IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エルジー エナジー ソリューション リミテッドの特許一覧

特許7562214リチウム二次電池用非水電解質及びそれを含むリチウム二次電池
<>
  • 特許-リチウム二次電池用非水電解質及びそれを含むリチウム二次電池 図1
  • 特許-リチウム二次電池用非水電解質及びそれを含むリチウム二次電池 図2
  • 特許-リチウム二次電池用非水電解質及びそれを含むリチウム二次電池 図3
  • 特許-リチウム二次電池用非水電解質及びそれを含むリチウム二次電池 図4
  • 特許-リチウム二次電池用非水電解質及びそれを含むリチウム二次電池 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用非水電解質及びそれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20240930BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20240930BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20240930BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240930BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240930BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20240930BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20240930BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/0569
H01M10/0568
H01M10/052
H01M4/36 A
H01M4/38 Z
H01M4/48
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023518306
(86)(22)【出願日】2021-10-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-05
(86)【国際出願番号】 KR2021014107
(87)【国際公開番号】W WO2022080854
(87)【国際公開日】2022-04-21
【審査請求日】2023-03-20
(31)【優先権主張番号】10-2020-0132055
(32)【優先日】2020-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ボン・イ
(72)【発明者】
【氏名】イェ・ウン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・ヨン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ソク・ク・キム
【審査官】岸 智之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/085811(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0567
H01M 10/0569
H01M 10/0568
H01M 10/052
H01M 4/36
H01M 4/38
H01M 4/48
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される化合物;ニトリル系溶媒を90vol%~100vol%の含有量で含む有機溶媒;及びリチウム塩を含み、
前記化学式1で表される化合物の含有量は、非水電解質の総重量に対して2重量%~50重量%である、リチウム二次電池用非水電解質:
[化学式1]
R1-O-CH-R2
前記化学式1において、
R1は、-(CF CHF であり、
R2は、-(CF CHF であり、
nは、1~4の整数であり、
mは、2~5の整数である
【請求項2】
前記化学式1で表される化合物は、下記化学式1Aで表されるものである、請求項に記載のリチウム二次電池用非水電解質。
【化1】
【請求項3】
前記化学式1で表される化合物の含有量は、前記非水電解質の総重量に対して3重量%~30重量%である、請求項1または2に記載のリチウム二次電池用非水電解質。
【請求項4】
下記化学式2で表される化合物をさらに含む、請求項1からのいずれか一項に記載のリチウム二次電池用非水電解質:
【化2】
前記化学式2において、
R3は、水素;又は炭素数1~5のアルキル基であり、
R4は、1つ以上のフッ素で置換された炭素数1~10のアルキル基である。
【請求項5】
前記R3は、水素又はメチル基であり、
前記R4は、-(CHp(CFCHFであり、
前記pは、1~3の整数であり、
前記qは、2~6の整数である、請求項に記載のリチウム二次電池用非水電解質。
【請求項6】
前記化学式2で表される化合物の含有量は、前記非水電解質の総重量に対して0.1重量%~10重量%である、請求項またはに記載のリチウム二次電池用非水電解質。
【請求項7】
前記ニトリル系溶媒は、スクシノニトリルである、請求項1からのいずれか一項に記載のリチウム二次電池用非水電解質。
【請求項8】
前記有機溶媒は、カーボネート系溶媒をさらに含むものである、請求項1からのいずれか一項に記載のリチウム二次電池用非水電解質。
【請求項9】
前記ニトリル系溶媒及びカーボネート系溶媒の体積比は、90:10~97:3である、請求項に記載のリチウム二次電池用非水電解質。
【請求項10】
前記有機溶媒及びリチウム塩からなる有機溶液中のリチウム塩の濃度は、1.0M~6Mである、請求項1からのいずれか一項に記載のリチウム二次電池用非水電解質。
【請求項11】
正極活物質を含む正極;
負極活物質を含む負極;
前記正極と負極との間に介在する分離膜;及び
請求項1から10のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用非水電解質を含む、リチウム二次電池。
【請求項12】
前記負極活物質は、リチウム金属を含まないものである、請求項11に記載のリチウム二次電池。
【請求項13】
前記負極活物質は、炭素系物質;ケイ素系物質;Sn、Zn、Mg、Cd、Ce、Ni及びFeから選択される1つ以上の金属;前記金属で構成された合金;前記金属の酸化物;及び前記金属と炭素の複合体から選択される1種以上からなるものである、請求項11または12に記載のリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年10月13日付けで韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2020-0132055号の出願日の利益を主張し、その全内容が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、リチウム二次電池用非水電解質及びそれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウム二次電池は、一般に、リチウムを含有する遷移金属酸化物からなる正極活物質を含む正極とリチウムイオンを貯蔵できる負極活物質を含む負極との間に分離膜を備えて電極組立体を形成し、前記電極組立体を電池ケースに挿入し、その後リチウムイオンを伝達する媒体となる非水電解質を注入してから密封する方法で製造される。
【0004】
このようなリチウム二次電池は、携帯電話やノートブックコンピュータなどの携帯用電子機器だけでなく、電気自動車などに用いられており、その需要が急激に増加している。リチウム二次電池の需要が増加して適用対象が多様になるにつれて、リチウム二次電池に要求される性能レベルも徐々に高くなっている。例えば、電気自動車に用いられるリチウム二次電池には出力特性の向上が要求される。
【0005】
電池の出力特性とは、与えられた電圧でどれだけ大きな電流を流すことができるかの尺度をいい、一般に、電流が増加する際に電池から得られる出力は、初期には増加し、最高値に到達した後に減少する傾向を示す。これは、分極現象に関連するものであって、電流が特定値以上に増加すると電池の電圧が減少するからであり、与えられた電圧範囲で得られる容量も減少する。このような分極現象は、リチウムイオンの拡散速度及び電池の内部抵抗に関わっているので、電池の出力特性を向上させるためには、リチウムイオンの拡散速度及び電気伝導度特性を向上させることが必要である。
【0006】
電池の出力特性を向上させるための1つの方法として、高濃度のリチウム塩を含む電解質を用いてリチウムイオン輸率(Li transference number)及びリチウムイオンの解離度を上昇させて電池の出力特性を向上させる案があるが、その場合、電解質の電極親和度、分離膜親和度が低下し、粘度及び表面張力が増加するという問題がある。
【0007】
よって、高濃度のリチウム塩を適用しながらも上記問題を改善することのできるリチウム二次電池の開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題を解決するためのものであり、リチウム二次電池用非水電解質及びそれを含むリチウム二次電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下記化学式1で表される化合物;ニトリル系溶媒を90vol%~100vol%の含有量で含む有機溶媒;及びリチウム塩を含み、
上記化学式1で表される化合物の含有量は、非水電解質の総重量に対して2重量%~50重量%である、リチウム二次電池用非水電解質を提供する。
【0010】

[化学式1]
R1-O-CH-R2
上記化学式1において、
R1及びR2は、1つ以上のフッ素で置換された炭素数1~8のアルキル基である。
【0011】
また、本発明は、正極活物質を含む正極;負極活物質を含む負極;前記正極と負極との間に介在する分離膜;及び前記リチウム二次電池用非水電解質を含む、リチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によるリチウムイオン電池用非水電解質は、高濃度のリチウム塩の使用に伴う性能低下の問題を改善して出力特性を向上させることができる。
【0013】
また、前記非水電解質は、電極及び分離膜への含浸性に優れ、難燃性能に優れているので、それを含むリチウム二次電池は、活性化工程時間が短縮され、安定性が向上するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例5で製造された非水電解質の発火評価写真を示すものである。
図2】実施例B-3で製造されたリチウム二次電池の熱安全性評価結果を示すものである。
図3】実施例B-5で製造されたリチウム二次電池の熱安全性評価結果を示すものである。
図4】比較例B-5で製造されたリチウム二次電池の熱安全性評価結果を示すものである。
図5】実施例A-1~A-3、比較例A-3及び比較例A-6で製造されたリチウム二次電池のフォーメーション工程時の電圧-容量曲線を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0016】
近年、リチウム二次電池の性能及び安全性の向上のために、リチウム塩の濃度を増加させるか又は溶媒を変更した電解質が開発されている。しかし、このような電解質の場合、一般的に用いられるカーボネート系溶媒を用いた電解質に比べて粘度及び表面張力が高くなるという欠点がある。
【0017】
電解質の粘度及び表面張力が高くなると、当業界で広く用いられるポリオレフィン系分離膜及びPVdFバインダーを含む電極への含浸性が低下して、電池製造過程で活性化工程時間が増加し、高温エージング(aging)ステップが追加されることにより、工程コストが上昇するという問題につながる。
【0018】
そこで、本発明者らは、安全性が大きく向上したニトリル系電解質に上記化学式1で表される化合物を含ませることにより、電解質中のリチウム塩の解離構造を変更することなく電解質の粘度を下げて電解質のイオン伝導度を向上させるだけでなく、電解質の表面張力を下げて電極及び分離膜への含浸性を大きく向上させるようにした。また、ニトリル系溶媒を導入することにより、既存のカーボネート系溶媒に比べてセルの安全性を高める効果があることが確認された。
【0019】
非水電解質
本発明のリチウム二次電池用非水電解質は、下記化学式1で表される化合物;ニトリル系溶媒を90vol%~100vol%の含有量で含む有機溶媒;及びリチウム塩を含み、
上記化学式1で表される化合物の含有量は、非水電解質の総重量に対して2重量%~50重量%である。
【0020】
[化学式1]
R1-O-CH-R2
上記化学式1において、
R1及びR2は、1つ以上のフッ素で置換された炭素数1~8のアルキル基である。
【0021】
(a)化学式1で表される化合物
本発明の一実施態様において、上記化学式1のR1は、1つ以上のフッ素で置換された炭素数1~5のアルキル基であり、前記R2は、1つ以上のフッ素で置換された炭素数2~6のアルキル基であってもよい。
【0022】
具体的には、前記R1は、1つ以上のフッ素で置換された炭素数2又は3のアルキル基であり、前記R2は、1つ以上のフッ素で置換された炭素数3~5のアルキル基であり、より具体的には、前記R1は、1つ以上のフッ素で置換されたエチル基であり、前記R2は、1つ以上のフッ素で置換されたブチル基であってもよい。
【0023】
本発明の一実施態様において、前記R1は、-(CFCHFであり、前記R2は、-(CFCHFであり、前記nは、1~4の整数であり、前記mは、2~5の整数であってもよい。
【0024】
具体的には、前記nは、1又は2であり、mは、2~4の整数であり、より具体的には、前記n=1、m=3であってもよい。
【0025】
本発明の一実施態様において、前記R1及びR2にそれぞれ含まれる炭素原子及びフッ素原子の割合は、1:2であってもよい。
【0026】
本発明の一実施態様において、上記化学式1で表される化合物は、下記化学式1Aで表される1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル(1H,1H,5H-octafluoropentyl 1,1,2,2-tetrafluoroethyl ether)であってもよい。
【0027】
【化1】
【0028】
上記化学式1で表される化合物の含有量は、前記非水電解質の総重量に対して2重量%~50重量%、好ましくは3重量%~30重量%であってもよく、より好ましくは3重量%~10重量%であってもよい。
【0029】
上記化学式1で表される化合物の含有量が2重量%未満の場合、電解質の粘度及び表面張力が減少する効果が微弱であるから電極及び分離膜への含浸性が改善されず、50重量%を超える場合、リチウム塩の濃度が低くなって電解質のイオン伝導度が減少するから電池への適用時に充電速度及び出力特性が低下することがある。
【0030】
(b)化学式2で表される化合物
本発明のリチウム二次電池用非水電解質は、フッ素系アクリレート/メタクリレート化合物である下記化学式2で表される化合物をさらに含んでもよい。
【0031】
【化2】
上記化学式2において、
R3は、水素;又は炭素数1~5のアルキル基であり、
R4は、1つ以上のフッ素で置換された炭素数1~10のアルキル基である。
【0032】
上記化学式2で表される化合物が非水電解質に含まれる場合、正極性を帯びる化合物が界面活性剤として作用して、電極及び分離膜への含浸性がさらに改善され、界面安定化効果及び高分子硬化反応により電池の安全性が向上する。
【0033】
本発明の一実施態様において、前記R3は、水素又はメチル基であってもよい。
【0034】
本発明の一実施態様において、前記R4は、-(CHp(CFCHFであってもよく、前記pは、1~3の整数であり、前記qは、2~6の整数である。
【0035】
本発明の一実施態様において、上記化学式2で表される化合物は、下記化学式2A又は化学式2Bで表されるものであってもよい。
【0036】
【化3】
【0037】
【化4】
【0038】
上記化学式2で表される化合物の含有量は、前記非水電解質の総重量に対して0.1重量%~10重量%、好ましくは0.1重量%~5重量%であってもよく、より好ましくは0.1重量%~3重量%であってもよい。
【0039】
上記化学式2で表される化合物の含有量が0.1重量%未満の場合、電極及び分離膜の改善効果が微弱であり、10重量%を超える場合、イオン伝導度が低下することがある。
【0040】
(c)有機溶媒
本発明の有機溶媒は、ニトリル(Nitrile)系溶媒を必須成分として含む。ここで、ニトリル系溶媒とは、-C≡N官能基を含む有機溶媒を意味する。
【0041】
本発明の一実施態様において、前記ニトリル系溶媒は、スクシノニトリル、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、カプリロニトリル、ヘプタンニトリル、シクロペンタンカルボニトリル、シクロヘキサンカルボニトリル、2-フルオロベンゾニトリル、4-フルオロベンゾニトリル、ジフルオロベンゾニトリル、トリフルオロベンゾニトリル、フェニルアセトニトリル、2-フルオロフェニルアセトニトリル及び4-フルオロフェニルアセトニトリルから選択される1種以上であってもよく、スクシノニトリルであることが好ましい。
【0042】
スクシノニトリルは、常温で固体形態で存在するなど、溶媒の揮発性が低いことから電解質の安全性を大きく向上させることができるので、本発明の非水電解質の溶媒として最も適している。
【0043】
前記ニトリル系溶媒の含有量は、前記有機溶媒総100vol%に対して90vol%~100vol%、好ましくは92vol%~100vol%であってもよい。
【0044】
前記有機溶媒は、ニトリル系溶媒単独からなるようにしてもよく、カーボネート系溶媒をさらに含むようにしてもよい。前記有機溶媒がニトリル系溶媒単独からなる場合、電解質の揮発性が低くなって電池の安全性を向上させることができるという利点があり、カーボネート系溶媒をさらに含む場合、電極及び分離膜への含浸性が向上して安全性が確保された高エネルギー密度の電池を実現することができるという利点がある。
【0045】
前記有機溶媒中にカーボネート系溶媒が含まれる場合、ニトリル系溶媒及びカーボネート系溶媒の体積比は、90:10~97:3、好ましくは90:10~93:7、より好ましくは90:10~92:8であってもよい。2つの溶媒の重量比が上記範囲に含まれる場合、電池の安全性が確保されて集電体の腐食が抑制されるという点で好ましい。
【0046】
前記カーボネート系溶媒は、非フッ素系環状カーボネート系溶媒、非フッ素系鎖状カーボネート系溶媒、フッ素系環状カーボネート溶媒、フッ素系鎖状カーボネート溶媒、又はこれらの混合物であってもよい。
【0047】
前記非フッ素系環状カーボネート系溶媒は、高粘度の有機溶媒であって誘電率が高いことから電解質中のリチウム塩を容易に解離させることができ、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、1,2-ブチレンカーボネート、2,3-ブチレンカーボネート、1,2-ペンチレンカーボネート、2,3-ペンチレンカーボネート及びビニレンカーボネートから選択される1種以上であってもよく、具体的には、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートであってもよい。
【0048】
また、前記非フッ素系鎖状カーボネート系溶媒は、低粘度及び低誘電率を有する有機溶媒であって、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate,DMC)、ジエチルカーボネート(diethyl carbonate,DEC)、ジプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネート及びエチルプロピルカーボネートから選択される1種以上であってもよく、具体的には、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートであってもよい。
【0049】
前記フッ素系環状カーボネート溶媒は、フルオロエチレンカーボネート(Fluoroethylene carbonate;FEC)、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)、トリフルオロエチレンカーボネート、テトラフルオロエチレンカーボネート、3,3,3-トリフルオロプロピレンカーボネート及び1-フルオロプロピレンカーボネートから選択される1種以上であってもよく、具体的には、フルオロエチレンカーボネート(FEC)であってもよい。
【0050】
前記フッ素系鎖状カーボネート溶媒は、フルオロメチルメチルカーボネート(FMMC)及びフルオロエチルメチルカーボネート(FEMC)から選択される1種以上であってもよく、具体的には、フルオロエチルメチルカーボネート(FEMC)であってもよい。
【0051】
前記非水電解質の総重量のうち有機溶媒を除く他の構成成分、例えば上記化学式1で表される化合物、化学式2で表される化合物、リチウム塩及び後述するその他の添加剤の含有量を除く残部は、別途の言及がない限り、全て有機溶媒であってもよい。
【0052】
(d)リチウム塩
前記リチウム塩は、リチウム二次電池用電解質に通常用いられるものであれば制限なく使用可能であり、例えば、陽イオンとしてはLiを含み、陰イオンとしてはF、Cl、Br、I、NO 、N(CN) 、BF 、ClO 、B10Cl10 、AlCl 、AlO 、PF 、CFSO 、CHCO 、CFCO 、AsF 、SbF 、CHSO 、(CFCFSO、(CFSO、(FSO、BF 、BC 、BFCHF、PF 、PF 、PO 、(CFPF 、(CFPF 、(CFPF 、(CFPF、(CF、CSO 、CFCFSO 、CFCF(CFCO、(CFSOCH、CF(CFSO 及びSCNから選択される1種以上を含むリチウム塩を用いることができる。
【0053】
具体的には、前記リチウム塩は、LiPF、LiClO、LiBF、LiFSI(Lithium bis(fluorosulfonyl)imide)、LiN(SOCF(LiTFSI)、LiSOCF、LiPO、リチウムビス(オキサラート)ボラート(Lithium bis(oxalate)borate,LiBOB)、リチウムジフルオロ(オキサラート)ボラート(Lithium difluoro(oxalate)borate,LiDFOB)、リチウムジフルオロ(ビスオキサラト)ホスファート(Lithium difluoro(bisoxalato)phosphate,LiDFBP)、リチウムテトラフルオロ(オキサラート)ホスファート(Lithium tetrafluoro(oxalate)phosphate,LiTFOP)及びリチウムフルオロマロナト(ジフルオロ)ボラート(Lithium fluoromalonato(difluoro)borate,LiFMDFB)から選択される1種以上であってもよく、LiFSI及びリチウムジフルオロ(オキサラート)ボラートから選択される1種以上であることが好ましい。
【0054】
本発明の一実施態様において、前記有機溶媒及びリチウム塩からなる有機溶液中のリチウム塩の濃度は、1.0M~6.0M、好ましくは1.3M~6.0M、好ましくは1.3M~2.4Mであってもよい。
【0055】
前記リチウム塩の濃度が1.0M未満の場合、リチウム二次電池の低温出力の改善及びサイクル特性の改善効果が微弱であり、6.0Mを超える場合、非水電解質の粘度及び表面張力が過度に増加することにより電解質の含浸性が低下することがある。
【0056】
これに加えて、本発明の非水電解質は、上記のように高濃度のリチウム塩とニトリル系溶媒を含むと共に、5cP~15cPの粘度を維持することができる。上記のように高濃度のリチウム塩とニトリル系溶媒を含む場合、一般的には粘度が15cP以上と高くなるが、本発明の場合は、化学式1で表される化合物を含めると共に高濃度のリチウム塩とニトリル系溶媒を適用したので、5cP~15cPの粘度を維持することができる。
【0057】
(e)その他の添加剤
本発明のリチウム二次電池用非水電解質は、高電圧環境で非水電解質が分解されて電極の崩壊が誘発されることを防止したり、低温高率放電特性、高温安定性、過充電防止、高温での電池膨張抑制効果などをさらに向上させるために、必要に応じて、前記非水電解質中に添加剤を選択的に含んでもよい。
【0058】
前記非水電解質中の添加剤は、環状カーボネート系化合物、ハロゲンで置換されたカーボネート系化合物、スルトン系化合物、スルファート系化合物、ホスファート系又はホスフィット系化合物、ボラート系化合物、ニトリル系化合物、アミン系化合物、シラン系化合物、ベンゼン系化合物及びリチウム塩系化合物から選択される1種以上であってもよい。
【0059】
前記環状カーボネート系化合物は、ビニレンカーボネート(VC)及びビニルエチレンカーボネートから選択される1種以上であってもよく、具体的には、ビニレンカーボネートであってもよい。添加剤として前記環状カーボネート系化合物を含む場合、前記環状カーボネート系化合物の含有量は、非水電解質の総重量に対して4重量%未満、好ましくは0.1重量%~3重量であってもよい。
【0060】
前記ハロゲンで置換されたカーボネート系化合物は、フルオロエチレンカーボネート(FEC)であってもよい。
【0061】
前記スルトン系化合物は、負極の表面で還元反応による安定なSEI膜を形成できる物質であって、1,3-プロパンスルトン(PS)、1,4-ブタンスルトン、エテンスルトン、1,3-プロペンスルトン(PRS)、1,4-ブテンスルトン及び1-メチル-1,3-プロペンスルトンから選択される1種以上の化合物であってもよく、具体的には、1,3-プロパンスルトン(PS)であってもよい。
【0062】
前記スルファート系化合物は、負極の表面で電気的に分解されて高温貯蔵時にも亀裂が生じない安定なSEI膜を形成できる物質であって、エチレンスルファート(Ethylene Sulfate;Esa)、トリメチレンスルファート(Trimethylene sulfate;TMS)又はメチルトリメチレンスルファート(Methyl trimethylene sulfate;MTMS)から選択される1種以上であってもよい。
【0063】
前記ホスファート系又はホスフィット系化合物は、リチウムジフルオロ(ビスオキサラート)ホスファート、リチウムジフルオロホスファート、テトラメチルトリメチルシリルホスファート、トリメチルシリルホスフィット、トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスファート及びトリス(トリフルオロエチル)ホスフィットから選択される1種以上であってもよい。
【0064】
前記ボラート系化合物は、リチウムテトラフェニルボラートであってもよい。
【0065】
前記ニトリル系化合物は、スクシノニトリル、アジポニトリル、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、カプリロニトリル、ヘプタンニトリル、シクロペンタンカルボニトリル、シクロヘキサンカルボニトリル、2-フルオロベンゾニトリル、4-フルオロベンゾニトリル、ジフルオロベンゾニトリル、トリフルオロベンゾニトリル、フェニルアセトニトリル、2-フルオロフェニルアセトニトリル及び4-フルオロフェニルアセトニトリルから選択される1種以上であってもよく、具体的には、フッ素成分を含む2-フルオロベンゾニトリル、4-フルオロベンゾニトリル、ジフルオロベンゾニトリル及びトリフルオロベンゾニトリルから選択される1種以上であってもよい。
【0066】
前記アミン系化合物は、トリエタノールアミン及びエチレンジアミンから選択される1種以上であってもよく、前記シラン系化合物は、テトラビニルシランであってもよい。
【0067】
前記ベンゼン系化合物は、モノフルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、トリフルオロベンゼン及びテトラフルオロベンゼンから選択される1種以上であってもよい。
【0068】
前記リチウム塩系化合物は、前記非水電解質に含まれるリチウム塩とは異なる化合物であって、LiPO、LiBOB(リチウムビスオキサラートボラート(LiB(C)及びリチウムテトラフルオロボラート(LiBF)から選択される1種以上の化合物であってもよい。
【0069】
一方、前記添加剤の含有量は、非水電解質の総重量に対して0.1重量%~10重量%であってもよく、好ましくは1重量%~5重量%であってもよい。前記添加剤の含有量が0.1重量%未満の場合、電池の低温容量の改善、並びに高温貯蔵特性及び高温寿命特性の改善効果が微弱であり、10重量%を超える場合、電池の充放電時に電解質中での副反応が過度に発生する可能性がある。特に、前記SEI膜形成用添加剤が過量添加された場合、高温で十分に分解されないので、常温で電解質中で未反応物又は析出されたまま存在することがある。これにより、電池の寿命又は抵抗特性が低下する副反応が発生することがある。
【0070】
リチウム二次電池
次に、本発明によるリチウム二次電池について説明する。
【0071】
本発明によるリチウム二次電池は、正極活物質を含む正極、負極活物質を含む負極、前記正極と負極との間に介在する分離膜、及び非水電解質を含み、ここで、非水電解質は、前記本発明によるリチウム二次電池用非水電解質である。非水電解質については上述したので、それについての説明は省略し、以下、他の構成要素について説明する。
【0072】
(a)正極
前記正極は、正極集電体上に正極活物質、バインダー、導電材及び溶媒などを含む正極合剤スラリーをコーティングして製造することができる。
【0073】
前記正極集電体は、当該電池に化学的変化を起こさず、かつ導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、又はアルミニウムやステンレススチールの表面をカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどを用いることができる。
【0074】
前記正極活物質は、リチウムの可逆的なインターカレーション及びデインターカレーションが可能な化合物であって、LCO(LiCoO)、LNO(LiNiO)、LMO(LiMnO)、LiMn、LiCoPO、LFP(LiFePO)、LiNiMnCoO及びNMC(LiNiCoMnO)などを含むLiNi1-x-y-zCo (M及びMは、互いに独立してAl、Ni、Co、Fe、Mn、V、Cr、Ti、W、Ta、Mg及びMoからなる群から選択されるいずれか1つであり、x、y及びzは、互いに独立して酸化物組成元素の原子分率であって0≦x<0.5、0≦y<0.5、0≦z<0.5、x+y+z=1である)から選択される1種以上であってもよい。
【0075】
具体的には、コバルト、マンガン、ニッケル又はアルミニウムなどの1種以上の金属とリチウムとを含むリチウム金属酸化物を含んでもよい。
【0076】
より具体的には、前記リチウム金属酸化物は、LiMnO、LiMnなどのリチウム-マンガン系酸化物;LiCoOなどのリチウム-コバルト系酸化物;LiNiOなどのリチウム-ニッケル系酸化物;LiNi1-YMn(0<Y<1)、LiMn2-zNi(0<Z<2)などのリチウム-ニッケル-マンガン系酸化物;LiNi1-Y1CoY1(0<Y1<1)などのリチウム-ニッケル-コバルト系酸化物;LiCo1-Y2MnY2(0<Y2<1)、LiMn2-z1Coz1(0<Z1<2)などのリチウム-マンガン-コバルト系酸化物;Li(NiCoMnr1)O(0<p<1、0<q<1、0<r1<1、p+q+r1=1)、Li(Nip1Coq1Mnr2)O(0<p1<2、0<q1<2、0<r2<2、p1+q1+r2=2)などのリチウム-ニッケル-マンガン-コバルト系酸化物;及びLi(Nip2Coq2Mnr3S2)O(Mは、Al、Fe、V、Cr、Ti、Ta、Mg及びMoからなる群から選択され、p2、q2、r3及びs2は、それぞれ独立した元素の原子分率であって、0<p2<1、0<q2<1、0<r3<1、0<s2<1、p2+q2+r3+s2=1)などのリチウム-ニッケル-コバルト-遷移金属(M)酸化物から選択される1種以上であってもよい。
【0077】
これらの中でも、電池の容量特性及び安定性を高めることができるという点で、前記リチウム金属酸化物は、LiCoO、LiMnO、LiNiO、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(例えば、Li(Ni1/3Mn1/3Co1/3)O、Li(Ni0.6Mn0.2Co0.2)O、Li(Ni0.5Mn0.3Co0.2)O、Li(Ni0.7Mn0.15Co0.15)O及びLi(Ni0.8Mn0.1Co0.1)Oなど);又はリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(例えば、Li(Ni0.8Co0.15Al0.05)Oなど)であってもよく、リチウム複合金属酸化物を形成する構成元素の種類及び含有量比の制御による改善効果の著しさを考慮すると、前記リチウム複合金属酸化物は、Li(Ni0.6Mn0.2Co0.2)O、Li(Ni0.5Mn0.3Co0.2)O、Li(Ni0.7Mn0.15Co0.15)O及びLi(Ni0.8Mn0.1Co0.1)Oから選択される1種以上であってもよい。
【0078】
前記正極活物質は、正極合剤スラリーのうち溶媒を除く固形物の総重量に対して、60重量%~99重量%、好ましくは70重量%~99重量%、より好ましくは80重量%~98重量%含まれてもよい。
【0079】
前記バインダーは、活物質と導電材などの結合と集電体に対する結合に助力する成分である。
【0080】
このようなバインダーの例としては、ポリビニリデンフルオリド、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンモノマー、スルホン化エチレン-プロピレン-ジエンモノマー、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、及びこれらの様々な共重合体などが挙げられる。
【0081】
通常、前記バインダーは、正極合剤スラリーのうち溶媒を除く固形物の総重量に対して、1重量%~20重量%、好ましくは1重量%~15重量%、より好ましくは1重量%~10重量%含まれてもよい。
【0082】
前記導電材は、正極活物質の導電性をさらに向上させるための成分である。
【0083】
前記導電材は、当該電池に化学的変化を起こさず、かつ導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、グラファイト;アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;及びポリフェニレン誘導体などの導電性素材などを用いることができる。
【0084】
通常、前記導電材は、正極合剤スラリーのうち溶媒を除く固形物の総重量に対して、1重量%~20重量%、好ましくは1重量%~15重量%、より好ましくは1重量%~10重量%含まれてもよい。
【0085】
前記溶媒は、NMP(N-メチル-2-ピロリドン)などの有機溶媒を含んでもよく、また、前記正極活物質、並びに選択的にバインダー及び導電材などを含む場合に好ましい粘度となる量で用いられてもよい。例えば、正極活物質、並びに選択的にバインダー及び導電材を含む固形分の濃度が50重量%~95重量%、好ましくは50重量%~80重量%、より好ましくは55重量%~70重量%となるように含まれてもよい。
【0086】
(b)負極
前記負極は、例えば、負極集電体上に負極活物質、バインダー、導電材及び溶媒などを含む負極合剤スラリーをコーティングして製造するか、炭素(C)からなる黒鉛電極又は金属自体を負極として用いることができる。
【0087】
例えば、前記負極集電体上に負極合剤スラリーをコーティングして負極を製造する場合、前記負極集電体は、一般的に3μm~500μmの厚さを有する。このような負極集電体は、当該電池に化学的変化を起こさず、かつ高い導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面をカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などを用いることができる。また、正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化することもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など、様々な形態で用いることができる。
【0088】
本発明の負極活物質は、リチウム金属を含まないものである。これは、本発明のニトリル系溶媒がリチウム金属と接触すると重合反応(polymerization)を発生させるからである。
【0089】
また、本発明の負極活物質は、炭素系物質;ケイ素系物質;Sn、Zn、Mg、Cd、Ce、Ni及びFeから選択される1つ以上の金属;前記金属で構成された合金;前記金属の酸化物;及び前記金属と炭素の複合体から選択される1種以上からなるものであってもよい。
【0090】
前記炭素系物質は、天然黒鉛及び人造黒鉛などの結晶質炭素;及びソフトカーボン、ハードカーボン、メソフェーズピッチ炭化物及び焼成されたコークスなどの非晶質炭素から選択される1種以上であってもよい。
【0091】
前記ケイ素系物質は、Si、SiO(0<x<2)、Siと前記金属で構成された合金;及びSiと炭素の複合体から選択される1種以上であってもよい。
【0092】
前記負極活物質は、負極合剤スラリーのうち溶媒を除く固形物の総重量に対して、60重量%~99重量%、好ましくは70重量%~99重量%、より好ましくは80重量%~98重量%含まれてもよい。
【0093】
前記バインダーは、導電材、活物質及び集電体間の結合に助力する成分である。このようなバインダーの例としては、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンモノマー、スルホン化エチレン-プロピレン-ジエンモノマー、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、及びこれらの様々な共重合体などが挙げられる。
【0094】
通常、前記バインダーは、負極合剤スラリーのうち溶媒を除く固形物の総重量に対して、1重量%~20重量%、好ましくは1重量%~15重量%、より好ましくは1重量%~10重量%含まれてもよい。
【0095】
前記導電材は、負極活物質の導電性をさらに向上させるための成分である。このような導電材は、当該電池に化学的変化を起こさず、かつ導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;及びポリフェニレン誘導体などの導電性素材などを用いることができる。
【0096】
前記導電材は、負極合剤スラリーのうち溶媒を除く固形物の総重量に対して、1重量%~20重量%、好ましくは1重量%~15重量%、より好ましくは1重量%~10重量%含まれてもよい。
【0097】
前記溶媒は、水又はNMP(N-メチル-2-ピロリドン)などの有機溶媒を含んでもよく、また、前記負極活物質、並びに選択的にバインダー及び導電材などを含む場合に好ましい粘度となる量で用いられてもよい。例えば、負極活物質、並びに選択的にバインダー及び導電材を含む固形分の濃度が50重量%~95重量%、好ましくは70重量%~90重量%となるように含まれてもよい。
【0098】
前記負極として、金属自体を用いる場合、金属薄膜自体又は前記負極集電体上に金属を物理的に接合、圧延又は蒸着するなどの方法で製造することができる。前記蒸着する方式は、金属に対して電気的蒸着法又は化学蒸着法(chemical vapor deposition)を用いてもよい。
【0099】
例えば、前記金属薄膜自体又は前記負極集電体上に接合/圧延/蒸着する金属は、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、銅(Cu)及びインジウム(In)からなる群から選択される1種の金属又は2種の金属の合金などを含んでもよい。
【0100】
(c)分離膜
本発明によるリチウム二次電池は、前記正極と負極との間に分離膜を含む。
【0101】
前記分離膜は、負極と正極を分離してリチウムイオンの移動通路を提供するものであって、通常リチウム二次電池において分離膜として用いられるものであれば、特に制限なく使用可能であり、特に電解質のイオンの移動に対して低抵抗であり、かつ電解質含浸能力に優れていることが好ましい。
【0102】
具体的には、分離膜として、多孔性高分子フィルム、例えばエチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体及びエチレン/メタクリレート共重合体などのポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルム;又はこれらの2層以上の積層構造体を用いることができる。また、通常の多孔性不織布、例えば高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布を用いることもできる。さらに、耐熱性又は機械的強度の確保のために、セラミック成分又はフィルム、繊維もしくはパウダー形態の高分子物質が含まれるか又はコーティングされた分離膜を用いることもでき、単層又は多層構造として用いることができる。
【0103】
上記のような本発明によるリチウム二次電池は、携帯電話、ノートブックコンピュータ、デジタルカメラなどの携帯用機器、及びハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle,HEV)などの電気自動車の分野などにおいて有用である。
【0104】
よって、本発明の他の一実現例によれば、前記リチウム二次電池を単位セルとして含む電池モジュール及びこれを含む電池パックが提供される。
【0105】
前記電池モジュール又は電池パックは、パワーツール(Power Tool);電気自動車(Electric Vehicle,EV)、ハイブリッド電気自動車、及びプラグインハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle,PHEV)を含む電気自動車;及び電力貯蔵用システムのいずれか1つ以上の中大型デバイスの電源として用いることができる。
【0106】
本発明のリチウム二次電池の外形は、特に制限されないが、缶を用いた円筒型、角型、パウチ(pouch)型又はコイン(coin)型などであってもよい。
【0107】
本発明によるリチウム二次電池は、小型デバイスの電源として用いられる電池セルに用いることができるだけでなく、複数の電池セルを含む中大型電池モジュールに単位電池としても好ましく用いることができる。
【0108】
以下、具体的な実施例により本発明を具体的に説明する。
【実施例
【0109】
<実施例:リチウム二次電池の製造>
(1)非水電解質の製造
【表1】
【0110】
上記表1の組成に従って混合有機溶媒を製造し、それに上記表1の濃度となるようにリチウム塩を混合して有機溶液を製造した。非水電解質100wt%に対して、化学式1Aで表される化合物(表1の含有量)、化学式2A又は2Bで表される化合物(表1の含有量)、ビニレンカーボネート3wt%、1,3-プロパンスルトン(PS)0.5wt%、及び残部の前記有機溶液を混合して、リチウム二次電池用非水電解質を製造した。
【0111】
(2)一般のローディング電極の製造
N-メチル-2-ピロリドン(NMP)に正極活物質(LiNi0.8Co0.1Mn0.1;NCM811)、導電材(カーボンブラック)及びバインダー(ポリビニリデンフルオリド)を96.8:1.0:2.2の重量比で添加して、正極スラリーを製造した。前記正極スラリーを20μmの厚さの正極集電体であるアルミニウム(Al)薄膜に45μmの厚さで塗布及び乾燥し、その後ロールプレス(roll press)を実施して、ローディング量が2.8mAh/cmである正極を製造した。
【0112】
溶媒である水に負極活物質(グラファイト)、バインダー(SBR-CMC)及び導電材(カーボンブラック)を95.3:4.0:0.7の重量比で添加して、負極スラリーを製造した。前記負極スラリーを8μmの厚さの負極集電体である銅(Cu)薄膜に67μmの厚さで塗布及び乾燥し、その後ロールプレス(roll press)を実施して、ローディング量が3.0mAh/cmである負極を製造した。
【0113】
(3)高ローディング電極の製造
N-メチル-2-ピロリドン(NMP)に正極活物質(LiNi0.8Co0.1Mn0.1;NCM811)、導電材(カーボンブラック)及びバインダー(ポリビニリデンフルオリド)を96.8:1.0:2.2の重量比で添加して、正極スラリーを製造した。前記正極スラリーを20μmの厚さの正極集電体であるアルミニウム(Al)薄膜に76μmの厚さで塗布及び乾燥し、その後ロールプレス(roll press)を実施して、ローディング量が4.8mAh/cmである正極を製造した。
【0114】
溶媒である水に負極活物質(グラファイト)、バインダー(SBR-CMC)及び導電材(カーボンブラック)を95.3:4.0:0.7の重量比で添加して、負極スラリーを製造した。前記負極スラリーを8μmの厚さの負極集電体である銅(Cu)薄膜に107μmの厚さで塗布及び乾燥し、その後ロールプレス(roll press)を実施して、ローディング量が5.2mAh/cmである負極を製造した。
【0115】
(4)リチウム二次電池の製造
(一般のローディング電極を適用した電池の製造)
前記一般のローディング正極、無機物粒子(Al)が塗布されたポリオレフィン系多孔性分離膜、及び前記一般のローディング負極を順次積層して、電極組立体を製造した。
【0116】
パウチ型電池ケース内に前記組み立てられた電極組立体を収納し、前記(1)で製造した実施例1~8のリチウム二次電池用非水電解質をそれぞれ注液して一般のローディング電極を適用した、実施例A-1~A-8のリチウム二次電池を製造した。
【0117】
(高ローディング電極を適用した電池の製造)
前記一般のローディング正極の代わりに高ローディング正極を、一般のローディング負極の代わりに高ローディング負極を適用したことを除き、上記と同様の方法で高ローディング電極を適用した、実施例B-1~B-8のリチウム二次電池を製造した。
【0118】
<比較例:リチウム二次電池の製造>
(1)非水電解質の製造
【表2】
*MPPBFSI:1-メチル-1-(3-メトキシプロピル)ピロリジニウムビスフルオロスルホニルイミド
【0119】
上記表2の組成に従って混合有機溶媒を製造し、それに上記表2の濃度となるようにリチウム塩を混合して有機溶液を製造した。非水電解質100wt%に対して、表2による添加化合物、ビニレンカーボネート3wt%、1,3-プロパンスルトン(PS)0.5wt%、及び残部の前記有機溶液を混合して、リチウム二次電池用非水電解質を製造した。
【0120】
(2)一般のローディング電極の製造
上記実施例の一般のローディング電極の製造過程と同様の過程で正極及び負極を製造した。
【0121】
(3)高ローディング電極の製造
上記実施例の高ローディング電極の製造過程と同様の過程で正極及び負極を製造した。
【0122】
(4)リチウム二次電池の製造
(一般のローディング電極を適用した電池の製造)
前記一般のローディング正極、無機物粒子(Al)が塗布されたポリオレフィン系多孔性分離膜、及び前記一般のローディング負極を順次積層して、電極組立体を製造した。
【0123】
パウチ型電池ケース内に前記組み立てられた電極組立体を収納し、前記(1)で製造した比較例1~8のリチウム二次電池用非水電解質をそれぞれ注液して一般のローディング電極を適用した、比較例A-1~A-8のリチウム二次電池を製造した。
【0124】
(高ローディング電極を適用した電池の製造)
前記一般のローディング正極の代わりに高ローディング正極を、一般のローディング負極の代わりに高ローディング負極を適用したことを除き、上記と同様の方法で高ローディング電極を適用した、比較例B-1~B-8のリチウム二次電池を製造した。
【0125】
<実験例>
実験例1:電解質のイオン伝導度の評価
上記実施例1~5、7、8及び比較例1~3で製造された非水電解質のイオン伝導度をMETTLER TOLEDO社のSeven Excellence S700装置を用いて25℃の条件で測定した。具体的には、イオン伝導度測定用プローブ(probe)が浸るように水槽(bath)に実施例1~5、7、8及び比較例1~3の電解質をそれぞれ満たし、その後含浸されたプローブを用いてイオン伝導度を測定した。測定されたイオン伝導度の値を下記表3に記載した。
【0126】
【表3】
【0127】
上記表3の結果から、上記化学式1Aの添加剤が添加されたニトリル系電解質(実施例1~5、7、8)のイオン伝導度が化学式1Aの添加剤を投入していないニトリル系電解質(比較例1及び3)のイオン伝導度に比べて高いことが確認される。また、化学式1Aの添加剤が過量(60wt%)添加された比較例2の場合、化学式1Aの添加剤が相分離して電解質として適用しにくいことが確認される。
【0128】
実験例2:電解質の分離膜への含浸性の評価
実施例3~5、7、8及び比較例1、3、5~8で製造された非水電解質の分離膜への含浸性を直径20mm、厚さ3.2mmの2032コインセルを用いて25℃の条件で測定した。具体的には、ポリエチレン生地にAlとPVdFが両面コーティングされた分離膜を直径18mmに打抜きし、その後それぞれの電解質に24時間含浸させ、前記コインセル間に挿入してセルを組み立てた。組み立てられたコインセルをEIS装置(Biologic potentiostat)を用いて交流インピーダンスを測定し、電解質含浸分離膜のフィルムイオン伝導度を測定した。このように測定されたフィルムイオン伝導度を電解質のイオン伝導度で割ると発現率が計算される。発現率は、電解質が分離膜にどのくらい含浸されたかを示す指標であって、値が高ければ電解質の分離膜含浸に優れていることを示す。測定された発現率の値を下記表4に記載した。
【0129】
【表4】
【0130】
上記表4の結果から、化学式1Aの添加剤が添加されたニトリル系電解質(実施例3~5、7、8)の発現率が化学式1Aの添加剤が投入されていないニトリル系電解質(比較例1及び3)の発現率に比べて高いことが確認される。特に、100%ニトリル系溶媒を用い、かつ化学式1Aの添加剤を用いていない電解質(比較例1)は分離膜に全く含浸されない挙動が確認される。
【0131】
しかし、化学式1Aの添加剤を含ませた場合、100%ニトリル系溶媒が適用されても(実施例3)、従来のリチウムイオン電池に主に用いられるカーボネート系溶媒が適用された電解質(比較例5)の分離膜含浸レベル以上までも確保可能であることが本実験例により確認される。
【0132】
また、カーボネート系溶媒にピロリジニウム化合物を含ませた場合、比較例6のように含浸性が低下することが確認される。さらに、比較例7及び8の場合、フッ素系アクリレート及びメタクリレート化合物(化学式2A又は2B)を適用したにもかかわらず、化学式1Aを添加剤として用いていなかったので、含浸性が低下することが確認される。
【0133】
実験例3:電解質の正極への含浸性の評価
実施例1~5、7、8及び比較例1、3で製造された非水電解質の正極への含浸性は、接触角測定器(Drop shape analysis system,DSA100)を用いて25℃の条件で測定した。具体的には、各非水電解質5μlを前記高ローディング正極の表面に落とし、その後正極の表面と電解質滴(droplet)の角度を測定した。接触角は、電解質の正極親和度を示す指標であって、値が低ければ電解質の正極への含浸性に優れていることを示す。測定された接触角を下記表5に記載した。
【0134】
【表5】
【0135】
上記表5の結果から、化学式1Aの添加剤が添加されたニトリル系電解質(実施例1~5、7、8)の正極の接触角が化学式1Aの添加剤を含まないニトリル系電解質(比較例1及び3)の接触角に比べて低いことが確認される。特に、フッ素系アクリレート及びメタクリレート化合物(化学式2A又は化学式2B)が含まれる実施例7及び8の正極への含浸性がさらに改善されたことが分かる。これにより、ニトリル系電解質に化学式1で表される化合物が添加された場合、正極への含浸性が改善され、化学式2で表される化合物が添加された場合、その効果がさらに増大することが確認される。
【0136】
実験例4:電解質の難燃性の評価
電解質の難燃性は、炎を電解質に接触させる方法で難燃性の評価を行った。具体的には、実施例1~8及び比較例4~6で製造された非水電解質1mLをそれぞれ別のペトリディッシュに入れてライターの炎を3秒間接触させ、その後電解質の発火の有無を確認した。発火の有無は表6の通りであり、実施例5の発火評価過程を時間順に撮影した写真を図1に示した。
【0137】
【表6】
【0138】
上記表6の結果から、ニトリル系溶媒が90体積%以上含まれる電解質(実施例1~8)においては、電解質の難燃性が確保されていることが確認されるが、ニトリル系溶媒が50体積%未満含まれる電解質(比較例4~6)においては、電解質の難燃性が確保されておらず、発火が起こることが確認される。
【0139】
図1においては、実施例5の電解質が炎にさらされても発火しないことが視覚的に確認される。
【0140】
実験例5:セル抵抗の評価
実施例A-1~A-5、A-7、A-8及び比較例A-1、A-3、A-6~A-8のリチウム二次電池を24時間25℃のオーブンに保管して含浸させ、その後セル抵抗を1kHz抵抗テスター(Hioki)で測定し、その結果を下記表7に記載した。
【0141】
【表7】
【0142】
上記表7の結果から、化学式1Aの添加剤が含まれる電解質(実施例1~5、7及び8)を備えた実施例A-1~A-5、A-7及びA-8のセル抵抗が、化学式1Aの添加剤が含まれない電解質(比較例1、3、7及び8)を備えた比較例A-1、A-3、A-7及びA-8と、ニトリル系溶媒を用いず、ピロリジニウム添加剤をさらに含む電解質(比較例6)を備えた比較例A-6のセル抵抗に比べて低いことが確認される。
【0143】
特に、ニトリル系溶媒が100vol%含まれ、化学式1Aの添加剤が含まれない比較例1、7及び8の電解質を備えた比較例A-1、A-7及びA-8の場合、セル抵抗を測定できないほど抵抗が大きいことから、セルの駆動が不可能であることが確認される。これにより、ニトリル系溶媒の使用時、化学式1で表される化合物の使用がセル抵抗の減少に大きな効果があることが分かる。
【0144】
実験例6:セルの熱安全性の評価
実施例B-3、B-5及び比較例B-5のリチウム二次電池をそれぞれ25℃で0.1Cの速度で3時間SOC30%まで充電してフォーメーション工程を行い、その後24時間エージングし、次いで脱ガス工程を行った。脱ガスが終わったリチウム二次電池を25℃で0.1Cの速度で4.2VまでCC-CV(constant current-constant voltage)条件で充電し、0.1Cの速度で3.0VまでCC条件で放電した。前記充放電を1サイクルとして2サイクルの初期充放電を実施した。
【0145】
セルの熱安全性の評価は、前記初期充放電されたそれぞれのリチウム二次電池を0.1Cの速度で4.2VまでCC-CV条件で充電し、高温熱露出チャンバに入れて2℃/minの速度で120℃まで昇温してから2時間保持し、再び2℃/minの速度で150℃まで昇温してから2時間保持する方式で実施した。
【0146】
実施例B-3の評価結果は図2に、実施例B-5の評価結果は図3に、比較例B-5の評価結果は図4に示し、これらをまとめた結果は表8の通りである。
【0147】
【表8】
【0148】
図2及び図3図4との比較により、化学式1Aの含有量を同一にしても、ニトリル系溶媒を用いた場合(実施例B-3)、カーボネート系溶媒を用いた場合(比較例B-5)に比べて高温での安全性が向上することが確認される。また、カーボネート系溶媒と混用しても、ニトリル系溶媒の含有量が50vol%以上の場合、実施例B-5において見られるように優れた高温安全性を確保できることが確認される。
【0149】
実験例7:寿命特性の評価(一般のローディング電極)
実施例A-1~A-3、並びに比較例A-3及びA-6のリチウム二次電池をそれぞれ25℃で0.1Cの速度で3時間SOC30%まで充電してフォーメーション工程を行い、その後24時間エージングし、次いで脱ガス工程を行った。脱ガスが終わったリチウム二次電池を25℃で0.1Cの速度で4.2VまでCC-CV(constant current-constant voltage)条件で充電し、0.1Cの速度で3.0VまでCC条件で放電した。前記充放電を1サイクルとして2サイクルの初期充放電を実施した。
【0150】
次に、前記初期充放電されたそれぞれのリチウム二次電池を0.1Cの速度で4.2VまでCC-CV条件で充電し、0.5Cの速度で3.0VまでCC条件で放電した。前記充放電を1サイクルとして25℃で100サイクルを実施した。
【0151】
フォーメーション工程時の電圧-容量曲線を下記図5に示した。充放電サイクルの場合、各サイクル毎に放電容量を測定し、測定された値を下記式1に代入して容量維持率を算出した。その結果を下記表9に示した。
【0152】
[式1]
容量維持率(%)=(各サイクル毎の放電容量/初期充放電後の放電容量)×100
【0153】
【表9】
【0154】
図5を見ると、比較例A-3及びA-6の場合、活性化工程時に過電圧が非常に大きくかかってセルが作動しないことが確認される。これは、比較例A-3の電池が化学式1Aの添加剤を含まないニトリル系電解質を含むので、分離膜及び正極への含浸性が低いことからセルの抵抗が大きくなり、それにより、セルの駆動が不可能になったとみられる。比較例A-6の場合、電解質にピロリジニウム化合物が添加され、分離膜への含浸性が減少してセル抵抗が上昇し、それにより、セルの駆動が不可能になったことが確認される。それに対して、化学式1Aの添加剤が含まれるニトリル系電解質を適用した電池(実施例A-1~A-3)の場合、活性化工程が円滑に行われたことが確認される。
【0155】
表9を見ると、実施例A-1~A-3のセルが寿命性能に優れていることが確認される。比較例A-3及びA-6の場合、上記で説明したように、セルの駆動が不可能であり、容量維持率の測定が不可能であった。
【0156】
実験例8:寿命特性の評価(高ローディング電極)
上記実施例B-4~B-8、並びに比較例B-3、B-4及びB-6~B-8のリチウム二次電池に対して、上記実験例7と同様の過程で容量維持率を評価した。また、45℃でも同様に容量維持率を評価し、その結果は下記表10に記載した。
【0157】
【表10】
【0158】
比較例B-3及びB-6の場合、実験例7と同様に活性化工程からセルの駆動が不可能であり、寿命特性の評価を行うことができなかった。比較例B-7及びB-8の場合、フッ素系アクリレート及びメタクリレート化合物(化学式2A又は2B)が添加されたにもかかわらず、化学式1Aの添加剤が含まれていないので、電極及び分離膜への含浸性が低いことからセルの駆動が不可能であった。比較例B-4の場合、活性化工程は行われたが、表10からみられるように、実施例B-4~B-6に比べて寿命性能は大きく劣ることが確認される。比較例B-4の性能低下は、電解質がニトリル系溶媒を50vol%未満含むことにより高くなったアルミニウム腐食性に起因することが確認される。
図1
図2
図3
図4
図5