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特許7562293スリーブを備えたガラス・金属フィードスルー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】スリーブを備えたガラス・金属フィードスルー
(51)【国際特許分類】
   H01R 9/16 20060101AFI20240930BHJP
   A61N 1/05 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
H01R9/16 101
A61N1/05
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020095938
(22)【出願日】2020-06-02
(65)【公開番号】P2020198303
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2023-05-12
(31)【優先権主張番号】10 2019 208 035.9
(32)【優先日】2019-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr. 10, 55122 Mainz, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ローベアト ヘットラー
(72)【発明者】
【氏名】ウィー キアット チャイ
(72)【発明者】
【氏名】ライナー グラーフ
【審査官】岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0031698(US,A1)
【文献】特公昭49-046590(JP,B1)
【文献】特表2016-535389(JP,A)
【文献】実開昭53-020492(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2007/0187934(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0083715(US,A1)
【文献】特表2016-509662(JP,A)
【文献】国際公開第2010/113304(WO,A1)
【文献】特表2008-512563(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 9/16
A61N 1/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部導体(4)と、ガラスまたはガラスセラミック材料(3)と、内部導体とを含むガラス・金属フィードスルーであって、前記内部導体は、金属ピン(1)であり、前記外部導体(4)内の前記内部導体は、前記ガラスまたはガラスセラミック材料(3)に封着されており、前記金属ピン(1)は、高い伝導性および/または低い接触抵抗を有する材料と、前記金属ピン(1)を少なくとも部分的に包囲するスリーブエレメント(2)とを含む、ガラス・金属フィードスルーにおいて、
前記金属ピン(1)が、2つの端部、すなわち第1の端部(10)および第2の端部(20)を有し、前記第1の端部は、前記ガラスまたはガラスセラミック(3)に封着されており、前記第2の端部(20)は、前記スリーブエレメント(2)に収容されており、ここで、前記スリーブエレメント(2)は、前記第2の端部(20)を少なくとも部分的に包囲し、かつ、前記金属ピン(1)は、ニオブ、モリブデン、チタン、タンタル、ステンレス鋼またはタングステンを含み、かつ前記スリーブエレメント(2)は、ロウ付け可能な材料を含むことを特徴とする、ガラス・金属フィードスルー。
【請求項2】
前記スリーブエレメント(2)が、前記金属ピン(1)とともにプレスされていることを特徴とする、請求項1記載のガラス・金属フィードスルー。
【請求項3】
前記ロウ付け可能な材料が、銅またはニッケルを含むことを特徴とする、請求項1または2記載のガラス・金属フィードスルー。
【請求項4】
前記ガラス・金属フィードスルーがさらに、PCB(5)を含み、ここで、前記PCB(5)は、導体材料を備えたプリント基板を有し、ここで、前記プリント基板内に開口部が存在しており、前記開口部に前記スリーブエレメント(2)がはめ込まれており、かつ前記スリーブエレメント(2)が前記導体材料に接続されていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載のガラス・金属フィードスルー。
【請求項5】
前記金属ピン(1)の膨張係数α内部が、4~13ppm/Kの範囲にあることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のガラス・金属フィードスルー。
【請求項6】
ウェアラブル品、埋め込み型医療機器または装置における、請求項1からまでのいずれか1項記載のガラス・金属フィードスルーの使用。
【請求項7】
人間もしくは動物の体または生物の生細胞を含む細胞培養物への導入またはこれらへの装着が可能な、請求項1からまでのいずれか1項記載のガラス・金属フィードスルーを備えたエレメントであって、前記外部導体および前記内部導体は、少なくとも、動作状態で人間または動物の体と接触するその表面領域において、アレルギーの可能性が低減された材料からなる、エレメント。
【請求項8】
人間もしくは動物の体または細胞培養物と接触する前記外部導体および前記内部導体の材料から、ニッケルおよび/またはクロムが析出されない、請求項記載のエレメント。
【請求項9】
前記外部導体および前記内部導体の材料が、少なくとも、動作状態で人間もしくは動物の体または細胞培養物の生物細胞と接触するその表面領域において、ニッケルフリーおよび/もしくはクロムフリーのステンレス鋼および/もしくはオーステナイト系ステンレス鋼ならびに/またはセラミックならびに/またはガラスならびに/またはガラスセラミックを含む、請求項または記載のエレメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部導体または基体と、ガラス材料またはガラスセラミック材料と、金属ピンの形態の内部導体とからなるガラス・金属フィードスルーに関する。本発明はさらに、ウェアラブル品、埋め込み型医療機器および装置におけるガラス・金属フィードスルーの使用、ならびにかかるガラス・金属フィードスルーを備えたエレメントに関する。
【0002】
ガラス・金属フィードスルーは、電気工学の様々な応用範囲で使用されている。例えば、電子機器およびセンサーシステムのデバイスのハウジングにおける導電体のフィードスルーに使用される。これに関連して、そのような部材は、ガラスと異なる金属材料との溶融接合部を有する。金属製の内部導体を、金属製の外部導体で包囲されたガラスまたはガラスセラミック材料に封入することにより、ハウジングへの導体のハーメチックシールフィードスルーを提供することができる。フィードスルー自体またはフィードスルーの一部が人体に接触するフィードスルーは、非常に特殊なガラス・金属フィードスルーである。こうしたフィードスルーでは、使用するすべてのコンポーネントの高い耐食性および優れた長期耐久性を確保することが重要である。特にそのようなフィードスルーは、アレルギー反応の発生を防ぐために、限られた量のNiしか放出しないことが望ましい。これは、いわゆるニッケル溶出の限界値の規格で定められている。これに関して、DIN EN1811およびDIN EN12472が参照される。
【0003】
ガラス・金属フィードスルーでは、フィードスルー導体の材料としては主にFe-Ni合金、Fe-Ni-Co合金、Fe-Ni-Cr合金が使用されている。これらの材料の利点は、封止ガラスへのその熱膨張性の優れた適合にある。ただし、こうした材料はいずれも、母材に著量のNiを含んでいる。さらに、こうした材料には、該材料を腐食から保護するためのニッケルコーティングが施されており、こうしたコーティングによってまたも、望ましくない量のニッケルが放出される。
【0004】
Niの放出を防止すべく、従来技術では、ニッケル浸透を低減するのに十分な厚さの金層でフィードスルー導体または内部導体をコーティングすることが想定されていた。しかしこれには、Niの放出を十分に防ぐことができないか、またはこれを達成するには厚さ2.5μmを超える非常に厚いAu層が必要であるという欠点があった。
【0005】
独国特許出願公開第19842943号明細書では、被覆導体を用いた解決法の代替案として、内部導体としてタンタルを使用するか、またはニッケルフリーのステンレス鋼およびフェライト系ステンレス鋼を使用することが提案されており、該ステンレス鋼は、例えば米国規格AISi 446に準拠した鋼であり、これは、アルミニウムを添加したクロム系の耐熱性フェライト系ステンレス鋼である。フェライト系ステンレス鋼AISI446の膨張係数は、一般的なガラスの膨張係数よりもわずかに高い。そのため、冷却時に内部導体がガラスよりも強度に収縮し、ガラスとの界面にクラックが生じる危険性があった。さらに、フェライト系ステンレス鋼のロウ付け性も限定的であり、通常、ロウ付け時には強力なフラックスを使用する必要がある。こうした強力なフラックスは、後の操作で腐食を引き起こす可能性があり、使用前にコストをかけて洗浄する必要がある。
【0006】
独国特許発明第19842943号明細書のさらなる欠点は、内部導体の膨張係数α内部がガラスの膨張係数αガラスよりも低い場合にしかフィードスルーの十分な気密性が提供されないため、Niフリーの材料の選択が限定的であるという点にある。
【0007】
良好な伝導性を提供するために、従来技術では、ニッケルおよび/または金による金属ピンのコーティングが行われた。その場合、少なくとも金の完全なコーティングが行われるまでは、Niがこうした構成体から漏出するという問題が生じた。一方で、純銅製や真鍮製の金属ピンは、ガラスへの封着が非常に困難である。被覆導体のもう1つの問題は、水溶液または水の存在下で発生し得る腐食である。ハウジング内部のロウ付け接合には、例えば湿式めっきプロセスにより少なくとも選択的なコーティングを有する、ニオブおよびチタンなどの材料で十分である。しかし、これらの材料をめっきによりしっかりと密着させることは非常に困難である。好ましくは選択的なコーティングによる、例えば湿式めっきプロセスによるロウ付け性の改善は、技術的にも困難であるため、高コストである。
【0008】
米国特許出願公開第2004/0101746号明細書から、導体がカバーによって電解質から保護される電池用フィードスルーが知られている。
【0009】
米国特許第9,741,463号明細書には、困難な環境条件向けのフィードスルーが示されており、ここで、導体は、該導体を包囲するスリーブエレメントとともに、ガラスまたはガラスセラミック材料に封着されている。
【0010】
米国特許出願公開第2002/0155350号明細書からも同様に、スリーブエレメントが導体を包囲し、導体とスリーブエレメントとが一緒にガラスまたはガラスセラミック材料に導入されるガラス・金属フィードスルーが知られている。
【0011】
したがって本発明の課題は、従来技術の欠点を回避するガラス・金属フィードスルーを提示することにある。特に、一方では人体と接触してもニッケルを放出せず、また他方では十分なロウ付け性をも示す、金属ピンまたは内部導体を備えたフィードスルーが提示されることが望ましい。
【0012】
上述の課題は、請求項1記載のガラス・金属フィードスルー、および請求項7記載の該ガラス・金属フィードスルーの使用、および請求項8記載の、人間もしくは動物の体または細胞培養物への導入が可能な本発明によるガラス・金属フィードスルーを備えたエレメントにより解決される。
【0013】
本発明によるガラス・金属フィードスルーは、該フィードスルーが、外部導体(基体とも呼ばれる)と、ガラス材料またはガラスセラミックと、内部導体とを含み、該内部導体が、好ましくは金属ピンであり、ガラスまたはガラスセラミック材料に封着されていることを特徴とする。内部導体または金属ピンは、外部導体または基体においてガラスまたはガラスセラミック材料にはめ込まれ、融着されている。
【0014】
本発明によれば、金属ピンの材料は、高い伝導性および/または低い接触抵抗を有する材料を含む。
【0015】
さらに、金属ピンまたは内部導体は、該金属ピンまたは内部導体を少なくとも部分的に、好ましくは完全に包囲するスリーブエレメントを含む。スリーブエレメントは、金属ピンの一部にのみ施与されており、基本的には、低抵抗の際に金属ピンと、導体材料、例えばプリント基板、いわゆるPCB(rinted ircuit oard)の開口部との電気的接触を提供する役割を果たす。スリーブ材料は、ロウ付け時にロウ材で濡らされるインターフェースである。
【0016】
スリーブエレメントが金属ピンに取り付けられ、部分的にスリーブエレメントに包囲されているだけでなく、スリーブエレメントが金属ピンとともにプレスされる場合、特に好ましい。プレスにより、スリーブエレメントが金属ピン上で予定された位置にとどまり、滑らないことが保証される。プレスの際は、プレス工具、ペンチまたは電動プレス機などでスリーブエレメントを金属ピンとともにプレスする。プレスにより、スリーブエレメントが金属ピン上に固定配置される。
【0017】
本発明によれば、ガラス・金属フィードスルーの金属ピンは2つの端部を有し、第1の端部は、ガラスまたはガラス材料に封着されており、第2の端部は、スリーブに収容されており、第2の端部を、スリーブとともに電気接続部にはめ込みまたはロウ付けすることができる。
【0018】
スリーブの材料が、例えば銅またはニッケルといったロウ付け可能な材料を含む場合、特に好ましい。なぜならば、そうであれば、スリーブが例えばプリント基板(PCB)の開口部などの電気的接続部に挿入されている場合に、該スリーブをこの電気接点にロウ付けできるためである。
【0019】
金属ピンが医学的に懸念のない材料を含み、医学的応用が可能である場合、特に好ましい。金属ピンの材料として、導電性が高く、医学的に懸念がなく、さらには接触抵抗が低い材料は、例えばニオブ、チタン、タンタル、ステンレス鋼、特にフェライト系ステンレス鋼またはモリブデンである。
【0020】
スリーブを備えていない金属ピンが、例えばニオブ、チタン、タンタルまたはモリブデンといったこれらの材料のみから製造される場合、確かに、非アレルギー性で導電性の高い材料が使用されるが、導体にロウ付けすることは非常に困難である。
【0021】
本発明によれば、この課題は、例えば銅などのロウ付け可能な材料で作製されたスリーブエレメントを、ニオブ、チタン、タンタル、ステンレス鋼またはモリブデンで作製された金属ピンにプレスすることによって解決される。金属ピンにニオブ、チタン、タンタル、ステンレス鋼またはモリブデンといった材料を使用する利点は、伝導性が高いことに加え、こうした材料が実用上めっき腐食を示さないことにもある。金属ピンに別個のスリーブエレメントまたはスリーブを配置することには、良好にロウ付け可能な材料が漏出して人間と接触することがないという利点がある。金属ピンに適した材料には、ニオブ、チタン、タンタル、ステンレス鋼およびモリブデンの他に、タングステンもある。ニオブの膨張係数は、約7×10-6 1/Kであり、モリブデンの膨張係数は、5×10-6 1/Kである。
【0022】
金属ピンの膨張係数α内部は、好ましくは4~13ppm/K、すなわち4×10-6 1/K~13×10-6 1/Kの範囲にある。金属ピンの材料とは対照的に、スリーブの材料、例えば銅などは、より高い膨張係数を有する。
【0023】
熱膨張係数の違いが大きいことから、600℃を超える温度で金属ピンをガラス封着すると、銅製のスリーブが、ニオブまたはモリブデン製の金属ピンよりも膨張係数が大きいためにより強度に膨張して、スリーブが金属ピンとの接触を失うものと予想される。
【0024】
驚くべきことに、この事実にもかかわらず、高温での処理後に、低度のプレスであっても、銅スリーブが金属ピンから外れないことが判明した。これは、拡散接合、したがって銅と金属ピンとの間に化学結合が存在し、単なる圧接ではないことに起因すると考えられる。ガラスと金属との接合を生じさせるために用いられる通常の温度である800~1000℃は、スリーブからピンへの拡散を促進するのにも最適である。温度が高いほど、拡散アンカー作用がより良好に機能する。したがってこの場合、スリーブの拡散アンカー作用のための別個のプロセスステップは不要である。拡散は、ガラス封着プロセスと並行して進行する。
【0025】
金属ピンのガラス封着ゆえに、フィードスルーの厚さが1mm未満である場合、特に好ましい。このことは特に、金属、セラミックおよび/またはガラス製の基体により達成される。
【0026】
コンタクトピンと基体とをポリマー材料で例えば押出し被覆により接合する場合、例えば5バールの耐水圧を実現するには少なくとも2mmが必要である。したがって、この金属製の比較的薄いガラス・金属フィードスルーが必要とするスペースははるかに少なく、そのため、金属は基体の材料として好ましい。
【0027】
金属ピンの材料としてニオブ、チタン、タンタルおよびモリブデンを使用すると、ロウ材が濡れによってもち上がることなく、スリーブエレメントまたはスリーブの領域にのみ制限されるという利点がある。ロウ材をスリーブの領域に制限することには、例えば金属ピン全体が銅で形成されている場合よりもロウ付けプロセスをより良好に制御できるという、さらなる利点がある。
【0028】
本発明によるガラス・金属フィードスルーは、特にウェアラブル品、埋め込み型医療機器または装置において使用され、その際、外部導体と内部導体の双方が、少なくとも表面領域において、動作状態で人間または動物の体と接触する。
【0029】
本発明によれば、金属ピンの実施形態は、特に金属ピンからニッケルもクロムも析出されないため、アレルギーの可能性が低減されている。前述の材料に加えて、ステンレス鋼、特にフェライト系ステンレス鋼も金属ピンに使用できる。
【0030】
ガラス・金属フィードスルーの外部導体または基体が、良好な溶接性および高い膨張係数を特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼、好ましくは316Lステンレス鋼である場合、特に好ましい。
【0031】
ニオブまたはモリブデン製の金属ピンは、5×10-6 1/K~7×10-6 1/Kの範囲の膨張係数α内部を有し、これはガラス材料の膨張係数よりも低いため、シールフィードスルー、特にハーメチックシールフィードスルーが提供される。内部導体には、モリブデンおよびニオブの他に、タングステン、ステンレス鋼またはタンタルを使用することができる。好ましくは、外部導体または基体の膨張係数は、内部導体または金属ピンで少なくとも30MPa、好ましくは少なくとも50MPa、特に少なくとも100MPaの接合圧力が提供されるように選択される。
【0032】
そのような場合、これは、圧力グレージングである。しかし、本発明を、適合されたフィードスルーにも使用することができる。このような場合、金属材料だけでなくセラミック体におけるガラス封着も可能である。セラミックにおけるガラス封着は、ガラスに圧力をかけた状態でのみ実現可能である。
【0033】
本発明はさらに、埋め込み型医療機器または装置における本発明によるガラス・金属フィードスルーの使用、ならびに人間もしくは動物の体または生物の生細胞を含む細胞培養物への導入またはこれらへの装着が可能な、本発明によるガラス・金属フィードスルーを備えたエレメントであって、外部導体および内部導体は、少なくとも、動作状態で人間または動物の体と接触するその表面領域において、アレルギーの可能性が低減された材料、特に金属からなる、エレメントを含む。
【0034】
外部導体または基体および内部導体または金属ピンの材料は、人間もしくは動物の体または細胞培養物と接触する可能性があり、好ましくは、該材料からニッケルおよび/またはクロムが析出されないことを特徴とする。
【0035】
好ましくは、外部導体の材料は、少なくとも、動作状態で人間もしくは動物の体または細胞培養物の生物細胞と接触するその表面領域において、ニッケルフリーおよび/もしくはクロムフリーのステンレス鋼および/もしくはオーステナイト系ステンレス鋼ならびに/またはセラミックならびに/またはガラス/ガラスセラミックを含む。DIN EN1811およびDIN EN12472に準拠したニッケル溶出試験の要件を満たす材料が特に好ましい。
【0036】
好ましくは、内部導体の材料は、少なくとも、動作状態で人間もしくは動物の体または細胞培養物の生物細胞と接触するその表面領域において、ニッケルフリーおよび/もしくはクロムフリーのステンレス鋼および/もしくはニオブおよび/またはチタンおよび/またはタンタルおよび/またはタングステンを含む。DIN EN1811およびDIN EN12472に準拠したニッケル溶出試験の要件を満たす材料が特に好ましい。
【0037】
以下に、本発明につき、図面をもとにさらに詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明によるスリーブエレメントを備えた金属ピンの概略図を示す。
図2】フィードスルーにおける、本発明によるスリーブエレメントを備えた金属ピンの概略図を示す。
【0039】
図1に、本発明によるスリーブエレメント2を備えた金属ピン1の概略図を示す。金属ピン1は、例えばニオブ、チタン、タンタル、モリブデン、ステンレス鋼またはタングステンといった、導電性および生体適合性の高い材料を含む。
【0040】
金属ピン1は、2つの端部、すなわち第1の端部10および第2の端部20を有する。金属ピン1の第1の端部10は、通常、ガラス・金属フィードスルーの場合にはガラスまたはガラスセラミック材料に封着される。本発明によれば、金属ピン1の第2の端部20には、スリーブエレメント2またはスリーブが、好ましくはプレスによって施与されており、加熱時には、スリーブエレメント2の金属と金属ピン1との融着も生じ得る。スリーブエレメント2の材料としては、例えば電気接点により容易にロウ付け可能であるいずれの材料も該当する。良好にロウ付け可能な材料は、銅、ニッケルなどであり得る。
【0041】
図2に、図1に示す本発明による金属ピン1の、ガラス・金属フィードスルーにおける使用を示し、ここで、本発明による金属ピン1は、電気接点(示されている実施例では、プリント基板(PCB)5)に接続されている。本発明によれば、金属ピン1の第1の端部10がガラスまたはガラスセラミック材料3に封着されて、ガラス・金属フィードスルーとなっている。ガラス材料3は、外部導体または基体4に包囲される。基体4の材料は、例えば金属、特にステンレス鋼であり得るが、セラミックであってもよい。金属を使用した場合には、基体4の金属の膨張係数とガラス材料3の膨張係数とが異なるため、圧力グレージングが存在し得る。しかし、例えば基体4にセラミック材料を使用した場合には、適合されたフィードスルーも可能となる。
【0042】
ガラス封着された金属ピン1を備えた基体4の厚さは、通常は1mm未満の範囲にある。スリーブ2は、ガラス封着されていない第2の端部20で金属ピン1を包囲し、この場合、導体材料、ここではプリント基板(PCB)5の開口部にはめ込まれている。ガラスまたはガラスセラミック材料3には、金属ピン1の第1の端部10が取り付けられている。
【0043】
本発明により、高い生体適合性、高い導電性、非常に良好なロウ付け性および高い耐食性を特徴とする金属ピン1が初めて提示される。
【0044】
本発明は、以下の文に示される態様を含む。以下の項目は、説明の一部であって、特許請求の範囲ではない。
【0045】
項目
1.外部導体または基体(4)と、ガラスまたはガラスセラミック材料(3)と、内部導体とからなるガラス・金属フィードスルーであって、前記内部導体は、好ましくは金属ピン(1)であり、前記外部導体、特に前記基体(4)内の前記内部導体は、前記ガラスまたはガラスセラミック材料(3)に封着されている、ガラス・金属フィードスルーにおいて、前記金属ピン(1)は、高い伝導性および/または低い接触抵抗を有する材料と、前記金属ピン(1)を少なくとも部分的に包囲するスリーブエレメント(2)とを含むことを特徴とする、ガラス・金属フィードスルー。
【0046】
2.前記スリーブエレメント(2)が、前記金属ピン(1)とともにプレスされていることを特徴とする、項目1記載のガラス・金属フィードスルー。
【0047】
3.前記スリーブエレメントの材料が、ロウ付け可能な材料、特に銅またはニッケルを含むことを特徴とする、項目1または2記載のガラス・金属フィードスルー。
【0048】
4.前記金属ピン(1)が、医学的に懸念のない材料、特に以下の材料:
ニオブ、モリブデン、チタン、タンタル、ステンレス鋼およびタングステン
のうちの1つを含むことを特徴とする、項目1から3までのいずれか1項記載のガラス・金属フィードスルー。
【0049】
5.前記金属ピン(1)が、2つの端部、すなわち第1の端部(10)および第2の端部(20)を有し、前記第1の端部は、前記ガラスまたはガラスセラミック(3)に封着されており、前記第2の端部(20)は、前記スリーブエレメント(2)に収容されていることを特徴とする、項目1から4までのいずれか1項記載のガラス・金属フィードスルー。
【0050】
6.前記金属ピン(1)の膨張係数α内部が、4~13ppm/Kの範囲にあることを特徴とする、項目1から5までのいずれか1項記載のガラス・金属フィードスルー。
【0051】
7.ウェアラブル品、埋め込み型医療機器または装置における、項目1から6までのいずれか1項記載のガラス・金属フィードスルーの使用。
【0052】
8.人間もしくは動物の体または生物の生細胞を含む細胞培養物への導入またはこれらへの装着が可能な、項目1から6までのいずれか1項記載のガラス・金属フィードスルーを備えたエレメントであって、前記外部導体および前記内部導体は、少なくとも、動作状態で人間または動物の体と接触するその表面領域において、アレルギーの可能性が低減された材料、特に金属からなる、エレメント。
【0053】
9.人間もしくは動物の体または細胞培養物と接触する前記外部導体および前記内部導体の材料から、ニッケルおよび/またはクロムが析出されない、項目8記載のエレメント。
【0054】
10.前記外部導体および前記内部導体の材料が、少なくとも、動作状態で人間もしくは動物の体または細胞培養物の生物細胞と接触するその表面領域において、ニッケルフリーおよび/もしくはクロムフリーのステンレス鋼および/もしくはオーステナイト系ステンレス鋼ならびに/またはセラミックならびに/またはガラスならびに/またはガラスセラミックを含む、項目7または8記載のエレメント。
図1
図2