(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】光造形用樹脂組成物、及び物品とその製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/165 20170101AFI20240930BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240930BHJP
C08K 9/02 20060101ALI20240930BHJP
C08K 3/38 20060101ALI20240930BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20240930BHJP
C08L 33/08 20060101ALI20240930BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20240930BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20240930BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240930BHJP
B29C 64/264 20170101ALI20240930BHJP
【FI】
B29C64/165
C08L101/00
C08K9/02
C08K3/38
C08L63/00 Z
C08L33/08
B33Y70/00
B33Y80/00
B33Y10/00
B29C64/264
(21)【出願番号】P 2020028012
(22)【出願日】2020-02-21
【審査請求日】2023-02-15
(31)【優先権主張番号】P 2019078623
(32)【優先日】2019-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110870
【氏名又は名称】山口 芳広
(74)【代理人】
【識別番号】100096828
【氏名又は名称】渡辺 敬介
(72)【発明者】
【氏名】冨塚 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 輝伸
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-118413(JP,A)
【文献】特表2016-503084(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0067374(US,A1)
【文献】特開2018-176504(JP,A)
【文献】特開2018-002916(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00 - 64/40
C08L 1/00 - 101/14
C08K 3/00 - 13/08
CAplus/REGISTRY(STN)
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光硬化性樹脂と充填材とを含有する光造形用樹脂組成物であって、
前記充填材は、高分子材料からなる母粒子と、前記母粒子の表面を覆う金属層と、を有する、金属被覆粒子であり、
前記金属被覆粒子の密度が1.5g/cm
3乃至4.0g/cm
3
、体積平均粒子径が0.5μm乃至30μm、含有量が4質量%乃至65質量%であることを特徴とする光造形用樹脂組成物。
【請求項2】
さらに窒化ホウ素を含み、前記金属層が銅からなることを特徴とする請求項1に記載の光造形用樹脂組成物。
【請求項3】
前記金属被覆粒子と前記窒化ホウ素との比率が、質量比で金属被覆粒子:窒化ホウ素が3:97乃至66:34であることを特徴とする請求項2に記載の光造形用樹脂組成物。
【請求項4】
前記金属層が金、銀、銅のいずれかを含むことを特徴とする請求項1に記載の光造形用樹脂組成物。
【請求項5】
前記光硬化性樹脂が少なくともエポキシ系化合物とアクリル系化合物とを含む請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の光造形用樹脂組成物。
【請求項6】
前記高分子材料が、(メタ)アクリル樹脂、ポリアミド、ポリイミド、メラミン樹脂、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシドの群から選択されることを特徴とする請求項1乃至
5のいずれか一項に記載の光造形用樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1乃至
6のいずれか一項に記載の光造形用樹脂組成物の硬化物であることを特徴とする物品。
【請求項8】
光造形用樹脂組成物の層に活性エネルギー線を選択的に照射して硬化層を形成する工程と、
前記硬化層に接して未硬化の前記光造形用樹脂組成物の層を供給する工程と、
未硬化の前記光造形用樹脂組成物の層に前記活性エネルギー線を選択的に照射して前記硬化層と連続した新たな硬化層を形成する工程と、を含み、
前記光造形用樹脂組成物が請求項1乃至
6のいずれか一項に記載の光造形用樹脂組成物であり、
前記活性エネルギー線を、製造する物品の形状データに基づいて照射することを特徴とする物品の製造方法。
【請求項9】
前記活性エネルギー線が300nm乃至400nmの波長を有する紫外線であることを特徴とする請求項
8に記載の物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性に優れる硬化物を提供することが可能な光造形用樹脂組成物に関し、特に、充填材を含み、該充填材の沈降を抑制した、光造形用樹脂組成物、及び該光造形用樹脂組成物を硬化させてなる物品とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、目的の立体造形物を良好な精度で製造し得ることから、3D(三次元)データに基づき光硬化性材料を立体的に造形する光学的立体造形法が、切削加工や成形加工に変わる新たな手法として、製造現場などで広く採用されるようになっている。さらに、その造形精度の高さや制作時間、コストの面から射出成形用金型を光学的立体造形法で製造した樹脂型で代替し、試作用途などに用いる試みもなされてきた。
光学的立体造形法としては、引き下げ式及び引き上げ式がある。引き下げ式は、光硬化性材料の液面に紫外光を選択的に照射し、所望のパターンに硬化させた後に、該硬化層を材料内に引き下げてその上に一層分の光硬化性材料を供給し、前記と同様に硬化する工程を繰り返して立体造形物を得る。引き上げ式は、光硬化性材料を入れた容器の底面側から紫外光を照射して硬化させ、硬化層を引き上げて底面から剥がし、硬化層と底面の間に一層分の光硬化性材料を流し込み、前記と同様に硬化することを繰り返し、積層する。いずれの光学的立体造形法も、複雑な形状の立体造形物を比較的短時間で容易に得ることができる。
光硬化性材料としては、ラジカル重合性有機化合物やカチオン重合性有機化合物、又はその両方を含む光硬化性材料が用いられている。これらの光硬化性材料は、前記のように次の層を硬化させるために速やかに供給するために低粘度であることが望ましい。また、造形物の用途に応じて力学的特性、耐久性、耐湿性、熱特性などに優れることが求められるため、求める特性に応じた充填材を添加した組成物が使用される。
例えば、射出成形用金型等を光学的立体造形法で製造した樹脂型で代替する場合、型内から外部に熱を逃がす必要があるため、樹脂型は高い熱伝導率特性を有することが望まれる。特許文献1には、アクリル化合物にホウ酸アルミニウムとガラスビーズを添加した光硬化樹脂から構成される樹脂型を用いることで、樹脂型の熱伝導率特性を向上させることが記載されている。また、特許文献2には、エポキシ化合物に金属粉末を添加した硬化性エポキシ樹脂組成物を用いることにより、熱伝導率特性に優れた硬化成形物が得られることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-205157号公報
【文献】特開平10-306204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1で示されるガラスビーズを添加した光硬化樹脂では、ガラスビーズの熱伝導率が低く、熱伝導率を求められる用途での使用が困難であった。また、特許文献2のように充填材として金属粉末を組成物に添加した場合、造形中に充填材が沈降するため、ハンドリング性が悪く、さらには硬化物中の充填材に濃度勾配ができ、積層方向の熱伝導率が得られないという課題があった。
本発明は、上記課題に鑑み、造形中の充填材の沈降を抑え、ハンドリング性が良好で、硬化物の熱伝導性が高い光造形用樹脂組成物、及びその硬化物である立体造形物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第一の態様は、少なくとも光硬化性樹脂と充填材とを含有する光造形用樹脂組成物であって、
前記充填材は、高分子材料からなる母粒子と、前記母粒子の表面を覆う金属層と、を有する、金属被覆粒子であり、
前記金属被覆粒子の密度が1.5g/cm3乃至4.0g/cm3
、体積平均粒子径が0.5μm乃至30μm、含有量が4質量%乃至65質量%であることを特徴とする光造形用樹脂組成物である。
本発明の第二の態様は、前記光造形用樹脂組成物の硬化物であることを特徴とする物品である。
本発明の第三の態様は、光造形用樹脂組成物の層に活性エネルギー線を選択的に照射して硬化層を形成する工程と、
前記硬化層に接して未硬化の前記光造形用樹脂組成物の層を供給する工程と、
未硬化の前記光造形用樹脂組成物の層に前記活性エネルギー線を選択的に照射して前記硬化層と連続した新たな硬化層を形成する工程と、を含み、
前記光造形用樹脂組成物が前記第一の態様の光造形用樹脂組成物であり、
前記活性エネルギー線を、製造する物品の形状データに基づいて照射することを特徴とする物品の製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の光造形用樹脂組成物は、充填材である金属で被覆された樹脂粒子(金属被覆粒子)を含むため、充填材が金属粒子である場合に比較して密度が小さく、造形中に充填材が沈降しにくく、ハンドリング性が良い。また、本発明の光造形用樹脂組成物の硬化物においては、充填材である金属被覆粒子の金属層によって、良好な熱伝導性が得られる。よって、本発明の光造形用樹脂組成物を使用すれば、充填材の沈降を防止するための撹拌作業を行うことなく、積層方向や面方向に関わらず等方的に熱伝導性の高い物品を得ることができ、作業効率が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の光造形用樹脂組成物は、光硬化性樹脂と充填材とを含有する光造形用樹脂組成物であって、該充填材は、高分子材料からなる母粒子と、前記母粒子の表面を覆う金属層と、を有する、金属被覆粒子であることを特徴とする光造形用樹脂組成物である。また、本発明の物品は、該光造形用樹脂組成物の硬化物であることを特徴とする。
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0008】
〔充填材〕
本発明の充填材は、高分子材料を母粒子とし、該母粒子の表面に金属層を有する金属被覆粒子であることを特徴とする。
母粒子を構成する高分子材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、スチレンアクリロニトリル樹脂、ABS樹脂、(メタ)アクリル樹脂、PET樹脂、PVA樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、PBT樹脂、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルフォン、ポリアミドイミド、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、セルロース、又はこれらの群より選ばれる樹脂のポリマーアロイなどが挙げられるが、密度や被覆容易性などの点から、(メタ)アクリル樹脂、ポリアミド、ポリイミド、メラミン樹脂、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシドなどが好適に用いられる。
【0009】
金属層は、母粒子を被覆可能な金属の層であればよいが、熱伝導の観点から金、銀、銅等を含むことが好ましい。また、金属層は多層でもよくニッケル等の金属で母粒子を被覆した後に金、銀、銅等の他の金属をさらに被覆してもよい。尚、本発明では、同一の金属層に複数種の金属を含む金属層、又はある単一の金属からなる層に他の単一の金属からなる層を被覆してなる金属層を合わせて、ある金属を含む金属層とする。
金属被覆粒子は、光造形用樹脂組成物中における沈降性と分散性の観点から、密度が1.5g/cm3乃至4.0g/cm3である。
【0010】
金属被覆粒子の体積平均粒子径は、0.5μm乃至30μmが好ましく、2μm乃至20μmであることが特に好ましい。金属被覆粒子の体積平均粒子径が2μmより小さいと、母粒子の体積に対する金属の体積が増えるため、金属被覆粒子の密度が大きくなって分散性が悪化する傾向がある。また、金属被覆粒子の体積平均粒子径が20μmより大きくなると、光造形時に膜厚に対して相対的に大きい金属被覆粒子が表面に露出しやすくなるため、造形時に積層ピッチを狭くできないことから、造形精度が低下する傾向にある。尚、金属被覆粒子の体積平均粒子径の測定は、レーザー回折式の粒度分布測定装置を用いて測定することができる。
【0011】
金属被覆粒子の含有量は、樹脂組成物の全質量の4質量%乃至65質量%が好ましく、4質量%乃至60質量%がより好ましい。金属被覆粒子の含有量が少ないと熱伝導性が低下し、多いと硬化物の強度が低下するだけでなく、光造形用樹脂組成物の粘度上昇や流動性低下を招いて造形が困難になる。
【0012】
金属被覆粒子は1種類を単独で用いてもよいし、粒径や材料の異なる2種以上を組み合わせて用いてもよい。金属層の厚みの平均(平均めっき厚み)は50nm乃至500nmが好ましく、金属被覆粒子の被覆不良部位の増加や粒子の密度が増えることによる分散性の低下を考慮すると80nm乃至200nmがより好適である。金属層の厚みの平均は、金属層の密度と、N個(N≧100)の金属被覆粒子の質量と金属層を除去したN個の粒子の質量との差から求めた金属層の質量と、粒子の体積平均粒子径から算出した粒子の表面積と、から算出することができる。
【0013】
〔添加剤〕
本発明の光造形用樹脂組成物には、金属被覆粒子以外に窒化ホウ素の粉末を添加してもよい。特に、金属層が銅である銅被覆粒子と窒化ホウ素とを併用することで、硬化物の熱伝導率が飛躍的に向上する。硬化物の熱伝導率がこのように向上する理由については明らかではないが、銅被覆粒子の表面と窒化ホウ素表面で何等かの相互作用が生じ、熱伝導が容易になったためと推察される。
【0014】
窒化ホウ素の含有量は、質量比で、金属被覆粒子:窒化ホウ素が3:97乃至66:34となる量が熱伝導率向上には特に好ましい。光造形用樹脂組成物の金属被覆粒子と窒化ホウ素の質量比を分析する方法としては、光造形用樹脂組成物から遠心分離やフィルター等により樹脂成分とフィラー成分を分離した後、エネルギー分散型X線分析等により成分比を分析して行う方法が挙げられる。造形物から金属被覆粒子と窒化ホウ素の質量比を分析する方法としては、造形物の加熱処理後に得られる金属被覆粒子やホウ素酸化物等の残渣の成分分析を行う方法が挙げられる。ただし、光造形用樹脂組成物や造形物に含まれる金属被覆粒子と窒化ホウ素の質量比が得られれば、これらの方法に限定されるものではない。
【0015】
窒化ホウ素の形状は特に制限はないが、窒化ホウ素の性質上板状粒子であると熱伝導率が高く好適である。平均粒子サイズは特に制限はないが、光造形用樹脂組成物の粘度や入手しやすさを考慮すると500nm乃至50.0μmが好ましい。また光造形用樹脂組成物の分散安定性を考慮すると500nm乃至20.0μmがより好ましい。
【0016】
〔光硬化性樹脂〕
本発明に用いられる光硬化性樹脂は、活性エネルギー線(紫外線、電子線、X線、放射線、高周波など)を照射して光造形用樹脂組成物を硬化させ得るものであればよい。具体的には、重合性のビニル系化合物やアクリル系化合物、エポキシ系化合物等種々の樹脂を選択することができる。また単官能性化合物や多官能性化合物のモノマーやオリゴマーが用いられる。これらの単官能性化合物、多官能性化合物は、特に限定されるものではない。例えば、以下に光硬化性樹脂の代表的なものを挙げる。
【0017】
ビニル系化合物としては、ビニルピロリドン、酢酸ビニル、スチレン、4-ビニルトルエン等が挙げられる。
アクリル系化合物としては、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、モルホリン(メタ)アクリレート、フェニルグリシジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、トリシクロデカン(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエンオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシメタクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、1-アダマンチルアクリレート、2-メチル-2-アダマンチルアクリレート、2-エチル-2-アダマンチルアクリレート、1-アダマンチルメタクリレート、シクロヘキサン-1,4-ジメタノールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサン-1,3-ジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド変性1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)ジアクリレート、アルキレンオキサイド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)ジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0018】
エポキシ系化合物としては、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールADジグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールZジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、トリシクロデカンジメタノールジグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-1-メチルシクロヘキシル-3,4-エポキシ-1-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-3-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-3-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-5-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-5-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサン-メタジオキサン、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルカルボキシレート、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ-2-エチルヘキシル、ε-カプロラクトン変性3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロパン、1,1-ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)エタン、アルファピネンオキサイド、カンファレンアルデヒド、リモネンモノオキサイド、リモネンジオキサイド、4-ビニルシクロヘキセンモノオキサイド、4-ビニルシクロヘキセンジオキサイド、3-ヒドロキシメチル-3-メチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-エチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-プロピルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-ノルマルブチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-プロピルオキセタン等が挙げられる。
【0019】
これらの重合性化合物は、単独で又は2種以上の組み合わせで使用することが可能であるが、アクリル系化合物とエポキシ系化合物を組み合わせて使用することがより好ましい。アクリル系化合物は反応速度が速く硬化物の機械強度が高く、一方でエポキシ系化合物は粘度が小さく、また重合物の収縮歪みが小さいことから、両者を組み合わせることで光造形用樹脂組成物の粘度を調整し、機械強度があり造形精度の高い硬化物を重合により素早く得ることができる。
【0020】
〔重合開始剤〕
本発明の光造形用樹脂組成物には、重合開始剤が含まれていてもよい。光照射によりラジカル種を発生する重合開始剤としては、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、4-フェニルベンゾフェノン、4-フェノキシベンゾフェノン、4,4’-ジフェニルベンゾフェノン、4,4’-ジフェノキシベンゾフェノン等が挙げられるがこれらに限定されない。
また、光照射によりカチオン種を発生する重合開始剤としては、ヨードニウム(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル]-ヘキサフルオロホスフェートが好適な重合開始剤として挙げられるがこれに限定されない。
【0021】
さらに、熱によりラジカル種を発生する重合開始剤としては、アゾビスイソブチルニトリル(AIBN)等のアゾ化合物、ベンゾイルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシピバレート、tert-ブチルパーオキシネオヘキサノエート、tert-ヘキシルパーオキシネオヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシネオデカノエート、tert-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシネオヘキサノエート、クミルパーオキシネオデカノエート等の過酸化物が挙げられるがこれらに限定されない。
【0022】
エポキシ化合物を添加する場合は、光造形用樹脂組成物に光酸発生剤や光塩基発生剤を添加してエポキシ、オキセタン化合物の重合反応を促進しても良い。光酸発生剤としては、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、テトラフルオロホウ酸トリフェニルフェナシルホスホニウム、ヘキサフルオロアンチモン酸トリフェニルスルホニウム、ビス-[4-(ジフェニルスルフォニオ)フェニル]スルフィドビスジヘキサフルオロアンチモネート、ビス-[4-(ジ4’-ヒドロキシエトキシフェニルスルフォニオ)フェニル]スルフィドビスジヘキサフルオロアンチモネート、ビス-[4-(ジフェニルスルフォニオ)フェニル]スルフィドビスジヘキサフルオロフォスフェート、テトラフルオロホウ酸ジフェニルヨードニウムなどを挙げることができるがこれらに限定されない。
【0023】
光造形用樹脂組成物に含有される重合開始剤は、単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、光造形用樹脂組成物に対する重合開始剤の添加比率は、光照射量、照射光の波長、付加的な加熱温度に応じて適宜選択してもよく、得られる重合体の目標とする平均分子量に応じて調整してもよい。
【0024】
〔任意成分〕
本発明の光造形用樹脂組成物は、その粘度や含まれる充填材の沈降性、硬化物の機械特性や熱伝導率を著しく劣化させない範囲で、重合禁止剤、光増感剤、耐光安定剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、離型剤、防カビ剤、分散剤、表面改質剤、消泡剤、レべリング剤、増粘剤、難燃剤、染料、顔料、反応性希釈剤、フィラー等の任意成分を含有してもよい。任意成分の添加量は各任意成分によって異なるが、任意成分の総量は光造形用樹脂組成物の全量に対して0.01質量%乃至10.0質量%であることが好ましい。任意成分の効果を十分に発揮させさらに硬化物の機械特性や熱伝導率を著しく劣化させないためには、任意成分の総量が光造形用樹脂組成物の全量に対して0.03質量%乃至7.0質量%であることがより好ましい。
【0025】
〔調製方法〕
本発明の光造形用樹脂組成物の調製方法は特に限定されず、光硬化性樹脂、充填材、その他の成分が均一に混合した組成物が得られる方法であれば、いずれの方法で調製してもよい。
【0026】
〔造形方法〕
本発明の光造形用樹脂組成物を用いて光学的立体造形を行うには、従来既知の光学的立体造形法及び装置のいずれをも使用できる。例えば、造形目的である立体物の形状データに基づいて、所望のパターンを有する硬化層が得られるように活性エネルギー線を光造形用樹脂組成物の層に選択的に照射して硬化層を形成し、次いでこの硬化層に接して未硬化の光造形用樹脂組成物の層を供給し、同様に活性エネルギー線を照射して前記の硬化層と連続した新たな硬化層を形成する積層操作を繰り返すことによって最終的に目的とする物品の立体造形物を得る方法が挙げられる。
【0027】
前記活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、X線、放射線、高周波などを挙げることができる。中でも、300nm乃至400nmの波長を有する紫外線が経済的な観点から好ましく用いられる。その際の光源としては、紫外線レーザー、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、紫外線LED(発光ダイオード)、紫外線蛍光灯などを使用することができる。紫外線レーザーとしては、例えば半導体励起固体レーザー、Arレーザー、He-Cdレーザーなどである。
【0028】
本発明の光造形用樹脂組成物を用いて得られる立体造形物は、後硬化処理や熱処理を行わずにそのまま使用してもよいが、紫外線を照射して後硬化処理を行う、及び/又は熱処理を施してから用いることが好ましい。
【0029】
本発明の光造形用樹脂組成物は、光学的立体造形分野に幅広く用いることができる。その代表的な応用分野としては、設計の途中で外観デザインを検証するための形状確認モデル、部品の機能性をチェックするための機能試験モデル、鋳型を制作するためのマスターモデル、金型を制作するためのマスターモデル、試作金型用の直接型などを挙げることできる。特に、本発明の光造形用樹脂組成物は、精密な部品などの形状確認モデルや機能試験モデルの作製に威力を発揮する。より具体的には、例えば、精密部品、電気・電子部品、家具、建築構造物、自動車用部品、各種容器類、鋳物などの物品のモデル、樹脂型、加工用などの用途に有効に用いることができる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、以下の記載における「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0031】
(実施例1乃至15)
3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボン酸-3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(和光純薬工業株式会社製)57.8部、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(Sigma-Aldrich社製)18.7部、A-TMPT(新中村化学工業株式会社製)14.9部、IRGACURE184(BASF社製)0.9部、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(東京化成工業株式会社製)0.2部、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロリン酸塩混合物50%プロピレンカーボネート溶液(Sigma-Aldrich製)7.5部を密閉容器に秤量し、ミックスローター(アズワン製VMRC-5)で2時間混合して光硬化性樹脂を調製した。
【0032】
光硬化性樹脂と以下の金属被覆粒子A乃至E及び窒化ホウ素を秤量し、表1に記載の割合で混合し、光造形用樹脂組成物を得た。得られた光造形用樹脂組成物を下記の充填材沈降性評価方法、熱伝導性評価方法に従って評価した。評価結果を表1に示す。
A:銅めっき粒子(母粒子:アクリル樹脂)、体積平均粒子径20μm、密度1.8g/cm3(平均めっき厚み:100nm)
B:銅めっき粒子(母粒子:アクリル樹脂)、体積平均粒子径5μm、密度2.6g/cm3(平均めっき厚み:100nm)
C:銀コート粉(母粒子:ポリマー粒子)、体積平均粒子径10μm、密度2.0g/cm3、三菱マテリアル電子化成株式会社製
D:銀コート粉(母粒子:ポリマー粒子)、体積平均粒子径10μm、密度2.7g/cm3、三菱マテリアル電子化成株式会社製
E:銀コート粉(母粒子:ポリマー粒子)、体積平均粒子径10μm、密度3.9g/cm3、三菱マテリアル電子化成株式会社製
窒化ホウ素:型式SP-2、比表面積34m2/g、デンカ株式会社製
【0033】
(比較例1、2)
金属被覆粒子をそれぞれ以下のシリカ、ニッケルコア銀めっき粒子に変更した以外は実施例1乃至15と同様にして、表1に記載の割合で混合し、光造形用樹脂組成物を得た。得られた光造形用樹脂組成物を下記の充填材沈降性評価方法、熱伝導性評価方法に従って評価を行った。評価結果を表1に示す。
シリカ:商品名「SB-300」、体積平均粒子径7μm、密度2.2g/cm3、三好化成株式会社製
ニッケルコア銀めっき粒子:商品名「TFM-NO5P」、体積平均粒子径7μm、密度9.1g/cm3、東洋アルミニウム株式会社製
【0034】
(比較例3)
実施例で調製した光硬化性樹脂及び下記金属被覆粒子Fを秤量し、表1に記載の割合で混合し、光造形用樹脂組成物を得た。得られた光造形用樹脂組成物を下記の充填材沈降性評価方法、熱伝導性評価方法に従って評価した。評価結果を表1に示す。
F:銅めっき粒子(母粒子:アクリル樹脂)、体積平均粒子径20μm、密度4.1g/cm3(平均めっき厚み:1000nm)、帝国イオン株式会社製
【0035】
(比較例4)
実施例で調製した光硬化性樹脂及び下記金属被覆粒子Gを秤量し、表1に記載の割合で混合し、光造形用樹脂組成物を得た。得られた光造形用樹脂組成物を下記の充填材沈降性評価方法、熱伝導性評価方法に従って評価した。評価結果を表1に示す。
G:銅めっき粒子(母粒子:アクリル樹脂)、体積平均粒子径20μm、密度1.4g/cm3(平均めっき厚み:540nm)、帝国イオン株式会社製
【0036】
(1)沈降性評価方法
光造形用樹脂組成物を密閉容器に入れ室温にて静置し、24時間後、充填材の堆積が確認されなかったものを良、充填材の堆積が確認されたものを不良とした。
【0037】
(2)熱伝導率評価方法
離型シートを貼り付けた石英板に100μmのスペーサーを設置し、光造形用樹脂組成物を流し込んで、該離型シートを貼り付けた石英板で挟み込み固定した。365nm、10mWの紫外光を表面裏面各120秒ずつ照射した後、石英板から硬化物を離型しフィルムを得た。このフィルムをオーブンで50℃1時間、100℃1時間、180℃1時間加熱し、評価用サンプルを得た。
評価用サンプルを周期加熱法熱拡散率測定装置(商品名「FTC-1」、アドバンス理工株式会社製)で測定し得られた熱拡散率を換算し熱伝導率を求めた。
【0038】
(3)総合評価
総合評価は下記の基準でそれぞれ判定した。
A:沈降性評価が良、熱伝導率≧1.0W/mK
B:沈降性評価が良、0.5W/mK≦熱伝導率<1.0W/mK
C:沈降性評価が不良、及び/又は熱伝導率<0.5W/mK
【0039】
【0040】
表1に示す評価結果から明らかなように、実施例1乃至15の光造形用樹脂組成物は比較例1乃至4の光造形用樹脂組成物に比して、充填材の沈降性と硬化物の積層方向における熱伝導率とを両立するものであった。