(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】記録装置、制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 1/04 20060101AFI20240930BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240930BHJP
B41J 29/393 20060101ALI20240930BHJP
B41J 29/38 20060101ALI20240930BHJP
H04N 1/407 20060101ALI20240930BHJP
H04N 1/401 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
H04N1/04 106Z
B41J2/01 305
B41J2/01 451
B41J29/393 101
B41J29/38 350
H04N1/407 780
H04N1/401
H04N1/04 101
(21)【出願番号】P 2020113352
(22)【出願日】2020-06-30
【審査請求日】2023-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】倉澤 歓土
【審査官】中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-044641(JP,A)
【文献】特開2012-126111(JP,A)
【文献】特開2001-171098(JP,A)
【文献】特開2006-295348(JP,A)
【文献】特開2020-023106(JP,A)
【文献】特開2015-076832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/04
B41J 2/01
B41J 29/393
B41J 29/38
H04N 1/407
H04N 1/401
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に対して記録材を付与することにより、画像を記録する記録手段と、
光源から記録媒体に対して照射された光の反射光を読取手段が読み取る読取動作により、当該記録媒体上に記録されたテストパターンの読み取りデータを取得するデータ取得手段と、
前記データ取得手段により取得された読み取りデータに基づき、前記記録手段からの画像の記録を制御する制御手段と、
を備える記録装置であって、
テストパターンが記録される記録媒体に関する特性情報を取得し、取得された前記特性情報に基づいて
、前記読取手段が当該テストパターンを読み取る際の光
量を調整する調整手段をさらに備え
、
前記制御手段は、同一種類の複数枚の記録媒体に画像を記録するための記録ジョブを受け付けた場合、前記記録手段にn(n:2以上の自然数)枚目の記録媒体にテストパターンを記録させ、
前記調整手段は、m(m:m<nを満たす自然数)枚目の記録媒体の地の色を読み取ることにより前記特性情報を取得し、取得した前記特性情報に基づいて、前記n枚目の記録媒体に記録されたテストパターンを読み取る際の光量を調整することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記調整手段は、前記読取手段の露光時間を変更することにより光量を調整することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記調整手段は、
取得された前記特性情報に基づいて、前記光源が照射する光量をさらに調整することを特徴とする請求項1
または2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記調整手段は、前記光源の発光時
間を変更することにより光量を調整することを特徴とする請求項
3に記載の記録装置。
【請求項5】
前記調整手段は、前記光源の発光強度を変更することにより光量を調整することを特徴とする請求項
3または4に記載の記録装置。
【請求項6】
記録媒体に対して記録材を付与することにより、画像を記録する記録手段と、
光源から記録媒体に対して照射された光の反射光を読取手段が読み取る読取動作により、当該記録媒体上に記録されたテストパターンの読み取りデータを取得するデータ取得手段と、
前記データ取得手段により取得された読み取りデータに基づき、前記記録手段からの画像の記録を制御する制御手段と、
を備える記録装置であって、
テストパターンが記録される記録媒体に関する特性情報を取得し、取得された前記特性情報に基づいて、前記光源が照射する光量を調整する調整手段をさらに備え、
前記制御手段は、同一種類の複数枚の記録媒体に画像を記録するための記録ジョブを受け付けた場合、前記記録手段にn(n:2以上の自然数)枚目の記録媒体にテストパターンを記録させ、
前記調整手段は、m(m:m<nを満たす自然数)枚目の記録媒体の地の色を読み取ることにより前記特性情報を取得し、取得した前記特性情報に基づいて、前記n枚目の記録媒体に記録されたテストパターンを読み取る際に前記光源が照射する光量を調整することを特徴とする記録装置。
【請求項7】
前記調整手段は、前記光源の発光時間を変更することにより光量を調整することを特徴とする請求項6に記載の記録装置。
【請求項8】
前記調整手段は、前記光源の発光強度を変更することにより光量を調整することを特徴とする請求項6または7に記載の記録装置。
【請求項9】
記録媒体の種類に関する種類情報を記憶する記憶手段をさらに備え、
前記調整手段は、前記制御手段が受け付けた記録ジョブに含まれる記録媒体の種類情報が、前記記憶手段に記憶された種類情報と同じである場合には、前記特性情報の取得と光量の調整を行わないことを特徴とする請求項1から
8のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項10】
前記記憶手段は、ユーザが用意した記録媒体の種類を示す種類情報を記憶可能であることを特徴とする請求項
9に記載の記録装置。
【請求項11】
搬送方向に記録媒体を搬送する搬送手段をさらに備え、
前記読取手段は、前記搬送方向において前記記録手段よりも下流側に配置されていることを特徴とする請求項1から
10のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項12】
前記読取手段は、CCDセンサであることを特徴とする請求項1から
11のいずれか1項記載の記録装置。
【請求項13】
前記記録手段は、記録媒体が搬送される搬送方向に対して交差する方向に複数の記録素子が配置された記録ヘッドであることを特徴とする請求項1から
12のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項14】
前記記録手段は、記録媒体に対して記録材としてインクを付与することを特徴とする請求項1から
13のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項15】
前記記録手段は、テストパターンとして記録媒体に対して記録材が付与される位置を調整するための記録位置調整パターンを記録し、
前記制御手段は、当該記録位置調整パターンの読み取りデータに基づき、前記記録手段から記録材を付与するタイミングを制御することを特徴とする請求項1から
14のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項16】
記録媒体は、ロールシートであることを特徴とする請求項1から15のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項17】
記録媒体に対して記録材を付与することにより、画像を記録する記録手段を備える記録装置のための制御方法であって、
光源から記録媒体に対して照射された光の反射光を読取手段が読み取る読取動作により、当該記録媒体上に記録されたテストパターンの読み取りデータを取得するデータ取得工程と、
前記データ取得工程において取得された読み取りデータに基づき、前記記録手段による画像の記録を制御する制御工程と、
を備え、
テストパターンが記録される記録媒体に関する特性情報を取得し、取得された前記特性情報に基づいて
、前記読取手段が当該テストパターンを読み取る際の光
量を調整する調整工程をさらに備え
、
同一種類の複数枚の記録媒体に画像を記録するための記録ジョブを受け付けた場合、前記記録手段にn(n:2以上の自然数)枚目の記録媒体にテストパターンを記録させ、
m(m:m<nを満たす自然数)枚目の記録媒体の地の色を読み取ることにより前記特性情報を取得し、取得した前記特性情報に基づいて、前記n枚目の記録媒体に記録されたテストパターンを読み取る際の光量を調整することを特徴とする制御方法。
【請求項18】
記録媒体に対して記録材を付与することにより、画像を記録する記録手段を備える記録装置のための制御方法であって、
光源から記録媒体に対して照射された光の反射光を読取手段が読み取る読取動作により、当該記録媒体上に記録されたテストパターンの読み取りデータを取得するデータ取得工程と、
前記データ取得工程において取得された読み取りデータに基づき、前記記録手段による画像の記録を制御する制御工程と、
を備え、
テストパターンが記録される記録媒体に関する特性情報を取得し、取得された前記特性情報に基づいて、前記光源が照射する光量を調整する調整工程をさらに備え、
同一種類の複数枚の記録媒体に画像を記録するための記録ジョブを受け付けた場合、前記記録手段にn(n:2以上の自然数)枚目の記録媒体にテストパターンを記録させ、
m(m:m<nを満たす自然数)枚目の記録媒体の地の色を読み取ることにより前記特性情報を取得し、取得した前記特性情報に基づいて、前記n枚目の記録媒体に記録されたテストパターンを読み取る際に前記光源が照射する光量を調整することを特徴とする制御方法。
【請求項19】
請求項
17または18に記載の制御方法の各工程をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体上に画像を記録するための記録装置、制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
記録媒体の幅に相当する記録幅を持つ、いわゆる、フルライン型の記録ヘッドが設けられたインクジェット記録装置が知られている。このような記録ヘッドを持つインクジェット記録装置においては、記録ヘッドを記録媒体に対して1回相対移動させることにより記録媒体のほぼ全面に画像を記録できる。
【0003】
フルライン型の記録ヘッドを用いた記録装置においては、記録ヘッドの取り付け位置や複数の記録ヘッド間における相対的な取り付け位置に誤差が生じることがある。この誤差は、記録媒体上のインク滴の着弾位置にずれを生じさせ、記録品位の低下要因となる。
【0004】
このようなインク着弾位置のずれに対し、補正するための調整処理が知られている。本明細書では、この調整処理を記録位置調整と呼称する。記録位置調整は、連続的に行われる記録動作中に生じる誤差を調整するために記録動作中に行われる動的な記録位置調整、記録動作が行われてないタイミングにおいて装置のメンテナンス動作として行う静的な記録位置調整がある。
【0005】
記録位置調整では、記録媒体上に記録された画像を読み取り、インク滴の着弾位置や画像不良を検出することにより、次の記録動作にその結果を反映させる。特許文献1に開示された記録位置調整方法は、記録媒体(記録材)の性質を元に読取画像データの各画素に、階調補正を施す補正手段を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された記録位置調整においては、記録媒体(記録材)の性質を元に読取画像データに対して階調補正を施している。しかしながら、読み取った後に階調補正のためのデータ処理を行うため、動的な記録位置調整を次の記録動作へ反映するタイミングが遅れてしまう虞がある。
【0008】
このような課題に対し、本発明は、テストパターンの読取動作における光量の調整処理を適切に行い、読取画像データの解析における処理量を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、記録媒体に対して記録材を付与することにより、画像を記録する記録手段と、光源から記録媒体に対して照射された光の反射光を読取手段が読み取る読取動作により、当該記録媒体上に記録されたテストパターンの読み取りデータを取得するデータ取得手段と、前記データ取得手段により取得された読み取りデータに基づき、前記記録手段からの画像の記録を制御する制御手段と、を備える記録装置であって、テストパターンが記録される記録媒体に関する特性情報を取得し、取得された前記特性情報に基づいて、前記読取手段が当該テストパターンを読み取る際の光量を調整する調整手段をさらに備え、前記制御手段は、同一種類の複数枚の記録媒体に画像を記録するための記録ジョブを受け付けた場合、前記記録手段にn(n:2以上の自然数)枚目の記録媒体にテストパターンを記録させ、前記調整手段は、m(m:m<nを満たす自然数)枚目の記録媒体の地の色を読み取ることにより前記特性情報を取得し、取得した前記特性情報に基づいて、前記n枚目の記録媒体に記録されたテストパターンを読み取る際の光量を調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、テストパターンを読み取る際の光量を適切に調整することができ、テストパターンを読み取った読み取りデータの解析に係る処理量の増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図8】
図1の記録システムの検査ユニット9Aの詳細図
【
図9】
図1の記録システムの動的記録位置調整のフローチャート
【
図10】
図1の記録システムによって記録された記録媒体の記録領域
【
図11】
図1の記録システムの動的記録位置調整のタイムチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態を説明する。
【0013】
図面を参照して本発明の実施形態について説明する。各図において、矢印XおよびYは水平方向を示し、互いに直交する。矢印Zは上下方向を示す。
【0014】
<記録システム>
図1は本発明の一実施形態に係る記録システム1を概略的に示した正面図である。記録システム1は、転写体2を介して記録媒体Pにインク像を転写することで記録物P’を製造する、枚葉式のインクジェットプリンタである。記録システム1は、記録装置1Aと、搬送装置1Bとを含む。本実施形態では、X方向、Y方向、Z方向が、それぞれ、記録システム1の幅方向(全長方向)、奥行き方向、高さ方向を示している。記録媒体PはX方向に搬送される。
【0015】
なお、「記録」には、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、又は媒体の加工を行う場合も含まれ、人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わない。また、本実施形態では「記録媒体」としてシート状の紙を想定するが、布、プラスチック・フィルム等であってもよい。
【0016】
インクの成分については、特に限定はないが、本実施形態では、色材である顔料、水、樹脂を含む水性顔料インクを用いる場合を想定する。
【0017】
<記録装置>
記録装置1Aは、記録ユニット3、転写ユニット4および周辺ユニット5A~5D、および、供給ユニット6を含む。
【0018】
<記録ユニット>
記録ユニット3は、複数の記録ヘッド30と、キャリッジ31とを含む。
図1と
図2を参照する。
図2は記録ユニット3の斜視図である。記録ヘッド30は、転写体2に液体インクを吐出し、転写体2上に記録画像のインク像を形成する。
【0019】
本実施形態の場合、各記録ヘッド30は、記録媒体が搬送されるX方向と交差するY方向に延設されたフルラインヘッドであり、使用可能な最大サイズの記録媒体の画像記録領域の幅分をカバーする範囲にノズルが配列されている。記録ヘッド30は、その下面に、ノズルが開口したインク吐出面を有しており、インク吐出面は、微小隙間(例えば数mm)を介して転写体2の表面と対向している。本実施形態の場合、転写体2は円軌道上を循環的に移動する構成であるため、複数の記録ヘッド30は、放射状に配置されている。
【0020】
各ノズルには吐出素子が設けられている。吐出素子は、例えば、ノズル内に圧力を発生させてノズル内のインクを吐出させる素子であり、公知のインクジェットプリンタのインクジェットヘッドの技術が適用可能である。吐出素子としては、例えば電気-熱変換体によりインクに膜沸騰を生じさせ気泡を形成することでインクを吐出する素子、電気-機械変換体によってインクを吐出する素子、静電気を利用してインクを吐出する素子等が挙げられる。高速で高密度の記録の観点からは電気-熱変換体を利用した吐出素子を用いることができる。
【0021】
本実施形態の場合、記録ヘッド30は、9つ設けられている。各記録ヘッド30は、互いに異なる種類のインクを吐出する。異なる種類のインクとは、例えば、色材が異なるインクであり、イエローインク、マゼンタインク、シアンインク、ブラックインク等のインクである。1つの記録ヘッド30は1種類のインクを吐出するが、1つの記録ヘッド30が複数種類のインクを吐出する構成であってもよい。このように複数の記録ヘッド30を設けた場合、そのうちの一部が色材を含まないインク(例えばクリアインク)を吐出してもよい。
【0022】
キャリッジ31は、複数の記録ヘッド30を支持する。各記録ヘッド30は、インク吐出面側の端部がキャリッジ31に固定されている。これにより、インク吐出面と転写体2との表面の隙間をより精密に維持することができる。キャリッジ31は、案内部材RLの案内によって、記録ヘッド30を搭載しつつ変位可能に構成されている。本実施形態の場合、案内部材RLは、Y方向に延設されたレール部材であり、X方向に離間して一対設けられている。キャリッジ31のX方向の各側部にはスライド部32が設けられている。スライド部32は案内部材RLと係合し、案内部材RLに沿ってY方向にスライドする。
【0023】
図3は記録ユニット3の変位態様を示しており、記録システム1の右側面を模式的に示した図である。記録システム1の後部には回復ユニット12が設けられている。回復ユニット12は記録ヘッド30の吐出性能を回復する機構を有する。そのような機構としては、例えば、記録ヘッド30のインク吐出面をキャッピングするキャップ機構、インク吐出面をワイピングするワイパ機構、インク吐出面から記録ヘッド30内のインクを負圧吸引する吸引機構を挙げることができる。
【0024】
案内部材RLは、転写体2の側方から回復ユニット12に渡って延設されている。記録ユニット3は、案内部材RLの案内により、実線で記録ユニット3を示した吐出位置POS1と、破線で記録ユニット3を示した回復位置POS3との間で変位可能であり、不図示の駆動機構により移動される。
【0025】
吐出位置POS1は、記録ユニット3が転写体2にインクを吐出する位置であり、記録ヘッド30のインク吐出面が転写体2の表面に対向する位置である。回復位置POS3は、吐出位置POS1から退避した位置であり、記録ユニット3が回復ユニット12上に位置する位置である。回復ユニット12は記録ユニット3が回復位置POS3に位置した場合に、記録ヘッド30に対する回復処理を実行可能である。本実施形態の場合、記録ユニット3が回復位置POS3に到達する前の移動途中においても回復処理を実行可能である。吐出位置POS1と回復位置POS3の間には予備回復位置POS2があり、回復ユニット12は記録ヘッド30が吐出位置POS1から回復位置POS3へ移動している間に、予備回復位置POS2において記録ヘッド30に対する予備的な回復処理を実行可能である。
【0026】
<転写ユニット>
図1を参照して転写ユニット4について説明する。転写ユニット4は、転写ドラム(転写胴)41と圧胴42とを含む。これらの胴は、Y方向の回転軸周りに回転する回転体であり、円筒形状の外周面を有している。
図1において、転写ドラム41および圧胴42の各図形内に示した矢印は、これらの回転方向を示しており、転写ドラム41は時計回りに、圧胴42は反時計回りに回転する。
【0027】
転写ドラム41は、その外周面に転写体2を支持する支持体である。転写体2は、転写ドラム41の外周面上に、周方向に連続的にあるいは間欠的に設けられる。連続的に設けられる場合、転写体2は無端の帯状に形成される。間欠的に設けられる場合、転写体2は、有端の帯状に複数のセグメントに分けて形成され、各セグメントは転写ドラム41の外周面に等ピッチで円弧状に配置することができる。
【0028】
転写ドラム41の回転により、転写体2は円軌道上を循環的に移動する。転写ドラム41の回転位相により、転写体2の位置は、吐出前処理領域R1、吐出領域R2、吐出後処理領域R3およびR4、転写領域R5、転写後処理領域R6に区別することができる。転写体2はこれらの領域を循環的に通過する。
【0029】
吐出前処理領域R1は、記録ユニット3によるインクの吐出前に転写体2に対する前処理を行う領域であり、周辺ユニット5Aによる処理が行われる領域である。本実施形態の場合、反応液が付与される。吐出領域R2は記録ユニット3が転写体2にインクを吐出してインク像を形成する形成領域である。吐出後処理領域R3およびR4はインクの吐出後にインク像に対する処理を行う処理領域であり、吐出後処理領域R3は周辺ユニット5Bによる処理が行われる領域であり、吐出後処理領域R4は周辺ユニット5Cによる処理が行われる領域である。転写領域R5は転写ユニット4により転写体2上のインク像が記録媒体Pに転写される領域である。転写後処理領域R6は、転写後に転写体2に対する後処理を行う領域であり、周辺ユニット5Dによる処理が行われる領域である。
【0030】
本実施形態の場合、吐出領域R2は、一定の区間を有する領域である。他の領域R1、R3~R6は、吐出領域R2に比べるとその区間は狭い。時計の文字盤に喩えると、本実施形態の場合、吐出前処理領域R1は概ね10時の位置であり、吐出領域R2は概ね11時から1時の範囲であり、吐出後処理領域R3は概ね2時の位置であり、吐出後処理領域R4は概ね4時の位置である。転写領域R5は概ね6時の位置であり、転写後処理領域R6は概ね8時の領域である。
【0031】
転写体2は、単層から構成してもよいが、複数層の積層体としてもよい。複数層で構成する場合、例えば、表面層、弾性層、圧縮層の三層を含んでもよい。表面層はインク像が形成される画像形成面を有する最外層である。圧縮層を設けることで、圧縮層が変形を吸収し、局所的な圧力変動に対してその変動を分散し、高速記録時においても転写性を維持することができる。弾性層は表面層と圧縮層との間の層である。
【0032】
表面層の材料としては、樹脂、セラミック等各種材料を適宜用いることができるが、耐久性等の点で圧縮弾性率の高い材料を用いることができる。具体的には、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、フッ素含有樹脂、加水分解性有機ケイ素化合物を縮合して得られる縮合物等が挙げられる。表面層には、反応液の濡れ性、画像の転写性等を向上させるために、表面処理を施して用いてもよい。表面処理としては、フレーム処理、コロナ処理、プラズマ処理、研磨処理、粗化処理、活性エネルギー線照射処理、オゾン処理、界面活性剤処理、シランカップリング処理などが挙げられる。これらを複数組み合わせてもよい。また、表面層に任意の表面形状を設けることもできる。
【0033】
圧縮層の材料としては、例えばアクリロニトリル-ブタジエンゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。このようなゴム材料の成形時には、所定量の加硫剤、加硫促進剤等を配合し、さらに発泡剤、中空微粒子或いは食塩等の充填剤を必要に応じて配合し、多孔質のゴム材料としてもよい。これにより、様々な圧力変動に対して気泡部分が体積変化を伴って圧縮されるため、圧縮方向以外への変形が小さく、より安定した転写性、耐久性を得ることができる。多孔質のゴム材料としては、各気孔が互いに連続した連続気孔構造のものと、各気孔がそれぞれ独立した独立気孔構造のものがあるが、いずれの構造であってもよく、これらの構造を併用してもよい。
【0034】
弾性層の部材としては、樹脂、セラミック等、各種材料を適宜用いることができる。加工特性等の点で、各種エラストマー材料、ゴム材料を用いることができる。具体的には、例えばフルオロシリコーンゴム、フェニルシリコーンゴム、フッ素ゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、ニトリルゴム等が挙げられる。また、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、スチレンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン/プロピレン/ブタジエンのコポリマー、ニトリルブタジエンゴム等が挙げられる。特に、シリコーンゴム、フルオロシリコーンゴム、フェニルシリコーンゴムは、圧縮永久ひずみが小さいため、寸法安定性、耐久性の面で有利である。また、温度による弾性率の変化が小さく、転写性の点でも有利である。
【0035】
表面層と弾性層の間、弾性層と圧縮層の間には、これらを固定するために各種接着剤や両面テープを用いることもできる。また、転写体2は、転写ドラム41に装着する際の横伸びの抑制や、コシを保つために圧縮弾性率が高い補強層を含んでもよい。また、織布を補強層としてもよい。転写体2は前記材質による各層を任意に組み合わせて作製することができる。
【0036】
圧胴42は、その外周面が転写体2に圧接される。圧胴42の外周面には、記録媒体Pの先端部を保持するグリップ機構が少なくとも一つ設けられている。グリップ機構は圧胴42の周方向に離間して複数設けてもよい。記録媒体Pは圧胴42の外周面に密接して搬送されつつ、圧胴42と転写体2とのニップ部を通過するときに、転写体2上のインク像が転写される。
【0037】
転写ドラム41と圧胴42とを駆動するモータ等の駆動源は、これらに共通とし、歯車機構等の伝達機構により、駆動力を分配することができる。
【0038】
<周辺ユニット>
周辺ユニット5A~5Dは転写ドラム41の周囲に配置されている。本実施形態の場合、周辺ユニット5A~5Dは、順に、付与ユニット、吸収ユニット、加熱ユニット、清掃ユニットである。
【0039】
付与ユニット5Aは、記録ユニット3によるインクの吐出前に、転写体2上に反応液を付与する機構である。反応液は、インクを高粘度化する成分を含有する液体である。ここで、インクの高粘度化とは、インクを構成している色材や樹脂等がインクを高粘度化する成分と接触することによって化学的に反応し、あるいは物理的に吸着し、これによってインクの粘度の上昇が認められることである。このインクの高粘度化には、インク全体の粘度上昇が認められる場合のみならず、色材や樹脂等のインクを構成する成分の一部が凝集することにより局所的に粘度の上昇が生じる場合も含まれる。
【0040】
インクを高粘度化する成分は、金属イオン、高分子凝集剤など、特に制限はないが、インクのpH変化を引き起こして、インク中の色材を凝集させる物質を用いることができ、有機酸を用いることができる。反応液の付与機構としては、例えば、ローラ、記録ヘッド、ダイコーティング装置(ダイコータ)、ブレードコーティング装置(ブレードコータ)などが挙げられる。転写体2に対するインクの吐出前に反応液を転写体2に付与しておくと、転写体2に達したインクを直ちに定着させることができる。これにより、隣接するインク同士が混ざり合うブリーディングを抑制することができる。
【0041】
吸収ユニット5Bは、転写前に、転写体2上のインク像から液体成分を吸収する機構である。インク像の液体成分を減少させることで、記録媒体Pに記録される画像のにじみ等を抑制することができる。液体成分の減少を異なる視点で説明すれば、転写体2上のインク像を構成するインクを濃縮すると表現することもできる。インクを濃縮するとは、インクに含まれる液体成分が減少することによって、インクに含まれる色材や樹脂といった固形分の液体成分に対する含有割合が増加することを意味する。
【0042】
吸収ユニット5Bは、例えば、インク像に接触してインク像の液体成分の量を減少させる液吸収部材を含む。液吸収部材はローラの外周面に形成されてもよいし、液吸収部材が無端のシート状に形成され、循環的に走行されるものでもよい。インク像の保護の点で、液吸収部材の移動速度を転写体2の周速度と同じにして液吸収部材を転写体2と同期して移動させてもよい。
【0043】
液吸収部材は、インク像に接触する多孔質体を含んでもよい。液吸収部材へのインク固形分付着を抑制するため、インク像に接触する面の多孔質体の孔径は、10μm以下であってもよい。ここで、孔径とは平均直径のことを示し、公知の手段、例えば水銀圧入法や、窒素吸着法、SEM画像観察等で測定可能である。なお、液体成分は、一定の形を有さず、流動性があり、ほぼ一定の体積を有するものであれば、特に限定されるものではない。例えば、インクや反応液に含まれる水や有機溶媒等が液体成分として挙げられる。
【0044】
加熱ユニット5Cは、転写前に、転写体2上のインク像を加熱する機構である。インク像を加熱することで、インク像中の樹脂が溶融し、記録媒体Pへの転写性を向上する。加熱温度は、樹脂の最低造膜温度(MFT)以上とすることができる。MFTは一般的に知られている手法、例えばJIS K 6828-2:2003や、ISO2115:1996に準拠した各装置で測定することが可能である。転写性及び画像の堅牢性の観点から、MFTよりも10℃以上高い温度で加熱してもよく、更に、20℃以上高い温度で加熱してもよい。加熱ユニット5Cは、例えば、赤外線等の各種ランプ、温風ファン等、公知の加熱デバイスを用いることができる。加熱効率の点で、赤外線ヒータを用いることができる。
【0045】
清掃ユニット5Dは、転写後に転写体2上を清掃する機構である。清掃ユニット5Dは、転写体2上に残留したインクや、転写体2上のごみ等を除去する。清掃ユニット5Dは、例えば、多孔質部材を転写体2に接触させる方式、ブラシで転写体2の表面を擦る方式、ブレードで転写体2の表面をかきとる方式等の公知の方式を適宜用いることができる。また、清掃に用いる清掃部材は、ローラ形状、ウェブ形状等、公知の形状を用いることができる。
【0046】
以上の通り、本実施形態では、付与ユニット5A、吸収ユニット5B、加熱ユニット5C、清掃ユニット5Dを周辺ユニットとして備えるが、これらの一部のユニットに転写体2の冷却機能を付与するか、あるいは、冷却ユニットを追加してもよい。本実施形態では、加熱ユニット5Cの熱により転写体2の温度が上昇する場合がある。記録ユニット3により転写体2にインクを吐出した後、インク像がインクの主溶剤である水の沸点を超えると、吸収ユニット5Bによる液体成分の吸収性能が低下する場合がある。吐出されたインクが水の沸点未満に維持されるように転写体2を冷却することで、液体成分の吸収性能を維持することができる。
【0047】
冷却ユニットは、転写体2に送風する送風機構や、転写体2に部材(例えばローラ)を接触させ、この部材を空冷または水冷で冷却する機構であってもよい。また、清掃ユニット5Dの清掃部材を冷却する機構であってもよい。冷却タイミングは、転写後、反応液の付与前までの期間であってもよい。
【0048】
<供給ユニット>
供給ユニット6は、記録ユニット3の各記録ヘッド30にインクを供給する機構である。供給ユニット6は記録システム1の後部側に設けられていてもよい。供給ユニット6は、インクの種類毎に、インクを貯留する貯留部TKを備える。貯留部TKは、メインタンクとサブタンクとによって構成されてもよい。各貯留部TKと各記録ヘッド30とは流路6aで連通し、貯留部TKから記録ヘッド30へインクが供給される。流路6aは、貯留部TKと記録ヘッド30との間でインクを循環させる流路であってもよく、供給ユニット6はインクを循環させるポンプ等を備えてもよい。流路6aの途中または貯留部TKには、インク中の気泡を脱気する脱気機構を設けてもよい。流路6aの途中または貯留部TKには、インクの液圧と大気圧との調整を行うバルブを設けてもよい。貯留部TK内のインク液面が、記録ヘッド30のインク吐出面よりも低い位置となるように、貯留部TKと記録ヘッド30のZ方向の高さが設計されてもよい。
【0049】
<搬送装置>
搬送装置1Bは、記録媒体Pを転写ユニット4へ給送し、インク像が転写された記録物P’を転写ユニット4から排出する装置である。搬送装置1Bは、給送ユニット7、複数の搬送胴8、8a、二つのスプロケット8b、チェーン8cおよび回収ユニット8dを含む。
図1において、搬送装置1Bの各構成の図形の内側の矢印はその構成の回転方向を示し、外側の矢印は記録媒体Pまたは記録物P’の搬送経路を示している。記録媒体Pは給送ユニット7から転写ユニット4へ搬送され、記録物P’は転写ユニット4から回収ユニット8dへ搬送される。給送ユニット7側を搬送方向で上流側と呼び、回収ユニット8d側を下流側と呼ぶ場合がある。
【0050】
給送ユニット7は、複数の記録媒体Pが積載される積載部を含むと共に、積載部から一枚ずつ記録媒体Pを、最上流の搬送胴8に給送する給送機構を含む。各搬送胴8、8aはY方向の回転軸周りに回転する回転体であり、円筒形状の外周面を有している。各搬送胴8、8aの外周面には、記録媒体P(または記録物P’)の先端部を保持するグリップ機構が少なくとも一つ設けられている。各グリップ機構は、隣接する搬送胴間で記録媒体Pを受け渡されるように、その把持動作および解除動作が制御される。
【0051】
二つの搬送胴8aは、記録媒体Pの反転用の搬送胴である。記録媒体Pを両面記録する場合、表面への転写後に、圧胴42から下流側に隣接する搬送胴8へ記録媒体Pを渡さずに、搬送胴8aに渡す。記録媒体Pは、二つの搬送胴8aを経由して表裏が反転され、圧胴42の上流側の搬送胴8を経由して再び圧胴42へ渡される。これにより、記録媒体Pの裏面が転写ドラム41に面することになり、裏面にインク像が転写される。
【0052】
チェーン8cは、二つのスプロケット8b間に巻き回されている。二つのスプロケット8bの一方は駆動スプロケットであり他方は従動スプロケットである。駆動スプロケットの回転によりチェーン8cが循環的に走行する。チェーン8cには、その長手方向に離間して複数のグリップ機構が設けられている。グリップ機構は、記録物P’の端部を把持する。下流端に位置する搬送胴8からチェーン8cのグリップ機構に記録物P’が渡され、グリップ機構に把持された記録物P’はチェーン8cの走行により回収ユニット8dへ搬送され、把持が解除される。これにより記録物P’が回収ユニット8d内に積載される。
【0053】
<後処理ユニット>
搬送装置1Bには、後処理ユニット10A、10Bが設けられている。後処理ユニット10A、10Bは転写ユニット4よりも下流側に配置され、記録物P’に対して後処理を行う機構である。後処理ユニット10Aは、記録物P’の表面に対する処理を行い、後処理ユニット10Bは、記録物P’の裏面に対する処理を行う。処理の内容としては、例えば、記録物P’の画像記録面に、画像の保護や艶出し等を目的としたコーティングを挙げることができる。コーティングの内容としては、例えば、液体の塗布、シートの溶着、ラミネート等を挙げることができる。
【0054】
<検査ユニット>
搬送装置1Bには、検査ユニット9A、9Bが設けられている。検査ユニット9A、9Bは転写ユニット4よりも下流側に配置され、記録物P’の検査を行う機構である。
【0055】
本実施形態の場合、検査ユニット9Aは、記録物P’に記録された画像を撮影する撮影装置であり、例えば、CCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子を含む。検査ユニット9Aは、連続的に行われる記録動作中に記録画像を撮影する動的記録位置調整のための解析を行うユニットである。検査ユニット9Aが撮影した画像に基づいて、記録画像の色味などの経時変化を確認し、画像データあるいは記録データの補正の可否を判断することができる。本実施形態の場合、チェーン8cで搬送される記録物P’の記録画像を部分的に撮影可能に配置されている。検査ユニット9Aにより全ての記録画像の検査を行ってもよいし、所定数毎に検査を行ってもよい。
【0056】
本実施形態の場合、検査ユニット9Bも、記録物P’に記録された画像を撮影する撮影装置であり、例えば、CCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子を含む。検査ユニット9Bは、静的記録位置調整を行い、テスト記録動作において記録画像を撮影する。検査ユニット9Bは、記録画像の全体を撮影し、検査ユニット9Bが撮影した画像に基づいて、記録データに関する各種の補正の基本設定を行うことができる。本実施形態の場合、チェーン8cで搬送される記録物P’を撮影する位置に配置されている。検査ユニット9Bにより記録画像を撮影する場合、チェーン8cの走行を一時的に停止して、その全体を撮影する。検査ユニット9Bは、記録物P’上を走査するスキャナであってもよい。
【0057】
<制御ユニット>
次に、記録システム1の制御ユニットについて説明する。
図4および
図5は記録システム1の制御ユニット13のブロック図である。制御ユニット13は、上位装置(DFE)HC2に通信可能に接続され、また、上位装置HC2はホスト装置HC1に通信可能に接続される。
【0058】
ホスト装置HC1では、記録画像の元になる原稿データが生成、あるいは保存される。ここでの原稿データは、例えば、文書ファイルや画像ファイル等の電子ファイルの形式で生成される。この原稿データは、上位装置HC2へ送信され、上位装置HC2では、受信した原稿データを制御ユニット13で利用可能なデータ形式(例えば、RGBで画像を表現するRGBデータ)に変換する。変換後のデータは、画像データとして上位装置HC2から制御ユニット13へ送信され、制御ユニット13は受信した画像データに基づき、記録動作を開始する。
【0059】
本実施形態の場合、制御ユニット13は、メインコントローラ13Aと、エンジンコントローラ13Bとに大別される。メインコントローラ13Aは、処理部131、記憶部132、操作部133、画像処理部134、通信I/F(インタフェース)135、バッファ136および通信I/F137を含む。
【0060】
処理部131は、CPU等のプロセッサであり、記憶部132に記憶されたプログラムを実行し、メインコントローラ13A全体の制御を行う。記憶部132は、RAM、ROM、ハードディスク、SSD等の記憶デバイスであり、CPU131が実行するプログラムや、データを格納し、また、CPU131にワークエリアを提供する。操作部133は、例えば、タッチパネル、キーボード、マウス等の入力デバイスであり、ユーザの指示を受け付ける。
【0061】
画像処理部134は例えば画像処理プロセッサを有する電子回路である。バッファ136は、例えば、RAM、ハードディスクやSSDである。通信I/F135は上位装置HC2との通信を行い、通信I/F137はエンジンコントローラ13Bとの通信を行う。
図4において破線矢印は、画像データの処理の流れを例示している。上位装置HC2から通信IF135を介して受信された画像データは、バッファ136に蓄積される。画像処理部134はバッファ136から画像データを読み出し、読み出した画像データに所定の画像処理を施して、再びバッファ136に格納する。バッファ136に格納された画像処理後の画像データは、プリントエンジンが用いる記録データとして、通信I/F137からエンジンコントローラ13Bへ送信される。
【0062】
図5に示すように、エンジンコントローラ13Bは、制御部14、15A~15Eを含み、記録システム1が備えるセンサ群およびアクチュエータ群16の検知結果の取得および駆動制御を行う。これらの各制御部は、CPU等のプロセッサ、RAMやROM等の記憶デバイス、外部デバイスとのインタフェースを含む。なお、制御部の区分けは一例であり、一部の制御を更に細分化した複数の制御部で実行してもよいし、逆に、複数の制御部を統合して、それらの制御内容を一つの制御部で行うように構成してもよい。
【0063】
エンジン制御部14は、エンジンコントローラ13Bの全体の制御を行う。記録制御部15Aは、メインコントローラ13Aから受信した記録データをラスタデータ等、記録ヘッド30の駆動に適したデータ形式に変換する。記録制御部15Aは、各記録ヘッド30の吐出制御を行う。
【0064】
転写制御部15Bは、付与ユニット5Aの制御、吸収ユニット5Bの制御、加熱ユニット5Cの制御、および清掃ユニット5Dの制御を行う。
【0065】
信頼性制御部15Cは、供給ユニット6の制御、回復ユニット12の制御、および記録ユニット3を吐出位置POS1と回復位置POS3との間で移動させる駆動機構の制御を行う。
【0066】
搬送制御部15Dは、転写ユニット4の駆動制御や、搬送装置1Bの制御を行う。検査制御部15Eは、検査ユニット9Bの制御、および検査ユニット9Aの制御を行う。
【0067】
センサ群およびアクチュエータ群16のうち、センサ群には、可動部の位置や速度を検知するセンサ、温度を検知するセンサ、撮像素子等が含まれる。アクチュエータ群にはモータ、電磁ソレノイド、電磁バルブ等が含まれる。
【0068】
<動作例>
図6は記録動作の例を模式的に示す図である。転写ドラム41および圧胴42が回転されつつ、以下の各工程が循環的に行われる。状態ST1に示すように、始めに転写体2上に付与ユニット5Aから反応液Lが付与される。転写体2上の反応液Lが付与された部位は転写ドラム41の回転に伴って移動していく。反応液Lが付与された部位が記録ヘッド30の下に到達すると、状態ST2に示すように記録ヘッド30から転写体2にインクが吐出される。これによりインク像IMが形成される。その際、吐出されるインクが転写体2上の反応液Lと混ざりあうことで、色材の凝集が促進される。吐出されるインクは、供給ユニット6の貯留部TKから記録ヘッド30に供給される。
【0069】
転写体2上のインク像IMは転写体2の回転に伴って移動していく。インク像IMが吸収ユニット5Bに到達すると状態ST3に示すように吸収ユニット5Bによりインク像IMから液体成分が吸収される。インク像IMが加熱ユニット5Cに到達すると状態ST4に示すように加熱ユニット5Cによりインク像IMが加熱され、インク像IM中の樹脂が溶融し、インク像IMが造膜される。このようなインク像IMの形成に同期して、搬送装置1Bにより記録媒体Pが搬送される。
【0070】
状態ST5に示すように、インク像IMと記録媒体Pとが転写体2と圧胴42とのニップ部に到達し、記録媒体Pにインク像IMが転写され、記録物P’が製造される。ニップ部を通過すると、記録物P’に記録された画像が検査ユニット9Aにより撮影され、記録画像が検査される。記録物P’は搬送装置1Bにより回収ユニット8dへ搬送される。
【0071】
転写体2上のインク像IMが形成されていた部分は、清掃ユニット5Dに到達すると状態ST6に示すように清掃ユニット5Dにより清掃される。清掃後、転写体2は一回転したことになり、同様の手順で記録媒体Pへのインク像の転写が繰り返し行われる。上記の説明では理解を容易にするために、転写体2の一回転で一枚の記録媒体Pへのインク像IMの転写が一回行われるように説明したが、転写体2の一回転で複数枚の記録媒体Pへのインク像IMの転写が連続的に行うことができる。
【0072】
このような記録動作を継続していくと、各記録ヘッド30のメンテナンスが必要となる。
図7は各記録ヘッド30のメンテナンスの際の動作例を示している。状態ST11は、吐出位置POS1に記録ユニット3が位置している状態を示す。状態ST12は、記録ユニット3が予備回復位置POS2を通過している状態を示し、通過中に回復ユニット12により記録ユニット3の各記録ヘッド30の吐出性能を回復する処理が実行される。その後、状態ST13に示すように、記録ユニット3が回復位置POS3に位置した状態で、回復ユニット12により各記録ヘッド30の吐出性能を回復する処理が実行される。
【0073】
<動作例>
以上は、通常の記録動作例である。次に、本実施形態の検査ユニット9Aによる動的な記録位置の調整について説明する。本実施形態では、
図4の記憶部132に、前回の記録動作に用いられた記録媒体の種類に関する種類情報を記憶しておく。そして、後述のステップS300の判断において、この情報を用いて更新の必要性を判断する。尚、種類情報として、予め記録装置が対応可能な記録媒体の種類を示す情報の他に、ユーザが用意した記憶媒体の種類として登録した情報を記憶可能な形態としてもよい。
【0074】
図8に、検査ユニット9Aとその周辺の詳細図を示す。検査ユニット9Aは、撮影装置100、ブロアー101、光源102を備える。光源102から発光された光が記録媒体上に記録された記録位置調整パターンで反射し、その反射光を撮影装置100が読み取ることにより、記録位置調整パターンの読み取りデータを取得する。本実施形態の光源102の発光強度は可変である。記録位置調整パターンの読取動作に適した条件は、撮影装置100の白基準から計算することができる。
【0075】
この読取動作に適切な条件を得るため、本実施形態では、パターンを読み取る際の光量を調整する。撮影装置100において受光される受光量を制御することにより、読み取られた画像データに対する補正を行わず、次の記録動作に読み取り結果を迅速に反映させることができる。光量の調整方法としては、光源102からの照射光の調整、もしくは、撮影装置100の読み取り動作の調整が考えられる。例えば、本実施形態では、撮影時の光源102の発光時間の変更、撮影時の光源102の発光強度の変更、撮影装置100の露光時間の変更を少なくとも1つを実行する。尚、光量の調整を行わない場合に比べて読み取り結果を早く反映させることが出来れば、読み取りデータに対して補正処理を行ってもよい。例えば、光量調整によって読み取り精度が上がり、補正量が減って補正処理にかかる時間が低減するような場合には、光量調整と補正処理の両方を実行してもよい。
【0076】
記録媒体Pは、チェーン8cに配されたグリップ機構120により搬送される。撮影装置100により記録媒体P上に記録された画像を撮影する際、ブロアー101から送られる空気によって、対向する位置に配置された規制部材110に記録媒体Pが押し付けられる。この時、ブロアー101から送られる風量は、記録媒体Pの性質に応じて予め規定してもよい。例えば、剛性の高い種類の記録媒体に対しては、剛性の低い種類の記録媒体よりも風量を強く設定する等である。
【0077】
これらの動作により、撮影時の撮影装置100と記録物P’の距離を一定に保ちながら、撮影装置100からの焦点距離となる位置に記録媒体Pの表面を合わせることができる。これにより、解析に適した画像を撮影することができる。
【0078】
図9は、本実施形態の記録動作時における動的な記録位置調整の流れを示したフローチャートである。また、
図11のタイムチャートは、記録ジョブで指示された記録枚数が11枚、記録枚数が4枚の倍数のタイミングで動的な記録位置調整を行う場合の動作例である。
【0079】
まず、記録ジョブを受け付けると、本フローが開始される。本実施形態においては、1つの記録ジョブには、同一種類で複数枚の記録媒体に対して画像を記録する指示があるものとする。ステップS100においてブロアー101の動作がONにされ、送風が開始される。次に、ステップS110において記録媒体が給紙され、画像の記録動作が開始される。同時に、記録枚数のカウントが0にリセットされる。ステップS200において、1枚の記録媒体Pに対する記録が終了する毎に記録枚数がカウントアップされる。そして、ステップS300において光量調整量の更新を行うかどうかが判断され、ステップS400において動的な記録位置調整を行うかどうかが判断される。ステップS500で終了するまで、このステップS200からステップS400の判断が繰り返される。記録終了後は、ステップS510においてブロアー101の動作がOFFにされる。
【0080】
ステップS300では、光量調整量を更新する必要があるかどうかが判断される。判断基準としては、例えば、今回の記録ジョブにおいて画像が記録される記録媒体の種類が、前回の記録時に用いられた記録媒体と同じ種類である場合は更新する必要がないと判断され、異なる種類である場合は光量調整量を更新する必要があると判断される。ここでは、記憶部132に記憶されている記録媒体の特性情報を取得し、特性情報が示す記録媒体の種類とこれから画像が記録される記録媒体の種類が同じ場合には、更新する必要がないと判断され、光量の調整は行われない。一方、異なる場合には、光量を調整する必要があると判断され、記憶部132に記憶された特性情報が更新される。尚、記録媒体の特性情報は、記録媒体の種類を示す種類情報であってもよく、記録媒体の地の色を示す色情報であってもよく、照射された光の反射特性を示す情報であってもよい。
【0081】
光量調整量を更新する必要があると判断された場合は、ステップS310において規定の光量調整量取得用の光量調整が行われる。ステップS320において、撮影装置100の撮像範囲に記録媒体Pの非記録領域、すなわちインクが付与されていない領域が搬送されたタイミングで画像が読み取られ、解析が行われる。尚、この記録媒体の地の色(所謂、紙白の色)を取得するための記録媒体を1枚用意し、画像が記録されずに白紙の状態で撮像領域まで搬送されるようにしてもよい。また、
図10に示すように記録領域200の外側にメンテナンスパターン用にメンテナンスパターン記録領域210を設け、メンテナンスパターン記録領域210にメンテナンスパターンが記録されない場合に、この領域を非記録領域として用いてもよい。そして、ステップS330において、解析によって得られた光量調整量が、新たな光量調整量として設定される。
【0082】
ステップS400では、記録枚数がn枚の倍数の場合に動的な記録位置調整が行われる。このとき、nは既定の2以上の自然数である。ステップS410において、ステップS330において更新された光量調整量を元に、光量調整が行われる。次に、ステップS420において、撮影装置100の撮像範囲に記録媒体Pのメンテナンスパターン記録領域210が搬送されたタイミングで画像が取得され、解析が行われる。そして、得られた解析結果に基づき、ステップS430において記録位置調整が実行される。記録位置の調整としては、例えば、記録ヘッド30を駆動させて微調整する方法でもよく、記録ヘッド30からインク滴が吐出されるタイミングを変更する方法でもよい。例えば、記録枚数がnの倍数のときに記録位置調整パターンが記録されるとすると、m(m<nを満たす自然数)枚目までに記録位置調整パターンが記録される。例えば、n=4の場合、1~3枚目まではメンテナンスパターン記録領域210には何も記録されないため、この1~3枚目までのいずれかのタイミングで記録媒体の地の色を読み取る。そして、その読み取り結果に基づいて調整された光量で、4枚目のメンテナンスパターン記録領域210に記録された記録位置調整パターンを読み取る。これにより、この記録ジョブで用いられる種類の記録媒体に適した光量で記録位置調整パターンを読み取ることができ、読み取りデータに対する補正を不要とすることができ、読取結果を反映させる迄の時間を短縮することができる。
【0083】
このような制御により、記録媒体Pの種類に応じて光量調整量が変更されるため、表面性や色味の異なる複数種類の記録媒体を用いる場合であっても、撮影装置100が好適な条件で撮影を行うことができ、且つ、記録位置の調整が適切に行われる。
【0084】
例えば、黄色味を帯びた記録媒体に対してイエローのインクでパターンが記録された場合、光源102からの照射光が強すぎると、読み取ったデータにおいて記録媒体の地の色とパターンの色との識別が難しい。一方、光源102からの照射光が弱すぎると、読み取ったデータにおけるノイズ成分の割合が多くなり、精度が低くなってしまう。また、ユーザの用意した記録媒体を用いる場合には、予め適切な光量を設定することができない。これらの課題に対し、本実施形態の構成により、使用される記録媒体の種類に適した光量を設定し、テストパターンを読み取る精度を得つつ、画像解析やデータ補正に係る時間を低減するという効果を得ることができる。この結果、記録される画像における不良の発生を抑制することができる。また、読み取り結果を反映させるまでの待機時間を低減することができる。
【0085】
また、光量調整を行いながら光量調整量の撮影・更新が行われるため、動的な記録位置調整をしながら記録が続けられる。これにより、画像解析時間の増加を抑制しつつ、記録品位を保って記録動作を長時間継続することが可能となる。
【0086】
上記例では、記録媒体1枚毎に、光量調整量を更新するかどうかを判断する処理(ステップS200)を実行したが、本発明はこれに限られない。1つの記録ジョブでの記録の指示が、同一種類の記録媒体に対するものである場合には、1つの記録ジョブにつき1回判断すればよい。1つの記録ジョブで複数種類の記録媒体に対して画像を記録する場合であっても、テストパターンが記録される記録媒体と同一種類で、且つ、テストパターンが記録されるn枚目よりも前のm(<n)枚目の記録媒体の地の色を読み取り、更新するかどうかを判断すればよい。
【0087】
また、記録されるテストパターンは記録位置調整パターンに限られない。記録素子の不良を検知するための不吐検知パターンや階調補正用のテストパターン等であってもよい。
【0088】
尚、ステップS310~330の光量調整量の更新処理では、記憶された種類情報と異なる場合には記録媒体の非印刷領域を読み取って光量を調整する形態について説明したが、この形態には限られない。例えば、これから記録される記憶媒体の種類に対応する光量調整量が予め記憶されている場合には、非印刷領域を読み取る制御をスキップして、光量調整を行ってもよい。
【0089】
(その他の実施形態)
上記実施形態では、記録ユニット3が複数の記録ヘッド30を有するが、一つの記録ヘッド30を有してもよい。記録ヘッド30はフルラインヘッドでなくてもよく、記録ヘッド30を着脱自在に搭載するキャリッジをY方向に移動させながら記録ヘッド30からインクを吐出してインク像を形成するシリアル方式であってもよい。
【0090】
また、本発明を適用可能な記録装置は、インクを付与することにより画像を記録する記録装置に限られない。記録材はインクに限定されず、トナーを付与することにより画像を記録する電子写真方式の記録装置であってもよい。
【0091】
記録媒体Pの搬送機構は、ローラ対によって記録媒体Pを挟持して搬送する方式等、他の方式であってもよい。ローラ対によって記録媒体Pを搬送する方式等においては、記録媒体Pとしてロールシートを用いてもよく、転写後にロールシートをカットして記録物P’を製造してもよい。
【0092】
上記実施形態では、転写体2を転写ドラム41の外周面に設けたが、転写体2を無端の帯状に形成し、循環的に走行させる方式等、他の方式であってもよい。
【0093】
また、本発明は上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムをネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0094】
1 記録システム
1A 記録装置
9A、9B 検査ユニット
13 制御ユニット
13A メインコントローラ
13B エンジンコントローラ
100 撮影装置
102 光源
132 記憶部