IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン株式会社の特許一覧

特許7562264情報処理方法、情報処理装置及びプログラム
<>
  • 特許-情報処理方法、情報処理装置及びプログラム 図1
  • 特許-情報処理方法、情報処理装置及びプログラム 図2
  • 特許-情報処理方法、情報処理装置及びプログラム 図3
  • 特許-情報処理方法、情報処理装置及びプログラム 図4
  • 特許-情報処理方法、情報処理装置及びプログラム 図5
  • 特許-情報処理方法、情報処理装置及びプログラム 図6
  • 特許-情報処理方法、情報処理装置及びプログラム 図7
  • 特許-情報処理方法、情報処理装置及びプログラム 図8
  • 特許-情報処理方法、情報処理装置及びプログラム 図9
  • 特許-情報処理方法、情報処理装置及びプログラム 図10
  • 特許-情報処理方法、情報処理装置及びプログラム 図11
  • 特許-情報処理方法、情報処理装置及びプログラム 図12
  • 特許-情報処理方法、情報処理装置及びプログラム 図13
  • 特許-情報処理方法、情報処理装置及びプログラム 図14
  • 特許-情報処理方法、情報処理装置及びプログラム 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】情報処理方法、情報処理装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240930BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
B41J2/01 123
B41J2/01 451
B41J2/01 401
B41M5/00 120
B41M5/00 134
B41M5/00 132
【請求項の数】 34
(21)【出願番号】P 2020015182
(22)【出願日】2020-01-31
(65)【公開番号】P2020124916
(43)【公開日】2020-08-20
【審査請求日】2023-01-27
(31)【優先権主張番号】P 2019019200
(32)【優先日】2019-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】馬場 直子
【審査官】大浜 登世子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-051211(JP,A)
【文献】特開2011-178108(JP,A)
【文献】特開2015-058604(JP,A)
【文献】特開2017-159476(JP,A)
【文献】特開2013-086429(JP,A)
【文献】特開2017-217891(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
B41M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
付与手段から色材を含む有色記録材と色材を含まない透明記録材とを付与することにより記録媒体上に画像を記録する記録装置のための情報処理方法であって、
有色記録材及び透明記録材を用いて透明記録材用のパッチを記録媒体上に記録する記録工程と、
前記透明記録材用のパッチの正反射光の反射強度を取得する取得工程と、
前記取得工程において取得された反射強度と、透明記録材の付与量に対する反射強度を示すターゲット値と、に基づき、透明記録材のキャリブレーションのためのキャリブレーションデータを生成する生成工程と、
を有することを特徴とする情報処理方法。
【請求項2】
前記生成工程において、前記取得工程において取得された反射強度と、透明記録材の付与量に対する反射強度を示すターゲット値と、を比較することにより、透明記録材のキャリブレーションのためのキャリブレーションデータが生成されることを特徴とする請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項3】
前記キャリブレーションデータは、透明記録材に対応する入力値に対する出力値が設定された一次元補正LUTであることを特徴とする請求項1または2に記載の情報処理方法。
【請求項4】
前記記録工程において、前記透明記録材用のパッチは、記録媒体上に有色記録材により形成された有色記録材層の上に、透明記録材による透明記録材層を形成することにより記録されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の情報処理方法。
【請求項5】
透明記録材層は、記録される画像の光沢性を向上させる層であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の情報処理方法。
【請求項6】
前記記録工程において、前記透明記録材用のパッチは、記録媒体上に透明記録材により形成された透明記録材層の上に、有色記録材による有色記録材層を形成することにより記録されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の情報処理方法。
【請求項7】
前記記録工程において、前記透明記録材用のパッチは、記録媒体上に透明記録材と有色記録材を同時に付与することにより記録されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の情報処理方法。
【請求項8】
透明記録材は、色材を凝集させる成分を含むことを特徴とする請求項6または7に記載の情報処理方法。
【請求項9】
前記透明記録材用のパッチは、透明記録材の付与量が互いに異なる複数のパッチを含み、
前記取得工程において当該複数のパッチそれぞれについて反射強度が取得され、
前記生成工程において、前記複数のパッチそれぞれについて、取得された反射強度と、透明記録材の付与量に対する反射強度を示すターゲット値と、に基づき、前記キャリブレーションデータが生成されることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の情報処理方法。
【請求項10】
前記取得工程において取得される反射強度は、R、G、Bのいずれか1つの発光部からの照射光の正反射光の反射強度であることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の情報処理方法。
【請求項11】
有色記録材を付与し、且つ、透明記録材を付与せずに、有色記録材用のパッチを記録する第2記録工程と、
前記有色記録材用のパッチの測定結果に基づき、有色記録材の付与量を決定するための有色記録材の付与量情報を生成する第2生成工程と、
前記第2生成工程において生成された有色記録材の付与量情報に基づき、前記透明記録材用のパッチを記録するためのパッチデータにおける有色記録材の付与量を決定する決定工程と、
をさらに有し、
前記記録工程において、前記決定工程において有色記録材の付与量が決定された前記パッチデータに基づき、前記透明記録材用のパッチが形成されることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の情報処理方法。
【請求項12】
前記有色記録材用のパッチは、有色記録材の付与量が互いに異なる複数のパッチを含むことを特徴とする請求項11に記載の情報処理方法。
【請求項13】
前記有色記録材用のパッチの測定結果は、前記有色記録材用のパッチの拡散光の反射強度であることを特徴とする請求項11または12に記載の情報処理方法。
【請求項14】
前記有色記録材用のパッチ記録工程の後、前記記録工程までの間に、他の画像データに基づいて画像を記録する記録工程を行わないことを特徴とする請求項11から13のいずれか1項に記載の情報処理方法。
【請求項15】
前記有色記録材層を測定したOD値は、0.5以上であることを特徴とする請求項4に記載の情報処理方法。
【請求項16】
前記有色記録材層を測定したOD値は、1.0以上であることを特徴とする請求項4に記載の情報処理方法。
【請求項17】
有色記録材に含まれる色材はブラックの色材であることを特徴とする請求項1から16のいずれか1項に記載の情報処理方法。
【請求項18】
前記付与手段は、有色記録材を付与するための記録素子と透明記録材を付与するための記録素子とを有することを特徴とする請求項1から17のいずれか1項に記載の情報処理方法。
【請求項19】
有色記録材及び透明記録材はインクであることを特徴とする請求項1から18のいずれか1項に記載の情報処理方法。
【請求項20】
請求項1から19のいずれか1項に記載の情報処理方法の各工程をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項21】
付与手段から色材を含む有色記録材と色材を含まない透明記録材とを付与することにより記録媒体上に画像を記録するための情報処理装置であって、
有色記録材及び透明記録材を用いて透明記録材用のパッチを記録媒体上に記録するように前記付与手段を制御する制御手段と、
前記透明記録材用のパッチの正反射光の反射強度を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された反射強度と、透明記録材の付与量に対する反射強度を示すターゲット値と、に基づき、透明記録材のキャリブレーションのためのキャリブレーションデータを生成する生成手段と、
を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項22】
前記生成手段は、前記取得手段により取得された反射強度と、透明記録材の付与量に対する反射強度を示すターゲット値と、を比較することにより、透明記録材のキャリブレーションのためのキャリブレーションデータを生成することを特徴とする請求項21に記載の情報処理装置。
【請求項23】
前記キャリブレーションデータは、透明記録材に対応する入力値に対する出力値が設定された一次元補正LUTであることを特徴とする請求項21または22に記載の情報処理装置。
【請求項24】
前記透明記録材用のパッチは、記録媒体上に有色記録材により形成された有色記録材層の上に、透明記録材による透明記録材層を形成することにより記録されることを特徴とする請求項21から23のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項25】
透明記録材層は、記録される画像の光沢性を向上させる層であることを特徴とする請求項21から24のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項26】
前記透明記録材用のパッチは、記録媒体上に透明記録材により形成された透明記録材層の上に、有色記録材による有色記録材層を形成することにより記録されることを特徴とする請求項21から23のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項27】
前記透明記録材用のパッチは、記録媒体上に透明記録材と有色記録材を同時に付与することにより記録されることを特徴とする請求項21から23のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項28】
透明記録材は、色材を凝集させる成分を含むことを特徴とする請求項26または27に記載の情報処理装置。
【請求項29】
前記有色記録材層を測定したOD値は、0.5以上であることを特徴とする請求項24に記載の情報処理装置。
【請求項30】
前記有色記録材層を測定したOD値は、1.0以上であることを特徴とする請求項24に記載の情報処理装置。
【請求項31】
有色記録材に含まれる色材はブラックの色材であることを特徴とする請求項21から30のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項32】
前記取得手段は、R、G、Bのいずれかの発光部から照射された正反射光の反射強度を取得するためのセンサーを備えることを特徴とする請求項21から31のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項33】
前記付与手段をさらに備え、前記付与手段は、有色記録材を付与するための記録素子と透明記録材を付与するための記録素子とを有することを特徴とする請求項21から32のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項34】
前記透明記録材用のパッチは、透明記録材の付与量が互いに異なる複数のパッチを含み、
前記取得手段は、当該複数のパッチそれぞれについて反射強度を取得し、
前記生成手段は、前記複数のパッチそれぞれについて、取得された反射強度と、透明記録材の付与量に対する反射強度を示すターゲット値と、に基づき、前記キャリブレーションデータを生成することを特徴とする請求項21から33のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体上に画像を記録するための情報処理方法、情報処理装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の吐出口を有する記録ヘッドを備えたインクジェット記録装置が知られている。インクジェット記録装置においては、個々の記録ヘッドの吐出特性の違いに起因して、記録画像において所望の色調が得られないことが知られている。この記録ヘッドの吐出特性の差により、画像に生じる色差に対して色ずれ補正処理が行われている。
【0003】
一方、記録画像の画質を向上させる目的や光沢感を付与する目的で、色材を含有しない透明インクが用いられている。前述の吐出特性の差は、透明インクを用いる場合にも生じる。すなわち、色材を含有するインクと同様に、透明インクの吐出特性の差についても補正を施す必要がある。このとき、透明インクの吐出特性を取得するためのパッチパターンは、測定精度が低いという課題がある。
【0004】
特許文献1には、色材を含まないクリアインクのキャリブレーションにおいて、クリアインク層の下に黒インクによる黒インク層が形成されたパッチを記録することが開示されている。特許文献1に開示の方法では、クリアインクのキャリブレーションのためのパッチの測定結果から干渉色を算出することで吐出量を推定する。具体的には、光学センサーの発光部であるR、G、BのLEDを順次点灯させ、正反射光を読み取り、その3色の強度比率からクリアインクの吐出量を推定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-217891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記方法では、測定時の僅かな誤差等の要因によって読み取った3色の強度比率のバランスが大きく変わってしまうため、クリアインクの吐出量の推定を高精度に行うことは難しい。このような課題に対し、本発明は、透明インクの付与量を決定する処理を高精度に実行することが可能な情報処理方法、情報処理装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を鑑み、本発明は、付与手段から色材を含む有色記録材と色材を含まない透明記録材とを付与することにより記録媒体上に画像を記録する記録装置のための情報処理方法であって、有色記録材及び透明記録材を用いて透明記録材用のパッチを記録媒体上に記録する記録工程と、前記透明記録材用のパッチの正反射光の反射強度を取得する取得工程と、前記取得工程において取得された反射強度と、透明記録材の付与量に対する反射強度を示すターゲット値と、に基づき、透明記録材のキャリブレーションのためのキャリブレーションデータを生成する生成工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の構成により、高精度に透明記録材の付与量を決定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】記録システムの制御構成を示すブロック図
図2】記録装置の機械的構成を説明するための概略斜視図
図3】記録ヘッドの正面図
図4】多目的センサーの構成を示す図
図5】記録システムの画像処理フローを示すブロック図
図6】透明インクのパッチの構成を示す図
図7】キャリブレーション処理で記録されるパッチパターンを示す図
図8】有色インクのキャリブレーション処理を示すフローチャート
図9】透明インクのキャリブレーション処理を示すフローチャート
図10】測定結果と生成された補正LUTを示す図
図11】透明インクパッチの付与量と反射強度の関係を示す図
図12】第2の実施形態におけるパッチパターンを示す図
図13】第3の実施形態におけるパッチパターンを示す図
図14】第4の実施形態の画像処理構成を示すブロック図
図15】間引きマスクを生成する処理を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態を説明する。
【0011】
図1は、本実施形態に係る記録システムの制御構成を示すブロック図である。本実施形態の記録システムは、ホスト装置100と記録装置200によって構成される。ホスト装置100は、パーソナルコンピュータやデジタルカメラなどの情報処理装置である。記録装置200はインターフェース21を介してホスト装置100と接続されており、後述する画像処理工程におけるR′、G′、B′で表される記録データと、その後の画像処理用のテーブルをホスト装置100から受信する。そして、記録装置200において、送信された画像処理情報を基に、特に後述の色処理、2値化処理等の画像処理や、記録特性の補正処理が実行され、各種画像処理が施された記録データに基づき、記録媒体上に画像を記録する。
【0012】
記録装置200において、制御部20は、マイクロプロセッサ等のCPU20a、ROM20c及びRAM20b等をメモリとして備える。ROM20cは、CPU20aの制御プログラムや記録動作に必要なパラメータなどの各種データを格納する。RAM20bは、CPU20aのワークエリアとして使用されると共に、ホスト装置100から受信した画像データや生成した記録データなどの各種データを一時的に保管する。また、ROM20cには、補正情報としてのLUT(ルックアップテーブル)が格納され、RAM20bには、パッチパターンを記録するためのパッチパターンデータが格納されている。尚、LUTは、RAM20bに格納されていてもよく、パッチパターンデータは、ROM20cに格納されていてもよい。また、後述する色ずれ補正LUTと、色ずれ補正LUTを生成するための制御プログラムはROM20cに格納されている。
【0013】
制御部20は、ホスト装置100との間で、インターフェース21を介し、画像データ等記録に用いられるデータやパラメータを入出力する処理や、操作パネル22から各種情報、例えば文字ピッチや文字種類等を入力する処理を行う。また、制御部20は、インターフェース21を介し、各モータ23~26を駆動させるためのON、OFF信号を出力する。また、制御部20は、吐出信号等をドライバ28に出力し、記録ヘッドからインクを吐出するための記録素子の駆動を制御する。
【0014】
また、この制御系は、インターフェース21、操作パネル22、多目的センサー102、ドライバ27及び28を有する。ドライバ27は、CPU20aからの指示に従って、キャリッジ駆動用のモータ23、給紙ローラ駆動用のモータ24、搬送ローラ3駆動用のモータ25及び搬送ローラ4駆動用のモータ26を駆動する。同様に、ドライバ28は、記録ヘッド5を駆動する。
【0015】
図2は、記録装置200の機械的構成を説明するための概略斜視図である。記録用紙、プラスチックシート等の記録媒体1は、不図示のカセット等に複数枚が積層されることにより、記録時には不図示の給紙ローラによって1枚ずつ分離され、給紙される。給紙された記録媒体1は、一定間隔を隔てて配置される搬送ローラ3及び搬送ローラ4により、記録ヘッドの走査に応じたタイミングで矢印A方向(以下、搬送方向とも称する。)に所定量ずつ搬送される。搬送ローラ3は、ステッピングモータ(不図示)によって駆動される駆動ローラと駆動ローラの回転にともなって回転する従動ローラの1対のローラからなる。同様に、搬送ローラ4も1対のローラからなる。尚、記録装置200は、所定の大きさにカットされ、カセットに積層された記録媒体だけでなく、ロール状に設置され、搬送方向における長さの長い記録媒体に対しても画像を記録することが可能である。
【0016】
記録ヘッド5は、キャリッジ6に搭載される。そして、ベルト7及びプーリ8a、8bを介し、キャリッジモータ2からの駆動力がキャリッジ6に伝達される。この駆動力によって、ガイドシャフト9に沿って図の矢印B方向(以下、走査方向と称する。)にキャリッジ6が往復走査する。この往復走査中に記録ヘッド5からインク滴が吐出され、記録媒体1上に画像が記録される。また、キャリッジ6の側面には後述する多目的センサー102が搭載される。多目的センサー102は、記録媒体1に吐出されたインクの濃度検出や光沢度検出、記録媒体の幅検出、記録ヘッドから記録媒体までの距離検出等に用いられる。
【0017】
記録ヘッド5は、必要に応じてホームポジションに移動し、ホームポジションに設けられた吐出回復装置によって回復動作が行われることにより、吐出口の目詰まり等に起因する各吐出口の吐出不良の状態から回復する。記録ヘッド5による記録走査の後、搬送ローラ3及び4が駆動され、記録媒体1が搬送方向に所定量搬送される。このような記録ヘッド5の記録走査と、記録媒体の搬送動作とを交互に繰り返すことにより、記録媒体1に画像が記録される。
【0018】
図3は、記録ヘッド5を、吐出口が配置された面から見た正面図である。本実施形態の記録ヘッド5は、記録素子からのエネルギーによって吐出口(ノズル)からインクを吐出する、いわゆるインクジェット記録方式の記録ヘッドである。同じインクを吐出するための吐出口が配列方向に沿って並んで列状に配され、記録ヘッド5が走査する走査方向に見て重複するように、複数列の吐出口列が配列されている。本実施形態では、インクを吐出する各吐出口の内部に、記録素子として電気熱変換素子(ヒータ)が設けられている。画像データに基づく吐出信号に応じて電気熱変換素子が駆動され、発生した熱エネルギーを利用してインクに気泡を生じさせ、この気泡の圧力によって吐出口内のインクが吐出される。吐出されたインク滴が記録媒体1に着弾し、記録媒体1上でドットを形成する。
【0019】
本実施形態では、記録材としてインクを用い、色材を含む有色記録材としてカラーインク、色材を含まない透明記録材として透明インクを用いる。本実施形態の記録ヘッド5は、シアンの色材を含有するシアンインク(C)、マゼンタの色材を含有するマゼンタインク(M)、イエローの色材を含有するイエローインク(Y)、ブラックの色材を含有するブラックインク(K)の4色の有色インクを吐出する。さらに、記録ヘッド5は、色材を含有しない透明インク(S)を吐出する。これらのインクは、不図示のインクカートリッジから供給され、吐出口列5a~5eから吐出される。本図において、吐出口列5aにはシアンインク(C)、5bにはマゼンタインク(M)、5cにはイエローインク(Y)、5dにはブラックインク(K)、5eには透明インク(S)が供給される。尚、簡単のため、本図の各吐出口列にはそれぞれ吐出口が10個ずつ形成された例を示したが、吐出口の数、及び、吐出口列の数は、これらの数に限られない。また、有色インクの色も上記例に限られない。
【0020】
<インク処方>
ここで、インクの処方について詳細に説明する。尚、文中「部」及び「%」との記載は、特に断りのない限り、質量基準を示す。
【0021】
<顔料分散液の調製>
(ブラック顔料分散液の調製)
まず、顔料20.0部、樹脂水溶液60.0部及び水20.0部を、0.3mm径のジルコニアビーズの充填率を80%としたビーズミル(LMZ2;アシザワファインテック製)に入れ、回転数1,800rpmで5時間分散した。なお、顔料としては、カーボンブラック(商品名:プリンテックス90;デグサ製)を用いた。また、樹脂水溶液としては、スチレン-アクリル酸共重合体であるジョンクリル678(ジョンソンポリマー製)を、酸価と当量の水酸化カリウムで中和したものを含む、樹脂(固形分)の含有量が20.0%である水溶液として用いた。その後、回転数5,000rpmで30分間遠心分離を行うことにより凝集成分を除去し、さらにイオン交換水で希釈することで、顔料の含有量が15.0%、水溶性樹脂(分散剤)の含有量が9.0%であるブラック顔料分散液を得た。
【0022】
(マゼンタ顔料分散液の調製)
顔料をC.I.ピグメントレッド122(商品名:トナーマゼンタE02;クラリアント製)に変更した。それ以外は、上記のブラック顔料分散液の調製と同様の手順により、顔料の含有量が15.0%、水溶性樹脂(分散剤)の含有量が9.0%であるマゼンタ顔料分散液を得た。
【0023】
(シアン顔料分散液の調製)
顔料をC.I.ピグメントブルー15:3(商品名:トナーシアンBG;クラリアント製)に変更した。それ以外は、上記のブラック顔料分散液の調製と同様の手順により、顔料の含有量が15.0%、水溶性樹脂(分散剤)の含有量が9.0%であるシアン顔料分散液を得た。
【0024】
(イエロー顔料分散液の調製)
顔料をC.I.ピグメントイエロー74(商品名:Hansa Brilliant Yellow 5GX;クラリアント製)に変更した。それ以外は、上記のブラック顔料分散液の調製と同様の手順により、顔料の含有量が15.0%、水溶性樹脂(分散剤)の含有量が9.0%であるイエロー顔料分散液を得た。
【0025】
<インクの調整>
表1の上段に示す各成分(単位:%)を混合した後、ポアサイズが1.2μmであるメンブレンフィルター(HDCIIフィルター;ポール製)にて加圧ろ過することで、顔料インク1~6をそれぞれ調製した。イオン交換水の使用量は、成分の合計量が100.0%となる含有量とした。なお、アセチレノールE100は川研ファインケミカル製の界面活性剤である。表1の下段には、顔料インク中の顔料の含有量(単位:%)を示した。このようにして得られたインクをそれぞれカートリッジに充填した。
【0026】
【表1】
【0027】
<透明インクSの調整>
〇樹脂水溶液の調整
樹脂水溶液としては、スチレン-アクリル酸共重合体であるジョンクリル678(ジョンソンポリマー製)を、酸価と当量の水酸化カリウムで中和したものを含む、樹脂(固形分)の含有量が20.0%であるものを用いた。
【0028】
〇インクの調整
表2に示す各成分(単位:%)を混合した後、ポアサイズが1.2μmであるメンブレンフィルター(HDCIIフィルター;ポール製)にて加圧ろ過することで、樹脂を含有する透明インクSを調製した。イオン交換水の使用量は、成分の合計量が100.0%となる含有量とした。なお、アセチレノールE100は川研ファインケミカル製の界面活性剤である。このようにして得られた透明インクをカートリッジに充填した。
【0029】
【表2】
【0030】
尚、本実施形態における透明インク(S)は、有色インクで形成された有色インク層の上に付与するためのインクである。有色インクの上に透明インクが付与されることによって、有色インク層のみの場合に比べて、記録された画像の表面の光沢度を上げることができる。
【0031】
また、本実施形態における透明インク(S)は、上記のほかに、有色インクと反応して有色インクを定着させたり、有色インクの発色を向上させるような機能を持つインクでも構わない。
【0032】
透明インク(S)の別の例として有色インクと反応する反応液を以下に挙げる。
【0033】
本実施形態で使用する反応液は、有色インクに含まれる顔料と反応し、該顔料を凝集又はゲル化させる反応性成分を含有する。この反応性成分とは、具体的には、イオン性基の作用によって水性媒体中に安定に分散されている顔料を有する有色インクと記録媒体上などで混合された場合に、該インクの分散安定性を破壊することができる成分であり、詳細には、本実施形態ではグルタル酸を用いる。
【0034】
なお、必ずしもグルタル酸を用いる必要はなく、本実施形態では、水溶性であれば種々の有機酸や、また、多価金属塩を反応液の反応性成分として用いることができる。有機酸や多価金属塩の含有量は、反応液に含まれる組成物の全質量を基準として、0.1質量%以上90.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上70.0質量%以下であることがより好ましい。
【0035】
〇インクの作製
本実施形態では、上述のように、グルタル酸(富士フイルム和光純薬株式会社製)を使用し、下記の成分を混合して反応液を作製した。
【0036】
グルタル酸 2部
2-ピロリドン 5部
2-メチル1,3プロパンジオール 15部
アセチレングリコールEO付加物 0.5部
(川研ファインケミカル株式会社製)イオン交換水 残部
(多目的センサー)
図4は、記録装置200に取り付けられた多目的センサー102の構成を示す図である。本実施形態において、多目的センサー102は、キャリッジ6に搭載されており、キャリッジ6の走査に伴って移動しながら、記録媒体上の画像の濃度や光沢度を取得する。多目的センサー102の下面は、記録ヘッド5の吐出口面と同位置もしくはそれよりも記録媒体から離れた位置に配置されている。
【0037】
多目的センサー102には、R、G、Bの3つの可視LEDで実現される2つの発光部302及び304、フォトダイオードで実現される受光部303が設けられている。発光部302からの照射光が45°の角度で記録媒体に入射し、同一の角度で反射した光、すなわち正反射光が、受光部303において受光される。発光部302と受光部303の組み合わせによって正反射センサーとして機能し、これを正反射センサー310とする。後述するように、正反射光は、記録媒体表面の凹凸や屈折率の影響を受けて反射光量が変化する。このため、正反射センサー310は、記録媒体の光沢度の検出に用いられる。また、発光部304からの照射光は、0°の角度で記録媒体に入射し、その反射光が受光部303において受光される。すなわち、発光部304と受光部303の組み合わせによって乱反射センサーとして機能し、これを乱反射センサー311とする。乱反射センサー311は、正反射光を含まない乱反射光を検出する。このため、乱反射センサー311は、記録媒体表面の色濃度を検出する濃度センサーとして用いられる。
【0038】
後述するキャリブレーション工程においては、搬送方向への記録媒体1の搬送と、多目的センサー102が取り付けられたキャリッジ6の走査方向への走査とが交互に行われる。多目的センサー102における乱反射センサー311は、記録媒体1上に記録された各パッチの濃度を光学反射率として検出し、パッチパターンの記録濃度測定を行う。記録媒体上に形成されたパッチ上に光を照射し、パッチの濃度を反映した反射強度のレベルを検知する。記録媒体表面の色が白い場合には、反射強度が強くなり、濃度の高いパッチほど反射強度が弱くなる。一方、多目的センサー102における正反射センサー310は、記録媒体1上に記録された各パッチの光沢度を光学反射率として検出し、光沢度測定を行う。本実施形態では、発光部304から測定面に対して照射された照射光の照射範囲の中心点と、発光部304の中心と、を結ぶ直線を、発光素子の光軸とする。この発光素子の光軸は、照射光の光束の中心でもある。また、測定対象表面において、受光部303が受光可能である領域(範囲)の中心点と、受光部303の中心と、を結ぶ線を、受光素子の光軸(受光軸)とする。この受光軸は、測定面で反射し、受光部303に受光される反射光の光束の中心でもある。尚、正反射センサー310の受光部と乱反射センサー311の受光部として受光部303を共有せず、センサー毎に個別に受光部を設ける形態であってもよい。また、発光部302及び304のLEDの色数は、上記の数には限られない。
【0039】
(画像処理方法)
次に、記録装置200において画像を記録するための記録データを生成するための画像処理方法について説明する。
【0040】
図5は、本実施形態の画像処理動作の流れを示す図である。ここでは、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の各色8ビットの輝度データから、記録ヘッド5の各吐出口からのインク滴の吐出または非吐出を示す1ビットのビットイメージデータが生成されるまでの処理が行われる。尚、各データの要素としての色の種類や色の階調はこれらの値に限られるものではない。
【0041】
まず、ホスト装置100からR、G、Bそれぞれ8ビットの輝度信号で表現される画像データが記録装置200に送信される。ここでは、各色256階調の多値データである。続いて、ステップS401において、色空間変換前処理(以下、前段色処理とも称する。)がなされる。多次元のLUT401を用いて、R、G、B多値の輝度信号で表現される画像データが、R′、G′、B′多値のデータに変換される。この前段色処理は、記録対象におけるR、G、Bの画像データが表す入力画像の色空間と、記録装置200で再現可能な色空間と、の間の差を補正するために行われる。
【0042】
次に、ステップS402において、色変換処理(以下、後段色処理とも称する。)がなされる。記録装置200において、ホスト装置100より前段色処理が施されたR′、G′、B′各色のデータを受信する。受信されたR′、G′、B′各色のデータは、多次元LUT402を用いて、インク色であるC、M、Y、K、Sの多値のデータに変換される。この後段色処理は、輝度信号で表現される入力側のRGB値の画像データを、濃度信号で表現するための出力側のCMYKS値の画像データに変換する処理である。
【0043】
次に、ステップS403において、後段色処理が施されたC、M、Y、K、Sの多値データに対し、一次元のLUTを用いて、色毎に出力γ補正処理が行われる。一般的に、記録媒体の単位面積当たりに付与されるインク滴(ドット)の数と、記録された画像を測定して得られる反射濃度等の記録特性との関係は、線形にはなっていない。そのため、C、M、Y、K、S各10ビットの入力階調レベルと、それに基づいて記録される画像の濃度レベルとが線形関係となるように、C、M、Y、K、Sの多値の入力階調レベルを補正するための処理が必要である。これが出力γ補正処理である。ここで用いられる一次元のLUTを、出力γ補正テーブル403と称する。
【0044】
次に、ステップS404において、色ずれ補正処理が行われる。前述のステップS403において用いられる出力γ補正テーブル403は、標準的な記録特性を示す記録ヘッド用に作成されたものが用いられることが多い。しかし、前述したように、記録ヘッドもしくは吐出口には吐出特性に関して個体差がある。このため、標準的な吐出特性を示す記録ヘッドもしくは吐出口の記録特性を補正する出力γ補正テーブルだけでは、全ての記録ヘッドもしくは吐出口に対して適切な濃度補正をすることができない。このため、本実施形態では、出力γ補正が施されたC、M、Y、K、Sの多値データについて色ずれ補正処理を行うことにより、画像記録時の各インクの付与量を決定する。
【0045】
色ずれ補正処理において用いる色ずれ補正用一次元LUTは、キャリブレーション工程において取得される、吐出口列毎の吐出特性を示す情報に基づいて設定される。この吐出特性を示す情報は、色材を含有する有色インク(C、M、Y、K)については濃度値情報であり、色材を含有しない透明インク(S)については光沢度情報である。尚、本明細書では、記録材としてのインクの付与量を示すデータを補正する工程を「色ずれ補正」と称するが、既に定まっているデータを補正する場合に限られず、新たに決定する場合であっても「色ずれ補正」と称する。また、色材を含有しない透明インクの吐出特性に対する付与量を決定する処理についても、有色インクと同様に、色ずれ補正処理と称する。
【0046】
色ずれ補正処理が施された後、ステップS405において、誤差拡散やディザパターン等を用いてハーフトーン処理や、Index展開による量子化処理が施される。これらの処理により、記録ヘッドからのインク滴の吐出または非吐出を示すC、M、Y、K、Sそれぞれ2値の記録データが生成され、出力される。
【0047】
(キャリブレーション工程)
次に、本実施形態の特徴構成である、キャリブレーション工程について説明する。キャリブレーション工程は、前述した色ずれ補正LUTを生成するための処理であり、画像が記録されていないときに、ユーザの指示で実行される。尚、所定の条件を満たした際に、自動的に実行される形態であっても構わない。
【0048】
本実施形態のキャリブレーションは、C、M、Y、Kの有色インクに対する濃度特性を取得して有色インクの一次元補正LUTを生成する工程と、色材を含有しない透明インク(S)に対する光沢度特性を取得して透明インクの一次元補正LUTを生成する工程と、の2つの工程からなる。この理由について以下に説明する。
【0049】
透明インクの光沢度特性を取得する上で、透明インク用(透明記録材用)のパッチパターンの各パッチは、色材を有する有色インクが下地として付与される。図6は、透明インクの光沢度特性を取得するためのパッチの断面図を示している。ブラック(K)インクを用いて記録されたブラックインク層(第1の層)が下地として形成され、その上に透明インク(S)を用いて記録された透明インク層(第2の層)が形成されている。図11は、本実施形態の有色インク層を下地層として用いた透明インクのパッチパターンを測定した測定結果を示す。横軸が透明インクの付与量であり、1200dpi(dot per inch)の解像度における1画素にインク滴を1ドット付与した場合を100%とした場合の記録デューティを示している。縦軸は、正反射光の測定結果から取得した反射強度(光沢度)である。本グラフからわかるように、本実施形態のパッチパターンの測定結果は、一次元での増加傾向を示している。このように、パッチの下地として有色インクを付与することにより、透明インクのみで形成されたパッチを測定した場合に比べて、測定結果における変化量が大きくなるため、透明インクの付与量の差に基づく変化を得やすくすることができる。
【0050】
ここで、有色インクを下地として用いる際には、有色インクの濃度が適正な値であり、有色インクの濃度特性が適切に補正されていることが好ましい。下地層に用いる有色インクの濃度が異なってしまうと、その上に付与される透明インクの量が同じであっても、検出される光沢度が異なってしまうからである。従って、本実施形態では、透明インクのパッチパターンを記録する前に、有色インク用(有色記録材用)のパッチパターンを記録及び測定し、有色インクに対するキャリブレーションを行う。そして、有色インクのキャリブレーションにおいて、有色インクの付与量情報として生成された一次元補正LUTを、透明インクのパッチパターンを記録するための画像データ(パッチデータ)に適用した上で、透明インクのパッチパターンを記録する。このような構成により、透明インクの光沢度特性を取得する上で、下地として付与された有色インクの吐出特性に起因するキャリブレーション精度の低下を抑制することが可能となる。
【0051】
図7(a)及び(b)は、色ずれ補正LUTを生成するためのキャリブレーション処理で記録されるパッチパターンを示す図である。図7(a)は、有色インクの各色(C、M、Y、K)の階調値を変えて記録されたパッチであり、図7(b)は、透明インク(S)のパッチの階調値を変えて記録されたパッチである。各パッチに記載されている英字について、Pa~Pdは、有色インクの吐出口列5a~5dを用いて記録されたパッチであることを示し、Peは、透明インクの吐出口列5eを用いて記録されたパッチであることを示す。また、各パッチに記載されている1~5までの数字については、記録されたパッチの濃度階調をランク付けしたものを示している。例えば、Pa1は、吐出口列5aを用いて記録された階調値ランク1のパッチであり、Pe5は、吐出口列5dと吐出口列5eを用いて記録された階調値ランク5のパッチである。ここで、Pe1~Pe5の各階調値1~5は、吐出口列5eから吐出される透明インク(S)の階調値を示している。前述したように、Pe1~Pe5の各パッチにおいて、下地となるブラック(K)インクの階調値は一定である。
【0052】
図8は、C、M、Y、Kの有色インクに対する記録装置200の濃度特性を取得する処理の流れを示すフローチャートである。ステップS801において、ホスト装置100の入力部やCPU、もしくは記録装置200の操作パネル22等から、パッチパターンを記録して有色インクの濃度特性を取得するためのキャリブレーション開始命令が入力される。キャリブレーション処理の実行の指示が入力されると、ステップS802において、記録装置200のCPU20aは、給紙モータ24を駆動して、給紙トレイから記録媒体の供給を開始する。記録ヘッドによる記録が可能な領域まで記録媒体が搬送されると、ステップS803において、図7(a)に示した、有色インクの濃度特性を取得するためのパッチパターンが記録される。ここでは、搬送方向へ記録媒体を搬送する搬送動作と、キャリッジモータ2を駆動して走査方向へキャリッジ6を走査させる記録走査とが交互に行われることにより、パッチパターンが記録される。
【0053】
次に、ステップS804において、記録されたパッチパターンを乾燥させるため、タイマーカウンタをスタートし、所定時間待機させる。ステップS805において、タイマーカウンタが所定時間経過したことを示したら、ステップS806において、多目的センサー102の乱反射センサー311を用い、パッチパターンの反射強度の測定を開始する。反射強度の測定は、多目的センサー102に搭載されている発光部304のLEDの中から、濃度を測定する対象のインク色に適したLEDを順次点灯させ、受光部303で反射光(拡散光)を読み取ることによって行われる。例えば、グリーン(G)色のLEDは、マゼンタ(M)インクにより記録されたパッチパターン、及び、パッチパターンが記録されていない紙白部分(白色)を測定する際に点灯する。ブルー(B)色のLEDは、イエロー(Y)インク、ブラック(K)インクにより記録されたパッチパターン、及び、パッチパターンが記録されていない紙白部分(白色)を測定する際に点灯する。レッド(R)色のLEDは、シアン(C)インクにより記録されたパッチパターン、及び、パッチパターンが記録されていない紙白部分(白色)を測定する際に点灯する。紙白部分(白色)の測定結果は、有色インクで記録されたパッチパターンの濃度値算出を行う際の基準値として用いる。
【0054】
パッチパターンの読み取りが終了すると、ステップS807において、各パッチの測定値と紙白部分の測定値とに基づき、対応する吐出口列毎にパッチパターンの濃度値を算出する。算出された濃度値は、記録装置200本体内のRAM20bに格納される。その後、ステップS808において、記録媒体を排出する処理が行われ、処理を終了する。
【0055】
次に、図8の処理で取得した有色インクの濃度特性に基づき、有色インクの色ずれ補正用の一次元補正LUTを生成する。ここで生成されるのは、前述の図5のステップS404の色ずれ補正処理において用いられる一次元補正LUTのうち、有色インク分(本実施形態では、C、M、Y、Kの4色分)である。一次元補正LUTは、図7(a)に示した各パッチを測定して得られる濃度値と、予め定められた所定の目標濃度(以下、ターゲット値と称する)とを比較することにより生成される。記録媒体上に記録された画像の濃度がターゲット値に補正されるように、入力値に対する出力値が設定される。ターゲット値は、予め精度の良好なインクジェット記録装置を用いて記録されたパッチパターンを読み取ることで得られた濃度値を採用してもよい。ターゲット値は極めて理想値に近い値である。
【0056】
図10は、ここで生成される色ずれ補正用一次元LUT404を説明するための図である。図10(a)は、シアンインクの吐出口列5aを用いて記録されたパッチPa1~Pa5からなる、Paパッチパターンを読み取って得られた濃度値と、ターゲット値を示すグラフである。図10(b)は、図10(a)の値を基に生成された、シアンインク用の色ずれ補正用一次元LUTを示すグラフである。本例では、読み取られた濃度値がターゲット値よりも高いため、吐出口列5aで記録すべき画像データに対し、出力値が入力値よりも低い値となるような一次元LUTが生成される。同様に、マゼンタインクの吐出口列5bを用いて記録されたパッチPb1~Pb5からなる、Pbパッチパターンを読み取って得られた濃度値と、ターゲット値から、マゼンタインク用の色ずれ補正用一次元LUTを生成する。同様にして、イエローインク用の色ずれ補正用一次元LUTと、ブラックインク用の色ずれ補正用一次元LUTを生成する。
【0057】
次に、図9を用いて、透明インクSに対する記録装置200の光沢度特性を取得する処理の流れについて説明する。ステップS901において、ホスト装置100の入力部やCPU、もしくは記録装置200の操作パネル22等から、パッチパターンを記録して透明インク(S)の光沢度を測定するキャリブレーション開始命令が入力される。キャリブレーション処理の実行の指示が入力されると、ステップS902において、記録装置200のCPU20aは、給紙モータ24を駆動して、給紙トレイから記録媒体の供給を開始する。記録ヘッドによる記録が可能な領域まで記録媒体が搬送されると、ステップS903において、図7(b)に示した、透明インクの光沢度特性を取得するためのパッチパターンが記録される。ここでは、搬送方向へ記録媒体を搬送する搬送動作と、キャリッジモータ2を駆動して走査方向へキャリッジ6を走査させる記録走査とが交互に行われることにより、パッチパターンが記録される。前述したように、光沢度特性を取得するためのパッチパターンは、ブラックインク層の下地の上に透明インク層を形成したパッチである。前述したように、透明インク用のパッチパターンを記録するためのパッチデータにおいては、図8の処理で生成された有色インクの色ずれ補正用の一次元補正LUTが適用されている。これにより、下地として記録されるブラックインク画像においては、色ずれ補正がなされており、ブラックインクの吐出特性の影響が抑制される。
【0058】
次に、ステップS904において、記録されたパッチパターンを乾燥させるため、タイマーカウンタをスタートし、所定時間待機させる。ステップS905において、タイマーカウンタが所定時間経過したことを示したら、ステップS906において、多目的センサー102の正反射センサー310を用い、パッチパターンの反射強度の測定を開始する。反射強度の測定は、多目的センサー102に搭載されている発光部302のLEDを点灯させ、受光部303で反射光(正反射光)を読み取ることによって行われる。本実施形態では、R、G、BのLEDのうちいずれか1つを用いる。
【0059】
パッチパターンの読み取りが終了すると、ステップS907において、各パッチの測定値に基づき、対応する吐出口列毎にパッチパターンの光沢度を算出する。算出された光沢度は、記録装置200本体内のRAM20bに格納される。その後、ステップS908において、記録媒体を排出する処理が行われ、処理を終了する。
【0060】
次に、図9の処理で取得した透明インクの光沢度特性に基づき、透明インクの色ずれ補正用の一次元補正LUTを生成する。ここで生成されるのは、前述の図5のステップS404の色ずれ補正処理において用いられる一次元補正LUTのうち、透明インク(S)分である。生成手法は、有色インク用の一次元補正LUTと同様であり、パッチパターンを読み取った光沢度値と、予め定められた所定の目標光沢度(以下、ターゲット値と称する)を比較することにより生成される。
【0061】
図10(c)は、透明インクの階調値を変化させて記録されたパッチPe1~Pe5からなるPeパッチパターンを読み取って得られた光沢度と、ターゲット値を示すグラフである。図10(d)は、図10(c)の値を基に生成された、透明インク用の色ずれ補正用一次元LUTを示すグラフである。本例では、読み取られた光沢度がターゲット値よりも高いため、吐出口列5eで記録すべき画像データに対し、出力値が入力値よりも低い値となるような一次元補正LUTが生成される。
【0062】
尚、本実施形態では、透明インクのパッチパターンから光沢度特性を取得する際、多目的センサー102に搭載されている発光部302のR、G、BのLEDのうち、いずれか1つを発光させ、正反射光の反射強度を読み取った。これは、本発明者らの検討により、正反射光の反射強度から透明インクの付与量の差を高精度に取得できることを見出したことによる。従来、前述の特許文献1に記載の正反射光の強度比率のバランスから吐出量を推定する方法や、分光反射率から吐出量を推定する方法のように、正反射光の測定結果から測定対象の色を取得し、その色から透明インクの吐出特性を推定する方法が知られていた。しかしながら、このような反射光の色から吐出特性を推定する方法では、透明インクの付与量が大きく異なっていても反射光の色が近い色を示すことがあり、高い測定精度を得ることは難しい。また、測定における再現性を得ることも難しい。これに対し、本実施形態の正反射光の反射強度から透明インクの付与量を取得する構成の場合には、図11に示したように、透明インクの付与量と反射強度との関係が一次元の比例関係となっている。このため、反射強度と透明インクの付与量との関係が明確であり、反射光の色から透明インクの付与量を推定する方法に比べて、高精度に付与量を推定することができる。また、測定に必要なセンサーとしては発光部にLEDが少なくとも1つあればよく、分光反射率を測定するための測定系も不要であるというメリットもある。
【0063】
以上のように、本実施形態では、透明インクの光沢度特性を補正するためのキャリブレーションにおいて、透明インク層の下に、下地層として有色インクを付与したパッチパターンを記録した。そして、正反射センサーを用いて、透明インクのパッチパターンの正反射光の反射強度を取得し、反射強度から透明インクの色ずれ補正用LUTを生成する。これにより、パッチの色から透明インクの付与量を推定する方法に比べて高精度に透明インクの付与量を補正することが可能となる。
【0064】
さらに、透明インクのパッチパターンの記録の前に、下地層として付与される有色インクのキャリブレーションを行い、有色インク用の補正LUTを生成する。そして、生成された有色インク用の補正LUTを、透明インクのパッチパターンの下地に用いられる有色インク層の記録用データに適用する。これにより、透明インクのキャリブレーションにおいて、有色インクの吐出特性の影響を抑制することができる。
【0065】
尚、下地として用いる予定の有色インクのパッチパターン記録、及び、その測定値を用いた一次元補正LUTを生成する処理は、透明インクのパッチ記録の直前に行うことが好ましい。また、有色インクのパッチパターンの記録と、透明インクのパッチパターンの記録との間には、他の画像データに基づく画像の記録を行わないことが好ましい。有色インクのパッチパターンを測定した後に透明インクのパッチパターンを記録する構成であれば、有色インクのパッチパターンと透明インクのパッチパターンを同一の記録媒体上に記録する構成でも構わない。
【0066】
また、色ずれ補正用一次元LUTは、記録媒体や印字解像度、使用環境等の条件毎に生成される構成がより好ましい。また、上述したキャリブレーション処理は、画像記録を指示するジョブを受信した際にその都度実行してもよく、前回実行時に生成された一次元補正用LUTをメモリに保存して使用してもよい。また、色ずれ補正用一次元LUTは、予め保持されている複数のテーブルから選択して設定する構成であってもよい。
【0067】
また、本実施形態においては、透明インクのパッチパターンの下地としてブラックインクを用いたが、有色インクであればブラックインクに限られない。このとき、透明インクのキャリブレーションを高精度に行うためには、下地層として記録される有色インク層の画像の濃度は高い方が好ましい。このとき、下地層を測定した際の光学濃度であるOD(Optical Density)値が、0.5以上であることが好ましく、OD値が1.0以上であることがより好ましい。また、透明インクのパッチパターンの測定に用いるLEDは、下地層にブラックインク、すなわち無彩色色材のインクを用いる場合には、どの色のLEDを用いてもよい。しかし、下地層にC、M、Yのような有色インクを用いる場合には、有色インクの色に対し、色相環で90度以上離れた色を有するカラーLEDを用いて測定することが好ましい。
【0068】
(第2の実施形態)
前述の第1の実施形態では、乱反射センサー311を用いて、有色インクのみで形成されたパッチパターンを読み取った濃度値から、有色インクの色ずれ補正一次元LUTを生成する例について説明した。本実施形態では、有色インクと透明インクが付与されて形成されたパッチパターンを読み取った濃度値から、有色インクの色ずれ補正一次元LUTを生成する例について説明する。
【0069】
図12(a)~(c)は、本実施形態において色ずれ補正LUTを生成するためのキャリブレーション処理で記録されるパッチパターンを示す図である。図12(a)は、有色インクとしてブラックインクを用い、階調値を変えて記録されたパッチであり、ブラックインクの濃度特性の取得を目的とするものである。図12(b)は、ブラックインクと透明インクを用い、ブラックインクの階調値は一定のまま、透明インクの階調値を変えて記録されたパッチであり、透明インクの光沢度特性の取得を目的とするものである。図12(c)は、有色インク(C、M、Y、Kの4色)の各色の階調値を変えて記録されたパッチであり、各有色インクの濃度特性の取得を目的とするものである。各パッチに記載されている英字について、Pdは、ブラックインクの吐出口列を用いて記録されたパッチであることを示し、Peは、透明インクの吐出口列5eを用いて記録されたパッチであることを示す。また、Pfは、シアンインクの吐出口列5aと透明インクの吐出口列5eを用いて記録されたパッチであることを示す。同様に、Pgは、マゼンタインクの吐出口列5bと透明インクの吐出口列5e、Phは、イエローインクの吐出口列5cと透明インクの吐出口列5e、Piは、ブラックインクの吐出口列5dと透明インクの吐出口列5eを用いて記録されたパッチであることを示す。また、各パッチに記載されている1~5までの数字は、記録するパッチの濃度階調をランク付けしたものを示している。ただし、Peパッチの階調値は、透明インク(S)に対する階調値であり、ブラックインクの階調値は一定である。同様に、Pf、Pg、Ph、Piパッチの階調値は、有色インクの各色(C,M、Y、K)に対する階調値であり、透明インクの階調値は一定である。
【0070】
本実施形態においても、透明インク(S)と有色インク(C、M、Y、Kのいずれか1色)の両方を用いて記録されるパッチは、有色インクの上に透明インクが付与されることで形成される。
【0071】
本実施形態では、まず、有色インクのうち1色(ここではブラックインク)を用いてパッチパターンを記録し、キャリブレーションを行い、ブラックインクの吐出特性に対する補正LUTを生成する(図12(a))。ここでは、乱反射センサー311を用いて濃度を測定する。そして、生成されたブラックインクの補正LUTを適用した上で、ブラックインクを下地層として用い、透明インクのキャリブレーションを行い、透明インクの吐出特性に対する補正LUTを生成する(図12(b))。ここでは、正反射センサー310を用いて光沢度を測定する。そして、生成された透明インクの補正LUTを適用した上で、全ての有色インク(C、M、Y、K)のキャリブレーションを行い、有色インク各色の吐出特性に対する補正LUTを生成する(図12(c))。ここでは、乱反射センサー311を用いて濃度を測定する。尚、キャリブレーションを実行する処理の流れや一次元補正LUTの生成方法については、第1の実施形態と同様であるため、ここでは詳細の記載は省略する。
【0072】
以上のように、本実施形態においては、第1の実施形態と同様に、下地層として用いる有色インクのキャリブレーションを行った後に、透明インクのキャリブレーションを行う。そして、第1の実施形態と異なる点は、透明インクのキャリブレーションが終わった後に。有色インクのキャリブレーションを行う。このとき、有色インクのキャリブレーションにおいて、有色インク層の上に透明インク層が形成されたパッチが用いられる。これにより、有色インクの上に透明インクが付与された実画記録に近い状態で有色インクのキャリブレーションを行うことができる。
【0073】
尚、本実施形態では、下地層としてブラックインクを用いたため、透明インクのキャリブレーションの前にブラックインクのキャリブレーションを行った。そして、透明インクのキャリブレーション後に、透明インクが付与されたパッチで有色インク全色のキャリブレーションを行った。下地層としてブラックインク以外の色を用いる場合には、その色のインクのキャリブレーションを、透明インクのキャリブレーションよりも先に行うことが好ましい。透明インクのキャリブレーションの後に、透明インクを付与したパッチで有色インク全色のキャリブレーションを行うことが好ましいが、透明インクの下地として用いたインクについては、先にキャリブレーションを行っているため、必ずしも行わなくてもよい。
【0074】
(第3の実施形態)
前述の第1及び第2の実施形態では、乱反射センサー311を用いて、パッチパターンの濃度値から有色インクの色ずれ補正用一次元LUTを生成する例を示した。本実施形態では、正反射センサー310を用いて、パッチパターンを測定した光沢度から有色インクの色ずれ補正用一次元LUTを生成する例について説明する。
【0075】
図13(a)~(c)は、本実施形態において色ずれ補正LUTを生成するためのキャリブレーション処理で記録されるパッチパターンを示す図である。図13(a)は、有色インク(C、M、Y、Kの4色)の各色の階調値を変えて記録されたパッチであり、各有色インクの濃度特性の取得を目的とするものである。図13(b)は、ブラックインクと透明インクを用い、ブラックインクの階調値は一定のまま、透明インクの階調値を変えて記録されたパッチであり、透明インクの光沢度特性の取得を目的とするものである。図13(c)は、有色インク(C、M、Y、Kの4色)の各色の階調値を変えて記録されたパッチであり、各パッチの光沢度特性の取得を目的とするものである。各パッチに記載されている英字について、Pa~Pdは、C、M、Y、Kの有色インクの吐出口列5a~5dを用いて記録されたパッチであることを示し、Peは、透明インクの吐出口列5eを用いて記録されたパッチであることを示す。また、Pfは、シアンインクの吐出口列5aと透明インクの吐出口列5eを用いて記録されたパッチであることを示す。同様に、Pgは、マゼンタインクの吐出口列5bと透明インクの吐出口列5e、Phは、イエローインクの吐出口列5cと透明インクの吐出口列5e、Piは、ブラックインクの吐出口列5dと透明インクの吐出口列5eを用いて記録されたパッチであることを示す。また、各パッチに記載されている1~5までの数字は、記録するパッチの濃度階調をランク付けしたものを示している。ただし、Peパッチの階調値は、透明インク(S)に対する階調値であり、ブラックインクの階調値は一定である。同様に、Pf、Pg、Ph、Piパッチの階調値は、有色インクの各色(C,M、Y、K)に対する階調値であり、透明インクの階調値は一定である。
【0076】
本実施形態においても、透明インク(S)と有色インク(C、M、Y、Kのいずれか1色)の両方を用いて記録されるパッチは、有色インクの上に透明インクが付与されることで形成される。
【0077】
本実施形態では、まず、有色インク全色(C、M、Y、Kの4色)を用いてパッチパターンを記録し、キャリブレーションを行い、有色インク各色の吐出特性に対する補正LUTを生成する(図13(a))。ここでは、乱反射センサー311を用いて濃度を測定する。そして、生成された有色インクの補正LUTを適用した上で、ブラックインクを下地層として用い、透明インクのキャリブレーションを行い、透明インクの吐出特性に対する補正LUTを生成する(図13(b))。ここでは、正反射センサー310を用いて光沢度を測定する。そして、生成された透明インクの補正LUTを適用した上で、有色インク全色(C、M、Y、K)のキャリブレーションを再度行い、有色インク各色の吐出特性に対する補正LUTを生成する(図13(c))。ここでは、正反射センサー310を用いて光沢度を測定する。尚、キャリブレーションを実行する処理の流れや一次元補正LUTの生成方法については、第1の実施形態と同様であるため、ここでは詳細の記載は省略する。
【0078】
以上のように、本実施形態においては、有色インクのキャリブレーションを行う際に、有色インク層の上に透明インクを付与して透明インク層を形成したパッチを記録し、その光沢度を測定する。そして、測定した光沢度に基づいて、色ずれ補正一次元LUTを生成する。このような構成により、正反射光の測定結果に基づいて光沢度から補正LUTを生成することが可能となる。
【0079】
(第4の実施形態)
前述の第1~第3の実施形態は、色ずれ補正用一次元LUTを用いて透明インクの色ずれ補正処理を実行する例を示した。本実施形態では、量子化後の有色インクのデータから間引きマスクを用いて透明インクを付与するためのデータを生成する方法について説明する。
【0080】
図14は、本実施形態の画像処理構成を示すブロック図である。第1の実施形態の図5で示した画像処理構成と異なる点は、ステップS402における色変換処理によって出力されるデータがC、M,Y、Kの多値データであり、透明インク(S)の多値データは生成されない点である。そして、ステップS405における量子化処理後のC、M、Y、Kそれぞれ2値のデータに基づいて、透明インク用のデータが生成される。透明インクの2値データは、例えば、C、M、Y、Kの2値データの論理和を生成し、透明インクの付与量を考慮して、生成された論理和を間引くことにより生成される。このとき、透明インクの吐出特性については考慮されていない。その後、ステップS407において、間引きマスクを用い、透明インクの吐出特性に応じて透明インクの2値データを間引くための透明インクの色ずれ補正間引き処理を行う。尚、透明インクの2値データを間引くための間引きマスクは、前述の実施形態において透明インクのキャリブレーション処理において取得される透明インクの吐出口列の光沢度特性に基づいて設定される。
【0081】
図15(a)及び(b)は、ステップS407の透明インクの色ずれ補正間引き処理に用いる間引きマスクを生成する処理を説明するための図である。図15(a)は、吐出口列5aで記録するパッチPa1~Pa5からなるPaパッチパターンを読み取って得られた濃度値とターゲット値を示している。図15(b)は、吐出口列5aに対する色ずれ補正用一次元LUTを示す。T1は、図15(a)の測定結果に基づいて生成した5aノズルに対する色ずれ補正用1次元LUTを示し、T2は、T1の近似曲線を求めることにより生成される補正率である。生成される間引きマスクは、ベタ画像を間引くことで補正率T2になるようなマスク形状となる。このような間引きマスクを用いて、有色インクのデータを間引くことにより、透明インクを付与するための付与データを生成する。これにより、量子化処理後の有色インクの多値データから透明インクの付与データを生成することが可能となる。
【0082】
尚、上述の実施形態では、付与量を補正するための補正情報として一次元補正LUTを生成したが、本発明はルックアップテーブルの形態に限られず、関数等で保持する形態であってもよい。また、上述の実施形態では、記録媒体に付与する記録材としてインクを用いたが、これに限られない。有色記録材として有色インクの他に有色トナー等を用いてもよく、透明記録材として透明インクの他に透明トナー等を用いてもよい。
【0083】
また、透明記録材として、有色インク中に含有される色材と反応する反応液を用いてもよい。反応液は、色材と反応して凝集させることで、有色インクの発色を向上させる効果を有する。反応液を付与する際には、有色インクよりも先に付与する、もしくは有色インクと同時に付与することが好ましい。例えば、反応液によって形成された反応液層の上に、有色インクを付与して有色インク層を形成することによりパッチを形成する。もしくは、反応液と有色インクとを同じ走査で付与することにより、反応液と有色インクが混在した層を形成する。透明インクを用いる場合と同様に、反応液の付与量をパッチ毎に異ならせた複数のパッチを形成し、光沢度を測定する。これにより、反応液の吐出量を推定し、反応液の補正テーブルを生成することが可能である。
【0084】
また、上述の実施形態では、複数のパッチからなるパッチパターンを記録したが、1つ以上のパッチを記録する構成であればこれに限られない。また、ターゲット値を用いて補正値を決定する構成に限られず、透明インクの付与量が異なる複数パッチの測定結果に基づいて吐出量を推定し、補正値を決定する構成であってもよい。透明インクに含まれる材料によっては、付与量が増えれば増えるほど記録画像の光沢度が高くなるわけではなく、透明インクが記録媒体をある程度被覆すると、透明インクをそれ以上付与しても光沢度は高くならないことがある。このような特性を利用し、付与量が異なる複数パッチの光沢度の測定結果に基づいて吐出量を推定することも可能である。
【符号の説明】
【0085】
5 記録ヘッド
102 多目的センサー
100 ホスト装置
200 記録装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15