(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】冷蔵調理済み麺類の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 7/109 20160101AFI20240930BHJP
【FI】
A23L7/109 B
(21)【出願番号】P 2020116481
(22)【出願日】2020-07-06
【審査請求日】2023-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】591036240
【氏名又は名称】大徳食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 俊雄
【審査官】千葉 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-215156(JP,A)
【文献】特許第6674583(JP,B1)
【文献】実開昭51-133387(JP,U)
【文献】特開平03-072835(JP,A)
【文献】特開昭63-039559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷蔵調理済み麺類の製造方法であって、
圧延された麺帯を
所定の長さに切断すること、
該切断された麺帯を、圧延された方向と直交する方向に移動させながら、機械的に動作制御される包丁により切断して麺線を
連続的に製造すること、
該麺線を加熱調理して冷蔵すること、
を含み、
該包丁が片刃であり、
該包丁の表側が下側になるように、該包丁が該麺帯に対して配置され、
該麺帯の移動方向の前方から該麺帯に向けて該包丁の刃が入れられ、
該麺帯の表面に対する該包丁の刃の進入角度が20~65°であり、
該包丁により麺帯を切断して麺線を製造する際には、該麺帯は、圧延された方向に沿って、且つ該麺帯の表面に対して斜めに切断される、
方法。
【請求項2】
前記麺帯の原料粉が、小麦粉30~90質量%及び加工澱粉70質量%以下を含有する、請求項
1記載の方法。
【請求項3】
前記麺帯の原料粉がさらにグルテンを含有する、請求項
2記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵調理済み麺類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱調理した麺類を冷蔵保存した冷蔵調理済み麺類が販売されている。冷蔵調理済み麺類は、加熱調理なし又は簡単な調理で喫食可能な便利な食品である。一方で、冷蔵調理済み麺類は、生麺を茹でて速やかに喫食する場合と異なり、保存や流通の間に経時的に麺のツヤや滑らかさが低下し、食感も劣化するという問題を有する。
【0003】
従来の麺線の製法としては、麺生地を押出して麺線を製造する麺線押出し製法、麺生地を伸ばして麺帯にした後、切り出して麺線を製造する麺帯切り出し製法などが用いられている。さらに後者の切り出し製法には、切り刃により麺帯を切断する方法、包丁により麺帯を切断する方法などがあり、工場での麺線の製造には主に前者が使用されている。このように製造された麺線は、その断面形状により丸麺、角麺、平麺などと呼ばれ、また角麺の中にはひし形麺と呼ばれるような断面がひし形又は平行四辺形状のものが存在する。これらの麺線の断面形状は、押出し口や切り刃の形状に応じて成形することができる。例えば、ひし形麺は、手作業での包丁切りによっても製造することができるが、工場では一般に、対向する傾斜面を有する切り刃によって製造される(特許文献1~4)。
【0004】
特許文献5には、麺帯を長手方向に切断して麺線が帯状に並んだ帯状集合体を得た後、該帯状集合体の表面に対して傾斜して配置された刃を用いて該帯状集合体を斜めに切り出し、両端が先端に近づくほど厚みが薄くなる形状を有する麺線を製造することが記載されている。非特許文献1には、生地に対して包丁を斜めにあててうどんの断面を菱形にすることでのど越しの良い冷凍うどんが得られることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭63-49052号公報
【文献】特開平8-38027号公報
【文献】特開平10-262539号公報
【文献】特開2015-089371号公報
【文献】特開2013-215156号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】テーブルマーク株式会社ウェブページ 稲庭風うどんがおいしい理由、[https://www.tablemark.co.jp/udon/inaniwa/index.html]、アクセス日2020年5月11日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、冷蔵保存後にもツヤがあり滑らかで、煮崩れが少なく、且つ良好な食感を有する冷蔵調理済み麺類を機械的に製造する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、圧延された麺帯を、包丁により、圧延された方向に沿って且つ該麺帯の表面に対して斜めに切断することにより上記の課題を解決できることを見出した。
【0009】
したがって、本発明は以下を提供する。
〔1〕冷蔵調理済み麺類の製造方法であって、
圧延された麺帯を機械的に動作制御される包丁により切断して麺線を製造すること、
該麺線を加熱調理して冷蔵すること、
を含み、該麺帯は、圧延された方向に沿って、且つ該麺帯の表面に対して斜めに切断される、方法。
〔2〕前記麺帯の表面に対する前記包丁の刃の進入角度が20~65°である、〔1〕記載の方法。
〔3〕前記包丁が片刃である、〔1〕又は〔2〕記載の方法。
〔4〕前記包丁の表側が下側になるように、該包丁が該麺帯に対して配置される、〔3〕記載の方法。
〔5〕前記包丁による麺帯の切断の前に、前記圧延された麺帯を所定の長さに切断することをさらに含む、〔1〕~〔4〕のいずれか1項記載の方法。
〔6〕前記麺帯を移動させながら切断することで麺線を連続的に製造する、〔5〕記載の方法。
〔7〕前記包丁による麺帯の切断の際に、前記所定の長さに切断された麺帯を圧延された方向と直交する方向に移動させることをさらに含む、〔6〕記載の方法。
〔8〕前記麺帯の移動方向の前方から該麺帯に向けて前記包丁の刃を入れる、〔7〕記載の方法。
〔9〕前記麺帯の原料粉が、小麦粉30~90質量%及び加工澱粉70質量%以下を含有する、〔1〕~〔8〕のいずれか1項記載の方法。
〔10〕前記麺帯の原料粉がさらにグルテンを含有する、〔9〕記載の方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、機械的手段により、冷蔵保存後にもツヤがあり滑らかで、煮崩れが少なく、且つ食感の良好な冷蔵調理済み麺類を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、機械的手段により高品質の冷蔵調理済み麺類を製造する方法を提供する。本発明により製造される冷蔵調理済み麺類としては、加熱調理(茹で、蒸し等)された後、冷蔵保存される麺類であればよく、例えば、冷蔵状態で販売され、そのまま喫食されるもの(例えばチルド麺)や、再加熱されて喫食されるもの(例えば、パック包装された茹でうどん、茹でそば)などが挙げられる。
【0013】
本発明により提供される麺類の種類は、特に限定されないが、例えば、うどん(冷麦、きしめんを含む)、素麺、そば、中華麺、スパゲティなどの麺線類が挙げられる。
【0014】
本発明により提供される麺類の原料粉としては、麺類の製造に一般に使用され得るものであればよく、例えば穀粉類及び/又は澱粉類を主体とする原料粉が挙げられる。該穀粉類の例としては、小麦粉、米粉、大麦粉、モチ大麦粉、そば粉、大豆粉、コーンフラワー、オーツ麦粉などが挙げられ、好ましくは小麦粉、米粉、大麦粉、及びモチ大麦粉、そば粉が挙げられる。これらの穀粉類は、いずれか単独又は2種以上の組み合わせで使用することができる。好ましくは、該穀粉類は小麦粉を含む。小麦粉は、麺類の製造に一般に使用されるものであればよく、例えば、強力粉、中力粉、薄力粉、デュラム粉などが挙げられる。これらの小麦粉は、いずれか単独又は2種以上の組み合わせで使用することができる。好ましくは、該原料粉に含まれる穀粉類の50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、なお好ましくは100質量%が小麦粉である。
【0015】
該澱粉類の例としては、特に限定されず、例えば、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、米澱粉などの未加工澱粉、及びそれらを加工(例えば、架橋化、リン酸化、アセチル化、エーテル化、酸化、α化など)した加工澱粉が挙げられる。該原料粉において、これら未加工澱粉及び加工澱粉は、いずれか単独又は2種以上の組み合わせで使用することができる。好ましくは、該澱粉類は、タピオカを由来とする澱粉である。好ましくは、該澱粉類は加工澱粉である。該加工澱粉は、好ましくは加工タピオカ澱粉であり、より好ましくは、アセチル化、エーテル化及び架橋化からなる群より選択される1種以上の加工を行ったタピオカ澱粉である。
【0016】
該原料粉は、穀粉類と澱粉類のいずれか一方を含んでいればよい。例えば、該原料粉における穀粉類の含有量は、全質量中、好ましくは30質量%以上100質量%以下、より好ましくは30~90質量%、さらに好ましくは40~85質量%である。好ましくは、該穀粉類は小麦粉である。また例えば、該原料粉における澱粉類の含有量は、全質量中、好ましくは70質量%以下、より好ましくは10~70質量%、さらに好ましくは15~60質量%である。好ましくは、該澱粉類は加工澱粉である。
【0017】
該原料粉は、穀粉類と澱粉類を両方含有していてもよい。好ましくは、該原料粉は、小麦粉と加工澱粉を含有する。より好ましくは、該原料粉は、全質量中、小麦粉を30~90質量%、及び加工澱粉を70質量%以下、好ましくは10~70質量%含有する。さらに好ましくは、該原料粉は、全質量中、小麦粉を40~85質量%、及び加工澱粉を60質量%以下、好ましくは15~60質量%含有する。
【0018】
該原料粉は、上記の穀粉類又は澱粉類に加えて、麺類の製造に従来から用いられている他の材料を含有していてもよい。当該他の材料の例としては、グルテン(小麦蛋白)、大豆蛋白質、卵黄粉、卵白粉、全卵粉、卵蛋白酵素分解物、脱脂粉乳等の蛋白質素材;動植物油脂、粉末油脂等の油脂類;かんすい;焼成カルシウム;食物繊維;増粘剤;乳化剤;食塩;糖類;調味料;ビタミン類;ミネラル類;色素;香料;デキストリン;アルコール;保存剤;酵素剤、などが挙げられる。これらの材料は、いずれか単独又は2種以上の組み合わせで用いることができる。該原料粉における当該他の材料の合計含有量は、上記穀粉類と澱粉類の合計量100質量部あたり、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。
【0019】
好ましくは、該原料粉はグルテンを含有する。該原料粉がグルテンを含有することで、麺類の食感を向上させることができる。該原料粉におけるグルテンの含有量は、上記穀粉類と澱粉類の合計量100質量部あたり、好ましくは1~10質量部、より好ましくは2~8質量部である。
【0020】
該原料粉から麺類を製造する手順は、常法に従えばよい。具体的には、該原料粉と練り水とを混捏することで、麺類生地が製造される。練り水としては、水、又は食塩、かんすいなどを含む水溶液、炭酸水などが用いられる。該麺類生地の製造における該練り水の使用量は、該原料粉の組成や、製造する麺類の種類などに従って適宜調整され得るが、例えば、該原料粉100質量部あたり、好ましくは25~58質量部、より好ましくは30~55質量部である。原料粉と練り水との混捏は、ミキサーなどを用いて通常の手順で行えばよい。
【0021】
次いで、得られた麺類生地から麺帯を製造する。例えば、麺類生地を、ロール等の通常の手段により圧延し、又は必要に応じて複合と圧延を繰り返して、麺帯を製造する。これらの工程は、当該分野の通常の技術に従って、又は通常用いられる製麺装置を用いて行うことができる。
【0022】
本発明においては、上記の手順で圧延された麺帯を、包丁により切断して麺線を製造する。従来、工場などでの機械的な麺類の製造においては、麺帯の切断(麺線の切り出し)には主に、切り刃(複数の刃が所定間隔で設けられたスリッター、ローラーの表面に複数の刃が所定間隔で設けられた回転刃など)が使用されている。その他、包丁を機械的な動作制御により上下動させて麺生地を端から切断して麺線を一本ずつ製造する手法(いわゆる包丁切り)も用いられている。本発明では包丁切りが採用される。すなわち、本発明では、圧延された麺帯を機械的に動作制御される包丁により切断することで、麺線が製造される。包丁切りによる麺線の製造には、市販の包丁切り型の麺帯切断装置(包丁刃を用いて麺帯を端から順に所定の間隔で切断する装置)などを用いることができる。
【0023】
本発明による麺帯からの麺線の切り出しでは、麺帯を圧延し、該圧延がなされた方向に沿って麺帯が切断される。すなわち、麺帯の圧延方向が、切り出された麺線の長手方向(麺線の断面と直交する方向)と基本的に一致する。ただし、圧延機や包丁の配置の変動や、麺帯を運ぶコンベアの動作の変動など、製麺機の通常の動作範囲内での配置変動によるこれらの方向のずれは許容される。
【0024】
また本発明による麺帯からの麺線の切り出しでは、該麺帯は、該麺帯の表面に対して斜めに切断される。すなわち、包丁の刃が麺帯の表面に対して垂直に入るのではなく、角度をつけて入れられ、麺線が切り出される。該麺帯の表面に対する包丁の刃の進入角度(言い換えると、麺帯が載置されている面と包丁の背~刃先を結ぶ線とが成す角度、後述の
図1参照)は、90°より小さく、好ましくは20~65°、より好ましくは25~60°、さらに好ましくは30~55°、さらに好ましくは40~50°である。
【0025】
本発明では、麺帯からの麺線の切り出しを包丁により行うことで、従来一般的な手段である切り刃(例えば特許文献1~4)で切り出された麺線と比べて、ツヤや滑らかさが向上し、茹で伸び耐性が高く、ほぐれやすく、煮崩れしにくく、さらに食感にも優れた麺線を得ることができる。これは、切り刃と包丁では切断の際の麺帯への力のかかり方が異なるために、得られる麺線の質が大きく変化するためと考えられる。また、圧延された麺帯から包丁で麺線を連続的に切り出す場合、通常、麺帯の幅方向(圧延方向と直交する方向)に沿って麺帯を切断することになるが、これに対し、本発明では、麺帯を圧延方向に沿って包丁で切断することで、得られた麺線の食感が向上する。これは、切断方向の違いに起因して麺線のグルテン構造が保持されたことが、食感に影響したためと考えられる。
【0026】
さらに、従来の方法では、麺帯を機械的に包丁切りする場合、麺帯をその表面に対して垂直に(90°で)切断するのが一般的であり、得られた麺線の断面は長方形又は正方形になる。これに対し、本発明では、麺帯をその表面に対して斜めに切断するため、得られた麺線の断面は平行四辺形(ひし形を含む)になる。なお、本明細書における麺線の形状は、略形状を含み、例えば平行四辺形の断面とは、略平行四辺形又は略ひし形の断面を含むものである。本発明で得られた麺線は、麺帯表面に対して垂直に切断された従来の麺線と比べて、ツヤや滑らかさが向上し、また煮崩れしにくくなり、つるりとした外観や、のど越しの良さといった利点を有するものとなる。また本発明で得られた麺線は、垂直に切断された従来の麺線よりも断面が大きくなり、これによって、つるみが増し、さらに食感の粘弾性、例えばもちもちとした食感や弾力感が得られやすくなることが期待される。また断面が大きくなることは、食感だけでなく、つゆののりが良くなるなど食味にも影響し得る。さらに、断面が平行四辺形の麺類は、断面が長方形又は正方形の麺類と比べて、1本の麺の中での麺厚の変化に富んでおり、このため食感のしなやかさや噛み応えにおいてより優れている。
【0027】
本発明で麺帯の切断に用いる包丁は、ステンレス、鉄等の金属、それらとカーボンとの合金、又はセラミックなど、通常の調理用包丁に使用される材料から製造されたものであればよい。該包丁は、両刃包丁、片刃包丁のいずれでもよいが、好ましくは片刃包丁である。片刃の包丁を用いることで、両刃の場合と比べて、ツヤや滑らかさが向上し、茹で伸び耐性が高く、ほぐれやすく、煮崩れしにくく、さらに食感にも優れた麺線を得ることができる。該包丁の刃渡りや、厚み、切刃(麺帯切断に使用される、刃体先端の厚みが薄くなっている部分)の長さは、切断する麺帯の長さや厚さ、又は麺帯の硬さなどに応じて適宜設定すればよい。刃の角度(包丁の背から刃先までを結ぶ線と、切刃の面とが作る角度)は、包丁の厚みや切刃の長さなどに応じて適宜設定することができる。さらに、刃の強度を維持するため切刃の先端部分の刃の角度を変更してもよい。例えば、厚み2mm、切刃の長さ15mmで、刃の角度が10°で先端のみ45°である、ステンレス-カーボン合金製の片刃包丁が、好ましい包丁の例として挙げられる。但し、包丁の材質や形状は、製造する麺線の種類や、使用する製麺機の構造などに合わせて適宜変更することができる。
【0028】
本発明においては、麺帯の切断の際に麺帯表面に対して包丁の刃が斜めに(上述した90°より小さい進入角度で)進入するように、包丁が麺帯表面に対して角度をつけて配置される。片刃包丁を用いる場合、包丁の表側が下側になる(麺帯の表面側を向く)ように、包丁が該麺帯に対して配置されることが好ましい。この状態から包丁を上下動(より具体的には斜めに上下動、以下同じ)させることで、麺帯を切断して麺線を切り出す。一実施形態においては、該包丁の位置は固定されており(上記の麺帯切断のための上下動を除く、以下同じ)、麺帯の端部が包丁の位置まで移動して切断されることで、麺線が製造される。別の一実施形態においては、麺帯は所定の位置に配置されており、包丁が該麺帯の位置まで移動して麺帯の端部を切断することで、麺線が製造される。該麺帯は、圧延された後、包丁による切断の前に所定の長さに切断されていることが好ましい。所定の長さに切断された麺帯の端部を包丁により所定の幅で切断することで、所定の長さ及び幅の麺線が製造される。あるいは、包丁により所定の幅に切断された麺帯を、所定の長さで切断することで、所定の長さ及び幅の麺線を製造することもできる。
【0029】
好ましくは、本発明においては、麺帯を移動させながらその端部を包丁で切断することで、麺線を連続的に製造する。この場合、好ましくは、該麺帯は、圧延された後、包丁による切断の前に所定の長さに切断されており、また該包丁による麺帯の切断の際には、該麺帯を、圧延された方向と直交する方向に移動させる。麺帯の移動には、ベルトコンベア等の一般的な運搬機を用いることができる。該包丁は麺帯表面に対して角度をつけて配置されている。好ましくは、該包丁は麺帯の移動方向の前方に傾けて配置されており、このため麺帯の移動方向の前方から麺帯に向けて包丁の刃が入ることになる。好ましくは、該包丁は、固定の位置で、機械的な動作制御により上下動を繰り返している。このような構成によって、該麺帯が包丁の下を通るとき、該麺帯は、包丁により端部から順に、圧延された方向に沿って、所定の幅で、且つ麺の表面に対して斜めに切断されて、麺線が連続的に製造される。
【0030】
上述した麺線の連続製造方法の一実施形態を
図1に示す。
図1aでは、圧延機100により圧延された麺帯1が作製されている。図中の両矢印は、麺帯の圧延方向を表す。圧延された麺帯1はベルトコンベア等の運搬機(図示していない)で運ばれながら、所定の長さでカットされ、カット麺帯2となる(
図1b)。カット麺帯2は、運搬機上で90°回転されるか、または運搬機の移動方向が麺帯に対して90°変更され、結果、麺帯2は、圧延方向と直交する方向に移動するようになる。この移動方向を保ちながら、麺帯2は包丁200の位置に進む(
図1c)。包丁200は、運搬機上の固定の位置に、その刃渡りが運搬機を横切るように配置されている。また包丁200は、機械的な動作制御により上下動を繰り返している。移動する麺帯2の前方端部が包丁の下に到達すると、包丁200の上下動により切断される。麺帯2が切断されながら移動を続け、また包丁200が上下動を繰り返すことにより、麺帯2は端部から所定の幅で順次切断され、麺線3が連続的に製造される(
図1d)。
図1cに示すように、麺帯2の移動方向はその圧延方向と直交しているため、該圧延方向は包丁の刃渡りの方向と一致する。結果、麺帯2は圧延方向に沿って切断されるので、麺帯の圧延方向が、麺線3の麺線の長手方向となる。
【0031】
図1eは、
図1cを横から見た図である。包丁200は麺帯2の表面に対して角度Xをつけて配置されている。すなわち、麺帯2の載置されている面と包丁の背~刃先を結ぶ線とが成す角度がXであり、これが麺帯の表面に対する包丁の刃の進入角度である。
図1c、eでは、包丁200は片刃包丁であり、包丁の表側が下側になるように麺帯2の移動方向の前方に傾けて配置されている。このため、
図1eに示すように、包丁200は、移動してくる麺帯2の前方から麺帯2の表面に向けて斜めに進入する。結果、切断された麺線の断面は、
図1fに示すとおり、平行四辺形になる。
【0032】
以上の手順で麺帯から生麺線が製造される。得られた生麺線は、加熱調理される。さらに、該生麺線に対して、加熱調理の前に、常法に従って乾燥、凍結、冷蔵、又はそれらの組み合わせなどの処理を施してもよい。麺線の加熱調理は、茹で、蒸し、マイクロ波加熱など、通常の麺類の加熱調理法に従って行うことができる。加熱調理の時間(例えば茹で時間)は、麺線の種類や形状などに応じて適宜設定することができる。好ましくは、該麺線は、喫食可能に加熱調理される。
【0033】
該加熱調理された麺線を、冷蔵庫等の通常の冷蔵手段で冷蔵することで、冷蔵調理済み麺類が製造される。得られた冷蔵調理済み麺類は、冷蔵状態で保存される。該冷蔵調理済み麺類は、冷蔵状態で提供され、そのまま喫食されてもよく、又は冷蔵状態で提供された後、再加熱(茹で、蒸し、マイクロ波加熱など)されて喫食されてもよい。
【実施例】
【0034】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0035】
以下の実施例において、麺の原料としては、以下のものを用いた。
小麦粉 国産中力粉(日清製粉株式会社製)
加工澱粉 アセチル化タピオカ澱粉(松谷化学工業株式会社製)
小麦蛋白 スプレードライグルテン(グリコ栄養食品株式会社製)
【0036】
試験例1
1)麺帯の作製
小麦粉60質量部、加工澱粉40質量部、小麦蛋白2質量部、粉末油脂1質量部を混合し、これに水48質量部、食塩4.5質量部を混合し、ミキシング(高速2分間→低速5分間)して麺生地を調製した。得られた麺生地を製麺ロールにより圧延及び複合して麺帯(厚さ3.75mm)を作製した。
【0037】
2)包丁切りによる麺線の製造
1)で作製した麺帯を、圧延方向と直交する方向に移動させながら、前端から順に圧延方向に沿って包丁で切断し(3.75mm間隔)、麺線(うどん)を製造した。このとき、包丁の角度(麺帯の表面に対する包丁の刃の進入角度)を表1のとおりとした。包丁は片刃包丁を用い、包丁の表側が下側(麺帯の表面の側)を向くようにセットした。移動する麺帯の前方から麺帯に向かって包丁を入れた。
【0038】
3)切り刃による麺線の製造
1)で作製した麺帯から切り刃(表1の角度を有し、底辺3.75mm、高さ3.75mmの平行四辺形)を用いて麺線(うどん)を切り出した。
【0039】
4)冷蔵調理済みうどんの製造
2)及び3)で得られた生うどんを熱湯で歩留260~280%程度になるまで茹で、水洗冷却し、10℃で24時間保存した。保存後の冷蔵調理済みうどんを10ccのほぐし水を用いてほぐし、別途用意した麺つゆをかけ、麺のツヤ、滑らかさ、粘弾性、茹で伸び、ほぐれの良さ、及び煮崩れについて下記評価基準に従って評価した。評価は、訓練された10名のパネラーにより行い、10名の評価の平均点を求めた。評価の際には、包丁の角度90°での包丁切りで得られた麺線の品質を「普通」とみなした。結果を表1に示す。
【0040】
<評価基準>
ツヤ
5点:麺の照り、ツヤが優れ非常に良好
4点:麺に照り、ツヤがあり良好
3点:麺に照り、ツヤがややあり、やや良好(普通)
2点:麺の照り、ツヤが少なく、やや不良
1点:麺の照り、ツヤがなく、不良
滑らかさ
5点:非常に滑らかである
4点:滑らかである
3点:やや滑らかである(普通)
2点:やや滑らかさに劣る
1点:滑らかさに劣る
粘弾性
5点:粘弾性のバランスに優れる
4点:粘弾性のバランスが良い
3点:粘弾性のバランスがやや良い(普通)
2点:粘弾性のバランスがやや劣る
1点:粘弾性のバランスが劣る
茹で伸び
5点:茹で伸びが遅く、非常に良好である
4点:茹で伸びがやや遅く、良好である
3点:茹で伸びが悪くなく、やや良好である(普通)
2点:茹で伸びがやや早く、不良である
1点:茹で伸びが早く、不良である
ほぐれ
5点:麺同士が非常にばらけやすく、ほぐれが非常に良好である
4点:麺同士がばらけやすく、ほぐれが良好である
3点:麺同士がややばらけやすく、ほぐれがやや良好である(普通)
2点:麺同士が付着しやすく、ほぐれがやや不良である
1点:麺同士が付着し、ほぐれが不良である
煮崩れ
5点:煮崩れがなく、麺の角立ちが非常に良好である
4点:煮崩れがほとんどなく、麺の角立ちが良好である
3点:煮崩れが少なく、麺の角が立っている(普通)
2点:煮崩れがややあり、麺の角がほとんどない
1点:煮崩れが顕著で、麺の角がない
【0041】
【0042】
5)再加熱時の評価
24時間保存後の冷蔵調理済みうどんを熱湯で1分30秒再加熱し、麺のツヤ、滑らかさ、粘弾性を上記4)と同様の手順にて評価した。結果を表2に示す。
【0043】
【0044】
試験例2
試験例1の1)、2)と同様の手順で麺線(うどん)を製造した。ただし、包丁は片刃包丁又は両刃包丁を用い、包丁の角度は45°とした。また片刃の場合、包丁の表側が下側又は上側を向くようにセットし、移動する麺帯の前方又は後方から麺帯に向かって包丁を入れた。本試験例での包丁の配置を
図2に示す。下記評価基準にて麺線の生産性を評価した。次いで、得られた生うどんから、試験例1の4)と同様の手順で冷蔵調理済みうどんを製造し、品質を評価した。
<評価基準>
生産性
良:カット不良がほとんど発生しない
-:カット不良(麺帯底面が切れずにつながる)が散見される
【0045】
結果を、製造例2の結果とともに表3に示す。移動する麺帯の後方から包丁を進入させた場合(製造例4、5)は、前方から進入させた場合(製造例2、6、7)と比べて、麺帯のカット不良が起こりやすい傾向があった。また製造例2と6の比較から、包丁の刃表が麺帯表面側(下)を向いていた方が、冷蔵調理済みうどんの品質が向上した。また製造例2と7の比較から、、包丁の配置が同じ場合、両刃包丁よりも片刃包丁を用いた方が、冷蔵調理済みうどんの品質が向上した。また両刃は耐久性において劣るため、工業生産上は片刃包丁の方が好ましい。
【0046】
【0047】
試験例3
試験例1の製造例2と同様の手順で、ただし原料の配合を表4のとおり変更して冷蔵調理済みうどんを製造し、評価した。結果を、製造例2の結果とともに表4に示す。
【0048】