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特許7562107移動式クレーンの衝突管理システム、移動式クレーンの衝突管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】移動式クレーンの衝突管理システム、移動式クレーンの衝突管理方法
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/88 20060101AFI20240930BHJP
   B66C 13/00 20060101ALI20240930BHJP
   B66C 15/00 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
B66C23/88 D
B66C13/00 D
B66C15/00 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023145454
(22)【出願日】2023-09-07
【審査請求日】2023-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】599016110
【氏名又は名称】株式会社エスシー・マシーナリ
(73)【特許権者】
【識別番号】519354061
【氏名又は名称】AITOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100207789
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 良平
(72)【発明者】
【氏名】山 尚史
(72)【発明者】
【氏名】栗毛野 浩一
(72)【発明者】
【氏名】向井 仁志
【審査官】山田 拓実
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-111433(JP,A)
【文献】特開2005-029338(JP,A)
【文献】特開2011-102167(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110498341(CN,A)
【文献】韓国登録特許第10-1096228(KR,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0117065(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00-15/06;
23/00-23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動式クレーンのブームの先端部に設けられた第1GNSS装置によって測定された第1位置情報を取得する第1取得部と、
前記移動式クレーンの旋回中心部に設けられた第2GNSS装置によって測定された第2位置情報を取得する第2取得部と、
第1の移動式クレーンとは異なる第2の移動式クレーンに設けられた第1GNSS装置から得られる第1位置情報が示す位置と、
前記第1の移動式クレーンに設けられた第1GNSS装置から得られる第1位置情報と、前記第1の移動式クレーンに設けられた第2GNSS装置から得られる第2位置情報とに基づいて、前記第1の移動式クレーンのブームの先端部と、前記第1の移動式クレーンの旋回中心部とによって定まる、前記ブームの長手方向の軸に沿った異なる複数の位置のそれぞれとの距離を求め、
求められた各距離に基づいて、前記第1の移動式クレーンと前記第2の移動式クレーンとが干渉するか否かを判定する判定部と
を有する移動式クレーンの衝突管理システム。
【請求項2】
前記判定部は、
前記求められた各距離のうち、最小値の距離に基づいて、干渉するか否かを判定する
請求項1に記載の移動式クレーンの衝突管理システム。
【請求項3】
前記判定された結果を、前記第1の移動式クレーンと前記第2の移動式クレーンとにそれぞれ設けられる出力装置に対し、判定結果を出力可能に送信する判定結果出力部
を有する請求項1に記載の移動式クレーンの衝突管理システム。
【請求項4】
前記第1GNSS装置は、当該第1GNSS装置が設けられた移動式クレーンの本体部に設けられたPoEルータに対して、LANケーブルを介して接続されることで電源が供給される
請求項1に記載の移動式クレーンの衝突管理システム。
【請求項5】
第1取得部が、移動式クレーンのブームの先端部に設けられた第1GNSS装置によって測定された第1位置情報を取得し、
第2取得部が、前記移動式クレーンの旋回中心部に設けられた第2GNSS装置によって測定された第2位置情報を取得し、
判定部が、
第1の移動式クレーンとは異なる第2の移動式クレーンに設けられた第1GNSS装置から得られる第1位置情報が示す位置と、
前記第1の移動式クレーンに設けられた第1GNSS装置から得られる第1位置情報と、前記第1の移動式クレーンに設けられた第2GNSS装置から得られる第2位置情報とに基づいて、前記第1の移動式クレーンのブームの先端部と、前記第1の移動式クレーンの旋回中心部とによって定まる、前記ブームの長手方向の軸に沿った異なる複数の位置のそれぞれとの距離を求め、
求められた各距離に基づいて、前記第1の移動式クレーンと前記第2の移動式クレーンとが干渉するか否かを判定する
移動式クレーンの衝突管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動式クレーンの衝突管理システム、移動式クレーンの衝突管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場では、複数の移動式クレーンが用いられる場合がある。移動式クレーンは、自走することによって作業位置まで移動し、ブームの旋回と起伏をさせて作業を行う。ここでは、移動式クレーンが複数台存在することから、各移動式クレーンが互いに衝突しないように管理する必要がある。
衛星測位システムを利用してクレーンの位置を示す三次元情報を取得し、各クレーンの間で、三次元情報を共有することで、クレーンの衝突を防止するシステムがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-095376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、クレーンは、ブームの旋回や起伏を行うため、ブームの稼働状況も考慮して衝突防止をする必要がある。この場合、クレーンの位置を測定するだけでなく、ブームの姿勢も把握する必要がある。ブームの姿勢を把握するためには、ブームの旋回角度を検出するための旋回角センサ、ブームの起伏角を検出する起伏角センサ等の各種センサが必要となる。このような各種センサをブームに取り付けるためには、取り付ける位置を選定する必要があり、また、既にあるクレーンのブームに後からセンサを取り付けようとしても、取り付けるスペースを確保することが難しい。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、複数の移動式クレーンが互いに干渉しないように容易に管理することができる移動式クレーンの衝突管理システム、移動式クレーンの衝突管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、移動式クレーンのブームの先端部に設けられた第1GNSS装置によって測定された第1位置情報を取得する第1取得部と、前記移動式クレーンの旋回中心部に設けられた第2GNSS装置によって測定された第2位置情報を取得する第2取得部と、第1の移動式クレーンとは異なる第2の移動式クレーンに設けられた第1GNSS装置から得られる第1位置情報が示す位置と、前記第1の移動式クレーンに設けられた第1GNSS装置から得られる第1位置情報と、前記第1の移動式クレーンに設けられた第2GNSS装置から得られる第2位置情報とに基づいて、前記第1の移動式クレーンのブームの先端部と、前記第1の移動式クレーンの旋回中心部とによって定まる、前記ブームの長手方向の軸に沿った異なる複数の位置のそれぞれとの距離を求め、求められた各距離に基づいて、前記第1の移動式クレーンと前記第2の移動式クレーンとが干渉するか否かを判定する判定部とを有する移動式クレーンの衝突管理システムである。
【0007】
また、本発明の一態様は、第1取得部が、移動式クレーンのブームの先端部に設けられた第1GNSS装置によって測定された第1位置情報を取得し、第2取得部が、前記移動式クレーンの旋回中心部に設けられた第2GNSS装置によって測定された第2位置情報を取得し、判定部が、前記第1の移動式クレーンとは異なる第2の移動式クレーンに設けられた第1GNSS装置から得られる第1位置情報が示す位置と、第1の移動式クレーンに設けられた第1GNSS装置から得られる第1位置情報と、前記第1の移動式クレーンに設けられた第2GNSS装置から得られる第2位置情報とに基づいて、前記第1の移動式クレーンのブームの先端部と、前記第1移動式クレーンの旋回中心部とによって定まる、前記ブームの長手方向の軸に沿った異なる複数の位置のそれぞれとの距離を求め、求められた各距離に基づいて、前記第1の移動式クレーンと前記第2の移動式クレーンとが干渉するか否かを判定する移動式クレーンの衝突管理方法である。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように、この発明によれば、複数の移動式クレーンが互いに干渉しないように容易に管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】この発明の一実施形態による衝突管理システムSの構成を示す概略ブロック図である。
図2】衝突管理システムSの機能を説明する概略機能ブロック図である。
図3】衝突管理サーバ30の機能を説明する概略機能ブロック図である。
図4】記憶部301に記憶される機器情報の一例を示す図である。
図5】衝突管理サーバ30の動作を説明するフローチャートである。
図6】建築現場の作業領域を上方から平面視した場合の概念図である。
図7】端末装置T1に表示される表示画面の一例を示す図である。
図8】端末装置T1に表示される表示画面の一例を示す図である。
図9】クレーンに対してGNSS装置のアンテナが設けられた位置と、ブームの先端と、ブームの旋回中心点との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態による衝突管理システムについて図面を参照して説明する。
図1は、この発明の一実施形態による衝突管理システムSの構成を示す概略ブロック図である。
衝突管理システムSは、クレーンCR1、クレーンCR2、ネットワークN、衝突管理サーバ30、Webサーバ40、端末装置50を含む。
クレーンCR1とクレーンCR2は、それぞれ、移動式クレーンであり、自走可能である。
クレーンCR1には、第1GNSS装置1aと、第2GNSS装置1bと、端末装置T1とが設けられる。第1GNSS装置1aは、クレーンCR1のブームB1の先端部に設けられる。第2GNSS装置1bと端末装置T1は、クレーンCR1の本体部に設けられる。ここで、GNSSは、全地球的航法衛星システムである。ブームはジブと呼ばれることがある。
クレーンCR2には、第1GNSS装置2aと、第2GNSS装置2bと、端末装置T2とが設けられる。第1GNSS装置2aは、クレーンCR2のブームB2の先端部に設けられる。第2GNSS装置2bと端末装置T2は、クレーンCR2の本体部に設けられる。
第2GNSSアンテナは、クレーンの旋回中心部に対してブーム側であって運転室の横側後部に設けられるようにしてもよい。
【0011】
ネットワークNは、各種通信機器の間において通信可能に接続する。
衝突管理サーバ30は、端末装置T1と端末装置T2とについて、それぞれネットワークNを介して接続される。
衝突管理サーバ30は、端末装置T1と端末装置T2とのそれぞれから得られる第1位置情報と第2位置情報とに基づいて、クレーンCR1とクレーンCR2とが干渉するか否かの判定を行う。
衝突管理サーバ30とWebサーバ40と端末装置50は、ネットワークNを介して通信可能に接続される。
【0012】
図2は、衝突管理システムSの機能を説明する概略機能ブロック図である。
この図2においては、衝突管理システムSは、クレーンCR1とクラウドCLDとについて示されており、クレーンCR2については、クレーンCR1と同様の構成であるため、図示を省略している。
クレーンCR1は、運転室CABと、本体部MBと、ブームB1を含む。
運転室CABには、通信ユニットU1と、端末装置T1が設けられる。通信ユニットU1は、電源装置PD、LTEルータRT1、PoEルータRT2を含む。
電源装置PDは、運転室の内部に設けられた電源供給ソケットにコネクタCN0を介して接続され、外部から電源の供給を受ける。電源供給ソケットは、例えばシガーソケットであってもよい。電源装置PDは、電源供給ソケットを介して供給される電力をLTEルータRT1が対応可能な電圧に変換し、電源を供給するとともに、PoEルータRT2が対応可能な電圧に変換し、電源を供給する。
【0013】
LTEルータRT1は、PoEルータRT2に対して通信可能に接続される。LTEルータRT1は、PoEルータRT2に対して、通信規格であるLTE(Long Term Evolution)に従って通信を行う。
LTEルータRT1は、PoEルータRT2から得られるデータ(例えば位置情報)をネットワークNを介してクラウドCLDの衝突管理サーバ30に送信する。
【0014】
PoEルータRT2は、LTEルータRT1に対して通信可能に接続される。
また、PoEルータRT2は、LAN(ローカルエリアネットワーク)ケーブルを介して第1GNSS装置1aに通信可能に接続される。ここでは、PoEルータRT2と第1GNSS装置1aとの間において、LAN延長コネクタCN1とLAN延長コネクタCN2と介して、複数のLANケーブルが接続されることで、PoEルータRT2と第1GNSS装置1aとが接続される。
また、PoEルータRT2は、LANケーブルを介して第2GNSS装置1bに通信可能に接続される。ここでは、PoEルータRT2と第2GNSS装置1bとの間において、LAN延長コネクタCN3とLAN延長コネクタCN4と介して、複数のLANケーブルが接続されることで、PoEルータRT2と第2GNSS装置1bとが接続される。これらのLANケーブルは、PoE対応のLANケーブルが用いられる。
【0015】
ここで運転室CABは、本体部MBに属するものであり、本体部MBのいずれかの位置に設けられる。第1GNSS装置1aはブームB1の先端部に設けられ、第2GNSS装置1bは、本体部MBに設けられる。例えば第2GNSS装置1bは、本体部MBを平面視したときの、クレーンCR1の旋回中心部(あるいは中心点)に設けられる。そのため、第1GNSS装置1aとPoEルータRT2との距離は、第2GNSS装置1bとPoEルータRT2との距離よりも長い。第1GNSS装置1aとPoEルータRT2との間のLANケーブルは、屋外設置可能なLANケーブルであり、例えば、100m程度の長さにも対応可能である。
PoEルータRT2は、第1GNSS装置1aと第2GNSS装置1bとに対してPoE(Power over Ethernet)によって電力を供給するとともに、第1GNSS装置1aと第2GNSS装置1bとのそれぞれと通信をする。
PoEルータRT2は、第1GNSS装置1aによって計測された第1位置情報を取得する。また、PoEルータRT2は、第2GNSS装置1bによって計測された第2位置情報を取得する。
【0016】
端末装置T1は、タブレット、スマートフォン、PC(personal computer)等のうちいずれであってもよい。端末装置T1は、ネットワークNを介して無線によって衝突管理サーバ30に通信可能に接続される。端末装置T1には表示画面が設けられている。端末装置T1は、運転室にいるオペレータによって表示画面を視認可能となるような位置に設置される。
【0017】
第1GNSS装置1aは、PoEスプリッター11a、マイコン12a、GNSSモジュール13a、GNSSアンテナ14aを含む。
PoEスプリッター11aは、PoEルータRT2に接続され、PoEによって供給される電力をマイコン12aに供給する。また、PoEスプリッター11aは、PoEルータRT2から送信されるデータをマイコン12aに供給し、マイコン12aから供給されるデータをPoEルータRT2に供給する。
【0018】
マイコン12aは、GNSSモジュール13aとPoEスプリッター11aとに接続される。マイコン12aは、GNSSモジュール13aから得られる第1位置情報を、マイコン12aに割り当てられた機器識別情報とともにPoEルータRT2にLANケーブルを介して送信する。
GNSSモジュール13aは、GNSSアンテナ14aに接続されるとともに、マイコン12aに接続される。GNSSモジュール13aは、GNSSアンテナ14aによって受信した受信信号に基づいて、GNSSモジュール13aの位置を表す第1位置情報を生成し、生成した第1位置情報をマイコン12aに出力する。GNSSモジュール13aは、第1位置情報を一定時間毎に生成する。一定時間毎は数秒ごとであってもよい。
GNSSアンテナ14aは、GNSS衛星からの衛星信号を受信する。
【0019】
第2GNSS装置1bは、PoEスプリッター11b、マイコン12b、GNSSモジュール13b、GNSSアンテナ14bを含む。
PoEスプリッター11bは、PoEルータRT2に接続され、PoEによって供給される電力をマイコン12bに供給する。また、PoEスプリッター11bは、PoEルータRT2から送信されるデータをマイコン12bに供給し、マイコン12bから供給されるデータをPoEルータRT2に供給する。
【0020】
マイコン12bは、GNSSモジュール13bとPoEスプリッター11bとに接続される。マイコン12bは、GNSSモジュール13bから得られる第2位置情報を、マイコン12bに割り当てられた機器識別情報とともにPoEルータRT2にLANケーブルを介して送信する。機器識別情報は、マイコン12bに予め割り当てられており、機器を個別に識別する識別情報である。
GNSSモジュール13bは、GNSSアンテナ14bに接続されるとともに、マイコン12bに接続される。GNSSモジュール13bは、GNSSアンテナ14bによって受信した受信信号に基づいて、GNSSモジュール13bの位置を表す第2位置情報を生成し、生成した第2位置情報をマイコン12bに出力する。GNSSモジュール13bは、第2位置情報を一定時間毎に生成する。一定時間毎は数秒ごとであってもよい。
GNSSアンテナ14bは、GNSS衛星からの衛星信号を受信する。
【0021】
クラウドCLDには、衝突管理サーバ30と、Webサーバ40とが設けられる。
衝突管理サーバ30は、LTEルータRT1から送信される第1位置情報と第2位置情報とを受信し、衝突計算を行い、衝突計算の結果を端末装置T1に送信する。
Webサーバ40は、端末装置T1に対して各種データを供給する。
【0022】
図3は、衝突管理サーバ30の機能を説明する概略機能ブロック図である。
衝突管理サーバ30は、記憶部301、通信部302、第1取得部303、第2取得部304、姿勢算出部305、判定部306、判定結果出力部307、制御部308を含む。
記憶部301は、各種データを記憶する。例えば記憶部301は、機器情報を記憶する。
記憶部301は、記憶媒体、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、RAM(Random Access read/write Memory)、ROM(Read Only Memory)、またはこれらの記憶媒体の任意の組み合わせによって構成される。
この記憶部301は、例えば、不揮発性メモリを用いることができる。
【0023】
通信部302は、各クレーンCR1、クレーンCR2にそれぞれ設けられた通信ユニット(例えば通信ユニットU1)と通信を行う。
第1取得部303は、移動式クレーンのブームの先端部に設けられた第1GNSS装置によって測定された第1位置情報を取得する。
第2取得部304は、移動式クレーンの旋回中心部に設けられた第2GNSS装置によって測定された第2位置情報を取得する。
【0024】
姿勢算出部305は、第1位置情報と第2位置情報とに基づいて、移動式クレーンの位置とブームの方向を求める。
判定部306は、衝突計算を行い、計算結果に基づいて、第1の移動式クレーン(例えばクレーンCR1)と第2の移動式クレーン(例えばクレーンCR2)とが干渉するか否かを判定する。
判定結果出力部307は、判定部306によって判定された判定結果を、第1の移動式クレーンと前記第2の移動式クレーンとにそれぞれ設けられる出力装置(例えば端末装置T1)に対し、判定結果を出力可能に通信部302によって送信する。ここでは、判定結果出力部307は、建築現場の作業領域に存在する複数のクレーンのうち、送信先のクレーンに設けられた端末装置に対して、当該クレーンが、他のクレーンと干渉するか否かの判定がなされた結果を送信するようにしてもよい。これにより、オペレータは、自身が操作するクレーンが、他のクレーンに干渉する可能性があるか否かを把握することができる。
制御部308は、衝突管理サーバ30の各部を制御する。
【0025】
次に、図4は、記憶部301に記憶される機器情報の一例を示す図である。
機器情報は、クレーン識別情報と、GNSS装置識別情報と、位置情報と、端末装置識別情報とを含む。
クレーン識別情報は、建築現場において利用される移動式クレーンであって、衝突管理サーバ30によって衝突管理を行う対象の移動式クレーンのそれぞれを識別する識別情報である。クレーン識別情報は、移動式クレーンのそれぞれに予め割り当てられる。
GNSS装置識別情報は、各GNSS装置を個別に識別する識別情報である。GNSS装置識別情報は、予め割り当てられていてもよいし、GNSS装置のマイコンに割り当てられた機器識別情報を用いるようにしてもよい。
位置情報は、各GNSS装置から受信した位置情報である。
端末装置識別情報は、各移動式クレーンに設けられる端末装置を個別に識別する識別情報である。
【0026】
例えば、クレーン識別情報「1001」には、GNSS装置識別情報「G101」、「G102」が対応付けられ、端末装置識別情報「T101」が対応付けられている。
これにより、クレーン識別情報「1001」が当てられた移動式クレーンには、GNSS装置識別情報「G101」が割り当てられた第1GNSS装置と、GNSS装置識別情報「G102」が割り当てられた第2GNSS装置とが設けられているとともに、端末装置識別情報「T101」が割り当てられた端末装置が設けられていることが示されている。そして、第1GNSS装置から受信した位置情報が、GNSS装置識別情報「G101」に対応付けて記憶されるとともに、第2GNSS装置から受信した位置情報が、GNSS装置識別情報「G201」に対応付けて記憶される。
また、ここでは、GNSS装置識別情報が示すGNSS装置が、ブームの先端部に設けられている、ブームの旋回中心部に設けられているかについてもGNSS装置識別情報に対応づけて記憶しておくようにしてもよい。これにより、GNSS装置識別情報に基づいて、位置情報が、ブームの先端部の位置を示しているか、ブームの旋回中心部の位置を示しているかを把握できる。
【0027】
通信部302、第1取得部303、第2取得部304、姿勢算出部305、判定部306、判定結果出力部307、制御部308は、例えばCPU(中央処理装置)等の処理装置若しくは専用の電子回路で構成されてよい。
【0028】
次に、衝突管理システムSの動作を説明する。
図5は、衝突管理サーバ30の動作を説明するフローチャートである。図6は、クレーンCR1とクレーンCR2とが存在する建築現場の作業領域を上方から平面視した場合の概念図である。
クレーンCR1、クレーンCR2が稼働すると、クレーンCR1に設けられた通信ユニットU1は、第1GNSS装置1aによって測位された結果に基づく第1位置情報を第1GNSS装置1aから取得し、第2GNSS装置1bによって測位された結果に基づく第2位置情報を第2GNSS装置1bから取得する。そして、クレーンCR1に設けられた通信ユニットU1は、第1位置情報と第2位置情報とを衝突管理サーバ30に送信する。同様に、クレーンCR2に設けられた通信ユニットは、第1位置情報と第2位置情報とを衝突管理サーバ30に送信する。このような位置情報の送信は、一定時間毎(例えば数秒ごと)に行われる。
【0029】
衝突管理サーバ30の通信部302は、各通信ユニットから送信される位置情報を受信する(図5ステップS101)。位置情報が受信されると、衝突管理サーバ30は、受信した位置情報を記憶部301に記憶する(図5ステップS102)。より具体的には、衝突管理サーバ30の第1取得部303は、第1GNSS装置1aによって測定された第1位置情報を取得し、記憶部301に書き込むとともに、第1GNSS装置2aによって測定された第1位置情報を取得し、記憶部301に書き込む。第2取得部304は、第2GNSS装置1bによって測定された第2位置情報を取得し、記憶部301に書き込むとともに、第2GNSS装置2bによって測定された第2位置情報を取得し、記憶部301に書き込む。
【0030】
位置情報が記憶されると、判定部306は、衝突計算を行う。ここで判定部306は、クレーンCR1に設けられた第1GNSS装置1aから得られる第1位置情報と、クレーンCR1に設けられた第2GNSS装置1bから得られる第2位置情報とに基づいて、クレーンCR2のブームの先端部と、クレーンCR2の旋回中心部とによって定まる、ブームの長手方向の軸に沿った異なる複数の位置(対象位置)を求める(図5ステップS103)。
ここで、図6において、クレーンCR1のブームの長手方向の軸AX1が示されている。判定部306は、軸AX1に沿って対象位置を設定する。対象位置は、軸AX1に沿って一定間隔に配置されるようにしてもよい。ここでは、対象位置は、対象位置P1から対象位置P14まで設定されている。対象位置P1は、クレーンCR1の旋回中心部に対応する位置であり、対象位置P14は、クレーンCR1のブームの先端部に対応する位置である。
【0031】
次に、判定部306は、クレーンCR1とは異なる移動式クレーンであるクレーンCR2に設けられた第1GNSS装置2aから得られる第1位置情報が示す位置PEと、クレーンCR1の各対象位置(P1からP14)との距離をそれぞれ求める(図5ステップS104)。
【0032】
各距離が求められると、判定部306は、求められた各距離に基づいて、クレーンCR1とクレーンCR2とが干渉するか否かを判定する。例えば、判定部306は、求められた各距離のうち、最小値の距離を抽出し(図5ステップS105)、抽出された最小値の距離に基づいて、干渉するか否かを判定する。例えば、ここでは、複数の対象位置(P1からP14)のうち、クレーンCR2のブームの先端部の位置PEと、対象位置P6との距離L6が距離の最小値であることが抽出される。
【0033】
そして判定部306は、抽出された、最小値となる距離が基準値よりも小さいか否かを判定する(図5ステップS106)。基準値は、予め決められた値であり、記憶部301に記憶されており、判定部306が判定を行う際に読み出されるようにしてもよい。
判定部306は、最小値となる距離が基準値よりも小さい場合(図5ステップS106-YES)、判定結果として、クレーンCR1とクレーンCR2とが一定範囲内に近づいていることを表すアラート情報を生成する(図5ステップS107)。アラート情報が生成されると、判定結果出力部307は、表示画面データを生成し(図5ステップS108)、表示画面データと、判定結果であるアラート情報とを、各端末装置に送信する(図5ステップS109)。
【0034】
一方、判定部306は、ステップS106において、最小値となる距離が基準値以上である場合には(図5ステップS106-NO)、ステップS107のアラート情報を生成する処理をスキップする。ここでは、判定部306は、アラート情報が無いことを示すデータを判定結果として、判定結果出力部307に引き渡すようにしてもよい。アラート情報の生成がスキップされると、判定結果出力部307は、表示画面データを生成し(図5ステップS108)、表示画面データを各端末装置に送信する(図5ステップS109)。判定結果出力部307は、表示画面データを送信する際に、アラート情報が無いことを示すデータをともに送信してもよい。
【0035】
以上説明した図5の処理は、一定時間が経過する毎に実行するようにしてもよいし、位置情報を受信する毎に実行するようにしてもよい。
これにより、クレーンCR1とクレーンCR2とのうち少なくともいずれが一方について、ブームを上げる(起こす)、ブームを下げる(倒す)、ブームを旋回させる、クレーンが移動(走行)する、等のようにブームの姿勢が変更される場合であっても、第1GNSS装置と第2GNSS装置によって位置が測定される毎に、衝突判定を行うことができる。位置を計測する間隔を短くすることによって、リアルタイムに近いタイミングで、クレーンが干渉するか否かを判定結果を端末装置に出力させることができる。
【0036】
図7図8は、端末装置T1に表示される表示画面の一例を示す図であり、建築現場における作業領域に存在するクレーンを上方からみた場合における平面図である。
図7は、アラート情報が表示されていない場合における表示画面の一例を示し、図8は、アラート情報が表示されている場合における表示画面の一例を示す。
図7図8では、端末装置T1が設置されたクレーンのブームの姿勢に応じて、ブームが存在する位置が示されている(図7図8符号700)。ここでは、表示画面の上方が北となるように表示画面の向きが設定されている。そして、ブームの旋回中心部表示画面の中心となるように配置され、ブームの旋回角度に応じた向きに、ブームを模した直線状の図形が表示されている。そして、ブームの長さを半径とし、ブームの旋回中心部を中心とした旋回範囲を表す円(符号701)が表示される。そして、自クレーンの近傍に存在する他のクレーンの方向を示す図形(符号702)が、円の外周に対して配置されている。この表示内容に基づいて、オペレータは、自クレーンのブームの向きと、現在のクレーンの位置において旋回させた場合のブームの範囲を把握することができる。また、近傍に存在する他のクレーンの方向を把握することができる。
【0037】
また、他のクレーンの現在位置とブームの長さによっては、当該他のクレーンの旋回範囲を表す円(符号750)が表示される。オペレータは、自クレーンの旋回範囲を示す円(符号701)と、他のクレーンの旋回範囲を示す円(符号750)との配置関係から、自クレーンと当該他のクレーンとが干渉する可能性があるか否かを把握することができる。
判定結果出力部307は、このように、旋回範囲を示す円や、ブームを模した直線等を表示画面に描画させるためのデータを生成し、各端末装置に通信部302によって送信する。
【0038】
そして、図7においては、アラート情報が表示されていないため、オペレータは、自クレーンが他のクレーンと干渉する可能性が低いことを把握することができる。
一方、図8、アラート情報が表示されている。ここでは、アラート情報として、表示画面の背景色が、アラート情報が表示されていない場合とは異なる表示態様で表示される。例えば、アラート情報が表示されていない場合には、背景色は白であるが、アラート情報が表示される場合、背景色を、赤、オレンジ、黄等のうちいずれかの色によって表示することでアラート情報を表示する。ここでは、背景色の表示態様が異なるようにしてアラート情報を表示するようにしたので、アラート情報が発生していること、すなわち、自クレーンと他のクレーンとが干渉する可能性について、容易に把握することができる。
【0039】
以上説明した実施形態において、判定部306は、第2の移動式クレーンのブームの先端部の位置PEと、第1の移動式クレーンのブームの各対象位置と距離の最小値が基準値よりも小さいか否かに基づいて、アラート情報を出力するか否かを決定するようにしたが、異なる複数の基準範囲を用い、当該最小値が、いずれの基準範囲に入るか否かに基づいて、アラート情報を出力するようにしてもよい。例えば、基準範囲として、第1範囲がLa(m:メートル)未満、第2範囲がLa(m)以上であってLb(m)未満、第3範囲がLc(m)以上であってLd(m)未満、第4範囲がLd(m)以上とされた基準範囲を予め記憶部301に記憶しておく(ただし、La<Lb<Lc<Ld)。そして、判定部306が、今回得られた最小値が、いずれの範囲に該当するかを判定する。そして判定部306は、最小値が第4範囲に該当する場合(レベル0)には、アラート情報なし、あるいは最も低いアラートレベル(レベル0)を示すアラート情報を出力するようにしてもよい。また、判定部306は、最小値が、第3範囲に該当する場合にはレベル1、第2範囲に該当する場合にはレベル2、第1範囲に該当する場合にはレベル3を示すアラート情報を出力するようにしてもよい。
【0040】
この場合、判定結果出力部307は、判定結果に応じて、レベル0からレベル3のいずれかのアラートレベルをアラート情報として端末装置に送信する。これにより、アラートレベルがレベル0の場合、端末装置の表示画面の背景は白色で表示され、干渉する可能性が低いことを把握することができる。そして、最小値が、第3範囲に該当する場合(レベル1)には背景色が黄色、第2範囲に該当する場合(レベル2)には背景色がオレンジ、第1範囲に該当する場合(レベル3)には背景色が赤で表示される。これにより、判定結果出力部307は、クレーン同士が近づいている度合いに応じて、異なる表示態様で表示させることができる。
【0041】
また、判定結果出力部307は、判定結果を端末装置に送信する場合について説明したが、各クレーン(CR1、CR2)に設けられた出力装置に判定結果を送信するようにしてもよい。出力装置は、判定結果を把握可能に出力することができる機器であればよい。出力装置は、例えば、上述した端末装置であってもよいし、ブザー、回転灯のいずれであってもよい。
ブザーは、運転室近傍に設けられ、判定結果としてアラート情報がある場合に、ブザー音を放音する。これにより、オペレータは、ブザー音に基づいて、クレーン同士が接近していることを把握することができる。
また、ブザーは、アラートレベルに応じて、異なる音量によってブザー音を出力するようしてもよいし、アラートレベルに応じた音の種類によってブザー音を出力するようにしてもよい。音の種類としては、ブザーを鳴らす鳴動期間と鳴らさない無音期間とが繰り返される鳴動パターンであってもよく、鳴動期間と無音期間との少なくともいずれか一方が異なるようにすることで、アラートレベルに応じたブザー音を出力するようにしてもよい。
【0042】
回転灯は、運転室近傍であってオペレータから視認可能な位置、または、クレーンの周囲にいる作業者や管理者から視認可能な位置に設けられ、判定結果としてアラート情報がある場合に、光源を点灯させるとともに、光源の周囲に設けられた反射板を回転させることで、光を照射する。これにより、オペレータ、周囲の業者、管理者等は、光を視認することで、クレーン同士が接近していることを把握することができる。また、回転灯は、アラートレベルに応じて、異なる色によって発光するようにしてもよい。例えば、レベル0の場合には、点灯せず、レベル1の場合には黄色で発光し、レベル2の場合にはオレンジで発光し、レベル3の場合には赤色で発光するようにしてもよい。
【0043】
また以上説明した実施形態においては、判定部306は、第2の移動式クレーンのブームの先端部の位置PEと、第1の移動式クレーンのブームの各対象位置と距離の最小値が基準値よりも小さいか否かに基づいて、アラート情報を出力するか否かを決定するようにしたが、判定に用いる値は、最小値のみでなくてもよい。例えば、判定部306は、各対象位置までの距離のうち、基準値よりも小さい距離の数をカウントし、その数に応じて、干渉するか否かを判定するようにしてもよい。例えば、判定部306は、各対象位置までの距離のうち、基準値よりも小さい距離の数が0である場合には、アラート情報を出力しない(あるいは最も低いレベルを示すアラート情報を出力する)ようにしてもよい。また、判定部306は、各対象位置までの距離のうち、基準値よりも小さい距離の数が1よりも増えるほど高いレベルを示すアラート情報を出力するようにしてもよい。これにより、干渉する可能性がある領域の範囲の広さの度合いを把握することができる。
【0044】
また、上述した実施形態において、判定部306は、第2の移動式クレーンのブームの先端部の位置PEと、第1の移動式クレーンのブームの各対象位置と距離の最小値が基準値よりも小さいか否かに基づいて、アラート情報を出力するか否かを決定するようにしたが、第1の移動式クレーンのブームの先端部の位置PEと、第2の移動式クレーンのブームの各対象位置と距離の最小値が基準値よりも小さいか否かに基づいて、アラート情報を出力するか否かを決定するようにしてもよい。また、判定部306は、建築現場の作業領域に存在する移動式クレーンが3以上ある場合には、それぞれのクレーンの組みあわせ毎に、衝突計算を行うようにしてもよい。
【0045】
また、上述した実施形態において、判定部306は、各対象位置とブームの先端部の位置PEとの距離を求めるようにしたが、各対象位置のうち、ブームの先端側またはブームの旋回中心部から順に距離を求めていき、既に求められた直前の距離よりも大きな距離が求められた場合には、それよりも後の対象位置についての距離については求めないようにしてもよい。これにより、最小値が見つかった場合には、それ以降の距離の計算をしなくて済むため、判定結果を得るまでの時間を短縮することができる。
【0046】
また、以上説明した実施形態において、第2GNSS装置(1b、2b)は、クレーンの旋回中心部に設けられる場合について説明したが、旋回中心部のうち旋回中心点に設けるようにしてもよいが、旋回中心点そのものに設置しにくい場合には、旋回中心点の近傍に設けるようにしてもよい。この場合、旋回中心点と、第2GNSS装置が設けられた位置関係に基づいて、第2位置情報を補正するようにしてもよい。
また、第1GNSS装置(1a、2a)は、ブームの先端部に設けられる場合について説明したが、ブームの先端部のうち最も先端の位置に設置しにくい場合には、最も先端の位置の近傍に設けるようにしてもよい。この場合、ブームの最も先端の位置と、第1GNSS装置が設けられた位置との関係に基づいて、第2位置情報を補正するようにしてもよい。
【0047】
図9は、クレーンに対してGNSS装置のアンテナが設けられた位置と、ブームの先端と、ブームの旋回中心点との関係を示す図である。この図9では、クレーンを上方から見た平面上における位置を示す。
例えば、第1GNSS装置をブームの先端部に取り付けた後、ブームの先端の位置900、第1GNSS装置のアンテナの位置901において、X軸方向(図9を見て左右方向)における距離c、Y軸方向(図9を見て上下方向)における距離dを計測しておく。
第2GNSS装置をブームの旋回中心点に取り付けた後、ブームの旋回中心点の位置910、第2GNSS装置のアンテナの位置911において、X軸方向における距離a、Y軸方向における距離bを計測しておく。
【0048】
姿勢算出部305は、角度αと、角度β、半径r1、半径r2については、下記の式に基づいて求めることができる。
角度αは、第1GNSS装置のアンテナの位置901と第2GNSS装置のアンテナの位置911とを通る直線と、ブームの旋回中心点の位置910と第2GNSS装置のアンテナの位置911とを通る直線とがなす角である。
角度βは、第1GNSS装置のアンテナの位置901と第2GNSS装置のアンテナの位置911とを通る直線と、ブームの先端の位置900と第1GNSS装置のアンテナの位置901とを通る直線とがなす角である。
半径r1は、ブームの旋回中心点の位置910と第2GNSS装置のアンテナの位置911との距離である。
半径r2は、ブームの先端の位置900と第1GNSS装置のアンテナの位置901との距離である。
【0049】
α=arctan(a/b)-arcsin((a-c)/R)
β=arctan(c/d)-arcsin((a-c)/R)
r1=sqrt(a*a+b*b)
r2=sqrt(c*c+d*d)
【0050】
上述のRは、第1GNSS装置のアンテナの位置901と第2GNSS装置のアンテナの位置911との距離である。
距離Rを求めるにあたり、位置901の平面上における位置を(X1,Y1)、位置911の平面上における位置(X2,Y2)とすると、距離Rは、次の式に基づいて算出することができる。
R=sqrt((X2-X1)×(X2-X1)+(Y2-Y1)×(Y2-Y1))
このようにして、位置を補正するために必要なデータを準備することができる。
【0051】
姿勢算出部305は、角度α、角度β、半径r1、半径r2が求まると、衝突計算を行う対象の時刻において、クレーンに搭載された通信ユニットU1から所定の時間毎に位置(X1,Y1)、位置(X2,Y2)が得られると、次の式に基づいて順次補正することで、補正後の位置901の平面上における位置(X1’,Y1’)、位置911の平面上における位置(X2’,Y2’)を求めることができる。
X1’=X1+r1cos(α)cos(θ)+r1sin(α)sin(θ)
Y1’=Y1+r1cos(α)sin(θ)-r1sin(α)cos(θ)
X2’=X2+r2cos(β)cos(θ)+r2sin(β)sin(θ)
Y2’=Y2+r2cos(β)sin(θ)-r2sin(β)cos(θ)
θ=arctan((Y2-Y1)/(X2-X1))
そして、衝突管理サーバ30の判定部306は、位置(X1’,Y1’)、位置(X2’,Y2’)に基づいて、衝突計算を行うことで、クレーン同士が干渉するか否かを判定する。なお、衝突計算を衝突管理サーバ30ではなく端末装置(T1、T2)において行う場合には、衝突管理サーバ30の制御部308は、求められた位置(X1’,Y1’)、位置(X2’,Y2’)を順次端末装置(T1、T2)に送信する。これにより、端末装置(T1、T2)は、衝突管理サーバ30から送信される位置(X1’,Y1’)、位置(X2’,Y2’)を順次受信し、衝突判定を行い、判定結果を出力することができる。
【0052】
これにより、第1GNSSによって測定された第1位置情報と、第2GNSSによって測定された第2位置情報とが取得されると、第1位置情報と第2位置情報とについて、上述の式に基づいて補正するようにしてもよい。これにより、第2GNSS装置(1b、2b)をクレーンの旋回中心点そのものに設置しにくい場合や、第1GNSS装置(1a、2a)をブームの先端部のうち最も先端の位置に設置しにくい場合であっても、精度よく判定することができる。
【0053】
以上説明した実施形態によれば、第1GNSS装置は、当該第1GNSS装置が設けられた移動式クレーンの本体部に設けられたPoEルータに対して、LANケーブルを介して接続されることで電源が供給される。これにより、第1GNSS装置に対してバッテリ等によって電源を供給する場合には、バッテリの残量が無くなる毎にバッテリを交換する必要があるが、PoEルータからPoEによって電源を供給することができるため、バッテリ交換をする必要がない。また、ここで利用されるLANケーブルの長さが100m程度であったとしても、通信や電力の供給をすることが可能であるため、ブームの長さが長い場合であっても対応しやすい。
【0054】
また、上述した実施形態において、判定結果については、端末装置、ブザー、回転灯等のうちいずれかを用いて出力する場合について説明したが、端末装置50に対して出力させるようにしてもよい。端末装置50は、建築現場に設けられた現場詰所等に設けるようにしてもよい。これにより、建築現場の管理者等は、現場詰所において、各クレーンに干渉が発生するか否かを把握することができる。
【0055】
また、上述の実施形態において、第1取得部303、第2取得部304、姿勢算出部305、判定部306、判定結果出力部307の機能が衝突管理サーバ30に設けられ、衝突計算を衝突管理サーバ30において行う場合について説明したが、端末装置T1または端末装置T2の少なくともいずれか一方にこれら機能を設け、衝突計算を行うようにしてもよい。この場合、衝突管理サーバ30は、各クレーンから得られる位置情報を、衝突計算を行う端末装置に対して配信する。これにより、端末装置T1または、端末装置T2において衝突計算を行うことができる。
例えば、衝突管理サーバ30の姿勢算出部305が、各クレーンのブームの先端部の位置と、ブームの旋回中心部の位置とを算出し、通信部302が、これらの位置を示すデータを端末装置に送信する。そして端末装置が、衝突管理サーバ30から、各クレーンのブームの先端部の位置と、ブームの旋回中心部の位置とを受信し、これらの位置情報に基づいて、上述した判定部306及び判定結果出力部307の機能によって、各クレーンの先端部の位置と、他のクレーンのブームの長手方向の軸に沿った異なる複数の位置(対象位置)を求め、衝突の判定処理を行うようにしてもよい。この場合、衝突管理サーバ30の記憶部301には、端末装置識別情報が記憶されていなくてもよい。
【0056】
上述した実施形態における通信部302、第1取得部303、第2取得部304、姿勢算出部305、判定部306、判定結果出力部307、制御部308をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0057】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0058】
1a,2a 第1GNSS装置
1b,2b 第2GNSS装置
11a,11b PoEスプリッター
12a,12b マイコン
13a,13b GNSSモジュール
14a,14b GNSSアンテナ
30 衝突管理サーバ
40 Webサーバ
50,T1,T2 端末装置
301 記憶部
302 通信部
303 第1取得部
304 第2取得部
305 姿勢算出部
306 判定部
307 判定結果出力部
308 制御部
B1,B2 ブーム
CAB 運転室
CLD クラウド
CN0 コネクタ
CN1,CN2,CN3,CN4 LAN延長コネクタ
CR1,CR2 クレーン
MB 本体部
N ネットワーク
PD 電源装置
RT1 LTEルータ
RT2 PoEルータ
S 衝突管理システム
U1 通信ユニット
【要約】
【課題】複数の移動式クレーンが互いに干渉しないように容易に管理する。
【解決手段】移動式クレーンのブームの先端部に設けられた第1GNSS装置によって測定された第1位置情報を取得する第1取得部と、前記移動式クレーンの旋回中心部に設けられた第2GNSS装置によって測定された第2位置情報を取得する第2取得部と、前記第1の移動式クレーンのブームの先端部と、前記第1移動式クレーンの旋回中心部とによって定まる、前記ブームの長手方向の軸に沿った異なる複数の位置のそれぞれとの距離に基づいて、クレーンが干渉するか否かを判定する判定部とを有する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9