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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】気体発生装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 7/02 20060101AFI20240930BHJP
   C01B 11/02 20060101ALI20240930BHJP
   A61L 9/12 20060101ALI20240930BHJP
   B65D 77/04 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
B01J7/02 Z
C01B11/02 F
A61L9/12
B65D77/04 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020106717
(22)【出願日】2020-06-22
(65)【公開番号】P2022001348
(43)【公開日】2022-01-06
【審査請求日】2023-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000230630
【氏名又は名称】株式会社ルミカ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】原田 士郎
【審査官】太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-527658(JP,A)
【文献】特開2017-171334(JP,A)
【文献】特開昭62-162602(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 4/00 - 7/02
C01B 7/00 - 11/24
A61L 9/00 - 9/22
B65D 67/00 - 79/02
B65D 81/18 - 81/30
B65D 81/38
B65D 85/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間に複数種類の物質を収容し、前記複数種類の物質の化学反応によって生成された気体を透過させて外部に放出する第1の容器を有し、
前記第1の容器は、開口部を備え前記第1の容器から放出された気体を溶存させる溶存液を収容する第2の容器に収容されるようになっており、
前記溶存液は水であり、
前記第1の容器の内部空間に収容されている第3の容器を備えており、
前記第3の容器の内部空間には、第1の薬剤が収容されており、前記第1の容器の内部空間であって前記第3の容器の内部空間の外側の空間には、第2の薬剤が収容されており、
前記第3の容器が破壊されることによって、前記第1の薬剤と前記第2の薬剤とが前記第1の容器内で化学反応を起こし、前記気体が発生するように構成されており、
前記第1の薬剤は亜塩素酸ナトリウムであり、前記第2の薬剤はクエン酸であり、前記気体は二酸化塩素であり、
前記第1の容器は、弾性を備えており気体のみを透過させる合成樹脂で構成されており、前記合成樹脂は、ポリプロピレンもしくはポリエチレンもしくはシリコーンであるか、または、ポリプロピレン、ポリエチレン、シリコーンのうちの少なくとも2つの材料が混合されたものであることを特徴とする気体発生装置。
【請求項2】
請求項1に記載の気体発生装置であって、
前記亜塩素酸ナトリウムが水溶液の形態で前記第3の容器の内部空間に収容されており、前記クエン酸が、粉末状もしくはタブレット状の形態で前記第1の容器の内部空間であって前記第3の容器の内部空間の外側の空間に収容されているか、
または、前記亜塩素酸ナトリウムが粉末状もしくはタブレット状の形態で前記第3の容器の内部空間に収容されており、前記クエン酸が水溶液の形態で前記第1の容器の内部空間であって前記第3の容器の内部空間の外側の空間に収容されているか、
または、前記亜塩素酸ナトリウムが水溶液の形態で前記第3の容器の内部空間に収容されており、前記クエン酸が水溶液の形態で前記第1の容器の内部空間であって前記第3の容器の内部空間の外側の空間に収容されていることを特徴とする気体発生装置。
【請求項3】
内部空間に複数種類の物質を収容し、前記複数種類の物質の化学反応によって生成された気体を透過させて外部に放出する第1の容器を有し、
前記第1の容器は、開口部を備え前記第1の容器から放出された気体を溶存させる溶存液を収容する第2の容器に収容されるようになっており、
前記溶存液は水であり、
前記第1の容器の内部空間に収容されている第3の容器を備えており、
前記第3の容器の内部空間には、第1の薬剤が収容されており、前記第1の容器の内部空間であって前記第3の容器の内部空間の外側の空間には、第2の薬剤が収容されており、
前記第3の容器が破壊されることによって、前記第1の薬剤と前記第2の薬剤とが前記第1の容器内で化学反応を起こし、前記気体が発生するように構成されており、
前記第1の薬剤はクエン酸であり、前記第2の薬剤は亜塩素酸ナトリウムであり、前記気体は二酸化塩素であり、
前記第1の容器は、弾性を備えており気体のみを透過させる合成樹脂で構成されており、前記合成樹脂は、ポリプロピレンもしくはポリエチレンもしくはシリコーンであるか、または、ポリプロピレン、ポリエチレン、シリコーンのうちの少なくとも2つの材料が混合されたものであることを特徴とする気体発生装置。
【請求項4】
請求項3に記載の気体発生装置であって、
前記クエン酸が水溶液の形態で前記第3の容器の内部空間に収容されており、前記亜塩素酸ナトリウムが粉末状もしくはタブレット状の形態で前記第1の容器の内部空間であって前記第3の容器の内部空間の外側の空間に収容されているか、
または、前記クエン酸が粉末状もしくはタブレット状の形態で前記第3の容器の内部空間に収容されており、前記亜塩素酸ナトリウムが水溶液の形態で前記第1の容器の内部空間であって前記第3の容器の内部空間の外側の空間に収容されているか、
または、前記クエン酸が水溶液の形態で前記第3の容器の内部空間に収容されており、前記亜塩素酸ナトリウムが水溶液の形態で前記第1の容器の内部空間であって前記第3の容器の内部空間の外側の空間に収容されていることを特徴とする気体発生装置。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の気体発生装置であって、
前記第1の容器の開口部には蓋がされており、前記蓋は蓋本体と気体透過膜とを備えて構成されており、前記気体透過膜は、気体を透過させるが液体を透過させず遮断するようになっていることを特徴とする気体発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の気体を発生させる気体発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、亜塩素酸ナトリウムと酸化剤としてのクエン酸とを化学反応させることで、二酸化塩素を発生する気体発生装置が知られている(たとえば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-256141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記化学反応においては、殺菌等のために必要である二酸化塩素の他に不要物質であるクエン酸ナトリム等の反応物質が生成されてしまう。なお、次亜塩素酸ナトリウム(塩素剤)を使用して殺菌をする場合には、薬品のなかのナトリウムが有機物と反応し、この結果、好ましくない不要物質が生成されてしまうおそれがある。
【0005】
ここで、不要物質の発生による予期せぬ影響を除外すべく、亜塩素酸ナトリウムとクエン酸とを化学反応させることで、必要である二酸化塩素のみを得たいとの要望が発生する。また、生成された二酸化塩素は気体であるので、空気中ですばやく分散してしまい殺菌等に使用するときの使い勝手がよくないことがある。
【0006】
なお、上記要望は、クエン酸やクエン酸以外の物質を用いて二酸化塩素を発生させる場合や、二酸化塩素以外の気体を発生させる場合に同様に発生する。たとえば、香料等の物質から香成分のみを得たい場合にも同様に発生する。
【0007】
本発明は、必要とする気体(不純物を含まない気体)を得ることができるとともに、得られた気体の使い勝手を良くすることができる気体発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、内部空間に複数種類の物質を収容し、前記複数種類の物質の化学反応によって生成された気体を透過させて外部に放出する第1の容器を有し、
前記第1の容器は、開口部を備え前記第1の容器から放出された気体を溶存させる溶存液を収容する第2の容器に収容されるようになっており、前記溶存液は水であり、前記第1の容器の内部空間に収容されている第3の容器を備えており、前記第3の容器の内部空間には、第1の薬剤が収容されており、前記第1の容器の内部空間であって前記第3の容器の内部空間の外側の空間には、第2の薬剤が収容されており、前記第3の容器が破壊されることによって、前記第1の薬剤と前記第2の薬剤とが前記第1の容器内で化学反応を起こし、前記気体が発生するように構成されており、前記第1の薬剤は亜塩素酸ナトリウムであり、前記第2の薬剤はクエン酸であり、前記気体は二酸化塩素であり、前記第1の容器は、弾性を備えており気体のみを透過させる合成樹脂で構成されており、前記合成樹脂は、ポリプロピレンもしくはポリエチレンもしくはシリコーンであるか、または、ポリプロピレン、ポリエチレン、シリコーンのうちの少なくとも2つの材料が混合されたものである気体発生装置である。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の気体発生装置であって、前記亜塩素酸ナトリウムが水溶液の形態で前記第3の容器の内部空間に収容されており、前記クエン酸が、粉末状もしくはタブレット状の形態で前記第1の容器の内部空間であって前記第3の容器の内部空間の外側の空間に収容されているか、または、前記亜塩素酸ナトリウムが粉末状もしくはタブレット状の形態で前記第3の容器の内部空間に収容されており、前記クエン酸が水溶液の形態で前記第1の容器の内部空間であって前記第3の容器の内部空間の外側の空間に収容されているか、または、前記亜塩素酸ナトリウムが水溶液の形態で前記第3の容器の内部空間に収容されており、前記クエン酸が水溶液の形態で前記第1の容器の内部空間であって前記第3の容器の内部空間の外側の空間に収容されている気体発生装置である。
【0010】
請求項3に記載の発明は、内部空間に複数種類の物質を収容し、前記複数種類の物質の化学反応によって生成された気体を透過させて外部に放出する第1の容器を有し、前記第1の容器は、開口部を備え前記第1の容器から放出された気体を溶存させる溶存液を収容する第2の容器に収容されるようになっており、前記溶存液は水であり、前記第1の容器の内部空間に収容されている第3の容器を備えており、前記第3の容器の内部空間には、第1の薬剤が収容されており、前記第1の容器の内部空間であって前記第3の容器の内部空間の外側の空間には、第2の薬剤が収容されており、前記第3の容器が破壊されることによって、前記第1の薬剤と前記第2の薬剤とが前記第1の容器内で化学反応を起こし、前記気体が発生するように構成されており、前記第1の薬剤はクエン酸であり、前記第2の薬剤は亜塩素酸ナトリウムであり、前記気体は二酸化塩素であり、前記第1の容器は、弾性を備えており気体のみを透過させる合成樹脂で構成されており、前記合成樹脂は、ポリプロピレンもしくはポリエチレンもしくはシリコーンであるか、または、ポリプロピレン、ポリエチレン、シリコーンのうちの少なくとも2つの材料が混合されたものである気体発生装置である。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の気体発生装置であって、前記クエン酸が水溶液の形態で前記第3の容器の内部空間に収容されており、前記亜塩素酸ナトリウムが粉末状もしくはタブレット状の形態で前記第1の容器の内部空間であって前記第3の容器の内部空間の外側の空間に収容されているか、または、前記クエン酸が粉末状もしくはタブレット状の形態で前記第3の容器の内部空間に収容されており、前記亜塩素酸ナトリウムが水溶液の形態で前記第1の容器の内部空間であって前記第3の容器の内部空間の外側の空間に収容されているか、または、前記クエン酸が水溶液の形態で前記第3の容器の内部空間に収容されており、前記亜塩素酸ナトリウムが水溶液の形態で前記第1の容器の内部空間であって前記第3の容器の内部空間の外側の空間に収容されている気体発生装置である。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の気体発生装置であって、前記第1の容器の開口部には蓋がされており、前記蓋は蓋本体と気体透過膜とを備えて構成されており、前記気体透過膜は、気体を透過させるが液体を透過させず遮断するようになっている気体発生装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、必要とする気体(不純物を含まない気体)を得ることができるとともに、得られた気体の使い勝手を良くすることができる気体発生装置を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る気体発生装置の概略構成を示す断面図である。
図2】変形例に係る気体発生装置の概略構成を示す図である。
図3】参考例に係る気体発生装置の概略構成を示す図であり、(b)は(a)におけるIIIB-IIIB断面を示す図である。
図4】参考例に係る気体発生装置の概略構成を示す図であり、(a)は正面図であり、(b)は側面図であり、(c)は(b)におけるIVC-IVC断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態に係る気体発生装置1は、化学反応等によって二酸化塩素等の気体を発生する装置であり、図1で示すように、第1の容器3を備えて構成されている。第1の容器3は、第2の容器5内に収容されるようになっている。
【0016】
第1の容器3は、外部から隔てられている内部空間7に複数種類の物質を収容している。複数種類の物質として第1の薬剤17、第2の薬剤21を掲げるがこれらの詳細については後述する。また、第1の容器3は所定の気体のみが透過する材料で構成されている。これにより、第1の容器3は、上記複数種類の物質の化学反応によって生成された気体のみを透過させて第1の容器3の外部に放出するようになっている。
【0017】
第2の容器5は、気体も液体も透過しない材料で構成されている。第2の容器5には、開口部9が設けられている。第2の容器5内には、第1の容器3と第1の容器3から放出された気体を溶存させる溶存液11が収容されている。第2の容器5に第1の容器3と溶存液11とが収容されている状態では、第1の容器3の総てが溶存液11中に沈んでいる。なお、図1では、第2の容器5として広口瓶のようなものを掲げているが、これに限らず、様々な形状のものを第2の容器5として採用してもよい。たとえば、第2の容器5として浴槽や水槽を採用してもよい。
【0018】
また、気体発生装置1には、第3の容器13が設けられている。第3の容器13は、たとえばアンプルで構成されており、第1の容器3の内部空間7に収容されている。
【0019】
第3の容器13の内部空間15には、第1の薬剤17が収容されており、第1の容器3の内部空間7であって第3の容器13の内部空間15の外側の空間19には、第2の薬剤21が収容されている。
【0020】
そして、第3の容器13が、たとえば、加えられた力によって破壊されることによって、第1の薬剤17と第2の薬剤21とが第1の容器3内で化学反応を起こし、気体が発生するように構成されている。この気体が、第1の容器3の肉部を透過して第2の容器5内の溶存液11に溶存するようになっている。なお、溶存液11に溶存されている気体は、徐々に、溶存液11から放出されるようになっている。
【0021】
第1の容器3は、弾性を備えており耐薬品性があり気体のみを透過させるポリプロピレン、ポリエチレン、シリコーン等の合成樹脂等で構成されている。第2の容器5や第3の容器13は、耐薬品性があり気体や液体を透過しない合成樹脂やガラス等で構成されている。
【0022】
上記化学反応で生成される気体として二酸化塩素を掲げる。また、溶存液11として、水(たとえば純粋)を掲げる。気体として二酸化塩素を掲げた場合には、第3の容器13の内部空間15に収容されている第1の薬剤17は塩素系化合物を含んでいる。また、気体として二酸化塩素を掲げた場合には、第1の容器3の内部空間7であって第3の容器13の内部空間15の外側の空間19に収容されている第2の薬剤は酸を含んでいる。
【0023】
いずれにしても、第1の薬剤17と第2の薬剤21とが化学反応することで、常温常圧下では、気体として二酸化塩素のみが生成されるようになっている。
【0024】
さらに具体的には、第1の薬剤17は亜塩素酸ナトリウムを含んでおり(たとえば、亜塩素酸ナトリウム水溶液であり)、第2の薬剤21はクエン酸を含んでいる(たとえば、粉末状もしくはタブレット状のクエン酸になっている)。
【0025】
なお、第1の薬剤17と第2の薬剤21とが入れ替わっていてもよい。すなわち、第3の容器13の内部空間15にクエン酸が収容されており、第1の容器3の内部空間7であって第3の容器13の内部空間15の外側の空間19に亜塩素酸ナトリウムが収容されていてもよい。
【0026】
また、第1の薬剤17を亜塩素酸ナトリウム水溶液とし第2の薬剤21はクエン酸の水溶液としてもよいし、もしくは、第1の薬剤17を粉末状もしくはタブレット状の亜塩素酸ナトリウムとし、第2の薬剤21をクエン酸の水溶液としてもよい。
【0027】
第3の容器13が壊れることで、第1の容器3内で、亜塩素酸ナトリウムとクエン酸との化学反応が起こり二酸化塩素とクエン酸ナトリウムと塩化ナトリウムと水とが生成されるようになっている。これを反応式で示すと、「15NaClO+4C(OH)(CHCOOH)COOH→12ClO+4CNa+3NaCl+2HO」となる。
【0028】
そして、二酸化塩素のみが、第1の容器3の肉部を透過し、第2の容器5内に蓄えられている水11に溶存するようになっている。
【0029】
図1で示す気体発生装置1の第2の容器5の開口部9には、蓋23がされている。蓋23は、蓋本体25と気体透過部位(気体透過膜)27をと備えて構成されている。気体透過膜27は、気体を透過させるが液体を透過せず遮断するようになっている。
【0030】
これにより、溶存液11に溶存していた二酸化塩素であって溶存液11から気体となって出てきた二酸化塩素のみが、気体透過膜27を通って、気体発生装置1の外部に出てくるようになっているとともに、誤って、気体発生装置1を転倒させた場合であっても、溶存液11が気体発生装置1の外部にこぼれることが防止されるようになっている。
【0031】
次に、気体発生装置1に使用態様について説明する。
【0032】
初期状態では、蓋23が第2の容器5から外れており、第1の容器3は、第2の容器5の外部にあるものとする。なお、第1の容器3の内部空間7には、第3の容器13と第2の薬剤21とが格納されており、第3の容器13の内部空間15には、第1の薬剤17が格納されている。
【0033】
上記初期状態で、第1の容器3に力を加えて、第1の容器3を弾性変形させ、第3の容器13を破壊し、この後ただちに第1の容器3を第2の容器5の溶存液11内に投入し、第2の容器5に蓋23を設置する。
【0034】
これにより、第1の容器3内での化学反応によって生成された二酸化塩素のみが第1の容器3の肉部を透過して第2の容器5内の溶存液11に溶存する。この後、溶存液11に溶存している二酸化塩素が、溶存液11から徐々に放出され、蓋23の気体透過膜27を通って、気体発生装置1の外部に出ている。
【0035】
気体発生装置1は、内部空間7に複数種類の物質を収容し複数種類の物質の化学反応によって生成された気体のみを透過させて外部に放出する第1の容器3と、開口部9を備え第1の容器3と第1の容器3から放出された気体を溶存させる溶存液11とを収容する第2の容器5とを備えている。
【0036】
これによって、第1の容器3から出てきた二酸化塩素のみが第2の容器5内の溶存液11に溶存することになる。そして、二酸化塩素のみが溶存している溶存液11を第2の容器5の開口部9から取り出すことで、必要とする二酸化塩素のみを得ることができる。
【0037】
また、二酸化塩素が溶存液11に溶存していることで、二酸化塩素の分散速度が遅くなり、二酸化塩素の使い勝手が良くなる。たとえば、二酸化塩素のみが溶存している溶存液11を殺菌対象であるテーブル上に霧状に散布すれば、二酸化塩素が溶存液11から徐々に放出され、殺菌作用を持続せせることができる。
【0038】
また、気体発生装置1によれば、第3の容器13が破壊されることによって、第1の薬剤17と第2の薬剤21とが第1の容器3内で化学反応を起こし、二酸化塩素が発生するように構成されているので、必要な事態が到来した場合に、すなわち、要求に的確に応じて、二酸化塩素を得ることができる。
【0039】
ところで、気体発生装置1において、図2で示すように、第2の容器5の開口部9に、第2の容器5の開口部9を塞ぐようにして、リリーフ弁31を設置してもよい。さらに、リリーフ弁31に代えて、スプレーヘッド(図示せず)、もしくは、絞り弁(図示せず)を設置してもよい。
【0040】
リリーフ弁31が設置されていることで、第2の容器5内の圧力が所定の圧力以上になったとき、第2の容器5内の二酸化塩素が、リリーフ弁31を通って、第2の容器5の外部に出てくるようになっている。また、リリーフ弁31では、上記所定の圧力を変更しこの変更された状態を維持することができるようになっている。
【0041】
また、スプレーヘッドが設置されていることにより、電気や圧縮空気等の動力を用いることなく、スプレーヘッドのレバーを引くだけで、第2の容器5内に溜まっている溶存液(二酸化塩素が溶存している溶存液)11が、スプレーヘッドのノズルからたとえば霧状になって第2の容器5の外部に噴出される。
【0042】
また、絞り弁(流量調整弁)が設置されていることで、第2の容器5内の二酸化塩素が、絞り弁を通って、ゆっくりと第2の容器5の外部に出てくるようになっている。また、絞り弁では、絞り弁を通る二酸化塩素の流量を変更しこの変更された状態を維持することができるようになっている。
【0043】
ところで、気体発生装置1において、図2で示すように、第2の容器5内の溶存液11の温度(気体発生装置1の温度)を調整する温度調節部29が設けられていてもよい。温度調節部29は、たとえば、ペルチェ素子やヒータを備えており、第2の容器5を覆うようになっている。温度調節部29では、温度を設定し変更することができるようになっている。
【0044】
図2で示す気体発生装置1によれば、第2の容器5の開口部にリリーフ弁31、もしくは、スプレーヘッド、もしくは、絞り弁が設置されているので、第1の容器3から出てきた二酸化塩素が溶存している第2の容器5内の溶存液11を、適切な形態で取り出すことができ、使い勝手が良くなる。
【0045】
たとえば、スプレーヘッドを使用することで二酸化塩素が溶存している溶存液11を、殺菌対象に均一の噴霧することができる。また、リリーフ弁31や絞り弁を使用することで、第2の容器5からの二酸化塩素(溶存液11からでてきた気体の二酸化塩素)の吐出量を適宜制御することができる。
【0046】
また、図2で示す気体発生装置1によれば、第2の容器5内の溶存液11の温度を調整する温度調節部29を有するので、二酸化塩素の浸透速度(第1の容器3の肉部を透過する二酸化塩素の単位時間あたりの量)を調整することができる。すなわち、温度を高めることで二酸化塩素の浸透速度を速くし、温度を低下させることで二酸化塩素の浸透速度を遅くすることができる。また、第1の容器3内での二酸化塩素の生成量や第2の容器5からの二酸化塩素(溶存液11からでてきた気体の二酸化塩素)の吐出量を適宜制御することができる。
【0047】
なお、第1の容器3の材質を適宜変えることで、二酸化塩素の浸透速度を調整するようにしてもよい。
【0048】
ところで、気体発生装置1が化学反応をすることなく気体を発生する装置であってもよい。この気体発生装置1も第1の容器3と第2の容器5とを備えて構成されている。
【0049】
ただし、第1の容器3は、内部空間7に所定の気体(たとえば香り成分)を発生する物質(たとえば香料)を収容し、この物質から発生した所定の気体のみを透過させて外部に放出するようになっている。
【0050】
第2の容器5は、開口部9を備え、第1の容器3と第1の容器3から放出された所定の気体を溶存させる溶存液11とを収容している。
【0051】
これにより、二酸化塩素の場合と同様に、必要とする香り成分のみを得ることができ、また、香り成分の分散速度が遅くなり使い勝手が良くなる。
【0052】
次に参考例に係る気体発生装置51について図3を参照しつつ説明する。
【0053】
図3で示す気体発生装置51は、第1の容器53と第2の容器55とを備えて構成されている。第1の容器53は、図1で示す第2の容器5と同様に構成されている。第2の容器55は、図1で示す第3の容器13と同様に構成されている。
【0054】
第2の容器55の内部には、クエン酸の粉末と重曹(炭酸水素ナトリウム)の粉末との混同物とが収容されている。第1の容器53の内部であって第2の容器55の外側の空間には、亜塩素酸ナトリウム液(たとえば亜塩素酸ナトリウムの水溶液)が収容されている。
【0055】
そして、第2の容器55が破壊されることで、クエン酸の粉末と重曹の粉末との混同物と亜塩素酸ナトリウム液とがあわさって、化学反応がおこり、二酸化塩素等が生成される。
【0056】
生成された二酸化塩素は、第1の容器53の上端部に形成されている絞り部(たとえばチョーク)57を通って、第2の容器55の外部に出てくるようになっている。
【0057】
なお、クエン酸の粉末と重曹の粉末との混同物と、亜塩素酸ナトリウム液とが入れ替わっていてもよい。すなわち、第2の容器55の内部に亜塩素酸ナトリウム液が収容されており、第1の容器53の内部であって第2の容器55の外側の空間にクエン酸の粉末と重曹の粉末との混同物とが収容されていてもよい。
【0058】
また、クエン酸の粉末と重曹の粉末との混同物に代えて、クエン酸のタブレットと重曹のタブレットとの混同物を採用してもよい。
【0059】
さらに、クエン酸(クエン酸の水溶液)と重曹液(たとえば重曹の水溶液)と次亜塩素酸ナトリウム液(たとえば亜塩素酸ナトリウムの水溶液)とがあわさることで、化学反応がおこり、二酸化塩素等が生成されるようにしてもよい。この場合、第2の容器55と同様な第3の容器(図示せず)が第1の容器53内に設けられる。
【0060】
すなわち、第2の容器55内にクエン酸(クエン酸の水溶液)を収容しておき、第3の容器内に重曹液(たとえば重曹の水溶液)を収容しておき、第1の容器53内であって第2の容器55と第3の容器との外側に亜塩素酸ナトリウム液(たとえば亜塩素酸ナトリウムの水溶液)を収容しておいてもよい。
【0061】
そして、第2の容器55と第3の容器とが破壊されることで、化学反応がおこり、二酸化塩素が生成されるようになっていてもよい。
【0062】
この場合においても、第2の容器55内、第3の容器内、第1の容器53内であって第2の容器55と第3の容器との外側の空間に収容するクエン酸の水溶液と重曹の水溶液と亜塩素酸ナトリウムの水溶液とを適宜入れ替えてもよい。
【0063】
次に参考例に係る気体発生装置71について図4を参照しつつ説明する。
【0064】
図4で示す気体発生装置71は、絞り部57で絞り量を変更可能である点と、二酸化塩素の流路73が細長く形成されている点が、図3で示す気体発生装置51と異なり、その他の点は、図3で示す気体発生装置51と同様に構成されている。
【0065】
さらに説明すると、図4で示す気体発生装置71の第1の容器53は、容器本体部75と流路形成部77とを備えている。容器本体部75の上端は塞がれている。容器本体部75の内部には、第2の容器55等が収容されている。
【0066】
流路形成部77によって、二酸化塩素の流路73が形成されている。二酸化塩素の流路73は上下方向で細長くなっており、二酸化塩素の流路73の下端と容器本体部75の下端とがお互いに連通している。化学反応が起こっているときの、容器本体部75における液面の高さの位置と二酸化塩素の流路73における液面の高さの位置とはお互いが一致している。絞り部57は、二酸化塩素の流路73の上端に設置されている。
【0067】
絞り部57では、つまみ79を回すことで、弁体81と流路73の上端の開口部との隙間が変化し、絞り量が変化するようになっている。
【0068】
ところで、図3図4で示す参考例に係る気体発生装置71を、本発明の変形例に係る気体発生装置1としてもよい。この場合、第1の容器53を第2の容器5とし、第2の容器55を第1の容器3とする。第1の容器3に内部には、第3の容器13が格納される。
【符号の説明】
【0069】
1 気体発生装置
3 第1の容器
5 第2の容器
7 内部空間
9 開口部
11 溶存液
13 第3の容器
15 内部空間
17 第1の薬剤
19 外側の空間
21 第2の薬剤
29 温度調節部
31 リリーフ弁
図1
図2
図3
図4