(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】精油、精水および繊維質成分およびそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
C11B 9/02 20060101AFI20240930BHJP
C11B 9/00 20060101ALI20240930BHJP
A61K 36/14 20060101ALI20240930BHJP
A61K 36/15 20060101ALI20240930BHJP
A61K 36/61 20060101ALI20240930BHJP
A61K 36/13 20060101ALI20240930BHJP
A61P 25/20 20060101ALI20240930BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240930BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240930BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20240930BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240930BHJP
A61K 31/215 20060101ALI20240930BHJP
A61K 31/045 20060101ALI20240930BHJP
A61K 8/9761 20170101ALI20240930BHJP
A61K 8/9767 20170101ALI20240930BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20240930BHJP
A61Q 13/00 20060101ALI20240930BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
C11B9/02
C11B9/00 B
C11B9/00 D
C11B9/00 T
A61K36/14
A61K36/15
A61K36/61
A61K36/13
A61P25/20
A61P31/12
A61P31/04
A61P25/04
A61P29/00
A61K31/215
A61K31/045
A61K8/9761
A61K8/9767
A61K8/9789
A61Q13/00 101
A61Q19/10
(21)【出願番号】P 2020086434
(22)【出願日】2020-05-18
【審査請求日】2023-03-09
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000102544
【氏名又は名称】エステー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】弁理士法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】小澤 洋平
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】特表平08-512337(JP,A)
【文献】特開昭57-021350(JP,A)
【文献】特開2017-008111(JP,A)
【文献】大平 辰朗 ,環境に優しい成分調製技術-マイクロ波等を活用した乾燥と抽出技術-,ニューフードインダストリー,(2012), vol.54, no.10,宇田 守孝 株式会社食品資材研究会,pp.9-28
【文献】大平 辰朗 他3名,効率的・効果的なマイクロ波減圧水蒸気蒸留法の開発-スギ葉の精油成分の利活用に向けて-,森林総合研究所平成21年版研究成果選集,2009年,(2009),pp. 50-51
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11B 9/00- 9/02
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A01N 1/00-65/48
A01P 1/00-23/00
A23L27/00-27/60
A61K31/00-31/327
A61K36/00-36/9068
Japio-GPG/FX
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程(a)~(d)
(a)
マツ科モミ属の樹木の木質部および/または葉を、減圧下でマイクロ波により加熱して、樹木に含まれる水分により蒸留し、蒸留により油分および水分の少なくとも一部が除去された第一の繊維質成分と、第一の蒸留物とを分離する工程
(b)工程(a)で得られた第一の蒸留物から、第一の精油および第一の精水を分離する工程
(c)工程(a)で得られた第一の繊維質成分に、工程(b)で得られた第一の精水を添加し、減圧下または常圧下でマイクロ波により加熱して、蒸留により更に油分および水分の少なくとも一部が除去された第二の繊維質成分と、第二の蒸留物とを分離する工程
(d)工程(c)で得られた第二の蒸留物から、第二の精油および第二の精水を分離する工程
により得られることを特徴とする第二の精油。
【請求項2】
沸点200℃以上のテルペンの含有量が40質量%以上である請求項1記載の第二の精油。
【請求項3】
工程(a)の圧力が5~60kPaであり、加熱温度が30~90℃である請求項1記載の第二の精油。
【請求項4】
工程(c)の圧力が20~110kPaであり、加熱温度が80~120℃である請求項1~
3の何れか1に記載の第二の精油。
【請求項5】
以下の工程(a)~(d)
(a)
マツ科モミ属の樹木の木質部および/または葉を、10~60kPaの圧力下でマイクロ波により50~70℃に加熱して、樹木に含まれる水分により蒸留し、蒸留により油分および水分の少なくとも一部が除去された第一の繊維質成分と、第一の蒸留物とを分離する工程
(b)工程(a)で得られた第一の蒸留物から、第一の精油および第一の精水を分離する工程
(c)工程(a)で得られた第一の繊維質成分に、工程(b)で得られた第一の精水を添加し、50~105kPaの圧力下でマイクロ波により70~100℃に加熱して、蒸留により更に油分および水分の少なくとも一部が除去された第二の繊維質成分と、第二の蒸留物とを分離する工程
(d)工程(c)で得られた第二の蒸留物から、第二の精油および第二の精水を分離する工程
により得られることを特徴とする第二の精水。
【請求項6】
有機成分中のボルニルアセテートおよびボルネオールの含有量が40質量%以上である請求項
5記載の第二の精水。
【請求項7】
以下の工程(a)~(c)
(a)
マツ科モミ属の樹木の木質部および/または葉を、減圧下でマイクロ波により加熱して、樹木に含まれる水分により蒸留し、蒸留により油分および水分の少なくとも一部が除去された第一の繊維質成分と、第一の蒸留物とを分離する工程
(b)工程(a)で得られた第一の蒸留物から、第一の精油および第一の精水を分離する工程
(c)工程(a)で得られた第一の繊維質成分に、工程(b)で得られた第一の精水を添加し、減圧下または常圧下でマイクロ波により加熱して、蒸留により更に油分および水分の少なくとも一部が除去された第二の繊維質成分と、第二の蒸留物とを分離する工程
により得られることを特徴とする第二の繊維質成分。
【請求項8】
工程(a)の圧力が10~95kPaであり、加熱温度が40~80℃である請求項
7記載の第二の繊維質成分。
【請求項9】
工程(c)の圧力が20~110kPaであり、加熱温度が80~120℃である請求項
7または8記載の第二の繊維質成分。
【請求項10】
以下の工程(a)~(d)
(a)
マツ科モミ属の樹木の木質部および/または葉を、減圧下でマイクロ波により加熱して、樹木に含まれる水分により蒸留し、蒸留により油分および水分の少なくとも一部が除去された第一の繊維質成分と、第一の蒸留物とを分離する工程
(b)工程(a)で得られた第一の蒸留物から、第一の精油および第一の精水を分離する工程
(c)工程(a)で得られた第一の繊維質成分に、工程(b)で得られた第一の精水を添加し、減圧下または常圧下でマイクロ波により加熱して、蒸留により更に油分および水分の少なくとも一部が除去された第二の繊維質成分と、第二の蒸留物とを分離する工程
(d)工程(c)で得られた第二の蒸留物から、第二の精油および第二の精水を分離する工程
を含むことを特徴とする第二の精油の製造方法。
【請求項11】
第二の精油における沸点200℃以上のテルペンの含有量が40質量%以上である請求項
10記載の第二の精油の製造方法。
【請求項12】
工程(a)の圧力が5~95kPaであり、加熱温度が30~90℃である請求項
10または11記載の第二の精油の製造方法。
【請求項13】
工程(c)の圧力が20~110kPaであり、加熱温度が80~120℃である請求項
10~12の何れか1に記載の第二の精油の製造方法。
【請求項14】
以下の工程(a)~(d)
(a)
マツ科モミ属の樹木の木質部および/または葉を、10~60kPaの圧力下でマイクロ波により50~70℃に加熱して、樹木に含まれる水分により蒸留し、蒸留により油分および水分の少なくとも一部が除去された第一の繊維質成分と、第一の蒸留物とを分離する工程
(b)工程(a)で得られた第一の蒸留物から、第一の精油および第一の精水を分離する工程
(c)工程(a)で得られた第一の繊維質成分に、工程(b)で得られた第一の精水を添加し、50~105kPaの圧力下でマイクロ波により70~100℃に加熱して、蒸留により更に油分および水分の少なくとも一部が除去された第二の繊維質成分と、第二の蒸留物とを分離する工程
(d)工程(c)で得られた第二の蒸留物から、第二の精油および第二の精水を分離する工程
を含むことを特徴とする第二の精水の製造方法。
【請求項15】
第二の精水における有機成分中のボルニルアセテートおよびボルネオールの含有量が40質量%以上ある請求項
14記載の第二の精水の製造方法。
【請求項16】
以下の工程(a)~(c)
(a)
マツ科モミ属の樹木の木質部および/または葉を、減圧下でマイクロ波により加熱して、樹木に含まれる水分により蒸留し、蒸留により油分および水分の少なくとも一部が除去された第一の繊維質成分と、第一の蒸留物とを分離する工程
(b)工程(a)で得られた第一の蒸留物から、第一の精油および第一の精水を分離する工程
(c)工程(a)で得られた第一の繊維質成分に、工程(b)で得られた第一の精水を添加し、減圧下または常圧下でマイクロ波により加熱して、蒸留により更に油分および水分の少なくとも一部が除去された第二の繊維質成分と、第二の蒸留物とを分離する工程
を含むことを特徴とする第二の繊維質成分の製造方法。
【請求項17】
工程(a)の圧力が10~95kPaであり、加熱温度が40~80℃である請求項
16記載の第二の繊維質成分の製造方法。
【請求項18】
工程(c)の圧力が20~110kPaであり、加熱温度が80~120℃である請求項
16または17記載の第二の繊維質成分の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹木の木質部および/または葉を原料とする精油、精水および繊維質成分およびそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
以前より、後継者不足や、木材価格の下落により、山林を手入れが行き届かなくなり、その荒廃が大きな問題とされている。この山林の手入れは、主に間伐と枝打ちであるが、間伐材や、枝打ちで落とされた枝葉に何の経済的価値もなく、逆に経費がかかるのみであれば、このような手入れがおろそかになるのは当然のことである。
【0003】
そこで近年、間伐等の対象となった木材を加工し、有用資源とする試みが行われている。例えば、間伐材をチップとした後、これを蒸煮し、家畜用の飼料とすることが行われている。
【0004】
しかしながら、上記した方法は、チップ化や蒸煮に大きな設備が必要であり、どこでも簡単に採用できるというものではない。また、木材自体はともかく、枝葉の部分についての有効な利用方法が知られているわけではない。
【0005】
この木材や枝葉を有効利用する技術として、本出願人らは、木質部やその葉を特定の装置および条件で蒸留することにより、高付加価値のある精油や精水が得られることを報告している(特許文献1)。
【0006】
しかしながら、この技術で精油や精水を得た後に残る繊維質成分には、まだまだ有用な成分が含まれていることが分かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の課題は、上記技術で精油や精水を得た後に残る繊維質成分から更に有用な成分を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究した結果、上記技術で精油や精水を得た後に残る木質成分を、更に、異なる条件で蒸留することにより、種々の有用な成分が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の工程(a)~(d)
(a)樹木の木質部および/または葉を、減圧下でマイクロ波により加熱して、樹木に含まれる水分により蒸留し、蒸留により油分および水分の少なくとも一部が除去された第一の繊維質成分と、第一の蒸留物とを分離する工程
(b)工程(a)で得られた第一の蒸留物から、第一の精油および第一の精水を分離する工程
(c)工程(a)で得られた第一の繊維質成分に、水および/または工程(b)で得られた第一の精水を添加し、減圧下または常圧下でマイクロ波により加熱して、蒸留により更に油分および水分の少なくとも一部が除去された第二の繊維質成分と、第二の蒸留物とを分離する工程
(d)工程(c)で得られた第二の蒸留物から、第二の精油および第二の精水を分離する工程
により得られることを特徴とする第二の精油およびその製造方法である。
【0011】
本発明は、以下の工程(a)~(d)
(a)樹木の木質部および/または葉を、減圧下でマイクロ波により加熱して、樹木に含まれる水分により蒸留し、蒸留により油分および水分の少なくとも一部が除去された第一の繊維質成分と、第一の蒸留物とを分離する工程
(b)工程(a)で得られた第一の蒸留物から、第一の精油および第一の精水を分離する工程
(c)工程(a)で得られた第一の繊維質成分に、水および/または工程(b)で得られた第一の精水を添加し、減圧下または常圧下でマイクロ波により加熱して、蒸留により更に油分および水分の少なくとも一部が除去された第二の繊維質成分と、第二の蒸留物とを分離する工程
(d)工程(c)で得られた第二の蒸留物から、第二の精油および第二の精水を分離する工程
により得られることを特徴とする第二の精水およびその製造方法である。
【0012】
本発明は、以下の工程(a)~(c)
(a)樹木の木質部および/または葉を、減圧下でマイクロ波により加熱して、樹木に含まれる水分により蒸留し、蒸留により油分および水分の少なくとも一部が除去された第一の繊維質成分と、第一の蒸留物とを分離する工程
(b)工程(a)で得られた第一の蒸留物から、第一の精油および第一の精水を分離する工程
(c)工程(a)で得られた第一の繊維質成分に、水および/または工程(b)で得られた第一の精水を添加し、減圧下または常圧下でマイクロ波により加熱して、蒸留により更に油分および水分の少なくとも一部が除去された第二の繊維質成分と、第二の蒸留物とを分離する工程
により得られることを特徴とする第二の繊維質成分およびその製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第二の精油に含まれるテルペン系の化合物は第一の精油に比べモノテルペンのうちであっても比較的蒸気圧の低いものやセスキテルペン、ジテルペンを高濃度に含有しているものである。そのためこれは香料、消臭成分のほか低蒸気圧ものテルペン、セスキテルペン、ジテルペン等が用いられている、睡眠導入剤、ストレス低減剤、鎮痛剤、有害酸化物除去剤、花粉症症状改善剤、抗インフルエンザ剤、抗癌剤、浮腫抑制剤等に用いると優れた効果が期待される。
【0014】
本発明の第二の精水は第一の精水に比べ水溶性の有機成分を高濃度に含有しているものである。そのためこれは第一の精水同様の香料、消臭成分、鎮痛剤、抗炎症外用剤(鎮痛剤(錠剤)、化粧クリーム、清涼飲料)、抗ウイルス剤、入浴剤(足浴剤)等に用いるとより優れた効果が得られる。
【0015】
本発明の第二の繊維質成分は有機成分が取り除かれた際のマイクロポアがより多く形成されるとともに、有機成分は揮発性が低く、長期間にわたり変わらぬ組成で効果を発揮することが期待できるものである。そのためこれは消臭剤、脱臭剤、吸着剤、吸収剤、有害酸化物除去剤等に用いると優れた効果が得られる。また、特にこれはごみ袋、ごみ箱、枕、ふとん、カーペット等に練り込んだり、含有させることにより優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の工程(a)および(b)を示す概略図である。
【
図2】本発明の工程(c)および(d)を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の第二の精油は、以下の工程(a)~(d)により得られ、本発明の第二の精水は、以下の工程(a)~(d)により得られ、本発明の第二の繊維質成分は、以下の工程(a)~(c)により得られる。
【0018】
(a)樹木の木質部および/または葉を、減圧下でマイクロ波により加熱して、樹木に含まれる水分により蒸留し、蒸留により油分および水分の少なくとも一部が除去された第一の繊維質成分と、第一の蒸留物とを分離する工程
(b)工程(a)で得られた第一の蒸留物から、第一の精油および第一の精水を分離する工程
(c)工程(a)で得られた第一の繊維質成分に、水および/または工程(b)で得られた第一の精水を添加し、減圧下または常圧下でマイクロ波により加熱して、蒸留により更に油分および水分の少なくとも一部が除去された第二の繊維質成分と、第二の蒸留物とを分離する工程
(d)工程(c)で得られた第二の蒸留物から、第二の精油および第二の精水を分離する工程
【0019】
本発明の原料となる樹木は、特に限定されないが、例えば、ヒノキ科ヒノキ属、ヒノキ科クロベ属、ヒノキ科ビャクシン属、ヒノキ科スギ属、マツ科モミ属、マツ科ヒマラヤスギ属、マツ科トウヒ属、マツ科マツ属、マツ科カラマツ属、マツ科ツガ属、フトモモ科ユーカリ属、コウヤマキ科コウヤマキ属、イチイ科カヤ属、ヒノキ科アスナロ属等が挙げられる。
【0020】
ヒノキ科ヒノキ属の樹木としては、ヒノキ、タイワンヒノキ、ベイヒバ、ローソンヒノキ、チャボヒバ、サワラ、クジャクヒバ、オウゴンチャボヒバ、スイリュウヒバ、イトヒバ、オウゴンヒヨクヒバ、シノブヒバ、オウゴンシノブヒバ、ヒムロスギ等が挙げられる。ヒノキ科クロベ属の樹木としては、ニオイヒバ、ネズコ等が挙げられる。ヒノキ科ビャクシン属の樹木としては、ハイビャクシン、ネズミサン、エンピツビャクシン、オキナワハイネズ等が挙げられる。ヒノキ科スギ属の樹木としては、スギ、アシウスギ、エンコウスギ、ヨレスギ、オウゴンスギ、セッカスギ、ミドリスギ等が挙げられる。
【0021】
マツ科モミ属の樹木としては、トドマツ、モミ、ウラジロモミ、シラビソ、オオシラビソ、シラベ、バルサムファー、ミツミネモミ、ホワイトファー、アマビリスファー、アオトドマツ、カリフォルニアレッドファー、グランドファー、ノーブルファー等が挙げられる。マツ科トウヒ属の樹木としては、アカエゾマツ、トウヒ等が挙げられる。マツ科マツ属の樹木としては、アカマツ、ダイオウショウ、ストローブマツ、ハイマツ等が挙げられる。マツ科カラマツ属の樹木としては、カラマツ等が挙げられる。マツ科ツガ属の樹木としては、ツガ等が挙げられる。
【0022】
フトモモ科ユーカリ属の樹木としては、ユーカリ、ギンマルバユーカリ、カマルドレンシス、レモンユーカリ等が挙げられる。
【0023】
コウヤマキ科コウヤマキ属の樹木としては、コウヤマキ等が挙げられる。
【0024】
イチイ科カヤ属の樹木としては、カヤ等が挙げられる。
【0025】
ヒノキ科アスナロ属の樹木としては、ヒバ、アスナロ、ヒノキアスナロ、ホソバアスナロ等が挙げられる。
【0026】
上記した樹木の中でも、ヒノキ科ヒノキ属、ヒノキ科スギ属、マツ科モミ属、フトモモ科ユーカリ属、コウヤマキ科コウヤマキ属、ヒノキ科アスナロ属が好ましく、日本に多く分布しており、入手が容易であることから、ヒノキ科ヒノキ属のヒノキ、タイワンヒノキ、ベイヒバ、ヒノキ科スギ属のスギ、マツ科モミ属のトドマツ、モミ、フトモモ科ユーカリ属のユーカリ、コウヤマキ科コウヤマキ属のコウヤマキ、ヒノキ科アスナロ属のヒバがより好ましい。これらの樹木は複数種を組み合わせても良い。
【0027】
上記樹木の木質部および/または葉を、減圧下でマイクロ波により加熱して、樹木に含まれる水分により蒸留し、蒸留により油分および水分の少なくとも一部が除去された第一の繊維質成分と、第一の蒸留物とを分離する。このような操作は蒸留物を得る方法としては減圧水蒸気蒸留、繊維質成分を得る方法としては減圧乾燥という。これらの方法は、例えば、国際公開WO2010/098440号パンフレット等に記載の蒸留槽、マイクロ波加熱装置、冷却装置、ポンプ等を備えたマイクロ波蒸留装置を用いて実施できる。
【0028】
以下、
図1を用いて工程(a)および(b)について説明する。
図1中、1は樹木の木質部および/または葉、2は蒸留槽、3はマイクロ波加熱装置、4は冷却装置、5はポンプ、6は第一の精油、7は第一の精水を示す。
【0029】
図1に記載のマイクロ波蒸留装置において、蒸留槽2、冷却装置4およびポンプ5はこの順で連通されている。蒸留槽2の上面にはマイクロ波加熱装置3が設置され、そこからマイクロ波を放射し、蒸留槽2に入れられた原料を加熱する。この蒸留槽2には、気流流入管(図示せず)が連通されている。それとは別にこの蒸留槽2には、蒸留物流出管が連通され、更に冷却装置4に連通されている。気流流入管は、空気あるいは不活性ガスの気体を蒸留槽2内に導入するものである。蒸留物流出管は、原料からの蒸留物を冷却装置まで導入するものである。なお、本発明においては、この加熱の際には、原料に別途水分は供給していないが、別途水分を供給することも可能である。原料に別途水分を供給しないほうが、第一の精水における有機物質の濃度が高まるため精水の各種効果が高くなるため好ましい。
【0030】
上記気体の中でも不活性ガス、具体的には窒素、ヘリウム、アルゴン等が好ましい。気体の導入量としては、例えば、1分当たりの流量が、蒸留槽2の0.001~0.1容量倍程度とすれば良い。
【0031】
蒸留槽2の内部には、これに取り付けられた温度センサおよび圧力センサ(共に図示せず)により温度および圧力が測定できるようになっている。また、この温度および圧力は、蒸留槽2に連通している加熱制御装置および圧力制御装置を介して調整できるようになっている(共に図示せず)。
【0032】
この際の温度と圧力は原料を減圧下で加熱できるものであれば特に限定されないが、例えば、圧力が5~95kPa、好ましくは10~60kPaであり、加熱温度が30~90℃、好ましくは50~70℃である。なお、加熱温度は蒸留槽2内で測定される蒸気の温度のことを指す。また、加熱時間は、特に限定されないが、例えば、0.2~8時間、好ましくは0.4~6時間である。
【0033】
原料へのマイクロ波の照射により生じた気体状の蒸留物は、蒸留物流出管から冷却装置4へ導入され、そこで液体に代えられ第一の蒸留物となる。
【0034】
この第一の蒸留物は、水性画分と油性画分に分かれる。そのため、それぞれの画分を採取すれば、油性画分から第一の精油6、水性画分から第一の精水7が得られる。また、蒸留槽2に残る原料は、蒸留により油分および水分の少なくとも一部が除去された第一の繊維質成分となる。この第一の繊維質成分は、次に続く工程(c)および(d)の原料となる。
【0035】
上記のようにして得られる第一の精油は、高モノテルペン成分含有精油である。含有するモノテルペンの種類や割合は原料の木材の種類により異なるが、例えば、トドマツが原料の場合、モノテルペン成分を90質量%(以下、単に「%」という)以上含有する高モノテルペン精油である。この第一の精油には、本発明者らがすでに公開している特許WO2010/098440号パンフレットに記載されている通り、α-ピネン、リモネン、β-フェランドレン等のモノテルペンを高濃度に含有するものである。また、第一の精油は揮発性の高い精油となり、空中噴霧等において、拡散性が高く、床面・壁面・置物等への付着が少なく、付着しても揮発して無くなりやすい。
【0036】
また、上記のようにして得られる第一の精水は、原材料の木質部および/または葉に含まれる水に可溶な有機成分を高濃度に含有するものである。含有する有機成分の種類や割合は原料の木材の種類により異なるが、例えば、トドマツが原料の場合、3ヘキセンー1-オール、1-ヘキサノール、マルトール、ボルネオール、ボルニルアセテート等の有機化合物を精水中約0.07%含有する。
【0037】
更に、上記のようにして得られる第一の繊維質成分は、低揮発性のモノテルペン、セスキテルペン、ジテルペン等を含有し、セルロースがリグニン、精油で固着されているという木質の構造から見て、精油が約60%、精水が約50%程度取り除かれた後のリグニン構造あるいはセルロース構造中に悪臭等を吸着しうる部位が生じた構造を有していると考えられる。
【0038】
以下、
図2を用いて工程(c)および(d)について説明する。
図2中、2は蒸留槽、3はマイクロ波加熱装置、4は冷却装置、5はポンプ、7は第一の精水(および/または水)、8は第一の繊維質成分、9は第二の精油、10は第二の精水を示す。
【0039】
図1と同じ構成のマイクロ波蒸留装置の蒸留槽2に、原料となる第一の繊維質成分8を入れ、これに第一の精水7および/または水、好ましくは第一の精水7を添加し、減圧下または常圧下でマイクロ波により加熱する。第一の精水7および/または水の添加量は特に限定されないが、例えば、第一の繊維質成分8の重量に対して10%~60%、好ましくは20%~50%である。また、第一の精水7および/または水の添加の方法は、蒸留前に第一の繊維質成分8に添加したのち蒸留を行うようにしてもよく、また、蒸留中に気流流入管(図示せず)から添加する方法、また両方を併用する方法でも構わない。
【0040】
この際の温度と圧力は原料を常圧下で加熱できるものであれば特に限定されないが、例えば、圧力が20~110kPa、好ましくは50~105kPaであり、加熱温度が80~120℃、好ましくは70~100℃である。また、加熱時間は、特に限定されないが、例えば、0.2~8時間、好ましくは0.4~6時間である。これ以外の条件は工程(a)および(b)と同様である。
【0041】
原料となる第一の繊維質成分8へのマイクロ波の照射により生じた気体状の蒸留物は、蒸留物流出管から冷却装置4へ導入され、そこで液体に代えられ第二の蒸留物となる。
【0042】
この第二の蒸留物は、水性画分と油性画分に分かれる。そのため、それぞれの画分を採取すれば、油性画分から第二の精油9、水性画分から第二の精水10が得られる。また、蒸留槽2に残る原料は、第一の繊維質成分から蒸留により更に油分および水分の少なくとも一部が除去された第二の繊維質成分となる。第二の繊維質成分については、低温乾燥粉砕機で、乾燥、粉砕した後、分級して枝を取り除いてもよい。
【0043】
更に、上記工程(c)および(d)はn-2回(nは3以上の整数)以上繰り返して行ってもよい。その場合、第nの精水、第nの精油、第nの繊維質成分が得られる。
【0044】
以上説明した第二の精油は、比較的蒸気圧の低いモノテルペン類やセスキテルペン、ジテルペンを高濃度に含有するものである。含まれるテルペン類の種類や割合は原料の木材の種類により異なるが、例えば、ドドマツが原料の場合、ボルニルアセテート、ボルネオール等のモノテルペン成分やカリオフィレン等のセスキテルペンを含み、沸点200℃以上のテルペン含有量が40%以上、好ましくは45%以上である精油である。この第二の精油はボルニルアセテート、ボルネオール等のモノテルペン成分やカリオフィレンが有する効果、例えば、消臭効果、香料への利用、睡眠導入改善効果、ストレス低減効果、有害酸化物除去効果、インフルエンザウイルスの不活化等の抗ウイルス効果、飛翔害虫忌避効果、抗炎症効果等が期待される。
【0045】
上記した第二の精油は、上記の性質を有するため、例えば、香料、消臭成分、睡眠導入剤、ストレス低減剤、鎮痛剤、有害酸化物除去剤、花粉症症状改善剤、抗ウイルス剤等に用いることができる。
【0046】
以上説明した第二の精水は、原材料の木質部および/または葉に含まれる水に可溶な有機成分を第一の盛衰に比べてもより高濃度に含有するものである。含有する有機成分の種類や割合は原料の木材の種類により異なるが、例えば、トドマツが原料の場合、3ヘキセン-1-オール、1-ヘキサノール、マルトール、ボルネオール、ボルニルアセテート等の有機化合物を精水中約0.15%含有する。
【0047】
上記した第二の精水は、上記の性質を有するため、例えば、香料、消臭成分、鎮痛剤、抗炎症外用剤(鎮痛剤(錠剤)、化粧クリーム、清涼飲料)、抗ウイルス剤、入浴剤(足浴剤)等に用いることができる。
【0048】
以上説明した第二の繊維質成分は、第一の繊維質成分よりも精油や精水が更に抜けているため悪臭等を吸着しうる部位が多数生じ、吸着能力がより高くなっているものと予想される。
【0049】
上記した第二の繊維質成分は、上記の性質を有するため、例えば、消臭剤、脱臭剤、吸着剤、吸収剤、有害酸化物除去剤等に用いることができる。また、この第二の繊維質成分は、ごみ袋、ごみ箱、枕、ふとん、カーペット等に練り込んだり、含有させることにより優れた効果を発揮する。
【実施例】
【0050】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0051】
実 施 例 1
第二の精油、精水および繊維質成分の調製:
(1)1回目の蒸留
樹木の木質部および/または葉として、トドマツの枝および葉を60kgを、蒸留槽内に入れ、蒸留槽内の圧力を16kPaの減圧条件下に保持し、加熱温度(蒸気温度)が60℃となるようにマイクロ波を照射し、トドマツの枝および葉に含まれる水分のみで1時間蒸留した。この蒸留により生じた気体を冷却装置で冷却し、第一の精水を16kg、第一の精油を300g、第一の繊維質成分を43kg得た。また、蒸留後の蒸留槽内に第一の繊維質成分を得た。これらについてGC-MSで分析を行った。その結果を表1および表2に示した。
【0052】
第一の精水は、有機化合物を0.07%含むものであり、その内訳は表1の通りであった。
【0053】
【0054】
第一の精油は、モノテルペン成分を100%含むものであり、その内訳は表2の通りであった。また、沸点が200℃未満のものが89%、沸点が200℃以上のものが11%であることが分かった。
【0055】
【0056】
(2)2回目の蒸留
1回目の蒸留後、第一の繊維質成分10kgに、第一の精水3kgを添加した。蒸留槽内の圧力を常圧(約101kPa)条件下に保持し、加熱温度(蒸気温度)が100℃となるようにマイクロ波を照射し、第一の精水を主な水分として1時間蒸留した。この蒸留により生じた気体を冷却装置で冷却し、第二の精水を2.7kg、第二の精油を30g得た。また、蒸留後の蒸留槽内に第二の繊維質成分を10kg得た。これらについてGC-MS で分析を行った。その結果を表3および表4に示した。また、第一の精水と第二の精水の成分を比較したものを表5に、第一の精油と第二の精油の成分を比較したものを表6に示した。更に、第二の繊維質成分については、低温乾燥粉砕機で、乾燥、粉砕した後、分級して枝を取り除いた。
【0057】
第二の精水は、有機化合物を0.15%含むものであり、その内訳は表3の通りであった。
【0058】
【0059】
第二の精油は、テルペンノイドを90質量%以上含むものであり、その内訳は表4の通りであった。また、沸点が200℃未満のものが50.3%、沸点が200℃以上のものが49.7%であることが分かった。
【0060】
【0061】
第二の繊維質成分は、第一の繊維質成分よりも、油分が40%程度除去されていた。
【0062】
第二の精水および第一の精水について精水中に含まれる有機成分をSPMEで15分間吸着させ、それぞれガスクロマトグラフで分析した(表5)。当該分析チャートのエリア総面積を比較すると第二の精水および第一の精水の約1.5倍であった。以上のことから、第二の精水は第一の精水に比べ約1.5倍の有機成分を含んでいることが分かった。
【0063】
【0064】
第二の精油と第一の精油の成分を比較した(表6)。第二の精油は、第一の精油と比較して、沸点200℃以上のテルペン含有量が高かった。そのため、第二の精油はボルニルアセテート、ボルネオールやカリオフィレンが有する効果をより期待できることが分かった。
【0065】
【0066】
実 施 例 2
睡眠導入の改善効果:
アロマディフューザー(良品計画 超音波アロマディフューザー11SS)を使用し超純水100mLに実施例1で製造した第二の精油50μLを添加したものを用意し、枕元の頭から半径50cm程度離れたところに配置し、タイマー機能を利用して就床開始1時間芳香を付与した。これを14日間継続して行ったところ、睡眠導入が改善した。
【0067】
実 施 例 3
抗ウイルス効果:
実施例1で製造した第二の精油30mlと、精製水300mlを撹拌タンクに投入し、さらにこれらを乳化装置において乳化して抗ウイルス剤を調製した。これを市販のポンプスプレー容器に入れ噴霧したところインフルエンザウイルス等のウイルスが不活性化された。
【0068】
実 施 例 4
油性芳香剤(リードディフューザータイプ):
実施例1で製造した第二の精油を用いた下記の処方で常法に従って芳香液を調製した。
(処方)
実施例1で製造した第二の精油 10ml
グリーン系香料 5ml
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル 10ml
3-メチル-3-メトキシ-1-ブタノール 40ml
これを市販の芳香剤容器(シャルダンフレグランスリビング用:エステー(株)製)に入れたころ約1か月間さわやかな芳香を呈した。
【0069】
実 施 例 5
抗菌効果:
実施例1で製造した第二の精油について抗菌作用(ハロー試験)を行なった。試験方法として、培養菌液を菌濃度が105CFU/mLとなるように、寒天培地に混合して15mLを減菌シャーレーに流して固化した。27℃で7日間の培養をした。その結果、大腸菌、黄色ブドウ菌、緑膿菌、レジオネラ菌、白セン菌、カンジダ菌の抗菌効果を確認した。
【0070】
実 施 例 6
鎮痛剤:
カルボキシビニルポリマー0.4gを精製水19.4gに加え攪拌して膨潤させた。これに実施例1で得られた第二の精油10.0gを加えて更に均一になるまで撹拌し、形状がゲル状である鎮痛剤を得た。
【0071】
実 施 例 7
抗ウイルス剤:
実施例1で得られた第二の精水を、ポンプスプレー容器(容量100ml、一回のストロークで0.3g噴射、ボトル部はポリエステル製)に入れ、布製ソファーに10ストローク噴霧した後、10分放置した。これを1サイクルとして10回繰り返した後、噴霧したソファー面の質感を評価した。その結果、いずれもごわごわ感、べとつき感といった成分残渣が確認できずソファーの散布前の風合いを維持していた。またソファ表面のウイルスを不活化することができる。
【0072】
実 施 例 8
芳香消臭剤:
実施例1で得られた第二の精水を、市販のポンプスプレーを用いて下記表7に示す各空間に噴霧したところ、空間を消臭するとともに、さわやかな芳香を付与することができた。
【0073】
【0074】
実 施 例 9
芳香消臭剤:
実施例1で得られた第二の精水10g、グリーン系香料2g、非イオン系界面活性剤5gを水350gに溶解させて芳香消臭剤を調製した。これを吸い上げ揮散タイプの消臭・芳香器(消臭力トイレ用(エステー(株))に入れて室温で揮散させたところ、1ヶ月後も揮散を続け空間を消臭するとともに、さわやかな芳香を付与することができた。
【0075】
実 施 例 10
水性液状入浴剤:
以下の処方を用い常法に従って水性液状入浴剤を調製した。
(処方)
実施例1で得られた第二の精水 0.2%
グリセリン 20%
香料 1%
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(40E.O.) 2%
ブチルパラベン 0.2%
水 残量(合計100%)
【0076】
実 施 例 11
鎮痛薬(錠剤):
以下の処方を用い常法に従って鎮痛薬(錠剤)を調製した。
(処方)
乳糖 54.0%
結晶セルロース 30.0%
澱粉分解物 10.0%
グリセリン脂肪酸エステル 5.0%
実施例1で得られた第二の精水 1.0%
【0077】
実 施 例 12
抗炎症外用剤:
カルボキシビニルポリマー0.4gを精製水19.4gに加え攪拌して膨潤させた。これに実施例1で得られた第二の精水15.0gを加えて更に均一になるまで撹拌し、形状がゲル状である抗炎症外用剤を得た。
【0078】
実 施 例 13
抗炎症外用剤:
カルボキシビニルポリマー0.4gを精製水19.4gに加え攪拌して膨潤させた。これに実施例1で得られた第二の精水15.0gを加えて更に均一になるまで撹拌し、形状がゲル状である抗炎症外用剤を得た。
【0079】
実 施 例 14
エアコンフィルター:
実施例1で第二の繊維質成分1、300gをボールミル(日陶 アルミナポットミル用ボール HD-4(日陶科学社製);1kg/8000個入り)で120分処理し、粉砕物を得た。この粉砕物100gを水1000gに加え、懸濁液を作成した。その水懸濁液に通気性のセルロース不織布(目付:100g/m3:フタムラ化学社製)を浸漬し、乾燥させてエアコンフィルターを作成した。
【0080】
実 施 例 15
ごみ袋:
(1)マスターバッチペレットの製造
実施例1で製造した第二の繊維質成分10kgとポリエチレンペレット(ウルトゼックス(登録商標)2022:プライムポリマー社製)90kgをミキサーで撹拌し、押出成形機に投入して押出成形したものを自然冷却した。次いで、これをペレタイザーに差込みペレット状(直径3mm、長さ3mm)にカットし繊維質成分を含有するポリエチレンのマスターバッチペレットを得た。
(2)フィルムおよび袋の製造
ポリエチレンペレット(ウルトゼックス(登録商標)2022:プライムポリマー社製
)に対し、上記(1)で得られたマスターバッチペレット5質量%をリボンブレンダーに投入して混合した。次いでこれをインフレーション成膜機により溶融混練し、100μmで成膜し、チューブ状フィルムとしてポリエチレンフィルム(以下、単に「消臭フィルム」という)を得た。またこれらを30cm毎に溶断してごみ袋を得た。なお、消臭フィルムは半透明で茶色と金色を混ぜたような色をしていた。
(3)ごみ袋の消臭性能試験:
直径100mmのろ紙を四つ折りにし、250ppmのアンモニア水溶液3.0mlを吸収させた。このろ紙を上記袋内に入れ、開口部をヒートシールした。このごみ袋を、10リットルのテドラーバック内に入れ、一定時間ごと検知管によりアンモニア濃度を測定したところ、24時間後も0ppmでアンモニアの漏れはなかった。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の第二の精油、精水および繊維質成分は、環境浄化、ヘルスケア等に利用できる。
【符号の説明】
【0082】
1 樹木の木質部および/または葉
2 蒸留槽
3 マイクロ波加熱装置
4 冷却装置
5 ポンプ
6 第一の精油
7 第一の精水
8 第一の繊維質成分
9 第二の精油
10 第二の精水