(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】人間の皮膚の表皮内神経線維の密度を非侵襲的画像を用いて観察するための装置の作動方法及び装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20240930BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20240930BHJP
G02B 21/00 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
A61B5/00 M
G01N21/64 Z
G02B21/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022120222
(22)【出願日】2022-07-28
【審査請求日】2022-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】506292158
【氏名又は名称】国立台湾大学
【氏名又は名称原語表記】National Taiwan University
【住所又は居所原語表記】No. 1, Roosevelt Rd. Sec.4, Da‘an District, Taipei,Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】孫啓光
(72)【発明者】
【氏名】呉沛哲
(72)【発明者】
【氏名】曽篠▲チェ▼
【審査官】後藤 昌夫
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0319322(US,A1)
【文献】LIM HYUNGSIK,”Harmonic Generation Microscopy 2.0: New Tricks Empowering Intravital Imaging for Neuroscience”,Frontiers in Molecular Biosciences,2019年10月09日,Vol. 6、Article 99,pp. 1-11
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間の皮膚の表皮内神経線維の密度を非侵襲的画像を用いて観察するための
装置の作動方法であって、
前記装置は、表皮内神経線維構造の画像の連続信号を観察するために、被験者の皮膚の収集面積の前記表皮内神経線維構造の画像をキャプチャするための非線形光学顕微鏡デバイス
と、計算要素と、評価及び判断要素とを含み
前記表皮内神経線維構造の画像の前記連続信号は、前記人間の皮膚の表皮及び真皮の接合層を交差して前記表皮内に伸張することによって形成された末梢表皮内神経線維の糸状または爪状の構造的信号と、前記表皮内だけに位置する前記末梢表皮内神経線維の糸状または爪状の構造的信号とを含み、
前記末梢表皮内神経線維は前記人間の皮膚の前記表皮内の無髄神経線維であり、
そして、前記非線形光学顕微鏡デバイスは、パルス状レーザーを伴うレーザー光を放射するためのレーザー光源と、画像信号を処理するための画像処理要素とを含
み、
前記非線形光学顕微鏡デバイスが、前記レーザー光源を使用することによって、前記レーザー光を、前記被験者の皮膚の前記収集面積の前記表皮内神経線維に集束させることと、
前記非線形光学顕微鏡デバイスが、前記画像処理要素を使用することによって、少なくとも3つの空間的に連続する信号点を有する前記表皮内神経線維構造の画像の連続信号を処理して収集することであって、
前記表皮内神経線維構造の画像の前記連続信号は、前記レーザー光によって励起された後に発生した第3高調波発生非線形光信号であり、
前記表皮内神経線維構造の画像の前記連続信号のそれぞれの信号点の大きさは200nm以上であり、
3次元空間内における一方の信号点から別の信号点までの直線距離は0~7.5μmの範囲にわたり、
そして、少なくとも3つの信号点を有する画像の前記連続信号は糸状表皮内神経線維構造の信号セグメントを構成し、
前記糸状表皮内神経線維構造の信号セグメントは、前記表皮内だけに存在する信号セグメントと、前記皮膚の表皮及び真皮の前記接合層を伸張しながら交差し、前記表皮内に存在する他の信号セグメントとを含み、
前記糸状表皮内神経線維構造の信号セグメントが表す構造と、前記表皮及び真皮の前記接合層との間の最短距離は20μm未満であり、前記信号セグメントが表す構造によって、複数の神経線維を構成する、前記処理して収集することと、
前記計算要素が、前記被験者の皮膚の前記収集面積内における全ての表皮内神経線維について神経線維の総数を計算して、前記総数を、前記キャプチャされた画像の全収集面積(mm
2)で割り、前記被験者の皮膚の前記表皮内神経線維の密度を取得することと、
前記評価及び判断要素が、前記表皮内神経線維の損傷が重度になるにつれて、取得した前記密度が低くなることに基づいて、前記被験者の皮膚の前記表皮内神経線維に対する損傷レベルを評価することにより、前記被験者が末梢神経障害にかかっているかどうかを判定することと、
を含む、
作動方法。
【請求項2】
前記評価及び判断要素が、人間の表皮内神経線維の密度の正常値は50~60(神経線維数/mm
2)であることを用いて前記損傷レベルを評価する、人間の皮膚の表皮内神経線維の密度を非侵襲的画像を用いて観察するための請求項1に記載の
作動方法。
【請求項3】
前記表皮内神経線維は、点状構造を有するC神経線維またはAデルタ神経線維である、人間の皮膚の表皮内神経線維の密度を非侵襲的画像を用いて観察するための請求項1に記載の
作動方法。
【請求項4】
前記非線形光学顕微鏡デバイスは、第3高調波発生顕微鏡デバイス(THG)、第3高調波発生顕微鏡デバイス(THG)を加えた第2高調波発生顕微鏡デバイス(SHG)、またはそれらの組み合わせであり、前記第3高調波発生顕微鏡デバイス(THG)の要求仕様は、NA≧0.75、中心波長:1065~1450nm、及びパルス幅:<10psであり、光信号は前記レーザー光とは逆方向に観察される、人間の皮膚の表皮内神経線維の密度を非侵襲的画像を用いて観察するための請求項1に記載の
作動方法。
【請求項5】
各表皮内神経線維は同じ方向または異なる方向に沿って伸張する、人間の皮膚の表皮内神経線維の密度を非侵襲的画像を用いて観察するための請求項1に記載の
作動方法。
【請求項6】
各表皮内神経線維は、伸張しないで同じ表皮内で連続する、または伸張して異なる皮膚層内で連続する、人間の皮膚の表皮内神経線維の密度を非侵襲的画像を用いて観察するための請求項1に記載の
作動方法。
【請求項7】
各表皮内神経線維が異なる皮膚層内で伸張するとき、前記表皮内神経線維は、点状の画像及び点状の画像を伸張したもの、または点状の画像及び線状の画像を伸張したものに対応する、人間の皮膚の表皮内神経線維の密度を非侵襲的画像を用いて観察するための請求項1に記載の
作動方法。
【請求項8】
各表皮内神経線維の密度の観察は、前記皮膚内で細胞の外形の画像を対象外とするために、サークルとして配置されないものを対象とする、人間の皮膚の表皮内神経線維の密度を非侵襲的画像を用いて観察するための請求項1に記載の
作動方法。
【請求項9】
前記装置は、表示要素をさらに含み、前記表示要素が、各表皮内神経線維の画像及び/または前記密度の値を表示するための表示ステップをさらに含む、人間の皮膚の表皮内神経線維の密度を非侵襲的画像を用いて観察するための請求項1に記載の
作動方法。
【請求項10】
人間の皮膚の表皮内神経線維の密度を非侵襲的画像を用いて観察するための装置であって、
表皮内神経線維構造の画像の連続信号を観察するために、被験者の皮膚の収集面積の前記表皮内神経線維構造の画像をキャプチャするための非線形光学顕微鏡デバイスであって、
前記表皮内神経線維構造の画像の前記連続信号は、前記人間の皮膚の表皮及び真皮の接合層を交差して前記表皮内に伸張することによって形成された末梢表皮内神経線維の糸状または爪状の構造的信号と、前記表皮内だけに位置する前記末梢表皮内神経線維の糸状または爪状の構造的信号とを含み、
前記末梢表皮内神経線維は前記人間の皮膚の前記表皮内の無髄神経線維であり、
そして、パルス状レーザーを伴うレーザー光を放射するためのレーザー光源と、画像信号を処理するための画像処理要素とを含み、
前記レーザー光源を使用することによって、前記レーザー光を、前記被験者の皮膚の前記収集面積の前記表皮内神経線維に集束させ、
前記画像処理要素を使用することによって、少なくとも3つの空間的に連続する信号点を有する前記表皮内神経線維構造の画像の連続信号を処理して収集し、
前記表皮内神経線維構造の画像の前記連続信号は、前記レーザー光によって励起された後に発生した第3高調波発生非線形光信号であり、
前記表皮内神経線維構造の画像の前記連続信号のそれぞれの信号点の大きさは200nm以上であり、
3次元空間内における一方の信号点から別の信号点までの直線距離は0~7.5μmの範囲にわたり、
そして、少なくとも3つの信号点を有する画像の前記連続信号は糸状表皮内神経線維構造の信号セグメントを構成し、
前記糸状表皮内神経線維構造の信号セグメントは、前記表皮内だけに存在する信号セグメントと、前記皮膚の表皮及び真皮の前記接合層を伸張しながら交差し、前記表皮内に存在する他の信号セグメントとを含み、
前記糸状表皮内神経線維構造の信号セグメントが表す構造と、前記表皮及び真皮の前記接合層との間の最短距離は20μm未満であり、前記信号セグメントが表す構造によって、複数の神経線維を構成する、前記非線形光学顕微鏡デバイスと、
前記被験者の皮膚の前記収集面積内における全ての表皮内神経線維について神経線維の総数を計算して、前記総数を、前記キャプチャされた画像の全収集面積(mm
2)で割り、前記被験者の皮膚の前記表皮内神経線維の密度を取得するための計算要素と、
前記表皮内神経線維の損傷が重度になるにつれて、取得した前記密度が低くなることに基づいて、前記被験者の皮膚の前記表皮内神経線維に対する損傷レベルを評価することにより、前記被験者が末梢神経障害にかかっているかどうかを判定するための評価及び判断要素と、
を含む、装置。
【請求項11】
各表皮内神経線維の画像及び/または前記密度を表示するための表示要素をさらに含む、人間の皮膚の表皮内神経線維の密度を非侵襲的画像を用いて観察するための請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記評価及び判断要素は、人間の表皮内神経線維の密度の正常値は50~60(神経線維の数/mm
2)であることを用いて前記損傷レベルを評価する、人間の皮膚の表皮内神経線維の密度を非侵襲的画像を用いて観察するための請求項10に記載の装置。
【請求項13】
前記表皮内神経線維は、点状構造を有するC神経線維またはAデルタ神経線維である、人間の皮膚の表皮内神経線維の密度を非侵襲的画像を用いて観察するための請求項10に記載の装置。
【請求項14】
前記非線形光学顕微鏡デバイスは、第3高調波発生顕微鏡デバイス(THG)、第3高調波発生顕微鏡デバイス(THG)を加えた第2高調波発生顕微鏡デバイス(SHG)、またはそれらの組み合わせであり、前記第3高調波発生顕微鏡デバイス(THG)の要求仕様は、NA≧0.75、中心波長:1065~1450nm、及びパルス幅:<10psであり、光信号は前記レーザー光とは逆方向に観察される、人間の皮膚の表皮内神経線維の密度を非侵襲的画像を用いて観察するための請求項10に記載の装置。
【請求項15】
各表皮内神経線維は同じ方向または異なる方向に沿って伸張する、人間の皮膚の表皮内神経線維の密度を非侵襲的画像を用いて観察するための請求項10に記載の装置。
【請求項16】
各表皮内神経線維は、伸張しないで同じ表皮内で連続する、または伸張して異なる皮膚層内で連続する、人間の皮膚の表皮内神経線維の密度を非侵襲的画像を用いて観察するための請求項10に記載の装置。
【請求項17】
各表皮内神経線維が異なる皮膚層内で伸張するとき、前記表皮内神経線維は、点状の画像及び点状の画像を伸張したもの、または点状の画像及び線状の画像を伸張したものに対応する、人間の皮膚の表皮内神経線維の密度を非侵襲的画像を用いて観察するための請求項10に記載の装置。
【請求項18】
各表皮内神経線維の密度の観察は、前記皮膚内で細胞の外形の画像を対象外とするために、サークルとして配置されないものを対象とする、人間の皮膚の表皮内神経線維の密度を非侵襲的画像を用いて観察するための請求項10に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間の皮膚の表皮内神経線維の密度を非侵襲的画像を用いて観察するための方法及び装置に関し、本方法は、表皮内神経線維の画像の連続信号を観察するために、被験者の皮膚の収集面積の表皮内神経線維構造の画像をキャプチャするための非線形光学顕微鏡デバイスを提供することと、画像処理要素によって被験者の表皮内神経線維の密度(または、密度値)を計算することと、被験者の体の皮膚の表皮内神経線維に対する損傷レベルを評価して、末梢神経障害等の関連の神経障害にかかっているかどうかを判定することと、を含む。
【背景技術】
【0002】
現在、神経を観察するために病院の神経内科によって導入されているアプローチは、パンチ生検を使用することによって、皮膚組織を患者から除去することである。そのアプローチとして、人体に不快感をもたらすだけでなく、時々、不慮の負傷を生じさせる侵襲的方法がある。さらに、診断のために皮膚組織画像を観察するとき、観察を完了するために、特殊な化学免疫染色技術が必要である。医療処置は複雑であり、今のところ、その精度は改善されていない。
【0003】
したがって、急速ならびに正確な診断及び必要な補正を提供するために特殊な免疫組織化学染色技術を必要とすることなく、人間の皮膚の表皮の表皮内神経線維の密度を取得するために表皮内神経線維構造の画像の信号を観察するための非侵襲的で無害な方法は、医療分野では予想される。さらに、人間の皮膚の表皮の末梢表皮内神経線維を観察することによって、末梢表皮内神経線維の密度を計算して、人間が末梢神経障害にかかっているかどうかを判定できる場合、上記の非侵襲方法に飛躍的進歩が見られるだろう。
生体内皮膚イメージングに基づく対象の皮膚組織を検査するための方法について、米国特許出願公開第2015/0157254号明細書には、高調波発生顕微鏡検査(HGM)装置を提供し、HGM装置を使用して、対象の皮膚組織の少なくとも1つの切片画像を取得し、少なくとも1つの切片画像が、約1200nm~1330nmの範囲での波長を有し、生体内で皮膚組織をスキャンするようにHGM装置により使用される励起光からの第二次高調波発生(SHG)、第三次高調波生成(THG)またはSHGとTHGの組合せの信号により形成され、少なくとも1つの切片画像を処理することにより皮膚組織の少なくとも1つの形態学的特徴を識別し分析することを含む方法が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、非侵襲高調波発生顕微鏡検査を使用することによって、人間の皮膚の表皮内神経線維の密度を非侵襲的画像を用いて観察するための方法及び装置を提供することであり、人間の皮膚の表皮内神経線維の密度の画像を観察して、被験者の体の表皮内神経線維に対する損傷のレベルを評価し、人体が末梢神経障害等の関連の神経障害にかかっているかどうかを判定でき、末梢表皮内神経線維が人間の皮膚の表皮内の無髄神経線維である。
【0005】
本発明の別の目的は、人間の皮膚の表皮の表皮内神経線維の全セグメントまたは1つのセグメントの密度(密度値)の非侵襲的画像を用いて観察するための方法及び装置を提供することであり、本発明では、人間の皮膚の表皮内神経線維の密度を取得するための特殊な化学免疫染色技術を使用するプロセスが要求されないことによって、人体が末梢神経障害にかかっているかどうかを速く及び正確に判定する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
人間の皮膚の表皮内神経線維の密度を非侵襲的画像を用いて観察するための方法が提案され、本方法は、
表皮内神経線維構造の画像の連続信号を観察するために、被験者の皮膚の収集面積の表皮内神経線維構造の画像をキャプチャするための非線形光学顕微鏡デバイスを提供することであって、
表皮内神経線維構造の画像の連続信号は、人間の皮膚の表皮及び真皮の接合層を交差して、表皮内に伸張することによって形成された末梢表皮内神経線維の糸状または爪状の構造的信号と、表皮内だけに位置する末梢表皮内神経線維の糸状または爪状の構造的信号とを含み、末梢表皮内神経線維は人間の皮膚の表皮内の無髄神経線維であり、そして、非線形光学顕微鏡デバイスは、パルス状レーザーを伴うレーザー光を放射するためのレーザー光源と、画像信号を処理するための画像処理要素とを含む、提供することと、
画像処理要素を使用することによって、レーザー光を、被験者の皮膚の収集面積の表皮内神経線維に集束させ、少なくとも3点を有し、連続する長さを伴う表皮内神経線維構造の画像の連続信号を取得することであって、
表皮内神経線維構造の画像の連続信号は、レーザー光によって励起された後に発生した第3高調波発生非線形光信号であり、表皮内神経線維構造の画像の連続信号のそれぞれの信号点の大きさは200nm以上であり、3次元空間内における一方の信号点から別の信号点までの直線距離は0~7.5μmの範囲にわたり、そして、少なくとも3点によって一緒に接続された連続信号は糸状表皮内神経線維構造の信号セグメントを構成し、糸状表皮内神経線維構造の信号セグメントは、表皮内だけに存在する信号セグメントと、皮膚の表皮及び真皮の接合層を伸張しながら交差し、表皮内に存在する他の信号セグメントとを含み、糸状表皮内神経線維構造の信号セグメントと、表皮及び真皮の接合層との間の最短距離は20μm未満であり、それによって、複数の神経線維を構成する、取得することと、
被験者の皮膚の収集面積内の表皮内神経線維の合計の複数の神経線維の総数を計算して、総数を、キャプチャされた画像の全収集面積(mm2)で割り、被験者の皮膚の表皮内神経線維の密度を取得することと、
被験者の皮膚の表皮内神経線維に対する損傷レベルを評価して、末梢神経障害等の関連の神経障害にかかっているかどうかを判定すること、すなわち、表皮内神経線維の損傷が重度になるにつれて、密度が低くなるかどうかを判定することと、を含む。
【0007】
人間の皮膚の表皮内神経線維の密度を非侵襲的画像を用いて観察するための装置が提起され、本装置は、
表皮内神経線維構造の画像の連続信号を観察するために、被験者の皮膚の収集面積の表皮内神経線維構造の画像をキャプチャするための非線形光学顕微鏡デバイスであって、
表皮内神経線維構造の画像の連続信号は、人間の皮膚の表皮及び真皮の接合層を交差して、表皮内に伸張することによって形成された末梢表皮内神経線維の糸状または爪状の構造的信号と、表皮内だけに位置する末梢表皮内神経線維の糸状または爪状の構造的信号とを含み、末梢表皮内神経線維は人間の皮膚の表皮内の無髄神経線維であり、そして、非線形光学顕微鏡デバイスは、パルス状レーザーを伴うレーザー光を放射するためのレーザー光源と、画像信号を処理するための画像処理要素とを含み、
画像処理要素を使用することによって、レーザー光を、被験者の皮膚の収集面積の表皮内神経線維に集束させ、少なくとも3点を有し、連続する長さを伴う表皮内神経線維構造の画像の連続信号を取得し、表皮内神経線維構造の画像の連続信号は、レーザー光によって励起された後に発生した第3高調波発生非線形光信号であり、表皮内神経線維構造の画像の連続信号のそれぞれの信号点の大きさは200nm以上であり、3次元空間内における一方の信号点から別の信号点までの直線距離は0~7.5μmの範囲にわたり、そして、少なくとも3点によって一緒に接続された連続信号は糸状表皮内神経線維構造の信号セグメントを構成し、糸状表皮内神経線維構造の信号セグメントは、表皮内だけに存在する信号セグメントと、皮膚の表皮及び真皮の接合層を伸張しながら交差し、表皮内に存在する他の信号セグメントとを含み、糸状表皮内神経線維構造の信号セグメントと、表皮及び真皮の接合層との間の最短距離は20μm未満であり、それによって、複数の神経線維を構成する、非線形光学顕微鏡デバイスと、
被験者の皮膚の収集面積内の表皮内神経線維の合計の複数の神経線維の総数を計算して、総数を、キャプチャされた画像の全収集面積(mm2)で割り、被験者の皮膚の表皮内神経線維の密度を取得するための計算要素と、
被験者の皮膚の表皮内神経線維に対する損傷レベルを評価して、末梢神経障害等の関連の神経障害にかかっているかどうかを判定するための、すなわち、表皮内神経線維の損傷が重度になるにつれて、密度が低くなるかどうかを判定するための評価及び判断要素と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に従って、人間の皮膚の表皮内神経線維の密度を非侵襲的画像を用いて観察するための方法のフローチャートを示す。
【
図2】本発明に従って、人間の皮膚の表皮内神経線維の密度を非侵襲的画像を用いて観察するための装置のブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に示されるように、本発明に従って、人間の皮膚の表皮内神経線維の密度を非侵襲的画像を用いて観察するための方法100は、
表皮内神経線維構造の画像の連続信号を観察するために、被験者の皮膚の収集面積の表皮内神経線維構造の画像をキャプチャするための非線形光学顕微鏡デバイスを提供すること110であって、
表皮内神経線維構造の画像の連続信号は、人間の皮膚の表皮及び真皮の接合層を交差して、表皮内に伸張することによって形成された末梢表皮内神経線維の糸状または爪状の構造的信号と、表皮内だけに位置する末梢表皮内神経線維の糸状または爪状の構造的信号とを含み、末梢表皮内神経線維は人間の皮膚の表皮内の無髄神経線維であり、そして、非線形光学顕微鏡デバイスは、パルス状レーザーを伴うレーザー光を放射するためのレーザー光源と、画像信号を処理するための画像処理要素とを含む、提供すること110と、
画像処理要素を使用することによって、レーザー光を、被験者の皮膚の収集面積の表皮内神経線維に集束させ、少なくとも3点を有し、連続する長さを伴う表皮内神経線維構造の画像の連続信号を取得すること120であって、
表皮内神経線維構造の画像の連続信号は、レーザー光によって励起された後に発生した第3高調波発生非線形光信号であり、表皮内神経線維構造の画像の連続信号のそれぞれの信号点の大きさは200nm以上であり、3次元空間内における一方の信号点から別の信号点までの直線距離は0~7.5μmの範囲にわたり、そして、少なくとも3点によって一緒に接続された連続信号は糸状表皮内神経線維構造の信号セグメントを構成し、糸状表皮内神経線維構造の信号セグメントは、表皮内だけに存在する信号セグメントと、皮膚の表皮及び真皮の接合層を伸張しながら交差し、表皮内に存在する他の信号セグメントとを含み、糸状表皮内神経線維構造の信号セグメントと、表皮及び真皮の接合層との間の最短距離は20μm未満であり、それによって、複数の神経線維を構成する、取得すること120と、
被験者の皮膚の収集面積内の表皮内神経線維の合計の複数の神経線維の総数を計算して、総数を、キャプチャされた画像の全収集面積(mm
2)で割り、被験者の皮膚の表皮内神経線維の密度を取得すること130と、
被験者の皮膚の表皮内神経線維に対する損傷レベルを評価して、末梢神経障害等の関連の神経障害にかかっているかどうかを判定すること、すなわち、表皮内神経線維の損傷が重度になるにつれて、密度が低くなるかどうかを判定すること140と、
を含む。
【0010】
本発明の人間の皮膚の表皮内神経線維の密度を非侵襲的画像を用いて観察するための方法100では、表皮内神経線維の密度の正常値は50~60(神経線維数/mm2)であり、表皮内神経線維は、点状構造を有するC神経線維またはAデルタ神経線維である。
【0011】
本発明の人間の皮膚の表皮内神経線維の密度を非侵襲的画像を用いて観察するための方法100では、非線形光学顕微鏡デバイスは、第3高調波発生顕微鏡デバイス(THG)、第3高調波発生顕微鏡デバイス(THG)を加えた第2高調波発生顕微鏡デバイス(SHG)、またはそれらの組み合わせであり、第3高調波発生顕微鏡デバイス(THG)の基準値は、NA≧0.75であり、中心波長:1065~1450nm、パルス幅:<10ps、及び光信号の逆回収である。
【0012】
本発明の人間の皮膚の表皮内神経線維の密度を非侵襲的画像を用いて観察するための方法100に従って、各神経線維は同じ方向もしくは複数の方向に沿って伸張する、または、各神経線維は、伸張しないで同じ表皮内で連続する、もしくは伸張して異なる皮膚層内で連続する、または、各神経線維が異なる皮膚層内で伸張し、神経線維は点状信号及び点状信号の拡張もしくは点状信号及び線形信号の拡張である、または、各神経線維は、皮膚内で細胞シグナルをなくすためにサークルとして配置されない。
【0013】
本発明の人間の皮膚の表皮内神経線維の密度を非侵襲的画像を用いて観察するための方法100では、非線形光学顕微鏡デバイスは、表皮内神経線維構造の画像を観察するために、第3高調波発生顕微鏡デバイス(THG)を加えた第2高調波発生顕微鏡デバイス(SHG)であり、表皮内神経線維が水平方向(レーザー光の前進方向に垂直な方向)に伸張する場合、数値シミュレーションによって分かるように、高強度の第3高調波発生を生じさせるために非線形光学顕微鏡デバイスを使用することにより、表皮内神経線維信号は、線形で及び連続するように同じ皮膚層内で観察され、表皮内神経線維が垂直方向(レーザー光の前進方向に平行な方向)に伸張する場合、数値シミュレーションによって分かるように、表皮内神経線維が単純な円筒状細線である場合、第3高調波発生の強度は極小であり、表皮内神経線維は、高強度の第3高調波発生を生じさせるために静脈瘤の構造に一致する必要があり、その結果、表皮内神経線維信号は、点状拡張及び点状拡張、または点状拡張及び線形拡張として、異なる皮膚層内で観察される。
【0014】
さらに、本発明に従って、人間の皮膚の表皮内神経線維の密度を非侵襲的画像を用いて観察するための方法100は、さらに、各神経線維の画像及び/または密度値を表示するための表示ステップ150を含む。
【0015】
さらにまた、本発明に従って、人間の皮膚の表皮内神経線維の密度を非侵襲的画像を用いて観察するための方法100は、補正ステップ160は以下のように提供される。表皮内神経線維の画像を観察するとき、画像の視感度を反映させることが可能である表皮の基底層の細胞数がさらに観察され、基底層の細胞数を使用して、表皮内神経線維の全セグメントの密度及び表皮内神経線維の密度を補正する。
【0016】
本発明の方法に従って、密度の観察及び計算の例は下記に与えられる。
実施例1:
本発明の非侵襲光学顕微鏡デバイスによって撮影された0.5×0.5mm2のサイズの単一の写真(画像)に関して、少なくとも皮膚の表皮内神経線維の密度を計算するようにキャプチャするために、1mm2よりも大きい合計サイズが要求され、ひいては、少なくとも4つの写真が必要である。
番号1、2、3、及び4の写真が撮影され、それらの写真の合計サイズが1mm2であると仮定する。
写真1について、計算された神経線維数は12である。
写真2について、計算された神経線維数は15である。
写真3について、計算された神経線維数は18である。
写真4について、計算された神経線維数は10である。
表皮内神経線維の密度は、12+15+18+10=55繊維/mm2である。
実施例2:
写真1、2、3、4、5、及び6が撮影され、それらの写真の合計サイズが1mm2よりも大きいと仮定する。
写真1について、計算された神経線維数は12である。
写真2について、計算された神経線維数は15である。
写真3について、計算された神経線維数は18である。
写真4について、計算された神経線維数は10である。
写真5について、計算された神経線維数は10である。
写真6について、計算された神経線維数は11である。
神経線維の総数は12+15+18+10+10+11=76繊維であり、その総数を0.5×0.5×6=1.5mm2の合計サイズで割る。次に、76/1.5=50.66繊維/mm2の表皮内神経線維の密度を取得する。末梢神経障害にかかっている被験者の密度の検査によって、密度は26.35繊維/mm2である一方、検査を受けた正常な人の密度は55.26繊維/mm2である。したがって、表皮内神経線維の密度が低くなるにつれて、表皮内の損傷が重度になる。
【0017】
図2に示されるように、本発明に従って、人間の皮膚の表皮内神経線維の密度を非侵襲的画像を用いて観察するための装置300は、
表皮内神経線維構造の画像の連続信号を観察するために、被験者の皮膚の収集面積の表皮内神経線維構造の画像をキャプチャするための非線形光学顕微鏡デバイス310であって、
表皮内神経線維構造の画像の連続信号は、人間の皮膚の表皮及び真皮の接合層を交差して、表皮内に伸張することによって形成された末梢表皮内神経線維の糸状または爪状の構造的信号と、表皮内だけに位置する末梢表皮内神経線維の糸状または爪状の構造的信号とを含み、末梢表皮内神経線維は人間の皮膚の表皮内の無髄神経線維であり、そして、非線形光学顕微鏡デバイスは、パルス状レーザーを伴うレーザー光を放射するためのレーザー光源320と、画像信号を処理するための画像処理要素330とを含み、画像処理要素を使用することによって、レーザー光を、被験者の皮膚の収集面積の表皮内神経線維に集束させ、少なくとも3点を有し、連続する長さを伴う表皮内神経線維構造の画像の連続信号を取得し、表皮内神経線維構造の画像の連続信号は、レーザー光によって励起された後に発生した第3高調波発生非線形光信号であり、表皮内神経線維構造の画像の連続信号のそれぞれの信号点の大きさは200nm以上であり、3次元空間内における一方の信号点から別の信号点までの直線距離は0~7.5μmの範囲にわたり、そして、少なくとも3点によって一緒に接続された連続信号は糸状表皮内神経線維構造の信号セグメントを構成し、糸状表皮内神経線維構造の信号セグメントは、表皮内だけに存在する信号セグメントと、皮膚の表皮及び真皮の接合層を伸張しながら交差し、表皮内に存在する他の信号セグメントとを含み、糸状表皮内神経線維構造の信号セグメントと、表皮及び真皮の接合層との間の最短距離は20μm未満であり、それによって、複数の神経線維を構成する、非線形光学顕微鏡デバイス310と、
被験者の皮膚の収集面積内の表皮内神経線維の合計の複数の神経線維の総数を計算して、総数を、キャプチャされた画像の全収集面積(mm
2)で割り、被験者の皮膚の表皮内神経線維の密度を取得するための計算要素340と、
被験者の皮膚の表皮内神経線維に対する損傷レベルを評価して、末梢神経障害等の関連の神経障害にかかっているかどうかを判定するための、すなわち、表皮内神経線維の損傷が重度になるにつれて、密度が低くなるかどうかを判定するための評価及び判断要素350と、を含む。
【0018】
本発明では、人間の皮膚の表皮内神経線維の密度を非侵襲的画像を用いて観察するための装置300は、さらに、各神経線維の画像及び/または密度を表示するための表示要素360を含む。
【0019】
本発明では、表皮内神経線維の密度の正常値は50~60(神経線維数/mm2)であり、表皮内神経線維は、点状構造を有するC神経線維またはAデルタ神経線維である。
【0020】
さらに、本発明の人間の皮膚の表皮内神経線維の密度を非侵襲的画像を用いて観察するための装置300では、非線形光学顕微鏡デバイスは、第3高調波発生顕微鏡デバイス(THG)、第3高調波発生顕微鏡デバイス(THG)を加えた第2高調波発生顕微鏡デバイス(SHG)、またはそれらの組み合わせであり、第3高調波発生顕微鏡デバイス(THG)の基準値は、NA≧0.75であり、中心波長:1065~1450nm、パルス幅:<10ps、及び光信号の逆回収である。
【0021】
本発明の人間の皮膚の表皮内神経線維の密度を非侵襲的画像を用いて観察するための装置300に従って、各神経線維は同じ方向もしくは複数の方向に沿って伸張する、または、各神経線維は、伸張しないで同じ表皮内で連続する、もしくは伸張して異なる皮膚層内で連続する、または、各神経線維が異なる皮膚層内で伸張するとき、神経線維は、点状信号及び点状信号の拡張、もしくは点状信号及び線形信号の拡張である、または、各神経線維は、皮膚内で細胞シグナルをなくすためにサークルとして配置されない。
【0022】
さらに、本発明の人間の皮膚の表皮内神経線維の密度を非侵襲的画像を用いて観察するための装置300では、非線形光学顕微鏡デバイスは、表皮内神経線維構造の画像を観察するために、第3高調波発生顕微鏡デバイス(THG)を加えた第2高調波発生顕微鏡デバイス(SHG)であり、表皮内神経線維が水平方向(レーザー光の前進方向に垂直な方向)に伸張する場合、数値シミュレーションによって分かるように、高強度の第3高調波発生を生じさせるために非線形光学顕微鏡デバイスを使用することにより、表皮内神経線維信号は、線形で及び連続するように同じ皮膚層内で観察され、表皮内神経線維が垂直方向(レーザー光の前進方向に平行な方向)に伸張する場合、数値シミュレーションによって分かるように、表皮内神経線維が単純な円筒状細線である場合、第3高調波発生の強度は極小であり、表皮内神経線維は、高強度の第3高調波発生を生じさせるために静脈瘤の構造に一致する必要があり、その結果、表皮内神経線維信号は、点状拡張及び点状拡張、または点状拡張及び線形拡張として、異なる皮膚層内で観察される。
【0023】
さらにまた、本発明の人間の皮膚の表皮内神経線維の密度を非侵襲的画像を用いて観察するための装置300は、さらに、補正要素370を含む。表皮内神経線維の画像を観察するとき、画像の視感度を反映させることが可能である表皮の基底層の細胞数がさらに観察され、補正要素は、さらに、基底層の細胞数を使用することによって、表皮内神経線維の密度を補正するために提供される。
【0024】
本発明の装置を使用して表皮内の密度を計算するための検査データは、提起されるような上記の方法で提示される。
【符号の説明】
【0025】
100 人間の皮膚の表皮内神経線維の密度を非侵襲的画像を用いて観察するための方法
110 表皮内神経線維構造の画像の連続信号を観察するために、被験者の皮膚の表皮内神経線維構造の画像をキャプチャするための非侵襲的非線形光学顕微鏡デバイスを提供する
120 非線形光学顕微鏡デバイスのレーザー光源によって放射されたレーザー光を、被験者の皮膚の収集面積の表皮内神経線維に集束させ、少なくとも3点の長さを有する表皮内神経線維構造の画像の連続信号を取得し、一緒に接続された連続信号は複数の直線繊維を構成する
130 被験者の皮膚の収集面積内の表皮内神経線維の合計の複数の神経線維の総数を計算して、総数を、キャプチャされた画像の全収集面積(mm2)で割り、被験者の皮膚の表皮内神経線維の密度を取得する
140 被験者の皮膚の表皮内神経線維に対する損傷レベルを評価して、末梢神経障害等の関連の神経障害にかかっているかどうかを判定すること、すなわち、表皮内神経線維の損傷が重度になるにつれて、密度が低くなるかどうかを判定する
150 各神経線維の画像及び/または密度を表示する
170 非線形光学顕微鏡デバイスを使用することによって同時に観察された表皮の基底層の細胞数を使用して、表皮内神経線維の全セグメントの密度(値)及び表皮内神経線維の密度を補正する
300 人間の皮膚の表皮内神経線維の密度を非侵襲的画像を用いて観察するための装置
310 非線形光学顕微鏡デバイス
320 レーザー光源
330 画像処理要素
340 計算要素
350 評価及び判断要素
360 表示要素
370 補正要素