(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】搬送装置、搬送方法、および、プログラム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20240930BHJP
H01L 21/52 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
H01L21/68 A
H01L21/68 B
H01L21/52 F
(21)【出願番号】P 2023506417
(86)(22)【出願日】2021-03-16
(86)【国際出願番号】 JP2021010475
(87)【国際公開番号】W WO2022195693
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】519294332
【氏名又は名称】株式会社新川
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】野村 勝利
【審査官】久宗 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-108056(JP,A)
【文献】特開2001-077155(JP,A)
【文献】国際公開第2018/061103(WO,A1)
【文献】特開2021-202416(JP,A)
【文献】国際公開第2012/073282(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/119216(WO,A1)
【文献】特開2016-201410(JP,A)
【文献】特開2010-157764(JP,A)
【文献】特開2012-174751(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
H01L 21/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を吸着して搬送する吸着ヘッドと、
前記吸着ヘッドを移動させる移動制御部と、
所定の回転軸を中心とした前記吸着ヘッドの回転位置を制御する回転制御部と、
前記吸着ヘッドの移動に伴って前記吸着ヘッドから電子部品に作用する荷重が所定圧力以下となるように、前記吸着ヘッドに前記電子部品の吸着または吸着解除を行わせる吸着制御部と、
を備え、
前記移動制御部は、前記吸着ヘッドの回転位置に基づいて、前記吸着ヘッドの自重に基づく前記所定圧力の補正量を設定し、
前記移動制御部は、前記吸着ヘッドから前記電子部品に作用する荷重が前記所定圧力となったことを条件に、前記吸着ヘッドを前記電子部品の吸着位置または吸着解除位置から移動させる、
搬送装置。
【請求項3】
前記移動制御部は、前記吸着ヘッドの吸着面が下方を向いているとき、前記吸着ヘッドの自重に基づく前記所定圧力の補正量を負の値に設定し、前記吸着ヘッドの吸着面が上方を向いているとき、前記吸着ヘッドの自重に基づく前記所定圧力の補正量を正の値に設定する、
請求項1に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記移動制御部は、前記吸着ヘッドが鉛直下方を向いているときの前記吸着ヘッドの自重に基づく前記所定圧力の補正量の正負を反転した値を、前記吸着ヘッドが鉛直上方を向いているときの前記吸着ヘッドの自重に基づく前記所定圧力の補正量として設定する、
請求項3に記載の搬送装置。
【請求項5】
吸着ヘッドを移動させる工程と、
所定の回転軸を中心とした前記吸着ヘッドの回転位置を制御する工程と、
前記吸着ヘッドの移動に伴って前記吸着ヘッドから電子部品に作用する荷重が所定圧力以下となるように、前記吸着ヘッドに前記電子部品の吸着または吸着解除を行わせる工程と、
前記吸着ヘッドの回転位置に基づいて、前記吸着ヘッドの自重に基づく前記所定圧力の補正量を設定する工程と、
前記吸着ヘッドから前記電子部品に作用する荷重が前記所定圧力となったことを条件に、前記吸着ヘッドを前記電子部品の吸着位置または吸着解除位置から移動させる工程と、
を含む、
搬送方法。
【請求項6】
コンピュータに、
吸着ヘッドを移動させる処理と、
所定の回転軸を中心とした前記吸着ヘッドの回転位置を制御する処理と、
前記吸着ヘッドの移動に伴って前記吸着ヘッドから電子部品に作用する荷重が所定圧力以下となるように、前記吸着ヘッドに前記電子部品の吸着または吸着解除を行わせる処理と、
前記吸着ヘッドの回転位置に基づいて、前記吸着ヘッドの自重に基づく前記所定圧力の補正量を設定する処理と、
前記吸着ヘッドから前記電子部品に作用する荷重が前記所定圧力となったことを条件に、前記吸着ヘッドを前記電子部品の吸着位置または吸着解除位置から移動させる処理と、
を実行させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置、搬送方法、および、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体チップを回路基板に実装する手法として、フリップチップボンディングが広く知られている。この手法では、まず、ウェーハからピックアップした半導体チップを反転させ、半導体チップのバンプと反対側の面をボンディングツールに渡して吸着させる。そして、ボンディングツールにより半導体チップのバンプを回路基板の電極に熱溶着させることで、バンプと回路基板の電極とを接合する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術においては、半導体チップの吸着時に、ボンディングツールから半導体チップに作用する荷重を制御する上でなお改善の余地があった。
【0005】
なお、こうした課題は、半導体チップを吸着する場合に限らず、半導体チップの吸着を解除して半導体チップをボンディングツールから他の部材に受け渡す場合にも概ね共通するものである。また、こうした課題は、半導体チップに限らず、電子部品を吸着する場合に概ね共通するものである。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、電子部品の吸着時または吸着解除時における荷重制御の精度を向上することができる搬送装置、搬送方法、および、プログラムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様における搬送装置は、吸着ヘッドと、吸着ヘッドを移動させる移動制御部と、所定の回転軸を中心とした吸着ヘッドの回転位置を制御する回転制御部と、吸着ヘッドの移動に伴って吸着ヘッドから電子部品に作用する荷重が所定圧力以下となるように、吸着ヘッドに電子部品の吸着または吸着解除を行わせる吸着制御部と、を備え、吸着制御部は、吸着ヘッドの回転位置に基づいて、吸着ヘッドの自重に基づく所定圧力の補正量を設定する。
【0008】
また、本発明の第2の態様における搬送方法は、吸着ヘッドを移動させる工程と、所定の回転軸を中心とした吸着ヘッドの回転位置を制御する工程と、吸着ヘッドの移動に伴って吸着ヘッドから電子部品に作用する荷重が所定圧力以下となるように、吸着ヘッドに電子部品の吸着または吸着解除を行わせる工程と、吸着ヘッドの回転位置に基づいて、吸着ヘッドの自重に基づく所定圧力の補正量を設定する工程と、を含む。
【0009】
また、本発明の第3の態様におけるプログラムは、コンピュータに、吸着ヘッドを移動させる処理と、所定の回転軸を中心とした吸着ヘッドの回転位置を制御する処理と、吸着ヘッドの移動に伴って吸着ヘッドから電子部品に作用する荷重が所定圧力以下となるように、吸着ヘッドに電子部品の吸着または吸着解除を行わせる処理と、吸着ヘッドの回転位置に基づいて、吸着ヘッドの自重に基づく所定圧力の補正量を設定する処理と、を実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、電子部品の吸着時または吸着解除時における荷重制御の精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係るハンドリングユニットを搭載したフリップチップボンディング装置の構成を示す平面図である。
【
図2】本実施形態に係るハンドリングユニットを搭載したフリップチップボンディング装置の構成を示す側面図である。
【
図3A】本実施形態に係るハンドリングユニットの動作を示す図である。
【
図3B】本実施形態に係るハンドリングユニットの動作を示す図である。
【
図3C】本実施形態に係るハンドリングユニットの動作を示す図である。
【
図3D】本実施形態に係るハンドリングユニットの動作を示す図である。
【
図3E】本実施形態に係るハンドリングユニットの動作を示す図である。
【
図4】本実施形態に係るハンドリングユニットのシステム構成図である。
【
図5A】本実施形態に係るハンドリングユニットにおける荷重閾値の補正処理を説明するための図である。
【
図5B】本実施形態に係るハンドリングユニットにおける荷重閾値の補正処理を説明するための図である。
【
図5C】本実施形態に係るハンドリングユニットにおける荷重閾値の補正処理を説明するための図である。
【
図6】演算処理部の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲に係る発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。
【0013】
図1に示すように、フリップチップボンディング装置100の架台11の側方には、ウェーハホルダ12が設けられている。ウェーハホルダ12は、円環状をなしており、ダイシングされたウェーハ13を保持する。ウェーハホルダ12は、図示しない駆動モータによりY方向に移動する。ウェーハホルダ12の下側には、ダイシングされたウェーハ13から半導体チップ14を上方に突き上げる突き上げユニット15が設けられている。突き上げユニット15は、図示しない駆動モータによりX方向に移動する。半導体チップ14は、電子部品の一例である。
【0014】
架台11には、搬送装置の一例であるハンドリングユニット20が設けられている。ハンドリングユニット20は、ウェーハホルダ12からの半導体チップ14のピックアップ、ピックアップした半導体チップ14の反転、および、反転した半導体チップ14の実装ヘッド46への受け渡しを行う。
【0015】
図2に示すように、ハンドリングユニット20は、例えば、ガイドレール21と、スライダ22と、キャリッジ23と、回転軸24と、取り付けアーム24Aと、フリップヘッド25と、ステッピングモータ26とを備える。
【0016】
ガイドレール21は、架台11の上面に形成された凹部11Aに固定されている。凹部11Aは、X方向に延びる長溝状をなしている。ガイドレール21には、スライダ22が取り付けられている。スライダ22は、駆動モータ22A(
図4参照)によりX方向に移動可能に構成されている。キャリッジ23は、スライダ22に取り付けられている。キャリッジ23は、スライダ22がガイドレール21に沿って移動することで、X方向に移動可能に構成されている。キャリッジ23には、回転軸24を介して取り付けアーム24Aが取り付けられている。取り付けアーム24Aは、回転軸24の中心線に対して斜めに交差する方向に延びている。取り付けアーム24Aの先端にはフリップヘッド25が取り付けられている。ステッピングモータ26(
図4参照)は、回転軸24を回転させることでフリップヘッド25を反転させる。
【0017】
フリップヘッド25は、例えば、ベース27と、ピックアップノズル28とを備える。ベース27は、板状をなしており、回転軸24の端部に固定されている。ピックアップノズル28は、ベース27に固定されている。ピックアップノズル28は、例えば、ケーシング29と、吸着ヘッド30と、電磁コイル31とを備える。ケーシング29は、円環状をなしており、その環状部分に電磁コイル31を収容している。ケーシング29の中心には、ケーシング29の長手方向に延びる貫通孔32が形成されている。吸着ヘッド30は、その先端面に半導体チップ14を吸着可能に構成されている。吸着ヘッド30は、ケーシング29の貫通孔32に収容されている。吸着ヘッド30は、電磁コイル31に通電することで、ケーシング29の貫通孔32を移動し、ケーシング29の端面からの繰り出し量が調整可能に構成されている。
【0018】
図1に示すように、架台11の上面には、実装ステージ40が設けられている。実装ステージ40は、半導体チップ14が実装される回路基板41を吸着するとともに、内蔵したヒータにより回路基板41を加熱する。実装ステージ40には、搬送レール42が接続されている。搬送レール42は、図示しない基板供給部から回路基板41を実装ステージ40に供給するとともに、半導体チップ14が実装された回路基板41を図示しない製品ストックに供給する。
【0019】
架台11の上面には、X方向に延びる一対のガイドレール43が設けられている。一対のガイドレール43の各々には、スライダ44が取り付けられている。スライダ44は、図示しない駆動モータによりX方向に移動可能に構成されている。
【0020】
ガントリーフレーム45は、Y方向に延びる門型のフレームであって、その脚部がスライダ44に固定されている。ガントリーフレーム45は、スライダ44がガイドレール43に沿って移動することで、X方向に移動可能に構成されている。
【0021】
実装ヘッド46は、ガントリーフレーム45に取り付けられている。実装ヘッド46は、実装ノズル47を有し、図示しない駆動モータによりY方向に移動可能に構成されている。実装ヘッド46は、半導体チップ14を吸着するとともに、半導体チップ14を回路基板41に実装する。
【0022】
図2に示すように、実装ノズル47は、例えば、モータ50と、基体部51と、ボールねじ52と、パルスヒータ53と、実装ツール54を備える。モータ50は、実装ヘッド46に固定されている。基体部51は、Z方向に移動可能に実装ヘッド46に取り付けられている。ボールねじ52は、モータ50からの駆動力に基づいて回転することで基体部51をZ方向に移動させる。パルスヒータ53は、基体部51に取り付けられ、その下側には実装ツール54が取り付けられている。実装ツール54は、その先端面に半導体チップ14を吸着可能に構成されている。実装ツール54は、モータ50により基体部51がZ方向に移動したとき、基体部51とともにZ方向に移動する。
【0023】
次に、ハンドリングユニット20の動作について説明する。
まず、
図3Aに示すように、フリップヘッド25は、電磁コイル31に通電させることで、吸着ヘッド30がウェーハホルダ12に保持された半導体チップ14を吸着する。
【0024】
次に、
図3Bに示すように、フリップヘッド25は、電磁コイル31への通電をコントロールすることで、吸着ヘッド30が上方に移動し、吸着ヘッド30がウェーハホルダ12から半導体チップ14をピックアップする。そして、フリップヘッド25は、吸着ヘッド30が半導体チップ14を吸着した状態でキャリッジ23とともにガイドレール21に沿ってX方向に移動する。
【0025】
次に、
図3Cに示すように、フリップヘッド25は、実装ヘッド46の鉛直下方に到達したとき、ステッピングモータ26を駆動して、フリップヘッド25を反転させる。
【0026】
次に、
図3Dに示すように、フリップヘッド25は、電磁コイル31に通電させることで、吸着ヘッド30が半導体チップ14を吸着した状態で、半導体チップ14を実装ヘッド46に押し付ける。
【0027】
次に、
図3Eに示すように、ハンドリングユニット20は、実装ヘッド46が半導体チップ14を吸着した後、電磁コイル31への通電をコントロールすることで、吸着ヘッド30を実装ヘッド46から離間させる。これにより、ハンドリングユニット20から実装ヘッド46への半導体チップ14の受け渡しが完了する。
【0028】
次に、ハンドリングユニット20の制御構成について説明する。
図4に示すように、ハンドリングユニット20は、例えば、演算処理部110と、記憶部120と、駆動モータ22Aと、ステッピングモータ26と、フリップヘッド25と、エンコーダ130と、入出力デバイス140とを備える。演算処理部110は、ハンドリングユニット20の制御とプログラムの実行処理を行うプロセッサ(CPU:Central Processing Unit)である。プロセッサは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やGPU(Graphics Processing Unit)等の演算処理チップと連携する構成であってもよい。演算処理部110は、記憶部120に格納された吸着制御プログラムを読み出し、吸着制御に関する各種の処理を実行する。
【0029】
記憶部120は、不揮発性の記憶媒体であり、例えばHDD(Hard Disk Drive)によって構成されている。記憶部120は、ハンドリングユニット20の制御や処理を実行するプログラムの他にも、制御や演算に用いられる様々なパラメータ値、関数、ルックアップテーブル等を格納している。荷重閾値122は、制御や演算に用いられるパラメータ値の一例である。
【0030】
駆動モータ22Aは、演算処理部10から出力される駆動信号に基づいて、スライダ22をX方向へ移動させる。演算処理部110は、エンコーダ130により計測されたスライダ22のX方向の位置情報に基づいて駆動信号を生成し、生成した駆動信号を駆動モータ22Aに出力する。
【0031】
ステッピングモータ26は、演算処理部110から出力される駆動信号に基づいて、回転軸24を回転させることでフリップヘッド25を反転させる。演算処理部110は、ステッピングモータ26に出力する駆動信号に基づいてフリップヘッド25の回転位置を特定する。また、演算処理部110は、特定した回転位置に基づいて駆動信号を生成し、生成した駆動信号をステッピングモータ26に出力する。
【0032】
フリップヘッド25は、演算処理部110から出力される駆動信号に基づいて、電磁コイル31に通電することでケーシング29の端面からの吸着ヘッド30の繰り出し量を調整する。
【0033】
入出力デバイス140は、例えばキーボード、マウス、表示モニタを含み、ユーザによるメニュー操作を受け付けたり、ユーザへ情報を提示したりするデバイスである。入出力デバイス140は、例えば、ユーザによる操作に基づいて、吸着制御の開始の指示を示す信号を演算処理部110に出力する。
【0034】
演算処理部110は、吸着制御プログラムが指示する処理に応じて各種の演算を実行する機能演算部としての役割も担う。演算処理部110は、例えば、移動制御部112と、回転制御部114と、荷重制御部116と、吸着制御部118とを含む。
【0035】
移動制御部112は、吸着ヘッド30を移動させる。移動制御部112は、例えば、エンコーダ130により計測された位置情報に基づいてスライダ22をガイドレール21に沿ってX方向に移動させ、スライダ22に取り付けられたフリップヘッド25の吸着ヘッド30をX方向に移動させる。
【0036】
回転制御部114は、所定の回転軸24を中心とした吸着ヘッド30の回転位置を制御する。所定の回転軸24は、例えば、水平方向に延びる軸である。回転制御部114は、例えば、エンコーダ130により計測されたスライダ22の位置が実装ヘッド46の鉛直下方に到達したとき、ステッピングモータ26を駆動して回転軸24を回転させることでフリップヘッド25を反転させる。
【0037】
荷重制御部116は、吸着ヘッド30から半導体チップ14に作用する荷重の大きさを制御する。荷重制御部116は、例えば、電磁コイル31への通電量と、吸着ヘッド30の移動量とに基づいて、吸着ヘッド30から半導体チップ14に作用する荷重の大きさを制御する。
【0038】
吸着制御部118は、吸着ヘッド30の移動に伴って吸着ヘッド30から半導体チップ14に作用する荷重が荷重閾値122以下となるように、吸着ヘッド30に半導体チップ14の吸着を行わせる。吸着制御部118は、例えば、吸着ヘッド30が半導体チップ14を吸着する吸着位置に移動したとき、吸着ヘッド30に半導体チップ14の吸着を行わせる。吸着制御部118は、例えば、吸着制御部118は、電磁コイル31に通電することでケーシング29の端面から吸着ヘッド30を繰り出し、繰り出した吸着ヘッド30を半導体チップ14に接近させる。そして、吸着制御部118は、吸着ヘッド30から半導体チップ14に作用する荷重の大きさが正の値になったとき、吸着ヘッド30が吸着位置に移動したことを検知する。
【0039】
移動制御部112は、吸着ヘッド30から半導体チップ14に作用する荷重が荷重閾値122となったことを条件に、吸着ヘッド30を半導体チップ14の吸着位置から移動させる。移動制御部112は、例えば、吸着ヘッド30が吸着位置に位置するとき、吸着ヘッド30から半導体チップ14に作用する荷重が荷重閾値122となったことを条件に、半導体チップ14を吸着した状態の吸着ヘッド30を吸着位置から移動させる。荷重閾値122は、所定圧力の一例である。
【0040】
移動制御部112は、吸着ヘッド30の回転位置に基づいて、吸着ヘッド30の自重に基づく荷重閾値122の補正量を設定する。移動制御部112は、例えば、吸着ヘッド30が第1回転位置に位置するとき、吸着ヘッド30の自重に基づく荷重閾値122の補正量を第1補正量に設定する。移動制御部112は、吸着ヘッド30が第2回転位置に位置するとき、吸着ヘッド30の自重に基づく荷重閾値122の補正量を第2補正量に設定する。移動制御部112は、例えば、吸着ヘッド30の吸着面が下方を向いているとき、吸着ヘッド30の自重に基づく荷重閾値122の補正量を負の値に設定し、吸着ヘッド30の吸着面が上方を向いているとき、吸着ヘッド30の自重に基づく荷重閾値122の補正量を正の値に設定する、移動制御部112は、例えば、吸着ヘッド30が鉛直下方を向いているときの吸着ヘッド30の自重に基づく荷重閾値122の補正量の正負を反転した値を、吸着ヘッド30が鉛直上方を向いているときの吸着ヘッド30の自重に基づく荷重閾値122の補正量として設定する。
【0041】
より詳細には、
図5Aに示すように、移動制御部112は、吸着ヘッド30の吸着面が下方を向いているとき、吸着ヘッド30の自重Gに基づく荷重閾値122の補正量を負の値に設定する。移動制御部112は、例えば、補正前の荷重閾値122から荷重閾値122の補正量の絶対値T1を差し引いた値を補正後の荷重閾値122として設定する。荷重閾値122の補正量の絶対値T1は、例えば、記憶部120に予め格納されている。
【0042】
図5Bに示すように、移動制御部112は、吸着ヘッド30の吸着面が上方を向いているとき、吸着ヘッド30の自重Gに基づく荷重閾値122の補正量を正の値に設定する。移動制御部112は、例えば、補正前の荷重閾値122に対して荷重閾値122の補正量の絶対値T2を足し合わせた値を補正後の荷重閾値122として設定する。移動制御部112は、例えば、上述のように記憶部120に予め格納されている荷重閾値122の補正量の絶対値T1を荷重閾値122の補正量の絶対値T2として用いる。
【0043】
図5Cに示すように、移動制御部112は、吸着ヘッド30の吸着面が斜め上方を向いているとき、吸着ヘッド30の自重に基づく荷重閾値122の補正量を正の値に設定する。この場合、移動制御部112は、補正前の荷重閾値122から荷重閾値122の補正量の絶対値T3を足し合わせた値を補正後の荷重閾値122として設定する。荷重閾値122の補正量の絶対値T3は、吸着ヘッド30の自重Gのうち、吸着ヘッド30の移動方向に沿う自重成分Gxの大きさに基づいて設定される値であり、荷重閾値122の補正量の絶対値T2よりも小さい値である。
【0044】
図6は、演算処理部110の処理手順を示すフローチャートである。
図6に示すフローチャートは、例えば、入出力デバイス140を通じてユーザによる受け渡し制御の開始の指示を受け付けたときに実行される。
【0045】
図6に示すように、演算処理部110は、まず、ステッピングモータ26に出力する駆動信号に基づいて、吸着ヘッド30の回転位置を特定する(ステップS10)。
【0046】
次に、演算処理部110は、先のステップS10において特定した吸着ヘッド30の回転位置に基づいて、荷重閾値122の補正量を設定する(ステップS12)。
【0047】
次に、演算処理部110は、電磁コイル31に通電して、吸着ヘッド30を下降させる(ステップS14)。
【0048】
次に、演算処理部110は、電磁コイル31への通電量と、吸着ヘッド30の移動量とに基づいて、吸着ヘッド30から半導体チップ14に作用する荷重の大きさを算出し、算出した荷重の大きさが補正後の荷重閾値122に達したか否かを判定する(ステップS16)。演算処理部110は、吸着ヘッド30から半導体チップ14に作用する荷重の大きさが補正後の荷重閾値122に達していないと判定した場合(ステップS16=NO)、荷重の大きさが補正後の荷重閾値122に達するまでの間、電磁コイル31への通電を維持して吸着ヘッド30の下降を継続する。一方、演算処理部110は、吸着ヘッド30から半導体チップ14に作用する荷重の大きさが補正後の荷重閾値122に達したと判定した場合(ステップS16=YES)、電磁コイル31への通電を保持して、吸着ヘッド30の下降を停止する(ステップS18)。
【0049】
次に、演算処理部110は、吸着ヘッド30に駆動信号を出力して、吸着ヘッド30の吸着動作を開始する(ステップS20)。演算処理部110は、吸着ヘッド30の吸着動作を開始してから所定時間が経過したと判定した場合(ステップS22=YES)、電磁コイル31に通電して、吸着ヘッド30を上昇させる(ステップS24)。
【0050】
なお、上記実施形態は、以下のような形態にて実施してもよい。
【0051】
上記実施形態において、吸着制御部118は、吸着ヘッド30から実装ヘッド46に半導体チップ14を受け渡すとき、吸着ヘッド30の移動に伴って吸着ヘッド30から半導体チップ14に作用する荷重が荷重閾値122以下となるように、吸着ヘッド30に半導体チップ14の吸着の解除を行わせてもよい。この場合、移動制御部112は、例えば、吸着ヘッド30から半導体チップ14に作用する荷重が所定圧力となったことを条件に、吸着ヘッド30を半導体チップ14の吸着解除位置から移動させる。
【0052】
上記実施形態において、移動制御部112は、荷重閾値122を上限値としつつ、吸着ヘッド30から半導体チップ14に作用する荷重が荷重閾値122よりも小さい値に達した時点で、吸着ヘッド30を半導体チップ14の吸着位置から移動させてもよい。すなわち、荷重閾値122は、必ずしも、吸着ヘッド30の処理を移行するときのトリガーとなる値である必要はない。
【0053】
上記実施形態において、吸着ヘッド30の回転位置を検知するセンサを備え、移動制御部112は、センサの検出結果に基づいて、吸着ヘッド30の自重Gに基づく荷重閾値122の補正量を設定してもよい。
【0054】
上記実施形態において、吸着ヘッド30の回転位置と吸着ヘッド30の自重Gに基づく荷重閾値122の補正量との対応関係を示すデータテーブルを予め用意し、移動制御部112は、吸着ヘッド30の回転位置に基づいて、データテーブルを参照して、吸着ヘッド30の自重Gに基づく荷重閾値122の補正量を設定してもよい。
【0055】
以上、本実施形態に係る搬送装置をフリップチップボンディング装置100に適用した場合を例に挙げて説明したが、本実施形態に係る搬送装置はフリップチップボンディング装置100に限られず、吸着ヘッドを回転させる構成を有するのであれば、例えばピックアップツールまたはダイボンディング装置に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0056】
11…架台、11A…凹部、12…ウェーハホルダ、13…ウェーハ、14…半導体チップ、15…突き上げユニット、20…ハンドリングユニット、21…ガイドレール、22…スライダ、22A…駆動モータ、23…キャリッジ、24…回転軸、24A…取り付けアーム、25…フリップヘッド、26…ステッピングモータ、28…ピックアップノズル、29…ケーシング、30…吸着ヘッド、31…電磁コイル、32…貫通孔、40…実装ステージ、41…回路基板、43…ガイドレール、44…スライダ、45…ガントリーフレーム、46…実装ヘッド、47…実装ノズル、50…モータ、51…基体部、52…ボールねじ、53…パルスヒータ、54…実装ツール、100…フリップチップボンディング装置、110…演算処理部、112…移動制御部、114…回転制御部、116…荷重制御部、118…吸着制御部、120…記憶部、122…荷重閾値、130…エンコーダ、140…入出力デバイス。