(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】ブラインド用減速装置
(51)【国際特許分類】
E06B 9/322 20060101AFI20240930BHJP
【FI】
E06B9/322
(21)【出願番号】P 2020096520
(22)【出願日】2020-06-02
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000134958
【氏名又は名称】株式会社ニチベイ
(74)【代理人】
【識別番号】100182349
【氏名又は名称】田村 誠治
(72)【発明者】
【氏名】大膳 正明
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-179990(JP,A)
【文献】特開2018-035595(JP,A)
【文献】特開2016-211175(JP,A)
【文献】特開2008-208602(JP,A)
【文献】特開2008-150856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 9/26 - 9/34
E06B 9/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮蔽材の昇降速度を減速させるブラインド用減速装置であって、
ケースと、
前記ケース内において前記遮蔽材の昇降により回転するローターと、
前記ローターの回転と連動して回転し、前記ケース内周面に
沿った方向に摺接することで制動力が作動する複数のウエイトと、
を備え、
前記ローターは、前記ウエイトを支持するウエイト支持部を備え、
前記ウエイト支持部は、
前記ローターの非回転時には前記ウエイトを前記ケース内周面から離間させ、前記ローターの回転時には前記ウエイトを前記ケース内周面に摺
接させるように
、前記ウエイトの外周面を支持することを特徴とする、ブラインド用減速装置。
【請求項2】
遮蔽材の昇降速度を減速させるブラインド用減速装置であって、
ケースと、
前記ケース内において前記遮蔽材の昇降により回転するローターと、
前記ローターの回転と連動して回転し、前記ケース内周面に摺接することで制動力が作動する複数のウエイトと、
を備え、
前記ローターは、前記ウエイトを支持するウエイト支持部を備え、
前記ウエイト支持部は、前記ウエイトの外周面を支持し、
前記ウエイト及び前記ウエイト支持部の前記ケース内周面と対向する面は、前記ケース内周面に沿った形状であることを特徴とする、ブラインド用減速装置。
【請求項3】
前記ウエイトの外周面には、凹部又は切欠部を有し、
前記ウエイト支持部は、凹部又は切欠部に係合させたことを特徴とする、請求項1又は2に記載のブラインド用減速装置。
【請求項4】
前記ウエイト支持部は、前記ウエイトを揺動又はスライド可能に前記ケース内周面の近傍に設けたことを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載のブラインド用減速装置。
【請求項5】
前記ウエイトは、前記ウエイト支持部の少なくとも一部の面に支持されて揺動又はスライドするようにしたことを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載のブラインド用減速装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラインド用減速装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のブラインド用減速装置として、特開2008-150856号公報(特許文献1)に示されるものがある。同文献に開示されるブラインド用減速装置は、ローターとウエイトを備え、ローターのウエイトを軸支するウエイト支持部は、ウエイトの軸方向全長に延びている。かかる構成によれば、ウエイト支持部の強度が確保され、ウエイトを安定して軸支することができ、安定した制動力(ブレーキ)を得ることができるという効果を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されるような従来のブラインド用減速装置では、ウエイトは厚み方向の中央付近でウエイト支持部に軸支されている。よって、ウエイトがウエイト支持部に軸支される位置が、ウエイトがケース内周面に接触して制動力を発生する位置から離れている。このため、遠心力によりウエイトがケース内周面と接触した際に振動(回転速度の微変動)が起こりやすく、騒音が発生しやすいという課題があった。
【0005】
そこで本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、ウエイトの振動(回転速度の微変動)による騒音の発生を抑制することができるブラインド用減速装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明によれば、遮蔽材の昇降速度を減速させるブラインド用減速装置であって、ケースと、前記ケース内において前記遮蔽材の昇降により回転するローターと、前記ローターの回転と連動して回転し、前記ケース内周面に摺接することで制動力(ブレーキ)が作動する複数のウエイトと、を備え、前記ローターは、前記ウエイトを支持するウエイト支持部を備え、前記ウエイト支持部は、前記ウエイトの外周面を支持することを特徴とする、ブラインド用減速装置が提供される。
【0007】
かかる構成によれば、ウエイト支持部がウエイトの外周面を支持するため、ウエイトがウエイト支持部に支持される位置が、ウエイトがケース内周面に接触して制動力を発生する位置に近くなる。よって、ウエイトの振動(回転速度の微変動)による騒音の発生を抑制することができる。
【0008】
本発明は様々な応用が可能である。例えば、前記ウエイトの外周面には、凹部又は切欠部を有し、前記ウエイト支持部は、凹部又は切欠部に係合させてもよい。かかる構成によれば、ウエイト支持部はウエイトをケース内周面に安定して摺接可能に支持できる。
【0009】
また、前記ウエイト支持部は、前記ウエイトを揺動又はスライド可能に前記ケース内周面の近傍に設けてもよい。かかる構成によれば、ウエイト支持部の位置がケース内周面近傍のため、振動(回転速度の微変動)を防止できる。
【0010】
また、前記ウエイトは、前記ウエイト支持部の少なくとも一部の面に支持されて揺動又はスライドするようにしてもよい。かかる構成によれば、ウエイトをウエイト支持部の少なくとも一部の面で支持させることで、ウエイト支持部を小さくすることができる。よって、ウエイトがウエイト支持部に支持される位置が、ウエイトがケース内周面に接触して制動力を発生する位置により近づけることができる。
【0011】
また、前記ウエイト及び前記ウエイト支持部の前記ケース内周面と対向する面は、前記ケース内周面に沿った形状であってもよい。かかる構成によれば、ウエイト支持部をケース内周面近傍のより近い位置に設けることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ウエイトの振動(回転速度の微変動)による騒音の発生を抑制することができるブラインド用減速装置を提供することができる。本発明のその他の効果については、後述する発明を実施するための形態においても説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1の実施形態のブラインド100の全体構成を示す正面図である。
【
図3】ブレーキユニット140に昇降コード130が転回する状態を上から見た図である。
【
図4】ブレーキ装置180の断面図であり、(a)は制動力が作動する前の状態を示す図であり、(b)は制動力が作動した状態を示す図である。
【
図5】ローター186とウエイト188の分解斜視図である。
【
図6】従来のブレーキ装置580を示す断面図である。
【
図7】第2の実施形態のブレーキ装置280を示す断面図である。
【
図8】第3の実施形態のブレーキ装置380を示す断面図であり、(a)は制動力が作動する前の状態を示す図であり、(b)は制動力が作動した状態を示す図である。
【
図9】第4の実施形態のブレーキ装置480を示す断面図であり、(a)は制動力が作動する前の状態を示す図であり、(b)は制動力が作動した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0015】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係るブラインド100の構成について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態のブラインド100の全体構成を示す正面図である。
【0016】
ブラインド100は、
図1に示したように、ヘッドボックス110と、ヘッドボックス110から垂下されるスラット(遮蔽材)120を昇降させるための昇降コード130と、ヘッドボックス110内において昇降コード130の下降方向の移動速度を減速させるブレーキユニット140と、を備えて構成される。以後の説明において、前後とはブラインド100の前後方向を、左右とはブラインド100の長手方向を、入り口とは昇降コード130をスラット120方向からブレーキユニット140に挿入する側を、出口とは昇降コード130をブレーキユニット140から操作部方向(回転操作棒115の方向)へ導出する側を言う。以下、ブラインド100の各構成要素について説明する。
【0017】
(ヘッドボックス110)
ヘッドボックス110は、図示していない窓枠や天井等にブラケット111を介して固定される。ヘッドボックス110には、
図1に示したように、一般的なブラインドと同様に、複数のスラット120を整列状態に吊り下げるラダーコード160の上端が巻取り及び巻解き可能に連結される回転ドラム112と、後述する昇降コード130の移動を拘束可能なストッパ装置113が設けられている。
【0018】
回転ドラム112には、回転軸114が一体に回転するように挿通している。回転軸114は、ヘッドボックス110の一端に設けられる回転操作棒115によって回転駆動される。よって、回転操作棒115によって回転軸114を介して回転ドラム112の回転が操作されることにより、回転ドラム112がラダーコード160の上端を巻取り及び巻解いて、スラット120が傾動する。回転操作棒115内には、昇降コード130が移動可能に挿通している。
【0019】
(スラット120)
複数のスラット120は、開口部を遮蔽したり開放したりするものである。複数のスラット120は、
図1に示したように、ラダーコード160によって整列状態に支持されており、ラダーコード160が傾動することによって回転する。
【0020】
(昇降コード130)
昇降コード130は、スラット120を昇降するものである。昇降コード130は、
図1に示したように、ヘッドボックス110の長手方向の複数個所から垂下するように配置され、上端がヘッドボックス110内に導入される。ヘッドボックス110内では、昇降コード130は、ストッパ装置113を介した後に、ヘッドボックス110の適宜位置に設けられたブレーキユニット140を通過してヘッドボックス110から導出される。
【0021】
ヘッドボックス110から導出された各昇降コード130は、前述のように回転操作棒115内を挿通し、回転操作棒115の下端から導出されてつまみ132に連結される。昇降コード130は直接操作するか、つまみ132によって操作される。なお、本実施形態では、昇降コード130は、ストッパ装置113を介した後に、ブレーキユニット140を通過する構成としたが、かかる構成に限定されない。昇降コード130は、ストッパ装置113を介す前に、ブレーキユニット140を通過する構成としてもよい。
【0022】
昇降コード130の下端は、スラット120に設けられた挿通孔(図示せず)を順次挿通するか、スラット120の前後の縁部を通って、スラット120の列の下方に配置されたボトムレール170に連結される。
【0023】
(ブレーキユニット140)
ブレーキユニット140は、スラット120の下降速度を減速させるものである。ブレーキユニット140は、
図1に示したように、ヘッドボックス110内において回転操作棒115の近傍に設けられ、ブレーキユニット140を通過した昇降コード130が回転操作棒115に導入されるようになっている。
【0024】
ブレーキユニット140の構成について、
図2及び
図3を参照しながら説明する。
図2は、ブレーキユニット140を示す図である。
図3は、ブレーキユニット140に昇降コード130が転回する状態を上から見た図である。
【0025】
ブレーキユニット140は、
図2に示したように、ユニット化されている。ブレーキユニット140は、昇降コード130が転回される上ローラ141a及び下ローラ141bと、上ローラ141a及び下ローラ141b上で一つの昇降コード130が重複して転回することを防止する分離案内部142と、昇降コード130を上ローラ141a方向に押圧する板バネ144と、上ローラ141a及び下ローラ141bの回転に制動力を付与するブレーキ装置180と、を備えて構成される。
【0026】
(上ローラ141a、下ローラ141b)
上ローラ141a及び下ローラ141bは、昇降コード130が転回されるものである。上ローラ141aと下ローラ141bは、
図2に示したように、左右に間隔をあけて並べられ、上下に段差を設けて配置されている。上ローラ141a及び下ローラ141bは、円筒状の形状であり、昇降コード130が転回されている。上ローラ141aと下ローラ141bの間には分離案内部142が配置されている。上ローラ141aの上部には、板バネ144が配置されている。
【0027】
下ローラ141bの軸心には、
図3に示したように、連動軸145が貫通しており、一体に回転する。連動軸145は、第1連動部146を介してブレーキ軸182に連結されている。よって、ブレーキ装置180の制動力が第1連動部146、連動軸145を介して下ローラ141bに伝達される。第1連動部146は、例えばギアによって構成される。また、上ローラ141aと下ローラ141bは、第2連動部147を介して一体に回転するように回転が伝達される。第2連動部147は、例えばギアによって構成される。
【0028】
(分離案内部142)
分離案内部142は、上ローラ141aと下ローラ141b上を転回する昇降コード130を複数箇所において複数回分離するものである。分離案内部142は、
図2に示したように、上ローラ141aと下ローラ141bをブラインド100の長手方向に分離するように上ローラ141aと下ローラ141bの間に設けられる。分離案内部142は、間隔を空けて並設された棒状の第1分離部142aと第2分離部142bが略U字状に構成されている。
【0029】
分離案内部142は、
図3に示したように、第1分離部142aと第2分離部142bが上ローラ141aと下ローラ141bの軸方向に配置されるように設けられる。昇降コード130は、第1昇降コード130-1が第1分離部142aの外側に配置されており、第2昇降コード130-2が第1分離部142aと第2分離部142bとの間に配置されており、第3昇降コード130-3が第2分離部142bの外側に配置されている。
【0030】
(板バネ144)
上ローラ141aの上部には、
図2に示したように、板バネ144が配置されている。板バネ144の一端はケース148の天井部に連結されている。板バネ144は、上ローラ141aの軸方向ほぼ全長にわたる。よって、板バネ144は、上ローラ141aを転回する第1昇降コード130-1、第2昇降コード130-2及び第3昇降コード130-3の3本の昇降コード130上に配置され、3本の昇降コード130を上ローラ141a方向に押圧する。
【0031】
(ブレーキ装置180)
ブレーキ装置180は、上ローラ141aと下ローラ141bの回転に制動力を付与するものである。ブレーキ装置180は、
図3に示したように、連動軸145、第1連動部146を介して制動力を伝達可能に下ローラ141bに連結されている。ブレーキ装置180の構成について、
図4及び
図5を参照しながら説明する。
図4は、ブレーキ装置180の断面図である。
図5は、ローターとウエイトの分解斜視図である。
【0032】
ブレーキ装置180は、
図4に示したように、ブレーキ軸182と、ブレーキ軸182が中心に配置されるケース184と、ケース184内においてスラット120の下降により回転するローター186と、ローター186の回転と連動して回転し、ケース内周面184aに摺接することで制動力(ブレーキ)が作動する複数のウエイト188と、を備える。ローター186は、ウエイト188を支持するウエイト支持部186aを備え、ウエイト支持部186aは、ウエイト188の外周面を支持するものである。ここでウエイト188の外周面とは、ケース内周面184aに近接するウエイト188の最も外側に位置する面のみでなく、外側面寄りの両側面も含むものとする。
【0033】
ケース184は、
図4に示したように、円筒形であり、内部にブレーキ軸182、ローター186及びウエイト188が配置されている。ケース184の中心にブレーキ軸182が配置されており、ブレーキ軸182を中心に同心円状にローター186とウエイト188が配置されている。ケース184は、ケース内周面184aがウエイト188と摺接することによりローター186を介してブレーキ軸182に制動力を発生させる。
【0034】
ローター186の軸心には、
図4に示したように、ブレーキ軸182が一体に回転するように貫通している。ローター186は、
図5に示したように、大小の円盤状部186b、186cからなる。大小の円盤状部186b、186cは同心である。大円盤状部186bは、ケース184の内周径よりも若干小径に構成されており、外周に沿って等間隔に8つのウエイト支持部186aが軸方向に突出して形成されている。よって、ウエイト支持部186aは、ケース内周面184aの近傍に配置される。
【0035】
ウエイト支持部186aの、ケース内周面184aと対向する面は、
図4に示したように、ケース内周面184aに沿った形状を有している。ウエイト支持部186aのケース内周面184aと対向していない一部の面186dは、ウエイト188の凹部188bに嵌め合わされて、ウエイト188を揺動可能に支持する。
【0036】
小円盤状部186cは、
図5に示したように、大円盤状部186bから軸方向に突出している。小円盤状部186cの外周には、
図4に示したように、8つのウエイト188が円周方向に配置される。
【0037】
ウエイト188は、円周方向に8つ配置されている。ウエイト188は、内周面の形状が小円盤状部186cの外周に沿っており、外周面の形状がケース内周面184aに沿った円弧状外周面188aを形成している。円弧状外周面188aの一端近傍には、
図4(a)に示したように、ウエイト支持部186aの一部の面186dが係合する凹部188bが形成されている。凹部188bは、正円の一部を切除した切除面csから連続する円周の3/4に当たる円弧状に形成されている。凹部188bの円の中心がウエイト188の回転中心Cとなる。
【0038】
ウエイト188は、このような凹部188bの形状により、ウエイト188とケース内周面184aとの間に発生する摩擦力Fbの方向と平行な回転中心Cを通る線が凹部188bの点zを通るため、摩擦力Fbを受け止めることができる。ウエイト188の回転中心Cとケース内周面184aとの間隔は、L1である。
【0039】
円弧状外周面188aからは、
図5に示したように、径方向に摺接部188cが突出している。摺接部188cは、ウエイト188が回転したときにケース内周面184aに摺接する。ウエイト188は、ローター186の非回転時には、円弧状外周面188aがケース内周面184aから離間しており(
図4(a)参照)、ローター186の回転時には、摺接部188cがケース内周面184aに摺接する(
図4(b)参照)。
【0040】
以上、ブレーキ装置180の構成について説明した。次に、ブレーキ装置180の作用について、従来のブレーキ装置と比較しながら説明する。
【0041】
ブレーキ装置180は、
図4(a)の矢印aに示したように、ローター186が回転すると、ウエイト188に遠心力Faが発生する。すると、ウエイト支持部186aに支持されて矢印b方向にウエイト188が回転し、摺接部188cがケース内周面184aに摺接する。よって、ウエイト188の摺接部188cとケース内周面184aとの間に摩擦力Fbが発生する(現象1)。
【0042】
このとき、ウエイト188の回転中心Cとケース内周面184aとの間隔がL1であるため、回転モーメントFb×L1もウエイト188に作用する。よって、ローター186の時計回りの回転は摩擦力Fbを増加する方向、反時計回りの回転は摩擦力Fbを減少する方向に作用する(現象2)。
【0043】
現象1の摩擦力Fbは回転速度が一定でもバラツキがあり、微変動するため、摩擦力Fbによって引き起こされる現象2の摩擦力Fbの増減分にも回転速度の微変動が発生する。そして、現象1と現象2の摩擦力Fbの微変動部分の合算は、ローター186の回転方向にかかわらず単純合算されてさらに大きくなる。その結果、回転速度にもさらに大きくなった微変動、すなわちビビリ振動が発生する。
【0044】
しかし、本実施形態のブレーキ装置180は、ウエイト188の回転中心Cとケース内周面184aとの間隔がL1であり、後述する従来の間隔L5に比べてかなり小さい。このため、回転モーメントFb×L1も小さくなり、ひいては現象2が小さくなる。よってビビリ振動が減少する。
【0045】
これに対して、従来のブレーキ装置580は、
図6に示したように、ウエイト支持部586aがウエイト588の径方向における中央位置を支持しているため、ウエイト588の回転中心Cとケース内周面584aとの間隔L5が第1の実施形態の間隔L1よりも大きい。このため、
図6の矢印kの方向にローター586が回転し、ウエイト588が矢印mの方向に回転すると、回転モーメントFb×L5が大きくなり、ひいては現象2も大きくなる。よってビビリ振動が発生する。
【0046】
以上、ブレーキ装置180の作用について説明した。次に、ブラインド100の動作について、再び
図1を参照しながら説明する。スラット120を上昇させるときには、つまみ132又は昇降コード130を回転操作棒115から引き下げる。よって、昇降コード130の下端が連結されたボトムレール170が引き上げられて、ボトムレール170とともに下方のスラット120から順次上昇していく。
【0047】
このとき、ブレーキユニット140では、第1連動部146に内蔵されたワンウェイクラッチ(図示せず)の働きにより、ブレーキ装置180と下ローラ141bの接続が解除されるため、上下ローラ141a、141bは回転自在になる。よって、昇降コード130は、上下ローラ141a、141bから抵抗を受けずに移動するため、軽い力で操作することができる。スラット120を停止させたいときには、所望の位置でつまみ132又は昇降コード130から手を離すと、ストッパ装置113が作動して、スラット120を停止させることができる。
【0048】
次に、スラット120を下降させるときには、つまみ132又は昇降コード130を回転操作棒115から若干引き下げて、ストッパ装置113を解除する。この後、つまみ132又は昇降コード130から手を放すと、スラット120及びボトムレール170の自重により昇降コード130の下端が引き下げられて、ボトムレール170とともにスラット120が下降していく。このとき、ブレーキユニット140では、第1連動部146の働きにより、ブレーキ装置180と下ローラ141bが接続されるため、ブレーキ装置180は上下ローラ141a、141bの回転に制動力を付与する。
【0049】
よって、上下ローラ141a、141bに転回された各昇降コード130は、分離案内部142によって交差することなく上下ローラ141a、141bに安定して回転を付与し、上下ローラ141a、141bから抵抗を受けながら移動するため、スラット120及びボトムレール170は減速しながら下降する。
【0050】
(第1の実施形態の効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、ウエイト188がウエイト支持部186aに軸支される位置が、ウエイト188がケース内周面184aに接触して制動力を発生する位置と近い。よって、ウエイト188の振動(回転速度の微変動)による騒音の発生を抑制することができる。
【0051】
また、ウエイト188の外周面には凹部188bを有し、ウエイト支持部186aは凹部188bに係合させるため、ウエイト支持部186aはウエイト188をケース内周面184aに安定して摺接可能に支持できる。
【0052】
また、ウエイト支持部186aの位置がケース内周面184a近傍のため、振動(回転速度の微変動)を防止できる。
【0053】
また、ウエイト188をウエイト支持部186aの少なくとも一部の面で支持させることで、ウエイト支持部186aを小さくすることができる。よって、ウエイト188がウエイト支持部186aに軸支される位置が、ウエイト188がケース内周面184aに接触して制動力を発生する位置により近づけることができる。
【0054】
また、ウエイト188及びウエイト支持部186aのケース内周面184aと対向する面は、ケース内周面184aに沿った形状であるため、ウエイト支持部186aをケース内周面184a近傍のより近い位置に設けることができる。
【0055】
(第2の実施形態)
次に、本実施形態に係るブレーキ装置280について、
図7を参照しながら説明する。
図7は、本実施形態のブレーキ装置280を示す図である。本実施形態は、ウエイト288の凹部288bとローター286のウエイト支持部286aの形状が第1の実施形態と異なるものである。本実施形態では、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0056】
本実施形態のブレーキ軸282、ケース284は、第1の実施形態のブレーキ軸182、ケース184に対応するものとできるため、説明を省略する。
【0057】
ウエイト288は、
図7に示したように、凹部288bが、正円の半分を切除した切除面csから連続する半円の円弧状に形成されている。凹部288bが半円状である点以外は第1の実施形態のウエイト188と同様の構成である。
【0058】
ローター286は、ウエイト支持部286aがウエイト288の凹部288bに形状に合わせた略半円柱状の形状となっている。ウエイト支持部286aの外周面はウエイト288の円弧状外周面288aと連続する円弧状に形成されている。
【0059】
このように、ウエイト288の凹部288bが半円状であり、これに合わせてウエイト支持部286aも小さく構成されているため、ウエイト288がケース内周面284aに接近するように配置される。よって、ウエイト288の回転中心Cとケース内周面284aとの間隔L2は、第1の実施形態よりも小さくすることができ、ビビリ振動の発生をさらに抑えることができる。また、ウエイト288は、第1の実施形態のウエイト188と同様に、
図7の矢印aに示したように、ローター286が回転すると、ウエイト支持部286aに支持されて矢印b方向に回転し、摺接部288cがケース内周面284aに摺接する。
【0060】
(第2の実施形態の効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、ウエイト288の凹部288bが半円状であり、これに合わせてウエイト支持部286aも小さく構成されている。よって、ウエイト288の回転中心Cとケース内周面284aとの間隔L2を小さくすることができ、ビビリ振動の発生を抑えることができる。
【0061】
(第3の実施形態)
次に、本実施形態に係るブレーキ装置380について、
図8を参照しながら説明する。
図8は、本実施形態のブレーキ装置380を示す図である。本実施形態は、ウエイト388とローター386の形状が第1の実施形態と異なるものである。本実施形態では、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0062】
本実施形態のブレーキ軸382、ケース384は、第1の実施形態のブレーキ軸182、ケース184に対応するものとできるため、説明を省略する。
【0063】
ローター386は、
図8に示したように、ウエイト支持部386aに加え、弾性部386fを備える。ウエイト支持部386aは、ブレーキ軸382が挿通する中心部386eから径方向に放射状に延びるウエイト支持軸386cの先端に形成されている。ウエイト支持部386aは第1の実施形態のウエイト支持部186aと同様に、ケース内周面384aの近傍に配置されている。
【0064】
弾性部386fも中心部386eから径方向に放射状に延びており、ウエイト支持軸386cに並設されている。弾性部386fは、ローター386が所定回転速度以下(低速回転時)になると、ウエイト388をケース内周面384aから離間する方向に付勢するように設けられている。
【0065】
ウエイト388は、
図8に示したように、円弧状外側面と側面との交点である外周面388aの一端の角に、切欠部388bが形成されている。切欠部388bは、正円の一部を切除した切除面csから連続する円周の1/4に当たる円弧状に形成されている。切欠部388bの円の中心がウエイト388の回転中心Cとなる。切欠部388bには、ウエイト支持部386aの一部の面386dが嵌め合わされる。
【0066】
切欠部388b形状に合わせてウエイト支持部386aも小さく構成されているため、ウエイト388がケース内周面384aに接近するように配置される。よって、ウエイト388の回転中心Cとケース内周面384aとの間隔L3は、第1の実施形態よりも小さくすることができ、ビビリ振動の発生をさらに抑えることができる。また、ウエイト388には、弾性部386fの先端が挿入されて係合する係合部388dが形成されている。
【0067】
ウエイト388は、隣り合う2つのウエイト支持軸386cの間に配置されている。ウエイト388の円弧状外周面388a以外の部分は、2つのウエイト支持軸386c及び弾性部386fにほぼ沿って形成されている。ウエイト388は一方のウエイト支持軸386cと弾性部386fに摺接しているが、他方のウエイト支持軸386cとの間には隙間が形成されている。
【0068】
以上、ブレーキ装置380の構成について説明した。次に、ブレーキ装置380の作用について説明する。ローター386が、
図8(a)の矢印cに示したように回転すると、ウエイト388が矢印d方向に回転する。よって、ウエイト388は、
図8(b)に示したように、摺接部388cがケース内周面384aに摺接し、制動力が発生する。また、同時に弾性部386fが
図8(a)の矢印e方向に弾性変形する。
【0069】
ローター386の回転が所定回転速度以下(低速回転時)になると、矢印d方向の回転が弱まり、同時に
図8(b)に示す弾性部386fの矢印g方向への付勢力も加わり、ウエイト388は矢印f方向に回転し、ウエイト388がケース内周面384aから離間する。
【0070】
(第3の実施形態の効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、ウエイト388の外周面には、切欠部388bを有し、ウエイト支持部386aは、切欠部388bに係合させたため、ウエイト支持部386aはウエイト388をケース内周面384aに安定して摺接可能に支持できる。よって、ウエイト388の回転中心Cとケース内周面384aとの間隔L3を小さくすることができ、ビビリ振動の発生を抑えることができる。
【0071】
また、ローター386に弾性部386fを設けたため、ローター386の回転が所定回転速度以下(低速回転時)になると、弾性部386fの付勢力により、ウエイト388がケース内周面384aから離間する方向により確実に回転することができる。
【0072】
(第4の実施形態)
次に、本実施形態に係るブレーキ装置480について、
図9を参照しながら説明する。
図9は、本実施形態のブレーキ装置480を示す図である。本実施形態は、ウエイト488とローター486の形状が第1の実施形態と異なるものである。本実施形態では、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0073】
本実施形態のブレーキ軸482、ケース484は、第1の実施形態のブレーキ軸182、ケース184に対応するものとできるため、説明を省略する。
【0074】
ローター486は、
図9に示したように、ウエイト支持部486aが、ブレーキ軸482が挿通する中心部486eから径方向に放射状に延びるウエイト支持軸486cの先端に形成されている。ウエイト支持部486aは、ウエイト支持軸486cの円周方向両側に形成されており、先端が径方向内側に向かって傾斜している。ウエイト支持部486aは弾性変形可能に構成されており、ウエイト488をケース484の中心方向に付勢している。ウエイト支持部486aは第1の実施形態のウエイト支持部186aと同様に、ケース内周面484aの近傍に配置されている。
【0075】
ウエイト488は、
図9に示したように、円弧状外側面と両側面との交点である外周面488aの両端の角に、ウエイト支持部486aの先端が係合する切欠部488bが形成されている。円弧状外周面488aはケース内周面484aに接近するように配置される。よって、ウエイト488のウエイト支持部486aの先端との係合箇所Dとケース内周面484aとの間隔L4を小さくすることができる。
【0076】
ウエイト488は、隣り合う2つのウエイト支持軸486cの間に径方向にスライド可能に配置されている。ウエイト488と2つのウエイト支持軸486cとの間には隙間が形成されている。ウエイト488の内周面は中心部486eの外周に沿って配置されている。
【0077】
以上、ブレーキ装置480の構成について説明した。次に、ブレーキ装置480の作用について説明する。ローター486が、
図9(a)の矢印h方向に回転すると、ウエイト488が矢印i方向に示したように、係合箇所Dに作用する弾性力に逆らってケース内周面484aの方向に移動する。ウエイト支持部486aが弾性変形して、ウエイト488は、
図9(b)に示したように、円弧状外周面488aがケース内周面484aに摺接し、制動力が発生する。
【0078】
ローター486の回転が所定回転速度以下(低速回転時)になると、矢印i方向の遠心力が弱まり、同時にウエイト支持部486aの付勢力も加わり、
図9(b)の矢印jに示したように、ウエイト488が中心方向にスライドし、ウエイト488がケース内周面484aから離間する。
【0079】
(第4の実施形態の効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、ウエイト488のウエイト支持部486aの先端との係合箇所Dとケース内周面484aとの間隔L4を小さくすることができ、ビ
ビリ振動の発生を抑えることができる。また、ウエイト支持部486aは弾性変形可能に構成されており、ウエイト488をケース484の中心方向に付勢している。このため、ローター486の回転が所定回転速度以下(低速回転時)になると、ウエイト支持部486aの付勢力により、ウエイト488がケース内周面484aから離間する方向により確実にスライドすることができる。
【0080】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0081】
例えば、上記実施形態では、ウエイトの外周面には、凹部又は切欠部を有し、ウエイト支持部は、凹部又は切欠部に係合させる構成としたが、本発明はこの例に限定されない。ウエイトの振動(回転速度の微変動)による騒音の発生を抑制することができれば、凹部又は切欠部を不要としてもよく、任意の設計とすることができる。
【0082】
また、上記実施形態では、ウエイト支持部は、ウエイトを揺動又はスライド可能にケース内周面の近傍に設けたが、本発明はこの例に限定されない。ウエイトの振動(回転速度の微変動)による騒音の発生を抑制することができれば、任意の設計とすることができる。
【0083】
また、上記実施形態では、ウエイトは、ウエイト支持部の少なくとも一部の面に支持されて揺動する構成としたが、本発明はこの例に限定されない。ウエイトの振動(回転速度の微変動)による騒音の発生を抑制することができれば、任意の設計とすることができる。
【0084】
また、上記実施形態では、ウエイト及び前記ウエイト支持部の前記ケース内周面と対向する面は、前記ケース内周面に沿った形状としたが、本発明はこの例に限定されない。ウエイトの振動(回転速度の微変動)による騒音の発生を抑制することができれば、任意の設計とすることができる。
【0085】
以上説明した実施形態・応用例・変形例等は、適宜組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0086】
100 ブラインド
110 ヘッドボックス
111 ブラケット
112 回転ドラム
113 ストッパ装置
114 回転軸
115 回転操作棒
120 スラット(遮蔽材)
130 昇降コード
130-1 第1昇降コード
130-2 第2昇降コード
130-3 第3昇降コード
132 つまみ
140 ブレーキユニット
141a 上ローラ
141b 下ローラ
142 分離案内部
142a 第1分離部
142b 第2分離部
144 板バネ
145 連動軸
146 第1連動部
147 第2連動部
148 ケース
160 ラダーコード
170 ボトムレール
180、280、380、480、580 ブレーキ装置(ブラインド用減速装置)
182、282、382、482 ブレーキ軸
184、284、384、484 ケース
184a、284a、384a、484a ケース内周面
186、286、386、486 ローター
186a、286a、386a、486a、586a ウエイト支持部
186b 大円盤状部
186c 小円盤状部
186d、286d 一部の面
188、288、388、488、588 ウエイト
188a、288a、388a、488a、 円弧状外周面
188b、288b 凹部
188c、288c、388c 摺接部
386c、486c ウエイト支持軸
386e、486e 中心部
386f 弾性部
388b、488b 切欠部
388d 係合部
C 回転中心
cs 切除面
Fa 遠心力
Fb 摩擦力
L1~L5 間隔