(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】三次元網状構造体
(51)【国際特許分類】
A47C 27/12 20060101AFI20240930BHJP
D04H 3/033 20120101ALI20240930BHJP
【FI】
A47C27/12 M
A47C27/12 B
D04H3/033
(21)【出願番号】P 2023131112
(22)【出願日】2023-08-10
【審査請求日】2023-10-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】300054206
【氏名又は名称】株式会社シーエンジ
(74)【代理人】
【識別番号】100103207
【氏名又は名称】尾崎 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】高岡 佳久
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-130283(JP,A)
【文献】特開2022-033210(JP,A)
【文献】特開2020-141784(JP,A)
【文献】国際公開第2012/157289(WO,A1)
【文献】特開2016-214762(JP,A)
【文献】登録実用新案第3217938(JP,U)
【文献】実開昭60-079357(JP,U)
【文献】実開昭60-083618(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 27/00-22
D04H 3/033
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体平均嵩密度が0.01~1.5g/cm
3であり、ランダムループを有する複数の連続線条が部分的に融着され、クッションとして用いられる三次元網状構造体であって、
三次元網状構造本体と、
該三次元網状構造本体の特定の表面に形成され、厚み方向に突出する複数個の凸部
(頂部が平坦なものを除く)を備え、
前記複数個の凸部の形状はおわん型、円錐型、山形、または多角錐型であり、
前記複数個の凸部は
、第1方向において、該凸部の頂部よりも高さの低い底部を介在させて連続して設けられ
、かつ、前記複数個の凸部は、第1方向と直交する第2方向において、該凸部の頂部よりも高さの低い底部を介在させて連続して設けられ、
前記複数個の凸部のうち少なくとも一つの凸部の平均嵩密度は前記三次元網状構造本体の平均嵩密度の
1.05~4倍である、
三次元網状構造体。
【請求項2】
前記複数個の凸部のうち少なくとも一つの凸部は、表面層と該表面層で被覆される中心部を有し、前記表面層は前記中心部よりも嵩密度が高いことを特徴とする、
請求項
1に記載の三次元網状構造体。
【請求項3】
前記複数個の凸部のうち少なくとも一つの凸部の前記中心部の平均嵩密度は、前記三次元網状構造本体の内部の平均嵩密度よりも高いことを特徴とする、請求項
2に記載の三次元網状構造体。
【請求項4】
前記凸部の配列は千鳥状であり、前記凸部および前記底部は、それぞれ前記三次元網状構造本体の内部よりも高い嵩密度を有する表面層を有し、前記底部における表面層は前記凸部の表面層よりも厚みが大きいか、または、前記底部の表面層の直下に連続して高密度部が存在することを特徴とする、請求項
1に記載の三次元網状構造体。
【請求項5】
前記凸部の数が1m
2あたり100~2500個である、請求項1に記載の三次元網状構造体。
【請求項6】
ウレタンフォーム、不織シート、および別の三次元網状構造体のうち少なくとも一つと積層されるか、または、前記凸部を被覆するカバーとしてウレタンフォーム、不織布、またはダブルラッセル生地と積層される、請求項
1に記載の三次元網状構造体。
【請求項7】
前記凸部の配列は、直列状、千鳥状、又は格子状である、請求項
1に記載の三次元網状構造体。
【請求項8】
指圧器具に用いられる、請求項
1に記載の三次元網状構造体。
【請求項9】
内部または下部に振動体が配置される、請求項8に記載の三次元網状構造体。
【請求項10】
前記凸部の高さまたは平均嵩密度は、前記三次元網状構造体の領域によって異なる、請求項
1に記載の三次元網状構造体。
【請求項11】
前記凸部は、前記三次元網状構造本体の上面と下面に形成され、上面に形成された凸部の形状、嵩密度、高さ、または配置が下面に形成された凸部とは異なる、請求項
1に記載の三次元網状構造体。
【請求項12】
前記凸部が形成された特定の表面に、熱加工または超音波加工による窪み部、または傾斜部が形成され、該窪み部、該傾斜部には前記凸部が残っている、請求項
1に記載の三次元網状構造体。
【請求項13】
前記三次元網状構造体が長さ方向または横方向に伸長するのを抑制する伸長防止部材を備え、前記伸
長防止部材は、少なくとも対向する二つの側面に存在する、前記三次元網状構造本体の平均嵩密度よりも高い高密度を有する高密度側面部であることを特徴とする、請求項
1に記載の三次元網状構造体。
【請求項14】
請求項
1の三次元網状体を含む、シートクッション、マットレス、枕または椅子。
【請求項15】
複数に分割可能なマットレスであって、少なくとも一つの分割体が、請求項
1に記載の三次元網状構造体であることを特徴とする、マットレス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マットレス、フロアーマット、シートクッション等のクッションに使用される、表面に凹凸が形成された三次元網状構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の特許出願人の三次元網状構造体のマットレスの表面は、特許文献1~3に示す通り、基本的には、平滑であり、さらに硬めで高反発が特徴であったことにより、体型がしっかりしている方に好まれていた。また、やせ型の方のために、樹脂の種類を変更し、ノズルの形状、製造方法の調整などで柔らかい製品も提供している。
【0003】
特許文献4は、弾力性、圧縮抵抗力、保温性、吸湿性、吸音性などに優れ、特に寝具用詰物としての繊維成形品を提供することを目的とし、捲縮形態を持った詰物用繊維を接着剤で3次元的に接着させ、該繊維の捲縮形態ならびに捲縮による捲縮特性を実質的に保有する繊維成形品の表面全体に凹凸を設けた繊維成形品を開示している。
【0004】
一方、他の素材として、高反発ウレタンフォームから成るマットレスが広く採用されている。日本等では硬めのマットレスが好まれること、また、へたりを抑えるという目的から、硬めのウレタンフォームが採用されることが多い。
【0005】
硬めのウレタンフォームを表面がフラットなまま、マットレスとして使用した場合、背中や腰を痛めやすく、腰などが圧迫を受けて褥瘡ができやすいという問題があるため、表面にプロファイル加工(もしくはSurface Modification Technology加工)が施されることがある。プロファイル加工とは、シート状の素材に対し「プロファイル」(表面の凹凸)を作る加工である。このプロファイル加工により、凸凹が体に当たる部分と当たらない部分をつくり、「体圧分散効果」や「通気効果」を出すことができる。また、凹凸により形成される空気の層により、夏は涼しく、冬はあたたかく、快適に過ごすことができる。また、発汗による蒸れを低減でき、寝心地が良くなるという利点もある。
【0006】
ウレタンフォームの表面全体に均一のプロファイル加工を施すものもあれば、人の体の生理的湾曲(背中のくびれや臀部のでっぱり)を考慮し、フィット感を向上するために、部位ごとに柔らかさが異なる加工を施すものもある。
【0007】
特許文献5は、より快適な睡眠を提供することを目的とし、熱可塑性樹脂からなる三次元立体構造網状体と、三次元立体構造網状体に積層される軟質ウレタンフォームと、三次元立体構造網状体と軟質ウレタンフォームを収納する収納体と、を備えた積層構造マットレスであって、軟質ウレタンフォームはプロファイル加工されており、当該加工面の反対側の面が三次元立体構造網状体と接するように重ね合わせることを特徴とする積層構造マットレスを開示している。
【0008】
特許文献6は、縦方向において前記立体網状構造体の乾燥熱風試験前後の熱伸長率が0~8%である網状構造体から成るクッション用中材を開示し、製造時にロール表面を連続的に形成された凹凸形のものとすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2006-200118号公報
【文献】国際公開第2016/125766号
【文献】特許第5454733号公報
【文献】特開昭55-103345号公報
【文献】特開2015―211703号公報
【文献】特開2017―226230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1~3に示す三次元網状構造体は、マットレスとして用いた場合、幅広い体型の需要者に導入してもらうには、さらなる寝心地の修正が必要である。硬い下層と柔らかい上層を含む2層成形などの製品や、部位ごとにマットレスの硬さを変えている三次元網状構造体もあるが、未だ十分ではない。
【0011】
特許文献4に示す三次元網状構造体は、捲縮を付与された繊維同士を接着剤で接合したものである。接着剤が必須構成であるため、構造体がへたりやすくなるおそれがあり、耐久性に課題が残る。また、やせ型等の人体の体型に応じた技術的な考慮が欠如している。
【0012】
特許文献5のような、プロファイル加工したウレタンフォームを使用するマットレスについては、世界的に脱ウレタンの流れがあること、さらにウレタンフォームのプロファイル加工品は高反発ウレタンフォームを使っているものが大半であり、やせ型の使用者にとっては多少凹凸を感じる程度で明確な効果が少ないこと、好みが分かれ、柔らかさを追求すると、すぐにへたってしまう等の問題がある。
【0013】
また、プロファイル加工の凸部がつぶれ、通気性が損なわれるおそれがある。当然、カビなどの発生につながる。さらに、凸部の耐久性が低く、プロファイル加工による効果を持続する期間が不十分である。また、ウレタンフォームのマットレスは、プロファイル加工をしても、指圧効果が少なく、寝返りがしにくいという問題もある。
【0014】
さらに、ウレタンフォームのマットレスは、荷重分散で底付きしやすい。寝姿勢において、身体全体に対する腰部分の荷重は44%、背中領域の荷重は33%といわれており、体の部分により重さは異なり、その対策が必要とされるのであるが、適切な改善策、製造方法は開発途上である。そのため、理想的な寝姿勢(ゆるやかなS字ライン)が得られにくい。
【0015】
特許文献6の網状構造体は、製造時にロール表面を連続的に形成された凹凸形のものとしても、下方向の滑りが発生し、成形品の凸部の嵩密度が低くなったり欠損したりすることもある上に、表面層も形成できないため、凸部による指圧効果等の機能も低く、凸部の耐久性も低かった。
【0016】
例えばフロアクッション、事務椅子の足置きとして用いるクッション材として用いられる場合、凹凸によるマッサージ効果のある三次元網状構造体が求められており、凸部の耐久性が求められる。
【0017】
本発明は、表面の凹凸により指圧効果、通気性、または荷重分散の機能を高め、表面の凸部の耐久性を高めることによりそれらの機能を長期間に亘って持続できる、三次元網状構造体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、全体平均嵩密度が0.01~1.5g/cm3であり、ランダムループを有する複数の連続線条が部分的に融着され、クッションとして用いられる三次元網状構造体であって、三次元網状構造本体と、該三次元網状構造本体の特定の表面に形成され、厚み方向に突出する複数個の凸部(頂部が平坦なものを除く)を備え、前記複数個の凸部の形状はおわん型、円錐型、山形、または多角錐型であり、前記複数個の凸部は、第1方向において、該凸部の頂部よりも高さの低い底部を介在させて連続して設けられ、かつ、前記複数個の凸部は、第1方向と直交する第2方向において、該凸部の頂部よりも高さの低い底部を介在させて連続して設けられ、前記複数個の凸部のうち少なくとも一つの凸部の平均嵩密度は前記三次元網状構造本体の平均嵩密度の1.05~4倍である、三次元網状構造体である。
【0019】
ここで、「凸部」とは、底部の上端同士をつないだ仮想線よりも上部が凸部として定義される。また、「三次元網状構造本体の平均嵩密度」とは、上面および/または下面に形成された凸部を除いた部分の平均嵩密度として定義される。
【0020】
ここでいう「クッション」とは、マットレスの中材、車両座席シートの中材、椅子の中材、枕の中材、又はフロアクッション等を含む。用途は、愛玩動物用、医療用、獣医科用、歯科用、座布団、身障者用、スポーツ、登山、キャンプ、訓練用、競技用、リハビリテーションを含む運動用治具等を含む。
【0021】
「クッション」の形状は、直方体、立方体のほかに、曲面形状、枕形状、楕円形状体等の異形形状、又はそれらの組み合わせ等の形状を含む。凸部は、クッションの特定の表面に複数個設けられれば、課題は達成できる。
【0022】
前記複数個の凸部のうち少なくとも一つの凸部は、表面層と該表面層で被覆される中心部を有し、前記表面層は前記中心部よりも嵩密度が高いことが好ましい。
【0023】
前記複数個の凸部のうち少なくとも一つの凸部の前記中心部の平均嵩密度は、前記三次元網状構造本体の内部の平均嵩密度よりも高いことが好ましい。
【0024】
ここで、「三次元網状構造本体の内部」とは、高密度表面層や高密度側面部がある場合にそれを除く部分である。
【0025】
前記凸部の配列は千鳥状であり、前記凸部および前記底部は、それぞれ前記三次元網状構造本体の内部よりも高い嵩密度を有する表面層を有し、前記底部における表面層は前記凸部の表面層よりも厚みが大きいか、または、前記底部の表面層の直下に連続して高密度部が存在することが好ましい。また、前記凸部の表面層の嵩密度は前記三次元網状構造本体の平均嵩密度の1.01~7倍であることが好ましい。
【0026】
前記凸部の数が1m2あたり100~2500個であることが好ましい。
【0027】
ウレタンフォーム、不織シート、および別の三次元網状構造体のうち少なくとも一つと積層されるか、または、前記凸部を被覆するカバーとしてウレタンフォーム、不織布、またはダブルラッセル生地と積層されることが好ましい。
【0028】
ここで、「別の三次元網状構造体」とは、表面がフラットなもの、片面または両面に筋状に凸部があるもの、または直列、千鳥、格子状におわん型、円錐型、山型等の凸部が配置されるものを含む。
【0030】
前記凸部の配列は、直列状、千鳥状、又は格子状であることが好ましい。前記三次元網状構造体は指圧器具に用いられることが好ましい。また、前記三次元網状構造体は、内部または下部に振動体が配置されることが好ましい。
【0031】
前記凸部は筋状であることも好ましい。
【0032】
前記凸部の高さまたは平均嵩密度は、前記三次元網状構造体の領域によって異なることが好ましい。
【0033】
前記凸部は、前記三次元網状構造本体の上面と下面に形成され、上面に形成された凸部の形状、嵩密度、高さ、または配置が下面に形成された凸部とは異なることが好ましい。
【0034】
前記凸部が形成された特定の表面に、熱加工または超音波加工による窪み部、または傾斜部が形成され、該窪み部、該傾斜部には前記凸部が残っていることが好ましい。
【0035】
前記三次元網状構造体が長さ方向または横方向に伸長するのを抑制する伸長防止部材を備え、前記伸長防止部材は、少なくとも対向する二つの側面に存在する、前記三次元網状構造本体の平均嵩密度よりも高い高密度を有する高密度側面部であることが好ましい。
【0036】
前記凸部は、前記特定の面の一部の領域のみに形成されていることが好ましい。
【0037】
本発明は、上記三次元網状体を含む、シートクッション、マットレス、枕または椅子である。また、本発明は、複数に分割可能なマットレスであって、少なくとも一つの分割体が、上記三次元網状構造体であることを特徴とする、マットレスである。
【発明の効果】
【0038】
本発明の三次元網状構造体は、指圧、通気性向上、または荷重分散等の効果を奏する。例えばマットレスに用いた場合では、寝返りもし易くなる。凸部の嵩密度を上げた反発力の高い素材にでき、凸部の耐久性が高い。
【0039】
三次元網状構造体の荷重分散性等を凸部の表面層、嵩密度、凸部の大きさや形状、凸部の面積当りの個数により調整でき、使用者の体型や好みに適する性能・機能を備えたクッションを提供できる。例えば、やせ型の使用者のために、凸部の表面層、嵩密度、凸部の大きさ等を調整することにより柔らかな感触を得られる三次元網状構造体を提供することもできる。さらに領域によって凸部の高さや嵩密度を変えることによって、身体の部位に合わせた感触を得ることができる。凸部は、線条体の融着点数や融着強度、嵩密度を高くすることにより、耐久性がさらに向上される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】第1実施形態の三次元網状構造体のシート写真平面図である。
【
図5】同三次元網状構造体の断面模式図(
図1のA―A断面模式図)である。
【
図6】第2実施形態の三次元網状構造体のマットレスの写真斜視図である。
【
図12】
図12A~Eは三次元網状構造体の製造過程の模式図である。
【
図13】
図13A、Bは三次元網状構造体の加工を説明する図である。
【
図14】
図14A~Eは、三次元網状構造体の高密度部を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1~5を参照して、第1実施形態の三次元網状構造体1(以下、単に構造体1とも称する。)について説明する。なお、以下に示す各実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の各実施形態に限定するものではない。構造体1は、熱可塑性樹脂からなる連続線条からなるランダムなループを互いに溶融状態で溶着させた立体スプリング構造体である。
【0042】
構造体1は、クッションとして使用でき、例えば椅子や車両用座席のシートクッションとして利用可能である。
図1~4は説明のために適宜の切断を施したものであり、切断された後の大きさは縦45cm×横45cm×最大厚み3cmである構造体である。ランダムループを有する複数の連続線条が部分的に融着される三次元網状構造であり、上面1a、4つの側面1b、下面1cの六面体である。全体の平均嵩密度が0.01~1.5g/cm
3が好ましく、0.01~1.2g/cm
3がさらに好ましい。
【0043】
図1、2、5に示される通り、三次元網状構造体1の上面1aにおいて、厚み方向(Z方向)に突出する、おわん型の凸部2が平面視で千鳥状に形成される。上面1aには、凸部2が底部3を介してX方向に複数個並んだ複数の列Rが形成され、X方向に直交するY方向においても、凸部2が底部3を介して複数個並ぶ複数の行Lが形成される。底部3は特定の、または全体の領域において側面視で最も低い表面を持つ部分であり、凸部2同士の境界部でもある(
図5参照)。上面1aにおいて、底部3も平面視で千鳥状に配置される。凸部2は、三次元網状構造体1の上面1aの全面に亘って形成されているが、それに限定されず、一部の領域のみに形成されていてもよい。
【0044】
複数の凸部2は底部3を介在させて連続的に形成される。凸部2の数は1m2あたり、100~2500個が好ましく、250~450個がさらに好ましい。凸部2の形状は頂部が丸いおわん型であるが、それに限定されず、円錐形、山型形、多角錐でもよい。また、各凸部2の高さや嵩密度は、均一でもよいし、領域によって異なるように設けてもよい。凸部2は、頂部を2個又は3個含む形状でもよく、頂部が平らな形状でもよい。凸部2の形状は、アンダーカット又は逆テーパーではないことが好ましい。凸部2の配置は、千鳥状に限定されず、直列状や格子状でもよく、要求に応じて決定される。
【0045】
図4、5に示されるとおり、三次元網状構造体1の下面1cには厚み方向(-Z方向)に突出する、筋状凸部4と、筋状底部5とが製造時の押し出し方向に設けられている。筋状凸部4の高さは4~70mmが好ましい。筋状凸部4と、筋状底部5は押し出し方向と直交する方向に設けられてもよい。筋状凸部4は、三次元網状構造体1の下面1cの全面に亘って形成されているが、それに限定されず、一部の領域のみに形成されていてもよい。
【0046】
連続線条を構成する主材料としては、例として、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン樹脂、ポリエチレン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、プロピレン系熱可塑性エラストマー、それらの混合物が採用できる。材料には、不燃剤、難燃剤等の機能材も適宜含むことができ、線条体を着色したい場合は、溶融時に着色マスターバッチを混合する。
【0047】
構造体1を構成する線条体は、断面が中実、中空、異形のものが適宜採用され、線条体の線径(直径)は、中実の場合は、0.1~3.0mm、さらには0.3~1.5mmが好ましく、異形、中空の場合は、0.2~5.0mmが好ましい。
【0048】
図1~4の構造体1は、本発明の一例であり、平均嵩密度が0.068g/cm
3、線条体はポリエチレン樹脂から成り、中実で線径が1.0mm、線条体の色はグレーであり、凸部2の数は1m
2あたり355個である。
【0049】
図5の断面図は、構造体1の嵩密度を説明するための概略模式図である。構造体1は、三次元網状構造本体11(以下、単に本体11とも称する。)と、その上面に形成される複数の凸部2と、その下面に形成される複数の筋状凸部4を備える。底部3は、本体11の上面に位置する。筋状底部5は、本体11の下面に位置する。本体11、凸部2、および筋状凸部4はいずれも、ランダムループを有する複数の連続線条が部分的に融着された構造であり、一体的に形成される。
【0050】
構造体1の上面1aおよび下面1cには、本体11の内部11cよりも嵩密度の高い、例えば厚み2~4mmの表面層2a、11a、表面層4a、11eを有する。表面層においては、ループ状線条体が構造体1の表面形状に沿った形状で寝ていることが好ましい。本体11は、表面層11a(底部3においてのみ存在)、内部11c、表面層11e(筋状底部5においてのみ存在)を含む。表面層2aは、凸部2の表面に存在し、底部3における表面層11aと連続的に存在する。同様に、表面層4aは、筋状凸部4の表面に存在し、筋状底部5における表面層11eと連続的に存在する。
図5に示される通り、底部3における表面層11aは、凸部2の表面層2aよりも厚みが大きいか、表面層11aの直下に連続して高密度部が存在する。同様に、筋状底部5における表面層11eは、筋状凸部4の表面層4aよりも厚みが厚いか、表面層11e直上に高密度部が存在する。
【0051】
凸部2は、表面層2aと、表面層2aに被覆される中心部2bを有する。表面層2aの嵩密度は中心部2bの平均嵩密度の1.1~3倍であることが好ましい。また、中心部2bの平均嵩密度は、本体11の内部11c(本体11から表面層11a、11eを除いた部分)の平均嵩密度の1.05~3倍であることが好ましい。各凸部2(表面層2 aと中心部2bを含む)の平均嵩密度は、本体11(内部11cと表面層11a、11eを含む)の平均嵩密度の1.01~6倍であることが好ましく、1.05~4倍であることがさらに好ましい。表面層2aまたは表面層4aの嵩密度は本体11(内部11cと表面層11a、11eを含む)の平均嵩密度の1.01~7倍であることが好ましく、1.4~5倍であることがさらに好ましい。中心部2bの嵩密度は中心部2b内で一定である必要はなく、例えば中心部2bが嵩密度の異なる上下二層により形成されてもよい。
【0052】
筋状凸部4は、表面層4aと、表面層4aに被覆される中心部4bを有し、表面層4aの嵩密度は中心部4bの嵩密度の1.1倍~3倍であることが好ましい。また、中心部4bの嵩密度は、本体11の内部11cの嵩密度よりも1.05~3倍大きいことが好ましい。筋状凸部4(表面層4aと中心部4bを含む)の平均嵩密度は、本体11(内部11cと表面層11a、筋状底部5の表面層11eを含む)の平均嵩密度の1.05~4倍であることが好ましい。構造体1の側面はフラットな面である。上面1aと下面1cを異なる凸部のパターンで形成することにより、使用者は、体調や好み、使用方法により上面1aと下面1cを使い分けることができる。下面1cには、筋状凸部4ではなく、上面1aと同様の、または上面の凸部2とは高さH1や幅W、硬さ、配列が異なる複数の凸部2が千鳥状、格子状、または直列状に形成されていてもよい。
【0053】
なお、上述の嵩密度等は、底部3の上端部39をつないだ仮想線V1(
図5参照)よりも上部を凸部2として計測する。同様に、筋状底部5の下端部59をつないだ仮想線V2より下部を筋状凸部4として計測する。中心部2b、4bや内部11cの嵩密度は、表面層の厚みを規定し、表面から同厚み部分を切り出して、嵩密度を計測する。凸部2、筋状凸部4の平均嵩密度が高いため、凸部2、筋状凸部4の耐久性が高くなる。それにより、通気性、荷重分散、指圧効果の機能が長期間にわたって持続できる。
【0054】
複数の凸部2のうち、少なくとも1つの、好ましくは50%以上の、さらに好ましくは90%以上の凸部2が、表面層2aと、表面層2aに被覆される中心部2bを備え、その凸部2の平均嵩密度が本体11の平均嵩密度よりも高いことが好ましい。
【0055】
図5に示される、凸部2のX方向の幅およびY方向の幅W(これらは、列Rと行Lの幅に相当する。)は、8~70mmが好ましく、凸部2の高さH1(凸部2の頂部と底部3の上端部39の高さの差)は3~70mmが好ましい。凸部2の高さH1はクッション全体に亘って均一であってもよいし、要求に応じて不均一であってもよい。また、筋状凸部4の高さH2(筋状凸部4の頂部と筋状底部5の下端部59の高さの差)は3~70mmが好ましい。
【0056】
構造体1はシートクッション用であるが、その他、マットレス、枕、又は椅子又はその中材に適用可能である。
【0057】
構造体1は、1枚物でも良いが、例えばマットレスとして使用される場合、輸送や収納をし易くするために、また、部位によって好みに合わせて凸部を調整するために、複数に分割可能にすることもできる。例えば、長手方向に3分割の場合、3つの構造体1をそれぞれカバーまたはインナーカバー内に収容し、カバー同士を結合させて使用してもよい。この場合、構造体1の分割部分によって、さらにその分割部分の裏表によって、硬さ、凹凸の有無、嵩密度、凸部の配置や高さ、凸部の嵩密度、凸部の大きさや形状を変えることができる。また、構造体1に他の構造体を積層する場合、分割部分によって、積層物の素材、形状を変えることもできる。
【0058】
例えば、組み合わせの例として、3分割のうち真ん中に配置する分割部分(使用者の腰が接触する部分)には凸部を形成したものを使用し、その他の分割部分(使用者の頭部と足が接触する部分)には凸部を形成しないか、または真ん中の分割部分よりも高さの低い凸部を形成した分割部分を使用することができる。また、3分割のうち真ん中の分割部分には、その他の分割部分に比べて、嵩密度の高い凸部を形成するように調整することもできる。ここで、構造体1を完全に分割せずに、切り込み等折り曲げ部を形成して折り曲げ可能としてもよい。
【0059】
構造体1は、マットレスとして使用される場合、ロール曲げが可能であることも好ましい。その場合、平均嵩密度は0.02~0.09g/cm3であることが好ましい。構造体1が枕の中材として使用される場合、マットレスより相対的に嵩密度が低いことが好ましい。その場合、平均嵩密度は0.01~0.07g/cm3であることが好ましい。
【0060】
構造体1は、その上面側または下面側にウレタンフォームから成るシート、及び/又は不織シートや固綿を積層することも好ましい。また、表面が平滑または凹凸のある別の三次元網状構造体を積層することも好ましい。例えば、5~300mmの構造体1の上面または下面に、嵩比重10~90kg/m3さらに好ましくは20~60kg/m3、厚み2~50mm、さらに好ましくは4~25mmのウレタンフォームからなるシートを積層することが好ましい。また、構造体1を覆うカバー内に、ウレタンフォームから成るシートやばね、不織布を内蔵させ、キルティングなどにより側地に固定してもよい。
【0061】
構造体1は、指圧によるマッサージ効果を高めるために、内部又は下部に振動体を内蔵してもよい。その場合は、構造体の内部または、下部で、かつ少なくとも一部の凸部の下方に位置するように、空洞である振動体収容部を形成し、その中に振動体を収容する。
【0062】
構造体1は、端部の硬いもの、表と裏で表面層の厚みが違うもの、表と裏で柔らかさの違うもの、内部に穴の開いている物など様々な形態が可能である。また、使用目的に応じて、部位によって嵩密度を変えることにより、部分的に硬さを変えることもできる。また、構造体内部11cにおいて、押し出し方向に嵩密度の低い疎部と嵩密度の高い密部が交互に配置される疎密構造を備えていてもよい。構造体内部11cは、嵩密度の異なる層が複数層上下に積層されたものでもよい。
【0063】
構造体1の厚みは柔らかさや反発特性に大きく関わってくるため、10mm~400mm、より好ましくは25~150mm、さらには30~110mmが一層好ましい。厚みが10mm以下では凹凸を構成するとベース部分と凸部分それぞれの厚みが5mm程度となりクッション性が十分に発揮されない。また、凸部における表面層の割合が大きすぎてクッション性が損なわれ、凸部の高さも最大で6mm程度となり凸部の効果を体が感じにくい場合がある。25mm以上の厚みがあればクッション性や指圧性等の機能を持たせることができ、60mmを超えれば十分な機能を盛り込められる。400mmより大きい場合は、それ以上の機能向上は見込めず好ましくない。
【0064】
この構造体1の寸法は、例えば、マットレスの場合、幅600~2000mm、長さ1300~2500mm、高さ30~120mm、枕の場合、幅250~500mm、長さ300~800mm、高さ40~120mmが例示できるが、それに限定するものではない。
【0065】
ところで、本実施形態に係る構造体1は、凸部により、指圧効果が期待される。しかしながら、その効果が大きいと、使用時に凸部が構造体本体が押すことにより、構造体1が長さ方向または横方向に延びてしまい、結果的に凹凸効果や構造体1のクッション性が低減してしまうおそれがある。そこで、構造体1は伸長防止部材を備えることが好ましい。具体的には、
図14に示されるように、側面に、構造体1の内部の嵩密度よりも高い嵩密度を有する高密度側面部18を備えることが好ましい。なお、
図14では、簡略化のため、凸部は表面の一部のみに記載されている。高密度側面部18の嵩密度は、例えば0.25~2.0g/cm
3が好ましく、高密度側面部の幅は、5~100mmが例示される。
【0066】
例えば、マットレスとして用いる場合(
図14のA、B参照)、長手方向の二つの側面および/または短手方向の二つの側面に高密度側面部18を備えることが好ましい。これにより、長さ方向または横方向に構造体が伸びて、指圧効果やクッション性の低減を抑制できる。また、マットレスが例えば三つ折り可能なものや三分割マットレスの場合、使用時に部分的に構造体が長さ方向にのびることにより分割されたマットレス同士の間に隙間ができるのを防止できる。シートクッションとして用いる場合(
図14のD、E参照)、左右方向および/または前後方向の二つの側面に高密度嵩密度側面部18を備えることが好ましい。
【0067】
使用時に凸部が構造体本体を押すことにより構造体1が長さ方向または横方向に延びてしまうことを防止する別の方法として、厚み方向の一部分の嵩密度を高くすることも有効である。(
図14のC参照)。厚み方向の高密度部19としては、例えば0.25~2.0g/cm
3、厚み5~50mmが例示される。なお、このような高密度部は、後述する製造方法において、該当する箇所への原料供給量を増加させるか、または当該箇所にて圧縮成型を行うことにより、形成できる。
【0068】
次に、第2実施形態の三次元網状構造体101(以下、単に構造体101とも称する。)について説明する。この構造体101は、基本的には、構造体1と共通するので、主に相違点を説明する。本実施形態の構造体101は例えばマットレスとして使用される。線条体は中実、略透明で、線径(直径)が約0.7mmのポリエチレン系樹脂である。
【0069】
図6~10に示される構造体101は、説明のために適宜の切断を施したものであり、切断後の大きさは縦46cm×横43cm×最大厚み8cmである。構造体101は、上面101a、4つの側面101b、下面101cの六面体であり、全体の平均嵩密度が0.068g/cm
3である。上面101aには、凸部102と、底部103とを備える。
【0070】
凸部102は、上面101aにおいて間隔を開けて厚み方向に上方に突出する領域であり、千鳥状に配置される複数個の部分である。側面101b及び下面101cは平坦な面である。凸部102の硬さは凸部の嵩密度を変えることにより調整できる。下面101cに、上面101aと同様の凹凸を設けることも可能である。また、上面101aと下面101cで、凸部の高さの異なる凹凸を設けることも可能である。
【0071】
図11に示されるとおり、凸部102は表面層102aと、表面層102aで被覆される中心部102bとを備える。各構造体101の下面101c側には、三次元網状構造本体111(以下、単に本体111とも称する。)の内部111cよりも嵩密度の高い、表面層111dが形成される。表面層102aは、中心部102bより嵩密度が1.1~3倍高い。中心部102bの嵩密度は、本体111の内部111c(表面層111a、111dを除いた部分)の嵩密度の1.05~3倍であることが好ましい。凸部102(表面層102aと中心部102bを含む部分)の平均嵩密度は本体111(表面層111a、内部111c、表面層111dを含む部分)の平均嵩密度の1.05~4倍である。凸部102の数は1m
2あたり、414個である。凸部102の平均嵩密度が高いことや、表面層102aの存在により、指圧効果等が高くなり、耐久性も高くなる。
【0072】
三次元網状構造体1、101は、マットレス、車両の座席シート、又は椅子又はその中材に用いられる。腰部の指圧、足裏、ふくらはぎの指圧などの健康器具や、健康増進、維持装置などの幅広い用途で用いることができ、また、マッサージ機能のある振動発生装置を内部に付加するとさらに効果が得られる装置にもなる。音、VR器具との併用により長時間快適に使用できる器具となる。
【0073】
次に、本実施形態1、2の三次元網状構造体1、101の製法の一例を述べるが、この製法に限定されるわけではない。特開2001-328153号公報等に記載された通り、原料がそれらの融点より10℃~20℃高い溶融温度で溶融され、溶融された原料は、ダイス内部へと送られ、圧力を加えられて、下部の口金の押出口から吐出されたそれぞれの線条は、押出孔の複数個の配列により、複数本の線条からなる線条集合体となり、自然降下する。
【0074】
ダイス内部の温度範囲は100~400℃、より好ましくは120~350℃、押出量は20~200Kg/HR等に設定可能である。ダイス内部における圧力は、例えば75mmスクリューの吐出圧によるものが挙げられ、その圧力範囲は0.2~25MPa程度である。
【0075】
ダイス内部の口金の径は、構造体の線条の線径に対応し、0.1~5.0mmが好ましく、0.4~1.8mmがより好ましい。
【0076】
つぎに、水または湯を供給した、左右一対のシューター(国際公開番号WO2012/157289の公開公報参照)で受け止めて、線条を溶融状態で互いに接触させて融着させ、三次元構造を形成しつつ、水面に着水させる。このとき、シューターの角度、供給される水の量、押出口の口径、口金面とシューターと引取コンベアとの距離、樹脂の溶融粘度、押出口の孔径と吐出量などにより、ループ径と線条の線径が決まる。線径(直径)は0.1~5.0mm、ランダムループの平均直径(長さ)は5mm~50mmである。
【0077】
線条集合体のうち、外周の長手側面に位置する線条は、一対の長手シューターの水が流れている傾斜面の上に接触し、これにより垂直降下軌道が乱され、隣り合う線条とループ状に絡まり合いつつ、供給パイプから供給される水または加温水で流されながら、傾斜面を滑り降りる。この際、線条は重力の影響を直接的に受け、傾斜面に沿って絡合し、ループが形成される。一対の短手シューターを設けてもよいし、一体物のシューターを設けてもよい。シューターは必ずしも必要ではなく、片面だけシューターを設けたり、シューターを設けない場合も可能である。
【0078】
線条集合体のうち、シューターの傾斜面のいずれにも接触せずに降下した線条は、成形開口部を通過する。このとき、成形開口部を通過する線条のうち、傾斜面の下辺近くを通過するものは、傾斜面を滑り降りてくる線条と接触し、ループ状に絡まり合い、その接触絡合による降下軌道の撹乱が隣り合う中心方向の線条に若干の範囲で伝播しつつ降下する。成形開口部を通過する線条のうち、成形開口部の中央付近を通過するものは、水面に着水し、後述の引取機による引取速度が線条集合体の降下速度よりも遅いため、着水したそれぞれの線条は撓み、水面付近で略ループ状に絡まり合う。
【0079】
三次元網状構造体は、水槽にて冷却されつつ、一対の引取機により、集合体の降下より遅い速度で引き取られて降下し、成形開口部の短手方向の間隔よりも小さな間隔で挟持され補助的な圧縮作用を受ける。引取機の速度は5~40m/時間が好ましい。なお、引取機はキャタピラー構造の無端コンベア(国際公開番号WO2012/157289の公開公報参照)を用いて線条集合体を引き取る。無端コンベアの位置まで降下した時点では、水没による線条集合体の冷却固化がまだ完全に終わっていないので、引取機での挟持により圧縮成形効果を得る。引取機により線条集合体を引き取り、送り出せば、溶融状態にある線条集合体が水により、冷却固化され、最終的に形状が固定される。その後、ローラーで挟み込むことで、冷却槽から引き出される。
【0080】
三次元網状構造体の上面および/または下面に凸部を形成する方法として、例えば、冷却固化後に連続的な三次元網状構造体を適宜の大きさに切断し、その後、三次元網状構造体の上面および/または下面に熱盤を用いて、三次元網状構造体を熱盤で挟持する、又は、下面を支持台に載置し、上方から熱盤を当てることにより、成形・圧縮して、凸部2を形成する方法が挙げられる。構造体1の表と裏で凸凹を同じ位置に形成することも、位置をずらして凸凹を形成することも出来るし、表と裏で、パターンや大きさの異なる凹凸とすることもできる。
【0081】
三次元網状構造体1の上面に凸部2を形成する他の方法として、上述した引取装置(無端コンベア)に構造体を挟持するための抑え機能(形状、素材等)のある凹凸部品をつけ、構造体が完全に固化する前に、引取装置による圧縮作用により構造体に凸部を成形することも可能である。千鳥状に配置された凸部を形成する場合は、引取装置に、千鳥状に形成された凹部、凸部を有する凹凸部品をつける。これにより、構造体が滑らずに凹凸が形成され、欠損することなく、また、凸部の嵩密度を高くできる。特に、凸部において嵩密度の高い表面層を形成できる。その凹凸部品は1対の引取装置の両方につけることも可能であるし、片方につけることも可能である。また、構造体1の表と裏で凸凹を同じ位置に形成してもよいし、位置をずらして形成してもよい。さらに、表と裏で、パターンや大きさの異なる凹凸とすることもできる。
【0082】
図12A~Eは、上述した方法により凸部2が形成される概略図である。
図12Aに示すように、表面層51、52を備える三次元網状構造体に対して、上述した凸部形成加工を上面から行うと、構造体内部の表面側の領域が圧縮されて、凸部の中心部53となり、それ以外の領域は構造体内部54として残る。その結果、表面層51、52を存在させたまま、内部54よりも嵩密度の高い嵩密度を中心部53にもつ凸部が形成される。一方、底部では、圧縮されて分厚い表面層55となる。
【0083】
図12Bは、凹凸形成前の三次元網状構造体の表面層51の嵩密度を
図12Aよりも小さくした場合の説明図である。これにより、凸部において、表面層51と中心部53を同じ嵩密度とすることも可能であるし、表面層51よりも中心部53の嵩密度を大きくして、表面を柔らかな感触にすることも可能である。凹凸形成前の網状構造体の表面層51の厚みや嵩密度を制御することにより、凸部の表面層51の厚みや嵩密度を制御できる。なお、凹凸形成前の網状構造体の表面層51、52の厚みや嵩密度は、例えばノズル形状やノズル同士の間隔を調整することによって制御できる。
【0084】
図12Cは、凹凸形成前の構造体内部の嵩密度を2層とし、そのうち表面側の嵩密度を比較的小さくすることによって、凸部2の中心部53の嵩密度を比較的小さくした場合の図である。これにより、中心部53と内部54の嵩密度の差を小さくしたり、逆に中心部53より内部54の嵩密度を大きくすることもできる。凹凸形成前の構造体内部の嵩密度を複層とすれば、内部54と凸部の中心部53の嵩密度の比率も制御できる。なお、凹凸形成前に嵩密度を2層とする方法としては、ダイスのノズルの間隔を調整することが一例として挙げられる。表面層51の厚みや嵩密度、凸部の中心部53の嵩密度の調整により、凸部の硬さを調整できる。言い換えれば硬い凸部も柔らかい凸部も任意で成形可能である。嵩密度の異なる凸部を自由に設計できる。
【0085】
図12Dは、凹凸形成前の構造体内部の表面層側の嵩密度を高くして2層として、凸部2の中心部の嵩密度を上層531と下層532の2層とした場合の図である。
図12Dでは上層531の方が下層532よりも嵩密度を高くしているが、その逆も可能である。
【0086】
図12Eは、凹凸形成前の構造体内部の裏面層側の嵩密度を高くして2層として、構造体内部の嵩密度を上層541と下層542の2層とした場合の図である。
図12Eでは、下層542の方が上層542よりも嵩密度を高くしているが、その逆も可能である。また、2層ではなく、3層、4層も可能である。
【0087】
図13に示すように、三次元網状構造体1は、成形品に対して、熱加工や超音波加工をすることも可能であるし、成形品は異形成形品であってもよい。
図13Aに示すように、例えば成形品(A-1)に対して、熱加工または超音波加工を施して全体に傾斜を形成(A-2)し、さらに熱加工を施して、例えば中央部において窪み6を形成することが可能である(A-3)。
図13Bに示すように、左右にホールド部としての盛り上がり部7が形成された異形成形品(B-1)に、同様に熱加工または超音波加工により全体的に圧縮させ(B-2)、さらに熱加工により、例えば中央部に窪み6を形成することができる(B-3)。このような場合、加工条件を制御することにより、傾斜面や窪み部においても表面に凸部2を残すことができる。
【0088】
以下、実施例および比較例について説明する。
【0089】
以下に説明する実施例1~5および比較例1~2の試験体について、2名の被験者(1名をG(体重85kg)、他の1名をA(体重48kg)と記載する)が座った状態の体圧分散特性を測定した。測定には、住友理工社製のSRソフトビジョン臀部測定装置を用いて、試験体の上に被験者が座った状態で体圧分散測定のデータを得た。住友理工SRソフトビジョン測定装置の詳細はhttps://www.sumitomoriko.co.jp/product/health/SVZB922AM/を参照されたい。測定結果は表1に示される。
【0090】
また、実施例1および比較例1~3の試験体について、2名の被験者が仰臥した状態での体圧分散特性を測定した。測定には、住友理工社製のSRソフトビジョン全身版測定装置を用いて、試験体の上に被験者が仰臥した状態で体圧分散測定のデータを得た。測定結果は表2に示される。
【実施例1】
【0091】
実施例1の試験体は、ポリエチレン樹脂から形成される、線径(直径)0.7mmの線条から成り、表面に千鳥状に配置される複数の凸部が形成された厚み8cmの三次元網状構造体である。全体平均嵩密度は0.090g/cm
3、表面層2aの嵩密度は0.161g/cm
3で厚みが約3mm、平坦な裏面側表面層11d(
図12の111dと同義)の嵩密度は0.189g/cm
3で厚み3mm、各凸部は略同一の嵩密度で形成されており、各凸部の平均嵩密度(表面層2aと中心部2bを含む)は0.10g/cm
3、凸部中心部2bの嵩密度は0.07g/cm
3であり、構造体内部11cの嵩密度は0.05g/cm
3である。凸部の数は1m
2あたり500個である。各凸部2の高さは均一であり、凸部の高さHは7mmである。凸部の幅Wは、55mmである。三次元網状構造本体(凸部を除いた部分で、表面層11aと内部11cと裏面側表面層11dを含む)の平均嵩密度は0.089g/cm
3である。
【実施例2】
【0092】
実施例2の試験体はポリエチレン樹脂から形成される、線径(直径)1.0mmの線条から成り、表面に千鳥状に配置される複数の凸部2が形成された、厚み4.0cmの三次元網状構造体である。表面層2aの嵩密度は0.206g/cm3で厚み3mm、裏面側表面層11dの嵩密度は0.185g/cm3で厚み3mm、各凸部2の平均嵩密度(表面層2aと中心部2bを含む)は0.055g/cm3、凸部の中心部2bの嵩密度は0.041g/cm3であり、構造体内部11cの嵩密度0.038g/cm3である。凸部の数は1m2あたり300個である。凸部2の高さは均一であり、凸部の高さH1は、16mmである。凸部の幅Wは、50mmである。三次元網状構造本体(凸部を除いた部分で、表面層11aと内部11cと裏面側表面層11dを含む)の平均嵩密度は0.046g/cm3である。
【実施例3】
【0093】
実施例3の試験体は、実施例1の試験体の上に、ウレタンシート(厚み20mm、嵩密度0.02g/cm3)を積層したものである。
【実施例4】
【0094】
実施例4の試験体はポリエチレン樹脂から形成される、線径(直径)0.4mmの線条から成り、表面に筋状の凸部4が形成された表面波型凹凸形状の三次元網状構造体である。試験体の厚み11cmである。全体平均嵩密度は0.032g/cm3、表面層4aの嵩密度は0.056g/cm3で厚みは3mm、裏面側表面層11dの嵩密度は0.080g/cm3で厚みは3mm、筋状凸部中心部4bの嵩密度は0.027g/cm3である。各筋状凸部4の平均嵩密度(表面層4aと中心部4bを含む)は0.034g/cm3、三次元網状構造本体(筋状凸部4を除いた部分で、表面層11eと内部11cと裏面側表面層11dを含む)の平均嵩密度は0.025g/cm3である。筋状凸部4の高さH2は、4mmである。
【実施例5】
【0095】
実施例4を平面視で90度回転させたものである。
【比較例1】
【0096】
比較例1の試験体は、無色のポリエチレン樹脂から形成される、線径(直径)0.8mmの線条から成り、表面に凹凸が形成されない平坦な、厚み6cmの三次元網状構造体である。全体平均が嵩密度0.055g/cm3であり、表面および裏面には内部よりも高い嵩密度を有する表面層、裏面側表面層を備え、表面層は厚みが3mmで嵩密度は0.127g/cm3、裏面側表面層は厚みが3mmでの嵩密度は0.115g/cm3、表面層を除く内部の嵩密度は0.047g/cm3である。
【比較例2】
【0097】
比較例2の試験体は、厚み45mm、表面に凸部の高さが30mmのプロファイル加工したマットレス用ウレタンフォームである。
【比較例3】
【0098】
比較例3の試験体は、表面が平滑なマットレス用ウレタンフォームである。
【0099】
【0100】
表1に示されるように、試験体をクッションシートとして用いて、被験者がその上に座る状態においては、比較例1の試験体と比較して、実施例1~5は凹凸の部分的な押す、引く機能が果たされ、指圧効果が認められた。比較例2の試験体と比較すると、圧力の最大値が大きく、体重に拘わらず、十分な指圧効果が得られることがわかる。また、実施例1~5を比較するとわかるように、線条体の線径や凸部の嵩密度、凸部2のパターンを調整することにより体圧分散特性が変化するため、体型や好みが異なる使用者それぞれの要求に応えることが可能である。
【0101】
【0102】
表2に示されるように、試験体をマットレスとして用いて、被験者が仰臥状態においては、比較例1~3の試験体では、特に痩せ型の被験者(A)の場合に、臀部に集中的に圧力がかかっていたが、実施例1の試験体では、圧力のかかる部分は分散していて、集中的に圧力がかかる領域がなかった。また、実施例1では凹凸による指圧効果が認められた。
【0103】
なお、本発明は、上述の実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で、様々な改変、置換、欠失等を行うことが出来、改変、均等、置換、欠失等も本発明の技術的範囲に含まれる。凸部や筋状凸部は、網状構造体の表面全体に設けられる必要はなく、要求に応じて、部分的に、または特定の領域だけに設けることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明の三次元網状構造体はマットレス、クッション、ソファ、ベッド、座席等の中材、芯材等に適用される。
【符号の説明】
【0105】
1、101:三次元網状構造体
2、102:凸部
2a、102a:表面層
2b、102b:中心部
3、103 :底部
4 :筋状凸部
4a :表面層
4b :中心部
5 :筋状底部
11、111 :三次元網状構造本体
11a、111a :(底部における)表面層
11c、111c :構造体内部
11d、111d :裏面側表面層
11e :(筋状底部における)表面層
51 :表面層
52 :表面層
53 :中心部
54 :構造体内部
55 :表面層(底部)
H :凸部の高さ
W :凸部の幅
【要約】
【課題】耐久性が高く、長期に亘って凸部の機能を発揮する三次元網状構造体を提供できる。
【解決手段】 全体平均嵩密度が0.01~1.5g/cm
3であり、ランダムループを有する複数の連続線条が部分的に融着され、クッションとして用いられる三次元網状構造体であって、三次元網状構造本体と、該三次元網状構造本体の特定の表面に形成され、厚み方向に突出する複数個の凸部を備え、複数個の凸部は凸部の頂部よりも高さの低い底部を介在させて連続して設けられ、複数個の凸部のうち少なくとも一つの凸部の平均嵩密度は三次元網状構造本体の平均嵩密度の1.01~6倍である、三次元網状構造体である。
【選択図】
図1