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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】樹脂封止装置及び樹脂封止方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/56 20060101AFI20240930BHJP
   B29C 43/34 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
H01L21/56 T
B29C43/34
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021172689
(22)【出願日】2021-10-21
(65)【公開番号】P2023062616
(43)【公開日】2023-05-08
【審査請求日】2024-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000144821
【氏名又は名称】アピックヤマダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】田上 秀作
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 誠
【審査官】正山 旭
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-145550(JP,A)
【文献】特開2005-085832(JP,A)
【文献】特開2018-174290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/56
B29C 43/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上型もしくは下型の一方に三組のキャビティが設けられ、他方に対応する三組のワーク保持部が設けられた封止金型を用いて、三個以下のワークを一括して樹脂により封止する樹脂封止装置であって、
前記ワークを供給するワーク供給ユニットと、
前記ワークを前記ワーク供給ユニットからプレスユニットへ搬送するワーク搬送部と、
前記ワーク搬送部によって搬送される対象となる前記ワークの個数を算定する演算部と、
前記演算部による個数データに基づいて、前記ワーク搬送部による前記ワークの搬送制御を行う制御部と、を備え、
前記ワーク搬送部は、ガイドと前記ガイドに沿ってそれぞれ独立して移動可能な複数のスライダーとを有し、
前記スライダーとして、一個の前記ワークを保持可能な第1トレイが取り付けられた第1スライダーと、一個の前記ワークを保持可能な第2トレイが取り付けられた第2スライダーと、一個の前記ワークを保持可能な第3トレイが取り付けられた第3スライダーと、が設けられていること
を特徴とする樹脂封止装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記個数データとして前記ワークが三個の場合、第1トレイ、第2トレイ、第3トレイの全てにそれぞれ前記ワークを保持させて、三箇所の前記ワーク保持部に対応する位置へそれぞれ搬送させる制御を行い、
前記個数データとして前記ワークが二個の場合、第1トレイ、第2トレイ、第3トレイのいずれか二つにそれぞれ前記ワークを保持させて、両端二箇所の前記ワーク保持部に対応する位置へそれぞれ搬送させる制御を行い、
前記個数データとして前記ワークが一個の場合、第1トレイ、第2トレイ、第3トレイのいずれか一つに前記ワークを保持させて、中央一箇所の前記ワーク保持部に対応する位置へ搬送させる制御を行うこと
を特徴とする請求項1記載の樹脂封止装置。
【請求項3】
前記第1トレイ、前記第2トレイ、及び前記第3トレイは、保持した前記ワークを加熱する予備加熱ヒータを有すること
を特徴とする請求項1または請求項2記載の樹脂封止装置。
【請求項4】
上型もしくは下型の一方に三組のキャビティが設けられ、他方に対応する三組のワーク保持部が設けられた封止金型を用いて、三個以下のワークを一括して樹脂により封止する樹脂封止装置であって、
前記ワークを供給するワーク供給ユニットと、
前記ワークを前記ワーク供給ユニットからプレスユニットへ搬送するワーク搬送部と、
前記ワーク搬送部によって搬送される対象となる前記ワークの個数を算定する演算部と、
前記演算部による個数データに基づいて、前記ワーク搬送部による前記ワークの搬送制御を行う制御部と、を備え、
前記ワーク搬送部は、ガイドと前記ガイドに沿ってそれぞれ独立して移動可能な複数のスライダーとを有し、
前記スライダーとして、一個の前記ワークを保持可能な第4トレイが取り付けられた第4スライダーと、二個の前記ワークを前記スライダーの移動方向に並べて保持可能な第5トレイが取り付けられた第5スライダーと、が設けられていること
を特徴とする樹脂封止装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記個数データとして前記ワークが三個の場合、第4トレイに一個の前記ワークを保持させ、第5トレイに二個の前記ワークを保持させて、三箇所の前記ワーク保持部に対応する位置へそれぞれ搬送させる制御を行い、
前記個数データとして前記ワークが二個の場合、第4トレイに一個の前記ワークを保持させ、第5トレイに一個の前記ワークを保持させて、両端二箇所の前記ワーク保持部に対応する位置へそれぞれ搬送させる制御を行い、
前記個数データとして前記ワークが一個の場合、第4トレイ、第5トレイのいずれかに前記ワークを保持させて、中央一箇所の前記ワーク保持部に対応する位置へ搬送させる制御を行うこと
を特徴とする請求項4記載の樹脂封止装置。
【請求項6】
前記第4トレイ、及び前記第5トレイは、保持した前記ワークを加熱する予備加熱ヒータを有すること
を特徴とする請求項4または請求項5記載の樹脂封止装置。
【請求項7】
上型もしくは下型の一方に三組のキャビティが設けられ、他方に対応する三組のワーク保持部が設けられた封止金型を用いて、三個以下のワークを一括して樹脂により封止する樹脂封止方法であって、
ワーク搬送部によって搬送される対象となる前記ワークの個数を算定する演算工程と、
前記演算工程における個数データに基づいて、前記ワークをワーク供給ユニットからプレスユニットへ搬送するワーク搬送工程と、を備え、
前記ワーク搬送工程は、
前記個数データとして前記ワークが三個の場合、第1トレイ、第2トレイ、第3トレイの全てにそれぞれ前記ワークを保持させて、三箇所の前記ワーク保持部に対応する位置へそれぞれ搬送し、
前記個数データとして前記ワークが二個の場合、第1トレイ、第2トレイ、第3トレイのいずれか二つにそれぞれ前記ワークを保持させて、両端二箇所の前記ワーク保持部に対応する位置へそれぞれ搬送し、
前記個数データとして前記ワークが一個の場合、第1トレイ、第2トレイ、第3トレイのいずれか一つに前記ワークを保持させて、中央一箇所の前記ワーク保持部に対応する位置へ搬送する工程を有すること
を特徴とする樹脂封止方法。
【請求項8】
上型もしくは下型の一方に三組のキャビティが設けられ、他方に対応する三組のワーク保持部が設けられた封止金型を用いて、三個以下のワークを一括して樹脂により封止する樹脂封止方法であって、
ワーク搬送部によって搬送される対象となる前記ワークの個数を算定する演算工程と、
前記演算工程における個数データに基づいて、前記ワークをワーク供給ユニットからプレスユニットへ搬送するワーク搬送工程と、を備え、
前記ワーク搬送工程は、
前記個数データとして前記ワークが三個の場合、第4トレイに一個の前記ワークを保持させ、第5トレイに二個の前記ワークを保持させて、三箇所の前記ワーク保持部に対応する位置へそれぞれ搬送し、
前記個数データとして前記ワークが二個の場合、第4トレイに一個の前記ワークを保持させ、第5トレイに一個の前記ワークを保持させて、両端二箇所の前記ワーク保持部に対応する位置へそれぞれ搬送し、
前記個数データとして前記ワークが一個の場合、第4トレイ、第5トレイのいずれかに前記ワークを保持させて、中央一箇所の前記ワーク保持部に対応する位置へ搬送する工程を有すること
を特徴とする樹脂封止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂封止装置及び樹脂封止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基材に電子部品が搭載されたワークを封止樹脂(以下、単に「樹脂」と称する場合がある)により封止して成形品に加工する樹脂封止装置及び樹脂封止方法の例として、トランスファ成形方式や圧縮成形方式によるものが知られている。
【0003】
トランスファ成形方式は、上型と下型とを備えて構成される封止金型に設けられる二個の封止領域(キャビティ)に所定量の樹脂を供給するポットを設け、当該各封止領域に対応する位置にワークをそれぞれ配置して、上型と下型とでクランプしポットからキャビティに樹脂を流し込む操作によって樹脂封止する技術である。また、圧縮成形方式は、上型と下型とを備えて構成される封止金型に設けられる封止領域(キャビティ)に所定量の樹脂を供給すると共に当該封止領域にワークを配置して、上型と下型とでクランプする操作によって樹脂封止する技術である。一例として、上型にキャビティを設けた封止金型を用いる場合、ワーク上の中心位置に一括して樹脂を供給して成形する技術等が知られている。一方、下型にキャビティを設けた封止金型を用いる場合、当該キャビティを含む金型面を覆うフィルム及び樹脂を供給して成形する技術等が知られている(特許文献1:特開2019-145550号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-145550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のトランスファ成形方式においては、一組の封止金型当たりの成形品の取り個数(成形個数)が決まっていた。例えば、一組の封止金型に二個のワークと当該ワーク間にタブレット樹脂を供給して樹脂封止を行い、二個の成形品を成形する構成が通常であった。そのため、供給するワークが規定数(上記の例では、二個)に満たない場合には、代わりにダミーのワーク(以下、「ダミーワーク」と称する場合がある)を供給して、規定数を充足する状態としたうえで樹脂封止を行っていた。これは、仮にワークが片方無い状態で封止金型の型閉じをした場合に、金型型締時の傾斜が起こり隙間から樹脂漏れを起こす成形不良を防止するためである。その一方で、ダミーワークの供給工程を設けなければならないため、作業工数及びタクトタイムが増加し、部品コストも増加する課題があった。さらに、成形後のダミーワークの排出工程も必要であった。また、圧縮成形方式においては、特許文献1に示されるような一組の封止金型に二個のキャビティが設けられる場合、二個のワークを供給して樹脂封止を行い、二個の成形品を成形する構成が考えられる。この場合も二個のワークが金型に供給されないことで金型クランプ時に傾斜による成形不良の発生を防止するためにダミーワークを供給する必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、一組の封止金型当たりの成形品の取り個数を変化させることを可能として、ダミーワークを用いない成形を実現することにより、作業工数、タクトタイム、部品コストの増加を抑制することができる樹脂封止装置及び樹脂封止方法を提供することを目的とする。
【0007】
本発明は、一実施形態として以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0008】
本発明に係る樹脂封止装置は、上型もしくは下型の一方に三組のキャビティが設けられ、他方に対応する三組のワーク保持部が設けられた封止金型を用いて、三個以下のワークを一括して樹脂により封止する樹脂封止装置であって、前記ワークを供給するワーク供給ユニット100Aと、前記ワークを前記ワーク供給ユニット100Aからプレスユニット100Bへ搬送するワーク搬送部と、前記ワーク搬送部によって搬送される対象となる前記ワークの個数を算定する演算部と、前記演算部による個数データに基づいて、前記ワーク搬送部による前記ワークの搬送制御を行う制御部と、を備え、前記ワーク搬送部は、ガイドとガイドに沿ってそれぞれ独立して移動可能な複数のスライダーとを有し、前記スライダーとして、一個の前記ワークを保持可能な第1トレイが取り付けられた第1スライダーと、一個の前記ワークを保持可能な第2トレイが取り付けられた第2スライダーと、一個の前記ワークを保持可能な第3トレイが取り付けられた第3スライダーと、が設けられていることを要件とする。
【0009】
これによれば、一組の封止金型当たりの成形品の取り個数を変化させることが可能な樹脂封止装置を実現することができる。したがって、取り個数を一定にするためのダミーワークを用いる必要がなくなるため、作業工数、タクトタイム、部品コストの増加を抑制することができる。
【0010】
また、前記制御部は、前記個数データとして前記ワークが三個の場合、第1トレイ、第2トレイ、第3トレイの全てにそれぞれ前記ワークを保持させて、三箇所の前記ワーク保持部に対応する位置へそれぞれ搬送させる制御を行い、前記個数データとして前記ワークが二個の場合、第1トレイ、第2トレイ、第3トレイのいずれか二つにそれぞれ前記ワークを保持させて、両端二箇所の前記ワーク保持部に対応する位置へそれぞれ搬送させる制御を行い、前記個数データとして前記ワークが一個の場合、第1トレイ、第2トレイ、第3トレイのいずれか一つに前記ワークを保持させて、中央一箇所の前記ワーク保持部に対応する位置へ搬送させる制御とワークの個数により型締力を調整する制御を行うことが好ましい。これによれば、封止金型における型締力の偏りを防止することができ、バランスのとれた成形を行うことができる。したがって、成形不良の発生を防止して、成形品質の向上を図ることができる。
【0011】
また、前記第1トレイ、前記第2トレイ、及び前記第3トレイは、保持した前記ワークを加熱する予備加熱ヒータを有することが好ましい。これによれば、ワークが封止金型内に搬入されて加熱される前に予備加熱をしておくことができるため、ワークや封止金型の温度低下に起因する成形不良の発生を防止することができる。
【0012】
また、本発明に係る樹脂封止方法は、上型もしくは下型の一方に三組のキャビティが設けられ、他方に対応する三組のワーク保持部が設けられた封止金型を用いて、三個以下のワークを一括して樹脂により封止する樹脂封止方法であって、ワーク搬送部によって搬送される対象となる前記ワークの個数を算定する演算工程と、前記演算工程における個数データに基づいて、前記ワークをワーク供給ユニット100Aからプレスユニット100Bへ搬送するワーク搬送工程と、を備え、前記ワーク搬送工程は、前記個数データとして前記ワークが三個の場合、第1トレイ、第2トレイ、第3トレイの全てにそれぞれ前記ワークを保持させて、三箇所の前記ワーク保持部に対応する位置へそれぞれ搬送し、前記個数データとして前記ワークが二個の場合、第1トレイ、第2トレイ、第3トレイのいずれか二つにそれぞれ前記ワークを保持させて、両端二箇所の前記ワーク保持部に対応する位置へそれぞれ搬送し、前記個数データとして前記ワークが一個の場合、第1トレイ、第2トレイ、第3トレイのいずれか一つに前記ワークを保持させて、中央一箇所の前記ワーク保持部に対応する位置へ搬送する工程を有することを要件とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、一組の封止金型当たりの成形品の取り個数を変化させることを可能として、ダミーワークを用いない成形を実現することにより、作業工数、タクトタイム、部品コストの増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第一の実施形態に係る樹脂封止装置の例を示す平面図である。
図2図1のII-II線位置における側面図である。
図3図1の樹脂封止装置の型開閉機構の例を示す断面図である。
図4図1の樹脂封止装置の封止金型の例を示す断面図である。
図5】本発明の第一の実施形態に係る樹脂封止装置の動作説明図である。
図6】本発明の第一の実施形態に係る樹脂封止装置の動作説明図である。
図7】本発明の第一の実施形態に係る樹脂封止装置の動作説明図である。
図8】本発明の第一の実施形態に係る樹脂封止装置の動作説明図である。
図9】本発明の第一の実施形態に係る樹脂封止装置の動作説明図である。
図10】本発明の第二の実施形態に係る樹脂封止装置の例を示す平面図である。
図11】本発明の第二の実施形態に係る樹脂封止装置の動作説明図である。
図12】本発明の第二の実施形態に係る樹脂封止装置の動作説明図である。
図13】本発明の第二の実施形態に係る樹脂封止装置の動作説明図である。
図14】本発明の第二の実施形態(他の例)に係る樹脂封止装置の動作説明図である。
図15】本発明の第二の実施形態(他の例)に係る樹脂封止装置の動作説明図である。
図16】本発明の第二の実施形態(他の例)に係る樹脂封止装置の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第一の実施形態]
(全体構成)
以下、図面を参照して、本発明の第一の実施形態について詳しく説明する。図1は、本実施形態に係る樹脂封止装置1の例を示す平面図(概略図)である。また、図2は、図1におけるII-II線位置での側面視による配置構成の説明図である。尚、説明の便宜上、図中において矢印により樹脂封止装置1における左右方向(X方向)、前後方向(Y方向)、上下方向(Z方向)を示す。また、各実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰返しの説明は省略する場合がある。
【0016】
本実施形態に係る樹脂封止装置1は、上型204及び下型206を備える封止金型202を用いて、ワーク(被成形品)Wの樹脂封止成形を行う装置である。以下、樹脂封止装置1として、上型204に三組のキャビティ208(208A、208B、208C)が設けられ、下型206に対応する三組のワーク保持部205(205A、205B、205C)が設けられた封止金型202を用いて、三個以下のワークWを一括して樹脂Rにより封止する圧縮成形装置を例に挙げて説明する。
【0017】
先ず、成形対象であるワークWは、基材Waに複数の電子部品Wbが行列状に搭載された構成を備えている。より具体的には、基材Waの例として、短冊状に形成された樹脂基板、セラミックス基板、金属基板、キャリアプレート、リードフレーム、ウェハ等の板状の部材(いわゆる、短冊ワーク)が挙げられる。また、電子部品Wbの例として、半導体チップ、MEMSチップ、受動素子、放熱板、導電部材、スペーサ等が挙げられる。尚、基材Waの他の例として、円形状、正方形状等に形成された上記部材を用いる構成としてもよい(不図示)。
【0018】
基材Waに電子部品Wbを搭載する方法の例として、ワイヤボンディング実装、フリップチップ実装等による搭載方法がある。あるいは、樹脂封止後に成形品Wpから基材(ガラス製や金属製のキャリアプレート)Waを剥離する構成の場合には、熱剥離性を有する粘着テープや紫外線照射により硬化する紫外線硬化性樹脂を用いて電子部品Wbを貼付ける方法もある。
【0019】
一方、樹脂Rの例として、顆粒状(円柱状等を含む)、粉砕状、もしくは粉末状(本願において「粒状」と総称する場合がある)の熱硬化性樹脂(例えば、フィラー含有のエポキシ系樹脂等)が用いられる。尚、樹脂Rは、上記の状態に限定されるものではなく、液状、板状、シート状等、他の状態(形状)であってもよく、エポキシ系熱硬化性樹脂以外の樹脂であってもよい。
【0020】
また、フィルムFの例として、耐熱性、剥離容易性、柔軟性、伸展性に優れたフィルム材、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ETFE(ポリテトラフルオロエチレン重合体)、PET、FEP、フッ素含浸ガラスクロス、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリジン等が好適に用いられる。本実施形態においては、フィルムFとしてロール状のフィルムが用いられる。尚、変形例として、短冊状のフィルム用いる構成としてもよい(不図示)。
【0021】
続いて、本実施形態に係る樹脂封止装置1の概要について説明する。図1に示すように、樹脂封止装置1は、ワークWの供給を主に行うワーク供給ユニット100A、ワークWを樹脂封止して成形品Wpへの加工を主に行うプレスユニット100B、樹脂の供給を主に行う樹脂供給ユニット100C、及び樹脂封止後の成形品Wpの収納を主に行う成形品収納ユニット100Dを主要構成として備えている。
【0022】
本実施形態においては、所定の一方向(一例として、図1中のX方向)に沿って、ワーク供給ユニット100A、プレスユニット100B、樹脂供給ユニット100C、プレスユニット100B、成形品収納ユニット100Dの順に配置されている。ここで、ワーク供給ユニット100Aとプレスユニット100Bとの間でワークWの搬送を行うワーク搬送部104、及び、プレスユニット100Bと成形品収納ユニット100Dとの間で成形品Wpの搬送を行う成形品搬送部106が設けられている。また、樹脂供給ユニット100Cとプレスユニット100Bとの間で樹脂Rの搬送を行う樹脂搬送部108が設けられている。尚、図1図2に示すように、ワーク搬送部104及び成形品搬送部106と、樹脂搬送部108との間に仕切り300が設けられており、搬送中の樹脂Rから生じた異物(粉塵等)に起因する成形不良の発生を防止可能な構成となっている。
【0023】
本実施形態に係るワーク搬送部104の詳細については後述する。一方、成形品搬送部106は、成形品ローダ212、及びスライダー118、ガイド119等を有する移動装置132を備えて構成されている。例えば、移動装置132には、リニアコンベア等の直動機構が用いられる。また、樹脂搬送部108は、樹脂ローダ304、及びガイド305等を有する移動装置134を備えて構成されている。例えば、移動装置134には、リニアコンベア等の直動機構及びエレベータ等の昇降機構が組み合わされて用いられる。但し、これらの構成に限定されるものではない。
【0024】
尚、樹脂封止装置1は、ユニットの構成を変えることによって、全体の構成態様を変更することができる。例えば、図1に示す構成は、プレスユニット100Bを二台設置した例であるが、プレスユニット100Bを一台のみ設置する、あるいは三台以上設置する構成等も可能である。また、他のユニットを追加設置する構成等も可能である(いずれも不図示)。
【0025】
(ワーク供給ユニット)
続いて、樹脂封止装置1が備えるワーク供給ユニット100Aについて詳しく説明する。
【0026】
ワーク供給ユニット100Aは、ワークWの収容に用いられるワークストッカ110と、ワークWを封止金型202内へ搬送するワーク搬送部104と、ワークストッカ110からワーク搬送部104へワークWを受け渡す供給ピックアップ120とを備えている。一例として、ワークストッカ110には、公知のスタックマガジン、スリットマガジン等が用いられる。
【0027】
次に、ワーク供給ユニット100Aは、ワーク搬送部104によって搬送される対象となるワークWの個数を算定する演算部152を備えている。一例として、レーザー変位計もしくはカメラ等を備えた検知部(不図示)からの検知データに基づいてワークWの個数を算定する構成としている。
【0028】
また、ワーク供給ユニット100Aは、演算部152による個数データに基づいて、ワーク搬送部104によってワークWを搬送して封止金型202(本実施形態においては、下型206)のワーク保持部205(後述)に保持させる制御を行う制御部150を備えている。
【0029】
ここで、ワーク搬送部104は、ワークローダ114及び移動装置130を備えて構成されている。移動装置130は、ガイド131と、ガイド131に沿ってそれぞれ独立して移動可能な複数のスライダー210A~210Cとを備えて構成されている。当該スライダー210A~210Cは、X方向に並設されており、ワークWを保持するトレイ211A~211Cが設けられている(詳細は後述)。
【0030】
ワーク搬送部104のスライダー210A~210Cは、ガイド131に沿ってワーク供給ユニット100Aとプレスユニット100Bとの間をX方向に移動可能に構成されている。また、供給ピックアップ120からワークWを受け取ってトレイ211A~211Cで保持して、搬送し、ワークローダ114へ受け渡す作用をなす。尚、トレイ211A~211Cには、公知の保持機構(例えば、保持爪を有して挟持する構成、吸引装置に連通する吸引孔を有して吸着する構成、等)が用いられる(不図示)。
【0031】
ワーク搬送部104のワークローダ114は、プレスユニット100B内でY方向(X方向と水平面内で直交する方向)に移動可能に構成されている。また、スライダー210A~210Cのトレイ211A~211CからワークWを受け取って、搬送し、封止金型202へ受け渡す作用をなす。構成例として、X方向に三列並設されてそれぞれ一個のワークWを保持可能なワーク保持部114A、114B、114Cが設けられている。尚、ワーク保持部114A、114B、114Cには、公知の保持機構(例えば、保持爪を有して挟持する構成、吸引装置に連通する吸引孔を有して吸着する構成、等)が用いられる(不図示)。
【0032】
この構成によれば、ワーク搬送部104を用いて一度に最大三個のワークWを封止金型202内へ搬入して、下型206のワーク保持部205(205A、205B、205C)に保持させることができる。
【0033】
本実施形態においては、ワーク搬送部104として、スライダー210A~210CがX方向に移動し、ワークローダ114がY方向に移動してワークWを封止金型202内へ搬入する構成としている。ただし、これに限定されるものではなく、ワーク搬送部104として、一つのワークローダがX方向及びY方向に移動して、ワークWを封止金型202内へ搬入する構成としてもよい(不図示)。
【0034】
上記の移動装置130には、一例として、リニアコンベアを好適に用いることができる。当該リニアコンベアは、リニアモータ駆動方式によって、複数のスライダー(具体的には、リニアスライダー)210A~210Cが、ガイド(具体的には、リニアガイド)131に沿って移動する構成を備えている。この構成によれば、スライダー210A~210Cを高速移動することができ、最適な加減速で滑らかに停止することができるため、搬送工程におけるタクトタイムを短縮することができる。また、サーボ制御によるダイレクト駆動のため、停止用のメカストッパやセンサの設置が不要となり、構造の簡素化と装置コストの低減を図ることができる。特に、複数のスライダーを個別に移動させる制御を行うことができ、且つ、高精度(一例として、5μm以下)の位置決めを行うことができるため、一回のプレス工程において樹脂封止するワークWの個数を変化させる本装置に適したワークWの搬送が実現できる(詳細については後述する)。
【0035】
本実施形態においては、それぞれ独立して移動可能な複数のスライダーとして、一個のワークWを保持可能な第1トレイ211Aが取り付けられた第1スライダー210Aと、一個のワークWを保持可能な第2トレイ211Bが取り付けられた第2スライダー210Bと、一個のワークWを保持可能な第3トレイ211Cが取り付けられた第3スライダー210Cとを備えている。
【0036】
尚、第1トレイ211A、第2トレイ211B、及び第3トレイ211Cは、それぞれ、保持したワークWを加熱する予備加熱ヒータ(不図示)を備えている。一例として、予備加熱ヒータには、公知の加熱機構(例えば、電熱線ヒータ、赤外線ヒータ、等)が用いられる。ここで、各スライダー210A~210Cは、所定位置(例えば、ワークWを供給ピックアップ120から受け取る位置、及び、ワークWをワークローダ114に受け渡す位置、等)において、ガイド131から通電可能に構成されている。これにより、ワークWが封止金型202内に搬入されて加熱される前に複数回、予備加熱をすることができる。尚、予備加熱ヒータを備えない構成としてもよい。
【0037】
ここで、制御部150が行う搬送制御の具体例について説明する。前述の演算部152によって算定される個数データとしてワークWが三個の場合、封止金型202(下型206)における全てのワーク保持部205A、205B、205Cを選択して、当該ワーク保持部205A、205B、205CにそれぞれワークWを保持させる制御を行う。また、個数データとしてワークWが二個の場合、両端二箇所のワーク保持部205A、205Cを選択して、当該ワーク保持部205A、205CにそれぞれワークWを保持させる制御を行う。また、個数データとしてワークWが一個の場合、中央一箇所のワーク保持部205Bを選択して、当該ワーク保持部205BにワークWを保持させる制御を行う。供給する樹脂RもワークWの保持位置に合わせて選択供給(後述)されて成形が行われる。換言すれば、制御部150は、個数データに応じて、一個から三個のワークWをワーク保持部205A、205B、205Cに対して選択的に保持できるように、保持させるワーク保持部205A、205B、205Cに対応するスライダー(第1スライダー210A、第2スライダー210B、第3スライダー210C)のトレイ(第1トレイ211A、第2トレイ211B、第3トレイ211C)にワークWを保持させる制御を行うことになる。
【0038】
具体的に、個数データとしてワークWが三個の場合、第1トレイ211A、第2トレイ211B、第3トレイ211Cの全てにそれぞれワークWを保持させて、当該三個のワークWを上記三箇所のワーク保持部205A、205B、205Cに対応する位置へそれぞれ搬送させる制御を行う。尚、ワークWを保持させるトレイの選択方法は図7に示す一通りであり、第1トレイ211A、第2トレイ211B、第3トレイ211Cがそれぞれワーク保持部205A、205B、205Cに対応する位置となるように第1スライダー210A、第2スライダー210B、第3スライダー210Cを移動させる。
【0039】
また、個数データとしてワークWが二個の場合、第1トレイ211A、第2トレイ211B、第3トレイ211Cのいずれか二つにそれぞれワークWを保持させて、当該二個のワークWを上記両端二箇所のワーク保持部205A、205Cに対応する位置へそれぞれ搬送させる制御を行う。尚、ワークWを保持させるトレイの選択方法は図8A図8Cに示す三通りであり、いずれを採用してもよい。例えば、図8Aの場合、第1トレイ211A、第2トレイ211BにそれぞれワークWを保持させて、当該第1トレイ211A、第2トレイ211Bがそれぞれワーク保持部205A、205Cに対応する位置となるように第1スライダー210A、第2スライダー210B、第3スライダー210Cを移動させる。また、図8Bの場合、第1トレイ211A、第3トレイ211CにそれぞれワークWを保持させて、当該第1トレイ211A、第3トレイ211Cがそれぞれワーク保持部205A、205Cに対応する位置となるように第1スライダー210A、第2スライダー210B、第3スライダー210Cを移動させる。また、図8Cの場合、第2トレイ211B、第3トレイ211CにそれぞれワークWを保持させて、当該第2トレイ211B、第3トレイ211Cがそれぞれワーク保持部205A、205Cに対応する位置となるように第2スライダー210B、第3スライダー210Cを移動させる(尚、第1スライダー210Aを移動させる必要はない)。
【0040】
また、個数データとしてワークWが一個の場合、第1トレイ211A、第2トレイ211B、第3トレイ211Cのいずれか一つにワークWを保持させて、当該一個のワークWを上記中央一箇所のワーク保持部205Bに対応する位置へ搬送させる制御を行う。尚、ワークWを保持させるトレイの選択方法は図9A図9Cに示す三通りであり、いずれを採用してもよい。例えば、図9Aの場合、第1トレイ211AにワークWを保持させて、当該第1トレイ211Aがワーク保持部205Bに対応する位置となるように第1スライダー210A、第2スライダー210B、第3スライダー210Cを移動させる。また、図9Bの場合、第2トレイ211BにワークWを保持させて、当該第2トレイ211Bがワーク保持部205Bに対応する位置となるように第2スライダー210B、第3スライダー210Cを移動させる(尚、第1スライダー210Aを移動させる必要はない)。また、図9Cの場合、第3トレイ211CにワークWを保持させて、当該第3トレイ211Cがワーク保持部205Bに対応する位置となるように第3スライダー210Cを移動させる(尚、第1スライダー210A、第2スライダー210Bを移動させる必要はない)。
【0041】
以上のように、封止対象となるワークWの個数に応じて、各スライダー210A~210Cの移動位置を制御し、その位置でワークローダ114がワークWを受け取って封止金型202へ搬入し、対応するワーク保持部205へ載置する。
【0042】
上記の構成によれば、一組の封止金型202当たりの樹脂封止するワークWの個数を変化させることによって、成形品Wpの取り個数を変化させることが可能となる。したがって、取り個数を一定にするためのダミーワークを用いる必要がなくなるため、作業工数、タクトタイム、部品コストの増加を抑制することが可能となる。また、上記のように保持位置を選択することで、型締力の偏りを防止でき、バランスのとれた成形を行うことができる。したがって、成形不良の発生防止、成形品質の向上を図ることができる。また、ワーク搬送部104によって最大三個のワークWを一括して封止金型202受け渡すことができるため、タクトタイムを最短にすることができる。
【0043】
(プレスユニット)
続いて、樹脂封止装置1が備えるプレスユニット100Bについて詳しく説明する。ここで、図3に樹脂封止装置1の型開閉機構250の正面断面図(概略図)を示す。また、図4に樹脂封止装置1の封止金型202の側面断面図(概略図)を示す。
【0044】
プレスユニット100Bは、開閉される一対の金型(例えば、合金工具鋼からなる複数の金型ブロック、金型プレート、金型ピラー等やその他の部材が組み付けられたもの)を有する封止金型202を備えている。本実施形態においては、一対の金型のうち、鉛直方向において上方側の一方の金型を上型204とし、下方側の他方の金型を下型206としている。この封止金型202は、上型204と下型206とが相互に接近・離反することで型閉じ・型開きがなされる。すなわち、鉛直方向(上下方向)が型開閉方向となる。
【0045】
封止金型202は、公知の型開閉機構250によって型開閉が行われる。一例として図3に示すように、型開閉機構250は、一対のプラテン252、254と、一対のプラテン252、254が架設される複数の連結機構256と、プラテン254を可動(昇降)させる駆動源(例えば、電動モータ)260及び駆動伝達機構(例えば、ボールねじやトグルリンク機構)262等を備えて構成されている。
【0046】
ここで、封止金型202は、当該型開閉機構250における一対のプラテン252、254間に配設されている。本実施形態においては、上型204が固定プラテン(連結機構256に固定されるプラテン)252に組み付けられ、下型206が可動プラテン(連結機構256に沿って昇降するプラテン)254に組み付けられている。但し、この構成に限定されるものではなく、上型204を可動プラテンに組み付け、下型206を固定プラテンに組み付けてもよく、あるいは、上型204、下型206共に可動プラテンに組み付けてもよい。
【0047】
次に、封止金型202の上型204について詳しく説明する。図4に示すように、上型204は、上プレート222、キャビティ駒226、クランパ228等を備え、これらが組み付けられて構成されている。本実施形態においては、上型204の下面(下型206側の面)にキャビティ208が設けられている。
【0048】
より具体的に、キャビティ駒226は、上プレート222の下面に対して固定して組み付けられる。一方、クランパ228は、キャビティ駒226を囲うように環状に構成されると共に、付勢部材232を介して、上プレート222の下面に対して離間(フローティング)して上下動可能に組み付けられる。このキャビティ駒226がキャビティ208の奥部(底部)を構成し、クランパ228がキャビティ208の側部を構成する。ここで、本実施形態においては、図1に示すように、一個の上型204にキャビティ208がX方向に三組並設されており(図中の208A、208B、208C)、最大三個のワークWを一括して樹脂封止する構成となっている。
【0049】
ここで、クランパ228に対向する下型206の金型面206aには吸引孔(不図示)が設けられ、これが吸引装置(不図示)に連通している。また、これらを囲うシール構造が設けられることで、吸引装置を駆動させて減圧することにより、型閉じされた状態でキャビティ208内の脱気を行うことが可能となる。
【0050】
また、本実施形態においては、フィルム供給機構214A~214C(後述)から供給されるフィルムFを上型204に吸引保持する吸着機構が設けられている。この吸着機構は、一例として、クランパ228を貫通して配設された吸引路230a、230b、及び上プレート222、キャビティ駒226を貫通して配設された吸引路230cを介して吸引装置(不図示)に連通している。具体的には、吸引路230a、230b、230cの一端が上型204の金型面204aに通じ、他端が上型204外に配設される吸引装置と接続される。これにより、吸引装置を駆動させて吸引路230a、230b、230cからフィルムFを吸引し、キャビティ208の内面を含む金型面204aにフィルムFを吸着させて保持することが可能となる。
【0051】
このように、キャビティ208の内面、及び上型204の金型面204a(一部)を覆うフィルムFを設けることにより、成形品Wpの上面における樹脂Rの部分を容易に剥離させることができるため、成形品Wpを封止金型202(上型204)から容易に取り出すことが可能となる。
【0052】
尚、クランパ228の内周面とキャビティ駒226の外周面との間に設けられる所定寸法の隙間は、上記の吸引路230aの一部を構成する。そのため、当該隙間の所定位置にシール部材234(例えば、Oリング)が配設されて、フィルムFを吸引する際のシール作用をなす。
【0053】
また、本実施形態においては、上型204を所定温度に加熱する上型加熱機構が設けられている。この上型加熱機構は、ヒータ(例えば、電熱線ヒータ)、温度センサ、電源等を備えており、制御部150によって加熱の制御が行われる(いずれも不図示)。一例として、ヒータは、上プレート222やこれらを収容する金型ベース(不図示)に内蔵され、主に上型204全体及び樹脂Rに熱を加える構成となっている(後述)。これにより、上型204が所定温度(例えば、100℃~200℃)に調整されて加熱される。
【0054】
また、本実施形態においては、ロール状でシート面に開口(孔)の無いフィルムFを封止金型202の内部へ搬送(供給)するフィルム供給機構214A、214B、214Cが設けられている。このフィルム供給機構214A、214B、214Cは、未使用のフィルムFが巻出し部214aから送り出されて型開きした封止金型202に供給され、封止金型202で樹脂封止に使用された後、使用済みのフィルムFとして巻取り部214bで巻取られる構成となっている。尚、巻出し部214aと巻取り部214bとはY方向において逆に配置してもよく、あるいは、X方向に1条のフィルムFを供給するように配置してもよい(いずれも不図示)。
【0055】
次に、封止金型202の下型206について詳しく説明する。図4に示すように、下型206は、下プレート224、保持プレート236等を備え、これらが組み付けられて構成されている。ここで、保持プレート236は、下プレート224の上面(上型204側の面)に対して固定して組み付けられている。
【0056】
また、本実施形態においては、ワークWを保持プレート236の上面における所定位置に保持するワーク保持部205が設けられている。このワーク保持部205は、一例として、保持プレート236及び下プレート224を貫通して配設され、吸引装置(不図示)に連通する吸引路240aを有している。具体的には、吸引路240aの一端が下型206の金型面206aに通じ、他端が下型206外に配設される吸引装置と接続される。これにより、吸引装置を駆動させて吸引路240aからワークWを吸引し、金型面206a(ここでは、保持プレート236の上面)にワークWを吸着させて保持することが可能となる。さらに、吸引路240aを備える構成と並設して、ワークWの外周を挟持する保持爪を備える構成としてもよい(不図示)。
【0057】
また、本実施形態においては、下型206を所定温度に加熱する下型加熱機構が設けられている。この下型加熱機構は、ヒータ(例えば、電熱線ヒータ)、温度センサ、電源等を備えており、制御部150によって加熱の制御が行われる(いずれも不図示)。一例として、ヒータは、下プレート224やこれらを収容する金型ベース(不図示)に内蔵され、主に下型206全体及びワークWに熱を加える構成となっている。これにより、下型206が所定温度(例えば、100℃~200℃)に調整されて加熱される。
【0058】
ここで、本実施形態においては、前述の上型204の構成、すなわちキャビティ208がX方向に三組並設される構成(図中の208A、208B、208C)に対応して、一個の下型206にワーク保持部205がX方向に三組並設される構成(図中の205A、205B、205C)となっている。尚、上記の構成に限定されるものではない。
【0059】
(樹脂供給ユニット)
続いて、樹脂封止装置1が備える樹脂供給ユニット100Cについて詳しく説明する。
【0060】
樹脂供給ユニット100Cは、樹脂Rの収容に用いられる樹脂ストッカ302と、樹脂ストッカ302から樹脂Rを供給するディスペンサ312と、供給された樹脂Rを封止金型202内へ搬送する樹脂ローダ304とを備えている。また、ディスペンサ312は、三組のキャビティ208に対応して設けられる三個の押圧プレート314(後述)に対して、同時に樹脂Rの供給が可能なように三個配設されている。尚、本実施形態においては、樹脂ローダ304が、X方向に沿って樹脂Rを封止金型202内へ搬入する構成となっている。
【0061】
また、樹脂供給ユニット100Cは、ディスペンサ312に隣接する位置等に、樹脂ローダ304によって搬送される樹脂Rを加熱する樹脂ヒータ306を備えている。一例として、樹脂ヒータ306には、公知の加熱機構(例えば、電熱線ヒータ、赤外線ヒータ、等)が用いられる。これにより、押圧プレート314に載置された粒状の樹脂Rの表面を加熱して溶融もしくは軟化状態とすることができ、搬送中の樹脂Rから塵埃(樹脂の微細粉末等)が発生することを防止して、製品の成形不良や、装置の動作不良の発生を防止することができる。尚、樹脂ヒータ306を備えない構成としてもよい。
【0062】
ここで、図5に示すように、樹脂ローダ304には、ディスペンサ312から投下された樹脂Rを上面314aに載置させる押圧プレート314と、押圧プレート314における上面314aよりも高い位置まで外周部の全周を囲う周壁部316aを有するガード316とが設けられている。本実施形態は、一個の上型204に三組のキャビティ208を有し、一個の下型206に三個のワークW(例えば、短冊状等のワーク)を配置して一括して樹脂封止を行い、同時に三個の成形品Wpを得る構成である(三個以下の設定も可能)。したがって、キャビティ208の位置に対応して、三個の押圧プレート314(314A、314B、314C)が設けられている。また、ガード316は、三個の押圧プレート314(314A、314B、314C)の全周を周壁部316aが囲うよう構成されている。すなわち、ガード316は、各押圧プレート314の周囲に設けられる枠体として構成されている。
【0063】
また、同図5に示すように、樹脂ローダ304は、昇降可能に(すなわち、Z方向に往復動可能に)構成されている。さらに、当該樹脂ローダ304には、押圧プレート314を上方へ移動させて、載置された樹脂Rをキャビティ208内でフィルムFに押圧させる移動貼着機構315が設けられている。これによれば、樹脂ローダ304を上昇させて、ガード316の周壁部316aを上型204(一例として、クランパ228における金型面204a)に当接させることができる。さらに、その状態で、移動貼着機構315により押圧プレート314を上方へ移動させて、所定温度に加熱された状態の上型204におけるキャビティ208内で押圧プレート314に載置された樹脂RをフィルムFに押圧させることができる(図6参照)。したがって、フィルムFを介して上型204の熱を樹脂Rに伝えることができるため、樹脂Rが軟化(溶融)状態となることによる接着力を発生させて、フィルムFの下面に貼着させることができる。尚、変形例として、ガード316を昇降させる機構を樹脂ローダ304に設けて、樹脂ローダ304に対して周壁部316aを取り外したガード316を昇降させる構成としてもよい(不図示)。
【0064】
また、本実施形態に係る制御部150は、ワークWの個数データに応じてワークWを保持させるワーク保持部205A~205Cに対応するキャビティ208A~208Cに、ディスペンサ312から供給された樹脂Rを搬送する制御を行う。
【0065】
ここで、制御部150が行う搬送制御の具体例について説明する。前述の演算部152によって算定される個数データとしてワークWが三個の場合、全てのワーク保持部205A、205B、205Cを選択して、当該ワーク保持部205A、205B、205CにそれぞれワークWを保持させる制御を行うと共に、全てのキャビティ208A、208B、208Cを選択して、当該キャビティ内にそれぞれ樹脂Rを保持(載置)させる制御を行う。また、個数データとして前記ワークWが二個の場合、両端二箇所のワーク保持部205A、205Cを選択して、当該ワーク保持部205A、205CにそれぞれワークWを保持させる制御を行うと共に、両端二箇所のキャビティ208A、208Cを選択して、当該キャビティ内にそれぞれ樹脂Rを保持(載置)させる制御を行う。また、個数データとして前記ワークWが一個の場合、中央一箇所のワーク保持部205Bを選択して、当該ワーク保持部205BにワークWを保持させる制御を行うと共に、中央一箇所のキャビティ208Bを選択して、当該キャビティ内に樹脂Rを保持(載置)させる制御を行う。
【0066】
尚、樹脂Rの供給に関する樹脂封止装置1の変形例として、ワーク供給ユニット100Aにディスペンサを設けて、ワークW上に樹脂Rを供給し、ワーク搬送部104等によりワークWと共に封止金型202内に搬送する構成を採用してもよい(不図示)。
【0067】
(成形品収納ユニット)
続いて、樹脂封止装置1が備える成形品収納ユニット100Dについて詳しく説明する。
【0068】
成形品収納ユニット100Dは、成形品Wpの収容に用いられる成形品ストッカ112と、成形品Wpを封止金型202外へ搬送する成形品搬送部106と、成形品搬送部106から成形品ストッカ112へ成形品Wpを受け渡す収納ピックアップ122とを備えている。尚、成形品ストッカ112には、公知のスタックマガジン、スリットマガジン等が用いられる。
【0069】
成形品搬送部106の成形品ローダ212は、プレスユニット100B内でY方向に移動可能に構成されている。また、封止金型202から成形品Wpを受け取って、搬送し、スライダー118へ受け渡す作用をなす。構成例として、X方向に三列並設されてそれぞれ一個の成形品Wpを保持可能な成形品保持部212A、212B、212Cが設けられている。尚、成形品保持部212A、212B、212Cには、公知の保持機構(例えば、保持爪を有して挟持する構成、吸引装置に連通する吸引孔を有して吸着する構成、等)が用いられる(不図示)。
【0070】
成形品搬送部106のスライダー118は、ガイド119に沿ってプレスユニット100Bと成形品収納ユニット100Dとの間を移動可能に構成されている。また、成形品ローダ212から成形品Wpを受け取って、搬送し、収納ピックアップ122へ受け渡す作用をなす。構成例として、X方向に三列並設されてそれぞれ一個の成形品Wpを保持可能な成形品保持部118A、118B、118Cが設けられている。尚、成形品保持部118A、118B、118Cには、公知の保持機構(例えば、保持爪を有して挟持する構成、吸引装置に連通する吸引孔を有して吸着する構成、等)が用いられる(不図示)。
【0071】
この構成によれば、樹脂封止されて上型204のキャビティ208(208A、208B、208C)に保持された状態の最大三個の成形品Wpを、成形品搬送部106を用いて一度に封止金型202外へ搬出することができる。
【0072】
本実施形態においては、成形品搬送部106として、成形品ローダ212がY方向に移動し、スライダー118がX方向に移動して、成形品Wpを封止金型202外へ搬出する構成となっている。ただし、これに限定されるものではなく、成形品搬送部106として、一つの成形品ローダがX方向及びY方向に移動して成形品Wpを封止金型202外へ搬出する構成としてもよい(不図示)。
【0073】
(樹脂封止動作)
続いて、本実施形態に係る樹脂封止装置1を用いて樹脂封止を行う動作(すなわち、本実施形態に係る樹脂封止方法)について説明する。一例として、三個以下のワークWを一括して樹脂Rにより封止する圧縮成形方法を例に挙げて説明する。
【0074】
準備工程として、上型加熱機構によって、上型204を所定温度(例えば、100℃~200℃)に調整して加熱する加熱工程(上型加熱工程)を実施する。また、下型加熱機構によって、下型206を所定温度(例えば、100℃~200℃)に調整して加熱する加熱工程(下型加熱工程)を実施する。さらに、フィルム供給機構214A、214B、214Cによって、巻出し部214aから巻取り部214bへフィルムFを搬送して(送り出して)封止金型202における所定位置(上型204と下型206との間の位置)にフィルムFを供給する工程(フィルム供給工程)を実施する。
【0075】
以下、ワークWをワーク供給ユニット100Aからプレスユニット100Bへ搬送するワーク搬送工程を実施した後、樹脂Rを樹脂供給ユニット100Cからプレスユニット100Bへ搬送する樹脂搬送工程を実施する順序で説明するが、樹脂搬送工程をワーク搬送工程の前に実施しても良い。
【0076】
先ず、演算部152によって、封止金型202内へ搬送するワークWの個数を算定する演算工程を実施する。次いで、上記演算工程における個数データに基づいて、ワークWをワーク供給ユニット100Aからプレスユニット100Bへ搬送するワーク搬送工程を実施する。本実施形態においては、ワーク搬送工程の途中において、各トレイ211A~211Cの予備加熱ヒータ(不図示)により搬送中のワークWの予備加熱を行う工程を実施する。尚、予備加熱工程を省略してもよい。
【0077】
ここで、ワーク搬送工程において制御部150が行う搬送制御の具体例を以下に示す。演算工程における個数データとしてワークWが三個の場合、封止金型202(下型206)における全てのワーク保持部205A、205B、205Cを選択する。これに対応するように、第1トレイ211A、第2トレイ211B、第3トレイ211Cの全てにそれぞれワークWを保持させる。次いで、当該三個のワークWを上記三箇所のワーク保持部205A、205B、205Cに対応する位置となるように第1スライダー210A、第2スライダー210B、第3スライダー210Cの全てを移動させる(このとき、ワークWを保持させるトレイの選択方法は前述の図7に示す一通りであり、繰り返しの説明を省略する)。その位置でワークローダ114にワークWを受け渡し、選択したワーク保持部205に保持させる。
【0078】
次に、演算工程における個数データとしてワークWが二個の場合、封止金型202(下型206)における両端二箇所のワーク保持部205A、205Cを選択する。これに対応するように、第1トレイ211A、第2トレイ211B、第3トレイ211Cのいずれか二つにそれぞれワークWを保持させて、当該二個のワークWを上記両端二箇所のワーク保持部205A、205Cに対応する位置となるように第1スライダー210A、第2スライダー210B、第3スライダー210Cの全てもしくは一部を移動させる(このとき、ワークWを保持させるトレイの選択方法は前述の図8A図8Cに示す三通りであり、繰り返しの説明を省略する)。その位置でワークローダ114にワークWを受け渡し、選択したワーク保持部205に保持させる。
【0079】
次に、演算工程における個数データとしてワークWが一個の場合、封止金型202(下型206)における中央一箇所のワーク保持部205Bを選択する。これに対応するように、第1トレイ211A、第2トレイ211B、第3トレイ211Cのいずれか一つにワークWを保持させて、当該一個のワークWを上記中央一箇所のワーク保持部205Bに対応する位置となるように第1スライダー210A、第2スライダー210B、第3スライダー210Cの全てもしくは一部を移動させる(このとき、ワークWを保持させるトレイの選択方法は前述の図9A図9Cに示す三通りであり、繰り返しの説明を省略する)。その位置でワークローダ114にワークWを受け渡し、選択したワーク保持部205に保持させる。
【0080】
続いて、演算工程における個数データに基づいて、樹脂Rを樹脂供給ユニット100Cからプレスユニット100Bへ搬送する樹脂搬送工程を実施する。本実施形態においては、樹脂搬送工程の途中において、樹脂ヒータ306により搬送中の樹脂Rの予備加熱を行う工程を実施する。尚、予備加熱工程を省略してもよい。
【0081】
ここで、樹脂搬送工程において制御部150が行う搬送制御の具体例を以下に示す。演算工程における個数データとしてワークWが三個の場合、前述の通り全てのワーク保持部205A、205B、205CにワークWが保持される。これに対応するように、ディスペンサ312から全ての押圧プレート314A、314B、314C上にそれぞれ規定量の樹脂Rを供給する。次いで、当該三セットの樹脂R(規定量の樹脂群)を、樹脂ローダ304によって上記三箇所のワーク保持部205A、205B、205Cに対応する三箇所のキャビティ208A、208B、208C内へ搬送し、保持させる。
【0082】
次に、演算工程における個数データとしてワークWが二個の場合、前述の通り両端二箇所のワーク保持部205A、205CにワークWが保持される。これに対応するように、ディスペンサ312から両端二箇所の押圧プレート314A、314C上にそれぞれ規定量の樹脂Rを供給する。次いで、当該二セットの樹脂R(規定量の樹脂群)を、樹脂ローダ304によって上記二箇所のワーク保持部205A、205Cに対応する二箇所のキャビティ208A、208C内へ搬送し、保持させる。
【0083】
次に、演算工程における個数データとしてワークWが一個の場合、前述の通り中央一箇所のワーク保持部205BにワークWが保持される。これに対応するように、ディスペンサ312から中央一箇所の押圧プレート314B上に規定量の樹脂Rを供給する。次いで、当該一セットの樹脂R(規定量の樹脂群)を、樹脂ローダ304によって上記一箇所のワーク保持部205Bに対応する二箇所のキャビティ208B内へ搬送し、保持させる。
【0084】
尚、樹脂ローダ304によって樹脂Rをキャビティ208内へ搬送して保持させる工程は、以下のように実施する。
【0085】
一例として、図5に示すように、吸着機構によって、キャビティ208の内面を含む金型面204aにフィルムFを吸着させて保持させる吸着工程を実施する。次いで、樹脂ローダ304によって、押圧プレート314に載置された樹脂Rを封止金型202内(上型204と下型206との間)へ搬送する工程を実施する。この工程においては、封止金型202内(上型204と下型206との間)の所定位置に樹脂ローダ304を配置した状態として、その状態から樹脂ローダ304の上昇を開始する。
【0086】
次いで、図6に示すように、尚、ガード316の周壁部316aが上型204(この場合は、クランパ228の金型面204a)に当接した状態となったときに樹脂ローダ304の上昇を停止する。次いで、移動貼着機構315を駆動して押圧プレート314の上昇を開始する。このとき、押圧プレート314のみが上方へ(すなわち、キャビティ208内へ)移動し、上面314aに載置された樹脂RをフィルムFの下面に押圧して貼着させる工程を実施する。
【0087】
このように、所定温度に加熱された状態の上型204におけるキャビティ208内で、押圧プレート314に載置された樹脂RをフィルムFに押圧することができる。したがって、フィルムFを介して上型204の熱を樹脂Rに伝えることができるため、樹脂Rが軟化(溶融)状態となって接着力が発生し、フィルムFの下面に貼着する作用が得られる。尚、貼着工程は、輻射熱や樹脂Rを介した熱伝達により移動貼着機構315が加熱されることのないよう、短時間で行うことが好ましい。この点において、前述の予備加熱工程を実施して事前に樹脂Rを一体化させることにより、フィルムFの下面への樹脂Rの貼着工程を効率的に行うことができる。
【0088】
次いで、移動貼着機構315を駆動して押圧プレート314の下降を開始する工程、及び、樹脂ローダ304の下降を開始する工程を実施する。次いで、樹脂ローダ304を封止金型202外へ移動する工程を実施する(不図示)。
【0089】
尚、樹脂搬送工程の変形例として、前述の通り、ワークW上に樹脂Rを供給し、ワーク搬送部104等によりワークWと共に封止金型202内に搬送する工程により実施してもよい(不図示)。
【0090】
これ以降の工程は、従来の樹脂封止方法(圧縮成形方法)と同様であって、封止金型202の型閉じを行い、上型204と下型206とで任意の数のワークWをクランプする工程を実施する。このとき、各キャビティ208において、それぞれキャビティ駒226が相対的に下降して、ワークWに対して樹脂Rを加熱加圧する(前述の通り、ワーク保持部205A~205Cの幾つかにワークWが保持されていない場合もある)。これにより、樹脂Rが熱硬化して樹脂封止(圧縮成形)が完了する。次いで、封止金型202の型開きを行い、成形品搬送部106によって、成形品Wpを封止金型202内から取り出して成形品収納ユニット100Dへ搬送する工程(成形品搬送工程)を実施する。また、フィルム供給機構214A、214B、214Cによって、巻出し部214aから巻取り部214bへフィルムFを搬送することにより、使用済みフィルムFを送り出す工程(フィルム排出工程)を実施する。尚、成形に使用しなかったフィルムFはこの工程を省略してもよい。
【0091】
以上が樹脂封止装置1を用いて行う樹脂封止の主要動作である。但し、上記の工程順は一例であって、支障がない限り先後順の変更や並行実施が可能である。例えば、本実施形態においては、複数(一例として二台)のプレスユニット100Bを備える構成であるため、上記の動作を並行して実施することで、効率的な成形品形成が可能となる。
【0092】
[第二の実施形態]
続いて、本発明の第二の実施形態について説明する。本実施形態は、前述の第一の実施形態と比較して、ワーク搬送部104の構成において相違点を有している。以下、当該相違点を中心に説明する。ここで、第二の実施形態に係る樹脂封止装置1の平面図(概略図)を図10に示す。
【0093】
本実施形態に係るワーク搬送部104は、ワークローダ114及び移動装置130を備えて構成されている。移動装置130は、ガイド131と、ガイド131に沿ってそれぞれ独立して移動可能な複数のスライダー210D、210Eとを備えて構成されている。当該スライダー210D、210Eは、X方向に並設されており、ワークWを保持するトレイ211D、211Eが設けられている。
【0094】
本実施形態においては、一個のワークWを保持可能な第4トレイ211Dが取り付けられた第4スライダー210Dと、二個のワークWを保持可能な第5トレイ211Eが取り付けられた第5スライダー210Eとを備えている。一例として、第5トレイ211Eは、二個のワークWをスライダーの移動方向(X方向)に並べて保持可能な第1保持部211aと第2保持部211bとを備えている。尚、ワーク搬送部104の変形例として、第4トレイ211Dと第5トレイ211EとをX方向において逆に配置する構成としてもよい。
【0095】
尚、第4トレイ211D及び第5トレイ211Eは、それぞれ、保持したワークWを加熱する予備加熱ヒータ(不図示)を備えている。一例として、予備加熱ヒータには、公知の加熱機構(例えば、電熱線ヒータ、赤外線ヒータ、等)が用いられる。ここで、各スライダー210D、210Eは、所定位置(例えば、ワークWを供給ピックアップ120から受け取る位置、及び、ワークWをワークローダ114に受け渡す位置、等)において、ガイド131から通電可能に構成されている。これにより、ワークWが封止金型202内に搬入されて加熱される前に複数回、予備加熱をすることができる。尚、予備加熱ヒータを備えない構成としてもよい。
【0096】
上記の構成を備える本実施形態に係る樹脂封止装置1を用いて樹脂封止を行う動作(すなわち、本実施形態に係る樹脂封止方法)は、前述の第一の実施形態と比較して、ワーク搬送工程が以下のように相違する。
【0097】
当該ワーク搬送工程において制御部150が行う搬送制御の具体例について説明する。前述の第一の実施形態と同様に、演算部152によって算定される個数データとしてワークWが三個の場合、封止金型202(下型206)における全てのワーク保持部205A、205B、205Cを選択する。また、個数データとしてワークWが二個の場合、両端二箇所のワーク保持部205A、205Cを選択する。また、個数データとしてワークWが一個の場合、中央一箇所のワーク保持部205Bを選択する。
【0098】
これに続く工程は、前述の第一の実施形態に対して以下のように相違する。具体的に、個数データとしてワークWが三個の場合、第4トレイ211Dに一個のワークWを保持させ、第5トレイ211E(第1保持部211a及び第2保持部211b)に二個のワークWを保持させて、当該三個のワークWを上記三箇所のワーク保持部205A、205B、205Cに対応する位置へそれぞれ搬送させる制御を行う。尚、ワークWを保持させるトレイの選択方法は図11に示す一通りであり、第4トレイ211D、第5トレイ211E(第1保持部211a及び第2保持部211b)がそれぞれワーク保持部205A、205B、205Cに対応する位置となるように第4スライダー210D、第5スライダー210Eを移動させる。
【0099】
また、個数データとしてワークWが二個の場合、第4トレイ211Dに一個のワークWを保持させ、第5トレイ211E(第1保持部211aもしくは第2保持部211b)に一個のワークWを保持させて、当該二個のワークWを上記二箇所のワーク保持部205A、205Cに対応する位置へそれぞれ搬送させる制御を行う。尚、ワークWを保持させるトレイの選択方法は図12A図12Bに示す二通りであり、いずれを採用してもよい。例えば、図12Aの場合、第4トレイ211D、第5トレイ211E(第1保持部211a)にそれぞれワークWを保持させて、当該第4トレイ211D、第5トレイ211E(第1保持部211a)がそれぞれワーク保持部205A、205Cに対応する位置となるように第4スライダー210D、第5スライダー210Eを移動させる。また、図12Bの場合、第4トレイ211D、第5トレイ211E(第2保持部211b)にそれぞれワークWを保持させて、当該第4トレイ211D、第5トレイ211E(第2保持部211b)がそれぞれワーク保持部205A、205Cに対応する位置となるように第4スライダー210D、第5スライダー210Eを移動させる。
【0100】
また、個数データとしてワークWが一個の場合、第4トレイ211D、第5トレイ211E(第1保持部211aもしくは第2保持部211b)のいずれか一つにワークWを保持させて、当該一個のワークWを上記中央一箇所のワーク保持部205Bに対応する位置へ搬送させる制御を行う。尚、ワークWを保持させるトレイの選択方法は図13A図13Cに示す三通りであり、いずれを採用してもよい。例えば、図13Aの場合、第4トレイ211DにワークWを保持させて、当該第4トレイ211Dがワーク保持部205Bに対応する位置となるように第4スライダー210D、第5スライダー210Eを移動させる。また、図13Bの場合、第5トレイ211E(第1保持部211a)にワークWを保持させて、当該第5トレイ211E(第1保持部211a)がワーク保持部205Bに対応する位置となるように第5スライダー210Eを移動させる(尚、第4スライダー210Dを移動させる必要はない)。また、図13Cの場合、第5トレイ211E(第2保持部211b)にワークWを保持させて、当該第5トレイ211E(第2保持部211b)がワーク保持部205Bに対応する位置となるように第5スライダー210Eを移動させる(尚、第4スライダー210Dを移動させる必要はない)。
【0101】
尚、前述の通り、ワーク搬送部104の変形例として、第4トレイ211Dと第5トレイ211EとをX方向において逆に配置する構成としてもよい。その場合、ワーク搬送工程の一部が以下のようになる。
【0102】
具体的に、個数データとしてワークWが三個の場合、第5トレイ211E(第1保持部211a及び第2保持部211b)に二個のワークWを保持させ、第4トレイ211Dに一個のワークWを保持させて、当該三個のワークWを上記三箇所のワーク保持部205A、205B、205Cに対応する位置へそれぞれ搬送させる制御を行う。尚、ワークWを保持させるトレイの選択方法は図14に示す一通りであり、第5トレイ211E(第1保持部211a及び第2保持部211b)、第4トレイ211Dがそれぞれワーク保持部205A、205B、205Cに対応する位置となるように第5スライダー210E、第4スライダー210Dを移動させる。
【0103】
また、個数データとしてワークWが二個の場合、第5トレイ211E(第1保持部211aもしくは第2保持部211b)に一個のワークWを保持させ、第4トレイ211Dに一個のワークWを保持させて、当該二個のワークWを上記二箇所のワーク保持部205A、205Cに対応する位置へそれぞれ搬送させる制御を行う。尚、ワークWを保持させるトレイの選択方法は図15A図15Bに示す二通りであり、いずれを採用してもよい。例えば、図15Aの場合、第5トレイ211E(第1保持部211a)、第4トレイ211DにそれぞれワークWを保持させて、当該第5トレイ211E(第1保持部211a)、第4トレイ211Dがそれぞれワーク保持部205A、205Cに対応する位置となるように第5スライダー210E、第4スライダー210Dを移動させる。また、図15Bの場合、第5トレイ211E(第2保持部211b)、第4トレイ211DにそれぞれワークWを保持させて、当該第5トレイ211E(第2保持部211b)、第4トレイ211Dがそれぞれワーク保持部205A、205Cに対応する位置となるように第5スライダー210E、第4スライダー210Dを移動させる。
【0104】
また、個数データとしてワークWが一個の場合、第5トレイ211E(第1保持部211aもしくは第2保持部211b)、第4トレイ211Dのいずれか一つにワークWを保持させて、当該一個のワークWを上記中央一箇所のワーク保持部205Bに対応する位置へ搬送させる制御を行う。尚、ワークWを保持させるトレイの選択方法は図16A図16Cに示す三通りであり、いずれを採用してもよい。例えば、図16Aの場合、第5トレイ211E(第1保持部211a)にワークWを保持させて、当該第5トレイ211E(第1保持部211a)がワーク保持部205Bに対応する位置となるように第5スライダー210E、第4スライダー210Dを移動させる。また、図16Bの場合、第5トレイ211E(第2保持部211b)にワークWを保持させて、当該第5トレイ211E(第2保持部211b)がワーク保持部205Bに対応する位置となるように第5スライダー210E、第4スライダー210Dを移動させる。また、図16Cの場合、第4トレイ211DにワークWを保持させて、当該第4トレイ211Dがワーク保持部205Bに対応する位置となるように第4スライダー210Dを移動させる(尚、第5スライダー210Eを移動させる必要はない)。
【0105】
上記のいずれの場合も、スライダー210D、210Eの移動位置でワークローダ114にワークWを受け渡し、選択したワーク保持部205に保持させる。
【0106】
本実施形態に係るその他の工程は、前述の第一の実施形態と同様であり、繰り返しの説明を省略する。
【0107】
本実施形態によれば、前述の第一の実施形態と比較してスライダーの設置数を低減することができるため、装置コストの低減を図ることができる。
【0108】
以上、説明した通り、本発明に係る樹脂封止装置及び樹脂封止方法によれば、一組の封止金型当たりの成形品の取り個数を変化させることを可能として、ダミーワークを用いない成形を実現することにより、作業工数、タクトタイム、部品コストの増加を抑制することができる。
【0109】
尚、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更可能である。特に、封止樹脂として、顆粒状、粉砕状、粉末状の熱硬化性樹脂を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、液状、板状、シート状等の樹脂を用いる構成にも適用し得る。例えば、シート状の樹脂を用いる構成では、もともと平坦で且つ一体化されたシート状の樹脂をフィルムの下面に貼着させればよく、簡易に樹脂封止の準備をすることができる。
【0110】
また、上記の実施形態においては、フィルムを介して上型の熱を樹脂に伝え、樹脂を軟化(溶融)状態として接着力を発生させることで、フィルムの下面に樹脂を貼着する構成について説明したが、多孔質のフィルムを用い、吸引装置を駆動させて吸引路からフィルムを吸引することで、樹脂RをフィルムFの下面に吸着して貼着する構成を採用してもよい。
【0111】
また、上記の実施形態においては、上型に三組のキャビティが設けられ、下型に対応する三個のワーク保持部が設けられた封止金型を用いて、三個以下のワークを一括して樹脂により封止する圧縮成形装置を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、最大数を四以上に設定することも可能である。
【0112】
また、上記の実施形態においては、上型にキャビティを備える圧縮成形装置を例に挙げて説明したが、下型にキャビティを備える圧縮成形装置にも適用可能である。その場合、樹脂の供給に関しては、搬送用治具であるレジンガード(不図示)を用いてフィルム(例えば、短冊状フィルム)上に樹脂を載置した状態で封止金型へ搬送する構成等が考えられる。
【符号の説明】
【0113】
1 樹脂封止装置
104 ワーク搬送部
114 ワークローダ
202 封止金型
210A~210E スライダー
211A~210E トレイ
W ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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