(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】ブドウ果汁含有飲料及び泡立ち抑制方法
(51)【国際特許分類】
A23L 2/02 20060101AFI20240930BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20240930BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20240930BHJP
A23L 2/54 20060101ALI20240930BHJP
A23L 29/231 20160101ALI20240930BHJP
A23L 29/30 20160101ALI20240930BHJP
【FI】
A23L2/02 A
A23L2/00 T
A23L2/52 101
A23L2/54 101
A23L2/00 A
A23L29/231
A23L29/30
(21)【出願番号】P 2019188013
(22)【出願日】2019-10-11
【審査請求日】2022-09-05
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1.平成31年4月、消費者庁が下記ウェブサイトのアドレスに掲載して公開。 ・https://www.fld.caa.go.jp/caaks/cssc02/?recordSeq=41909020170401 ・https://www.fld.caa.go.jp/caaks/cssc07/hyouji_mihon?hyoujimihonFile=D620%255CD620_hyouji_mihon.pdf
(73)【特許権者】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(72)【発明者】
【氏名】今田 賢太
(72)【発明者】
【氏名】林 龍之介
【審査官】高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】特公昭50-010935(JP,B1)
【文献】特公昭51-033182(JP,B1)
【文献】特開2006-075064(JP,A)
【文献】特開2002-034505(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02481296(EP,A1)
【文献】特開2014-226073(JP,A)
【文献】特開2014-193136(JP,A)
【文献】特開2009-247237(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
Google
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブドウ果汁と、ペプチドとを含むブドウ果汁含有飲料であって、
前記ペプチドは、ラクトトリペプチド及び/又はラクトノナデカペプチドであり、
前記ペプチドの含有量は、0.1~1.0質量%であり、
ペクチン及び難消化性デキストリンから選択される1種以上を、0.002~0.01質量%の割合で含有する
ブドウ果汁含有飲料(ただし、
酸性乳を含む飲料を除く)。
【請求項2】
炭酸ガスを含む炭酸飲料である、
請求項1に記載のブドウ果汁含有飲料。
【請求項3】
前記ブドウ果汁は、赤ブドウ果汁である、
請求項1又は2に記載のブドウ果汁含有飲料。
【請求項4】
前記ブドウ果汁の含有量は、15~70質量%である、
請求項1から3のいずれかに記載のブドウ果汁含有飲料。
【請求項5】
ブドウ果汁と、ペプチドとを含むブドウ果汁含有飲料(ただし、
酸性乳を含む飲料を除く)における泡立ち抑制方法であって、
前記ブドウ果汁含有飲料における前記ペプチドの含有量は、0.1~1.0質量%であり、
ペクチン及び難消化性デキストリンから選択される1種以上を、その含有量が0.002~0.01質量%になるように、前記ブドウ果汁含有飲料に含有させる
ことにより、泡立ちの発生を抑制する、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチドを含むブドウ果汁含有飲料、及びその飲料における泡立ち抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリフェノールを含むブドウ果汁を含有するブドウ果汁含有飲料が広く親しまれている。また、近年では、消費者の健康嗜好の高まりに伴って、2個以上のアミノ酸が結合したペプチドを配合した機能性飲料が種々販売されている。
【0003】
ところが、本発明者らの研究により、ペプチドを含むブドウ果汁含有飲料においては、泡立ちが発生しやすく、また容器への充填時等に噴出しやすいことが明らかとなった。
【0004】
また、ブドウ果汁含有飲料において所定のガス圧で炭酸ガスを圧入することで、風味や爽快感を向上させた炭酸飲料も広く販売されており、特に、このようなブドウ果汁含有炭酸飲料においては、泡立ちや噴出しがより顕著に発生することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、ペプチドを含むブドウ果汁含有飲料において、泡立ちや噴出しを効果的に抑制できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、ペプチドを含むブドウ果汁含有飲料において、所定の割合でペクチン及び難消化性デキストリンから選択される1種以上を含有させることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
(1)ブドウ果汁と、ペプチドとを含むブドウ果汁含有飲料であって、ペクチン及び難消化性デキストリンから選択される1種以上を、0.002~0.01質量%の割合で含有するブドウ果汁含有飲料。
【0009】
(2)炭酸ガスを含む炭酸飲料である、(1)に記載のブドウ果汁含有飲料。
【0010】
(3)前記ブドウ果汁は、赤ぶどう果汁である、(1)又は(2)に記載のブドウ果汁含有飲料。
【0011】
(4)前記ブドウ果汁の含有量は、15~70質量%である、(1)から3のいずれかに記載のブドウ果汁含有飲料。
【0012】
(5)前記ペプチドは、乳カゼインペプチドである、(1)から(4)のいずれかに記載のブドウ果汁含有飲料。
【0013】
(6)前記ペプチドの含有量は、0.1~1.0質量%である、(1)から(5)のいずれかに記載のブドウ果汁含有飲料。
【0014】
(7)ブドウ果汁と、ペプチドとを含むブドウ果汁含有飲料における泡立ち抑制方法であって、ペクチン及び難消化性デキストリンから選択される1種以上を、その含有量が0.002~0.01質量%になるように、前記ブドウ果汁含有飲料に含有させる、方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ペプチドを含むブドウ果汁含有飲料であっても泡立ちの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】泡立ち評価におけるメスシリンダーと炭酸水のディスペンサーとの位置関係を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。本明細書において、「X~Y」(X、Yは任意の数値)との表記は、「X以上Y以下」を意味する。
【0018】
<1.ブドウ果汁含有飲料>
本実施の形態に係るブドウ果汁含有飲料は、ブドウ果汁と、ペプチドとを含む。そして、このブドウ果汁含有飲料においては、ペクチン及び難消化性デキストリンから選択される1種以上を0.002~0.01質量%の割合で含有することを特徴としている。
【0019】
このようなブドウ果汁含有飲料によれば、ブドウ果汁とペプチドとを含む飲料において発生する泡立ちや充填時等での噴出しを効果的に抑制することができる。
【0020】
(1)ブドウ果汁
ブドウ果汁は、ブドウの果実からの搾汁を用いて得られる。例えば、搾汁(ストレート果汁)をそのままブドウ果汁として用いてもよく、搾汁を加工したものをブドウ果汁として用いてもよい。搾汁を加工したものとしては、搾汁液を濃縮した濃縮果汁、搾汁液の濃縮果汁を希釈した還元果汁等が挙げられる。
【0021】
搾汁を加工する方法としては、酵素処理法、精密濾過法、限外濾過法等が挙げられる。搾汁は清澄処理した透明果汁でもよく、混濁果汁でもよい。
【0022】
ブドウ果汁は、ポリフェノールの一種であるアントシアニンを多く含む赤ブドウ果汁であることが好ましい。赤ブドウの品種は、特に限定されない。例えば、コンコード、巨峰、紅マスカット、デラウェア、安芸クイーン、サニードルチェ、サニールージュ、ピオーネ、藤稔、ナガノパープル、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、ピノ・ノワール、シラーズ、キャンベル・アーリー、スチューベン等が挙げられる。このような赤ブドウは、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0023】
また、ブドウ果汁は、ブドウ以外の果実等から得られる果汁(例えば、オレンジ果汁、ミカン果汁、マンダリン果汁、グレープフルーツ果汁、レモン果汁、ライム果汁、リンゴ果汁、モモ果汁、イチゴ果汁、バナナ果汁、マンゴー果汁等)と併用してもよい。ブドウ果汁含有飲料において、このような果汁をブドウ果汁と併用する場合、その配合量は得ようとする風味等に応じて適宜調整できる。
【0024】
ブドウ果汁含有飲料における果汁含有率は特に限定されない。ぶどうの果汁含有量の下限は、例えば10質量%超、15質量%以上、又は20質量%以上である。また、ぶどうの果汁含有量の上限は、例えば70質量%以下、又は50重量%以下である。
【0025】
なお、「果汁含有率」とは、果実を搾汁して得られるストレート果汁を100質量%としたときの相対濃度であり、JAS規格(果実飲料の日本農林規格)に示される糖用屈折計示度の基準(°Bx)に基づいて換算される。例えば、ブドウ果汁はJAS規格が11°Bxであるから、55°Bxの濃縮ブドウ果汁を飲料中10質量%配合した場合、果汁含有率は50質量%となる。ただし、果汁の果汁含有率をJAS規格の糖用屈折計示度に基づいて換算する際には、果汁に加えられた糖類、はちみつ等の糖用屈折計示度を除くものとする。また、通常果汁量は質量%(すなわち飲料100gあたりの果汁量(g)(w/w))で表される。
【0026】
なお、ブドウ果汁含有飲料としては、風味のよい飲料が得られやすいという観点から、pHが2.5~4.6とすることが好ましい。ここで、飲料に含まれるブドウ果汁は、天然物に由来するため、酸度がブドウの品種や収穫後の経過時間(熟度)によって異なる。ブドウ果汁含有飲料のpHが上述した数値範囲にない場合は、pH調整剤やブドウ果汁以外の果汁を添加したり、複数種のブドウ果汁の混合比を調整したりすることで調整することができる。
【0027】
(2)ペプチド
ペプチドは、ブドウ果汁含有飲料に、各種の生理効果を付与する。ペプチドは、例えば、動植物性あるいは微生物由来のタンパク質を酸、アルカリまたは蛋白質加水分解酵素で加水分解する等により得られるものである。
【0028】
本実施の形態に係るブドウ果汁含有飲料に含まれるペプチドは、特に限定されず、例えば、乳由来ペプチド、大豆ペプチド、コラーゲンペプチド、卵ペプチド、小麦ペプチド等が挙げられる。この内、乳由来ペプチドとしては、例えば、牛乳、馬乳、山羊乳、羊乳等の獣乳に由来するペプチドが挙げられる。また、乳由来ペプチドとしては、牛乳由来のホエイプロテインやカゼインプロテインをタンパク質加水分解酵素で分解して得られるホエイペプチドやカゼインペプチドが挙げられる。カゼインペプチドの具体例としては、ラクトノナデカペプチド(本明細書において、「LNDP」ともいう。)、ラクトトリペプチド(本明細書において、「LTP」ともいう。)等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
中でも、牛乳由来のカゼインペプチドを蛋白質加水分解酵素で分解して得られる乳カゼインペプチドであることが好ましい。乳カゼインペプチドの中でも、ラクトトリペプチド(LTP)、ラクトノナデカペプチド(LNDP)が挙げられる。
【0030】
ペプチドの分子量分布は、500~6000のものがサイズ排除クロマトグラフ法のピーク面積比として5質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。また、本実施の形態におけるペプチドは、分子量分布が500~10000のものがサイズ排除クロマトグラフ法のピーク面積比として50質量%以上であるものを含むことが好ましい。
【0031】
ペプチドの分子量は、公知の方法で測定することができ、例えば、粘度測定、HPLC及びサイズ排除クロマトグラフ法等の定量方法によって測定できる。なかでも、サイズ排除クロマトグラフ法であることが好ましい。サイズ排除クロマトグラフ法を用いる場合、使用カラムはTSKgel G2500PWXL(東ソー株式会社製)とすることが好ましい。
【0032】
本実施の形態に係るブドウ果汁含有飲料において、ペプチドの含有量は、ペプチドが有する健康効果をより効果的に付与することができる観点から、0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましい。一方、ペプチドの含有量は、泡立ちの発生をより効果的に抑制できる観点から1.0質量%以下が好ましい。ブドウ果汁含有飲料中のペプチドの含有量は、ペプチドの添加量とすることができるほか、例えば従来公知のタンパク質の定量分析法を用いて測定することができる。
【0033】
(3)ペクチン、難消化性デキストリン
本実施の形態に係るブドウ果汁含有飲料においては、ペクチン及び難消化性デキストリンから選択される1種以上を特定の割合で含有することを特徴としている。このようなブドウ果汁含有飲料では、ペプチドを含むことで生じる、泡立ちやすさや容器への充填時等における噴出しやすさを、効果的に抑制することができる。
【0034】
その中でも特に、少なくともペクチンを特定の割合で含有することで、泡立ち等の抑制効果をより向上させることができる。
【0035】
(ペクチン)
ペクチンとは、ガラクツロン酸がα-1,4-結合したポリガラクツロン酸が主成分である複合多糖類である。ペクチンは、一般に、サトウダイコン、ヒマワリ、アマダイダイ(オレンジ)、グレープフルーツ、ライム、レモン、またはリンゴなどから酸抽出することにより得られる。
【0036】
ペクチンは、LMペクチンと、HMペクチンとがあるが、エステル化度の高いHMペクチンであることが好ましい。また、そのエステル化度は70%以上であることがより好ましい。ペクチンの含有量は、添加量とすることができる。
【0037】
(難消化性デキストリン)
難消化性デキストリンとは、例えばとうもろこしデンプンを加熱した焙焼デキストリンをアミラーゼで加水分解し、得られた未分解物を調製して得られる水溶性食物繊維の一種であり、ヒトが消化しづらい難消化性成分である。難消化性デキストリンとしては、例えば市販の難消化性デキストリンを用いることができる。また、水素添加により製造される、難消化性デキストリンの還元物(還元難消化性デキストリン)であってもよい。
【0038】
本実施の形態に係るブドウ果汁含有飲料においては、ペクチン及び難消化性デキストリンから選択される1種以上を、0.002~0.01質量%の割合で含有する。ペクチンの含有量が0.002~0.01質量%の範囲であることにより、ペプチドを含むブドウ果汁含有飲料において、泡立ちや噴出しの発生を効果的に抑制することができる。
【0039】
また、その含有量としては、0.004質量%以上であることが好ましい。また、その含有量としては、0.008質量%以下であることが好ましい。また、とろみを付与せずに泡立ちや噴出しの発生を効果的に抑制することができることから、0.005質量%以下であることが、特に好ましい。
【0040】
なお、ブドウ果汁含有飲料において、ペクチンと難消化性デキストリンとを併用する場合、合計の含有量が0.002~0.01質量%の範囲となる。
【0041】
ブドウ果汁含有飲料中のペクチン、難消化性デキストリンの含有量は、それぞれの成分添加量とすることができるほか、一般的な定量分析方法を用いて測定することができる。
【0042】
(4)その他
本実施の形態に係るブドウ果汁含有飲料においては、必要に応じて、一般的な飲料に通常用いられる他の原材料や添加剤を適宜配合することができる。例えば、ペクチンとは異なる糖類(砂糖、果糖、ぶどう糖、乳糖、麦芽糖等の単糖や二糖やオリゴ糖、エリスリトールやマルチトール等のような糖アルコール、果糖ぶどう糖液糖等の異性化糖)、甘味料、乳化剤、増粘安定剤、色素、香料、保存料、防腐剤、pH調整剤、防かび剤、ビタミン類やミネラル類、酸味料、食物繊維等が挙げられる。
【0043】
<2.ブドウ果汁含有炭酸飲料>
本実施に形態に係るブドウ果汁含有飲料は、炭酸ガスを含む炭酸飲料(ブドウ果汁含有炭酸飲料)であってもよい。炭酸飲料は、風味及び爽快感に優れており、消費者に好まれる飲料である。
【0044】
特に、炭酸ガスを含む炭酸飲料である場合、ペプチドを含むブドウ果汁含有炭酸飲料においてはその炭酸ガスにより、泡立ちや充填時の噴出し等がより顕著に生じやすくなる。
【0045】
この点、本実施の形態においては、特定の割合でペクチン及び難消化性デキストリンから選択される1種以上を含有していることから、炭酸ガスを含む炭酸飲料であっても、泡立ち等の発生を効果的に抑制することができる。
【0046】
<3.ブドウ果汁含有飲料の製造方法>
本実施の形態に係るブドウ果汁含有飲料は、通常の飲料の製造方法に用いられる装置や条件によって製造することができる。
【0047】
具体的に、このブドウ果汁含有飲料の製造方法は、例えば、ブドウ果汁を含む溶液に、ペプチドを配合するとともに、ペクチン及び難消化性デキストリンから選択される1種以上をその含有量が0.002~0.01質量%の割合となるように配合する工程を有する。なお、原料の混合順序は特に限定されない。
【0048】
このようにして調製した飲料を、容器に充填することによって、容器詰めブドウ果汁含有飲料を製造することができる。
【0049】
また、炭酸ガスを含む炭酸飲料とする場合には、原料を配合して調整した飲料に対して炭酸ガスを所定の割合で圧入することによって製造することができる。
【0050】
なお、製造されたブドウ果汁含有飲料においては、例えば容器に充填する前又は後に、適宜殺菌処理してもよい。殺菌処理の方法は特に限定されず、通常のプレート式殺菌、チューブラー式殺菌、レトルト殺菌、バッチ殺菌、オートクレーブ殺菌等が挙げられる。
【0051】
ブドウ果汁含有飲料を充填する容器の種類としては特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(PETボトル)、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、ガラス瓶等の密封容器等が挙げられる。
【0052】
<4.泡立ち抑制方法>
上述したように、本実施の形態に係るブドウ果汁含有飲料は、ブドウ果汁と、ペプチドとを含む飲料であって、ペクチン及び難消化性デキストリンから選択される1種以上を、0.002~0.01質量%の割合で含有することで、そのペプチドを含むブドウ果汁含有飲料において発生する泡立ち等を効果的に抑制する効果を奏する。
【0053】
このことから、ブドウ果汁と、ペプチドとを含むブドウ果汁含有飲料に対して、ペクチン及び難消化性デキストリンから選択される1種以上を特定の割合で含有させる、という泡立ち抑制方法と定義することができる。
【0054】
このような方法に基づいてペクチン及び難消化性デキストリンから選択される1種以上を含有させることで、泡立ちや容器への充填時等での噴出しを抑制したブドウ果汁含有飲を提供することができる。
【実施例】
【0055】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0056】
[試験1:ペプチドを含むブドウ果汁含有飲料のペクチンによる泡立ち抑制の検証]
(1)ブドウ果汁含有飲料の調製
下記表1のように、ラクトノナデカペプチド(LNDP)と、ブドウ果汁(コンコード種)と、ペクチン(CPケルコ社製「YM-115-LJ」)と、を含有するブドウ果汁含有飲料を調製した。なお、表1には、ブドウ果汁含有飲料100mlに対して炭酸水300mLを配合して得られた飲料の組成を示す。
【0057】
また、ラクトノナデカペプチド(LNDP)は、特許第5718741号公報段落[0108]~[0110]に記載の方法に従って作製し、7時間反応させたものを用いた。分子量分布は、500~6000のものがサイズ排除クロマトグラフ法のピーク面積比として65質量%であった。
【0058】
(2)泡立ち評価
実施例及び比較例のブドウ果汁含有飲料について泡立ちを確認した。具体的には、下記表1に示す原料を配合するブドウ果汁含有飲料100mlを泡立てないようにメスシリンダーに入れた。このメスシリンダーを垂直方向に対して108°に傾けて、炭酸水のディスペンサーの充填口からメスシリンダーの内面に対して垂直下方向に5.0cm離間させるようにメスシリンダーを固定した(
図1の写真図を参照)。そして、炭酸水のディスペンサーの充填口から炭酸水(液温:3℃、炭酸ガスボリューム:5.2G.V.)を17.5ml/秒の速度で17秒間メスシリンダー内に約300ml入れて、泡量を計測した。
【0059】
上記の試験を3回行い、平均値及びt検定法によるペクチンを含まない比較例1のブドウ果汁含有飲料と比較したtスコアを算出した。泡立ち抑制の評価として、算出したtスコアが0.05未満のものを泡立ち抑制効果がある(「○」)と評価し、0.05以上のものを泡立ち抑制効果が十分ではなかった(「×」)と評価した。
【0060】
【0061】
表1より、ペクチンを0.002~0.01質量%の含有量で含む実施例1~3のブドウ果汁含有飲料では、泡立ちの発生を抑制できることがわかる。一方で、ペクチンを含有させるもののその含有量を0.001質量%としたブドウ果汁含有飲料(比較例2)では、泡立ち抑制の効果が十分ではなかった。また、含有量を0.05質量%としたブドウ果汁含有飲料(比較例3)においても、泡立ちの発生を効果的に抑制することができなかった。
【0062】
[試験2:ペプチドの含有量及び種類、ブドウ果汁の含有率の違いによる泡立ち抑制の検証]
下記表2に示すように、ペプチドの含有量及び種類を変更してブドウ果汁含有飲料を製造した。なお、LNDPとは異なるペプチドとして、大豆ペプチド(不二製油社製「ハイニュートDC6」、乳清ペプチド(日生協益社製「THERMAX690」)を用いた。
【0063】
そして、上記試験1と同様に泡立ち評価を行った。なお、泡立ち評価におけるt検定法は、ペクチンを含まず、他の成分は同一である各比較例のブドウ果汁含有飲料と比較してtスコアを算出し、泡立ち抑制の効果を評価した。
【0064】
【0065】
表2より、試験1と比べてLNDPの含有量を変更した実施例4、5のブドウ果汁含有飲料であっても、ペクチンを所定の割合で含有させることで、泡立ちの発生を効果的に抑制できることがわかる。
【0066】
また、試験1と比べてブドウ果汁の含有量を変更した実施例6のブドウ果汁含有飲料であっても、ペクチンを所定の割合で含有させることで、泡立ちの発生を効果的に抑制できることがわかる。
【0067】
さらに、LNDPとは異なるペプチドを含む実施例7、8のブドウ果汁含有飲料であっても、ペクチンを所定の割合で含有させることで、泡立ちの発生を抑制できることがわかる。
【0068】
なお、ブドウ果汁の含有量を10質量%に変更した比較例10のブドウ果汁含有飲料では、比較例9のブドウ果汁含有飲料と比較して、泡立ちの発生を抑制できる効果に有意差は見られなかった。
【0069】
[試験3:多糖類の種類の違いによる泡立ち抑制の検証]
下記表3に示すように、多糖類の種類を変更してブドウ果汁含有飲料を製造した。ペクチンとは異なる多糖類として、難消化性デキストリン(松谷化学社製「パインファイバー」)、大豆多糖類(不二製油社製「SM-1200」)、キサンタムガム(太陽化学社製「ネオソフト XG-S」)、ウェランガム(三栄源F・F・I社製「ビストップ W」))を用いた。
【0070】
そして、上記試験1と同様に泡立ち評価を行った。なお、泡立ち評価におけるt検定は、多糖類を含まず、他の成分は同一である比較例1のブドウ果汁含有飲料と比較してtスコアを算出し、泡立ち抑制の効果を評価した。
【0071】
【0072】
表3より、多糖類として難消化性デキストリンを含有させた実施例9のブドウ果汁含有飲料においても、効果的に泡立ちの発生を抑制できることがわかる。
【0073】
一方で、多糖類として大豆多糖類、キサンタンガム、ウェランガムを含有させた比較例11~13のブドウ果汁含有飲料では、泡立ちの抑制効果は確認できなかった。
【0074】
[参考試験:ペプチド又はブドウ果汁を含まない飲料における泡立ち発生の確認]
下記表4に示すように、ペプチド又はブドウ果汁を含まない飲料を製造した。
【0075】
そして、上記試験1と同様に泡立ち評価を行った。なお、泡立ち評価におけるt検定は、多糖類を含まず、他の成分は同一である各参考例の飲料と比較してtスコアを算出した。評価結果を表3に示す。
【0076】
【0077】
表4に示す参考例1~4の結果から、ペプチド又はブドウ果汁を含まない飲料においては、そもそも泡立ちが発生しないことがわかる。そのため、ペクチンを含有させても泡立ち抑制する効果は確認できない。すなわち、泡立ちが発生するという技術的課題は、ペプチドとブドウ果汁との両方を含有した場合に生じるものであることがわかる。
【0078】
また、ブドウ果汁の代わりにアップルポリフェノールを含む参考例6の飲料は、泡量の平均値が参考例5と比較して大きくなっており、アップルポリフェノールを含む飲料に対してペクチンを含有させても、泡立ちを抑制する効果は確認できなかった。