に制振部材が設けられた状態を示す部分拡大平面図である。
図7】既設の柱材を補強フレームで連結した状態の変形例を示す断面図である。
図8】既設の軸組構造が改修される状態の変形例を示す斜視図である。
図9】剪断補強構造部の連結態様の変形例を示す部分立面図である。
図10】第一分割体と第二分割体の接合態様の変形例を示しており、(a)は平面図、(b)は立面図である。
図11】第一分割体と第二分割体の接合態様の変形例を示す平面図である。
図12】第一分割体及び第二分割体の中央側端部における構成及び第一分割体と第二分割体の接合態様の変形例を示し、(a)は充填材を用いた場合の平面図、(b)はアングル材を用いた場合の平面図である。
図13】第一分割体と第二分割体の接合態様の変形例を示しており、(a)はT型の接合部材を用いた場合の平面図、(b)はL型の接合部材を用いた場合の平面図である。
図14】(a)~(c)は、第一分割体及び第二分割体と既設の柱材との接合態様の参考例を示しており、(d)は、分割されない構成の補強フレーム材と既設の柱材との接合態様の参考例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の技術的範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。なお、以下の実施形態及び図示例における方向は、あくまでも説明の便宜上設定したものである。
【0033】
図1において符号1は、既設の軸組構造を示す。この軸組構造1は、主として、寺社建築に代表される伝統的な木造建物を構成するものである。ただし、これに限られるものではなく、例えば、中層・高層の木造建物や、延べ面積の広い木造建物のような、比較的規模の大きな木造建物を構成する軸組構造であってもよいし、戸建て住宅のような比較的規模の小さな木造建物を構成する軸組構造であってもよい。
さらに、この軸組構造1は、主として、木造建物の改修(リフォーム)を想定しているが、これに限られるものではなく、新築の建物に適用してもよい。
【0034】
本実施形態における既設の軸組構造1は、互いに間隔を空けて隣り合う柱材2と、隣り合う柱材2の下端部同士を連結する足固と呼ばれる下側横架材3と、隣り合う柱材2の上端部同士を連結する頭貫と呼ばれる上側横架材4と、隣り合う柱材2と軸組構造1の上方に位置する加力桁と呼ばれる梁6との間に設けられる斗供と呼ばれる支持材5と、を備えている。
【0035】
柱材2は、例えば、上下方向の寸法が3336mmとされた210mm角の木材であり、束石2b上に立設されている。また、隣り合う柱材2の軸心間の間隔は1510mmとされている。なお、柱材2は、角柱に限られるものではなく、円柱でもよい。
下側横架材3は、例えば、上下方向の寸法が120mmとされ、正背方向の寸法が150mmとされた木材である。
頭貫と呼ばれる上側横架材4は、例えば150mm角の木材であり、図示は省略するが、柱材2を貫通して設けられる。
斗供と呼ばれる支持材5は、肘木や斗を含む複数の木材を組み立ててなり、例えば上下方向の寸法が360mmとされている。すなわち、柱材2の上端面と梁6の下面との間の間隔寸法も360mmとされている。
加力桁と呼ばれる梁6は、例えば、上下方向の寸法が150mmとされ、正背方向の寸法が250mmとされた木材(桁材又は梁材)である。
既設の軸組構造1は、図示はしないが、隣り合う柱材2を露出させた真壁を構成する。
【0036】
このような既設の軸組構造1は、主として、例えば寺社建築に代表される伝統的な木造建物に使用されるものであり、このような木造建物は、往々にして屋根が重く、大きな地震が起きると、屋根が本堂を押しつぶしてしまう層崩壊による倒壊が生じる可能性が高くなる。そのため、既設の軸組構造1には、耐震のための改修が必要とされている。
【0037】
図2は、既設の軸組構造1が改修された状態を示す立面図であり、図3は、既設の軸組構造1が改修された状態を示す斜視図である。
すなわち、図2図3に示すように、既設の軸組構造1には、隣り合う柱材2どうしを連結する複数の補強フレーム材7と、複数の補強フレーム材7同士の間に設けられる補強材9と、梁6から上側横架材4を介して最も上方に位置する補強フレーム材7にかけて設けられる剪断補強構造部10と、パネル材11と、が組み込まれている。
なお、図2図3に示す支持材5は、上下方向の寸法が360mmとされ、梁6を支持し得るものとして簡易的に表した状態となっている。
【0038】
補強フレーム材7は、上下方向よりも水平方向(横方向・左右方向)に長尺に設定された構造用集成材であり、縦断面視において縦長の矩形状に形成されている。
なお、本実施形態においては、補強フレーム材7として構造用集成材が用いられているが、通常の角材(製材)でもよいし、例えばLVL(Laminated Veneer Lumber)やCLT(Cross Laminated Timber)による柱材でもよい。すなわち、補強フレーム材7は、木製の横架材である。また、断面形状も、縦長矩形状でなくてもよい。
また、補強フレーム材7は、軸組構造1に対して複数備えられており、これら複数の補強フレーム材7は、隣り合う柱材2の長さ方向に間隔を空けて配置されている。すなわち、本実施形態における軸組構造1は、隣り合う柱材2と、複数の補強フレーム材7と、によって略井桁状(又は梯子状)に形成された本体フレーム1aを備えていることになる。
これら補強フレーム材7は、例えば、上下方向の寸法が270mmとされ、正背方向の寸法が90mmとされている。
【0039】
また、補強フレーム材7は、図2図4に示すように、左右に分割されており、左側の第一分割体70と、右側の第二分割体71と、を有する。
第一分割体70と第二分割体71は、隣り合う柱材2間の中央付近で互いに接合されている。より詳細に説明すると、第一分割体70の中央側端部70aと、第二分割体71の中央側端部71aは、平面視において正背方向に対称的にL字状に切り欠かれており、いわゆる相じゃくり継ぎの要領で互いに接し合い、互いに接合された状態では、一本の補強フレーム材7として機能する。これら第一分割体70と第二分割体71との接合は、例えば、接着剤による接合で行われている。
【0040】
さらに、柱材2のうち、補強フレーム材7が配置される位置には、当該柱材2と補強フレーム材7の端部とを接合する複数の接合用棒材8が差し込まれる複数の接合用差込穴2aが形成されている。これら柱材2側の複数の接合用差込穴2aは、柱材2を左右方向に貫通しないように形成されている。
そして、補強フレーム材7の両端部(第一分割体70及び第二分割体71の柱材2側端部)には、当該補強フレーム材7の両端部と隣り合う柱材2とを接合するための複数の接合用棒材8が差し込まれる複数の接合用差込穴7aが形成されている。これら補強フレーム材7側の複数の接合用差込穴7aは、補強フレーム材7を左右方向に貫通しないように形成されている。
補強フレーム材7に形成された複数の接合用差込穴7aの位置と、柱材2に形成された複数の接合用差込穴2aの位置は整合している。そのため、複数の接合用棒材8を、複数の双方の接合用差込穴2a,7aに亘って差し込むことができる。双方の接合用差込穴2a,7aの穴径は同一であり、接合用棒材8の直径よりも大きく設定されている。そのため、接合用棒材8と双方の接合用差込穴2a,7aの内側面との間には空隙が形成されることになる。
【0041】
複数の接合用棒材8は、柱材2と補強フレーム材7とを接合するために、柱材2と補強フレーム材7との接合部(すなわち、隣り合う柱材2における補強フレーム材7側面と、補強フレーム材7の両端部と、が接している部分とその付近)に埋め込まれるものである。
接合用棒材8としては、異形棒鋼や全ねじボルト等のように、表面に凹凸のある長尺な棒材が好適に用いられる。
また、複数の接合用棒材8による柱材2と補強フレーム材7との接合には、グルードインロッド(GIR:Glued in Rod)の方法が採用されている。より詳細に説明すると、接合用棒材8と柱材2側の接合用差込穴2aとの空隙と、接合用棒材8と補強フレーム材7側の接合用差込穴7aとの空隙と、に接着剤を充填し、その接着剤の硬化により、応力を接着剤の付着力と接合用棒材8を介して伝達し、接合耐力を発生させる方法である。
すなわち、接合用棒材8と、柱材2側の接合用差込穴2a及び補強フレーム材7側の接合用差込穴7aとの間には空隙があり、接着剤が充填されていない状態では、補強フレーム材7は柱材2に対して接合されない。しかも、接着剤が充填されていない状態では、補強フレーム材7(第一分割体70、第二分割体71)を、空隙の分だけ、上下方向や正背方向に傾けることができる。
【0042】
さらに、複数の接合用棒材8は、柱材2の長さ方向(上下方向)に並んで設けられている。より詳細に説明すると、複数の接合用棒材8は、補強フレーム材7の両端部において、補強フレーム材7の上半部側と下半部側にそれぞれ設けられている。
本実施形態においては、補強フレーム材7の両端部のそれぞれにおける上半部に、4本ずつの接合用棒材8が設けられ、両端部のそれぞれにおける下半部に、4本ずつの接合用棒材8が設けられている。さらに、上半部における4本ずつの接合用棒材8は、上側2本、下側2本になるように配置され、下半部における4本ずつの接合用棒材8も、上側2本、下側2本になるように配置されている。
なお、複数の接合用棒材8が用いられる本数や配置は、適宜変更可能である。つまり、複数の接合用棒材8は、少なくとも上下方向に並んで設けられ、かつ、補強フレーム材7の上半部側と下半部側にそれぞれ設けられるものであり、この範囲で適宜変更可能となっている。そのため、補強フレーム材7の両端部のそれぞれにおいて、上半部に1本、下半部に1本という本数及び配置が最低限必要となる。
また、柱材2側の複数の接合用差込穴2aと、補強フレーム材7側の複数の接合用差込穴7aは、これら複数の接合用棒材8と同じ数だけ形成されている。
【0043】
軸組構造1が強い外力(水平力)を受けた場合、隣り合う柱材2は、同一の方向に傾くように動こうとし、それに合わせて、補強フレーム材7は上方や下方に回転しようとする。このような柱材2及び補強フレーム材7の動きに対し、複数の接合用棒材8が、柱材2の長さ方向(上下方向)に並んで設けられていると、補強フレーム材7が上方に回転しようとする動きと、下方に回転しようとする動きを抑制できることとなる。つまり、隣り合う柱材2と補強フレーム材7との接合部には、外力に抵抗するモーメント抵抗接合が適用されていることになり、隣り合う柱材2と補強フレーム材7からなる本体フレーム1aは、靭性が高い状態となる。
ここで、靭性とは、軸組構造1に対して外力による変形が生じた後も構造体としての機能が著しく低下しない粘り強さを発揮するための性質を指し、このような靭性は、隣り合う柱材2と補強フレーム材7との接合部に、複数の接合用棒材8によるモーメント抵抗接合が適用されることにより確保される。
【0044】
補強材9は、軸組構造1に対して複数備えられており、これら複数の補強材9は、柱状に形成された構造用集成材(製材やLVL、CLT等でもよい。)であり、上下に隣り合う補強フレーム材7間に配置されるとともに、柱材2の内側面(補強フレーム材7側面)に添って配置されている。
補強材9は、例えば90mm角の木材であり、正背方向の寸法が、補強フレーム材7と等しく、これら補強フレーム材7及び補強材9の正面及び背面はそれぞれ面一となっている。
また、複数の補強材9は、柱材2及び補強フレーム材7に対して接着接合されているが、例えばビス留めなど、その他の接合方法を採用するか適宜組み合わせて接合されるものとしてもよい。
このような補強材9は、隣り合う柱材2と補強フレーム材7との接合部の剪断力を負担するものであり、補強フレーム材7が上方に移動しようとする動きと、下方に移動しようとする動きを抑制できる。
【0045】
パネル材11は、合板(構造用合板)やパーティクルボード、OSB(Oriented Strand Board)等からなる矩形板材(面材)である。このようなパネル材11は、幅寸法(左右方向の寸法)が、隣り合う柱材2間の間隔寸法と略等しく設定され、複数の補強フレーム材7及び複数の補強材9の表裏面(正面側及び背面側)に接着されている。このようなパネル材11が設けられることで、軸組構造1に剛性を付与できる。
なお、パネル材11は、図3に示すような一枚の大判なものでもよいし、複数に分割されたパネル材11を上下方向に並べて隣り合う柱材2間に設けるようにしてもよい。さらに、パネル材11は、複数の補強フレーム材7及び複数の補強材9の表裏面に設けられるものとされているが、一方の面に設けられるものでもよい。
また、パネル材11は、下側横架材3と上側横架材4に接し、接着によって接合されてもよい。
パネル材11は、補強フレーム材7や補強材9に対して接着により接合されているが、これに限られるものではなく、釘などの固定具によって固定されて接合されてもよい。
また、複数に分割されたパネル材11を上下方向に並べて設ける場合は、接着で接合されたパネル材11と、固定具によって接合されたパネル材11とが混在してもよい。さらに、例えば開口部が形成される箇所などのように、場合によっては、パネル材11が部分的に設けられなくてもよい。
さらに、パネル材11は、幅寸法(左右方向の寸法)が、隣り合う柱材2間の間隔寸法よりも長く設定され、隣り合う柱材2のうち同一鉛直面上に配置された側面(正面又は背面)間に亘って設けられてもよい。また、パネル材11の厚みは、特に限定されるものではなく、例えば5mm厚や9mm厚など、適宜変更可能とされている。
【0046】
軸組構造1が強い外力(水平力)を受け、隣り合う柱材2が同一の方向に傾くように動くと、軸組構造1には水平剪断力が付与されることになる。このような水平剪断力に対する補強として、上記の剪断補強構造部10が設けられている。
剪断補強構造部10は、図2図3に示すように、上側横架材4と梁6と最も上方に位置する補強フレーム材7とに跨って設けられ、上記のような水平剪断力に対して軸組構造1を補強している。
このような剪断補強構造部10は、パネル体100と、厚み調整材101と、連結プレート102と、を有する。
【0047】
パネル体100は、縦横の框材からなる矩形状の枠体100aと、枠体100a内部の中央に設けられた補強縦桟材100bと、枠体100aにおける縦框材と補強縦桟材100bにおける上下端部との間に設けられた複数の枠補強材100cと、枠体100aと補強縦桟材100bと複数の枠補強材100cとに囲まれた位置に設けられた小パネル100dと、パネル体100の正面及び背面に設けられた面材100eと、を備える。
パネル体100の幅寸法(左右方向の寸法)は、斗供である支持材5の側方への張り出し寸法を考慮したものとなっている(図1参照)。また、パネル体100の厚さ寸法(正背方向の寸法)は、上側横架材4における正背方向の寸法と等しい。
このようなパネル体100は、木材としては格段に高い剛性となっており、外力を受けたとしても極めて変形しにくい。
【0048】
枠体100aは、下側の横框材が上側横架材4に固定され、上側の横框材が梁6に固定されている。
枠体100a及び補強縦桟材100bは、予め組み立てられた状態であることが望ましいが、これに限られるものではない。
複数の枠補強材100cは、枠体100a及び補強縦桟材100bにかかる水平剪断力に対する補強として設けられている。
小パネル100dは、縦横の框材からなる矩形状の枠体と、当該枠体の正面及び背面に貼り付けられた面材と、からなる。
面材100eは、例えば構造用合板であり、枠体100aと、補強縦桟材100bと、枠補強材100cと、小パネル100dの、それぞれの正面及び背面に対し、ビス等の固定具によって固定されている。なお、面材100eの固定は、固定具によるものに限られず、接着剤によるものでもよいし、接着剤を併用するものでもよい。
【0049】
厚み調整材101は、最も上方に位置する補強フレーム材7の正面及び背面に固定される木製の板材である。補強フレーム材7における正背方向の寸法は、上側横架材4における正背方向の寸法よりも短いため、厚み調整材101によって厚みを調整している。
補強フレーム材7の正面及び背面に固定された厚み調整材101の表面と、上側横架材4の表面(正面及び背面)は面一となる。
【0050】
連結プレート102は、4枚一組として、剪断補強構造部10の正面側及び背面側における幅方向両端部に、パネル体100と上側横架材4と最も上方に位置する補強フレーム材7とに跨って設けられている。
4枚一組の連結プレート102は、パネル体100と上側横架材4と最も上方に位置する補強フレーム材7とに対し、ビス等の固定具によって固定されている。すなわち、最も上方に位置する補強フレーム材7から梁6までを強固に連結した状態となっている。
また、連結プレート102は、このように4枚一組で設けられることで、水平剪断力を受けて、剪断補強構造部10を含む軸組構造1の上端部が複雑に動作しようとしても、その動作を確実に抑制することができる。
【0051】
なお、図示はしないが、剪断補強構造部10は、上記のパネル材11とは異なるパネル材によって被覆されてもよい。
すなわち、上記のパネル材11は、隣り合う既設の柱材2間に配置されるため、上端面が、厚み調整材101及び連結プレート102の下端面に接する状態に設けられる。その場合、パネル材11によって剪断補強構造部10を被覆することができないため、別途パネル材を用いて剪断補強構造部10(及び最も上方に位置する補強フレーム材7の両端部における上半部)を被覆する。
【0052】
なお、補強フレーム材7や補強材9を含む軸組構造1における各寸法設定は、補強を必要としている木造建物の大きさに応じて縮尺を適宜変更してもよい。その際は、構造計算が適宜行われるものとする。
【0053】
次に、以上のように構成された軸組構造1の施工方法(既設の軸組構造1を改修する方法)について説明する。
【0054】
なお、剪断補強構造部10におけるパネル体100の枠体100a及び補強縦桟材100bは予め組み立てられているものとする。また、枠体100aを、上側横架材4及び梁6に対してビス留めしない場合は、パネル体100そのものを予め組み立ててもよいものとする。
【0055】
改修前の既設の軸組構造1は、図1に示す状態にあり、まずは、このような軸組構造1のうち隣り合う柱材2に、ドリル等の工具によって、複数の接合用棒材8と同数の接合用差込穴2aを形成する。
【0056】
続いて、隣り合う柱材2における複数の接合用差込穴2aのそれぞれに接合用棒材8を差し込む。
そして、隣り合う柱材2のうち左側の柱材2(右側の柱材2でもよい)における複数の接合用差込穴2aに差し込まれた複数の接合用棒材8に、補強フレーム材7における第一分割体70を仮取り付けする。すなわち、第一分割体70に形成された複数の接合用差込穴7aに、左側の柱材2から突出する複数の接合用棒材8が差し込まれた状態となるように、第一分割体70を仮取り付けする。この状態では、第一分割体70は全く固定されておらず、しかも、上記のように接合用棒材8と、柱材2側の接合用差込穴2a及び補強フレーム材7側の接合用差込穴7aとの間に空隙がある分、第一分割体70は、上下方向や正背方向に傾けることができるようになっている。
【0057】
続いて、図5において矢印Y1で示すように、第一分割体70を背面側に傾けて中央からずらした状態とし、その後、第二分割体71を、矢印Y2で示すように、右側の柱材2における複数の接合用差込穴2aに差し込まれた複数の接合用棒材8に仮取り付けする。すなわち、第二分割体71に形成された複数の接合用差込穴7aに、右側の柱材2から突出する複数の接合用棒材8が差し込まれた状態となるように、第二分割体71を仮取り付けする。
そして、第一分割体70と第二分割体71のそれぞれの中央側端部における切欠部が合致するようにする。すなわち、相じゃくり継ぎの要領で、互いの切欠部を合致させる。
【0058】
なお、中央側端部をL字に切り欠いた第一分割体70の場合、中央側端部の、切り欠かれずに残った部分が背面側に位置するので、この場合、第一分割体70は、背面側に傾けるようにすると、第二分割体71を仮取り付けするスペースを確保できる。一方、第一分割体70を正面側に傾けてしまうと、第一分割体70の切り欠かれずに残った部分が、第二分割体71の中央側端部に干渉してしまうため、第二分割体71を仮取り付けしにくくなる。
つまり、相じゃくり継ぎの要領で、第一分割体70の中央側端部と第二分割体71の中央側端部とを合致させる場合は、先に仮取り付けした方の分割体(図5では、第一分割体70)を、切り欠いた方とは逆の方向に傾けることで、後から仮取り付けする方の分割体(図5では、第二分割体71)の仮取り付け用スペースを確保できるようになっている。
また、複数の接合用棒材8と、柱材2側及び補強フレーム材7側の接合用差込穴2a,7aとの間に形成される空隙が狭すぎると、先に仮取り付けした方の分割体を傾ける角度が小さくなるし、後から仮取り付けする方の分割体を仮取り付けする際の角度も狭まってしまう。そのため、複数の接合用棒材8と、柱材2側及び補強フレーム材7側の接合用差込穴2a,7aとの間に形成される空隙(接合用差込穴2a,7aの直径)は、先に仮取り付けした方の分割体を傾ける角度と、後から仮取り付けする方の分割体を仮取り付けする際の角度を考慮したものとなっている。
【0059】
第一分割体70及び第二分割体71の互いの切欠部を合致させた後は、第一分割体70と第二分割体71とを接合する(本実施形態においては接着剤による接合)。
複数の補強フレーム材7を、上記のような方法で隣り合う柱材2間に仮取り付けした後は、柱材2側の接合用差込穴2aと、補強フレーム材7側の接合用差込穴7aのそれぞれに接着剤を充填する。接着剤の充填は、柱材2又は/及び補強フレーム材7に注入孔(図示省略)を形成して行う。注入孔はなるべく目立たない位置に形成されることが望ましいため、本実施形態においては、パネル材11によって被覆される補強フレーム材7側に注入孔を形成するものとし、当該注入孔から、柱材2側の接合用差込穴2aと、補強フレーム材7側の接合用差込穴7aの双方に接着剤を充填する。
【0060】
続いて、複数の補強材9を、上下に間隔を空けて隣り合う複数の補強フレーム材7間にそれぞれ配置するとともに、柱材2の内側面(補強フレーム材7側面)に添わせて配置する。さらに、柱材2及び補強フレーム材7に対して接着接合する。
【0061】
続いて、剪断補強構造部10におけるパネル体100の枠体100a及び補強縦桟材100bを、上側横架材4及び梁6に対して固定する。さらに、複数の枠補強材100c及び小パネル100dを枠体100aに組み込み、面材100eを枠体100aの正面及び背面に貼り付けて固定する。
続いて、最も上方に位置する補強フレーム材7の正面及び背面に厚み調整材101を取り付けて固定し、その後、複数の連結プレート102を、パネル体100と上側横架材4と最も上方に位置する補強フレーム材7とに跨って設ける。これにより、最も上方に位置する補強フレーム材7から梁6までを強固に連結した状態にすることができる。
【0062】
その後、図3に示すように、パネル材11を、隣り合う柱材2間に配置し、複数の補強フレーム材7及び複数の補強材9の表裏面(正面側及び背面側)に接合する。以上のような方法により、既設の軸組構造1を、補強された軸組構造1に改修することができる。
【0063】
改修された軸組構造1を備えた木造建物が地震や台風等によって強い外力(水平力)を受けると、軸組構造1は剪断方向に変形しようとする。ここで、隣り合う柱材2と複数の補強フレーム材7との接合部には、モーメント抵抗接合が適用されているので、軸組構造1における本体フレーム1aの変形性能は、パネル材11自体の変形性能よりも高い。そのため、軸組構造1が一定値以上の外力を受けると、パネル材11に破壊が生じる場合がある。
従来公知の耐力壁の場合は、耐力壁に剛性を付与するパネル材に破壊が生じると、耐力壁としての機能を損なう。これに対して、本実施形態によれば、隣り合う柱材2と補強フレーム材7との接合部には、モーメント抵抗接合が適用されているため、パネル材11に破壊が生じた後にも、本体フレーム1aが靭性の高い状態を確保・維持し、外力に抵抗できることとなる。これにより、伝統的な木造建物を始めとする種々の木造建物でも十分な耐震性を維持することができる。
【0064】
また、補強フレーム材7は複数備えられ、これら複数の補強フレーム材7は、上下方向に間隔を空けて配置されているので、隣り合う既設の柱材2は、複数の補強フレーム材7が設けられた複数の箇所で連結された状態となる。そのため、隣り合う既設の柱材2と複数の補強フレーム材7からなる本体フレーム1aの変形性能を向上させることができる。
【0065】
また、柱材2と補強フレーム材7は、柱材2と補強フレーム材7との接合部に埋め込まれた複数の接合用棒材8によって接合されており、複数の接合用棒材8は、少なくとも上下方向に並んで設けられているので、補強フレーム材7を、柱材2に対して確実にモーメント抵抗接合することができ、隣り合う既設の柱材2と補強フレーム材7からなる本体フレーム1aの変形性能を格段に向上させることができる。
【0066】
また、柱材2側の接合用差込穴2a及び補強フレーム材7側の接合用差込穴7aは、穴径が、接合用棒材8の直径よりも大きく設定されることで接合用棒材8との間に空隙が形成され、当該空隙には接着剤が充填されているので、接合用棒材を保持した状態で接着剤が硬化すると、応力を接着剤の付着力と接合用棒材8を介して伝達し、接合耐力を発生させる。そのため、補強フレーム材7を、柱材2に対して確実にモーメント抵抗接合することができ、隣り合う既設の柱材2と補強フレーム材7からなる本体フレーム1aの変形性能を格段に向上させることができる。
【0067】
また、補強フレーム材7は、隣り合う既設の柱材2における一方の柱材2側と他方の柱材2側に分割されて一方の柱材2側の第一分割体70と、他方の柱材2側の第二分割体71と、を有し、第一分割体70と第二分割体71は、隣接する互いの端部70a,71a同士が接合されているので、第一分割体70を、一方の柱材2側に設けられた複数の接合用棒材8に仮取り付けした後に、第二分割体71を、他方の柱材2に設けられた複数の接合用棒材8に仮取り付けし、その上で、第一分割体70と第二分割体71とを一体化することができる。そのため、補強フレーム材7を、既設の軸組構造1に組み込みやすくなり、軸組構造1をリフォームしやすくなる。
【0068】
また、パネル材11は、隣り合う既設の柱材2間に位置し、補強フレーム材7に固定されているので、補強フレーム材7を下地材にして確実に取り付けることができる。さらに、パネル材11が、隣り合う既設の柱材2間に位置するので、既設の軸組構造1を真壁のように見せることができる。
【0069】
また、補強フレーム材7の上面又は/及び下面に接して設けられた補強材9を更に備えるので、隣り合う柱材2と補強フレーム材7との接合部の剪断力を負担することができ、補強フレーム材7が上方に移動しようとする動きと、下方に移動しようとする動きを抑制できる。そのため、隣り合う既設の柱材2と補強フレーム材7からなる本体フレーム1aの変形性能を格段に向上させることができる。
【0070】
また、少なくとも上側横架材4から梁6にかけて設けられ、少なくとも上側横架材4から梁6までを連結する剪断補強構造部10を更に備えるので、軸組構造1が強い外力(水平力)を受けて、当該軸組構造1に付与される水平剪断力に対して軸組構造1を補強することができる。そのため、隣り合う既設の柱材2と補強フレーム材7からなる本体フレーム1aの変形性能を格段に向上させることができる。
【0071】
また、接着剤を空隙に充填するよりも前の工程で、第一分割体70を、一方の柱材2における複数の接合用差込穴2aに差し込まれた複数の接合用棒材8に仮取り付けし、第一分割体70を、接合用棒材8を軸にして前方又は後方に傾けてずらしてから、第二分割体71を、他方の柱材2における複数の接合用差込穴2aに差し込まれた複数の接合用棒材8に仮取り付けし、第一分割体70と第二分割体71とを、隣接する互いの端部70a,71a同士を接合して一体化するので、柱材2に対して貫通孔を形成しなくても、複数の接合用棒材8を用いた柱材2と補強フレーム材7とのモーメント抵抗接合が可能となる。そのため、補強フレーム材7を、既設の軸組構造1に組み込みやすくなり、軸組構造1をリフォームしやすくなる。
【0072】
〔変形例〕
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。以下、変形例について説明する。以下に挙げる変形例は可能な限り組み合わせてもよい。また、以下の各変形例において、上述の実施形態と共通する要素については、共通の符号を付し、説明を省略又は簡略する。
【0073】
〔変形例1〕
本変形例における補強フレーム材7は、隣り合う既設の柱材2における一方の柱材2側と他方の柱材2側に分割されて一方の柱材2側の第一分割体70と、他方の柱材2側の第二分割体71と、を有し、図6に示すように、隣接する互いの端部70a,71a同士の間に、制振部材72が設けられている。そして、隣接する互いの端部70a,71a同士は、この制振部材72を介して接合されている。
【0074】
なお、隣接する互いの端部70a,71a同士の間に、制振部材72を設けるスペースを確保するために、正背方向の切欠深さは、制振部材72の厚さ寸法(正背方向の寸法)分を考慮したものとなっている。
すなわち、補強フレーム材7の厚さ寸法(正背方向の寸法)は、上記の実施形態にて説明したように90mmとされており、この寸法の範囲で、第一分割体70及び第二分割体71の中央側端部70a,71aが切り欠かれ、かつ制振部材72が設けられた状態となっている。
【0075】
本変形例における制振部材72としては、振動を減衰する粘弾性体が採用されている。当該粘弾性体は、例えば、主鎖にC-C結合を有する基材ゴムに対してシリカを添加し、そのシリカに対してシラン化合物を配合した高減衰ゴムによって形成されている。
【0076】
制振部材72は、第一分割体70における中央側端部70aに対して接着剤等によって固着されている。また、第二分割体71における中央側端部71aに対しても接着剤等によって固着されている。
なお、図示はしないが、第一分割体70及び第二分割体71における切欠部には、高減衰ゴムである制振部材72を接着しやすい材料(例えば、鉄やアルミニウム等の金属)を一体に設けてから、当該材料に制振部材72を固着してもよい。
【0077】
本変形例によれば、隣接する互いの端部70a,71a同士の間には、制振部材72が設けられ、当該制振部材72を介して隣接する互いの端部70a,71a同士が接合されているので、伝統的な木造建物を始めとする種々の木造建物でも十分な耐震性を維持することができる。
すなわち、軸組構造1が外力を受けた場合に、隣り合う既設の柱材2は、同一の方向に傾くように動こうとし、それに合わせて、補強フレーム材7は上方や下方に回転しようとするが、当該補強フレーム材7における第一分割体70及び第二分割体71の、隣接する互いの端部70a,71a同士の間に制振部材72が設けられているので、この制振部材72によって、補強フレーム材7の動作時に生じる振動を抑制することができる。それに伴い、補強フレーム材7によって連結された隣り合う既設の柱材2の動作も抑制することができるので、軸組構造1、ひいては当該軸組構造1を備えた木造建物の耐震性を向上させることができる。
【0078】
なお、例えば既設の柱材2に形成される接合用差込穴2a(接合用差込孔)の数を減らしたいなどの理由により、隣り合う既設の柱材2と補強フレーム材7との接合部に、外力に抵抗するモーメント抵抗接合を適用できない場合がある。そのような場合には、本変形例のように、隣接する互いの端部70a,71a同士の間に制振部材72を設けることで軸組構造1の補強を図るようにしてもよい。
【0079】
〔変形例2〕
上記の実施形態における補強フレーム材7は、相じゃくり継ぎの要領で合致させることが可能な第一分割体70及び第二分割体71を有しているが、本変形例における補強フレーム材7Aは、図7に示すように、第一分割体70Aと、第二分割体71Aと、第三分割体73Aと、を有している。
【0080】
第一分割体70Aの中央側端部70Aaと、第二分割体71Aの中央側端部71Aaは、平面視において左右方向に対称的にL字状に切り欠かれており、端面同士が突き付けられた状態に配置されている。
第三分割体73Aは、第一分割体70Aの中央側端部70Aaにおける切欠部と、第二分割体71Aの中央側端部71Aaにおける切欠部と、に亘って嵌め合わされる板状体である。
すなわち、補強フレーム材7Aは、第一分割体70Aの中央側端部70Aaにおける切欠部と、第二分割体71Aの中央側端部71Aaにおける切欠部と、に亘って第三分割体73Aが嵌め合わされて構成されている。
【0081】
第一分割体70Aと第三分割体73Aとの接合、第二分割体71と第三分割体73Aとの接合は、例えば、接着剤による接合、第一分割体70A及び第三分割体73A、第二分割体71及び第三分割体73Aを貫通するボルト及びナット等の固定具による接合、または、接着剤と固定具の併用による接合等が適宜選択される。ボルト及びナットによる接合を行う場合は、第一分割体70A、第二分割体71A,第三分割体73Aの強度が極端に低下しない範囲で表面を座堀りし、その部分に形成された凹部に、ボルトの頭部及びナットを納めるようにしてもよい。
【0082】
補強フレーム材7を、隣り合う既設の柱材2間に設ける際は、第一分割体70Aを背面側に傾けて中央からずらした状態とし、その後、第二分割体71Aを、右側の柱材2における複数の接合用差込穴2aに差し込まれた複数の接合用棒材8に仮取り付けする。すなわち、第二分割体71に形成された複数の接合用差込穴7aに、右側の柱材2から突出する複数の接合用棒材8が差し込まれた状態となるように、第二分割体71Aを仮取り付けする。
そして、第三分割体73Aを、第一分割体70Aの中央側端部70Aaにおける切欠部と、第二分割体71Aの中央側端部71Aaにおける切欠部と、に亘って嵌め合わせる。
【0083】
第三分割体73Aを、双方の切欠部に合致させた後は、第一分割体70Aと第二分割体71Aと第三分割体73Aを接合する(本実施形態においては接着剤による接合)。
複数の補強フレーム材7を、上記のような方法で隣り合う柱材2間に仮取り付けした後は、柱材2側の接合用差込穴2aと、補強フレーム材7側の接合用差込穴7aのそれぞれに接着剤を充填して硬化させる。
【0084】
本変形例によれば、補強フレーム材7Aは、第一分割体70Aの中央側端部70Aaにおける切欠部と、第二分割体71Aの中央側端部71Aaにおける切欠部と、に亘って第三分割体73Aが嵌め合わされて構成されているので、例えば相じゃくり継ぎの要領で、第一分割体70の中央側端部と第二分割体71の中央側端部とを合致させて補強フレーム材7Aを構成する場合に比して、第一分割体70A及び第二分割体71Aの長さを短くすることができる。
これにより、補強フレーム材7Aを、隣り合う既設の柱材2間に設ける際に、第一分割体70Aを背面側に傾ける角度を小さくすることができるので、軸組構造1の補強を行う際の作業スペースを、軸組構造1全体の厚さ方向(正背方向)において小さくすることができる。さらに、柱材2側の接合用差込穴2a及び補強フレーム材7A側の接合用差込穴7aにおける穴径を、必要以上に大きくする必要がなくなるので、構造体としての柱材2における強度低下を極力抑えることができる。
【0085】
〔変形例3〕
上記の実施形態においては、柱材2側の複数の接合用差込穴2aが、柱材2を左右方向に貫通しないように形成されているが、本変形例においては、図示はしないが、柱材2に、当該柱材2を左右方向に貫通する複数の接合用差込孔が形成されている。当該複数の接合用差込孔には、複数の接合用棒材8を外側から差し込むことができるようになっている。そのため、補強フレーム材7を、第一分割体70と第二分割体71に分割する必要がなくなる。すなわち、上記の変形例における制振部材72を用いない場合は、補強フレーム材7を分割しないようにすることもできる。
【0086】
〔変形例4〕
上記の実施形態においては、補強材9は、柱状に形成された構造用集成材(製材やLVL、CLT等でもよい。)であるとしたが、これに限られるものではなく、他の補強材でもよい。
図8に示す補強材は、建築用木質パネル20である。建築用木質パネル20は、縦横の框材によって形成された枠体21と、この枠体21の少なくとも一側面(本変形例においては正面側及び背面側の双方)に設けられた面材22と、を有する中空パネル体である。枠体21の内部には、框材と平行する補強桟材23が組み込まれており、さらに、中空部には、グラスウールやロックウール等の断熱材が装填されてもよい。
本変形例における建築用木質パネル20によれば、面材22が枠体21に接着されて一体化しているため、パーツ全体(枠体21、面材22、補強桟材23)で剛性と強度を保持するようになっている。
図8に示す軸組構造1における表裏面のうち少なくとも一方には、更にパネル材11が設けられるものとする。
【0087】
本変形例によれば、補強フレーム材7の上面又は/及び下面に接して設けられた補強材として、建築用木質パネル20を更に備えるので、隣り合う柱材2と補強フレーム材7との接合部の剪断力を負担することができ、補強フレーム材7が上方に移動しようとする動きと、下方に移動しようとする動きを抑制できる。そのため、隣り合う既設の柱材2と補強フレーム材7からなる本体フレーム1aの変形性能を格段に向上させることができる。
また、建築用木質パネル20自体は、木質であるため、ある程度の粘り強さも有しているが、軸組構造1が強い外力を受けた場合には、破壊が生じる場合がある。しかしながら、隣り合う柱材2に対する複数の補強フレーム材7の接合部には、モーメント抵抗接合が適用されているため、補強フレーム材7の上面又は/及び下面に接して建築用木質パネル20が設けられることで、隣り合う柱材2と複数の補強フレーム材7からなる軸組構造1(本体フレーム1a)の靭性を向上させることができる。
【0088】
なお、本変形例では、他の補強材として建築用木質パネル20を挙げたが、他の補強材を採用してもよい。例えば筋交いやブレースを補強材として採用してもよいし、トラス状の枠体を補強材として採用してもよい。
【0089】
〔変形例5〕
上記の実施形態における剪断補強構造部10は、連結プレート102によって、上側横架材4及び最も上方に位置する補強フレーム材7に連結された状態になっているが、本変形例における剪断補強構造部10は、図9に示すように、貫通ボルト105及びナット106によって連結されている。
貫通ボルト105は、上端部が、枠体100aの下框材と、その上面に設けられた枠補強材100cを貫通し、当該枠補強材100cの上面でナット106が締め付けられている。下端部は、最も上方に位置する補強フレーム材7の下面から下方に突出しており、当該補強フレーム材7の下面でナット106が締め付けられている。
本変形例によれば、貫通ボルト105及びナット106によって、最も上方に位置する補強フレーム材7から梁6までを強固に連結することができる。
【0090】
〔変形例6〕
上記の実施形態における第一分割体70と第二分割体71は、中央側端部70aと中央側端部71aとが接着により接合されているが、本変形例においては、図10図11に示すように、第一分割体70と第二分割体71とを貫通するボルト74及びナット75によって接合されている。すなわち、第一分割体70における中央側端部70aと、第二分割体71における中央側端部71aには、正背方向に通じる貫通孔が形成され、当該貫通孔にボルト74が通されて、ナット75が締め付けられている。
なお、このようなボルト74及びナット75による接合と、上記の実施形態における接着剤による接合を併用してもよい。
【0091】
図10(a),(b)に示す例は、第一分割体70の中央側端部70aと第二分割体71の中央側端部71aとの接触面が、第一分割体70及び第二分割体71の正面・背面と平行に形成されている。
また、第一分割体70の中央側端部70aと第二分割体70の中央側端部71aには、第一分割体70及び第二分割体71の強度が極端に低下しない範囲で表面を座堀りして凹部70b,71bを形成し、当該凹部70b,71bに、ボルト74の頭部及びナット75を納めるようにする。
さらに、ボルト74は、図10(b)に示すように、上下に二本設けられているが、本数は特に限定されるものではない。
【0092】
図11に示す例は、第一分割体70の中央側端部70aと第二分割体70の中央側端部71aとの接触面が、第一分割体70及び第二分割体71の正面・背面に対して斜めの状態になっている。
また、第一分割体70の中央側端部70aと第二分割体71の中央側端部71aには凹部70b,71bが形成され、ボルト74の頭部及びナット75を納められている。
【0093】
本変形例によれば、第一分割体70と第二分割体71が、これら第一分割体70及び第二分割体71の中央側端部70a,71a同士を貫通するボルト74及びナット75によって接合されているので、現場での施工性を向上させることができる。
また、第一分割体70の中央側端部70aと第二分割体71の中央側端部71aには、ボルト74の頭部及びナット75を納める凹部70b,71bが形成されているので、ボルト74及びナット75に妨げられずにパネル材11を補強フレーム材7(70,71)に接着固定することができる。
さらに、図11に示す例の場合は、第一分割体70の中央側端部70aと第二分割体71の中央側端部71aが、平面視において先細りした状態に形成されることになるので、第一分割体70の中央側端部70aと第二分割体71の中央側端部71aを合致させやすい。これにより、補強フレーム材7を、既設の軸組構造1に組み込みやすくなり、軸組構造1をリフォームしやすくなる。
【0094】
〔変形例7〕
本変形例における第一分割体700及び第二分割体710は、左右方向に沿う長さ寸法が短く設定されている。そのため、図12に示すように、第一分割体700における中央側端部700aの突出方向側端面と第二分割体710の切欠面との間に隙間Sが生じるとともに、第二分割体710における中央側端部710aの突出方向側端面と第一分割体700の切欠面との間に隙間Sが生じている。
そして、このように隙間Sが形成された状態のまま、第一分割体700における中央側端部700aと、第二分割体710における中央側端部710aとが、上記のような接着やボルト・ナット等の固定具による接合手段により接合されている。
【0095】
また、隙間Sは、図12(a)に示すように、充填材701,711によって埋められてもよい。
充填材701,711は、例えば角材からなる木製でもよいし、金属製の筒状体でもよく、材質は特に限定されるものではない。ただし、形状については、隙間Sに納められる寸法設定とされているものとする。
【0096】
又は、図12(b)に示すように、隙間Sを利用してアングル材702,712を取り付け、アングル材702,712によって、第一分割体700と第二分割体710を固定してもよい。
本変形例におけるアングル材702,712は、平面視においてZ型とされているが、平面視L型でもよい。また、アングル材702,712は、ビス等の固定具によって第一分割体700と第二分割体710のそれぞれに固定されている。
【0097】
本変形例によれば、第一分割体700及び第二分割体710の長さ寸法が、上記の隙間Sが形成される程度に短く設定されているので、隣り合う既設の柱材2間に、これら第一分割体700及び第二分割体710を配置して補強フレーム材7を設ける場合に、第一分割体700と第二分割体710とが互いに干渉しにくくなる。これにより、第一分割体700の中央側端部700aと第二分割体710の中央側端部710aを合致させやすくなるので、補強フレーム材7を、既設の軸組構造1に組み込みやすくなり、軸組構造1をリフォームしやすくなる。
また、充填材701,711によって隙間Sを埋めることができるので、長さ寸法の長い上記の実施形態における第一分割体70及び第二分割体71と遜色ない性能を発揮することができる。さらに、充填材701,711を、パネル材11を貼り付ける際の下地とすることができる。これにより、隙間Sが形成されたことによる不具合が生じにくくなる。
また、隙間Sを利用してアングル材702,712が取り付けられ、これらアングル材702,712によって、第一分割体700と第二分割体710が固定されているので、長さ寸法の長い上記の実施形態における第一分割体70及び第二分割体71と遜色ない性能を発揮することができる。
【0098】
〔変形例8〕
上記の実施形態における第一分割体70及び第二分割体71は、双方の中央側端部70a,71aが、平面視において正背方向に対称的にL字状に切り欠かれており、相じゃくり継ぎの要領で互いに接合されているが、本変形例における第一分割体720及び第二分割体730は、図13に示すように、金属製の接合部材721,731・722,732によって接合されている。
また、接合部材721,731・722,732は、ビス等の固定具によって第一分割体720と第二分割体730のそれぞれに固定されている。
【0099】
本変形例における第一分割体720及び第二分割体730は、左右方向に沿う長さ寸法が短く設定されている。そして、第一分割体720における第二分割体730側端面と、第二分割体730における第一分割体720側端面は、平らな状態に形成されている。
【0100】
図13(a)に示す接合部材721,731は、平面視において略T型に形成されており、当該略T型の接合部材の721,731のうち、第一分割体720及び第二分割体730の長さ方向に沿って突出する部位の突出方向側端部同士が正背方向に重なり合うようになっている。
【0101】
また、図13(b)に示す接合部材722,732は、平面視においてL型に形成されており、当該略L型の接合部材の721,731のうち、第一分割体720及び第二分割体730の長さ方向に沿って突出する部位の突出方向側端部同士が正背方向に重なり合うようになっている。
【0102】
そして、正背方向に重なり合う突出方向側端部同士は、溶接によって接合されてもよいし、ボルト・ナット等の固定具による接合手段により接合されてもよい。
【0103】
本変形例によれば、金属製の接合部材721,731・722,732同士が接合されることで、第一分割体720と第二分割体730とを接合することができるので、これら第一分割体720と第二分割体730を強固に接合することができる。
【0104】
〔変形例9〕
上記の実施形態におけるパネル材11は、補強フレーム材7や補強材9に対して接合固定されているが、本変形例におけるパネル材11は、補強フレーム材7や補強材9とは異なる他の受け材に対して固定されている。
他の受け材は、図示はしないが、複数の補強フレーム材7間の隙間に配置されている。そして、このような他の受け材は、複数の補強フレーム材7の下面又は上面、若しくは補強材9の内側面に固定される固定面と、パネル材11が接して固定される被固定面と、を有する。
【0105】
本変形例によれば、パネル材11が固定される他の受け材を用いるので、耐力性能を、補強フレーム材7に負担させないようにすることができる。これにより、例えばパネル材11に破壊が生じた場合に、その破壊に係るエネルギーが補強フレーム材7に影響を与えにくくなり、補強フレーム材7が負担する靭性性能にも影響を及ぼしにくくすることができる。
【0106】
〔変形例10〕
上記の実施形態におけるパネル材11は、補強フレーム材7や補強材9に対して接合固定されているが、本変形例におけるパネル材11は、隣り合う柱材2のうち同一鉛直面上に配置された正面及び背面の側面間に亘って設けられて接着されている。
パネル材11は、幅寸法(左右方向の寸法)が、隣り合う柱材2間の間隔寸法よりも長く設定されている。また、パネル材11は、一枚の大判なものでもよいし、複数に分割されたパネル材11を上下方向に並べて隣り合う柱材2間に設けるようにしてもよい。
このようなパネル材11は、隣り合う柱材2に対し、接着によって接合されているが、これに限られるものではなく、釘などの固定具によって固定されて接合されてもよい。また、複数に分割されたパネル材11を上下方向に並べて設ける場合は、接着で接合されたパネル材11と、固定具によって接合されたパネル材11とが混在してもよい。さらに、例えば開口部が形成される箇所などのように、場合によっては、パネル材11が部分的に設けられなくてもよい。
【0107】
本変形例によれば、パネル材11が、隣り合う柱材2のうち同一鉛直面上に配置された正面及び背面の側面間に亘って設けられて接着されているので、パネル材11の幅寸法を、隣り合う柱材2間の間隔寸法と同等にする必要がない。そのため、パネル材11を、寸法調整などの作業を行わずに、軸組構造1に対して容易に採用することができる。
パネル材11は、木質であるため、ある程度の粘り強さも有している。そのため、軸組構造1が強い外力を受けてパネル材11に破壊が生じる直前までは、複数の接合用棒材8と共に軸組構造1を補強する効果を発揮する。
【0108】
〔変形例11〕
上記の実施形態における柱材2と補強フレーム材7は、柱材2と補強フレーム材7tの接合部に埋め込まれた複数の接合用棒材8によって接合されているが、本変形例における柱材2と補強フレーム材7は、一本の接合用棒材8によって接合されている。
すなわち、上記の実施形態における補強フレーム材7は、図2に示すように、長さ方向一端部及び他端部が共に、複数の接合用棒材8によって左右の柱材2のそれぞれに接合されている。これに対し、本変形例における補強フレーム材7は、図示はしないが、長さ方向一端部及び他端部が共に、一本の接合用棒材8によって左右の柱材2のそれぞれに接合されている。
【0109】
本変形例によれば、補強フレーム材7の長さ方向一端部及び他端部が共に、一本の接合用棒材8によって左右の柱材2のそれぞれに接合されている場合であっても、接合用棒材8は、木材である補強フレーム材7又は柱材2にめり込み、その木材へのめり込みを反力として靭性を発揮することができる。すなわち、補強フレーム材7と柱材2との接合を、一本の接合用棒材8で行う場合であっても、その接合部にモーメント抵抗接合が適用されることになるので、伝統的な木造建物を始めとする種々の木造建物でも十分な耐震性を維持することができる。
【0110】
〔参考例〕
以下、参考例について説明する。以下の各変形例において、上記の実施形態と共通する要素については、共通の符号を付し、説明を省略又は簡略する。以下に挙げる変形例は、上記の実施形態や各変形例と可能な限り組み合わせてもよい。
【0111】
〔参考例1〕
寺社建築に代表される伝統的な木造建物における軸組構造の耐震改修を行う場合は、大がかりな解体作業と復元作業が不可欠であった。そのため、これまでに行われてきた改修の事例は高コストになりがちで、一般寺院では改修を行うことが難しいという問題があった。
そこで、近年では、特許文献1に記載のような耐力壁の構造を、上記のような伝統的な木造建物を始めとする種々の木造建物の軸組構造に適用することが求められている。しかしながら、耐力壁の構造を、木造建物の軸組構造に適用するにも、例えば適用される構造が複雑であったり、部分的な解体工事が必要であったりすると、施工に係る手間やコストが増えるため好ましくない。
【0112】
このような事情に鑑み、本参考例における軸組補強構造は、図14(a)~(c)に示すように、互いに間隔を空けて隣り合う既設の柱材2を少なくとも含んで構成された既設の軸組構造1を補強するものであり、隣り合う既設の柱材2同士を連結する補強フレーム材7と、既設の軸組構造1における表裏面のうち少なくとも一方に設けられるパネル材11と、を備えている。
そして、補強フレーム材7は、隣り合う既設の柱材2における一方の柱材2側と他方の柱材2側に分割されて一方の柱材2側の第一分割体70と、他方の柱材2側の第二分割体71と、を有し、第一分割体70と第二分割体71は、隣接する互いの端部70a,71a同士が接合されている。
【0113】
本参考例において、第一分割体70の中央側端部70aと、第二分割体71の中央側端部71aとの接合は、例えば、接着剤による接合、第一分割体70と第二分割体71とを貫通するボルト及びナット等の固定具による接合、または、接着剤と固定具の併用による接合等が適宜選択される。
【0114】
第一分割体70及び第二分割体71と、既設の柱材2との接合は、図14(a)に示す例においては、接着剤25が用いられている。
すなわち、第一分割体70を一方の柱材2に接着固定した後に、第二分割体71を他方の柱材2に接着固定するとともに、第一分割体70の中央側端部70aと第二分割体71の中央側端部71aとを上記の方法で接合する。その後、パネル材11を貼り付けるようにしている。
【0115】
また、図14(b)に示す例においては、第一分割体70及び第二分割体71と、既設の柱材2との接合にビス26が用いられている。本参考例においては、第一分割体70及び第二分割体71の柱材2側端部に対してビス26は複数用いられ、表裏面から斜め打ちされている。その後、第一分割体70の中央側端部70aと第二分割体71の中央側端部71aとを上記の方法で接合し、さらに、パネル材11を貼り付ける。
【0116】
さらに、図14(c)に示す例においては、第一分割体70及び第二分割体71と、既設の柱材2との接合に接合金具27が用いられている。
接合金具27は、平面視においてコ字型(T字型やL字形でもよい。)に形成されており、既設の柱材2に対してビス27aによって固定されている。一方、第一分割体70及び第二分割体71の柱材2側端部には、接合金具27を差し込むことが可能な形状の差込穴28が形成されている。
なお、第一分割体70及び第二分割体71と、接合金具27には、ダボ材27bを通すための貫通孔が形成されており、これら第一分割体70及び第二分割体71と接合金具27は、ダボ材27bによって接合されている。
【0117】
そして、第一分割体70及び第二分割体71の取り付けは、図5に示すような相じゃくり継ぎの要領で行われる。すなわち、第一分割体70と第二分割体71のうち、いずれか一方(本参考例では第一分割体70とする)を先に、柱材2に固定された接合金具27に対して差込穴28を合致させて仮取り付けする。続いて、第一分割体70を、切り欠いた方とは逆の方向に傾けることで、後から仮取り付けする方の分割体(本参考例では第二分割体71)の仮取り付け用スペースを確保する。続いて、第二分割体71の差込穴28を、柱材2に固定された接合金具27に合致させて仮取り付ける。その後、第一分割体70の中央側端部70aと第二分割体71の中央側端部71aとを上記の方法で接合し、さらに、パネル材11を貼り付ける。
【0118】
本参考例において、第一分割体70と第二分割体71における隣接する互いの端部70a,71a同士の間には、図6に示すように、制振部材72が設けられてもよい。すなわち、第一分割体70と第二分割体71における隣接する互いの端部70a,71a同士は、制振部材72を介して接合されてもよい。
これにより、制振部材72によって、補強フレーム材7の動作時に生じる振動を抑制することができる。それに伴い、補強フレーム材7によって連結された隣り合う既設の柱材2の動作も抑制することができるので、軸組構造1、ひいては当該軸組構造1を備えた木造建物の耐震性、靭性を向上させることができる。
【0119】
なお、図14(d)は、図14(c)に示した例の変形例であり、補強フレーム材7Bが分割されていない。このような補強フレーム材7Bを用いるとともに接合金具27を利用する場合は、補強フレーム材7Bの長さ方向両端部に、上下方向に貫通する差込溝29を形成する。このようにすれば、補強フレーム材7Bを、上方又は下方からのスライドによって接合金具27に合致させることができる。そして、第一分割体70及び第二分割体71と接合金具27は、ダボ材27bによって接合されている。
【0120】
本参考例によれば、上記の実施形態における接合用棒材8を使用しないため、補強フレーム材7,7Bを、既設の軸組構造1に組み込みやすくなり、軸組構造1をリフォームしやすくなる。したがって、本参考例における軸組補強構造を、種々の木造建物の軸組構造に適用する際の施工に係る手間やコストを軽減することができる。
【0121】
〔参考例2〕
図3においては、補強材9が、補強フレーム材7の両端部における上面又は/及び下面に接して設けられている。そのため、既設の柱材2間には、これら補強材9と補強フレーム材7とによって枠体が形成された状態となっている。
本参考例においては、このような枠体に、必要に応じて補強桟材(図8の補強桟材23参照)を設け、その上でパネル材11を表裏面に設けることで、既設の柱材2間に耐力壁構造を構築している。なお、中空部には、グラスウールやロックウール等の断熱材が装填されてもよい。
この場合、補強フレーム材7は、上記の実施形態及び各変形例で示すように、隣り合う既設の柱材2との接合部にモーメント抵抗接合が適用されていてもよいし、上記の参考例1で示すように、モーメント抵抗接合が適用されていなくてもよい。また、補強フレーム材7も、第一分割体70と第二分割体71に分割されていなくてもよい。
本参考例によれば、既設の柱材2間に耐力壁構造を適用できるので、軸組構造1の耐力を格段に向上させることができる。
【符号の説明】
【0122】
1 軸組構造
1a 本体フレーム
2 柱材
2a 接合用差込穴
3 下側横架材
4 上側横架材
5 支持材
6 梁
7 補強フレーム材
7a 接合用差込穴
70 第一分割体
70a 中央側端部
71 第二分割体
71a 中央側端部
72 制振部材
8 接合用棒材
9 補強材
10 剪断補強構造部
11 パネル材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14