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特許7562220リチウム二次電池用非水電解液およびそれを含むリチウム二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用非水電解液およびそれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20240930BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20240930BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240930BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M4/525
H01M4/505
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023544394
(86)(22)【出願日】2022-09-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-30
(86)【国際出願番号】 KR2022014142
(87)【国際公開番号】W WO2023048473
(87)【国際公開日】2023-03-30
【審査請求日】2023-07-21
(31)【優先権主張番号】10-2021-0127159
(32)【優先日】2021-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0119103
(32)【優先日】2022-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ハ・ウン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ウ・オ
(72)【発明者】
【氏名】チュル・ヘン・イ
【審査官】佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2019-0033448(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第103326068(CN,A)
【文献】特開2002-280061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-10/0587;10/36-10/39
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム塩、非水性有機溶媒、および添加剤として下記化学式1で表される化合物を含む、リチウム二次電池用非水電解液:
【化1】
前記化学式1中、
Rは、置換もしくは非置換の炭素数1~5のアルキレン基である。
【請求項2】
前記化学式1中、Rは、置換もしくは非置換の炭素数1~3のアルキレン基である、請求項1に記載のリチウム二次電池用非水電解液。
【請求項3】
前記置換は、ハロゲン、ヒドロキシ基(-OH)、カルボキシル基(-COOH)、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数3~8のシクロアルキル基、炭素数2~6のヘテロシクロアルキル基、炭素数6~10のアリール基、および炭素数4~10のヘテロアリール基の中から選択された少なくとも1つの置換基からなる、請求項1に記載のリチウム二次電池用非水電解液。
【請求項4】
前記化学式1で表される化合物は、下記化学式1aで表される化合物を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用非水電解液:
【化2】
【請求項5】
前記化学式1で表される化合物は、リチウム二次電池用非水電解液の全重量を基準として0.1重量%~5.0重量%で含まれる、請求項1に記載のリチウム二次電池用非水電解液。
【請求項6】
前記化学式1で表される化合物は、リチウム二次電池用非水電解液の全重量を基準として0.5重量%~4.0重量%で含まれる、請求項5に記載のリチウム二次電池用非水電解液。
【請求項7】
前記リチウム二次電池用非水電解液は、環状カーボネート系化合物、ハロゲン置換されたカーボネート系化合物、スルトン系化合物、サルフェート系化合物、ホスフェート系またはホスファイト系化合物、ボレート系化合物、ベンゼン系化合物、アミン系化合物、イミダゾール系化合物、シラン系化合物、およびリチウム塩系化合物からなる群から選択された少なくとも1つのその他の添加剤をさらに含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用非水電解液。
【請求項8】
負極活物質を含む負極と、
正極活物質を含む正極と、
前記負極と前記正極との間に介在したセパレータと、
非水電解液と、
を含み、
前記非水電解液は、請求項1から7のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用非水電解液を含む、リチウム二次電池。
【請求項9】
前記正極活物質は、リチウム-コバルト系酸化物、リチウム-マンガン系酸化物、リチウム-ニッケル-マンガン-コバルト系酸化物、およびリチウム-ニッケル-コバルト-遷移金属(M)酸化物からなる群から選択された少なくとも1種を含む、請求項8に記載のリチウム二次電池。
【請求項10】
前記正極活物質は、ニッケル含有量が55atm%以上のリチウム-ニッケル-マンガン-コバルト系酸化物、およびニッケル含有量が55atm%以上のリチウム-ニッケル-コバルト-遷移金属(M)酸化物の中から選択された少なくとも1つを含む、請求項8に記載のリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年09月27日付けの韓国特許出願第10-2021-0127159号および2022年09月21日付けの韓国特許出願第10-2022-0119103号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
本発明は、リチウム二次電池用非水電解液およびそれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
現代社会で電気エネルギーに対する依存度が益々高くなるにつれ、電気エネルギーの生産量がさらに増加している。特に、電気エネルギーの生産時に環境問題などを引き起こさない再生可能エネルギー発電が次世代発電システムとして脚光を浴びている。このような再生可能エネルギーの場合、間歇的な発電特性を示すため、電力を安定的に供給するためには、大容量の電力貯蔵装置が必須に求められる。特に、近年、高仕様が実現された電気自動車を開発するために、より軽くかつ小さい体積の高仕様の電力貯蔵装置に対する研究が活発に進められている。
【0003】
現在商用化された最も高いエネルギー密度を示す電力貯蔵装置としては、リチウムイオン電池が脚光を浴びている。
前記リチウムイオン電池は、リチウムを含有している遷移金属酸化物からなる正極、リチウムを貯蔵できる負極、リチウム塩を含有した有機溶媒を含む電解液、およびセパレータで構成されている。
【0004】
そのうち正極の場合、遷移金属の酸化還元反応によりエネルギーを貯蔵することになるが、これは、すなわち、遷移金属が正極素材に必須に含まれなければならないということに帰結する。
【0005】
一方、リチウム二次電池は、高温環境にさらされるか、または充放電が繰り返される場合、電解質の酸化および還元分解が起こり、セルの内部でガスの発生が誘発され、電池性能が劣化するという問題がある。
【0006】
特に、高含量ニッケル(High-Ni)正極を適用した二次電池の場合、特定の電圧以上で正極から形成された反応性酸素化合物により、電解質中の主溶媒として用いられるカーボネート溶媒が分解されて多量のガスが発生し、その結果、カーボネート含量の枯渇およびそれに応じたイオン伝導度の低下を引き起こすため、電池性能が大幅に劣化するという短所がある。
【0007】
さらに、電解質塩の分解により形成されたHFなどのルイス酸が電極-電解質の界面に作られた不動態被膜を侵食することで、正極から遷移金属の溶出を誘発して正極の構造安定性を低下し、溶出した遷移金属が負極の表面に電着(electro-deposition)して電解質溶媒の分解を促進させることでガスの発生を加速化し、電池の容量維持率を低下させる。
【0008】
したがって、このような種々の問題を改善するために、電極の表面に安定した被膜を形成し、溶出した遷移金属の負極への電着や、イオン置換などを抑制できる非水電解液に対する開発が必要となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような問題を解決するためのものであり、電極の表面に安定した被膜を形成できる添加剤を含むリチウム二次電池用非水電解液を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、前記リチウム二次電池用非水電解液を含むことで、高温耐久性が向上したリチウム二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明の一実施形態は、
リチウム塩、非水性有機溶媒、および添加剤として下記化学式1で表される化合物を含む、リチウム二次電池用非水電解液を提供する。
【0012】
【化1】
【0013】
前記化学式1中、
Rは、置換もしくは非置換の炭素数1~5のアルキレン基である。
【0014】
一方、本発明の他の一実施形態は、
負極活物質を含む負極、正極活物質を含む正極、前記負極と前記正極との間に介在したセパレータ、および非水電解液を含み、
前記非水電解液は、本発明のリチウム二次電池用非水電解液を含む、リチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の非水電解液に含まれる化学式1で表される化合物は、構造中に負極の表面で還元されやすいプロパルギル基およびカーボネート基(-OC(=O)O-)のような官能基を含んでおり、負極の表面に堅固なSEIまたは不動態被膜を形成することができる。また、前記化学式1で表される化合物は、構造中にホスファイト基(-PO)を含んでいるため、負極だけでなく、正極の表面に堅固な正極-電解質中間相(CEI)保護層を形成することができる。したがって、正極から遷移金属が溶出するのを効果的に抑制することができ、高温での正極と電解液の副反応を抑制することができ、リチウム塩の分解産物により引き起こされるSEI被膜の劣化を低減させることができる。
【0016】
このように、前記化学式1の化合物を含む本発明の非水電解液を用いると、高温貯蔵特性およびサイクル特性が向上したリチウム二次電池を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
本明細書および請求の範囲で用いられている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念で解釈すべきである。
【0018】
一般的に、リチウム二次電池は、初期充放電時に非水電解液が分解されることで、正極および負極の表面に不動態能を有する被膜を形成して高温貯蔵特性を確保することができる。しかし、前記被膜は、リチウムイオン電池に広く用いられるリチウム塩(LiPFなど)の熱分解により生成されるHFおよびPFのようなルイス酸物質により劣化し得る。すなわち、ルイス酸物質の攻撃により正極から遷移金属が溶出することで正極構造が崩壊し、この際、反応性の大きい活性酸素化合物が発生して電解液を分解させる原因となる。または、電解液を介して負極に移動した遷移金属は、負極に電着して負極の自己放電を引き起こし、負極に不動態能を付与するSEI(solid electrolyte interphase)膜を破壊するため、追加の電解液の分解反応を促進させ、負極の界面抵抗を増加させる。
【0019】
本発明においては、分子構造中にプロパルギル基(-C≡C-)とホスファイト基(-PO)およびカーボネート基(-OC(=O)O-)を含む化合物を添加剤として含むことで、SEIの形成および強化効果が向上したリチウム二次電池用非水電解液およびそれを含むリチウム二次電池を提供しようとする。特に、正極成分として高含量ニッケル(High-Ni)系正極活物質を導入する場合には、熱安定性が急激に低下し得るが、本発明においては、下記化学式1で表される化合物を添加剤として含む非水電解液を併用することで、このような問題を解消可能であることを確認した。
【0020】
リチウム二次電池用非水電解液
具体的に、本発明の一実施形態は、
リチウム塩、非水性有機溶媒、および添加剤として下記化学式1で表される化合物を含む、リチウム二次電池用非水電解液を提供する。
【0021】
【化2】
【0022】
前記化学式1中、
Rは、置換もしくは非置換の炭素数1~5のアルキレン基である。
【0023】
(1)リチウム塩
先ず、リチウム塩について説明すれば次のとおりである。
前記リチウム塩は、リチウム二次電池用非水電解液に通常用いられるものが制限なく用いられてもよく、例えば、カチオンとしては、Liを含み、アニオンとしては、F、Cl、Br、I、NO 、N(CN) 、BF 、ClO 、B10Cl10 、AlCl 、AlO 、PF 、CFSO 、CHCO 、CFCO 、AsF 、SbF 、CHSO 、(CFCFSO、(CFSO、(FSO、(PO、(FSO)(POF)N、BF 、BC 、PF 、PF 、(CFPF 、(CFPF 、(CFPF 、(CFPF、(CF、CSO 、CFCFSO 、CFCF(CFCO、(CFSOCH、CF(CFSO 、およびSCNからなる群から選択された少なくとも1つを含んでもよい。
【0024】
具体的に、前記リチウム塩は、LiCl、LiBr、LiI、LiBF、LiClO、LiB10Cl10、LiAlCl、LiAlO、LiPF、LiCFSO、LiCHCO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiCHSO、LiN(SOF)(lithium bis(fluorosulfonyl)imide、LiFSI)、LiN(SOCFCF(lithium bis(pentafluoroethanesulfonyl)imide、LiBETI)、およびLiN(SOCF(lithium bis(trifluoromethanesulfonyl)imide、LiTFSI)からなる群から選択された単一物または2種以上の混合物を含んでもよく、上述したリチウム塩の他にも、リチウム二次電池の電解液に通常用いられるリチウム塩が制限なく用いられてもよい。具体的に、前記リチウム塩は、LiBF、LiPF、LiN(SOF)、およびLiN(SOCFのうち少なくとも1つを含んでもよく、より具体的に、LiPFを含んでもよい。
【0025】
前記リチウム塩は、通常使用可能な範囲内で適宜変更してもよいが、最適な電極表面の副食防止用被膜の形成効果を得るために、電解液中に0.8M~3.0Mの濃度、具体的には1.0M~3.0Mの濃度で含まれてもよい。前記リチウム塩の濃度が前記範囲を満たす場合、最適な含浸性を実現できるように非水電解液の粘度を制御することができ、リチウムイオンの移動性を向上させてリチウム二次電池の容量特性およびサイクル特性の改善効果を得ることができる。
【0026】
(2)非水性有機溶媒
また、非水性有機溶媒に関する説明は次のとおりである。
前記非水性有機溶媒としては、非水電解液に通常用いられる多様な有機溶媒が制限なく用いられてもよいが、二次電池の充放電過程で酸化反応などによる分解を最小化することができ、添加剤とともに目的とする特性を発揮することができるものであれば、その種類に制限がない。
【0027】
具体的に、前記非水性有機溶媒は、環状カーボネート系化合物、直鎖状カーボネート系化合物、直鎖状エステル系化合物、またはこれらの混合物を含んでもよい。
【0028】
前記環状カーボネート系化合物は、誘電率が高く、非水電解液中のリチウム塩をよく解離させる高粘度化合物であり、その具体的な例としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、1,2-ブチレンカーボネート、2,3-ブチレンカーボネート、1,2-ペンチレンカーボネート、2,3-ペンチレンカーボネート、およびビニレンカーボネートからなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含んでもよく、中でも、エチレンカーボネートを含んでもよい。
【0029】
前記直鎖状カーボネート系化合物は、低粘度および低誘電率を有する化合物であり、その具体的な例としては、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate、DMC)、ジエチルカーボネート(diethyl carbonate、DEC)、ジプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネート、およびエチルプロピルカーボネートからなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含んでもよく、具体的に、エチルメチルカーボネート(EMC)を含んでもよい。
【0030】
本発明においては、前記環状カーボネート系化合物と直鎖状カーボネート系化合物を混合して用いてもよく、この場合、前記環状カーボネート系化合物と直鎖状カーボネート系化合物の混合比は10:90~80:20の体積比、具体的には30:70~50:50の体積比であってもよい。
【0031】
前記環状カーボネート系化合物と直鎖状カーボネート系化合物の混合比が前記範囲を満たす場合、さらに高い電気伝導率を有する非水電解液を製造することができる。
【0032】
また、本発明においては、前記カーボネート系化合物の短所を改善するとともに、高温および高電圧駆動時の安全性を高めるために、直鎖状エステル系化合物をさらに混合してもよい。
【0033】
前記直鎖状エステル系化合物は、環状カーボネート系化合物に比べて相対的に高温および高電圧駆動時に安定性が高い化合物であり、高温駆動時にガスの発生を引き起こす環状カーボネート系化合物の短所を改善するとともに、高いイオン伝導率を実現することができる。
【0034】
前記直鎖状エステル系化合物としては、その具体的な例として、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、およびブチルプロピオネートからなる群から選択される少なくとも1つを含んでもよく、具体的に、エチルプロピオネートおよびプロピルプロピオネートのうち少なくとも1つを含んでもよい。
【0035】
また、本発明の非水電解液は、必要に応じて、環状エステル系化合物をさらに含んでもよい。
また、前記環状エステル系化合物は、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン、σ-バレロラクトン、およびε-カプロラクトンからなる群から選択される少なくとも1つを含んでもよい。
【0036】
一方、前記本発明のリチウム二次電池用非水電解液において、非水性有機溶媒を除いた他の構成成分、例えば、リチウム塩および添加剤などを除いた残部は、別に言及しない限り、全て非水性有機溶媒であってもよい。
【0037】
(3)添加剤
本発明のリチウム二次電池用非水電解液は、添加剤として下記化学式1で表される化合物を含んでもよい。
【0038】
【化3】
【0039】
前記化学式1中、
Rは、置換もしくは非置換の炭素数1~5のアルキレン基である。
【0040】
前記化学式1で表される化合物は、負極の表面で還元されやすい官能基としてプロパルギル基を含んでおり、負極の表面に不動態能の高いSEI膜を形成することができるため、電解液の追加の還元分解反応による黒鉛系負極および/またはシリコン系負極の自己放電反応を防止できるだけでなく、正極から溶出した遷移金属イオンが負極の表面に電着するのを抑制して負極自体の高温耐久性を改善するとともに、内部短絡や抵抗増加を抑制することができる。
【0041】
また、前記化学式1で表される化合物は、分子構造中にカーボネート基を含んでおり、負極での還元時に電子に富む化学物質がカーボネート基の炭素を容易に攻撃し、負極の表面にさらに堅固なSEIを形成することができる。特に、本発明の化学式1で表される化合物は、構造中にホスファイト基(-PO)を共に含んでおり、PO-が正極構造の遷移金属に吸着することで、正極の表面にさらに安定した不動態被膜を形成することができる。
【0042】
具体的に、前記化学式1中、Rは、置換もしくは非置換の炭素数1~3のアルキレン基であってもよい。
この際、前記置換は、ハロゲン、ヒドロキシ基(-OH)、カルボキシル基(-COOH)、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数3~8のシクロアルキル基、炭素数2~6のヘテロシクロアルキル基、炭素数6~10のアリール基、および炭素数4~10のヘテロアリール基の中から選択された少なくとも1つの置換基からなってもよく、具体的に、炭素数1~6のアルキル基からなってもよい。
【0043】
また、前記化学式1中、Rは、構造中に酸素原子、窒素原子、硫黄原子、およびリン(P)原子のうち少なくとも1つをさらに含んでもよい。
具体的に、前記化学式1で表される化合物は、下記化学式1aで表される化合物であってもよい。
【0044】
【化4】
【0045】
前記化学式1で表される化合物は、非水電解液の全重量を基準として0.1重量%~5.0重量%で含まれてもよい。
前記化学式1で表される化合物が前記範囲で含まれると、添加剤による副反応、初期容量の低下、および抵抗増加などの短所を最大限抑制しながらも、電解質塩の分解産物を効果的に除去するとともに、電極の表面に堅固な不動態被膜を形成することができる。
【0046】
すなわち、前記化学式1で表される化合物が0.1重量%以上で含まれると、安定した被膜を形成しながらも、電池の耐久性の評価時に低い抵抗増加率および体積増加率を維持することができる。また、前記化学式1で表される化合物が5.0重量%以下で含まれると、余剰の化合物による電解液の粘度増加を防止するとともに、電池内のイオンの移動度を改善することができ、過度な被膜の形成を抑制して電池抵抗の増加を効果的に防止することができるため、容量およびサイクル特性の低下を防止することができる。
【0047】
具体的に、前記化学式1で表される化合物は、非水電解液の全重量を基準として5.0重量%未満、より具体的には0.5重量%~4.0重量%、好ましくは0.5重量%~3.0重量%で含まれると、諸性能がさらに向上した二次電池を製造することができる。
【0048】
(4)その他の添加剤
また、本発明の非水電解液は、高出力の環境で非水電解液が分解されて負極崩壊が誘発されるのを防止したり、低温高率放電特性、高温安定性、過充電の防止、高温での電池膨張の抑制効果などをさらに向上したりするために、その他の添加剤をさらに含んでもよい。
【0049】
このようなその他の添加剤の例としては、環状カーボネート系化合物、ハロゲン置換されたカーボネート系化合物、スルトン系化合物、サルフェート系化合物、ホスフェート系またはホスファイト系化合物、ボレート系化合物、ベンゼン系化合物、アミン系化合物、イミダゾール系化合物、シラン系化合物、およびリチウム塩系化合物からなる群から選択された少なくとも1つが挙げられる。
【0050】
前記環状カーボネート系化合物としては、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)などが挙げられる。
前記ハロゲン置換されたカーボネート系化合物としては、フルオロエチレンカーボネート(FEC)などが挙げられる。
【0051】
前記スルトン系化合物は、例えば、1,3-プロパンスルトン(PS)、1,4-ブタンスルトン、エテンスルトン、1,3-プロペンスルトン(PRS)、1,4-ブテンスルトン、および1-メチル-1,3-プロペンスルトンからなる群から選択された少なくとも1つの化合物であってもよい。
【0052】
前記サルフェート系化合物は、例えば、エチレンサルフェート(Ethylene Sulfate;Esa)、トリメチレンサルフェート(Trimethylene sulfate;TMS)、またはメチルトリメチレンサルフェート(Methyl trimethylene sulfate;MTMS)などであってもよい。
【0053】
前記ホスフェート系またはホスファイト系化合物は、例えば、リチウムジフルオロ(ビスオキサラト)ホスフェート、リチウムジフルオロホスフェート、リチウムテトラフルオロオキサラトホスフェート、トリス(トリメチルシリル)ホスフェート、トリス(トリメチルシリル)ホスファイト、トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスフェート、およびトリス(トリフルオロエチル)ホスファイトからなる群から選択された1種以上の化合物であってもよい。
【0054】
前記ボレート系化合物としては、テトラフェニルボレート、負極の表面に被膜を形成できるリチウムオキサリルジフルオロボレート(LiODFB)、リチウムビスオキサレートボレート(LiB(C、LiBOB)などが挙げられる。
【0055】
前記ベンゼン系化合物は、フルオロベンゼンなどであってもよく、前記アミン系化合物としては、トリエタノールアミンまたはエチレンジアミンが挙げられる。
【0056】
前記イミダゾール系化合物としては、リチウム2-トリフルオロメチル-4,5-ジシアノイミダゾール(lithium 2-trifluoromethyl-4,5-dicyanoimidazole)、1-メチル-5-プロパルギルイミダゾール(1-methyl-5-propargyl imidazole)、プロパルギル1H-イミダゾール-1-カルボキシレート(Propargyl 1H-imidazole-1-carboxylate)、1-ビニルイミダゾール(1-vinyl imidazole)、またはアリル1H-イミダゾール-1-カルボキシレート(Allyl 1H-imidazole-1-carboxylate)などが挙げられる。
【0057】
前記シラン系化合物は、テトラビニルシランなどであってもよい。
前記リチウム塩系化合物は、前記非水電解液に含まれるリチウム塩とは異なる化合物であって、LiPO、LiSOF、またはLiBFなどが挙げられる。
【0058】
このようなその他の添加剤の中でも、初期活性化工程時に負極の表面にさらに堅固なSEI被膜を形成するために、負極の表面に被膜形成効果に優れたその他の添加剤、具体的に、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、1,3-プロパンスルトン、エチレンサルフェート、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、LiBF、およびリチウムジフルオロホスフェート(LiPO)からなる群から選択された少なくとも1つを含んでもよい。
【0059】
前記その他の添加剤は、2種以上の化合物を混用して用いてもよく、非水電解液の全重量を基準として0.01~30重量%、具体的には0.01~20重量%で含まれてもよく、好ましくは0.05~15重量%で含まれてもよい。前記その他の添加剤の含量が前記範囲である場合、高温貯蔵およびサイクル特性が改善され、過量添加による電池の副反応が防止され、未反応物の残存または析出が防止できるため好ましい。
【0060】
リチウム二次電池
また、本発明の他の一実施形態は、本発明のリチウム二次電池用非水電解液を含むリチウム二次電池を提供する。
【0061】
具体的に、前記リチウム二次電池は、正極、負極、前記正極と負極の間に介在したセパレータ、および非水電解液を含み、前記非水電解液は、本発明のリチウム二次電池用非水電解液を含む、リチウム二次電池を提供する。
【0062】
一方、本発明のリチウム二次電池は、正極、負極、および正極と負極との間にセパレータが順次積層されている電極組立体を形成して電池ケースに収納した後、本発明の非水電解液を投入して製造することができる。
【0063】
このような本発明のリチウム二次電池を製造する方法は、当該技術分野で周知の通常の方法により製造されて適用されてもよく、具体的には後述するとおりである。
【0064】
(1)正極
本発明に係る正極は、正極活物質を含む正極活物質層を含んでもよく、必要に応じて、前記正極活物質層は、導電材および/またはバインダーをさらに含んでもよい。
【0065】
前記正極活物質は、リチウムの可逆的なインターカレーションおよびデインターカレーションが可能な化合物であり、具体的には、コバルト、マンガン、ニッケル、またはアルミニウムのような1種以上の金属と、リチウムとを含むリチウム複合金属酸化物を含んでもよい。
【0066】
具体的に、前記正極活物質は、リチウム-コバルト系酸化物(例えば、LiCoOなど)、リチウム-マンガン系酸化物(例えば、LiMnO、LiMnなど)、リチウム-ニッケル系酸化物(例えば、LiNiOなど)、リチウム-ニッケル-マンガン系酸化物(例えば、LiNi1-YMn(ここで、0<Y<1)、LiMn2-zNi(ここで、0<Z<2)など)、リチウム-ニッケル-コバルト系酸化物(例えば、LiNi1-Y1CoY1(ここで、0<Y1<1)など)、リチウム-マンガン-コバルト系酸化物(例えば、LiCo1-Y2MnY2(ここで、0<Y2<1)、LiMn2-z1Coz1(ここで、0<Z1<2)など)、リチウム-ニッケル-マンガン-コバルト系酸化物(例えば、Li(NiCoMnr1)O(ここで、0<p<1、0<q<1、0<r1<1、p+q+r1=1)、またはLi(Nip1Coq1Mnr2)O(ここで、0<p1<2、0<q1<2、0<r2<2、p1+q1+r2=2)など)、リチウム-ニッケル-コバルト-遷移金属(M)酸化物(例えば、Li(Nip2Coq2Mnr3S2)O(ここで、Mは、Al、Fe、V、Cr、Ti、Ta、Mg、Ti、およびMoからなる群から選択され、p2、q2、r3、およびs2は、それぞれ独立した元素の原子分率であって、0<p2<1、0<q2<1、0<r3<1、0<s2<1、p2+q2+r3+s2=1である))などを含んでもよく、これらのいずれか1つまたは2つ以上の化合物が含まれてもよい。
【0067】
中でも、電池の容量特性および安全性を向上させるという点で、前記正極活物質は、リチウム-コバルト系酸化物、リチウム-マンガン系酸化物、リチウム-ニッケル-マンガン-コバルト系酸化物、およびリチウム-ニッケル-コバルト-遷移金属(M)酸化物からなる群から選択された少なくとも1種を含んでもよい。
【0068】
具体的に、前記正極活物質は、ニッケル含有量が55atm%以上のリチウム-ニッケル-マンガン-コバルト系酸化物、およびニッケル含有量が55atm%以上のリチウム-ニッケル-コバルト-遷移金属(M)酸化物の中から選択された少なくとも1種を含んでもよい。具体的に、前記正極活物質は、下記化学式2で表されるリチウム-ニッケル-マンガン-コバルト系酸化物を含んでもよい。
【0069】
[化学式2]
Li(NiCoMn)O
【0070】
前記化学式2中、
Mは、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、またはMoであり、
a、b、c、およびdは、それぞれ独立した元素の原子分率であって、
0.55≦a<1、0<b≦0.3、0<c≦0.3、0≦d≦0.1、a+b+c+d=1である。
【0071】
具体的に、前記a、b、c、およびdは、それぞれ0.60≦a≦0.95、0.01≦b≦0.20、0.01≦c≦0.20、0≦d≦0.05であってもよい。
【0072】
より具体的に、a、b、c、およびdは、それぞれ0.80≦a≦0.95、0.02≦b≦0.15、0.02≦c≦0.15、0≦d≦0.03であってもよい。
【0073】
具体的に、前記正極活物質は、その代表的な例として、Li(Ni0.6Mn0.2Co0.2)O、Li(Ni0.65Mn0.2Co0.15)O、Li(Ni0.7Mn0.2Co0.1)O、Li(Ni0.8Mn0.1Co0.1)O、およびLi(Ni0.85Co0.05Mn0.08Al0.02)Oからなる群から選択された少なくとも1種が挙げられる。
【0074】
一方、リチウム遷移金属酸化物としてNiの含量が0.55を超過する高含量ニッケル(High-Ni)を適用する場合、Li+1イオンとNi+2イオンの大きさが類似するため、充放電過程で前記正極活物質の層状構造内でLi+1イオンとNi+2イオンの位置が変わるカチオン混合(cation mixing)現象が発生する。すなわち、正極活物質中に含まれたNiの酸化数の変動に応じて高温などの環境でd軌道を有するニッケル遷移金属が配位結合時に正八面体構造を有しなければならないが、外部のエネルギー供給により、エネルギーレベルの順序が変わるか、または酸化数が変動する不均一化反応によりねじれた八面体を形成することになり、正極活物質の結晶構造の変形および崩壊をもたらす。さらに、高温貯蔵時に正極活物質と電解液の副反応により正極活物質から遷移金属、特にニッケル金属が溶出するまた他の副反応が引き起こされることにより、電解液の枯渇とともに正極活物質の構造崩壊による二次電池の諸性能が低下する。
【0075】
本発明においては、特定の構成の添加剤を含む非水電解液と、正極活物質として高含量ニッケル(High-Ni)遷移金属酸化物を含む正極とを共に用いることで、このような問題を改善することができる。すなわち、本発明の非水電解液により正極の表面に堅固なイオン伝導性被膜が形成され、Li+1イオンとNi+2イオンのカチオン混合現象を抑制し、正極と電解液との副反応、金属溶出現象などを効果的に抑制して高容量電極の構造的不安定性を緩和させることができる。したがって、リチウム二次電池の容量確保のための十分なニッケル遷移金属量を確保することができるため、エネルギー密度を高めて出力特性を向上させることができる。
【0076】
前記正極活物質は、正極活物質層中に70重量%~99重量%、具体的には75重量%~99重量%で含まれてもよい。この際、前記正極活物質の含量が70重量%以下である場合、エネルギー密度が低くなって容量が低下し得る。
【0077】
前記導電材は、当該電池に化学的変化を誘発せず、かつ、導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、またはサーマルブラックなどの炭素粉末;結晶構造が非常に発達した天然黒鉛、人造黒鉛、またはグラファイトなどの黒鉛粉末;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン粉末、アルミニウム粉末、ニッケル粉末などの導電性粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが用いられてもよい。
前記導電材は、通常、正極活物質層中に1~30重量%で添加される。
【0078】
前記バインダーは、正極活物質粒子間の付着および正極活物質と集電体との接着力を向上させる役割をする成分であり、通常、正極活物質層中に1~30重量%で添加される。このようなバインダーの例としては、ポリビニリデンフルオライド(polyvinylidene fluoride、PVDF)またはポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene、PTFE)を含むフッ素樹脂系バインダー;スチレン-ブタジエンゴム(styrene butadiene rubber、SBR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、スチレン-イソプレンゴムを含むゴム系バインダー;カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロースを含むセルロース系バインダー;ポリビニルアルコールを含むポリアルコール系バインダー;ポリエチレン、ポリプロピレンを含むポリオレフィン系バインダー;ポリイミド系バインダー;ポリエステル系バインダー;およびシラン系バインダーなどが挙げられる。
【0079】
上記のような本発明の正極は、当該技術分野で周知の正極の製造方法により製造されてもよい。例えば、前記正極は、正極活物質、バインダー、および/または導電材を溶媒中に溶解または分散させて製造した正極スラリーを正極集電体上に塗布した後、乾燥および圧延して正極活物質層を形成する方法、または前記正極活物質層を別の支持体上にキャスティングした後、支持体を剥離して得たフィルムを正極集電体上にラミネートする方法などにより製造されてもよい。
【0080】
前記正極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発せず、かつ、導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムやステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものが用いられてもよい。
【0081】
前記溶媒は、NMP(N-メチル-2-ピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidone))などの有機溶媒を含んでもよく、前記正極活物質、および選択的にバインダーおよび導電材などを含む際に好ましい粘度になる量で用いられてもよい。例えば、正極活物質、および選択的にバインダーおよび導電材を含む活物質スラリー中の固形分濃度が10重量%~90重量%、好ましくは30重量%~80重量%となるように含まれてもよい。
【0082】
(2)負極
次に、負極について説明する。
本発明に係る負極は、負極活物質を含む負極活物質層を含み、前記負極活物質層は、必要に応じて、導電材および/またはバインダーをさらに含んでもよい。
【0083】
前記負極活物質は、リチウム金属、リチウムイオンを可逆的にインターカレーション/デインターカレーションできる炭素物質、金属またはこれらの金属とリチウムの合金、金属複合酸化物、リチウムをドープおよび脱ドープできる物質、および遷移金属酸化物からなる群から選択された少なくとも1つ以上を含んでもよい。
【0084】
前記リチウムイオンを可逆的にインターカレーション/デインターカレーションできる炭素物質としては、リチウムイオン二次電池に一般的に用いられる炭素系負極活物質であれば特に制限なく用いてもよく、その代表的な例としては、結晶質炭素、非晶質炭素、またはこれらを共に用いてもよい。前記結晶質炭素の例としては、無定形、板状、鱗片状(flake)、球状、または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛のような黒鉛が挙げられ、前記非晶質炭素の例としては、ソフトカーボン(soft carbon:低温焼成炭素)またはハードカーボン(hard carbon)、メソフェーズピッチ炭化物、焼成コークスなどが挙げられる。
【0085】
前記金属またはこれらの金属とリチウムの合金としては、Cu、Ni、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Si、Sb、Pb、In、Zn、Ba、Ra、Ge、Al、およびSnからなる群から選択される金属またはこれらの金属とリチウムの合金が用いられてもよい。
【0086】
前記金属複合酸化物としては、PbO、PbO、Pb、Pb、Sb、Sb、Sb、GeO、GeO、Bi、Bi、Bi、LiFe(0≦x≦1)、LiWO(0≦x≦1)、およびSnMe1-xMe’(Me:Mn、Fe、Pb、Ge;Me’:Al、B、P、Si、周期律表の1族、2族、3族元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)からなる群から選択されるものが用いられてもよい。
【0087】
前記リチウムをドープおよび脱ドープできる物質としては、Si、SiO(0<x≦2)、Si-Y合金(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される元素であり、Siではない)、Sn、SnO、Sn-Y(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される元素であり、Snではない)などが挙げられ、また、これらのうち少なくとも1つとSiOを混合して用いてもよい。前記元素Yは、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Po、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。
前記遷移金属酸化物としては、リチウム含有チタン複合酸化物(LTO)、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物などが挙げられる。
【0088】
一実施形態によると、本発明の負極活物質は、炭素系負極活物質、または前記炭素系負極活物質とともにシリコン系負極活物質を含んで用いてもよい。
前記負極活物質は、負極活物質層中に80重量%~99重量%で含まれてもよい。
【0089】
前記導電材は、負極活物質の導電性をさらに向上させるための成分であり、負極活物質層中に1~20重量%で添加されてもよい。このような導電材は、当該電池に化学的変化を誘発せず、かつ、導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン粉末、アルミニウム粉末、ニッケル粉末などの導電性粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが用いられてもよい。
【0090】
前記バインダーは、導電材、活物質、および集電体間の結合に助力する成分であり、通常、負極活物質層中に1~30重量%で添加される。このようなバインダーの例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含むフッ素樹脂系バインダー;スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、スチレン-イソプレンゴムを含むゴム系バインダー;カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロースを含むセルロース系バインダー;ポリビニルアルコールを含むポリアルコール系バインダー;ポリエチレン、ポリプロピレンを含むポリオレフィン系バインダー;ポリイミド系バインダー;ポリエステル系バインダー;およびシラン系バインダーなどが挙げられる。
【0091】
前記負極は、当該技術分野で周知の負極の製造方法により製造されてもよい。例えば、前記負極は、負極集電体上に、負極活物質と、選択的にバインダーおよび導電材を溶媒中に溶解または分散させて製造した負極活物質スラリーを塗布し、圧延、乾燥して負極活物質層を形成する方法、または前記負極活物質層を別の支持体上にキャスティングした後、支持体を剥離させて得たフィルムを負極集電体上にラミネートすることで製造されてもよい。
【0092】
前記負極集電体は、一般的に3~500μmの厚さを有する。このような負極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発せず、かつ、高い導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが用いられてもよい。また、正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させてもよく、フィルム、シート、箔、網、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態で用いられてもよい。
【0093】
前記溶媒は、水またはNMP、アルコールなどの有機溶媒を含んでもよく、前記負極活物質、および選択的にバインダーおよび導電材などを含む際に好ましい粘度になる量で用いられてもよい。例えば、負極活物質、および選択的にバインダーおよび導電材を含む活物質スラリー中の固形分濃度が50重量%~75重量%、好ましくは40重量%~70重量%となるように含まれてもよい。
【0094】
(3)セパレータ
本発明のリチウム二次電池に含まれる前記セパレータは、一般的に用いられる通常の多孔性高分子フィルム、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体、およびエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子から製造した多孔性高分子フィルムを単独でまたはこれらを積層して用いてもよく、または通常の多孔性不織布、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布を用いてもよいが、これに限定されない。
【0095】
本発明に係るリチウム二次電池の外形は特に制限されないが、缶を用いた円筒型、角型、パウチ(pouch)型、またはコイン(coin)型などであってもよい。
【0096】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて詳しく説明する。ただし、本発明に係る実施例は種々の他の形態に変形してもよく、本発明の範囲が以下に記述する実施例に限定されるものと解釈されてはならない。本発明の実施例は、当業界における平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【実施例
【0097】
実施例1.
(リチウム二次電池用非水電解液の製造)
エチレンカーボネート(EC)およびエチルメチルカーボネート(EMC)を30:70の体積比で混合した有機溶媒にLiPFが1.0Mとなるように溶解した後、化学式1aで表される化合物0.1重量%、その他の添加剤としてビニレンカーボネート(VC)0.5重量%、1,3-プロパンスルトン(PS)0.5重量%、およびエチレンサルフェート1.0重量%となるように添加し、リチウム二次電池用非水電解液を製造した(下記表1を参照)。
【0098】
(二次電池の製造)
正極活物質粒子(Li(Ni0.85Co0.05Mn0.08Al0.02)O)、導電材としてカーボンブラック、およびバインダーとしてポリビニリデンフルオライドを97.5:1:1.5の重量比で、溶剤であるN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に添加し、正極スラリー(固形分含量75.0重量%)を製造した。前記正極スラリーを厚さ15μmの正極集電体(Al薄膜)に塗布して乾燥し、ロールプレス(roll press)を行い、正極を製造した。
【0099】
負極活物質(グラファイト)、バインダー(SBR-CMC)、および導電材(カーボンブラック)を95:3.5:1.5の重量比で、溶媒である水に添加し、負極スラリー(固形分含量:60重量%)を製造した。前記負極スラリーを6μm厚さの負極集電体である銅(Cu)薄膜に塗布および乾燥した後、ロールプレス(roll press)を行い、負極を製造した。
【0100】
前記製造された正極と負極との間に多孔性セパレータポリプロピレンを介在して電極組立体を製造した後、電池ケースに収納し、前記製造されたリチウム二次電池用非水電解液を注液し、リチウム二次電池を製造した。
【0101】
実施例2.
非水性有機溶媒にLiPFが1.0Mとなるように溶解した後、化学式1aで表される化合物0.5重量%、その他の添加剤としてビニレンカーボネート(VC)0.5重量%、1,3-プロパンスルトン(PS)0.5重量%、およびエチレンサルフェート1重量%となるように添加して非水電解液を製造したことを除いては、前記実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した(下記表1を参照)。
【0102】
実施例3.
非水性有機溶媒にLiPFが1.0Mとなるように溶解した後、化学式1aで表される化合物1.0重量%、その他の添加剤としてビニレンカーボネート(VC)0.5重量%、1,3-プロパンスルトン(PS)0.5重量%、およびエチレンサルフェート1重量%となるように添加して非水電解液を製造したことを除いては、前記実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した(下記表1を参照)。
【0103】
実施例4.
非水性有機溶媒にLiPFが1.0Mとなるように溶解した後、化学式1aで表される化合物3.0重量%、その他の添加剤としてビニレンカーボネート(VC)0.5重量%、1,3-プロパンスルトン(PS)0.5重量%、およびエチレンサルフェート1重量%となるように添加して非水電解液を製造したことを除いては、前記実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した(下記表1を参照)。
【0104】
実施例5.
非水性有機溶媒にLiPFが1.0Mとなるように溶解した後、化学式1aで表される化合物5.0重量%、その他の添加剤としてビニレンカーボネート(VC)0.5重量%、1,3-プロパンスルトン(PS)0.5重量%、およびエチレンサルフェート1重量%となるように添加して非水電解液を製造したことを除いては、前記実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した(下記表1を参照)。
【0105】
比較例1.
非水性有機溶媒にLiPFが1.0Mとなるように溶解した後、添加剤としてビニレンカーボネート(VC)0.5重量%、1,3-プロパンスルトン(PS)0.5重量%、およびエチレンサルフェート1重量%となるように添加して非水電解液を製造したことを除いては、前記実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した(下記表1を参照)。
【0106】
比較例2.
非水性有機溶媒にLiPFが1.0Mとなるように溶解した後、添加剤として化学式1aで表される化合物の代わりに下記化学式3で表されるProp-2yn-1-yl acetate(CAS No.627-09-8)0.5重量%を添加して非水電解液を製造したことを除いては、前記実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した(下記表1を参照)。
【0107】
【化5】
【0108】
【表1】
【0109】
一方、前記表1中、化合物の略称はそれぞれ以下を意味する。
EC:エチレンカーボネート
EMC:エチルメチルカーボネート
【0110】
実験例
実験例1.高温貯蔵特性の評価
(1)高温貯蔵後の容量維持率および抵抗増加率の評価
実施例1~5で製造されたリチウム二次電池と比較例1および2で製造されたリチウム二次電池をそれぞれ常温(25℃)で0.33Cレート(rate)で定電流/定電圧条件で4.2Vまで充電した後、DOD(depth of discharge)50%まで放電してSOC 50%を合わせた後、2.5Cレート(rate)条件で10秒間放電した。その次に、常温(25℃)で0.33C rateで定電流/定電圧条件下で4.2Vまで充電し、0.33Cレート(rate)で定電流条件下で2.5Vまで放電した後(1サイクル)、初期容量および初期抵抗を測定した。
【0111】
次いで、60℃で6週間の貯蔵後、それぞれのリチウム二次電池を常温(25℃)に冷却し、0.33Cレート(rate)で定電流/定電圧条件下で4.2Vまで充電し、0.33Cレート(rate)で定電流条件下で2.5Vまで放電し、高温貯蔵後の容量および抵抗値を測定した。
【0112】
下記式1により容量維持率(%)を計算し、算出された結果を下記表2に記載した。また、下記式2により抵抗増加率(%)を計算し、算出された結果を下記表2に記載した。
【0113】
[式1]
容量維持率(%)=(高温貯蔵後の放電容量/高温貯蔵前の放電容量)×100
[式2]
抵抗増加率(%)={(高温貯蔵後の抵抗-高温貯蔵前の抵抗)/高温貯蔵前の抵抗}×100
【0114】
(2)高温貯蔵後の体積増加率(%)の評価
実施例1~5で製造されたリチウム二次電池と比較例1および2で製造されたリチウム二次電池をそれぞれ常温(25℃)で0.33Cレート(rate)で定電流/定電圧条件で4.2Vまで充電した後、初期厚さを測定した。
その次に、60℃で6週間の貯蔵後、それぞれのリチウム二次電池に対する高温貯蔵後の厚さを測定し、その結果を下記表2に記載した。
【0115】
【表2】
【0116】
前記表2を参照すると、本発明の非水電解液を備えた実施例1~5のリチウム二次電池の場合、比較例1および2の二次電池に比べて、容量維持率(%)が向上し、抵抗増加率(%)および厚さ増加率(%)が減少したことを確認することができる。特に、非水電解液中に化学式1で表される化合物の含量が5重量%未満である実施例1~4の場合、容量維持率(%)、抵抗増加率(%)、および厚さ増加率(%)の改善効果が顕著に向上したことを確認することができる。