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特許7562246寿命判定装置、寿命判定方法および寿命判定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】寿命判定装置、寿命判定方法および寿命判定プログラム
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20240930BHJP
   B41J 29/393 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
G03G21/00 512
B41J29/393 103
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019161199
(22)【出願日】2019-09-04
(65)【公開番号】P2021039267
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-07-21
【審判番号】
【審判請求日】2023-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 博文
【合議体】
【審判長】川俣 洋史
【審判官】道祖土 新吾
【審判官】山本 一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-49285(JP,A)
【文献】特開2015-34807(JP,A)
【文献】特開2006-305938(JP,A)
【文献】特開2018-72603(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G21/00
B41J29/393
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成に使用される画像形成部材が寿命に達したか否かを判定するために用いられ、画像不良の発生に関連する関連パラメーターの閾値を、ユーザーによって画像不良と判断された実画像に基づいて設定する設定部と、
画像形成された画像に関する前記関連パラメーターの実測値と前記閾値とに基づいて、前記画像形成部材が寿命に達したか否かを判定する寿命判定部と、
を備え
前記設定部は、ユーザーによって画像不良と判断された実画像における画像不良の種類と程度とを特定し、特定された画像不良の種類と程度とに基づいて、画像不良の種類毎に前記閾値を設定する、
寿命判定装置。
【請求項2】
前記設定部は、前記ユーザーによって先に画像不良と判断された実画像よりも、後に画像不良と判断された実画像に重みを付けて、前記閾値を設定する、
請求項1に記載の寿命判定装置。
【請求項3】
前記閾値を外部装置に送信する送信部を備える、
請求項1または2に記載の寿命判定装置。
【請求項4】
前記実画像は、画像検査用に画像形成された検査画像を含む、
請求項1~3の何れか1項に記載の寿命判定装置。
【請求項5】
前記画像形成された画像に画像不良が発生した場合、当該画像不良の原因となる画像形成部材を特定する特定部を備え、
前記寿命判定部は、前記実測値と前記閾値とに基づいて、特定された前記画像形成部材が寿命に達したか否かを判定する、
請求項1~4の何れか1項に記載の寿命判定装置。
【請求項6】
前記寿命判定部は、前記実測値が前記閾値以上である場合、特定された前記画像形成部材が寿命に達したと判定する一方、前記実測値が前記閾値未満である場合、特定された前記画像形成部材が寿命に達していないと判定する、
請求項5に記載の寿命判定装置。
【請求項7】
前記寿命判定部は、特定された前記画像形成部材が寿命に達していないと判定した場合、当該画像形成部材の使用履歴および/または画像形成条件に基づいて、当該画像形成部材が寿命に達するまでの時間を予測する、
請求項6に記載の寿命判定装置。
【請求項8】
前記使用履歴は、特定された前記画像形成部材の使用量を含む、
請求項7に記載の寿命判定装置。
【請求項9】
前記使用履歴は、特定された前記画像形成部材が有する物性値の変化を含む、
請求項7に記載の寿命判定装置。
【請求項10】
前記画像形成条件は、前記寿命判定装置の周囲の温湿度を含む、
請求項7~の何れか1項に記載の寿命判定装置。
【請求項11】
前記画像形成条件は、単位時間あたりに画像形成される画像形成枚数を含む、
請求項7~の何れか1項に記載の寿命判定装置。
【請求項12】
前記画像形成条件は、単位印刷ジョブあたりに画像形成される画像形成枚数を含む、
請求項7~の何れか1項に記載の寿命判定装置。
【請求項13】
前記関連パラメーターは、画像内の濃度差である、
請求項1~12の何れか1項に記載の寿命判定装置。
【請求項14】
前記寿命判定部は、前記画像形成部材が寿命に達していないと判定した場合、当該画像形成部材の寿命の変化に起因する複数の起因パラメーターに基づいて、当該画像形成部材が寿命に達するまでの時間を予測する、
請求項7に記載の寿命判定装置。
【請求項15】
画像形成に使用される画像形成部材が寿命に達したか否かを判定するために用いられ、画像不良の発生に関連する関連パラメーターの閾値を、ユーザーによって画像不良と判断された実画像に基づいて設定する際に、ユーザーによって画像不良と判断された実画像における画像不良の種類と程度とを特定し、特定された画像不良の種類と程度とに基づいて、画像不良の種類毎に前記閾値を設定し、
画像形成された画像に関する前記関連パラメーターの実測値と前記閾値とに基づいて、前記画像形成部材が寿命に達したか否かを判定する、
寿命判定方法。
【請求項16】
コンピューターに、
画像形成に使用される画像形成部材が寿命に達したか否かを判定するために用いられ、画像不良の発生に関連する関連パラメーターの閾値を、ユーザーによって画像不良と判断された実画像に基づいて設定する際に、ユーザーによって画像不良と判断された実画像における画像不良の種類と程度とを特定し、特定された画像不良の種類と程度とに基づいて、画像不良の種類毎に前記閾値を設定する処理と、
画像形成された画像に関する前記関連パラメーターの実測値と前記閾値とに基づいて、前記画像形成部材が寿命に達したか否かを判定する処理と、
を実行させる寿命判定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寿命判定装置、寿命判定方法および寿命判定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子写真プロセス技術を利用した画像形成装置(プリンター、複写機、ファクシミリ等)は、帯電した感光体ドラム(像担持体)に対して、画像データに基づくレーザー光を照射(露光)することにより静電潜像を形成する。そして、静電潜像が形成された感光体ドラムへ現像装置よりトナーを供給することにより静電潜像を可視化してトナー像を形成する。さらに、このトナー像を直接または間接的に用紙に転写させた後、定着ニップで加熱、加圧して定着させることにより用紙にトナー像を形成する。
【0003】
また、画像形成装置においては、常にユーザーが満足できる品質の画像を出力することが求められる一方、部品の耐久等により、一般に、用紙に出力される画像は、徐々にではあるが不可避的に劣化してゆく性質を有している。このため、用紙上に出力された画像に対する品質検査、および画像品質が低下した場合の原因究明、さらには部品の交換や清掃などのメンテナンス作業を定期的に行う必要があり、実際、かかる作業を行うためのサービスマンが定期的にユーザーの元に訪問している。
【0004】
さらに、画像形成装置の中には、用紙に出力された画像の品質を検査して、画像不良の発生の有無、および画像不良の原因となる部品の診断や寿命予測などの処理を行うための寿命予測装置を備えている機種もある(例えば特許文献1を参照)。
【0005】
かかる機種の画像形成装置では、定期的に或いは画像不良(欠陥画像、異常画像などとも呼ばれる。)の発生の際に、装置内部の画像形成に関連する種々の画像形成部材(以下、簡明のため単に「部品」とも称する)の故障や不具合、耐久等を診断する診断モードの処理を行う。
【0006】
この診断モードでは、例えば、画像不良の態様(種類や特徴量など)、当該画像形成装置における過去の使用履歴(印刷枚数、各々の部品を交換した時期など)の種々のデータに基づいて、部品の故障診断、部品の交換時期(寿命すなわち耐久末期)の予測などを行う。ここで、部品の交換時期(寿命)の到来の有無については、部品の実使用量が予め定められた「寿命閾値」に達したか否かを、機械学習などの種々の手法を用いて判定(推定)する。
【0007】
これに関し、特許文献1では、交換する部品と時期をより正確に予測するために、マスター画像と出力画像との差分から、画像不良の程度と当該画像不良を発生させた部品を特定し、当該部品の寿命を推定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2015-34807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、従来の多くの寿命予測装置または診断モードでは、出力するトナー像の色や形状等が予め定められている検査用の画像(テストチャート)を用紙上に出力し、かかる所定の画像を読み取って不良画像の有無等について診断(解析等)を行っていた。
【0010】
他の例として、引用文献1の技術では、入力画像データに基づくマスター画像と、実際に用紙に印刷され読み取られた検査対象画像とを比較して、画素値が異なる画素が存在する場合に異常画像(画像不良)があるとの判定を行うようにしている(段落0032等参照)。
【0011】
一方で、画像形成装置の出力画像に対する要求品質は、実際には個々のユーザー毎に異なる。例えば、文字等の低印字率の画像を多く出力するユーザーは、多少白スジが出ていても気にならない傾向にあるが、一方、写真や図などの高印字率の画像を多く出力するユーザーは、少しの白スジでも品質に問題ありと判断することが多い。
【0012】
上記のような実情に鑑みると、従来のように、画像形成装置の開発者側が決定した閾値を使って一律に部品の寿命を決定(推定)する構成では、多くのユーザーにとって、以下のような問題が発生すると考えられる。
【0013】
すなわち、低印字率の画像を多く出力することの多いユーザーにとっては、未だ気にならないレベルの画像不良の段階で、未だ使えるはずの部品の交換や清掃等が行われることになるため、余計な待ち時間の発生による印刷の生産性低下、高コスト化、などの問題が発生する。
【0014】
一方、高印字率の画像を多く出力するユーザーにとっては、部品交換前に画像不良が発生することが多く、損紙発生の後にサービスマンを呼び出し、対応してもらうまでは印刷作業が行えなくなるため、より多くの待ち時間の発生と生産性低下の問題が発生する。
【0015】
また、画像の要求品質に関わらず、ユーザーの元にサービスマンが訪問して、故障や消耗に伴う部品交換、あるいは不具合部分の清掃等のメンテナンス作業が発生すると、その間は印刷作業が出来なくなり、生産性低下というユーザーの不利益が発生する。
【0016】
このため、従来は、高印字率の画像を多く出力するユーザーが求めるような厳しい基準(閾値)で画像不良の有無を診断するような構成となっていた。しかしながら、このような厳しい基準(閾値)を用いた場合、画像品質への要求が低いユーザーにとっては、未だ十分に使用できる部品が交換されること、言い換えると必要性の低いメンテナンス作業が行われることで、生産性が低下する等の不利益が発生する。
【0017】
画像不良の有無の基準となる閾値に関し、特許文献1では、異常画像(画像不良)の種類毎に予めユーザーが任意に設定できる構成とすることが提案されている。しかしながら、特許文献1に記載の技術では、閾値の設定段階でのユーザー側の負担が過大化する問題があり、かかる問題点の詳細は後述する。
【0018】
総じて、従来技術によれば、部品交換の時期等について、ユーザーが実際に画像形成装置を使用している状況と乖離しやすいこと、さらには、ユーザーの画像品質に対する要求の違いや要求の変化等に対応した柔軟な運用ができないなど、種々の問題があった。
【0019】
本発明の目的は、画像形成部材の寿命判定を、ユーザーの品質要求等に対応した高い精度で行うことが可能な寿命判定装置、寿命判定方法、および寿命判定プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明に係る寿命判定装置は、
画像形成に使用される画像形成部材が寿命に達したか否かを判定するために用いられ、画像不良の発生に関連する関連パラメーターの閾値を、ユーザーによって画像不良と判断された実画像に基づいて設定する設定部と、
画像形成された画像に関する前記関連パラメーターの実測値と前記閾値とに基づいて、前記画像形成部材が寿命に達したか否かを判定する寿命判定部と、
を備え
前記設定部は、ユーザーによって画像不良と判断された実画像における画像不良の種類と程度とを特定し、特定された画像不良の種類と程度とに基づいて、画像不良の種類毎に前記閾値を設定する
【0021】
本発明に係る寿命判定方法は、
画像形成に使用される画像形成部材が寿命に達したか否かを判定するために用いられ、画像不良の発生に関連する関連パラメーターの閾値を、ユーザーによって画像不良と判断された実画像に基づいて設定する際に、ユーザーによって画像不良と判断された実画像における画像不良の種類と程度とを特定し、特定された画像不良の種類と程度とに基づいて、画像不良の種類毎に前記閾値を設定し、
画像形成された画像に関する前記関連パラメーターの実測値と前記閾値とに基づいて、前記画像形成部材が寿命に達したか否かを判定する。
【0022】
本発明に係る寿命判定プログラムは、
コンピューターに、
画像形成に使用される画像形成部材が寿命に達したか否かを判定するために用いられ、画像不良の発生に関連する関連パラメーターの閾値を、ユーザーによって画像不良と判断された実画像に基づいて設定する際に、ユーザーによって画像不良と判断された実画像における画像不良の種類と程度とを特定し、特定された画像不良の種類と程度とに基づいて、画像不良の種類毎に前記閾値を設定する処理と、
画像形成された画像に関する前記関連パラメーターの実測値と前記閾値とに基づいて、前記画像形成部材が寿命に達したか否かを判定する処理と、
を実行させる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、画像形成部材の寿命判定を、ユーザーの品質要求等に対応した高い精度で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本実施の形態における画像形成装置の全体構成を概略的に示す図である。
図2図1の画像形成装置における制御系の主要部を示すブロック図である。
図3】通常の診断モードにおける処理の流れを示すフローチャートである。
図4】画像不良を分類して記憶する例を説明する表である。
図5】本実施の形態の診断モードで使用されるユーザー閾値(関連パラメーターの閾値)の設定または更新の処理の一例を示すフローチャートである。
図6】本実施の形態の診断モードにおける処理の流れの概要を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、画像形成装置の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0026】
図1は、本発明の実施の形態における画像形成装置1の全体構成を概略的に示す図である。図2は、本実施の形態における画像形成装置1の制御系の主要部を示す。
【0027】
図1、2に示す画像形成装置1は、電子写真プロセス技術を利用した中間転写方式のカラー画像形成装置である。すなわち、画像形成装置1は、感光体ドラム413上に形成されたY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色トナー像を中間転写ベルト421に一次転写し、中間転写ベルト421上で4色のトナー像を重ね合わせた後、用紙Sに二次転写することにより、トナー像を形成する。
【0028】
また、画像形成装置1には、YMCKの4色に対応する感光体ドラム413を中間転写ベルト421の走行方向に直列配置し、中間転写ベルト421に一回の手順で各色トナー像を順次転写させるタンデム方式が採用されている。
【0029】
図2に示すように、画像形成装置1は、画像読取部10、操作表示部20、画像処理部30、画像形成部40、用紙搬送部50、定着部60、出力画像読取部80および制御部100等を備える。
【0030】
制御部100は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103等を備える。CPU101は、ROM102から処理内容に応じたプログラムを読み出してRAM103に展開し、展開したプログラムと協働して画像形成装置1の各ブロックの動作を集中制御する。このとき、記憶部72に格納されている各種データが参照される。記憶部72は、例えば不揮発性の半導体メモリ(いわゆるフラッシュメモリ)やハードディスクドライブで構成される。
【0031】
本実施の形態では、制御部100は、本発明の「寿命判定装置」としての主たる役割も担っており、かかる寿命判定の方法等については後述する。
【0032】
制御部100は、通信部71を介して、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等の通信ネットワークに接続された外部の装置(例えばパーソナルコンピューター)との間で各種データの送受信を行う。制御部100は、例えば、外部の装置から送信された画像データを受信し、この画像データ(入力画像データ)に基づいて用紙Sにトナー像を形成させる。
【0033】
通信部71は、例えばLANカード等の通信制御カードで構成される。本実施の形態では、通信部71は、制御部100による後述する種々の診断結果やデータをサーバー等の外部装置に送信する「送信部」として機能する。
【0034】
画像読取部10は、ADF(Auto Document Feeder)と称される自動原稿給紙装置11および原稿画像走査装置12(スキャナー)等を備えて構成される。
【0035】
自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された原稿Dを搬送機構により搬送して原稿画像走査装置12へ送り出す。自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された多数枚の原稿Dの画像(両面を含む)を連続して一挙に読み取ることができる。
【0036】
原稿画像走査装置12は、自動原稿給紙装置11からコンタクトガラス上に搬送された原稿またはコンタクトガラス上に載置された原稿を光学的に走査し、原稿からの反射光をCCD(Charge Coupled Device)センサー12aの受光面上に結像させ、原稿画像を読み取る。画像読取部10は、原稿画像走査装置12による読取結果に基づいて入力画像データを生成する。この入力画像データには、画像処理部30において所定の画像処理が施される。
【0037】
操作表示部20は、例えばタッチパネル付の液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)で構成され、表示部21および操作部22として機能する。表示部21は、制御部100から入力される表示制御信号に従って、各種操作画面、画像の状態表示、各機能の動作状況等の表示を行う。操作部22は、テンキー、スタートキー等の各種操作キーを備え、ユーザーによる各種入力操作を受け付けて、操作信号を制御部100に出力する。
【0038】
画像処理部30は、入力画像データに対して、初期設定またはユーザー設定に応じたデジタル画像処理を行う回路等を備える。例えば、画像処理部30は、制御部100の制御下で、記憶部72内の階調補正データ(階調補正テーブルLUT)に基づいて階調補正を行う。かかる階調補正の処理の詳細については後述する。また、画像処理部30は、入力画像データに対して、階調補正の他、色補正、シェーディング補正等の各種補正処理や、圧縮処理等を施す。これらの処理が施された画像データに基づいて、画像形成部40が制御される。
【0039】
画像形成部40は、入力画像データに基づいて、Y成分、M成分、C成分、K成分の各有色トナーによる画像を形成するための画像形成ユニット41Y、41M、41C、41K、中間転写ユニット42等を備える。
【0040】
Y成分、M成分、C成分、K成分用の画像形成ユニット41Y、41M、41C、41Kは、同様の構成を有する。図示及び説明の便宜上、共通する構成要素は同一の符号で示し、それぞれを区別する場合には符号にY、M、C、又はKを添えて示す。図1では、Y成分用の画像形成ユニット41Yの構成要素についてのみ符号が付され、その他の画像形成ユニット41M、41C、41Kの構成要素については符号が省略されている。
【0041】
画像形成ユニット41は、露光装置411、現像装置412、感光体ドラム413、帯電装置414、およびドラムクリーニング装置415等を備える。
【0042】
感光体ドラム413は、例えばアルミニウム製の導電性円筒体(アルミ素管)の周面に、アンダーコート層(UCL:Under Coat Layer)、電荷発生層(CGL:Charge Generation Layer)、電荷輸送層(CTL:Charge Transport Layer)を順次積層した負帯電型の有機感光体(OPC:Organic Photo-conductor)である。電荷発生層は、電荷発生材料(例えばフタロシアニン顔料)を樹脂バインダー(例えばポリカーボネイト)に分散させた有機半導体からなり、露光装置411による露光により一対の正電荷と負電荷を発生する。電荷輸送層は、正孔輸送性材料(電子供与性含窒素化合物)を樹脂バインダー(例えばポリカーボネイト樹脂)に分散させたものからなり、電荷発生層で発生した正電荷を電荷輸送層の表面まで輸送する。
【0043】
制御部100は、感光体ドラム413を回転させる駆動モーター(図示略)に供給される駆動電流を制御することにより、感光体ドラム413を一定の周速度で回転させる。
【0044】
帯電装置414は、光導電性を有する感光体ドラム413の表面を一様に負極性に帯電させる。露光装置411は、例えば半導体レーザーで構成され、感光体ドラム413に対して各色成分の画像に対応するレーザー光を照射する。感光体ドラム413の電荷発生層で正電荷が発生し、電荷輸送層の表面まで輸送されることにより、感光体ドラム413の表面電荷(負電荷)が中和される。感光体ドラム413の表面には、周囲との電位差により各色成分の静電潜像が形成される。
【0045】
現像装置412は、例えば二成分現像方式の現像装置であり、感光体ドラム413の表面に各色成分のトナーを付着させることにより静電潜像を可視化してトナー像を形成する。
【0046】
ドラムクリーニング装置415は、感光体ドラム413の表面に摺接されるドラムクリーニングブレード等を有し、一次転写後に感光体ドラム413の表面に残存する転写残トナーを除去する。
【0047】
中間転写ユニット42は、像担持体としての中間転写ベルト421、一次転写ローラー422、複数の支持ローラー423、二次転写ローラー424、及びベルトクリーニング装置426等を備える。
【0048】
中間転写ベルト421は、無端状ベルトで構成され、複数の支持ローラー423にループ状に張架される。複数の支持ローラー423のうちの少なくとも1つは駆動ローラーで構成され、その他は従動ローラーで構成される。例えば、K成分用の一次転写ローラー422よりもベルト走行方向下流側に配置されるローラー423Aが駆動ローラーであることが好ましい。これにより、一次転写部におけるベルトの走行速度を一定に保持しやすくなる。駆動ローラー423Aが回転することにより、中間転写ベルト421は矢印A方向に一定速度で走行する。
【0049】
一次転写ローラー422は、各色成分の感光体ドラム413に対向して、中間転写ベルト421の内周面側に配置される。中間転写ベルト421を挟んで、一次転写ローラー422が感光体ドラム413に圧接されることにより、感光体ドラム413から中間転写ベルト421へトナー像を転写するための一次転写ニップが形成される。
【0050】
二次転写ローラー424は、駆動ローラー423Aのベルト走行方向下流側に配置されるバックアップローラー423Bに対向して、中間転写ベルト421の外周面側に配置される。中間転写ベルト421を挟んで、二次転写ローラー424がバックアップローラー423Bに圧接されることにより、中間転写ベルト421から用紙Sへトナー像を転写するための二次転写ニップが形成される。
【0051】
一次転写ニップを中間転写ベルト421が通過する際、感光体ドラム413上のトナー像が中間転写ベルト421に順次重ねて一次転写される。具体的には、一次転写ローラー422に一次転写バイアスを印加し、中間転写ベルト421の裏面側(一次転写ローラー422と当接する側)にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、トナー像は中間転写ベルト421に静電的に転写される。
【0052】
その後、用紙Sが二次転写ニップを通過する際、中間転写ベルト421上のトナー像が用紙Sに二次転写される。具体的には、二次転写ローラー424に二次転写バイアスを印加し、用紙Sの裏面側(二次転写ローラー424と当接する側)にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、トナー像は用紙Sに静電的に転写される。トナー像が転写された用紙Sは定着部60に向けて搬送される。
【0053】
ベルトクリーニング装置426は、中間転写ベルト421の表面に摺接するベルトクリーニングブレード等を有し、二次転写後に中間転写ベルト421の表面に残留する転写残トナーを除去する。
【0054】
定着部60は、用紙Sの定着面(トナー像が形成されている面)側に配置される定着面側部材を有する上側定着部60A、用紙Sの裏面(定着面の反対の面)側に配置される裏面側支持部材を有する下側定着部60B、及び加熱源60C等を備える。定着面側部材に裏面側支持部材が圧接されることにより、用紙Sを狭持して搬送する定着ニップが形成される。
【0055】
定着部60は、トナー像が二次転写され、搬送されてきた用紙Sを定着ニップで加熱、加圧することにより、用紙Sにトナー像を定着させる。定着部60は、定着器F内にユニットとして配置される。また、定着器Fには、エアを吹き付けることにより、定着面側部材から用紙Sを分離させるエア分離ユニット60Dが配置されている。
【0056】
用紙搬送部50は、給紙部51、排紙部52および搬送経路部53等を備える。給紙部51を構成する3つの給紙トレイユニット51a~51cには、坪量やサイズ等に基づいて識別された用紙S(規格用紙、特殊用紙)が予め設定された種類ごとに収容される。搬送経路部53は、レジストローラー対53a等の複数の搬送ローラー対を有する。
【0057】
給紙トレイユニット51a~51cに収容されている用紙Sは、最上部から一枚ずつ送出され、搬送経路部53により画像形成部40に搬送される。このとき、レジストローラー対53aが配設されたレジストローラー部により、給紙された用紙Sの傾きが補正されるとともに搬送タイミングが調整される。そして、画像形成部40において、中間転写ベルト421のトナー像が用紙Sの一方の面に一括して二次転写され、定着部60において定着工程が施される。画像形成された用紙Sは、排紙ローラー52aを備えた排紙部52により機外に排紙される。
【0058】
出力画像読取部80は、像担持体としての用紙S上に出力(形成)された画像(トナー像)を読み取るものである。本実施の形態では、出力画像読取部80は、光を射出する発光部としての複数の発光素子(例えば、赤外光を射出する赤外LEDアレイ)と、かかる光の反射光を受光する受光部としての受光素子(例えば、フォトダイオード)と、を備えた光学式のセンサーである。
【0059】
出力画像読取部80は、制御部100の制御信号に基づいて動作し、用紙上に形成された画像(トナー像)を読み取り画像データとして制御部100に出力する。
【0060】
本実施の形態では、出力画像読取部80は、定着部60の下流かつ排紙部52の上流側に配置されている。出力画像読取部80は、上記複数の赤外LEDアレイが用紙Sの幅方向(搬送方向と直交する方向)に位置するように配置されている。
【0061】
出力画像読取部80は、画像形成された用紙S上に各々の赤外LEDアレイから赤外光を照射し、その反射光をフォトダイオードにて受光し、かかる受光量(用紙S上の画像の濃度)に応じた電気信号をA/D変換し、読み取り画像データとして制御部100に出力する。
【0062】
本実施の形態において、出力画像読取部80は、画像形成装置1によって印刷ジョブの画像が印刷(出力ないし形成)された用紙S上の実画像、あるいは用紙Sに出力(印刷)されたテストチャートを読み取り、読み取った画像のデータを制御部100に出力する。
【0063】
ここでは、用紙S上の「実画像」とは、ユーザーが実際の印刷(実印刷)時に印刷物(原稿や納品物など)として出力する画像を意味し、後述する画像検査(診断モード)時に用紙Sに出力(印刷)するテストチャート(検査用画像)とは区別して説明する。
【0064】
(診断モードの処理)
ところで、画像形成装置1では、ユーザーが満足できる品質の画像を出力することが求められる一方、部品の耐久等により、用紙に出力される画像は、徐々にではあるが、不可避的に劣化してゆく性質を有している。このため、用紙上に出力されたトナー像の画像不良の有無、および画像不良がある場合に原因となる部品の特定等について定期的に診断する必要がある。
【0065】
本実施の形態の画像形成装置1の制御部100は、上記のように自機内に設けた出力画像読取部80の読み取り結果に基づいて、上記トナー像の画像品質および不良部品等の検査さらには交換可能な部品の寿命予測や寿命に達したか否かの判定など)を定期的に行う。以下、この診断を「診断モード」と称する。
【0066】
本実施の形態では、主として制御部100が本発明の「寿命判定装置」に対応し、出力画像読取部80もかかる寿命判定装置の一部をなす。
【0067】
すなわち、制御部100は、出力画像読取部80によって読み取られた画像の劣化の種類および程度を解析する「解析部」として機能し、画像形成装置1における画像形成に使用される消耗部品(画像形成部材)の寿命を予測する「予測部」としても機能する。
【0068】
また、本発明との対応関係では、制御部100は、上記の画像形成部材が寿命に達したか否かを判定する「寿命判定部」、後述する「設定部」として機能する。また、制御部100は、画像形成された画像に画像不良が発生した場合、当該画像不良の原因となる画像形成部材を特定する「特定部」としても機能する。
【0069】
以下、図3を参照して、本実施の形態の画像形成装置1で実行される、従来技術による通常の診断モードの処理の概要を説明する。
【0070】
例えばユーザーにより操作部22の所定のボタンが選択されると、画像形成装置1の制御部100は、診断モードに移行して、予め定められた検査用の画像(テストチャート)を用紙Sに形成(印刷)するように各部を制御する(ステップS101)。
【0071】
一具体例では、検査用の画像は、各々のトナーの色(Y,M,C,K)毎に区分けされた帯状のハーフトーン画像(またはベタ画像)である。かかる検査用の画像のデータは、予め記憶部72に格納されている。以下は、上述した「実画像」と区別するため、検査用の画像を単に「検査画像」と称する。
【0072】
このとき、制御部100は、検査画像の画像データを記憶部72から読み出してRAM103などの作業領域に展開し、かかる検査画像を用紙S上に印刷するように、画像処理部30、画像形成部40、用紙搬送部50、定着部60等を制御する。また、このとき制御部100は、出力画像読取部80を稼働させて、用紙S上の検査画像を出力画像読取部80に読み取らせる。
【0073】
続いて、制御部100は、出力画像読取部80から検査画像のデータ(濃度情報)を取得し、取得されたデータをメモリー(RAM103など)に一時記憶する(ステップS102)。
【0074】
さらに、制御部100は、「解析部」の機能に基づき、出力画像読取部80によって読み取られた用紙S上の画像(ここでは検査画像)を解析して、出力画像読取部80によって読み取られた用紙S上の検査画像が正常であるか(画像不良がないか)を判定する(ステップS103)。
【0075】
一具体例では、この解析および判定は、上述のように作業領域に展開された検査画像の画像データをいわゆる「正解画像」とし、かかる正解画像の濃度(濃度分布)と、用紙S上の検査画像の読み取り画像の濃度(濃度分布)との差分(濃度差)を特定することによって行う。
【0076】
なお、検査画像の正解画像としては、RAM103に展開された画像を直接使用する場合の他、サンプル画像として検査画像が既に印刷されたもの(印刷済み記録媒体)を出力画像読取部80に読み取らせて、当該読み取られた画像を使用してもよい。
【0077】
ここで、制御部100は、用紙S上の検査画像が正常であり画像不良がない(ステップS103、YES)と判定した場合、ステップS104に移行する。一方、制御部100は、用紙S上の検査画像に画像不良がある(ステップS103、NO)と判定した場合、ステップS106に移行する。
【0078】
画像不良がないと判定した後のステップS104において、制御部100は、診断対象となる画像形成部材(部品)の使用条件情報(現在までの使用量、現在の温湿度情報などの使用履歴)を、診断対象となる部品毎に更新する。そして、制御部100は、該更新された情報を用いて、部品毎に寿命予測を行う(ステップS105)。
【0079】
この寿命予測は、画像形成装置1を構成する各部品のうち、寿命予測の対象となる部品(ここでは画像形成に使用される画像形成部材)が寿命(耐用限界)となる使用量(実使用量)を「寿命閾値」として部品毎に規定し、これら部品が寿命閾値に達する時期を予測することによって行う。そして、制御部100は、予測対象とされた各々の部品が、当該予測した時期に達したか否かを基準として、寿命に達したか否かを判定する。
【0080】
また、制御部100は、上述した使用条件情報や濃度差の解析結果等に基づいて、今後の画像の劣化の推移や最初に発生し得る画像不良の種類、および当該画像不良を解消するために交換を要する部品を特定することによって、当該部品が寿命閾値に達する時期を予測する。
【0081】
なお、使用条件情報等の内容については適宜、後述する。
【0082】
一方、ステップS106において、制御部100は、発生した画像不良の種類を特定する。
【0083】
ここで、制御部100により画像不良の種類を特定する手法の一具体例を、図4を参照して説明する。図4では、出力画像読取部80によって読み取られた検査画像に矩形形状の画像不良(いわゆるノイズ画像)が発生した場合における画像不良の種類の分類例を示している。
【0084】
図4に示す例では、制御部100は、矩形の画像不良部分のサイズによって、「ポチ」、「縦スジ」、「横スジ」、「帯」のいずれかの種類に特定(分類)する。具体的には、制御部100は、画像不良部分の搬送方向(通紙方向)に沿った長さ、および通紙方向と直交する方向の長さ(幅)がいずれも1mm未満の場合には、当該画像不良部分は「ポチ」と特定する。
【0085】
これに対して、画像不良部分の長さが1mm未満で幅が1mm以上の場合は「横スジ」であると特定され、逆に画像不良部分の長さが1mm以上で幅が1mm未満の場合は「縦スジ」であると特定される。また、画像不良部分の長さおよび幅がいずれも1mm以上の場合には、「帯」に分類され、さらに、長さよりも幅が長い場合には「横帯」であり、長さよりも幅が短い場合には「縦帯」であると特定される。
【0086】
加えて、制御部100は、上述した画像不良の種類の色に関する特定(分類)も行う。すなわち、制御部100は、画像不良部分が画像欠落(いわゆる白抜け)の場合、「白ポチ」、「白縦スジ」、「白横スジ」、「白帯」として特定する。一方、制御部100は、画像不良部分が特定の色のノイズ画像の場合、「色ポチ」、「色縦スジ」、「色横スジ」、「色帯」として特定する。
【0087】
なお、制御部100は、画像不良部分が矩形以外の不定形の場合、当該画像不良を「濃度ムラ」として分類(種類特定)する。
【0088】
続くステップS107において、制御部100は、画像不良の程度(レベル)、言い換えると画像の劣化の度合いまたは水準(等級)を特定する。
【0089】
例えば、通紙方向に白スジが発生した場合、制御部100は、当該画像不良発生部分の濃度とその周囲部分の濃度との濃度差に基づいて、スジ(この場合は白縦スジ)の発生有無に加え、スジの程度(等級など)を特定することができる。
【0090】
なお、ステップS106において画像不良部分が複数種類発生している場合、ステップS107で制御部100は、画像不良の程度を、前ステップで特定された種類毎に特定する。
【0091】
また、制御部100は、上述したステップS104と同様に、診断対象となる消耗部品(画像形性部材)の使用条件情報(使用履歴)を、部品毎に更新する(ステップS108)。
【0092】
ここで、使用条件情報(使用履歴)には、例えば当該部品の使用量(稼働時間、用紙の搬送距離、印刷の総枚数、など)、当該部品の物性値の変化(例えば抵抗値の推移など)や使用状況(温度および湿度の平均値、一日当たりの平均印刷枚数など)など、種々のものが含まれる。
【0093】
そして、制御部100は、ステップS106とS107において特定された画像不良の種類と程度、ステップS108で更新された使用条件情報、などの種々の情報を用いて、当該画像不良の原因となった不良部品を特定する(ステップS109)。
【0094】
例えば、仮に現像装置412(図1参照)のブレード(規制部)にゴミ等の異物が挟まって縦スジが発生する場合、画像不良の発生当初は細く薄い縦スジであっても、当該異物はトナーの付着により肥大化してゆくため、通紙枚数に応じて次第に濃く、幅も広い縦スジになってゆく。
【0095】
一方、かかるブレード(規制部)の寿命閾値の一例としては、上述した縦スジが視認して分かる(あるいは目立つ)程度の「幅」や「濃度」の値が登録される。なお、かかる幅や濃度の具体的な値は、専ら製造者あるいはサービスマン側の視点で決定される。
【0096】
かくして、制御部100は、診断対象部品各々に設定された寿命閾値を参照するとともに、過去に実行された診断モードでの診断結果を参照する、さらにはステップS101~ステップS108の処理を適宜繰り返し実行する等により、不良部品を特定することができる。
【0097】
言い換えると、ステップS109における不良部品の特定の処理は、画像形成に使用される種々の部品(画像形成部材)のうち、寿命に達した部品を特定ないし判定(判別)する処理である。
【0098】
そして、ステップS110において、制御部100は、通信部71を通じて外部のサーバー等と通信することにより、画像不良が発生した旨、発生した画像不良の種類および程度、特定された不良部品(この例ではブレード)、等をサービスマンに通知する処理を行う。
【0099】
なお、上記の事例は、画像不良の原因(すなわち不良部品)が比較的分かり易い場合であり、画像不良の態様によっては不良部品の特定がし難い或いは一つに絞り込めない場合もあり得る。そのような場合でも、画像不良の種類および程度等の情報がサービスマンに通知されることにより、不良部品を特定するための有効な手がかりとして利用できる。
【0100】
かくして、画像形成装置1における通常の診断モードでは、トナー像の形状等が予め定められているテスト用の検査画像を用紙S上に出力し、かかる検査画像を読み取って不良画像の有無や不良部品、各部品の寿命等についての診断(解析、判定等)を行う。
【0101】
ところで、画像形成装置1の使用(印刷)の用途や出力画像に求める品質は、個々のユーザーによって異なる。例えば、主として写真集やパンフレット等の製作のため、フルカラーの写真データを厚紙やコート紙などに印刷するユーザーAと、主として原稿作成のため、黒色のテキスト(文字データ)を普通紙や裏紙に日々大量に印刷するユーザーBとでは、出力画像に求める品質が大きく異なる。
【0102】
すなわち、一般的な傾向としては、ユーザーAの方がユーザーBよりも出力画像に要求する品質の水準が高い。また、ユーザーBのように印刷の利用頻度が高い場合、故障やメンテナンス等により画像形成装置1が使用できなくなるいわゆる待ち時間が発生することを嫌う傾向が高い。
【0103】
さらには、仮にユーザーAとユーザーBとが同一の画像形成装置1を使用した場合であっても、上記のような印刷の用途ひいては出力する用紙の種類や頻度等が大きく異なる場合、消耗あるいは故障しやすい部品等も異なる傾向が生じる。
【0104】
このような実情から、図3で説明したように、比較的単純な(いわば規格化された)検査画像を使用し、また画像不良に関連した閾値をサービスマン側の視点から設定して実行する通常の診断モードでは、必ずしも良い結果が得られないことが分かってきた。
【0105】
また、例えば特許文献1に記載の技術では、異常画像(画像不良)の有無の判定を、入力画像データに基づくマスター画像と、実際に用紙に印刷され読み取られた検査対象画像とを比較して行うようにしている(段落0032等参照)。加えて、特許文献1に記載の技術では、閾値を、異常画像(画像不良)の種類毎に予めユーザーが任意に設定できる構成とすることが提案されている。
【0106】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、以下のように、閾値の設定段階でのユーザー側の負担が過大化する問題がある。
【0107】
具体的には、閾値の設定時に画像形成装置が新品であるような場合、初期時から画像不良が発生する事は稀であるため、特許文献1に記載の技術によれば、ユーザーは、数多くのサンプル画像を見比べ、要求品質を満たさないサンプルを選択し、それに対応する閾値を設定する必要がある。
【0108】
しかしながら、上記のようにサンプル画像を基準とした画像不良の閾値設定は、画像不良の種類(縦スジ、横スジ、ポチ、帯、ムラ、・・など)毎に設定する場合にユーザーの負担が過大化する。また、サンプル画像を基準とした画像不良の閾値設定は、将来的に発生する実際の不良画像との乖離が発生しやすくなり、さらにはユーザーの要求品質が変化した場合にも柔軟に対応しにくい、という課題がある。
【0109】
総じて、画像不良が生じにくい画像形成装置の初期搬入段階で、自らの求める画像品質に合致する閾値をユーザー視点で設定することは困難であり、ユーザーの許容できない画像不良が実際に発生した段階で閾値を設定した方が、実用的で無駄がないと考えられる。
【0110】
また、画像形成装置1の出力物を見たユーザーが「これはそろそろ装置のメンテナンスが必要である」と感じられる程度の画像劣化が発生するタイミングで、当該画像劣化の原因となる部品がサービスマンに通知される仕組みを構築すべき、と考えられる。
【0111】
上述のような実情に鑑みて、本実施の形態における画像形成装置1では、診断モードにおける診断対象を、「実画像」すなわち実際の印刷ジョブで出力物ないし納品物として印刷される画像を、検査画像に代替して或いは追加的に使用する。
【0112】
また、本実施の形態では、ユーザーが実際に「許容できない画像劣化が発生した」と感じるようになった時点での実画像の画像劣化度の値を、画像形成に使用される画像形成部材が寿命となる使用量の寿命閾値に関連する画像不良閾値として設定する。
【0113】
ここで、画像不良閾値は、本発明の「関連パラメーターの閾値」に対応するものであり、画像形成に使用される画像形成部材が寿命に達したか否かを判定するために用いられる。また、関連パラメーターは、画像不良の発生に関連するパラメーターであり、本実施の形態では「画像内の濃度差」を用いる。
【0114】
本発明との対応関係では、操作表示部20および制御部100は、上記の画像不良閾値(関連パラメーターの閾値)を設定する「設定部」の役割を担う。
【0115】
そして、制御部100は、設定された画像不良閾値を用いて、画像不良を発生させた画像形成部材を特定する処理、および画像形成部材が寿命に達したか否かを判定する寿命判定の処理、さらには他の画像形成部材が寿命閾値に達する時期を予測する処理、等を行う。
【0116】
なお、実際の運用事例としては、画像形成装置1が専ら正常に稼働している初期搬入段階では、画像不良に関する閾値として、画像形成装置1の製造者側ないしサービスマン側で規定した一般的な基準(以下、この閾値を「検査閾値」という)を用いる。
【0117】
これに対して、画像形成装置1の耐久が進んだ場合、あるいは初期搬入段階でも装置内部にゴミが入り込んだ等により、ユーザーにとっての画像不良(すなわち許容できない画像劣化)が発生した場合、上述の設定部を用いて、ユーザー毎の画像不良閾値を設定する。以下、画像形成装置1のユーザー側の視点でユーザー毎に設定されたこの画像不良閾値を、「ユーザー閾値」と称する。
【0118】
かかるユーザー閾値は、例えば上記の一般的な基準としての検査閾値を更新あるいは書き換えることによって設定することができる。一方、かかる設定操作は一般のユーザーにとっては煩雑になることから、ユーザー閾値は、サービスマンが上述した設定部(例えば、表示部21に表示された診断モードの設定画面)の入力操作を行って設定するとよい。そして、ユーザー閾値が設定された後は、制御部100は、診断モードにおける画像不良の有無の判定(図3のステップS103参照)等の基準に、現在設定されているユーザー閾値を用いる。
【0119】
かくして、本実施の形態では、ユーザー毎の好みや実情に応じた画像不良に対する判断を部品の診断に反映させて、「メンテナンスがそろそろ必要かもしれない」と感じる程度の画像劣化が発生する時期にサービスマンへの通知が行われる仕組みを構築する。
【0120】
このようなコンセプトに基づいた仕組みを構築することにより、例えばユーザー毎の印刷の実態に応じた消耗部品が画像不良の原因である旨の特定がされやすくなり、結果として、いずれのユーザーにとっても、メンテナンス作業発生に伴う待ち時間が減り、印刷の生産性を高めることができる。
【0121】
すなわち、画像品質の要求が厳しいユーザーは、画像不良発生に伴う印刷作業中止の時間が最小限に抑えられ、印刷の生産性をより向上させることができる。一方、画像品質の要求が低い(緩い)ユーザーにとっては、消耗部品が耐久限界に近い程度まで使用されることで低コスト化を図ることができ、また、一定期間当たりのメンテナンス回数が減ることから、印刷の生産性を高めることができる。
【0122】
さらに、本実施の形態では、画像不良の有無等に関連する閾値を、製造者ないしサービスマン側の視点で規定される検査閾値(いわば第1閾値)と、ユーザー側の視点(要求品質等)に基づいて規定(設定)されるユーザー閾値(いわば第2閾値)の2つを用いることとした。そして、このうちのユーザー閾値(第2閾値)が本発明の「関連パラメーターの閾値」に対応する。
【0123】
さらに、本実施の形態では、ユーザー閾値(第2閾値)が更新される場合、従前のユーザー閾値を単に書き換えるのではなく、更新の前に設定された各々のユーザー閾値の値も使用(加味)した新たなユーザー閾値を生成して更新する。
【0124】
上述のような構成とすることにより、ユーザー閾値の設定後にユーザーの画像品質に対する要求が変化した場合でも、ユーザー閾値の更新や診断モードの処理等について柔軟に対応することができる。
【0125】
以下、上述したコンセプトに基づく本実施の形態における診断モードの処理の流れを、図5および図6のフローチャートを参照して説明する。なお、上述した図3のフローチャートと同一の処理については、適宜、同一または類似のステップ番号を付して説明を省略する。
【0126】
まず、ユーザー側の要求品質により規定されるユーザー閾値(第2閾値)の生成または更新(蓄積)の処理を、図5のフローチャートに示す。なお、図5に示すルーチンは、例えば、総印刷枚数や総使用時間が所定量を超えた後の印刷ジョブの実行時に自動的に起動することができる。あるいは、図5に示すルーチンは、画像形成装置1による印刷ジョブの出力画像の品質が悪くなったと感じるユーザーが、診断モードの設定画面の操作を通じて実行することができる。
【0127】
ステップS101Aにおいて、制御部100は、印刷動作を開始して印刷ジョブの入力画像を用紙Sに出力するように画像形成装置1の上述した各部を制御する。この印刷動作自体は通常の印刷ジョブの実行の場合と同様である。
【0128】
なお、ステップS101Aおよび続くステップS102Aは、図3で上述したステップS101およびステップS102に対応するものであり、このとき制御部100は、出力画像読取部80を稼働させて、用紙Sに形成された実画像(印刷ジョブの入力画像データに基づく画像)を、出力画像読取部80に読み取らせる。
【0129】
続いて、制御部100は、出力画像読取部80から実画像のデータを取得し、取得されたデータをメモリー(RAM103など)に一時記憶する(ステップS102A)。
【0130】
また、制御部100は、当該印刷ジョブの実行中に、画像不良が発生した旨の指摘がされたか否かを判定する(ステップS13)。制御部100は、かかる指摘の有無を、ユーザーにより所定のスイッチ(例えば、表示部21に表示された、「許容できない画像不良発生」を指摘するためのスイッチ)が選択されたか否かにより判定する。
【0131】
ここで、制御部100は、当該印刷ジョブの実行中に、画像不良が発生した旨の指摘がされなかったと判定した場合(ステップS13、NO)、印刷ジョブを終了させて本ルーチンを終了する。なお、制御部100は、印刷ジョブが完了するまでの間、図3で上述したステップS104およびステップS105の処理を実行することができる。
【0132】
一方、制御部100は、当該印刷ジョブの実行中に画像不良が発生した旨の指摘がされたと判定した場合(ステップS13、YES)、ステップS16に移行する。このとき、任意に或いはユーザー設定に応じて、制御部100は、当該印刷ジョブを一時的に停止または中断(終了)することができる。
【0133】
ステップS16において、制御部100は、実画像における画像不良の種類と程度を特定する。この処理は、図3で上述したステップS106およびステップS107の処理と同様である。
【0134】
ステップS17において、制御部100は、画像不良の種類毎のユーザー閾値(第2閾値)を、前ステップで特定された画像不良の種類毎に生成または更新する。ここで、ユーザー閾値(第2閾値)の生成は、特定された画像不良の種類における既存の標準的な閾値(第1閾値)を書き換えることで、新たな閾値として生成することができる。
【0135】
一方、既に設定されたユーザー閾値(第2閾値)を更新する場合、制御部100は、特定された画像不良の種類における既存のユーザー閾値(第2閾値)を変更する。ここで、本実施の形態では、ユーザー閾値(第2閾値)を更新する場合、過去のユーザー閾値(第2閾値)を削除せずに、保存しておく。
【0136】
そして、本実施の形態では、制御部100は、ステップS17においてユーザー閾値を既存の値から更新する場合、ステップS16で特定された値に重みを付けて更新を行う。言い換えると、制御部100は、ユーザーによって先に画像不良と判断された実画像よりも、後に画像不良と判断された実画像に重みを付けて、ユーザー閾値(関連パラメーターの閾値)を設定(更新すなわち再設定)する。
【0137】
この結果、ユーザー閾値が、ユーザーの感覚や価値観等の変化に柔軟に対応させるように更新(補正)され、更新前のユーザー閾値(第2閾値すなわち画像不良閾値)と更新後のユーザー閾値(画像不良閾値)とを用いて部品(画像形成部材)の寿命予測を行うことができる。
【0138】
続いて、制御部100は、図3で上述したステップS108~ステップS110の処理を行って、本ルーチンを終了する。なお、ステップS110では、制御部100は、上述した各情報に加えて、ユーザーによって指摘され画像不良が発生した用紙上の画像全体のデータ、生成または更新されたユーザー閾値(第2閾値)の値もサービスマンに通知する。
【0139】
上記のようにして生成されたユーザー閾値(第2閾値)または過去に生成および更新された全てのユーザー閾値(第2閾値)を用いた不良部品特定(ステップS109)の処理を行うことで、より正確かつ実態に即した不良部品の特定を行うことができる。
【0140】
また、ユーザーに指摘された画像全体や、生成または更新されたユーザー閾値(第2閾値)の値が付加的にサービスマンに通知されることにより(ステップS110)、サービスマンは、例えば不良部品の候補が複数ある場合での交換対象の絞り込み等に役立てることができる。
【0141】
なお、図5に示す例では、ユーザー閾値(第2閾値)の生成または更新をステップS17において自動で行うフローについて説明した。他の処理例または設定例として、図5のフローチャートにおけるステップS17の処理を保留ないしスキップして、ユーザー閾値(第2閾値)を手動で設定ないし更新する構成としてもよい。この場合、ステップS110の通知の後にユーザーの元に訪問したサービスマンが、ユーザーの判断や画像品質に対する要求等を聴いた上で、ユーザー閾値(第2閾値)の設定または更新を行えばよい。
【0142】
次に、ユーザー閾値(第2閾値すなわち関連パラメーターの閾値)がある程度設定ないし蓄積された後に実行される診断モードの処理について、図6のフローチャートを参照して説明する。
【0143】
なお、図6に示すフローチャートの処理は、通常の印刷ジョブの実行時に行うことができ、あるいはユーザーの操作表示部20を通じての設定操作により、定期的にまたは任意の時期に行ってもよい。
【0144】
ステップS1において、制御部100は、印刷動作を開始するように画像形成装置1の上述した各部を制御する。この印刷動作自体は通常の印刷ジョブの実行の場合と同様である。
【0145】
なお、ステップS1および続くステップS2は、図3で上述したステップS101およびステップS102に対応する。すなわち、制御部100は、出力画像読取部80を稼働させて、用紙Sに形成されたトナー像(入力画像データに基づく実画像)を、出力画像読取部80に読み取らせる。
【0146】
続いて、制御部100は、出力画像読取部80から一頁分(用紙一枚分)の実画像のデータ(実測値)を取得し、取得された画像データをRAM103の作業領域に一時記憶するとともに、かかる画像データの濃度解析を行う(ステップS2)。
【0147】
次に、制御部100は、出力画像読取部80によって読み取られ実測された一頁分の画像が正常であるか、すなわち実画像の劣化やノイズ画像等の発生(以下は総称して「実画像の異常」と称する)の有無を判定する(ステップS3)。
【0148】
一具体例では、制御部100は、ステップS2で濃度解析された実画像と、印刷ジョブの実行時にRAM等に格納される入力画像の対応箇所の濃度値とを比較して、対応箇所の濃度差が検査閾値以上の場合に実画像の異常がある(ステップS3、YES)と判定する。
【0149】
なお、ここでの実画像の異常の有無に関する閾値は、図3で上述したステップS103の「画像不良の有無」の判定の場合と同等の値に設定してもよい。一具体例では、ステップS3における実画像の異常の有無の判定の閾値は、出力画像読取部80の誤差のバラツキを超えた劣化やノイズ画像等があるか否かを基準として設定され得る。
【0150】
総じて、この実画像の異常の有無の判定の閾値は、画像品質の要求が最も高い(厳しい)ユーザーを基準として設定するとよい。言い換えると、この時点では、ユーザー閾値(第2閾値)すなわちユーザーの好み等に応じた判断基準は適用されず、画一的な判断基準(第1閾値)が適用される。
【0151】
ここで、制御部100は、一頁内の濃度差が検査閾値以上ではない(ステップS3、NO)、と判定した場合、一頁分の実画像が正常であると判断し、ステップS4~ステップS11をスキップしてステップS12に移行する。一方、制御部100は、一頁内の濃度差が検査閾値以上である(ステップS3、YES)と判定した場合、一頁分の実画像に異常があると判断してステップS4に移行する。
【0152】
ステップS4において、制御部100は、用紙S上の異常な画像部分(以下、「異常画像部」という)の形状を分類する。このステップS4の処理は、図3で上述したステップS106における画像不良の種類の特定ないし分類と同様であり、制御部100は、スジ(縦スジ、横スジ)、白ポチ、色ポチ、帯、色ムラ、などを識別ないし特定する。
【0153】
続くステップS5において、制御部100は、異常画像部(すなわち画像の劣化)の程度または水準(この例では濃度差)を、前ステップで分類(特定)された形状(すなわち種類)毎に特定し、各々の形状および対応する濃度差を記憶部72に記憶する。かかる処理により、例えば、実際に発生したスジのサイズ(縦および横の長さ)や、色ポチや白ポチの詳細なサイズなどが特定および保存される。制御部100は、かかる特定結果を、記憶部72にデータベース化して記憶する(適宜図4を参照)。
【0154】
なお、ステップS6および続くステップS7は、図3で上述したステップS108およびステップS109に対応する。まず、制御部100は、画像形成装置1(ユーザー)の「使用条件情報」を、診断対象となる画像形成部材(部品)毎に更新する(ステップS6)。この使用条件情報は、画像形成装置1のメモリ(記憶部72等)に記憶(蓄積)される情報(データ)であり、本発明の「使用履歴」に対応する。
【0155】
ここで、「使用条件情報」には、診断対象となる画像形成部材(部品)の使用情報が含まれる。この使用情報には、部品の実使用量(使用回数や使用時間など)、部品の物性推移(抵抗値の変化など)、画像形成装置1の印刷時における画像形成条件、などが含まれる。ここで、「画像形成条件」は、例えば、画像形成装置1の周囲(すなわち機内および機外)の温度や湿度、単位時間あたりの印刷枚数(例えば1日の平均印刷枚数)、一の印刷ジョブにおける総印刷枚数など、である。なお、これは例示であり、他にも部品の種類等に応じて様々な情報を用いることができる。
【0156】
そして、制御部100は、ステップS4およびS5において特定された異常画像部(言い換えると画像不良)の種類と程度、ステップS5で更新された使用条件情報、などの種々の情報を用いて、当該実画像の異常発生の原因となった不良部品(画像形成部材)を特定する(ステップS7)。
【0157】
続くステップS8において、制御部100は、上述したステップS3と同様の手法により、実画像が印刷された用紙Sの一頁内において画像不良が有るか否かの判定を行う。但し、ここでの画像不良の有無に関する閾値は、ユーザー閾値(第2閾値)すなわちユーザーの好み等に応じた判断基準が適用された画像不良閾値が使用される。
【0158】
ステップS8の一具体例では、制御部100は、ステップS2で濃度解析された実画像(濃度の実測値)と、印刷ジョブの実行時にRAM等に格納される入力画像の対応箇所の濃度値とを比較して、対応箇所の濃度差が画像不良閾値(すなわち第2閾値としてのユーザー閾値)以上であるか否かを判定する。
【0159】
したがって、この画像不良閾値(ユーザー閾値、第2閾値)を、検査閾値(第1閾値)と同等の値に設定している高い品質を求めるユーザーと、検査閾値(第1閾値)よりも緩い値に設定しているユーザーとでは、ステップS7の特定結果が同じ場合でも、ステップS8の判定結果が異なり得る。
【0160】
そして、制御部100は、一頁内の濃度差が画像不良閾値以上であると判定した場合(ステップS8、YES)、ユーザーが許容できない画像不良があり、ステップS7で特定された不良部品が寿命閾値に達したと判断して、ステップS9に移行する。
【0161】
一方、制御部100は、一頁内の濃度差が画像不良閾値以上ではないと判定した場合(ステップS8、NO)、発生した異常画像部は画像不良ではなくユーザーが許容できるレベルであり、ステップS7で特定された不良部品は寿命閾値に達していないと判断して、ステップS11に移行する。
【0162】
ステップS9において、制御部100は、図3で上述したステップS110と同様に、通信部71を通じて外部のサーバー等と接続し、画像不良が発生した旨、発生した画像不良の種類および程度、特定された不良部品、等をサービスマンに通知する処理を行う。
【0163】
また、続くステップS10において、制御部100は、画像不良が発生した旨、発生した画像不良の種類および程度、特定された不良部品、およびサービスマンへの通知(サービスコール)を行った旨、等を操作表示部20の表示画面に表示してユーザーに告知し、ステップS12に移行する。
【0164】
一方、ステップS11において、制御部100は、図3で上述したステップS105と同様に、ステップS6で更新された部品ユニットの情報条件情報を用いて、ステップS7で特定された不良部品(像形成部材)の寿命予測を行い、この後、ステップS12に移行する。
【0165】
なお、ステップS11の寿命予測の処理において、制御部100は、適宜、ステップS7で特定された不良部品の寿命閾値を補正することができる。また、制御部100は、不良部品の寿命閾値の補正に伴って、適宜、他の画像形性部材の寿命閾値を補正してもよい。
【0166】
さらに、ステップS11の寿命予測の処理において、制御部100は、例えばステップS7で特定された不良部品および当該不良部品について予測された寿命時期を、通信部71を介してサーバー等の外部装置に送信する、あるいはサービスマンに通知してもよい。
【0167】
かかる処理により、画像形成装置1の出力物を見たユーザーが「これはそろそろ装置のメンテナンスが必要かもしれない」と感じられる程度の画像劣化が発生する前に、画像劣化の原因となる部品がサービスマンに通知されることから、ユーザーおよびサービスマンの便宜が図られる。
【0168】
かくして、制御部100は、ユーザーの判断に基づいて設定された画像不良閾値を用いて複数(N個)の部品(画像形成部材)における各々の寿命閾値を補正し、各々の部品が補正後の寿命閾値に達するまでの時間を推定することにより、個々の部品の寿命予測を行う。
【0169】
ステップS12において、制御部100は、印刷ジョブが終了したか否かを判定し、終了した(ステップS12、YES)と判定した場合、本ルーチンを終了する。一方、制御部100は、印刷ジョブが未だ終了していない(ステップS12、NO)と判定した場合、ステップS1に戻って次の用紙Sに対する印刷動作を開始し、上述したステップS12までの動作を繰り返し実行する。
【0170】
なお、本実施の形態では、上記のステップS11で、制御部100は、ステップS7で不良部品として特定された画像形性部材の寿命予測を重点的に行うようにする。
【0171】
例えば、上述したステップS4およびステップS5で「色ポチ」が発生している旨が特定され、ステップS7において、かかる色ポチが発生した原因の候補の一つに「二次転写ローラー424」が特定された事例を仮定する。
【0172】
一般に、二次転写ローラー424は、機内の温湿度や日内のプリント枚数に応じて、その抵抗値が変化する性質を有する。このため、二次転写ローラー424の抵抗上昇によって発生する色ポチなどの画像不良は、画像形成装置1の使用条件によって画像不良の悪化推移が変わり得る。
【0173】
このような事例では、制御部100は、実画像の画像不良の推移に加え、ステップS6で上述したユーザーの使用条件や二次転写ローラー424の使用情報(この場合は抵抗値の推移など)を参照することで、より正確な部品の寿命予測ができる。
【0174】
(画像不良に対するユーザー閾値の蓄積)
例えば、実使用時にゴミが付着した等、部品寿命とは関係しないイレギュラーな原因により画像不良が発生することがある。このような場合、通常、サービスマンが訪問し画像形成装置1の内部を清掃する等の対応が必要となる。この時の清掃前の出力画像の情報を記憶することでユーザーが画像不良と判断するユーザー閾値を蓄積する。より具体的には、白スジ、色スジ、白ポチ、黒ポチ、濃度ムラなど様々な画像不良に対してそれぞれ情報を蓄積する。
【0175】
なお、ユーザー閾値の情報は、画像形成装置1の上述した通信部71や入出力インターフェース(例えばUSBコネクターなど)を介して、記録媒体(例えばUSBメモリーなど)に記憶できるようにするとよい。このような構成とすることにより、機械(画像形成装置)の買い替えや買い増し等の際にも、これらの情報(ユーザー閾値)を新しい機械に移し変えて、それまで通りの閾値を設定する(引き継ぐ)ことができる。
【0176】
あるいは、LANなどのネットワークを通じて一のユーザーが同時に複数台の画像形成装置を使用している場合は、ユーザー閾値を例えばネットワークサーバー内に格納しておくことで、ユーザー閾値を各々の画像形成装置で共有することもできる。
【0177】
(ユーザー閾値を変える場合の補正方法)
なお、ユーザーの事情等によっては、例えばオペレーターや印刷物の読者の要求品質が変化した場合などにより、画像不良のユーザー閾値すなわち当該ユーザーが画像不良であると判断する境界値を変更する必要がある。
【0178】
上記のようにユーザー閾値を変更する場合、当該ユーザーの直近の判断を優先できるよう重み付けをするとよい。このような設定とすることで、ユーザー閾値を、ユーザーの感覚や価値観等の変化に柔軟に対応させるように補正することができる。ひいては、ユーザーの最新の感覚が反映された寿命予測ないし寿命判定を行うことができる。
【0179】
一具体例では、制御部100は、ユーザー閾値を設定ないし更新するためのユーザー閾値入力画面を表示部に表示する。このユーザー閾値入力画面は、上述した画像不良の種類(白スジ、色スジ、・・等)毎にユーザー閾値を入力(設定)できるようになっている。
【0180】
そして、サービスマンは、このユーザー閾値入力画面に、当該ユーザーが画像不良であると判断する境界値が変わる毎に、新たなユーザー閾値を入力設定する。このとき、制御部100は、従前のユーザー閾値を新たなユーザー閾値に単純に変更する(入れ替えるように更新する)のではなく、最新のユーザー閾値に重みを付けて、従前のユーザー閾値~最新のユーザー閾値の間で、最新のユーザー閾値により近づくような値に更新する。
【0181】
上記のような更新処理を行うことにより、それまでの画像不良に対するユーザー感覚を全て捨て去ることなく、かつ最新のユーザー感覚が反映された寿命予測や寿命判定を行うことができる。
【0182】
(画像不良発生の原因となる不良部品の特定)
画像不良の発生原因となる部品を特定(推定)し当該部品(以下「不良部品」ともいう)の交換時期を予測するためには、ユーザーの出力している実画像の解析だけでは足りず、上述したような特定の検査用画像(テストチャート等)を出力して解析した方が良い場合も考えられる。
【0183】
その場合、画像形成装置1が設置されたユーザーの居所にサービスマンが定期訪問などで訪れる際に、図6で上述した本実施の形態の診断モードの処理において、サービスマンの操作に基づいて、検査画像を用紙Sに印刷するように設定する。この場合、制御部100は、用紙S上に出力された検査画像(テストチャート等)を出力画像読取部80で読み取らせ、当該読み取られた検査画像に発生する画像不良(劣化)の種類や程度を解析する(ステップS2)。このような処理を行うことにより、制御部100は、ステップS7において当該画像不良の原因となる不良部品をより特定しやすくなる。
【0184】
したがって、ユーザーの居所に訪問したサービスマンも、当該ユーザーにとって許容できない画像不良が発生する原因となる、いわゆる寿命間近な部品を特定ないし推定しやすくなる。この結果、次回にユーザーの居所に訪問する際の時期やコストなども早期に決定することができ、ユーザーの待ち時間の低減等を図ることができる。
【0185】
一具体例では、実画像の印刷時にスジが発生した場合(ステップS4)、制御部100は、C,M,Y,Kの全ての色で発生しているのか、或いは単色で発生しているのかを判別することによって、検査画像の出力等を行わなくても、ある程度は不良部品を特定することができる。一方、実画像の印刷時にスジが発生した場合(ステップS4)、ユーザーが混色の実画像ばかり出力している場合、不良部品の特定が難しくなる。
【0186】
上記の場合、サービスマンがC,M,Y,Kの単色のチャートから構成された検査画像を出力し、その出力画像を制御部100によって解析することで、画像不良の原因となる不良部品をより明確に特定する(あるいは不良部品の候補をより少なく絞り込む)ことができる。
【0187】
具体的には、制御部100は、検査画像におけるC,M,Y,Kの全ての色のチャートでスジが出ている場合、不良部品は、二次転写ローラー424または中間転写ベルト421である可能性が高い、と判断できる。
【0188】
一方、制御部100は、検査画像のスジがC,M,Y,Kのいずれか単色のみで出ている場合、不良部品は、各色の感光体ドラム413、帯電装置414、露光装置411、現像装置412、などの1次転写側の部品である可能性が高い、と判断できる。
【0189】
加えて、制御部100は、メモリ(記憶部72など)に記憶されている上述した各部品の使用履歴(駆動時間、物性推移、湿度や気温、日内のプリント枚数、サービスマンの各部品の清掃等の作業内容、など)を参照または加味することで、不良部品の特定等がしやすくなる。
【0190】
(特定部品の寿命予測)
上述のように、制御部100は、ステップS7で不良部品を特定した後に、当該特定された不良部品の寿命を予測する(ステップS11)。
【0191】
このとき、制御部100は、画像不良の推移とユーザーの使用条件から不良部品の寿命を予測することもできるが、不良部品の物性推移を加味することで、より精度良く不良部品の寿命を予測することができる。
【0192】
一具体例として、制御部100の画像解析によって、画像不良(白スジ)が発生したと判断され、続いて現像器のブレードが不良部品であると特定された場合を考えてみる。ここで、一般に、ブレードの寿命予測のためには、ブレードエッジの平均CW(Contact Width:接触幅)や使用環境(温度、湿度など)のみではなく、以下の数式1に示すように、様々な因子を考慮する必要がある。
〔数式1〕
ブレード寿命予測値=(a×平均CW)+(a×使用環境)+(a×月間印刷枚数)+(a×空回転時間)+・・・・+(a×○○)+b
【0193】
上記の数式1において、aは各々、任意の係数を、係数aの添え字のnは、説明因子となる因子の総数を、bはオフセット値を、各々示す。また、ブレード寿命予測値が大きくなるほど、上述した「寿命閾値」に近づくことを示す。
【0194】
なお、数式1中の各々の説明因子は、本発明の「起因パラメーター」に対応するとともに、「画像形成部材の使用履歴および/または画像形成条件」に対応する。より具体的には、「平均CW」、「月間印刷枚数」、「空回転時間」は、本発明の「画像形成部材の使用量」に対応する。加えて、「月間印刷枚数」は、本発明の「所定時間内の印刷枚数」に対応する。さらに、「使用環境」は、本発明の「温湿度」が対応する。
【0195】
概して、ブレード寿命予測値ひいては画像形成部材となる各部品の寿命予測値は、説明因子(の数)が増えるほど大きくなり、また、係数aの値が大きく設定されるほど大きくなり、さらにはオフセット値bが大きく設定されるほど大きくなることが分かる。
【0196】
そして、本実施の形態では、制御部100は、不良部品の寿命予測(ステップS11)において、上述したユーザー閾値(画像不良閾値)を用いて、画像形成装置1から出力される画像がユーザー閾値以上になる時期を予測し、予測された時期(タイミング)を、当該不良部品の寿命すなわち寿命閾値に達する時期として特定する。
【0197】
上述した数式1の例、すなわち不良部品が現像器のブレードであると特定された事例では、制御部100は、白スジに対して設定されたユーザー閾値を使用し、ブレード寿命予測値がかかるユーザー閾値に対応する寿命閾値に達する時期(タイミング)を算出する。
【0198】
かくして、本実施の形態の一具体例では、数式1で例示したように、複数(n個)の説明因子(説明変数または独立変数)に対する寿命予測値(目的変数ないし従属変数)の関係を規定しておく(因果関係明確化)。そして、制御部100は、消耗部品の交換時期を目的変数とし、交換までの複数の使用情報を説明変数とした多変量解析の結果を考慮して、消耗部品の寿命予測値を決定する。
【0199】
好ましくは、制御部100は、当該部品の交換までの各因子の情報と、実際に交換されたタイミングを多変量解析することで、寿命予測値の補正を行うとよい。
【0200】
以上、詳細に説明したように、本実施の形態によれば、画像形成装置1のユーザーの品質要求度等に応じて、交換すべき又は近い将来に交換対象となる部品(画像形成部材)の特定および当該特定された部品について、より精度の高い予測(寿命判定等)を行うことができる。
【0201】
他の側面からは、本実施の形態によれば、画像形成装置1のユーザーの画像品質要求等に応じた適正な時期の寿命予測の結果が得られることから、各々のユーザーの待ち時間の低減を図ることができる。
【0202】
上述した実施の形態では、出力画像読取部80が画像形成装置1の内部(定着部60の後段)に配置された構成例を説明した。
【0203】
他の例として、画像形成装置1の外部に専用の出力画像読取装置を設けた画像形成システムとしてもよい。この場合、出力画像読取装置によって取得された画像データを画像形成装置1の記憶部等に格納して、画像形成装置1の制御部100で上述した処理を行えばよい。
【0204】
上述した実施の形態では、電子写真プロセス技術を利用した中間転写方式の画像形成部40を備えた画像形成装置1の例を説明した。他方、画像形成装置1における画像形成の方式は、かかる方式に限られるものではなく、他の種々の方式が適用可能である。
【0205】
その他、上記実施の形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0206】
1 画像形成装置
10 画像読取部
20 操作表示部(設定部)
21 表示部
22 操作部
30 画像処理部
40 画像形成部
50 用紙搬送部
60 定着部
71 通信部(送信部)
72 記憶部
80 出力画像読取部(画像読取部)
100 制御部(寿命判定装置、設定部、寿命判定部、特定部)
101 CPU
102 ROM
103 RAM
S 用紙
図1
図2
図3
図4
図5
図6