(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】サスペンションアーム
(51)【国際特許分類】
B60G 7/00 20060101AFI20240930BHJP
【FI】
B60G7/00
(21)【出願番号】P 2020198564
(22)【出願日】2020-11-30
【審査請求日】2023-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000112082
【氏名又は名称】ヒルタ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】弁理士法人森特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉原 義人
(72)【発明者】
【氏名】操田 光順
(72)【発明者】
【氏名】吉川 修司
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕貴
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-211329(JP,A)
【文献】特開2000-255235(JP,A)
【文献】特許第4396854(JP,B2)
【文献】実開平01-028371(JP,U)
【文献】特開2019-034666(JP,A)
【文献】国際公開第2009/084004(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部が車輪の支持部材に接続され、他端部が車体に接続されるサスペンションアームであり、
前記サスペンションアームは、ショックアブソーバーの取付部を有する板状のアッパーメンバと、板状のロアメンバと有する中空形状であり、
前記サスペンションアームは、前記アッパーメンバと前記ロアメンバとの間に配される補強部材を備えており、
前記補強部材は、前記サスペンションアームの延在方向に沿って延びる板状の第1受部と、前記第1受部の端部から車体の上下方向に延在する一対かつ板状の壁部と、前記壁部の端部から前記サスペンションアームの延在方向に沿って延びる一対かつ板状の第2受部とを有する形状であり、
前記第2受部は、前記ロアメンバの内面に接しており、
前記壁部は、前記ショックアブソーバーの取付部に重なるように前記サスペンションアームの延在方向に延びる形状であり、
前記第1受部は、前記サスペンションアームの揺動を規制する規制部が前記アッパーメンバに接する部分の内面に接するように配置され
、
前記壁部は、前記第2受部と反対側の端部のうち前記第1受部を有さない箇所の前記第2受部の底面からの高さが前記第1受部が設けられた箇所の高さに比して小さくなるように切り欠かれた形状であるサスペンションアーム。
【請求項2】
前記アッパーメンバの上面には、前記ロアメンバの底面からの突出量に高低差が形成されるように傾斜部が形成されている請求項1に記載のサスペンションアーム。
【請求項3】
前記第1受部が前記傾斜部により形成された上部に接し、前記壁部の前記サスペンションアーム延在方向の先端部分が前記傾斜部により形成された下部に接する形状である請求項2に記載のサスペンションアーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サスペンションアームに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の左右の車輪を独立して懸架するサスペンション装置が広く使用されている。このようなサスペンション装置では、車輪を上下方向に揺動可能に支えるサスペンションアームと、車輪から入力される荷重を吸収するバネ及びショックアブソーバーとを備える。自動車が凹凸のある路面を走行する際には、サスペンション装置によって衝撃が緩和されるため、乗員は快適に乗車することができる。
【0003】
上記のようなサスペンション装置では、車輪が車体の上方に大きく揺動すると、サスペンション装置が破損する原因となる。そのような過剰な揺動を防ぐためにバンプストッパと呼ばれる部材がサスペンションアーム又は車体のフレームに設けられる。
【0004】
例えば、特許文献1には、アッパ部材とロア部材とから構成されるロアアームにおいて、アッパ部材の所定の位置にバンプストッパを設けたロアアームが記載されている。ロアアームは、中空形状であり、バンプストッパの位置に第1リーンフォースと第2リーンフォースとを内蔵する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のロアアームでは、バンプストッパと呼ばれる部材から入力される荷重に対して、第1リーンフォース及び第2リーンフォースを設けることによってロアアームを補強している。バンプストッパは、車輪から入力される荷重によってロアアームが上下方向に揺動した際に、シャシフレームに対して当接することによって、衝撃を抑制しつつ、ロアアームの揺動を規制するとされている。特許文献1のロアアームでは、補強部材が二つの部材から構成されているため、ロアアームに対して補強部材を組付ける作業が煩雑であった。
【0007】
また、サスペンションアームに対して、ショックアブソーバーの末端を揺動可能な状態で固定する構成が知られている。ショックアブソーバーは、コイルスプリングが伸縮する動作を規制するものである。ショックアブソーバーから、サスペンションアームに対して、荷重が入力されるため、サスペンションアームに対してショックアブソーバーを固定する位置には、補強部材が設けられる。
【0008】
上述のバンプストッパに対する補強部材と、上述のショックアブソーバーに対する補強部材との両方を、サスペンションアームに実装すると、サスペンションアームの重量が大きくなり、また、サスペンションアームの構成が複雑になり、製造工程が煩雑になるという問題がある。
【0009】
本発明は、バンプストッパなどのサスペンションアームの揺動を規制する部材から入力される荷重に対する補強部材をより少ない部品で構成し、当該補強部材がサスペンションアームの揺動を規制する部材から入力される荷重とショックアブソーバーから入力される荷重との両方の補強として機能するサスペンションアームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一端部が車輪の支持部材に接続され、他端部が車体に接続されるサスペンションアームであり、前記サスペンションアームは、ショックアブソーバーの取付部を有する板状のアッパーメンバと、板状のロアメンバと有する中空形状であり、前記サスペンションアームは、前記アッパーメンバと前記ロアメンバとの間に配される補強部材を備えており、前記補強部材は、前記サスペンションアームの延在方向に沿って延びる板状の第1受部と、前記第1受部の端部から車体の上下方向に延在する一対かつ板状の壁部と、前記壁部の端部から前記サスペンションアームの延在方向に沿って延びる一対かつ板状の第2受部とを有する形状であり、前記第2受部は、前記ロアメンバの内面に接しており、前記壁部は、前記ショックアブソーバーの取付部に重なるように前記サスペンションアームの延在方向に延びる形状であり、前記第1受部は、前記サスペンションアームの揺動を規制する規制部が前記アッパーメンバに接する部分の内面に接するように配置されるサスペンションアームにより、上記の課題を解決する。
【0011】
上記のサスペンションアームでは、補強部材は、サスペンションアームの延在方向に沿って延びる第2受部を備える。第2受部は、ロアメンバの内面の内面に接する構成である。この構成では、補強部材の壁部は、第2受部を介して、ロアメンバの内面に接するため、上述の第1リーンフォースなどの別の補強部材を要しない。また、補強部材の壁部は、ショックアブソーバーの取付部に重なるように前記サスペンションアームの延在方向に延びる形状とされている。このため、前記補強部材は、バンプストッパから入力される荷重だけでなく、ショックアブソーバーから入力される荷重も支えて、補強することができる。この構成によれば、より少ない部品点数でバンプストッパから入力される荷重とショックアブソーバーから入力される荷重に対して、サスペンションアームを補強することができる。
【0012】
上記のサスペンションアームにおいて、前記アッパーメンバの上面には、前記ロアメンバの底面からの突出量に高低差が形成されるように傾斜部が形成された形状とすることが好ましい。アッパーメンバに、高低差が形成された形状とすることによって、アッパーメンバの面の剛性を向上させることができる。これにより、バンプストッパ又はショックアブソーバーからアッパーメンバに荷重が入力された際に、破損しにくくすることができる。
【0013】
上記のサスペンションアームにおいて、前記第1受部が前記傾斜部により形成された上部に接し、前記壁部の前記サスペンションアーム延在方向の先端部分が前記傾斜部により形成された下部に接する形状とすることが好ましい。この構成では、前記上部及び前記下部との両方において、補強部材がアッパーメンバに接しているため、バンプストッパ又はショックアブソーバーから入力された荷重を、補強部材に効率的に伝達して、補強部材で支えることができる。
【0014】
上記のサスペンションアームにおいて、前記壁部は、前記第2受部と反対側の端部のうち前記第1受部を有さない箇所の前記第2受部の底面からの高さが前記第1受部が設けられた箇所の高さに比して小さくなるように切り欠かれた形状とすることが好ましい。この構成によれば、補強部材の重量を小さくして、軽量化を図ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、バンプストッパなどのサスペンションアームの揺動を規制する部材から入力される荷重に対する補強部材をより少ない部品で構成し、当該補強部材がサスペンションアームの揺動を規制する部材から入力される荷重とショックアブソーバーから入力される荷重との両方の補強として機能するサスペンションアームを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明のサスペンションアームを備えるサスペンション装置の一実施形態を示す図であって、車体の後方の視点からサスペンション装置を示す図である。
【
図2】
図1のサスペンション装置を構成するロアアームを分解して示した斜視図である。
【
図4】
図2のロアアームに内蔵される補強部材を示す斜視図である。
【
図7】金属板から補強部材の原板を切り出すパターンを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。以下で説明するサスペンションアームは、本発明の実施形態の一例にすぎない。
【0018】
本実施形態においては、
図1に示したサスペンション装置を構成する一部品であるロアアームに補強部材を内蔵させた。
図1に示したサスペンション装置9は、ダブルウィッシュボーン式のサスペンション装置である。当該装置9は、アッパーアーム1と、ロアアーム2と、車輪の支持部材3と、ショックアブソーバー4と、ショックアブソーバー4の外周部分に装着されるコイルスプリング5と、サスペンションアームの過剰な揺動を規制する規制部6とを有する。
【0019】
ロアアーム2は、
図2に示したように、板状のアッパーメンバ21の側縁と板状のロアメンバ22の側縁とを重ね合わせて、重ね合わせた部分を溶接により固定して構成される。ロアアーム2は、中空な形状を有する。アッパーメンバ21の側縁、又はロアメンバ22の側縁は、金属板の端部を車体の上方又は下方に対して折り曲げた形状を有する。アッパーアーム1も、ロアアーム2と同様に、板状のアッパーメンバ11の側縁と板状のロアメンバ12の側縁とを重ね合わせた部分を溶接により固定して構成されている。
【0020】
図1に示したように、ロアアーム2の一端部には、車輪の支持部材3に対する取付部23を備える。ロアアーム2の他端部には、車体に対する取付部24を備える。アッパーアーム1も同様に、車輪の支持部材3に対する取付部13と、車体に対する取付部14を有する。
【0021】
ロアアーム2は、
図2及び
図3に示したように、平面視及び底面視において、略三角形状であり、車輪の支持部材3に対する取付部23と車体に対する取付部24との間に延在する第1アーム部25と、車輪の支持部材3に対する取付部23と、車体に対する取付部24との間に延在する第2アーム部26とを備える。ロアアーム2の中ほどには所定の面積を有する幅広部27が配される。幅広部27は、第1アーム部25の幅又は第2アーム部26の幅に比して、大きな幅を備える。幅広部27には、ショックアブソーバー4の取付部として、ショックアブソーバー4の端部を軸支するブラケット41が設けられる。上述の第1アーム部25及び第2アーム部26は、平面視及び底面視において、中空のアームが他端部に向かって突出する形状となっており、上述の幅広部27に比べてその幅が小さい形状とされており、中空状の幅広部27と連通する形状である。
【0022】
上述の車体に対する取付部24は、車体の前後方向にその軸方向が一致するように配置される中空の筒状部材から構成される。筒状部材の内部には、ゴムブッシュが内蔵される。車体側の軸をゴムブッシュに挿通することによって、ロアアーム2は、車体の上下方向に対して揺動可能な状態で車体に支持される。筒状部材は、第1アーム部25の端部、及び第2アーム部26の端部に溶接によって固定されている。
【0023】
ロアアーム2の一端部には、
図1に示したように、車輪の支持部材3に対する取付部材23が固定される。取付部材23は、ボールを受けるケースと、ケースに対して摺動可能な状態で収納されるボールと、ボールに連結されるロッドとを有するボールジョイントから構成される。ロアアーム2の一端部には、ボールジョイントを固定するための貫通孔が複数個設けられる。ボールジョイントは、ロアアームに対して、溶接によって固定してもよい。
【0024】
アッパーアーム1もロアアーム2と同様に構成される。アッパーアーム1の一端部には、車輪の支持部材3に対する取付部材13が固定される。取付部材13は、
図1に示したように、ボールを受けるケースと、ケースに対して摺動可能な状態で収納されるボールと、ボール連結されるロッドとを有するボールジョイントから構成される。アッパーアーム1の一端部には、ボールジョイントを固定するための貫通孔が複数個設けられる。ロアアームではボールジョイントのロッド部分が下方に突出する。アッパーアームでは、ボールジョイントのロッド部分が上方に突出する点で、相違する。
【0025】
図3及び
図6に示したように、ロアアーム2を構成するアッパーメンバ21には、傾斜部211が形成される。傾斜部211は、車体の後寄り設けられる上部212と車体の前寄りに設けられる下部213との境界となり、車幅方向に対して延在する形状である。上部212は、ロアアームを構成するロアメンバ22の底面を基準とする突出量が、下部213の突出量に比して大きくなる形状となっている。
【0026】
図3において二点鎖線の円で示したように、ロアアーム2を構成するアッパーメンバ21の車体の後寄りの部分における上部212は、ロアアーム2の過剰な揺動を規制する規制部6が当接する部分とされている。当該部分は、第2アーム部26の付け根の部分に設けられている。規制部6が当接する部分に隣接して傾斜部211が設けられているため、規制部6による荷重がアッパーメンバ21に対して入力された際に、アッパーメンバ21の面が変形したり、破損したりしにくいようになっている。
【0027】
図3に示したように、ロアアーム2を構成するアッパーメンバ21の幅広部27には、ショックアブソーバー4の下端部を固定するためのブラケット41が設けられている。ブラケット41は、車体の前後方向における中ほどに設けられており、上述の下部213に設けられる。ブラケット41は、車体の前寄りに配される板状の第1壁41aと、車体の後ろ寄りに配される板状の第2壁41bとから構成される。第1壁41a及び第2壁41bは、車幅方向に延在し、かつアッパーメンバに接続される部分を基端として車体の上方に延びる形状である。第1壁41a及び第2壁41bには、それぞれ、貫通孔が設けられている。貫通孔には、ショックアブソーバー4の下端部を軸支するための軸が挿通された状態で固定される。
【0028】
図1に示したように、アッパーアーム1では、ロアアーム2の幅広部に相当する部分が、ショックアブソーバー4とそれに外装されるコイルスプリング5とを通過させるための空間となっている点で相違する。前記空間は、アッパーアーム1の第1アーム部と第2アーム部との間に配置される。第1アーム部は、車体の前寄りに配置され、第2アーム部は、車体の後寄りに配置される。
【0029】
図1に示したように、車輪の支持部材3は、車幅方向の内側に延びるボールジョイントの取付部31と、上下の取付部31を連結する連結部32とを有している。連結部32の中ほどには、車輪を支持するための支持部が配される。車輪の支持部材としては、ナックルなどの部品が挙げられる。車輪の支持部としては、ハブなどの部品が挙げられる。
【0030】
図1に示したように、ロアアーム側のボールジョイントは車体の下方に向かってロッドが突出している。ボールジョイントの取付部31の上面部にロッドの先端部を接続する。アッパーアーム側のボールジョイントは、車体の上方に向かってロッドが突出している。ボールジョイントの取付部31の下面部にロッドを接続する。
【0031】
図5及び
図6に示したように、ロアメンバ22を構成するアッパーメンバ21とロアメンバ22との間には、補強部材7が配される。補強部材7は、サスペンションアーム(ロアアーム2)の延在方向に沿って延びる板状の第1受部71と、第1受部71の端部から車体の上下方向に延在する一対かつ板状の壁部72と、壁部72の端部からサスペンションアームの延在方向に沿って延びる一対かつ板状の第2受部73とを有する形状である。補強部材7は、
図4に示したように、断面がいわゆるハット形となっている。そして、前記壁部72のスペンションアーム(ロアアーム2)の延在方向の先端部分は、第2受部73と反対側の端部が、基端部分に第1受部71を残して、切りかかれた形状となっている。なお、サスペンションアームの延在方向という場合には、サスペンションアームを構成するアッパーメンバの板材又はロアメンバの板材が延在する方向のことをいう。したがって、サスペンションアームの延在方向は、第1アーム部25又は第2アーム部25が延在する方向だけではなく、第1アーム部25又は第2アーム部25が延在する方向に直交する方向も含む。
【0032】
第1受部又は第2受部は、接続される対象であるアッパーメンバ又はロアメンバの内面に沿う形状とすることが好ましい。本実施形態のロアアーム2では、第1受部71、及び第2受部73は、共に、平坦な面を有する板状にされている。第1受部71には、例えば、円形の貫通穴を設けてもよい。
【0033】
図4に示したように、補強部材7の先端部分では、上記の切り欠きによって、第2受部73の底面を基準とした壁部72の高さが、第1受部71が設けられた基端部における壁部72の高さに比して、小さい形状となっている。この切り欠きによって、補強部材7を構成する素材の量が減るため、サスペンション装置の軽量化と低コスト化が図られる。また、補強部材7に切り欠きを有する形状とすることによって、
図6に示したように、補強部材7に傾斜部74を形成して、傾斜部211と補強部材7とが干渉しないようにされている。
【0034】
上記の補強部材7を、原料となる金属板から製造する際には、
図7に示したようにして型取りを行う。補強部材7を曲げ加工やプレス成型によって、立体的な形状とする前の平面的な状態を、本明細書では、原板と呼ぶ。原板8は、左右方向に延在する基部81と、基部81の両端部から突出する凸部82を有する形状である。一対の凸部82の間には、凹部84が形成される。
【0035】
型取りを行う際には、
図7に示したように、一方の原板8の凹部84の間に、他方の凸部82の一方が収まるようにすることが好ましい。これによって、補強部材7の軽量化を図り、しかも、原板8を金属板85から切り出す際に発生する端材の量を減じて、歩留まりを向上させることができる。
【0036】
本実施形態のサスペンション装置9では、
図1に示したように、規制部6は車体のサイドフレームに固定されたゴム材で構成された緩衝材61と、当該緩衝材を固定する取付部62とから構成される。取付部62は、車体のサイドフレーム63に対して固定されており、緩衝材61がロアアーム2を構成するアッパーメンバ21の上方に位置するように配置される。
図1に示したように、サスペンション装置9のロアアーム2が揺動していない状態では、緩衝材61とアッパーメンバ21は、互いに離隔した状態となっている。ロアアーム2が過剰に揺動すると、アッパーメンバ21と緩衝材61とが接して、ロアアーム2を含むサスペンション装置が過剰に揺動して他の部材に干渉することが防止される。
【0037】
本実施形態のサスペンション装置9では、上記の補強部材7の第1受部71がロアアーム2を構成するアッパーメンバ21の内面に接する状態で、補強部材7がロアアーム2に対して固定されている。そして、第1受部71は、ロアアーム2の過剰な揺動を規制する規制部6がアッパーメンバ21に接する部分の内側に配置される。当該部分は、上述の通り、
図3において二点鎖線の円で示した。そして、補強部材7に設けられた一対の第2受部73は、ロアメンバ22の内面に接する状態で、補強部材7がロアアーム2に対して固定されている。さらに、第2受部73の反対側に位置する壁部72の先端端部は、アッパーメンバ21の内面に接した状態で、補強部材7がロアメンバ22に対して固定されている。前記先端部分は、前記壁部72の前記サスペンションアームの延在方向の先端に位置する。補強部材7の壁部72は、
図2及び
図3に示したように、平面視及び底面視において、ショックアブソーバー4の取付部であるブラケット41の取付部に重なるように前記サスペンションアームの延在方向に延びる形状とされている。
【0038】
ロアアーム2のアッパーメンバ21は、上述のように、上部212と下部213とからなる高低差を有する形状とされている。補強部材7の形状は、アッパーメンバ21及びロアメンバ22の間の空間に配置される形状となされており、アッパーメンバ21の上部212には補強部材7の第1受部71が接し、アッパーメンバ21の下部213には、壁部72の先端部分の上端が接し、ロアメンバ22の内面には、第2受部73が接する形状となっている。これによって、アッパーメンバ21に入力された荷重が、効率的に補強部材7に伝達されるようになっている。
【0039】
補強部材7の第1受部71と先端側に配される壁部72との間には、
図6に示したように、傾斜部74が配される。補強部材7の傾斜部74は、アッパーメンバ21の傾斜部211に比して傾斜角が緩やかに構成されている。補強部材7をアッパーメンバ21に固定する際に、傾斜部211と傾斜部74とが干渉しないようにされている。この構成よれば、加工時の誤差の影響を受けにくく、組付けの作業性を向上させることができる。補強部材7の傾斜部74の傾斜角は、アッパーメンバ21の傾斜部211の傾斜角と同等にし、傾斜部211と傾斜部74とが、接するようにしてもよい。このようにすれば、アッパーメンバとロアメンバとの間でより効率的に荷重を伝達することができる。
【0040】
車輪から荷重が入力されるなどして、ロアアーム2が車体の上下方向に過剰に揺動すると、上述の規制部6がロアアーム2を構成するアッパーメンバ21に対して接して、過剰な揺動が規制される。このときに、アッパーメンバ21に入力された荷重は、補強部材7の第1受部71、壁部72、及び第2受部73を経てロアメンバ22にも分散され、ロアアーム2全体で荷重が支持される。これによって、ロアアーム2の一部に荷重が集中することによって、ロアアームが破損することが防止される。
【0041】
車輪から荷重が入力されるなどして、ロアアーム2が車体の上下方向に揺動すると、ショックアブソーバー4の取付部からもロアアーム2に荷重が入力される。上述のように、補強部材7は、壁部72がショックアブソーバー4の取付部に重なるように前記サスペンションアームの延在方向に延びる形状とされているので、ショックアブソーバー4から入力される荷重も、壁部72、及び第2受部73を経てロアメンバ22にも分散され、ロアアーム2全体で荷重が支持される。これによって、ロアアーム2の一部に荷重が集中することによって、ロアアームが破損することが防止される。
【0042】
補強部材7は、第2受部73がロアメンバ22の内面に対して面で接する構成とされている。補強部材7に伝達された荷重は、第2受部73を介して、ロアメンバ22に伝達されることになる。これによって、補強部材7とロアメンバ22との接続部分に対して荷重が局所的に集中することが防止される。第2受部73を設けることによって、従来の補強部材のように第1リーンフォース及び第2リーンフォースといった複数の補強部材を設ける必要がなくなり、使用する補強部材の数を減らすことが可能になる。これによって、サスペンション装置の軽量化と低コスト化を図ることができる。
【0043】
補強部材7と、アッパーメンバ21又はロアメンバ22とは、溶接によって固定することが好ましい。本実施形態のサスペンション装置9では、第1受部71の縁とアッパーメンバ21との接触部分と、壁部72の縁とアッパーメンバ21との接触部分と、第2受部73の縁とロアメンバ22との接触部分とを、それぞれ溶接している。
図2に示したように、ロアメンバ22には、溶接作業用の貫通穴が複数個設けられている。
【0044】
規制部の構成は、上記の実施形態の構成に限定されない。例えば、規制部は、ロアアームを構成するアッパーメンバに対して緩衝材を固定し、サイドフレームなどの車体側の構造物に、緩衝材を接触させて揺動を規制するための中空管などのストッパを設けて構成してもよい。
【0045】
ショックアブソーバーを支持するブラケットの構成は、上記の実施形態の構成に限定されない。例えば、ブラケットは、上述の第1壁及び第2壁と交差する方向延びており、第1壁の一端部と第2壁の一端部とを接続する第3壁を有する形状としてもよい。また、ブラケットは、上述の第1壁及び第2壁と交差する方向延びており、第1壁の他端部と第2壁の他端部とを接続する第4壁を有する形状としてもよい。また、ショックアブソーバーをサスペンションアームに対して取り付けるための取付部の構成は、ブラケットに限定されず、例えば、サスペンションアームに設けられた軸受など他の構成にすることができる。
【0046】
上記の実施形態のサスペンションアーム9では、アッパーメンバ21に傾斜部211を設けた。傾斜部211による高低差は、サスペンションアームの揺動を制限する規制部6又はショックアブソーバー4の取付部が設けられる面に設けることが好ましい。そのようにすることによって、規制部又はショックアブソーバーから入力される荷重に対してサスペンションアームの面強度を向上させることができる。
【0047】
上記の実施形態のサスペンションアームでは、
図3に示したように、平面視又は底面視において、一対の壁部72のうち車体の内側寄りのものが、ブラケット41に重なるように前記サスペンションアームの延在方向に延びる形状となっている。補強部材の少なくとも一部が、平面視及び底面視において、ショックアブソーバーの取付部に重なる形状とすればよい。例えば、壁部72の両方が、ショックアブソーバー4の取付部に重なる形状としてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 アッパーアーム
11 アッパーメンバ
12 ロアメンバ
2 ロアアーム
21 アッパーメンバ
22 ロアメンバ
4 ショックアブソーバー
7 補強部材
71 第1受部
72 壁部
73 第2受部
74 傾斜部
6 規制部
3 車輪の支持部材
211 傾斜部
212 上部
213 下部