(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】血液脳関門を通過することができるポリペプチド
(51)【国際特許分類】
C07K 19/00 20060101AFI20240930BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20240930BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20240930BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20240930BHJP
C07K 14/16 20060101ALI20240930BHJP
C07K 14/435 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
A61K38/16
A61K47/64
A61P25/04
C07K14/16
C07K14/435
(21)【出願番号】P 2021516372
(86)(22)【出願日】2018-12-27
(86)【国際出願番号】 CN2018124253
(87)【国際公開番号】W WO2020056987
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-04-16
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】201811086051.5
(32)【優先日】2018-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521113461
【氏名又は名称】深セン瑞健生物科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHENZHEN RUIJIAN BIOSCIENCE TECHNOLOGY LIMITED COMPANY
【住所又は居所原語表記】Shenzhen University General Hospital,No.1098 Xueyuan Road,Nanshan District,Shenzhen,Guangdong 518000,China
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】リ,シューペン
(72)【発明者】
【氏名】ゾウ,キアン
【合議体】
【審判長】上條 肇
【審判官】長井 啓子
【審判官】小暮 道明
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第2876164(EP,A1)
【文献】Scientific Reports,2015年,5:12497,p.1-10
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00 - 19/00
C12N 15/00 - 15/90
A61K 38/00 - 38/58
CAPLUS/EMBASE/MEDLINE/BIOSIS(STN)
JST7580/JMEDPlus/JSTPlus(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジコノチドを含み、血液脳関門を通過できることを特徴とするポリペプチドであって、当該ポリペプチドが
、ジコノチドと
TATペプチド
、またはジコノチド、TATペプチドおよびリンカ―からなり、ジコノチドのC末端が、TATペプチドのN末端に直接連結されているか、リンカ―を介してTATペプチドのN末端に連結されていることを特徴とする、ポリペプチド。
【請求項2】
前記リンカ―が、1つ、2つまたは3つのグリシンであることを特徴とする、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
前記ジコノチドが、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有することを特徴とする、請求項1または2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
TATペプチドが、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項5】
前記ポリペプチドのアミノ酸配列が、配列番号3~6のいずれかに示され
ることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のポリペプチドおよび許容される担体を含むことを特徴とする、医薬組成物。
【請求項7】
前記医薬組成物が、静脈内投与、腹腔内投与または鼻腔内投与に使用され、該医薬組成物の剤型が、静脈内投与、腹腔内投与または鼻腔内投与のための剤型であることを特徴とする、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか1項に記載のポリペプチドを含むことを特徴とする製剤。
【請求項9】
静脈内投与用、腹腔内投与用または鼻腔内投与用の製剤であることを特徴とする、請求項8に記載の製剤。
【請求項10】
請求項1~5のいずれか1項に記載のポリペプチドの調製方法であって、
前記ポリペプチドが、合成により調製されることを特徴とする、調製方法。
【請求項11】
疾患の治療に使用するための、請求項1~5のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項6もしくは7に記載の医薬組成物、または請求項8もしくは9に記載の製剤。
【請求項12】
前記疾患が、疼痛または疼痛に関連する疾患であることを特徴とする、請求項11に記載のポリペプチド、医薬組成物または製剤。
【請求項13】
前記ポリペプチド、医薬組成物または製剤が、静脈内投与、腹腔内投与または鼻腔内投与されることを特徴とする、請求項11または12に記載のポリペプチド、医薬組成物または製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリペプチドの薬物技術分野に属し、特に、ジコノチド(ziconotide)の融合ポリペプチドに関する。
【背景技術】
【0002】
ジコノチド(商品名PrialtTM、Elan Pharmaceuticals)は、2004年に米国食品医薬品局(FDA)によって承認された最初のコノトキシン(Conotoxins)系薬物である。その標的作用部位は、N型電位依存性カルシウムイオンチャネル(Voltage-gated calcium Ion channel)であり、クモ膜下腔(髄腔内)における複合鎮痛の第1の選択薬である。ジコノチドは、太平洋の魚を食うカタツムリ(イモガイ(Cone Snail))の体内の毒液ペプチドに含まれる親水性ポリペプチドω-MVIIAの人工合成物であり、臨床現場で使用される最初の新しい非モルヒネ系鎮痛剤であり、その分子式は、C102H172N36O32S7であり、構造式は、H-Cys-Lys-Gly-Lys-Gly-Ala-Lys-Cys-Ser-Arg-Leu-Met-Tyr-Asp-Cys-Cys-Thr-Gly-Ser-Cys-Arg-Ser-Gly-Lys-Cys-NH2である。
【0003】
ジコノチドは、帯状疱疹後神経痛、幻肢痛、エイズ関連神経障害性疼痛、難治性癌性疼痛,術後疼痛、他の治療に対する不耐性または拒絶、例えば、全身性鎮痛薬、補助治療、オピオイド(Opioids)系薬物の髄腔内注射では効かないものを緩和する疼痛等を臨床的に治療することができる。サリチル酸塩、NSAIDsおよび局所麻酔剤は、主に末梢神経/侵害受容器を介して、オピオイド系薬物と全身麻醉薬とは、主に脳レベルで作用して疼痛と意識を排除することとは異なり、ジコノチドの治療作用メカニズムは、N型カルシウムチャネル受容体に結合する能力によるものです。N型カルシウムイオンチャネル受容体は、脊髄の背面にあるレックスド(Rexed’s)I層とII層における主な侵害受容性A-δおよびC-遅繊維性疼痛繊維(侵害受容器)に位して、モルヒネの髄腔内注射等を含む他の治療法では効かない疼痛を緩和することができ、当該薬物を長期的に使用しても耐性や中毒を引き起こさなく、応用の適応症は、外傷、腫瘍および神経痛等に関連する慢性疼痛を治療し、特に、オピオイド系薬物に敏感でない難治性疼痛またはオピオイド系薬物に耐性のない患者の治療において独自の利点がある。しかしながら、ジコノチドは、血液脳関門を通過できず、現在、髄腔内カニューレの投与経路のみで注入され、カニューレと輸液ポンプとは、皮膚の下に埋め込まれているため、手術が必要であり、臨床での使用は不便である。現在、既存の鎮痛薬物耐性、慢性疼痛の長期かつ永続的な治療のみに使用される。このような投与形態は、当該薬物の固有の利点の臨床応用を大幅に制限した。
【0004】
血液脳関門(BBB)は、脳組織と血液との間に存在する複雑な細胞システムであり、血液脳の両側で物質の輸送を制御することができ、それによって中枢神経組織系の内部環境の安定性を確保するための血液中の有用な物質は、微小血管内皮細胞膜にある様々な受容体を介して相互作用し、生体の必要に応じて脳に輸送されることにより役割を果たし、一部の有毒で有害な物質は、脳への損傷を防ぐように当該バリアによって脳組織から保護される。血液脳関門(BBB)のこのような特殊な保護作用により、ほとんどの薬物が脳に侵入しにくくなり、この中枢神経系疾患の治療と投与とに難題がある。
【0005】
細胞透過性ペプチド(cell Penetrating peptides、CPP)は、生体膜を通過して細胞に入ることができる短いペプチド(一般に35個未満のアミノ酸残基)である。それは1988年に発見され、学者は、HIV-1のトランス活性化タンパク質Tatが膜を越えて細胞に形質導入できることを発見し、その後、ショウジョウバエの転写タンパク質も類似な特性を持っていることが発見された。それ以来、他にも多くのCPPが次々と発見され、CPPは、相対分子量、アミノ酸組成、アミノ酸配列に多様性を示し、含むアミノ酸の数および種類が異なり、極性および電荷も異なるが、それらには、いくつかの共通の特徴があり、例えば、より低い濃度の条件下で、膜に対して顕著な破壊および損傷を引き起こさないように細胞膜を通過して細胞に入ること、自体に膜を通過する能力を有し、低分子、核酸、タンパク質ポリペプチドおよびナノ粒子等の様々な物質の細胞への侵入を媒介することもできること、効率的で毒性が低いこと。近年、研究によると、細胞透過性ペプチドを使用して薬物分子に連結することにより、血液脳関門を通過する効果が得ることができ、これは中枢神経の投与に新しい方向性をもたらした。
【0006】
現在、先行技術には、細胞透過性ペプチドを使用してコノトキシンが血液脳関門を通過することを補助する技術的方法が存在し、例えば、ジコノチドがウイルス粒子にパッケージされ、ウイルス粒子の表面にTATポリペプチドを連結させ、当該ウイルス粒子は、血液脳関門を通過するようにジコノチドを輸送することができるが、このような方法により調製される工法が複雑であり、ウイルスのパッケージングプロセスは、良好な品質管理が実行できず、業界で大規模に応用することは困難であった。別の例として、TATペプチドとコノトキシンのN末端とを2つのGGを介して連結ユニットとして使用し、融合ポリペプチドを調製し、当該融合ポリペプチドは、血液脳関門を通過することができ、静脈内注射による投与に適しているが、N末端に連結された融合ポリペプチドは、静脈内注射により投与され、体内での鎮痛効果および存在時間は、臨床応用の要件を満たすことができず、大規模に促進することができない。従って、血液脳関門を通過することができ、髄腔内のカニューレ投与の欠点を克服し、臨床上に大規模に使用できる改良型ジコノチドを得ることは、緊急に解決する必要がある問題であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的の1つは、血液脳関門を通過することができるポリペプチドを提供することである。本発明者は、長期の研究をする結果、ジコノチドのC末端を細胞膜透過性ペプチドのN末端に連結することにより、血液脳関門を通過することができる融合ペプチドを得、従来技術の欠陥を克服することができ、静脈内、腹腔内または鼻腔内の投与に適しており、体内での鎮痛効果が良好で、有効性時間が長く、臨床上に大規模に使用することができることを発見した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
具体的には、上記目的を実現する技術的解決策は以下のとおりである。
ポリペプチドは、ジコノチドおよび細胞膜透過性ペプチドにより構成される。好ましくは、前記ポリペプチドは、ジコノチドがC末端を介して細胞膜透過性ペプチドに連結されることにより構成されるか、または前記ジコノチドのC末端がリンカーを介して細胞膜透過性ペプチドのN末端に連結され、好ましくは、前記リンカーは、1つのグリシン(Glycine)である。
【0009】
さらに、ジコノチドのアミノ酸は、CKGKGAKCSRLMYDCCTGSCRSGKC(配列番号1に示される)であって、または融合ポリペプチド中のジコノチドは、CKGKGAKCSRLMYDCCTGSCRSGKC(配列番号1に示される)が10個未満、8個未満、6個未満、4個未満、2個または1個のアミノ酸の欠失、変異または挿入を有する変異体でもあり得る。
【0010】
さらに、前記細胞膜透過性ペプチドは、ペネトラチン(Penetratin)、TATペプチド、Pep-1ペプチド、S413-PV、マガイニン2(Magainin 2)またはブフォリン2(Buforin 2)であり得る。
【0011】
ここで、TATペプチドは、HIV-1のトランス活性化タンパク質Tatから由来し、膜を越えて細胞に形質導入することができる。TATペプチドのアミノ酸は、YGRKKRRQRRR(配列番号2に示される)であるか、または融合ポリペプチド中のTATペプチドは、YGRKKRRQRRR(配列番号2に示される)が10個未満、8個未満、6個未満、4個未満、2個または1個のアミノ酸の欠失、変異または挿入を有する変異体またはそれらの模倣ペプチド(Mimetic peptide)でもあり得る。
【0012】
好ましくは、前述ポリペプチドまたは融合ポリペプチドまたは改良型ジコノチドのアミノ酸配列は、CKGKGAKCSRLMYDCCTGSCRSGKCGYGRKKRRQRRR(配列番号5に示される)であるか、または10個未満、8個未満、6個未満、4個未満、2個または1個のアミノ酸の欠失、変異または挿入を有する変異体またはそれらの模倣ペプチド(Mimetic peptide)である。
【0013】
前記模倣ペプチド(Mimetic peptide)とは、天然アミノ酸から構成されるペプチドと基本的に同じ構造および/または機能的特徴を有する合成化合物を指す。模倣ペプチド(Mimetic peptide)は、アミノ酸の合成非天然類似物、または部分的天然ペプチドアミノ酸および部分的非天然アミノ酸類似物のキメラ分子を完全に含むことができる。模倣ペプチド(Mimetic peptide)は、そのような置換が模倣物の構造および/または阻害活性または結合活性を実質的に変化させない限り、任意の数の天然アミノ酸の保存的置換部位に組み込むことができる。ポリペプチド模倣成分は、非天然構造組成の任意の組み合わせを含むことができ、前記非天然構造組成は、一般に、a)非天然アミド結合(「ペプチド結合」)によって連結される残基結合基、b)天然に存在するアミノ酸残基を置き換える非天然残基、またはc)二次構造模倣を誘導し、即ち、例えば、βターン、γターン、βフォールディングおよびα螺旋構造等の二次構造を誘導または安定化する残基の3つの構造グループから由来する。
【0014】
本発明の第2の目的は、医薬組成物または製剤、好ましくは医薬製剤を提供することであり、さらに、前記医薬組成物または製剤/医薬製剤は、本発明のポリペプチドおよび/または許容される担体を含む。
【0015】
前記医薬組成物または製剤/医薬製剤は、以下に示される任意の投与量を含む単位投与量形態(即ち、単回投与のための投与量)で医薬組成物を提供することができる。それは、通常の混合、溶解、製粒、トローチの調製、粉砕、乳化、カプセル化、包埋または凍結乾燥の方法によって調製することができる。活性剤を薬学的に許容される製剤に容易に加工する1つまたは複数の生理学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤または添加剤を使用して、通常の方法で前記医薬組成物または製剤/医薬製剤を調製することができる。適切な製剤は、選択された投与経路によって決定される。
【0016】
投与形態は、非経口、静脈内、経口、皮下、動脈内、頭蓋内、髄腔内、腹膜内、局所、鼻腔内または筋肉内投与であり得る。静脈内投与または腹腔内注射が好ましい。非経口投与に使用される前記医薬組成物または製剤/医薬製剤は、好ましくは、無菌で基本的に等張である。注射の場合、活性剤を、水溶液、好ましくは、ハンクス液、リンゲル液または生理食塩水または酢酸緩衝液等の生理学的に適合性のある緩衝液中に調整することができる(注射部位の不快感を軽減するため)。当該溶液は、例えば、懸濁剤、安定剤および/または分散剤等の配合剤を含み得る。
【0017】
本発明の第3の目的は、ポリペプチドの用途を提供することである。前記用途は、薬物の調製に使用され、好ましくは、鎮痛薬の調製に使用され、好ましくは、前記鎮痛薬は、カルシウムチャネルに作用する。
【0018】
さらに、前記薬物は、疼痛、疼痛に関連する疾患の治療に使用することができ、例えば、慢性的な疼痛を引き起こす可能性のある疾患には、糖尿病、関節炎(例えば、骨関節炎、関節リウマチおよび若年性慢性関節炎)、癌または化学療法の毒性作用、線維筋痛症、帯状疱疹、過敏性腸症候群、血管の問題または鎌状赤血球症等がある。
【0019】
偶発の一般的な疼痛に関連する疾患は、リウマチ性多発筋痛、仮想疾患、うつ病、糖尿病、悪性貧血、鎌状赤血球症および梅毒を含む。神経障害性疼痛に関連する疾患は、神経痛(例えば、三叉神経痛、非定型顔面痛および帯状疱疹または疱疹によって引き起こされる帯状疱疹神経痛)、末梢神経障害、シャルコット‐マリー‐トゥース(Charcot-Marie-Tooth)病、フリードライヒ運動失調、糖尿病(例えば、糖尿病性ニューロパチー)、食事障害(特に、ビタミンB-12)、過度のアルコール使用(アルコール神経障害)、尿毒症(腎不全由来)、癌、エイズ、肝炎、コロラドダニ熱、ジフテリア、ゲリラ‐バー症候群、エイズに進行しないHIV感染症、らい病、ライム病、多発性結節性動脈炎、関節リウマチ、サルコイドーシス、シェーグレン症候群、梅毒、全身性エリテマトーデスおよび毒性化合物への暴露を含む。
【0020】
炎症性疼痛に関連する疾患は、(A)例えば、関節リウマチ、若年性慢性関節炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、痛風性関節炎、強皮症、骨関節炎、乾癬性関節炎、アンキロス性脊椎炎、ライター症候群(反応性関節炎)、成人ステイル病、ウイルス感染による関節炎、例えば、淋病性関節炎および非淋病性細菌性関節炎(敗血症性関節炎)等の細菌感染による関節炎、グレードIIIライム病、結核性関節炎、および酵母菌感染症等の真菌感染による関節炎等の関節炎疾患、(B)例えば、ゲリラ‐バー症候群、橋本甲状腺炎、悪性貧血、アジソン病、I型糖尿病、全身性エリテマトーデス、皮膚筋炎、シェーグレン症候群、エリテマトーデス、多発性硬化症、重症筋無力症、ライター症候群およびバセドウ病等の自己免疫疾患、(C)例えば、脊椎関節炎、皮膚筋炎および線維筋痛症等の結合組織疾患、(D)損傷によって引き起こされる炎症、(E)例えば、結核病または間質性角膜炎等の感染、および(G)例えば、滑液包炎または腱炎等の関節炎症を含む。頭痛の種類は、筋肉性/筋原性頭痛、血管性頭痛、牽引性または炎症性頭痛、群発性頭痛、ホルモン性頭痛、リバウンド頭痛または慢性副鼻腔炎性頭痛を含む。
【0021】
身体の疼痛は、過度の筋肉収縮、反復運動性疾患、多発性筋炎等の筋肉疾患、皮膚筋炎、狼瘡、線維筋痛症、リウマチ性多発筋痛症、および横紋筋融解症、筋肉痛、筋肉膿瘍等の感染症、トリキノーシス、インフルエンザ、ライム病、マラリア、ロッキー山紅斑熱、鳥インフルエンザ、風邪、社区獲得性肺炎、髄膜炎、サルポックス、重症急性呼吸器症候群、中毒性ショック症候群、トリキノーシス、腸チフスおよび上気道感染症に関連することができる。内臓痛は、過敏性腸症候群、慢性機能性腹痛(CFAP)、機能性便秘、機能性消化不良、非心臓性胸痛(NCCP)および慢性腹痛、胃炎等の慢性胃腸炎、クローン病等の炎症性疾、潰瘍性大腸炎、顯微鏡下結腸炎、憩室炎および胃腸炎、間質性膀胱炎、腸虚血、胆嚢炎、虫垂炎、胃食道逆流症、潰瘍、腎臓結石、尿路感染症、膵炎およびヘルニア等の疾患に関連することができる。
【0022】
本発明の第4の目的は、本発明のポリペプチドの調製方法を提供することであり、好ましくは、化学合成により本発明のポリペプチドを調製することができる。さらに好ましくは、固相合成法または組み換え発現法を使用して調製し、さらに、F-moc完全自動固相合成法を使用して、本発明のポリペプチドを調製する。
【発明の効果】
【0023】
従来技術と比較して、本発明の有益な効果は以下のとおりである。ジコノチドのC末端を細胞膜透過性ペプチドに連結することによって改良型ジコノチドを得、ジコノチドが血液脳関門を通過できず、筋肉内に注射できず、主に脳室と脊カラム管とを介して投与されることにより引き起こされる外科的リスクが高いこと、感染リスクが高いこと等の欠点を克服する。本発明のポリペプチドは、血液脳関門を通過することができ、静脈内投与形態、腹腔内投与形態または鼻腔内投与形態に適しており、操作が便利で、臨床的なリスクが小さく、静脈内投与、腹腔内投与または鼻腔内投与により、体内での薬理効果時間が長く、鎮痛効果が優れ、本発明のポリペプチドの副作用が少ないため、大規模な臨床応用に適している。また、本発明のポリペプチドの調製が簡単であり、調製工法および調製プロセスにおいて品質の制御が可能であり、大規模な工業生産に適している。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】MVIIAおよびMVIIA-a、b、c、dワンステップ酸化フォールディングHPLC分析チャートである。
【
図2】MVIIAおよびMVIIA-a、b、c、dの円二色性スペクトル図であり、ポリペプチドの最終濃度は、35μmol/Lであり、それぞれリン酸塩緩衝液(10mM、pH=7.2)に溶解される。
【
図3】CaV2.2チャネル電流に対するMVIIAおよびMVIIA-a、b、c、dの阻害作用、MVIIAの投与量効果曲線は、
図3Aに示され、MVIIA変異体の用量-反応曲線は、
図3B-3Eに示される。半数抑制濃度およびスロープ値(Slope Value)のデータは、グラフに示され、データは、平均値±標準誤差で表され、各グループに5匹のマウスがいった。Fに示されたように、10μML-MVIIA(青)および2μM MVIIA(赤)の場合、-80mvから10mvまでの電圧ステップ幅で励起された全細胞カルシウムチャネル電流トレースの重ね合わせであり、
図Gは、MVIIAおよびその変異体の半数抑制濃度の要約表である。
【
図4】MVIIAおよびMVIIA-cのホットプレート実験の比較結果において、MVIIAの側脳室投与(
図4A)、MVIIAの尾静脈内投与(
図4B)およびMVIIA-c(
図4C)投与後のインビボ鎮痛効果である。鎮痛効果は、反応潜時で表される。データは、平均値±標準誤差で表され、各群に6~8匹のマウスがいった。*p<0.05、**p<0.01および***p<0.001は、生理食塩水群との比較を示す(データ分析は、反復多変量分散分析およびダンカンの複数範囲検定法を使用した)。
【
図5】MVIIA-a、b、dのホットプレート実験の結果において、
図5A~
図5Cは、尾静脈にMVIIA-a、b、dポリペプチドを投与された後のインビボ鎮痛効果である。鎮痛効果は、可能な最大効果のパーセンテージ(%MPE)として表される。データは、平均値±標準誤差で表され、各群に8~10匹のマウスがいった。*p<0.05、**p<0.01および***p<0.001は、生理食塩水群との比較を示す。
【
図6】酢酸ねじり実験におけるMVIIAおよびMVIIA-a、b、c、dの鎮痛効果において、1%酢酸の腹腔内注射後5~20分以内に、マウスの転倒回数を記録し、
図Aに示されたように、側脳室内投与の30分後、1%酢酸の腹腔内注射の効果を比較し、
図Bに示されたように、尾静脈内投与の30分後、1%酢酸の腹腔内注射の効果を比較し、#、生理食塩水群(saline)と比較し、*、MVIIA群と比較し、&、MVIIA-C群と比較し、*、#、&、p<0.05、***、###、&&&、p<0.001。データは、平均値±標準誤差で表され、各群に9~11匹のマウスがいった。
【
図7】マウスの振戦時間に対するMVIIAおよびMVIIA-a、b、c、dの影響において、6μLのポリペプチド(0.9nmol/kg)および生理食塩水を側脳室に投与した。投与の30分後および120分後、5分以内のマウスの累積振戦時間を記録した。データは、平均値±標準誤差(n=12)で表される。
【
図13】経鼻投与後のMVIIAおよび異なる投与量のMVIIA-cの鎮痛能力を示す。
【
図14】鼻腔内に投与された時のホットプレート試験におけるMVIIA-a、b、dの鎮痛能力を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
従来技術におけるジコノチドの欠点を克服するために、本発明者らは、長期の研究をした結果、ジコノチドのC末端を細胞膜透過性ペプチドのN末端に連結させることによって、得られた改良型ジコノチドの融合ペプチドは、静脈内投与または腹腔内投与に適していることを発見した。異なる種類の改良型ジコノチドの鎮痛効果をさらに研究するために、本発明は、リンカーを使用せずに、ジコノチドのC末端と細胞膜透過性ペプチドのN末端とを介して直接連結された融合ポリペプチド、およびリンカーとして1つまたは複数のグリシンを使用して、構築された融合ポリペプチドを含む、異なる種類と構造との様々な融合ポリペプチドを設計して合成した。さらに、上記の異なる種類の融合ポリペプチドに対して、構造特徴付け、細胞実験、インビボ実験および副作用検証実験を行い、異なる種類の改良型ジコノチドの効果を説明した。
【0026】
本発明の技術的解決策をよりよく理解するために、以下に実施例と併せて詳細に説明する。
【0027】
実施例1:異なる種類のジコノチド融合ペプチドの調製
4つの異なる種類の融合ペプチドを調製し、それぞれ保護されたポリペプチドMVIIA-a、MVIIA-b、MVIIA-cおよびMVIIA-dと名付けた。同時に、ジコノチドを調製し、対照としてMVIIAと名付けた。本実験は、F-moc完全自動固相合成法を用い、具体的なステップは、次のとおりである。
【0028】
ポリペプチドの合成:433A自動シンセサイザー(ABI、フォスターシティー(Foster City)、カリフォルニア州(CA))のモデルを使用して、保護されたポリペプチドとその誘導体を樹脂に組み立てた。室温下で、ペプチド樹脂を懸濁液中で2.5時間インキュベートして、脱保護基した。懸濁液システムは、TFA10ml、フェノール0.75g、1,2-エタンジチオール0.25ml、ベンジルサルファイド0.5mlおよび水0.5mlで構成された。(フルオレンメタノル(Fmoc)は、通常のアルコキシカルボニル基系アミノ基保護基である)。樹脂は、ろ過によって、ポリペプチド脱保護基混合物から分離された。粗ポリペプチドを予冷したエーテル溶液150ml中で沈殿させ、溶離液として10%氷酢酸を使用して、セファデックスGー25カラムでクロマトグラフィー精製した。続いて、ポリペプチドを含有する分画をプールして凍結乾燥し、高速液体クロマトグラフィーを使用して、粗ポリペプチドの純度を約80%と測定した。
【0029】
ポリペプチドフォールディング:MVIIAは、六つのシステイン残基を含み、その3つのジスルフィド結合構造を維持し、酸化条件下でフォールディングすると、様々な異性体が生成される可能性がある。酸化レドックスシステム、緩衝液、塩、濃度および温度のスクリーニングをした後、MVIIAの2つの効率的なフォールディング条件を選択し、即ち、(a)1mMのGSH、0.1mMのGSSG、1mMのEDTAおよび0.2mg/mLのMVIIAからなる0.5M NH4Ac緩衝液(pH7.9)、(b)1mMのシステイン(cysteine)、1mMのEDTAおよび0.2 mg/mLのMVIIAからなる0.5M NH4Ac緩衝液。4℃である場合、線状ポリペプチドMVIIAは、a条件下で48~72時間およびb条件下で24~48時間フォールディングされた。
【0030】
ポリペプチドの精製および特徴付け:MVIIAが酸化された後、まず酢酸を使用して、反応混合物に対して酸化(pH<4.5)処理を行い、次にろ過した。ろ液を、分取高速液体クロマトグラフィーポンプ(Waters 2000 series、ミルフォード(Milford)、マサチューセッツ州(MA))を使用するZorbax 21.2×250mMのC18液体クロマトグラフィーカラムに直接ロードした。C18カラムを最初に緩衝液A(0.1%TFAの水溶液)でプレクリーニングし、次に10~40%緩衝液B(0.1%TFAのアセテート溶液)を使用して、8ml/minの速度で40分間直線グラジエント溶出した。得られた留分は、MVIIAを90%含む濃縮液であり、次に、さらに精製するために、9.4×250mMのZorbaxC18液体クロマトグラフィーカラムを備えたセミ分取逆相高速液体クロマトグラフィーを使用した。最後に、20%の酢酸溶液をセファデックスG-25クロマトグラフィーカラムの溶離液として使用して、最終生成物をTFA塩溶液から酢酸溶液に変換した。ポリペプチドの純度は、分析型の逆相高速液体クロマトグラフィーによって評価され、評価時、Zorbax C18液体クロマトグラフィーカラム(4.6×250mM)を使用して、1ml/分の流速で、8~40%の緩衝液B(0.1% TFAのアセテート溶液)で25分間直線グラジエント溶出を行った。最終的に、得られた最終生成物であるポリペプチドの純度は、98%であった。
【0031】
実施例2:異なる種類のジコノチド融合ペプチドの化学的性質および構造特徴付け
1.MVIIAおよびその変異体の化学的性質
4℃である場合、線状ポリペプチドを緩衝液で24~48時間処理した後、高速液体クロマトグラフィーを使用して分析し、線状ポリペプチドのフォールディングにより、1つの主な大きなピークおよびいくつかの小さなピークが発生することが分かった。緩衝液システムは、1mMのグルタチオン、0.1mMの酸化型グルタチオン、1mMのEDTAおよび0.2mg/mLの線状ポリペプチドを含み、溶液のpHは、7.9であった。主な生成物は、精製を経過し、逆相高速液体クロマトグラフィーを分析して評価し、同時に、ポリペプチドの純度は、98%を超えると決定された。Ultraflex III TOF/TOF質量分析計(Bruker)を使用して決定された。調製されたポリペプチド配列は、表1に示されたとおりであり、そのワンステップ酸化フォールディングHPLC分析チャートは、
図1に示されたとおりである。
表1:調製されたポリペプチド配列
【0032】
2.円二色性スペクトル
ポリペプチドをPBS(10mM、pH=7.2)溶液に溶解し、最終濃度は、35μMであった。室温で、190nmから260nmまでの波長範囲内の円二色性スペクトルを検出し、Chirascan Plus spectropolarimeter(Applied Photophysics Ltd.、Leatherhead、Surrey、UK)器械を使用した。選定された検出指数は、次のとおりであった。ステップ分解能(step resolution)は、1.0nmであり、速度(speed)は、20nm/minであり、セルパス長(cell path length)は、1.0mMであった。
【0033】
図2に示されたように、MVIIAは、195~205nmで明らかなβフォールディング構造を示した。TAT変異体も類似なランダムコイル構造を有し、200nmの付近に、明らかな弱化バンドが出現されたことがわかった。これらの結果は、MVIIAとTATとの間の連結配列の長さが拡大する場合、ポリペプチドの二次構造が変化しないことを示す。連結配列が増幅される場合、TAT変異体のモル楕円率が増加し、MVIIAとTATとの間の連結配列の増幅がランダムコイル構造の形成に役立つことを示す。質量分析(Voyager MALDI-TOF分光計を使用する)方法を使用して、生成物ポリペプチドの正確な分子量を鑑定し、表2に示されるように、MVIIAおよびMVIIA-a、b、c、dのマススペクトルは、
図8~
図12に示されたとおりである。ジスルフィド結合の架橋パターンは、システインのカップリングおよびアミノ酸の沈黙を部分的に低減する方法で分配される。合成されたポリペプチドは、MVIIA標準製品の高速液体クロマトグラフィー図と円二色性スペクトル図との結果と一致する。
表2.MVIIAおよびその変異体の分子量
【0034】
実施例3:異なる種類のジコノチド融合ペプチドの電気生理学的実験
異なる種類の改良型ジコノチドの電気生理学的効果およびカルシウムイオン(CaV2.2)チャネルに対する阻害作用をさらに研究するために、次のような実験を実施した。
【0035】
HEK293T細胞(SV40ラージT抗原を発現できる)を、10%のウシ胎児血清、1%のペニシリン、ストレプトマイシンを含むDMEM高グルコース培地(Gibco)で培養した。インキュベーターの環境は、37 ℃、5%CO2であった。ダイアン リプスコム博士(Dr. Diane Lipscombe)は、ラットCaV2.2チャネルのα1Bスプライシング変異体e37a、補助サブユニットα2δ1およびβ3プラスミド(Addgene plasmid #26569、#26575、#26574)を提供した。次に、3つのプラスミド(3μg)、強化型緑色蛍光タンパク質遺伝子0.4μgおよびリポソームを、HEK293T細胞に一過性トランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、細胞をスライドガラスに接種し、インキュベーター(37℃、5%CO2)で少なくとも6時間培養した後、電気生理学的記録を行った。
【0036】
この研究は、以前に発表された研究文献(F. Wang et al.、2016)における細胞電圧クランプ記録の方法に従って記録された。簡単に言えば、記録電極の抵抗は、約3MΩであり、内部溶液によって満たされた。内部溶液は、135mMのCsCl、10mMのNaCl、10mMのHEPESおよび5mMのEGTAを含み、溶液のpHは、CsOHで7.2に調整された。細胞外記録溶液は、135mMのN‐メチル‐D‐グルカミン(N-Methyl-D-glucamine)、10mMのBaCl2.2H2O、2mMのMgCl2.6H2Oおよび10mMのHEPESを含み、溶液の最終pHは、7.4であった。室温で(~22 ℃)、MultiClamp 700B増幅器(分子デバイス(Molecular Devices)、サニーベール(Sunnyvale)、カリフォルニア州(CA))、Clampex 10.3/Digidata1440Aデータ収集システムおよびデジタル‐アナログコンバーターを使用して、収集された電流を記録した。膜電流は、2 kHzでろ過された後、10kHzでサンプリングされた。すべてのデータは、データ分析システムクランプフィット(clampfit)10.3(分子デバイス(Molecular Devices))を使用して分析され、平均値±標準誤差で表された。N型Caイオン電流を遮断する毒素の用量-反応曲線をグラフパッドプリズム(GraphPad Prism)(グラフパッドソフトウェア(GraphPad Software)、サンディエゴ(San Diego)、カリフォルニア州(CA))ソフトウェアで描画し、電流振幅阻害曲線を薬物濃度の関数として使用し、ヒルの式を使用して適合した。
【0037】
MVIIAおよびその変異体MVIIA-a、b、c、dの主なアミノ酸配列およびその電気生理学的活性は、表3に示されたとおりである。
表3.MVIIAおよびその変異体の主なアミノ酸配列およびその電気生理学的活性
【0038】
カルシウムイオン(CaV2.2)チャネルに対するMVIIAおよびその変異体の阻害作用
周知のように、MVIIAは、選択的なCaV2.2チャネルブロッカーである。2μMの濃度で、MVIIAは、CaV2.2経路を90%以上遮断することができる。(F. Wang、2016およびその他の文献(other articles))この研究では、293 T細胞におけるCaV2.2チャネル(α
1B、α
2δ
1および(and)bβ
3)のCa
2+ピーク電流(ICa)を記録した。すべての電流は、-80mvから10mvまでの範囲の電圧ステップ幅で100ms励起された。1μMのMVIIA、MVIIA-a、MVIIA-b、MVIIA-cおよびMVIIA-dで処理すると、Ca
2+ピーク電流を低下することができ、その低下値は、それぞれ、98.24±0.708%、89.45±0.752%、91.70±1.477%、98.81±0.427%および84.26±3.127%でった。MVIIA-cとMVIIAとは、CaV2.2チャネルを遮断する類似な能力を有することが分かった。L-MVIIAがCaV2.2チャネルを遮断する能力は、明らかに低下し、10μMの濃度下で、Ca
2+ピーク電流を23.28±3.347%しか低下させることができなかった。MVIIAの濃度とCaV2.2チャネルを阻害する応答との関係の半数抑制濃度は、0.0436μMであり、TAT変異体と比較して、ほぼ5~10倍大きい。
図3に示されたように、TAT変異体(MVIIA-a、MVIIA-b、MVIIA-cおよびMVIIA-d)の半数抑制濃度は、それぞれ0.413、0.379、0.237および0.345μMである。これらの結果は、MVIIA-a、MVIIA-b、MVIIA-cおよびMVIIA-dがCaV2.2チャネルに対して一定の阻害効果を有し、MVIIAとTAT変異体との間の連結配列の長さがCaV2.2チャネルへの結合に影響を与える可能性があることを示す。
【0039】
実施例4:異なる種類のジコノチド融合ペプチドのインビボ鎮痛効果
実験
1.ホットプレート実験
1.1.実験方法
この実験において、合計九つの群のマウス(各群のマウスは、6~8匹)に、それぞれ、MVIIA(0.11、0.33または(or)1.00nmol/kg)を側脳室に投与し、MVIIAおよびMVIIA-a、MVIIA-b、MVIIA-cおよびMVIIA-d(0.33、1.00または3.00μmol/kg)を尾静脈内に投与した。2つの経路で投与する場合、生理食塩水群を空白対照群として使用した。動物を55±0.5℃の一定温度の電気アイロン上に置き、遅延時間は、マウスを電気アイロンの表面においてから、後肢の足を初めて舐めるまで、または初めてジャンプするまでの時間を、疼痛指数の閾値(エディおよびライムバッハ(Eddy and Leimbach)、1953)として記録された。60sの時間を境ににし、60秒を超える場合、マウスの組織への損傷を避けるためにマウスを取り外した。投与前に、遅延時間は、ベースライン値として事前に測定され、続いて、MVIIA、MVIIA-cおよび生理食塩水(Saline)(側脳室または尾静脈内の投与)の投与後、0.5、1、2、3、4、6、8、10および12時間での遅延時間を記録した。遅延ベースライン時間と比較して、遅延時間が5秒未満または20秒を超えるマウスは、すべて非感受性および超感受性マウスとみなされ、その後、排除された。鎮痛効果は、潜伏期間で表された。
【0040】
1.2.鎮痛能力の比較
図4に示されるように、MVIIA(0.11、0.33および1.00nmol/kg)の側脳室投与の1時間後、MVIIAの有効性は最高値に達し、4時間過ぎると、MVIIAの有効性は、ほぼ消失した(
図4A)。しかしながら、尾静脈内注射の場合、MVIIAの重複投与は、有効性を生み出さなかった(
図4B)。MVIIA-cは、CaV2.2チャネル電流に対して最も強い阻害効果を有するMVIIAのTAT変異体であった。
図4Cに示されるように、MVIIA-cは、投与後3時間に最も強い有効性を示し、その最も強い有効性は、約4時間持続し、有効性の持続時間は、12時間であった。
【0041】
図5に示されるように、異なる投与量のMVIIA-a、b、d(0.11umol/kg、0.33umol/kgおよび1.00μmol/kg)を尾静脈内に注射した1時間後、すべて鎮痛効果を示し、最も強い有効性は、投与後2~3時間以内に現れ、有効性の持続時間は、約4時間であり、時間とともに徐々に低下し、投与後12時間も、投与群は生理食塩水群と比較して、依然として有意な差があり、有効性の持続時間は、12時間であった。
【0042】
2.酢酸ねじり実験(Koster et al.、1959)
2.1.実験方法
3つの投与量のMVIIA-a、b、c、dポリペプチド群(0.6、1.8および5.4nmol/kg、図面において、低、中および高投与量)、生理食塩水対照群(saline)、3つの投与量の陽性参照薬物群MVIIA(0.11、0.33および1.00nmol/kg、図面において、低、中および高投与量)で動物を処理した。ねじり実験において、MVIIA(側脳室)またはMVIIA-a、b、c、d(側脳室)を、1%酢酸の腹腔内注射の30分前に投与し、次にMVIIAおよびMVIIA-MVIIA-a、b、c、dのインビボ鎮痛効果を測定した。MVIIAおよびMVIIA-a、b、c、dが血液脳関門を通過する能力を検出するために、1%酢酸の腹腔内注射の3時間前に、それぞれMVIIAおよびMVIIA-a、b、c、dを尾静脈内に投与した。生理食塩水群を空白対照群として使用した(側脳室または尾静脈内投与)。酢酸を注射した後5~20分以内のマウスの転倒回数を記録した(Galeotti et al.,2008)。ねじり運動の回数は、後肢のストレッチと体の伸長を伴う腹筋の収縮を特徴として記録された。
【0043】
2.2.鎮痛能力の比較
酢酸ねじり実験において、3つの投与量のMVIIA-a、b、c、dポリペプチド群(0.6、1.8および5.4nmol/kg、
図6において、低、中および高投与量)、生理食塩水対照群(saline)、3つの投与量の陽性参照薬物群MVIIA(0.11、0.33および1.00nmol/kg、
図6において、低、中および高投与量)で動物を処理し、静脈内投与と側脳室投与との条件下で、3つの異なる投与量での各群の転倒回数を比較した。MVIIA-a、b、c、dポリペプチド群および陽性参照薬物群MVIIAは、すべて投与量依存的に酢酸によって誘発される転倒回数を減少させることが分かった。側脳室投与の条件下で、MVIIA、MVIIA-a、b、c、dは、それぞれ、マウスの転倒回数(生理食塩水群と比較して)を、MVIIA、8.97%、53.37%、76.88%、MVIIA-A、2.94%、13.36%、48.35%、MVIIA-B、10.82%、42.79%、77.60%、MVIIA-C、14.75%、39.53%、81.77%、MVIIA-D、12.08%、23.95%、56.54%に減少させた。
図6に示されるように、静脈内投与の条件下で、陽性参照薬物MVIIAは、マウスの転倒回数を減少させる作用がなく、MVIIA-a、b、c、dは、それぞれ、マウスの転倒回数(生理食塩水群と比較して)を、MVIIA-a、10.47%、27.82%、30.03%、MVIIA-b、17.08%、45.94%、51.79%、MVIIA-c、19.81%、49.30%、62.95%、MVIIA-d、6.33%、35.86%、47.57%に減少させた。
【0044】
結論:上記の実験結果から、MVIIAと比較して、MVIIA-a、b、c、dポリペプチドは、静脈内に注射する場合、鎮痛効果があり、投与量に依存的であり、特に、中および高投与量の場合、MVIIA-a、b、c、dポリペプチドを静脈内に注射することにより、良好な鎮痛効果を達成し、臨床使用のニーズを満たすことができることが分かった。さらに、MVIIAと比較して、MVIIA-a、b、c、dを静脈内に投与することにより、薬効持続時間が12時間と長く、体内で良好な徐放効果があった。
【0045】
前記鎮痛実験は、一元配置分散分析(one-way ANOVA)、反復測定による二元配置分散分析(two-way ANOVA with repeated measures)を使用し、群間の分析は、ダンカンまたはニューマンコール検定法を使用した。すべてのデータは、それぞれ平均値±標準偏差または標準誤差、または95%信頼区間を使用した。p値の差が0.05未満であった場合、データは、統計学的有意を有するとみなされた。
【0046】
実施例5:異なる種類のジコノチド融合ペプチドの副作用実験
体内での異なる種類の改良型ジコノチドの副作用をさらに研究するために、以下の実験を実施した。
【0047】
1.実験方法
振戦時間は、ジコノチドの典型的な副作用と考えられた。振戦時間は、マウスの手足、頭、胴体のリズミカルな振動を一定期間記録した合計時間である。マウスを、MVIIA(0.9nmol/kg)群、MVIIA-a、b、c、d(0.9nmol/kg)群および正常対照群(6μL、側脳室投与、n=12、雄と雌とは、それぞれ半分)に無作為に割り付けた。投与30分後および120分後、デジタルカメラを使用してマウスの動的ビデオを5分で記録し、実験を知らない人が5分以内の各マウスの累積振戦時間をカウントした。
【0048】
毒物学実験は、一元配置分散分析(one-way ANOVA)およびニューマンコール検定法によって分析された。すべてのデータは、それぞれ平均値±標準偏差または標準誤差、または95%信頼区間を使用した。p値の差が0.05未満であった場合、データは、統計学的有意を有するとみなされた。
【0049】
2.1.副作用の比較
図7に示されるように、投与後30分に、MVIIAにより明らかな振戦症状とより長い振戦時間を引き起こし、投与後120分に、各群のポリペプチドをMVIIAと比較すると、引き起こされた振戦症状とより長い振戦時間には有意な差はなかった。上記結果から、MVIIAとMVIIA-a、b、c、dポリペプチドの副作用に有意な差はなく、さらに、投与初期においても、MVIIA-a、b、c、dの副作用は、MVIIAより低く、本出願のMVIIA-a、b、c、dポリペプチドは、毒性および副作用が少ないことが分かった。
【0050】
実施例6:MVII-Aの脳室内投与とMVIIA-a、b、c、dの鼻腔内投与での鎮痛実験の比較
1.1.ホットプレート実験の方法
ホットプレート実験の方法は、上記のとおりである。この実験において、合計九つの群のマウスがいて、各群に10匹のマウスがいて、MVIIA(1.00nmol/kg、5ul/10 g)は陽性対照群(実験中で、MVIIAの鼻腔内投与は無効であることが分かった)として脳室内に投与され、鼻腔内にそれぞれ生理食塩水(saline、2ul/10g)およびMVIIA-C(3.3、6.6または9.9nmol/kg、2ul/10g)を投与した。生理食塩水群は、空白対照群として使用された。MVIIAの脳室内投与、MVIIA-cおよび生理食塩水(Saline)の鼻腔内投与後0.5、1、2、3、4、6、8および10時間での遅延時間を記録した。遅延ベースライン時間と比較して、遅延時間が5秒未満または20秒を超えるマウスは、すべて非感受性および超感受性マウスと見なされ、その後、排除された。
【0051】
鎮痛効果は、可能な最大効果のパーセンテージ(%MPE)として表され、最終的に、次の式を使用して計算した。%MPE=(T1-T0)×100/(T2-T0)
ここで、T0とT1とは、それぞれ投与前後の遅延時間を表し、T2は、テストごとの限界時間である。
【0052】
1.2.実験結果
鼻腔内投与後のMVIIAと異なる投与量のMVIIA-cの鎮痛能力は
図13に示されるとおりである。
図13は、ホットプレート実験におけるMVIIAの脳室内投与およびMVIIA-cの鼻腔内投与での鎮痛効果を示す。MVIIA(1.00nmol/kg)は、脳室内投与後、薬効が、4時間持続した。MVIIA-C(3.3、6.6、9.9nmol/kg)は、鼻腔投与後、すぐに効果を発揮し、高投与量のMVIIA-Cの薬効は、長時間持続し、8時間後でも生理食塩水群と比較して、依然として明らかな差があり、投与後10時間には、薬効が消失した。*p<0.05、**p<0.01および***p<0.001は、生理食塩水群との比較を示す。
【0053】
1.3.MVIIA-a、b、dの鼻腔内投与での鎮痛実験
図14に示されるように、鼻腔内に投与された時、ホットプレート実験においてMVIIA-a、b、dが鎮痛効果を示した。MVIIA-Cと類似に、MVIIA-a、b、d(9.9nmol/kg)は、鼻腔内投与後、すぐに効果を発揮し、MVII-bは、8時間でも生理食塩水群と比較して、依然として明らかな差があり、投与後10時間には、薬効が消失した。*p<0.05、***p<0.001は、生理食塩水群との比較を示す。
【0054】
上記において、本発明は、一般的な説明および具体的な実施形態で詳細に説明されたが、本発明に基づいて、いくつかの修正または改善を行うことができ、これは、当業者には明らかである。従って、本発明の主旨から逸脱することなく行われたこれらの修正または改善は、すべて本発明の保護範囲に属する。
【配列表】