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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】神経刺激システムおよび神経刺激方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/378 20060101AFI20240930BHJP
【FI】
A61N1/378
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020071547
(22)【出願日】2020-04-13
(65)【公開番号】P2021166665
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100165962
【弁理士】
【氏名又は名称】一色 昭則
(74)【代理人】
【識別番号】100206357
【弁理士】
【氏名又は名称】角谷 智広
(72)【発明者】
【氏名】竹内 大
(72)【発明者】
【氏名】徳武 克浩
(72)【発明者】
【氏名】青山 忠義
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 泰久
(72)【発明者】
【氏名】栗本 秀
(72)【発明者】
【氏名】平田 仁
【審査官】滝沢 和雄
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0095667(US,A1)
【文献】特表2019-524230(JP,A)
【文献】特表2016-511128(JP,A)
【文献】特表2016-507334(JP,A)
【文献】特表2011-502586(JP,A)
【文献】特表2008-544813(JP,A)
【文献】特表2008-512197(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0247668(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0038899(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0192952(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0169421(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0108926(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0067497(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0038739(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0277281(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0200205(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0074450(US,A1)
【文献】米国特許第06026328(US,A)
【文献】米国特許第05769875(US,A)
【文献】米国特許第06240316(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/378
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多チャンネルの神経刺激システム(010)であって、少なくとも以下の構成要素、
少なくとも1つの送電ユニット(300)と、
少なくとも1つの受電ユニット(400)と、
少なくとも制御ユニット(200)と、
少なくとも計測ユニット(100)と、
少なくとも2つの神経刺激電極( 430) と、
を備え、特に前記神経刺激システム(010)の前記構成要素のうち、少なくとも1つは埋め込み可能であり、
前記計測ユニット(100)は、生体の状態を計測し、
前記制御ユニット(200)は、前記計測ユニット(100)が計測した生体の状態に基づき、神経刺激の情報を生成し、
前記送電ユニット(300)は、前記制御ユニット(200)が生成した神経刺激の情報を送電信号として送信し、
前記受電ユニット(400)は、前記送電ユニット(300)からの送電信号を受信し、
前記神経刺激電極( 430)は、前記受電ユニット(400)が受信した送電信号の神経刺激の情報に基づき神経を刺激し、
前記制御ユニット(200)は、前記受電ユニット(400)が受け取る送電信号の周波数から、複数の神経(510)の中から刺激を行う神経( 510) を判別できる、神経刺激システム。
【請求項2】
多チャンネルの神経刺激システム(010)であって、少なくとも以下の構成要素、
少なくとも1つの送電ユニット(300)と、
少なくとも1つの受電ユニット(400)と、
少なくとも制御ユニット(200)と、
少なくとも計測ユニット(100)と、
少なくとも2つの神経刺激電極( 430) と、
を備え、特に前記神経刺激システム(010)の前記構成要素のうち、少なくとも1つは埋め込み可能であり、
前記計測ユニット(100)は、生体の状態を計測し、
前記制御ユニット(200)は、前記計測ユニット(100)が計測した生体の状態に基づき、神経刺激の情報を生成し、
前記送電ユニット(300)は、前記制御ユニット(200)が生成した神経刺激の情報を送電信号として送信し、
前記受電ユニット(400)は、前記送電ユニット(300)からの送電信号を受信し、
前記神経刺激電極( 430)は、前記受電ユニット(400)が受信した送電信号の神経刺激の情報に基づき神経を刺激し、
前記制御ユニット(200)は、前記受電ユニット(400)が受け取る送電信号の振幅から、刺激を行う神経( 510) への電気刺激強度を判別できる、神経刺激システム。
【請求項3】
前記制御ユニット(200)は、前記受電ユニット(400)が受け取る送電信号の周波数から、複数の神経(510)の中から刺激を行う神経( 510) を判別できることを特徴とする、請求項に記載の神経刺激システム。
【請求項4】
前記送電ユニット(300)は、前記計測ユニット(100)の信号から刺激を行う神経(510)を選択し、および神経(510)への刺激強度を判別し、前記受電ユニット(400)への送電信号を生成することを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の神経刺激システム。
【請求項5】
前記受電ユニット(400)は、前記送電ユニット(300)の送電信号から電力を受け取り、前記制御ユニット(200)を駆動できることを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の神経刺激システム。
【請求項6】
前記受電ユニット(400)および前記神経刺激電極(430)は、少なくとも部分的に埋込み可能であるかもしくは少なくとも部分的に埋め込まれていることを特徴とする、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の神経刺激システム。
【請求項7】
前記神経刺激システム(010)は、複数の中枢神経、および/または複数の末梢神経を選択的に刺激できることを特徴とする、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の神経刺激システム。
【請求項8】
前記神経刺激システム(010)の前記構成要素は、閉ループシステムを形成することを特徴とする、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の神経刺激システム。
【請求項9】
前記制御ユニット(200)は、制御がリアルタイムで行われるように構成されたことを特徴とする、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の神経刺激システム。
【請求項10】
前記制御ユニット(200)は、前記計測ユニット(100)によって与えられ、得られた生体情報に基づいて、前記受電ユニット(400)によって生成される神経刺激信号を制御することができるように構成されることを特徴とする、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の神経刺激システム。
【請求項11】
前記受電ユニット(400)は、前記制御ユニット(200)によって与えられ、得られた情報に基づいて、複数の前記神経刺激電極(430)へ送る神経刺激信号を、前記神経刺激電極(430)毎に独立して制御し、オン、およびオフに切り替えることが可能であることを特徴とする、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の神経刺激システム。
【請求項12】
前記受電ユニット(400)は、前記制御ユニット(200)によって与えられ、得られた情報に基づいて、複数の前記神経刺激電極(430)へ送る神経刺激信号を、前記神経刺激電極(430)毎に独立して制御し、神経(510)への刺激量の調整が可能であることを特徴とする、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の神経刺激システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の技術分野は、神経刺激システムおよび神経刺激方法に関する。
【背景技術】
【0002】
筋もしくは神経を刺激し、麻痺筋を収縮させることで、その筋の失った機能を代償させる機能的電気刺激という技術が知られている。機能的電気刺激により、神経疾患後の回復を改善し、リハビリテーションを支援する技術も知られるようになってきた(例えば、特許文献1および非特許文献1~4を参照)。
【0003】
機能的電気刺激は、運動機能の代償の他にも、仙骨神経刺激による膀胱関連機能不全の改善(例えば特許文献2を参照)や、迷走神経刺激によるてんかん治療(例えば特許文献3を参照)など、幅広い応用例が示されるようになってきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特願2018-040038号公報
【文献】特願2018-500525号公報
【文献】特願2012-160152号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】P. J. Grahn et al., Enabling task-specific volitional motor functions via spinal cord neuromodulation in a human with paraplegia, Mayo Clinic Proceedings, vol. 92, pp. 544-554, 2017.
【文献】M. L. Gill et al., Neuromodulation of lumbosacral spinal networks enables independent stepping after complete paraplegia, Nature Medicine, vol. 24, pp. 1677-1682, 2018.
【文献】E. M. Moraud et al., Closed-loop control of trunk posture improves locomotion through the regulation of leg proprioceptive feedback after spinal cord injury, Scientific Reports, vol. 8, p. 76, 2018.
【文献】M. Capogrosso et al., Configuration of electrical spinal cord stimulation through real-time processing of gait kinematics, Nature Protocols, vol. 13, pp. 2031-2061, 2018.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
臨床においてこれまで用いられてきた機能的電気刺激システムは、表面電極を用いた筋肉の刺激、または末梢神経或いは筋肉への経皮的刺激により、目的とする麻痺筋に電気刺激を与えるものとして知られている。表面電極による刺激は痛みを伴うこともあり、複数の目的とする筋肉への正確かつ細かな刺激の制御が困難であり、経皮的刺激は体外から有線にて体内へと電極を配置するため、感染症のリスクが高い。
【0007】
本明細書の技術が解決しようとする課題は、例えば複数の麻痺筋、主動筋と拮抗筋を正確かつ精度よく収縮させるための神経刺激信号を生成し、無線給電によって一部が埋め込まれたシステムを用いて、標的とする複数の麻痺筋の運動を制御することで、関節運動の制御などを行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、
多チャンネルの神経刺激システム(010)であって、少なくとも以下の構成要素、
少なくとも1つの送電ユニット(300)と、
少なくとも1つの受電ユニット(400)と、
少なくとも制御ユニット(200)と、
少なくとも計測ユニット(100)と、
少なくとも2つの神経刺激電極( 430) と、
を備え、特に前記神経刺激システム(010)の前記構成要素のうち、少なくとも1つは埋め込み可能であり、
前記計測ユニット(100)は、生体の状態を計測し、
前記制御ユニット(200)は、前記計測ユニット(100)が計測した生体の状態に基づき、神経刺激の情報を生成し、
前記送電ユニット(300)は、前記制御ユニット(200)が生成した神経刺激の情報を送電信号として送信し、
前記受電ユニット(400)は、前記送電ユニット(300)からの送電信号を受信し、
前記神経刺激電極( 430)は、前記受電ユニット(400)が受信した送電信号の神経刺激の情報に基づき神経を刺激し、
前記制御ユニット(200)は、前記受電ユニット(400)が受け取る送電信号の周波数から、複数の神経(510)の中から刺激を行う神経( 510) を判別できる、神経刺激システムにある。
また、本開示の他態様は、
多チャンネルの神経刺激システム(010)であって、少なくとも以下の構成要素、
少なくとも1つの送電ユニット(300)と、
少なくとも1つの受電ユニット(400)と、
少なくとも制御ユニット(200)と、
少なくとも計測ユニット(100)と、
少なくとも2つの神経刺激電極( 430) と、
を備え、特に前記神経刺激システム(010)の前記構成要素のうち、少なくとも1つは埋め込み可能であり、
前記計測ユニット(100)は、生体の状態を計測し、
前記制御ユニット(200)は、前記計測ユニット(100)が計測した生体の状態に基づき、神経刺激の情報を生成し、
前記送電ユニット(300)は、前記制御ユニット(200)が生成した神経刺激の情報を送電信号として送信し、
前記受電ユニット(400)は、前記送電ユニット(300)からの送電信号を受信し、
前記神経刺激電極( 430)は、前記受電ユニット(400)が受信した送電信号の神経刺激の情報に基づき神経を刺激し、
前記制御ユニット(200)は、前記受電ユニット(400)が受け取る送電信号の振幅から、刺激を行う神経( 510) への電気刺激強度を判別できる、神経刺激システムにある。
【0009】
このシステムは電気刺激を複数の神経に選択的に提供することが可能であるという基本的着想に基づいている。複数の神経を同時に、または間欠的に刺激することができる。例えば、患者の足関節角度を上記計測ユニットによって測定し、複数の神経刺激による主動筋と拮抗筋の独立した運動制御を行うことで、目的とする足関節角度を実現することができる。
【0010】
神経刺激システムは、複数の神経への電気刺激の組み合わせによって、目的とする運動を生成するために適した電気刺激を神経に提供することができる。
【0011】
上記計測ユニットは、対象となる生体の情報、例えば足関節角度を計測し、現在の生体の状態、例えば現在の足関節角度、および必要であれば目標とする生体の状態、例えば目標足関節角度についての情報を上記制御ユニットに送ることができる。
【0012】
上記制御ユニットは、上記計測ユニットより送られてきた現在の生体の状態、および目標とする生体の状態の情報から、現在の生体の状態を目標とする生体の状態に近づけるために必要な神経刺激を算出し、その情報を上記送電ユニットに送ることができる。
【0013】
上記送電ユニットは、上記制御ユニットより送られてきた神経刺激の情報を基に、上記受電ユニットに送電するための送電信号を変化させ、神経刺激に必要な電力を供給すると共に神経の刺激量についての情報を受電ユニットに送ることができる。
【0014】
上記受電ユニットは、上記送電ユニットから送られてきた送電信号を解析し、電気刺激を行う神経を選択すると共に、刺激強度の決定を行うことができる。
【0015】
上記受電ユニットによる電気刺激を行う神経の選択は、送電ユニットから送られてきた送電信号の周波数を基に決定することができる。また、刺激強度の決定は、送電ユニットから送られてきた送電信号の振幅を基に決定することができる。
【発明の効果】
【0016】
本明細書では、神経損傷および神経疾患の患者の関節運動を制御し、無線給電による神経刺激によって失われた運動機能を代償させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】全体構成を説明するための概念図である。
図2】生体肢の関節位置を検出する方法例である。
図3】送電周波数で複数の末梢神経への刺激を切り替える方法例である。
図4】送電ユニットの構成要素の例について示した図である。
図5】受電ユニットの構成要素の例について示した図である。
図6】ローパスフィルタの一例を示した図である。
図7】脛骨神経および総腓骨神経への末梢神経刺激による、ラット足関節の目標角へのステップ応答の結果の一例を示した図である。
図8】脛骨神経および総腓骨神経への末梢神経刺激による、ラット足関節の目標角への追従結果の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、実施形態を通じて本技術を説明するが、本技術は以下の実施形態に限定されない。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。
【実施例
【0019】
図1は、本実施形態に係る神経刺激システム(010)の全体構成を説明するための概念図である。本実施形態においては、ラット後肢を想定した図を用いているが、人体の腕、足など他の生体、他の部位であっても構わない。
【0020】
図1の例では、計測ユニット(100)によってラット後肢の状態を計測し、その情報を制御ユニット(200)へ送信している。計測ユニット(100)は身体の状態を計測するセンサであり、例えばビジョンセンサや角度センサ、圧力センサ、表面筋電位センサなどがある。
【0021】
図2では、計測ユニット(100)としてビジョンセンサを用いた例を表している。例えば、ラット後肢の膝関節、足関節、爪先にそれぞれ膝関節位置マーカー(501)、足関節位置マーカー(502)、爪先位置マーカー(503)を設置する。この3つのマーカーから、現在の足関節角度(506)を計測する。また、例えば目標位置マーカー(504)を設置することで、膝関節位置マーカー(501)、足関節位置マーカー(502)、目標位置マーカー(504)の3点からラット足関節の目標角度を決定することができる。
【0022】
制御ユニット(200)は計測ユニット(100)から受け取った情報を基に、ラット後肢の現在の状態と目標とする状態との差を計算し、必要な神経刺激の情報( 刺激する神経と、各神経に印加する刺激量) を送電ユニット(300)に送る。
【0023】
送電ユニット(300)は制御ユニット(200)から受け取った情報を基に、刺激する神経(510)、および各神経(510)の刺激電流量に関する情報を受電ユニット(400)に送る。この時、例えば複数の送電周波数(301)を用意し、各送電周波数(301)に対応して刺激する神経( 510) を対応させる。図3に送電周波数(301)と刺激神経の関係に関する例を示す。
【0024】
図3の例では、ラットの脛骨神経、総腓骨神経の2つの神経にそれぞれ神経刺激電極( 430) を接続している。2つの神経刺激電極( 430) は受電信号解析・刺激信号生成モジュール(410)から送られてくる神経の刺激信号を用いて、脛骨神経および腓骨神経をそれぞれ独立して刺激する。例えば、送電ユニット(300)から受電ユニット(400)へと送られる無線給電のための送電周波数(301)がある基準となる周波数、例えば100kHzの場合にはどちらの神経も刺激しないが、送電周波数(301)が基準となる周波数よりも一定以上低くなる場合、例えば90kHzになった場合には総腓骨神経を、送電周波数(301)が基準となる周波数よりも一定以上高くなる場合、例えば110kHzになった場合には脛骨神経をそれぞれ刺激することとする。このように、送電周波数(301)を切り替えることで、複数の神経(510)を選択的に刺激できる。
【0025】
刺激する各神経( 510) に対する刺激強度の調整には、送電信号の振幅の大きさを用いる。送電信号の振幅の大きさに比例して神経刺激の刺激強度を調節することができる。
【0026】
図4の例では、送電ユニット(300)の構成要素例を示している。送電ユニット(300)はまず制御ユニット(200)から送られてきた信号を基に、マイクロコンピュータが発振器・スイッチ(313)とレギュレータ(314)の制御を行う。発振器・スイッチ(313)とレギュレータ(314)は、直流電源(311)から電力が供給され、動作することができる。発振器・スイッチ(313)によって刺激する神経に対応した送電周波数(301)を送電信号送信モジュール(320)に送り、レギュレータ(314)によって神経刺激強度に対応する送電信号の振幅を送電信号送信モジュール(320)に送る。送電信号送信モジュール(320)は、発振器・スイッチ(313)およびレギュレータ(314)から送られてきた送電周波数( 301) および送電信号の振幅を用いて受電ユニット(400)に電力を供給することができる。
【0027】
図5の例では、受電ユニット(400)の構成要素例を示している。上記送電ユニット(300)から送られてきた信号を、送電信号受電モジュール(420)によって受け取り、電源供給ユニット(411)およびローパスフィルタ(412)へと送る。ここで、送電信号受電モジュール(420)にて受け取る信号の周波数は、送電周波数(301)と同じである。電源供給ユニット(411)では、整流・平滑化回路により受電信号を直流電源へと変換する。変換された直流電源は、ローパスフィルタ(412)、コンパレータ(413)、電圧制御電流源(414)、電極切り替えコントローラ(415)へ供給され、これらを駆動する電力として用いられる。
【0028】
図5の例におけるローパスフィルタ(412)では、送電周波数(301)と同じ周波数である受電信号が、ある閾値よりも低い場合には受電信号の振幅をほとんど変化させないが、ある閾値よりも高い場合には受電信号の振幅を大幅に減衰させる特性を持つ。ローパスフィルタ(412)を通過した信号の振幅を、コンパレータによってある閾値と比較することで、受電信号の振幅がある閾値よりも高いか低いかを判別し、その結果を電圧制御電流源(414)および電極切り替えコントローラ(415)に送る。
【0029】
ローパスフィルタ(412)のカットオフ周波数を変更した複数のローパスフィルタ(412)を用いることにより、複数の閾値を設定することができ、コンパレータは2つ以上の異なる送電周波数(301)を判別し、その結果を電圧制御電流源(414)および電極切り替えコントローラ(415)に送ることができる。
【0030】
図5の例に示す電圧制御電流源( 414) では、神経の抵抗値によって刺激電流値が変化しないよう、電圧を基にした定電流源を作ることができる。電極切り替えコントローラでは、複数の神経刺激電極( 430) 、例えば神経刺激電極1と神経刺激電極2の2つの刺激電極に対して、どちらの電極に刺激を行うのかをコンパレータ(413)からの出力を基に切り替え、刺激を行わない神経刺激電極( 430) は回路から切り離すことができる。
【0031】
図6の例では、受電ユニット(400)の構成要素であるローパスフィルタ(412)の周波数特性の例を示している。この例では、カットオフ周波数を90kHzとし、サレンキー3次ローパスフィルタを用いている。横軸に送電周波数(301)、縦軸にゲイン(302)を取ると、カットオフ周波数の90kHz付近を境に、それ以上の高周波数ではゲインを急激に下げることができる。このようなローパスフィルタを用いると、出力される信号の振幅の違いから、送電周波数( 301) が例えば100kHzよりも高いか低いか、を判別することが可能となる。
【0032】
図7の例では、弛緩状態(足関節角度約80°)のラット足関節に対して目標足関節角度( 507) を40°に設定した際のステップ応答の結果を示した例である。図7に示すように、実験開始と共に総腓骨神経が刺激されることで背屈運動が起こり、約0. 2秒で目標足関節角度(507)の40°に足関節角度( 506) が一致した。
【0033】
図8の例では、目標足関節角度(507)を変化させたときのラットの足関節角度(506)の追従を計測した結果である。この例では、目標足関節角度(507)と足関節角度(506)の差に比例して脛骨神経刺激( 403) または総腓骨神経刺激(404)の刺激量を変化させる比例制御と、直前の脛骨神経刺激( 403) または総腓骨神経刺激(404)の刺激量に対して、目標足関節角度(507)と足関節角度(506)の差に比例した刺激量を加える積分制御の2つの制御を組み合わせた比例積分制御によって足関節角度(506)を制御した。その結果、図8の例に示すように、目標足関節角度(507)に追従する形で足関節角度(506)が変化することが確認された。
【符号の説明】
【0034】
100 計測ユニット
200 制御ユニット
300 送電ユニット
301 送電周波数
302 ゲイン
310 送電信号生成モジュール
311 直流電源
312 マイクロコンピュータ
313 発振器・スイッチ
314 レギュレータ
320 送電信号送信モジュール
400 受電ユニット
401 神経刺激信号
402 神経刺激なし
403 総腓骨神経刺激
404 脛骨神経刺激
410 受電信号解析・刺激信号生成モジュール
411 電源供給ユニット
412 ローパスフィルタ
413 コンパレータ
414 電圧制御電流源
415 電極切り替えコントローラ
420 送電信号受電モジュール
430 神経刺激電極
500 生体肢
501 膝関節位置マーカー
502 足関節位置マーカー
503 爪先位置マーカー
504 目標位置マーカー
505 弛緩時足関節角度
506 足関節角度
507 目標足関節角度
510 末梢神経
520 主動筋
521 拮抗筋
522 背屈運動
523 底屈運動
530 皮膚
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8