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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】多層フィルム、積層体及びエアバッグ
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/12 20060101AFI20240930BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20240930BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20240930BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20240930BHJP
   B60R 21/235 20060101ALI20240930BHJP
   C08L 29/04 20060101ALI20240930BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20240930BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20240930BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
B32B27/12
B32B27/34
B32B27/36
B32B27/40
B60R21/235
C08L29/04
C08L67/00
C08L75/04
C08L77/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019221659
(22)【出願日】2019-12-06
(65)【公開番号】P2024029265
(43)【公開日】2024-03-06
【審査請求日】2022-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】521140191
【氏名又は名称】ツェット・エフ・オートモーティブ・ジャーマニー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】田上 徹
(72)【発明者】
【氏名】山田 洋佑
(72)【発明者】
【氏名】山本 海斗
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ルートヴィッヒ
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/230722(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/230721(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/230723(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/230724(WO,A1)
【文献】特開2016-081705(JP,A)
【文献】特開2003-026755(JP,A)
【文献】特開2012-030547(JP,A)
【文献】特開平09-221588(JP,A)
【文献】特開2001-200038(JP,A)
【文献】特開2005-169651(JP,A)
【文献】特開2005-089483(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B60R 21/16-21/33
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基布に接着される多層フィルムであって、
前記基布に接着される第1層と、
前記第1層の上に設けられる第2層と、
前記第2層は、気密層を備え、かつ、前記第1層と前記気密層との間に中間層を備え
前記第1層及び前記第2層の何れか一方又は両方が、熱可塑性エラストマーを含み、
前記熱可塑性エラストマーが、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー及びポリアミド系エラストマーからなる群から選択される少なくとも一種であり、
溶融張力が7.5mN以上である多層フィルムであって、ここで、
前記第1層が、ポリブチレンテレフタレート(PBT)をハードセグメントとし、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)をソフトセグメントとして、ポリエステル-ポリエーテルブロック共重合体であるTPEE-3であり;前記気密層がPBTをハードセグメントとし、PTMGをソフトセグメントとして、ポリエステル-ポリエーテルブロック共重合体であるTPEE-1であり、及び、前記中間層がPBTをハードセグメントとし、ポリプロピレングルコール(PPG)をソフトセグメントとして、分岐成分はトリメリット酸としたポリエステル-ポリプロピレンブロック共重合体であるTPEE-2であるか;又は
前記第1層が前記TPEE-3であり、前記気密層が前記TPEE-3(70質量%)とエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)(30質量%)との混合物である混合物4であり、及び、前記中間層が前記TPEE-2であるか;又は
前記第1層が前記TPEE-2であり、前記気密層及び前記中間層が前記混合物4である、
多層フィルム。
【請求項2】
前記第1層及び前記第2層の少なくとも一方は、溶融張力が7.5mN以上である請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項3】
前記第1層、前記中間層及び前記気密層の少なくとも一つは、溶融張力が7.5mN以上である請求項に記載の多層フィルム。
【請求項4】
前記熱可塑性エラストマーの分岐成分の含有量が、0.1質量%~10質量%である請求項に記載の多層フィルム。
【請求項5】
前記基布が、エアバッグ用基布である請求項1~のいずれか一項に記載の多層フィルム。
【請求項6】
請求項1~のいずれか一項に記載の多層フィルムと、
基布と、
を備える積層体。
【請求項7】
請求項に記載の積層体を備えるエアバッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層フィルム、積層体及びエアバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
多層フィルムは、一般に、複数の樹脂層が積層して構成されており、柔軟性に優れることから、車両用エアバッグ、アウトドア用品、包装等のように形状の変化を伴う物品に広く使用されている。このような物品には、形状が変化し易い基布が使用される場合がある。その際、基布を保護するため、基布の表面には、基布に対して接着力を有する樹脂層を備えた多層フィルムが使用されている。
【0003】
このような多層フィルムとして、例えば、変性ポリエステル系エラストマーからなる接着性重合体組成物層と、ポリアミド樹脂又はエチレン-ビニルアルコール共重合体からなるガスバリア性樹脂層とを積層して構成された積層成形体が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この積層成形体は、積層成形体を構成する層の成形材料である、接着性重合体組成物及び熱可塑性樹脂をそれぞれ溶融させ、(共)押出成形法、インフレーション成形法、ブロー成形法、回転成形法、射出成形法等の各種成形法を用いて製造している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-144486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の多層フィルムでは、フィルムの成形時に成形安定性が悪く、所望の形状に成形できない場合もある。例えば、Tダイ法を用いた場合には、Tダイから押し出した溶融樹脂が幅狭となる、いわゆるネックイン現象を生じる場合がある。インフレーション成形法を用いた場合には、溶融樹脂が均一に吹き上がらず、安定したバブルを形成できない場合がある。
【0007】
本発明の一態様は、優れた成形安定性を有することができる多層フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る多層フィルムの一態様は、基布に接着される多層フィルムであって、
前記基布に接着される第1層と、
前記第1層の上に設けられる第2層と、を備え、
前記第1層及び前記第2層の何れか一方又は両方が、熱可塑性エラストマーを含み、
前記熱可塑性エラストマーが、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー及びポリアミド系エラストマーからなる群から選択される少なくとも一種であり、
溶融張力が7.5mN以上である。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る多層フィルムの一態様は、優れた成形安定性を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る多層フィルムの概略断面図である。
図2】複数の溶融混練機器を備えるインフレーション成形機の一例を示す図である。
図3】環状ダイの上面図である。
図4】複数の溶融混練機器を備えるTダイ押出し成形機の一例を示す図である。
図5】マルチマニホールド型ダイの吐出口から溶融多層フィルムが吐出する状態を示す説明図である。
図6】Tダイから溶融物が押し出される状態の説明図である。
図7】積層体の一例を模式的に示す断面図である。
図8】積層体製造装置の一例を模式的に示す図である。
図9】基布がOPWの場合の例を示す断面図である。
図10】多層フィルムの他の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の符号を付して、重複する説明は省略する。また、図面における各部材の縮尺は実際とは異なる場合がある。本明細書では、3軸方向(X軸方向、Y軸方向、Z軸方向)の3次元直交座標系を用い、第1層の主面における座標をX軸方向及びY軸方向とし、高さ方向(厚さ方向)をZ軸方向とする。第1層の下から上に向かう方向(第1層の主面から第2層に向かう方向)を+Z軸方向とし、その反対方向を-Z軸方向とする。以下の説明において、+Z軸方向を上といい、-Z軸方向を下という場合がある。本明細書において数値範囲を示すチルダ「~」は、別段の断わりがない限り、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0012】
<多層フィルム>
本発明の実施形態に係る多層フィルムについて説明する。図1は、本実施形態に係る多層フィルムの概略断面図である。図1に示すように、多層フィルム1は、第1層である接着層10と、接着層10に接着(接合)されている第2層20とを備え、接着層10の上に、第2層20を積層して構成されている。多層フィルム1は、基布2等の繊維状の物品に接着させて使用することができる。なお、基布2の詳細については、後述する。
【0013】
多層フィルム1Aは、多層フィルム1を構成する層(接着層10及び第2層20)のいずれかの層に熱可塑性エラストマーを含み、溶融張力を7.5mN以上有している。多層フィルム1Aの溶融張力は、8.0mN以上が好ましく、9.0mN以上がより好ましく、10mN以上がさらに好ましく、20.0mN以上が最も好ましい。溶融張力が7.5mN以上であれば、インフレーション法、Tダイ法等、種々な成形方法を用いる際、多層フィルム1Aは、成形時に、引き延ばし可能な程度の溶融状態で形態を安定して有することができる。
【0014】
なお、本実施形態において、溶融張力とは、規定の装置を用い、規定のダイより、所定の温度及び押出速度で押し出された溶融樹脂を、所定の引き取り速度から徐々に引き上げながら紡糸状に引き取っていき、紡糸が破断したとき値をいう。本実施形態においては、溶融張力は、Malvern社製のCapillary Extrusion Rheometerを用い、直径が1mm、長さが10mm、流入角が180°のキャピラリーより、8.8mm/minの一定速度で押し出された樹脂を5m/minの引取速度から徐々に引き上げながら紡糸状に引き取っていき、紡糸が破断したときの値とする。
【0015】
また、溶融張力は、多層フィルム1Aを構成する接着層10及び第2層20の融点よりも高温側の温度で測定した値である。多層フィルム1Aを構成する層は融点未満の温度では溶融状態にならず、融点から高温側に大きく超えた温度では完全に流動体となり、溶融張力を測定することができないためである。なお、多層フィルム1Aを構成するそれぞれの層(接着層10及び第2層20)の融点は、示差走査熱量計で測定された融解ピーク温度とする。
【0016】
多層フィルム1Aを構成する各層について説明する。
【0017】
[接着層]
接着層10は、基布2に接着させる層であり、多層フィルム1を基布2へ接着させる際の接着機能を有する。接着層10は、多層フィルム1を基布2に接着させる際に、所定条件の下で基布2に接着させることができる。接着層10が接着機能を発揮することで、多層フィルム1は、別途接着剤等を用いることなく、基布2に良好に接着させることができる。そのため、多層フィルム1を基布2へ接着させる際、接着剤の使用による手間やコストを低減することができる。また、多層フィルム1を長期間使用する場合等に、接着剤の変質によって多層フィルム1が基布2から剥離することを抑制できる。
【0018】
なお、所定条件とは、接着層10が基布2に対する接着性を発現できる条件であればよく、例えば温度及び圧力の少なくとも一方を上昇させて、接着層10が軟化又は融解させることができればよい。
【0019】
また、接着層10は、当該層の内外で気体を流通させない機能(以下、気密機能ともいう)を有してもよい。接着層10が気密機能を発揮することで、多層フィルム1を基布2に接着させた際、基布2内から外部に空気等の気体の漏洩を抑制することができる。
【0020】
接着層10は、熱可塑性エラストマー、エチレン-ビニルアルコール系共重合体(EVOH)、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート等(以下、単に、熱可塑性エラストマー等という場合がある。)を含むことができる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を含んでもよい。
【0021】
(熱可塑性エラストマー)
熱可塑性エラストマーは、ハードセグメント(高融点セグメント、結晶性セグメントともいう)と、ソフトセグメント(低融点セグメント、非結晶性セグメントともいう)とを含むブロック共重合体であることが好ましい。熱可塑性エラストマーは、熱により軟化して流動性を示し、熱を加えてない状態ではゴム様の弾性を示すことができる。
【0022】
熱可塑性エラストマーとしては、ポリエステル系エラストマー(ポリエステル系熱可塑性エラストマーともいう)、ポリウレタン系エラストマー(ポリウレタン系熱可塑性エラストマーともいう)及びポリアミド系エラストマー(ポリアミド系熱可塑性エラストマーともいう)からなる群から選択される少なくとも一種である。これらの中でも、分岐構造を有するブロック共重合体が形成し易い点から、ポリエステル系エラストマーが好ましい。
【0023】
接着層10は、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー及びポリアミド系エラストマーの少なくとも一つ以上を含むことで、得られる多層フィルム1の接着層10と基布2との接着性及び接着層10と第2層20との接着性を、常温、高温及び高湿の何れかを少なくとも含む条件下でも向上させることができる。また、多層フィルム1の柔軟性及び機械的強度を向上させることができる。なお、接着性の大きさは、層間剥離の有無から評価することができ、層間剥離が生じる場合には、接着性が高いと判断できる。
【0024】
なお、本実施形態において、高温とは、常温を超える温度をいい、高湿とは、常湿を超える湿度をいう。常温とは、5~35℃の温度範囲をいい、常湿とは、45~85%の相対湿度の範囲をいう。
【0025】
ポリエステル系エラストマーは、ハードセグメントとして芳香族ポリエステル等を含み、ソフトセグメントとして脂肪族ポリエーテル等を含むポリエステル・ポリエーテル共重合体、ハードセグメントとして芳香族ポリエステル等を含み、ソフトセグメントとして脂肪族ポリエステル等を含むポリエステル・ポリエステル共重合体等が好ましい。
【0026】
ポリエステル系エラストマーのハードセグメントは、芳香族ポリエステル、例えば、芳香族ジカルボン酸とジオールとにより形成されるポリエステルを含むことが好ましい。
【0027】
芳香族多価カルボン酸としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、4,4'-ビフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4'-ジフェニルエーテルジカルボン酸、5-スルホイソフタル酸、3-スルホイソフタル酸ナトリウム等が挙げられる。上記芳香族多価カルボン酸は、芳香族ポリエステル中に単独で含まれてもよいし、2種以上が組み合わされて含まれていてもよい。また、上記芳香族ジカルボン酸の一部が、脂環式又は脂肪族カルボン酸に置き換えられていてもよい。
【0028】
ジオールとしては、例えば、1,4-ブタンジオール、エチレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール等の脂肪族ジオール;1,1-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ジシクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール等の脂環族ジオール、キシリレングリコール、ビス(p-ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p-ヒドロキシ)ジフェニルプロパン、2,2'-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホン、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、4,4'-ジヒドロキシ-p-ターフェニル,4,4'-ジヒドロキシ-p-クオーターフェニル等の芳香族ジオールが挙げられる。上記ジオールは、芳香族ポリエステル中に単独で含まれてもよいし、2種以上が組み合わされて含まれていてもよい。
【0029】
ハードセグメントに含まれるポリエステルは、耐熱性やガスバリア性の観点から、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンイソフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートが好ましい。これらは、単独で含まれていてもよいし、2種以上が組み合わされて含まれていてもよい。また、これらは、共重合体として又は混合体として含まれていてもよい。
【0030】
ポリエステル系エラストマーのソフトセグメントは、脂肪族ポリエーテル及び脂肪族ポリエステルの少なくとも一方を含んでいることが好ましい。脂肪族ポリエーテルとしては、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール(ポリテトラメチレンエーテルグリコール)、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体グリコール等が挙げられる。脂肪族ポリエステルとしては、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリエナントラクトン、ポリカプリロラクトン、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペート等が挙げられる。
【0031】
これらの脂肪族ポリエーテル及び脂肪族ポリエステルのうち、弾性や成形性の観点から、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体グリコール、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペート等が好ましく、これらの中でも、特にポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加重合体、及び、エチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体グリコールが好ましい。
【0032】
ソフトセグメントの数平均分子量としては、共重合された状態において300~6000程度であることが好ましい。
【0033】
なお、上述のポリエステル系エラストマーは、ラジカル発生剤の存在下で、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸又はその誘導体等によって変性されていてもよい。変性のために添加される不飽和カルボン酸又はその誘導体は、熱可塑性ポリエステル系エラストマー100質量部に対して、0.1質量部~30質量部であるのが好ましい。このような変性に用いられる成分の種類及び量は、接着される基布2の材料や用途に応じて適宜選択することができる。
【0034】
接着層10におけるポリエステル系エラストマー中のハードセグメントの含有量は、熱可塑性ポリエステル系エラストマー100質量%に対して、10質量%~70質量%であるのが好ましく、20質量%~60重量%であるのがより好ましく、25質量%~55質量%であるのがさらに好ましい。ハードセグメントの含有量が上記の好ましい範囲内であれば、多層フィルム1の機械的強度、耐熱性及び高温高湿下での耐久性を向上させることができると共に、多層フィルム1の適度な弾性、可撓性及び成形性を確保することができる。
【0035】
接着層10におけるポリエステル系エラストマー中のソフトセグメントの含有量は、ポリエステル系エラストマー100質量%に対して、30質量%~90質量%であるのが好ましく、40質量%~80質量%であるのがより好ましく、45質量%~75質量%であるのがさらに好ましい。ソフトセグメントの含有量が上記の好ましい範囲内であれば、多層フィルム1の適度な弾性、可撓性及び成形性を確保することができると共に、多層フィルム1の機械的強度を向上させることができる。
【0036】
ポリエステル系エラストマー中のソフトセグメントの含有量は、ポリエステル系エラストマーの融点及び軟化点に関係する。一般に、ポリエステル系エラストマー中のソフトセグメントの含有量が大きくなる程、ポリエステル系エラストマーの融点及び軟化点は低くなる。接着層10におけるポリエステル系エラストマー中のソフトセグメントの含有量を調整することで、ポリエステル系エラストマーの融点を調整することができるので、接着層10の融点を調整することができる。
【0037】
接着層10の融点は、適宜調整され、中間層21及び気密層22の融点より低いことが好ましい。接着層10の融点は、第2層20を構成する中間層21及び気密層22の融点を下回る温度であればよく、80℃~250℃が好ましく、100℃~200℃がより好ましく、130℃~190℃がさらにより好ましい。なお、接着層10の融点は、接着層10に用いられるポリエステル系エラストマーの種類及びその含有量、ポリエステル系エラストマーを構成するハードセグメント及びソフトセグメントの種類及び含有量等に応じて調整される。
【0038】
接着層10の融点が中間層21及び気密層22の融点よりも高くすることで、多層フィルム1を加熱して基布2に接着させる場合、中間層21及び気密層22の軟化を抑えつつ、接着層10を、基布2との接着に適した柔らかさに軟化又は融解させることができる。そのため、製造時に多層フィルム1の加熱温度や圧力の条件が変動しても、基布2に対して確実に接着させることができる。
【0039】
ポリエステル系エラストマーの市販品としては、東レ・デュポン株式会社製「Hytrel(登録商標)」、三菱化学株式会社製「MODIC(登録商標)」、東洋紡績株式会社製「ペルプレン(登録商標)」、DSM社製「Arnitel(登録商標)」、日本合成化学株式会社製「フレクマー」の各シリーズ等が挙げられる。
【0040】
ポリウレタン系エラストマーは、ハードセグメントとしてジイソシアネート化合物と短鎖グリコールとの縮合体であるウレタン等を含み、ソフトセグメントとしてポリエステル又はポリエーテル等を含むポリウレタン系共重合体等が好ましい。ポリウレタン系エラストマーは、ハードセグメントとして、ウレタンを単独で含んでもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
【0041】
ポリウレタン系共重合体としては、例えば、式(I):
【0042】
【化1】
(式中、Aはハードセグメントであるジイソシアネート化合物と短鎖グリコールとの縮合体ブロック、Bはソフトセグメントであるポリエステル又はポリエーテルであり、Yはジイソシアネート化合物の残基を示す)
で表される共重合体が挙げられる。
【0043】
ジイソシアネート化合物としては、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の公知慣用のものが使用される。ハードセグメントとソフトセグメントのジイソシアネート化合物は同一であっても異なっていてもよい。
【0044】
短鎖グリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール等の炭素数2~5のアルキレングリコール等が挙げられる。
【0045】
ポリエステルとしては、ポリアルキレンアジペート、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート等が挙げられる。
【0046】
ポリエーテルとしては、分子量が400~6000のポリ(アルキレンオキシド)グリコール等が挙げられる。分子量が400~6000のポリ(アルキレンオキシド)グリコールとして、ポリエチレングリコール、ポリ(1,2-及び1,3-プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール等の分子量が400~6000のポリ(アルキレンオキシド)グリコール等が挙げられる。
【0047】
ポリエステル及びポリエーテルは、前記ジイソシアネート化合物との縮合結合部を含んでいてもよい。
【0048】
ポリウレタン系エラストマーのソフトセグメントは、上記の、熱可塑性ポリエステル系エラストマーのソフトセグメントと同様の材料を用いることができる。よって、ポリウレタン系エラストマーのソフトセグメントの説明は、省略する。
【0049】
ポリウレタン系エラストマー中のハードセグメントの含有量は、上記の、ポリエステル系エラストマー中のハードセグメントの含有量と同様にすることができる。よって、ポリエステル系エラストマー中のハードセグメントの含有量の説明は、省略する。
【0050】
ポリウレタン系エラストマー中のソフトセグメントの含有量は、上記の、ポリエステル系エラストマー中のソフトセグメントの含有量と同様にすることができる。よって、ポリエステル系エラストマー中のソフトセグメントの含有量の説明は、省略する。
【0051】
ポリウレタン系エラストマーの融点は、上記の、ポリエステル系エラストマーの融点と同様にすることができる。よって、ポリエステル系エラストマーの融点の説明は、省略する。
【0052】
ポリウレタン系エラストマーの市販品としては、「エラストラン(登録商標)」(BASFジャパン株式会社製)、「ミラクトラン」(日本ミラクトラン株式会社製)、「レザミンPシリーズ」(大日精化工業株式会社製)、「ユーファインP」(旭硝子株式会社製)等が挙げられる。
【0053】
ポリアミド系エラストマーは、ハードセグメントとしてポリアミドを含み、ソフトセグメントとしてポリエーテル又はポリエステル等を含むポリアミド系共重合体等が好ましい。ポリアミド系エラストマーは、ハードセグメントとして、ポリアミドを単独で含んでもよいし、2種以上を含んでもよい。
【0054】
ポリアミドブロックとしては、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン11、ナイロン12等が挙げられ、中でもナイロン12が好ましい。
【0055】
ポリエーテルブロックは、ポリエステル系エラストマーのソフトセグメントと同様に、脂肪族ポリエーテルブロックであることが好ましい。
【0056】
ポリアミド- ポリエーテル共重合体としては、例えば、式(II):
【0057】
【化2】
(式中、PAはハードセグメントであるポリアミド、PGはソフトセグメントであるポリエーテルを示す)
で表される共重合体が挙げられる。
【0058】
ポリアミド-ポリエーテル共重合体は、例えば、ジアミンとジカルボン酸の塩、ラクタム類、又はアミノジカルボン酸(PA構成成分)、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール(PG構成成分)、及びジカルボン酸を重縮合させることによって得られる。
【0059】
ポリアミド-ポリエーテル共重合体の市販品としては、「ペバックス(登録商標)」(アルケマ社製)、「ダイアミド-PAE」(ダイセルデグサ株式会社製)、「UBEポリアミドエラストマー」(宇部興産株式会社製)、「ノバミッドPAE」(三菱エンジニアリングプラスチック株式会社製)、「グリラックス」(東洋紡株式会社製)、「グリロンELX、ELY」(エムスケミー・ジャパン株式会社製)等がある。
【0060】
ポリアミド系エラストマーのソフトセグメントは、上記の、熱可塑性ポリエステル系エラストマーのソフトセグメントと同様の材料を用いることができる。よって、ポリアミド系エラストマーのソフトセグメントの説明は、省略する。
【0061】
ポリアミド系エラストマー中のハードセグメントの含有量は、上記の、ポリエステル系エラストマー中のハードセグメントの含有量と同様にすることができる。よって、ポリアミド系エラストマー中のハードセグメントの含有量の説明は、省略する。
【0062】
ポリアミド系エラストマー中のソフトセグメントの含有割合は、上記の、ポリエステル系エラストマー中のソフトセグメントの含有量と同様にすることができる。よって、ポリアミド系エラストマー中のソフトセグメントの含有量の説明は、省略する。
【0063】
ポリアミド系エラストマーの融点は、上記の、ポリエステル系エラストマーの融点と同様にすることができる。よって、ポリアミド系エラストマーの融点の説明は、省略する。
【0064】
(分岐成分)
接着層10は、熱可塑性エラストマーを含む場合には、分岐成分を含むことができる。
【0065】
分岐成分は、2つ以上の官能基を有する多価成分である。分岐成分が含まれることで、接着層10に含まれる熱可塑性エラストマーは、分岐構造を有することができる。接着層10が分岐成分を含むことで、接着層10を形成する熱可塑性エラストマーは分岐構造を有することができるので、接着層10の成形時において形態の安定性をより高めやすい。なお、本実施形態では、多価とは、2つ以上の官能基を有すればよいが、3つ以上の官能基を有することが好ましい。
【0066】
分岐成分は、熱可塑性エラストマーがポリエステル系エラストマーである場合には、分子中に2個以上のカルボキシル基を有する芳香族多価カルボン酸と、分子中に2個以上の水酸基を有する多価アルコールとの少なくとも一方を用いることができる。
【0067】
また、分岐成分は、熱可塑性エラストマーがポリウレタン系エラストマーである場合には、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシアネート系化合物と、分子中に2個以上の水酸基を有するポリオール系化合物との少なくとも一方を用いることができる。
【0068】
さらに、分岐成分は、熱可塑性エラストマーがポリエステル系エラストマーとポリウレタン系エラストマーとを含む場合には、ポリエステル系エラストマーに、多価イソシアネート系化合物及びポリオール系化合物の少なくとも一方を用いることで、ポリエステル系エラストマーと、分岐構造を有するポリウレタン系エラストマーを含むことができる。
【0069】
芳香族多価カルボン酸としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、4,4'-ビフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4'-ジフェニルエーテルジカルボン酸、5-スルホイソフタル酸、3-スルホイソフタル酸ナトリウム等の芳香族ジカルボン酸;プロパン-1,2,3-トリカルボン酸、2-メチルプロパン-1,2,3-トリスカルボン酸、ブタン-1,2,4-トリカルボン酸、ブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ヘミメリット酸、ピロメリット酸、ベンゼンペンタカルボン酸、シクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸、シクロヘキサン-1,3,5-トリカルボン酸、シクロヘキサン-1,2,4,5-テトラカルボン酸、ナフタレン-1,2,4-トリカルボン酸、ナフタレン-2,5,7-トリカルボン酸、ピリジン-2,4,6-トリカルボン酸、ナフタレン-1,2,7,8-テトラカルボン酸、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸等が挙げられる。中でも、トリメリット酸が好ましい。上記芳香族多価カルボン酸は、芳香族ポリエステル中に単独で又は2種以上が組み合わされて含まれていてもよい。また、ハードセグメントにおいて、上記芳香族多価カルボン酸成分の一部が、脂環式又は脂肪族カルボン酸に置き換えられていてもよい。
【0070】
多価アルコールとしては、1,4-ブタンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール等の脂肪族ジオール;1,1-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ジシクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール等の脂環族ジオール、キシリレングリコール、ビス(p-ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p-ヒドロキシ)ジフェニルプロパン、2,2'-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホン、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、4,4'-ジヒドロキシ-p-ターフェニル,4,4'-ジヒドロキシ-p-クオーターフェニル等の芳香族ジオール;1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、1,2,6-ヘキサントリオール、1,2,3,6-ヘキサンテトロール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、トリエタノールアミン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリトリメチロールプロパン、2-メチルプロパントリオール、2-メチル-1,2,4-ブタントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、メチルグルコシド、ソルビトール、マンニトール、スクロース、1,3,5-トリヒドロキシベンゼン、1,2,4-トリヒドロキシベンゼン、(ポリ)オキシエチレングリセリン、(ポリ)オキシプロピレングリセリン、(ポリ)オキシエチレンジグリセリン、(ポリ)オキシプロピレンジグリセリン、(ポリ)オキシエチレントリメチロールプロパン、(ポリ)オキシプロピレントリメチロールプロパン、(ポリ)オキシエチレンジトリメチロールプロパン、(ポリ)オキシプロピレンジトリメチロールプロパン、エリスリトール(エリトリトールともいう)、(ポリ)オキシエチレンペンタエリスリトール、(ポリ)オキシプロピレンペンタエリスリトール、(ポリ)オキシエチレンジペンタエリスリトール、(ポリ)オキシプロピレンジペンタエリスリトール等が挙げられる。中でも、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトールが好ましい。多価アルコールは、芳香族ポリエステル中に単独で又は2種以上が組み合わされて含まれていてもよい。
【0071】
多価イソシアネート系化合物としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニルメタンポリイソシアネート、変性ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族系多価イソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート等の脂肪族系ポリイソシアネート;水添化ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂環式系多価イソシアネート;又はこれら多価イソシアネートのイソシアヌレート体若しくは多量体化合物、アロファネート型ポリイソシアネート、ビュレット型ポリイソシアネート、水分散型ポリイソシアネート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0072】
多価イソシアネート系化合物の市販品としては、例えば、「コロネート」(東ソー株式会社製)、「デュラネート」(旭化成株式会社製)、「タケネート」(三井化学株式会社製)等がある。
【0073】
ポリオール系化合物としては、例えば、脂肪族ポリオール、脂環式ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、ポリブタジエン系ポリオール、ポリイソプレン系ポリオール、(メタ)アクリル系ポリオール、ポリシロキサン系ポリオール等が挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0074】
脂肪族ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、ジメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,4-テトラメチレンジオール、1,3-テトラメチレンジオール、2-メチル-1,3-トリメチレンジオール、1,5-ペンタメチレンジオール、1,6-ヘキサメチレンジオール、3-メチル-1,5-ペンタメチレンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタメチレンジオール、ペンタエリスリトールジアクリレート、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール等の2個の水酸基を含有する脂肪族アルコール類、キシリトールやソルビトール等の糖アルコール類、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の3個以上の水酸基を含有する脂肪族アルコール類等が挙げられる。
【0075】
脂環式ポリオールとしては、例えば、1,4-シクロヘキサンジオール、シクロヘキシルジメタノール等のシクロヘキサンジオール類、水添ビスフェノールA等の水添ビスフェノール類、トリシクロデカンジメタノール等が挙げられる。
【0076】
ポリエーテル系ポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリペンタメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール等のアルキレン構造含有ポリエーテル系ポリオール、及びこれらポリアルキレングリコールのランダム又はブロック共重合体等が挙げられる。
【0077】
ポリエステル系ポリオールとしては、例えば、多価アルコールと多価カルボン酸との縮合重合物;環状エステル(ラクトン)の開環重合物;多価アルコール、多価カルボン酸および環状エステルの3種類の成分による反応物等が挙げられる。
【0078】
ポリカーボネート系ポリオールとしては、例えば、多価アルコールとホスゲンとの反応物;環状炭酸エステル(アルキレンカーボネート等)の開環重合物等が挙げられる。
【0079】
上記多価アルコールとしては、上記で例示の多価アルコール等が挙げられ、上記アルキレンカーボネートとしては、例えば、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネート、ヘキサメチレンカーボネート等が挙げられる。
【0080】
なお、ポリカーボネート系ポリオールは、分子内にカーボネート結合を有し、末端がヒドロキシ基である化合物であればよく、カーボネート結合とともにエステル結合を有していてもよい。
【0081】
ポリオレフィン系ポリオールとしては、飽和炭化水素骨格としてエチレン、プロピレン、ブテン等のホモポリマーまたはコポリマーを有し、その分子末端に水酸基を有するものが挙げられる。
【0082】
ポリブタジエン系ポリオールとしては、炭化水素骨格としてブタジエンの共重合体を有し、その分子末端に水酸基を有するものが挙げられる。ポリブタジエン系ポリオールは、その構造中に含まれるエチレン性不飽和基の全部または一部が水素化された水添化ポリブタジエンポリオールであってもよい。
【0083】
ポリイソプレン系ポリオールとしては、炭化水素骨格としてイソプレンの共重合体を有し、その分子末端に水酸基を有するものが挙げられる。ポリイソプレン系ポリオールは、その構造中に含まれるエチレン性不飽和基の全部または一部が水素化された水添化ポリイソプレンポリオールであってもよい。
【0084】
(メタ)アクリル系ポリオールとしては、(メタ)アクリル酸エステルを重合体または共重合体の分子内にヒドロキシ基を少なくとも2つ有しているものが挙げられ。(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。
【0085】
ポリシロキサン系ポリオールとしては、例えば、ジメチルポリシロキサンポリオールやメチルフェニルポリシロキサンポリオール等が挙げられる。
【0086】
分岐成分の含有量は、0.1質量%~10質量%であることが好ましく、0.3質量%~5質量%であることがより好ましく、0.5質量%~3質量%であることがさらに好ましい。分岐成分の含有量は、0.1質量%~10質量%であれば、接着層10に含まれる熱可塑性エラストマーは分岐構造を有することができると共に、接着層10の柔軟性を維持することができる。
【0087】
熱可塑性エラストマーは、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー及びポリアミド系エラストマーの他に、ポリオレフィン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリブタジエン系エラストマー等のうちの1種以上を含んでもよい。
【0088】
(EVOH)
EVOHは、通常、エチレンとビニルエステル系モノマーを共重合させた後にケン化させることにより得られる、非水溶性の熱可塑性樹脂である。ビニルエステル系モノマーとしては、経済的な面から、一般的には酢酸ビニルが用いられる。重合法は、溶液重合、懸濁重合、エマルジョン重合等の公知の重合法を用いることができ、一般的にはメタノールを溶媒とする溶液重合が用いられる。得られたエチレン-ビニルエステル共重合体のケン化も公知の方法で行い得る。すなわち、EVOHは、エチレン構造単位とビニルアルコール構造単位を主とし、ケン化されずに残存した若干量のビニルエステル構造単位を含むものである。
【0089】
EVOHに含まれるエチレン構造単位の含有量は、20モル%~60モル%の範囲内とするのが好ましい。含有量が20モル%~60モル%の範囲内であれば、柔軟性を発揮できる。なお、エチレン構造単位の含有量は、例えば、ISO14663-1(1999)に準じて計測することができる。
【0090】
EVOHにおけるビニルエステル成分のケン化度は、80モル%~100モル%の範囲内とするのが好ましい。ケン化度が上記範囲内であれば、柔軟性を発揮できる。なお、ビニルエステル成分のケン化度は、例えば、JIS K6726(1994)(ただし、EVOHは水/メタノール溶媒(水:メタノール=9:1(質量比))に均一に溶解した溶液である。)に準じて計測することができる。
【0091】
EVOHのメルトフローレート(MFR)(210℃、荷重2,160g)は、1g/10分~50g/10分の範囲内とするのが好ましい。MFRが上記範囲内であれば、柔軟性を発揮できる。
【0092】
EVOHは、それぞれ単独で用いることもできるし、エチレン含有率、ケン化度及びMFRが異なる2種以上のEVOHを混合して用いてもよい。
【0093】
接着層10は、熱可塑性エラストマー、分岐成分及びEVOHを含まない場合には、これらに代えて、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート等(以下、単に、ポリオレフィン系樹脂等という場合がある。)を含むことができる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を含んでもよい。
【0094】
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリブチレン、ポリメチルペンテン等が挙げられる。ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン(LPDE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(L-LDPE)が挙げられる。また、ポリオレフィン系樹脂は、不飽和カルボン酸又はその無水物が付加反応やグラフト反応等により結合させて得られる変性ポリオレフィン系樹脂でもよい。
【0095】
ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の芳香族ポリエステル系樹脂等が挙げられる。
【0096】
ポリアミド系樹脂としては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド10、ポリアミド12、ポリアミド6-12等の脂肪族ポリアミド及びその共重合体、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンとから合成された半芳香族ポリアミド等が挙げられる。
【0097】
アクリル樹脂としては、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。
【0098】
ポリウレタンとしては、ポリカーボネート系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタン及びこれらの変性物等が挙げられる。
【0099】
ポリ塩化ビニルとしては、従来公知の乳化重合法、懸濁重合法、マイクロ懸濁重合法、塊状重合法等の方法により重合される塩化ビニル単独重合体、または、塩化ビニルモノマーと共重合可能なモノマーとの共重合体、または、重合体に塩化ビニルモノマーをグラフト重合したグラフト共重合体等が挙げられる。
【0100】
ポリカーボネートとしては、芳香族ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリカーボネート樹脂、芳香族-脂肪族ポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0101】
(副成分)
接着層10は、熱可塑性エラストマー、分岐成分、EVOHの他に、副成分として、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート等(以下、単に、EVA等という場合がある。)を含むことができる。これらの中でも、EVAやポリオレフィン系樹脂が好ましい。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を含んでもよい。ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート等は、上述の、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート等と同様であるため、これらの詳細な説明については省略する。
【0102】
副成分の含有量は、熱可塑性エラストマー及び副成分の種類に応じて適宜設計可能であり、副成分がEVAである場合には、熱可塑性エラストマーとEVAとの含有割合は、90:10~50:50が好ましく、80:20~60:40がより好ましい。
【0103】
接着層10は、上記各成分以外に、添加剤を含んでもよい。添加剤としては、顔料、充填材、酸化防止剤、加水分解安定剤、アンチブロッキング剤等が挙げられる。
【0104】
接着層10中の熱可塑性エラストマーの含有量は、接着層10の全量に対して、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、またさらに好ましくは99.5質量%以上である。接着層10は、熱可塑性エラストマーから構成されていてもよい。
【0105】
接着層10の全体の厚さは、適宜設計可能であり、例えば、1μm~50μmが好ましく、5μm~40μmがさらに好ましい。
【0106】
接着層10は、溶融張力を7.5mN以上有するのが好ましく、8.0mN以上がより好ましく、9.0mN以上がさらに好ましく、10mN以上がまたさらに好ましく、20.0mN以上が最も好ましい。接着層10の溶融張力が7.5mN以上であれば、インフレーション法、Tダイ法等、種々な成形方法を用いる際、接着層10は、成形時に、引き延ばし可能な程度の溶融状態で形態を安定して有することができる。
【0107】
[第2層]
第2層20は、接着層10の上(+Z軸方向)に設けられ、気密機能を有する。第2層20は、中間層21と気密層22とを備え、接着層10の上に、中間層21と気密層22とをこの順に積層して構成している。
【0108】
(中間層)
中間層21は、接着層10と気密層22との間に設けられ、接着層10と気密層22とを結合させる機能を有する。中間層21の組成は、接着層及10及び気密層22の組成や厚さ、多層フィルム1の用途等に応じて選択することができる。中間層21を設けることで、接着層10と気密層22との結合力を強化することができ、これにより、多層フィルム1内の層間剥離を抑制することができる。また、中間層21を設けることで、機械的強度等の特性を向上させることもできる。
【0109】
中間層21は、熱可塑性エラストマー等を含むことができる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を含んでもよい。熱可塑性エラストマー等としては、上記の接着層10に用いられる熱可塑性エラストマー等と同様の熱可塑性エラストマー等を用いることができる。そのため、熱可塑性エラストマー等の詳細な説明については省略する。
【0110】
中間層21における熱可塑性エラストマー中のハードセグメントの含有量は、熱可塑性エラストマー100質量%に対して、30質量%~95質量%が好ましく、35質量%~90質量%がより好ましく、40質量%~85質量%がさらに好ましい。ハードセグメントの含有量を好ましい範囲とすることで、多層フィルム1の機械的強度と、耐熱性と、高温高湿下での耐久性とを向上させることができると共に、多層フィルム1は、適度な弾性、可撓性及び成形性を有することができる。
【0111】
中間層21における熱可塑性エラストマー中のソフトセグメントの含有量は、熱可塑性エラストマー100質量%に対して、5質量%~70質量%が好ましく、10質量%~65質量%がより好ましく、15質量%~60質量%がさらに好ましい。ソフトセグメントの含有量を好ましい範囲とすることで、多層フィルム1及び得られる積層体の適度な弾性、可撓性、及び成形性を確保することができると共に、多層フィルム及び得られる積層体の機械的強度を向上させることができる。
【0112】
中間層21の融点は、接着層10の融点よりも高いのが好ましい。中間層21の融点は、接着層10の融点よりも高いという条件を確保した上で、例えば、90℃~300℃が好ましく、130℃~250℃以上がより好ましく、150℃~220℃がさらに好ましい。なお、中間層21の融点は、中間層21に用いられる熱可塑性エラストマーの種類及びその含有量、熱可塑性エラストマーを構成するハードセグメント及びソフトセグメントの種類及び含有量等に応じて調整される。
【0113】
中間層21の融点は、上述のように、接着層10の融点よりも高くすることが好ましい。中間層21の融点と接着層10の融点との差は、10℃~150℃が好ましく、20℃~100℃がより好ましい。多層フィルム1を、熱を利用して基布2に接着させる際には、中間層21の融点と接着層10の融点との差を上記の範囲内とすることで、製造時の加熱温度が多少変動することがあっても、接着層10と気密層22との結合性能を維持することができる。そのため、接着層10が十分に軟化せずに基布2との接着が良好にできなかったり、又は中間層21が変形又は変質したりする等して接着層10と気密層22との結合が損なわれた不良品が発生することを低減でき、生産安定性を向上させることができる。
【0114】
中間層21は、接着層10と同様、熱可塑性エラストマーの他に、分岐成分を含むことができる。分岐成分は、接着層10と同様の分岐成分を用いることができるため、分岐成分の詳細な説明については省略する。中間層21が分岐成分を含むことで、中間層21を形成する熱可塑性エラストマーが分岐構造を有することができるので、中間層21の成形時において形態の安定性をより高めやすい。
【0115】
分岐成分の含有量は、接着層10と同様にすることができる。分岐成分の含有量は、0.1質量%~10質量%であれば、中間層21に含まれる熱可塑性エラストマーは分岐構造を有することができると共に、中間層21の柔軟性を維持することができる。
【0116】
中間層21は、接着層10と同様、熱可塑性エラストマー、分岐成分及びEVOHを含まない場合には、これらに代えて、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート等を含むことができる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を含んでもよい。ポリオレフィン系樹脂等は、接着層10と同様のポリオレフィン系樹脂等を用いることができるため、ポリオレフィン系樹脂等の詳細な説明については省略する。
【0117】
中間層21は、接着層10と同様、副成分として、EVA、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート等を含むことができる。これらの中でも、EVAやポリオレフィン系樹脂が好ましい。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を含んでもよい。
【0118】
副成分の含有量は、接着層10と同様にすることができる。
【0119】
中間層21は、接着層10と同様、上述した成分以外に、顔料、充填材、酸化防止剤、加水分解安定剤、アンチブロッキング剤等の添加剤を含んでもよい。
【0120】
中間層21中の熱可塑性エラストマーの含有量は、中間層21の全量に対して、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、またさらに好ましくは99.5質量%以上である。中間層21は、熱可塑性エラストマーから構成されていてもよい。
【0121】
中間層21の全体の厚さは、適宜設計可能であり、例えば、1μm~50μmが好ましく、3μm~30μmがより好ましい。
【0122】
中間層21は、溶融張力を7.5mN以上有するのが好ましく、8.0mN以上がより好ましく、9.0mN以上がさらに好ましく、10mN以上がまたさらに好ましく、20.0mN以上が最も好ましい。中間層21の溶融張力が7.5mN以上であれば、インフレーション法、Tダイ法等、種々な成形方法を用いる際、中間層21は引き延ばし可能な程度の溶融状態で形態を安定して維持することができる。
【0123】
中間層21は、2層以上の複数層で構成されていてもよい。中間層21が複数層である場合、各層の組成は、同じでもよいし異なってもよい。中間層21を複数層とした場合、各中間層21の材料を多層フィルム1における各層間の接着性が向上するように適宜選択することで、各層間の結合をより強固にすることができるので、多層フィルム1内の層間剥離をより抑制することができる。
【0124】
(気密層)
気密層22は、上述のように、中間層21の上(+Z軸方向)に設けられ、気密機能を有する。そのため、例えば、多層フィルム1を袋状に形成した場合、袋の内部に溜めた空気が外へ漏れることをより確実に抑制することができる。
【0125】
気密層22は、熱可塑性エラストマー等を含むことができる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を含んでもよい。熱可塑性エラストマー等としては、上記の接着層10に用いられる熱可塑性エラストマー等と同様の熱可塑性エラストマー等を用いることができる。そのため、熱可塑性エラストマー等の詳細な説明については省略する。
【0126】
気密層22における熱可塑性エラストマー中のハードセグメントの含有量は、熱可塑性エラストマー100質量%に対して、30質量%~95質量%であるのが好ましく、35質量%~90質量%がより好ましく、40質量%~85質量%がさらに好ましい。ハードセグメントの含有量を好ましい範囲とすることで、多層フィルム1の機械的強度と、耐熱性と、高温高湿下での耐久性とを向上させることができると共に、多層フィルム1は適度な弾性、可撓性及び成形性を有することができる。
【0127】
気密層22における熱可塑性エラストマー中のソフトセグメントの含有量は、熱可塑性エラストマー100質量%に対して、5質量%~70質量%であるのが好ましく、10質量%~65質量%であるのがより好ましく、15質量%~60質量%であるのがさらに好ましい。ソフトセグメントの含有量を好ましい範囲とすることで、多層フィルム1及び得られる積層体の適度な弾性、可撓性、及び成形性を確保することができると共に、多層フィルム1及び得られる積層体の機械的強度を向上させることができる。
【0128】
気密層22の融点は、中間層21と同様、接着層10の融点よりも高いのが好ましく、接着層10の融点よりも高いという条件を確保した上で、例えば、90℃以上が好ましく、150℃以上がより好ましく、180℃以上がさらに好ましい。また、気密層22の融点の上限は、接着層10の融点を上回ればよく、300℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましく、230℃以下がさらに好ましい。なお、気密層22の融点は、中間層21と同様、中間層21に用いられる熱可塑性エラストマーの種類及びその含有量、熱可塑性エラストマーを構成するハードセグメント及びソフトセグメントの種類及び含有量等に応じて調整される。
【0129】
気密層22の融点は、上述のように、接着層10の融点よりも高くすることが好ましい。気密層22の融点と接着層10の融点との差は、10℃~150℃が好ましく、20℃~100℃がより好ましい。多層フィルム1を、熱を利用して基布2に接着させる際には、気密層22の融点と接着層10の融点との差を上記の範囲内とすることで、製造時の加熱温度が多少変動することがあっても、気密層22の気密機能及び接着層10の接着機能を確保することができる。そのため、接着層10が十分に軟化せずに基布2との接着が良好にできなかったり、又は気密層22が変形又は変質したりする等して気密性が損なわれた不良品が発生することを低減でき、生産安定性を向上させることができる。
【0130】
気密層22は、接着層10と同様、熱可塑性エラストマーの他に、分岐成分を含むことができる。分岐成分は、接着層10と同様の分岐成分を用いることができるため、分岐成分の詳細な説明については省略する。気密層22が分岐成分を含むことで、気密層22を形成する熱可塑性エラストマーは分岐構造を有することができるので、気密層22の成形時において形態の安定性をより高めやすい。
【0131】
分岐成分の含有量は、接着層10と同様にすることができる。分岐成分の含有量は、0.1質量%~10質量%であれば、気密層22に含まれる熱可塑性エラストマーは分岐構造を有することができると共に、気密層22の柔軟性を維持することができる。
【0132】
気密層22は、接着層10と同様、熱可塑性エラストマー、分岐成分及びEVOHを含まない場合には、これらに代えて、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート等を含むことができる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を含んでもよい。ポリオレフィン系樹脂等は、接着層10と同様のポリオレフィン系樹脂等を用いることができるため、ポリオレフィン系樹脂等の詳細な説明については省略する。
【0133】
気密層22は、接着層10と同様、副成分として、EVA、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート等を含むことができる。これらの中でも、EVAやポリオレフィン系樹脂が好ましい。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を含んでもよい。
【0134】
副成分の含有量は、接着層10と同様にすることができる。
【0135】
気密層22は、中間層21と同様、上述した成分以外に、顔料、充填材、酸化防止剤、加水分解安定剤、アンチブロッキング剤等の添加剤を含んでもよい。
【0136】
気密層22中の熱可塑性エラストマーの含有量は、気密層22の全量に対して、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、またさらに好ましくは99.5質量%以上である。気密層22は、熱可塑性エラストマーから構成されていてもよい。
【0137】
気密層22の全体の厚さは、適宜設計可能であり、例えば、1μm~50μmであるのが好ましく、3μm~30μmであるのがさらに好ましい。
【0138】
気密層22は、溶融張力を7.5mN以上有するのが好ましく、8.0mN以上がより好ましく、9.0mN以上がさらに好ましく、10mN以上がまたさらに好ましく、20.0mN以上が最も好ましい。気密層22の溶融張力が7.5mN以上であれば、インフレーション法、Tダイ法等、種々な成形方法を用いる際、気密層22は引き延ばし可能な程度の溶融状態で形態を安定して維持することができる。
【0139】
気密層22は、2層以上の複数層で構成されていてもよい。気密層22が複数層である場合、各層の組成は、同じでもよいし異なってもよい。気密層22を複数層とした場合、各気密層22の材料を多層フィルム1における各層間の接着性が向上するように適宜選択することで、各層間の結合をより強固にすることができるので、多層フィルム1内の層間剥離を防止することができる。
【0140】
多層フィルム1を構成する、接着層10、中間層21及び気密層22のいずれか一つ以上の層が熱可塑性エラストマーを含む場合には、熱可塑性エラストマーを含まない他の層は、EVOH、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート等を含むことができる。中でも、EVOHを含むのが好ましい。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を含んでもよい。EVOH、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート等は、上記の接着層10と同様の、EVOH、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート等を用いることができる。
【0141】
(多層フィルムの製造)
多層フィルム1の製造方法の一例について説明する。接着層10、中間層21及び気密層22の材料(原料)を押出機や加圧式ニーダー等の溶融混練機器を用いてそれぞれ溶融状態にして、同時に押出成形し(共押出し)、インフレーション法、Tダイ法等の公知の成形方法を用いて成形する。これにより、接着層10、中間層21及び気密層22をそれぞれ別個のシートとして得ることができる。そして、接着層10と中間層21とを結合させ、中間層21と気密層22とを結合させて、これらの各層を、接着層10の上に中間層21及び気密層22の順に積層させる。これにより、多層フィルム1が得られる。中でも、大面積化が可能であり、かつ生産性に優れるインフレーション法を用いることが好ましい。
【0142】
インフレーション法を用いる場合、例えば、複数(本実施形態では、3つ)の溶融混練機器を備えるインフレーション成形機を用いることができる。図2は、複数の溶融混練機器を備えるインフレーション成形機の一例を示す図である。図2に示すように、インフレーション成形機30は、3つの溶融混練機器31A、31B及び31Cと、環状ダイ32と、エアリング(冷却リング)33と、一対の案内板34と、ピンチロール35と、ガイドロール36と、トリミング37とを備える。
【0143】
接着層10、中間層21及び気密層22を構成する材料を3つの溶融混練機器31A、31B及び31Cにそれぞれ挿入して、3つの溶融混練機器31A、31B及び31C内で溶融させる。接着層10、中間層21及び気密層22を構成する材料の溶融物を溶融混練機器31A、31B及び31Cからそれぞれ環状ダイ32に押し出すと、図3に示すように、環状ダイ32の環状に形成された吐出口(ポート)321から、それぞれの溶融物が円筒状のフィルム形状になるように押し出される。
【0144】
図2に示すように、環状ダイ32の底部から空気38が供給され、図3に示すように、環状ダイ32の平面視において中央部に設けられた空気吐出口322から空気38が上部に向かって吐出される。図2に示すように、環状ダイ32の上部から吐出した空気38の空気流によって、環状ダイ32から円筒状に押し出されたフィルム状の溶融物が膨らむ。このとき、同時に、エアリング33から供給された空気によりチューブ状に膨らんだ溶融物を空冷・固化させる。これにより、円筒状のインフレーションフィルム(バブル)39となりながら、上方に引き上げられる。
【0145】
円筒状のインフレーションフィルム39は、環状ダイ32の上方に位置する一対の案内板34に沿ってインフレーションフィルム39の内部の空気を締め出しながらピンチロール35に引き取られる。インフレーションフィルム39はピンチロール35で扁平にプレスされる。扁平になったインフレーションフィルム39は、ピンチロール35の下流側に位置するガイドロール36を経て、トリミング37で接着層10A及び10Bの界面で2枚に分離される。分離したインフレーションフィルム39は、各種ガイドロール36を経て、一対の巻取りロール40に巻き取られる。これにより、2つの多層フィルム1がロール状態で回収される。
【0146】
Tダイ法を用いる場合、例えば、複数(本実施形態では、3つ)の溶融混練機器を備えるTダイ押出し成形機を用いることができる。図4は、複数の溶融混練機器を備えるTダイ押出し成形機の一例を示す図である。図4に示すように、Tダイ押出し成形機50は、3つの溶融混練機器51A、51B及び51Cと、三種三層分配型フィードブロック52と、マルチマニホールド型ダイ(マルチマニホールド型口金)53と、冷却ロール54と、ガイドロール55とを備える。
【0147】
接着層10、中間層21及び気密層22を構成する材料を溶融混練機器51A、51B及び51C中でそれぞれ溶融混練する。溶融混練した、接着層10、中間層21及び気密層22の溶融物を3種3層分配型フィードブロック52に供給して三層構成となるように分配する。その後、マルチマニホールド型ダイ53の吐出口(ダイリップ)53aから、図5に示すように、接着層10、中間層21及び気密層22の溶融物から形成された溶融多層フィルム56をフィルム状に吐出する。吐出した溶融多層フィルム56を、冷却ロール54に巻き掛けながら冷却する。これにより、接着層10の上に中間層21及び気密層22が積層された多層フィルム1を製造する。その後、図4に示すように、多層フィルム1は、各種ガイドロール55を経て、巻取りロール57に巻き取られる。これにより、多層フィルム1がロール状態で回収される。
【0148】
また、その他の成形方法として、成形された、接着層10、中間層21又は気密層22のいずれかのシート上に接着層10、中間層21及び気密層22のいずれかの溶融物を押し出す押出ラミネート法等を用いてもよい。これにより、接着層10の上に中間層21及び気密層22の順に積層された多層フィルム1を製造できる。
【0149】
製造された多層フィルム1は、用途に応じて、所望の形状及び大きさに切断することができる。また、多層フィルム1は、ロール等に巻き付けられていてもよく、使用時に必要な長さを巻き解いて切断してもよい。さらに、多層フィルム1には、少なくとも接着層10側に剥離シートが設けられていてもよい。これにより、使用直前まで接着層10を保護することができる。
【0150】
以上の通り、多層フィルム1は、接着層10及び第2層20を備え、接着層10及び第2層20の何れか一方又は両方が熱可塑性エラストマーを含んでいる。接着層10又は第2層20は、熱可塑性エラストマーとして、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー及びポリアミド系エラストマーからなる群から選択される少なくとも一種を用いて、多層フィルム1の溶融張力を7.5mN以上としている。多層フィルム1を構成する各層で用いられる熱可塑性エラストマーとして、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー又はポリアミド系エラストマーを少なくとも用いることで、多層フィルム1Aは、成形時に、引き延ばし可能な程度の溶融状態で形態を安定して維持することができる。よって、多層フィルム1は、優れた成形安定性を有することができる。そのため、多層フィルム1は、インフレーション法やTダイ法等、種々の成形方法に有効に用いることができる。
【0151】
多層フィルム1の形状の安定性は、インフレーション法を用いて成形する場合では、図2に示すようなインフレーション成形機30の環状ダイ32から引き出されるインフレーションフィルムの成形状態を観察すること等によって評価することができる。また、Tダイ法を用いて成形する場合、図4に示すようなTダイ押出し成形機50が備えるマルチマニホールド型ダイ53の吐出口53aから押し出されるフィルム状溶融物のネックイン率(単位:%)を測定することによって評価することができる。図6に示すように、フィルム状溶融物のネックイン幅W1は、吐出口53aの幅W0とフィルム状溶融物の幅(フィルム幅)W2との差(ネックイン幅W1=吐出口53aの幅W0-フィルム幅W2)である。ネックイン率は、吐出口53aの両端に生じる2つの幅の和を吐出口53aの幅で序した百分率の値((ネックイン幅の和/吐出口の幅)×100(%))である。ネックイン率が高いほど、フィルム状溶融物が変形し易く、フィルム状溶融物の両端の厚さが大きくなる傾向にある。
【0152】
そのため、多層フィルム1は、例えば、インフレーション法を用いて成形した場合でも、成形時の安定性を良好に維持することができる。また、多層フィルム1は、例えば、Tダイ法を用いて成形しても、Tダイから押し出されるフィルム幅が狭くなるのを抑え、ネックイン幅の増大を抑えることができる。そのため、多層フィルム1は、成形時の歩留りを良好とすることができる。
【0153】
また、多層フィルム1は、成形時の変形を抑えることできるので、変形部分を切り取る面積やその負担を抑えることができるので、製造時に要する費用を抑えることができる。
【0154】
多層フィルム1は、接着層10及び第2層20の少なくとも一方の溶融張力を7.5mN以上とすることができる。これにより、多層フィルム1は、接着層10及び第2層20が、成形時に、引き延ばし可能な程度の溶融状態で形態を安定して有することができるので、インフレーション法やTダイ法等の様々な成形方法を用いても、安定して成形することができる。
【0155】
多層フィルム1では、第2層20は気密層22を備えることができる。これにより、多層フィルム1は気密性を有しつつ、成形の安定性を維持することができる。
【0156】
多層フィルム1では、第2層20は、接着層10と気密層22との間に中間層21を備えることができる。これにより、接着層10と気密層22と結合力を高めることができるので、多層フィルム1内で層間剥離が生じるのを抑えつつ、成形の安定性を維持することができる。
【0157】
多層フィルム1では、接着層10、中間層21及び気密層22の少なくとも一つは、溶融張力を7.5mN以上とすることができる。これにより、接着層10、中間層21及び気密層22が、成形時に、引き延ばし可能な程度の溶融状態で形態を安定して有することができるので、インフレーション法やTダイ法等の様々な成形方法を用いても、接着層10、中間層21及び気密層22をそれぞれの形態を安定して維持しながら成形することができる。
【0158】
多層フィルム1は、接着層10、第2層20の少なくとも一方は分岐成分を含み、接着層10又は第2層20に含まれる熱可塑性エラストマーが分岐構造を有することができる。熱可塑性エラストマーは、分岐構造を有することで、オレフィン系熱可塑性エラストマー等のように一般的に直鎖構造を有する熱可塑性エラストマーに比べて、成形時の変形を抑え易くなる。そのため、多層フィルム1は、接着層10、第2層20の少なくとも一方に分岐成分を含ませ、熱可塑性エラストマーが分岐構造を有することで、様々な成形方法を用いても、より安定して成形した状態を維持することができる。
【0159】
多層フィルム1は、分岐成分の含有量を、0.1質量%~10質量%とすることができる。分岐成分の含有量に応じて、接着層10及び第2層20には、分岐構造を含む熱可塑性エラストマーの含有量を調整することができる。これにより、多層フィルム1は、インフレーション法やTダイ法等の様々な成形方法を用いて、さらに安定して成形した状態を維持することができると共に、柔軟性を有することができる。
【0160】
多層フィルム1では、接着層10及び第2層20の何れか一方又は両方は、エチレン-ビニル系アルコール共重合体を含むことができる。接着層10及び第2層20は、熱可塑性エラストマー以外の成分としてエチレン-ビニル系アルコール共重合体を含むことで、接着層10及び第2層20の溶融張力を任意の大きさに容易に調整することができる。これにより、多層フィルム1は、インフレーション法やTダイ法等の様々な成形方法を用いても、さらに安定して成形した状態を維持することができると共に、柔軟性を有することができる。
【0161】
多層フィルム1は、基布2をエアバッグ用基布として用いることができる。これにより、多層フィルム1は、袋状に形成されたエアバッグの基布の表面に設ける保護フィルムとして有効に用いることができる。
【0162】
<積層体>
次に、本実施形態に係る多層フィルム1を適用した積層体について説明する。図7は、積層体の一例を模式的に示す断面図である。図7に示すように、積層体100は、多層フィルム1A及び1Bと、基布2とを備え、多層フィルム1A及び1Bを基布2に接着している。
【0163】
多層フィルム1Aは、基布2の上面側(+Z軸方向)に設けられ、多層フィルム1Bは、基布2の下面側(-Z軸方向)に設けられている。
【0164】
(基布)
基布2は、積層体100の機械的強度を確保するための支持体として機能し、シート状に形成されている。シート状とは、平面状の他、全体として見た場合に、筒状又は袋状に形成されている形状も含む。
【0165】
基布2は、繊維を含むのが好ましく、基布2としては、織物、編物、不織布等を用いることができる。基布2は、一部又は全体に縫製されていてもよい。基布2が平面状に形成される場合、基布2は、平面状に平織、綾織、繻子織等された織物等として用いることができる。また、基布2が袋状に形成される場合、基布2は、製品の形状に合わせて、湾曲面を有することができるように、縫い目なく筒状又は袋状に織り上げられたOPW(One Piece Woven)として用いることができる。
【0166】
基布2に含まれる繊維は、合成繊維、天然繊維、再生繊維、半合成繊維、無機繊維及びこれらの組合せ(混紡、混織を含む)であってよい。これらは、一種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、合成繊維であるのが好ましい。繊維としては、芯鞘型繊維、サイドバイサイド型繊維、分割型繊維等の複合繊維を用いてもよい。
【0167】
合成繊維を構成するポリマーとしては、ポリエステル、ポリオレフィン、アラミド、アクリル、ビニロン、ポリウレタン;ポリエステルの繰り返し単位を構成する酸成分にイソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸又はアジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸等を共重合した共重合体;ナイロン6・6、ナイロン6,ナイロン12、ナイロン4・6及びナイロン6-ナイロン66共重合体;ナイロンにポリアルキレングリコール、ジカルボン酸やアミン類等を共重合したポリアミド;パラフェニレンテレフタルアミド及び芳香族エーテルとの共重合等に代表されるアラミド;パラフェニレンサルフォン、ポリサルフォン等のサルフォン系樹脂;レーヨン、超高分子量ポリエチレン、ポリエーテルケトン等が挙げられる。これは、一種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0168】
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリアルキレンテレフタレート;ポリブチレンナフタレート(PBN)等のポリアルキレンンナフタレート等が挙げられる。これは、一種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0169】
特に、多層フィルム1を構成する接着層10がポリエステル系エラストマーを含む場合、基布2は、ポリエステルからなる繊維(ポリエステル製繊維)又はポリエステルを含む繊維を含むのが好ましい。基布2は、ポリエステル製繊維を、混織等により他の繊維と混合して含んでいてもよいし、ポリエステルとポリエステル以外の材料との混紡繊維を含んでいてもよいし、又はポリエステルとポリエステル以外の材料とからなる、芯鞘型、サイドバイサイド型、分割型等の複合繊維を含んでいてもよい。接着層10がポリエステル系エラストマーを含む場合、基布2がポリエステルを含むことで、多層フィルム1と基布2との接着力が向上するため、積層体100は、より一層優れた耐久性を有することができる。また、積層体100は、機械的強度及び耐候性を確保しつつ、比較的安価に製造することができる。さらに、基布2がポリエステル繊維からなる場合には、上記効果は、より一層発揮される。
【0170】
基布2は、基布2が複数の異なる方向に延在する糸を含む構造を有する場合、それぞれの方向に延在する糸に用いられる繊維として、異なる種類の繊維を使用してもよい。
【0171】
基布2に含まれる糸は、モノフィラメントであってもよいし、マルチフィラメントであってもよい。糸がマルチフィラメントである場合、糸の総繊度(単糸繊度×合糸数)が100dtex~700dtexであることが好ましい。また、基布2に用いられている繊維の単糸繊度は、1dtex~10dtexであることが好ましい。また、基布2が平織の織物である場合、織り密度としては、経糸及び緯糸がそれぞれ5本/cm~30本/cmであることが好ましい。
【0172】
基布2の目付(1m当たり質量)は、積層体100の機械的強度を確保すると共に、積層体100の収納性の向上及びコストの低減を図る点から、好ましくは30g/m~300g/mであり、より好ましくは50g/m~200g/mであり、さらに好ましくは70g/m~150g/m以下、さらにまた好ましくは80g/m~100g/m以下である。
【0173】
基布2は、目の詰まったものであってもよい。この場合、積層体100をより強固にすることができる。また、基布2は、開口を有するものであってもよい。基布2が開口を有する場合、積層体100をより軽量にすることができる。積層体100は、予め形成した多層フィルム1を基布2に積層させている。そのため、基布2は開口を有していても、積層体100は、粘度が比較的低いポリマー組成物が開口から裏抜けする等の不都合が発生することなく、十分な機械的強度や気密性を有することができる。
【0174】
(積層体の製造方法)
積層体100の製造方法の一例について説明する。図8は、積層体の製造方法に適用される積層体製造装置の一例を模式的に示す図である。図8に示すように、積層体製造装置60は、加熱・加圧部61及び冷却部62を備えている。
【0175】
加熱・加圧部61は、例えば、一対の対向するロール(ニップロール等)611と、一対の対向するベルト612と、不図示の加熱部とを備えている。不図示の加熱部により、一対のロール611又はベルト612の少なくとも一方を加熱することができる。
【0176】
加熱温度は、接着層10、中間層21及び気密層22の融点に応じて適宜設計可能である。接着層10の融点が中間層21及び気密層22の融点よりも低い場合には、加熱温度は、中間層21及び気密層22の融点未満の温度であり、接着層10が軟化又は融解する温度とすることが好ましい。加熱温度が、中間層21及び気密層22の融点未満の温度とすることにより、中間層21及び気密層22の機能をより確実に確保することができる。また、中間層21及び気密層22を融解(溶融)せず、接着層10を軟化又は融解させることができる。なお、加熱温度は、中間層21及び気密層22が熱の影響によりその気密機能を失わない温度であればよい。
【0177】
加熱温度は、接着層10、中間層21及び気密層22の融点によるが、例えば、100℃~250℃が好ましく、120℃~200℃がより好ましい。
【0178】
加圧圧力は、積層体100の層構成、接着層10、中間層21及び気密層22の厚さ等に応じて適宜設計可能である。加圧圧力としては、例えば、5N/cm~700N/cmが好ましく、10N/cm~500N/cmがより好ましく、15N/cm~50N/cmがさらに好ましい。
【0179】
冷却部62は、積層体100の温度を低下させ、好ましくは常温にまで下げることができる。冷却部62は、一対の対向するロール(ニップロール等)621と、一対の対向するベルト622と、不図示の、冷却媒体を含む冷却部と、図示の吸気部とを備えている。不図示の冷却部により、一対のロール621又はベルト622の少なくとも一方を冷却することができる。
【0180】
積層体製造装置60では、予めロール611等に巻き取られていた基布2、並びに多層フィルム1A及び1Bをそれぞれ巻き解いて、基布2の両面(上面及び下面)に多層フィルム1A及び1Bをそれぞれ重ね合せる。重ね合された、多層フィルム1A、基布2及び多層フィルム1Bを加熱・加圧部61に送り、加熱・加圧部61において多層フィルム1A及び1Bを加熱しながら加圧する。
【0181】
加熱・加圧部61では、一対のロール611又はベルト612の少なくとも一方を加熱し、一対のベルト612の間に、重ね合わせられた多層フィルム1A、基布2、及び多層フィルム1Bを通すことで、加熱及び加圧を行うことができる。
【0182】
加熱温度は、例えば、接着層10が軟化又は融解する温度であって、中間層21及び気密層22が融解(溶融)しない温度とすることが好ましい。これにより、中間層21及び気密層22の機能を確保しつつ、接着層10が十分に軟化又は融解した状態で接着層10を基布2へと押し付けることができる。そして、軟化又は融解した接着層10は、基布2の表面の凹凸の凹部にも入り込み、接着層10を基布2に密に接着させることができる。これにより、多層フィルム1A及び1Bを基布2へそれぞれ接着させることができ、多層フィルム1A、基布2及び多層フィルム1Bを備えた積層体100が形成され、搬送される。
【0183】
加熱・加圧部61を通過した積層体100は、冷却部62へと搬送される。
【0184】
冷却部62では、一対のロール621又はベルト622の少なくとも一方を冷却し、一対のベルト622の間に、積層体100を通すことで、冷却及び加圧を行うことができる。積層体100の温度は、常温にまで下げることが好ましい。なお、冷却部62は、一対の対向するベルト622を用いて積層体100を加圧しなくてもよい。
【0185】
冷却部62を通過した積層体100は、ロール63に巻き取られる。
【0186】
積層体100は、多層フィルム1を備えることで、多層フィルム1と基布2とに位置ずれや歪み等が生じ難くなり、多層フィルム1を基布2に安定して接着させることができる。これにより、積層体100は、多層フィルム1と基布2との間での層間剥離等が生じ難くなり、優れた耐久性を有することができる。
【0187】
積層体100は、多層フィルム1を、加熱・加圧部61で加熱及び加圧の少なくとも一方を行うことによって、基布2に接着させることができる。これにより、接着層10を基布2に含浸させながら接着することができるので、積層体100は、耐久性をより向上させることができる。
【0188】
積層体100は、多層フィルム1を基布2に接着させても優れた成形性を有することができるので、基布2として、例えば、縫い目なく織られた筒状又は袋状のOPWに好適に用いることができる。
【0189】
図9は、基布がOPWの場合の例を示す断面図である。図9に示すように、積層体100は、多層フィルム1A及び1Bと、内部空間に空気を含み、袋状に膨らんでいるOPW2Aとを備え、多層フィルム1をOPW2Aの上方及び下方の表面に備えている。なお、多層フィルム1A及び1Bの縁部は、加熱及び加圧により互いに接着されている。
【0190】
OPW2Aを備える積層体100を図8に示す積層体製造装置60を用いて製造する場合、OPW2Aは、予めその内部から空気を抜いて平らにした状態でロール等に巻かれたものを使用する。積層体100は、加熱・加圧部61において、一対のロール621によって両面から加圧される。これにより、多層フィルム1A及び1Bが、OPW2Aの上面及び下面にそれぞれ接着され、多層フィルム1A及び1Bの縁部同士が加熱及び加圧により互いに接着される。これにより、図9に示すような積層体100を得ることができる。得られた積層体100は、OPW2Aの内部空間の空気を袋状に膨らませることができる。
【0191】
なお、接着層10A及び10Bは、OPW2Aの縁部全体を覆うように接着させてもよい。また、積層体100の余分な縁部は、切断等により除去することができる。これにより、袋状に形成されたOPW2Aの表面全体に多層フィルム1を形成できる。
【0192】
得られた積層体100は、膨らませて内部に空気を貯めた状態で使用することができるOPW2Aの表面に多層フィルム1を安定して接着させた状態を維持できるので、車両用エアバッグ、アウトドア用品、包装用途等に好適に用いることができる。積層体100は、特に、車両用エアバッグ、中でもカーテンエアバッグに好適に用いることができる。カーテンエアバッグは、車両のサイドウインドウ上部のルーフライン等に取り付けられ、折り畳まれた状態又は丸められた状態でケーシング等に収納されている。衝突時等に高荷重が作用した場合には、カーテンエアバッグは、袋状に膨らみ、サイドウインドウに沿わせて鉛直下方にカーテン状に展開する。そのため、カーテンエアバッグに利用されるOPWは、複数の部屋が形成された複雑な曲面を有し、膨らませた時には凹凸を有する構造が生じ易い傾向にある。積層体100は、本実施形態に係る多層フィルム1を備えることで、袋状に膨らんだ際に曲面が形成され、表面に凹凸が生じ得るOPW2Aに対して、多層フィルム1を良好に接着させた状態を維持することができる。そのため、積層体100は、多層フィルム1とOPW2Aとの層間剥離を抑制することができ、破損等が生じるのが抑えられ、優れた耐久性を有することができる。
【0193】
(変形例)
なお、本実施形態では、接着層10、中間層21、気密層22の少なくとも何れか一つは、2層以上で形成されていてもよい。例えば、多層フィルム1は、接着層10及び中間層21を複数層(例えば、二層)とし気密層22を一層として構成してもよい。
【0194】
本実施形態では、第2層20は、中間層21又は気密層22で形成されていてもよい。
【0195】
本実施形態では、積層体100は、基布2の一方の面側にのみ多層フィルム1が積層されていてもよい。例えば、図10に示すように、積層体100は、基布2の上側(+Z軸方向)の面にのみ多層フィルム1が積層されていてもよい。
【0196】
本実施形態では、積層体100は、常温以下で供給された多層フィルム1を、加熱手段を用いて気密層22の融点を下回る温度で加熱しながら基布2に接着させることによって製造されてもよい。また、積層体100は、例えば、押出機で加熱されてフィルム状に押し出されたポリマーを、基布2と接着させることによって製造してもよい。さらに、積層体100は、気密層22が融解しない温度で加熱しながら、多層フィルム1と基布2とを加圧することにより、多層フィルム1と基布2とを接着させることによって製造してもよい。
【実施例
【0197】
以下、実施例及び比較例を示して実施形態を更に具体的に説明するが、実施形態はこれらの実施例及び比較例により限定されるものではない。
【0198】
<原料の作製>
多層フィルムを形成する層(接着層、中間層、気密層)に使用可能な原料を準備した。原料として、材料単体と、複数の材料の混合物とを準備した。材料単体及び混合物を以下に示す。
(材料単体)
・ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE-1)
・ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE-2)
・ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE-3)
・熱可塑性ポリウレタン系エラストマー(TPU):「Estane(登録商標) 58277」、Lubrizol社製、融点130℃
・エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA:「Evatane(登録商標) 28-05」、Arkema社製、融点72℃
(混合物)
・混合物1:TPEE-2(80質量%)とEVA(20質量%)との混合物
・混合物2:TPEE-2(70質量%)とEVA(30質量%)との混合物
・混合物3:TPEE-2(60質量%)とEVA(40質量%)との混合物
・混合物4:TPEE-3(70質量%)とEVA(30質量%)との混合物
【0199】
なお、TPEE-1、TPEE-2及びTPEE-3は、それぞれ、以下の通り、作製した。作製した原料の融点は、示差走査熱量計(DSC)で測定された融解ピーク温度である。
(TPEE-1)
ポリブチレンテレフタレート(PBT)をハードセグメントとし、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)をソフトセグメントとして、ポリエステル-ポリエーテルブロック共重合体であるTPEE-1を作製した。上記共重合体中、PBTの含有量は85質量%であり、PTMGの含有量合は15質量%であった。得られたポリエステル-ポリエーテルブロック共重合体の融点は、210℃であった。
(TPEE-2)
PBTをハードセグメントとし、ポリプロピレングルコール(PPG)をソフトセグメントとして、分岐成分はトリメリット酸としたポリエステル-ポリプロピレンブロック共重合体であるTPEE-2を作製した。上記共重合体中、PBTの含有量は49.5質量%であり、PPGの含有量は50質量%であり、トリメリット酸の含有量は0.5質量%であった。得られたポリエステル-ポリプロピレンブロック共重合体の融点は、210℃であった。
(TPEE-3)
PBTをハードセグメントとし、PTMGをソフトセグメントとして、ポリエステル-ポリエーテルブロック共重合体であるTPEE-3を作製した。上記共重合体中、PBTの含有量は55質量%とし、PTMGの含有量は45質量%とした。得られたポリエステル-ポリエーテルブロック共重合体の融点は、150℃であった。
【0200】
<溶融張力の測定>
準備した材料単体及び混合物の溶融張力を測定した。
(材料単体の溶融張力の測定)
材料単体のペレットを作製した後、それぞれの材料単体を230℃に加熱して溶融させた。Malvern Panalytical社製のキャピラリーレオメータ(ROSAND RH7)を用い、溶融状態の材料単体を、キャピラリー(直径:1mm、長さ:10mm、流入角:180°)から8.8mm/minの一定速度で押し出した。押し出された溶融状態の材料単体を5m/minの引取速度から徐々に上げて、引き取っていき、樹脂が破断したときの張力を溶融張力とした。測定結果を表1に示す。
(混合物の溶融張力の測定)
混合物を構成する材料単体のペレットを溶融混合して、混合物のペレットを作製した後、230℃に加熱して溶融させた。溶融状態の混合物を、材料単体の場合と同様にして溶融張力を測定した。測定結果を表1に示す。
【0201】
【表1】
【0202】
<実施例1>
[多層フィルムの作製]
(インフレーション法による多層フィルムの作製)
5つの押出機(押出機1~押出機5)を有するインフレーション押出装置(VAREX II、Windmoeller & Hoelscher社製)の押出機に、準備した3つの原料(TPEE-1、TPEE-2及びTPEE-3)を押出機1にTPEE-1を押出機2および3にTPEE-2を、押出機4および5にTPEE-3をそれぞれ投入した。各原料を各原料の融点以上で溶融し、それぞれの押出機内の各樹脂の溶融物を押出機から環状に形成された吐出口(ポート)を有する口金(ダイ)に押し出した。各樹脂の溶融物の押出量は各押出機においてそれぞれ10g/mとした。押し出した溶融物を、円筒状のインフレーションフィルム(バブル)を引き上げ、気密層がTPEE-1、中間層がTPEE-2、接着層がTPEE-3となるように、積層された3層構造の多層フィルムを作製した。
【0203】
(Tダイ法による多層フィルムの作製)
多層フィルムは、3層図5に示すように、同時押出機(FILMIX II、Windmoeller & Hoelscher社製)を用いて、3つの押出機に、準備した3つの原料(TPEE-1、TPEE-2及びTPEE-3)をそれぞれ投入した。各原料を各原料の融点以上で溶融し、それぞれの押出機内の各樹脂の溶融物を、3つの吐出口(ポート)を有するダイに供給した。Tダイの吐出口からフィルム状に同時に押し出して積層し、冷却して、接着層10、中間層21及び気密層22が積層された多層フィルムを作製した。なお、各押出機のスクリュー速度は、通常の方法で所望の厚さを有するフィルム状溶融物がTダイから押し出されるように設定した。
【0204】
[評価]
多層フィルムの、溶融張力、インフレーション成形機でインフレーション法を用いた時のバブルの安定性、Tダイ法を用いた時のネックイン率を測定し、多層フィルムを評価した。
【0205】
(溶融張力の測定)
多層フィルムを溶融・混合して、多層フィルムの各層が均一に分布したペレットを作製した後、230℃に加熱して溶融させた。多層フィルムの溶融物を、材料単体の場合と同様にして溶融張力を測定した。
【0206】
(インフレーション法を用いた時のバブルの安定性)
インフレーション法を用いて得られた多層フィルムのシワを確認して、各樹脂の溶融物のバブルを引き上げて成形する際のバブルの安定性を評価した。多層フィルムにシワが確認されなかった場合は、優良(表2では、Aと表記)と判断し、多層フィルムにシワが確認されたが、製品として問題ない程度であった場合は、良好(表2では、Bと表記)と判断し、多層フィルムを形成できなかった場合は、不良(表2では、Cと表記)と判断した。
【0207】
(Tダイ法を用いた時のネックイン率)
溶融張力の測定時と同様にして作製した多層フィルムの溶融物を、Tダイ法を用いて、Tダイの吐出口から押し出した時に、吐出口の回りに生じるネックイン率(単位:%)を測定した(図6参照)。ネックイン率は、吐出口の両端に生じる2つの幅の和を吐出口の幅で序した百分率の値((ネックイン幅の和/吐出口の幅)×100)とした。ネックイン率が、製品として問題ない程度であった場合は、良好(表2では、Aと表記)と判断し、製品として問題あるか、多層フィルムを形成できなかった場合は、不良(表2では、Bと表記)と判断した。
【0208】
<実施例2>
実施例1において、気密層をTPEE-3から混合物4に変更したこと以外は、実施例1と同様にして行った。
【0209】
<実施例3>
実施例1において、接着層をTPEE-1からTPEE-2に変更し、中間層をTPEE-2から混合物4に変更し、気密層をTPEE-3から混合物4に変更したこと以外は、実施例1と同様にして行った。
【0210】
<比較例1>
実施例1において、接着層をTPEE-1からTPUに変更し、中間層をTPEE-2からTPUに変更したこと以外は、実施例1と同様にして行った。
【0211】
<比較例2>
実施例1において、中間層をTPEE-2からTPUに変更したこと以外は、実施例1と同様にして行った。
【0212】
各実施例及び比較例の、多層フィルムの溶融張力、インフレーション法を用いた時のバブル形状の安定性、Tダイ法を用いた時のネックイン率の測定結果を表2に示す。
【0213】
【表2】
【0214】
表1に示すように、TPEE-2は、溶融張力が20mN以上であった。また、TPEE-2を含む混合物の場合、TPEE-2の含有量が40%以上の場合には、溶融張力が8.0mN以上であった。一方、TPEE-1は、溶融張力が5.6mNであり、TPEE-3は、溶融張力が測定できなかった。よって、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、又はポリエステル系熱可塑性エラストマーを含む混合物は、溶融張力を8.0mN以上有することが確認された。また、ポリエステル系熱可塑性エラストマーが分岐構造を有すれば、溶融張力をより高くできることが確認された。
【0215】
表2に示すように、実施例1~3は、溶融張力が8.0mN以上であり、インフレーション法を用いた時のバブルの形状は良好であり、Tダイ法を用いた時のネックイン率は、30%以下であった。よって、多層フィルムは、接着層又は中間層に溶融張力が高い材料単体又は混合物を用いれば、多層フィルム自体の溶融張力を高くすることができ、優れた成形安定性を有することができることが確認された。
【0216】
以上の通り、実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更などを行うことが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0217】
1 多層フィルム
10 接着層(第1層)
20 第2層
21 中間層
22 気密層
2 基布
2A OPW
100 積層体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10