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特許7562167歯周疾患または脱臼性外傷歯の予防もしくは治療用薬学的組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】歯周疾患または脱臼性外傷歯の予防もしくは治療用薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/08 20190101AFI20240930BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20240930BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240930BHJP
   C07K 7/06 20060101ALI20240930BHJP
   A23L 33/18 20160101ALI20240930BHJP
【FI】
A61K38/08 ZNA
A61P1/02
A61P43/00 107
C07K7/06
A23L33/18
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022575190
(86)(22)【出願日】2021-06-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-19
(86)【国際出願番号】 KR2021006812
(87)【国際公開番号】W WO2021251673
(87)【国際公開日】2021-12-16
【審査請求日】2022-12-06
(31)【優先権主張番号】10-2020-0069444
(32)【優先日】2020-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518165752
【氏名又は名称】ハイセンスバイオ
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(72)【発明者】
【氏名】パク ジュ ファン
(72)【発明者】
【氏名】イ ジ ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】イ ドン ソル
【審査官】川合 理恵
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2019-0087835(KR,A)
【文献】特表2019-513003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1~16のいずれか1つのアミノ酸配列からなるペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩を含む、脱臼性外傷歯の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項2】
前記薬学的組成物は、前記ペプチドが繰り返しで連結されたポリペプチドを含むものである、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
歯周疾患治療用薬物をさらに含むものである、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
配列番号1~16のいずれか1つのアミノ酸配列からなるペプチドを含む歯周組織再生用組成物。
【請求項5】
歯肉、歯周靭帯、白亜質、および歯槽骨のいずれか1つ以上の再生を促進するものである、請求項に記載の歯周組織再生用組成物。
【請求項6】
前記組成物は、薬学的組成物である、請求項に記載の歯周組織再生用組成物。
【請求項7】
前記組成物は、医薬外品組成物である、請求項に記載の歯周組織再生用組成物。
【請求項8】
前記組成物は、健康機能食品組成物である、請求項に記載の歯周組織再生用組成物。
【請求項9】
配列番号1~16のいずれか1つのアミノ酸配列からなるペプチドを含む、BSP(Bone sialoprotein)、DMP1(Dentin matrix protein 1)、CAP(Cementum attachment protein)、COL3(collagen type III)、およびペリオスチン(Periostin)のいずれか1つ以上の遺伝子発現促進用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯周疾患または脱臼性外傷歯の予防もしくは治療用薬学的組成物、および歯周組織再生用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
歯周組織(periodontium)とは、歯を取り囲んでいる組織を総称するものである。歯周組織は、歯を顎骨内に支持する歯槽骨、歯槽骨と歯を顎骨内に連結する歯周靭帯、歯周靭帯の繊維を含有する白亜質、歯槽骨を覆っている軟組織である歯肉(歯茎)などから構成されている。歯肉線維芽細胞(gingival fibroblast)と歯周靭帯線維芽細胞(periodontal ligament fibroblast)とは、歯肉軟組織性結合組織の主要細胞構成成分であり、細胞外基質(extracellular matrix)を形成し、それを維持する役割をする。中でも、歯肉線維芽細胞は、主に歯肉結合組織の維持に関与するのに対し、歯周靭帯線維芽細胞は、その特有の機能により歯周靭帯を形成するだけでなく、生体内における隣接歯槽骨および白亜質の修復と再生に関与するものと知られている。
【0003】
歯周靭帯とは、歯根(歯根部)の白亜質と歯槽骨との間を連結させる繊維性結合組織のことを指す。歯周靭帯の両端は歯根部の白亜質と歯槽骨に埋め込まれており、このように歯槽骨や白亜質内に埋め込まれている歯周靭帯繊維束をシャーピー繊維(Sharpey's fiber)という。歯周靭帯の機能は、歯を維持し、硬組織の構造的特性を維持するのに重要な機能をするだけでなく、咬合圧の衝撃に抵抗し、損傷から血管や神経のような軟組織を保護する。他の重要な機能は、栄養供給と感覚受容器としての機能であって、歯周靭帯の神経支配は三叉神経経路を通じて固有受容感覚と触覚および痛覚を伝達し、個々の歯に加えられる外部圧力を感知して調節し、咀嚼筋肉系を調節する神経筋肉機序に重要な役割をする。このような歯周靭帯は、多くの線維芽細胞を含んでおり、これらの細胞はその特有の機能により歯周靭帯を形成するだけでなく、白亜質や歯槽骨の形成と吸収に関与して、生理的な歯動を誘発し、歯周組織が咬合圧に適応できるようにし、損傷を回復させる機能を有している。
【0004】
歯周疾患は、歯茎に限られる歯肉炎と、歯根を取り囲んでいる歯槽骨にも炎症が拡散した歯周炎とに分類され、歯自体が損傷する疾患ではなく、歯を支えている歯周組織に炎症が発生する疾患である。歯周疾患が発生すると、臨床的に歯肉出血や腫脹、歯周ポケットの形成および歯槽骨の破壊などにより歯の喪失をもたらすこととなり、このような歯周疾患の原因としては局所的要因と全身的要因がある。局所原因因子として知られている2つは、歯垢(dental plaque)、歯石、およびその他の局所原因と、咬合性外傷(trauma from occlusion)と言える。発症機序として、歯垢が歯周ポケット内に機械的に蓄積すると、周囲に存在する細菌の生息処となり、このような生息は徐々に好気性、通気性、グラム陽性細菌からグラム陰性嫌気性菌に移行し、歯周ポケットの深部に増殖し、このようなグラム陰性嫌気性菌は、増殖して歯周ポケットの深部に移行することになる。この際、増殖したグラム陰性嫌気性菌の毒素および全ての産物は、直接組織を破壊したり免疫系を刺激したりして、刺激された免疫系から様々な作用により歯周組織破壊とともに炎症を誘発することになる。これに対する防御機序として、多形核白血球の機能と免疫反応が全身的な要因として作用することになる。しかし、根源的な因子であるグラム陰性嫌気性菌に対する抗菌作用および静菌作用と、これら細菌の毒性産物を除去して破壊、消失した歯周組織を原状回復させることが、歯周疾患の予防および治療に重要なカギとなることと知られている。
【0005】
基本的な歯周疾患の治療は、歯周疾患の原因となる歯垢と歯石を除去する歯石除去(スケーリング)術式と、これに類似して歯垢と歯石を除去する術式として、歯根表面の白亜質にさし込まれている、炎症を引き起こす要因を除去する根面滑沢術とがある。歯周疾患によって炎症がひどくなると歯槽骨損傷を伴うことになり、歯槽骨がひどく吸収された場合に、再生型歯周手術による骨移植を行い得る。移植する骨の種類は、患者自身の骨(自骨)を使用するか、または異種骨や合成骨を使用し得る。
【0006】
したがって、歯周疾患を治療するためには、歯周疾患の原因菌を除去するだけでなく、歯周組織を再生する過程がともに行われるべきものと思料する。
【0007】
現在、破壊された歯周組織を再生するための治療方法として、骨移植術、組織誘導再生術、そして多様な成長因子を用いた治療法などが行われており、また、歯周靭帯細胞の再生と新生白亜質の形成に焦点を合わせている歯の再植術法も実施されている。
【0008】
これに関して、歯周組織を効果的に再生する方法を開発するための研究が活発に進められている。例えば、特許文献1には、ヒト歯周靭帯(hPDL)細胞の鉱物化過程で高く発現する、前骨髄球性白血病亜鉛フィンガー(PLZF)遺伝子、Fk506結合タンパク質5(FKBP5)遺伝子、血清アミロイドA1(SAA1)遺伝子、脂肪酸結合タンパク質4(FABP4)遺伝子、配列類似性を有するファミリーA(FAM107A)遺伝子、コリン(CORIN)遺伝子、ras関連C3ボツリヌス毒素基質3(RAC3)遺伝子、またはプロラクチン誘導タンパク質(PIP)遺伝子;およびヒト歯周靭帯(hPDL)細胞の鉱物化過程で低く発現されるFNDC1、PTGS2、RSAD2、NPTX1、VCAM1、MX1、IFIT1、CLDN1、またはWISP2遺伝子が開示されている。また、特許文献2には、エナメル芽細胞培養液を含む歯周疾患治療用薬学的組成物について開示されている。
【0009】
一方、歯または歯周組織に外傷力が加えられると、その方向と大きさの差などに応じて様々な破壊が歯や歯周組織に発生する。歯の外傷は、大きく破折性外傷と脱臼性外傷とに分けられる。脱臼性外傷は、歯周靭帯の損傷を指し、震盪・亜脱臼、挺出性脱臼、側方性脱臼、完全脱臼、陥入に細分化することができ、いずれの年齢層において可能であるが、8才~12才の子どもにおいて多く起こり得る。このような完全脱臼歯の再植の成功可否は、完全脱臼した歯に付着している歯周靭帯または歯が抜けた歯槽窩に残っている歯周靭帯の再生にかかっている。歯周靭帯の再生が起こらないと、歯根の白亜質と象牙質の吸収が起こり、この部位が歯槽骨に代替される骨癒着(Ankylosis)が発生する。したがって、歯周治療の究極の目的は、歯周疾患の進行を止め、歯肉、歯周靭帯、歯槽骨、そして白亜質を含む破壊された歯周組織を再生して元通りに回復することであるが、未だ歯周靭帯を直接再生または分化させ得る方法は報告されていない。
【0010】
このような背景の下で、本発明者らは、歯周疾患により損傷した歯周組織(歯周靭帯、白亜質、歯槽骨)を再生させ得る方法を開発しようと鋭意研究努力の結果、歯周靭帯細胞の分化を誘導して、歯周疾患または脱臼性外傷歯の損傷した歯周靭帯を治療し得るとともに、損傷した白亜質および歯槽骨を再生し得るペプチドの新たな用途を確認して、本発明を完成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】韓国登録特許第10-1179476号
【文献】韓国登録特許第10-1788916号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、歯周疾患または脱臼性外傷歯の予防または治療用薬学的組成物を提供することを目的とする。
【0013】
本発明は、歯周組織再生用組成物を提供することを他の目的とする。
【0014】
本発明は、BSP、DMP1、CAP、COL3、およびペリオスチンのいずれか1つ以上の遺伝子発現促進用組成物を提供することをまた他の目的とする。
【0015】
本発明は、歯周疾患または脱臼性外傷歯の治療を必要とする個体に、有効量のペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩を投与する段階を含む、個体において歯周疾患または脱臼性外傷歯を治療する方法を提供することをまた他の目的とする。
【0016】
本発明は、歯周疾患または脱臼性外傷歯の予防または治療用薬剤を製造するにおいて、前記ペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩の用途を提供することをまた他の目的とする。
【0017】
本発明の目的は、以上で述べたことに限定されず、言及されていないまた他の目的は、下記記載から本発明が属する技術分野の通常の知識を有する者に明確に理解され得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記技術的課題を解決するための本発明の一態様は、下記一般式1のアミノ酸配列を含むペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩を含む、歯周疾患または脱臼性外傷歯の予防または治療用薬学的組成物を提供する:
K-Y-K-Q-X5-X6-X7-X8-Y-K(一般式1)
前記一般式1において、
X5~X7は、それぞれ独立してアルギニン(R)またはリシン(K)であり、
X8は、アスパラギン(N)またはセリン(S)である。
【0019】
前記ペプチドは、歯周疾患または脱臼性外傷歯の予防または治療効果を示し得る限り、それを構成するアミノ酸配列と1つ以上のアミノ酸残基が異なる配列を有する変異体ペプチドも、本発明で提供するペプチドの範疇に含まれる。
【0020】
本明細書全般において、ペプチドを構成する天然に存在するアミノ酸に対する通常の1文字および3文字コードが使用される。また、本明細書において略語で言及されたアミノ酸は、IUPAC-IUB命名法に基づいて記載されている。
アラニンAla,A アルギニンArg,R
アスパラギンAsn、N アスパラギン酸Asp、D
システインCys、C グルタミン酸Glu、E
グルタミンGln、Q グリシンGly、G
ヒスチジンHis、H イソロイシンIle、I
ロイシンLeu、L リシンLys、K
メチオニンMet,M フェニルアラニンPhe,F
プロリンPro、P セリンSer、S
スレオニンThr、T トリプトファンTrp、W
チロシンTyr、Y バリンVal、V
【0021】
本発明者らは、前記ペプチドが、歯周靭帯の再生または骨芽細胞およびセメント芽細胞(cementoblast)への分化、歯槽骨および白亜質の再生を促進することにより、歯周疾患または脱臼性外傷歯を治療し得ることを確認して本発明を完成した。
【0022】
前記ペプチドは、ヒト歯周靭帯細胞において骨芽細胞およびセメント芽細胞分化マーカー遺伝子であるBSP、DMP1、CAPの発現を増加させ、歯周靭帯分化マーカー遺伝子であるペリオスチンおよびCOL3の発現を増加させることを確認した。また、前記ペプチドは、ヒト間葉系幹細胞において骨芽細胞およびセメント芽細胞分化マーカー遺伝子であるBSPおよびDMP1の発現を増加させることを確認した。
【0023】
さらには、歯周組織損傷動物モデル実験の結果、前記ペプチドが歯槽骨、白亜質および歯周靭帯を再生したことを確認した。具体的に、本発明のペプチドは、歯槽骨を再生し、新生白亜質類似組織および新生歯周靭帯類似組織を形成する効果があり、本発明のペプチドによって形成された新生歯周靭帯は、新たに形成された歯槽骨および白亜質に含入されていることを確認した。
【0024】
一具体例において、前記ペプチドは、1つ以上のアミノ酸にて保存的置換が起こったものであり得る。
【0025】
「保存的置換(conservative substitution)」とは、一アミノ酸を類似の構造的および/または化学的性質を有する他のアミノ酸で置換することを意味する。前記ペプチドは、同一または類似の生物学的活性を依然として保持しながら、例えば1つ以上保存的置換を有し得る。このようなアミノ酸置換は、一般に、残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性および/または両親媒性(amphipathic nature)における類似性に基づいて生じ得る。例えば、正に荷電した(塩基性)アミノ酸は、アルギニン、リシンおよびヒスチジンを含み;負に荷電した(酸性)アミノ酸は、グルタミン酸およびアスパラギン酸を含み;芳香族アミノ酸は、フェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシンを含み;疎水性アミノ酸は、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンを含む。また、アミノ酸は電荷を帯びる(electrically charged)側鎖を有するアミノ酸と、電荷を帯びない(uncharged)側鎖を有するアミノ酸とに分類することができ、電荷を帯びる側鎖を有するアミノ酸は、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、ヒスチジンを含み、電荷を帯びない側鎖を有するアミノ酸は、さらに非極性(nonpolar)アミノ酸または極性(polar)アミノ酸に分類することができ、非極性アミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、極性アミノ酸は、セリン、トレオニン、システイン、アスパラギン、グルタミンを含むものと分類し得る。前記のような類似の性質を有するアミノ酸への保存的置換は、同一または類似の活性を示すものと期待し得る。
【0026】
このように、本願発明のペプチドを構成する酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸または芳香族アミノ酸は、それぞれこれとは異なる酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸、中性アミノ酸または芳香族アミノ酸に置換されても、本発明で提供するペプチドの効果をそのまま示し得るので、本発明のペプチドを構成するアミノ酸配列と1つ以上のアミノ酸残基が異なる配列を有する変異体ペプチドも、本発明で提供するペプチドの範疇に含まれることは自明である。
【0027】
また、本発明のペプチドは、そのN末端またはC末端に任意のアミノ酸が付加された形態を有しても、本発明で提供するペプチドの効果をそのまま示し得るので、本発明で提供するペプチドの範疇に含まれる。一例として、前記ペプチドのN末端またはC末端に1~300個のアミノ酸が付加された形態となり、他の例として、前記ペプチドのN末端またはC末端に1~100個のアミノ酸が付加された形態となり、また他の例として、前記ペプチドのN末端またはC末端に1~24個のアミノ酸が付加された形態となり得る。
【0028】
一具体例において、前記ペプチドは、配列番号1~16のいずれか1つのアミノ酸配列を含むものであり得る。
【0029】
他の具体例において、前記ペプチドは、配列番号1~16のいずれか1つのアミノ酸配列で必須的に構成されたものであるか、または前記ペプチドは配列番号1~16のいずれか1つのアミノ酸配列からなるものであり得る。
【0030】
本明細書において「特定配列番号で構成されるペプチド」と記載されているとしても、当該配列番号のアミノ酸配列からなるペプチドと同一もしくは相応する活性を有する場合であれば、当該配列番号のアミノ酸配列前後の無意味な配列の追加または自然に起こり得る突然変異、あるいはその沈黙突然変異(silent mutation)を除外するものではなく、このような配列追加もしくは突然変異を有する場合でも、本発明の範囲内に属することは自明である。すなわち、一部の配列に差があっても、一定レベル以上の相同性を示し、同一または類似の活性を示すのであれば、本発明の範囲に属し得る。具体的に、本発明のペプチドは、配列番号1~16のアミノ酸配列と、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%以上の相同性または同一性を有するアミノ酸配列を含み得るが、これに限定されない。
【0031】
「相同性(homology)」または「同一性(identity)」は、2つの与えられたアミノ酸配列または塩基配列と互いに関連する程度を意味し、百分率で表され得る。用語、「相同性」および「同一性」は、しばしば相互互換的に使用され得る。
【0032】
任意の2つのペプチド配列が、相同性、類似性、または同一性を有するかどうかは、例えば、Pearson et al(1988)[Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85]:2444におけるようなデフォルトパラメータを用いて、「FASTA」プログラムのような公知のコンピュータアルゴリズムを用いて決定され得る。または、EMBOSSパッケージのニードルマンプログラム(EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite、Rice et al., 2000、Trends Genet. 16:276-277)(バージョン5.0.0またはそれ以降のバージョン)で実行されるような、ニードルマン-ブンシュ(Needleman-Wunsch)アルゴリズム(Needleman and Wunsch、1970、J. Mol. Biol. 48:443-453)が用いられ決定され得る(GCGプログラムパッケージ(Devereux, J., et al, Nucleic Acids Research 12: 387 (1984)), BLASTP, BLASTN, FASTA(Atschul, [S.] [F.,] [ET AL, J MOLEC BIOL 215]: 403 (1990); Guide to Huge Computers, Martin J. Bishop, [ED.,] Academic Press, San Diego,1994, および [CARILLO ETA/.](1988) SIAM J Applied Math 48: 1073を含む)。例えば、国立生物工学情報データベースセンターのBLAST、またはClustalWを利用して、相同性、類似性、または同一性を決定し得る。
【0033】
ペプチドの相同性、類似性または同一性は、例えば、Smith and Waterman, Adv. Appl。 Math(1981)2:482に公知のように、例えば、Needleman et al.(1970)、J Mol Biol. 48:443のようなGAPコンピュータプログラムを用いて配列情報を比較することによって決定され得る。要約すると、GAPプログラムは、2つの配列のうち、より短い方における記号の全体数として、類似の配列された記号(すなわち、アミノ酸)の数を除した値で定義する。GAPプログラムのためのデフォルトパラメータは、(1)一進法比較マトリックス(同一性のために1、そして非同一性のために0の値を含む)およびSchwartz and Dayhoff, eds., Atlas Of Protein Sequence And Structure, National Biomedical Research Foundation, pp. 353-358 (1979)により開示の通り、Gribskov et al(1986) Nucl. Acids Res. 14: 6745の重み付きの比較マトリックス(またはEDNAFULL(NCBI NUC4.4のEMBOSSバージョン)置換マトリックス);(2)各ギャップのための3.0のペナルティおよび各ギャップにて各記号のための追加の0.10ペナルティ(またはギャップ開放ペナルティ10、ギャップ延長ペナルティ0.5);および(3)末端ギャップのための無ペナルティを含み得る。したがって、本発明で使用されるものとして、用語「相同性」または「同一性」は、配列間の関連性(relevance)を示す。
【0034】
一具体例において、前記ペプチドは、ペプチド単独の形態で使用されてもよく、前記ペプチドが2回以上繰り返して連結されたポリペプチドの形態で使用されてもよい。
【0035】
したがって、前記薬学的組成物は、前記ペプチドの繰り返しで連結されたポリペプチドを含むものであり得る。
【0036】
一具体例において、多様なペプチド製造のための様々な方法の組み合わせにより、本発明に適用される一般式1のアミノ酸配列を含むペプチドを製造し得る。
【0037】
本発明のペプチドは、その長さに応じてこの分野に周知の方法、例えば自動ペプチド合成装置によって合成することができ、遺伝子組換え技術によっても産生し得る。具体的に、本発明のペプチドは、標準合成方法、組換え発現システム、または任意の他の当該技術分野の方法によって製造され得る。したがって、本発明によるペプチドは、例えば、以下を含む方法を含む多数の方法により合成され得るが、これに制限されるものではない。
【0038】
(a)ペプチドを固相または液相法の手段により、段階的にまたは断片組立により合成し、最終ペプチド生成物を分離および精製する方法;または
(b)ペプチドをコードする核酸構築物を宿主細胞内で発現させ、発現生成物を宿主細胞培養物から回収する方法;または
(c)ペプチドをコードする核酸構築物の無細胞試験管内発現を行い、発現産物を回収する方法;または
(a)、(b)および(c)の任意の組合せでペプチドの断片を得た後、断片を連結してペプチドを得て、当該ペプチドを回収する方法。
【0039】
また、前記ペプチドの製造は、L型またはD型アミノ酸、および/または非天然型アミノ酸を用いた修飾;および/または天然型配列を改質、例えば側鎖官能基の修飾、分子内共有結合、例えば側鎖間環形成、メチル化、アシル化、ユビキチン化、リン酸化、アミノ核酸化、ビオチン化などのように改質することにより修飾するものをすべて含む。また、前記修飾は、非天然型化合物への置換を全て含む。
【0040】
前記修飾に用いられる置換または追加のアミノ酸は、ヒトタンパク質に通常見られる20個のアミノ酸の外に、非定型または非自然発生アミノ酸を使用し得る。非定型アミノ酸の商業的供給源には、Sigma-Aldrich、ChemPepおよびGenzyme pharmaceuticalsが含まれ得るが、これらに限定されない。このようなアミノ酸が含まれたペプチドおよび定型的なペプチド配列は、商業化しているペプチド合成会社、例えば米国のAmerican peptide companyやBachem社、または韓国のAnygen社により合成および購入可能であるが、これらに限定されない。
【0041】
アミノ酸誘導体も同様に入手し得るが、その一部の例を挙げると、4-イミダゾ酢酸(4-imidazoacetic acid)などを用い得る。
【0042】
さらに、本発明によるペプチドは、N末端および/またはC末端が修飾されていないものであり得るが、生体内のタンパク質切断酵素から保護し安定性を高めるために、そのN末端および/またはC末端などが化学的に修飾されるか保護基で保護されるか、またはペプチド末端などにアミノ酸が付加され修飾された形態もまた、本発明によるペプチドの範疇に含まれる。C末端が修飾されていない場合、本発明によるペプチドの末端は遊離カルボキシル基を有するが、特にこれに制限されるものではない。
【0043】
特に、化学的に合成したペプチドの場合、N末端およびC末端が電荷を帯びているため、このような電荷を除去するためにN末端をアセチル化(acetylation)および/またはC末端をアミド化(amidation)し得るが、特にこれに制限されることではない。
【0044】
前記ペプチドは、アミノ酸配列上の変異または修飾によってペプチドの熱、pH等に対する構造的安定性が増加したり、歯周疾患または脱臼性外傷歯の予防または治療効果が増加したり、または歯周靭帯組織再生能が増加したペプチドを含み得る。
【0045】
前記ペプチドは、ペプチド自体、その塩(例えば、前記ペプチドの薬学的に許容可能な塩)、またはその溶媒和物の形態のいずれも含む。
【0046】
前記塩の種類は特に限定はされない。ただ、個体、例えば哺乳類に安全で効果的な形態のものが好ましいが、特にこれに限定されるものではない。
【0047】
また、前記ペプチドは、薬学的に許容される任意の形態であり得る。
「薬学的に許容可能な」とは、治療効果を示し得るほどの十分な量と副作用を引き起こさないことを意味し、疾患の種類、患者の年齢、体重、健康、性別、患者の薬物に対する感受性、投与経路、投与方法、投与回数、治療期間、配合または同時使用される薬物など、医学分野に公知の要素に応じて当業者によって容易に決定され得る。
【0048】
一具体例において、前記ペプチドは、その薬学的に許容可能な塩の形態であり得る。前記塩は、薬学分野、例えば歯周疾患分野で使用される通常の酸付加塩、例えば塩酸、臭素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、または硝酸のような無機酸から誘導された塩、および酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、クエン酸、マレイン酸、マロン酸、メタンスルホン酸、酒石酸、リンゴ酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、シュウ酸、またはトリフルオロ酢酸のような有機酸から誘導された塩を含む。また、前記塩は、アンモニウム、ジメチルアミン、モノメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミンのような塩基付加塩であり得る。また、前記塩は、通常の金属塩の形態、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、またはカルシウムのような金属から誘導された塩を含む。前記酸付加塩、塩基付加塩または金属塩は、通常の豊富により製造され得る。薬学的に許容可能な塩およびそれを製造する一般的な方法論は、当技術分野に公知である。例えば、文献[P. Stahl, et al. Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection and Use, 2nd Revised Edition (Wiley-VCH, 2011)]; [S.M. Berge, et al., "Pharmaceutical Salts," Journal of Pharmaceutical Sciences, Vol. 66, No. 1, January 1977]を参照し得る。
【0049】
保護されたアミノ酸またはペプチドの縮合のために、ペプチド合成に有用な様々な活性化試薬、特に好ましくは、トリスホスホニウム塩、テトラメチルウロニウム塩、カルボジイミド(carbodiimide)などが使用され得る。トリスホスホニウム塩の例は、ヘキサフルオロリン酸(ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリピロリジノホスホニウム(PyBOP)、ヘキサフルオロリン酸ブロモトリス(ピロリジノ)ホスホニウム(PyBroP)、ヘキサフルオロリン酸(ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリピロリジノホスホニウム(PyAOP)を含み、テトラメチルウロニウム塩の例は、ヘキサフルオロリン酸2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウム(HBTU)、ヘキサフルオロリン酸2-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウム(HATU)、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)、2-(5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミド)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TNTU)、O-(N-スクシンイミジル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TSTU)を含み、カルボジイミドの例は、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIPCDI)、N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDCI・HCl)などを含む。これらを用いる縮合のために、ラセミ化阻害剤[例えば、N-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸イミド(HONB)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt)、3,4-ジヒドロ-3-ヒドロキシ-4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアジン(HOOBt)、エチル2-シアノ-2-(ヒドロキシイミノ)アセテート(Oxyma)等]の添加が好ましい。縮合に使用される溶媒は、ペプチド縮合反応に有用であるものとして公知のものから適切に選択され得る。例えば、無水または水含有N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンのような酸アミド、塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素、トリフルオロエタノール、フェノールなどのアルコール、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド、ピリジンなどの第3級アミン、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル、アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル、これらの適切な混合物などが使用され得る。反応温度は、ペプチド結合反応に使用可能なものとして公知の範囲から適宜選択され、通常約-20℃~90℃の範囲から選択される。活性化されたアミノ酸誘導体は、通常1.5倍~6倍過剰で使用される。固相合成において、ニンヒドリン反応を用いる試験が縮合不十分であることを示す場合、十分な縮合は保護基を除去せず縮合反応を繰り返すことによって行われ得る。反応を繰り返した後も、依然として縮合が不十分である場合、未反応アミノ酸は酸無水物、アセチルイミダゾールなどによりアセチル化し得るので、後続の反応に対する影響が回避できるようになる。
【0050】
出発アミノ酸のアミノ基に対する保護基の例は、ベンジルオキシカルボニル(Z)、tert-ブトキシカルボニル(Boc)、tert-ペンチルオキシカルボニル、イソボニルオキシカルボニル、4-メトキシベンジルオキシカルボニル、2-クロロベンジルオキシカルボニル(Cl-Z)、2-ブロモベンジルオキシカルボニル(Br-Z)、アダマンチルオキシカルボニル、トリフルオロアセチル、フタロイル、ホルミル、2-ニトロフェニルスルフェニル、ジフェニルホスフィノチオイル、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、トリチルなどを含む。
【0051】
出発アミノ酸に対するカルボキシル保護基の例は、前記のC1-6アルキル基、C3-10シクロアルキル基、C7-14アラルキル基の外に、アリール、2-アダマンチル、4-ニトロベンジル、4-メトキシベンジル、4-クロロベンジル、フェナシルおよびベンジルオキシカルボニルヒドラジド、tert-ブトキシカルボニルヒドラジド、トリチルヒドラジドなどを含む。
【0052】
セリンまたはトレオニンのヒドロキシル基は、例えばエステル化またはエーテル化によって保護され得る。エステル化に適した基の例は、アセチル基のような低級(C2-4)アルカノイル基、ベンゾイル基などのアロイル基、および有機酸などに由来する基を含む。さらに、エーテル化に適した基の例は、ベンジル、テトラヒドロピラニル、tert-ブチル(Bu)、トリチル(Trt)などを含む。
【0053】
チロシンのフェノール性ヒドロキシル基に対する保護基の例は、Bzl、2,6-ジクロロベンジル、2-ニトロベンジル、Br-Z、tert-ブチルなどを含む。
【0054】
ヒスチジンのイミダゾールに対する保護基の例は、p-トルエンスルホニル(Tos)、4-メトキシ-2,3,6-トリメチルベンゼンスルホニル(Mtr)、ジニトロフェニル(DNP)、ベンジルオキシメチル(Bom)、tert-ブトキシメチル(Bum)、Boc、Trt、Fmocなどを含む。
【0055】
アルギニンのグアニジノ基の保護基の例は、Tos、Z、4-メトキシ-2,3,6-トリメチルベンゼンスルホニル(Mtr)、p-メトキシベンゼンスルホニル(MBS)、2,2,5,7,8-ペンタメチルクロマン-6-スルホニル(Pmc)、メシチレン-2-スルホニル(Mts)、2,2,4,6,7-ペンタメチルジヒドロベンゾフラン-5-スルポニル(Pbf)、Boc、Z、NOなどを含む。
【0056】
リシン側鎖アミノ基の保護基の例は、Z、Cl-Z、トリフルオロアセチル、Boc、Fmoc、Trt、Mtr、4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキシリデンイル(Dde)などを含む。
【0057】
トリプトファンのインドールの保護基の例には、ホルミル(For)、Z、Boc、Mts、Mtrなどを含む。
【0058】
アスパラギンおよびグルタミンに対する保護基の例には、Trt、キサンチル(Xan)、4,4’-ジメトキシベンズヒドリル(Mbh)、2,4,6-トリメトキシベンジル(Tmob)などを含む。
【0059】
出発物質中の活性化カルボキシル基の例は、対応する酸無水物、アジド、活性エステル[アルコールとのエステル(例えば、ペンタクロロフェノール、2,4,5-トリクロロフェノール、2,4-ジニトロフェノール)、シアノメチルアルコール、パラニトロフェノール、HONB、N-ヒドロキシスクシンイミド、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt))]など含む。出発材料中、活性化されたアミノ基の例は、対応するリンアミドを含む。
【0060】
保護基を除去(removing、eliminating)する方法の例は、PdブラックまたはPd炭素のような触媒の存在下における水素ストリーム中の触媒還元;無水フルオリン化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸(TFA)、トリメチルシリルブロミド(TMSBr)、トリメチルシリルトリフルオロメタンスルホン酸、テトラフルオロホウ酸、トリス(トリフルオロ)ホウ酸、三臭化ホウ素、またはその混合物溶液を用いた酸処理;ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリシン、ピペラジンなどを用いた塩基処理;および液体アンモニア中でナトリウムによる還元などを含む。前記の酸処理による除去反応は、一般に-20℃~40℃の温度にて行われ;酸処理はアニソール、フェノール、チオアニソール、メタクレゾールおよびパラクレゾール;ジメチルスルフィド、1,4-ブタンジチオール、1,2-エタンジチオール、トリイソプロピルシランなどの陽イオン捕捉剤(cation scavenger)を添加することによって効率よく行われる。また、ヒスチジンのイミダゾールの保護基として使用される2,4-ジニトロフェニル基はチオフェノール処理によって除去され;トリプトファンのインドールの保護基として使用されるホルミル基は、1,2-エタンジチオール、1,4-ブタンジチオール等の存在中で酸処理によるものだけでなく、希釈水酸化ナトリウム、希釈アンモニア等によるアルカリ処理による脱保護により除去される。
【0061】
出発物質と保護基との反応に関与してはならない官能基の保護、保護基の除去、反応に関与する官能基の活性化などは、公知の保護基および公知の手段から適宜選択され得る。
【0062】
ペプチドのアミドを製造する方法において、これはアミド合成のために樹脂を用いる固相合成によって形成されるか、またはカルボキシ末端アミノ酸のα-カルボキシル基がアミド化され、ペプチド鎖がアミノ基側に向かって目的とする鎖長に延び、その後、ペプチド鎖のみのN末端α-アミノ基に対する保護基が除去されたペプチドおよびC末端カルボキシル基の保護基のみがペプチド鎖から除去されたペプチドが製造され、これら2つのペプチドは前記の混合された溶媒中で縮合する。縮合反応の詳細については、前記と同様のものが適用される。縮合によって得られた保護されたペプチドが精製された後、すべての保護基が前記の方法により除去され、所望の組製ペプチドが得られ得る。この粗製ペプチドを主画分の精製および凍結乾燥の様々な公知の手段を用いて精製することによって、ペプチドの目的とするアミドが製造され得る。
【0063】
一具体例において、前記ペプチドはその溶媒和物の形態であり得る。「溶媒和物」とは、前記ペプチドまたはその塩が溶媒分子と複合体を形成したもののことを意味する。
【0064】
「歯周疾患」は、歯を維持する歯周りの組織である歯肉、歯周靭帯、歯槽骨で起こる炎症疾患を指すものである。歯肉(歯茎)と歯の間の隙間に細菌が感染して歯周靭帯と隣接組織を損傷する疾患のことを意味し、病症の程度によって歯肉炎と歯周炎とに区分する。炎症が進行して、さらに多くの組織が損傷して歯周ポケット(periodontal pocket)が形成され、歯周炎がひどいほど歯周ポケットの深さが深くなるが、歯周ポケットが深くなるにつれ歯周靭帯に炎症が生じ、最終的には骨消失が誘発されると知られている。このような歯周疾患の根本的な治療は、損傷した歯周靭帯結合組織、白亜質および歯槽骨を復元することなので、そのためには歯槽骨を支持する歯周靭帯を再生するとともに、歯周靭帯が付着し得る歯槽骨と白亜質との再生が必要である。
【0065】
前記薬学的組成物において、前記歯周疾患は、歯周組織炎症性疾患であり得る。
前記薬学的組成物において、前記歯周疾患は、歯肉炎または歯周炎であり得る。
【0066】
一具体例において、前記薬学的組成物は、歯周疾患治療用薬物をさらに含み得る。
【0067】
前記歯周疾患治療用薬物は、前記ペプチドと分離しているものでもあり、前記ペプチドのN末端またはC末端に結合してペプチドと複合体を形成した形態でもあり得る。
【0068】
「脱臼性外傷」は、歯あるいは歯周組織に外傷力が加えられ、その方向と大きさの差などによって歯と歯周組織が破壊され、歯周靭帯が損傷した外傷を含み、震盪・亜脱臼、挺出性脱臼、側方性脱臼、完全脱臼、陥入に細分化されたものを含む。したがって、脱臼性外傷の根本的な治療もまた、損傷した歯周靭帯の再生を必要とする。特に、完全脱臼歯の再植成功の可否は、完全脱臼した歯に付着している歯周靭帯または歯が抜けた歯槽窩に残っている歯周靭帯の再生にかかっている。歯周靭帯の再生が起こらないと、歯根の白亜質と象牙質の吸収が起こり、この部位が歯槽骨に代替される骨癒着(Ankylosis)が発生する。
【0069】
「歯の再植術(tooth replantation)」とは、歯を意図的に抜歯した後、適切な根管治療を行ったか、または行う前に抜歯窩に再植立する方法である。意図的再植術は、根管治療が失敗や、解剖学的限界、接近性の難しさ、事故による歯が脱臼、または意図的に迅速な矯正萌出の必要がある状況において行われ得る。
【0070】
「予防」は、前記組成物の投与によって歯周疾患または脱臼性外傷歯の発症を抑制または遅延させるあらゆる行為のことを意味する。
【0071】
「治療」は、前記組成物の投与によって歯周疾患または脱臼性外傷歯の症状が好転または利となるあらゆる行為のことを意味する。
【0072】
前記薬学的組成物は、前記ペプチドに、薬学的組成物の製造に通常使用する適切な担体(自然的または非自然的担体)、賦形剤または希釈剤をさらに含む歯周疾患治療用薬学的組成物の形態で製造され得る。前記薬学的組成物は、それぞれ通常の方法により歯周疾患が誘発された部位に投与し得る滅菌注射溶液の形態で製剤化して使用され得る。
【0073】
本発明において、前記薬学的組成物に含まれ得る担体、賦形剤および希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、でん粉、アカシアゴム、アルギン酸塩、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウム、鉱物油、コラーゲンなどが挙げられる。製剤化する場合には、通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を用いて調製され得る。特に、滅菌水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤、軟膏剤(例えば、歯髄裏装材など)などが含まれ得る。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、エチルオレートのような注射可能なエステルなどが使用され得る。坐剤の基剤としては、ウィテップゾール(Witepsol、登録商標)、マクロゴール、ツイン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどが使用され得る。
【0074】
前記薬学的組成物に含まれる前記ペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩の含有量は特にこれに限定されないが、最終組成物の総重量を基準に0.0001重量%~50重量%、または0.01重量%~20重量%の含有量で含まれ得る。
【0075】
前記薬学的組成物は、薬剤学的に有効な量で投与され得るが、本発明の用語「薬剤学的に有効な量」とは、医学的治療または予防に適用可能な合理的なベネフィット・リスク比で疾患を治療または予防するのに十分な量のことを意味し、有効用量レベルは、疾患の重症度、薬物の活性、患者の年齢、体重、健康、性別、患者の薬物に対する感受性、使用される本発明組成物の投与時間、投与経路および排出率、治療期間、使用される本発明の組成物と配合または同時使用される薬物を含む要素およびその他医学分野に周知の要素により決定され得る。本発明の薬学的組成物は、単独で投与するか、または公知の歯周疾患治療用薬学的組成物と併用して投与され得る。前記要因をすべて考慮して、副作用なく最小限の量で最大の効果が得られる量を投与することが重要である。
【0076】
前記薬学的組成物の投与量は、使用目的、疾患の中毒性、患者の年齢、体重、性別、既往歴、または有効成分として使用される物質の種類などを考慮して、当業者が決定し得る。例えば、本発明の薬学的組成物は、成人1人当たり約0.1ng/kg~約100mg/kg、好ましくは1ng/kg~約10mg/kgで投与することができ、本発明の組成物の投与頻度は特にこれに限定されないが、1日1回投与するか、または容量を分割して数回投与し得る。前記投与量は、いかなる面からも本発明の範囲を限定するものではない。
【0077】
前記技術的課題を解決するための本発明の他の態様は、下記一般式1のアミノ酸配列を含むペプチドを含む、歯周組織再生用組成物を提供する。
K-Y-K-Q-X5-X6-X7-X8-Y-K(一般式1)
前記一般式1において、
X5~X7は、それぞれ独立してアルギニン(R)またはリシン(K)であり、
X8は、アスパラギン(N)またはセリン(S)である。
【0078】
一具体例において、前記ペプチドは、配列番号1~16のいずれか1つのアミノ酸配列を含むものであり得る。
【0079】
他の具体例において、前記ペプチドは、配列番号1~16のいずれか1つのアミノ酸配列で必須的に構成されたものであるか、または前記ペプチドは配列番号1~16のいずれか1つのアミノ酸配列からなるものであり得る。
前記ペプチドに関する説明は前述の通りである。
【0080】
「歯周組織(periodontium)」は、上皮組織、軟組織性結合組織(connective tissue)および石灰化した結合組織からなる複合組織であり、構造的に歯茎(gingiva、歯肉)、歯周靭帯(PDL:periodontal ligament)、白亜質(cementumおよび歯槽骨(alveolar bone)で構成されている。
【0081】
「歯周靭帯(PDL)」とは、歯根膜とも呼ばれ、哺乳動物における歯根の白亜質と歯槽骨壁とを結合する結合組織性繊維膜のことを意味する。前記歯周靭帯は、歯の長軸に対して平行または斜めに伸びる膠原線維(collagenous fiber)である主繊維と、これに連続して両端が硬組織に埋もれているシャーピー(Sharpey)繊維の束で構成され、歯周靭帯により歯が弾性的に顎骨(歯槽骨)に固着する。前記歯周靭帯は、食物を噛むときに生じる圧力を緩衝するとともに、血管や神経が豊富で栄養供給や感覚にも関与することが知られている。歯周靭帯には、線維芽細胞、未分化間葉系細胞、上皮細胞などと、多様な細胞が含まれており、中でも、歯周靭帯線維芽細胞は、適切な刺激によって骨芽細胞またはセメント芽細胞に分化し得るが、歯周靭帯線維芽細胞のメント芽細胞への分化メカニズムおよび分化促進タンパク質については知られていない。セメント芽細胞分化マーカーとしては、BSP(bone sialoprotein)、OC(osteocalcin)、CAP(cementum attachment protein)などが知られており、特にCAPは、白亜質に歯周靭帯繊維が付着する上で重要な役割を果たすものと知られている。
【0082】
「白亜質(cementum)」とは、哺乳動物の歯根を覆っている石灰化された組織である。白亜質は、歯周靭帯を固定することによって歯を歯槽骨に固定する。したがって、細菌が歯茎に感染すると、歯を取り囲む白亜質の変性が起こり、変性した白亜質には歯と歯槽骨を連結してくれる歯周靭帯繊維束が付着できず、歯が揺れることになる。このような変性された白亜質の治療のためには、新たな白亜質の形成が必要である。
【0083】
「歯槽骨」は、歯根を取り囲んで歯を支える役割をする上顎骨および下顎骨の一部として、歯の形成や萌出によって発達し、歯が喪失すると徐々に吸収される。このような歯槽骨は、歯根白亜質とともに歯周靭帯を固定することにより咀嚼など咬合圧、発音、嚥下(swallowing)の際に生じる歯に対する圧力の分散、吸収に重要な役割を果たす。
【0084】
「歯周靭帯線維芽細胞(periodontal ligament fibroblast)」は、歯肉線維芽細胞(gingival fibroblast)とともに歯周組織の軟組織性結合組織の主要細胞構成である。歯周靭帯線維芽細胞は、その特有の機能により歯周靭帯を形成するだけでなく、生体内における隣接歯槽骨および白亜質の修復と再生に関与するが、これを促進し得る物質については知られているものがなく、歯肉結合組織を維持するのに関与する歯肉線維芽細胞とは区別される。歯周靭帯線維芽細胞は、適切な刺激によって骨芽細胞またはセメント芽細胞に分化し得るが、歯周靭帯線維芽細胞のセメント芽細胞への分化メカニズムは明確に知られていない。骨芽細胞とセメント芽細胞分化マーカーとしては、BSP、OCなどが知られており、CAPは、白亜質に歯周靭帯繊維が付着するのに重要な役割をする遺伝子として知られている。また、歯周靭帯マーカーとしては、ペリオスチン(Periostin)遺伝子が知られている。近年、様々な研究によると、ペリオスチンは歯周組織形成の重要な調節因子であって、コラーゲン線維質生成および線維芽細胞および骨芽細胞の移動を促進することにより、歯周手術後の歯周靭帯および歯槽骨の再生に重要な役割をするとのことが報告されている。
【0085】
「再生」は、喪失または損傷した細胞または組織が、復旧または補充されるすべての作用を意味し得る。前記再生は、細胞の分化によるものであり得る。
【0086】
前記ペプチドは、歯周靭帯線維芽細胞のセメント芽細胞への分化を促進する効果があることを確認した。
【0087】
前記歯周組織再生用組成物は、歯肉、歯周靭帯、白亜質、および歯槽骨のいずれか1つ以上の再生を促進するものであり得る。
前記歯周組織再生用組成物は、薬学的組成物であり得る。
前記薬学的組成物については前述の通りである。
【0088】
前記歯周組織再生用組成物は、医薬外品組成物であり得る。前記医薬外品組成物は、歯周疾患または脱臼性外傷歯の予防または改善用の医薬外品組成物であり得る。
【0089】
「改善」とは、治療される状態に関連するパラメータ、例えば症状の程度を少なくとも減少させる全ての行為のことを意味する。
【0090】
前記改善は、前記ペプチドを有効成分として含む薬学的組成物を歯周疾患の治療が求められる個体に投与して歯周組織の再生を促進することにより、歯周疾患または脱臼性外傷歯の症状が好転または利となるようにする全ての行為のことを意味すると解釈され得る。
【0091】
「医薬外品」とは、ヒトや動物の疾病を診断、治療、改善、軽減、処置、または予防する目的で使用される物品のうち、医薬品よりも作用が軽微な物品のことを意味し、例えば薬剤師法によると、医薬外品とは、医薬品の用途で使用される物品を除いたもので、ヒト・動物の疾病治療や予防に使われる繊維・ゴム製品、人体に対する作用が軽微であるか直接作用せず、器具または機械でないものと、これに類似するもの、感染病を防ぐための殺菌・殺虫剤などがこれに含まれる。
【0092】
前記ペプチドを含む医薬外品組成物の種類や剤形は特に限定されないが、一例として、口腔用消毒マウスウォッシュ、口腔衛生用品、歯みがき粉、デンタルフロス、口腔用軟膏剤などであり得る。
【0093】
前記歯周組織再生用組成物は、健康機能食品組成物であり得る。前記健康機能食品組成物は、歯周疾患または脱臼性外傷歯の予防または改善用健康機能食品組成物であり得る。
【0094】
「食品」は、肉類、ソーセージ、パン、チョコレート、キャンディ類、スナック類、菓子類、ピザ、ラーメン、その他の麺類、ガム類、アイスクリーム類を含む酪農製品、各種スープ、飲料水、茶、ドリンク剤、アルコール飲料、ビタミン複合剤、健康機能食品、および健康食品などがあり、通常の意味での食品の全て含む。
【0095】
前記健康機能(性)食品(functional food)とは、特定保健用食品(food for special health use、FoSHU)と同様の用語で、栄養供給の外にも生体調節機能が効率良く現れるように加工された医学、医療効果の高い食品を意味する。ここで「機能(性)」とは、人体の構造および機能に対して栄養素を調節するか、または生理学的作用などのような健康用途に有用な効果を得ることを意味する。
【0096】
本発明の食品は、当業界で通常使用される方法によって製造することができ、前記製造の際には、当業界で通常添加する原料および成分を添加することによって製造し得る。また、前記食品の剤形もまた、食品として認められる剤形であれば制限なく製造され得る。本発明の食品用組成物は、様々な形態の剤形で製造され、一般薬品とは異なり、食品を原料として薬品の長期服用の際に発生し得る副作用等がない利点があり、携帯性に優れ、本発明食品は、歯周疾患または脱臼性外傷歯の予防または改善の効果を増進させるための補助剤として摂取可能である。
【0097】
前記健康食品(health food)は、一般食品に比べて積極的な健康維持や増進効果を有する食品のことを意味し、健康補助食品(health supplement food)は健康補助目的の食品のことを意味する。場合によっては、健康機能食品、健康食品、健康補助食品の用語は混用され得る。
【0098】
具体的に、前記健康機能食品は、本発明のペプチドを、飲料、茶類、香辛料、ガム類、菓子類等の食品素材に添加するか、またはカプセル化、粉末化、懸濁液等に製造した食品であって、これを摂取すると、健康上特定の効果をもたらすことを意味するが、一般薬品とは異なり、食品を原料として薬品の長期服用の際に発生し得る副作用のない利点がある。
【0099】
前記食品組成物は、日常的に摂取可能であるため、歯周疾患または脱臼性外傷歯の予防または改善に対して高い効果が期待できるので、非常に有用に使用され得る。
【0100】
前記食品組成物は、生理学的に許容可能な担体をさらに含み得るが、担体の種類は特に制限されず、当技術分野で通常使用される担体であればいずれも使用し得る。
【0101】
また、前記食品組成物は、食品組成物に通常使用され、匂い、味、視覚などを向上させ得る追加成分を含み得る。例えば、ビタミンA、C、D、E、B1、B2、B6、B12、ナイアシン(niacin)、ビオチン(biotin)、葉酸(folate)、パントテン酸(panthotenic acid)などを含み得る。また、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、カルシウム(Ca)、クロム(Cr)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、銅(Cu)などのミネラルを含み得る。また、リシン、トリプトファン、システイン、バリンなどのアミノ酸を含み得る。
【0102】
また、前記食品組成物は、防腐剤(ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、サリチル酸、デヒドロ酢酸ナトリウムなど)、殺菌剤(漂白分と高度漂白分、次亜塩素酸ナトリウム等)、酸化防止剤(ブチルヒドロキシアニゾール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)等)、着色剤(タール色素等)、発色剤(亜硝酸ナトリウム、亜酢酸ナトリウム等)、漂白剤(亜硫酸ナトリウム)、調味料(グルタミン酸ナトリウム(MSG)等)、甘味料(ズルチン(dulcin)、シクラメート(cyclamate)、サッカリン、ナトリウム等)、香料(バニリン、ラクトン類等)、膨張剤(ミョウバン、D-酒錫酸水素カリウム等)、強化剤、乳化剤、増粘剤(糊料)、皮膜剤、ガム基剤、泡抑制剤、溶剤、改良剤等の食品添加物(food additives)を含み得る。前記添加物は、食品の種類に応じて選択され、適切な量で使用され得る。
【0103】
前記ペプチドは、そのまま添加するか、または他の食品または食品成分とともに使用され、通常の方法により適切に使用され得る。有効成分の混合量は、その使用目的(予防、健康または治療的処置)に応じて適宜決定され得る。一般に、食品または飲料製造の際、本発明の食品組成物は、50重量部以下、20重量部以下、10重量部以下、5重量部以下、1重量部以下、0.1重量部下記量で添加され得る。しかし、健康および衛生の目的で長期間摂取する場合には、前記範囲下記含有量を含んでよく、安全性の面で何ら問題のないため、有効成分は前記範囲以上の量でも使用され得る。
【0104】
前記食品組成物の一例として、健康飲料組成物で使用することができ、この場合、通常の飲料のように様々な香味剤または天然炭水化物などを追加成分として含有し得る。前術の天然炭水化物は、グルコース、フルクトースのような単糖類;マルトース、スクロースのような二糖類;デキストリン、シクロデキストリンのような多糖類;キシリトール、ソルビトール、エリスリトールなどの糖アルコールであり得る。甘味剤は、タウマチン、ステビア抽出物のような天然甘味剤;サッカリン、アスパルテームのような合成甘味剤などを使用し得る。前記天然炭水化物の割合は、本発明の健康飲料組成物100mL当り、一般に約0.01g~0.04g、具体的に約0.02g~0.03gとなり得る。
【0105】
前記の外、健康飲料組成物は、様々な栄養剤、ビタミン、電解質、風味剤、着色剤、ペクチン酸、ペクチン酸の塩、アルギン酸、アルギン酸の塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調整剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、または炭酸化剤などを含有し得る。他に、天然のフルーツジュース、フルーツジュース飲料、または野菜飲料の製造のための果肉を含み得る。このような成分は、独立してまたは混合して使用し得る。このような添加剤の割合はさほど重要ではないが、本発明の健康飲料組成物100重量部当たり0.01重量部~0.1重量部の範囲から選択されることが一般的である。
【0106】
前記食品組成物は、歯周疾患または脱臼性外傷歯の予防または改善効果を示し得るのであれば様々な重量%で含むことができ、具体的に本発明のペプチドを食品組成物の総重量に対して0.00001重量%~100重量%または0.01重量%~80重量%で含み得るが、これに制限されない。
【0107】
前記技術的課題を解決するための本発明のまた他の態様は、下記一般式1のアミノ酸配列を含むペプチドを含む、BSP(Bone sialoprotein)、DMP1(Dentin matrix protein 1)、CAP(Cementum attachment protein)、COL3(collagen type III)およびペリオスチン(Periostin)のいずれか1つ以上の遺伝子発現促進用組成物を提供する。
【0108】
K-Y-K-Q-X5-X6-X7-X8-Y-K(一般式1)
前記一般式1において、
X5~X7は、それぞれ独立してアルギニン(R)またはリシン(K)であり、
X8は、アスパラギン(N)またはセリン(S)である。
【0109】
一具体例において、前記ペプチドは、配列番号1~16のいずれか1つのアミノ酸配列を含むものであり得る。
【0110】
他の具体例において、前記ペプチドは、配列番号1~16のいずれか1つのアミノ酸配列で必須的に構成されたものであるか、または前記ペプチドは配列番号1~16のいずれか1つのアミノ酸配列からなるものであり得る。
前記ペプチドに関する説明は前述の通りである。
【0111】
前記ペプチドは、ヒト歯周靭帯細胞において骨芽細胞およびセメント芽細胞分化マーカー遺伝子であるBSP、DMP1、CAPの発現を増加させ、歯周靭帯分化マーカー遺伝子であるペリオスチンとCOL3との発現を増加させることを確認した。また、前記ペプチドは、ヒト間葉系幹細胞において骨芽細胞およびセメント芽細胞分化マーカー遺伝子であるBSPおよびDMP1の発現を増加させることを確認した。
【0112】
本発明の技術的課題を解決するためのまた他の態様は、歯周疾患または脱臼性外傷歯の治療を必要とする個体に、有効量の前記ペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩を投与する段階を含む、個体において歯周疾患または脱臼性外傷歯を治療する方法を提供する。
【0113】
「個体」とは、疾患の治療を必要とする対象のことを意味し、より具体的にヒトまたは非ヒトである霊長類、マウス、ラット、犬、猫、馬、および牛などの哺乳類のことを意味する。
【0114】
「有効量」は、患者に一回または複数回の用量で投与された際、診断または治療下で患者に所望の効果を提供する、前記ペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩の量または用量のことを指す。有効量は、公知の技術を使用することによって、または類似の環境下で得られた結果を観察することによって、関連技術分野の通常の技術者として主治医の診断によって容易に決定され得る。患者に対する有効量を決定する際、哺乳動物種;その大きさ、年齢、および一般的な健康状態;係わっている具体的な疾患または障害;疾患または障害の関与程度または重症度;個別患者の反応;投与される特定の化合物;投与モード;投与される製剤の生体利用性の特徴;選択された投薬療法;同時薬物処置使用;および他の関連する環境を含むが、これに制限されない多数の因子が主治医の診断によって考慮される。
【0115】
「投与」は、任意の適切な方法により患者に所定の物質を導入することを意味する。投与経路は、患者の生体内ターゲットに到達し得る任意の一般的な経路であり得る。前記投与は、例えば、腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、経口投与、局所投与、鼻腔内投与、直腸内投与であり得るが、これらに制限されない。
【0116】
前記歯周疾患または脱臼性外傷歯の治療は、歯周組織の再生によるものであり得るが、これに制限されない。
【0117】
前記方法において、有効量の前記ペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩は、有効量の1つ以上の他の活性成分と同時に、個別にまたは順次に投与し得る。前記1つ以上の他の活性成分は、歯周疾患または脱臼性外傷歯を治療するための1つ以上の他の製剤であり得るが、これらに制限されない。
【0118】
前記技術的課題を解決するための本発明のまた他の態様は、歯周疾患または脱臼性外傷歯の予防または治療用薬剤を製造するにおいて、前記ペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩の用途を提供する。
【0119】
本願において開示されるすべての数値は「約」の意味を含み得る。「約」は、±0.5、±0.4、±0.3、±0.2、±0.1などを全て含む範囲であり、約という用語に続く数値と同等または類似範囲の数値を全て含むが、これに制限されない。
【0120】
本願において開示される各々の説明および実施形態は、他の各説明および実施形態にも適用され得る。つまり、本願に開示される様々な要素のすべての組み合わせが本発明の範疇に属する。なお、下記に述べる具体的な記述によって本発明の範疇が制限されるとは言えない。
【発明の効果】
【0121】
本発明による歯周疾患または脱臼性外傷歯の予防または治療用薬学的組成物は、歯周靭帯、歯槽骨および白亜質を含む歯周組織の再生および歯周靭帯の付着を促進するので、歯周疾患および脱臼性外傷歯のような損傷した結合組織の復元用として使用され得る。したがって、前記ペプチドは、薬学的組成物、医薬外品組成物、健康機能食品組成物などとして多様に利用され得る。
【0122】
本発明の効果は、前記で述べたものに制限されず、言及されていない他の効果は、下記記載から本発明が属する技術分野の通常の知識を有する者に明確に理解され得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0123】
図1図1は、実施例1で製造したグループ1およびグループ2のペプチドが、ヒト歯周靭帯細胞(hPDL)において骨芽細胞およびセメント芽細胞分化マーカー遺伝子であるBSP、DMP1およびCAPの発現に及ぼす影響を示すグラフである。
図2図2は、実施例1で製造したグループ1およびグループ2のペプチドが、ヒト間葉系幹細胞(hBMSCs)において骨芽細胞分化マーカー遺伝子であるBSPおよびDMP1の発現に及ぼす影響を示す結果である。
図3図3は、実施例1で製造したグループ1およびグループ2のペプチドが、ヒト歯周靭帯細胞において歯周靭帯マーカー遺伝子である第3型コラーゲン線維遺伝子(COL3)とペリオスチン遺伝子の発現に及ぼす影響を示す結果である。
図4図4は、歯周組織損傷部位に実施例1のペプチド(配列番号16)を処理し、3ヶ月後にヘマトキシリン/エオシンで染色した組織写真であり、ペプチドが歯槽骨再生に及ぼす影響を確認した結果である。Aは、陽性対照群(Positive Control:PC)を示し、Bは、歯周組織損傷後何も処理していない陰性対照群(NC)を示し、Cは、歯周組織損傷後コラーゲンスポンジのみ植立した陰性対照群(NC+Plug)を示し、Dは、グループ2(配列番号16)のペプチドを処理した実験群を示す。ABは歯槽骨を意味し、Deは象牙質を意味する。
図5図5は、歯周組織損傷部位に実施例1のペプチド(配列番号16)を処理し、3ヶ月後ペプチドが歯周靭帯組織再生に及ぼす影響をヘマトキシリン/エオシンの染色により確認した結果である。A~Dは、何も処理していない陰性対照群(NC)を示し、E~Hは、コラーゲンスポンジのみ植立した陰性対照群(NC+Plug)を示し、I~Lは、グループ2(配列番号16)のペプチドを処理した実験群を示す。ABは歯槽骨を意味し、Deは象牙質を意味し、CEは白亜質を意味し、CTは結合組織を意味し、NPDは新たに形成された歯周靭帯類似組織を意味し、NCEは新たに形成された白亜質類似組織を意味する。サイズバー:A、E、I、M:500μm;B、F、J、N:200μm;C、G、K、O:100μm;D、H、L、P:50μm。
図6図6は、歯周組織損傷部位に実施例1のペプチド(配列番号16)を処理し、3ヶ月後ペプチドが歯周靭帯組織再生に及ぼす影響をコラーゲン染色(Masson’s trichrome stain)法により確認した結果である。A、Bは、何も処理していない陰性対照群(NC)を示し、C、Dは、コラーゲンスポンジのみ植立した陰性対照群(NC+Plug)を示し、E、Fは、グループ2(配列番号16)のペプチドを処理した実験群を表す。ABは歯槽骨を意味し、Deは象牙質を意味し、CEは白亜質を意味し、CTは結合組織を意味し、NPDは、新たに形成された歯周靭帯類似組織を意味し、NCEは、新たに形成された白亜質類似組織を意味する。サイズバー:A、C、E、G:100μm;B、D、F、H:50μm。
【発明を実施するための形態】
【0124】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。しかしながら、これらの実施例は本発明を例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0125】
(実施例1:ペプチドの合成)
下記表1に記載のアミノ酸配列からなる16個のペプチドをそれぞれ合成した。ここで、8番アミノ酸がアスパラギン(N)であるペプチドをグループ1とし、8番アミノ酸がセリン(S)であるペプチドをグループ2とした。
【0126】
【表1】
【0127】
[実験材料および方法]
1.細胞培養
hBMSCs細胞は、5%のCOを含む湿った空気の37℃条件で培養され、実験に使用された。ヒト由来間葉系幹細胞(hBMSCs)は、ロンザ(LONZA、スイス)社から購入して使用した。hBMSCsは、10%熱不活性化したウシの血清が添加されたα-MEM(Invitrogen)培養液にて培養した。
【0128】
2.ヒト歯周靭帯細胞分離および培養
ヒト歯周靭帯細胞(hPDL細胞)は、ソウル大学歯科病院にて成人10人(18才~22才)の親知らずの歯周靭帯組織から細胞を分離した。具体的に、すべての実験は、臨床研究審議委員会(hospital's Institutional Review Board)から承認を受けた後、患者の同意を得て行われており、親知らずの歯根に付いている歯周靭帯組織を分離して両面刃で細かく切って60mm皿に入れ、カバースリップで覆った後、ダルベッコ改変イーグル培地にて培養した。
【0129】
3.リアルタイムPCR分析
TRIzol試薬を用いて、ヒト歯周靭帯細胞の全RNAを分離した。2μgの全RNAと逆転写酵素1ulと0.5μgのオリゴ(dT)とを用いてcDNAを合成した。合成したヒト歯周靭帯細胞のcDNAを、下記表2のプライマーを用いたリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応に利用した。リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応は、SYBR GREEN PCR Master Mix(TAKARA社、日本)を用いてABI PRISM 7500シーケンス検出システム(sequence detection system)(Applied Biosystems)で行われた。リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応は、94℃、1分;95℃、15秒;60℃、34秒を40サイクル繰り返す条件で行った。結果の分析は、CT(comparative cycle threshold)法を用いた。
【0130】
【表2】
【0131】
4.歯周組織損傷モデルにおけるペプチドの歯周組織再生への影響評価
4匹のビーグル犬(12~16kg;6~8週齢)にゲルローランを吸入させて麻酔させ、ゾレチル(Zoletil、5mg/kg)とキシラジン(xylazine、0.2~0.5mg/kg)を静脈注射した後、リドカインを処理した(Lidocaine 2% with 1:80000 epinephrine)。前記ビーグル犬の下顎骨から4番小臼歯と2番大臼歯を抜歯した後、3ヶ月間治癒されるのを待った。
【0132】
治癒の3ヶ月後に1番大臼歯の遠心面と近心面に3壁性歯周欠損を誘導した。その後、歯根の周りに頬舌側および遠心側の骨が残っている状態で4×4×4mm大きさの歯周損傷を形成し、歯根部の歯槽骨を確実に削除した後、キュレットを用いて歯根面滑沢術を行った後、1/2ラウンドバーを用いて前歯に凹みを形成した。
【0133】
次いで、実験群は、欠損部位に50μgの実施例1で製造したペプチド(グループ2の配列番号16)を含むコラーゲンスポンジ(ペプチドを生理食塩水に1μg/μl濃度で溶解したペプチド溶液を製造した後、EPチューブにペプチド溶液50μl(50μg)を加えた後、コラーゲンスポンジを5分間浸漬して製造した)を移植ししており、欠損後何の処理もしていない陰性対照群(NC)とコラーゲンスポンジ(コラーゲンスポンジを生理食塩水50μlに5分間浸漬して製造した)のみ骨欠損部の内部骨壁に位置させ移植した陰性対照群(NC+Plug)を3ヶ月後に犠牲にして組織学的評価を行った。
【0134】
3ヶ月後、前記ビーグル犬に過量(90~120mg/kg)のペントバビタールを投与して犠牲にした。前記ビーグル犬の歯部位を摘出し、10%ホルマリンで固定した後、5%ギ酸を加えてカルシウムを除去し、成形し、パラフィンに包埋した後、5μm厚の組織切片を得た。
【0135】
前記得られた組織切片をヘマトキシリンとエオシンで染色したり、歯周靭帯再生を確認するためにコラーゲン染色(Masson's Trichrome Staining)した後、デジタルカメラ(LEICA ICC50 camera、ドイツ)が装着されている光学顕微鏡(LEICA DM750、ドイツ)を用いて分析した。
【0136】
[実験結果]
(実験例1:ペプチドがヒト歯周靭帯細胞において骨芽細胞およびセメント芽細胞分化マーカー遺伝子発現に及ぼす影響)
BSPとDMP1遺伝子は、骨芽細胞とセメント芽細胞の分化マーカーとして使用され、骨と白亜質の石灰化に重要な遺伝子として知られている。また、CAP遺伝子は、分化したセメント芽細胞で発現され、歯周靭帯繊維束の白亜質付着に関与する遺伝子として知られている。
【0137】
図1は、実施例1で製造したグループ1およびグループ2のペプチドが、ヒト歯周靭帯細胞(hPDL)において骨芽細胞およびセメント芽細胞分化マーカー遺伝子BSP、DMP1およびCAPの発現に及ぼす影響を示すグラフである。
【0138】
図1に示すように、グループ1とグループ2のペプチドを処理した実験群では、対照群に比べてBSP、DMP1、およびCAP遺伝子発現が約2倍以上増加したことを確認した。
【0139】
表3は、グループ1およびグループ2のペプチド群がBSP mRNA発現に及ぼす影響をリアルタイムPCRで確認した結果であり、対照群に対する相対的mRNA発現の程度を示すものである。
【0140】
表4は、グループ1およびグループ2のペプチド群が、CAP mRNA発現に及ぼす影響をリアルタイムPCRで確認した結果であり、対照群に対する相対的mRNA発現の程度を示すものである。表3および表4に示す結果は、実験を3回繰り返し実施して得た平均値と標準偏差(SD)である。
【0141】
【表3】
【0142】
【表4】
【0143】
(実験例2:ペプチドがヒト間葉系幹細胞において骨芽細胞およびセメント芽細胞分化マーカー遺伝子発現に及ぼす影響)
図2は、実施例1で製造したグループ1およびグループ2のペプチドが、ヒト間葉系幹細胞において骨芽細胞およびセメント芽細胞分化マーカー遺伝子の発現に及ぼす影響を示す結果である。
【0144】
図2に示すように、ペプチドグループ1およびグループ2をヒト間葉系幹細胞に処理した際、対照群と比較して骨芽細胞およびセメント芽細胞分化マーカー遺伝子であるBSPおよびDMP1の発現を約2倍から4倍まで増加させることを確認した。
【0145】
(実験例3:ペプチドがヒト歯周靭帯細胞において歯周靭帯分化マーカー遺伝子発現に及ぼす影響)
ペリオスチンは、歯周靭帯と骨のペリオスチウムで初めて発見されたタンパク質で、発生中の歯の歯周靭帯と間葉で発現し、細胞の付着に関与するものと知られている。最近の様々な研究によると、ペリオスチンは歯周組織形成の重要な調節因子として、コラーゲン線維質生成および線維芽細胞と骨芽細胞との移動を促進し、歯周疾患を治療するための歯周手術後の歯周靭帯および歯槽骨の再生に中枢的な役割を果たすことが知られている。したがって、実施例1のペプチドが、歯周靭帯分化マーカー遺伝子であるペリオスチンと第3型コラーゲン線維遺伝子(COL3)との発現に及ぼす影響を確認した。
【0146】
図3は、実施例1で製造したグループ1およびグループ2のペプチドが、ヒト歯周靭帯細胞において歯周靭帯マーカー遺伝子である第3型コラーゲン線維遺伝子(COL3)とペリオスチン遺伝子との発現に及ぼす影響を示した結果である。
【0147】
図3から分かるように、ヒト歯周靭帯細胞にペプチドグループ1およびグループ2を処理した際、第3型コラーゲン線維遺伝子(COL3)とペリオスチン遺伝子との発現が2倍以上増加することを確認した。
【0148】
表5は、グループ1およびグループ2のペプチド群が、ペリオスチンmRNA発現に及ぼす影響をリアルタイムPCRで確認した結果であり、対照群に対する相対的mRNA発現程度を示している。表5に示す結果は、実験を3回繰り返し実施して得た平均値と標準偏差(SD)である。
【0149】
【表5】
【0150】
(実験例4:歯周組織損傷動物モデルにおけるペプチドの歯周組織再生効果の検証)
4匹のビーグル犬下顎骨から4番小臼歯と2番大臼歯とを抜歯した後、3ヶ月間治癒されるのを待った後、治癒3ヶ月後に1番大臼歯の遠心面と近心面に3壁性歯周欠損を誘導した。その後、歯根の周りに頬舌側および遠心側の骨が残っている状態で、4×4×4mmの大きさの歯周組織損傷を形成した後、歯根部の歯槽骨を確実に削除し、キュレットを用いて歯根面滑沢術を施して前歯に凹みを形成した。次いで、実験群は、欠損部位に50μgの実施例1のペプチド(配列番号16)を含むコラーゲンスポンジを移植し、欠損後何の処理もしていない陰性対照群(NC)とコラーゲンスポンジのみ欠損部内骨壁に位置させ移植した対照群(NC+Plug)を3ヶ月後に犠牲にして組織学的評価を行った。
【0151】
図4は、歯周組織損傷部位に実施例1のペプチド(配列番号16)を処理し、3ヶ月後ヘマトキシリン/エオシンで染色した組織写真であり、ペプチドが歯槽骨再生に及ぼす影響を確認した結果である。
【0152】
図4に示すように、前記実験群は、陰性対照群と比較して損傷した歯周組織の大部分で歯槽骨が再生されたことが確認された。
【0153】
図5は、歯周組織損傷部位に実施例1のペプチド(配列番号16)を処理し、3ヶ月後にペプチドが歯周靭帯組織再生に及ぼす影響をヘマトキシリン/エオシンの染色により確認した結果である。
【0154】
図5に示すように、何も処理していない陰性対照群(図5A-D)またはコラーゲンスポンジのみ植立した陰性対照群(図5E-H)は、歯根面に沿って新生歯周靭帯類似組織(NPD)が観察できず、結合組織(CT)が形成されたことが観察された。また、歯槽頂部位の象牙質は吸収が起こったことが観察された。しかし、グループ2のペプチド(配列番号16)(図5I-L)を処理した実験群は、歯根面に沿って新生白亜質類似組織が観察されるとともに、新生歯周靭帯類似組織形成も観察された。新生歯周靭帯は、新たに形成された歯槽骨と白亜質に陥入していた。
【0155】
図6は、歯周組織損傷部位に実施例1のペプチド(配列番号16)を処理し、3ヶ月後ペプチドが歯周靭帯組織再生に及ぼす影響をコラーゲン染色(Masson's trichrome stain)法により確認した結果である。
【0156】
図6に示すように、何も処理していない陰性対照群(図6A、B)またはコラーゲンスポンジのみ植立した陰性対照群(図6C、D)は、歯根面に沿って大部分結合組織(CT)が形成されたことが観察されており、一部では新生歯周靭帯類似組織(NPD)が観察されているが、歯周靭帯繊維束は不規則に配列されていた。また、陰性対照群は、歯根に沿って一部において新生白亜質が形成されたことが観察された。一方、グループ2のペプチド(配列番号16)(図6E、F)を処理した実験群は、歯根面に沿って新生白亜質類似組織が観察されるとともに、新生歯周靭帯類似組織の形成も観察された。新生歯周靭帯繊維束は、新たに形成された歯槽骨と白亜質に垂直して陥入していた。
【0157】
このように、本発明のペプチドは、歯槽骨を再生し、新生白亜質類似組織および新生歯周靭帯類似組織を形成する効果があり、本発明のペプチドによって形成された新生歯周靭帯は、新たに形成された歯槽骨および白亜質に含入されていることを確認した。したがって、本発明のペプチドは、歯周組織再生用、歯周疾患の予防または治療用、脱臼性外傷歯の予防または治療用に使用し得ることが分かった。
【0158】
本明細書および図面には、本発明の好ましい実施例について開示しており、特定の用語が使用されているが、これは単に本発明の技術内容を分かりやすく説明し、発明の理解を助けるための一般的な意味で使用されたものであり、本発明の範囲を限定しようとするものではない。ここに開示の実施例に他にも、本発明の技術的思想に基づく他の変形例が実施可能であることは、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者に自明のことである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
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