(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】全固体電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20240930BHJP
H01M 4/02 20060101ALI20240930BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20240930BHJP
H01M 4/80 20060101ALI20240930BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20240930BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20240930BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240930BHJP
H01M 10/0585 20100101ALI20240930BHJP
H01M 10/0565 20100101ALI20240930BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/02 Z
H01M4/134
H01M4/80 C
H01M4/66 A
H01M10/0562
H01M10/052
H01M10/0585
H01M10/0565
(21)【出願番号】P 2022566238
(86)(22)【出願日】2021-07-06
(86)【国際出願番号】 KR2021008534
(87)【国際公開番号】W WO2022010211
(87)【国際公開日】2022-01-13
【審査請求日】2022-10-28
(31)【優先権主張番号】10-2020-0083066
(32)【優先日】2020-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0089135
(32)【優先日】2020-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0090272
(32)【優先日】2020-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】チョン・ピル・イ
(72)【発明者】
【氏名】ヘ・ウン・ハン
(72)【発明者】
【氏名】ヘ・リ・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ソン・ジュ・チョ
(72)【発明者】
【氏名】サン・ジュン・パク
【審査官】山本 佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-092433(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0140619(KR,A)
【文献】特開2005-243588(JP,A)
【文献】特開2019-091669(JP,A)
【文献】特開2019-199394(JP,A)
【文献】特開2019-091599(JP,A)
【文献】特開2019-200890(JP,A)
【文献】特開2010-009989(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00 - 4/84
H01M 10/05 - 10/0587
H01G 11/00 - 11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性支持体と、
前記多孔性支持体の少なくとも一面に形成された導電性コーティング層と、を含む、電極であって、
前記多孔性支持体は弾性素材を含み、
前記多孔性支持体は、複数の気孔を有し、弾性変形の可能な多孔性高分子フィルムまたは多孔性高分子不織布であり、
前記多孔性支持体は押圧による厚さ維持率が70%以上であり、
前記多孔性支持体は押圧による弾性変形率が30%以下である、電極:
ここで、前記押圧による厚さ維持率は、(押圧後の厚さ/押圧前の厚さ)×100%によって算定することができ、
ここで、前記押圧による弾性変形率は、(押圧前の厚さ-20MPaの押圧の下の厚さ)/押圧前の厚さ×100%によって算定することができる。
【請求項2】
前記電極は負極または正極である、請求項1に記載の電極。
【請求項3】
前記多孔性支持体は多数の気孔を有する、請求項1または2に記載の電極。
【請求項4】
前記多孔性支持体は、ポリオレフィン系多孔性基材、またはポリエチレンからなる群から選択される一つ以上から製造されたシートまたは不織布を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の電極。
【請求項5】
前記多孔性支持体は、多孔性構造の高分子に加え、セラミックをさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の電極。
【請求項6】
前記多孔性支持体は、一軸延伸または二軸延伸によって形成される、請求項1から5のいずれか一項に記載の電極。
【請求項7】
前記多孔性支持体の気孔度が10%~90%である、請求項1から6のいずれか一項に記載の電極。
【請求項8】
前記多孔性支持体は、直径0.01μm~10μmの気孔を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の電極。
【請求項9】
前記多孔性支持体の厚さは5μm~300μmである、請求項1から8のいずれか一項に記載の電極。
【請求項10】
前記多孔性支持体は、押圧方向に厚さが減少し、押圧方向に垂直な方向に面積が増加する、請求項1から9のいずれか一項に記載の電極。
【請求項11】
前記電極は負極であり、
前記負極は、前記導電性コーティング層及び負極活物質層を含み、
前記負極活物質層は、電池の充電過程中に前記導電性コーティング層上に蒸着(plating)して形成され、電池の放電過程中に前記導電性コーティング層の表面からストリッピング(stripping)される、請求項1に記載の電極。
【請求項12】
前記導電性コーティング層は、前記多孔性支持体の表面または前記多孔性支持体の内部に形成された気孔の表面にコーティングされた金属または金属酸化物である、請求項1から11のいずれか一項に記載の電極。
【請求項13】
前記導電性コーティング層は電気伝導性を有する金属を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の電極。
【請求項14】
前記導電性コーティング層はリチウム親和性物質を含み、
前記リチウム親和性物質は、Au、Ag、Fe、Mg、Al、Ti、Cr、Ni、Cu、Zn、In、Sn、Pt、Co、Mn、Li、Bi、及びSiを含む金属と、CuO、ZnO、MnO、及びCoOを含む金属酸化物とからなる群から選択される1種以上である、請求項1から13のいずれか一項に記載の電極。
【請求項15】
前記導電性コーティング層の厚さは100nm~5μmである、請求項1から14のいずれか一項に記載の電極。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載の電極を負極として含む、リチウム二次電池。
【請求項17】
請求項1から15のいずれか一項に記載の電極を負極として含む、全固体電池。
【請求項18】
正極、前記負極、及び前記正極と前記負極との間に介在された固体電解質層を含む、請求項17に記載の全固体電池。
【請求項19】
前記導電性コーティング層は前記固体電解質層に面する前記多孔性支持体の面に配置されている、請求項18に記載の全固体電池。
【請求項20】
前記固体電解質層は固体電解質を含み、
前記固体電解質は10
-7S/cm以上のイオン伝導性を有し、高分子系固体電解質、酸化物系固体電解質、硫化物系固体電解質、またはこれらのうちの2種以上の混合物を含む、請求項18または19に記載の全固体電池。
【請求項21】
(S1)正極、固体電解質層、及び負極を含む積層体を形成する段階と、
(S2)前記積層体を押圧する段階と、
(S3)押圧された積層体を押圧しながら充電する段階と、
を含む全固体電池の製造方法であって、
前記負極のうちの少なくとも一つは一面に導電性コーティング層が形成された多孔性支持体であり、
前記多孔性支持体は弾性素材を含み、
前記多孔性支持体は、複数の気孔を有し、弾性変形の可能な多孔性高分子フィルムまたは多孔性高分子不織布であり、
前記多孔性支持体は押圧による厚さ維持率が70%以上であり、
前記多孔性支持体は押圧による弾性変形率が30%以下である、全固体電池の製造方法:
ここで、前記押圧による厚さ維持率は、(押圧後の厚さ/押圧前の厚さ)×100%によって算定することができ、
ここで、前記押圧による弾性変形率は、(押圧前の厚さ-20MPaの押圧の下の厚さ)/押圧前の厚さ×100%によって算定することができる。
【請求項22】
前記(S2)及び(S3)は逆順に遂行するか、または同時に遂行する、請求項21に記載の全固体電池の製造方法。
【請求項23】
前記(S3)段階の充電は前記導電性コーティング層上に負極活物質層を提供する段階を含む、請求項21または22に記載の全固体電池の製造方法。
【請求項24】
前記導電性コーティング層の形成は、前記多孔性支持体の一面に前記導電性コーティング層を蒸着するかまたは前記多孔性支持体の一面に前記導電性コーティング層をラミネーションすることによってなされる、請求項21から23のいずれか一項に記載の全固体電池の製造方法。
【請求項25】
前記積層体の押圧前の前記多孔性支持体の厚さに対する前記積層体の押圧後の前記多孔性支持体の厚さの比が1:
0.7~1:0.9である、請求項21から24のいずれか一項に記載の全固体電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2020年07月06日付の韓国特許出願第2020-0083066号、2020年7月17日付の韓国特許出願第2020-0089135号、及び2020年7月21日付の韓国特許出願第2020-0090272号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容はこの明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は全固体電池及びその製造方法に関する。具体的には、多孔性支持体及び前記多孔性支持体上に形成された導電性コーティング層を含む電極、前記電極を含む全固体電池、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオン二次電池はエネルギー密度が高く自己放電率が低いし、寿命が長いので、高容量の電池に相応しい。リチウムイオン二次電池の液体電解質は漏液や過熱に対する安全性の問題があるので、これに対する解決策として全固体電池が提示されている。全固体電池は、既存のリチウムイオン二次電池と違い、固体電解質を含む固体電解質層を有することができる。前記固体電解質層は正極と負極との間に配置されて分離膜の役割も果たす。
【0004】
全固体電池は液体電解質の代わりに固体電解質を使うので、温度変化による電解液の蒸発または外部衝撃による漏液がない。よって、爆発及び火災に対して安全であるという利点がある。全固体電池は漏液及び爆発防止用部品が必要ではないので、重さ及び嵩も減少する。
【0005】
固体電解質は正極または負極が接触する部位が限定されているので、接触面が少なく、前記正極及び負極と固体電解質層との間に界面の形成が容易でない。固体電解質層と正極及び負極との間の界面形成が容易でない場合、電気抵抗が高く、出力が減少する問題点が発生する。これを解決するために、固体電解質を含む単位セルは、正極、固体電解質層、及び負極を積層してから押圧することで界面抵抗を減らしている。
【0006】
安全性を高めた全固体電池の場合にも、依然として、リチウムデンドライトによる問題を解決することができなかった。全固体電池を押圧及び充放電する過程でリチウムデンドライトが成長することができる。リチウムデンドライトによって固体電解質層が損傷するかまたは電池の嵩が増加する問題が発生する。
【0007】
このように、リチウムデンドライトによる問題は、従来のリチウムイオン二次電池はもちろんのこと、全固体電池でも依然として解決しなければならない問題である。
【0008】
【0009】
図1に示すように、従来技術による全固体電池は、正極集電体11及び前記正極集電体11の少なくとも一面にコーティングされた正極活物質層12を含む正極10、固体電解質層20、及び負極集電体31及びその少なくとも一面にコーティングされた負極活物質層32を含む負極30を含む。
図1とは違い、負極は、全固体電池の全体容量を増やすために、別途の負極活物質層32なしに、集電体を単独であるいはリチウム金属を用いるリチウムプレーティング及びストリッピング技法で形成することもできる。
【0010】
従来技術による全固体電池は、電池の上部及び下部で押圧力Fで押圧することで、正極10、固体電解質層20、及び負極30の間の界面抵抗を減らす。押圧しながら初期充放電を遂行する場合、負極活物質にリチウムが挿入されるのに伴って活物質が膨張するかまたは負極30にリチウムが蒸着して電池の厚さ(z軸)が増加し、よって電池の内部にかかる圧力も増加する。全固体電池の内部にかかる圧力が増加する場合、全固体電池の内部の正極10、固体電解質層20、及び負極30の位置及び形態が変形される問題が発生する。また、負極30に蒸着するリチウムが均一でない場合、押圧力Fが均一に適用されず、外部から押圧するジグも損傷されるおそれがある。
【0011】
全固体電池に使われるリチウム金属は性質が柔らいので、押圧の程度や時間によって単位セルの容量及び性能に差が発生する。押圧力Fが大きくなるほど固体電解質と前記リチウム金属との間の接触が多くなり、前記リチウム金属が固体電解質層の欠陷を通して内部に流入して電池内でショートが発生する可能性が高くなる。
【0012】
これを解決するために、リチウム金属と固体電解質との間の応力を均一に分布させるか減少させる必要性がある。
【0013】
このような問題点は、固体電解質が分離膜に代替される従来のリチウム二次電池の場合にも同様に発生することがある。
【0014】
特許文献1は、伝導性、電子伝導性、及びリチウムイオン伝導性を向上させるために、正極、固体電解質層、及び負極からなる積層体を押圧しているが、全固体電池にかかる応力を減少させて単位セルのセルショート現象を防止する点に対しては認識していない。
【0015】
特許文献2も、界面抵抗を減少させるために、正極、固体電解質層、及び負極からなる積層体を押圧しているが、全固体電池にかかる応力を減少させて単位セルの安全性を向上しようとする点に対しては認識していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】特開第2018-181451号公報
【文献】特開第2019-200890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は前記のような問題点を解決するためのものであり、リチウム二次電池または全固体電池の界面形成のための押圧の際、圧力を一定にかけるための構成を提供することを目的とする。また、リチウム二次電池または全固体電池の内部応力を均一に分布させるか減少させることを目的とする。
【0018】
また、安全性を向上させながらセルショートを防止して寿命を向上させたリチウム二次電池または全固体電池を提供することを目的とする。
【0019】
本発明の他の目的及び利点は下記の説明によって理解可能であろう。一方、本発明の目的及び利点は特許請求の範囲で記載する手段または方法、及びその組合せによって実現することができるというのが容易に分かるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は前記のような問題点を解決するためのものであり、多孔性支持体、及び前記多孔性支持体の少なくとも一面に形成された導電性コーティング層を含む電極を提供する。前記電極は、負極または正極、好ましくは負極であることができる。前記電極は全固体電池またはリチウム二次電池のいずれにも適用可能である。
【0021】
前記多孔性支持体は弾性素材を含み、前記多孔性支持体は押圧の際に変形されることにより圧力を減少させることができる。ここで、圧力は多孔性支持体自体の内部圧力であるか、多孔性支持体自体の変形によって減少する外部圧力であることができる。
【0022】
前記多孔性支持体は多数の気孔を有する多孔性支持体であり、複数の気孔を有し、弾性変形の可能な多孔性高分子フィルムまたは多孔性高分子不織布であることができる。
【0023】
前記多孔性支持体は、ポリオレフィン系多孔性基材、またはガラス繊維及びポリエチレンからなる群から選択される一つ以上かあら製造されたシートまたは不織布を含むことができる。
【0024】
前記多孔性支持体は、多孔性構造の高分子に加え、セラミック、金属、または金属合金のうちの少なくとも一つをさらに含むことができる。
【0025】
前記多孔性支持体は、一軸延伸または二軸延伸によって形成されることができる。
【0026】
前記多孔性支持体の気孔度が10%~90%、好ましくは35%~85%であることができる。ここで、気孔度は空いている部分が全体体積で占める比である。
【0027】
前記多孔性支持体は、直径0.01μm~10μmの気孔を有することができる。
【0028】
前記多孔性支持体は、押圧による弾性変形率が30%以下である。ここで、前記押圧による弾性変形率は、(押圧前の厚さ-20MPaの押圧の下の厚さ)/押圧前の厚さ×100%によって算定することができる。
【0029】
前記多孔性支持体は、押圧による厚さ維持率が70%以上であることができる。ここで、前記押圧による厚さ維持率は、(押圧後の厚さ/押圧前の厚さ)×100%によって算定することができる。ここで、前記押圧後の厚さは20MPaの押圧の下の厚さであることができる。
【0030】
前記多孔性支持体の押圧前の厚さは5μm~300μmであることができる。
【0031】
前記多孔性支持体は、押圧の際、押圧方向に厚さが減少し、押圧方向に垂直な方向に面積が増加することができる。
【0032】
前記電極は好ましく負極であり、前記負極は、前記導電性コーティング層及び負極活物質層を含み、前記負極活物質層は、電池の充電過程中に前記導電性コーティング層上に蒸着(plating)して形成され、電池の放電過程中に前記導電性コーティング層の表面からストリッピング(stripping)されることができる。
【0033】
前記導電性コーティング層は、前記多孔性支持体の表面または前記多孔性支持体の内部に形成された気孔の表面にコーティングされた導電性物質、好ましくは金属または金属酸化物であることができる。
【0034】
前記導電性コーティング層は電気伝導性を有する金属を含むことができ、具体的には金属粉末及び金属酸化物のうちの少なくとも一つであることができる。
【0035】
前記導電性コーティング層はリチウム親和性物質を含むことができ、前記リチウム親和性物質の非制限的例としては、Au、Ag、Fe、Mg、Al、Ti、Cr、Ni、Cu、Zn、In、Sn、Pt、Co、Mn、Li、Bi、及びSiを含む金属、及びCuO、ZnO、MnO、及びCoOを含む金属酸化物からなる群から選択される一つ以上であることができる。
【0036】
前記導電性コーティング層の厚さは100nm~5μmであることができる。
【0037】
また、本発明は、前記電極を負極として含むリチウム二次電池を提供する。
【0038】
また、本発明は、前記電極を負極として含む全固体電池を提供する。
【0039】
前記全固体電池は、正極、前記負極、及び前記正極と前記負極との間に介在された固体電解質層を含む全固体電池であることができる。
【0040】
前記導電性コーティング層は前記固体電解質層の反対面に配置されることができる。
【0041】
前記固体電解質層は固体電解質を含み、前記固体電解質は10-7S/cm以上のイオン伝導性を有し、高分子系固体電解質、酸化物系固体電解質、硫化物系固体電解質またはこれらのうちの2種以上の混合物を含むことができる。
【0042】
また、本発明は、(S1)正極、固体電解質層、及び負極を含む積層体を形成する段階と、(S2)前記積層体を押圧する段階と、(S3)押圧された積層体を押圧しながら充電する段階とを含む全固体電池の製造方法であって、前記負極のうちの少なくとも一つが一面に導電性コーティング層が形成された多孔性支持体である全固体電池の製造方法を提供する。
【0043】
また、本発明は、前記全固体電池の製造方法において、前記固体電解質層が分離膜に代替されるリチウム二次電池の製造方法を提供する。
【0044】
前記(S2)及び前記(S3)は逆順に遂行するか、同時に遂行することができ、前記(S3)段階の充電は前記導電性コーティング層上に負極活物質層を提供する段階を含むことができる。
【0045】
前記導電性コーティング層の形成は、前記多孔性支持体の一面に前記導電性コーティング層を蒸着するかまたは前記多孔性支持体の一面に前記導電性コーティング層をラミネーションすることによってなされることができる。
【0046】
前記積層体の押圧前の前記多孔性支持体の厚さに対する前記積層体の押圧後の前記多孔性支持体の厚さの比が1:0.4~1:0.9であることができる。ここで、前記押圧力は20MPaであることができる。
【0047】
前記(S3)段階の中または後、負極として使用された前記導電性コーティング層と前記固体電解質層との間にリチウムを蒸着することができる。
【0048】
前記正極は、リチウムを含む金属酸化物を含む正極活物質層を含むことができる。
【0049】
前記S2)段階及びS3)段階で、前記多孔性支持体が変形されることにより、内部にかかる圧力を減少させることができる。
【0050】
前記全固体電池またはリチウム二次電池の正極は少なくとも一面に多孔性支持体を含むことができる。
【0051】
本発明は前記技術的解決方法の多様な組合せも提供することができる。
【発明の効果】
【0052】
本発明の一実施例によれば、多孔性支持体を含む負極を使うことで、リチウム蒸着による厚さ増加を減少させた電池、具体的にはリチウム二次電池または全固体電池及びその製造方法を提供することができる。前記多孔性支持体がリチウム蒸着によって発生する内部応力を減少させて微小短絡(micro short)の発生を抑制することができる。よって、電池の安全性を改善させることができる。
【0053】
リチウム蒸着による応力は多孔性支持体が圧縮されることによって解消されることができる。よって、充放電状態ではない電池におけるリチウムの物理的変化を抑制することができる。また、充放電過程で蒸着したリチウムが成長して分離膜または固体電解質層を損傷させる問題を減少させることができる。よって、電池の寿命特性が改善される。
【0054】
本発明の一実施例によれば、別途の負極活物質層を介在せず、充電過程で正極から放出されたリチウムが前記導電性コーティング層上にプレーティングされることによって蒸着したリチウム自体を負極活物質層として用いることができる。また、放電過程で前記蒸着したリチウムがストリッピングされることができる。よって、最初の電池には別途の負極活物質層が含まれていない。
【0055】
充放電の他にも、物理的に柔らかい特性を有するリチウムが全固体電池の固体電解質粒子間の界面(粒界)または空隙に沿って正極として成長して発生する微小短絡を抑制して全固体電池の寿命特性を改善することができる。
【0056】
また、前記リチウムが分離膜の空隙に沿ってあるいは分離膜を貫いて成長することによって発生し得る微小短絡を抑制してリチウム二次電池の寿命特性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図2】本発明の一実施例による負極の構造を概略的に示す模式図である。
【
図3】本発明の一実施例による負極活物質層を含む負極の構造を概略的に示す模式図である。
【
図4】本発明の一実施例による全固体電池の模式図である。
【
図5】本発明の一実施例による全固体電池を充電及び押圧した後の模式図である。
【
図6】実施例1-1、実施例1-2、実施例1-3、及び比較例1-1の押圧による多孔性支持体の厚さ維持率を示すグラフである。
【
図7】実施例1-1による多孔性支持体の押圧の前後を撮った写真である。
【
図8】実施例1-1による多孔性支持体の押圧の前後を撮った写真である。
【
図9】比較例1-1による支持体の押圧の前後を撮った写真である。
【
図10】比較例1-1による支持体の押圧の前後を撮った写真である。
【
図11】実施例2-3による負極集電体の表面を撮ったSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下、添付図面を参照して本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が本発明を容易に実施することができる実施例を詳細に説明する。ただ、本発明の好適な実施例に対する動作原理を詳細に説明するにあたり、関連した公知の機能または構成についての具体的な説明が本発明の要旨を不必要にあいまいにする可能性があると判断される場合にはその詳細な説明を省略する。
【0059】
また、図面全般にわたって類似の機能及び作用をする部分に対しては同じ図面符号を使う。明細書全般で、ある部分が他の部分と連結されていると言うとき、これは直接的に連結されている場合だけではなく、その中間に他の素子を挟んで間接的に連結されている場合も含む。また、ある構成要素を含むというのは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0060】
また、構成要素を限定するか付け加えて具体化する説明は、特別な制限がない限り、すべての発明に適用可能であり、特定の発明に限定されない。
【0061】
また、本発明の明細書全般にわたって単数で表示したものは、別に言及しない限り、複数の場合も含む。
【0062】
また、本発明の明細書全般にわたって「または」は、別に言及しない限り、「及び」を含むものである。したがって、「AまたはBを含む」はAを含むか、Bを含むか、A及びBの両者を含む3種の場合を意味する。
【0063】
また、すべての数値範囲は、はっきりと除くという記載がない限り、両端の値とその間のすべての中間値とを含む。
【0064】
また、本明細書全般で使われる用語「略」、「実質的に」などは、言及した意味に固有した製造及び物質許容誤差が提示されるとき、その数値またはその数値に近い意味として使われ、本発明の理解を助けるために正確なまたは絶対的な数値を言及した開示内容を非良心的な侵害者が不当に用いることを防止するために使われる。
【0065】
本明細書全般で、マーカッシュ形式の表現に含まれた「これらの組合せ(等)」の用語はマーカッシュ形式の表現に記載された構成要素からなる群から選択される一つ以上の混合または組合せを意味するものであり、前記構成要素からなる群から選択される一つ以上を含むことを意味する。
【0066】
本発明は、多孔性支持体及び前記多孔性支持体の少なくとも一面に形成された導電性コーティング層を含む電極、好ましくは負極と、前記電極を含むリチウム二次電池または全固体電池に関する。
【0067】
下記では、便宜のために、負極のみを多孔性支持体及び前記多孔性支持体の少なくとも一面に形成された導電性コーティング層を含むものとして説明するが、これは正極にも適用されることができる。本発明によるリチウム二次電池または全固体電池は本発明による構造を有する正極及び負極のうちの少なくとも一つを使うことができる。
【0068】
以下、本発明による全固体電池を具体的に説明する。
【0069】
全固体電池に使われる負極において、負極活物質として黒鉛系物質を使うことができる。負極活物質として黒鉛系物質を使う場合、固体電解質層との間で高い界面抵抗が発生する。このような界面抵抗を減らすためには界面を増やすしかないが、このような過程で負極活物質の含量が低くなり、結局エネルギー密度も低くなる。
【0070】
負極活物質としてSi、Snなどを使う場合、黒鉛系物質を使う場合に比べて、エネルギー密度を高めることができるという利点がある。しかし、Si、Snなどは体積膨張率が大きくて固体電解質との接触を維持しにくい問題がある。結果的に、全固体電池の性能が落ちる。
【0071】
図1を参照すると、高エネルギー密度及び高出力の電池を製造するために、リチウム金属自体を負極として使うか集電体のみを単独で使う場合、電池の充放電過程で負極と固体電解質層との間にリチウムが蒸着する問題がある。よって、電極組立体の内部応力が増加し、異常挙動が発生する。
【0072】
このような問題点を解決するために、本発明者らは新概念の全固体電池用負極を提供しようとする。
【0073】
具体的には、本発明の一実施例による全固体電池は、負極内の負極集電体として多孔性支持体及び導電性コーティング層を含む。これを
図2に示す。
図2を参照すると、本発明の一実施例による負極300は、多孔性支持体310、及び前記多孔性支持体上に位置する導電性コーティング層320を含む。
【0074】
本発明の一実施例によれば、リチウム蒸着によって負極が膨張する問題が多孔性支持体によって軽減することができる。また、リチウム蒸着によって最初の多孔性支持体の体積が減少し、結果的に薄膜集電体として機能することができる。よって、エネルギー密度を高めることができる。リチウム蒸着による応力を多孔性支持体が解消することにより、充放電状態ではない電池におけるリチウムの物理的変化を抑制することができる。充放電過程で蒸着したリチウムが成長して固体電解質層を損傷させる問題を減少させることができる。よって、電池の寿命特性が改善される。
【0075】
前述したように、本発明の一実施例による負極は、多孔性支持体及び前記多孔性支持体上に形成された導電性コーティング層を負極集電体として使うことができる。
【0076】
前記負極は、前記負極集電体及び負極活物質層を含むことができる。これを
図3に示す。
図3を参照すると、本発明の一実施例による負極300は、負極集電体310、320、及び負極活物質層330を含む。
【0077】
ここで、前記負極活物質層は、電池の充電過程中に前記負極集電体上に蒸着(plating)して形成されるものであり、電池の放電過程中に前記負極集電体の表面からストリッピング(stripping)されるものである。
【0078】
すなわち、本発明では、電池の充放電過程で発生する蒸着リチウムを負極活物質層として使うことができる。
【0079】
(多孔性支持体)
本発明の具体的な一実施様態において、前記多孔性支持体は電池の作用を妨げなく、複数の気孔を有し、弾性変形が可能なものであれば、制限なしに使用可能である。例えば、前記多孔性支持体は、複数の気孔を有し、弾性変形が可能な多孔性高分子フィルム基材、多孔性高分子不織布基材、メッシュ(mesh)、または多孔性フォーム(foam)からなることができる。
【0080】
前記多孔性支持体は、押圧の際に変形されて圧力を減少させる役割をもっと効果的に果たすために、圧力を印加した後の厚さがほぼ同一であり、押圧の際に形態変形が大きい素材、すなわち弾性素材からなることができる。
【0081】
前記弾性素材は、一例として、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、鎖状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレンナフタレン、及びこれらの組合せからなる群から選択される1種以上であることができる。
【0082】
本発明の具体的な一実施様態において、前記多孔性高分子不織布基材は、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate)、ポリブチレンテレフタレート(polybutylene terephthalate)、ポリエステル(polyester)、ポリアセタール(polyacetal)、ポリアミド(polyamide)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ポリイミド(polyimide)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone)、ポリエーテルスルホン(polyethersulfone)、ポリフェニレンオキシド(polyphenylene oxide)、ポリフェニレンスルフィド(polyphenylene sulfide)、及びポリエチレンナフタレン(polyethylene naphthalene)のそれぞれの単独でまたはこれらを組合せた高分子から形成されることができる。
【0083】
高分子不織布基材が多孔性を有するが弾性変形されないものは本発明に適用される多孔性基材には相当しない。
【0084】
前記多孔性支持体が弾性素材からなることにより、前記多孔性支持体は電池を押圧する圧力によって変形されることで、前記負極にかかる応力を分散させるか減少させる役割を達成することができる。
【0085】
また、前記多孔性支持体は、前記リチウム二次電池の分離膜または全固体電池の固体電解質層に使用された物質と類似した物質を使うことができる。前記多孔性支持体は、耐化学性及び疎水性ポリプロピレンを含むオレフィン系多孔性基材、または、ガラス及びポリエチレンからなる群から選択される1種以上から製造されたシート、不織布などを含むことができる。前記多孔性支持体に使われるオレフィン系多孔性基材は二次電池分離膜に使われるポリオレフィン系多孔性基材で、両面に無機物コーティング層が付加されなかったものであり、一例として、ポリエチレンまたはポリプロピレンであることができる。
【0086】
前記多孔性支持体は、不織布構造、または一軸延伸または二軸延伸によって形成された多孔性構造を有することができる。前記多孔性支持体は、直径0.01μm~10μmの気孔を有することができる。また、前記多孔性支持体の気孔度は10%~90%、好ましくは35%~85%であることができる。例えば、気孔度が35%以上、40%以上、または45%以上であることができ、85%以下、80%以下、75%以下であることができる。前記数値範囲で適切な弾性力を有するので、充放電の際に発生する応力を解消することができる。前記数値範囲内で応力を吸収することができる最小限の厚さ変形率を有し、前記範囲でリチウム蒸着及びストリッピングの後に回復することができる弾性力を有する。
【0087】
ここで、気孔度は空いている部分が全体体積で占める比である。前記のように、内部に微細な気孔を多数有している場合、多孔性支持体の構造が大きく変わらなくても電池の内部で発生した応力を前記気孔の大きさや個数を減らす方式で減少させることができる。
【0088】
また、本発明による多孔性支持体は、電池の内部で発生した応力を効率的に減少させるために、5μm~300μm、好ましくは5μm~100μmの押圧前の厚さを有することができる。より具体的には、前記多孔性高分子支持体の厚さは、5μm以上、10μm以上、または20μm以上であることができ、100μm以下、80μm以下、または50μm以下であることができる。前記数値範囲で、エネルギー密度の減少が最小化するとともに応力解消の効果を得るという側面で有利である。仮に、前記多孔性支持体の厚さがあまりにも小さい場合、電池の内部応力を減らすことができず、厚さがあまりにも大きい場合、電池の大きさに対する性能を減少させるので好ましくない。
【0089】
前記多孔性支持体が多数の気孔を有するとともに弾性素材からなっている場合、単純に弾性素材のみを使用する場合より気孔が小さくなるか気孔数が減少することにより、前記多孔性支持体の位置や形態の変化が減少して電池内の応力減少をより効果的に遂行することができる。また、弾性力によって圧力がなくなったとき、気孔が容易に原状に回復することができる。
【0090】
さらに、前記多孔性支持体としてリチウム二次電池の分離膜または全固体電池の固体電解質層と同一または類似の素材を使う場合、単位セルの間に別途の分離膜または絶縁素材なしに積層することができる利点がある。
【0091】
前記多孔性支持体の多孔性構造の高分子にセラミック、金属、または金属合金のうちで少なくとも1種をさらに含むことができる。したがって、前記多孔性支持体にセラミック、金属、または金属合金を含むことで、前記多孔性支持体が負極集電体層とともに負極の役割を果たすようにすることができる。この場合、本発明による別途の導電性コーティング層が必要でないこともある。ただ、このような場合、単位セルを積層するとき、別途の分離膜または絶縁素材が必要であることがある。
【0092】
本発明の一実施様態において、前記正極から放出されたリチウムイオンは前記負極集電体上に蒸着することができる。このために、前記負極集電体は多孔性を有する。また、前記多孔性支持体は弾性変形が可能であるので、蒸着したリチウムが導電性コーティング層と固体電解質層との間に負極活物質層を形成する場合、厚さが減少することができる。すなわち、前記多孔性支持体が圧縮されることができる。よって、蒸着したリチウムによって発生する応力を減少させることができる。
【0093】
例えば、前記多孔性支持体の厚さは蒸着するリチウムの量の一部または全部によって発生する応力を減少させるように制御されることができる。例えば、電池の充電によって蒸着するリチウムの量が正極に対して1mAh/cm2でローディングされる場合、負極集電体上に5μmの厚さにリチウムが蒸着することができる。蒸着したリチウムによって発生した応力を前記多孔性支持体が減少させるためには、気孔度が50%であり、厚さが10μmであることが好ましい。他の例として、正極活物質のローディング量が増加して負極集電体上に蒸着するリチウムの量が増加しても、前記多孔性支持体の厚さが減少しながら、発生した応力を減少させることができる。
【0094】
このために、本発明の具体的な一実施様態において、前記多孔性支持体は、押圧による弾性変形率が30%以下であることができる。ここで、押圧による弾性変形率は(押圧前の厚さ-20MPaの押圧の下の厚さ)/押圧前の厚さ×100%によって算定することができる。
【0095】
本発明の具体的な一実施様態において、前記多孔性支持体は、押圧による厚さ維持率が70%以上であることができる。ここで、押圧による厚さ維持率は(押圧後の厚さ/押圧前の厚さ)×100%によって算定することができる。ここで、前記押圧後の厚さは20MPaの押圧の下の厚さであることができる。
【0096】
このような多孔性支持体は弾性力を有するので、電池が充電される過程で負極と固体電解質層との間にリチウムがプレーティングされても、リチウムがプレーティングされた体積の分だけ基材の体積が減少することができる。よって、リチウム蒸着による負極の膨張を減少させることができる。
【0097】
多孔性支持体が変形されるとき、厚さ方向に変形されるか、広さが大きくなるか、またはこれらの両者が同時に変形されることができる。
【0098】
また、多孔性支持体は、表面に微細な凹凸を形成して分離膜または固体電解質層との結合力を強化させることもできる。
【0099】
(導電性コーティング層)
前記導電性コーティング層は、前記多孔性支持体の表面または内部に形成された気孔の表面に金属がコーティングされたものである。前記導電性コーティング層は、前記多孔性支持体が集電体として役割を果たすようにする。前記多孔性支持体の表面にのみコーティングして層を形成することが電池駆動の側面で良い。ただ、金属をコーティングする過程で、多孔性支持体の内部に形成された気孔の表面の一部にも金属がコーティングされることができる。他の一実施例として、前記導電性コーティング層の導電性物質が前記多孔性支持体内に均一に配置されている形態も可能である。
【0100】
前記導電性コーティング層は前記多孔性支持体にコーティングされることができる。前記コーティング方法は、特に限定されないが、例えば、液浸(Immersing)、スピンコーティング(Spin Coating)、ディップコーティング(Dip Coating)、スプレーコーティング(Spray Coating)、ドクターブレード(Doctor Blade)、溶液キャスティング(Solution Casting)、ドロップコーティング(Drop Coating)、物理蒸着(PVD;Physical Vapor Deposition)または化学蒸着(CVD;Chemical Vapor Deposition)によって遂行することができる。
【0101】
すなわち、前記導電性コーティング層は電気伝導性(electrical conductivity)を有する。このために、前記導電性コーティング層は、電気伝導性を有する金属を含む。ここで、電気伝導性とは、電気伝導度を有する性質を言う。具体的には、物質または溶液が電荷を運ぶことができる程度を物理量である抵抗の逆数として計算することができる。
【0102】
前記導電性コーティング層は電気伝導性を有する金属を含むことができ、具体的には金属粉末及び金属酸化物のうちの少なくとも一つであることができる。
【0103】
前記導電性コーティング層はリチウム親和性物質を含むことができ、前記リチウム親和性物質の非制限的例としては、Au、Ag、Fe、Mg、Al、Ti、Cr、Ni、Cu、Zn、In、Sn、Pt、Co、Mn、Li、Bi、及びSiを含む金属、及びCuO、ZnO、MnO、及びCoOを含む金属酸化物からなる群から選択される1種以上であることができる。
【0104】
本発明の一実施様態において、前記導電性コーティング層の厚さは100nm~5μmであることができる。より具体的には、前記導電性コーティング層の厚さは100nm以上、500nm以上、または1μmであることができ、5μm以下、3μm以下、または2μm以下であることができる。前記数値範囲で、エネルギー密度の減少を最小化することができるという側面で有利である。
【0105】
(固体電解質層)
本発明において、前記固体電解質層は固体電解質を含む。本発明の具体的な一実施様態において、前記固体電解質は10-7S/cm以上、好ましくは10-5S/cm以上のイオン伝導性を有するものであり、高分子系固体電解質、酸化物系固体電解質、硫化物系固体電解質またはこれらのうちの2種以上の混合物を含むことができる。
【0106】
本発明の具体的な一実施様態において、前記固体電解質は電極内でリチウムイオンを伝達する役割を果たすので、固体電解質はイオン伝導度が高い素材、例えば、イオン伝導度が10-5S/cm以上または10-4S/cmの素材であることができる。
【0107】
本発明の具体的な一実施様態において、前記高分子系固体電解質は、固体高分子電解質及びリチウム塩を含むことができる。
【0108】
例えば、前記固体高分子電解質は、酸素、窒素、硫黄などのヘテロ元素を含む高分子にリチウム塩を添加することにより、解離した塩のイオンが高分子内で移動することができるものであることができる。
【0109】
本発明の具体的な一実施様態において、前記高分子系固体電解質は、溶媒化したリチウム塩に高分子樹脂が添加されて形成された固体高分子電解質を含むことができる。
【0110】
本発明の具体的な一実施様態において、前記高分子樹脂は、ポリエーテル系高分子、ポリカーボネート系高分子、アクリレート系高分子、ポリシロキサン系高分子、ホスファゼン系高分子、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキシドのようなアルキレンオキシド誘導体、リン酸エステル高分子、ポリアジテーションリシン(agitation lysine)、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、イオン性解離基を含む重合体、またはこれらのうちで2種以上の混合物を含むことができる。
【0111】
また、本発明の具体的な一実施様態において、前記固体高分子電解質は、高分子樹脂としてポリエチレンオキシド(polyethylene oxide)主鎖にPMMA、ポリカーボネート、ポリシロキサン(pdms)及び/またはホスファゼンのような無定形高分子コポリマーで共重合させた分岐共重合体、櫛状高分子樹脂(comb-like polymer)及び架橋高分子樹脂などを含むことができ、前記高分子の混合物であることができる。
【0112】
本発明の具体的な一実施様態において、前記前記リチウム塩は、陽イオンとしてLi+を含み、陰イオンとしてはF-、Cl-、Br-、I-、NO3
-、N(CN)2
-、BF4
-、ClO4
-、AlO4
-、AlCl4
-、PF6
-、SbF6
-、AsF6
-、F2C2O4
-、BC4O8
-、(CF3)2PF4
-、(CF3)3PF3
-、(CF3)4PF2
-、(CF3)5PF-、(CF3)6P-、CF3SO3
-、C4F9SO3
-、CF3CF2SO3
-、(CF3SO2)2N-、(F2SO2)2N-、CF3CF2(CF3)2CO-、(CF3SO2)2CH-、CF3(CF2)7SO3
-、CF3CO2
-、CH3CO2
-、SCN-、及び(CF3CF2SO2)2N-からなる群から選択される少なくとも1種を含むことができる。
【0113】
本発明の具体的な一実施様態において、前記硫化物系固体電解質は硫黄(S)を含み、周期表の第1族または第2族に属する金属を含むことができる。これにより、前記金属のイオン伝導性を有し、また電子絶縁性を有することが好ましい。
【0114】
本発明の具体的な一実施様態において、前記硫化物系固体電解質は下記の式1で表示される化合物を含むリチウムイオン伝導性固体電解質であることができる。
[式1]
La1Mb1Pc1Sd1Ae1
前記式1で、LはLi、Na及びKから選択される元素を示し、Liが好ましい。MはB、Zn、Sn、Si、Cu、Ga、Sb、Al及びGeから選択される元素を示す。その中でも、B、Sn、Si、Al、Geが好ましく、Sn、Al、Geがより好ましい。AはI、Br、Cl、Fを示し、I、Brが好ましく、Iが特に好ましい。a1~e1は各元素の組成比を示し、a1:b1:c1:d1:e1は1~12:0~1:1:2~12:0~5を満たす。また、a1は1~9が好ましく、1.5~4がより好ましい。b1は0~0.5が好ましい。d1は3~7が好ましく、3.25~4.5がより好ましい。e1は0~3が好ましく、0~1がより好ましい。
【0115】
本発明の具体的な一実施様態において、前記硫化物系固体電解質はLi、X及びSを含み、前記Xは、P、Ge、B、Si、Sn、As、Cl、F、及びIからなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0116】
本発明の具体的な一実施様態において、前記酸化物系固体電解質は酸素(O)を含み、周期表の第1族または第2族に属する金属を含むことができる。これにより、前記金属のイオン伝導性を有し、かつ電子絶縁性を有することが好ましい。
【0117】
本発明の具体的な一実施様態において、前記酸化物系固体電解質はLi、A及びOを含み、前記AはLa、Zr、Ti、AlP、及びIからなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0118】
本発明の具体的な一実施様態において、硫化物系または酸化物系固体電解質の平均粒径は、特に限定されないが、0.01μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましい。上限としては、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。また、前記硫化物系または酸化物系固体電解質粒子の平均粒径の測定方法は次のような方法で測定することができる。
【0119】
まず、水(水に不安定な物質の場合にはヘプタン)を用い、20mlサンプル瓶に、前記固体電解質粒子が1質量%で分散された分散液を準備する。その後、前記分散液に1kHzの超音波を10分間照射し、その直後に試験に使用する。前記分散液に対して、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA-920(HORIBA社製)を用い、温度25℃で測定用石英セルを使ってデータ読込みを50回遂行して得た体積平均粒径を平均粒径とする。その他の詳細な条件などは、必要に応じてJISZ8828:2013「粒径解釈-動的光散乱法」の記載を参照することができる。
【0120】
酸化物系固体電解質は、例えば、Li6.25La3Zr2Al0.25O12、Li3PO4、Li3+xPO4-xNx(LiPON)、Li3N、LiI、Li5NI2、Li3N-LiI-LiOH、LiSiO4、LiSiO4-LiI-LiOH、Li2SiS3、Li4SiO4、またはLi4SiO4-LiI-LiOHなどのLiの硫化物、窒化物、ハロゲン化物などを使うことができる。
【0121】
前記硫化物は本発明で特に限定されなく、リチウム電池分野で使用する公知のすべての硫化物系素材が可能である。前記硫化物系素材は、市販のものを購入して使うか、非晶質硫化物系素材から結晶化工程で製造したものを使うことができる。例えば、前記硫化物系固体電解質は、結晶質硫化物系固体電解質、非晶質硫化物系固体電解質、及びこれらのうちのいずれか1種またはこれらの組合せを使うことができる。使用可能な複合化合物の例としては、硫黄-ハロゲン化合物、硫黄-ゲルマニウム化合物、硫黄-シリコン硫化物があり、具体的にはSiS2、GeS2、B2S3などの硫化物を含むことができ、Li3PO4、ハロゲン、ハロゲン化合物などが添加されることができる。好ましくは、10-4S/cm以上のリチウムイオン伝導度を具現することができる硫化物系電解質を使うことができる。
【0122】
代表的には、Li6PS5Cl(LPSCl)、チオ(Thio)-LISICON(Li3.25Ge0.25P0.75S4)、Li2S-P2S5-LiCl、Li2S-SiS2、LiI-Li2S-SiS2、LiI-Li2S-P2S5、LiI-Li2S-P2O5、LiI-Li3PO4-P2S5、Li2S-P2S5、Li3PS4、Li7P3S11、LiI-Li2S-B2S3、Li3PO4-Li2S-Si2S、Li3PO4-Li2S-SiS2、LiPO4-Li2S-SiS、Li10GeP2S12、Li9.54Si1.74P1.44S11.7Cl0.3、及びLi7P3S11を含む。
【0123】
(正極)
本発明に適用される正極は特に限定されず、当該技術分野に知られている通常の方法で電極活物質層を電極集電体に決着した形態に製造することができる。
【0124】
本発明の具体的な一実施様態において、前記正極は、集電体、及び前記集電体の少なくとも一面に形成された正極活物質層を含むことができ、前記正極活物質層は、正極活物質、バインダー、及び導電材をさらに含むことができる。前記正極は固体電解質を含むことができる。固体電解質は前述したものと同一であることができる。
【0125】
前記正極集電体は、一般的に3μm~500μmの厚さを有する。このような正極集電体は、当該電池に化学的変化を引き起こさず、高導電性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムまたはステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものを使うことができる。また、正極集電体は、その表面に微細凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態が可能である。
【0126】
前記正極活物質は、電気化学素子の正極に使用可能な正極活物質であれば特に限定されない。例えば、前記正極活物質は、LiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4、LiCoPO4、LiFePO4、LiNiMnCoO2及びLiNi1-x-y-zCoxM1yM2zO2(M1及びM2は互いに独立的にAl、Ni、Co、Fe、Mn、V、Cr、Ti、W、Ta、Mg及びMoからなる群から選択されるいずれか1種であり、x、y及びzは互いに独立的に酸化物組成元素の原子分率であり、0≦x<0.5、0≦y<0.5、0≦z<0.5、x+y+z≦1である)からなる群から選択されるいずれか1種またはこれらのうちの2種以上の組合せを含むことができる。
【0127】
前記正極に含まれる固体電解質は、高分子系固体電解質、酸化物系固体電解質、または硫化物系固体電解質であることができる。
【0128】
本発明の具体的な一実施様態において、前記正極活物質層はリチウム塩をさらに含むことができる。
【0129】
本発明の具体的な一実施様態において、前記リチウム塩は、陽イオンとしてLi+を含み、陰イオンとしてはF-、Cl-、Br-、I-、NO3
-、N(CN)2
-、BF4
-、ClO4
-、AlO4
-、AlCl4
-、PF6
-、SbF6-、AsF6
-、F2C2O4
-、BC4O8
-、(CF3)2PF4
-、(CF3)3PF3
-、(CF3)4PF2
-、(CF3)5PF-、(CF3)6P-、CF3SO3
-、C4F9SO3
-、CF3CF2SO3
-、(CF3SO2)2N-、(F2SO2)2N-、CF3CF2(CF3)2CO-、(CF3SO2)2CH-、CF3(CF2)7SO3
-、CF3CO2
-、CH3CO2
-、SCN-、及び(CF3CF2SO2)2N-からなる群から選択される少なくとも1種を含むことができる。
【0130】
前記導電材は、通常正極活物質を含む混合物総重量を基準に0.1~30重量%添加される。このような導電材は、当該電池に化学的変化を引き起こさず、導電性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サマーブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などを使うことができる。
【0131】
前記正極に含まれるバインダーは活物質と導電材などの結合と集電体に対する結合に役立つ成分であり、通常正極活物質を含む混合物総重量を基準に0.1~30重量%添加される。このようなバインダーの例としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンテルポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレン-ブタジエンゴム、フッ素ゴム、多様な共重合体などを挙げることができる。
【0132】
また、本発明は前記電極を負極として含む全固体電池またはリチウム二次電池を提供する。また、本発明は前記電極を負極として含む全固体電池を提供する。前記全固体電池は、正極、前記負極、及び前記正極と前記負極との間に介在された固体電解質層を含む全固体電池であることができる。前記導電性コーティング層は前記固体電解質層の反対面に配置されることができる。
【0133】
(全固体電池の製造方法)
本発明の他の一側面は全固体電池の製造方法に関する。
【0134】
また、本発明は、(S1)正極、固体電解質層、及び負極を含む積層体を形成する段階、(S2)前記積層体を押圧する段階、及び(S3)押圧された積層体を押圧しながら充電する段階を含む全固体電池の製造方法であって、前記負極のうちの少なくとも一つが一面に導電性コーティング層が形成された多孔性支持体である全固体電池の製造方法を提供する。
【0135】
また、本発明は、前記全固体電池の製造方法において、前記固体電解質層が分離膜に代替されるリチウム二次電池の製造方法を提供する。
【0136】
前記(S2)及び(S3)は逆順に遂行するか、同時に遂行することができ、前記(S3)段階の充電は、前記導電性コーティング層上に負極活物質層を提供する段階を含むことができる。
【0137】
前記導電性コーティング層の形成は、前記多孔性支持体の一面に前記導電性コーティング層を蒸着するかまたは前記多孔性支持体の一面に前記導電性コーティング層をラミネーションすることによってなされることができる。
【0138】
前記積層体の押圧前の前記多孔性支持体の厚さに対する前記積層体の押圧後の前記多孔性支持体の厚さの比は1:0.4~1:0.9であることができる。ここで、前記押圧力は20MPaであることができる。
【0139】
前記S3)段階の後、負極として使用した前記導電性コーティング層と前記固体電解質層との間にリチウムを蒸着させることができる。
【0140】
前記正極は、リチウムを含む金属酸化物を含む正極活物質層を含むことができる。
【0141】
前記S2)段階及び前記S3)段階で、前記多孔性支持体が変形されることで、内部にかかる圧力を減少させることができる。
【0142】
前記(S1)は次のような段階を含むことができる。
【0143】
(S1-1)多数の気孔を有する多孔性支持体の一面に導電性コーティング層を配置した負極集電体を含む負極を準備する段階と、
(S1-2)正極集電体及び前記正極集電体上に正極活物質が形成された正極を準備する段階と、
(S1-3)前記正極と負極との間に固体電解質層を介在した電極組立体を含む電池セルを準備する段階とを含む。
【0144】
ここで、前記(S1-1)及び(S1-2)段階は正極及び負極を準備する段階であり、前記両段階の順序は限定されない。すなわち、正極を先に準備するかまたは負極を先に準備することができる。もしくは、正極及び負極を同時に準備することができる。
【0145】
ここで、前記(S1-1)段階は、前記多孔性支持体の一面に導電性コーティング層を蒸着するかまたは前記多孔性支持体の一面に導電性コーティング層をラミネーションすることで導電性コーティング層を配置することができる。
【0146】
ここで、前記積層体の押圧前の前記多孔性支持体の厚さに対する前記積層体の押圧後の前記多孔性支持体の厚さの比が1:0.4~1:0.9であることができる。ここで、前記押圧力は20MPaであることができる。
【0147】
(S3)段階を遂行するのに伴い、負極集電体と固体電解質層との間にリチウムが蒸着することができる。蒸着したリチウムは負極活物質層の役割を果たすことができる。また、リチウムが蒸着することによって発生する応力は、多孔性支持体が圧縮されることによって減少することができる。
【0148】
前記(S1-2)段階及び前記(S1-3)段階は当該技術分野で通常使用する方法によるものであれば特に限定されない。
【0149】
前記(S3)段階で、充電段階は、当該技術分野で通常使用する方法によるものであれば特に限定されない。前記(S3)段階によって、充電過程で正極から放出されたリチウムが前記負極集電体上にプレーティングされることによって蒸着したリチウム自体を負極活物質層として用いることができる。
【0150】
また、前記S2)及び/またはS3)段階で、前記多孔性支持体が変形されることによって外部からかかる圧力Fを減らし、前記圧力Fが均一に作動するようにすることによって電池全体にかかる圧力を減らす。これにより、電池内部の正極、分離膜/固体電解質層、負極の位置が変更されなく、これらが押圧されるとき、一定の圧力を受けるようにし、究極には内部でセルショートが発生しないようにして電池の安全性を向上させることができる。
【0151】
ここで、前記多孔性支持体は、押圧方向に長さが減少し、押圧方向に垂直な方向に長さが増加するように変形されることで、電池全体にかかる圧力を減少させる。
【0152】
図4は本発明の一実施例による全固体電池の模式図であり、
図5は本発明の一実施例による全固体電池を充電及び押圧した後の模式図である。
【0153】
図4に示すように、本発明による全固体電池は、正極集電体110及びその少なくとも一面にコーティングされている正極活物質層120を含む正極100と、分離膜/固体電解質層200と、多孔性支持体310及び前記多孔性支持体310の少なくとも一面に塗布された導電性コーティング層320を含む負極300とからなる。
【0154】
図5は本発明による全固体電池を充電及び押圧した後の模式図である。
図5に示すように、本発明による電池は、充電の後にリチウムが蒸着してリチウム層330を形成する。前記リチウム層330は定電流/定電圧(CC/CV)の条件で充電される。この際、全固体電池全体にかかる圧力Fは電池内に形成されるリチウム量、充放電速度及び時間などによって変わることができる。前記リチウム層330は本発明の明細書で負極活物質層に相当する。
【0155】
前記圧力Fによって一定した力を受けた前記多孔性支持体310は、まず、多孔性支持体310内の気孔の大きさや気孔の量が減少して前記圧力Fによる応力を解消する。前記圧力Fがもっとかかる場合、前記多孔性支持体310は、押圧方向に垂直な方向、すなわち前記多孔性支持体310の横(f1、x)及び縦(f2、y)の方向には圧力Fによって長さが増加し、押圧方向には前記多孔性支持体310の厚さ(f3、z)が減少して前記リチウム二次電池にかかる圧力Fを減少させることで、前記リチウム層330及びリチウム二次電池全体にかかる力を減らす。
【0156】
前記横方向、縦方向、及び厚さ方向への変形は
図5のようになされることもでき、横及び縦方向、厚さ方向、及び横、縦及び厚さ方向への変形の3種の変形がなされることができる。
【0157】
ここで、前記多孔性支持体310は前記正極100の一側面に存在することができる。前記多孔性支持体310は本発明の負極300に使われたものと同じ形態を有するので、前記負極300の代わりに前記正極100に多孔性支持体が存在する形態を有することもでき、前記負極300を使ううちに前記正極100に多孔性支持体が存在する形態を有することができる。
【0158】
本発明による
図4及び
図5は、固体電解質層が分離膜に変更される場合、リチウム二次電池にもそのまま適用可能である。
【0159】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例に基づいて詳細に説明する。しかし、本発明による実施例は多くの相異なる形態に変形されることができ、本発明の範囲が以下で上述する実施例に限定されるものと解釈されてはいけない。本発明の実施例は当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供するものである。
【0160】
(実験1)多孔性支持体の弾性力実験
気孔度45%のポリエチレン(以下、PEという)多孔性支持体(実施例1-1)、気孔度47%のPE多孔性支持体(実施例1-2)、気孔度49%のPET(ポリエチレンテレフタレート)不織布(実施例1-3)、気孔度89%のニッケルフォーム(比較例1-1)をそれぞれ26.8cm×26.8cmに切断した後、それぞれ5MPa、10MPa、15MPa、20MPaで押圧した。前記実施例1-1~1-3及び比較例1-1の押圧前の厚さ及び押圧後の厚さをそれぞれ測定した後、下記の表1に示す。押圧後の厚さは押圧力が除去された後に測定した厚さである。
【0161】
【0162】
前記表1のように、実施例1-1、実施例1-2、及び実施例1-3の場合、多様な押圧範囲でも厚さ変化が大きくない。
図6は実施例1-1、実施例1-2、実施例1-3、及び比較例1-1の押圧による多孔性支持体の厚さ維持率を示すグラフである。本発明のすべての実施例による前記多孔性支持体は、20MPaでの押圧でも押圧による厚さ維持率が70%以上であることが分かる。ここで、前記押圧による厚さ維持率は(押圧後の厚さ/押圧前の厚さ)×100%によって算定することができる。
【0163】
これは
図7及び
図8からも確認することができる。
図7及び
図8は実施例1-1による多孔性支持体の押圧の前/後を撮った写真である。
図7及び
図8を見れば、実施例1-1による多孔性支持体は押圧前後の厚さ及び表面の形態差がほとんどないことを確認することができる。
【0164】
一方、既存に集電体として使われる金属の場合(比較例1-1)、圧力による厚さ変化量が非常に大きい。比較例1-1を負極集電体として使用して電池を製造する場合、電池充電時の蒸着リチウムの厚さ上昇によってニッケルフォームの厚さが減少するが、放電時に回復することができなくて電池の内部圧力を維持しにくいということが分かる。
図9及び
図10は比較例1-1による支持体の押圧の前/後を撮った写真である。
図6、
図9、及び
図10を参照すると、比較例1-1による支持体は圧力印加の際に厚さが減少し、支持体の表面が滑らかになったことを確認することができる。
【0165】
図6から分かるように、比較例1-1の場合、20MPaで厚さ維持率が40%未満であり、相対的に押圧程度の弱い5MPaでも70%以下である一方で、実施例1-1、1-2、1-3の場合、20MPaの高圧力でもいずれも70%以上の高い厚さ維持率を示すことを確認することができた。これから、比較例1-1による支持体は多孔性を維持することができないので、リチウムが蒸着することによって発生する応力を減少させにくいことを確認することができる。
【0166】
(実験2)押圧の前後の多孔性支持体の回復力比較
高分子フィルムによる押圧の前後の回復力を比較するために、PET離型フィルム(実施例1-4)、PEジッパーバッグ(実施例1-5)、及びパラフィルム(比較例1-2)をそれぞれ26.8cm×26.8cmに切断した後、0.5トン及び6トンの重さで押圧した。前記実施例1-4、1-5、及び比較例1-2の押圧前の厚さ、押圧時の厚さ、押圧後の回復した状態の厚さ、押圧後の面積をそれぞれ測定した後、下記の表2に示した。
【0167】
ここで、PET離型フィルムはPETフィルムの片面または両面にシリコン離型剤をマイクログラビア(Micro Gravure)方式で薄くコーティングして硬化させたものであり、粘着類素材の離脱、汚染防止、及び粘着層保護を図ることができる。PEジッパーバッグは通常のジッパーバッグとして使われる製品のうちでPEを使って製造した製品を言う。パラフィルムはワックス及びポリオレフィンの混合物から構成された半透明の柔軟なフィルムであり、Parafilmという名前はウィスコンシン州のニーナ(Neenah)に本社があるBemis Company、Inc.の登録商標である。
【0168】
【0169】
表2に示すように、PET離型フィルム(実施例1-4)が押圧前の面積及び厚さが押圧後のものと同一であり、PEジッパーバッグも同等な水準の弾性特性を示すが、パラフィルムは弾性力が減少することが分かる。このように、高分子を使ったフィルムの場合であっても非常に異なる物性を示すことが分かる。
【0170】
(実験3)導電性コーティング層の電気伝導度測定
表3のように、実施例2-1~2-6及び比較例2-1~2-3のサンプルをそれぞれ5cm×5cmの大きさに準備した。電気伝導度(electrical conductivity)を測定するために、4点プローブ(4-point probe)装備を用いて25個の領域で測定を遂行した。測定された平均Rsを得て電気伝導度を計算した。これらの電気伝導度を比較して下記の表3に示す。
【0171】
【0172】
表3で、Rsは装備で測定した抵抗値、ρcalは厚さを適用して計算した比抵抗値、ρbulkは一般的に知られた材料の比抵抗値を意味する。
【0173】
前記表3の実施例2-1~2-3、2-5、及び2-6のように、銀(Ag)を多孔性支持体上に蒸着させて薄膜化した負極集電体を製造した場合、一般的なニッケル集電体と同等な水準の抵抗値を有する。これは銀がリチウムに親和的であるからと思われる。実施例2-3及び2-5のように蒸着した銀コーティング層の厚さが1μmの極薄の場合にも、当該技術分野で通常的に使われるステンレススチールSUS304集電体に比べて著しく改善された電気伝導度を示す。
【0174】
表3から分かるように、金属を多孔性支持体上に蒸着させて負極集電体として使用した場合、ρcal値とρbulk値とが同一または同等に現れたことから、金属が均一に蒸着したことが分かる。
図11は実施例2-3による負極集電体の表面を撮ったSEM写真であり、蒸着した銀(Ag)粒子が密に接触して導電性を有することを確認することができた。また、表3のように、銀(Ag)、金(Au)のような電気伝導性を有する金属は多孔性支持体とともに負極集電体として使用することができることを確認した。
【0175】
一方、比較例2-2のように金属層がない場合、多孔性支持体の抵抗値が高くてRs自体を測定することができなかった。すなわち、金属層なしに多孔性支持体のみが存在する場合、負極集電体として使用ができないことを確認した。
【0176】
(実験4)電池性能評価
前記実験1~実験3によって得られた負極集電体による電池性能を比較した。
【0177】
実験4では、下記の構成で形成された負極を使い、最初1回の充放電(充電条件:CC(定電流)/CV(定電圧)、(4.25V、0.05C、0.01C電流遮断)、放電条件:CC(定電流)条件3V、0.05C、60℃評価)結果、初期容量、効率及びセルショート発生の比を測定した。
【0178】
前記初期容量は60℃条件で充放電を遂行して測定し、前記効率は放電容量を充電容量で割った後、下記の表4に示す。
【0179】
(実施例3-1)
負極としては、実施例2-3の負極を使った。
【0180】
正極は次のように製造した。具体的には、正極活物質NCM811(LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2)、アルジロダイト(argyrodite)固体電解質(Li6PS5Cl)、導電材であるカーボンブラック、及びバインダー高分子であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を77.5:19.5:1.5:1.5の重量比でアニソール(Anisole)に分散及び撹拌することで、正極スラリーを製造した。これを厚さ15μmのアルミニウム集電体にドクターブレードで塗布し、100℃で12時間真空乾燥させた。
【0181】
固体電解質層は次のように製造した。具体的には、アルジロダイト(argyrodite)固体電解質(Li6PS5Cl)、及びバインダー高分子としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を95:5の重量比でアニソール(Anisole)に分散及び撹拌してスラリーを製造した。これを厚さ15μmのアルミニウム集電体にドクターブレードで塗布し、100℃で12時間真空乾燥させた。
【0182】
製造された前記正極、製造された前記固体電解質層、及び前記負極を順次介在して電極組立体を製造した後、ジグの間に介在した後、5MPaの圧力をかけた。
【0183】
(実施例3-2)
負極を厚さ11μmのニッケルホイル及び実施例1-1の多孔性支持体に代替して使ったことを除き、実施例3-1と同様である。
【0184】
(実施例3-3)
実施例1-1の多孔性支持体の代わりに実施例1-3の多孔性支持体を使ったことを除き、実施例3-2と同様である。
【0185】
(実施例3-4)
5MPaの圧力の代わりに10MPaの力をかけるようにジグに締結したことを除き、実施例3-2と同様である。
【0186】
(実施例3-5)
負極を厚さ11μmのニッケルホイル及び実施例1-4の多孔性支持体に代替して使ったことを除き、実施例3-1と同様である。
【0187】
(実施例3-6)
負極を厚さ11μmのニッケルホイル及び実施例1-5の多孔性支持体に代替して使ったことを除き、実施例3-1と同様である。
【0188】
(比較例3-1)
負極が実施例1-1の多孔性支持体を有しないことを除き、実施例3-2と同様である。
【0189】
(比較例3-2)
実施例1-1の多孔性支持体の代わりに気孔度47%のPET不織布を使ったことを除き、実施例3-2と同様な方式で実験を遂行した。前記気孔度47%のPET不織布は弾性変形が小さくて圧力による厚さ変化量が非常に小さい不織布である。
【0190】
表4は実施例3-1~3-6、及び比較例3-1、3-2に対する実験結果を示す。
【0191】
【0192】
前記表4から分かるように、本発明の一側面による多孔性支持体を使う場合、電池のショート発生比率が著しく低いことを確認することができた。比較例3-1のように別途の多孔性支持体なしに金属層のみが存在する場合、ショート発生の比率が高くて負極集電体として使うことが難しかった。
【0193】
本発明の実施例3-1~3-3、3-5、及び3-6のように弾性力の良い多孔性支持体を使う場合、電池のショート発生の比率がそうではない場合に比べて著しく低いことが分かる。実施例3-5と3-6とを比較してみると、多孔性支持体の場合であっても押圧後に元の形態に回復する比率が高いほどショート発生の比率がより低いことが分かる。
【0194】
実施例3-4の場合、押圧力を10MPaに高めたにもかかわらず、依然としてショート発生の比率において優れた値を示している。
【0195】
比較例3-2の支持体は圧力による厚さ変化量があまりにも低い不織布の形態になっているので、不織布内の繊維が特に収縮せず、繊維間の交差点(junction)部分に圧力が集中する現象が発生する。これにより、充放電の際、集電体の表面にリチウムが不均一に蒸着し、二次電池のショート発生の比率が実施例に比べて高いことが分かる。
【0196】
このように、表4から、本発明による負極を使う場合、電池の安全性が向上することが分かる。また、電池の効率も同等であるかより高いことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0197】
本発明は多孔性支持体及び前記多孔性支持体の少なくとも一面に形成された導電性コーティング層を含む電極に関するものであるので、産業上利用可能性がある。
【符号の説明】
【0198】
10、100 正極
11、110 正極集電体
12、120 正極活物質層
20、200 固体電解質層
30、300 負極
31 負極集電体
310 多孔性支持体
320 導電性コーティング層
330 負極活物質層、リチウム層
F 押圧力
f1 横
f2 縦
f3 厚さ