(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/00 20060101AFI20240930BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20240930BHJP
G03G 15/01 20060101ALI20240930BHJP
B41J 29/393 20060101ALI20240930BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20240930BHJP
H04N 1/04 20060101ALI20240930BHJP
H04N 1/12 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
G03G15/00 303
G03G21/00 510
G03G15/01 Y
B41J29/393 105
H04N1/00 567M
H04N1/04 106Z
H04N1/12
(21)【出願番号】P 2020098511
(22)【出願日】2020-06-05
【審査請求日】2023-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099324
【氏名又は名称】鈴木 正剛
(72)【発明者】
【氏名】湯本 貢司
(72)【発明者】
【氏名】横谷 貴司
(72)【発明者】
【氏名】及川 敏史
(72)【発明者】
【氏名】安藤 裕
(72)【発明者】
【氏名】西方 彰信
(72)【発明者】
【氏名】福原 力
(72)【発明者】
【氏名】小田 裕一朗
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-147562(JP,A)
【文献】特開2018-101121(JP,A)
【文献】特開2006-064895(JP,A)
【文献】特開2020-048088(JP,A)
【文献】特開2020-061623(JP,A)
【文献】特開2019-101326(JP,A)
【文献】特開2005-311644(JP,A)
【文献】特開2017-030288(JP,A)
【文献】特開2017-183810(JP,A)
【文献】特開2016-148781(JP,A)
【文献】特開2018-074516(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 29/00-29/70
G03G 13/34
15/00
15/36
21/00-21/02
21/14
21/20
H04N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成条件に基づいてシートに画像及び調整用画像を形成する画像形成手段と、
前記画像形成手段により形成された前記画像及び前記調整用画像を前記シートに定着させる定着手段と、
基準部材と、
前記シートが搬送される搬送方向において、前記定着手段よりも下流側に設けられる読取手段であって、読取領域を前記シートが通過している状態において前記シート上に形成された前記調整用画像を読み取る読取手段と、
制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記読取手段による前記調整用画像の読取結果に基づいて前記画像形成条件を生成し、前記読取手段による前記基準部材の読取結果に基づいて前記読取手段のシェーディング補正を行い、
前記制御手段は、
複数のシートに前記画像と前記調整用画像の両方を形成している期間において、前記読取手段による前記基準部材の読み取りを実行するための実行条件が満たされ
た場合、前記画像と前記調整用画像の両方が形成された
複数のシートを搬送させ前記読取領域を通過させ
続けながら、前記読取手段により前記シート上に形成された前記調整用画像を読み取ることなく前記基準部材の読み取りを行わせることを特徴とする、
画像形成装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記読取手段と前記基準部材との位置関係を、前記読取手段によって前記読取領域で前記シート上の前記調整用画像を読み取るための第1の位置関係と、前記読取手段によって前記基準部材を読み取るための第2の位置関係と、に切り替えることが可能であり、
前記制御手段は、前記読取手段による前記基準部材の読み取りを実行するための実行条件が満たされると、前記読取手段と前記基準部材との位置関係を前記第2の位置関係とすることを特徴とする、
請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記読取手段は、前記調整用画像を読み取る場合、前記読取領域を通過する前記シート上の前記調整用画像を読み取るための第1の位置に移動し、前記基準部材を読み取る場合、前記基準部材を読み取るための第2の位置に移動することを特徴とする、
請求項1記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記読取手段は、前記第1の位置関係において、前記読取領域を通過する前記シート上の前記調整用画像を読み取るための第1の位置に移動し、前記第2の位置関係において、前記基準部材を読み取るための第2の位置に移動することを特徴とする、
請求項2記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記画像形成条件は、前記画像形成手段が前記シートに形成する画像の幾何特性の調整に用いられることを特徴とする、
請求項1記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記幾何特性は、前記画像が形成される前記シート上の位置を含むことを特徴とする、
請求項5記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記幾何特性は、前記シート上の画像の直角度を含むことを特徴とする、
請求項5記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記実行条件は、前記読取領域を通過する前記シートの枚数に関する条件を含むことを特徴とする、
請求項1記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記読取手段は、光源を含み、
前記実行条件は、前記光源の累積発光時間を含むことを特徴とする、
請求項1記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記実行条件は、前記読取手段の温度に関する条件を含むことを特徴とする、
請求項1記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記基準部材の色は白であることを特徴とする、
請求項1記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記基準部材は、前記搬送方向としてのシートの長さ方向及び前記シートの長さ方向に直交するシートの幅方向の両方に直交する方向において、前記読取手段と前記読取領域との間に位置することを特徴とする、
請求項1記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記読取手段は、シートから反射した反射光を折り返すことなく受光するCISであることを特徴とする、
請求項1記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記読取手段は、前記搬送方向に直交する方向に複数の受光素子を備え、
前記制御手段は、前記搬送方向に前記読取手段を移動させることで前記読取手段と前記基準部材を対向させて前記基準部材の読み取りを実行させ、または前記搬送方向に前記基準部材を移動させることで前記読取手段と前記基準部材を対向させて前記基準部材の読み取りを実行させることを特徴とする、
請求項1記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、複写機、ファクシミリ、複合機等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
商用の印刷機で生成される印刷物は、印字位置精度の安定化が求められる。特許文献1には、印字位置精度の安定化を図った画像形成装置が開示される。この画像形成装置は、印字位置精度の安定化のために、シートに印字位置(画像形成位置)の目印となる調整用画像を印刷して調整用チャートを作成する。調整用チャートは、シートの搬送経路に設けられた画像読取センサにより、調整用画像が読み取られる。画像形成装置は、調整用画像の読取結果を画像形成条件にフィードバックして、印字位置を調整する。
【0003】
画像読取センサは、検出精度を維持するために、校正(キャリブレーション)が行われる。画像読取センサの校正(キャリブレーション)はシェーディング補正と呼ばれる。シェーディング補正は、例えば、複数のシートに連続して画像を形成する場合に、周期的に実行される。特許文献2には、複数の画像読取センサのシェーディング補正を行う技術が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-11285号公報
【文献】特開2018-111582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シェーディング補正を行っている間、画像読取センサは、画像の読み取りを行うことができなくなる。そのために、シェーディング補正が終了するまで、画像形成装置は、印刷ジョブに応じた画像形成を待機することになる。これは生産性の低下を招く。また、待機することで画像形成装置の機内温度が変化してしまい、印字位置が変動することがある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、シェーディング補正を生産性の低下を抑制しつつ行うことができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の画像形成装置は、画像形成条件に基づいてシートに画像及び調整用画像を形成する画像形成手段と、前記画像形成手段により形成された前記画像及び前記調整用画像を前記シートに定着させる定着手段と、基準部材と、前記シートが搬送される搬送方向において、前記定着手段よりも下流側に設けられる読取手段であって、読取領域を前記シートが通過している状態において前記シート上に形成された前記調整用画像を読み取る読取手段と、制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記読取手段による前記調整用画像の読取結果に基づいて前記画像形成条件を生成し、前記読取手段による前記基準部材の読取結果に基づいて前記読取手段のシェーディング補正を行い、前記制御手段は、複数のシートに前記画像と前記調整用画像の両方を形成している期間において、前記読取手段による前記基準部材の読み取りを実行するための実行条件が満たされた場合、前記画像と前記調整用画像の両方が形成された複数のシートを搬送させ前記読取領域を通過させ続けながら、前記読取手段により前記シート上に形成された前記調整用画像を読み取ることなく前記基準部材の読み取りを行わせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、シェーディング補正を生産性の低下を抑制して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図5】リアルタイム調整モードでのシートの搬送を示す模式図。
【
図6】割込調整モードでのシートの搬送を示す模式図。
【
図10】(a)、(b)は、シェーディング補正値の説明図。
【
図11】(a)、(b)は、画像形成条件の調整処理を表すフローチャート。
【
図12】(a)、(b)は、シェーディング補正と調整用チャートの読取タイミングとの説明図。
【
図13】画質優先モード時の印刷処理を表すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施の形態を詳細に説明する。
【0011】
(第1実施形態)
(画像処理システム)
図1は、本実施形態の画像形成装置を含む画像処理システムの構成図である。画像処理システムは、画像形成装置101と外部コントローラ102とを備える。画像形成装置101は、例えば複合機、マルチファンクションペリフェラル(MFP)等である。外部コントローラ102は、例えば画像処理コントローラ、デジタルフロントエンド(DFE)、プリントサーバ等である。
【0012】
画像形成装置101と外部コントローラ102とは、内部LAN(Local Area Network)105とビデオケーブル106とを介して、通信可能に接続される。外部コントローラ102は、外部LAN104を介して、クライアントPC(Personal Computer)103に接続される。外部コントローラ102は、クライアントPC103から印刷指示(印刷ジョブ)を取得する。
【0013】
クライアントPC103には、画像データを外部コントローラ102で処理可能な印刷記述言語に変換する機能を有するプリンタドライバがインストールされている。ユーザは、各種アプリケーションによりプリンタドライバを介して印刷を指示することができる。プリンタドライバはユーザからの印刷ジョブに基づいて外部コントローラ102に対して画像データを送信する。外部コントローラ102は、クライアントPC103から画像データを含む印刷ジョブを受け付けて、データ解析やラスタライズ処理を行い、画像形成装置101に対して画像データに基づく印刷(画像形成)を指示する。
【0014】
画像形成装置101は、印刷装置107を含む複数の異なる機能を有する装置が接続されて構成され、製本等の複雑な印刷処理が可能である。本実施形態の画像形成装置101は、印刷装置107とフィニッシャ109とを備える。印刷装置107は、本体の下部に設けられる給紙部から給送されるシートに対して現像剤(例えばトナー)を用いて画像を形成する。印刷装置107は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の画像を形成する。シートには、各色の画像が重畳されたフルカラーの画像が形成される。画像が形成されたシートは、印刷装置107からフィニッシャ109へ搬送される。フィニッシャ109は、画像が形成されたシートを積載する。
【0015】
この画像処理システムは、画像形成装置101に外部コントローラ102が接続された構成であるが、外部コントローラ102は必ずしも必要ではない。例えば、画像形成装置101が外部LAN104を介してクライアントPC103から直接画像データを含む印刷ジョブを取得する構成であってもよい。この場合、画像形成装置101は、外部コントローラ102で行われているデータ解析やラスタライズ処理を行うことになる。つまり画像形成装置101と外部コントローラ102とが一体に構成されてもよい。
【0016】
(システム構成)
図2は、画像処理システムの動作を制御するシステム構成図である。ここでは、画像形成装置101、外部コントローラ102、及びクライアントPC103のそれぞれについて、動作を制御するコントローラについて説明する。
【0017】
・印刷装置
印刷装置107は、他の装置と通信するために、通信インタフェース(I/F)217、LAN I/F218、及びビデオI/F220を備える。印刷装置107は、印刷装置107の動作を制御するためにCPU(Central Processing Unit)222、メモリ223、ストレージ221、画像読取部231、及び画像処理部232を備える。印刷装置107は、画像を形成するために露光部227、作像部228、定着部229、及び給紙部230を備える。印刷装置107は、ユーザインタフェースとして操作部224及びディスプレイ225を備える。これらの構成部品は、システムバス233を介して相互に通信可能に接続される。
【0018】
通信I/F217は、通信ケーブル249を介してフィニッシャ109に接続され、フィニッシャ109との間の通信を制御する。印刷装置107とフィニッシャ109とにより協働で動作する場合には、通信I/F217を介して情報やデータが送受信される。LAN I/F218は、内部LAN105を介して外部コントローラ102に接続され、外部コントローラ102との間の通信を制御する。印刷装置107は、LAN I/F218を介して外部コントローラ102から印刷設定や画像データを受信する。ビデオI/F220は、ビデオケーブル106を介して外部コントローラ102に接続され、外部コントローラ102との間の通信を制御する。印刷装置107は、ビデオI/F220を介して外部コントローラ102から形成する画像を表す画像データを受信する。
【0019】
CPU222は、ストレージ221に格納されるコンピュータプログラムを実行することで、画像処理や印刷の制御を包括的に行う。メモリ223は、CPU222が各種処理を実行する際のワークエリアを提供する。画像形成処理を行う場合、CPU222は、露光部227、作像部228、定着部229、及び給紙部230を制御する。
【0020】
露光部227は、感光体、感光体を帯電する帯電ワイヤ、感光体に静電潜像を形成するために帯電ワイヤによって帯電された感光体を露光する光源を備える。なお、感光体は、例えば、ベルト状の弾性部材の表面に感光層が形成された感光ベルト、又はシリンダの表面に感光層が形成された感光ドラムである。また、帯電ワイヤの代わりに、帯電ローラでもよい。露光部227は、帯電ワイヤによって感光体の表面を均一な負電位に帯電させる。露光部227は、画像データに基づき光源からレーザ光を出力する。レーザ光は一様に帯電された感光体の表面を走査する。これによって、感光体は、レーザ光が照射された位置の電位が変動し、表面に静電潜像が形成される。感光体は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色に対応して4つ設けられる。4つの感光体にそれぞれ異なる色の画像に対応した静電潜像が形成される。
【0021】
作像部228は、感光体に形成したトナー像をシートに転写する。作像部228は、現像器、転写ユニット、トナー補給部を備える。現像器は、現像シリンダから負極性に帯電したトナーを感光体の表面に形成されている静電潜像に付着させてトナー像を形成する。現像器は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色に対応して4つ設けられる。現像器は、対応する色のトナーにより感光体上の静電潜像を可視像化する。
【0022】
転写ユニットは、中間転写ベルトを有しており、感光体から中間転写ベルトにトナー像を転写する。中間転写ベルトを挟んで感光体に対向する位置には一次転写ローラが設けられる。一次転写ローラに正電位が印加されることで、4つの感光体のそれぞれからトナー像が中間転写ベルトに重畳して転写される。これにより中間転写ベルトにフルカラーのトナー像が形成される。中間転写ベルトに形成されたトナー像は、後述の二次転写ローラによりシートに転写される。二次転写ローラは、正電位が印加されることで、中間転写ベルトからシートにフルカラーのトナー像を転写する。
【0023】
定着部229は、シートに、転写されたトナー像を定着する。定着部229は、ヒータ及びローラ対を有する。定着部229は、ヒータ及びローラ対によりシート上のトナー像を加熱及び加圧することでシートにトナー像を溶融固着させる。これによりシートに画像が形成される。給紙部230は、搬送経路に搬送ローラと各種センサを備え、シートの給送動作を制御する。
【0024】
画像読取部231は、CPU222の指示に基づいて、搬送されるシートに形成された画像を読み取る。CPU222は、例えば画像形成条件の調整を行う場合に、画像読取部231により、シートに形成される画像形成条件の調整用画像を読み取る。操作部224は、ユーザからの各種設定の入力や操作の指示を受け付ける入力装置である。操作部224は、例えば各種入力キーやタッチパネルである。ディスプレイ225は、画像形成装置101の設定情報や印刷ジョブの処理状況(ステータス情報)を表示する出力装置である。
【0025】
・フィニッシャ
フィニッシャ109は、例えば印刷装置107から出力された成果物にステープル処理を実行する。フィニッシャ109は、通信I/F241、CPU242、メモリ243、及び排紙制御部244を備える。これらの構成部品は、システムバス245を介して相互に通信可能に接続される。通信I/F241は、通信ケーブル249を介して印刷装置107に接続され、印刷装置107との間の通信を制御する。フィニッシャ109と印刷装置107とにより協働で動作する場合には、通信I/F241を介して情報やデータが送受信される。CPU242は、メモリ243に格納された制御プログラムを実行し、排紙に必要な各種制御を行う。メモリ243は、制御プログラムを格納する。また、メモリ243は、CPU242が各種処理を実行する際のワークエリアを提供する。排紙制御部244は、CPU242からの指示に基づいて、搬送されたシートを
図3に示すスタックトレイ332に排出する。
【0026】
・外部コントローラ
外部コントローラ102は、他の装置と通信するために、LAN I/F213、LAN I/F214、及びビデオI/F215を備える。外部コントローラ102は、外部コントローラ102の動作を制御するためにCPU208、メモリ209、及びストレージ210を備える。外部コントローラ102は、ユーザインタフェースとしてキーボード211及びディスプレイ212を備える。これらの構成部品は、システムバス216を介して相互に通信可能に接続される。
【0027】
LAN I/F213は、外部LAN104を介してクライアントPC103に接続され、クライアントPC103との間の通信を制御する。外部コントローラ102は、クライアントPC103からLAN I/F213により印刷ジョブを取得する。LAN I/F214は、内部LAN105を介して印刷装置107に接続され、印刷装置107との間の通信を制御する。外部コントローラ102は、LAN I/F214を介して印刷装置107へ印刷設定や画像データを送信する。ビデオI/F215は、ビデオケーブル106を介して印刷装置107に接続され、印刷装置107との間の通信を制御する。外部コントローラ102は、ビデオI/F215を介して印刷装置107へ画像データを送信する。
【0028】
CPU208は、ストレージ210に格納されるコンピュータプログラムを実行することで、クライアントPC103から送信される画像データの受信、RIP処理、画像形成装置101への画像データの送信等の処理を包括的に行う。メモリ209は、CPU208が各種処理を実行する際のワークエリアを提供する。キーボード211は、ユーザからの各種設定の入力や操作の指示を受け付ける入力装置である。ディスプレイ212は、外部コントローラ102の実行アプリケーションの情報を静止画や動画により表示する出力装置である。
【0029】
・クライアントPC
クライアントPC103は、CPU201、メモリ202、ストレージ203、キーボード204、ディスプレイ205、及びLAN I/F206を備える。これらの構成部品は、システムバス207を介して相互に通信可能に接続される。
【0030】
CPU201は、ストレージ203に格納されたコンピュータプログラムを実行することで、クライアントPC103の動作を制御する。本実施形態では、CPU201は、画像データの作成や印刷ジョブの送信処理を行う。メモリ202は、CPU201が各種処理を実行する際のワークエリアを提供する。キーボード204及びディスプレイ205は、ユーザインタフェースである。キーボード204は、ユーザによる指示を受け付ける入力装置である。ディスプレイ205には、クライアントPC103の実行アプリケーションの情報を静止画や動画により表示する出力装置である。LAN I/F206は、外部LAN104を介して外部コントローラ102に接続され、外部コントローラ102との間の通信を制御する。クライアントPC103は、外部コントローラ102へLAN I/F206により印刷ジョブを送信する。
【0031】
なお、外部コントローラ102と画像形成装置101とは、内部LAN105とビデオケーブル106とにより接続されているが、印刷に必要なデータの送受信が行える構成であればよく、例えば、ビデオケーブルのみで接続されていてもよい。メモリ202、メモリ209、メモリ223、及びメモリ243はそれぞれ、データやプログラムを保持するための記憶装置であればよい。これらのメモリには、例えば、揮発性のRAM(Random Access Memory)、不揮発性のROM(Read Only Memory)、ストレージ、USB(Universal Serial Bus)メモリを用いることができる。
【0032】
(画像形成装置の構成)
図3は、画像形成装置101の構成図である。印刷装置107の上部には、ディスプレイ225が設けられる。ディスプレイ225は、画像形成装置101の印刷状況や設定のための情報を表示する。印刷装置107で画像が形成されたシートは、後段に設けられるフィニッシャ109へ搬送される。
【0033】
印刷装置107は、給紙部230として、複数の給紙デッキ301、302及び搬送経路303を備える。各給紙デッキ301、302には、異なる種類のシートを収容することが可能である。各給紙デッキ301、302に収容されるシートは、最上位の一枚が分離して搬送経路303へ給送される。印刷装置107は、露光部227として、画像を形成するための画像形成部304、305、306、307を備える。印刷装置107は、カラー画像を形成する。そのために、画像形成部304は、ブラック(K)の画像(トナー像)を形成する。画像形成部305は、シアン(C)の画像(トナー像)を形成する。画像形成部306は、マゼンタ(M)の画像(トナー像)を形成する。画像形成部307は、イエロー(Y)の画像(トナー像)を形成する。
【0034】
印刷装置107は、作像部228として、各画像形成部304、305、306、307からトナー像が転写される中間転写ベルト308及び二次転写ローラ309を備える。中間転写ベルト308は、図中時計回りに回転しており、画像形成部307、画像形成部306、画像形成部305、画像形成部304の順にトナー像が重畳して転写される。これにより中間転写ベルト308にフルカラーのトナー像が形成される。中間転写ベルト308は、回転することでトナー像を二次転写ローラ309へ搬送する。トナー像が二次転写ローラ309に搬送されるタイミングに合わせて、シートが二次転写ローラ309へ搬送される。二次転写ローラ309は、搬送されてきたシートに中間転写ベルト308上のトナー像を転写する。
【0035】
印刷装置107は、定着部229として、第1定着器311及び第2定着器318を備える。第1定着器311と第2定着器318とは同じ構成であり、トナー像をシートに定着させる。そのために第1定着器311及び第2定着器318は、それぞれ、加圧ローラと加熱ローラとを備える。シートは、加圧ローラと加熱ローラとの間を通過することで、加熱及び加圧され、トナー像がシートに溶融、圧着される。第2定着器318を通過したシートは、搬送経路314へ搬送される。なお、第2定着器318は、第1定着器311よりもシートの搬送方向で下流側に配置され、第1定着器311により定着処理されたシート上の画像に対するグロスの付加や、定着性の確保に用いられる。そのために第2定着器318は、シートの種類や画像形成処理の内容によっては使用されないことがある。第1定着器311で定着処理されたシートを第2定着器318を介さずに搬送するために、搬送経路312が設けられる。
【0036】
搬送経路314と搬送経路312とが合流した後に、搬送経路315と反転経路316とが設けられる。両面印刷が指示される場合、シートは、反転経路316へ搬送される。反転経路316に搬送されたシートは、反転経路316で搬送方向が反転して両面搬送経路317へ搬送される。反転経路316及び両面搬送経路317により、シートは、画像が形成された面(第1面)が反転される。シートは両面搬送経路317により搬送経路303へ搬送され、二次転写ローラ309及び定着部229を通過することで、第2面へ画像が形成される。
【0037】
片面印刷の場合、或いは両面印刷で両面に画像が形成された場合、シートは、搬送経路315へ搬送される。シートの搬送方向で搬送経路315の下流側には搬送経路323が配置される。
【0038】
搬送経路323には、画像読取部231として、CIS(Contact Image Sensor)321、322が、搬送経路323を挟んで対向して配置される。
図4は、CIS321、322の説明図である。CIS321は、搬送経路323を搬送されるシートの上面の画像を読み取る光学センサである。CIS322は、搬送経路323を搬送されるシートの下面の画像を読み取る光学センサである。
【0039】
CIS321は、光源となるLED(Light Emitting Diode)350、受光部となる読取センサ351、及び白色基準板352を備える。LED350は、搬送経路323を搬送されるシートが読取位置に到達したタイミングで、シートの上面に光を照射する。読取センサ351は、シートの搬送方向に直交する方向に複数の受光素子(光電変換素子)を備える。そのために、シートの搬送方向に直交する方向が、CIS321の主走査方向となる。読取センサ351は、シートによる反射光を受光する。読取センサ351の複数の受光素子は、受光した反射光の強度に基づいて出力値(電気信号)を出力する。複数の受光素子から出力された出力値(電気信号)はCPU222へ送信される。このようにしてシートに形成された画像が読み取られる。白色基準板352は、CIS321のシェーディング補正時に用いられる校正部材(基準部材)である。シェーディング補正時にLED350及び読取センサ351は、白色基準板352を読み取れる位置に移動する。あるいは、シェーディング補正時に白色基準板352がLED350及び読取センサ351の読取位置へ移動する。白色基準板352の読取結果に基づいてCIS321のシェーディング補正が行われる。そのために、CIS321は、シェーディング補正時には、シートに形成された画像を読み取ることができない。
【0040】
CIS322は、CIS321と同様に、LED353、読取センサ354、及び白色基準板355を備える。CIS322は、CIS321と同様に動作して、搬送経路323を搬送されるシートが読取位置に到達したタイミングで、シートの下面に形成された画像を読み取る。なお、CIS321、322の他に、画像読取部231は、CCDやCMOSセンサにより実現することもできる。
【0041】
本実施形態の印刷装置107は、シートの両面に画像形成条件を調整するための調整用画像が形成可能である。調整用画像が形成されたシートを調整用チャートという。印刷装置107は、調整用画像をシートに印刷して調整用チャートを作成し、CIS321及びCIS322により調整用画像を読み取る。CIS321及びCIS322による調整用チャートの読取画像はメモリ223に格納される。CPU222は、メモリ223を参照して、CIS321及びCIS322による読取画像を解析し、画像形成条件にフィードバックして、画像形成条件を調整する。
【0042】
例えば、印刷装置107の機内温度が上昇すると、印刷装置107の機内温度が低いときに比較してシートに形成される画像の幾何特性が変動する。ここで、画像の幾何特性とは、例えば、直角度、シートに対する画像の印刷位置などである。印刷装置107は、調整用チャートを作成し、CIS321、322の読取結果に基づいて幾何特性を検知する。CPU222は、前述の検知された幾何特性が理想的な幾何特性になるように、画像データにアフィン変換を行う。印刷装置107は、CPU222により変換された画像データに基づいてシートに画像を形成することで、シートに形成される画像の幾何特性を制御できる。これにより印刷装置107は、機内温度の変動によって引き起こされる画像の幾何特性の変動を抑制することができる。
【0043】
調整用チャートに形成される調整用画像は、幾何特性を検知するための画像以外にも、画像濃度を検知するための画像、或いは色ずれを検知するための画像であってもよい。画像濃度を検知するための調整用画像が形成された場合、CPU222は、CIS321(又はCIS322)の読取結果に基づいて画像濃度の変動を抑制するための画像形成条件を生成する。CPU222が画像形成条件に基づいて露光部227の光源の強度を制御することで、印刷装置107の画像濃度が理想的な画像濃度へ調整される。或いは、CPU222は、CIS321(又はCIS322)の読取結果に基づいて画像濃度の変動を抑制するための1次元の階調補正テーブルを生成する。CPU222は、階調補正テーブルに基づいて画像データを変換する。印刷装置107はCPU222により変換された画像データに基づいてシートに画像を形成することで、印刷装置107の画像濃度が理想的な画像濃度へ調整される。
【0044】
また、色ずれを検知するための調整用画像が形成された場合、CPU222は、CIS321(又はCIS322)の読取結果に基づいて色ずれを検知する。CPU222は、検知された色ずれに基づいて、露光部227により感光体に形成される画像の位置を制御することで、色ずれを補正する。
【0045】
調整用画像は、ユーザ画像とは異なるシートに調整用チャートとして印刷される形式、ユーザ画像と同じシートに印刷される形式、のいずれであってもよい。調整用チャートとして印刷される場合、CPU222は、受信した画像データから、印刷枚数が所定枚数Nに達する度にNページ目のユーザ画像とN+1ページ目のユーザ画像との間に調整用チャートが挿入された画像データを作成する。ユーザ画像と同じシートに調整用画像が形成される場合、調整用画像はシートの断裁領域に形成されることが好ましい。これは断裁処理が行われることで調整用画像が成果物から除去されるためである。ここで、ユーザ画像とはクライアントPC103から転送された画像データに含まれる画像である。
【0046】
本実施形態の画像形成装置101は、ユーザ画像と同じシートに調整用画像が印刷されるリアルタイム調整モードと、所定枚数毎に調整用チャートが印刷される割込調整モードとに基づき制御される。なお、本実施形態の画像形成装置101は、幾何特性を検知するための調整用画像を形成する場合について説明する。ユーザは、印刷装置107の操作部224を用いて、幾何特性の補正を行うか否かを設定可能である。さらに幾何特性の補正が実行される場合には、リアルタイム調整モードと割込調整モードとからユーザが調整モードを選択する。なお、調整モードの選択は操作部224を用いる構成に限定されず、例えば、クライアントPC103を用いてユーザが調整モードを選択する構成としてもよい。
【0047】
本実施形態のリアルタイム調整モードでは、調整用画像が毎ページ印刷される。
図5は、リアルタイム調整モードにおけるシートの搬送の様子を示す模式図であり、リアルタイム調整モードにおいて毎ページ調整用画像が印刷される様子を示す。調整用画像が印刷されたシートは、図中左端のシートから右端のシートにかけて順番にCIS321、322が設けられる搬送経路323を通過する。
図5に示すように、調整用画像は、シートの四隅に形成されたv字状の調整パッチを有する。そして、調整用画像が印刷されたシートにはユーザ画像も形成されている。調整用画像とユーザ画像との両方が形成されたシートはスタックトレイ332へ排出される。
【0048】
本実施形態の割込調整モードでは、所定枚数のユーザ画像が形成される度に調整用チャートが挿入される。例えば、Nページ目のユーザ画像が形成されるシートと、N+1ページ目のユーザ画像が形成されるシートとの間に調整用チャートが挿入される。
図6は、割込調整モードにおけるシートの搬送の様子を示す模式図であり、割込調整モードにおいて所定枚数毎に調整用チャートが印刷される様子を示す。
図6の模式図は、
図5の模式図と同様に、図中左端のシートから右端のシートにかけて順番にCIS321、32が設けられる搬送経路323を通過する。
図6に示すように、調整用チャートは、シートの四隅に形成されたv字状の調整パッチを有する。ここで、調整用チャートにはユーザ画像が形成されていない。割込調整モードにおいて、調整用チャートは、ユーザ画像が形成されたシートとは異なるトレイに排出される。ユーザ画像が形成されたシートはスタックトレイ332へ排出され、調整用チャートは排出トレイ328へ排出される。
【0049】
前述のように、調整用チャートは、印刷ジョブに応じた印刷物に混入しないように除外される。そのために印刷装置107は、フラッパ324、排出経路326、搬送センサ327、及び排出トレイ328を備える。CIS321、322により画像(調整用画像)が読み取られた調整用チャートは、フラッパ324により排出経路326に搬送される。排出経路326に搬送されたシートは排出トレイ328に排出される。
【0050】
シートが調整用チャートではない場合、該シートはフラッパ324により搬送経路323から下流搬送経路325へ搬送される。下流搬送経路325に搬送されたシートは、フィニッシャ109に受け渡される。なお、印刷装置107は、フィニッシャ109から搬送ジャムの発生の通知を取得した場合に、調整用チャートであるか否かにかかわらず、フラッパ324を排出経路326側に切り替えて、機内のすべてのシート(残留紙)を排出トレイ328へ排出する。残留紙が排出トレイ328に排出されることで、ユーザによるジャム処理の負荷が軽減される。
【0051】
フィニッシャ109は、印刷装置107から受け渡されたシートを積載することができる。フィニッシャ109は、搬送経路331及びシートを積載するスタックトレイ332を備える。搬送経路331には、搬送センサ333、334、335、336が設けられる。印刷装置107から搬送されたシートは、搬送経路331を経由して、スタックトレイ332に積載される。搬送センサ333、334、335、336は、搬送経路331を搬送されるシートの通過を検知する。CPU242は、シートの搬送を開始してから所定時間経過してもシートの搬送方向の先端あるいは後端が搬送センサ333、334、335、336に検知されない場合、フィニッシャ109内で搬送ジャム(搬送異常)が発生したと判断する。この場合、CPU242は、印刷装置107へ搬送ジャムが発生したことを通知する。
【0052】
図7は、印刷装置107のメモリ223に格納される情報の説明図である。メモリ223には、シェーディング補正及び幾何特性の補正に使用される情報が格納される。シェーディング補正に使用される情報は、白色基準板352、355の読取結果から得られる補正係数(シェーディング補正値)である。画像位置調整に使用される情報は、調整用チャートの読取結果から得られる表面用の調整パッチ位置(表)及び裏面用の調整パッチ位置(裏)である。この他にメモリ223には、幾何特性を調整する補正値が格納される。幾何特性を調整する補正値には、先端位置補正、左端位置補正、主走査方向倍率等が含まれる。幾何特性を調整する補正値は、印刷装置107による画像形成の際に用いられる。
【0053】
また、メモリ223には、割込調整モードにおいて調整用チャートが作成される間隔(調整用チャート挿入間隔)が格納される。調整用チャートは、印刷されたシートが所定枚数になる毎に作成される。つまり割込調整モードにおいて幾何特性を調整する補正値は、所定枚数のシートへの印刷が行われる毎に更新される。所定枚数は、ユーザからの枚数指示情報に基づいて変更可能である。枚数指示情報は,例えば0より大きい整数である。印字位置の調整間隔が枚数指示情報に基づいて設定される。
【0054】
図8は、割込調整モードにおいて調整用チャートを作成する間隔を設定する設定画面の説明図である。設定画面は、CPU222によりディスプレイ225に表示される。調整用チャートは、調整モードで作成される、調整モードは、ユーザが操作部224を用いて設定する。
【0055】
図8(a)は、初期画面である。ユーザが初期画面からソフトキーである「応用モード」を選択すると、CPU222は、ディスプレイ225に
図8(b)の応用モードの選択画面を表示する。ユーザが応用モードの選択画面からソフトキーである「調整」を選択すると、CPU222は、ディスプレイ225に
図8(c)の調整モード選択画面を表示する。「調整」の選択により印刷装置107は調整モードになる。ユーザが応用モードの選択画面からソフトキーである「閉じる」を選択すると、CPU222は、ディスプレイ225に初期画面を表示する。
【0056】
リアルタイム調整モードはユーザが調整モード選択画面からソフトキーである「リアルタイム」を選択することで選択される。CPU222は、設定内容を外部コントローラ102に通知する。外部コントローラ102は、印刷ジョブに応じた画像形成を印刷装置107に指示する際に、余白領域への調整用画像の印刷を通知する。
【0057】
ユーザが調整モード選択画面からソフトキーである「所定間隔」を選択すると、CPU222は、ディスプレイ225に
図8(d)の挿入間隔設定画面を表示する。ユーザが調整モード選択画面からソフトキーである「戻る」を選択すると、CPU222は、ディスプレイ225に応用モードの選択画面を表示する。
【0058】
ユーザが挿入間隔設定画面のテンキーにより挿入間隔枚数を入力してソフトキーである「OK」を選択すると、CPU222は、調整チャートの挿入間隔枚数を設定する。CPU222は、挿入間隔設定画面により入力された挿入間隔枚数を、「OK」が選択されることでメモリ223に格納する。CPU222は、ユーザが挿入間隔設定画面からソフトキーである「戻る」を選択すると、CPU222は、ディスプレイ225に調整モード選択画面を表示する。
【0059】
CPU222は、メモリ223に格納した挿入間隔枚数を外部コントローラ102に通知する。外部コントローラ102は、通知された挿入間隔枚数をメモリ209に格納する。外部コントローラ102は、挿入間隔枚数のシートへの印刷が行われると、印刷装置107に対して調整用チャートの作成を指示する。
例えば挿入間隔設定画面で「200」枚が入力されて「OK」が選択される場合、印刷装置107は、200枚の印刷を行う毎に外部コントローラ102から調整用チャートの印刷が指示される。印刷ジョブで1000枚の印刷が指示される場合、印刷装置107は、200ページと201ページの間、400ページと401ページの間、600ページと601ページの間、800ページと801ページの間に調整用チャートを作成する。
【0060】
以上のように調整用チャートが作成されるタイミングである所定枚数(挿入間隔枚数)が設定される。ここでは、印刷装置107により挿入間隔枚数が設定される例について説明したが、挿入間隔枚数は、外部コントローラ102やクライアントPC103により設定されてもよい。外部コントローラ102が用いられる場合、
図8の各画面はディスプレイ212に表示される。クライアントPC103が用いられる場合、
図8の各画面はディスプレイ205に表示される。設定された挿入間隔枚数は、クライアントPC103から外部コントローラ102へ通知される。
【0061】
(シェーディング補正)
CIS321、322は、シェーディング補正を含む初期調整が行われる。ここでは、CIS321の初期調整について説明するが、CIS322の初期調整も同様に行われる。
【0062】
CPU222は、初期調整を開始すると、不図示のCIS駆動モータにより、LED350及び読取センサ351を白色基準板352の直上へ移動させる。ここでは、白色基準板352の直上をシェーディング読取位置とする。移動が完了すると、CPU222は、LED350を点灯して白色基準板352の画像を読み取り、読取結果に応じてCIS321のゲイン調整値を算出する。CPU222は、シェーディング読取位置において白色基準板352を読み取った後、不図示のCIS駆動モータにより、LED350及び読取センサ351を
図4に示すチャート読取位置へ移動させる。
【0063】
図9は、ゲイン調整の説明図である。横軸は、白色基準板352の画像を主走査方向に1ライン分読み取った場合の各画素位置を示す。縦軸は、各画素位置の読取結果(輝度値)を示す。起動時に初期設定のまま白色基準板352を読み取った場合の輝度値の特性が点線Aで示される。「白」の輝度値の最大値は「Tgt0」で示される。
【0064】
LED350や読取センサ351の配光特性により、初期設定における白色基準板352の読取結果(輝度値)の最大値は、想定される「白」の輝度値Tgt0と一致しない。読取結果の輝度値の最大値がTgt0と一致するように、画像処理部232内の増幅回路により読取結果が一様に増幅される。この増幅率がゲイン調整値である。ゲイン調整値により調整した後の1ライン分の輝度値の特性は実線Bで示される。CPU222は、ゲイン調整値を算出し、算出したゲイン調整値を画像処理部232に設定して、以降の読み取りに反映させる。
【0065】
図9に示すように、CIS321は、全面が一様な色の白色基準板352を読み取っても、読取結果である輝度値の特性には主走査方向の画素位置によりばらつきが生じる。このばらつきを補正するために、シェーディング補正が行われる。CPU222は、ゲイン調整値を画像処理部232に設定した後に、再度、CIS321により白色基準板352の画像を読み取り、その読取結果に基づいてシェーディング補正値を生成する。
【0066】
図10は、シェーディング補正値の説明図である。
図10(a)の実線はゲイン調整後の1ライン分の輝度値の特性を示す。横軸は、主走査方向の画素位置を示す。縦軸は、各画素位置の輝度値を示す。一様な濃度の白色基準板352の読取結果(輝度値)は、一様な「白」の輝度値となることが好ましい。「白」を示す輝度は、目標値Tgtである。目標値Tgtの値は、輝度値の最大値Tgt0より大きく、実行するジョブの内容により予め決められている。
【0067】
図10(a)の矢印で示すように、1ラインの輝度値が各画素位置でそれぞれ目標値Tgtとなるように、CPU222は、主走査方向の1画素毎にシェーディング補正値を算出する。各画素位置の矢印の大きさがシェーディング補正値に相当する。算出されたシェーディング補正値は画像処理部232を通して主走査方向の画素位置毎にメモリ223に保存される。
図10(b)は、主走査方向の1画素毎にシェーディング補正値を示す。CIS321により画像を読み取る際には、各画素の読取結果に、対応する画素位置のシェーディング補正値が反映される(シェーディング補正を行う)。これによりCPU222は、LED350や読取センサ351の画素(受光素子)間のばらつきを抑制して、一様な読取結果を得ることができる。シェーディング補正後、CPU222は、シェーディング補正後の画像の読取結果をメモリ223に格納することができる。
【0068】
シェーディング補正は、CIS321、322の読取位置を通過するシートが所定枚数になる毎に行う必要がある。ここでは、100枚毎にシェーディング補正を行う場合について説明するが、所定枚数は何枚であってもよい。所定枚数は、CIS321、322の読取位置を通過するシートの枚数であり、CIS321、322がシートの画像を読み取るか否かは関係しない。CPU222は、シートが100枚搬送されると、CIS321、322のシェーディング補正を行う。また、LED350の累積点灯時間が所定時間に達する度にシェーディング補正が実行される構成であってもよい。或いは、CIS321に温度センサを設け、当該温度センサの検知温度が所定温度以上変化するとシェーディング補正が実行される構成であってもよい。CIS321のシェーディング補正は、LED350及び読取センサ351が白色基準板352の直上へ移動するために、シートの搬送中であっても実行可能である。同様に、CIS322のシェーディング補正も、シートの搬送中に実行可能である。
【0069】
(シェーディング補正時の画像形成条件の調整)
図11は、シェーディング補正時の調整用チャートによる画像形成条件の調整処理を表すフローチャートである。
【0070】
図11(a)は、1ページの画像形成処理のフローチャートである。CPU222は、メモリ223に格納されている調整用チャートの読取結果から画像形成条件の調整値を算出してメモリ223に格納する。画像形成条件の調整値は、例えば、検知された幾何特性と理想的な幾何特性との差である。CPU222は、調整用チャートの読取結果から調整値を算出してメモリ223に格納する(S1001)。CPU222は、メモリ223に格納した調整値に基づいて画像データにアフィン変換を行い、当該変換された画像データに基づいてシートに画像を印刷する(S1002)。リアルタイム調整モードにおいて、CPU222は、毎ページにユーザ画像と調整用画像とを形成する。割込調整モードにおいて、CPU222は、印刷ジョブに応じたユーザ画像をシートに印刷し、調整用チャート挿入間隔に応じた所定枚数のシートにユーザ画像を印刷すると、シートに調整用画像を印刷する。調整用画像をシートに印刷することで調整用チャートが作成される。
【0071】
図11(b)は、調整用チャートの読取処理を表すフローチャートである。本実施形態のシェーディング補正は、100ページ分の画像が形成される毎に実行される。CPU222は、画像読取部231(CIS321、322)により調整用画像を読み取る(S2001)。CPU222は、CIS321、322の読取位置を通過したシートの数を表す補正カウンタcntを1カウントアップする(S2002)。
【0072】
CPU222は、調整用画像の読取中にシェーディング補正を行ったか否かを判断する(S2003)。シェーディング補正を行っていない場合(S2003:N)、CPU222は、メモリ223に格納している調整用画像の読取結果をS2001の処理による読取結果に更新する(S2004)。メモリ223に格納した調整用画像の読取結果は、調整値の算出に用いられる。シェーディング補正を行っている場合(S2003:Y)、CPU222は、メモリ223に格納している調整用画像の読取結果を更新しない。シェーディング補正を行っている間は調整用画像が読み取れないので、CPU222は読取結果の更新を行うことができない。
【0073】
その後、CPU222は、補正カウンタcntに基づいてシェーディング補正を行うか否かを判断する。CPU222は、補正カウンタcntが所定の閾値cnt_thより大きいか否かによりシェーディング補正を行うか否かを判断する(S2005)。上述の通り、シェーディング補正は、CIS321、322の読取位置を通過するシートが所定枚数になる毎に行われる。閾値cnt_thは、この所定枚数であり、本実施形態では100枚である。
【0074】
補正カウンタcntが閾値cnt_th以下、つまり100枚以下の場合(S2005:N)、CPU222は、シェーディング補正を行わずに処理を終了する。補正カウンタcntが閾値cnt_thより大きい、つまり100枚より多い場合(S2005:Y)、CPU222は、シェーディング補正を開始する(S2006)。シェーディング補正後にCPU222は、処理を終了する。
【0075】
以上のように本実施形態では、CIS321、322のシェーディング補正の周期的な実行と調整用画像の読取処理とが並行して行われる。そのために、シェーディング補正による生産性の低下を抑制することができる。この場合、シェーディング補正時の調整用画像は、読み取られないために印刷時の調整値には適用されない。
【0076】
(第2実施形態)
第1実施形態の画像形成装置101は、調整モードによらず、シェーディング補正の実行タイミングが到来すると、調整用画像が読取位置を通過しても白色基準板352の読取動作を優先している。そのため、割込調整モードにおいて調整用チャートが印刷されているにもかかわらず、シェーディング補正が優先されてしまい、調整用チャートの読み取りがスキップされてしまう可能性がある。調整用チャートの読み取りがスキップされた場合、次回調整値が更新されるまで、画像の幾何特性のズレを高精度に補正することができない。
【0077】
そこで、本実施形態の画像形成装置101は、割込調整モードにおいて、シェーディング補正を実行することで調整用チャートの読み取りがスキップされないように、調整用チャートが読取位置を通過するタイミングを制御する。例えば、CPU222は、調整用チャートの読み取りがスキップされるか否かを判定し、読み取りがスキップされる場合に調整用チャートの形成と調整用チャートが印字されるシートの搬送を遅延させる。
【0078】
リアルタイム調整モードにおけるシートの搬送の様子を示す模式図である
図5には、CIS321の読取動作のON又はOFFと、読取動作において取得される読取データの種類が示されている。
図5では、シェーディング補正の実行タイミング(実行要求)が到来した後も、調整用画像とユーザ画像との形成タイミングを遅延させることがない。
図5に示すように、左端から3ページ目までは調整用画像の読取データが取得され、4ページ目と5ページ目のシートが読取位置を通過している間、調整用画像の読取データは取得されない。4ページ目と5ページ目のシートが読取位置を通過している間、白色基準板352の読取データが取得される。そして、6ページ目のシートが読取位置を通過するタイミングから、調整用画像の読取データの取得が再開される。
【0079】
割込調整モードにおけるシートの搬送の様子を示す模式図である
図6には、CIS321の読取動作のON又はOFFと、読取動作において取得される読取データの種類が示されている。
図6では、シェーディング補正の実行タイミング(実行要求)が到来した後、調整用チャートが読取位置に到達しない。これは、調整用画像の形成タイミングを遅延させているためである。このとき、感光体上への調整用パッチの形成が開始されていない。その後、CPU222は、白色基準板352の読み取りが完了した後に調整用チャートが読取位置へ到達するように、感光体上への調整用パッチの形成タイミングを制御する。
図6に示すように、左端から3ページ目が読取位置を通過してから調整用チャートが読取位置を通過するまでの期間に白色基準板352の読取データが取得され、CIS321がチャートを読み取れる状態に以降した後に調整用チャートが読取位置を通過する。白色基準板352の読み取りと調整用チャートの読み取りとが順次実行されるために、調整用チャートの読み取りがスキップされることはない。
【0080】
本実施形態の画像形成装置101によれば、リアルタイム調整モードにおいてはシェーディング補正の実行によっても生産性の低下を抑制でき、割込調整モードにおいては画像の幾何特性の検知がスキップされることを抑制できる。リアルタイム調整モードにおいて白色基準板352の読み取りが完了してから調整用画像が次回読み取られるまでの時間が短い。そのため、白色基準板352の読み取りによって調整値の更新が遅れたとしても、幾何特性のズレへの影響は僅かである。割込調整モードにおいては白色基準板352の読み取りを優先することで、調整用画像が次回読み取られるまでの時間が長くなる。白色基準板352の読み取りにより調整値の更新がされない場合、幾何特性のズレが抑制されない。そのため、本実施形態の画像形成装置101は、割込調整モードにおいて、調整用チャートの形成を遅延させて、調整用チャートの読み取りをスキップすることで生じる画像品位の低下を抑制している。
【0081】
(変形例)
CIS321、322による調整用チャートの読取結果に基づいて画像位置の精度を一定以上に維持しつつ、生産性の低下を抑制する処理について説明する。この実施形態では、画像形成装置101は、画質の維持を優先する画質優先モードと、生産性を優先する生産性優先モードと、の2つの動作モードで動作する。画質優先モードでは、CIS321、322による調整用チャートの読み取りを優先し、シェーディング補正が完了するまで調整用チャートの作成及び読み取りを待機する。生産性優先モードは、
図11(b)のように、調整用チャートの読み取り中にシェーディング補正を実行する。画質優先モードと生産性優先モードとは、調整用チャートの作成、読み取り頻度に応じて切り替えられる。生産性優先モードは、
図11(b)の処理となるために説明を省略する。
【0082】
(動作モードの切り替え)
調整用チャートの挿入間隔枚数は、所定の閾値(例えば50枚)より大きい場合に調整用チャートを読み取る頻度が低くなる。この場合、動作モードは、シェーディング補正の完了まで調整用チャートの読み取りを遅らせて、確実に調整用チャートを読み取る画質優先モードに設定される。
【0083】
調整用チャートの挿入間隔が閾値よりも小さい場合には、調整用チャートの読み取り頻度が高くなる。これにより、印刷装置107により形成される画像の印字位置の変動をさらに抑制できる。この場合、動作モードは、調整用チャートの読み取りとシェーディング補正とを並行して実行する生産性優先モードに設定される。
【0084】
(シェーディング補正と調整用画像の読取タイミング)
図12は、動作モード毎のシェーディング補正と調整用チャートの読取タイミングとの説明図である。
図12(a)は生産性優先モード時のシェーディング補正と調整用チャートの読取タイミングとを示す。
図12(a)は、1番目~6番目のシートがCIS321の読取位置を通過するタイミングと、10番目~16番目のシートに画像が形成されるタイミングと、調整用チャートの読取結果の更新タイミングと、を例示する。
図12(b)は画質優先モード時のシェーディング補正と調整用チャートの読取タイミングとを示す。
図12(b)は、1番目~6番目のシートがCIS321の読取位置を通過するタイミングと、10番目~15番目のシートに画像が形成されるタイミングと、調整用チャートの読取結果の更新タイミングと、を例示する。
【0085】
図12(a)の場合、2番目のシート(調整用チャート)の後端を読み終わった直後にシェーディング補正が開始される。シェーディング補正に並行して、調整用チャートがCIS321、322の読取位置を通過する。印刷装置107のCPU222は、シェーディング補正中の調整用チャートの読取結果を画像形成条件の調整に採用しない。具体的には、シェーディング補正中に読取位置を通過する3番目のシート(調整用チャート)の後端以降で画像形成が開始される13番目~15番目のシートは、画像形成位置が調整されていない。これは、3番目~5番目のシート(調整用チャート)の読取結果によりメモリ223に格納される読取結果が更新されていないためである。
【0086】
6番目のシート(調整用チャート)のようにシェーディング補正の影響を受けていないシートの読み取りが完了した場合、メモリ223の読取結果が更新される。そのために、16番目以降のシートは、読取結果により画像形成位置が調整される。
【0087】
図12(b)の場合、2番目のシート(調整用チャート)の後端を読み終わった直後にシェーディング補正が開始される。印刷装置107は、シェーディング補正が行われるタイミングでは調整用チャートの読み取り及び印刷ジョブによる画像の印刷を行わない。シェーディング補正中に調整用チャートが読み取られないために、メモリ223に格納される読取結果は更新されない。シェーディング補正後に調整用チャート(3番目のシート)が読み取られると、メモリ223に格納される読取結果が更新される。そのために12番目のシートは最新の調整用チャートの読取結果により画像形成位置が調整された画像が形成される。このようにシェーディング補正のタイミングと調整用チャートの読取タイミングとが同時になった場合でも、調整用チャートの読取タイミングを遅らせることで、画質が維持される。
【0088】
図13は、画質優先モード時の印刷処理を表すフローチャートである。上述の通り、画質優先モードでは、シェーディング補正が完了するまで調整用チャートの読み取り及び印刷ジョブによる画像の印刷を待機する。
【0089】
CPU222は、印刷の直前にシェーディング補正を行っているか否かを判断する(S3001)。直前にシェーディング補正を行っている場合(S3001:Y)、CPU222は、直前のシートへの画像形成が終了してからシェーディング補正に必要な時間が経過したか否かを判断する(S3002)。シェーディング補正に必要な時間が経過していない場合(S3002:N)、CPU222は、シェーディング補正に必要な時間が経過するまで待機する。つまり、CPU222は、シェーディング補正が終了するまで待機する。
【0090】
シェーディング補正に必要な時間が経過した場合(S3002:Y)、CPU222は、メモリ223に格納されている調整用チャートの読取結果に基づいて、画像位置調整値を算出する(S3003)。この読取結果は、シェーディング補正後に調整用チャートから読み取られた結果である。なお、直前にシェーディング補正を行っていない場合(S3001:N)、CPU222は、シェーディング補正の終了を待機することなく、メモリ223に格納されている調整用チャートの読取結果に基づいて、画像位置調整値を算出する(S3003)。CPU222は、算出した画像位置調整値に応じて印刷を行う(S3004)。以上により画質優先モード時の印刷処理が終了する。
【0091】
動作モードの切り替えは、挿入間隔枚数と閾値との他に、ユーザの選択により行われてもよい。
図14は、動作モードの選択画面の例示図である。CPU222は、このような選択画面をディスプレイ225に表示する。ユーザは、ディスプレイ225の選択画面に応じて操作部224により動作モードを選択する。ユーザの選択により動作モードが切り替えられる。
【0092】
以上説明したように、生産性優先モードと画質優先モードとを切り替えることで、CIS321、322の読取結果による画像位置の調整精度を一定以上に維持しつつ、生産性の低下を抑制することができる。