(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】飛行制御システム
(51)【国際特許分類】
G08G 5/04 20060101AFI20240930BHJP
【FI】
G08G5/04 A
(21)【出願番号】P 2022513716
(86)(22)【出願日】2020-04-06
(86)【国際出願番号】 JP2020015525
(87)【国際公開番号】W WO2021205510
(87)【国際公開日】2021-10-14
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】515019537
【氏名又は名称】株式会社ナイルワークス
(74)【代理人】
【識別番号】100103872
【氏名又は名称】粕川 敏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100139778
【氏名又は名称】栗原 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100149456
【氏名又は名称】清水 喜幹
(74)【代理人】
【識別番号】100194238
【氏名又は名称】狩生 咲
(72)【発明者】
【氏名】和氣 千大
(72)【発明者】
【氏名】加藤 宏記
(72)【発明者】
【氏名】柳下 洋
【審査官】武内 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-222254(JP,A)
【文献】特開2017-182638(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象エリアの上空の第1の飛行ルートと前記第1の飛行ルート上の複数の位置の目標通過時刻を示す第1の飛行計画に従い第1の無人航空機が飛行し、対象エリアの上空の第2の飛行ルートと前記第2の飛行ルート上の複数の位置の目標通過時刻を示す第2の飛行計画に従い第2の無人航空機が飛行しているときに、前記第1の無人航空機の飛行位置と前記第2の無人航空機の飛行位置に基づき、前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機が
閾値より近づくと推定される場合、前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機の属性に基づき前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機のいずれかを選択し、前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機が前記閾値以上の距離となるように、前記第1の飛行計画と前記第2の飛行計画のうち選択した無人航空機の飛行計画を変更する飛行計画変更手段
を備え、
前記飛行計画変更手段は、前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機が前記閾値より近づくと推定される場合、前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機が前記閾値以上の距離となるように、前記第1の飛行計画と前記第2の飛行計画のうち推定される飛行完了時刻が早い方を変更する
飛行制御システム。
【請求項2】
対象エリアの上空の第1の飛行ルートと前記第1の飛行ルート上の複数の位置の目標通過時刻を示す第1の飛行計画に従い第1の無人航空機が飛行し、対象エリアの上空の第2の飛行ルートと前記第2の飛行ルート上の複数の位置の目標通過時刻を示す第2の飛行計画に従い第2の無人航空機が飛行しているときに、前記第1の無人航空機の飛行位置と前記第2の無人航空機の飛行位置に基づき、前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機が
閾値より近づくと推定される場合、前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機の属性に基づき前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機のいずれかを選択し、前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機が前記閾値以上の距離となるように、前記第1の飛行計画と前記第2の飛行計画のうち選択した無人航空機の飛行計画を変更する飛行計画変更手段
を備え、
前記飛行計画変更手段は、前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機が前記閾値より近づくと推定される場合、前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機が前記閾値以上の距離となるように、前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機のうち単位距離の飛行に要するエネルギー量が少ない方の飛行計画を変更する
飛行制御システム。
【請求項3】
対象エリアの上空の第1の飛行ルートと前記第1の飛行ルート上の複数の位置の目標通過時刻を示す第1の飛行計画に従い第1の無人航空機が飛行し、対象エリアの上空の第2の飛行ルートと前記第2の飛行ルート上の複数の位置の目標通過時刻を示す第2の飛行計画に従い第2の無人航空機が飛行しているときに、前記第1の無人航空機の飛行位置と前記第2の無人航空機の飛行位置に基づき、前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機が
閾値より近づくと推定される場合、前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機の属性に基づき前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機のいずれかを選択し、前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機が前記閾値以上の距離となるように、前記第1の飛行計画と前記第2の飛行計画のうち選択した無人航空機の飛行計画を変更する飛行計画変更手段
を備え、
前記飛行計画変更手段は、前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機が前記閾値より近づくと推定される場合、前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機が前記閾値以上の距離となるように、前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機のうち、残航距離に対する航続可能距離の比率が大きい方、もしくは残航距離に対する航続可能距離の超過量が長い方の飛行計画を変更する
飛行制御システム。
【請求項4】
対象エリアの上空の第1の飛行ルートと前記第1の飛行ルート上の複数の位置の目標通過時刻を示す第1の飛行計画に従い第1の無人航空機が飛行し、対象エリアの上空の第2の飛行ルートと前記第2の飛行ルート上の複数の位置の目標通過時刻を示す第2の飛行計画に従い第2の無人航空機が飛行しているときに、前記第1の無人航空機の飛行位置と前記第2の無人航空機の飛行位置に基づき、前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機が
閾値より近づくと推定される場合、前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機の属性に基づき前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機のいずれかを選択し、前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機が前記閾値以上の距離となるように、前記第1の飛行計画と前記第2の飛行計画のうち選択した無人航空機の飛行計画を変更する飛行計画変更手段
を備え、
前記飛行計画変更手段は、前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機が前記閾値より近づくと推定される場合、前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機が前記閾値以上の距離となるように、前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機のうち、残航時間に対する航続可能時間の比率が大きい方、もしくは残航時間に対する航続可能時間の超過量が長い方の飛行計画を変更する
飛行制御システム。
【請求項5】
対象エリアの上空の第1の飛行ルートと前記第1の飛行ルート上の複数の位置の目標通過時刻を示す第1の飛行計画に従い第1の無人航空機が飛行し、対象エリアの上空の第2の飛行ルートと前記第2の飛行ルート上の複数の位置の目標通過時刻を示す第2の飛行計画に従い第2の無人航空機が飛行しているときに、前記第1の無人航空機の飛行位置と前記第2の無人航空機の飛行位置に基づき、前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機が
閾値より近づくと推定される場合、前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機の属性に基づき前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機のいずれかを選択し、前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機が前記閾値以上の距離となるように、前記第1の飛行計画と前記第2の飛行計画のうち選択した無人航空機の飛行計画を変更する飛行計画変更手段
を備え、
前記飛行計画変更手段は、前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機が前記閾値より近づくと推定される場合、前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機が前記閾値以上の距離となるように、前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機のうち、残航の飛行に要するエネルギー量に対する残エネルギー量の比率が大きい方、もしくは残航の飛行に要するエネルギー量に対する残エネルギー量の超過量が多い方の飛行計画を変更する
飛行制御システム。
【請求項6】
対象エリアの上空の第1の飛行ルートと前記第1の飛行ルート上の複数の位置の目標通過時刻を示す第1の飛行計画に従い第1の無人航空機が飛行し、対象エリアの上空の第2の飛行ルートと前記第2の飛行ルート上の複数の位置の目標通過時刻を示す第2の飛行計画に従い第2の無人航空機が飛行しているときに、前記第1の無人航空機の飛行位置と前記第2の無人航空機の飛行位置に基づき、前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機が
閾値より近づくと推定される場合、前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機の属性に基づき前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機のいずれかを選択し、前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機が前記閾値以上の距離となるように、前記第1の飛行計画と前記第2の飛行計画のうち選択した無人航空機の飛行計画を変更する飛行計画変更手段
を備え、
前記飛行計画変更手段は、前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機が前記閾値より近づくと推定され、前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機のうち一方が飛行完了前にエネルギーの補充を要し他方が飛行完了前にエネルギーの補充を要さないと推定される場合、エネルギーの補充を要すると推定される方の飛行計画を変更する
飛行制御システム。
【請求項7】
対象エリアの上空の第1の飛行ルートと前記第1の飛行ルート上の複数の位置の目標通過時刻を示す第1の飛行計画に従い第1の無人航空機が飛行し、対象エリアの上空の第2の飛行ルートと前記第2の飛行ルート上の複数の位置の目標通過時刻を示す第2の飛行計画に従い第2の無人航空機が飛行しているときに、前記第1の無人航空機の飛行位置と前記第2の無人航空機の飛行位置に基づき、前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機が
閾値より近づくと推定される場合、前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機の属性に基づき前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機のいずれかを選択し、前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機が前記閾値以上の距離となるように、前記第1の飛行計画と前記第2の飛行計画のうち選択した無人航空機の飛行計画を変更する飛行計画変更手段
を備え、
前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機は上空から前記対象エリアに薬剤を散布し、
前記飛行計画変更手段は、前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機が前記閾値より近づくと推定される場合、前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機が前記閾値以上の距離となるように、前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機のうち薬剤の残量が少ない方の飛行計画を変更する
飛行制御システム。
【請求項8】
対象エリアの上空の第1の飛行ルートと前記第1の飛行ルート上の複数の位置の目標通過時刻を示す第1の飛行計画に従い第1の無人航空機が飛行し、対象エリアの上空の第2の飛行ルートと前記第2の飛行ルート上の複数の位置の目標通過時刻を示す第2の飛行計画に従い第2の無人航空機が飛行しているときに、前記第1の無人航空機の飛行位置と前記第2の無人航空機の飛行位置に基づき、前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機が
閾値より近づくと推定される場合、前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機の属性に基づき前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機のいずれかを選択し、前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機が前記閾値以上の距離となるように、前記第1の飛行計画と前記第2の飛行計画のうち選択した無人航空機の飛行計画を変更する飛行計画変更手段
を備え、
前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機は上空から前記対象エリアに薬剤を散布し、
前記飛行計画変更手段は、前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機が前記閾値より近づくと推定される場合、前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機が前記閾値以上の距離となるように、前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機のうち薬剤の散布のための残航が短い方の飛行計画を変更する
飛行制御システム。
【請求項9】
対象エリアの上空の第1の飛行ルートと前記第1の飛行ルート上の複数の位置の目標通過時刻を示す第1の飛行計画に従い第1の無人航空機が飛行し、対象エリアの上空の第2の飛行ルートと前記第2の飛行ルート上の複数の位置の目標通過時刻を示す第2の飛行計画に従い第2の無人航空機が飛行しているときに、前記第1の無人航空機の飛行位置と前記第2の無人航空機の飛行位置に基づき、前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機が
閾値より近づくと推定される場合、前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機の属性に基づき前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機のいずれかを選択し、前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機が前記閾値以上の距離となるように、前記第1の飛行計画と前記第2の飛行計画のうち選択した無人航空機の飛行計画を変更する飛行計画変更手段
を備え、
前記飛行計画変更手段は、前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機が前記閾値より近づくと推定される場合、前記閾値よりも近づくと推定された地点において前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機のいずれか一方が他方の右側もしくは左側に迂回する飛行ルートであって、前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機の少なくとも一方が飛行済のエリア内の飛行ルートである迂回ルートを含むように、前記第1の飛行計画と前記第2の飛行計画の少なくとも一方を変更する
飛行制御システム。
【請求項10】
前記飛行計画変更手段は、前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機が前記閾値より近づくと推定される場合、前記閾値よりも近づくと推定された地点において前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機のいずれか一方が他方の上側もしくは下側に迂回するように前記第1の飛行計画と前記第2の飛行計画の少なくとも一方を変更する
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の飛行制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ドローン等の無人航空機を飛行させ、無人航空機に各種の作業を実行させる飛行制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ドローンと呼ばれる小型ヘリコプター(マルチコプター)の応用が進んでいる。その重要な応用分野の一つとして農地(圃場)等の対象エリアへの農薬や液肥などの薬剤散布が挙げられる。特に比較的農地面積が小さい日本においては、有人の飛行機やヘリコプターではなくドローンの使用が適しているケースが多い。
【0003】
特許文献1には、ドローンを用いて農地を空撮し、得られた画像に基づき農薬を散布すべき領域及び量を特定し、特定した領域に特定した量の農薬を効率的に散布するための飛行ルート等を計画し、計画に従いドローンによる農薬の散布を行う農薬散布方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
農作物が作付けされている農地(圃場)を複数の区画に区分して、各区画に1台ずつ、ドローンを割り当てて、各ドローンに割り当てられた区画の農作物の上を飛行しながら農薬や肥料等の薬剤の散布を行わせる場合がある。この場合、例えば1台のドローンが全区画に薬剤の散布を行うよりも短時間で作業を完了することができる。
【0006】
上記のような状況においては、複数台のドローンの各々が割り当てられた区画内において飛行している間は互いに衝突するおそれはない。しかし、例えば複数のドローンが近いタイミングで作業を完了して同じ基地に戻ろうとすると、それらのドローンが近接しすぎて接触する危険がある。また、複数のドローンが同一もしくは近接する圃場を飛行する場合にも、それらのドローンが近接しすぎて接触する危険がある。
【0007】
なお、2台のドローンが近接しないような飛行計画を作成しても、風などの影響を受けて、必ずしも各ドローンの実際の飛行が飛行計画通りにはならない。従って、飛行計画のみによっては、2台のドローンが近接しすぎて接触する危険を排除できない。
【0008】
この発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、2以上の無人航空機が個別の飛行ルートに従い飛行する際に、それらの無人航空機の衝突のリスクを低減する手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明による飛行制御システムは、対象エリアの上空の第1の飛行ルートと前記第1の飛行ルート上の複数の位置の目標通過時刻を示す第1の飛行計画に従い第1の無人航空機が飛行し、対象エリアの上空の第2の飛行ルートと前記第2の飛行ルート上の複数の位置の目標通過時刻を示す第2の飛行計画に従い第2の無人航空機が飛行しているときに、前記第1の無人航空機の飛行位置と前記第2の無人航空機の飛行位置に基づき、前記第1の無人航空機と前記第2の無人航空機が所定の閾値以上の距離となるように前記第1の飛行計画と前記第2の飛行計画の少なくとも一方を変更する飛行計画変更手段を備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】この発明の一実施形態である飛行制御システムの構成を示す図である。
【
図2】同実施形態におけるドローンの飛行ルートを例示する図である。
【
図4】同実施形態におけるドローンの飛行ルートを例示する図である。
【
図5】同実施形態におけるドローンの構成を示す図である。
【
図10】同ドローンの構成を示すブロック図である。
【
図11】同ドローンにおけるデータ処理装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図12】同実施形態におけるサーバの構成を示すブロック図である。
【
図13】同サーバのCPUの機能構成を示すブロック図である。
【
図14】同実施形態において実行される飛行計画を変更するための処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図を参照しながら、この発明を実施するための形態について説明する。図はすべて例示である。以下の詳細な説明では、説明のために、開示された実施形態の完全な理解を促すために、ある特定の詳細について述べられている。しかしながら、実施形態は、これらの特定の詳細に限られない。また、図面を単純化するために、周知の構造および装置については概略的に示されている。
【0012】
図1はこの発明の一実施形態である飛行制御システムの構成を示す図である。圃場403(対象エリアの一例)は、農作物が作付けされる田圃や畑等の農地である。基地局404は、Wi-Fi通信の親機としての機能と、RTK-GPS基地局としての機能を併有している。ユーザ端末401は、ユーザである農業従事者402により操作される端末であり、基地局404及びネットワークを介してドローン100a~100d(第1の無人航空機、第2の無人航空機の一例)またはサーバ405と通信を行う。このユーザ端末401は、コンピュータ・プログラムを実行する一般的なタブレット端末等の携帯情報機器によって実現されてよい。
【0013】
ドローン100a、100b、100c及び100dは、各々自律飛行機能を備えた無人航空機である。ドローン100a、100b、100c及び100dは、各々に与えられた個別的な飛行計画に従って、圃場403の外部にある発着地点406から離陸し、圃場403内の各々の担当区画を飛行しつつの薬剤散布等の作業を行い、作業終了後あるいは、充電等が必要になった時に発着地点406に帰還する。
【0014】
サーバ405は、典型的にはクラウドサービス上で運営されているコンピュータ群と関連ソフトウェアである。このサーバ405は、ドローン100a、100b、100c及び100dの各々の飛行ルート(第1の飛行ルート、第2の飛行ルートの一例)及び当該飛行ルートに沿った飛行の態様を示す個別的な飛行計画(第1の飛行計画、第2の飛行計画の一例)を各々決定し、ドローン100a、100b、100c及び100dに対し、各々の飛行計画を与える機能を有する。ここで、サーバ405により決定される飛行計画の例を説明する。
【0015】
図2は、4台のドローンの各々に異なる担当区画が割り当てられる場合のそれら4台の飛行ルートを例示している。まず、圃場493が4つの区画A1、A2、A3及びA4に区分されている。そして、区画A1での作業をドローン100aが担当し、区画A2での作業をドローン100bが担当し、区画A3での作業をドローン100cが担当し、区画A4での作業をドローン100dが担当する。4台のドローンは、発着地点406から、例えばドローン100a、ドローン100b、ドローン100c、ドローン100dといった順序で、所定の時間間隔で順次離陸して、担当の区画へと向かい、作業を行う。
【0016】
そして、
図2の例による場合、ドローン100aは区画A1の飛行ルートR1を飛行し、ドローン100bは区画A2の飛行ルートR2を飛行し、ドローン100cは区画A3の飛行ルートR3を飛行し、ドローン100dは区画A4の飛行ルートR4を飛行する。サーバ405により生成される飛行計画は、これらの飛行ルートを示す情報を含む。
【0017】
図3にはドローン100aの飛行ルートが具体的に例示されている。この例において、ドローン100aは発着地点406からルートR1_1を飛行して区画A1に向かい、飛行ルートR1の前半部分であるルートR1aを飛行しながら薬剤を散布し、薬剤の補給及びバッテリの交換のためにルートR1_2を飛行して発着地点406に戻る。そして、薬剤の補給及びバッテリの交換を終えたドローン100aは、同じルートR1_2を飛行して元の地点に戻り、飛行ルートR1の後半部分であるルートR1bを飛行しながら薬剤を散布し、作業を終えると、ルートR1_3を飛行して発着地点406に戻る。
【0018】
このようにドローン100aが発着地点406への一時帰還のための往復や最終帰還を行う際に、区画A3内でドローン100cが作業中の可能性がある。この場合、区画A3を横断するドローン100aと、区画A3内で作業を行っているドローン100cが接触する危険性がある。
【0019】
このように、複数のドローンの各々に異なる担当区画を割り当てる場合であっても、近接シーンが発生する可能性がある。
【0020】
また、上記の
図2及び
図3に例示のように、複数のドローンの各々に異なる担当区画を割り当てる方法によると、各々のドローンの飛行ルートに含まれるターンの数が多くなり、速度を落とさず飛行できる直線区間の長さが短くなる。そのため、ドローンの飛行時間が長くなり効率が悪くなる、という課題がある。また、複数のドローン間で、発着地点から各区画の作業開始地点及び作業終了地点までの距離に差が生じるため、複数のドローン間で飛行距離が異なり、最も飛行距離が長いドローンの作業が終了するまで全体の作業が完了しない、という課題がある。
【0021】
上記の問題を回避するために、あるドローンの飛行ルートの間を縫うように他のドローンの飛行ルートを配置して、同一区画内での作業を複数のドローンで分担する方法が考えられる。
図4は、そのような方法を採用した場合の4台の飛行ルートを例示した図である。この例において、圃場493は2つの区画B1及びB2に区分されている。そして、区画B1での作業をドローン100aとドローン100bが担当し、区画B2での作業をドローン100cとドローン100dが担当する。
【0022】
ドローン100aは、区画B1において実線で示される飛行ルートを飛行する。ドローン100bは、区画B1において一点鎖線で示される飛行ルートを飛行する。ドローン100cは、区画B2において実線で示される飛行ルートを飛行する。ドローン100dは、区画B2において一点鎖線で示される飛行ルートを飛行する。
【0023】
図4に例示したような飛行ルートが用いられる場合、各ドローンが往路(
図4における下から上に向かう飛行ルート)と復路(
図4における上から下に向かう飛行ルート)の間でターンを行う部分や、各ドローンが作業を終了して発着地点406に戻る経路上の部分において、他のドローンと飛行ルートが近接してしまう。その結果、複数のドローンが近接する可能性がある。
【0024】
そこで、本実施形態において、サーバ405は、各ドローンの飛行実績に基づき近接シーンを検知し、検知した近接シーンを解消するように、いずれかのドローンの飛行計画を修正する。
【0025】
次にドローン100a、100b、100c及び100dについて説明する。この明細書において、ドローンとは、動力手段(電力、原動機等)、操縦方式(無線であるか有線であるか、および、自律飛行型であるか手動操縦型であるか等)を問わず、複数の回転翼を有する無人航空機全般を指すこととする。本実施形態において、ドローン100a、100b、100c及び100dは同じ構成を有する。従って、ドローン100a、100b、100c及び100dについては、各々を区別する必要がない場合、ドローン100と総称する。
【0026】
図5乃至
図9に示すように、回転翼101-1a、101-1b、101-2a、101-2b、101-3a、101-3b、101-4a、101-4b(ローターとも呼ばれる)は、ドローン100を飛行させるための手段であり、飛行の安定性、機体サイズ、および、バッテリ消費量のバランスを考慮し、8機(2段構成の回転翼が4セット)備えられている。
【0027】
モータ102-1a、102-1b、102-2a、102-2b、102-3a、102-3b、102-4a、102-4bは、回転翼101-1a、101-1b、101-2a、101-2b、101-3a、101-3b、101-4a、101-4bを回転させる手段(典型的には電動機だが発動機等であってもよい)であり、一つの回転翼に対して1機設けられている。モータ102は、推進器の例である。1セット内の上下の回転翼(たとえば、101-1aと101-1b)、および、それらに対応するモータ(たとえば、102-1aと102-1b)は、ドローンの飛行の安定性等のために軸が同一直線上にあり、かつ、互いに反対方向に回転する。なお、一部の回転翼101-3b、および、モータ102-3bが図示されていないが、その位置は自明であり、もし左側面図があったならば示される位置にある。
図6及び
図7に示されるように、ローターが異物と干渉しないよう設けられたプロペラガードを支えるための放射状の部材は水平ではなくやぐら状の構造である。衝突時に当該部材が回転翼の外側に座屈することを促し、ローターと干渉することを防ぐためである。
【0028】
薬剤ノズル103-1、103-2、103-3、103-4は、薬剤を下方に向けて散布するための手段であり4機備えられている。なお、本願明細書において、薬剤とは、農薬、除草剤、液肥、殺虫剤、種、および、水などの圃場に散布される液体または粉体を一般的に指すこととする。
【0029】
薬剤タンク104は散布される薬剤を保管するためのタンクであり、重量バランスの観点からドローン100の重心に近い位置でかつ重心より低い位置に設けられている。薬剤ホース105-1、105-2、105-3、105-4は、薬剤タンク104と各薬剤ノズル103-1、103-2、103-3、103-4とを接続する手段であり、硬質の素材から成り、当該薬剤ノズルを支持する役割を兼ねていてもよい。ポンプ106は、薬剤をノズルから吐出するための手段である。
【0030】
図10にドローン100の制御機能を表したブロック図を示す。データ処理装置501は、ドローン全体の制御を司る構成要素であり、具体的にはCPU、メモリ、関連ソフトウェア等を含む組み込み型コンピュータであってよい。データ処理装置501は、ESC(Electronic Speed Control)等の制御手段を介して、モータ102-1a、102-1b、102-2a、102-2b、102-3a、102-3b、104-a、104-bの回転数を制御することで、ドローン100の飛行を制御する。モータ102-1a、102-1b、102-2a、102-2b、102-3a、102-3b、104-a、104-bの実際の回転数はデータ処理装置501にフィードバックされ、正常な回転が行われているかを監視できる構成になっている。あるいは、回転翼101に光学センサ等を設けて回転翼101の回転がデータ処理装置501にフィードバックされる構成でもよい。
【0031】
データ処理装置501が使用するソフトウェアは、機能拡張・変更、問題修正等のために記憶媒体等を通じて、または、Wi-Fi通信やUSB等の通信手段を通じて書き換え可能になっている。この場合において、不正なソフトウェアによる書き換えが行われないように、暗号化、チェックサム、電子署名、ウィルスチェックソフト等による保護が行われている。また、データ処理装置501が制御に使用する計算処理の一部が、ユーザ端末401上、または、サーバ405上や他の場所に存在する別のコンピュータによって実行されてもよい。データ処理装置501は重要性が高いため、その構成要素の一部または全部が二重化されていてもよい。
【0032】
バッテリ502は、データ処理装置501、および、ドローンのその他の構成要素に電力を供給する手段であり、充電式であってもよい。バッテリ502はヒューズ、または、サーキットブレーカー等を含む電源ユニットを介してデータ処理装置501に接続されている。本実施形態におけるバッテリ502は電力供給機能に加えて、その内部状態(蓄電量、積算使用時間等)をデータ処理装置501に伝達する機能を有するスマートバッテリである。
【0033】
データ処理装置501は、Wi-Fi子機503を介して、さらに、基地局404を介してユーザ端末401及びサーバ405と通信を行うことができる。この場合に、通信には暗号化を施し、傍受、成り済まし、機器の乗っ取り等の不正行為を防止できるようにしておいてもよい。上述したように基地局404は、Wi-Fiによる通信機能と、RTK-GPS基地局としての機能も併有する。従って、RTK基地局の信号とGPS測位衛星からの信号を組み合わせることで、GPSモジュール504により、ドローン100の絶対位置を2センチメートル程度の精度で測定可能となる。GPSモジュール504は重要性が高いため、二重化・多重化されていてもよく、また、特定のGPS衛星の障害に対応するため、冗長化されたそれぞれのGPSモジュール504は別の衛星を使用するよう制御されていてもよい。
【0034】
6軸ジャイロセンサ505はドローン機体の互いに直交する3方向の加速度を測定する手段(さらに、加速度の積分により速度を計算する手段)である。6軸ジャイロセンサ505は、上述の3方向におけるドローン機体の姿勢角の変化、すなわち角速度を測定する手段である。地磁気センサ506は、地磁気の測定によりドローン機体の方向を測定する手段である。気圧センサ507は、気圧を測定する手段であり、間接的にドローンの高度も測定することもできる。レーザセンサ508は、レーザ光の反射を利用してドローン機体と地表との距離を測定する手段であり、IR(赤外線)レーザであってもよい。ソナー509は、超音波等の音波の反射を利用してドローン機体と地表との距離を測定する手段である。これらのセンサ類は、ドローンのコスト目標や性能要件に応じて取捨選択してよい。また、機体の傾きを測定するためのジャイロセンサ(角速度センサ)、風力を測定するための風力センサなどが追加されていてもよい。また、これらのセンサ類は、二重化または多重化されていてもよい。同一目的複数のセンサが存在する場合には、データ処理装置501はそのうちの一つのみを使用し、それが障害を起こした際には、代替のセンサに切り替えて使用するようにしてもよい。あるいは、複数のセンサを同時に使用し、それぞれの測定結果が一致しない場合には障害が発生したと見なすようにしてもよい。
【0035】
流量センサ510は薬剤の流量を測定するための手段であり、薬剤タンク104から薬剤ノズル103に至る経路の複数の場所に設けられている。液切れセンサ511は薬剤の量が所定の量以下になったことを検知するセンサである。
【0036】
可視光カメラ512a、第1スペクトルカメラ512b及び第2スペクトルカメラ512cは、各々農作物を撮影するためのカメラであり、農地に作付けされている農作物の状態を示す物理用を測定する測定手段として機能する。ここで、可視光カメラ512aは、農作物によって反射された太陽光の全波長帯域を撮影対象とする。また、第1スペクトルカメラ512bは、農作物によって反射された太陽光のうち赤色光、例えば680nm付近の波長帯域の成分を分光して撮影する。また、第2スペクトルカメラ512cは、農作物によって反射された太陽光のうち近赤外光、例えば780nm付近の波長帯域の成分を分光して撮影する。ドローン100では、第1スペクトルカメラ512b及び第2スペクトルカメラ512cから得られる画像に基づいて、農作物の病気への罹患に関する診断が行われる。
【0037】
障害物検知カメラ513はドローン障害物を検知するためのカメラである。スイッチ514はドローン100を使用する農業従事者402が様々な設定を行うための手段である。障害物接触センサ515はドローン100、特に、そのローターやプロペラガード部分が電線、建築物、人体、立木、鳥、または、他のドローン等の障害物に接触したことを検知するためのセンサである。カバーセンサ516は、ドローン100の操作パネルや内部保守用のカバーが開放状態であることを検知するセンサである。薬剤注入口センサ517は薬剤タンク104の注入口が開放状態であることを検知するセンサである。これらのセンサ類はドローンのコスト目標や性能要件に応じて取捨選択してよく、二重化・多重化してもよい。また、ドローン100外部の基地局404、ユーザ端末401、または、その他の場所にセンサを設けて、読み取った情報をドローンに送信してもよい。たとえば、基地局404に風力センサを設け、風力・風向に関する情報をWi-Fi通信経由でドローン100に送信するようにしてもよい。
【0038】
データ処理装置501はポンプ106に対して制御信号を送信し、薬剤吐出量の調整や薬剤吐出の停止を行う。ポンプ106の現時点の状況(たとえば、回転数等)は、データ処理装置501にフィードバックされる構成となっている。また、データ処理装置501は、Wi-Fi子機503、GPSモジュール504、地磁気センサ506、気圧センサ507、レーザセンサ508及びソナー509を利用して、ドローン100の3次元位置を測定する位置測定手段としての機能を備えている。また、データ処理装置501は、この位置測定手段により測定されるドローン100の3次元位置と、6軸ジャイロセンサ505により測定されるドローン100の姿勢に基づき、可視光カメラ512a、第1スペクトルカメラ512b及び第2スペクトルカメラ512cの各々により撮影される農作物の作付位置(又は領域)を特定する作付位置特定手段としての機能を備えている。
【0039】
LED107は、ドローンの操作者に対して、ドローンの状態を知らせるための表示手段である。表示手段は、LEDに替えて、または、それに加えて液晶ディスプレイ等の表示手段を使用してもよい。ブザー518は、音声信号によりドローンの状態(特にエラー状態)を知らせるための出力手段である。Wi-Fi子機機能519はユーザ端末401とは別に、たとえば、ソフトウェアの転送などのために外部のコンピュータ等と通信するためのオプショナルな構成要素である。Wi-Fi子機機能に替えて、または、それに加えて、赤外線通信、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)、NFC等の他の無線通信手段、または、USB接続などの有線通信手段を使用してもよい。スピーカ520は、録音した人声や合成音声等により、ドローンの状態(特にエラー状態)を知らせる出力手段である。天候状態によっては飛行中のドローン100の視覚的表示が見にくいことがあるため、そのような場合には音声による状況伝達が有効である。警告灯521はドローンの状態(特にエラー状態)を知らせるストロボライト等の表示手段である。これらの入出力手段は、ドローンのコスト目標や性能要件に応じて取捨選択してよく、二重化・多重化してもよい。
【0040】
図11は無人航空機であるドローン100のデータ処理装置501の機能構成を示すブロック図である。
図11に示すように、データ処理装置501は、CPU710と、不揮発性メモリ及び揮発性メモリからなる記憶部720とを有する。CPU710を示すボックス内には、通信処理部711と、飛行制御部712が示されている。これらはCPU710が記憶部720内のプログラムを実行することにより実現される機能である。
【0041】
ドローン100aの記憶部720には、ドローン100a用の飛行計画721が格納される。ドローン100bの記憶部720には、ドローン100b用の飛行計画721が格納される。ドローン100c、100dの記憶部720には各ドローンのための飛行計画721が格納される。この飛行計画721は、ドローン100の飛行開始前にサーバ405によって生成され、記憶部720に格納される。また、ドローン100の飛行中、飛行計画721はサーバ405によって繰り返し変更される。各ドローンの飛行計画721は、当該ドローンが飛行すべき圃場403上の飛行ルートを示す情報と、この飛行ルートに沿った複数の位置における飛行の態様を示す情報とを含む。ここで、飛行態様を示す情報は、例えば飛行ルート上の複数の位置の目標通過時刻を示す情報を含む。目標通過時刻とは、換言すれば、飛行開始後の複数の時刻におけるドローン100のいるべき位置を示す情報である。あるいは飛行態様を示す情報は、飛行ルート上の複数の位置の目標通過時刻(または、飛行開始後の複数の時刻におけるドローン100のいるべき位置を示す情報)と、飛行ルート上の複数の位置におけるドローン100の飛行速度の両方を含んでもよい。
【0042】
CPU710において、通信処理部711は、サーバ405またはユーザ端末401と通信を行うための手段である。通信処理部711は、サーバ405から記憶部720に飛行計画721をダウンロードする。飛行制御部712は、サーバ405を介してユーザ端末401から与えられる指示に応じて、記憶部720内の飛行計画721に従い、ドローン100に飛行を行わせるための制御を行う。具体的には、飛行制御部712は、飛行計画721に従ってドローン100を飛行させるためのモータ102-1a、102-1b、102-2a、102-2b、102-3a、102-3b、104-a、104-bの回転数の制御を行う。また、飛行制御部712は、飛行計画721において定められた飛行ルート上の複数の位置の中の各位置を通過するとき、その時刻、その時刻における飛行速度、薬剤の残量、バッテリ502の残量を求め、測定情報として出力する。この測定情報は通信処理部711によりサーバ405に送信される。
【0043】
図12はサーバ405の構成を示すブロック図である。なお、
図12にはサーバ405の機能を分かり易くするため、サーバ405とともに、ユーザ端末401、ドローン100a、100b、100c及び100dが示されている。
【0044】
図12に示すように、サーバ405は、全体を制御するCPU810と、プログラムやデータを記憶する記憶部820と、ユーザ端末401、ドローン100a、100b、100c及び100d等の通信相手と通信を行う通信部830とを含む。CPU810は、クラウドサービスが提供する複数のコンピュータのCPUの集合体である。また、記憶部820は、クラウドサービスが提供する複数のコンピュータが保有する記憶装置の集合体である。
【0045】
図13はCPU810の機能構成を示すブロック図である。なお、この
図13にはCPU810の機能構成を分かり易くするため、記憶部820に記憶された各種のデータがCPU810とともに示されている。
【0046】
図13において、CPU810を示すボックス内には、通信処理部811、飛行計画生成部812、実績記録部813及び飛行計画変更部814(飛行計画変更手段の一例)が示されている。これらはCPU810が記憶部820内のプログラム(図示略)を実行することにより実現される機能である。
【0047】
通信処理部811は、
図12に示すユーザ端末401、ドローン100a、100b、100c及び100d等の通信相手との通信を制御する手段である。
【0048】
飛行計画生成部812は、ドローン100a、100b、100c及び100dの飛行開始前に、記憶部820内の地図データ823を参照することにより、ドローン100a、100b、100c及び100dの各々のための飛行計画821を生成し、記憶部820内に格納する。ここで、地図データ823は、圃場403を囲む境界線上の複数の位置の緯度経度を示す情報等を含む。
【0049】
実績記録部813は、ドローン100a、100b、100c及び100dから送信される測定情報を取得し、ドローン毎にまとめ、各ドローンに対応した飛行実績822として記憶部820に蓄積する。なお、飛行実績822は各ドローンの飛行位置を示す。
【0050】
飛行計画変更部814は、所定時間間隔で、各ドローンの飛行実績822に基づいて、各ドローンの飛行計画821を変更する。また、飛行計画変更部814は、変更後の各ドローンの飛行計画821に基づいて、近接シーンの発生を検知するシミュレーションを実行し、近接シーンを検知した場合に、ドローンの衝突を回避するための飛行計画821の変更を行う。
【0051】
この飛行計画変更部814及び飛行計画生成部812は、各々の飛行計画に従い飛行する各ドローンが、所定の閾値以上の距離となるように各飛行計画を決定する決定部を構成している。
【0052】
次に本実施形態の動作を説明する。農業従事者は、ドローン100a、100b、100c及び100dに飛行を行わせる場合、それに先立って、ユーザ端末401を操作し、ドローン100a、100b、100c及び100dの各々についての飛行計画の生成をサーバ405に対して指示する。サーバ405では、この指示を通信処理部811が受信すると、飛行計画生成部812がドローン100a、100b、100c及び100dの各々のための飛行計画821を生成し、通信処理部811が各ドローン用の飛行計画821をドローン100a、100b、100c及び100dに各々送信する。これらの飛行計画821は、ドローン100a、100b、100c及び100dにおいて、飛行計画721として記憶部720に格納される。これにより、ドローン100a、100b、100c及び100dは、発着地点406から所定時間間隔を空けて順次離陸し、各々に与えられた飛行計画721に従って、圃場403の上空を飛行し、薬剤散布の作業を行う。そして、ドローン100a、100b、100c及び100dの飛行制御部712は、各々の飛行計画721に定められた飛行ルート上の複数の位置の中の各位置を通過する毎に、現在時刻、現在時刻におけるドローンの飛行速度、バッテリ502の残量、薬剤の残量を示す測定情報を生成し、この測定情報を通信処理部711によりサーバ405に送信する。サーバ405では、実績記録部813が、ドローン100a、100b、100c及び100dから受信される測定情報をドローン毎にまとめ、各ドローンに対応した飛行実績822として記憶部820内に蓄積する。
【0053】
ドローン100a、100b、100c及び100dが飛行を開始する前、各ドローン用の飛行計画821は、ドローン同士の衝突を回避するため、ドローン間の距離が常に閾値以上になるように決定される。従って、ドローン100a、100b、100c及び100dが各々に与えられた飛行計画通りに飛行した場合、ドローン同士の衝突は起こり得ない。しかしながら、風等の影響を受けたり、バッテリ交換や薬剤補給に要する時間が予定と異なったりすることで、実際の飛行が飛行計画からずれることがある。このため、ドローン100a、100b、100c及び100dが各々に与えられた飛行計画通りに飛行することは一般的に困難であり、例えば飛行ルート上のある位置を飛行計画において定められた時刻よりも後に通過し、あるいはそれよりも前に通過するということが起こる。そのような場合、ドローン100a、100b、100c及び100dが飛行計画通りの飛行を続けると、ドローン同士の衝突が発生する恐れがある。そこで、本実施形態において、サーバ405のCPU810は、ドローン100a、100b、100c及び100dの飛行開始後、十分に短い時間間隔で(例えば15秒毎)、飛行計画変更部814としての処理を実行する。
【0054】
図14は飛行計画変更部814としての処理を示すフローチャートである。まず、飛行計画変更部814は、ドローン100a、100b、100c及び100dの飛行実績822に基づいて、各ドローンの飛行計画821を変更する(ステップS1)。具体的には、ドローン100a、100b、100c及び100dの各々について、飛行計画821において定められた飛行ルート上の複数の位置における通過時刻と、飛行実績822が示す各位置における通過時刻とを比較し、各ドローンの飛行が飛行計画に比べて遅れているか進んでいるかを判定する。そして、あるドローンの飛行が飛行計画に比べて平均的に遅れている場合、その平均的な遅れ時間を求め、当該ドローンの飛行計画の飛行ルート上において、現在以降に通過する各位置の通過時刻を遅れ時間分だけ遅らせる。一方、あるドローンの飛行が飛行計画に比べて平均的に進んでいる場合、その平均的な進み時間を求め、ある時間を掛けてこの進み時間がなくなるように、当該ドローンの飛行計画の飛行ルート上において、現在以降に通過する各位置の飛行速度及び通過時刻を調整する。また、バッテリ502の残量の減る速度あるいは薬剤の残量の減る速度が通常よりも早く、飛行計画において定められた時刻よりも早く発着地点406に当該ドローンを戻す必要がある場合、当該ドローンを発着地点406に早く戻すための飛行計画の変更を行う。
【0055】
次に飛行計画変更部814は、ドローン100a、100b、100c及び100dの変更後の飛行計画821に従って、ドローン100a、100b、100c及び100dを仮想的に飛行させるシミュレーションを実行する(ステップS2)。このシミュレーションにおいて、飛行計画変更部814は、変更後の飛行計画通りに各ドローンが飛行した場合に、2台のドローン間の距離が閾値未満になる近接シーンが発生するか否かを判定する(ステップS3)。
【0056】
そして、近接シーンが発生すると判定した場合(ステップS3;Yes)、飛行計画変更部814は、ドローン同士の衝突回避のための飛行計画821の変更を実行する(ステップS4)。具体的には、互いに近接する2台のドローンの属性に基づき、それらのいずれかを選択し、選択したドローンの飛行計画821を変更する。本実施形態においては、2台のドローンの属性として飛行完了時刻が用いられるものとする。飛行完了時刻とは、飛行計画821が示す、ドローンが作業を完了し基地に到着する時刻である。飛行計画変更部814は、2台のドローンのうち飛行完了時刻が早い方を選択し、選択したドローンの飛行計画821を変更する。さらに詳述すると、近接する2台のドローン間の距離が所定の閾値以上になるように、飛行完了時刻が早い方のドローンの飛行計画821における近接地点(2台のドローンが近接する位置)に至るまでの飛行時間を長くする。もしくは、近接する2台のドローン間の距離が所定の閾値以上になるように、飛行完了時刻が遅い方のドローンの飛行計画821における近接地点(2台のドローンが近接する位置)に至るまでの飛行時間を短くする。これにより、検知された近接が解消する。
【0057】
近接地点に至るまでの飛行時間を長くする具体的な方法としては、当初の飛行計画よりも飛行速度を遅くする方法、当初の飛行計画になかったホバリングを追加する方法、ターン等の方向転換時にホバリングする時間を当初の飛行計画よりも長くする方法等のいずれが採用されてもよい。また、近接地点に至るまでの飛行時間を短くする具体的な方法としては、当初の飛行計画よりも飛行速度を速くする方法、ターン等の方向転換時にホバリングする時間を当初の飛行計画よりも短くする方法等のいずれが採用されてもよい。
【0058】
飛行計画変更部814は、ステップS4において、ある近接シーンを解消するための飛行計画821の変更を行うと、処理をステップS2に戻し、この変更後の飛行計画821を含む4つの飛行計画821に従って、4台のドローンの、先に解消した近接シーン以降の飛行をシミュレートし(ステップS2)、さらなる近接シーンがあるか否かを判定する(ステップS3)。さらなる近接シーンが検知された場合(ステップS3;Yes)、上述したものと同様の手順で、近接シーンを解消するように、いずれかの飛行計画821を変更する(ステップS4)。その後、処理を再びステップS2に戻す。
【0059】
なお、変更の際、飛行の開始から新たに発見された近接シーンまでの期間の全体においていずれかのドローンの飛行速度を遅くすると、過去に解消した近接シーンまでの期間において新たな近接シーンが生じる可能性がある。そのため、過去に解消した近接シーンまでの飛行計画(近接シーンを生じない)が変更されないように、過去に解消した近接シーンから新たに検知した未解消の近接シーンまでの期間における飛行速度を遅くするように、飛行完了時刻が早い方のドローンの飛行計画を変更する。
【0060】
このように順次、時間を進めていきながら、全ドローンが作業を完了し発着地点406に帰還するまで上記の近接シーンの解消のための飛行計画の変更を繰り返す。
【0061】
近接シーンが解消すると(ステップS3;No)、サーバ405では、通信処理部811が、ドローン100a、100b、100c及び100dに対し、各々の変更後の飛行計画821を送信する(ステップS5)。これらの変更後の飛行計画821は、ドローン100a、100b、100c及び100dにおいて、飛行計画721として記憶部720に格納される。これにより各ドローンは、変更後の飛行計画821である飛行計画721に従って飛行する。これにより、ドローン100a、100b、100c及び100dの近接が回避される。
【0062】
以上のように、本実施形態によれば、近接シーンが生じず、いずれのドローンも接触することなく飛行を完了することができる。その際、飛行完了時刻が早い方の飛行計画が変更されるため、全体の飛行完了時刻が不必要に遅くなることはない。
【0063】
[変形例]
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明は様々に変形され得る。以下にそれらの変形の例を示す。以下に示す変形例の2以上が適宜組み合わされてもよい。
【0064】
(1)上記実施形態では、複数台のドローンの近接シーンを回避するために、飛行完了時刻が早い方のドローンを選択し、そのドローンの飛行計画を変更した。これに代えて、以下のように、複数台のドローンの飛行完了時刻以外の各種の属性に基づいて、飛行計画を変更するドローンを選択してもよい。
(a)近接する2台のドローンのうち単位距離の飛行に要するエネルギー量(例えば、バッテリから供給される電力量)が少ない方の飛行計画を変更する。
(b)近接する2台のドローンのうち残航距離に対する航続可能距離の比率が大きい方の飛行計画を変更する。
(c)近接する2台のドローンのうち残航距離に対する航続可能距離の超過量が長い方の飛行計画を変更する。
(d)近接する2台のドローンのうち残航時間に対する航続可能時間の比率が大きい方の飛行計画を変更する。
(e)近接する2台のドローンのうち残航時間に対する航続可能時間の超過量が長い方の飛行計画を変更する。
(f)近接する2台のドローンのうち残航の飛行に要するエネルギー量(例えば、バッテリから供給される電力量)に対する残エネルギー量(例えば、バッテリに残っている電力量)の比率が大きい方の飛行計画を変更する。
(g)近接する2台のドローンのうち残航の飛行に要するエネルギー量(例えば、バッテリから供給される電力量)に対する残エネルギー量(例えば、バッテリに残っている電力量)の超過量が多い方の飛行計画を変更する。
(h)近接する2台のドローンのうち一方が飛行完了前にエネルギーの補充(例えば、バッテリの交換)を要し他方が飛行完了前にエネルギーの補充を要さないと推定される場合、エネルギーの補充を要すると推定される方の飛行計画を変更する。
(i)近接する2台のドローンのうち薬剤の残量が少ない方の飛行計画を変更する。
(j)近接する2台のドローンのうち薬剤の散布のための残航が短い方の飛行計画を変更する。
(k)近接する2台のうちランダムに選択されたドローンの飛行計画を変更する。
(l)近接する2台のうち識別番号が小さい(または大きい)方のドローンの飛行計画を変更する。
【0065】
また、矛盾しない限り、上記実施形態に記載の選択方法及び上記の(a)~(l)のうちの2以上が組み合わされてもよい。例えば、各属性(飛行完了時刻、単位距離の飛行に要するバッテリ消費量、バッテリ交換の要否、薬剤残量、作業完了までの残航量等)に関し、近接する2台のドローンに評点を与え、それらの評点の合計値(又は算術平均値、重み付け平均等)に基づき、飛行計画を変更するドローンを選択してもよい。
【0066】
(2)上記実施形態では、飛行完了時刻が早い(現状の飛行計画を維持すべき優先度が低い)ドローンの飛行計画を変更するにあたり、飛行速度を遅くする、という方法を採用した。しかし、他の方法により飛行計画を変更し、近接シーンを解消してもよい。例えば、近接する手前の位置でホバリングするように飛行計画を変更してもよい。また、近接シーンの前後において、飛行計画の変更を行うドローンが近接する相手のドローンを迂回するように(例えば、上下左右のいずれかに)、飛行ルートを変更してもよい。
【0067】
飛行計画の変更を行うドローンが近接する相手ドローンを右もしくは左にかわして迂回するように飛行計画を変更する場合、自己又は相手のドローンの飛行済エリアを確認し、当該飛行済エリアに迂回ルートを生成する。飛行済エリアに迂回することにより、他のドローンが飛行する可能性のあるエリアに迂回ルートを生成してしまうリスクを低減できる。また、飛行計画の変更を行うドローンが近接する相手ドローンを上もしくは下にかわして迂回するように飛行計画を変更する場合、ホバリング状態で高度を上げるか、もしくは下げ、相手ドローンが離れた後に、迂回前の高度に戻るように迂回ルートを生成する。
【0068】
(3)例えば、残航距離に対する航続可能距離の比率の大きい方のドローンの飛行計画の飛行速度を速くしてもよい。なお、航続可能距離は、ドローンのバッテリ残量を、ドローンが単位距離を飛行するために要するバッテリ消費量で除算することで求められる距離である。オリジナルの飛行計画における飛行速度が最もエネルギー効率がよい場合、飛行速度を遅くする場合と同様に、飛行速度を速くしても単位飛行距離当たりのバッテリ消費量は増加する。従って、残航距離に対するバッテリ残量に余裕がある方の無人航空機の飛行速度を速めることで、不要なバッテリ交換の発生を防止できる。
【0069】
(4)ドローンの台数は2以上であればいずれでもよい。
【0070】
(5)農地の形状は様々に変わり得る。また、区画の区分方法も様々に変更されてよい。
【0071】
(6)上記実施形態では、飛行計画を決定する決定手段をサーバ405に設けた。しかし、決定手段はドローンが決定手段により決定された飛行計画を取得できる限り、どこに配置されてもよい。例えば、決定手段が、基地局404、ユーザがドローンをリモートコントロールするためのユーザ端末401、いずれかのドローン(マスタとなるドローンの制御装置)、のいずれかに配置されてもよい。
【符号の説明】
【0072】
401……ユーザ端末、402……農業従事者、403……圃場、404……基地局、405……サーバ、406……発着地点、100a,100b,100c,100d……ドローン、101……回転翼、501……データ処理装置、503,519……WiFi子機、504……GPSモジュール、505……6軸ジャイロセンサ、506……地磁気センサ、507……気圧センサ、508……レーザセンサ、509……ソナー、510……流量センサ、511……液切れセンサ、512a……可視光カメラ、512b……第1スペクトルカメラ、512c……第2スペクトルカメラ、513……障害物検知カメラ、514……スイッチ、515……障害物接触センサ、516……カバーセンサ、517……薬剤注入口センサ、102……モータ、106……ポンプ、107……LED、518……ブザー、520……スピーカ、521……警告灯、710,810……CPU、720,820……記憶部、711,811……通信処理部、712……飛行制御部、812……飛行計画生成部、813……実績記録部、814……飛行計画変更部、721,821……飛行計画、822……飛行実績、823……地図データ。