(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】バッテリー管理システム(BMS)の温度センサーを活用したバッテリーセルの温度異常状態の診断システム及び方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20240930BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
H02J7/00 Q
H01M10/48 301
H02J7/00 S
(21)【出願番号】P 2022544817
(86)(22)【出願日】2021-06-15
(86)【国際出願番号】 KR2021007514
(87)【国際公開番号】W WO2021261831
(87)【国際公開日】2021-12-30
【審査請求日】2022-07-22
(31)【優先権主張番号】10-2020-0076506
(32)【優先日】2020-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ホ・チョル・ナム
(72)【発明者】
【氏名】ソグ・ジン・ユン
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/154170(WO,A1)
【文献】特開2015-077028(JP,A)
【文献】特開2017-010813(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーセルの温度の異常状態を診断するシステムであって、
バッテリーセルの周辺部に配備されて、所定の周期ごとにセル周辺部の温度を測定する第1の温度測定部と、
バッテリーセルの表面に配備されて、所定の周期ごとにセルの表面温度を測定する第2の温度測定部と、
前記第1の温度測定部において測定されるセル周辺部の温度と、前記第2の温度測定部において測定されるセルの表面温度との差を算出する温度差算出部と、
前記温度差算出部において算出された温度差を所定の温度の異常状態条件と比較して、比較結果に基づいて、バッテリーセルの温度の異常状態を1次的に診断する異常状態1次診断部と、
前記異常状態1次診断部において温度の異常状態を診断した時点から当該異常状態が所定の持続時間にわたって続くか否かに基づいて、バッテリーセルの温度の異常状態を最終的に診断する異常状態2次診断部と、
前記異常状態2次診断部の最終的な診断結果に対応する処置を取る異常処置部と、
前記異常状態1次診断部において温度の異常状態を診断した時点から当該異常状態が続く時間を測定するタイマーと、
前記異常状態1次診断部及び前記異常状態2次診断部においてバッテリーセルの温度の異常状態を診断するための基準データを格納するメモリー部と、
を備え、
前記異常状態1次診断部は、
前記温度差を低い値から順番に設定された第1の差基準値、第2の差基準値および第3の差基準値と比較する差比較部と、
前記差比較部における比較結果に基づく異常信号を出力する異常信号出力部と、
を備
え、
前記差比較部は、前記温度差が所定の第1の差基準値以上もしくは未満であるかを比較し、以降の周期からは、前記異常信号出力部から出力される異常信号に基づいて、温度差が所定の第1の差基準値以上である状態が続いて所定の第2の差基準値及び第3の差基準値以上であるか否かを順番に比較し、
前記異常信号出力部は、
前記温度差が所定の第1の差基準値以上であれば、その旨を示す第1の異常信号を出力し、
前記温度差が所定の第1の差基準値以上である状態で続いて所定の第2の差基準値以上になれば、その旨を示す第2の異常信号を出力し、
前記温度差が所定の第2の差基準値以上である状態で続いて所定の第3の差基準値以上になれば、その旨を示す第3の異常信号を出力し、
前記異常状態2次診断部は、
温度差が前記異常信号出力部から第1の異常信号が出力された時点から当該異常状態で続く時間が所定の第1の持続時間以上になれば、現在のバッテリーセルの温度の状態が第1の異常警告状態であると最終的に診断し、その旨を示す第1の異常警告信号を出力し、
以降の周期において、温度差が前記異常信号出力部から第2の異常信号が出力された時点から当該異常状態で続く時間が所定の第1の持続時間以上になれば、現在のバッテリーセルの温度の状態が第2の異常警告状態であると最終的に診断し、その旨を示す第2の異常警告信号を出力し、
以降の周期において、温度差が前記異常信号出力部から第2の異常信号が出力された時点から当該異常状態で続く時間が所定の第2の持続時間以上になれば、現在のバッテリーセルの温度の状態が第1の異常危険状態であると最終的に診断し、その旨を示す第1の異常危険信号を出力し、
以降の周期において、温度差が前記異常信号出力部から第3の異常信号が出力された時点から当該異常状態で続く時間が所定の第3の持続時間以上になれば、現在のバッテリーセルの温度の状態が第2の異常危険状態であると最終的に診断し、その旨を示す第2の異常危険信号を出力することを特徴とする温度異常状態の診断システム。
【請求項2】
バッテリーモジュールの温度の異常状態を診断するシステムであって、
バッテリーモジュールの周辺部に配備されて、所定の周期ごとにモジュールの周辺部の温度を測定する第1の温度測定部と、
バッテリーモジュールの表面に配備されて、所定の周期ごとにモジュールの表面温度を測定する第2の温度測定部と、
前記第1の温度測定部において測定されるモジュールの周辺部の温度と、前記第2の温度測定部において測定されるモジュールの表面温度との差を算出する温度差算出部と、
前記温度差算出部において算出された温度差を所定の温度の異常状態条件と比較して、比較結果に基づいて、バッテリーモジュールの温度の異常状態を1次的に診断する異常状態1次診断部と、
前記異常状態1次診断部において温度の異常状態を診断した時点から当該異常状態が所定の持続時間にわたって続くか否かに基づいて、バッテリーモジュールの温度の異常状態を最終的に診断する異常状態2次診断部と、
前記異常状態2次診断部の最終的な診断結果に対応する処置を取る異常処置部と、
前記異常状態1次診断部において温度の異常状態を診断した時点から当該異常状態が続く時間を測定するタイマーと、
前記異常状態1次診断部及び前記異常状態2次診断部においてバッテリーモジュールの温度の異常状態を診断するための基準データを格納するメモリー部と、
を備え、
前記異常状態1次診断部は、
前記温度差を低い値から順番に設定された第1の差基準値、第2の差基準値および第3の差基準値と比較する差比較部と、
前記差比較部における比較結果に基づく異常信号を出力する異常信号出力部と、
を備
え、
前記差比較部は、前記温度差が所定の第1の差基準値以上もしくは未満であるかを比較し、以降の周期からは、前記異常信号出力部から出力される異常信号に基づいて、温度差が所定の第1の差基準値以上である状態が続いて所定の第2の差基準値及び第3の差基準値以上であるか否かを順番に比較し、
前記異常信号出力部は、
前記温度差が所定の第1の差基準値以上であれば、その旨を示す第1の異常信号を出力し、
前記温度差が所定の第1の差基準値以上である状態で続いて所定の第2の差基準値以上になれば、その旨を示す第2の異常信号を出力し、
前記温度差が所定の第2の差基準値以上である状態で続いて所定の第3の差基準値以上になれば、その旨を示す第3の異常信号を出力し、
前記異常状態2次診断部は、
温度差が前記異常信号出力部から第1の異常信号が出力された時点から当該異常状態で続く時間が所定の第1の持続時間以上になれば、現在のバッテリーモジュールの温度の状態が第1の異常警告状態であると最終的に診断し、その旨を示す第1の異常警告信号を出力し、
以降の周期において、温度差が前記異常信号出力部から第2の異常信号が出力された時点から当該異常状態で続く時間が所定の第1の持続時間以上になれば、現在のバッテリーモジュールの温度の状態が第2の異常警告状態であると最終的に診断し、その旨を示す第2の異常警告信号を出力し、
以降の周期において、温度差が前記異常信号出力部から第2の異常信号が出力された時点から当該異常状態で続く時間が所定の第2の持続時間以上になれば、現在のバッテリーモジュールの温度の状態が第1の異常危険状態であると最終的に診断し、その旨を示す第1の異常危険信号を出力し、
以降の周期において、温度差が前記異常信号出力部から第3の異常信号が出力された時点から当該異常状態で続く時間が所定の第3の持続時間以上になれば、現在のバッテリーモジュールの温度の状態が第2の異常危険状態であると最終的に診断し、その旨を示す第2の異常危険信号を出力することを特徴とする温度異常状態の診断システム。
【請求項3】
前記異常処置部は、
前記異常状態2次診断部から第1の異常警告信号または第2の異常警告信号が出力されれば、外部からバッテリーパックへの電流の流れ込みを遮断することを特徴とし、
以降の周期において、前記異常状態2次診断部から第1の異常危険信号または第2の異常危険信号が出力されれば、バッテリーパックの内部の電源ラインをさらに遮断することを特徴とする請求項
1または2に記載の温度異常状態の診断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリーセルまたはモジュールの温度状態の診断システム及び方法に係り、さらに詳しくは、バッテリー管理システム(BMS)の温度センサーを活用して、バッテリーセルまたはモジュールの相対的な温度の変化に則して、バッテリーセルまたはモジュールの温度の異常状態を診断するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン、ノート型パソコン、個人向けの情報端末(PDA)などをはじめとする多種多様な携帯型電子機器にそのエネルギー供給源として用いられるバッテリーは、例えば、バッテリーに組み込まれたセルの内部において短絡が生じたりバッテリー付き電子機器において電力を非正常的に多く費やしたりする場合、あるいは、バッテリー付き電子機器が高温の環境に晒される場合などといった状況によりその温度が基準温度以上に上がってしまうことがある。
【0003】
このように、バッテリーの温度が基準温度以上に上がってしまうと、バッテリーセルに内蔵された電解液または活物質などの分解により多量のガスが放出されながら、セルの内部圧力が急激に上がってセルが爆発してしまうリスクがある。なお、バッテリーセルの電気化学的な特性を劣化させてバッテリーの寿命を短縮させてしまうという不都合がある。
【0004】
このような不都合を解消すべく、バッテリーセルの温度を測定して所定の基準値以上に増加すれば温度の異常状態と診断し、バッテリーの電流を遮断してそれ以上の温度の上昇を防いでいた。
【0005】
しかしながら、上記のような従来の技術の場合、バッテリーセルの周りの温度の変化は全く反映しないままで、単にバッテリーセルそれ自体の絶対温度のみを目安にして温度の異常状態を判断している。これには、バッテリーセルそれ自体の温度が上がらないうちには、予め温度異常挙動を感知することが不可能であるが故に、バッテリーセルの温度の異常状態を速やかに診断することができないという不都合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】韓国公開特許第10-2018-0058055号公報
【文献】特許第6162884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述した不都合を解消するためのものであって、バッテリーセルの周りの温度の変化を反映した相対的なセルの温度状態をもって異常状態を診断して、さらに速やかに温度の異常状態を診断しかつ処置を取ることを可能にするところにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るバッテリーセルの温度の異常状態を診断するシステムは、バッテリーセルの周辺部に配備されて、所定の周期ごとにセル周辺部の温度を測定する第1の温度測定部と、バッテリーセルの表面に配備されて、所定の周期ごとにセルの表面温度を測定する第2の温度測定部と、前記第1の温度測定部において測定されるセル周辺部の温度と、前記第2の温度測定部において測定されるセルの表面温度との差を算出する温度差算出部と、前記温度差算出部において算出された温度差を所定の温度の異常状態条件と比較して、その比較結果に基づいて、バッテリーセルの温度の異常状態を1次的に診断する異常状態1次診断部と、前記異常状態1次診断部において温度の異常状態を診断したその時点から当該状態が所定の持続時間にわたって続くか否かに基づいて、バッテリーセルの当該温度の異常状態を最終的に診断する異常状態2次診断部と、前記異常状態2次診断部の最終的な診断結果に対応する処置を取る異常処置部と、前記異常状態1次診断部において温度の異常状態を診断したその時点から当該状態で続く時間を測定するタイマーと、前記異常状態1次診断部及び前記異常状態2次診断部においてバッテリーセルの温度の異常状態を診断するための基準データを格納するメモリー部と、を備えてなる。
【0009】
一方、本発明に係るバッテリーモジュールの温度の異常状態を診断するシステムは、バッテリーモジュールの周辺部に配備されて、所定の周期ごとにモジュールの周辺部の温度を測定する第1の温度測定部と、バッテリーモジュールの表面に配備されて、所定の周期ごとにモジュールの表面温度を測定する第2の温度測定部と、前記第1の温度測定部において測定されるモジュールの周辺部の温度と、前記第2の温度測定部において測定されるモジュールの表面温度との差を算出する温度差算出部と、前記温度差算出部において算出された温度差を所定の温度の異常状態条件と比較して、その比較結果に基づいて、バッテリーモジュールの温度の異常状態を1次的に診断する異常状態1次診断部と、前記異常状態1次診断部において温度の異常状態を診断したその時点から当該状態が所定の持続時間にわたって続くか否かに基づいて、バッテリーモジュールの当該温度の異常状態を最終的に診断する異常状態2次診断部と、前記異常状態2次診断部の最終的な診断結果に対応する処置を取る異常処置部と、前記異常状態1次診断部において温度の異常状態を診断したその時点から当該状態で続く時間を測定するタイマーと、前記異常状態1次診断部及び前記異常状態2次診断部においてバッテリーセルの温度の異常状態を診断するための基準データを格納するメモリー部と、を備えてなる。
【0010】
ここで、前記異常状態1次診断部は、前記温度差を低い値から順番に設定された少なくとも2以上の所定の差基準値と比較する差比較部と、前記差比較部における比較結果に基づく異常信号を出力する異常信号出力部と、を備えてなることを特徴とする。
【0011】
一方、前記差比較部は、前記温度差が所定の第1の差基準値以上もしくは未満であるかを比較し、それ以降の周期からは、前記異常信号出力部から出力される異常信号に基づいて、温度差が所定の第1の差基準値以上である状態が続いて所定の第2の差基準値及び第3の差基準値以上であるか否かを順番に比較することを特徴とする。
【0012】
一方、前記異常信号出力部は、前記温度差が所定の第1の差基準値以上であれば、その旨を示す第1の異常信号を出力し、前記温度差が所定の第1の差基準値以上である状態で続いて所定の第2の差基準値以上になれば、その旨を示す第2の異常信号を出力し、前記温度差が所定の第2の差基準値以上である状態で続いて所定の第3の差基準値以上になれば、その旨を示す第3の異常信号を出力することを特徴とする。
【0013】
一方、前記異常状態2次診断部は、温度差が前記異常信号出力部から第1の異常信号が出力された時点から当該状態で続く時間が所定の第1の持続時間以上になれば、現在のバッテリーセルまたはモジュールの温度の状態が第1の異常警告状態であると最終的に診断し、その旨を示す第1の異常警告信号を出力し、それ以降の周期において、温度差が前記異常信号出力部から第2の異常信号が出力された時点から当該状態で続く時間が所定の第1の持続時間以上になれば、現在のバッテリーセルまたはモジュールの温度の状態が第2の異常警告状態であると最終的に診断し、その旨を示す第2の異常警告信号を出力し、それ以降の周期において、温度差が前記異常信号出力部から第2の異常信号が出力された時点から当該状態で続く時間が所定の第2の持続時間以上になれば、現在のバッテリーセルまたはモジュールの温度の状態が第1の異常危険状態であると最終的に診断し、その旨を示す第1の異常危険信号を出力し、それ以降の周期において、温度差が前記異常信号出力部から第3の異常信号が出力された時点から当該状態で続く時間が所定の第3の持続時間以上になれば、現在のバッテリーセルまたはモジュールの温度の状態が第2の異常危険状態であると最終的に診断し、その旨を示す第2の異常危険信号を出力することを特徴とする。
【0014】
一方、前記異常処置部は、前記異常状態2次診断部から第1の異常警告信号または第2の異常警告信号が出力されれば、外部からバッテリーパックへの電流の流れ込みを遮断することを特徴とし、それ以降の周期において、前記異常状態2次診断部から第1の異常危険信号または第2の異常危険信号が出力されれば、バッテリーパックの内部の電源ラインをさらに遮断することを特徴とする。
【0015】
本発明に係るバッテリーセルの温度の異常状態を診断する方法は、所定の周期ごとに、バッテリーセルのセル周辺部の温度及びセルの表面温度を測定する温度測定ステップと、前記温度測定ステップにおいて測定されるセル周辺部の温度とセルの表面温度との差を算出する温度差算出ステップと、前記算出された温度差が所定の第1の差基準値以上である状態で所定の第1の持続時間にわたって続くか否かを比較して、その比較結果に基づいて、バッテリーセルの温度の状態が第1の異常警告状態であるか否かを診断する第1の異常警告状態診断ステップと、前記第1の異常警告状態診断ステップにより現在のバッテリーセルの温度の状態が第1の異常警告状態であると診断されれば、外部からバッテリーパックへの電流の流れ込みを遮断する異常処置ステップと、を含んでなり、前記第1の異常警告状態診断ステップは、前記温度差算出ステップにおいて算出された現在の温度差が所定の第1の差基準値以上であるか否かを比較する差比較ステップと、前記差比較ステップにおける比較の結果、前記温度差が所定の第1の差基準値以上であれば、当該状態で所定の第1の持続時間にわたって保持されるか否かを確認する持続時間確認ステップと、を含んでなり、前記温度差が所定の第1の差基準値以上である状態で所定の第1の持続時間にわたって保持されれば、現在のバッテリーセルの温度の状態が第1の異常警告状態であると診断することを特徴とする。
【0016】
一方、本発明に係るバッテリーモジュールの温度の異常状態を診断する方法は、所定の周期ごとに、バッテリーモジュールのモジュールの周辺部の温度及びモジュールの表面温度を測定する温度測定ステップと、前記温度測定ステップにおいて測定されるモジュールの周辺部の温度とモジュールの表面温度との差を算出する温度差算出ステップと、前記算出された温度差が所定の第1の差基準値以上である状態で所定の第1の持続時間にわたって保持されるか否かを比較して、その比較結果に基づいて、バッテリーモジュールの温度の状態が第1の異常警告状態であるか否かを診断する第1の異常警告状態診断ステップと、前記第1の異常警告状態診断ステップにより現在のバッテリーモジュールの温度の状態が第1の異常警告状態であると診断されれば、外部からバッテリーパックへの電流の流れ込みを遮断する異常処置ステップと、を含んでなり、前記第1の異常警告状態診断ステップは、前記温度差算出ステップにおいて算出された現在の温度差が所定の第1の差基準値以上であるか否かを比較する差比較ステップと、前記差比較ステップにおける比較の結果、前記温度差が所定の第1の差基準値以上であれば、当該状態で所定の第1の持続時間にわたって保持されるか否かを確認する持続時間確認ステップと、を含んでなり、前記温度差が所定の第1の差基準値以上である状態で所定の第1の持続時間にわたって保持されれば、現在のバッテリーモジュールの温度の状態が第1の異常警告状態であると診断することを特徴とする。
【0017】
具体的に、前記第1の異常警告状態診断ステップにおいてバッテリーセルまたはモジュールの温度の状態が第1の異常警告状態であると診断した後、前記温度差算出ステップを用いて算出される現在の温度差が所定の第1の差基準値よりも高い値である第2の差基準値以上である状態で所定の第1の持続時間にわたって保持されるか否かを比較して、その比較結果に基づいて、バッテリーセルまたはモジュールの温度の状態が第2の異常警告状態であるか否かを診断する第2の異常警告状態診断ステップと、前記第2の異常警告状態診断ステップにより現在のバッテリーセルまたはモジュールの温度の状態が第2の異常警告状態であると診断されれば、前記第1の異常警告状態の診断の際の外部からバッテリーパックへの電流の流れ込みの遮断状態を保持する異常処置ステップと、を行い、前記第2の異常警告状態診断ステップは、前記温度差算出ステップにおいて算出された現在の温度差が所定の第2の差基準値以上であるか否かを比較する差比較ステップと、前記差比較ステップにおける比較の結果、前記温度差が所定の第2の差基準値以上であれば、当該状態で所定の第1の持続時間にわたって保持されるか否かを確認する持続時間確認ステップと、を含んでなり、前記温度差が所定の第2の差基準値以上である状態で所定の第1の持続時間にわたって保持されれば、現在のバッテリーセルまたはモジュールの温度の状態が第2の異常警告状態であると診断することを特徴とする。
【0018】
前記第2の異常警告状態診断ステップにおいて現在のバッテリーセルまたはモジュールの温度の状態が第2の異常警告状態であると診断した後、前記第2の異常警告状態診断ステップにおける温度差が所定の第2の差基準値以上である状態で所定の第1の持続時間よりも長い時間である第2の持続時間にわたって保持されれば、現在のバッテリーセルまたはモジュールの温度の状態が第1の異常危険状態であると診断する第1の異常危険状態診断ステップと、前記第1の異常危険状態診断ステップにより現在のバッテリーセルまたはモジュールの温度の状態が第1の異常危険状態であると診断されれば、バッテリーパックの内部の電源ラインをさらに遮断する異常処置ステップと、を行うことを特徴とする。
【0019】
そして、前記第1の異常危険状態診断ステップにおいて現在のバッテリーセルまたはモジュールの温度の状態が第1の異常危険状態であると診断した後、前記温度差算出ステップを用いて算出される現在の温度差が所定の第3の差基準値以上である状態で所定の第3の持続時間にわたって保持されるか否かを比較して、その比較結果に基づいて、バッテリーセルまたはモジュールの温度の状態が第2の異常危険状態であるか否かを診断する第2の異常危険状態診断ステップを行い、前記第2の異常危険状態診断ステップは、前記温度差算出ステップにおいて算出された現在の温度差が所定の第2の差基準値よりも高い値である第3の差基準値以上であるか否かを比較する差比較ステップと、前記差比較ステップにおける比較の結果、前記温度差が所定の第3の差基準値以上であれば、当該状態で所定の第2の持続時間よりも長い時間である第3の持続時間にわたって保持されるか否かを確認する持続時間確認ステップと、を含んでなり、前記温度差が所定の第3の差基準値以上である状態で所定の第3の持続時間にわたって保持されれば、現在のバッテリーセルまたはモジュールの温度の状態が第2の異常危険状態であると診断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、バッテリーセルそれ自体の絶対的な温度状態ではなく、バッテリーセルの周りの温度の変化を反映した相対的なセルの温度状態をもって異常状態を診断することにより、予め温度の異常挙動を感知することが可能である。
【0021】
したがって、バッテリーセルの温度の異常状態をさらに速やかに診断しかつ処置を取ることができる。さらに、バッテリーの安定性と寿命を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係るバッテリーセルの温度異常状態の診断システムの全体的な構成を概略的に示すブロック図である。
【
図2】ステップごとの温度異常状態の診断条件の例を示す表である。
【
図3】セル周辺部とセル表面との間の温度変化の推移の例を示すグラフである。
【
図4】本発明に係るバッテリーセルの温度の異常状態を診断する方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、添付図面に基づいて、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように本発明の実施形態について詳しく説明する。しかしながら、本発明は、種々の異なる形態に具体化可能であり、ここで説明する実施の形態に何ら限定されるものではない。なお、図中、本発明を明確に説明するために、説明とは無関係な部分は省略し、明細書の全般に亘って、類似の部分には類似の図面符号を付している。
【0024】
以下、添付図面に基づいて、本発明について詳しく説明する。
【0025】
1.本発明に係る温度異常状態の診断システム
図1は、本発明に係る温度異常状態の診断システムの全体的な構成を概略的に示すブロック図である。温度異常状態の診断システムは、第1の温度測定部100と、第2の温度測定部200と、温度差算出部300と、異常状態1次診断部400と、異常状態2次診断部500と、異常処置部600と、タイマー700及びメモリー部800を備えていてもよい。
【0026】
1.1.第1の温度測定部100
第1の温度測定部は、バッテリーセルの周辺部に配備されて、所定の周期ごとにセル周辺部の温度を測定する構成要素である。
【0027】
より具体的に、前記第1の温度測定部は、バッテリー管理システム(BMS:Battery Management System)のプリント回路基板(PCB)に実装されてバッテリーセルの温度を間接的に測定する構成要素である。例えば、セルバランシング回路部やプレチャージ回路部などといった発熱源の近くに位置して、その領域における温度を測定する。第1の温度測定部の温度センサーは、上述したように、プリント回路基板(PCB)に実装されてもよい。他の例によれば、前記発熱源に近づくようにバッテリーケースに配設されてもよい。
【0028】
一方、複数のバッテリーセルから構成されたバッテリーモジュール/バッテリーパックの場合、第1の温度測定部は、バッテリーモジュールのBMS、パックのBMSまたは内部バッテリーセルやモジュールをつなぐバスバー、回路部などをはじめとする電気/化学的な発熱源と隣り合うように配設可能である。
【0029】
1.2.第2の温度測定部200
第2の温度測定部は、バッテリーセル10の表面に配備されて、所定の周期ごとにセルの表面温度を測定する構成要素である。
【0030】
前記第2の温度測定部は、バッテリーセルの周りの領域に配備されてセル周辺部の温度を測定する第1の温度測定部100とは異なり、バッテリーセルそれ自体に配備されてその表面温度を測定する。
【0031】
一方、複数のバッテリーセルから構成されたバッテリーモジュール/バッテリーパックの場合、第2の温度測定部は、バッテリーモジュールまたはバッテリーパックの表面に配設されてモジュールまたはパックの表面温度を測定するように構成されてもよい。
【0032】
1.3.温度差算出部300
温度差算出部は、前記第1の温度測定部100において測定されるセル周辺部の温度と、前記第2の温度測定部200において測定されるセルの表面温度との差分を算出する構成要素である。
【0033】
1.4.異常状態1次診断部400
異常状態1次診断部は、前記温度差算出部300において算出されたセル周辺部とセルの表面温度との差と所定の温度の異常状態条件とを比較して、その比較結果に基づいて、バッテリーセルの温度の異常状態を1次的に診断する構成要素である。このような異常状態1次診断部は、下記のような細部的な構成要素を備えていてもよい。
【0034】
ア.差比較部410
前記温度差算出部300において算出された温度差を少なくとも2以上の所定の差基準値と比較する構成要素である。
【0035】
ここで、所定の差基準値は、低い値から順番に設定された第1乃至第3の差基準値を含んでいてもよい。
【0036】
まず、前記算出された温度差が所定の第1の差基準値以上もしくは未満であるか否かを比較する。次いで、後述する異常信号出力部420から第1の異常信号が出力されれば、以降に前記温度差算出部300において算出される温度差を第1の差基準値、及び第1の差基準値よりも高い値に設定された第2の差基準値と比較する。次いで、後述する異常信号出力部420から第2の異常信号が出力された場合、以降に前記温度差算出部300において算出される温度差を第2の差基準値、及び第2の差基準値よりも高い値に設定された第3の差基準値と比較してもよい。
【0037】
イ.異常信号出力部420
異常信号出力部は、前記差比較部410における比較の結果に基づく異常信号を出力してもよい。
【0038】
まず、前記温度差が所定の第1の差基準値以上であれば、その旨を示す第1の異常信号を出力してもよい。
【0039】
一方、前記第1の異常信号の出力後に、セル周辺部とセル表面部との温度差の増加の傾向が緩和されて算出される温度差が所定の第1の差基準値未満であれば、その旨を示す第1の異常解除信号を出力する。
【0040】
一方、前記第1の異常信号の出力後に、セル周辺部とセル表面部との温度差が増加する状態が続いて算出される温度差が所定の第2の差基準値以上になれば、その旨を示す第2の異常信号を出力してもよい。
【0041】
前記第2の異常信号の出力後に、セル周辺部とセル表面部との温度差の増加傾向が緩和されて算出される温度差が所定の第2の差基準値未満になれば、その旨を示す第2の異常解除信号を出力する。
【0042】
一方、前記第2の異常信号を出力してからも、依然としてセル周辺部とセル表面部との温度差が増加する状態が続いて算出される温度差が所定の第3の差基準値以上になれば、その旨を示す第3の異常信号を出力してもよい。
【0043】
1.5.異常状態2次診断部500
異常状態2次診断部は、前記異常信号出力部420から出力された異常信号がその出力時点から当該状態で所定の時間の間にわたって続くか否かに基づいて、バッテリーセルの当該温度の異常状態を最終的に診断する。ここで、前記出力された異常信号に相当する状態で所定の時間の間にわたって続くか否かは、後述するタイマー700において測定される時間を用いて確認することができる。
【0044】
図2は、異常状態2次診断部においてバッテリーセルの温度の異常状態をステップごとに診断する温度異常状態の条件の例を示す表であり、
図3は、バッテリーセルのセル周辺部の温度及びセルの表面温度の状態の例を示すグラフである。これらを参照して、下記の細部的な構成要素について説明する。
【0045】
ア.第1の異常警告状態判断部510
第1の異常警告状態判断部は、前記異常信号出力部420から現在のセル周辺部とセル表面との温度差が所定の第1の差基準値以上の状態である旨を示す第1の異常信号が出力されれば、タイマー700において測定される時間が所定の第1の持続時間以上になるか否かを確認して、以上になれば、現在のバッテリーセルの温度の状態が第1の異常警告状態であると最終的に診断し、その旨を示す第1の異常警告信号を出力してもよい。例えば、
図2の表に示すように、第1の差基準値が10℃に設定され、第1の持続時間が1秒に設定された場合であれば、前記温度差が10℃以上である状態で1秒の間に保持されれば、第1の異常警告状態であると診断するのである。このとき、後述するタイマー700は、前記第1の異常信号が出力されれば、その時点からの持続時間を測定する。
【0046】
一方、タイマー700において測定される時間が所定の第1の持続時間未満であれば、たとえ第1の異常信号が出力されたとしても、現在のバッテリーセルの温度の状態が第1の異常警告状態であると診断しない。
【0047】
一方、第1の異常警告状態であると判断した後、前記異常信号出力部420からセル周辺部とセル表面との温度差が所定の第1の差基準値未満の状態である旨を示す第1の異常解除信号が出力されれば、タイマー700において測定される時間が所定の第1の持続時間以上になれば、後述する異常処置部600の処置などによりバッテリーが当初に診断した第1の異常警告状態が解除された状態であると判断し、その旨を示す第1の異常警告解除信号を出力してもよい。例えば、
図2の表に示すように、第1の差基準値が10℃に設定され、第1の持続時間が1秒に設定された場合であれば、前記温度差が10℃未満である状態で1秒の間に保持されれば、当初に診断していた第1の異常警告状態が解除されたと診断するのである。
【0048】
イ.第2の異常警告状態判断部520
第2の異常警告状態判断部は、
図3に示すように、前記第1の異常警告状態判断部510において、現在のバッテリーセルの温度の状態が第1の異常警告状態であると最終的に診断してからも、セル周辺部とセル表面との温度差が増加する傾向が続いて前記異常信号出力部420から現在のセル周辺部とセル表面との温度差が所定の第2の差基準値以上の状態である旨を示す第2の異常信号が出力されれば、上述した方式と同様に、タイマー700において測定される第2の異常信号が出力された時点からの持続時間が所定の第1の持続時間になれば、現在のバッテリーセルの温度の状態が第2の異常警告状態であると最終的に診断し、その旨を示す第2の異常警告信号を出力してもよい。例えば、
図2の表に示すように、第2の差基準値が20℃に設定され、第1の持続時間が1秒に設定された場合、前記温度差が20℃以上である状態で1秒の間に保持されれば、第2の異常警告状態であると診断するのである。
【0049】
一方、タイマー700において測定される時間が所定の第1の持続時間未満であれば、たとえ第2の異常信号が出力されたとしても、現在のバッテリーセルの温度の状態が第2の異常警告状態であると診断しない。
【0050】
一方、第2の異常警告状態であると判断した後、前記異常信号出力部420からセル周辺部とセル表面との温度差が所定の第2の差基準値未満の状態である旨を示す第2の異常解除信号が出力されれば、タイマー700において測定される時間が所定の第1の持続時間 以上であるか否かを確認して、以上になれば、後述する異常処置部600の処置などによりバッテリーが当初に診断した第2の異常警告状態が解除された状態であると判断し、その旨を示す第2の異常警告解除信号を出力してもよい。例えば、
図2の表に示すように、第2の差基準値が20℃に設定され、第1の持続時間が1秒に設定された場合、前記温度差が20℃未満である状態で1秒の間に保持されれば、当初に診断していた第2の異常警告状態が解除されたと診断するのである。
【0051】
ウ.第1の異常危険状態判断部530
第1の異常危険状態判断部は、前記第2の異常警告状態判断部520において、現在のバッテリーセルの温度の状態が第2の異常警告状態であると最終的に診断してからも、セル周辺部とセル表面との温度差が第2の異常警告状態で続いてタイマー700において測定される第2の異常信号が出力された時点からの持続時間が所定の第1の持続時間よりも長い時間に設定された所定の第2の持続時間以上になれば、現在のバッテリーセルの温度の状態が第2の異常警告状態よりも高い危険度を意味する第1の異常危険状態であると最終的に診断し、その旨を示す第1の異常危険信号を出力する。例えば、
図2の表に示すように、第2の差基準値が20℃であり、第2の持続時間が3秒に設定された場合、前記温度差が20℃である状態で1秒を超えて3秒の間に保持されれば、第1の異常危険状態であると診断するのである。
【0052】
ここで、タイマー700において測定される時間が所定の第2の持続時間未満であれば、第1の異常危険状態と最終的に診断せず、第2の異常警告状態判断部520において診断した第2の異常警告状態を保持する。
【0053】
一方、第2の異常警告状態であると判断した後、前記異常信号出力部420からセル周辺部とセル表面との温度差が所定の第2の差基準値未満の状態である旨を示す第2の異常解除信号が出力された時点からの持続時間が所定の第2の持続時間以上になれば、後述する異常処置部600の処置などによりバッテリーが当初に診断した第1の異常警告状態が解除された状態であると判断し、その旨を示す第1の異常危険解除信号を出力してもよい。例えば、
図2の表に示すように、第2の差基準値が20℃に設定され、第2の持続時間が3秒に設定された場合、前記第1の異常危険状態の診断後の温度差が20℃未満である状態で3秒の間に保持されれば、当初に診断していた第1の異常危険状態が解除されたと診断するのである。
【0054】
エ.第2の異常危険状態判断部540
第2の異常危険状態判断部は、前記第1の異常危険状態判断部530において、現在のバッテリーセルの温度の状態が第1の異常危険状態であると最終的に診断してからも、セル周辺部とセル表面との温度差が増加する傾向が続いて、前記異常信号出力部420から現在のセル周辺部とセル表面との温度差が所定の第3の差基準値以上の状態である旨を示す第3の異常信号が出力されれば、上述した方式と同様に、タイマー700において測定される第3の異常信号が出力された時点からの持続時間が第3の持続時間以上になるか否かを確認して、以上になれば、現在のバッテリーセルの温度の状態が第2の異常危険状態であると最終的に診断し、その旨を示す第2の異常危険信号を出力してもよい。例えば、
図2の表に示すように、第3の差基準値が40℃に設定され、第3の持続時間が25秒に設定された場合、現在の温度差が40℃以上である状態で25秒の間に保持されれば、最も危険度が高い第2の異常危険状態であると診断するのである。
【0055】
ここで、上述したように、第1の異常警告状態、第2の異常警告状態、第1の異常危険状態、第2の異常危険状態は、現在のバッテリーセルの温度状態についての危険度を順番に示すものである。
【0056】
このため、第2の異常危険状態判断部において、現在のバッテリーセルの温度の状態が第2の異常危険状態であると診断した場合には、異常処置部600の異常処置の他に、別途の改善処置が必要となる状態であるため、前述した第1及び第2の異常警告状態判断部510、520と第1の異常危険状態判断部530とは異なり、当初に診断した第2の異常状態の解除有無は判断しない。
【0057】
1.6.異常処置部600
異常処置部は、バッテリーセル周辺部とセル表面との温度差の増加傾向を遮断、すなわち、バッテリーセルの温度の状態が悪化することを防げるように異常状態2次診断部500から出力される診断信号に対応する処置を取る構成要素である。
【0058】
異常状態2次診断部500から第1の異常警告信号や第2の異常警告信号が出力されれば、バッテリーパックの外部のリレーを遮断して、外部からバッテリーパックへとそれ以上の電流が流れ込まないように遮断する処置を取ってもよい。
【0059】
一方、上記のように、バッテリーパックの外部のリレーを遮断する処置を取った後、前記異常状態2次診断部500から第1の異常警告解除信号または第2の異常警告解除信号が出力されれば、バッテリーパックの外部のリレーの遮断を解除してもよい。
【0060】
一方、異常状態2次診断部500から第1の異常危険信号や第2の異常危険信号が出力されれば、バッテリーパックの内部のリレーを遮断してパックの内部の電源ラインを遮断する処置を取ってもよい。前述したように、第1及び第2の異常危険信号が出力されたということは、第1及び第2の異常警告信号よりもバッテリーセルの温度状態の危険度の方がさらに悪化した状態である旨を示すことであるため、パックの内部に電流が流れないようにして、電流の流れによる発熱を極力抑えることにより、バッテリーセルの温度が下がるようにするのである。
【0061】
次いで、前記異常状態2次診断部500から第1の異常危険解除信号が出力されれば、バッテリーパックの内部のリレーの遮断を解除してパックの内部の電流の流れを開いてもよい。
【0062】
さらに、異常処置部は、前記異常状態2次診断部500の各異常状態の診断結果を外部の上位システムに報知してもよい。
【0063】
1.7.タイマー700
タイマーは、異常信号出力部420から異常信号または異常解除信号が出力されれば、その出力時点から続く時間を測定する。
【0064】
例えば、異常信号出力部420から第1の異常信号が出力されれば、その出力時点から当該状態で保持される時間を測定するのである。このように、タイマーにおいて測定する持続時間は、前述したように、異常状態2次診断部500において異常信号に相当する温度の異常状態を最終的に診断する目安として用いられる。
【0065】
1.8.メモリー部800
メモリー部は、異常状態1次診断部400と異常状態2次診断部500においてバッテリーセルの温度の異常状態を診断するための基準データを格納している。
【0066】
ここで、基準データは、所定の第1乃至第3の差基準値、所定の第1乃至第3の持続時間の値を含んでいてもよい。
【0067】
一方、以上においては、バッテリーセルの温度の異常状態を診断することについてのみ具体的に説明したが、本発明はこれに何ら限定されるものではなく、複数のバッテリーセルから構成されたバッテリーモジュール/バッテリーパックの場合にも、上述した方式と同じ方式を適用して、バッテリーモジュール/バッテリーパックの温度の異常状態を診断するように構成することが可能である。
【0068】
2.本発明に係る温度異常状態の診断方法
図4に基づいて、本発明に係るバッテリーセルの温度の異常状態を診断する方法について説明する。
【0069】
2.1.温度測定ステップ(S100)
温度測定ステップは、所定の周期ごとにバッテリーセルのセル周辺部の温度及びセルの表面温度を測定するステップである。バッテリーセルのセルの表面温度のみをもって温度の異常状態を診断していた従来の技術とは異なり、本発明においては、セルの表面温度とセル周辺部の温度の変化まで反映してバッテリーセルの温度の異常状態を診断する。
【0070】
このステップは、例えば、セルバランシング回路部やプレチャージ回路部などといった発熱源の近くの位置に配備されてセル周辺部の温度を測定する第1の温度測定部100と、バッテリーセルのセル表面に配備されてセルそれ自体の温度を測定する第2の温度測定部200と、により行われる。
【0071】
2.2.温度差算出ステップ(S200)
温度差算出ステップは、前記温度測定ステップ(S100)において測定されるセル周辺部の温度とセルの表面温度との差分を算出するステップであって、上述した温度差算出部300により行われる。
【0072】
2.3.第1の異常警告状態診断ステップ(S300)
第1の異常警告状態診断ステップは、前記温度差算出ステップ(S200)において算出されたセル周辺部とセル表面との温度差が所定の第1の差基準値以上である状態で所定の第1の持続時間にわたって保持されるか否かに基づいて、バッテリーセルの温度の状態が第1の異常警告状態であるか否かを診断する。
【0073】
ア.差比較ステップ(S310)
まず、前記温度差算出ステップ(S200)において算出された温度差を所定の第1の差基準値と比較し、これは、上述した異常状態1次診断部400の差比較部410において行う。
【0074】
イ.持続時間確認ステップ(S320)
前記差比較ステップ(S310)における比較の結果、前記温度差が所定の第1の差基準値以上であれば、その状態で所定の第1の持続時間にわたって保持されるか否かを確認する。前記温度差が第1の差基準値以上である状態で所定の第1の持続時間にわたって保持されれば、現在のバッテリーセルの温度の状態が、温度の異常状態を診断する全体の4ステップのうち、最も危険度が低い1ステップに相当する第1の異常警告状態であると診断してもよい。例えば、
図2の表に示すように、第1の差基準値が10℃に設定され、第1の持続時間が1秒に設定された場合であれば、前記温度差が10℃以上である状態で1秒の間に保持されれば、第1の異常警告状態であると診断(S332)するのである。
【0075】
すると、後述する異常処置ステップ(S700)においては、現在のバッテリーセルの温度の状態が第1の異常警告状態であることを受けて、バッテリーセルのセル周辺部とセル表面との温度差の増加を緩和させるために、バッテリーパックの外部のリレーを遮断するなどの処置を取って、外部からバッテリーパックへの電流の流れ込みを遮断してもよい。
【0076】
一方、上記のように、現在のバッテリーセルの温度の状態が第1の異常警告状態であると診断した後、算出されるセル周辺部とセル表面との温度差が第1の差基準値未満である状態で所定の第1の持続時間にわたって保持されれば、前記診断していた第1の異常警告状態が解除されたと診断してもよい。例えば、
図2の表に示すように、第1の差基準値が10℃に設定され、第1の持続時間が1秒に設定された場合であれば、前記温度差が10℃未満である状態で1秒の間に保持されれば、当初に診断していた第1の異常警告状態が解除(S334)されたと診断するのである。
【0077】
すると、異常処置ステップ(S700)においては、第1の異常警告状態の診断に従って処置を取っていたバッテリーパックの外部のリレーの遮断を解除してもよい。
【0078】
このようなステップは、異常状態2次診断部500の第1の異常警告状態判断部510及びタイマー700により行われる。
【0079】
2.4.第2の異常警告状態診断ステップ(S400)
第2の異常警告状態診断ステップは、前記第1の異常警告状態診断ステップ(S300)において、バッテリーセルの温度の状態が第1の異常警告状態であると診断してからも、
図3に示すように、セル周辺部とセル表面との温度差が増加して第2の異常警告状態に移行したか否かを診断するステップである。
【0080】
ア.差比較ステップ(S410)
差比較ステップは、前記第1の異常警告状態診断ステップ(S400)後に算出される現在の温度差が所定の第1の差基準値よりも高い値である所定の第2の差基準値以上であるか否かを比較する(差比較部410)
【0081】
イ.持続時間確認ステップ(S420)
前記差比較ステップ(S410)における比較の結果、現在の温度差が所定の第2の差基準値以上であれば、その状態で所定の第1の持続時間にわたって保持されるか否かを確認する。現在の温度差が所定の第2の差基準値以上である状態で所定の第1の持続時間にわたって保持されれば、現在のバッテリーセルの温度の状態が第1の異常警告状態よりも危険度が高い第2の異常警告状態であると診断してもよい。例えば、
図2の表に示すように、第2の差基準値が20℃に設定され、第1の持続時間が1秒に設定された場合、前記温度差が20℃以上である状態で1秒の間に保持されれば、第2の異常警告状態であると診断(S432)するのである。
【0082】
すると、後述する異常処置ステップ(S700)においては、前記第1の異常警告状態診断ステップ(S300)における第1の異常警告状態の診断に従って処置を取っていたバッテリーパックの外部のリレーの遮断状態を保持して、依然として外部からバッテリーパックへの電流の流れ込みを遮断する。
【0083】
一方、上記のように、現在のバッテリーセルの温度の状態が第2の異常警告状態であると診断した後、算出されるセル周辺部とセル表面との温度差が第2の差基準値未満である状態で所定の第1の持続時間にわたって保持されれば、前記診断していた第2の異常警告状態が解除されたと診断してもよい。例えば、
図2の表に示すように、第2の差基準値が20℃に設定され、第1の持続時間が1秒に設定された場合、前記温度差が20℃未満である状態で1秒の間に保持されれば、当初に診断していた第2の異常警告状態が解除(S434)されたと診断するのである。
【0084】
すると、異常処置ステップ(S700)においては、第2の異常警告状態の診断に従って保持していたバッテリーパックの外部のリレーの遮断を解除してもよい。
【0085】
2.5.第1の異常危険状態診断ステップ(S500)
第1の異常危険状態診断ステップにおいては、前記第2の異常警告状態診断ステップ(S400)の持続時間確認ステップ(S420)における温度差が所定の第2の差基準値以上である状態で所定の第1の持続時間よりも長い時間に設定された所定の第2の持続時間にわたって保持されれば、現在のバッテリーセルの温度の状態が第2の異常警告状態よりも危険度が高い第1の異常危険状態であると診断してもよい。例えば、
図2の表に示すように、第2の差基準値が20℃であり、第2の持続時間が3秒に設定された場合、前記温度差が20℃である状態で1秒を超えて3秒の間に保持されれば、第1の異常危険状態であると診断(S512)するのである。
【0086】
すると、後述する異常処置ステップ(S700)においては、前記第2の異常警告状態診断ステップ(S400)の第2の異常警告状態の診断に従って保持していたバッテリーパックのリレーの遮断状態を依然として保持するとともに、バッテリーパックの内部のリレーを遮断してパックの内部の電流の流れをも遮断してもよい。
【0087】
一方、上記のように、現在のバッテリーセルの温度の状態が第1の異常危険状態であると診断した後、算出されるセル周辺部とセル表面との温度差が第2の差基準値未満である状態で所定の第2の持続時間にわたって保持されれば、前記診断していた第1の異常危険状態が解除されたと診断してもよい。例えば、
図2の表に示すように、第2の差基準値が20℃に設定され、第2の持続時間が3秒に設定された場合、前記第1の異常危険状態の診断後の温度差が20℃未満である状態で3秒の間に保持されれば、当初に診断していた第1の異常危険状態が解除(S514)されたと診断するのである。
【0088】
すると、前記異常処置ステップ(S700)においては、バッテリーパックの外部のリレーの遮断状態は保持するが、前記第1の異常危険状態の診断に従って遮断していたバッテリーパックの内部のリレーを開くような処置を取ってもよい。
【0089】
2.6.第2の異常危険状態診断ステップ(S600)
第2の異常危険状態診断ステップは、前記第1の異常危険状態診断ステップ(S500)において、バッテリーセルの温度の状態が第1の異常危険状態であると診断してからも、セル周辺部とセル表面との温度差が増加して第2の異常危険状態に移行したか否かを診断するステップである。
【0090】
ア.差比較ステップ(S610)
差比較ステップにおいては、前記第1の異常危険状態診断ステップ(S500)後に算出される現在の温度差が所定の第2の差基準値よりも高い値である所定の第3の差基準値以上であるか否かを比較する(差比較部410)
【0091】
イ.持続時間確認ステップ(S620)
前記差比較ステップ(S610)における比較の結果、現在の温度差が所定の第3の差基準値以上であれば、その状態で所定の第2の持続時間よりも長い時間である所定の第3の持続時間にわたって保持されるか否かを確認する。現在の温度差が所定の第3の差基準値以上である状態で所定の第3の持続時間にわたって保持されれば、現在のバッテリーセルの温度の状態が第1の異常危険状態よりも危険度が高い、すなわち、最も高い危険状態である第2の異常危険状態であると診断してもよい。例えば、
図2の表に示すように、第3の差基準値が40℃に設定され、第3の持続時間が25秒に設定された場合、現在の温度差が40℃以上である状態で25秒の間に保持されれば、最も危険度が高い第2の異常危険状態であると診断(S630)するのである。
【0092】
すると、後述する異常処置ステップ(S700)においては、前記第1の異常危険状態診断ステップ(S500)における第1の異常危険状態の診断に従って処置を取っていたバッテリーパックの内部のリレーの遮断状態を保持して、結局、バッテリーパックの内/外部へのすべての電流を遮断した状態が保持される。
【0093】
一方、上述した第1の異常警告状態診断ステップ(S300)、第2の異常警告状態診断ステップ(S400)及び第1の異常危険状態診断ステップ(S500)においては、各診断後に算出される温度差の幅が減少することを受けて、当初に診断していた異常状態を解除することにより再診断を行っていた。これとは異なり、最も危険度が高い状態である旨を診断する第2の異常危険状態診断ステップ(S600)においては、第2の異常危険状態であると診断した後、解除有無を診断する動作を別途に行わない。
【0094】
2.7.異常処置ステップ(S700)
異常処置ステップにおいては、上述したように、ステップごとに行われる温度の異常状態の診断結果に対応する処置を取る。
【0095】
前記第1の異常警告状態診断ステップ(S300)において第1の異常警告状態と診断された場合と、前記第2の異常警告状態診断ステップ(S400)において第2の異常警告状態と診断された場合には、バッテリーパックの外部のリレーを遮断しかつ保持し、前記第1の異常危険状態診断ステップ(S500)において第1の異常危険状態と診断された場合と、前記第2の異常危険状態診断ステップ(S600)において第2の異常危険状態と診断された場合には、バッテリーパックの内部のリレーをさらに遮断しかつ保持する処置を取ってもよい。
【0096】
ここで、さらに各異常状態診断ステップにおける診断結果を外部の上位システムに報知してもよい。
【0097】
一方、以上においては、バッテリーセルの温度の異常状態を診断する過程についてのみ具体的に説明したが、本発明はこれに何ら限定されるものではなく、複数のバッテリーセルから構成されたバッテリーモジュール/バッテリーパックの場合にも、上述した方式と同じ方式を適用して、バッテリーモジュール/バッテリーパックの温度の異常状態を診断することが可能である。
【0098】
一方、本発明の技術的思想は、前記実施形態に基づいて具体的に記述されたが、前記実施形態はその説明のためのものであり、その制限のためのものではないということに留意すべきである。なお、本発明の技術分野における当業者であれば、本発明の技術思想の範囲内において種々の実施形態が実施可能であるということが理解できる筈である。
【符号の説明】
【0099】
100:第1の温度測定部
200:第2の温度測定部
300:温度差算出部
400:異常状態1次診断部
410:差比較部
420:異常信号出力部
500:異常状態2次診断部
510:第1の異常警告状態判断部
520:第2の異常警告状態判断部
530:第1の異常危険状態判断部
540:第2の異常危険状態判断部
600:異常処置部
700:タイマー