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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】植物栽培装置及び植物栽培システム
(51)【国際特許分類】
   A01G 31/00 20180101AFI20240930BHJP
【FI】
A01G31/00 601Z
A01G31/00 609
A01G31/00 612
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020117754
(22)【出願日】2020-07-08
(65)【公開番号】P2022015112
(43)【公開日】2022-01-21
【審査請求日】2023-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】520251405
【氏名又は名称】株式会社ハンモ
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】嶋村 茂治
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3207010(JP,U)
【文献】特開2017-12066(JP,A)
【文献】特開2017-93378(JP,A)
【文献】実開昭63-116060(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 31/00
A01G 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養液を収容可能な桶状に形成された栽培ベッドと、前記栽培ベッドに載置される栽培パネルとを備える植物栽培装置であって、
前記栽培ベッドは、
長尺状の底面と、
前記底面の幅方向の側縁から上方に向けて延びる下部壁部と、
前記下部壁部の上端から上方に向けて延びており、前記栽培パネルの縁部を支持するパネル支持面
を有し、
前記パネル支持面は、鉛直方向に対して傾斜する傾斜面であり、
前記パネル支持面の水平方向に対する傾斜角度は、1°以上45°以下である
ことを特徴とする植物栽培装置。
【請求項2】
前記栽培ベッドは、上方に向けて開口する長尺状の桶本体部と、該桶本体部の長手方向に沿って延びる側縁の上端部から幅方向外側に向けて延出するフランジ部とを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の植物栽培装置。
【請求項3】
前記フランジ部は、隣接して配置される他の栽培ベッドのフランジ部と面接触可能な当接面を有している
ことを特徴とする請求項2に記載の植物栽培装置。
【請求項4】
前記栽培ベッド内に収容される培養液の水位を調整可能な水位調整手段を更に備え、
前記水位調整手段は、培養液の水位を前記パネル支持面における前記栽培パネルの支持箇所よりも低い栽培時水位に調整可能に構成されている
ことを特徴とする請求項1~3いずれか1項に記載の植物栽培装置。
【請求項5】
前記水位調整手段は、培養液の水位を前記パネル支持面における前記栽培パネルの支持箇所よりも高いパネル搬送時水位に調整可能に構成されている
ことを特徴とする請求項4に記載の植物栽培装置。
【請求項6】
前記栽培ベッドは、金属により形成されている
ことを特徴とする請求項1~5いずれか1項に記載の植物栽培装置。
【請求項7】
前記下部壁部は、鉛直方向に対して傾斜する傾斜面であり、
前記下部壁部の水平方向に対する傾斜角度は、前記パネル支持面の水平方向に対する傾斜角度よりも大きい
ことを特徴とする請求項1~いずれか1項に記載の植物栽培装置。
【請求項8】
請求項1~7いずれか1項に記載の植物栽培装置と、
前記植物栽培装置が多段的に配されるラックと
を備える植物栽培システムであって、
前記ラックは、前記植物栽培装置が載置される天面部と、該天面部から下方に向けて延びる脚部とを有するテーブル状のラック部材を複数積み上げることで形成されている
ことを特徴とする植物栽培システム。
【請求項9】
前記ラック部材は、上段に配置されるラック部材の脚部と整合する位置に、該脚部が嵌め込まれる連結ガイド部を有しており、
前記連結ガイド部は、水平断面コの字状に形成されており、前記天面部から上方に向けて延びている
ことを特徴とする請求項8に記載の植物栽培システム。
【請求項10】
前記ラック部材の前記天面部の下部側に設けられ、該ラック部材の下段に配置された前記植物栽培装置を照らす照明装置を更に備え、
前記ラック部材は、前記天面部に載置された前記植物栽培装置の前記栽培ベッドの下面と、該ラック部材の前記天面部の下部側に設けられた前記照明装置との間に空間が形成されるよう、該植物栽培装置及び該照明装置を支持可能に構成されている
ことを特徴とする請求項8又は9に記載の植物栽培システム。
【請求項11】
前記栽培ベッドの下面は、前記照明装置からの光を反射可能に構成されている
ことを特徴とする請求項10に記載の植物栽培システム。
【請求項12】
前記栽培パネルは、前記照明装置からの光を反射可能に構成されている
ことを特徴とする請求項10又は11に記載の植物栽培システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栽培室内における植物の栽培に使用される植物栽培装置及び植物栽培システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、栽培室内において植物を栽培する方法として、土に代わり、培養液を用いて植物を栽培する水耕栽培法が広く知られている。このような水耕栽培法に用いられる植物栽培装置として、特許文献1には、図9及び図10に示す植物栽培装置100が開示されている。
【0003】
特許文献1の植物栽培装置100は、図9及び図10に示すように、培養液Lが収容される栽培ベッド102と、該栽培ベッド102に載置される栽培パネル104とを備えており、栽培パネル104に形成された多数の植え穴106を介して苗根鉢108を栽培ベッド102内に落とし込むことで、植物Pを栽培するよう構成されている。このような構成を備える特許文献1の植物栽培装置100によれば、栽培パネル104の下面と培養液Lの液面との間に形成される生育スペースSにおいて湿気中根を生育させ、培養液L内において水中根を生育させることが可能となるため、水中根及び湿気中根という2つの異なる形態乃至機能を持った根を発生させることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-180272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の植物栽培装置100は、図10に示すように、栽培ベッド102の側縁部に形成された段部110に栽培パネル104の側縁部を載置させる構成であるため、該段部110に培養液Lが溜まりやすく、これにより藻(アオコ)が発生しやすいという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、藻の発生を抑制することが可能な植物栽培装置及び植物栽培システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の目的を達成するため、本発明に係る植物栽培装置は、培養液を収容可能な桶状に形成された栽培ベッドと、前記栽培ベッドに載置される栽培パネルとを備える植物栽培装置であって、前記栽培ベッドは、前記栽培パネルの縁部を支持するパネル支持面を有し、前記パネル支持面は、鉛直方向に対して傾斜する傾斜面であることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る植物栽培装置において、前記栽培ベッドは、上方に向けて開口する長尺状の桶本体部と、該桶本体部の長手方向に沿って延びる側縁の上端部から幅方向外側に向けて延出するフランジ部とを有することが好ましい。
【0009】
この場合において、前記フランジ部は、隣接して配置される他の栽培ベッドのフランジ部と面接触可能な当接面を有することが更に好ましい。
【0010】
本発明に係る植物栽培装置は、前記栽培ベッド内に収容される培養液の水位を調整可能な水位調整手段を更に備えることが好ましく、前記水位調整手段は、培養液の水位を前記パネル支持面における前記栽培パネルの支持箇所よりも低い栽培時水位に調整可能に構成されることが好ましい。
【0011】
この場合において、前記水位調整手段は、培養液の水位を前記パネル支持面における前記栽培パネルの支持箇所よりも高いパネル搬送時水位に調整可能に構成されることが更に好ましい。
【0012】
また、本発明に係る植物栽培装置において、前記栽培ベッドは、金属により形成されることが好ましい。
【0013】
この場合において、前記栽培ベッドは、ロールフォーミングにより形成されることが更に好ましい。
【0014】
また、本発明に係る植物栽培システムは、上述した植物栽培装置と、前記植物栽培装置が多段的に配されるラックとを備える植物栽培システムであって、前記ラックは、前記植物栽培装置が載置される天面部と、該天面部から下方に向けて延びる脚部とを有するテーブル状のラック部材を複数積み上げることで形成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る植物栽培システムにおいて、前記ラック部材は、上段に配置されるラック部材の脚部と整合する位置に、該脚部が嵌め込まれる連結ガイド部を有することが好ましい。
【0016】
また、本発明に係る植物栽培システムは、前記ラック部材の前記天面部の下部側に設けられ、該ラック部材の下段に配置された前記植物栽培装置を照らす照明装置を更に備えることが好ましく、前記ラック部材は、前記天面部に載置された前記植物栽培装置の前記栽培ベッドの下面と、該ラック部材の前記天面部の下部側に設けられた前記照明装置との間に空間が形成されるよう、該植物栽培装置及び該照明装置を支持可能に構成されることが好ましい。
【0017】
この場合において、前記栽培ベッドの下面は、前記照明装置からの光を反射可能に構成されることが更に好ましい。
【0018】
また、前記栽培パネルは、前記照明装置からの光を反射可能に構成されることが更に好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、藻の発生を抑制することが可能な植物栽培装置及び植物栽培システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る植物栽培システムを概略的に示す正面図である。
図2】本実施形態に係る植物栽培システムを概略的に示す側面図である。
図3】本実施形態に係る植物栽培システムを概略的に示す平面図である。
図4】栽培ベッド本体とエンドプレートとを分離させた状態を概略的に示す分解図である。
図5】栽培ベッドの断面を概略的に示す断面図である。
図6】水位調整手段によって培養液の水位を栽培時水位に調整した状態を概略的に示す図である。
図7】水位調整手段によって培養液の水位をパネル搬送水位に調整した状態を概略的に示す図である。
図8】ラックの組み立て手順を概略的に示す図である。
図9】従来の栽培ベッドを概略的に示す斜視図である。
図10】従来の栽培ベッドの断面を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明に係る物品収納具の好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0022】
本実施形態に係る植物栽培システム1は、図1図3に示すように、植物を栽培する複数の植物栽培装置2と、該植物栽培装置2が多段的に配されるラック4と、植物栽培装置2を照らす照明装置6とを備えている。なお、植物栽培システム1は、植物栽培システムが通常有する各種周辺設備、例えば、各植物栽培装置2に対する培養液の供給及び各植物栽培装置2からの培養液の回収等を行う培養液循環設備や、各植物栽培装置2における気温や湿度等の調整を行う送風ファン等の温度湿度調整設備等の種々の設備を更に備えているが、これらの構成は周知であるため、その説明を省略する。
【0023】
植物栽培装置2は、図1に示すように、ラック4の高さ方向(図1中のZ方向)に複数段設けられると共に、図2及び図3に示すように、ラック4の奥行方向(図2中のY方向)にも複数列設けられている。本実施形態では、高さ方向に10段、奥行方向に2列の計20台の植物栽培装置2が配置されている。
【0024】
各植物栽培装置2は、図4及び図5に示すように、培養液を収容可能な桶状に形成された栽培ベッド10と、栽培ベッド10に載置される栽培パネル20とを備えている。また、各植物栽培装置2は、図6及び図7に示すように、栽培ベッド10内に収容される培養液の水位を調整可能な水位調整手段30を更に備えている。
【0025】
栽培ベッド10は、図4に示すように、上面及び長手方向の両端部が開放された断面略コの字状の栽培ベッド本体10Aと、該栽培ベッド本体10Aの両端部を閉塞する一対のエンド部材10Bとを備えており、全体として、培養液を収容可能な桶状に形成されている。栽培ベッド本体10Aは、本実施形態では、長手方向(図3中のX方向)の長さが例えば3m~18m程度、短手方向(図3中のY方向)の長さが例えば60cm程度の長尺な形状を有しているが、これに限定されず、長手方向及び短手方向の長さは任意に設定可能である。
【0026】
栽培ベッド本体10Aは、金属製の板材をロールフォーミングにより成形することで形成されている。ここで、ロールフォーミングとは、複数組の成型ロールによって平らな素材を目的の断面形状に成型する板金加工方法である。本実施形態に係る栽培ベッド本体10Aは、このようなロールフォーミングにより成形されることにより、長手方向に沿って繋ぎ目なく連続する大型の栽培ベッドを構成することができ、これにより、培養液の液漏れ等のおそれが極めて低いという利点を有する。
【0027】
栽培ベッド本体10Aに用いられる金属としては、例えば、ガルバリウム鋼、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、鉄等が例示され、特にガルバリウム鋼、ステンレス鋼が好適であるが、これに限定されるものではない。また、栽培ベッド本体10Aには、金属障害の発生を防ぐために、培養液に対する耐性(腐食防止)を付与するための種々の公知のコーティング処理等が施されることが好ましい。
【0028】
栽培ベッド本体10Aは、図4に示すように、上方に向けて開口する長尺状の桶本体部12と、該桶本体部12の長手方向に沿って延びる側縁の上端部から幅方向(短手方向)外側に向けて延出するフランジ部14とを有している。なお、これら桶本体部12及びフランジ部14は、本実施形態では一体として形成されているが、これに限定されず、別部材として形成されたフランジ部14を桶本体部12に対して着脱可能とする構成であって良い。
【0029】
桶本体部12は、図4及び図5に示すように、長手方向に沿って延びる長尺状の底面12aと、該底面12aの長手方向に沿って延びる両側縁全域から上方に向けて延びる左右一対の側壁12bとからなる断面略コの字状に形成されている。
【0030】
底面12aの下面は、該底面12aよりも下方に配置された照明装置6からの光を反射可能に構成されている。このような光を反射させる構成としては、例えば、底面12aの下面に白色塗装を施し、底面12aの下面の全体又は一部を白色とする構成が例示されるが、これに限定されるものではない。
【0031】
各側壁12bは、図4及び図5に示すように、底面12aの側縁全域から上方に向けて延びる下部壁部13aと、下部壁部13aの上端から幅方向外側かつ斜め上方に向けて傾斜して延びるパネル支持面13bと、パネル支持面13bの上端から上方に向けて延びる上部壁部13cとを有している。各側壁12bの外面も底面12aの下面と同様に、下方に配置された照明装置6からの光を反射可能に構成されることが好ましい。
【0032】
底面12a及び左右一対の下部壁部13aは、エンド部材10Bが取り付けられた状態において、図5に示すように、培養液が収容される培養液収容空間を形成可能に構成されている。また、パネル支持面13bは、栽培パネル20の縁部を支持可能に構成されている。上部壁部13cの上端部には、フランジ部14が設けられている。
【0033】
パネル支持面13bは、図5に示すように、鉛直方向に対して傾斜する傾斜面である。パネル支持面13bは、長手方向の全域に亘って平滑な面であることが好ましいが、上方に向かって凸となる湾曲面や、下方に向かって凹となる湾曲面等の種々の構成を採用可能である。
【0034】
パネル支持面13bの傾斜角度θは、1°以上90°未満の範囲内において任意に設定することが可能であり、例えば、1°~60°の範囲内であることが好ましく、5°~45°の範囲内であることが更に好ましい。ここで、パネル支持面13bの傾斜角度θとは、図5に示すように、栽培ベッド本体10Aを水平面上に載置させた状態における、水平方向に対するパネル支持面13bの傾斜角度をいう。
【0035】
パネル支持面13bの傾斜角度θをこのような範囲の角度に設定することにより、液が付着しても滴下するため藻(アオコ)が発生しにくく、また、栽培パネル20との接触面積を低減できるため液だまりが少なく、栽培パネル20の搬送も容易になる等の利点がある。
【0036】
フランジ部14は、図4に示すように、上部壁部13cの上端部から幅方向外側に向けて水平に延出する幅方向延出部14aと、該幅方向延出部14aの先端部から下方に向けて屈曲して延出する当接面14bとを有する逆L字状に形成されている。当接面14bは、鉛直方向に沿って平滑な平坦面であり、図5に示すように、隣接して配置される他の栽培ベッド10のフランジ部14の当接面14bと面接触可能に構成されている。
【0037】
このように、フランジ部14が幅方向延出部14a及び当接面14bを有することにより、図5に示すように、隣接して配置される他の栽培ベッド10との間に空間を形成することが可能となるため、空冷効果を向上させ、栽培ベッド10内の水や培養液の熱を効率よく拡散させることが可能となる。また、隣接する栽培ベッド10の当接面14b同士が互いに面接触することにより、互いに熱伝導し合い、隣接する栽培ベッド10同士の熱を均一化させることが可能となる。さらに、隣接する栽培ベッド10の当接面14b間に隙間がほぼ生じないため、下方に配置された照明装置6からの光漏れを防止することも可能となる。
【0038】
エンド部材10Bは、栽培ベッド本体10Aの端部の形状に沿った外形形状を有する板部材であり、栽培ベッド本体10Aの端部を閉塞するよう、該端部に液密に取り付け可能に構成されている。エンド部材10Bは、栽培ベッド本体10Aと同様に金属により形成されることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0039】
栽培パネル20は、図3及び図4に示すように、栽培ベッド本体10Aの一方のパネル支持面13bから他方のパネル支持面13bに亘って掛け渡すことが可能な横幅(栽培ベッド本体10Aの短手方向に沿った長さ)を有する板状に形成されている。栽培パネル20の縦長さ(栽培ベッド本体10Aの長手方向に沿った長さ)は、任意に設定することができ、例えば図3に示すように、栽培ベッド本体10Aの長手方向に複数に分割された構成としても良い。このように複数に分割された構成とする場合には、栽培パネル20を一枚物とした場合と比較して、栽培パネル20の設置及び回収が容易になるという利点がある。分割された栽培パネル20を複数設置する場合には、該栽培パネル20の上部に配置された照明装置6からの光の透過を防止するために、隙間なく配置されることが好ましい。
【0040】
また、栽培パネル20は、図3及び図4に示すように、植物を植栽するための植栽孔22が複数形成されている。植栽孔22の数及び間隔は、栽培対象とする植物に応じて任意に設定することができる。なお、栽培対象とする植物は、例えばレタス、ハーブ、ミズナ、ラディッシュ及びイチゴ等が例示されるが、これらに限定されるものではなく、種々の植物を栽培対象とすることが可能である。
【0041】
栽培パネル20は、水に浮遊可能な材質により形成されることが好ましく、本実施形態では発泡スチロールにより形成されている。また、栽培パネル20は、該栽培パネル20の上部に配置された照明装置6からの光を反射可能に構成されることが好ましい。このような光を反射させる構成としては、例えば、白色の発泡スチロールを栽培パネル20として用いるか、栽培パネル20の上面を白色に塗装することが例示されるが、これに限定されるものではない。
【0042】
水位調整手段30は、図6及び図7に示すように、栽培ベッド10内の培養液を排出させる外部配管32と、高さの異なる第1のオーバーフロー管34及び第2のオーバーフロー管36とを備えている。第1のオーバーフロー管34及び第2のオーバーフロー管36は、外部配管32に対して択一的に取り付けられる付け替え部材である。すなわち、本実施形態に係る水位調整手段30は、外部配管32に取り付けるオーバーフロー管(第1のオーバーフロー管34、第2のオーバーフロー管36)を交換することで、培養液の水位を変更可能に構成されている。
【0043】
第1のオーバーフロー管34は、主として植物の栽培時に外部配管32に取り付けて使用される管部材であり、図6に示すように、培養液の水位をパネル支持面13bにおける栽培パネル20の支持箇所よりも低い水位(栽培時水位)に調整可能な高さ方向の長さを有している。このような第1のオーバーフロー管34を外部配管32に取り付けることにより、植物の栽培時において、栽培パネル20と培養液の液面との間に空間(空気層)を形成することが可能となるため、培養液に対する上方側(栽培パネル20側)からの熱伝導を遮断することが可能となる。また、栽培パネル20に対する培養液の付着を抑制することが可能となるため、栽培パネル20における藻の発生を抑制することが可能となる。
【0044】
一方、第2のオーバーフロー管36は、主として栽培パネル20の設置時及び回収時に外部配管32に取り付けて使用される管部材であり、図7に示すように、培養液の水位をパネル支持面13bにおける栽培パネル20の支持箇所よりも高い水位(パネル搬送時水位)に調整可能な高さ方向の長さを有している。このような第2のオーバーフロー管36を外部配管32に取り付けることにより、栽培ベッド10に対する栽培パネル20の設置時や、栽培ベッド10からの栽培パネル20の回収時において、培養液上に栽培パネル20を浮遊させることが可能となるため、栽培ベッド10内における栽培パネル20の移動をスムーズに行うことが可能となる。特に、植物が育った状態の栽培パネル20は重量が重いため、搬送効率の向上が顕著である。
【0045】
なお、水位調整手段30は、上述した構成に限定されず、例えば、高さ方向の長さを任意に変更可能なオーバーフロー管(例えば蛇腹状のオーバーフロー管)の構成や、複数のドレイン(排液口)を異なる高さ位置に形成し、開口させるドレインを適宜切り替える構成等の種々の任意の構成を採用することが可能である。
【0046】
ラック4は、図1図2及び図8に示すように、植物栽培装置2を支持可能な複数のラック部材40を積み上げることで形成されている。具体的には、本実施形態に係るラック4は、栽培ベッド10の長手方向(図1中のX方向)に沿って2台、高さ方向(図1中のZ方向)に沿って11台の計22台のラック部材40により形成されている。なお、ラック部材40の数は、図示の例に限定されず、任意に調整可能である。
【0047】
各ラック部材40は、図8に示すように、植物栽培装置2が載置される天面部42と、該天面部42から下方に向けて延びる複数の脚部44とを有するテーブル状に形成されている。
【0048】
天面部42は、図8に示すように、直方環状(ロの字状)に形成された外枠42aと、該外枠42aの長手方向(栽培ベッド10の長手方向)の一方から他方に亘って掛け渡された縦梁42bと、該外枠42aの短手方向(栽培ベッド10の短手方向)の一方から他方に亘って掛け渡された複数の横梁42cとを備えている。
【0049】
外枠42aは、図2及び図8に示すように、短手方向に沿って2台の植物栽培装置2を並列的に載置可能な大きさを有している。縦梁42b及び横梁42cは、外枠42aの強度を補強可能な梁である。縦梁42b及び横梁42cの数は、図示の例に限定されず、適宜変更することが可能である。
【0050】
縦梁42bは、外枠42aの短手方向の略中央部に配置されており、これにより、図2に示すように、隣接して配置される栽培ベッド10,10間に位置するよう構成されている。このように縦梁42bが隣接して配置される栽培ベッド10,10間に位置することにより、下方に配置された照明装置6からの光漏れをより一層防止することが可能となる。
【0051】
外枠42aは、図8に示すように、上段に配置されるラック部材40の脚部44と整合する位置に、該脚部44が嵌め込まれる連結ガイド部46を有している。連結ガイド部46は、断面コの字状に形成された筒状に形成されており、上段に配置されるラック部材40の脚部44が篏合可能な大きさ及び長さを有している。連結ガイド部46及び上段に配置されるラック部材40の脚部44には、互いに整合する位置にねじ穴(図示せず)が形成されており、連結ガイド部46に脚部44を嵌め合わせた状態において、ねじ等の締結手段を用いて互いを強固に連結させることが可能に構成されている。
【0052】
脚部44は、図8に示すように、天面部42に複数設けられており、本実施形態においては、外枠42aと縦梁42b及び横梁42cとが交わる箇所にそれぞれ設けられている。各脚部44は、下段に配置されるラック部材40の連結ガイド部46に篏合可能な大きさ及び長さを有している。
【0053】
ラック部材40は、図1及び図2に示すように、天面部42の下部(下面)に複数の照明装置6を取り付け可能に構成されている。特に、ラック部材40は、天面部42に載置された植物栽培装置2の栽培ベッド10の下面と、該ラック部材40の天面部42の下部側に設けられた照明装置6との間に空間が形成されるよう、該植物栽培装置2及び該照明装置6を支持可能に構成されている。このような構成により、下段に設置された照明装置6から上段に設置された栽培ベッド10に対する熱伝導を防ぐことが可能となる。
【0054】
本実施形態に係るラック4は、以上の構成を備えることにより、1段目のラック部材40を設置した後、該1段目のラック部材40上に一対の植物栽培装置2を載置し、その後、2段目のラック部材40を積み上げるという、ラック部材40の設置と植物栽培装置2の載置とを交互に繰り返して積み上げる方式で植物栽培システム1を組み立てることが可能に構成されている。そして、このようなラック4によれば、植物栽培装置2の設置効率を飛躍的に向上させることが可能となる。
【0055】
照明装置6は、ラック部材40の天面部42の下部側に設けられ、該ラック部材40の下段に配置された植物栽培装置2を照らすよう構成されている。照明装置6は、それよりも上部に配置された栽培ベッド10の下面との間に空間が形成されるよう該下面から離間して配置されることが好ましい。また、照明装置6は、それよりも下部に配置された栽培パネル20の上面との間に空間が形成されるよう該上面から離間して配置されることが好ましい。照明装置6は、植物の育成に必要な光を照射可能な構成であれば良く、例えば直線状に複数のLEDを並べたLED照明灯や直管状蛍光灯等の種々の公知の照明装置を用いることが可能である。
【0056】
以上説明したとおり、本実施形態に係る栽培ベッド10は、栽培パネル20の縁部を支持するパネル支持面13bを有し、このパネル支持面13bは、鉛直方向に対して傾斜する傾斜面である。そして、このような本実施形態に係る栽培ベッド10によれば、パネル支持面13bに付着した液を傾斜面に沿って滴下させ、滞留を防ぐことができるため、藻の発生を抑制することが可能となる。また、栽培パネル20との接触面積を低減できるため液だまりが少なく、栽培パネル20の搬送も容易になる等の利点もある。
【0057】
また、本実施形態に係る栽培ベッド10は、桶本体部12の長手方向に沿って延びる側縁(側壁12b)の上端部から幅方向外側に向けて延出するフランジ部14を有している。このような本実施形態に係る栽培ベッド10によれば、隣接して配置される他の栽培ベッド10との間に空間を形成することが可能となるため、空冷効果を向上させ、栽培ベッド10内の水や培養液の熱を効率よく拡散させることが可能となる。
【0058】
さらに、本実施形態に係る栽培ベッド10は、フランジ部14が、隣接して配置される他の栽培ベッド10のフランジ部14と面接触可能な当接面14bを有している。このような本実施形態に係る栽培ベッド10によれば、隣接する栽培ベッド10の当接面14b同士が互いに面接触することにより、互いに熱伝導し合い、隣接する栽培ベッド10同士の熱を均一化させることが可能となる。さらに、隣接する栽培ベッド10の当接面14b間に隙間がほぼ生じないため、下方に配置された照明装置6からの光漏れを防止することも可能となる。
【0059】
また、本実施形態に係る植物栽培装置2は、栽培ベッド10内に収容される培養液の水位を調整可能な水位調整手段30を更に備え、この水位調整手段30が、培養液の水位をパネル支持面13bにおける栽培パネル20の支持箇所よりも低い栽培時水位に調整可能に構成されている。このような本実施形態に係る植物栽培装置2によれば、栽培パネル20と培養液の液面との間に空間(空気層)を形成することが可能となるため、培養液に対する上方側(栽培パネル20側)からの熱伝導を遮断することが可能となる。
【0060】
また、特許文献1の植物栽培装置100は、苗根鉢108が培養液Lに触れる構造であるため、毛管現象等により苗根鉢108に培養液Lが吸い上がり、この吸い上がった培養液Lに光が当たることで、苗根鉢108の表面に藻(アオコ)が発生するおそれがある。さらに、特許文献1の植物栽培装置100では、苗根鉢108の表面に発生した藻(アオコ)が植物Pや栽培パネル104に付着し、植物Pや栽培パネル104が汚染されるおそれがある。これに対し、本実施形態に係る植物栽培装置2は、水位調整手段30によって培養液の水位を上述した栽培時水位に調整可能であることにより、栽培している植物及び栽培パネル20に対する培養液の付着を抑制することが可能となるため、栽培している植物及び栽培パネル20における藻の発生や付着を抑制することが可能となる。
【0061】
さらに、本実施形態に係る植物栽培装置2は、水位調整手段30が、培養液の水位をパネル支持面13bにおける栽培パネル20の支持箇所よりも高いパネル搬送時水位に調整可能に構成されている。このような本実施形態に係る植物栽培装置2によれば、栽培ベッド10に対する栽培パネル20の設置時や、栽培ベッド10からの栽培パネル20の回収時において、培養液の水位をパネル搬送時水位に調整することにより、培養液上に栽培パネル20を浮遊させ、栽培ベッド10内における栽培パネル20の移動をスムーズに行うことが可能となる。特に、植物が育った状態の栽培パネル20は重量が重いため、搬送効率の向上が顕著である。また、この水位調整手段30の構成と、パネル支持面13bが傾斜面であり栽培パネル20との接触面積が小さいという構成とが相まって、栽培パネル20の搬送効率を飛躍的に向上させることが可能となる。さらに、パネル支持面13bが傾斜面であることにより、このように水位を上げても水溜まりが発生しにくいという利点がある。
【0062】
また、本実施形態に係る栽培ベッド10は、金属により形成されている。このような本実施形態に係る栽培ベッド10によれば、ABS、樹脂、発泡スチロール等で形成された栽培ベッドと比較して剛性が高く、水漏れを防止することが可能となると共に、放熱性能を高めることが可能となるため、室温とほぼ同じ温度(予備試験の検証では+1℃程度)の環境下において栽培を行うことが可能となる。また、栽培ベッド10が高い導電性を有する金属で形成されることにより、アース(接地)が取りやすいという利点もある。
【0063】
さらに、本実施形態に係る栽培ベッド10は、ロールフォーミングにより形成されている。このような本実施形態に係る栽培ベッド10によれば、長手方向に沿って繋ぎ目なく連続する大型の栽培ベッドを構成することができ、これにより、水漏れをほぼ完全に防止することが可能となる。
【0064】
また、本実施形態に係る植物栽培システム1において、ラック4は、植物栽培装置2が載置される天面部42と、該天面部42から下方に向けて延びる脚部44とを有するテーブル状のラック部材40を複数積み上げることで形成されている。このような本実施形態に係る植物栽培システム1によれば、1段目のラック部材40を設置した後、該1段目のラック部材40上に一対の植物栽培装置2を載置し、その後、2段目のラック部材40を積み上げるという、ラック部材40の設置と植物栽培装置2の載置とを交互に繰り返して積み上げる方式で植物栽培システム1を組み立てることが可能となるため、植物栽培装置2の設置効率を飛躍的に向上させることが可能となる。
【0065】
さらに、本実施形態に係る植物栽培システム1は、ラック部材40が、上段に配置されるラック部材40の脚部44と整合する位置に連結ガイド部46を有している。このような本実施形態に係る植物栽培システム1によれば、ラック部材40を積み上げる際の作業効率を向上させることが可能となる。
【0066】
また、本実施形態に係る植物栽培システム1は、ラック部材40が、天面部42に載置された栽培ベッド10の下面と、該天面部42の下部側に設けられた照明装置6との間に空間が形成されるよう、植物栽培装置2及び照明装置6を支持可能に構成されている。このような本実施形態に係る植物栽培システム1によれば、下段に設置された照明装置6から上段に設置された栽培ベッド10に対する熱伝導を防ぐことが可能となる。
【0067】
さらに、本実施形態に係る植物栽培システム1において、栽培ベッド10の下面は、照明装置6からの光を反射可能に構成されている。このような本実施形態に係る植物栽培システム1によれば、栽培ベッド10の下面によって光や熱を反射させ、より一層熱伝導を防ぐことが可能となる。また、栽培ベッド10の下面を照明の反射板として活用することが可能となるため、経済的であると共に、別途反射板を設ける場合と比較して部品点数が少なく、合理的であるという利点を有する。
【0068】
またさらに、本実施形態に係る植物栽培システム1は、栽培パネル20が照明装置6からの光を反射可能に構成されているため、培養液への熱伝導を防ぐことが可能となる。
【0069】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は、上述した実施形態に記載の範囲には限定されない。上記各実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 :植物栽培システム
2 :植物栽培装置
4 :ラック
6 :照明装置
10 :栽培ベッド
10A :栽培ベッド本体
10B :エンド部材
12 :桶本体部
12a :底面
12b :側壁
13a :下部壁部
13b :パネル支持面
13c :上部壁部
14 :フランジ部
14a :幅方向延出部
14b :当接面
20 :栽培パネル
22 :植栽孔
30 :水位調整手段
32 :外部配管
34 :第1のオーバーフロー管
36 :第2のオーバーフロー管
40 :ラック部材
42 :天面部
42a :外枠
42b :縦梁
42c :横梁
44 :脚部
46 :連結ガイド部
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