(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】液体塗布装置
(51)【国際特許分類】
A47K 10/34 20060101AFI20240930BHJP
【FI】
A47K10/34 A
(21)【出願番号】P 2020049696
(22)【出願日】2020-03-19
【審査請求日】2023-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平田 記瑞
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-230076(JP,A)
【文献】実開昭63-140287(JP,U)
【文献】特表2002-522142(JP,A)
【文献】特表平6-501407(JP,A)
【文献】独国実用新案第29809976(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 10/34
A47K 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トイレットロールの周面に載り、基端縁部が回転軸により軸支持され、トイレットペーパーの使用に伴うロール径の減少に追従して、前記回転軸より先端部側が管芯側へと移動するカバー部であり、
トイレットペーパーに塗布する液体を収容する容器部と、
この容器部をトイレットペーパーホルダーに対して取り付けるための
前記回転軸である取り付け部と、
トイレットペーパーとの接触により容器部内の液体をトイレットペーパーに塗布する塗布部と、を有し、
塗布部が、先端部にあり、取り付け部を介してトイレットペーパーホルダーに取り付けた際に、トイレットロールの周面上方位置で、トイレットロールの幅方向に沿って延在するように構成され、
トイレットロールから引き出されるトイレットペーパーの上下方向の引き出し方向により、塗布部とトイレットペーパーとの接触と非接触とが選択され、かつ、トイレットペーパーを下方側に向かって引き出した際には、塗布部とトイレットペーパーとが接触しないように構成されている、
ことを特徴とする液体塗布装置。
【請求項2】
トイレットロールの周面に載り、基端縁部が回転軸により軸支持され、トイレットペーパーの使用に伴うロール径の減少に追従して、前記回転軸より先端部側が管芯側へと移動するカバー部に取り付けられる液体塗布装置であって、
トイレットペーパーに塗布する液体を収容する容器部と、
この容器部をトイレットペーパーホルダーに対して取り付けるための取り付け部と、
トイレットペーパーとの接触により容器部内の液体をトイレットペーパーに塗布する塗布部と、を有し、
前記取り付け部を介して前記カバー部の上に載せるように取り付けられ、取り付け部を介してトイレットペーパーホルダーに取り付けた際に
、塗布部が、前記カバー部の先端縁よりも前方位置かつトイレットロールの周面上方位置で、トイレットロールの幅方向に沿って延在するように構成され、
トイレットロールから引き出されるトイレットペーパーの上下方向の引き出し方向により、塗布部とトイレットペーパーとの接触と非接触とが選択され、かつ、トイレットペーパーを下方側に向かって引き出した際には、塗布部とトイレットペーパーとが接触しないように構成されている、
ことを特徴とする液体塗布装置。
【請求項3】
容器部内に、液体を吸収保持する液体保持部が配され、この液体保持部から塗布部に液体が供給される、
請求項1又は2記載の液体塗布装置。
【請求項4】
塗布部は、容器部の縁部に回動自在に取り付けられた塗布ローラである
、請求項1~3の何れか1項に記載の液体塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレットペーパーに対して液体を塗布する液体塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
主に鼻かみ用途に用いられるティシュペーパーにおいては、グリセリン等の保湿薬液を塗布して、紙質を柔らかくして肌への刺激を軽減したものが広く普及している。
【0003】
一方、排泄後の清拭に用いられることが多いトイレットペーパーにおいても、特に痔疾患患者等において、肌に対する刺激の軽減が求められており、ティシュペーパーと同様にグリセリン等の薬液を塗布したものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第3209079号
【文献】特表2002-512062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、グリセリン等の保湿薬液は、吸湿によって水分率を増加させることにより紙の柔らかさを高めるため、水洗式トイレに直接に廃棄可能な水解性が要求されるトイレットペーパーでは、吸湿によって強度が低下し、使用時に破れやすくなるという問題がある。
【0006】
また、枚葉の製品形態が主であるティシュペーパーと異なり、トイレットペーパーは、長尺帯状をロール状としたトイレットロールの製品形態が一般的あり、保湿薬液のみならず液体である薬液が保持されている状態が続くと、紙の伸びによる弛みによってロールの歪みが発生しやすく、生産が容易ではないという問題があった。
【0007】
さらに、トイレットロールは、化粧室等に設置されている、トイレットロールを回動自在に保持して、トイレットペーパーを引き出して使用できるようにした、トイレットロールホルダーやトイレットペーパーホルダーと称されるホルダー(以下、トイレットペーパーホルダーという)に保持して使用されるが、予め薬液が塗布されたトイレットロールでは、トイレットペーパーホルダーに保持した後に、薬液自体や吸湿によって経時的にロール形状や巻きが歪み、順次引き出して使用する際にスムーズに回転して引き出せなくなることがあった。
【0008】
このため、トイレットペーパーにおいては、薬液を塗布したものが知られるものの、トイレットロールの使用態様により、ティシュペーパーほど広く普及するに至っていない。
【0009】
また、必要に応じて薬液が塗布されているトイレットペーパーと、薬液が塗布されていないトイレットペーパーを選択的に使用したい場合があるが、例えば、複数が利用する化粧室等において、薬液が塗布されているトイレットペーパーが、トイレットペーパーホルダーに配されていると、薬液が塗布されていないトイレットペーパーを使用することができない。
【0010】
上記の特許文献2には、ポンプによってトイレットロールホルダーに配したトイレットロールの周面上に粘性の高い液体を塗布できるようにした装置が知られるが、塗布した液体がロール内部に浸透し、上記の予め薬液を塗布したトイレットペーパーと同様の問題が生ずるおそれがある。特に、液体の粘性が低い場合には顕著となる。
【0011】
そこで、本発明の主たる課題は、上記の生産性の問題、液体保持や吸湿等による強度低下やロール形状の歪みの発生、さらに、トイレットペーパーの選択の問題を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決した第一の手段は、
トイレットペーパーに塗布する液体を収容する容器部と、
この容器部をトイレットペーパーホルダーに対して取り付けるための取り付け部と、
トイレットペーパーとの接触により容器部内の液体をトイレットペーパーに塗布する塗布部と、を有し、
取り付け部を介してトイレットペーパーホルダーに取り付けた際に、塗布部がトイレットロールの周面上方位置で、トイレットロールの幅方向に沿って延在するように構成され、
トイレットロールから引き出されるトイレットペーパーの上下方向の引き出し方向により、塗布部とトイレットペーパーとの接触と非接触とが選択される、
ことを特徴とする液体塗布装置である。
【0013】
第二の手段は、
容器部内に、液体を吸収保持する液体保持部が配され、この液体保持部から塗布部に液体が供給される、上記第一の手段に係る液体塗布装置である。
【0014】
第三の手段は、
塗布部は、容器部の縁部に回動自在に取り付けられた塗布ローラである、上記第一又は第二の手段に係る液体塗布装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、薬液が塗布されたトイレットペーパーを生産する際の問題点が解決され、また、吸湿による強度低下やロール形状の歪みの発生、さらに、トイレットペーパーの選択の問題が解決される液体塗布装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る液体塗布装置を取り付けた状態を示す側面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る液体塗布装置の正面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る液体塗布装置の背面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る液体塗布装置の左側面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る液体塗布装置のV-V断面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る液体塗布装置の内部の構造を説明するための図であり、正面部から内部を見た図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る液体塗布装置の使用状態を示す側面図である。
【
図8】本発明の他の実施形態に係る液体塗布装置を取り付けた状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次いで、図面を参照しながら本発明の実施形態を詳述する。なお、本発明はこの実施形態に限定されるわけではない。
【0018】
〔第一実施形態〕
本実施形態の液体塗布装置1は、トイレットペーパーホルダー3に取り付けて、トイレットロールホルダー3に回動自在に保持したトイレットロール2から引き出されるトイレットペーパー20に対して連続的かつ選択的に液体を塗布するものである。
【0019】
本実施形態に係る液体塗布装置は、既設又は既存のトイレットペーパーホルダー3に対して後付けで取り付けることができる。もちろん、予め取り付けた状態とすることもできる。
【0020】
本実施形態は、
図1に示すトイレットペーパーホルダー3に対して取り付けるものを例として説明する。このトイレットペーパーホルダー3は、トイレットロール2の管芯21内に挿入される軸部31と、トイレットロール2の周面22に載るようにして覆う薄板状のカバー部30とを有し、このカバー部30の基端縁部が回転軸32により軸支持され、トイレットペーパー20の使用に伴うロール径の減少に追従して、カバー部30の前記軸32より先端部側が周面22に載ったまま管芯21側へと移動するように構成されている。
【0021】
この構造のトイレットペーパーホルダー3は、トイレットロール2からトイレットペーパー20を引き出した際に、カバー部30が回転するトイレットロール2の周面22に摺接し、トイレットロール2の過回転が防止され、トイレットペーパー20のスムーズな引き出しを実現するとともに、適宜の長さに引き出したトイレットペーパー20をカバー部30の先端縁33に押し当てることでトイレットペーパー20の切断が容易になされるようになっており、広く普及している。ただし、本実施形態に係る液体塗布装置1を取り付けるトイレットペーパーホルダー3の形状及び構成は、必ずしも限定されるものではなく、本発明の構成の範囲で適宜の形状及び構造のものでよい。
【0022】
本実施形態に係る液体塗布装置1は、容器部10と、取り付け部11と、塗布部12とを有している。図示の容器部10は、液体塗布装置1の外郭を構成し、エンジニアリングプラスチック等の樹脂材、金属、陶器等のセラミック材などの液体が滲出しない素材及び形状であればよい。具体的な素材は、内部に保持する液体による浸食等を考慮して適宜に選択することができる。本実施形態に係る液体塗布装置1における容器部10は、正面部10A、底面部10B、前面部10C、後面部10D及び側面部10Eで構成される内部空洞の薄箱型形状をなす。但し、容器部10の形状は必ずしも限定されない。
【0023】
本実施形態に係る液体塗布装置1は、前記容器部10の底面部10Bに、トイレットペーパーホルダー3に取り付けるための取り付け部11として粘着部11Aが設けられている。粘着部11Aを介して、トイレットペーパーホルダー3の前記カバー部30上に載せるようにして取り付ける。取り付け状態では、前記カバー部30と粘着部11Aを介して一体的となる。粘着部11Aを設ける範囲は、特に限定されない。カバー部30に対して、通常使用において離脱しない程度の接着力が得られる程度の範囲に設ければよい。また、粘着部11Aを構成する粘着剤についても特に限定されない。カバー部30の材質等に応じて接着可能な粘着剤を適宜に選択することができる。粘着剤に代えて粘着性を有さない接着剤を用いてもよい。
但し、本発明に係る取り付け部11は、上記の粘着部11Aに限られない。その他、例えば、カバー部30が金属であれば、板状磁石を底面部10Bに配して、磁力により取り付けられるように構成してもよい。突起や凹部等を係合させる取り付け構造を採用してもよい。また、カバー部30又はトイレットペーパーホルダー3に対して、着脱自在に取り付けられる構成であってもよい。
【0024】
容器部10の底面部10Bは、図示の形態では平板状となっているが、トイレットペーパーホルダー3のカバー部30の形状に応じて適宜にその形状を変更することができる。例えば、カバー部30が、トイレットロール2の周面形状に沿って湾曲形状に形成されている場合には、その形状に応じて底面部11Bを湾曲に形成するのがよい。このようにカバー部の形状と底面部の形状とを対応させることで、取り付けた際にカバー部30との一体的となり意匠性が高まるとともに、トイレットロール2を交換する際などに、カバー部30を上方に上げる操作をした際の取り扱い性を向上させやすい。
【0025】
容器部10の前面部10Cには、取り付けた際にトイレットロール2の幅方向となる方向に沿って、スリット状に開口部13が形成されている。この開口部13から容器部内に収容されている液体が容器外へと移行可能となっている。特に、開口部13を、前面部10Cの下端より上方側位置に形成し、前面部10Cの開口部下方に堰部分14を形成するのが望ましい。堰部分14により容器部内に収容した液体が開口部から漏れ出難くなり効果的に貯留できるようになる。
【0026】
一方、図示はしないが容器部10の正面部10A又は後面部10Dに、容器部内に液体を供給したり追加補充したりするための液体供給口を形成することができる。液体供給口には栓や蓋を設けて収容した液体が漏れたり蒸発したりし難いようにするのが望ましい。
【0027】
他方、本実施形態の液体塗布装置1では、前記開口部13に塗布部12としての塗布ローラ12Aが設けられている。この塗布ローラ12Aは、取り付け時にトイレットロール2の幅方向となる方向に沿って設けられた回転軸40の周りにスポンジ、ウレタンゴム等の弾性部材が配されており、液体を表面に保持しやすくかつトイレットペーパー20との接触時にトイレットペーパー20を破断させ難いものとなっている。但し、塗布ローラ12Aはこの形態に限定されず、液体を塗布可能なものであればよい。
【0028】
本実施形態の液体塗布装置1は、この塗布ローラ12Aが、前記開口部13を、回転可能な程度に僅かに隙間を空けて封をするように配されており、収納容器内において塗布ローラ12Aとの接触によりそのローラ周面に付着した液体が、塗布ローラ12Aの回転によって容器部外へ移行され、容器部外において塗布ローラ12Aとの接触によって液体が塗布されるように構成されている。
【0029】
但し、本発明に係る塗布部12は、図示の塗布ローラ12Aに限らず、例えば、開口部13から一部が露出するように多数の毛等の繊維を刷毛状に配し、毛細管現象によって容器部内の液体を刷毛によって塗布可能に構成してもよい。また、開口部13から一部が露出するように液体を吸収保持可能なスポンジ材を配して、このスポンジ材に容器部内の液体を吸収保持させるようにして塗布可能に構成してもよい。
【0030】
また、図示はしないが、容器部10の開口部13から露出する塗布部12の一部を被覆して液密に保護するカバー等を配して、液体の塗布を行わない場合に、液体が外部に漏出或いは液体の蒸発による塗布部の乾燥が生じないようにしてもよい。
【0031】
本実施形態の液体塗布装置1において容器内に収容しトイレットペーパー20に塗布する液体は、必ずしも限定されるものではない。トイレットペーパー20は肌の清拭、例えば排便後の肌の清拭に使用されることが多いため、肌に触れたさいに清涼感を感じさせるメントール等が配合された清涼剤、痔疾患患者等に対して有効な抗炎症剤、さらに、特に予め塗布しておくと吸湿によってロール形状が歪みやすい保湿薬液等が挙げられる。
【0032】
流動性のある液体を容器部内から漏出しがたく留めるために、容器部内には液体を吸収保持する液体保持部50を配するのが望ましい。この液体保持部50は、例えば、スポンジ材等のポーラスな構造の弾性部材、不織布、織布、紙等の繊維材が挙げられる。この液体保持部50を、容器部内に配置して塗布部12に液体が供給されるようにするのがよい。なお、図示はしないが、容器部10の後面部10Dや側面部10Eなどに、液体保持部50に保持させる液体を供給、追加するための供給口を形成して、必要に応じて液体を供給するようにしてもよい。図示の形態では、容器部内に液体を吸収保持するスポンジ材50を、容器部内で塗布ローラ12Aが接触する位置に配し、容器部内で液体保持部50から塗布ローラ12Aの周面に液体が転写され、その塗布ローラ12Aの回転によって開口部13から外部に液体が移行され、トイレットペーパー20に塗布可能となるように構成されている。また、塗布部をスポンジ材で構成するのであれば、液体保持部50と塗布部12とを一体としてもよい。
【0033】
ここで本発明の液体塗布装置1では、特徴的に取り付け部12を介してトイレットペーパーホルダー3に取り付けた際に、前記塗布部12がトイレットロール2の周面22の上方位置で、トイレットロール2の幅方向に沿って延在するように構成される。図示の実施形態では、容器部10の底面部10Bに設けられた粘着部11Aを介してトイレットペーパーホルダー3のカバー部30に接着して取り付けた際に、開口部13及び塗布ローラ12Aがカバー部30の先端縁33よりも前方位置かつトイレットロール2の周面22から離間した位置において、トイレットロール2の幅方向に亘って配されるように構成されている。
【0034】
塗布部12とトイレットロール周面22との離間距離、カバー部先端縁33との離間距離は、取り付けるカバー部30の形状、トイレットペーパーホルダー3の形状や構造により、異なるため必ずしも限定されるわけではないが、カバー部先端縁33によるトイレットペーパーの切断機能の観点、切断後のトイレットペーパー端部の長さが過度に長くならない観点、及び、トイレットロール2から引き出したトイレットペーパー20を塗布部12に接触させやくする観点から、トイレットロール周面22から1~50mm、カバー部先端縁33から-5~50mmの範囲とするのが望ましい。この位置は、取り付け部11によってカバー部30に取り付ける位置、容器部10の形状等により適宜に調整される。取り付け部11を図示の形態のように粘着部11Aとするのであれば、カバー部30に対して貼り付ける位置を調整するようにすればよい。取り付け部11は、このような塗布部とトイレットロール周面との位置の調整が可能な構成を採用するのが望ましい。
【0035】
さらに、本発明に係る液体塗布装置1は、トイレットペーパーホルダー3に保持されたトイレットロール2から引き出されるトイレットペーパー20の上下方向の引き出し方向により、塗布部12とトイレットペーパー20との接触と非接触とが選択される。
【0036】
本実施形態の液体塗布装置1は、上記のとおり粘着部11Aによりカバー部30上に取り付けた際に、塗布ローラ12Aがトイレットロール2の周面22の上方位置で、トイレットロール2の幅方向に沿って延在する。したがって、
図1に示すように、トイレットペーパーホルダー3に保持されるトイレットロール2からトイレットペーパー20を下方側に向かって引き出した際には、塗布ローラ12Aとトイレットペーパー2とが接触しない。これに対して、トイレットロール2からトイレットペーパー20を上方側に向かって引き出した際には、カバー部30の基端部の回転軸32を介してカバー部30が上方に持ち上がるとともに、トイレットペーパー20が塗布ローラ12Aと接触しつつ引き出され、塗布ローラ12A上の液体がトイレットペーパー20に塗布される。特にカバー部30がやや持ち上がることで、カバー部30の重みにより塗布ローラ12Aがトイレットペーパー20に押し付けられるように作用し、液体の塗布が効果的に行われる。ここで、塗布ローラ12Aの幅方向の配設範囲については限定されないが、トイレットロール20の幅と同程度かそれ以上の範囲に塗布ローラ12Aがあれば、トイレットロール2から引き出されるトイレットペーパー20の全体に液体を塗布しやすい。また、トイレットロール20の幅以内の範囲に塗布ローラ12Aがあれば、トイレットペーパーとして使用した際に必要な場所のみに塗布することができる。特に、トイレットロール20の幅以内の範囲で部分的に塗布ローラ12Aがあるようにすれば、その塗布ローラが接触する部分のみに、液体を塗布することができる。
なお、本発明における上下方向の引き出し方向とは、必ずしもある位置を境にして、その位置を基準として上下方向を定める必要はない。引き出し方向が上側に向かう場合に塗布、それよりも下側に向かう場合に非塗布となるように構成されていればよい。
【0037】
なお、本発明に係るトイレットロール2は、帯状のトイレットペーパー20を紙管(管芯とも称される)21にロール状に巻いたものであるが、本発明に係る液体塗布装置1が対象とするトイレットロール2の大きさ等は、特に限定されるものではない。一般的なトイレットロールの幅は105~120mmであり、また、トイレットロールの巻径は、JIS P 4501において、120mm以下と定められているが、市販品で100~125mm程度である。本発明に係る液体塗布装置1は、このような一般的なトイレットロール用のトイレットペーパーホルダー3に好適に使用することができる。
【0038】
以上のとおり、本実施形態の液体塗布装置1では、トイレットペーパーホルダー3に設置したトイレットロール2から引き出されるトイレットペーパー20に液体を付与するため、工場等で工業的に大量に薬液付与のトイレットロールを製造する際の生産性の問題はない。また、トイレットロールに巻かれている状態のトイレットペーパーには、液体が付与されていないので、液体保持や吸湿等による強度低下やロール形状の歪みの発生はなく、さらに、断紙も発生し難い。さらに、引き出し方向によって、トイレットペーパーに対する液体の塗布と非塗布とが選択できる。
【0039】
〔第二実施形態〕
次いで、第二実施形態を説明する。第二の実施形態の液体塗布装置は、
図8に示すように、カバー部の上に取り付けるのではなく、トイレットペーパーホルダー3のカバー部30を液体塗布装置1とする形態である。なお、第一実施形態と同様の構成、構造については説明を省略し、第一実施形態と異なる点を説明する。
【0040】
第二実施形態に係る液体塗布装置は、特に取り付け部の構成が第一実施形態と異なっている。この第二実施形態に係る液体塗布装置1では、容器部10の側面部10Eの後面部10D側の端部に回転軸32Aが設けられており、この回転軸32Aを介してトイレットペーパーホルダー3に、回動自在なカバー部30として取り付けられている。
【0041】
この第二実施形態の液体塗布装置1は、トイレットペーパーホルダー3の既存のカバー部と交換するものであってもよいし、トイレットペーパーホルダー3を構成するカバー部と予め取り付けられているものであってもよいし、また、カバー部を有さないトイレットペーパーホルダー3に対して後付けで取り付けるカバー部であってもよい。
この第二実施形態においても第一実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0042】
1…液体塗布装置、10…容器部、10A…正面部、10B…底面部、10C…前面部、10D…後面部、10E…側面部、11…取り付け部、11A…粘着部、12…塗布部、12A…塗布ローラ、13…開口部、14…堰部分、40…回転軸、41…弾性部材、2…トイレットロール、20…トイレットペーパー、21…管芯、22…トイレットロールの周面、3…トイレットペーパーホルダー、30…カバー部、31…軸部、32,32A…回転軸、33…カバー部先端縁、50…液体保持部。