(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】撮像表示装置、およびウェアラブルデバイス
(51)【国際特許分類】
H04N 23/741 20230101AFI20240930BHJP
H04N 25/57 20230101ALI20240930BHJP
H04N 25/59 20230101ALI20240930BHJP
H04N 25/77 20230101ALI20240930BHJP
H04N 23/45 20230101ALI20240930BHJP
H04N 23/54 20230101ALI20240930BHJP
H04N 23/60 20230101ALI20240930BHJP
H04N 13/344 20180101ALI20240930BHJP
H04N 13/239 20180101ALI20240930BHJP
【FI】
H04N23/741
H04N25/57
H04N25/59
H04N25/77
H04N23/45
H04N23/54
H04N23/60
H04N13/344
H04N13/239
(21)【出願番号】P 2020074082
(22)【出願日】2020-04-17
【審査請求日】2023-04-04
(31)【優先権主張番号】P 2019121951
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】小林 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】市川 武史
(72)【発明者】
【氏名】沖田 彰
【審査官】東松 修太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-036974(JP,A)
【文献】特開2011-254170(JP,A)
【文献】国際公開第2019/078339(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/185587(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/222- 5/257
H04N 23/00
H04N 22/40-23/76
H04N 23/90-23/959
H04N 13/344
H04N 13/239
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の撮像部と、複数の表示部と、信号処理部とを有する撮像表示装置において、
前記複数の撮像部は、第1光量範囲に対応した第1撮像部と、前記第1光量範囲よりも高い光量を含む第2光量範囲に対応した第2撮像部と、を有し、
前記信号処理部は、前記第1撮像部からの第1画像信号と、前記第2撮像部からの第2画像信号とから1つの第3画像信号を生成し、
前記複数の表示部は、前記第3画像信号に基づく画像を表示し、
前記第1撮像部は、複数の第1単位セルを有し、
前記複数の第1単位セルのそれぞれは、第1光電変換素子と、前記第1光電変換素子の電荷を転送する第1転送トランジスタと、前記第1転送トランジスタによって前記電荷が転送される第1入力ノードを有する第1増幅トランジスタと、を有し、
前記第2撮像部は、複数の第2単位セルを有し、
前記複数の第2単位セルのそれぞれは、第2光電変換素子と、前記第2光電変換素子の電荷を転送する第2転送トランジスタと、前記第2転送トランジスタによって前記電荷が転送される第2入力ノードを有する第2増幅トランジスタと、を有し、
前記第2入力ノードの容量は、前記第1入力ノードの容量よりも大きいことを特徴とす
る撮像表示装置。
【請求項2】
複数の撮像部と、複数の表示部と、信号処理部とを有する撮像表示装置において、
前記複数の撮像部は、第1光量範囲に対応した第1撮像部と、前記第1光量範囲よりも高い光量を含む第2光量範囲に対応した第2撮像部と、を有し、
前記信号処理部は、前記第1撮像部からの第1画像信号と、前記第2撮像部からの第2画像信号とから1つの第3画像信号を生成し、
前記複数の表示部は、前記第3画像信号に基づく画像を表示し、
前記第1撮像部は、複数の第1単位セルと、前記複数の第1単位セルからの信号を増幅する第1増幅器とを有し、
前記第2撮像部は、複数の第2単位セルと、前記複数の第2単位セルからの信号を増幅する第2増幅器とを有し、
前記第1増幅器のゲインは前記第2増幅器のゲインよりも高いことを特徴とす
る撮像表示装置。
【請求項3】
複数の撮像部と、複数の表示部と、信号処理部とを有する撮像表示装置において、
前記複数の撮像部は、第1光量範囲に対応した第1撮像部と、前記第1光量範囲よりも高い光量を含む第2光量範囲に対応した第2撮像部と、を有し、
前記信号処理部は、前記第1撮像部からの第1画像信号と、前記第2撮像部からの第2画像信号とから1つの第3画像信号を生成し、
前記複数の表示部は、前記第3画像信号に基づく画像を表示し、
前記第1撮像部は、複数の第1単位セルを有し、
前記複数の第1単位セルのそれぞれは、アバランシェフォトダイオードと、前記アバランシェフォトダイオードからの信号に基づいてカウントを行うカウンタを有し、
前記第2撮像部は、複数の第2単位セルを有し、
前記複数の第2単位セルのそれぞれは、第2光電変換素子と、前記第2光電変換素子の電荷を転送する第2転送トランジスタと、前記第2転送トランジスタによって前記電荷が転送される第2入力ノードを有する第2増幅トランジスタと、を有することを特徴とす
る撮像表示装置。
【請求項4】
複数の撮像部と、複数の表示部と、信号処理部とを有する撮像表示装置において、
前記複数の撮像部は、第1光量範囲に対応した第1撮像部と、前記第1光量範囲よりも高い光量を含む第2光量範囲に対応した第2撮像部と、を有し、
前記信号処理部は、前記第1撮像部からの第1画像信号と、前記第2撮像部からの第2画像信号とから1つの第3画像信号を生成し、
前記複数の表示部は、前記第3画像信号に基づく画像を表示し、
前記複数の表示部は、第1表示部と、第2表示部とを有し、
前記第1撮像部と前記第1表示部との距離は、前記第2撮像部と前記第2表示部との距離と等しく、
前記第1撮像部と前記第1表示部との距離を用いて前記第3画像信号が生成されることを特徴とす
る撮像表示装置。
【請求項5】
前記第3画像信号のダイナミックレンジは、前記第1画像信号のダイナミックレンジよりも広く、前記第2画像信号のダイナミックレンジよりも広いことを特徴とする請求項1乃至
4のいずれか1項に記載の撮像表示装置。
【請求項6】
前記第1画像信号のダイナミックレンジと、前記第2画像信号のダイナミックレンジは、重なる領域があることを特徴とする請求項1乃至
5のいずれか1項に記載の撮像表示装置。
【請求項7】
前記第1画像信号あるいは前記第2画像信号のいずれかの前記重なる領域の画像信号を基に、前記第3画像信号のホワイトバランスを調整することを特徴とする請求項
6に記載の撮像表示装置。
【請求項8】
複数の撮像部と、複数の表示部と、信号処理部とを有する撮像表示装置において、
前記複数の撮像部は、第1光量範囲に対応した第1撮像部と、前記第1光量範囲よりも高い光量を含む第2光量範囲に対応した第2撮像部と、を有し、
前記信号処理部は、前記第1撮像部からの第1画像信号と、前記第2撮像部からの第2画像信号とから1つの第3画像信号を生成し、
前記複数の表示部は、前記第3画像信号に基づく画像を表示し、
前記第1画像信号のダイナミックレンジと、前記第2画像信号のダイナミックレンジは、重なる領域があり、
前記第1画像信号あるいは前記第2画像信号のいずれかの前記重なる領域の画像信号を基に、前記第3画像信号のホワイトバランスを調整することを特徴とする撮像表示装置。
【請求項9】
前記第1画像信号のダイナミックレンジと、前記第2画像信号のダイナミックレンジが重ならない領域において、前記第3画像信号の前記重ならない領域では前記第1画像信号あるいは前記第2画像信号のいずれかの画像信号のみで生成されることを特徴とする請求項
6乃至8のいずれか1項に記載の撮像表示装置。
【請求項10】
前記信号処理部は、前記第1撮像部あるいは前記第2撮像部の少なくとも一方からの画像信号を基に動体検出を行うことによって、前記第3画像信号の生成と、前記
複数の表示部の輝度調整の少なくとも1つを行うことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の撮像表示装置。
【請求項11】
前記信号処理部へ操作信号を出力する入力部を有し、
前記入力部は、音声検出部および視線検出部の少なくとも1つを有することを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の撮像表示装置。
【請求項12】
前記複数の表示部は、第1表示部と第2表示部とを有し、
前記信号処理部は、前記第1撮像部と前記第2撮像部からの距離信号に応じて、前記第1表示部のための前記第3画像信号と、前記第2表示部のための前記第3画像信号とを生成することを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の撮像表示装置。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の撮像表示装置と、
前記撮像表示装置を配置する筐体と、を有するウェアラブルデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像表示装置、およびウェアラブルデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ヘッドマウントディスプレイ(以下HMD)やスマートグラスと呼ばれるウェアラブルデバイスが知られている。特許文献1には、撮像表示装置の外部から入射した光を電荷信号に変換する複数の光電変換素子と、複数の光電変換素子から得られた電荷信号に応じた強度の光を発光する複数の発光素子とを備える撮像表示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
外界の明るさは、高輝度から低輝度まで多岐にわたる。特許文献1では、外界の広い輝度範囲に対して、違和感のない画像を表示することについての詳細な検討がなされていない。そこで、本発明では、外界の広い輝度範囲に対応した好適な画像が表示可能な撮像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の1つの側面は撮像表示装置に係り、複数の撮像部と、複数の表示部と、信号処
理部とを有する撮像表示装置において、前記複数の撮像部は、第1光量範囲に対応した第
1撮像部と、前記第1光量範囲よりも高い光量を含む第2光量範囲に対応した第2撮像部
と、を有し、前記信号処理部は、前記第1撮像部からの第1画像信号と、前記第2撮像部
からの第2画像信号とから1つの第3画像信号を生成し、前記複数の表示装置は、前記第
3画像信号に基づく画像を表示し、前記第1撮像部は、複数の第1単位セルを有し、前記複数の第1単位セルのそれぞれは、第1光電変換素子と、前記第1光電変換素子の電荷を転送する第1転送トランジスタと、前記第1転送トランジスタによって前記電荷が転送される第1入力ノードを有する第1増幅トランジスタと、を有し、前記第2撮像部は、複数の第2単位セルを有し、前記複数の第2単位セルのそれぞれは、第2光電変換素子と、前記第2光電変換素子の電荷を転送する第2転送トランジスタと、前記第2転送トランジスタによって前記電荷が転送される第2入力ノードを有する第2増幅トランジスタと、を有し、前記第2入力ノードの容量は、前記第1入力ノードの容量よりも大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によって、外界の広い輝度範囲に対応した好適な画像が表示可能な撮像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】(a)第1実施形態に係る撮像表示装置を説明する外観図。(b)第1実施形態に係る撮像表示装置を説明する外観図。
【
図2】第1実施形態に係る撮像表示装置を説明するブロック図。
【
図3】(a)第1実施形態に係る撮像表示装置を説明するブロック図。(b)第1実施形態に係る撮像表示装置の単位セルを説明する回路図。
【
図4】第1実施形態に係る撮像表示装置の画像信号を説明する概念図。
【
図5】第2実施形態に係る撮像表示装置の撮像部の単位セルを説明する回路図。
【
図6】(a)第2実施形態に係る撮像表示装置の動作を説明する概念図。(b)第2実施形態に係る撮像表示装置の動作を説明する概念図。
【
図7】(a)第2実施形態に係る撮像表示装置の動作を説明する概念図。(b)第2実施形態に係る撮像表示装置の動作を説明する概念図。
【
図8】第2実施形態に係る撮像表示装置の画像信号を説明する概念図。
【
図10】(a)第5実施形態に係る撮像表示装置を説明する外観図。(b)第6実施形態に係る撮像表示装置を説明する外観図。(c)第7実施形態に係る撮像表示装置を説明する外観図。(d)第8実施形態に係る撮像表示装置を説明する外観図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
添付の図面を参照しつつ本発明の撮像表示装置の例を以下に説明する。様々な実施形態を通じて同様の要素には同一の参照符号を付し、重複する説明を省略する。また、各実施形態は適宜変更、組み合わせが可能である。なお、本発明の撮像表示装置は、例えばスマートグラス、HMD、スマートコンタクトレンズのようなウェアラブルデバイスに適用できる。
【0009】
(第1実施形態)
以下、
図1から
図4を参照しながら第1実施形態に係る撮像表示装置について説明する。
図1(a)と
図1(b)と
図1(c)は、第1実施形態に係る撮像表示装置100を備えるウェアラブルデバイスの外観図である。ウェアラブルデバイスは、筐体1を有する。筐体1は、レンズ2と、レンズ3と、撮像表示装置100が備えられている。撮像表示装置100は、複数の撮像部と複数の表示部を有する。複数の撮像部は、少なくとも撮像部10と撮像部20を含む。複数の表示部は、少なくとも表示部50と表示部60を含む。筐体1は、眼鏡のリムやテンプル(つる)を含み、信号処理部や制御部や通信部が格納されている。撮像部10と表示部50はレンズ2に設けられ、撮像部20と表示部60はレンズ3に設けられている。撮像部10はレンズ2の表側の面2fに設けられ、表示部50はレンズ2の裏側の面2bに設けられ、撮像部20はレンズ3の表側の面3fに設けられ、表示部60はレンズ3の裏側の面3bに設けられている。
【0010】
ここで、撮像部10とレンズ2との配置関係について説明する。撮像部10は、レンズ2の表側の面2fの上に設けられており、レンズ2の面2fと撮像部10の表面とが凹凸面を構成してもよい。また、撮像部10がレンズ2に埋め込まれていてもよく、レンズ2の面2fと撮像部10の表面が1つの曲面あるいは平面を構成してもよい。撮像部20とレンズ3との配置関係も撮像部10とレンズ2との配置関係と同様である。また、表示部50とレンズ2の配置関係も撮像部10とレンズ2との配置関係と同様であり、表示部60とレンズ3の配置関係も撮像部10とレンズ2との配置関係と同様である。
【0011】
図2は、本実施形態に係る撮像表示装置100を説明するブロック図である。撮像表示装置100は、撮像部10、撮像信号処理部15、撮像部20、撮像信号処理部25、信号処理部30、表示部50、表示部60、入力部70を備えている。
【0012】
レンズ部11は、例えば被写体からの光を撮像部10に集光するためのレンズや、レンズの焦点調節や結像倍率の変更、あるいは光量を変更するための絞りなどの光学機構を含み、信号処理部30からの制御信号に基づいて駆動される。撮像部10は、CMOS型のイメージセンサであり、信号処理部30からの制御信号に基づいて、画像信号を出力する。レンズ部11と、撮像部10とで撮像系12を構成する。撮像信号処理部15は、撮像部10からの画像信号に対して、信号処理部30の制御のもとで色補正処理やホワイトバランス補正、光学シェーディング補正などの画像処理を施した後、信号処理部30に画像信号と制御信号とを出力する。
【0013】
レンズ部21は、例えば被写体からの光を撮像部20に集光するためのレンズや、レンズの焦点調節や結像倍率の変更、あるいは光量を変更するための絞りなどの光学機構を含み、信号処理部30からの制御信号に基づいて駆動される。撮像部20は、CMOS型のイメージセンサであり、信号処理部30からの制御信号に基づいて、画像信号を出力する。レンズ部21と、撮像部20とで撮像系22を構成する。撮像信号処理部25は、撮像部20からの画像信号に対して、信号処理部30の制御のもとで色補正処理やホワイトバランス補正、光学シェーディング補正などの画像処理を施した後、信号処理部30に画像信号と制御信号とを出力する。
【0014】
信号処理部30は、撮像表示装置100の各部を包括的に制御し、また画像処理を行う。信号処理部30は、信号処理回路35と信号保持回路36とを有するマイクロコントローラである。信号保持回路36は、不揮発性メモリや揮発性メモリなどである。信号保持回路36は、撮像信号処理部15と撮像信号処理部25から出力された画像信号や制御信号を保持する。信号処理部30は、撮像部10と撮像部20から得た画像信号を基に画像処理を行い、表示用の画像信号を生成する。また、信号処理部30は、この画像処理の結果を基に各部分の制御信号を決定することもできる。ここで、画像信号は画像情報、画像データとも称する。
【0015】
表示部50は、信号処理部30から供給された画像信号を表示する。表示部50は、液晶型、投影型、有機発光型など任意のディスプレイを用いることができる。表示部50と、インターフェース回路(不図示)などから表示系52が構成される。表示部60は、信号処理部30から供給された画像信号を表示する。表示部60は、液晶型、投影型、有機発光型など任意のディスプレイを用いることができる。表示部60と、インターフェース回路(不図示)などから表示系62が構成される。
【0016】
入力部70は、例えば電源ボタン、表示の明るさ調整やズーム調整などの各種操作キーやボタン、ダイヤルなどを有する。入力部70は、ユーザーによる入力操作に応じた制御信号を信号処理部30に出力する。なお、入力部70は操作キーなどの物理的な構成要素のみならず、例えば、撮像部や各種検出部を設けてジェスチャー入力、操作者の視線検知入力、音声入力などによる操作を行ってもよい。
【0017】
次に
図3を参照して、撮像部10と、撮像部20について説明する。ここで、撮像部10と撮像部20は、CMOS型のイメージセンサ300であるものとする。
図3(a)は、イメージセンサ300を説明するブロック図である。イメージセンサ300は、単位セル領域310と、その他の領域320とを有する。単位セル領域310は、複数の単位セル301が行列状に配置された領域である。その他の領域320は、単位セル領域310以外であって、読み出し回路330と、垂直走査回路340と、水平走査回路360と、タイミング制御回路370が配されている。
【0018】
複数の単位セル301の各々には、例えば、赤(R)、緑(G)及び青(B)のいずれかのカラーフィルターがベイヤー配列になるように設けられている。なお、1つのカラーフィルターと対応する単位セル301の数は1つとは限らず、カラーフィルターの配列はベイヤー配列に限定されない。単位セル領域310には、列信号線302と行信号線303とが配されている。少なくとも1つの列信号線302は、配列した複数の単位セル301の各列に対応して設けられている。列信号線302は、各単位セル301で得られた信号を読み出すために設けられている。列信号線302は、他の領域に配された読み出し回路330と電気的に接続している。行信号線303は、垂直走査回路340と電気的に接続している。垂直走査回路340から出力される制御信号によって、各単位セル301の素子が動作し、各単位セル301で得られた信号を読み出すことができる。
図3(a)において、行信号線303は1本で示されているが、行信号線303の詳細な構成については、
図3(b)を用いて説明する。
【0019】
読み出し回路330は、増幅回路や、相関二重サンプリング回路(以下、CDS回路)、アナログデジタル変換回路(以下、ADC回路)から構成されている。読み出し回路330は、各列信号線302に対して1つの読み出し回路部分を有していてもよい。1つの読み出し回路部分は、上述の増幅回路などから構成されうる。ここでは、読み出し回路330は複数のADC回路を有するものとする。読み出し回路330によって生成されたデジタル信号は、水平走査回路360によってイメージセンサ300の外部に出力される。なお、タイミング制御回路370は、
図2の信号処理部30からの制御信号に従ってタイミング制御信号を生成する。タイミング制御回路370からの制御信号によって、垂直走査回路340、水平走査回路360、読み出し回路330などの動作が制御される。
【0020】
図3(b)は、
図3(a)に示したイメージセンサ300の単位セル301を説明する回路図である。単位セル301は、光電変換素子であるフォトダイオードPD、転送トランジスタTX、増幅トランジスタSF、選択トランジスタSL、リセットトランジスタRS、および付加容量トランジスタAPを含む。ここでは、各トランジスタはnチャネルMOSFETによって構成されるスイッチ素子であるものとするが、導電型やトランジスタの構造については特に限定されるものではない。
【0021】
転送トランジスタTXのゲートには、行信号線303(TX)が接続されている。選択トランジスタSLのゲートには、行信号線303(SL)が接続されている。リセットトランジスタRSのゲートには、行信号線303(RS)が接続されている。付加容量トランジスタAPのゲートには、行信号線303(AP)が電気的に接続されている。これら行信号線303は水平方向に延在して、同一行に含まれる単位セル301を同時に駆動可能である。このような構成によって、ライン順次動作型のローリングシャッタ動作や、全行同時動作型のグローバルシャッタ動作を行うことができる。
【0022】
フォトダイオードPDは、光電変換を行い、生成された信号電荷を蓄積する。転送トランジスタTXがオン状態となると、フォトダイオードPDに蓄積された信号電荷は、浮遊拡散領域FDに転送され、浮遊拡散領域FDに蓄積される。増幅トランジスタSFのドレインは電源電圧VDDに電気的に接続され、増幅トランジスタSFのゲートは浮遊拡散領域FDに電気的に接続される。増幅トランジスタSFはソースフォロワ回路を構成し、増幅トランジスタSFのゲートのノードはソースフォロワ回路の入力ノードともいえる。増幅トランジスタSFは、浮遊拡散領域FDの保持された信号電荷に基づく信号を出力する。選択トランジスタSLのドレインは、増幅トランジスタSFのソースに電気的に接続される。選択トランジスタSLのソースは列信号線302に電気的に接続される。選択トランジスタSLは、信号を読み出す単位セルを選択することができる。選択トランジスタSLがオン状態となると、増幅トランジスタSFと不図示の定電流源とがソースフォロワを構成し、浮遊拡散領域FDに保持された信号電荷に対応する信号が列信号線302に出力される。
【0023】
リセットトランジスタRSのドレインは、電源電圧VDDに電気的に接続され、リセットトランジスタRSのソースは付加容量トランジスタAPのドレインに電気的に接続される。付加容量トランジスタAPのドレインは、リセットトランジスタRSのソースに電気的に接続され、付加容量トランジスタAPのソースは浮遊拡散領域FDに電気的に接続される。転送トランジスタTXと、付加容量トランジスタAPと、リセットトランジスタRSとが同時にオン状態となることで、浮遊拡散領域FDと、フォトダイオードPDが電源電圧VDDに基づく所定に電圧に設定される。所定の電圧に設定される動作をリセット動作ともいう。
【0024】
撮像部10と撮像部20について説明する。撮像部20は、撮像部10よりも高い光量を含む光量範囲に対応している。撮像部10は第1光量範囲に対応し、撮像部20は第2光量範囲に対応する。第2光量範囲は第1光量範囲よりも高い光量値を含む。ここで、対応する光量範囲とは、入力光量に対して出力される信号の線形性が保たれている光量範囲である。また、対応する光量範囲とは、各撮像部の最大出力信号に対応した光量と最小出力信号に対応した光量で規定される光量範囲であってもよい。
【0025】
対応する光量範囲を変更する方法として、変換ゲインを変える方法がある。その場合には、撮像部10の変換ゲインは撮像部20の変換ゲインよりも高い。ここで、変換ゲインとは、所定の光量に対して得られる信号値の大きさの関係を示すものである。つまり、高い変換ゲインを有する撮像部10は、入射光量が大きい時には飽和してしまい信号が出力できないが、入射光量が少ない時に精度が高い、多諧調の信号を出力することができる。一方、低い変換ゲインを有する撮像部20は、入射光量が大きい時にも信号を出力することができる。変換ゲインの大小を変える方法は、例えば、浮遊拡散容量の容量値を切り替える方法や、信号経路の増幅器のゲインを切り替える方法があり、組み合わせて用いることもできる。本実施形態においては、浮遊拡散容量の容量値を切り替える方法について詳述する。
【0026】
浮遊拡散領域FDの容量をCfdとし、付加容量トランジスタAPによって付加可能な容量をAfdとする。リセットトランジスタRSがオフ状態のときに浮遊拡散領域FDの容量値(FD容量値)は次のようになる。付加容量トランジスタAPがオン状態であれば、FD容量値は容量Cfdと容量Afdの値の和となり、付加容量トランジスタAPがオフ状態であれば、FD容量値は容量Cfdの値のみとなる。
図3(b)において、容量Cfdと容量Afdは、設計時に考慮すべき寄生容量等も含み、簡易に示したものとする。この浮遊拡散領域FDの容量値が切り替え可能であることで、光電変換ゲイン、すなわち感度を切り替えることが可能である。それは、上述のように、転送トランジスタTXによって浮遊拡散領域FDに転送された信号電荷は、増幅トランジスタSFから出力される際には、電圧信号に変換されているためである。
【0027】
本実施例において、
図2の撮像部10は浮遊拡散領域FDの容量を容量Cfdのみで構成され、
図2の撮像部20は浮遊拡散領域FDの容量を容量Cfdと容量Afdの和として構成される。
図3(b)では付加容量トランジスタAPがオン状態とオフ状態とが可能である。しかし、イメージセンサ300を撮像部20として使用する場合には、付加容量トランジスタAPが常にオン状態となる構成、すなわち付加容量トランジスタAPのゲートに電源電圧VDDが電気的に接続されている構成にしてもよい。また、イメージセンサ300を撮像部20として使用する場合には、付加容量トランジスタAPを設けずに、容量Cfdに容量Afdを加えた大きな容量CAfdとしてもよい。
【0028】
図1や
図2に示す撮像表示装置100では、撮像部10と撮像部20とで取得された画像信号を基に信号処理部30にて画像処理がなされ、処理後の画像信号を基に表示部50と表示部60にて画像が表示される。したがって、利用者にとって違和感のない画像を表示するためには、撮像部10と撮像部20とで良好な画像信号を取得することが望ましい。良好な画像信号とは、例えば、ダイナミックレンジの広い画像信号を取得することが重要となる。ダイナミックレンジの狭い画像信号を基に表示画像を生成する場合には、利用者が明るさで過度な刺激を感じる、明部は白飛びし且つ暗部は黒つぶれして認識できないなど、利用者が自分の目で見るのとは異なる状況に違和感を覚える可能性がある。そこで、本実施形態の撮像表示装置100では、感度を異ならせた撮像部10と撮像部20を用いて取得した画像信号を基に表示画像を生成する。
【0029】
図4は、撮像表示装置の画像信号を説明する概念図である。
図4の概念図の横軸はイメージセンサに入射される光量であり、
図4の概念図の縦軸はイメージセンサが出力する信号の大きさを示している。上述のように、撮像部10の変換ゲインG1は、撮像部20の変換ゲインG2よりも高い。ここで、変換ゲインG2を小さくするためには、
図3(b)における付加容量トランジスタAPをオン状態とし、撮像部20中の単位セル301のFD容量値をAfd+Cfdと大きくすればよい。電荷量Q、容量値C、電圧値Vとした場合の関係式はQ=CVである。つまり、同じ光量(すなわち同じ電荷量)に対して撮像部10の単位セル301の浮動拡散層FDでは撮像部20の単位セル301の浮動拡散層FDよりも大きな電位変化が生じうる。従って、読み出し回路330以降の読み出し経路のノイズレベルが同等であるとすると、撮像部10の全体のノイズレベルである信号量S1は、撮像部20の全体のノイズレベルである信号量S2よりも小さくなる。つまり、小さい光量の光量範囲Aにおいては、撮像部10は撮像部20よりも画質が良好といえる。一方、撮像部の飽和レベルである信号量S3に達する光量(飽和光量)は、撮像部20では光量L4に対し、撮像部10の光量L3と小さくなる。よって、大きい光量である光量範囲Cでの画質は、撮像部20の方が良好となる。中程度の光量である光量範囲Bでは撮像部10および撮像部20のどちらでも良好な画質を得られる。
【0030】
図2の信号処理部30において行われる画像処理は、例えば、ダイナミックレンジ拡大処理(以下、HDR処理)である。HDR処理では、光量範囲の異なる複数の撮像条件で取得した複数の画像信号を用いて、ダイナミックレンジの広い画像信号を生成する。撮像部10が画像信号を取得可能である光量範囲は範囲R1であり、撮像部20が画像信号を取得可能である光量範囲は範囲R2である。これらの光量範囲の異なる複数の画像信号を合成することにより、光量L1から光量L4までの範囲R3に対応する画像信号を生成することができる。
【0031】
HDR処理において、画像信号が切り替わると信号ノイズ比の段差が生じうる。よって、複数の撮像部の両方で画像信号が取得可能な光量範囲Bにおいて、複数の画像信号を合成するとよい。その際には、2つの撮像部からの画像信号を例えばα:(1-α)の比率で合成するような信号処理がなされうる。なお、αは0以上1以下を取る。ここで、αは必ずしも一定の値とは限らず、光量範囲Bの中で変化させてもよい。例えば光量範囲Aに近い側ではαを0.5よりも大きくし、光量範囲Cに近い側ではαを0.5よりも小さくするなど、よりHDR処理後の画像に違和感を生じさせないよう変化させてもよい。
【0032】
複数の撮像部を用いて画像信号を取得する場合、ばらつきによる輝度ばらつきや色味のばらつき、ホワイトバランスなどのわずかな違いが利用者に違和感を生じさせうる。複数の撮像部で画像信号が取得可能な光量範囲Bの信号を用いて、信号処理部30で補正処理を行ってもよい。
【0033】
また、光量範囲Aや光量範囲Cのように、複数の撮像部のうちいずれかの撮像部の画像信号のみを用いて良好な画像を得られる場合には、もう一方の撮像部の同領域は一時的に信号読み出しを休止させるなどして、省電力化を図ることもできる。
【0034】
変換ゲインを異ならせた複数の撮像部で取得された画像信号を信号処理部30で適切に処理することで、ダイナミックレンジの広い画像を取得することができる。すなわち、本実施形態の撮像表示装置によって、黒潰れや白飛びのない違和感の少ない良好な画像を複数の表示部に表示することができる。
【0035】
上述したように、変換ゲインを切り替える方法は、浮遊拡散容量の容量値を切り替える方法に限らない。撮像部10および撮像部20が単位セルからの信号を増幅する増幅器を有する構成であってもよい。その場合には、撮像部10の単位セルからの信号を増幅する増幅器は、撮像部20の単位セルからの信号を増幅する増幅器よりも高いゲインを有する。このような構成によって、変換ゲインを切り替えることができる。
【0036】
(第2実施形態)
本実施形態に係る撮像表示装置は、第1実施形態の撮像部1が、CMOS型ではなくSPAD(Single Photon Avalanche Diode)型のイメージセンサであることが異なる。以下の説明において、第1実施形態で説明した内容については説明を省略する。
【0037】
図5は、撮像部10が有する単位セル301Sを示す回路図である。単位セル301Sは、アバランシェフォトダイオードAPD、クエンチ抵抗QR、バッファBuf、制御部DRV、カウンタCTを有する。アバランシェフォトダイオードAPDには、クエンチ抵抗QRを介して電位HVDDによる逆バイアス電圧が印加される。この時の電位HVDDとしては、アバランシェフォトダイオードAPDをガイガーモードで駆動するために、降伏電圧以上の電圧が印加されるよう設定される。バッファBufの出力は制御部DRV内のカウンタCTに入力される。カウンタCTにおいてカウントされた画像信号は列信号線302によって読み出される。列信号線302以降の読み出し回路等については、
図3(a)を適宜、変更することで動作可能である。
【0038】
ここで、
図6を用いてフォトン入射時の単位セル301Sの動作について簡単に説明する。まず、
図6(a)は、アバランシェフォトダイオードAPDの電流電圧特性(I-V特性)を示している。上述のように、アバランシェフォトダイオードAPDはガイガーモードで動作される。ここで、アバランシェフォトダイオードAPDにフォトンが入射すると、アバランシェ増幅による大電流(光電流)が流れる(動作A)。この電流が流れると同時にクエンチ抵抗QRによって逆バイアス電圧が降下し、アバランシェフォトダイオードAPDに印加される逆バイアス電圧が降伏電圧未満となり、アバランシェ増幅が止まる(動作B)。アバランシェ増幅が止まると、アバランシェフォトダイオードAPDのカソードは再び電位HVDDによりチャージされ、ガイガーモードに戻る(動作C)。動作A~動作Cによるバッファ入力端の電圧変化はバッファBufによってパルス整形され、カウンタCTによって計測される。これを繰り返すことでアバランシェフォトダイオードAPDに入射したフォトンの数を計測することが可能である。
【0039】
図6(b)は、横軸を時間としてフォトン入射時にアバランシェフォトダイオードAPDから出力されるアバランシェ増幅による出力電圧のパルス波形と、フォトンの入射を判定する判定閾値Vthとの関係を示す模式図である。アバランシェフォトダイオードAPDには電位HVDDが供給されているものとする。このとき、アバランシェフォトダイオードAPDに入射したフォトンA(時刻t1)、フォトンB(時刻t2)、フォトンC(時刻t3)によって、カウンタの判定閾値Vthを超えて変化するパルス波形が出力される程度のアバランシェ増幅が発生する。パルス波形をカウントすることで、入射するフォトンの個数が計測できる。
【0040】
撮像部10は
図5に示す単位セル301Sを有し、撮像部20は
図3(b)に示す単位セル301を有する。ここで、撮像部20は、CMOS型のイメージセンサであればよく、
図3(b)に示す単位セル301のFD容量値がCfdのみであってもよく、付加容量トランジスタAPがない構成であってもよく、適宜変更可能である。ここで、単位セル301Sは単位セル301と比較して、リセットトランジスタRSや増幅トランジスタSFを用いない構成となっている。そのため、撮像部10では、各トランジスタに起因するkTCノイズやRTSノイズなどが発生せず、撮像部20と比較して信号ノイズ比(S/N比)が優れているため、ランダムノイズの画質への影響が高い静止画での撮影に優れている。
【0041】
SPAD型のイメージセンサからなる撮像部10では、入射フォトン数の少ない低照度時にも高い変換ゲインで高画質な画像信号を取得することができるが、入射フォトン数の多い高照度時には、カウントエラーと呼ばれる問題が生じうる。
図7は、SPAD型のイメージセンサにおいてカウントエラーが起きる場合について説明する図である。
図7(a)は、横軸を時間としてフォトン入射時のアバランシェ増幅による出力電圧のパルス波形と判定閾値Vthとの関係を示す模式図である。
図6(b)で説明した動きと異なり、フォトンD(時刻t4)により判定閾値Vthを超えて変動する電圧が入力された後、
図6(a)での説明における動作Bでのアバランシェ増幅動作が停止する前にフォトンE(時刻t5)が入射する。このとき、時刻t4で起きたアバランシェ増幅による波形変動が判定閾値Vthを上回らない内に時刻t5でフォトンEが入射するため、フォトンEに対するカウント動作ができない状態となる。また、フォトンF(時刻t6)の入射時も時刻t4~時刻t5のときと同様な状態となるため、フォトンFも同様にカウントされない。このように、被写体の輝度が高い場合、判定閾値Vthを上回らない内に連続してフォトンが入射するため、実際に入射するフォトンの数よりもカウント値が小さくなり、カウントエラー(カウント飽和)となってしまう。なお、時刻t6から時刻t7の間は、フォトンが入射されず、電圧が一旦判定閾値Vthを上回るため、その後に入射されるフォトンG(時刻t7)に対する電圧のパルス波形はカウントされる。
【0042】
図7(b)は、SPAD型のイメージセンサにおける照度とカウント値との関係を示す図である。照度が大きくなるとフォトン数が増えていくため、SPAD型のイメージセンサでカウントされるカウント値も比例して増えていくが、照度M以上になると
図7(a)における時刻t4~時刻t6の状態が起こり、カウントエラー(カウント飽和)が発生する。さらに照度が増していくと、同時に入射されるフォトン数が更に増え、カウントエラー状態が続くために、理想的なカウント値(破線)に対して、実際のカウント値(実線)は照度Nを境に反比例の関係となる。
【0043】
本実施形態の撮像表示装置100では、変換ゲインや動作モードの異なる撮像部10と撮像部20で取得された画像信号を信号処理部30で処理することで、良好な画像を複数の表示部で示すことができる。
図8は、本実施形態の撮像表示装置100の画像信号を説明する概念図である。
図8の概念図の横軸はイメージセンサに入射される光量であり、
図8の概念図の縦軸はイメージセンサが出力する信号の大きさを示している。撮像部20は、撮像部10よりも高い光量を含む光量範囲に対応している。撮像部10は光量範囲R1に対応し、撮像部20は光量範囲R2に対応している。撮像部10は光量範囲R1の光に対応した信号を出力することができる。撮像部20は光量範囲R2の光に対応した信号を出力することができる。光量範囲R2は光量範囲R1よりも高い光量値を含む。本実施形態では、対応する光量範囲を変更する方法として、撮像部10と撮像部20で異なる形式のイメージセンサを用いている。
【0044】
撮像部10では、光量L1から光量L3までの低輝度な像に対応している。撮像部20では、光量L2よりも小さな光量の信号はノイズ信号である信号S2に埋もれてしまい読み出すことができない。一方、光量L3よりも大きな光量の信号は、撮像部20によって読み出すことができる。このような撮像部10と撮像部20を用いることによって、広い光量範囲に対応した画像信号を取得することが可能となる。
【0045】
信号処理部30において行われる画像処理は、例えば、ダイナミックレンジ拡大処理(以下、HDR処理)である。HDR処理では、光量範囲の異なる複数の撮像条件で取得した複数の画像信号を用いて、ダイナミックレンジの広い画像信号を生成する。撮像部10が画像信号を取得可能である光量範囲は範囲R1であり、撮像部20が画像信号を取得可能である光量範囲は範囲R2である。これらの光量範囲の異なる複数の画像信号を合成することにより、光量L1から光量L4までの光量範囲R3に対応する画像信号を生成することができる。
【0046】
撮像部10は、低照度時にも高い画質の画像信号が得られる一方、アバランシェ増幅による大電流で消費電力が大きくなりうるため、
図8に示した光量範囲Cにおいては高照度の領域では一時的に信号読み出しを休止させるなどして、省電力化を図っても良い。更に、撮像部10を休止させる光量範囲を光量範囲Cに加えて光量範囲Bの一部や全部に拡大しても良い。
【0047】
本実施形態では、撮像部10をSPAD型のイメージセンサであるものとしたが、他の形式のイメージセンサを用いることができる。
【0048】
(第3実施形態)
本実施形態では、撮像表示装置の操作方法について説明する。第1、第2実施形態に係る撮像表示装置100では、信号処理部30で複数の表示部に表示する画像信号のダイナミックレンジを拡張しうる。ここで、利用者によって違和感が生じる明るさには個人差がありうる。撮像表示装置100は、
図2に示すように入力部70を有する。利用者が入力部70を操作することで、輝度調整を行うことができる。入力部70からの操作信号が信号処理部30に入力することによって、信号処理部30で行われるダイナミックレンジの幅を撮像表示装置100が正しく動作可能な範囲で調整することができる。また、入力部70からの操作信号によって、表示部の輝度調整を行うことができる。
【0049】
入力部70の操作は、ボタン、スイッチ、タッチパネルなどに限らず、少なくとも1つの撮像部10および撮像部20の画像信号を基に指示体の動きを検出(動体検出)し、検出した指示体の動きに基づく操作を受け付けるジェスチャー入力でありうる。また、入力部70が音声検出部を有し、入力部70の操作は音声を検出することで行われる音声入力でありうる。また、入力部70が利用者の視線や瞳を検知する視線検出部を有し、入力部70の操作は、視線の動きを検出することでの視線入力や、瞬きの回数を検出することでの瞬き入力などでありうる。また、瞳の大きさの変化を検出することにより、上述の表示画像の明るさを調整するなどの動作を行っても良い。誤動作を防止するために、上記の入力方法を複数組み合わせて用いても良い。例えば、ボタンを押しながらジェスチャーを行うことでジェスチャー入力が有効になる、といった動作を行うことができる。以上の動作が可能とすることで、さらに利用者個人に合わせた違和感の少ない撮像表示装置を提供することができる。
【0050】
(第4実施形態)
本実施形態では、撮像表示装置100の表示に関して説明する。上述の撮像表示装置100は、利用者の左右の眼に合わせて表示部をそれぞれ配置することができる。人間がある対象物を見る際には、物理的に離れている左右の眼で見るため視差が生じる。この視差によって対象物の立体感や他の物や背景と奥行きを感じることができる。従って、HMDやスマートグラスにおいて、複数の表示部に同一の画像信号を表示すると、立体感や奥行きを感じ難く利用者に違和感が生じうる。しかし、上述してきた撮像表示装置によれば、複数の撮像部を物理的に離れた個所に配置することで、両眼における視差に相当する画像を複数の撮像部で取得し、複数の表示部にそれぞれ異なる視差に相当する画像信号を表示することができる。具体的には、撮像部10と表示部50との距離と、撮像部20と表示部60との距離とが等しい場合には、撮像部10と表示部50との距離を用いて画像信号を生成する。撮像部10と表示部50との距離とは、いわゆる視差情報となりうる。例えば、撮像部10と表示部50との距離は、撮像部10の光学中心と表示部50の光学中心との距離とする。
【0051】
図9は、撮像表示装置100の動作を説明するための動作フローチャートである。まず、撮像部10と撮像部20は、それぞれで画像信号を取得する。そして、画像信号は、
図2に示す撮像信号処理部15、25および信号処理部30で処理される。処理では、共通の光量範囲の出力信号で輝度や色味のばらつきなどの補正処理が行われる。そして、画像信号の合成を実施し、ダイナミックレンジが拡張させた画像信号を生成する。さらに、ダイナミックレンジが拡張された画像信号を、上述の視差情報に基づいて再分配し、各表示部50、60に合わせた表示用画像を生成する。
【0052】
また、
図4に示す光量範囲Aや光量範囲Cのように、複数の撮像部のうち、一方の画像信号のみを複数の表示部に表示する画像信号として用いる場合、複数の表示部に同一の画像信号を表示させると前述のとおり違和感を生じうる。そこで、信号処理部30を用いて疑似的に視差を付加し、複数の表示部には視差に相当する異なる画像信号を表示することで、利用者に違和感を生じづらくすることができる。この視差を付加する場合には、不使用の画像信号を基に視差情報を得ることができる。視差情報は、光量範囲Bのように複数の撮像部で取得可能な画像信号を用いてもよいし、信号処理部30などで対象物をDeep Learningなどを基に認識し、疑似的に視差を付加してもよい。
【0053】
また、複数の撮像部の他に距離を計測するためのToF(Time of Flight)センサやLiDARなどを用いてもよい。被写体までの距離を計測することで、複数の表示系に表示する画像信号に付加する視差情報を精度よく算出することができ、より利用者に違和感が生じづらくなる。また、視線検知センサなどを用いることで、利用者が注目している点以外の解像度を落とすことで、より立体感などを実現することができ、利用者に違和感が生じ難くなるとともに、撮像部、表示部の省電力化も図ることができる。
【0054】
(第5実施形態)
本実施形態の撮像表示装置ついて、
図10(a)および
図9を参照しながら説明する。本実施形態の撮像表示装置では、
図10(a)に示すように左右のレンズに相当する部分に、撮像部10Aと撮像部10Bが配されている。そして、別の撮像部20が、撮像部10Aと撮像部10Bとの間に配されている。本実施形態は第1実施形態と比較して、第1実施形態の撮像部10が2つに分かれて配されており、第1実施形態の撮像部20がそれらの間に位置するように設けられている点が異なる。以下の説明において、先の実施形態で説明した内容については説明を省略する。
【0055】
装着者にとって違和感のない画像を表示するために、複数の表示部50、60のそれぞれの表示画像に適切な視差情報を付加することが望ましい。しかし、先の実施形態は、左右の視差情報をそれぞれ異なる形態の撮像部10と撮像部20とを用いて推定する方法であった。その場合、異なる形態の撮像部を用いるため、同じ被写体を撮像しているにもかかわらず、撮像結果の輝度差や色バランスのばらつきが大きくなりうる。それによって、表示画像に違和感が残る可能性がある。そこで、視差情報を推定するための撮像部として、
図10(a)に示すように左右に略対称に同一形態の撮像部10A、10Bを配置している。このような構成によって、ばらつきを抑制し、視差情報の不足を生じさせづらくすることができる。
【0056】
画像信号の処理フローは、
図9において説明した処理フローと同様である。すなわち、各撮像部10A、10B、20で取得したそれぞれの画像信号と視差情報を撮像信号処理部15、25および信号処理部30で処理することで、各表示部50、60に合わせて表示画像を生成する。先の実施形態よりも基となる画像信号を多く取得できることから、ばらつきの補正処理や視差情報の生成の精度がより向上し、利用者が覚える違和感をより低減することができる。
【0057】
(第6実施形態)
本実施形態の撮像表示装置について、
図10(b)および
図9を参照しながら説明する。本実施形態の撮像表示装置では、
図10(b)に示すように一方のレンズに撮像部10Aと撮像部20Aの組が配され、他方のレンズに撮像部10Bと撮像部20Bの組が配されている。本実施形態は第1実施形態と比較して、第1実施形態の撮像部10が2つに分かれて配されており、第1実施形態の撮像部20が2つに分かれて配されている点が異なる。以下の説明において、先の実施形態で説明した内容については説明を省略する。
【0058】
装着者にとって違和感のない画像を表示するためには、複数の表示部50、60のそれぞれの表示画像に適切な視差情報を付加することが望ましい。そこで、第5実施形態と同様に、本実施形態では、
図10(b)に示すように左右に略対称に同一形態の撮像部10A、10Bを配置している。また、
図10(b)に示すように左右に略対称に同一形態の撮像部20A、20Bを配置している。そして、本実施形態では、視差情報を推定するための撮像部として、撮像部10Aと撮像部10Bの組と、撮像部20Aと撮像部20Bの組と、の少なくとも一方を用いる。このような構成によって、ばらつきが抑制され、視差情報の不足を生じさせづらくすることができる。
【0059】
画像信号の処理フローは、
図9において説明した処理フローと同様である。すなわち、各撮像部10A、10B、20A、20Bで取得したそれぞれの画像信号を撮像信号処理部15、25および信号処理部30で処理することで、各表示部50、60に合わせて表示画像を生成する。先の実施形態よりも基となる画像信号を多く取得できることから、ばらつきの補正処理や視差情報の生成の精度がより向上し、利用者が覚える違和感をより低減することができる。
【0060】
なお、
図10(b)において、撮像部10Aと撮像部20Aが平面的に異なる位置に配されている。また、撮像部10Bと撮像部20Bが平面的に異なる位置に配されている。しかし、撮像部10Aと撮像部20Aの組、あるいは撮像部10Bと撮像部20Bの組のそれぞれの撮像部は、例えば共通の光学系に対して同一チップ内に形成することもできる。つまり、撮像部10Aと撮像部20Aは、同一チップ内に積層させて配置させてもよく、市松模様状などに組み合わせて配置してもよい。撮像部10Bと撮像部20Bは、同一チップ内に積層させて配置させてもよく、市松模様状などに組み合わせて配置してもよい。
【0061】
(第7実施形態)
本実施形態の撮像表示装置について、
図10(c)および
図11を参照しながら説明する。本実施形態の撮像表示装置では、
図10(c)に示すように一方のレンズに撮像部10が配され、他方のレンズに撮像部20が配され、それらの間に測距光学系40が配されている。本実施形態は第1実施形態と比較して、第1実施形態の撮像部10と撮像部20との間に、測距光学系40を設けた点が異なる。以下の説明において、先の実施形態で説明した内容については説明を省略する。
【0062】
図10(c)および
図B1を参照しながら、第E実施形態に係る撮像表示装置について説明する。本実施形態に係る撮像表示装置は第1実施形態に対し、測距光学系40が追加されている点が異なる。以下の説明において、先の実施形態で説明した内容については説明を省略する。
【0063】
先に述べたように、装着者にとって違和感のない画像を表示するためには、複数の表示部50、60のそれぞれの表示画像に適切な視差情報を付加することが望ましい。しかし、先の実施形態においては、左右の視差情報は画像信号と被写体までの距離の推測からDeep Learningなどにより推定するため、実際の距離情報とは異なる結果となる場合や精度が低くなる懸念がある。そこで、
図10(c)に示すように測距光学系40を設けることで、距離情報を正確に測定する。このような構成によって、表示部50、60への画像信号の再分配のための視差情報の精度を高めることができる。
【0064】
測距光学系40は、例えばオートフォーカス用のセンサモジュールを用いることができる。または、測距光学系40に半導体レーザーを照射するためのレーザー光源を配置し、撮像部10、20の少なくともいずれか一方でTime of Flight法(以下、ToF法)などを用いる距離計測を行うこともできる。さらには、撮像面位相差オートフォーカスと呼ばれる技術を撮像部10、20の画素に導入しておき、撮像部10、20で取得した位相差情報と組み合わせて用いることも可能である。
【0065】
画像信号の処理フローは、
図11に示す処理フローとなる。撮像部10と撮像部20は、それぞれが画像信号を取得する。そして、画像信号は、撮像信号処理部15、25および信号処理部30で他の実施形態にて行われた処理がなされる。そして、画像情報が生成される。並行して、測距光学系40から得られた信号を信号処理部30で処理し距離情報を生成する。測距光学系40は、測距信号、すなわち距離信号を取得可能である。この距離情報を用いて、更に表示用視差情報が生成される。信号処理部30では、画像情報と表示用視差情報とから、各表示部50、60に合わせた再分配を行い、表示用画像を生成する。先の実施形態よりも精度の高い距離情報を取得できることから、ばらつきの補正処理や視差情報の生成の精度がより向上し、利用者に違和感をより生じづらくさせることができる。
【0066】
本実施形態においては、視差情報をより精度高く取得することにより、より利用者の違和感を低減した表示画像を提供することが可能となる。
【0067】
(第8実施形態)
本実施形態の撮像表示装置について、
図10(d)および
図12を参照しながら説明する。本実施形態の撮像表示装置では、
図10(d)に示すように一方のレンズに撮像部10Aと撮像部20Aの組が配され、他方のレンズに撮像部10Bと撮像部20Bの組が配されている。本実施形態の撮像表示装置では、2つのレンズの間に測距光学系40が設けられている。本実施形態は第1実施形態と比較して、第1実施形態の撮像部10が2つに分かれて配されており、第1実施形態の撮像部20が2つに分かれて配されており、測距光学系40を有する点が異なる。以下の説明において、先の実施形態で説明した内容については説明を省略する。
【0068】
例えば、本実施形態の測距光学系40は、半導体レーザーを照射するためのレーザー光源である。そして、撮像部10と撮像部20の少なくともいずれか一方でToF法などを用いる距離計測を行う。撮像面位相差法と呼ばれる技術を撮像部10もしくは撮像部20の画素に導入することもできる。撮像面位相差法は、撮像面位相差オートフォーカスとも称する。本実施形態では、ToF法取得した位相差情報と撮像面位相差法にて取得した位相差情報とを組み合わせて用いる。例えば、撮像部10としてSPADセンサを用い、撮像部10ではToF法によって距離情報を取得する。そして、撮像部20としてCMOSセンサを用い、撮像部20では撮像面位相差法によって距離情報を取得する。本実施形態においては、先の実施例と比べて、左右それぞれの撮像部で距離情報が取得できることから、より正確な視差情報を取得することが可能となる。よって、本実施形態の構成によって、精度の高い視差情報を付加した表示画像を生成することが可能となる。
【0069】
画像信号の信号フローは、
図12に示す処理フローとなる。撮像部10と撮像部20は、それぞれが画像信号を取得する。そして、撮像部10と撮像部20は、それぞれが距離信号を取得する。画像信号は、撮像信号処理部15、25および信号処理部30で他の実施形態にて行われた処理がなされる。そして、画像情報が生成される。並行して、距離信号は、撮像信号処理部15、25および信号処理部30で処理され、距離情報が生成される。距離情報を用いて、更に表示用視差情報が生成される。信号処理部30では、画像情報と表示用視差情報とから、各表示部50、60に合わせた再分配を行い、表示画像を生成する。先の実施形態よりも精度の高い距離情報を取得できることから、ばらつきの補正処理や視差情報の生成の精度がより向上する。よって、より利用者の違和感を低減した表示画像を提供することが可能となる。
【0070】
なお、距離情報は撮像部や表示部に配置ずれがある場合や、利用者が傾けて装着していることも考えられるため、適宜補正されることが望ましい。また、視差情報は利用者により違和感が生じる度合いが異なるため、適宜調整可能なようにしておくことが望ましい。
【0071】
各実施形態において、撮像表示装置が2つの撮像部と2つの表示部を有する場合について説明したが、3つ以上の撮像部と、3つ以上の表示部とを有する場合などを含む。3つ以上の撮像部を有する場合には、例えば、立体感を有する表示画像を生成することもできる。また、可視光の場合を説明したが、任意の波長においても適用可能である。また、各実施形態において、撮像部が左右それぞれ2つまでの例を挙げたが、それ以上の撮像部を用いても良い。信号処理にかかる負荷とのバランスから撮像部の個数を決定しても良い。
【符号の説明】
【0072】
10 撮像部
20 撮像部
30 信号処理部
50 表示部
60 表示部
100 撮像表示装置