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特許7562252医用情報表示装置および医用情報表示システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】医用情報表示装置および医用情報表示システム
(51)【国際特許分類】
   G16H 50/00 20180101AFI20240930BHJP
   G16H 10/00 20180101ALI20240930BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
G16H50/00
G16H10/00
A61B5/00 G
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019226395
(22)【出願日】2019-12-16
(65)【公開番号】P2020102213
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-08-30
(31)【優先権主張番号】P 2018237442
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 昌史
【審査官】吉田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-156325(JP,A)
【文献】特開2007-233850(JP,A)
【文献】国際公開第2014/006862(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00 - 80/00
A61B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象患者に関する時系列に沿った診療情報を含む対象患者情報に基づき、前記対象患者に類似する類似患者に関する時系列に沿った診療情報を含む類似患者情報を検索する検索部と、
前記対象患者情報と前記類似患者情報とにおいて、基準値からの差分が第1閾値の以上である異常値または外れ値を不適正情報として検出し、かつ、前記対象患者情報と前記類似患者情報との間の差分が第閾値以上である情報を差分情報として検出する検出部と、
前記対象患者情報と前記類似患者情報とを表示し、かつ、前記不適正情報と前記差分情報を強調表示し、かつ、前記差分情報が選択された場合、前記第1閾値および前記第2閾値のうち少なくとも一方を引き下げる表示制御部と、
を具備する医用情報表示装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、前記差分情報が選択された場合、前記差分情報が発生している時点を含む一定期間において、前記第1閾値および前記第2閾値のうち少なくとも一方引き下げる、
請求項に記載の医用情報表示装置。
【請求項3】
前記検出部は、前記差分情報が選択された場合、前記差分情報が発生している時点を含む一定期間において、前記差分が前記第閾値よりも低い閾以上である情報を前記差分情報として新たに検出する、
請求項1または請求項2に記載の医用情報表示装置。
【請求項4】
前記一定期間は、時間の単位で定められた期間である、
請求項2または請求項3に記載の医用情報表示装置。
【請求項5】
前記一定期間は、2つのイベントの間の期間である、
請求項2または請求項3に記載の医用情報表示装置。
【請求項6】
前記類似患者情報は、前記対象患者に関する過去の処置についての時系列に沿った診療情報を含み、
前記検索部は、前記類似患者情報として抽出すべき診療情報の範囲を選択するために指定された検索条件に従い検索する、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の医用情報表示装置。
【請求項7】
前記対象患者情報の診療情報前記類似患者情報の診療情報とが表示される際、前記時系列において少なくとも一部のタイムスケールが揃うように調整する調整部を更に備える、
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の医用情報表示装置。
【請求項8】
前記調整部は、前記対象患者情報の診療情報のうち、ユーザ指示により指定された情報である注目情報について、前記注目情報の直前のイベントを基準として、前記タイムスケールが揃うように調整する、
請求項7に記載の医用情報表示装置。
【請求項9】
前記調整部は、各イベントを基準として、イベントごとに前記タイムスケールが揃うように調整する、
請求項7に記載の医用情報表示装置。
【請求項10】
前記対象患者情報は、前記対象患者に関する検査結果と診療履歴とを含み、
前記類似患者情報は、前記類似患者に関する検査結果と診療履歴とを含み、
前記表示制御部は、前記対象患者情報と前記類似患者情報とを時系列に沿って表示画面に並列表示させる、
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の医用情報表示装置。
【請求項11】
前記表示制御部は、表示画面に表示される前記差分情報および前記不適正情報を、他の情報と区別可能に表示する、
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の医用情報表示装置。
【請求項12】
医用情報表示装置と、ディスプレイとを具備する医用情報表示システムであって、
前記医用情報表示装置は、
対象患者に関する時系列に沿った診療情報を含む対象患者情報に基づき、前記対象患者に類似する類似患者に関する時系列に沿った診療情報を含む類似患者情報を検索する検索部と、
前記対象患者情報と前記類似患者情報とにおいて、基準値からの差分が第1閾値の以上である異常値または外れ値を不適正情報として検出し、かつ、前記対象患者情報と前記類似患者情報との間の差分が第2閾値の以上である情報を差分情報として検出する検出部と、
前記対象患者情報と前記類似患者情報とを表示させ、かつ、前記不適正情報と前記差分情報を強調表示させ、かつ、前記差分情報が選択された場合、前記第1閾値および前記第2閾値のうち少なくとも一方を引き下げる表示制御部と、を具備し、
前記ディスプレイは、
前記対象患者情報と前記類似患者情報とを表示し、かつ、前記不適正情報と前記差分情報とを強調表示する、
医用情報表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医用情報表示装置および医用情報表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、院内において、複数のシステムに分散していた医用情報を一覧表示する情報統合表示ビューワの導入が進められている。情報統合表示ビューワを用いることで、対象患者に類似する患者または類似する症例を検索し、タイムラインを揃えて表示することができる。
しかし単純にタイムラインを揃え、対象患者と類似する患者または類似する症例とを比較するだけでは、微妙に異なる箇所があった場合に見落としが発生する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-233850号公報
【文献】特開2015-197737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、情報の見落としを防止し、要因の発見を支援することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態に係る医用情報表示装置は、検索部と、検出部と、表示制御部とを含む。検索部は、対象患者に関する時系列に沿った診療情報を含む対象患者情報に基づき、前記対象患者に類似する類似患者に関する時系列に沿った診療情報を含む類似患者情報を検索する。検出部は、前記対象患者情報と前記類似患者情報との間の差分が第1閾値以上である情報を差分情報として検出する。表示制御部は、前記対象患者情報と前記類似患者情報とを表示し、前記差分情報を強調表示する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、本実施形態に係る医用情報表示装置の構成例を示すブロック図である。
図2図2は、本実施形態に係る医用情報表示装置の動作を示すフローチャートである。
図3図3は、調整機能によるタイムスケールの第1の調整例を示す図である。
図4図4は、調整機能によるタイムスケールの第2の調整例を示す図である。
図5図5は、本実施形態に係る医用情報表示装置の強調表示処理の詳細を示すフローチャートである。
図6図6は、本実施形態に係る強調表示の第1の例を示す図である。
図7図7は、本実施形態に係る強調表示の第2の例を示す図である。
図8図8は、本実施形態に係る強調表示の第3の例を示す図である。
図9図9は、本実施形態に係る強調表示の第4の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係わる医用情報表示装置および医用情報表示システムについて説明する。以下の実施形態では、同一の参照符号を付した部分は同様の動作をおこなうものとして、重複する説明を適宜省略する。
【0008】
図1は、本実施形態に係る医用情報表示装置1を示すブロック図である。図1に示される医用情報表示装置1は、ネットワークを介して、電子カルテシステム2、医用画像管理システム(PACS:Picture Archiving and Communication System)3などの医用情報管理システムと接続され、各種データのやりとりが実行される。なお、ネットワークは、有線接続および無線接続を問わない。また、セキュリティが確保されるのであれば、接続される回線は病院内ネットワークに限定されない。例えば、VPN(Virtual Private Network)などを介し、インターネット等、公衆の通信回線に接続するようにしても構わない。
【0009】
医用情報表示装置1は、処理回路11、入力インタフェース12、ディスプレイ13、メモリ14および通信インタフェース15を含む。処理回路11、入力インタフェース12、ディスプレイ13、メモリ14および通信インタフェース15、例えばバスを介して互いに通信可能に接続されている。
医用情報表示装置1は、医用撮像装置を搭載する医用画像診断装置に搭載されたコンピュータであってもよいし、当該医用画像診断装置にケーブルやネットワーク等を介して通信可能に接続されたコンピュータであってもよいし、当該医用画像診断装置とは独立のワークステーションなどのコンピュータであってもよい。
【0010】
電子カルテシステム2は、患者識別情報および患者識別情報に紐付く診療情報などを含む電子カルテデータを記憶し、記憶している電子カルテデータを管理するシステムである。診療情報は、例えば、所見情報、病名情報、バイタル情報、検査段階情報、クリニカルパス、および治療内容の情報など、電子カルテに係る情報を含む。患者識別情報は、例えば、患者ID、患者氏名、性別、および年齢などを含む。クリニカルパスは、時系列に沿った標準的な診療計画を示す。
【0011】
医用画像管理システム3は、医用画像データを記憶し、記憶している医用画像データを管理するシステムである。医用画像管理システム3は、例えば、DICOM(Digital Imaging and Communication Medicine)規格に則って変換された医用画像データを記憶し管理する。
【0012】
ここで医用情報表示装置1についてより具体的に説明する。処理回路11は、例えば、プロセッサであり、取得機能111、検索機能112、調整機能113、検出機能114、表示制御機能115およびシステム制御機能116を含む。なお、各機能111~116は、単一の処理回路で実現される場合に限らない。複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより各機能111~116を実現するものとしても構わない。
【0013】
なお、各機能111~116をプログラムとしてメモリ14などに記憶させ、処理回路11が、当該プログラムを実行することにより、当該プログラムに対応する機能を実現してもよい。
【0014】
取得機能111により処理回路11は、処理対象となる対象患者の患者識別情報と、対象患者に関する時系列に沿った診療情報とを含む対象患者情報を取得する。
【0015】
検索機能112により処理回路11は、対象患者情報に基づき、対象患者に類似する類似患者に関する時系列に沿った診療情報を含む類似患者情報を検索する。類似患者情報としては、対象患者本人の前回の処置、または前々回の処置といった、対象患者本人に関する過去の処置についての時系列に沿った診療情報を含んでもよい。
【0016】
調整機能113により処理回路11は、対象患者情報と類似患者情報とが表示される際、時系列において少なくとも一部のタイムスケールが揃うように調整する。
【0017】
検出機能114により処理回路11は、対象患者情報と類似患者情報との間の差分が閾値以上である情報を差分情報として検出し、対象患者情報と類似患者情報とにおける不適正情報を検出する。不適正情報とは、例えば、異常値および外れ値である。
【0018】
表示制御機能115により処理回路11は、対象患者情報と類似患者情報とを表示し、差分情報および不適正情報の少なくとも一方を強調表示する。
【0019】
システム制御機能116により処理回路11は、医用情報表示装置1の入出力および通信などの基本動作を制御する。システム制御機能116により処理回路11は、入力インタフェース12を介して各種要求を受け付ける。処理回路21は、受け付けた各種要求に応じて、各種機能を実行する。
【0020】
入力インタフェース12は、ユーザから各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路11へ出力する。入力インタフェースは、例えば、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、タッチパッド、及び操作面へ触れることで指示が入力されるタッチパネル等の入力機器に接続されている。また、入力インタフェースに接続される入力機器は、ネットワーク等を介して接続された他のコンピュータに設けられた入力機器でもよい。
【0021】
ディスプレイ13は、処理回路11からの指示に従って種々の情報を表示する。また、ディスプレイは、ユーザからの各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)等を表示してもよい。ディスプレイは、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ(OELD:Organic Electro Luminescence Display)、LEDディスプレイ、及びプラズマディスプレイ等、任意のディスプレイが適宜利用可能である。なお、医用情報表示装置1にディスプレイ13を含まず、外部のディスプレイにGUIを表示してもよいし、プロジェクタ等を介してGUIを表示させるようにしてもよい。
【0022】
メモリ14は、種々の情報を記憶するROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、及び集積回路記憶装置等の記憶装置である。また、メモリ14は、CD-ROMドライブ、DVDドライブ、及びフラッシュメモリ等の可搬型記憶媒体との間で種々の情報を読み書きする駆動装置等であってもよい。なお、メモリ14は、必ずしも単一の記憶装置により実現される必要は無く、複数の記憶装置により実現されても構わない。また、メモリ14は、医用情報表示装置1にネットワークを介して接続された他のコンピュータ内にあってもよい。
【0023】
通信インタフェース15は、本実施形態に係る医用情報表示プログラム等を記憶している。なお、医用情報表示プログラムは、例えば、メモリ14に予め記憶されていてもよい。また、例えば、非一過性の記憶媒体に記憶されて配布され、非一過性の記憶媒体から読み出されてメモリ14にインストールされてもよい。
【0024】
次に、本実施形態に係る医用情報表示装置1の動作例について図2のフローチャートを参照して説明する。
ステップS201では、取得機能111により処理回路11が、対象患者情報を取得する。ここで取得される対象患者情報は、上述した患者識別情報と、上述した診療情報に加え、SOAP、既往歴、検査画像などをさらに含む。SOAPは、Subject(主観的データ)、Object(客観的データ)、Assessment(主観的データと客観的データとの評価)、Plan(上記3つを元にした治療方針)を示す分析手法の1つである。対象患者情報は、ネットワークを介して電子カルテシステム2から取得されればよく、特に医用画像の場合は医用画像管理システム3から取得してもよい。
【0025】
ステップS202では、検索機能112により処理回路11が、類似患者の類似患者情報を検索する。類似患者情報の検索方法としては、検索機能112により処理回路11は、対象患者情報の一部、例えば年齢、性別、体重、症状および病名を、類似患者情報として抽出すべき診療情報の範囲を選択するための検索条件として用い、当該検索条件に従い電子カルテシステム2および医用画像管理システム3を検索する。検索機能112により処理回路11は、検索条件に一致する患者識別情報および対応する診療情報についての1次母集団を決定する。検索機能112により処理回路11は、決定された1次母集団の中から、注目する情報(例えば、症状、検査結果)の類似度が閾値以上である2次母集団を決定し、2次母集団の中から最も類似する患者を類似患者として決定すればよい。検索機能112により処理回路11は、類似患者に関する患者識別情報および患者識別情報に紐付く診療情報を類似患者情報として抽出する。
なお、対象患者本人の過去の診療情報、他人の診療情報などを検索条件として選択可能にしてもよい。例えば、上述した検索条件の項目として、「本人」および「他人」といった項目を用意する。ユーザが「本人」および「他人」を選択したとする。この場合、検索機能112により処理回路11が、他人の診療情報に加えて、対象患者本人の過去の診療情報を含めて1次母集団を決定すればよい。もちろん、「本人」または「他人」の項目を選択しなければ、選択されなかった項目は検索対象から外せばよい。
【0026】
なお、2次母集団の数が少なければ、1次母集団の決定条件を緩和して1次母集団に含まれるサンプル数を増やしてもよい。例えば、年齢を検索条件として「20代」だけを抽出していた場合は、「30代」も対象とすればよい。
また、検索機能112により処理回路11は、対象患者に最も類似する患者に限らず、複数の患者を類似患者として抽出して次のステップS203で表示させてもよいし、抽出された類似患者の診断情報などを平均化した類似症例を算出し、次のステップS203で表示させてもよい。
【0027】
ステップS203では、調整機能113および表示制御機能115により処理回路11が、対象患者情報と類似患者情報とをタイムスケールを揃えてGUI上に表示する。タイムスケールを揃える方法は、図3および図4を参照して後述する。
【0028】
ステップS204では、検出機能114により処理回路11が、対象患者情報と類似患者情報とに基づき、不適正情報および差分情報を検出する。不適正情報は、例えば、基準値から閾値以上離れた値があれば、外れ値または異常値を示す不適正情報として検出すればよい。また、差分情報は、揃えられたタイムスケール上で対象患者情報と類似患者情報とを同一項目について比較した場合に、差分が閾値以上である値を差分情報として検出すればよい。
なお、連続値の差分に関する差分情報は、タイムスケールを伸縮して調整された後でパターンマッチングが行われ差分情報が検出されてもよいし、タイムスケールが調整される前、すなわちステップS203の前にパターンマッチングを行い差分情報が検出されてもよい。
【0029】
ステップS205では、表示制御機能115により処理回路が、対象患者情報および類似患者情報が表示されるGUI上で、不適正情報および差分情報を強調表示する。
【0030】
次に、調整機能113によるタイムスケールの第1の調整例について図3を参照して説明する。
図3上段は、対象患者に関する、診療情報31と、同じ時系列に沿った患者の検査情報32(ここでは、収縮期の血圧値)とを対応付けたグラフである。図3下段は、類似患者の時系列に沿った診療情報33と、同じ時系列に沿った類似患者の検査情報34とを対応付けたグラフである。
診療情報31および診療情報33は、電子カルテシステム2に格納される診療情報から取得され、説明の便宜上クリニカルパスのイベント35を表示する。診療情報31および診療情報33に含まれるクリニカルパスのイベント35は、ここでは、「入院」、「投薬」、「手術」、「抜糸」および「退院」を想定する。また、検査情報32および検査情報34は、ここでは、「手術」から「抜糸」までの間の日数に対応する収縮期の血圧値を示す。
【0031】
第1の調整例では、ユーザ指示により指定された注目情報36に基づいてタイムスケールが調整される。具体的には、対象患者の検査情報32においてある注目情報36が指定される。調整機能113により処理回路11は、ユーザにより指定された、またはグラフの最大値など自動で指定された注目情報36(図3の例では、注目する部分)を基準として、注目情報36の直前のイベントを基準イベント37として設定する。その後、調整機能113により処理回路11は、基準イベント37を基準に、対象患者と類似患者とのタイムスケールを揃える。
【0032】
図3の例では、注目情報36の直前のイベント35は「手術」であるので、調整機能113により処理回路11が、「手術」を基準イベント37とし、タイムスケールを揃える。結果として、基準イベント37「手術」の当日を「0(零)」とすると、類似患者の診療情報33では、「手術」から「抜糸」まで6日程度で完了しているにもかかわらず、対象患者の診療情報31では、「手術」から「抜糸」まで10日前後の日数を要していることが理解でき、例えば術後の回復度を比較することができる。
また、類似患者の診療情報33が対象患者本人の過去の診療情報であった場合は、前回の治療期間における回復経過よりも現在の回復経過の方が時間がかかり、回復が遅いといった比較を行うこともできる。よって、このような比較結果を医療従事者に提示することで、治療方針を変更するなどの指標として用いることができる。
【0033】
次に調整機能113によるタイムスケールの第2の調整例について図4を参照して説明する。
第2の調整例では、対象患者の診療情報31および類似患者の診療情報33を、各イベント35で揃える。具体的に図4の例では、調整機能113により処理回路11が、双方の診療情報の「入院」から「退院」までのクリニカルパスの各イベント35の縦方向の位置が揃うように、診療情報のタイムスケールの時間を伸縮させて調整する。なお、共通して存在しないイベントが他方のクリニカルパスのイベントとして存在する場合でも、共通するイベントが優先して揃うようにタイムスケールを調整すれば、全体的なタイムスケールを揃えることができる。
【0034】
図4の例では、対象患者は「手術」から「抜糸」までに10日間要している一方、類似患者は「手術」から「抜糸」までは7日程度要している。よって、各イベント35でタイムスケールを揃えると、図4の日付を結ぶ破線で示すように、類似患者の検査情報34のグラフが引き延ばされる。このようにタイムスケールが調整されることで、イベント35間のバイタル情報の経過状態を比較することができる。なお、対象患者の診療情報31と類似患者の診療情報33との全イベントを揃えずに、ユーザが比較したいイベント間のみで診療情報31と診療情報33と間のタイムスケールを揃えてもよい。
【0035】
次に、図2のステップS204における強調表示処理の詳細について、図5のフローチャートを参照して説明する。
【0036】
ステップS501では、検出機能114により処理回路11が、不適正情報が存在するか否かを判定する。不適正情報の判定方法は、上述したように検査情報(バイタルなど)または検査結果(血液検査など)において、一般的に正常範囲と定められる範囲または平均値から閾値以上離れている値が異常値または外れ値であり、不適正情報として検出される。さらには、ある検査により得られた数値をグラフ化(関数フィッティング)した場合に傾きが閾値以上であれば不適正情報と判定すればよい。不適正情報が存在すれば、ステップS502に進み、不適正情報が存在しなければ、ステップS503に進む。
【0037】
ステップS502では、表示制御機能115により処理回路11が、不適正情報を強調表示する。強調表示の方法としては、例えば、GUI上に表示される画面において、丸や多角形で不適正情報の部分を囲むように表示すればよい。または、不適正情報自体(外れ値または異常値)を太字、色、点滅させてもよく、不適正情報を他の部分と区別可能な態様で表示させればよい。
【0038】
ステップS503では、検出機能114により処理回路11が、対象患者情報と類似患者情報との間で差分情報が存在するか否かを判定する。差分情報の判定方法は、例えば、対象患者と類似患者との間で、検査情報をパターンマッチングし、差分が閾値以上となる部分(投薬情報、画像などの項目や、バイタルの波形の一部など)が存在すれば、当該部分を差分情報として検出すればよい。差分情報が存在すればステップS504に進み、差分情報が存在しなければ処理を終了する。
【0039】
ステップS504では、表示制御機能115により処理回路11が、差分情報を強調表示する。強調表示の方法としては、ステップS502と同様の方法を用いればよく、差分情報を他の部分と区別可能な態様で表示させればよい。なお、検出された差分情報を全てGUI上に表示してもよいし、差分の程度が最も大きい差分情報を1つGUI上に表示してもよい。
【0040】
ステップS505では、表示制御機能115により処理回路11が、差分情報を選択する。差分情報の選択は、ユーザ指示により指定されることを想定するが、差分の程度が最も大きい差分が自動的に選択されてもよい。
【0041】
ステップS506では、表示制御機能115により処理回路11が、ステップS505で選択された差分情報の時点を基準に、時系列における一定期間内で、不適正情報を検出するための閾値を引き下げる。一定期間は、例えば、時間、日、週間、月、年単位で予め定められた期間でもよいし、手術から退院までといった、イベント間の期間でもよい。閾値を引き下げる範囲を一定期間内に限る理由は、全範囲において閾値を下げてしまうと、検出される不適正情報および差分情報が多くなるため、重要な箇所が埋もれ、結果として見落とす可能性がある。よって、選択された差分情報に影響があると想定される期間に限ることで、適切に情報を提示することができる。
【0042】
閾値の引き下げは、情報の種類によって異なる。例えば、検査情報としてバイタルに設定された元の閾値が「収縮期血圧が160以上」である場合、引き下げ後の閾値は「収縮期血圧が140以上」とする。一方、投薬情報に設定された元の閾値が「異なる薬剤」である場合、引き下げ後の閾値は「同じ薬剤でも異なる用量」とすればよい。
なお、閾値の引き下げは、一定期間内の全ての情報について実行してもよいし、選択された差分に関連する情報のみについて実行してもよい。例えば、バイタルの血圧値が差分情報として選択された場合、血圧降下剤の投薬情報については閾値を引き下げ、その他、所見情報、レポート情報および画像に関する閾値を変更しないようにしてもよい。
【0043】
ステップS507では、表示制御機能115により処理回路11が、引き下げられた閾値以上となる不適正情報が存在すれば、当該不適正情報を強調表示する。
【0044】
ステップS508では、表示制御機能115により処理回路11が、ステップS505で選択された差分情報の時点を基準に、時系列における一定期間で、差分情報を検出するための閾値を引き下げる。差分情報の閾値の引き下げは、ステップS506に係る処理と同様であるため、説明を省略する。
【0045】
ステップS509では、表示制御機能115により処理回路11が、引き下げられた閾値以上となる差分情報が存在すれば、当該差分情報を強調表示する。
【0046】
ステップS502およびステップS504により、対象患者と似ている類似患者において、異なる部分、異常がある部分を強調して表示するため、似ているが異なる情報の見落としを防止することができる。
なお、検出機能114により処理回路11が、強調表示された差分情報のうち、対象患者において注目する傷病情報と関連する関連情報を検出してもよい。関連情報としては、例えば、所見情報、病名情報などの傷病情報に関連する投薬情報およびバイタル情報が挙げられる。関連情報は、テーブルなどに傷病情報と対応付けられていればよい。具体的には、テーブルに病名情報「2型糖尿病」と投薬情報「血糖降下薬」とが対応付けられる場合、対象患者の傷病名が「2型糖尿病」であれば、関連情報として投薬情報「血糖降下薬」が決定される。
表示制御機能115により処理回路11が、関連情報のうち少なくとも最も関連度が高い関連情報を強調表示する。上記例であれば、投薬イベントに係る差分情報が少なくともさらに強調表示されればよい。なお、関連情報に係る差分情報は、他の強調表示された差分情報よりもさらに強調表示(太字、色、点滅などから2つの強調法を適用するなど)してもよいし、関連情報に係る差分情報以外の情報を強調しないようにしてもよい。
【0047】
また、ステップS508およびステップS509により、選択された差分情報の時点を基準として、例えば差分情報の時点を含む一定期間に関して閾値を下げることで、さらに不適正情報および差分情報が強調表示されるので、選択された差分情報に関連する原因および事象の発見を支援することができる。なお、ステップS506およびステップS507と、ステップS508およびステップS509との処理順序の優劣はなく、どちらが先に実行されてもよいし、同時に実行されてもよい。以上で強調表示処理を終了する。
【0048】
次に、本実施形態に係る強調表示の第1の例について図6を参照して説明する。
図6は、医用情報の統合表示に関するGUIの表示画面の一例であり、当該表示画面は、例えばワークステーション等のディスプレイに表示される。
【0049】
イベント領域61、対象患者の診療情報に関する診療履歴領域63、対象患者の検査結果に関する検査情報領域65、類似患者の診療情報に関する診療履歴領域67および類似患者の検査結果に関する検査情報領域69を並列表示する。なお、表示される各領域のタイムスケールは、あるイベントを基準に揃えられている場合を想定する。
【0050】
イベント領域61は、例えばクリニカルパスを示す。なお、イベント領域61は、診療履歴領域または検査情報領域の一部として組み込まれてもよい。診療履歴領域63および診療履歴領域67には、検査および治療などの診察に関する情報がアイコンを用いて時系列で表示される。例えば、アイコン631が医用画像を示し、アイコン633が投薬情報を示し、アイコン635が作成されたレポート情報を示す。検査情報領域65および検査情報領域69には、血圧値などのバイタルが示される。
【0051】
なお、破線62は、診療履歴領域63および診療履歴領域67、検査情報領域65および検査情報領域69のそれぞれにおいて時刻が共通する位置を示す。
【0052】
なお、イベント領域61、患者の診療履歴領域63、患者の検査情報領域65、類似症例の診療履歴領域67および類似症例の検査情報領域69の領域は、個別のウィンドウで表示されており、表示位置を適宜入れ替え可能としてもよい。
【0053】
図6はステップS502の表示例であり、バイタルにおける不適正情報が強調表示され、検査情報領域65において該当部分に矩形状の強調マーク651が重畳表示され、検査情報領域69において該当部分に矩形状の強調マーク691が重畳表示される。
【0054】
次に、本実施形態に係る強調表示の第2の例について図7を参照して説明する。
図7はステップS504の表示例であり、表示制御機能115により、バイタル情報における対象患者と類似患者とにおいて閾値以上の差分がまとめて強調マーク71および強調マーク72で強調表示される。なお、検査情報領域65と検査情報領域69とで強調マーク71が分離され、それぞれの領域で付与されてもよい。強調マーク71によって、対象患者と類似患者との間の似ていない部分を強調できる。強調マーク71によって強調する部分としては、例えば、SOAP、既往歴、バイタル、血液検査結果、画像などが挙げられる。
【0055】
次に、本実施形態に係る強調表示の第3の例について図8を参照して説明する。
図8はステップS507の表示例であり、図7の表示状態からユーザ指示により差分が選択されたときの表示状態を示す。
【0056】
ユーザ指示により、強調マーク71で示す差分が選択された場合を想定すると、強調マーク71で示される時点より時系列で遡った一定期間73において、「不適正情報」検出の閾値を引き下げる。これにより、通常の閾値では検出されない不適正情報について強調マーク74が付与される。図8の例では、閾値が下げられた結果、レポートの内容にある不適正情報が検出され、強調マーク74が付与される。このように、強調マーク71が付与された差分情報の原因となる事象および兆候が検出される可能性を向上させることができる。なお、一定期間73は、強調マーク71の時点から遡った時点を含む範囲でもよいし、強調マーク71の時点から進んだ時点を含む範囲でもよい。
【0057】
次に、本実施形態に係る強調表示の第4の例について図9を参照して説明する。
図9はステップS509の表示例であり、図7の表示状態からユーザ指示により差分が選択されたときの表示状態を示す。
【0058】
強調マーク71は図7と同様であるが、一定期間73において、「差分情報」の閾値を引き下げる。図9の例では、差分情報の閾値の引き下げは、元の閾値では薬剤の種類が違う場合に差分情報として検出する場合、閾値の引き下げ後は、同じ種類の薬剤でも用量が異なれば差分情報として検出される。
【0059】
これによって、通常の閾値では検出されない薬剤の容量の違いが差分として検出され、強調マーク81が診療履歴領域63および診療履歴領域67にそれぞれ付与される。これにより、図8の場合と同様に、強調マーク71が付与された差分の原因となる事象および兆候が検出される可能性を向上させることができる。
【0060】
なお、差分があったにもかかわらず、効果の差が無かったという情報を得ることもできる。例えば、ユーザにより差分情報として履歴情報の強調マーク81が選択された場合を想定する。このとき、閾値が引き下げられても検査情報領域65および検査情報領域69において差分情報が検出されなかった場合、薬剤の違い(種類、用量)による血圧の変化の差がほとんど無かったと判断することができる。
【0061】
以上に示した本実施形態によれば、対象患者に類似する症例を有する類似患者を比較可能に表示し、対象患者と類似患者との間における異常値および外れ値である不適正情報および対象患者と類似患者との差分情報を強調表示する。これにより、類似する患者間で似ていない部分、異常な部分を検索することができるため、情報の見落としを防止することができる。
また、類似患者情報として対象患者本人の以前の診療情報と比較する場合は、現在の治療経過と以前の治療経過との比較を行うこともでき、今後の治療方針の検討材料とすることができる。
また、差分情報が選択された場合に、当該差分情報の時点から一定期間における不適正情報検出および差分情報検出の閾値を引き下げることで、当該差分情報に影響する原因または当該差分情報が影響した可能性がある要因の発見を支援することができる。
【0062】
加えて、実施形態に係る各機能は、当該処理を実行する医用情報表示プログラムをワークステーション等のコンピュータにインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても実現することができる。このとき、コンピュータに医用情報表示処理を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク(ハードディスクなど)、光ディスク(CD-ROM、DVD、Blu-ray(登録商標)ディスクなど)、半導体メモリなどの記憶媒体に格納して頒布することも可能である。
【0063】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0064】
1 医用情報表示装置
2 電子カルテシステム
3 医用画像管理システム
11 処理回路
12 入力インタフェース
13 ディスプレイ
14 メモリ
15 通信インタフェース
21 処理回路
31,33 診療情報
32,34 検査情報
35 イベント
36 注目情報
37 基準イベント
61 イベント領域
62 破線
63,67 診療履歴領域
65,69 検査情報領域
71,72,74,81,651,659 強調マーク
73 一定期間
111 取得機能
112 検索機能
113 調整機能
114 検出機能
115 表示制御機能
116 システム制御機能
631,633,635 アイコン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9