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特許7562201ホットメルト性硬化性シリコーン組成物、封止剤、フィルム、光半導体素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】ホットメルト性硬化性シリコーン組成物、封止剤、フィルム、光半導体素子
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20240930BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20240930BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240930BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20240930BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20240930BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20240930BHJP
   H01L 33/56 20100101ALI20240930BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/05
C08K3/36
C09K3/10 G
C09K3/10 Q
H01L23/30 F
H01L33/56
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020079564
(22)【出願日】2020-04-28
(65)【公開番号】P2021021058
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2023-04-14
(31)【優先権主張番号】P 2019139794
(32)【優先日】2019-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000110077
【氏名又は名称】デュポン・東レ・スペシャルティ・マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】竹内 絢哉
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 さわ子
(72)【発明者】
【氏名】林 昭人
(72)【発明者】
【氏名】小林 昭彦
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-221075(JP,A)
【文献】特開2014-156532(JP,A)
【文献】特開2013-232580(JP,A)
【文献】特開2012-012434(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/00- 83/16
C08K 3/00- 13/08
C09K 3/00- 3/32
H01L 23/00- 23/56
H01L 33/00- 33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一分子中にアルケニル基を少なくとも2個有するアルケニル基含有オルガノポリシロキサンであって、アルケニル基及び少なくとも1つの(ArSiO2/2)単位(式中、Arはアリール基を意味する)を含み、成分(A)の分子構造中のシロキサン単位の総量に対する(Ar SiO 2/2 )単位の割合が0.05以上0.5以下であるレジン状オルガノポリシロキサンを含む、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、
(B)組成物の総質量に対して0.1~5質量%の、一分子中にケイ素原子結合水素原子を少なくとも2個有するレジン状オルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(B’)一分子中にケイ素原子結合水素原子を少なくとも2個有する直鎖状のオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(C)平均単位式(C-1):
(R SiO1/2)(R SiO2/2)(RSiO3/2)
(式中、Rは同じかまたは異なる、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アラルキル基、もしくはエポキシ基含有有機基または、アルコキシ基であり、ただし、少なくとも1つのRはアルケニル基であり、且つ、少なくとも1つのRはエポキシ基含有有機基であり、a、b、およびcは、それぞれ、0≦a≦1.0、0≦b≦1.0、0≦c<0.9、且つa+b+c=1を満たす数である。)
で表される添加剤、および
(D)ヒドロシリル化反応用触媒、および
(E)組成物の総質量に対して20質量%以下の、シリカ
を含み、
(E)シリカ以外の無機充填剤の配合量が、組成物の総質量に対して20質量%以下である
無溶剤系ホットメルト性硬化性シリコーン組成物。
【請求項2】
(A)成分が、アルケニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンをさらに含む、請求項1に記載のホットメルト性硬化性シリコーン組成物。
【請求項3】
(B)成分が、(B-1)平均単位式:
(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(XO1/2
(式中、Rは同じかまたは異なる水素原子又はハロゲン置換または非置換の一価炭化水素基であり、ただし、少なくとも2つのRは水素原子であり、Xは水素原子またはアルキル基であり、a、b、c、d、およびeは、0≦a≦1.0、0≦b≦1.0、0≦c<0.9、0≦d<0.5、0≦e<0.4であり、a+b+c+d=1.0であり、かつc+d>0を満たす数である。)で表される、請求項1又は2に記載のホットメルト性硬化性シリコーン組成物。
【請求項4】
(A)成分として環状のオルガノポリシロキサンを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のホットメルト性硬化性シリコーン組成物を固化してなるフィルム。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載のホットメルト性硬化性シリコーン組成物からなる封止剤。
【請求項7】
請求項6の封止剤を含む光半導体素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬化性シリコーン組成物に関し、より具体的には、光半導体素子を封止、被覆、または接着するために用いられる硬化性シリコーン組成物に関する。また、本発明は、こうした硬化性シリコーン組成物からなる封止剤、この封止剤を含む光半導体素子にも関する。また、本発明は、硬化性シリコーン組成物を固化したフィルムにも関する。
【背景技術】
【0002】
硬化性シリコーン組成物は、硬化して優れた耐熱性、耐寒性、電気絶縁性、耐候性、援水性、透明性を有する硬化物を形成することから、幅広い産業分野で利用されている。特に、その硬化物は、他の有機材料と比較し変色しにくく、また、物理的物性の低下が小さいため、光学材料用に適している。
【0003】
例えば、特許文献1~3には、一分子中に2個以上の非共有結合性二重結合基を有するオルガノポリシロキサンと、一分子中に珪素原子に結合した水素原子を2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、触媒量の白金系触媒とを含む硬化型シリコーン樹脂組成物を用いる、光半導体素子封止用または光学レンズ用の樹脂組成物が記載されている。また、特許文献4および5には、25°Cにおいて非流動性で、表面粘着性が低く、加熱により容易に溶融するホットメル卜性のシリコーン樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-299099号公報
【文献】特開2007-246894号公報
【文献】特開2006-324596号公報
【文献】特開2013-001794号公報
【文献】国際公開第2015/194158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のシリコーン樹脂組成物でホットメルト性フィルムを作製した場合、フィルムの機械特性、特にフィルム強度および伸びが不十分であるという問題があった。そのため、例えば、半導体パッケージを製造する際のフィルム状またはシート状の封止剤およびラミネーション用フィルムの形成に用いた場合、得られたフィルムが破れやすく、その取り扱い作業性が不十分であるという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、フィルムまたはシート形状に成形した場合であっても、優れた機械特性、特に強度および伸びを示すことができるホットメルト性硬化性シリコーン組成物を提供することにある。より具体的には、取り扱い作業性に優れ、効率よく半導体パッケージを製造することができる、シート状またはフィルム状封止剤およびラミネーション用フィルムを形成できる、ホットメルト性硬化性シリコーン組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、本件発明者は、鋭意検討した結果、
(A)一分子中にアルケニル基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン、
(B)組成物の総質量に対して0.1~5質量%の、一分子中にケイ素原子結合水素原子を少なくとも2個有するレジン状オルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(C)平均単位式(C-1):
(R SiO1/2)(R SiO2/2)(RSiO3/2)
(式中、Rは同じかまたは異なる、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アラルキル基、もしくはエポキシ基含有有機基であり、ただし、少なくとも1つのRはアルケニル基であり、且つ、少なくとも1つのRはエポキシ基含有有機基であり、a、b、およびcは、それぞれ、0≦a≦1.0、0≦b≦1.0、0≦c<0.9、且つa+b+c=1を満たす数である。)
で表される添加剤
(D)ヒドロシリル化反応用触媒、および
(E)シリカ
を含む無溶剤系のホットメルト性硬化性シリコーン組成物により、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
本発明の一実施形態において、(A)成分は、少なくとも1つの(ArSiO2/2)単位を含むレジン状オルガノポリシロキサンを含む。
【0009】
本発明の一実施形態において、(B)成分は、(B-1)平均単位式:
(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(XO1/2
(式中、Rは水素原子または同じかもしくは異なるハロゲン置換または非置換の一価炭化水素基であり、ただし、少なくとも2つのRは水素原子であり、Xは水素原子またはアルキル基であり、a、b、c、d、およびeは、0≦a≦1.0、0≦b≦1.0、0≦c<0.9、0≦d<0.5、0≦e<0.4であり、a+b+c+d=1.0であり、かつc+d>0を満たす数である。)で表される。
【0010】
前記した平均単位式(B-1)において、aが0.1≦a≦0.9の範囲であり、bが0≦b≦0.8の範囲であり、cが0.1≦c≦0.9の範囲であり、dが0≦d≦0.4の範囲であり、eが0≦e≦0.3の範囲であり得る。
【0011】
前記した平均単位式(C-1)において、aが0≦a≦0.9の範囲であり、bが0.1≦b≦0.9の範囲であり、cが0.01≦c≦0.8の範囲であり得る。
【0012】
(C)成分中に含まれるアルケニル基の含有量は、Rの合計の5モル%以上であり得る。
【0013】
(C)成分中に含まれるエポキシ基含有有機基の含有量は、Rの合計の5モル%以上であり得る。
【0014】
本発明の一実施形態において、(A)成分は、直鎖状、分岐鎖状、および環状のオルガノポリシロキサンを含む。
【0015】
本発明はまた、本発明に係るホットメルト性硬化性シリコーン組成物を固化してなるフィルムにも関する。
【0016】
本発明はまた、本発明に係るホットメルト性硬化性シリコーン組成物からなる、封止剤にも関する。
【0017】
本発明はまた、本発明に係る封止剤を含む光半導体素子にも関する。
【0018】
本発明の半導体素子は、好ましくは発光ダイオードである。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るホットメルト性硬化性シリコーン組成物によれば、フィルムまたはシート形状に成形した場合であっても、優れた機械特性、特に強度および伸びを示すことができる。そのため、本発明のホットメルト性硬化性シリコーン組成物は、取り扱い作業性に優れ、効率よく半導体パッケージを製造することができる、シート状またはフィルム状封止剤およびラミネーション用フィルムを形成できる。
【0020】
また、本発明の封止剤によれば、本発明のホットメルト性硬化性シリコーン組成物から形成されているので、優れた機械特性、特に強度および伸びを示すことができ、その結果、取り扱い作業性に優れる。そのため、効率よく半導体パッケージを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0022】
[ホットメルト性硬化性シリコーン組成物]
本発明は、無溶剤系ホットメルト性硬化性シリコーン組成物に関し、
(A)一分子中にアルケニル基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン、
(B)組成物の総質量に対して0.1~5質量%の、一分子中にケイ素原子結合水素原子を少なくとも2個有するレジン状オルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(C)平均単位式(C-1):
(R SiO1/2)(R SiO2/2)(RSiO3/2)
(式中、Rは同じかまたは異なる、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アラルキル基、もしくはエポキシ基含有有機基であり、ただし、少なくとも1つのRはアルケニル基であり、且つ、少なくとも1つのRはエポキシ基含有有機基であり、a、b、およびcは、それぞれ、0≦a≦1.0、0≦b≦1.0、0≦c<0.9、且つa+b+c=1を満たす数である。)
で表される添加剤
(D)ヒドロシリル化反応用触媒、および
(E)シリカ
を含む。
【0023】
本発明のシリコーン組成物は、溶剤を含まず、また、加熱処理によりフィルム形状、シート形状、などに成形した時にホットメルト性を示す。本明細書において、「ホットメルト性」とは、25℃において非流動性であるが、加熱により容易に溶融して流動性を示す特性を言う。例えば、本発明のホットメルト性シリコーン組成物は、100℃の溶融弾性率が10Pa~1MPaの範囲内である。ここで、非流動性とは、無負荷の状態で流動しないことを意味し、例えば、JIS K 6863-1994「ホットメルト接着剤の軟化点試験方法」で規定されるホットメルト接着剤の環球法による軟化点試験方法で測定される軟化点未満での状態を示す。すなわち、本発明のホットメルト性シリコーン組成物は、好ましくは軟化点が25℃よりも高い。なお、100℃の溶融弾性率は、温度制御のできるフラットプレート型粘弾性測定器により測定できる。また、本発明のシリコーン組成物は、ホットメルト性と硬化性を併せ持つ、ホットメルト性硬化性シリコーン組成物である。
【0024】
こうした本発明に係るホットメルト性硬化性シリコーン組成物によれば、フィルムまたはシート形状に成形した場合であっても、優れた機械特性、特に強度および伸びを示すことができる。そのため、本発明のホットメルト性硬化性シリコーン組成物は、取り扱い作業性に優れ、効率よく半導体パッケージを製造することができる、半導体パッケージを製造するための封止剤およびラミネーション用フィルムを形成できる。
【0025】
以下、各成分について詳細に説明する。
【0026】
(A)アルケニル基含有オルガノポリシロキサン
(A)成分は、本発明の硬化性シリコーン組成物の主剤である、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合アルケニル基を有するアルケニル基含有オルガノポリシロキサンである。
【0027】
(A)成分に含まれるアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基等の炭素数が2~12個のアルケニル基が例示され、好ましくは、ビニル基である。
【0028】
(A)成分の分子構造としては、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、分岐鎖状、環状、および三次元網状構造が例示される。(A)成分は、これらの分子構造を有する1種のオルガノポリシロキサンであるか、あるいはこれらの分子構造を有する2種以上のオルガノポリシロキサンの混合物であってもよい。本発明の硬化性シリコーン組成物は、好ましくは、(A)成分として直鎖状のオルガノポリシロキサンと分岐鎖状のレジン状オルガノポリシロキサンの両方を含む。
【0029】
本発明の一実施形態において、(A)成分は、
(A-1)平均単位式:R SiO(R SiO)SiR
(式中、Rは同じかまたは異なるハロゲン置換または非置換の一価炭化水素基であり、ただし、一分子中、少なくとも2個のRはアルケニル基であり、mは4~1,000の整数である。)で表される直鎖状のオルガノポリシロキサン、および/または、
(A-2)平均単位式:(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(XO1/2
(式中、Rは前記と同じであり、ただし、一分子中、少なくとも2個のRはアルケニル基であり、Xは水素原子またはアルキル基であり、a、b、c、dおよびeは、0≦a≦1.0、0≦b≦1.0、0≦c<0.9、0≦d<0.5、0≦e<0.4であり、a+b+c+d+e=1.0であり、かつc+d>0を満たす数である。)で表される分岐鎖状のオルガノポリシロキサン、および/または、
(A-3)平均単位式:(RSiO2/2
(式中、Rは前記と同じであり、ただし、一分子中、少なくとも2個のRはアルケニル基であり、nは3~50の整数である。)で表される環状のオルガノポリシロキサンであり得る。
【0030】
好ましくは、本発明のホットメルト性硬化性シリコーン組成物は、(A)成分として直鎖状および分岐鎖状のオルガノポリシロキサンの両方を含む。より好ましくは、本発明のホットメルト性硬化性シリコーン組成物は、(A)成分として直鎖状、分岐鎖状、および環状のオルガノポリシロキサンを含む。なお、分岐鎖状のオルガノポリシロキサンとは、レジン状のオルガノポリシロキサンのことであり、一般式:RSiO1/2で表されるシロキサン単位(M単位)、一般式:RSiO2/2で表されるシロキサン単位(D単位)、一般式:RSiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位)、および式:SiO4/2で表されるシロキサン単位(Q単位)のうち、一分子中に少なくとも1つのT単位またはQ単位を含むオルガノポリシロキサンを意味する。
【0031】
上記式中のRのハロゲン置換または非置換の一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の炭素数が1~12個のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等の炭素数が6~20個のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等の炭素数が7~20個のアラルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基等の炭素数が2~12個のアルケニル基;これらの基の水素原子の一部または全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が例示される。Rは、本発明の目的を損なわない範囲で、少量の水酸基やメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基であってもよい。
【0032】
は、好ましくは、フェニル基、炭素原子数1~6のアルキル基もしくはシクロアルキル基、または炭素原子数2~6のアルケニル基から選択される。
【0033】
(A)成分に含まれるアルケニル基の含有量は、特に限定されないが、ただし、Rの合計の0.01~50モル%、0.05~40モル%、あるいは0.09~32モル%がアルケニル基であることが好ましい。なお、アルケニル基の含有量は、例えば、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)、核磁気共鳴(NMR)等の分析によって求めることができる。
【0034】
(A)成分は、好ましくは、少なくとも1つの(ArSiO2/2)単位を含むレジン状オルガノポリシロキサンを含む。
【0035】
本発明の(A)成分としての少なくとも1つの(ArSiO2/2)単位を含むレジン状オルガノポリシロキサンは、好ましくは、分子構造中のT単位の割合が、0.1以上であり、より好ましくは0.2以上であり、さらに好ましくは0.3以上である。好適な実施形態において、本発明のレジン状オルガノポリシロキサンは、分子構造中のT単位の割合が、0.9以下であり、好ましくは0.85以下であり、より好ましくは0.8以下である。別の好適な実施形態において、本発明のレジン状オルガノポリシロキサンは、分子構造中のQ単位の割合が0.2以下であり、好ましくは0.1以下であり、さらに好ましくはQ単位を含まない。なお、上記T単位およびQ単位の割合は、レジン状オルガノポリシロキサンの一般式:RSiO1/2で表されるシロキサン単位(M単位)、一般式:RSiO2/2で表されるシロキサン単位(D単位)、一般式:RSiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位)、および式:SiO4/2で表されるシロキサン単位(Q単位)の量に基づいて計算できる。
【0036】
(ArSiO2/2)単位において、Arはアリール基を意味する。アリール基は、無置換でも置換されていてもよく、好ましくは炭素数6~20のアリール基であり、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ピレニル基、およびこれらのアリール基の水素原子をメチル基、エチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が例示される。特に好ましくは、アリール基はフェニル基である。
【0037】
本発明の(A)成分としてのレジン状オルガノポリシロキサンは、好ましくは、分子構造中の(ArSiO2/2)単位の割合が0.05以上であり、より好ましくは0.1以上であり、さらに好ましくは0.15以上であり、優先的には0.2以上である。好適な実施形態において、本発明のレジン状オルガノポリシロキサンは、分子構造中の(ArSiO2/2)単位の割合が0.5以下であり、好ましくは0.45以下であり、より好ましくは0.4以下である。
【0038】
少なくとも1つの(ArSiO2/2)単位を含む(A)成分としてのレジン状オルガノポリシロキサンは、好ましくは、ケイ素原子に結合する一価炭化水素基の40モル%以上がアリール基であり、より好ましくは50モル%以上、特に60モル%以上がアリール基であり得る。
【0039】
(A)成分のレジン状オルガノポリシロキサンは、好ましくは、以下の平均単位式(A-4)で表され得る:
(A-4)(R SiO1/2(R SiO2/2(ArSiO2/2b‘(RSiO3/2(SiO4/2(XO1/2
(式中、RおよびArは前記と同じであり、ただし、一分子中、少なくとも2個のRはアルケニル基であり、Xは水素原子またはアルキル基であり、R SiO2/2は、ArSiO2/2以外の単位を示し、a、b、b’、c、d、およびeは、0≦a≦1.0、0≦b≦1.0、0<b’≦1.0、0≦c<0.9、0≦d<0.5、0≦e<0.4であり、a+b+b’+c+d=1.0であり、かつc+d>0を満たす数である。)
【0040】
平均単位式(A-4)において、aは、好ましくは、0≦a≦0.5の範囲であり、より好ましくは0≦a≦0.3の範囲であり、優先的には0≦a≦0.2の範囲であり、特に0≦a≦0.1の範囲である。平均単位式(A-4)において、bは、好ましくは、0≦b≦0.8の範囲であり、より好ましくは0.1≦b≦0.7の範囲であり、特に0.15≦b≦0.6の範囲である。平均単位式(A-4)において、b’は、好ましくは、0.1≦b’≦0.7の範囲であり、より好ましくは0.2≦b’≦0.6の範囲であり、特に0.25≦b’≦0.5の範囲である。平均単位式(A-4)において、cは、好ましくは、0.1≦c≦0.9の範囲であり、より好ましくは0.2≦c≦0.85の範囲であり、特に0.3≦c≦0.8の範囲である。平均単位式(A-4)において、dは、好ましくは、0≦d≦0.4の範囲であり、より好ましくは0≦d≦0.3の範囲であり、特に0≦d≦0.2の範囲である。平均単位式(A-4)において、eは、好ましくは、0≦e≦0.3の範囲であり、より好ましくは0≦e≦0.2の範囲であり、特に0≦e≦0.1の範囲である。
【0041】
本発明の硬化性シリコーン組成物は、(A)成分として、好ましくは、少なくとも1つの(ArSiO2/2)単位を含むレジン状オルガノポリシロキサンを、組成物の総質量に基づいて、10質量%以上で含み、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上で含む。好適な実施形態において、本発明の硬化性シリコーン組成物は、少なくとも1つの(ArSiO2/2)単位を含むレジン状オルガノポリシロキサンを、組成物の総質量に基づいて、90質量%以下で含み、好ましくは80質量%以下で含み、より好ましくは70質量%以下で含む。
【0042】
(A)成分は、本発明の組成物の総質量に基づいて、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、優先的には60質量%以上で含まれ、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、特に80質量%以下で含まれ得る。
【0043】
(B)レジン状オルガノハイドロジェンポリシロキサン
(B)成分の一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するレジン状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(すなわち、分岐鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン)は、ヒドロシリル化反応硬化型である硬化性シリコーン組成物の架橋剤として作用するものである。好ましくは、(B)成分は、少なくとも分子鎖両末端にケイ素原子結合水素原子を含有するレジン状のオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。(B)成分は1種のみのオルガノポリシロキサンを用いてもよく、2種以上のオルガノポリシロキサンを組み合わせて用いてもよい。
【0044】
(B)成分のケイ素原子結合水素原子は、好ましくは、少なくとも分子鎖両末端に含有しており、また、分子鎖の側鎖にケイ素原子結合水素原子が含有されていてもよく、分子鎖両末端にのみケイ素原子結合水素原子が含有されていてもよい。この(B)成分中の水素原子以外のケイ素原子に結合する基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の炭素数が1~12個のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等の炭素数が6~20個のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等の炭素数が7~20個のアラルキル基;これらの基の水素原子の一部または全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が例示される。なお、(B)成分中のケイ素原子には、本発明の目的を損なわない範囲で、少量の水酸基やメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基を有していてもよい。
【0045】
本発明の一実施形態において、(B-1)平均単位式:
(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(XO1/2
(式中、Rは水素原子または同じかもしくは異なるハロゲン置換または非置換の一価炭化水素基であり、ただし、少なくとも2つのRは水素原子であり、Xは水素原子またはアルキル基であり、a、b、c、d、およびeは、0≦a≦1.0、0≦b≦1.0、0≦c<0.9、0≦d<0.5、0≦e<0.4であり、a+b+c+d=1.0であり、かつc+d>0を満たす数である。)で表されるレジン状オルガノハイドロジェンポリシロキサンであり得る。
【0046】
上記式B-1中のRのハロゲン置換または非置換の一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の炭素数が1~12個のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等の炭素数が6~20個のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等の炭素数が7~20個のアラルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基等の炭素数が2~12個のアルケニル基;これらの基の水素原子の一部または全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が例示される。Rは、本発明の目的を損なわない範囲で、少量の水酸基やメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基であってもよい。
【0047】
上記式B-1において、aは、好ましくは、0.1≦a≦0.9の範囲であり、より好ましくは0.2≦a≦0.8の範囲であり、特に0.4≦a≦0.7の範囲である。上記式B-1において、bは、好ましくは、0≦b≦0.8の範囲であり、より好ましくは0≦b≦0.5の範囲であり、特に0≦b≦0.2の範囲である。上記式B-1において、cは、好ましくは、0.1≦c≦0.9の範囲であり、より好ましくは0.2≦c≦0.7の範囲であり、特に0.3≦c≦0.5の範囲である。上記式B-1において、dは、好ましくは、0≦d≦0.4の範囲であり、より好ましくは0≦d≦0.3の範囲であり、特に0≦d≦0.2の範囲である。上記B-1において、eは、好ましくは、0≦e≦0.3の範囲であり、より好ましくは0≦e≦0.2の範囲であり、特に0≦e≦0.1の範囲である。
【0048】
(B-1)成分は、本発明の組成物の総質量に基づいて、0.1~5質量%の量で本発明のホットメルト性硬化性シリコーン組成物中に含まれる。(B)成分は、本発明の組成物の総質量に基づいて、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上の量で本発明のホットメルト性硬化性シリコーン組成物中に含まれ、例えば4.5質量%以下の量で本発明のホットメルト性硬化性シリコーン組成物中に含まれる。
【0049】
本発明の一実施形態において、(B)成分は、(A)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.001~5モルとなる量であることが好ましく、より好ましくは0.01~2モルとなる量であり、特に、0.05~1モルとなる量であり得る。
【0050】
ホットメルト性硬化性シリコーン組成物は、上記(B)成分以外に、(B’)成分として、ヒドロシリル化反応硬化型である硬化性シリコーン組成物の架橋剤として作用するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを含んでいてもよい。こうした(B’)成分としては、好ましくは、直鎖状のオルガノハイドロジェンポリシロキサンが挙げられる。(B’)成分は1種のみのオルガノポリシロキサンを用いてもよく、2種以上のオルガノポリシロキサンを組み合わせて用いてもよい。
【0051】
(B’)成分のケイ素原子結合水素原子は、好ましくは、少なくとも分子鎖両末端に含有しており、また、分子鎖の側鎖にケイ素原子結合水素原子が含有されていてもよく、分子鎖両末端にのみケイ素原子結合水素原子が含有されていてもよい。この(B)成分中の水素原子以外のケイ素原子に結合する基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の炭素数が1~12個のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等の炭素数が6~20個のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等の炭素数が7~20個のアラルキル基;これらの基の水素原子の一部または全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が例示される。なお、(B’)成分中のケイ素原子には、本発明の目的を損なわない範囲で、少量の水酸基やメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基を有していてもよい。
【0052】
本発明の一実施形態において、(B’)成分は、(B-2)平均組成式:
(R SiO1/2(R SiO2/2(XO1/2
(式中、RおよびXは上記と同じであり、a、b、およびeは、0≦a≦1.0、0≦b≦1.0、0≦e<0.4、かつa+b=1.0を満たす数である。)で表される直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンであり得る。
【0053】
本発明の一実施形態において、(B’)成分は、以下の構造式で表され得る:
[HR SiO1/2[R SiO2/2
式中、Rは同じかまたは異なるハロゲン置換または非置換の一価炭化水素基であり、yは1~100、好ましくは1~10の範囲の数である。Rのハロゲン置換または非置換の一価炭化水素基としては、Rで説明したものと同じものを適用できる。
【0054】
(B’)成分は、本発明の組成物の総質量に基づいて、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、優先的には10質量%以上、特に15質量%以上の量で本発明のホットメルト性硬化性シリコーン組成物中に含まれ、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、特に30質量%以下の量で本発明のホットメルト性硬化性シリコーン組成物中に含まれ得る。
【0055】
(B)成分と(B’)の合計の含有量は、(A)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.1~10モルとなる量であることが好ましく、より好ましくは0.5~5モルとなる量であり、特に、0.5~1.5モルとなる量であり得る。また、(B)成分と(B’)の合計の含有量は、本発明の組成物の総質量に基づいて、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、優先的には10質量%以上、特に15質量%以上の量で本発明のホットメルト性硬化性シリコーン組成物中に含まれ、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、特に30質量%以下の量で本発明のホットメルト性硬化性シリコーン組成物中に含まれ得る。
【0056】
(C)添加剤
本発明の(C)成分である添加剤は、(C-1)平均単位式:
(R SiO1/2)(R SiO2/2)(RSiO3/2)
(式中、Rは同じかまたは異なる、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アラルキル基、もしくはエポキシ基含有有機基または、アルコキシ基であり、ただし、少なくとも1つのRはアルケニル基であり、且つ、少なくとも1つのRはエポキシ基含有有機基であり、a、b、およびcは、それぞれ、0≦a≦1.0、0≦b≦1.0、0≦c<0.9、且つa+b+c=1を満たす数である。)
で表されるシロキサン化合物である。すなわち、(C)成分は、ケイ素原子に結合した少なくとも1つのアルケニル基と、少なくとも1つのエポキシ基含有有機基を含む。
【0057】
本明細書において、「エポキシ基含有基」は、例えば、2-グリシドキシエチル基、3-グリシドキシプロピル基、4-グリシドキシブチル基等のグリシドキシアルキル基;2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-エチル基、3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-プロピル基等のエポキシシクロアルキルアルキル基;3,4-エポキシブチル基、7,8-エポキシオクチル基等のエポキシアルキル基が例示され、好ましくは、グリシドキシアルキル基であり、特に好ましくは、3-グリシドキシプロピル基である。
【0058】
本明細書において、「アルコキシ基」は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、フェノキシ基、ペンチルオキシ基、アリルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ベンジルオキシ基、ナフチルオキシ基、アセトキシ基などがあり、好ましくは、メトキシ基、エトキシ基であり、特に好ましくはメトキシ基である。
【0059】
(C)成分に含まれるアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基等の炭素数が2~12個のアルケニル基が例示され、好ましくは、ビニル基である。
【0060】
上記式C-1のRは、好ましくは、炭素数1~12のアルキル基、炭素数6~20のアリール基、もしくは炭素数7~20のアラルキル基から選択される。具体的には、上記式C-1のRとして、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ピレニル基等のアリール基;ナフチルエチル基、ナフチルプロピル基、アントラセニルエチル基、フェナントリルエチル基、ピレニルエチル基等のアラルキル基;およびこれらのアリール基またはアラルキル基の水素原子の一部または全部をメチル基、エチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が例示され、好ましくは、メチル基、ビニル基、フェニル基である。
【0061】
上記式C-1において、aは、好ましくは、0≦a≦0.9の範囲であり、より好ましくは0≦a≦0.5の範囲であり、特に0≦a≦0.3の範囲である。上記式C-1において、bは、好ましくは、0.1≦b≦0.9の範囲であり、より好ましくは0.2≦b≦0.8の範囲であり、特に0.25≦b≦0.7の範囲である。上記式C-1において、cは、好ましくは、0.01≦c≦0.8の範囲であり、より好ましくは0.1≦c≦0.7の範囲であり、特に0.2≦c≦0.6の範囲である。
【0062】
(C)成分中に含まれるアルケニル基の含有量は、特に限定されないが、例えば、Rの合計の1モル%以上であり、好ましくは5モル%以上であり、より好ましくは8モル%以上であり、例えば40モル%以下であり、好ましくは30モル%以下であり、より好ましくは30モル%以下である。なお、アルケニル基の含有量は、例えば、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)、核磁気共鳴(NMR)等の分析によって求めることができる。
【0063】
(C)成分中に含まれるエポキシ基含有有機基の含有量は、特に限定されないが、例えば、Rの合計の1モル%以上であり、好ましくは5モル%以上であり、より好ましくは10モル%以上であり、例えば50モル%以下であり、好ましくは40モル%以下であり、より好ましくは35モル%以下である。なお、エポキシ基含有有機基の含有量は、例えば、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)、核磁気共鳴(NMR)等の分析によって求めることができる。
【0064】
(C)成分は、本発明の組成物の総質量に基づいて、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、優先的には0.3質量%以上、特に0.5質量%以上の量で本発明のホットメルト性硬化性シリコーン組成物中に含まれ、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、優先的には10質量%以下の量で本発明のホットメルト性硬化性シリコーン組成物中に含まれる。
【0065】
(D)ヒドロシリル化反応用触媒
(D)成分のヒドロシリル化反応用触媒は、本発明のホットメルト性硬化性シリコーン組成物の硬化を促進するための触媒である。このような(D)成分としては、例えば、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金とオレフィンの錯体、白金と1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンの錯体、白金を担持した粉体等の白金系触媒;テトラキス(トリフェニルフォスフィン)パラジウム、パラジウム黒、トリフェニルフォスフィンとの混合物等のパラジウム系触媒;さらに、ロジウム系触媒が挙げられ、特に、白金系触媒であることが好ましい。
【0066】
(D)成分の配合量は、触媒量であり、(D)成分として白金系触媒を用いた場合、この白金系触媒に含まれる白金金属量は、本発明のホットメルト性硬化性シリコーン組成物中に重量単位で0.01~1000ppmの範囲内となる量であることが実用上好ましく、特に、0.1~500ppmの範囲内となる量であることが好ましい。
【0067】
(E)シリカ
(E)成分のシリカとしては、例えば、ヒュームドシリカ、湿式シリカ、結晶性シリカ、沈降性シリカ等が挙げられる。また、シリカは、オルガノアルコキシシラン化合物、オルガノクロロシラン化合物、オルガノシラザン化合物、低分子量シロキサン化合物等の有機ケイ素化合物若しくはシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤等で表面疎水化処理されていてもよい。
【0068】
(E)成分の配合量は、本発明の組成物の総質量に基づいて、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、優先的には0.5質量%以上、特に1質量%以上の量で本発明のホットメルト性硬化性シリコーン組成物中に含まれ、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、優先的には10質量%以下の量で本発明のホットメルト性硬化性シリコーン組成物中に含まれる。
【0069】
本発明のホットメルト性硬化性シリコーン組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で任意成分を配合することができる。この任意成分としては、例えば、アセチレン化合物、有機リン化合物、ビニル基含有シロキサン化合物、ヒドロシリル化反応抑制剤;粉砕石英、酸化チタン、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉄、ケイ藻土等の(E)シリカ以外の無機充填剤(「無機充填材」ともいう)、こうした無機充填剤の表面を有機ケイ素化合物により疎水処理してなる無機充填剤、ケイ素原子結合水素原子およびケイ素原子結合アルケニル基を含有しないオルガノポリシロキサン、接着性付与剤、耐熱性付与剤、耐寒性付与剤、熱伝導性充填剤、難燃性付与剤、チクソ性付与剤、蛍光体、カーボンブラック等の顔料および染料などの着色成分、溶剤等が挙げられる。
【0070】
ヒドロシリル化反応抑制剤は、シリコーン組成物のヒドロシリル化反応を抑制するための成分であって、具体的には、例えば、1‐エチニル‐2‐シクロヘキサノールのようなアセチレン系、アミン系、カルボン酸エステル系、亜リン酸エステル系等の反応抑制剤が挙げられる。反応抑制剤の添加量は、通常、シリコーン組成物全体の0.001~5質量%である。
【0071】
(E)シリカ以外の無機充填剤としては、例えば、中空フィラー、シルセスキオキサン、ヒュームド二酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉄、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、層状マイカ、ケイ藻土、ガラス繊維等の無機充填剤;これらの充填剤をオルガノアルコキシシラン化合物、オルガノクロロシラン化合物、オルガノシラザン化合物、低分子量シロキサン化合物等の有機ケイ素化合物で表面疎水化処理した充填剤等が挙げられる。また、シリコーンゴムパウダー、シリコーンレジンパウダー等を配合してもよい。但し、無機充填剤の配合量は、具体的には、シリコーン組成物の20質量%以下、特に10質量%以下の量であるのが好ましい。
【0072】
蛍光体としては、発光ダイオード(LED)に広く利用されている、酸化物系蛍光体、酸窒化物系蛍光体、窒化物系蛍光体、硫化物系蛍光体、酸硫化物系蛍光体、フッ化物系蛍光体等からなる黄色、赤色、緑色、青色発光蛍光体、およびこれらの少なくとも2種の混合物が例示される。酸化物系蛍光体としては、セリウムイオンを包含するイットリウム、アルミニウム、ガーネット系のYAG系緑色~黄色発光蛍光体、セリウムイオンを包含するテルビウム、アルミニウム、ガーネット系のTAG系黄色発光蛍光体、および、セリウムやユーロピウムイオンを包含するシリケート系緑色~黄色発光蛍光体が例示される。酸窒化物系蛍光体としては、ユーロピウムイオンを包含するケイ素、アルミニウム、酸素、窒素系のサイアロン系赤色~緑色発光蛍光体が例示される。窒化物系蛍光体としては、ユーロピウムイオンを包含するカルシウム、ストロンチウム、アルミニウム、ケイ素、窒素系のカズン系赤色発光蛍光体が例示される。硫化物系蛍光体としては、銅イオンやアルミニウムイオンを包含するZnS系緑色発色蛍光体が例示される。酸硫化物系蛍光体としては、ユーロピウムイオンを包含するYS系赤色発光蛍光体が例示される。フッ化物系蛍光体としては、KSF蛍光体(KSiF:Mn4+)などが挙げられる。
【0073】
着色成分としては、有機または無機の顔料および染料を1種類単独または2種以上の組合せを用いることができる。蛍光体を用いる場合、配合量としては、シリコーン組成物の90質量%以下、好ましくは80質量%以下、特に好ましくは70質量%以下の量である。また、ディスプレイにおける、光の干渉防止やカラーコントラスト向上の観点から黒色顔料を用いることもできる。黒色顔料としては、たとえば、酸化鉄、アニリンブラック、活性炭、グラファイト、カーボンナノチューブ、カーボンブラック等を挙げることができる。着色成分の配合量は、具体的には、シリコーン組成物の30質量%以下、好ましくは15質量%以下、特に好ましくは5質量%以下の量である。
【0074】
本発明のホットメルト性硬化性シリコーン組成物は、各成分を混合することにより調製できる。各成分の混合方法は、従来公知の方法でよく特に限定されないが、通常、単純な攪拌により均一な混合物となる。また、任意成分として無機充填剤等の固体成分を含む場合は、混合装置を用いた混合がより好ましい。こうした混合装置としては特に限定がなく、一軸または二軸の連続混合機、二本ロール、ロスミキサー、ホバートミキサー、デンタルミキサー、プラネタリミキサー、ニーダーミキサー、ヘンシェルミキサー等が例示される。
【0075】
本発明のホットメルト性硬化性シリコーン組成物は、フィルムまたはシート形状に成形した場合であっても、優れた機械特性、特に強度および伸びを示すことができる。そのため、本発明のホットメルト性硬化性シリコーン組成物は、取り扱い作業性に優れ、効率よく半導体パッケージを製造することができる、半導体パッケージを製造するための封止剤およびラミネーション用フィルムを形成できる。そのため、本発明のホットメルト性硬化性シリコーン組成物は、半導体パッケージを製造する際のシート状またはフィルム状封止剤およびラミネーション用フィルム用途に有用である。
【0076】
[封止剤、フィルム]
本発明は、本発明のホットメルト性硬化性シリコーン組成物を用いる半導体用の封止剤にも関する。本発明の封止剤の形状は、特に限定されないが、好ましくはフィルム状またはシート状である。そのため、本発明はまた、本発明のホットメルト性硬化性シリコーン組成物を固化して得られるフィルムにも関する。本発明のフィルムは、半導体素子を封止するためのフィルム状封止剤およびラミネーション用フィルムに好ましく用いられ得る。本発明の封止剤またはフィルムにより封止される半導体は特に限定されず、例えば、SiC、GaN等の半導体、特にパワー半導体または発光ダイオードなどの光半導体が挙げられる。
【0077】
本発明の封止剤またはフィルムによれば、フィルムまたはシート形状であっても優れた機械特性、特に強度および伸びを示すので、取り扱い作業性に優れるとともに、効率よく半導体パッケージを製造することができる。
【0078】
[光半導体素子]
本発明はまた、本発明の封止剤を含む光半導体素子にも関する。光半導体素子としては、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ、フォトダイオード、フォトトランジスタ、固体撮像、フォトカプラー用発光体と受光体が例示され、特に、発光ダイオード(LED)であることが好ましい。
【0079】
発光ダイオード(LED)は、光半導体素子の上下左右から発光が起きるので、発光ダイオード(LED)を構成する部品は、光を吸収するものは好ましくなく、光透過率が高いか、反射率の高い材料が好ましい。そのため、光半導体素子が搭載される基板も、光透過率が高いか、反射率の高い材料が好ましい。こうした光半導体素子が搭載される基板としては、例えば、銀、金、および銅等の導電性金属;アルミニウム、およびニッケル等の非導電性の金属;PPA、およびLCP等の白色顔料を混合した熱可塑性樹脂;エポキシ樹脂、BT樹脂、ポリイミド樹脂、およびシリコーン樹脂等の白色顔料を含有する熱硬化性樹脂;アルミナ、および窒化アルミナ等のセラミックスが例示される。
【0080】
本発明の光半導体素子は、本発明の取り扱い作業性に優れるとともに、効率よく半導体パッケージを製造できる封止剤を含むので、信頼性に優れる。
【実施例
【0081】
本発明のホットメルト性硬化性シリコーン組成物を以下の実施例および比較例により詳細に説明する。
【0082】
[実施例1~22および比較例1~5]
各成分を表1~4に示す組成(重量部)で混合し、ホットメルト性硬化性シリコーン組成物を調製した。なお、以下でMeはメチル基を表し、Viはビニル基を表し、Phはフェニル基を表し、Epは3-グリシドキシプロピル基を表す。
【0083】
成分a-1:平均単位式(ViMeSiO2/225(PhSiO2/230(PhSiO3/245で表されるレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン
成分a-2:平均単位式(ViMeSiO1/225(PhSiO3/275で表されるレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン
成分a-3:一般式(ViMeSiO1/2)(PhMeSiO2/220(ViMeSiO1/2)で表される、直鎖状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン
成分a-4:一般式(ViMeSiO2/2で表される環状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン
成分a-5:一般式(ViMeSiO1/2(PhSiO3/2)で表される、レジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン
成分b-1:平均単位式(HMeSiO1/260(PhSiO3/240で表される、レジン状オルガノハイドロジェンポリシロキサン
成分b-2:一般式(HMeSiO1/2)(PhSiO2/2)(HMeSiO1/2)で表される、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン
成分c-1:平均単位式(ViMeSiO1/225(PhSiO3/275(EpMeSiO2/240で表される、添加剤
成分c-2:構造式(MeSiO2/2)(ViMeSiO2/2)(EpSiO3/2)で表される、添加剤
成分c-3:平均単位式(EpMeSiO2/248(ViSiO3/221(PhSiO3/231で表される、添加剤
成分c-4:一般式(ViMeSiO1/2)(MeSiO2/2Si(OMe)で表される、添加剤
成分c-5:平均単位式(ViMeSiO1/215(MeSiO2/235(PhSiO3/250で表される、添加剤
成分d:白金濃度が4.0質量%である白金と1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンの錯体
成分e:1‐エチニル‐2‐シクロヘキサノール(白金触媒抑制剤)
成分f:ヒュームドシリカ
成分g:カーボンブラック
【0084】
[評価]
JIS K 6251に基づいて、得られた実施例1~22および比較例1~5のホットメルト性硬化性シリコーン組成物の硬化物の引張強度(MPa)および破断伸び(%)を測定した。具体的には、実施例1~22および比較例1~5のホットメルト性硬化性シリコーン組成物を120℃で5~10分間加熱エージングし、ホットメルト性硬化物を得た。これらのホットメルト性硬化物は、100℃での溶融弾性率が粘弾性計(アントンパール社製MCR302)で測定して30~300Paであった。厚さ180μmのダンベル状3号形に準じた形状で試験片を作製した。この試験片を用いて、引張速度500mm/分で引張強度(MPa)および破断伸び(%)を計測した。結果を表1~4に示す。引張強度が1MPa以上であり、破断伸びが200%以上であるものが、封止剤フィルムまたはラミネートフィルムとして優れた取り扱い作業性を有していると言える。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
【表3】
【0088】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明のホットメルト性硬化性シリコーン組成物は、優れた取り扱い作業性を有するフィルムまたはシートを形成できるので、半導体パッケージを製造する際のシート状またはフィルム状封止剤およびラミネーション用フィルム用途に有用である。