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特許7562236シミュレーション装置、プログラム、及びシミュレーション方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】シミュレーション装置、プログラム、及びシミュレーション方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20240930BHJP
   G06Q 50/04 20120101ALI20240930BHJP
   G06Q 10/04 20230101ALI20240930BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G06Q50/04
G06Q10/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021118533
(22)【出願日】2021-07-19
(65)【公開番号】P2023014533
(43)【公開日】2023-01-31
【審査請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100136353
【弁理士】
【氏名又は名称】高尾 建吾
(72)【発明者】
【氏名】梅田 豊裕
(72)【発明者】
【氏名】井本 考亮
(72)【発明者】
【氏名】山本 優輝
【審査官】程塚 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-296063(JP,A)
【文献】特開2011-227605(JP,A)
【文献】特開平09-153090(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
G06Q 50/04
G06Q 10/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料から複数の製造工程を経て製品を製造する生産ラインを対象として、中間在庫の生産計画を策定するためのシミュレーション装置であって、
製品の注文の予想データ及び中間在庫の生産計画データを入力するデータ入力部と、
前記データ入力部が入力した製品の注文を中間在庫に引き当て可能な在庫引き当て部と、
前記在庫引き当て部による引き当て対象の中間在庫には、完成済みの中間在庫及び製造途中の中間在庫が含まれ、
中間在庫の過不足を含むシミュレーション結果を出力する結果出力部と、
完成済みの中間在庫を管理する在庫管理部と、
中間在庫の製造に関する中間在庫ジョブを管理する中間在庫ジョブ管理部と、
前記データ入力部が入力した製品の注文に関する注文ジョブを生成する注文ジョブ生成部と、
引き当てられた中間在庫に対して、製品の注文の納期を設定する納期設定部と、
シミュレーションを実行するシミュレーションエンジンと、
を備え、
前記在庫引き当て部が製品の注文を中間在庫に引き当てた場合、前記シミュレーションエンジンは、前記納期設定部により設定された製品の納期に基づく優先度でシミュレーションを行い、引き当て先の中間在庫が製造途中であるか、完成済みであるかを判定するとともに、
前記引き当て先の中間在庫が製造途中である場合、前記中間在庫ジョブ管理部は、引き当て先の中間在庫ジョブの数量を減少させる一方、
前記引き当て先の中間在庫が完成済みである場合、前記在庫管理部は、引き当て先の完成済みの中間在庫の数量を減少させる、
シミュレーション装置。
【請求項2】
前記納期設定部は、製品の注文数が中間在庫数未満であることにより前記在庫引き当て部によって引き当てられなかった余剰の中間在庫に対して、当該中間在庫の完成納期を設定する、請求項に記載のシミュレーション装置。
【請求項3】
原料から複数の製造工程を経て製品を製造する生産ラインを対象として、中間在庫の生産計画を策定するためのシミュレーション装置に搭載されるコンピュータを、
製品の注文の予想データ及び中間在庫の生産計画データを入力するデータ入力と、
前記データ入力が入力した製品の注文を中間在庫に引き当て可能な在庫引き当てと、
前記在庫引き当て部による引き当て対象の中間在庫には、完成済みの中間在庫及び製造途中の中間在庫が含まれ、
中間在庫の過不足を含むシミュレーション結果を出力する結果出力と、
完成済みの中間在庫を管理する在庫管理部と、
中間在庫の製造に関する中間在庫ジョブを管理する中間在庫ジョブ管理部と、
前記データ入力部が入力した製品の注文に関する注文ジョブを生成する注文ジョブ生成部と、
引き当てられた中間在庫に対して、製品の注文の納期を設定する納期設定部と、
シミュレーションを実行するシミュレーションエンジンと、
として機能させるためのプログラムであって、
前記在庫引き当て部が製品の注文を中間在庫に引き当てた場合、前記シミュレーションエンジンは、前記納期設定部により設定された製品の納期に基づく優先度でシミュレーションを行い、引き当て先の中間在庫が製造途中であるか、完成済みであるかを判定するとともに、
前記引き当て先の中間在庫が製造途中である場合、前記中間在庫ジョブ管理部は、引き当て先の中間在庫ジョブの数量を減少させる一方、
前記引き当て先の中間在庫が完成済みである場合、前記在庫管理部は、引き当て先の完成済みの中間在庫の数量を減少させる、
プログラム
【請求項4】
原料から複数の製造工程を経て製品を製造する生産ラインを対象として、中間在庫の生産計画を策定するためのシミュレーション方法であって、
製品の注文の予想データ及び中間在庫の生産計画データを入力し、
入力した製品の注文を中間在庫に引き当て、
引き当て対象の中間在庫には、完成済みの中間在庫及び製造途中の中間在庫が含まれ、
完成済みの中間在庫を管理し、
中間在庫の製造に関する中間在庫ジョブを管理し、
入力した製品の注文に関する注文ジョブを生成し、
引き当てられた中間在庫に対して、製品の注文の納期を設定し、
シミュレーションを実行し、
中間在庫の過不足を含むシミュレーション結果を出力し、
製品の注文を中間在庫に引き当てた場合、設定された製品の納期に基づく優先度でシミュレーションを行い、引き当て先の中間在庫が製造途中であるか、完成済みであるかを判定するとともに、
前記引き当て先の中間在庫が製造途中である場合、引き当て先の中間在庫ジョブの数量を減少させる一方、
前記引き当て先の中間在庫が完成済みである場合、引き当て先の完成済みの中間在庫の数量を減少させる、
シミュレーション方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シミュレーション装置、プログラム、及びシミュレーション方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、製造途中の複数の製造工程で中間在庫を保有する生産管理方式に対する生産計画方法が開示されている。この方法によれば、製品の注文を中間在庫に引き当てることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5442526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載された生産計画方法では、引き当て時点において中間在庫が完成していることを前提としているため、製品の注文は、製造済みの中間在庫にしか引き当てることができない。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みて成されたものであり、製品の注文を、製造済みの中間在庫のみならず製造途中の中間在庫にも引き当ててシミュレーションすることが可能な、シミュレーション装置、プログラム、及びシミュレーション方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るシミュレーション装置は、原料から複数の製造工程を経て製品を製造する生産ラインを対象として、中間在庫の生産計画を策定するためのシミュレーション装置であって、製品の注文の予想データ及び中間在庫の生産計画データを入力するデータ入力部と、前記データ入力部が入力した製品の注文を中間在庫に引き当て可能な在庫引き当て部と、前記在庫引き当て部による引き当て対象の中間在庫には、製造済みの中間在庫及び製造途中の中間在庫が含まれ、中間在庫の過不足を含むシミュレーション結果を出力する結果出力部と、を備える。
【0007】
本態様によれば、データ入力部が入力した製品の注文を、在庫引き当て部によって、製造済みの中間在庫のみならず製造途中の中間在庫にも引き当ててシミュレーションすることができ、その結果、製品の注文予想(受注計画)に基づいて中間在庫の生産計画を適切に策定することが可能となる。
【0008】
上記態様において、前記データ入力部が入力した製品の注文に関する注文ジョブを生成する注文ジョブ生成部をさらに備え、前記在庫引き当て部が製品の注文を製造途中の中間在庫に引き当てた場合、前記注文ジョブ生成部は、当該中間在庫が完成に到るまでの残りの製造工程と、当該中間在庫から製品に到るまでの製造工程とを接続した製造工程を、注文ジョブとして生成する。
【0009】
本態様によれば、在庫引き当て部が製品の注文を製造途中の中間在庫に引き当てた場合、それ以降は、中間在庫が完成に到るまでの残りの製造工程と、当該中間在庫から製品に到るまでの製造工程とを接続した製造工程を、注文ジョブとしてシミュレーションすることが可能となる。
【0010】
上記態様において、中間在庫の製造に関する中間在庫ジョブを管理する中間在庫ジョブ管理部をさらに備え、前記在庫引き当て部が製品の注文を製造途中の中間在庫に引き当てた場合、前記中間在庫ジョブ管理部は、引き当てられた当該中間在庫に関する中間在庫ジョブを、前記注文ジョブ生成部が生成する前記注文ジョブに変更する。
【0011】
本態様によれば、在庫引き当て部が製品の注文を製造途中の中間在庫に引き当てた場合、それ以降は中間在庫ジョブを注文ジョブに変更してシミュレーションすることが可能となる。
【0012】
上記態様において、納期設定部をさらに備え、前記在庫引き当て部が製品の注文を中間在庫に引き当てた場合、前記納期設定部は、前記在庫引き当て部によって引き当てられた当該中間在庫に対して、製品の注文の納期を設定する。
【0013】
本態様によれば、在庫引き当て部が製品の注文を中間在庫に引き当てた場合、それ以降は中間在庫の完成納期ではなく製品の注文納期に基づいてシミュレーションすることが可能となる。
【0014】
上記態様において、前記納期設定部は、製品の注文数が中間在庫数未満であることにより前記在庫引き当て部によって引き当てられなかった余剰の中間在庫に対して、当該中間在庫の完成納期を設定する。
【0015】
本態様によれば、在庫引き当て部によって引き当てられなかった中間在庫に対しては、製品の注文納期ではなく中間在庫の完成納期に基づいてシミュレーションすることが可能となる。
【0016】
上記態様において、前記データ入力部が入力した製品の注文に関する注文ジョブを生成する注文ジョブ生成部をさらに備え、前記在庫引き当て部が製品の注文を製造済みの中間在庫に引き当てた場合、前記注文ジョブ生成部は、当該中間在庫から製品に到るまでの製造工程を、注文ジョブとして生成する。
【0017】
本態様によれば、在庫引き当て部が製品の注文を製造済みの中間在庫に引き当てた場合、それ以降は、当該中間在庫から製品に到るまでの製造工程を、注文ジョブとしてシミュレーションすることが可能となる。
【0018】
本発明の一態様に係るプログラムは、原料から複数の製造工程を経て製品を製造する生産ラインを対象として、中間在庫の生産計画を策定するためのシミュレーション装置に搭載されるコンピュータを、製品の注文の予想データ及び中間在庫の生産計画データを入力するデータ入力手段と、前記データ入力手段が入力した製品の注文を中間在庫に引き当て可能な在庫引き当て手段と、前記在庫引き当て部による引き当て対象の中間在庫には、製造済みの中間在庫及び製造途中の中間在庫が含まれ、中間在庫の過不足を含むシミュレーション結果を出力する結果出力手段と、として機能させるためのプログラムである。
【0019】
本態様によれば、データ入力手段が入力した製品の注文を、在庫引き当て手段によって、製造済みの中間在庫のみならず製造途中の中間在庫にも引き当ててシミュレーションすることができ、その結果、製品の注文予想(受注計画)に基づいて中間在庫の生産計画を適切に策定することが可能となる。
【0020】
本発明の一態様に係るシミュレーション方法は、原料から複数の製造工程を経て製品を製造する生産ラインを対象として、中間在庫の生産計画を策定するためのシミュレーション方法であって、製品の注文の予想データ及び中間在庫の生産計画データを入力し、入力した製品の注文を中間在庫に引き当て、引き当て対象の中間在庫には、製造済みの中間在庫及び製造途中の中間在庫が含まれ、中間在庫の過不足を含むシミュレーション結果を出力する。
【0021】
本態様によれば、入力した製品の注文を、製造済みの中間在庫のみならず製造途中の中間在庫にも引き当ててシミュレーションすることができ、その結果、製品の注文予想(受注計画)に基づいて中間在庫の生産計画を適切に策定することが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、製品の注文を、製造済みの中間在庫のみならず製造途中の中間在庫にも引き当ててシミュレーションすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係るシミュレーション装置の構成を簡略化して示す図である。
図2】データ処理部が有する機能を簡略化して示す図である。
図3】中間在庫マスタの一例を簡略化して示す図である。
図4】品種マスタの一例を簡略化して示す図である。
図5】受注予想データの一例を簡略化して示す図である。
図6】中間在庫生産計画データの一例を簡略化して示す図である。
図7】データ処理部が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
図8】シミュレーションの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施の形態が、図面を参照しながら説明される。なお、各図面において、同じ構成要素については同じ符号が用いられ、適宜、詳細な説明は省略される。
【0025】
図1は、本発明の実施形態に係るシミュレーション装置1の構成を簡略化して示す図である。シミュレーション装置1は、原料から複数の製造工程を経て製品を製造する生産ラインを対象として、製造途中の半製品の状態である中間在庫の生産計画を策定するためのシミュレーション装置である。シミュレーション装置1は、コンピュータシステム等によって構成され、データ処理部11、入力部12、記憶部13,14、及び表示部15を備えている。データ処理部11はCPU等であり、入力部12はマウス又はキーボード等であり、記憶部13はHDD又はSSD等であり、記憶部14はROM又はRAM等であり、表示部15はLCD又は有機ELディスプレイ等である。記憶部14にはプログラム100が格納されている。
【0026】
図2は、データ処理部11が有する機能を簡略化して示す図である。データ処理部11がプログラム100を実行することによって、データ処理部11は、シミュレーションエンジン21、データ入力部22(入力インタフェース)、結果出力部23(出力インタフェース)、在庫管理部24、注文管理部25、在庫引き当て部26、注文ジョブ生成部27、中間在庫ジョブ管理部28、残工程情報作成部29、及び納期設定部30として機能する。換言すれば、プログラム100は、シミュレーション装置1に搭載されるコンピュータを、これらの処理部として機能させるためのプログラムである。各処理部の処理内容については後述する。
【0027】
また、中間在庫マスタ51、品種マスタ52、受注予想データ53、及び中間在庫生産計画データ54が、予め作成されて記憶部13に格納されている。シミュレーション結果55は、記憶部13に格納されるとともに、表示部15に表示される。
【0028】
図3は、中間在庫マスタ51の一例を簡略化して示す図である。中間在庫マスタ51には、原料から中間在庫としての完成までの製造工程情報(使用設備、作業負荷、及び工程間リードタイム)が、中間在庫タイプごとに設定されている。中間在庫タイプは、中間在庫の品種であり、この例では2種類の中間在庫タイプCa,Cbが設定されている。中間在庫は汎用性があるため、ある中間在庫に引き当て可能な製品の品種が複数存在する場合もある。
【0029】
図4は、品種マスタ52の一例を簡略化して示す図である。品種マスタ52には、中間在庫から製品完成までの製造工程情報(使用設備、作業負荷、及び工程間リードタイム)が、製品の品種ごとに設定されている。この例では2種類の製品の品種A,Bが設定されている。品種Aは、中間在庫タイプCaの中間在庫から第1~第5工程を経て製造可能である。品種Bは、中間在庫タイプCaの中間在庫から第1~第5工程を経て製造可能であり、また、中間在庫タイプCbの中間在庫から第1~第3工程を経て製造可能である。
【0030】
図5は、受注予想データ53の一例を簡略化して示す図である。受注予想データ53には、製品の品種の予想、生産量(重量)の予想、受注タイミング(注文投入日)の予想、及び納期の予想が、注文ごとに設定されている。この例では2つの注文S1,S2が設定されている。
【0031】
図6は、中間在庫生産計画データ54の一例を簡略化して示す図である。中間在庫生産計画データ54には、中間在庫の生産量(重量)、製造開始タイミング(製造開始日)、及び中間在庫としての納期に相当する目標完成タイミング(目標完成日)が、中間在庫タイプごとに設定されている。この例では2種類の中間在庫タイプCa,Cbが設定されている。
【0032】
なお、図3~6に示した内容及び数値等は一例であり、これに限定されるものではない。また、図3~6に示した例ではタイミングのメッシュとして「日」を想定したが、「日」以外の任意の単位期間によってタイミングのメッシュが規定されても良い。
【0033】
図7は、データ処理部11が実行する処理の流れを示すフローチャートである。例えばオペレータがシミュレーションの実行開始命令を入力することによって、以下の処理が開始される。
【0034】
まずステップSP101においてデータ入力部22は、中間在庫マスタ51、品種マスタ52、受注予想データ53、及び中間在庫生産計画データ54を、記憶部13から読み込む。
【0035】
次にステップSP102においてシミュレーションエンジン21は、初期化によってシミュレーション日を設定する。
【0036】
次にステップSP103においてシミュレーションエンジン21は、中間在庫生産計画データ54を参照することにより、当該シミュレーション日において中間在庫の投入があるか否かを判定する。
【0037】
当該シミュレーション日において中間在庫の投入がある場合(ステップSP103:YES)は、次にステップSP104においてシミュレーションエンジン21は、中間在庫ジョブを生成し、その後、ステップSP105の処理を実行する。なお、シミュレーションエンジン21は、第1工程の設備での最早開始タイミングを中間在庫の製造開始タイミングとし、目標完成タイミングを納期とするジョブとしてシミュレーションする。また、注文に引き当てられない限り中間在庫としての最終工程までシミュレーションし、最終工程が完了した後は在庫状態として保持する。在庫状態となったタイミングで中間在庫の数量を更新する。
【0038】
当該シミュレーション日において中間在庫の投入がない場合(ステップSP103:NO)は、次にステップSP105においてシミュレーションエンジン21は、受注予想データ53を参照することにより、当該シミュレーション日において製品の注文の投入があるか否かを判定する。
【0039】
当該シミュレーション日において注文の投入がある場合(ステップSP105:YES)は、次にステップSP106においてシミュレーションエンジン21は、当該注文を投入済注文に追加し、その後、ステップSP107の処理を実行する。
【0040】
当該シミュレーション日において注文の投入がない場合(ステップSP105:NO)は、次にステップSP107においてシミュレーションエンジン21は、検索対象の注文があるか否かを判定する。当該シミュレーション日において、未引き当ての注文が残っている場合には当該判定の結果は「YES」となり、未引き当ての注文が残っていない場合には当該判定の結果は「NO」となる。
【0041】
未引き当ての注文が残っている場合(ステップSP107:YES)は、次にステップSP108において在庫引き当て部26は、注文を引き当てる引き当て先の中間在庫を検索する。
【0042】
次にステップSP109においてシミュレーションエンジン21は、引き当て先の中間在庫が見つかったか否かを判定する。
【0043】
引き当て先の中間在庫が見つからなかった場合(ステップSP109:NO)は、シミュレーションエンジン21は、次の注文に関してステップSP107以降の処理を実行する。
【0044】
引き当て先の中間在庫が見つかった場合(ステップSP109:YES)は、次にステップSP110において在庫引き当て部26は、当該注文を当該中間在庫に引き当てる。注文は、受注タイミングに対応する引き当てタイミングで中間在庫に引き当てられる。引き当て対象の中間在庫には、完成済みの中間在庫のみならず製造途中の中間在庫又は原料も含まれる。なお、引き当て可能な中間在庫が複数ある場合には、引き当て後の製造工程数が少ない中間在庫、引き当て後のリードタイムの総和が小さい中間在庫、引き当て後のリードタイム及び処理時間の総和が小さい中間在庫、在庫としての滞留時間が長い中間在庫、引き当て先の品種数が少ない中間在庫、又は引き当て先の製品の注文総重量が小さい中間在庫が、優先して引き当てられる。
【0045】
次にステップSP111において注文ジョブ生成部27は注文ジョブを生成し、残工程情報作成部29は残工程を設定し、納期設定部30は注文の納期を設定する。また、注文管理部25は投入済み注文の数量を減少させる。
【0046】
在庫引き当て部26が製品の注文を製造途中の中間在庫に引き当てた場合、注文ジョブ生成部27は、当該中間在庫が完成に到るまでの残りの製造工程と、当該中間在庫から製品に到るまでの製造工程とを接続した製造工程を、注文ジョブとして生成する。また、在庫引き当て部26が製品の注文を製造途中の中間在庫に引き当てた場合、中間在庫ジョブ管理部28は、引き当てられた当該中間在庫に関する中間在庫ジョブを、注文ジョブ生成部27が生成する注文ジョブに変更する。
【0047】
一方、在庫引き当て部26が製品の注文を製造済みの中間在庫に引き当てた場合、注文ジョブ生成部27は、当該中間在庫から製品に到るまでの製造工程を、注文ジョブとして生成する。
【0048】
中間在庫に引き当てた注文に対するジョブは、引き当てタイミングを時間軸上の起点とし、残りの製造工程をシミュレーションする。シミュレーションの方法は限定されないが、例えば、設備能力を制約とした負荷の山積み又は山崩しの方法を利用することができる。負荷の山積み又は山崩しの方法において、納期に対して余裕の少ないジョブを優先するルールを適用することができる。
【0049】
在庫引き当て部26が製品の注文を中間在庫に引き当てた場合、納期設定部30は、在庫引き当て部26によって引き当てられた当該中間在庫に対して、製品の注文の納期を設定し、シミュレーションエンジン21は製品の納期に基づく優先度でシミュレーションする。また、納期設定部30は、製品の注文数が中間在庫数未満であることにより在庫引き当て部26によって引き当てられなかった余剰の中間在庫に対して、当該中間在庫の完成納期を設定し、シミュレーションエンジン21は中間在庫としての完成納期に基づく優先度でシミュレーションする。
【0050】
次にステップSP112においてシミュレーションエンジン21は、引き当て先の中間在庫が製造途中であるか完成済みであるかを判定する。
【0051】
引き当て先の中間在庫が製造途中である場合(ステップSP112:YES)は、次にステップSP113において中間在庫ジョブ管理部28は、引き当て先の中間在庫ジョブの数量を減少させる。
【0052】
引き当て先の中間在庫が完成済みである場合(ステップSP112:NO)は、次にステップSP114において在庫管理部24は、完成済みの中間在庫の数量を減少させる。
【0053】
未引き当ての注文が残っていない場合(ステップSP107:NO)は、次にステップSP115においてシミュレーションエンジン21は、設備ごとの負荷調整を行うことにより、優先度による処理タスクを決定する。なお、タスクとは、ジョブを構成する複数の工程に含まれる各工程の作業を意味する。
【0054】
次にステップSP116において在庫管理部24は、完成済みの中間在庫の数量を加算する。また、注文管理部25は、出荷済みの注文の数量を加算する。
【0055】
次にステップSP117においてシミュレーションエンジン21は、ジョブ毎の次工程と最早開始日に基づいて次処理タスク情報を更新する。
【0056】
次にステップSP118においてシミュレーションエンジン21は、シミュレーション日の日付を翌日に更新する。
【0057】
次にステップSP119においてシミュレーションエンジン21は、シミュレーションを終了するか否かを判定する。例えば、事前に設定したシミュレーション終了日を過ぎた場合に、シミュレーションを終了すると判定する。
【0058】
シミュレーションを終了しない場合(ステップSP119:NO)は、ステップSP103以降の処理が繰り返し実行される。
【0059】
シミュレーションを終了する場合(ステップSP120)は、結果出力部23は、シミュレーション結果を出力する。シミュレーション結果には、中間在庫の日別の保有量等の、中間在庫の過不足を示す情報が含まれる。また、シミュレーション結果には、ジョブ毎のオーダー及び製造スケジュール(各工程をいつ、どの設備で処理するか)が含まれる。また、シミュレーション結果には、注文毎の引き当て結果(いつ、どのジョブのどの工程に引き当てるか)が含まれる。また、シミュレーション結果には、これらの情報に基づいて算出可能な、注文ごとの製造リードタイム(第1工程から最終工程まで)、及び、顧客リードタイム(注文投入から最終工程まで)を示す情報が含まれる。
【0060】
図8は、図3~6に示したマスタ及びデータが入力された場合のシミュレーションの一例を示す図である。以下、シミュレーションの内容を日別に説明する。
【0061】
・4月1日
シミュレーション日の初期化により、シミュレーション日が4月1日に設定される。
【0062】
・4月2日
中間在庫生産計画データ54より、中間在庫タイプCaを20ton製造するためのジョブが作成され、第1工程である熱延に負荷(10分/ton*20ton=200分)が山積みされる。
【0063】
熱延での負荷調整により、中間在庫タイプCaは熱延で処理され、2日後(中間在庫マスタ51のリードタイム)の4月4日に第2工程である冷延2に次処理タスクとして山積みされる。
【0064】
・4月4日
冷延2において中間在庫タイプCaが処理される。
【0065】
中間在庫タイプCaが20ton完成する。この完成日は、目標完成日Taである4月4日に間に合っている。
【0066】
・4月6日
中間在庫生産計画データ54より、中間在庫タイプCbを60ton製造するためのジョブが作成され、第1工程である熱延に負荷(8分/ton*60ton=480分)が山積みされる。
【0067】
熱延での負荷調整により、中間在庫タイプCbは熱延で処理され、2日後(中間在庫マスタ51のリードタイム)の4月8日に第2工程である冷延1に次処理タスクとして負荷(12分/ton*60ton=720分)が山積みされる。
【0068】
・4月7日
受注予想データ53より、注文S1(品種A、30ton)が投入済注文に追加される。
【0069】
品種マスタ52より、品種Aは中間在庫タイプCaに引き当て可能と判定される。中間在庫タイプCaはこの時点で20tonあるので、注文S1の30tonのうちの20tonが中間在庫タイプCaに引き当てられる。注文S1の残りの10tonは、引き当て残として残ることになる。
【0070】
注文S1(20ton)のジョブが生成される。品種マスタ52の工程情報に基づいて残工程が設定される。受注予想データ53に基づいて納期として4月13日が設定される。
【0071】
残工程の第1工程である焼鈍1に負荷(40分/ton*20ton=800分)が山積みされる。
【0072】
焼鈍1において注文S1が処理される。
【0073】
1日後(品種マスタ52のリードタイム)の4月8日に、第2工程である洗浄に次処理タスクとして負荷(15分/ton*20ton=300分)が山積みされる。
【0074】
4月8日(翌日)の注文S1の投入済注文重量(つまり引き当て残重量)が10tonに更新される。
【0075】
・4月8日
洗浄において注文S1(20ton)が処理される。
【0076】
洗浄での負荷調整により、注文S1は洗浄で処理され、2日後(品種マスタ52のリードタイム)の4月10日に第3工程であるメッキに次処理タスクとして負荷(15分/ton*20ton=300分)が山積みされる。
【0077】
冷延1において中間在庫タイプCb(60ton)が処理される。
【0078】
1日後(中間在庫マスタ51のリードタイム)の4月9日に、第3工程である冷延2に次処理タスクとして負荷(12分/ton*60ton=720分)が山積みされる。
【0079】
・4月9日
受注予想データ53より、注文S2(品種B、40ton)が投入済注文に追加される。
【0080】
品種マスタ52より、品種Bは中間在庫タイプCa,Cbに引き当て可能と判定される。この時点で中間在庫タイプCaは完成品在庫及び製造途中仕掛のいずれも存在しない。中間在庫タイプCbは、完成品在庫は無いが製造途中(第3工程の冷延2の仕掛)が60tonあるので、注文S2(40ton)の全てが製造途中の中間在庫タイプCbに引き当てられる。つまり、製造途中の中間在庫タイプCb(60ton)のうち、40tonは注文S2にオーダー、工程情報、及び納期が変更されてシミュレーションされる。残り20tonは中間在庫タイプCbのままでシミュレーションされる。
【0081】
注文S2(40ton)のジョブが生成される。品種マスタ52の工程情報に基づいて残工程が設定される。この時、中間在庫タイプCbの第3工程以降と品種マスタ52の品種B(中間在庫タイプCb引き当て)の工程情報とが接続され、冷延2、焼鈍2、洗浄、メッキ、スリッタ、及び出荷検査から成る工程情報が設定される。
【0082】
受注予想データ53に基づいて納期として4月15日が設定される。
【0083】
引き当て先である中間在庫タイプCbの重量が、注文S2に引き当てた分だけ減少される。具体的には、重量が20ton(60ton-40ton)に、負荷が400分(20分/ton*20ton)に更新される。
【0084】
注文S2の残工程の第1工程である冷延2に負荷(20分/ton*40ton=800分)が山積みされる。
【0085】
冷延2において、納期に対する余裕の小さい注文S2が処理される。また、この例では、他に優先度の高いものがあったため、納期に対して余裕のある中間在庫タイプCbは処理されないものとする。つまり、納期を基準とするシミュレーションを実施することにより、注文S2に引き当て後のジョブは中間在庫としてのジョブよりも早く工程を流れることになる。これにより、中間在庫の完成まで待つことに起因する納期遅れの発生を回避できる。
【0086】
中間在庫タイプCbについては、処理を持ち越したので、翌日の4月10日に同じ冷延2に負荷400分が山積みされる。
【0087】
注文S2については、1日後(品種マスタ52のリードタイム)の4月10日に第2工程である焼鈍2に次処理タスクとして負荷(30分/ton*40ton=1200分)が山積みされる。
【0088】
翌日の4月10日の注文S2の投入済み注文重量(引き当て残重量)が0tonに更新される。
【0089】
・4月10日
冷延2において中間在庫タイプCb(20ton)が処理される。
【0090】
冷延2での負荷調整により、中間在庫タイプCbは1日後(中間在庫マスタ51のリードタイム)の4月11日に第4工程である焼鈍2に次処理タスクとして負荷(30分/ton*20ton=600分)が山積みされる。
【0091】
焼鈍2において注文S2が処理される。
【0092】
焼鈍2での負荷調整により、注文S2は1日後(品種マスタ52のリードタイム)の4月11日に第3工程である洗浄に次処理タスクとして負荷(10分/ton*40ton=400分)が山積みされる。
【0093】
メッキにおいて注文S1(20ton)が処理される。
【0094】
メッキでの負荷調整により、注文S1は1日後(品種マスタ52のリードタイム)の4月11日に第4工程であるスリッタに次処理タスクとして負荷(20分/ton*20ton=400分)が山積みされる。
【0095】
・4月12日
注文S1の最終工程(出荷検査)が納期T1より1日早く完了し、出荷可能となる。
【0096】
・4月14日
中間在庫タイプCb(20ton)が目標完成日Tbより1日早く完成される。
【0097】
・4月15日
注文S2の最終工程(出荷検査)が納期T2と同じ日に完了し、出荷可能となる。
【0098】
<まとめ>
本実施形態に係るシミュレーション装置1によれば、データ入力部22が入力した製品の注文を、在庫引き当て部26によって、製造済みの中間在庫のみならず製造途中の中間在庫にも引き当ててシミュレーションすることができる。その結果、製品の注文予想(受注計画)に基づいて中間在庫の生産計画を適切に策定することが可能となる。
【0099】
また、本実施形態に係るシミュレーション装置1によれば、在庫引き当て部26が製品の注文を製造途中の中間在庫に引き当てた場合、それ以降は、中間在庫が完成に到るまでの残りの製造工程と、当該中間在庫から製品に到るまでの製造工程とを接続した製造工程を、注文ジョブとしてシミュレーションすることが可能となる。
【0100】
また、本実施形態に係るシミュレーション装置1によれば、在庫引き当て部26が製品の注文を製造途中の中間在庫に引き当てた場合、それ以降は中間在庫ジョブを注文ジョブに変更してシミュレーションすることが可能となる。
【0101】
また、本実施形態に係るシミュレーション装置1によれば、在庫引き当て部26が製品の注文を中間在庫に引き当てた場合、それ以降は中間在庫の完成納期ではなく製品の注文納期に基づいてシミュレーションすることが可能となる。
【0102】
また、本実施形態に係るシミュレーション装置1によれば、在庫引き当て部26によって引き当てられなかった中間在庫に対しては、製品の注文納期ではなく中間在庫の完成納期に基づいてシミュレーションすることが可能となる。
【0103】
また、本実施形態に係るシミュレーション装置1によれば、在庫引き当て部26が製品の注文を製造済みの中間在庫に引き当てた場合、それ以降は、当該中間在庫から製品に到るまでの製造工程を、注文ジョブとしてシミュレーションすることが可能となる。
【符号の説明】
【0104】
1 シミュレーション装置
11 データ処理部
21 シミュレーションエンジン
22 データ入力部
23 結果出力部
26 在庫引き当て部
27 注文ジョブ生成部
28 中間在庫ジョブ管理部
30 納期設定部
100 プログラム
図1
図2
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図8