(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】サージ保護ユニットおよびサージ保護装置
(51)【国際特許分類】
H01T 4/04 20060101AFI20240930BHJP
H01R 31/06 20060101ALI20240930BHJP
H01R 31/08 20060101ALI20240930BHJP
H01R 13/447 20060101ALI20240930BHJP
H01R 13/514 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
H01T4/04 F
H01R31/06 A
H01R31/08 N
H01R13/447
H01R13/514
(21)【出願番号】P 2022105352
(22)【出願日】2022-06-30
【審査請求日】2024-04-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000123354
【氏名又は名称】音羽電機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田邊 真樹夫
(72)【発明者】
【氏名】清水 康彦
【審査官】石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-161137(JP,A)
【文献】実開平03-030382(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 4/00-4/20
H01T 7/00-23/00
H02H 9/00-9/08
H01R 31/06-31/08
H01R 13/447
H01R 13/514
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部信号接続端子及び保護機器接続端子と、レールに取付けるためのレール嵌合溝と、前記レール嵌合溝内に一方側の端部が出没自由となるように移動するスライダーとを備えた支持台と、
サージ保護デバイスを含み雷サージを検知するSPD回路を備え、前記支持台に着脱可能に装着されるSPDプラグとを備えるサージ保護ユニットであって、
前記支持台の少なくとも一方の側面に
コネクタ部が設けられ、少なくとも1つの前記コネクタ部は、他のサージ保護ユニットと連接するための連結プラグと嵌合する
ことが可能であり、
前記コネクタ部の下側の開口から前記連結プラグが挿入され
、
前記スライダーは、前記一方側の端部が前記レール嵌合溝内に突出する第1の位置と、前記一方側の端部が前記レール嵌合溝から退避する第2の位置との間を移動自由であり、
前記スライダーは、突出部材を備え、前記スライダーが前記第1の位置に定位したときに、前記突出部材は前記コネクタ部の下側の前記開口の少なくとも一部を塞ぎ、前記コネクタ部に挿入された前記連結プラグの下側に位置する、サージ保護ユニット。
【請求項2】
前記支持台は、前記スライダーを前記レール嵌合溝に向けて付勢する弾性体をさらに備え、
前記スライダーは、前記スライダーが案内されるスライド溝の係止部材と当接することで前記レール嵌合溝への移動が規制されて前記第2の位置に定位し、
前記スライダーが前記第2の位置に定位したときに、前記コネクタ部の前記開口は開放される、請求項
1に記載のサージ保護ユニット。
【請求項3】
前記コネクタ部は、前記支持台の側面の一端側下部に設けられた凹部であり、前記凹部は側部および下部が開口しており、前記側部の開口の一方側および他方側の端部は上方に向かうにつれて近づく方向に沿って延在する、請求項1に記載のサージ保護ユニット。
【請求項4】
前記コネクタ部の側部の一方側と他方側とには前記連結プラグの挿入のためのガイド溝がそれぞれ形成されており、一方のガイド溝の下端における深さは、他方側のガイド溝の下端における深さと異なっている、請求項
3に記載のサージ保護ユニット。
【請求項5】
請求項1から
4のいずれか1項に記載のサージ保護ユニットと、
前記コネクタ部に嵌合される少なくとも1つの前記連結プラグとを備えるサージ保護装置。
【請求項6】
前記連結プラグは、前記コネクタ部に突出する接続端子と接続されるコネクタと、前記接続端子同士を電気的に接続する基板とを備える、請求項
5に記載のサージ保護装置。
【請求項7】
前記連結プラグが嵌合されていない側面の前記コネクタ部に取付けられる終端プラグ、ブランクプラグの少なくとも一方をさらに備える、請求項
5に記載のサージ保護装置。
【請求項8】
前記終端プラグは、前記コネクタ部に突出する接続端子と接続されるコネクタを備え、前記コネクタは、前記接続端子の少なくとも2本を電気的に接続するためのショートピンを含む、請求項
7に記載のサージ保護装置。
【請求項9】
前記ブランクプラグは、前記連結プラグが嵌合されない前記コネクタ部を保護するためのカバーである、請求項
7に記載のサージ保護装置。
【請求項10】
前記連結プラグ、前記終端プラグ、前記ブランクプラグの少なくとも一つには、長さ方向の一方側および他方側の側に、前記コネクタ部に形成されたガイド溝内に嵌め込まれてスライドするためのガイドレールが設けられ、
一方側の前記ガイドレールには突出部が形成されている、請求項
7に記載のサージ保護装置。
【請求項11】
前記連結プラグ、前記終端プラグ、前記ブランクプラグの少なくとも一つが前記コネクタ部に嵌合された状態で、前記突出部の下側に前記スライダーに形成された突出部材が位置する、請求項
10に記載のサージ保護装置。
【請求項12】
連続して配置される複数の前記サージ保護ユニットを備え、
前記連結プラグにより、隣り合う前記サージ保護ユニットの前記コネクタ部同士が連結される、請求項
5に記載のサージ保護装置。
【請求項13】
連続して配置される複数の前記サージ保護ユニットを備え、
前記連結プラグにより、複数の前記サージ保護ユニットの前記コネクタ部同士が連結されており、
両端に位置するサージ保護ユニットのうち、一方側の前記サージ保護ユニットの隣り合う前記サージ保護ユニットがない側面の前記コネクタ部には終端プラグが嵌合され、他方側の前記サージ保護ユニットの隣り合う前記サージ保護ユニットがない側面の前記コネクタ部にはブランクプラグが嵌合される、請求項
5に記載のサージ保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サージ保護ユニットおよびサージ保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
信号回線用のサージ保護装置(SPD)として、例えば特許文献1に記載のものが提案されている。特許文献1に記載のサージ保護装置は、
図18に示すように、複数のSPDブロック200と各SPDブロックを連結する連結ユニット201とを備え、SPDブロック200が隣接してDINレール(図示せず)に取付けられている。SPDブロック200は、複外線側端子及び機器側端子を備えたベース部202と、ベース部202に着脱可能に装着され、かつ、外線側端子と機器側端子との間に接続されるサージ防護素子を内蔵したSPDプラグ203とを備えている。
【0003】
SPDブロック200はベース部202の上端面にソケット204を備え、隣り合うSPDブロック200の各ソケット204に1つの連結ユニット201が挿入されることで、隣り合うベース部202同士が電気的に接続される。また、連結ユニット201には、上側から各SPDプラグ203の接続端子が挿入される。
【0004】
特許文献1のようなサージ保護装置は一般に数台から数十台のSPDブロックが隣接してDINレールに取付けられる。サージ保護装置の取付け時には、まず、複数のSPDブロック200をDINレールに取付け、SPDブロック200からSPDプラグ203を全て外す。そしてベース部202の上端面のソケット204を露出させて、隣り合うSPDブロック200のソケット204に連結ユニット201を挿入する。そして、SPDプラグ203を再びベース部202に取付ける。このとき、各SPDプラグ203の接続端子は上側から連結ユニット201に挿入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、引用文献1のサージ保護装置においては、DINレールへの取付け時にSPDブロックをベース部から外さなくてはならず、取付けに手間がかかり、取付けに要する時間が長くなる。
【0007】
本発明は、上記した課題に着目してなされたものであり、取付けが簡単なサージ保護ユニットおよびサージ保護装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、次の項に記載の主題を包含する。
【0009】
項1:外部信号接続端子及び保護機器接続端子と、レールに取付けるためのレール嵌合溝と、前記レール嵌合溝内に一方側の端部が出没自由となるように移動するスライダーとを備えた支持台と、
サージ保護デバイスを含み雷サージを検知するSPD回路を備え、前記支持台に着脱可能に装着されるSPDプラグとを備えるサージ保護ユニットであって、
前記支持台の少なくとも一方の側面に、他のサージ保護ユニットと連接するための連結プラグと嵌合するコネクタ部が設けられ、
前記コネクタ部の下側の開口から前記連結プラグが挿入される、サージ保護ユニット。
【0010】
項2:前記スライダーは、前記一方側の端部が前記レール嵌合溝内に突出する第1の位置と、前記一方側の端部が前記レール嵌合溝から退避する第2の位置との間を移動自由であり、
前記スライダーは、突出部材を備え、前記スライダーが前記第1の位置に定位したときに、前記突出部材は前記コネクタ部の下側の前記開口の少なくとも一部を塞ぎ、前記コネクタ部に挿入された前記連結プラグの下側に位置する、項1に記載のサージ保護ユニット。
【0011】
項3:前記支持台は、前記スライダーを前記レール嵌合溝に向けて付勢する弾性体をさらに備え、
前記スライダーは、前記スライダーが案内されるスライド溝の係止部材と当接することで前記レール嵌合溝への移動が規制されて前記第2の位置に定位し、
前記スライダーが前記第2の位置に定位したときに、前記コネクタ部の前記開口は開放される、項1または項2に記載のサージ保護ユニット。
【0012】
項4:前記コネクタ部は、前記支持台の側面の一端側下部に設けられた凹部であり、前記凹部は側部および下部が開口しており、前記側部の開口の一方側および他方側の端部は上方に向かうにつれて近づく方向に沿って延在する、項1から項3のいずれか1項に記載のサージ保護ユニット。
【0013】
項5:前記コネクタ部の側部の一方側と他方側とには前記連結プラグの挿入のためのガイド溝がそれぞれ形成されており、一方のガイド溝の下端における深さは、他方側のガイド溝の下端における深さと異なっている、項1から項4のいずれか1項に記載のサージ保護ユニット。
【0014】
項6:項1から5のいずれか1項に記載のサージ保護ユニットと、
前記コネクタ部に嵌合される少なくとも1つの前記連結プラグとを備えるサージ保護装置。
【0015】
項7:前記連結プラグは、前記コネクタ部に突出する接続端子と接続されるコネクタと、前記接続端子同士を電気的に接続する基板とを備える、項6に記載のサージ保護装置。
【0016】
項8:前記連結プラグが嵌合されていない側面の前記コネクタ部に取付けられる終端プラグ、ブランクプラグの少なくとも一方をさらに備える、項6または7のいずれか1項に記載のサージ保護装置。
【0017】
項9:前記終端プラグは、前記コネクタ部に突出する接続端子と接続されるコネクタを備え、前記コネクタは、前記接続端子の少なくとも2本を電気的に接続するためのショートピンを含む、項8に記載のサージ保護装置。
【0018】
項10:前記ブランクプラグは、前記連結プラグが嵌合されない前記コネクタ部を保護するためのカバーである、項10または項11に記載のサージ保護装置。
【0019】
項11:前記連結プラグ、前記終端プラグ、前記ブランクプラグの少なくとも一つには、長さ方向の一方側および他方側の側に、前記コネクタ部に形成されたガイド溝内に嵌め込まれてスライドするためのガイドレールが設けられ、
一方側の前記ガイドレールには突出部が形成されている、項8に記載のサージ保護装置。
【0020】
項12:前記連結プラグ、前記終端プラグ、前記ブランクプラグの少なくとも一つが前記コネクタ部に嵌合された状態で、前記突出部の下側に前記スライダーに形成された突出部材が位置する、項11に記載のサージ保護装置。
【0021】
項13:連続して配置される複数の前記サージ保護ユニットを備え、
前記連結プラグにより、隣り合う前記サージ保護ユニットの前記コネクタ部同士が連結される、項6から項12のいずれか1項に記載のサージ保護装置。
【0022】
項14:連続して配置される複数の前記サージ保護ユニットを備え、
前記連結プラグにより、複数の前記サージ保護ユニットの前記コネクタ部同士が連結されており、
両端に位置するサージ保護ユニットのうち、一方側の前記サージ保護ユニットの隣り合う前記サージ保護ユニットがない側面の前記コネクタ部には終端プラグが嵌合され、他方側の前記サージ保護ユニットの隣り合う前記サージ保護ユニットがない側面の前記コネクタ部にはブランクプラグが嵌合される、項6から項13のいずれか1項に記載のサージ保護装置。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、レール等への取付けが簡単なサージ保護ユニットおよびサージ保護装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態に係るサージ保護装置の全体の概略構成を示す斜視図である。
【
図2】サージ保護装置の電気的接続を示す図である。
【
図4】サージ保護装置の先端側からみた分解斜視図である。
【
図5】サージ保護装置の基端側からみた分解斜視図である。
【
図9】スライダーの(A)は平面図、(B)は側面図、(C)は斜視図である。
【
図10】連結プラグの(A)は斜視図、(B)は側面図、(C)は正面図である。
【
図11】(A)、(B)は終端プラグの斜視図である。
【
図12】(A)、(B)はブランクプラグの斜視図である。
【
図13】スライダーが第1の位置に定位したときの支持台および連結プラグの要部の底面図である。
【
図14】(A)は
図13のB-B線に沿う断面図であり、(B)は
図13のC-C線に沿う断面図である。
【
図15】(A)は
図13のD-D線に沿う断面図であり、(B)は
図13のE-E線に沿う断面図である。
【
図16】スライダーが第2の位置に定位したときの(A)は支持台の要部の底面図であり、(B)は(A)のF-F線に沿う支持台の要部の断面図である。
【
図17】(サージ保護ユニットをレールに取り付ける途中の状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(サージ保護装置10の全体構成)
本発明のサージ保護ユニット11およびサージ保護装置10の実施形態を図面を参照して説明する。本発明のサージ保護装置10は、外線側回線又は機器側回線から侵入する雷サージの異常電圧・異常電流から保護対象機器を保護するものであり、少なくともサージ保護ユニット11と連結プラグ12とを備えている。本実施形態では、複数のサージ保護ユニット11と、各サージ保護ユニット11を連結する連結プラグ12と、終端プラグ13と、ブランクプラグ14とを備えている。
【0026】
サージ保護装置10は、複数のサージ保護ユニット11が、その隣り合う側面が互いに対向するように機器取り付け用レールR(Mounting rails for devices)の長さ方向Yに沿って並べられて固定される。機器取り付け用レールRとして、例えばDINレールが用いられる。DINレールはDIN規格で定められた例えば35mm幅の機器取り付け金具である。DIN規格では、交流1000V以下又は直流1500V以下で使用する開閉器、工業用端子台等の電気機器を取り付ける機器取り付け用レールRについて規定されている。なお、サージ保護ユニット11は、DINレールを使用せずに、他の固定具に固定されてもよい。
【0027】
以下の説明では、
図1、
図2に示すように、サージ保護装置10は、3つのサージ保護ユニット11A~11C(特に区別しないときには「サージ保護ユニット11」という。)と、2つの連結プラグ12A、12B(特に区別しないときには「連結プラグ12」という。)と、終端プラグ13およびブランクプラグ14とを1つずつ備えている。サージ保護装置10は、連結プラグ12により隣り合うサージ保護ユニット11のコネクタ部35同士が連結されている。レールRの長さ方向(サージ保護ユニット11の幅方向X)の最も他方側(
図1における左側)に位置するサージ保護ユニット11には終端プラグ13が取り付けられ、最も一方側(
図1における右側)に位置するサージ保護ユニット11にはブランクプラグ14が取り付けられる。しかし、上記のサージ保護装置10は一例であり、サージ保護ユニット11の数は限定されず、保護対象機器の数に合わせてサージ保護ユニット11が連結され、連結されるサージ保護ユニット11の数に応じて連結プラグ12の数が定められる。
【0028】
以下の説明では、特に指定しない限り、レールRの長さ方向に沿う方向であって、複数のサージ保護ユニット11が並べられる方向を幅方向X、サージ保護ユニット11の長さ方向を長さ方向Y、幅方向Xおよび長さ方向Yに直交する方向を上下方向Zという。長さ方向Yのうち後述するスライダー40が設けられる側を先端側、先端側と反対側を基端側という。サージ保護ユニット11の先端側を正面とし、幅方向Xの一方側を左側、他方側を右側ともいう。
図1においては、サージ保護ユニット11Aが左側、サージ保護ユニット11Cが右側に位置している。なお、上下方向Zは必ずしも鉛直方向である必要はなく、レールRが設置される向きに応じて定まる。
【0029】
(サージ保護ユニット11)
各サージ保護ユニット11A~11Cは、
図2に示すように、通信線又は制御線等の外部信号線としての各外部信号線側回線100と、通信機器や制御機器等の保護対象機器に接続された各保護機器側回線101との間に接続されている。サージ保護ユニット11は、外部信号端子及び機器接続端子を備えた支持台15とSPDプラグ16とを備えている。SPDプラグ16は、サージ保護デバイス(図示せず)を含み雷サージを検知するSPD回路95を備え、支持台15に着脱可能に装着される。
【0030】
(支持台15)
(支持ケース20)
図3~7に示すように、支持台15は、側面から見た形状が上に開口した略U字形状の支持ケース20と、支持ケース20の底面に嵌め込まれるスライダー40とを備えている。支持ケース20は、対向する第1立設部21及び第2立設部22と、これらの第1立設部21及び第2立設部22間の下部を連結する連結部23とを備えている。第1立設部21の先端側側面21aには保護機器側回線101と接続される保護機器接続端子24が上下方向Zに2段に設けられている。第2立設部22の基端側側面22aには外部信号線側回線100と接続される外部信号接続端子25が上下方向Zに2段に設けられている。連結部23の基端側側面23aであって外部信号接続端子25の下側には、SPD回路95が繰り返し雷サージにさらされることにより劣化したことを検出するための劣化信号出力端子26が設けられている。劣化信号出力端子26には劣化信号を検出するための劣化信号回線102が接続される。なお、劣化信号回線102はいずれか一つのサージ保護ユニット11の劣化信号出力端子26に接続されていればよく、
図2においてはサージ保護ユニット11Cの劣化信号出力端子26にのみ劣化信号回線102が接続されている。この場合は、いずれか一つのサージ保護ユニット11で劣化が検出されると、劣化信号が連結プラグ12や劣化信号出力端子26を介して劣化信号回線102に流れる。しかし、サージ保護ユニット11A~11Cの内部の電気的接続に応じて、劣化信号回線102は全てのサージ保護ユニット11A~11Cの劣化信号出力端子26に接続されていてもよい。
【0031】
連結部23の上面には、SPDプラグ16の第1コネクタ90と接続される第1接続端子27と、第1接続端子27に平行に並んで設けられ、SPDプラグ16の第2コネクタ91と接続される第2接続端子28とを備えている。第1接続端子27は、連結部23の内部で外部信号接続端子25および保護機器接続端子24にそれぞれ接続され、第2接続端子28は、連結部23の内部で劣化信号出力端子26および後述するコネクタ部35の接続端子37に接続されている。
【0032】
図4に示すように、支持ケース20の底面の長さ方向Yの中央部には支持台15をレールRに取付けるためのレール嵌合溝29が設けられている。レール嵌合溝29は、支持台15の幅方向Xの両端が開口するように設けられており、支持台15の長さ方向YがレールRの長さ方向に直交するようにレールRに取り付けられる。レール嵌合溝29の長さ方向Yの一方側(基端側)の底部には、レールRの側面を係止するための係止凹部30が形成されている。
図6に示すように、レール嵌合溝29の基端側の側面の幅方向Xの中央部には開口29aが形成され、レール嵌合溝29は支持台15の底部の先端側に設けられたスライド溝31と連通している。スライド溝31の底部31aとレール嵌合溝29の底部29bは連続して同一平面上にある。
【0033】
図6~
図8に示すように、スライド溝31は、スライダー40が嵌め込まれて往復摺動自由に支持されるものであり、スライダー40の落下防止のための係止部材32がスライド溝31の各側壁の長さ方向Yの両端に2箇所ずつ、計4つ設けられている。スライド溝31の底部31aと係止部材32との間の空間は、後述するスライダー40のガイドレール47が摺動してスライダー40の移動方向を案内するガイド溝33となる。スライド溝31の底部31aには、スライダー40を基端側に付勢するための弾性体を構成するバネ50が係止されるバネ係止穴34が形成されている。バネ係止穴34は長さ方向Yに延在し、長さ方向Yに直交する面の断面形状が楕円形であり、基端側に向けて深さが徐々に浅く形成されている。バネ係止穴34の先端側の側面34aにバネ50の一端が係止される。なお、弾性体はスライダー40を基端側に付勢することができればバネ50に限定されない。
【0034】
支持ケース20の第1立設部21の先端側の幅方向の側面のうち少なくとも一方の側面、本実施形態では両方の側面の先端側の下部には、凹状のコネクタ部35が設けられている。コネクタ部35は、他のサージ保護ユニット11と連接するための連結プラグ12、終端プラグ13、ブランクプラグ14(以下、区別しない場合は「連結プラグ12等」という。)が着脱自由に嵌合する。コネクタ部35は支持ケース20の側部(側面に沿う面であって凹部の上面)と下側の面とが開放されて開口35a、35bが形成され、下側(下部)の開口35bから連結プラグ12等が挿入される。
【0035】
図6に示すように、コネクタ部35の側面からみて両側部(長さ方向Yの先端側と基端側)には、連結プラグ12等の連結プラグガイドレール61がスライドするためのガイド溝36が上下方向に形成されている。ガイド溝36の下端における深さ(長さ方向Yの長さ)は、先端側と基端側で異なっており、基端側のガイド溝36の下端の深さL1は、後述する連結プラグ12の基端側の連結プラグガイドレール61の長さ方向Yの長さにと略同じに設定されている。先端側のガイド溝36の深さL2は深さL1より長く、後述する連結プラグ12の先端側の連結プラグガイドレール61および突出部62の長さ方向Yの長さの合計以上に設定される。
【0036】
図7に示すように支持ケース20を側面からみたときに、コネクタ部35の開口35aは四角形状を有し、開口35aの先端側および基端側の端部35c、35dは、上方に向かうにつれて近づくように、上下方向Zに対して斜め方向に沿って延在している。本実施形態においては、長さ方向Yに対して先端側の端部35cが傾く角度(四角形の内角)αは、基端側の端部35dが傾く角度(四角形の内角)βと同じに設定されている。角度α、βは80度以上、90度未満に設定されることが好ましく、本実施形態では84度としている。なお、角度α、βは異なる値に設定してもよい。また、先端側の端部35cの上端は、基端側の端部35dの上端よりも上位置にあり、開口35aの上側の端部35eは斜め方向に延在している。
【0037】
コネクタ部35の上面であって開口35aの上側の端部35eと連続する面には、接続端子37が複数設けられている。接続端子37はコネクタ部35の内部に突出しており、コネクタ部35に挿入された連結プラグ12と電気的に接続する。接続端子37は、SPDプラグ16の劣化検出機構94により発生する劣化信号を送信する信号線と接続されている。
【0038】
図6に示すように、支持ケース20の先端側下端の内壁には、後述するスライダー40の突出部材44が摺動して位置するための切り欠き部38が設けられている。
図14(A)に示すように、上下方向Zに延びる第1の切り欠き面38aは、スライダー40の突出部材44の第2側面49aと当接しスライダー40の基端側への移動を規制する。
図14(B)に示すように、上下方向Zに直交する面に沿う第2の切り欠き面38bは、スライダー40の突出部材44の上面48bと当接する。
【0039】
(スライダー40)
スライダー40は、一方側の端部である基端部42がレール嵌合溝29に出没自由にスライド溝31をスライドするものである。レール嵌合溝29がレールRに嵌合した状態で、基端部42がレール嵌合溝29内に突出してレールRを支持する。スライダー40は、
図9(A)、(C)に示すように、平面から見た形状が十字形状であり、略矩形状の平板状の本体部41と、本体部41の長さ方向Yの他方側(先端側)に位置し、幅方向Xの両側面から幅方向Xに沿って延在する突出部材44とを備える。
【0040】
本体部41の基端側であって幅方向Xの中央部にバネ係止孔45が長さ方向Yに沿って形成されており、
図15(B)に示すように、バネ係止孔45の基端側の側面45aは上端が基端側、下端が先端側に傾斜した傾斜面となっている。バネ50は、基端側の端部がスライダー40のバネ係止孔45の側面45aに当接し、先端側の端部がスライド溝31のバネ係止穴34の先端側に形成された側面34aに当接する。これにより、バネ50は、側面からみたときに先端側の端部が上になる斜め方向に、スライダー40とスライド溝31の間に配置される。バネ50により、スライダー40は基端側に向けて付勢されている。
【0041】
スライダー40の先端側の上面には、ドライバーを差し込むための差し込み穴46が2つ形成されている。2つの差し込み穴46は平面からみた形状が異なり、マイナスドライバーおよびプラスドライバーの形状にそれぞれ対応している。サージ保護ユニット11をレールRに装着する際に、マイナスドライバーおよびプラスドライバーを差し込み穴46に差し込んで、スライダー40を先端側に引き出す動作を容易にする。
【0042】
図9(B)、
図9(C)に示すように、スライダー40はスライド溝31のガイド溝33内に挿入されて摺動するガイドレール47を有する。ガイドレール47は、スライダー40の幅方向Xの両側面の上端であって、スライダー40の長さ方向Yに沿ってスライダー40の基端側の所定の位置と突出部材44との間に形成されている。ガイドレール47は、最も基端側に位置し、上下方向Zの長さ(厚み)が一定の第1一定部47aと、基端から先端側に向かって厚みが小さくなる傾斜部47bと、傾斜部47bより先端側に位置し厚みがスライダー40の長さ方向Yに沿って一定の第2一定部47dとを有している。ガイドレール47の第1一定部47aの厚みと第2一定部47dの厚みは同じに設定されており、傾斜部47bと第2一定部47dとの境目には段差による段差面47cが形成されている。
【0043】
突出部材44は、スライダー40の両側面のガイドレール47より下位置に設けられ、幅方向Xに突出している。突出部材44は略矩形状の板状であって、基端側が幅方向Xの長さが短い短幅部48と先端側が短幅部48よりも幅方向Xの長さが長い長幅部49とを有している。突出部材44は、短幅部48の幅方向Xに沿う基端側の第1側面48aと、長幅部49の幅方向Xに沿う基端側の第2側面49aとを備えている。第1側面48aは基端側に向けて凸状の面であるが、平坦面であってもよい。第2側面49aは平坦面である。
【0044】
スライダー40の基端側の端部42は、側面からみて基端側に凸となる突出部として形成されており、スライダー40の本体部41よりも上下方向Zの長さ(厚み)が小さい。また、幅方向Xの長さが本体部41よりも小さい。これにより、後述するようにスライダー40の先端部43が下方向に押し下げられる際に、スライダー40の端部42がスライド溝31の底部31aに当たってスライダー40の押し下げが妨げられるのを防いでいる。
【0045】
(連結プラグ12)
連結プラグ12は、内部において、隣り合うサージ保護ユニット11のSPD回路95が劣化したことを示す劣化信号を送信する信号線同士を接続するものである。
図10(A)~
図10(C)に示すように、連結プラグ12は、支持台15のコネクタ部35の深さ(幅方向Xの長さ)の2倍の厚み(幅方向Xの長さ)を有する。連結プラグ12は、本体部63と、連結プラグガイドレール61とを含む。連結プラグ12の本体部63は、基台63aと、基台63aの上に設けられ、隣り合うSPDプラグ16間の劣化信号を送信する信号線と接続される接続端子37同士を電気的に接続するための基板63bとを備える。本体部63はさらに、基板63bの上面であって、本体部63の幅方向Xの両側に、コネクタ部35の接続端子37が上側から挿入される雌型コネクタ60を備える。なお、接続端子37にSPDプラグ16から出力可能な任意の信号を送信する信号線が接続され、連結プラグ12は、劣化信号に限らず任意の信号を送信する信号線同士を接続するものであってもよい。
【0046】
連結プラグガイドレール61A~61D(特に区別する必要のないときは「連結プラグガイドレール61」という)は、本体部63の長さ方向Yの基端側および先端側の側面63cであって、幅方向Xの両端縁に設けられており、基端側および先端側に向けて突出しており合計4つ形成されている。連結プラグガイドレール61はコネクタ部35のガイド溝36に嵌め込まれてスライドする。
図10(A)、
図10(B)に示すように、4つの連結プラグガイドレール61および側面63cは、支持ケース20のコネクタ部35の開口35aの先端側および基端側の端部35c、35dが延在する方向に沿って斜め方向に延在している。
【0047】
先端側の2つの連結プラグガイドレール61A、61Bには、上下方向Zの中央よりも下位置に、先端側に向かって突出する突出部62が形成されている。突出部62は側面からみた形状が矩形状であって、
図10(C)に示すように、連結プラグガイドレール61と幅方向Xの長さ(厚み)が同じである。
【0048】
連結プラグ12は、
図3に示すように、あるサージ保護ユニット11のコネクタ部35に取り付けられた状態では、連結プラグ12の連結プラグガイドレール61B、61Dを含む幅方向Xの中央から一方側の部分がサージ保護ユニット11のコネクタ部35に収容されている。また、連結プラグガイドレール61A、61Cを含む他方側の部分はサージ保護ユニット11のコネクタ部35から外側に突出している。他方側の部分は隣り合うサージ保護ユニット11のコネクタ部35に挿入される。
【0049】
連結プラグ12は、連結プラグガイドレール61および開口35aの先端側および基端側の端部35c、35dが上方向に向けて近づくように斜めに傾いているため、連結プラグ12は所定の位置で挿入が規制される。
図16(A)に示すように、連結プラグ12が支持台15のコネクタ部35に挿入された状態で、連結プラグガイドレール61Bの先端側の面の下端61aは、スライド溝31の係止部材32の先端側側面32aと長さ方向Yの位置が揃っている。
図14(B)に示すように、連結プラグ12の連結プラグガイドレール61Bの突出部62の下面62aは、支持ケース20の第2の切り欠き面38bと上下方向Zの位置が揃い、連結プラグ12の下面12aは、支持ケース20の下面であってスライド溝31の係止部材32の下面と揃っている。
【0050】
連結プラグガイドレール61が挿入されるコネクタ部35のスライド溝31の深さL1、L2は、先端側の連結プラグガイドレール61A、61Bの幅(長さ方向Yの長さ)に応じて設定されている。このため、連結プラグ12を先端側と基端側と逆にした状態でコネクタ部35に挿入すると、連結プラグガイドレール61の突出部62の上面62bが支持ケース20の底面に当接してコネクタ部35に挿入できないため、誤挿入が防止される。
【0051】
本体部63の上面の幅方向Xの一方側(本実施形態では連結プラグガイドレール61B、61Dの位置する側)であって、雌型コネクタ60の先端側および基端側には、突起64A、64Bが設けられている。突起64A、64Bは上方向に向かうにつれ先端がわずかに小さくなる先細り形状に形成され、基端側に位置する突起64Aの長さ方向Yの長さ(幅)は突起64Bよりも短い。連結プラグ12の連結プラグガイドレール61B、61D部分が支持ケース20のコネクタ部35に嵌合する際に、突起64Aが、コネクタ部35の上面であって開口35aの上側の端部35eと連続する面に当接することで、連結プラグ12のコネクタ部35への挿入が規制される。また、サージ保護ユニット11の右側の側面のコネクタ部35に連結プラグ12が取り付けられた状態で、レールRへの取り付けを行う際に、突起64A、64Bを有することで連結プラグ12に幅方向X、長さ方向Y、上下方向Zへの連結プラグ12のがたつきが生じにくくなる。なお、連結プラグ12に突起64A、64Bは設けられていなくてもよい。この場合、連結プラグ12は、本体部63および連結プラグガイドレール61の形状が幅方向Xの中心に対して対称の形状を有する。
【0052】
(終端プラグ13)
図11(A)、
図11(B)に示すように、終端プラグ13は、レールRに取り付けられたサージ保護ユニット11のうち、レールRの長さ方向の他端側(
図1では左側)のサージ保護ユニット11Aの支持台15の他端側の側面のコネクタ部35に取り付けられるものである。終端プラグ13は、支持台15のコネクタ部35の深さ(幅方向Xの長さ)と同じ厚み(幅方向Xの長さ)を有する。
【0053】
終端プラグ13の幅方向Xの他端側(左側)の側面73は、側面から見た形状が支持ケース20のコネクタ部35の側面の開口35aと同一の形状であり、終端プラグ13が支持台15のコネクタ部35に取り付けられたときに、開口35aを塞ぐ。また、終端プラグ13の長さ方向Yの両側面74であって、幅方向Xの一端側(右側)の端部には、コネクタ部35のガイド溝36に嵌め込まれてスライドする終端プラグガイドレール71A、71Cが設けられている。先端側の終端プラグガイドレール71Aには、上下方向Zの中央よりも下位置に、先端側に向かって突出する突出部72が形成されている。終端プラグ13には、コネクタ部35の接続端子が上側から挿入される雌型コネクタ70が設けられている。雌型コネクタ70は、雌型コネクタ70に挿入されるコネクタ部35の接続端子37の少なくとも2本を電気的に接続するためのショートピンを含んでいる。
【0054】
雌型コネクタ70、終端プラグガイドレール71(71A、71C)、突出部72の形状は連結プラグ12のガイドレール61および突出部62と同じ形状を有しているため、説明を省略する。
【0055】
(ブランクプラグ14)
図12(A)、
図12(B)に示すように、ブランクプラグ14は、レールRに取り付けられたサージ保護ユニット11のうち、終端プラグ13が取り付けられたサージ保護ユニット11と反対側の端に位置するサージ保護ユニット11Cの支持台15の一端側(右側)の側面のコネクタ部35に取り付けられるものである。ブランクプラグ14は、コネクタ部35を保護するためのカバーであり、コネクタ部35の開口35aおよび開口35bを塞ぐ。ブランクプラグ14は、支持台15のコネクタ部35の深さ(幅方向Xの長さ)と同じ厚み(幅方向Xの長さ)を有する。
【0056】
ブランクプラグ14の幅方向Xの一端側(右側)の側面83は、側面から見た形状が支持ケース20のコネクタ部35の側面の開口35aと同一の形状である。ブランクプラグ14の長さ方向Yの両側面84であって、幅方向Xの一端側(右側)の端部には、コネクタ部35のガイド溝36に嵌め込まれてスライドするブランクプラグガイドレール81B、81Dが設けられている。先端側のブランクプラグガイドレール81Bには、上下方向Zの中央よりも下位置に、先端側に向かって突出する突出部82が形成されている。ブランクプラグガイドレール81(81B、81D)、突出部82の形状は連結プラグ12のガイドレール61および突出部62と同じ形状を有しているため、説明を省略する。
【0057】
(SPDプラグ16)
SPDプラグ16は、略直方体状のケースを備えている。SPDプラグ16は、支持台15の第1立設部21と第2立設部22との間に着脱自由であり、SPDプラグ16の下面には支持台15の第1接続端子27、第2接続端子28に対応する位置に第1コネクタ90、第2コネクタ91が設けられている。SPDプラグ16の上面には、SPD回路95の劣化状態を表示するための表示部92が設けられている。
【0058】
SPDプラグ16内には、劣化検出機構94と、SPD回路95とが内蔵されている。劣化検出機構94は、スイッチ93を介して第2コネクタ91と接続され、SPD回路95が繰り返し雷サージにさらされることによる劣化を監視する。SPD回路95は、第1コネクタ90に接続され、外部信号線側回線100又は保護機器側回線101から侵入する雷サージの異常電圧・異常電流から保護対象機器を保護する。
【0059】
(スライダー40の第1の位置および第2の位置)
スライダー40は、
図13~
図15に示す基端側の端部42がレール嵌合溝29に突出した状態の第1の位置と、
図16に示す基端側の端部42がレール嵌合溝29から退避した状態の第2の位置との間を移動自由である。
【0060】
スライダー40が第1の位置にある状態においては、
図13、
図15(A)に示すように、突出部材44の短幅部48の幅方向Xに沿う第1側面48aがスライド溝31の係止部材32の先端側側面32aと当接する。また、
図13,
図14(A)に示すように、突出部材44の長幅部49の幅方向Xに沿う基端側の第2側面49aが支持台15の先端下部に設けられた切り欠き部38の第1の切り欠き面38aに当接する。これにより、バネ50により基端側に付勢されたスライダー40の基端側への移動が規制されスライダー40は第1の位置に定位する。このとき、
図14(B)に示すように、スライダー40の突出部材44の短幅部48の上面48bはコネクタ部35の下側の開口35bの一部を塞ぎ、コネクタ部35に挿入された連結プラグ12等の突出部62の下方に位置する。これにより、連結プラグ12等がコネクタ部35から抜け落ちるのを防いでいる。
【0061】
スライダー40が第2の位置にある状態においては、
図16(A)、
図16(B)に示すように、スライダー40は第1の位置より先端側に移動しており、スライダー40の基端側の端部42はスライド溝31内に位置し、レール嵌合溝29に突出していない。
図16(B)に示すように、スライダー40は先端部43が基端部42よりも下となる斜め方向に傾いており、スライダー40のガイドレール47に設けられた段差面47cがスライド溝31の係止部材32の先端側側面32aに当接している。これにより、バネ50により基端側に付勢されたスライダー40の基端側への移動が規制され、スライダー40が第2の位置に定位する。このとき、スライダー40の突出部材44の短幅部48は連結プラグ12の突出部62の下方に位置しておらず、コネクタ部35の下側の開口35bは開放されてコネクタ部35に連結プラグ12等を着脱可能である。
【0062】
スライダー40はレール嵌合溝29にレールRが嵌合した状態や、購入後にパッケージを開封したときの状態等の通常の状態では基端側の端部42がレール嵌合溝29に突出した第1の位置に定位する。レール嵌合溝29にレールRを嵌合させる直前の状態や、連結プラグ12等をコネクタ部35に着脱するときには、スライダー40は第2の位置に定位する。スライダー40を第1の位置から第2の位置に移動させる際には、作業者は、手でスライダー40の先端側の端部43を摘まんで、またはドライバー等をドライバー差し込み穴46に差し込んで、スライダー40の先端側の端部43を下に押し下げながらバネ50の付勢力に反して先端側に引く。これにより、スライダー40のガイドレール47の第1一定部47aの下面および第2一定部47dの下面がスライド溝31の係止部材32の上面に当接しながらスライドする。第2一定部47dが係止部材32の上面から外れると、スライダー40は下に押し下げられているので、スライダー40が傾斜する。この状態で、作業者はスライダー40の先端側の端部43から手やドライバーを離す。スライダー40はバネ50により基端側に付勢されているので、段差面47cがスライド溝31の係止部材32の先端側の面に当接し、スライダー40の基端側への移動が規制され、スライダー40は第2の位置に定位する。スライダー40を第2の位置から第1の位置に移動させるときには、作業者はスライダー40の先端端部43をバネ50の付勢力に反して先端側に引き、上に持ち上げて、手を離して先端部43に加わる力を取り除く。これにより、スライダー40の先端側は上方向に向けて移動し、第1の位置に定位する。
【0063】
(レールRへの取り付け)
サージ保護装置10のレールRへの取り付け手順について説明する。まず、レールRへの取り付け前の準備工程として、サージ保護ユニット11のコネクタ部35に連結プラグ12等を取り付ける(第1工程)。最も左側に取り付け予定のサージ保護ユニット11Aの支持台15の左側の側面のコネクタ部35に終端プラグ13を取り付ける。また、最も右側に取り付け予定のサージ保護ユニット11Cの支持台15の右側の側面のコネクタ部35にブランクプラグ14を取り付ける。さらに、レールRへ取り付け予定のサージ保護ユニット11A、11Bの支持台15の右側の側面のコネクタ部35に連結プラグ12を取り付ける。このとき、連結プラグ12の連結プラグガイドレール61B、61Dがコネクタ部35のガイド溝36に挿入される。最も右側および左側のサージ保護ユニット11A、11Cの間に位置するサージ保護ユニット11Bは、右側のコネクタ部35に連結プラグ12が取り付けられ、左側のコネクタ部35には、連結コネクタ等は取り付けられていない。
【0064】
上記の連結プラグ12等の取り付け時には、スライダー40を第1の位置から第2の位置に移動させ、コネクタ部35のスライド溝31の下面を開放して連結プラグ12等のガイドレール61、71、81を挿入し、スライダー40を再び第1の位置に移動させる。
【0065】
なお、既にサージ保護ユニット11のコネクタ部35に連結プラグ12が取り付けられている場合には、連結プラグ12の取り付け工程は省略される。
【0066】
次に、最も左側に位置するサージ保護ユニット11AをレールRへ取り付ける(第2工程)。
図17に示すように、作業者は支持台15のレール嵌合溝29の係止凹部30にレールRの基端側の端部を嵌め込み、係止凹部30を支点としてサージ保護ユニット11Aを先端側がレールRに近づく方向に回転させる。スライダー40を第2の位置に移動させてスライダー40の基端側の端部42をレール嵌合溝29から退避させて、レール嵌合溝29を完全に開放し、レール嵌合溝29にレールRを嵌合する。そして、スライダー40を第1の位置に移動させ、スライダー40の基端側の端部42とレール嵌合溝29の底部29bとによりレールRの端部を挟む。これにより、サージ保護ユニット11AがレールRに取り付けられる。
【0067】
次に、サージ保護ユニット11Aの右側に隣接してサージ保護ユニット11Bを取り付ける(第3工程)。サージ保護ユニット11Bの取り付け手順については、サージ保護ユニット11Aの手順と異なる部分のみを説明し、同じ手順については説明を省略する。作業者はサージ保護ユニット11Bを係止凹部30を支点として先端側がレールRに近づく方向に回転させる。すると、サージ保護ユニット11Bの右側のコネクタ部35が、サージ保護ユニット11Aのコネクタ部35に取り付けられた連結プラグ12の幅方向Xの右側部分に被さる。そして、連結プラグ12の連結プラグガイドレール61A、61Cがサージ保護ユニット11Bのコネクタ部35のガイド溝36に挿入され、コネクタ部35と連結プラグ12が嵌合する。コネクタ部35の接続端子37が連結プラグ12の雌型コネクタ60に挿入される。連結プラグ12により、サージ保護ユニット11A、11Bのコネクタの接続端子同士が電気的に接続される。
【0068】
次に、サージ保護ユニット11Bの右側にサージ保護ユニット11Cを取り付ける(第4工程)。サージ保護ユニット11Cの取り付け手順は、サージ保護ユニット11Bと同じである。
【0069】
本実施形態においては、サージ保護ユニット11の支持台15の少なくとも一方の面に、他のサージ保護ユニット11と連結するための連結プラグ12が取り付けられるコネクタ部35が設けられており、複数のサージ保護ユニット11が連結プラグ12で連結されて連続してレールRに取り付けられる。まず、コネクタ部35に連結プラグ12が予め取り付けられたサージ保護ユニット11がレールRに取り付けられ、このサージ保護ユニット11の隣に他のサージ保護ユニット11が取り付けられる。このとき、他のサージ保護ユニット11のコネクタ部35が、連結プラグ12に被さり、コネクタ部35と連結プラグ12が嵌合する。これにより、隣り合うサージ保護ユニット11同士が連結される。このように、サージ保護ユニット11を連続して配置するだけの簡単な動作でサージ保護ユニット11同士を簡単に連結することができ、取り付け作業が簡単である。また、サージ保護ユニット11同士の連結と同時に、隣り合うサージ保護ユニット11の接続端子37同士を電気的に接続することができる。このように、本実施形態においては、従来技術のようにSPDプラグ16を支持台15から外して連結プラグ12を取り付ける必要がないため、複数のサージ保護ユニット11をレールR等へ取り付けるのに要する時間が短くなる。
【0070】
また、従来技術においては、連結プラグが隣り合うサージ保護ユニット11の支持台の上面に跨って位置し、さらにSPDプラグにより上方向から抑えられている。複数連続して配置されたサージ保護ユニット11のうちあるサージ保護ユニット全体を取り外して交換する際に、あるサージ保護ユニットだけを取り外すことができず、左右の隣接するサージ保護ユニット11も同時に取り外す必要がある。しかし、本実施形態によれば、連結プラグ12が嵌合されるコネクタ部35は支持台15の側面に形成されており、サージ保護ユニット11を上方向に取り外すことでコネクタ部35から連結プラグ12が引き抜かれ、取り外し対象のサージ保護ユニット11のみを取り外すことができる。
【0071】
本実施形態においては、スライダー40は突出部材44を備え、スライダー40の突出部材44は、コネクタ部35に連結プラグ12等が嵌合しており、スライダー40が第1の位置に定位しているときに、コネクタ部35の開口35bの一部を塞ぎ、連結プラグ12等の下側に位置するので、連結プラグ12等の抜け落ちを防止することができる。また、スライダー40を先端側の第2の位置に移動させることで、コネクタ部35の下端は開放されるため、連結プラグ12等を着脱することができる。また、スライダー40の突出部材44はスライド溝31の係止部材32と当接してスライダー40のレール嵌合溝29への移動が規制され、先端側の第2の位置で定位することができる。このため、コネクタ部25の下部の開口35bは塞がれていない状態を保つことができ、連結プラグ12等の着脱が容易である。
【0072】
また、スライダー40は弾性体によりレール嵌合溝29に付勢されているため、スライダー40がレール嵌合溝29から退避することなくレール嵌合溝29に嵌められたレールRをしっかりと支持することができる。
【0073】
また、本実施形態においては、コネクタ部35のガイド溝36の下端における深さ(長さ方向Yの長さ)は、先端側と基端側で異なっており、基端側のガイド溝36の下端の深さL1は、連結プラグ12の基端側の連結プラグガイドレール61の長さ方向Yの長さにと略同じに設定され、先端側のガイド溝36の深さL2は深さL1より長く、後述する連結プラグ12の先端側の連結プラグガイドレール61および突出部62の長さ方向Yの長さの合計以上に設定されている。これにより、連結プラグ12を先端側と基端側と逆にした状態でコネクタ部35に挿入すると、連結プラグガイドレール61の突出部62の上面62bが支持ケース20の底面に当接してコネクタ部35に挿入できないため、誤挿入が防止される。
【0074】
(実験例)
本発明のサージ保護装置10として実験例1、2を用意し、この実験例1、2と比較例3、4とについて、レールRへの取り付けの速さを測定した。
【0075】
実験例1は、
図1に示すサージ保護装置10であり、サージ保護装置10は、3つのサージ保護ユニット11A~11Cと、2つの連結プラグ12A、12Bと、終端プラグ13およびブランクプラグ14とを1つずつ備えている。
【0076】
レールRへの取り付け手順として、以下の工程A~工程Eが行われる。初期状態として、3つのサージ保護ユニット11A~11Cには、それぞれ連結プラグ12A、12B、12Cが取り付けられているものとする。まず、最も左側に取り付け予定のサージ保護ユニット11Aの支持台15の左側の側面のコネクタ部35に終端プラグ13を取り付ける(工程A1)。次に、サージ保護ユニット11AをレールRに取り付ける(工程A2)。そして、サージ保護ユニット11Aの右側に隣接してサージ保護ユニット11Bを取り付ける(工程A3)。次に、サージ保護ユニット11Cの連結プラグ12Cを取り外し、ブランクプラグ14を取り付ける(工程A4)。そして、サージ保護ユニット11Bの右側にサージ保護ユニット11Cを取り付ける(工程A5)。工程A2、A3、A5は上述の第2工程、第3工程、第4工程と同様であるため、詳細な説明を省略する。実験例2においては、連結プラグ12Cは使用されない。
【0077】
実験例2のサージ保護装置10は、2つのサージ保護ユニット11A、11Bと、1つの連結プラグ12Aと、終端プラグ13およびブランクプラグ14とを1つずつ備えている。レールRへの取り付け手順として、以下の工程A1、A2、A6、A3が行われる。まず、実験例1と同様の工程A1、A2が行われる。工程A2の後、サージ保護ユニット11Bの連結プラグ12Bを取り外し、ブランクプラグ14を取り付ける(工程A6)。そして、実験例1の工程A3と同様に、サージ保護ユニット11Aの右側に隣接してサージ保護ユニット11Bを取り付ける。
【0078】
比較例3のサージ保護装置は、3つのSPDブロック200A~200Cと、2つの連結ユニット201A、201Bと、2つのエンドキャップ(図示せず)を備えている。SPDブロック200A~200Cと、連結ユニット201A、201Bの構成は、
図18に示す従来技術と同様である。比較例3のレールRへの取り付け手順は以下の通りである。まず、3つのSPDブロック200A~200Cを隣接するように連続してレールRに取り付ける(工程B1)。次に各SPDブロック200A~200CからSPDプラグ203を全て抜き取り、SPDブロック200A~200Cのベース部202の上端面のソケット204を露出させる。(工程B2)。そして、隣り合うSPDブロック200A、200Bおよび200B、200Cのソケット204を跨ぐように、連結ユニット201をそれぞれ取り付ける(工程B3)。SPDブロック200A、200Cのソケット200の空き部分にエンドキャップを取り付ける(工程B4)。そして、SPDブロック200A~200Cのベース部202にSPDプラグ203を再度取り付ける(工程B5)。
【0079】
比較例4のサージ保護装置は、2つのSPDブロック200A~200Cと、1つの連結ユニット201Aと、2つのエンドキャップ(図示せず)を備えている。SPDブロック200A、200Bと、連結ユニット201Aの構成は、
図18に示す従来技術と同様である。比較例4のレールRへの取り付け手順は比較例3の工程B1~B5と同様である。
【0080】
実験例1、2および比較例1、2を上記の取り付け手順によりレールRへ取り付けた場合に、取り付けに要した時間をストップウォッチで測定した。3つのサージ保護ユニット11A~11Cを有する実験例1および3つのSPDブロック200A~200Cを有する比較例1とを比較すると、実験例1の取り付け時間は23.9秒、比較例1の取り付け時間は39.7秒であった。実験例1の取り付け時間は比較例1に比べて短く、取り付け時間の差は15.8秒であり、取り付け時間の改善率(実験例と比較例との取り付け時間の差/比較例の取り付け時間)は29.8%であった。
【0081】
2つのサージ保護ユニット11A、11Bを有する実験例2および2つのSPDブロック200A、200Bを有する比較例2とを比較すると、実験例2の取り付け時間は20.7秒、比較例2の取り付け時間は27.5秒であった。実験例2の取り付け時間は比較例2に比べて短く、取り付け時間の差は6.8秒であり、取り付け時間の改善は24.7%であった。
【0082】
このように、本実施形態のサージ保護装置10を用いることでレールRへの取り付け時間が短縮されることが分かった。また、サージ保護ユニット11の数が増えるほど、取り付け時間の改善率が向上することが分かった。
【0083】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。実施形態として記載され又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。一つの構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【符号の説明】
【0084】
11 サージ保護ユニット
12 連結プラグ
13 終端プラグ
14 ブランクプラグ
15 支持台
16 SPDプラグ
24 保護機器接続端子
25 外部信号接続端子
29 レール嵌合溝
31 スライド溝
32 係止部材
35 コネクタ部
40 スライダー
44 突出部材
50 弾性体
95 SPD回路
R レール