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  • 特許-飲料の製造方法及び泡立ち抑制方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】飲料の製造方法及び泡立ち抑制方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/52 20060101AFI20240930BHJP
   A23L 2/54 20060101ALI20240930BHJP
   A23L 29/231 20160101ALI20240930BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
A23L2/52
A23L2/54
A23L29/231
A23L2/00 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019188014
(22)【出願日】2019-10-11
(65)【公開番号】P2021061779
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-09-05
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1.平成31年4月、消費者庁が下記ウェブサイトのアドレスに掲載して公開。 ・https://www.fld.caa.go.jp/caaks/cssc02/?recordSeq=41909020170401 ・https://www.fld.caa.go.jp/caaks/cssc07/hyouji_mihon?hyoujimihonFile=D620%255CD620_hyouji_mihon.pdf
(73)【特許権者】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(72)【発明者】
【氏名】今田 賢太
(72)【発明者】
【氏名】林 龍之介
【審査官】高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】特公昭50-010935(JP,B1)
【文献】特開2002-241305(JP,A)
【文献】特公昭51-033182(JP,B1)
【文献】特開2002-027957(JP,A)
【文献】特開2006-075064(JP,A)
【文献】特開2002-034505(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02481296(EP,A1)
【文献】特開2016-111995(JP,A)
【文献】特開2014-193136(JP,A)
【文献】特開2010-001275(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペプチドを含むポリフェノール含有飲料(ただし、酸性乳を含む飲料を除く)の製造方法であって、
ポリフェノールを5~400mg/100mLと、ペプチドを0.01~1.5質量%と、ペクチンを0.001~0.1質量%と、を含有する飲料を調製する工程と、
調製した飲料を80℃以上で加熱する工程と、
を含み、
前記ペプチドは、ラクトトリペプチド及び/又はラクトノナデカペプチドである、ポリフェノール含有飲料の製造方法。
【請求項2】
さらに炭酸ガスを含有させる工程を含む、
請求項1に記載のポリフェノール含有飲料の製造方法。
【請求項3】
ペプチドを含むポリフェノール含有炭酸飲料(ただし、酸性乳を含む飲料を除く)における泡立ち抑制方法であって、
ポリフェノールを5~400mg/100mLと、ペプチドを0.01~1.5質量%と、を含有する飲料に、ペクチンの含有量が0.001~0.1質量%となるように含有させ、その後、85℃以上で加熱し、炭酸ガスを含有させることにより、泡立ちの発生を抑制する、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチドを含むポリフェノール含有飲料の製造方法、及びその飲料における泡立ち抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリフェノールを含む飲料が広く親しまれている。また、近年では、消費者の健康嗜好の高まりに伴って、2個以上のアミノ酸が結合したペプチドを配合した機能性飲料が種々販売されており、ポリフェノール含有飲料においても所定のペプチドを配合した飲料が提案されている。
【0003】
ところが、本発明者らの研究により、ペプチドを含むポリフェノール含有飲料においては、泡立ちが発生しやすく、また容器への充填時等に噴出しやすいことが明らかとなった。
【0004】
また、ポリフェノール含有飲料において所定のガス圧で炭酸ガスを含有させることで、風味や爽快感を向上させた炭酸飲料も広く販売されており、特に、このようなポリフェノール含有炭酸飲料においては、泡立ちや噴出しがより顕著に発生することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-207873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、ペプチドを含むポリフェノール含有飲料の製造方法であって、泡立ちや噴出しを効果的に抑制した飲料を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、ペプチドを含むポリフェノール含有飲料の製造方法において、特定の割合でペクチンを含有したポリフェノール含有飲料用の飲料を調整し、その飲料を加熱することによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
(1)ペプチドを含むポリフェノール含有飲料の製造方法であって、ポリフェノールを5~400mg/100mLと、ペプチドと、0.001~0.1質量%のペクチンと、を含有する飲料を得る工程と、得られる飲料を80℃以上で加熱する工程と、を含む、ポリフェノール含有飲料の製造方法。
【0009】
(2)さらに炭酸ガスを含有させる工程を含む、(1)に記載のポリフェノール含有飲料の製造方法。
【0010】
(3)前記飲料を得る工程では、前記ペプチドを0.01~1.5質量%の割合で含有する(1)又は(2)に記載のポリフェノール含有飲料の製造方法。
【0011】
(4)ポリフェノールと、ペプチドとを含むポリフェノール含有飲料における泡立ち抑制方法であって、ポリフェノールを5~400mg/100mLと、ペプチドと、を含有する飲料に、ペクチンの含有量が0.001~0.1質量%になるように前記飲料に含有させ、その後、80℃以上で加熱する方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、泡立ちや噴出しを効果的に抑制したペプチドを含むポリフェノール含有飲料を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】泡立ち評価におけるメスシリンダーと炭酸水のディスペンサーとの位置関係を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。本明細書において、「X~Y」(X、Yは任意の数値)との表記は、「X以上Y以下」を意味する。
【0015】
<1.ペプチドを含むポリフェノール含有飲料の製造方法>
本実施の形態に係る製造方法は、ペプチドを含むポリフェノール含有飲料の製造方法である。
【0016】
具体的に、この製造方法は、ポリフェノールを5~400mg/100mLと、ペプチドと、ペクチンを0.001~0.1質量%と、を含有する飲料を調製する工程(調製工程)と、調製した飲料を80℃以上で加熱する工程(加熱工程)と、を含む。
【0017】
このように、ポリフェノールと、ペプチドとを含むポリフェノール含有飲料を製造するにあたり、特定の割合でペクチンを配合させて調製するとともに、調製して得られた飲料を80℃以上で加熱することにより、ポリフェノール含有飲料の泡立ちの発生を効果的に抑制することができる。
【0018】
[調製工程]
調製工程では、ポリフェノールを5~400mg/100mLと、ペプチドと、ペクチンを0.001~0.1質量%と、を含有する飲料を調製する。この飲料の調製においては、通常の飲料の製造方法に用いられる装置や条件によって製造することができる。
【0019】
具体的には、例えば、ポリフェノールを含む果汁を含む溶液に、ペプチドと、ペクチンを、それぞれが特定の含有割合となるように配合する。なお、原料の混合順序は特に限定されない。
【0020】
以下、飲料に含有する各成分について説明する。
【0021】
(1)ポリフェノール
本実施の形態に係る飲料は、ポリフェノールと、ペプチドとを含むポリフェノール含有飲料である。ポリフェノールとしては、果汁などの天然物から抽出した物であっても、果汁等の天然物をそのまま使用するものであってもよい。果汁としては、例えば、バナナ果汁、リンゴ果汁、ブドウ果汁、イチゴ果汁、メロン果汁、リンゴ果汁、マンゴー果汁、マスカット果汁等のソフトフルーツ系、レモン果汁、ライム果汁、ミカン果汁、グレープフルーツ果汁、ユズ果汁等の柑橘系果汁等が挙げられる。これらの内、ブドウ果汁であることが好ましい。上記の果汁は1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0022】
果汁としてブドウ果汁を用いる場合のブドウの品種は特に限定されない。赤ブドウであれば、例えば、コンコード、巨峰、紅マスカット、デラウェア、安芸クイーン、サニードルチェ、サニールージュ、ピオーネ、藤稔、ナガノパープル、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、ピノ・ノワール、シラーズ、キャンベル・アーリー、スチューベン等が挙げられる。白ブドウであれば、例えば、マスカット(マスカットオブアレキサンドリア)、ナイアガラ、ロザリオビアンコ、ピッテロビアンコ、シャルドネ、トムソン・シードレス等が挙げられるが、ポリフェノールを豊富に含むことから赤ブドウであることが好ましい。
【0023】
ポリフェノール含有飲料において、ポリフェノールの含有量としては、5~400mg/100mLとする。また、20~400mg/100mLとすることが好ましく、20~100mg/100mLとすることがより好ましい。
【0024】
また、ポリフェノール含有飲料において、果汁含有率としては特に限定されないが、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。また、果汁含有率は、70質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましい。果汁含有率は、飲料中のポリフェノールが5~400mg/100mLの含有割合となるように制御することが好ましい。ポリフェノールを定量する方法は、例えばフォーリン・チオカルト法(没食子酸換算)を用いることができる。
【0025】
なお、「果汁含有率」とは、果実を搾汁して得られるストレート果汁を100%としたときの相対濃度であり、JAS規格(果実飲料の日本農林規格)に示される糖用屈折計示度の基準(°Bx)に基づいて換算される。例えば、ブドウ果汁はJAS規格が11°Bxであるから、55°Bxの濃縮ブドウ果汁を飲料中10質量%配合した場合、果汁含有率は50質量%となる。ただし、果汁の果汁含有率をJAS規格の糖用屈折計示度に基づいて換算する際には、果汁に加えられた糖類、はちみつ等の糖用屈折計示度を除くものとする。また、通常果汁量は質量%(すなわち飲料100gあたりの果汁量(g)(w/w))で表される。果汁は、「果実飲料の日本農林規格」の第2条の「濃縮果汁」の定義を満たすものであってもよい。
【0026】
(2)ペプチド
ペプチドは、ポリフェノール含有飲料に、各種の生理効果を付与する。ペプチドは、例えば、動植物性あるいは微生物由来のタンパク質を酸、アルカリ又は蛋白質加水分解酵素で加水分解する等により得られるものである。
【0027】
ペプチドは、特に限定されず、例えば、乳由来ペプチド、大豆ペプチド、コラーゲンペプチド、卵ペプチド、小麦ペプチド等が挙げられる。この内、乳由来ペプチドとしては、例えば、牛乳、馬乳、山羊乳、羊乳等の獣乳に由来するペプチドが挙げられる。また、乳由来ペプチドとしては、牛乳由来のホエイプロテインやカゼインプロテインをタンパク質加水分解酵素で分解して得られるホエイペプチドやカゼインペプチドが挙げられる。カゼインペプチドの具体例としては、ラクトノナデカペプチド(本明細書において、「LNDP」ともいう。)、ラクトトリペプチド(本明細書において、「LTP」ともいう。)等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
中でも、牛乳由来のカゼインペプチドを蛋白質加水分解酵素で分解して得られる乳カゼインペプチドであることが好ましい。乳カゼインペプチドの中でも、ラクトトリペプチド(LTP)、ラクトノナデカペプチド(LNDP)が挙げられる。
【0029】
ペプチドの分子量分布は、500~6000のものがサイズ排除クロマトグラフ法のピーク面積比として5質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。また、本実施の形態におけるペプチドは、分子量分布が500~10000のものがサイズ排除クロマトグラフ法のピーク面積比として50質量%以上であるものを含むことが好ましい。
【0030】
ペプチドの分子量は、公知の方法で測定することができ、例えば、粘度測定、HPLC及びサイズ排除クロマトグラフ法等の定量方法によって測定できる。なかでも、サイズ排除クロマトグラフ法であることが好ましい。サイズ排除クロマトグラフ法を用いる場合、使用カラムはTSKgel G2500PWXL(東ソー株式会社製)とすることが好ましい。
【0031】
ポリフェノール含有飲料において、ペプチドの含有量としては、特に限定されないが、0.01~1.5質量%の割合とすることが好ましい。このような範囲であることにより、ポリフェノール含有飲料に各種の生理効果をより効果的に付与することができる。また、ペプチドの含有量は、0.02~1.0質量%の割合であることがより好ましい。ポリフェノール含有飲料中のペプチドの含有量は、ペプチドの添加量とすることができるほか、例えば従来公知のタンパク質の定量分析法を用いて測定することができる。
【0032】
(3)ペクチン
ポリフェノール含有飲料においては、ペクチンを特定の割合で含有することを特徴としている。このようなポリフェノール含有飲料においてでは、ポリフェノールとペプチドとを含む飲料において生じる、泡立ちやすさや容器への充填時等における噴出しやすさを、効果的に抑制することができる。ペクチンの含有量は、添加量とすることができる。
【0033】
ペクチンとは、ガラクツロン酸がα-1,4-結合したポリガラクツロン酸が主成分である複合多糖類である。ペクチンは、一般に、サトウダイコン、ヒマワリ、アマダイダイ(オレンジ)、グレープフルーツ、ライム、レモン、又はリンゴなどから酸抽出することにより得られる。
【0034】
ペクチンは、LMペクチンと、HMペクチンとがあるが、エステル化度の高いHMペクチンであることが好ましい。またそのエステル化度は70%以上であることがより好ましい。
【0035】
ポリフェノール含有飲料において、ペクチンを、0.001~0.1質量%の割合となるように含有させる。含有量が0.001~0.1質量%の範囲であることにより、ペプチドを含むポリフェノール含有飲料において、泡立ちや噴出しの発生を効果的に抑制することができる。
【0036】
また、その含有量としては、0.002質量%以上であることが好ましい。また、その含有量としては、0.05質量%以下であることが好ましい。ペクチンの含有量は、ペクチンの成分添加量とすることができるほか、一般的な定量分析方法を用いて測定することができる。
【0037】
(4)その他
ポリフェノール含有飲料においては、必要に応じて、一般的な飲料に通常用いられる他の原材料や添加剤を適宜配合することができる。例えば、糖類(砂糖、果糖、ぶどう糖、乳糖、麦芽糖等の単糖や二糖やオリゴ糖、エリスリトールやマルチトール等のような糖アルコール、果糖ぶどう糖液糖等の異性化糖)、甘味料、乳化剤、増粘安定剤、色素、香料、保存料、防腐剤、pH調整剤、防かび剤、ビタミン類やミネラル類、酸味料、食物繊維等が挙げられる。
【0038】
[加熱工程]
加熱工程では、調製して得られる飲料を80℃以上で加熱する。これにより、ポリフェノール含有飲料の泡立ちの発生を効果的に抑制することができる。
【0039】
加熱に際しての加熱温度としては、85℃以上であることが好ましく、90℃以上であることが好ましい。また、加熱温度としては、過度な加熱による飲料の劣化を防止する観点から、120℃以下であることが好ましく、100℃以下であることがより好ましい。
【0040】
ここで、加熱に際しては、飲料の液温をその設定温度に到達させることによって行うことができる。また、飲料を設定温度に到達させたのち、所定の時間、その設定温度で保持するようにしてもよい。
【0041】
飲料を加熱する方法は、特に限定はされないが、プレート式やチューブラー式等の殺菌器を用いて加熱する方法等を挙げることができる。
【0042】
[冷却工程]
上述した加熱工程を行ったのち、加熱した飲料を冷却する冷却工程を設けてもよい。冷却工程では、加熱工程を経た飲料を冷却する。特に、後述するように、炭酸ガス含有工程を設けて炭酸ガスを飲料に含有させ炭酸飲料とする場合、炭酸ガスを含有させる操作(カーボネーション)を行うに先立ち、予め冷却することにより、飲料への炭酸ガスの吸収を大きくすることができ、カーボネーションを効率よく行うことが可能となる。
【0043】
具体的には、飲料を15℃以下に冷却することが好ましく、10℃以下に冷却することがより好ましい。
【0044】
[炭酸ガス含有工程]
本実施に形態に係るポリフェノール含有飲料は、炭酸ガスを含む炭酸飲料(ポリフェノール含有炭酸飲料)であってもよい。炭酸飲料は、風味及び爽快感に優れており、消費者に好まれる飲料である。
【0045】
炭酸飲料とする場合には、炭酸ガス含有工程を設けて、所定の温度に冷却後の飲料に対して炭酸ガスを含有させる。このように炭酸ガスを含有させることで、ポリフェノールを含む炭酸飲料を得ることができる。
【0046】
ここで、特にポリフェノール含有飲料が炭酸ガスを含む炭酸飲料である場合、ペプチドを含むポリフェノール含有炭酸飲料においては、その炭酸ガスにより、泡立ちや充填時の噴出し等がより顕著に生じやすくなる。
【0047】
この点、本実施の形態においては、加熱工程を経ることで、炭酸ガスを含む炭酸飲料であっても、泡立ち等の発生を効果的に抑制することができる。
【0048】
炭酸ガスを含有させる方法としては、例えば飲料に炭酸ガスを圧入する等、従来公知の炭酸飲料の製造の際に用いる方法であればよく、例えば、カーボネーターと呼ばれる装置を用い、その装置内で飲料に炭酸ガスを接触させることによって行うことができる。なお、炭酸ガスを圧入させるに際しては、上述した冷却工程と併せて、飲料を冷却しながら行うようにしてもよい。また、後述する充填工程と併せて、冷却後の飲料をPETボトル用の所定の容器に注入した上で炭酸ガスを圧入するようにしてもよい。
【0049】
炭酸ガスのガスボリュームは、特に限定されない。
【0050】
[充填工程]
充填工程では、ポリフェノール含有飲料を容器に充填する。ポリフェノール含有飲料を充填する容器の種類としては特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(PETボトル)、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、ガラス瓶等の密封容器等が挙げられる。
【0051】
[その他]
なお、ポリフェノール含有飲料の製造方法においては、いずれかのタイミングで、適宜殺菌処理を施すようにしてもよい。殺菌処理の方法としては、特に限定されず、例えば通常のプレート式殺菌、チューブラー式殺菌、レトルト殺菌、バッチ殺菌、オートクレーブ殺菌等の加熱殺菌を行うことができる。なお、このような加熱殺菌を行う場合、上述した加熱工程での処理における加熱によって殺菌が行われるようにしてもよい。
【0052】
<2.泡立ち抑制方法>
上述したように、本実施の形態に係るポリフェノール含有飲料の製造方法は、ポリフェノールを5~400mg/100mLと、ペプチドとを含む飲料であって、ペクチンを0.001~0.1質量%の割合で含有させ、その後、80℃以上で加熱することにより、そのペプチドを含むポリフェノール含有飲料において発生する泡立ち等を効果的に抑制する効果を奏する。
【0053】
このことから、ポリフェノールと、ペプチドとを含むポリフェノール含有飲料に対して、ペクチンを特定の割合で含有させ、その後、80℃以上で加熱する、という泡立ち抑制方法と定義することができる。
【実施例
【0054】
以下、本発明を実施例及び比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0055】
[試験1:ペプチドを含むポリフェノール含有飲料のペクチン含有及び加熱による泡立ち抑制の検証]
(1)飲料の調製
下記表1のように、ラクトノナデカペプチド(LNDP)と、ブドウ果汁(コンコード種)と、ペクチン(CPケルコ社製「YM-115-LJ」)と、を含有する飲料を調製した。なお、表1には、ポリフェノール含有飲料100mlに対して炭酸水300mLを配合して得られた飲料の組成を示す。
【0056】
また、ラクトノナデカペプチド(LNDP)は、特許第5718741号公報段落[0108]~[0110]に記載の方法に従って作製し、7時間反応させたものを用いた。分子量分布は、500~6000のものがサイズ排除クロマトグラフ法のピーク面積比として65質量%であった。
【0057】
(2)加熱
次いで、調製した飲料を93℃に加熱した。
【0058】
(泡立ち評価)
実施例及び比較例のポリフェノール含有飲料について泡立ちを確認した。具体的には、下記表1に示す原料を配合するポリフェノール含有飲料100mlを泡立てないようにメスシリンダーに入れた。このメスシリンダーを垂直方向に対して108°に傾けて、炭酸水のディスペンサーの充填口からメスシリンダーの内面に対して垂直下方向に5.0cm離間させるようにメスシリンダーを固定した(図1の写真図を参照)。そして、炭酸水のディスペンサーの充填口から炭酸水(液温:3℃、炭酸ガスボリューム:5.2G.V.)を17.5ml/秒の速度で17秒間メスシリンダー内に炭酸水を約300ml入れて、泡量を計測した。
【0059】
上記の試験を3回ずつ泡立ち評価を行い泡量の平均値を求めた。そして、t検定法による加熱工程を経ていない飲料と比較したtスコアを算出した。泡立ち抑制の評価として、算出したtスコアが0.05未満のものを泡立ち抑制効果がある(「○」)と評価し、0.05以上のものを泡立ち抑制効果が十分ではなかった(「×」)と評価した。
【0060】
【表1】
【0061】
表1より、ペクチンを0.001~0.1質量%の含有量で含む実施例1~6のポリフェノール含有炭酸飲料では、加熱工程を経ることによって、泡立ちの発生を抑制できることがわかる。一方で、ペクチンを含有していないポリフェノール含有飲料(比較例1)では、加熱を行っても、泡立ち抑制の効果が十分ではなかった。また、ペクチンの含有量を0.3質量%としたポリフェノール含有飲料(比較例2)においても、泡立ちの発生を効果的に抑制することができなかった。
【0062】
[試験2:ペプチドの含有量及び種類、ポリフェノールの含有量及び種類の違いによる泡立ち抑制の検証]
下記表2に示すように、ペプチドの含有量及び種類、ポリフェノールの含有量及び種類を変更して飲料を調合した。LNDPとは異なるペプチドとして、大豆ペプチド(不二製油社製「ハイニュートDC6」、乳清ペプチド(日生協益社製「THERMAX690」)を用いた。ブドウ果汁とは異なるポリフェノールとして、アップルポリフェノール(アサヒグループ食品「アップルフェノン」)を用いた。また、ポリフェノールが少ない果汁として、オレンジ果汁を用いた。
【0063】
そして、上記試験1と同様にポリフェノール含有飲料の泡立ち評価を行った。
【表2】
【0064】
表2より、LNDPの含有量が異なる実施例7、8のポリフェノール含有炭酸飲料であっても、ペクチンを所定の割合で含有させ加熱工程を経ることによって、泡立ちの発生を効果的に抑制できることがわかる。
【0065】
さらに、ポリフェノールの含有量が異なる実施例9、10のポリフェノール含有炭酸飲料やポリフェノールの種類が異なる実施例13のポリフェノール含有炭酸飲料であっても、ペクチンを所定の割合で含有させ加熱工程を経ることによって泡立ちの発生を抑制できることがわかる。
【0066】
また、LNDPとは異なるペプチドを含む実施例11、12のポリフェノール含有炭酸飲料であってもペクチンを所定の割合で含有させ加熱工程を経ることによって泡立ちの発生を抑制できることがわかる。
【0067】
なお、ペプチド又はポリフェノールを含まない参考例1、2の飲料は、泡立ちの発生を抑制する効果は確認できなかった。また、ポリフェノール含有量が少ないオレンジ果汁のみを含み、ポリフェノールの含有量が5mg/100mL未満であり、実質的にポリフェノールを含まない比較例3の飲料は、泡立ちの発生を抑制する効果は確認できなかった。
【0068】
[試験3:加熱温度の違いによる泡立ち抑制の検証]
下記表3に示すように、加熱工程における加熱温度を変更して加熱工程を経た飲料を得た。表3中、加熱工程における加熱温度を「加熱温度」と表記した。そして、上記試験1と同様に泡立ち評価を行った。
【0069】
【表3】
【0070】
表3より、ペクチンを含有させるとともに、80℃以上で加熱することによって、泡立ちの発生を効果的に抑制できることがわかる。
図1