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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】加熱装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/12 20060101AFI20240930BHJP
   H02K 15/02 20060101ALI20240930BHJP
   F27D 7/02 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
H02K15/12 A
H02K15/02 K
F27D7/02 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024023822
(22)【出願日】2024-02-20
【審査請求日】2024-02-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】594067195
【氏名又は名称】株式会社九州日昌
(74)【代理人】
【識別番号】110002893
【氏名又は名称】弁理士法人KEN知財総合事務所
(72)【発明者】
【氏名】松藤 正明
(72)【発明者】
【氏名】李 乙松
【審査官】稲葉 礼子
(56)【参考文献】
【文献】特許第7236174(JP,B1)
【文献】特開昭58-222761(JP,A)
【文献】特開2023-025014(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/12
H02K 15/02
F27D 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物を支持するベース部材と、
前記ベース部材に対して上下方向に相対移動可能に設けられ、下端部が開口し、天井部を有し、前記ベース部材と協働して前記被加熱物を収容する閉塞された収容空間を画定する円筒状の被覆部材と、
前記被覆部材によって保持され、前記被加熱物の外周面を包囲するように上下方向に設けられた被加熱物を加熱するための光を放射する複数のリング状光源と、を有し、
前記被覆部材の円筒状内壁面は、前記複数のリング状光源からの光を被加熱物の側に向けて反射する反射面を備え、
前記被覆部材および前記ベース部材の一方の上下方向の端部には、前記被覆部材の反射面に沿ってクリーンガスを流通させるクリーンガス供給機構が設けられ、
前記被覆部材および前記ベース部材の他方の上下方向の端部には排気口が形成されており、
前記被覆部材の円筒状内壁面に設けられ、前記複数のリング状光源の、隣り合う2つのリング状光源の間の相互の光の入射を遮る遮光部材をさらに有し、
前記遮光部材には、前記クリーンガス供給機構から供給されたクリーンガスが流通する流通孔が前記リング状光源と前記反射面との間の領域に形成されており、
前記クリーンガス供給機構の供給ノズルは、前記流通孔に対向する位置に配置されている、加熱装置。
【請求項2】
前記排気口の前方には、前記収容空間内のガスが横方向から前記排気口に流れ込むようにする整流板が設けられている、請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記排気口は、前記被覆部材の天井部の中心部に形成されており、
前記整流板は、前記被加熱物よりも大きい直径を有する円板状に形成されている、請求項2に記載の加熱装置。
【請求項4】
前記クリーンガスは、前記被覆部材の天井部と前記整流板との間に形成される隙間を通じて前記排気口に流れ込む、請求項に記載の加熱装置。
【請求項5】
前記クリーンガスは、温度調整された不活性ガス又は空気である、請求項1に記載の加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状の被加熱物を効率良くかつ均等に加熱する加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、特許文献1において、被加熱物を支持するベース部材と、このベース部材に対して上下方向に相対移動可能に設けられ、下端部が開口し、天井部を有し、ベース部材と協働して被加熱物を収容する閉塞された収容空間を画定する円筒状の被覆部材と、被覆部材によって保持され、被加熱物の外周面を包囲するように上下方向に設けられた被加熱物を加熱するための光を放射する複数のリング状光源と、を備える加熱装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第7236174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の加熱装置では、被覆部材の円筒状内壁面は、複数のリング状光源からの光を被加熱物の側に向けて反射する反射面を備えており、この反射面は、例えば、被覆部材の内壁面を鏡面加工した鏡面で形成されている。
しかしながら、被加熱物を加熱すると、被加熱物から生じるアウトガスが被覆部材の反射面に付着し、加熱効率が低下する可能性がある。また、被加熱物からのアウトガスが堆積して形成されるパーティクルが被加熱物に付着し被加熱物が汚染される可能性もある。
【0005】
本発明の目的の一つは、被加熱物を効率良くかつ均等に加熱可能な加熱装置であって、かつ、クリーン度の高い加熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の加熱装置は、被加熱物を支持するベース部材と、
前記ベース部材に対して上下方向に相対移動可能に設けられ、下端部が開口し、天井部を有し、前記ベース部材と協働して前記被加熱物を収容する閉塞された収容空間を画定する円筒状の被覆部材と、
前記被覆部材によって保持され、前記被加熱物の外周面を包囲するように上下方向に設けられた被加熱物を加熱するための光を放射する複数のリング状光源と、を有し、
前記被覆部材の円筒状内壁面は、前記複数のリング状光源からの光を被加熱物の側に向けて反射する反射面を備え、
前記被覆部材および前記ベース部材の一方の上下方向の端部には、前記被覆部材の反射面に沿ってクリーンガスを流通させるクリーンガス供給機構が設けられ、
前記被覆部材および前記ベース部材の他方の上下方向の端部には、排気口が形成されている。
【0007】
好適には、前記排気口の前方には、前記クリーンガスが横方向から前記排気口に流れ込むようにする整流板が設けられている。
【0008】
本発明の加熱装置は、前記被覆部材の内壁面に設けられ、前記複数のリング状光源の、隣り合う2つのリング状光源の間の相互の光の入射を遮る遮光部材を有し、
前記遮光部材には、前記クリーンガス供給機構から供給されたクリーンガスが流通する流通孔が形成されている。
【0009】
好適には、前記排気口は、前記被覆部材の天井部の中心部に形成されており、
前記整流板は、前記被加熱物よりも大きい直径を有する円板状に形成されている。
【0010】
さらに好適には、前記クリーンガスは、前記被覆部材の天井部と前記整流板との間に形成される隙間を通じて前記排気口に流れ込む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、被加熱物を効率良くかつ均等に加熱可能でクリーン度の高い加熱装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る加熱装置の縦断面図。
図2図1の加熱装置の被覆部材が上昇した状態を示す縦断面図。
図3図2の加熱装置の被覆部材のA-A線断面図。
図4A】被加熱物の正面図。
図4B図4Aの被加熱物の上面図。
図5】本発明の他の実施形態に係る加熱装置の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態である加熱装置について説明する。
図1に本発明の一実施形態に係る加熱装置の構成を示し、図2に加熱装置の開放状態を示し、図3図1の加熱装置10の被覆部材20のA-A線断面図を示す。
加熱装置10は、被加熱物Wを支持するベース部材40と、ベース部材40に支持された被加熱物Wを覆う被覆部材20と、被加熱物Wを加熱するための光を放射する複数のリング状光源50と、複数のリング状光源50が放射する光を遮るための遮光部材30と、クリーンガスCGを供給する複数の供給ノズル80とを有する。
【0014】
被覆部材20は、天井部20cを有し下端部が開口する円筒形状に形成された部材である。被覆部材20は、その円筒状内壁面20aと天井部20cの下面である天井面20bと、ベース部材40とが協働して、被加熱物Wを収容する収容空間Spを画定している。被覆部材20は、耐熱性の金属材料で形成され、円筒状内壁面20aは、上記したリング状光源50からの放射される光を反射するように、鏡面加工されている。なお、本実施形態では、円筒状内壁面20aを鏡面加工された反射面としているが、これに限定されるわけではなく、蒸着等によって反射膜を円筒状内壁面20a上に形成することも可能である。なお、天井面20bも鏡面加工等により反射面としてもよいが、非反射面としてもよい。
被覆部材20は、図1および図2から分かるように、図示しない昇降機構により、ベース部材40に対して、上下方向に移動可能になっている。なお、ベース部材40を被覆部材20に対して上方向および下方向に移動させることも可能である。
【0015】
被覆部材20は、天井部20cには、その中心部に排気口20hが形成され、この排気口20hに排気管21が接続されている。排気口20hおよび排気管21を通じて収容空間Sp内のガスGを外部に排出可能となっている。
【0016】
複数のリング状光源50は、円筒状内壁面20aの内側に上下方向に所定の間隔をおいて配置されている。
複数のリング状光源50の各々は、図3に示すように、リング状部52とリング状部52の両方の終端部に連なるストレート部53とからなる透明なガラス管51の内部に光を放出する図示しないリング状のフィラメントを内蔵している。
ガラス管51のストレート部53は、図示しないフィラメントの端部に接続された給電配線55が挿通している。給電配線55は、図示しない給電装置に電気的に接続されている。
ストレート部53は、被覆部材20の円筒状の壁部を貫通し、当該壁部に固定されて支持されている。
複数のリング状光源50の各々は、本実施形態では、ハロゲンガスがガラス管51内に封入されたハロゲンランプである。ハロゲンランプはタングステン製やニクロム線等のフィラメント54に通電してそれを高温にし、そこから放射される光(この光の波長は近赤外域~可視域の電磁波)を利用する。遠赤外ランプやキセノンランプやレーザー等の光源を使用することも可能である。ハロゲンランプは、放射エネルギーへの変換効率が比較的高い点や、出力をコントロールしやすい、給電装置を小型化でき、低コスト化できる等のメリットがある。光源として、例えば、ニクロム線を使用する場合には、ガラス管51でカバーしない構成を採用することも可能である。
【0017】
複数の遮光部材30は、図1および図2に示すように、上下方向に間隔をもって配置された複数のリング状光源50のうち、上下方向において隣り合う2つのリング状光源50,50間に配置されるものと、複数のリング状光源50のうち最上部に配置されたリング状光源50のさらに上部に配置されたものと、複数のリング状光源50のうち最下部に配置されたリング状光源50のさらに下部に配置されたものとからなる。
遮光部材30は、被覆部材20の円筒状内壁面20aに固定されている。固定方法は、溶接や、ボルトによる締結など、種々存在し、適宜最適な固定方法を採用できるが、詳細説明は省略する。
遮光部材30は、図3に示すように、環状円板からなり、内周円から外周側に向けて半径方向に伸びる複数のスリット30sが所定の角度間隔で形成されている。遮光部材30は、セラミックや金属などの耐熱性部材で形成され、上記したリング状光源50からの光を遮る役割を果たす。複数のスリット30sは、リング状光源50からの光により遮光部材30の温度が上昇によって熱膨張した際に、遮光部材30が変形するのを防ぐ役割を果たす。
さらに、遮光部材30には、円周方向に沿って複数の流通孔30aが等間隔に形成されている。流通孔30aは、後述するように、供給ノズル80から供給されたクリーンガスCGが流通孔30aを通じて上方向に流通するように形成されている。
【0018】
上下方向において隣り合う2つのリング状光源50,50間に配置された複数(3枚)の遮光部材30は、隣り合う2つのリング状光源50,50の間で一方から他方へ光が入射するのを防ぐ役割を果たす。すなわち、隣り合う2つのリング状光源50,50の間で相互の光の入射を遮る。
複数のリング状光源50のうち最上部に配置されたリング状光源50のさらに上部に配置された遮光部材30は、最上部に配置されたリング状光源50から放射される光を遮ることにより、主に、被覆部材20の天井部の過熱を防ぐために設けられている。
複数のリング状光源50のうち最下部に配置されたリング状光源50のさらに下部に配置された遮光部材30は、最下部に配置されたリング状光源50から放射される光を遮ることにより、主に、ベース部材40の過熱を防ぐために設けられている。
なお、遮光部材30の構造は、本実施形態の構造に限定されるわけではなく、遮光機能を有していれば種々の態様を採用できる。
【0019】
ベース部材40は、耐熱性の金属材料で形成され、凹部41と、被覆部材20の下端面20eに当接する上端面40aとを有する。
ベース部材40の凹部41には、被加熱物Wを支持するための複数の支持ピン45と、被加熱物Wを底部から加熱するための加熱機構としての光源60と、同一の円周上に配列された複数の供給ノズル80が設けられている。
複数の支持ピン45は、被加熱物Wの自動搬入・搬出を容易にするために、先端部がベース部材40の上端面40aから上方に突出している。
複数の光源60は、直線状に形成されているが、リング状光源50と基本的には同様の構造を有している。非加熱部である両端部61がベース部材の壁部により支持されている。なお、複数の光源60は直線状のものとしたが、これに限定されるわけではなく、他の形状を採用することも可能である。複数の光源60には、図示しない給電配線を通じて給電装置から電力が供給される。
被覆部材20が下降して被覆部材20の下端面20eがベース部材40の上端面40aに当接した状態になると、被覆部材20の下端の開口を閉鎖して収容空間Spを外部から遮断する。
【0020】
供給ノズル80hは、ベース部材40の下端部を貫通するように設けられており、供給ノズル80hには外部からクリーンガスCGが供給される。供給ノズル80hは、クリーンガスCGが被覆部材20の円筒状内壁面20aおよび天井面20bに沿って流れるように上方向に向けられている。供給ノズル80hは、後述する遮光部材30に形成された流通孔30aにそれぞれ対応した位置に配置されることが好ましい。
クリーンガスCGは、被加熱物Wを加熱中に、被覆部材20の円筒状内壁面20aや天井面20bに沿って流れることにより、被加熱物Wから出るアウトガスが反射面である円筒状内壁面20aや天井面20bに付着するのを防ぐ。
クリーンガスCGとしては、例えば、不活性ガスや空気が用いられ、被加熱物Wの均熱性に影響しないように温度調整されていることが好ましい。
【0021】
被覆部材20の排気口20hの入口(前方)には、金属製の整流板22が設けられている。整流板22は、被加熱物Wの外径よりも大きな外径を有する円板からなる。この整流板22は、被覆部材20の天井部20cとの間に隙間Gpが形成されるように設けられている。この隙間Gpを通じて、収容空間Sp内のガスGが排気口20hに流れ込むようになっている。すなわち、収容空間Sp内のガスGは、排気口20hの正面からではなく、横方向から排気口20hに流れ込むようになっている。
なお、ガスGは、クリーンガスCGおよび被加熱物Wから生じるアウトガスを含めたものである。
【0022】
複数のリング状光源50および複数の光源60は、図示しない給電装置によってコントロールされ、各々の出力が独立に制御される。
【0023】
図4Aおよび図4Bに被加熱物Wの一例を示す。
被加熱物Wは、環状の薄鋼板が所定数積み重ねられたモータコア300と、このモータコア300を保持する保持治具200とを含む。
環状の薄鋼板を所定数積み重ねると、所定枚数の薄鋼板によって、モータコア300の円筒状外周面300aが画定される。また、所定数積み重ねられた環状の薄鋼板の中心部の貫通孔には、保持治具200の、矩形状の外形をもつ金属製の支持プレート201に垂直に設けられた支持柱202が嵌合挿入されるとともに、支持プレート201によってモータコア300が支持されている。
モータコア300は、図示しない複数の磁石挿入孔が外周部付近に設けられており、これらにそれぞれマグネットを挿入した後に、その磁石挿入孔に樹脂を充填し、その充填した樹脂を硬化させることにより、マグネットが固定される。上記したように、この樹脂充填工程前に、モータコア300を所定の温度まで加熱しておく予熱工程が必須である。加熱装置1は、この予熱工程に用いられる。
【0024】
被加熱物Wのモータコア300の円筒状外周面300aと保持治具200の支持柱202とは、図3に示すように、被覆部材20の円筒状内壁面20aと、複数のリング状光源50と、遮光部材30と、同心状に配置されている。
複数のリング状光源50は、図1に示すように、被加熱物Wのモータコア300の円筒状外周面300aの上端部から下端部までの加熱が可能に配置されている。
【0025】
次に、加熱装置10による、被加熱物Wの予熱工程の手順の一例について説明する。
図2に示すように、被覆部材20をベース部材40に対して上方向に上昇させる。このとき、複数のリング状光源50および複数の光源60には給電装置100から電力が既に供給され、複数のリング状光源50および複数の光源60から加熱用の光が放出された状態にあるものとする。
【0026】
次いで、図示しないハンドリングロボット等の搬送装置を使用して、被加熱物Wをベース部材40の支持ピン45の上に置く。
次いで、図1に示すように、上昇させた状態の被覆部材20を下降させ、被覆部材20の下端面20eをベース部材40の上端面40aに当接させる。これにより、被覆部材20およびベース部材40の凹部で画定される収容空間Spが閉鎖される。
【0027】
次いで、複数の供給ノズル80からクリーンガスCGを供給する。クリーンガスCGの供給量は、モータコア300を均等に加熱する観点から、収容空間Sp内に大きな流れが発生せずに、モータコア300に温度ムラが発生しないように設定する。クリーンガスCGの温度も同様にモータコア300に温度ムラが発生しない温度に設定する。
供給されたクリーンガスCGは、被覆部材20の円筒状内壁面20aに沿いながら流通孔30aを通じて上方向に流れ、天井部20cに達すると、向きを変えて横方向に流れ、天井部20cと整流板22との隙間Gpを通じて排気口20hに横方向から流れ込む。
クリーンガスCGを含めた収容空間Sp内のガスGの外部への排出は、排気管21にポンプを接続し、収容空間Sp内のガスGを一定流量で外部に排出させることもできる。また、ポンプを使用しない場合には、加熱により温度上昇したガスの上昇流を利用して自然に排気することも可能である。
【0028】
次いで、加熱を開始すると、複数のリング状光源50は、モータコア300の円筒状外周面300aを包囲しているため、リング状光源50から放出される光の一部は、モータコア300の円筒状外周面300aの全周に放射される。
リング状光源50から放出される光のうち、リング状光源50の半径方向外側に向かう光の一部は、被覆部材20の円筒状内壁面20aに達すると、円筒状内壁面20aが円筒形状であることから、モータコア300の円筒状外周面300aに向かって反射する。
光源60から放射される光は、保持治具200の支持プレート201に主に当てられ、保持治具200を加熱する。
このように、加熱装置10においては、複数のリング状光源50および光源60からの光が効率的にモータコア300の加熱に利用されるため、モータコア300の温度を迅速に上昇させることができる。
【0029】
ここで、モータコア300の温度が均一になるようにするための温度制御の一例について説明する。
加熱装置10内で生じた熱は、上方向に向かって上昇するため、モータコア300の上側にいくほど雰囲気の温度は高くなりやすい。
このため、複数のリング状光源50の出力を独立に調整することが必要である。一般的には、上方に位置するリング状光源50ほど、出力を落とし、下方に配置されたリング状光源50ほど出力を大きくする。
例えば、モータコア300の温度を非接触で検出できる温度センサを加熱装置10内に設け、検出される温度をフィードバックし、モータコア300の温度が均一になるように、複数のリング状光源50の出力を独立に制御することも可能である。
また、あらかじめ実験等により、モータコア300の温度を均一にするための複数のリング状光源50のそれぞれの出力を求めておき、この情報に従って、リング状光源50に供給する電力を調整することも可能である。
【0030】
モータコア300が加熱されると、モータコア300からはアウトガスが発生する。本実施形態では、モータコア300からのアウトガスは、空気より軽いものと想定している。
このため、モータコア300からのアウトガスは被覆部材20の円筒状壁面20aに沿って上昇するクリーンガスCGに巻き込まれ、上方向に運ばれ、天井面20bに達した後、隙間Gpを通じて排気口20hに流れ込み、ガスGとして排気管21から外部に排出される。
モータコア300を加熱中には、反射面である円筒状壁面20aおよび天井面20bの表面付近にはクリーンガスCGが常時流れているため、反射面である円筒状壁面20aおよび天井面20bに向かうモータコア300からのアウトガスはクリーンガスCGによって遮断され、円筒状壁面20aおよび天井面20bへのアウトガスの付着を防止できる。その結果、複数のリング状光源50による加熱効率を高く維持することができる。
【0031】
整流板22を排気口20hの正面に配置しないと、モータコア300から発生するアウトガスを含む空気が排気口20hにダイレクトに吸い込まれ、アウトガスが収容空間Sp内で渦巻きが発生しやすくなり、モータコア300の均熱性が低下しやすい。
整流板22を排気口20hの正面に配置することで、アウトガスを含む空気が渦巻かないようになっている。
整流板22を設けることで、アウトガスがクリーンガスCGにより運搬されやすくなり、アウトガスの外部への排出が促進され、反射面である円筒状壁面20aおよび天井面20bの汚染を抑制できる。
整流板22は、収容空間Sp内における渦巻きの発生を抑制することで、円筒状壁面20aと天井面20bの交差する領域に澱みが発生することも抑制する。
さらに、整流板22の外径をモータコア300よりも大きくすることで、排気口20hの周辺に堆積するアウトガスの堆積物が剥がれ落ちてモータコア300に付着するのを防ぐことができる。
また、整流板22は、収容空間Sp内の熱流を安定化させる役割も果たす。
【0032】
被加熱物W(モータコア300)の所要の加熱が完了したところで、図2に示したように、ベース部材40から離間させるために被覆部材20を上昇させ、被加熱物Wを搬出できるようにする。そして、被加熱物Wを図示しないハンドリングロボット等の搬送装置を使用して、ベース部材40の支持ピン45の上から搬出してこれを樹脂充填工程に送るとともに、新たに加熱すべき被加熱物Wをベース部材40の支持ピン45の上に搬入する。これらの手順を繰り返すことにより、大量のモータコア300の加熱を流れ作業で実行できる。
【0033】
本実施形態によれば、上記の構成により、モータコア300および保持治具200を含む被加熱物Wを効率良くかつ均等に加熱可能であり、また、被加熱物Wの汚染を防止できる。
【0034】
本実施形態では、被加熱物Wとして、モータコア300およびこれを保持する保持治具200を例に挙げたが、これ以外にも、円筒状外周面を有する被加熱物であれば、本発明の加熱装置を適用可能である。
【0035】
上記実施形態では、クリーンガス供給機構として、複数の供給ノズル80を同一円周上に配列した場合を例に挙げたが、この構成以外にも、例えば、円筒状壁面20aの直径よりも若干短い径の環状ノズルを用いてクリーンガスを供給することも可能である。
【0036】
上記実施形態では、被加熱物Wからのアウトガスが下から上に向かって流れることを前提として、排気口20hおよび排気管21を被覆部材20の天井部20cに設けた。しかしながら、被加熱物Wからのアウトガスが空気よりも重く気流によって上に向かって上昇しない場合もありうる。このような場合には、例えば、図5に示すように、ベース部材40の下端部の中心部に排気口40hを形成し、排気管21をこれに接続する。被覆部材20の上端部には、同一円周上に複数の供給ノズル80を配列する。供給ノズル80から下方向に向けてクリーンガスCGを供給することで、アウトガスが反射面である円筒状壁面20aに付着するのを防止でき、被加熱物Wの汚染を防止できる。
【0037】
本発明は上記実施の形態に制限されるものではなく、本発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。
【符号の説明】
【0038】
10 加熱装置
20 被覆部材
20a 円筒状内壁面
20b 天井面
20c 天井部
21 排気管
22 整流板
30 遮光部材
30a 流通孔
30s スリット
Gp 間隙
40 ベース部材
50 リング状光源
51 ガラス管
52 リング状部
53 ストレート部
54 給電配線
60 光源
80 供給ノズル
200 保持治具
201 支持プレート
202 支持柱
300 モータコア
300a 円筒状外周面
W 被加熱物
G ガス
CG クリーンガス
【要約】      (修正有)
【課題】被加熱物を効率良くかつ均等に加熱可能でクリーン度の高い加熱装置を提供する。
【解決手段】ベース部材40と、ベース部材40と協働して被加熱物Wを収容する閉塞された収容空間Spを画定する円筒状の被覆部材20と、被覆部材20によって保持され、被加熱物の外周面を包囲するように上下方向に設けられた被加熱物を加熱するための光を放射する複数のリング状光源50と、を有し、被覆部材20の円筒状内壁面は、複数のリング状光源からの光を被加熱物の側に向けて反射する反射面20aを備え、ベース部材40の端部には、被覆部材20の反射面20aに沿ってクリーンガスを流通させる供給ノズル80が設けられ、被覆部材20天井部には、排気口20hが形成されている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5