(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】車両用荷室
(51)【国際特許分類】
B60P 3/34 20060101AFI20240930BHJP
B62D 33/00 20060101ALI20240930BHJP
B62D 33/04 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
B60P3/34
B62D33/00 A
B62D33/04 F
(21)【出願番号】P 2024092773
(22)【出願日】2024-06-07
【審査請求日】2024-06-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519456860
【氏名又は名称】有限会社ツカサオート
(74)【代理人】
【識別番号】100177921
【氏名又は名称】坂岡 範穗
(74)【代理人】
【識別番号】100228038
【氏名又は名称】山口 めぐみ
(72)【発明者】
【氏名】谷内 司
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-32773(JP,A)
【文献】特開2023-32774(JP,A)
【文献】米国特許第3572809(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0017096(US,A1)
【文献】特開2008-254662(JP,A)
【文献】実開昭62-127896(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 3/34
B62D 33/00
B62D 33/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の荷室の外郭を構成するとともに開口部を備える主荷室と、
前記開口部から前記主荷室の内側に収納される副荷室と、
前記副荷室を前記開口部から外側へ引き出して前記荷室を拡張可能にするスライド機構と、
前記副荷室が収納されたときは前記主荷室と前記副荷室に収納され、前記副荷室が引き出されたときは主に前記主荷室の側に残される第1車内構造物と、
前記第1車内構造物のうち前記主荷室の側かつ前記主荷室の床面に設けられて、前記第1車内構造物を支持する据付支持部と、
前記第1車内構造物のうち前記副荷室の側に設けられかつその下端にキャスタを備えて、前記第1車内構造物を支持する転動支持部と、を備え、
前記副荷室が収納されたときは前記キャスタが前記副荷室の床面に当接され、
前記副荷室が引き出されたときは前記キャスタが前記主荷室の床面に当接されることを特徴とする車両用荷室。
【請求項2】
前記副荷室の床面において、その先端がスロープ状に傾斜されている傾斜部を備える請求項1に記載の車両用荷室。
【請求項3】
前記転動支持部の長さを伸縮可能とする伸縮機構を備える請求項2に記載の車両用荷室。
【請求項4】
前記転動支持部が、キャスタ転換部、主キャスタ、及び副キャスタを備え、
前記キャスタ転換部は、前記転動支持部の下端に設けられて、その先端が下方向から前記据付支持部の方向に回動可能に構成され、
前記主キャスタは、前記キャスタ転換部の先端に設けられ、
前記副キャスタは、前記主キャスタより前記副荷室の側に設けられて、その下端が前記副荷室の床面に載ったときに前記主キャスタが前記主荷室の床面から浮く高さに設けられ、
前記副荷室が収納されているときは、前記副キャスタが前記副荷室の床面に当接されつつ、前記キャスタ転換部が前記据付支持部の方に回動されて前記主キャスタ又は前記キャスタ転換部が前記副荷室の床面に載置され、
前記副荷室が引き出されたときは、前記キャスタ転換部が下方向にあって前記主キャスタが前記主荷室の床面に当接される請求項1に記載の車両用荷室。
【請求項5】
前記キャスタ転換部が下方向にあるとき、前記キャスタ転換部が回動されるときの支点より、前記主キャスタが前記主荷室の床面に当接される箇所が前記副荷室の側にあり、
前記キャスタ転換部が下方向になるよう付勢する付勢部を備える請求項4に記載の車両用荷室。
【請求項6】
前記副荷室の床面に床穴が設けられ、前記副荷室が前記主荷室に収納されたとき、前記キャスタが前記床穴に嵌まるように構成される請求項1又は2に記載の車両用荷室。
【請求項7】
前記据付支持部が、前記主荷室の床面に設けられるレールに取付けられ、
前記転動支持部を前記主荷室の床面又は前記副荷室の床面から浮かせることで、前記第1車内構造物が前記レールに沿って移動可能な構成とされる請求項1ないし5のいずれか1項に記載の車両用荷室。
【請求項8】
前記据付支持部が、前記主荷室の床面に設けられるレールに取付けられ、
前記キャスタが自在キャスタであり、
前記第1車内構造物が前記レールに沿って移動可能に構成される請求項1ないし3のいずれか1項に記載の車両用荷室。
【請求項9】
前記据付支持部が、前記主荷室の床面に設けられるレールに取付けられ、
前記主キャスタが自在キャスタであり、
前記副荷室を引き出したときに、前記第1車内構造物が前記レールに沿って移動可能に構成される請求項4又は5に記載の車両用荷室。
【請求項10】
前記副キャスタが自在キャスタであり、
前記副荷室を収納したときに、前記第1車内構造物が前記レールに沿って移動可能に構成される請求項9に記載の車両用荷室。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャンピングカーやキッチンカー等に用いることができる、室内空間を拡張可能とする車両用荷室に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば実開昭62-4480号公報に、本体に補助箱を挿入して伸縮自在にしたカーハウスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示されている技術では、室内空間に配置される車内構造物をどう配置するかの記載はされていない。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みなされたもので、車内構造物の配置を工夫することで、荷室内の空間を有効活用することができる車両用荷室を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両用荷室は、
車両の荷室の外郭を構成するとともに開口部を備える主荷室と、
前記開口部から前記主荷室の内側に収納される副荷室と、
前記副荷室を前記開口部から外側へ引き出して前記荷室を拡張可能にするスライド機構と、
前記副荷室が収納されたときは前記主荷室と前記副荷室に収納され、前記副荷室が引き出されたときは主に前記主荷室の側に残される第1車内構造物と、
前記第1車内構造物のうち前記主荷室の側かつ前記主荷室の床面に設けられて、前記第1車内構造物を支持する据付支持部と、
前記第1車内構造物のうち前記副荷室の側に設けられかつその下端にキャスタを備えて、前記第1車内構造物を支持する転動支持部と、を備え、
前記副荷室が収納されたときは前記キャスタが前記副荷室の床面に当接され、
前記副荷室が引き出されたときは前記キャスタが前記主荷室の床面に当接されることを特徴とする。
【0007】
本発明の車両用荷室によれば、副荷室を引き出したときに主荷室の床面に当接されているキャスタが、副荷室の収納時には副荷室の床面に乗り上げて当接される。これにより、比較的大きな第1車内構造物を荷室内に設置することができる。
【0008】
本発明の車両用荷室の好ましい例は、
前記副荷室の床面において、その先端がスロープ状に傾斜されている傾斜部を備える。
【0009】
本発明の車両用荷室の好ましい例によれば、キャスタを副荷室の床面に滑らかに乗り上げさせることができる。
【0010】
本発明の車両用荷室の好ましい例は、
前記転動支持部の長さを伸縮可能とする伸縮機構を備える。
【0011】
本発明の車両用荷室の好ましい例によれば、キャスタが主荷室の床面にあるときと、副荷室の床面に乗り上げたときとの第1車内構造物の高さを同じにすることができる。
【0012】
本発明の車両用荷室の好ましい例は、
前記転動支持部が、キャスタ転換部、主キャスタ、及び副キャスタを備え、
前記キャスタ転換部は、前記転動支持部の下端に設けられて、その先端が下方向から前記据付支持部の方向に回動可能に構成され、
前記主キャスタは、前記キャスタ転換部の先端に設けられ、
前記副キャスタは、前記主キャスタより前記副荷室の側に設けられて、その下端が前記副荷室の床面に載ったときに前記主キャスタが前記主荷室の床面から浮く高さに設けられ、
前記副荷室が収納されているときは、前記副キャスタが前記副荷室の床面に当接されつつ、前記キャスタ転換部が前記据付支持部の方に回動されて前記主キャスタ又は前記キャスタ転換部が前記副荷室の床面に載置され、
前記副荷室が引き出されたときは、前記キャスタ転換部が下方向にあって前記主キャスタが前記主荷室の床面に当接される。
【0013】
本発明の車両用荷室の好ましい例によれば、副荷室が収納されたときは副キャスタが副荷室の床面に当接されて第1車内構造物の重さを支える。また、副荷室が引き出されたときは主キャスタが主荷室の床面に当接されてて第1車内構造物の重さを支える。これにより、副荷室の収納時と引き出し時とで第1車内構造物の高さを略一定にすることができる。
【0014】
本発明の車両用荷室の好ましい例は、
前記キャスタ転換部が下方向にあるとき、前記キャスタ転換部が回動されるときの支点より、前記主キャスタが前記主荷室の床面に当接される箇所が前記副荷室の側にあり、
前記キャスタ転換部が下方向になるよう付勢する付勢部を備える。
【0015】
本発明の車両用荷室の好ましい例によれば、副荷室の収納動作と引き出し動作のとき、人が手を添えることなく、自動でキャスタ転換部を下方向に固定又は据付支持部の方向に回動させることができる。
【0016】
本発明の車両用荷室の好ましい例は、
前記副荷室の床面に床穴が設けられ、前記副荷室が前記主荷室に収納されたとき、前記キャスタが前記床穴に嵌まるように構成される。
【0017】
本発明の車両用荷室の好ましい例によれば、副荷室が収納されたときは、キャスタが床穴に嵌まって主荷室の床面に当接される。これにより、副荷室の収納時と引き出し時とで第1車内構造物の高さを略一定にすることができる。
【0018】
本発明の車両用荷室の好ましい例は、
前記据付支持部が、前記主荷室の床面に設けられるレールに取付けられ、
前記転動支持部を前記主荷室の床面又は前記副荷室の床面から浮かせることで、前記第1車内構造物が前記レールに沿って移動可能な構成とされる。
【0019】
本発明の車両用荷室の好ましい例は、
前記据付支持部が、前記主荷室の床面に設けられるレールに取付けられ、
前記キャスタが自在キャスタであり、
前記第1車内構造物が前記レールに沿って移動可能に構成される。
【0020】
本発明の車両用荷室の好ましい例は、
前記据付支持部が、前記主荷室の床面に設けられるレールに取付けられ、
前記主キャスタが自在キャスタであり、
前記副荷室を引き出したときに、前記第1車内構造物が前記レールに沿って移動可能に構成される。
【0021】
本発明の車両用荷室の好ましい例は、
前記副キャスタが自在キャスタであり、
前記副荷室を収納したときに、前記第1車内構造物が前記レールに沿って移動可能に構成される。
【0022】
これらの本発明の車両用荷室の好ましい例によれば、第1車内構造物を主荷室内又は副荷室内でレールに沿って移動させることができる。
【発明の効果】
【0023】
上述したように、本発明の車両用荷室によれば、車内構造物の配置を工夫することで、荷室内の空間を有効活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両用荷室の側面図である。
【
図2】
図1に示す車両用荷室の反対側の側面図である。
【
図5】主荷室及び副荷室の天板を取外した状態の平面図である。
【
図7】車両用荷室の後扉及び副荷室の後方の壁面を取外した状態の背面図である。
【
図8】
図5に示す状態から後扉を開けて副荷室を引き出した状態を示す図である。
【
図10】
図8において第1車内構造物を主荷室の側面に移動した状態を示す図である。
【
図11】
図8において第2車内構造物を移動させた状態を示す図である。
【
図12】
図8において第1車内構造物と第2車内構造物を移動させた状態を示す図である。
【
図13】第1車内構造物の動作を説明する図である。
【
図14】第1車内構造物の動作を説明する他の図である。
【
図15】第1車内構造物の動作を説明する他の図である。
【
図16】
図15の拡大図、及び他の実施形態を説明する図である。
【
図17】他の実施形態に係る車両用荷室を説明する図である。
【
図19】レールとその周辺構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[第1実施形態]
以下、本発明の車両用荷室1の実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、
図1から
図4においては、トラック5(車両)を一点破線で表わしている。また、
図5、
図8、及び
図10から
図12においては、第1車内構造物40の一部と第2車内構造物50の一部を破線で表わしている。また、
図8から
図12においては、後扉15の上開き扉16とその周辺を一点破線で表わしている。なお、本実施形態の車両用荷室1はトラック5の荷台6に積載されるものであるが、これに限られず、バンタイプ又はワゴンタイプの車両の荷室を同様に改造することも可能である。また、本実施形態の車両用荷室1は、図示しない固定機構によって、トラック5の荷台6に固定されている。
【0026】
図1から
図9に示すように、本実施形態の車両用荷室1は、主荷室10と、副荷室30と、スライド機構31と、第1車内構造物40と、第2車内構造物50と、を備える。主荷室10は、車両用荷室1の外郭を構成するとともにその後端に開口部11を備えるものであり、その前上部には前方に張り出す張出し部12が設けられる。また、主荷室10の側面には人の出入りのための横扉14が設けられ、背面には副荷室30の出し入れのための後扉15が設けられる。
【0027】
後扉15は、少なくともその一部が上開き扉16となっており、上開き扉16の左右方向の両端には雨よけ板17が設けられる。この雨よけ板17は、後扉15を閉めたときには、主荷室10の外側面に設けられるカバー13、又は主荷室10の外側面を構成する外板23と内側面を構成する内板24との間に収納される(後者は図示せず、外板23と内板24については
図7参照。)。また、雨よけ板17は、後扉15を開けたときには、後扉15の左右両端から垂下されるよう構成される。さらに、上開き扉16を開いた状態で、上開き扉16の後側の端部からカーテン18等を垂らすことも可能である(
図8、
図9等参照)。
【0028】
本実施形態では、後扉15の上部が上開き扉16で、下部が下開き扉19となっており、それぞれがヒンジ20,21によって主荷室10の後端に連結されている。これらの上開き扉16と下開き扉19には、略水平に開いた状態で固定するためのストッパー(図示せず)が設けられる。また、後扉15の下半分は下開き扉19となっているが、これに限られず左右開きの扉であってもよいし、後扉15の全てが上開き扉16であってもよい。
【0029】
副荷室30は、主荷室10の開口部11から主荷室10の内側に収納されるものであり、主荷室10に対して入れ子構造のようになっている。この副荷室30は、その後方が壁面34又は窓(図示せず)となっており、前方が開放されて主荷室10と連通している。また、スライド機構31によって、副荷室30が主荷室10の開口部11から外側へ引き出し可能に構成され、主荷室10及び副荷室30からなる荷室2が拡張可能となる。このスライド機構31としては、公知のスライドレール、ころ、滑り支承等が用いられ、本実施形態ではスライドレールを採用している。また、副荷室30と主荷室10との隙間s1(
図7参照)には、図示しないゴムパッキン等が設けられて、外気や虫の侵入を防止する。また、副荷室10の床面66は、その先端がスロープ状に傾斜される傾斜部32を備える。副荷室30を主荷室10から引き出すときには、後扉15は開かれた状態となることは勿論である。なお、後扉15を備えずに、副荷室30の後方の壁面34を車両用荷室1の後面に露出させ、壁面34を後扉15の代わりとしてもよい。
【0030】
第1車内構造物40は、荷室2の中に配置される椅子、テーブル、ベッド、又は調理台等の構造物であって、副荷室30が収納されたときは主荷室10と必要に応じてその一部が副荷室30に収納される。一方、副荷室30が引き出されたときは、第1車内構造物40は副荷室30についていかず主荷室10の側に留まって残される。もっとも、第1車内構造物40の大きさによっては、副荷室30を引き出した後もその一部が副荷室30にも残ることがある。この第1車内構造物40は、後述する据付支持部41と転動支持部42によって支持される。
【0031】
第1車内構造物40、据付支持部41、及び転動支持部42の詳細を、
図13を用いて説明する。第1車内構造物40は、天板43を備える。なお、この天板43は例示であり、例えば第1車内構造物40がベッドであればマットレスを備えることになる。また、調理台であれば、シンクや加熱調理器等をそなえる部材となる。据付支持部41は、第1車内構造物40のうち主荷室10の側かつ主荷室10の床面65に設けられて、天板43(第1車内構造物40)を支持するものである。据付支持部41は、脚柱44とレール嵌合部47と屈曲部46とを備える。脚柱44は、天板43の底面から下方向に延伸されるパイプ材である。レール嵌合部47は、後述するレール22の溝に嵌められ、レール22に沿って移動可能にされる部材である。屈曲部46は、脚柱44とレール嵌合部47との間、脚柱44と天板43との間、又は脚柱44の途中に設けられるものであり、水平方向の軸46aを支点に屈曲されて天板43を傾斜可能にするものである。なお、レール22とレール嵌合部46との遊びがあって天板43が傾斜可能になるとき、又は脚柱44が弾性変形して天板43が傾斜可能になる等の事情があれば、屈曲部46は不要である。
【0032】
転動支持部42は、第1車内構造物40のうち副荷室30の側に設けられかつその下端にキャスタ48を備えて、天板43(第1車内構造物40)を支持するものである。転動支持部は42は、キャスタ48の他にも脚柱45を備える。脚柱45は、天板43の底面から下方向に延伸されるパイプ材である。キャスタ48は、脚柱45の下端に設けられる車輪であり、その向きは副荷室30の出し入れ方向と同じである。なお、脚柱45に伸縮機構52を設けて伸縮可能な構成にしておけば、副荷室30を主荷室10に収納した状態であっても天板43を水平に保つことできる(伸縮機構52は
図13のみに記載)。この伸縮機構52として、本実施形態では筒53に挿入された脚柱45を固定ねじ54で固定する構成としている。もっとも、筒53を雌ねじとして脚柱45を雄ねじにして互いに螺合させることや、クランプ機構など、他の構成を用いて伸縮機構とすることも可能である。
【0033】
また、主荷室10の床面65の左右方向には、レール22が設けられ、上述した据付支持部41がレール22にスライド可能に設置される。このレール22として、例えば、
図19に示すような断面凹字状のものを用いて、その窪みに据付支持部41の下端を嵌めることもできる。もっとも、これに限られず、リップ溝形鋼(C形鋼)や各種の直動軸受等を用いることもできる。また、レール22の取付方向も本実施形態の左右方向に限られず、主荷室10の床面に沿っていれば前後方向や斜め方向に設けてもよい。
【0034】
また、据付支持部41がレール22に沿って動かないようにする固定手段60には、例えば、同じく
図19に示すように、据付支持部41に設けられるブラケット61の孔62と床面65の孔63とを重ねて、そこにボールロックピン64を差し込むようにすることができる。もっとも、固定手段60もこれに限られず、レール22に対する他の固定手段や、第1車内構造物40を主荷室10又は副荷室30の側面にバンドで固定する等、様々な公知の方法又は構成を用いることができる。
【0035】
第2車内構造物50は、副荷室30に設置されて副荷室30とともに引き出されるもので、第1車内構造物40同様に椅子、テーブル、ベッド、又は調理台等の構造物である。この第2車内構造物50は、第2支持部51によって副荷室30の天井面、床面、又は側面に取付けられる。本実施形態では、第2支持部51として4本のパイプを用いているが、これに限られず例えば1本の脚部等であってもよい。また、副荷室30においても床面の左右方向に一対のレール33が設けられ、第2支持部51がレール33にスライド可能に設置される。第2支持部51の固定は上記同様に、例えば
図19に示す方法によってなされる。また、第2支持部51及びレール33の取付位置については、副荷室30の天井又は側面であってもよく(後述する他の実施形態においても同様)、レール33の取付方向も実質的に水平であれば前後方向や斜め方向であってもよい(後述する他の実施形態においても同様)。
【0036】
次に、上記の
図1から
図9に加え、
図10から
図13も参照して、本実施形態の車両用荷室1の使用方法を説明する。
【0037】
トラック5の走行時等においては、
図1から
図7に示すように、副荷室30は主荷室10の中に収納され、後扉15は閉じられている。このとき、
図13の破線で示すように、転動支持部42のキャスタ48が、副荷室30の床面に乗り上げて、天板43が傾斜することにより、副荷室30の主荷室10への収納を妨げないようになっている。また、傾斜部32により、キャスタ48が副荷室30の床面66に滑らかに乗り上げることができる。
【0038】
次に、トラック5を駐車して、
図8及び
図9に示すように、副荷室30を主荷室10の開口部11から引き出す。先ずは、後扉15を開けて開口部11を開放する。次に、副荷室30をスライド機構31によってスライドさせ、主荷室10の開口部11から引き出す。このとき、第1車内構造物40は、据付支持部41がレール22に設置されていることで、そのまま主荷室10の側に残される。また、転動支持部42は、そのキャスタ48が副荷室30の床面66を転がることで、
図13の実線で示すように、主荷室10の床面65に降ろされる。このときも、傾斜部32があることで副荷室30の床面66から主荷室10の床面65に、キャスタ48を滑らかに降ろすことができる。一方、第2車内構造物50は副荷室30とともに引き出される。
【0039】
副荷室30は、引き出された後に必要に応じてその後端部近傍から地面に垂下して当接される支持機構等(図示せず)を設置することで、副荷室30の重量を支えることができる。そして、副荷室30の上面及び側面の一部は、上開き扉16と上開き扉16に設けられた雨よけ板17によって覆われ、必要に応じて後壁34の一部もカーテン18によって覆われる。
【0040】
ここで、
図9に示すように本発明の車両用荷室は、主荷室10のうち張出し部12を除いた実質的な長さ(奥行き)L1に対して、副荷室30の長さL2が約2/3となっている。また、副荷室30の引き出し長さL3は、主荷室10の長さL1の約2/5であり、副荷室30の長さL2の約2/3である。そして、
図6に示すように、副荷室30を主荷室10に収納した状態では、主荷室の室内空間のうち張出し部12を除いた実質的な長さL4に対して、使用可能な長さL5は約1/3である。
【0041】
一般的に、上記のように副荷室30を大きくして、副荷室30がここまで主荷室10の中まで深く入ってしまうと、副荷室30を収納した状態では主荷室10の床面の使用可能な長さL5が短くなるため、第1車内構造物40を含めた車内構造物は、その殆どを副荷室30に設置することになる。そして、車内構造物を副荷室30に設置した状態で、副荷室30を大きく引き出すと、車内構造物の位置が大きく変わってしまい、使い勝手が悪くなるばかりか、車両用荷室1の重心が大きく後方に移動して、場合によっては車両用荷室1が後側に転倒する恐れもある。また、転倒まではいかないまでも、トラック5を含めて車両用荷室1が大きく後方に傾くことになり使い勝手が悪くなる。さらに、スライド機構31にも大きな力が加わることになり、スライド機構31も耐荷重性能に優れたものを使用しなければならなくなる。
【0042】
一方、本発明の車両用荷室1では、少なくとも第1車内構造物40は主荷室10の側に残るため、重心が大きく後方に移動することがなく、使い勝手に優れる。なお、副荷室30の引き出し長さL3は、スライド機構31が副荷室30の重さに耐えられる範囲であれば特に制限はなく、例えば副荷室30の長さL2全てを引き出してもよい。
【0043】
次に、
図10から
図12に示すように、第1車内構造物40及び第2車内構造物50をレール22,33の上で移動させて所望の配置にする。このとき、第1車内構造物40は、転動支持部42の側を持ち上げて、キャスタ48を床面65から浮かせて移動させる。第1車内構造物40と第2車内構造物50を移動させる例として、
図10に示す態様では、第1車内構造物40を主荷室10の一方の側面(右側面)に当接させて、主荷室10の中央の空間を広げている。また、
図11に示す態様では、第2車内構造物50を副荷室30の一方の側面に当接させて、第1車内構造物40と連続させている。また、
図12に示す態様では、第2車内構造物50を副荷室30の他方の側面(左側面)に当接させるとともに、第1車内構造物40も主荷室10の他方の側面に近接させて第2車内構造物50と連続させている。これら
図11及び
図12のように、第1車内構造物40と第2車内構造物50とを連続して配置することで、本実施形態の車両用荷室1は、例えばキッチンカー等にも好適である。なお、第2車内構造物50を備えない態様では、副荷室30を主荷室10に収納させた状態でも、第1車内構造物40を左右方向に移動させることができる(他の実施形態も同様。)。
【0044】
[第2実施形態]
次に、
図14を参照して、第1車内構造物140及びその周辺の第2実施形態を説明する。第1実施形態と同じ箇所には同じ符号を付して、その説明を省略する(後述する実施形態も同様。)。本実施形態では、転動支持部142のキャスタに自在キャスタ149を採用している。これにより、
図10ないし
図12に示すように第1車内構造物140を左右方向に移動させるときに、第1車内構造物140の転動支持部142の側を持ち上げる必要がなくなる。
【0045】
[第3実施形態]
次に、
図15及び
図16(A)~(C)を参照して、第1車内構造物240及びその周辺の第3実施形態を説明する。本実施形態では、転動支持部242が、脚柱245、キャスタ転換部270、主キャスタ271、及び副キャスタ276を備える。脚柱245は既に述べた実施形態同様である。キャスタ転換部270は、脚柱245(転動支持部242)の下端に設けられて、その先端が下方向から据付支持部241の方向、すなわち副荷室30が収納される方向に回動可能に構成されるものである。
【0046】
キャスタ転換部270は、回動可能な主キャスタ取付部272と、主キャスタ取付部272を脚柱245の下端近傍で軸支する軸273と、主キャスタ取付部272が下方向となるよう付勢する付勢部274とを備える。この付勢部274として、本実施形態ではコイルばね274を用いているが、他のばねや
図16(A)の破線で示す錘275等であってもよい。
【0047】
主キャスタ271は主キャスタ取付部272の先端に設けられ、主キャスタ取付部272とともに移動する。なお、
図16(A)に示すように、主キャスタ取付部272(キャスタ転換部270)が下方向にあるとき、主キャスタ取付部272(キャスタ転換部270)が回動されるときの支点である軸273より、主キャスタ271が主荷室10の床面65に当接される箇所が、副荷室30の側にオフセットof1されている。このオフセットof1により、副荷室30を引き出しているときに、主キャスタ取付部272が据付支持部241の側に回動することがなく、安定性に優れる。
【0048】
副キャスタ276は、副キャスタ取付部277により、脚柱245のうち主キャスタ271より副荷室30の側に設けられている。副キャスタ276は、副キャスタ276の下端が副荷室30の床面66に載ったときに、主キャスタ271が主荷室10の床面65から浮く高さに設けられている。例えば、
図16(B)に示すように、副荷室30の床面66に副キャスタ276が載ったとき、主キャスタ271と主荷室10の床面65との間に隙間s2ができる。
【0049】
本実施形態では、キャスタ転換部270の回動によって、副荷室30の出し入れに伴う天板43の傾斜が生じない。このため、基本的に据付支持部241に屈曲部46(
図14等参照)を備える必要がない。また、第1実施形態のような伸縮機構52も必要もない。同様の理由により、副荷室30の床面66の先端に傾斜部32(
図14等参照)を設ける必要もない。
【0050】
本実施形態の動作を説明する。
図15及び
図16(A)に示す状態では、主荷室10から副荷室30が引き出されており、主キャスタ271が主荷室10の床面65に当接されて、据付支持部241とともに第1車内構造物240(天板43)の重さを支えている。次に、主荷室10に副荷室30が収納されるとき、
図16(B)に示すように、先ず副キャスタ276が副荷室30の床面66に乗り上げる。このとき、主キャスタ271は主荷室10の床面65から浮いた状態となるが、付勢部274の符勢力によって主キャスタ取付部272が下方向に保たれる。次に、
図16(C)に示すように、さらに副荷室30が主荷室10に収納されると、副荷室30の床面66の先端で主キャスタ271が押されて主キャスタ取付部272が据付支持部241の方に回動し、副荷室30の床面66に主キャスタ271が載置される。このとき、キャスタ取付部272の形状によっては、副荷室30の床面66にキャスタ取付部272が載置されることもある。副荷室30が収納されているとき、転動支持部242の脚柱245を支えているのは副キャスタ276である。副荷室30を主荷室10から引き出すときは、上記と逆の動きとなる。このとき、付勢部274によって主キャスタ取付部272が下方向に回動するよう付勢されているため、速やかに
図16(A)に示す状態となる。
【0051】
また、他の実施形態として、
図16(D)に示すように、主キャスタ371を自在キャスタ371とすることもできる。この場合でも、主キャスタ取付部372(キャスタ転換部370)が回動されるときの支点(軸273)より、主キャスタ371が主荷室10の床面65に当接される箇所が副荷室30の側にオフセットof2されている。本実施形態では、副荷室30が収納されたときは、その床面66にはキャスタ取付部372と主キャスタ371の両方が載置される。
【0052】
さらに、他の実施形態として、
図16(E)に示すように、副キャスタ取付部477によって支持される副キャスタ476も、自在キャスタ476とすることができる。このような構成とすることで、副荷室30を主荷室10に収納した状態であっても、第1車内構造物240を荷室2内で、例えば左右方向に移動させることができる。本実施形態でも、副荷室30が収納されたときは、その床面66にはキャスタ取付部372と主キャスタ371の両方が載置される。
【0053】
[第4実施形態]
次に、
図17及び
図18を参照して、車両用荷室101の実施形態を説明する。なお、本実施形態の車両用荷室101は、その構成が第1実施形態に係る車両用荷室1と略同じであるため、全体としての説明は同じ符号を付して省略する。本実施形態の車両用荷室101は、副荷室30の床面66に床穴35が設けられる。床穴35が設けられる位置は、副荷室30を主荷室10に収納したとき、第1車内構造物40の転動支持部42がある位置である。この床穴35に、キャスタ48が嵌まり、キャスタ48が主荷室10の床面65に当接される。このため、副荷室30を引き出す又は押し入れる途中においては、キャスタ48が副荷室30の床面に載って第1車内構造物40が傾斜するが、副荷室30を完全に引き出した後、及び収納した後は、第1車内構造物40は傾斜することがない。また、副荷室30を完全に収納したときに、床穴35にキャスタ48が嵌まって副荷室30の引き出しに若干の抵抗となる。このため、図示しない固定装置で副荷室30を固定する前に、副荷室30をキャスタ48で仮固定することができる。さらに、床穴35にはキャスタ48の出し入れがしやすいように、傾斜部36が設けられる。
【0054】
以上、説明したように、これらの本実施形態に係る車両用荷室によれば、副荷室を主荷室から引き出すことができるため、荷室を拡張することができる。また、第1車内構造物と第2車内構造物とを組み合わせて、さらにこれらを移動させるレールを備えることで、様々な車内構造物のバリエーションを作ることができる。また、第2車内構造物を省く、又は第1車内構造物と第2車内構造物との組み合わせによっては、副荷室を主荷室に収納した状態であっても荷室内を普通に使用することができ、例えばキャンピングカー等において駐車場所、現地への到着時間、天候等の条件で副荷室を主荷室から引き出せないときも快適に過ごすことができる。
【0055】
また、副荷室を主荷室から引き出したとき、上開き扉と雨よけ板、及びカーテンで雨を避けることができ、特にそのままでは雨や露等が溜まりやすい副荷室の上面を濡らさずにすむ。このため、雨降りの後や夜露が降りた後に副荷室を主荷室に収納するときに、荷室内に水が入り込むことを抑制できる。
【0056】
また、副荷室を主荷室に収納するときに第1車内構造物と干渉することがなく、また副荷室を引き出しても第1車内構造物が主荷室の側に残るため、車両用荷室の重心の大幅な移動を抑制することができる。これらにより、副荷室の大きさを主荷室に対して比較的大きく設計することができ、副荷室を収納すれば車両用荷室を小さく、副荷室を引き出せば荷室を大きくとることができる。このため、例えば車両用荷室を積載する車両に軽トラック等の小さな車を用いても、問題なく運用することができる。
【0057】
また、転動支持部の脚柱は、キャスタ、主キャスタ、又は副キャスタによって支持されるため、第1車内構造物のために行う副荷室の床面の加工が、第4実施形態を除き不要である。また、第3実施形態に係る第1車内構造物では、副荷室の収納時と引き出し時において、第1車内構造物の天板の高さが殆ど変化することがない。このため、第1車内構造物が重量物又は第1車内構造物に重量物を載せていても、滑らかに副荷室の出し入れが可能となる。また、副荷室の床面に傾斜部を設ける必要がなく、副荷室又は主荷室の床面を有効利用することができる。
【0058】
また、第1車内構造物と第2車内構造物との組み合わせによっては、商業的な使用も可能であり、既に述べたキャンピングカー及びキッチンカーだけでなく、理容室、ペットサロン、各種の移動販売車等の様々な業種に用いることが可能である、
【0059】
なお、上述した車両用荷室は本発明の例示であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲においてその構成を適宜変更することができる。例えば、第1車内構造物と第2車内構造物とをそれぞれ複数配置することも可能であり、さらに第2車内構造物を備えずに第1車内構造物のみを備える構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0060】
1,101・・車両用荷室、2・・荷室、5・・トラック、6・・荷台、
10・・主荷室、11・・開口部、12・・張出し部、13・・カバー、14・・横扉、15・・後扉、16・・上開き扉、17・・雨よけ板、18・・カーテン、19・・下開き扉、
20,21・・ヒンジ、22・・レール(主荷室)、23・・外板、24・・内板、
30・・副荷室、31・・スライド機構、32・・傾斜部(床の先端)、33・・レール(副荷室)、34・・後方の壁面、35・・床穴、36・・傾斜部(床穴)
40,140,240・・第1車内構造物、41,241・・据付支持部、42,142,242・・転動支持部、43・・天板、44,45,245・・脚柱、46・・屈曲部、47・・レール嵌合部、48・・キャスタ、149,249・・自在キャスタ、
50・・第2車内構造物、51・・第2支持部、52・・伸縮機構、53・・筒、54・・固定ねじ、
60・・固定手段、61・・ブラケット、62,63・・孔、64・・ボールロックピン、65・・床面(主荷室)、66・・床面(副荷室)、
270,370・・キャスタ転換部、271,371・・主キャスタ、272,372・・主キャスタ取付部、273・・軸、274・・付勢部、275・・錘、276,476・・副キャスタ、277,377,477・・副キャスタ取付部
【要約】
【課題】車内構造物の配置を工夫することで、荷室内の空間を有効活用することができる車両用荷室を提供する。
【解決手段】車両の荷室2の外郭を構成するとともに開口部11を備える主荷室10と、前記開口部11から前記主荷室10の内側に収納される副荷室30と、前記副荷室30を前記開口部11から外側へ引き出して前記荷室2を拡張可能にするスライド機構31と、前記副荷室30が収納されたときは前記主荷室10と必要に応じて前記副荷室30に収納され、前記副荷室30が引き出されたときは前記主荷室10の側に残される第1車内構造物40と、を備える。また、第1車内構造物40は据付支持部41と転動支持部42によって支持され、転動支持部42の下端にはキャスタ48が設けられる。
【選択図】
図6