(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】熱パターンを採取するためのセンサおよび二重積分方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/1172 20160101AFI20240930BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20240930BHJP
G01J 1/02 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
A61B5/1172
G06T1/00 400G
G01J1/02 Y
G01J1/02 Q
G01J1/02 R
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020121992
(22)【出願日】2020-07-16
【審査請求日】2023-05-01
(32)【優先日】2019-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(73)【特許権者】
【識別番号】320006900
【氏名又は名称】アイデミア アイデンティティ アンド セキュリティ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-フランソワ・マンゲ
(72)【発明者】
【氏名】ジョエル・ヤン・フーレ
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-344598(JP,A)
【文献】特表2019-532302(JP,A)
【文献】国際公開第2018/020176(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/1172
G06T 1/00
G01J 1/02
G06V 40/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの感熱測定素子(104)を各々備える複数の画素(102)を備えるセンサ(100)により熱パターンを採取するための方法であって、前記センサ(100)は、
少なくとも1つの画素(102)の前記感熱測定素子(104)を、前記少なくとも1つの画素(102)の前記感熱測定素子(104)による測定の間に加熱するように構成される少なくとも1つの加熱要素(112)と、
前記少なくとも1つの画素(102)の前記感熱測定素子(104)による測定の間に、前記少なくとも1つの画素(102)によって出力される電荷を読み取るように構成される少なくとも1つの読取回路(116)と
をさらに備え、前記方法は、各々の画素(102)について、少なくとも以下のステップ、すなわち、
前記画素(102)の前記感熱測定素子(104)を、時間t
0に開始し、前記時間t
0より後の時間t
2に終了する加熱期間の間に加熱するステップと、
時間t
1に開始し、前記時間t
1より後の時間t
3に終了する第1の測定期間の間に、前記画素(102)によって出力される電荷の第1の読み取りを行い、前記第1の測定期間t
3-t
1の間に読み取られた電荷に対応する第1の測定値x
1を提供するステップと、
前記時間t
3より後の時間t
4に開始し、前記時間t
4より後の時間t
5に終了する第2の測定期間の間に、前記画素(102)によって出力される電荷の第2の読み取りを行い、前記第2の測定期間t
5-t
4の間に読み取られた電荷に対応する第2の測定値x
2を提供するステップと、
差x
1-αx
2を計算するステップであって、αは正の実数に対応する、ステップと
の実施を含み、
前記加熱期間の半分超が前記第1の測定期間の間に実施され、前記加熱期間の半分未満が前記第2の測定期間の間に実施され、前記時間t
2は、前記画素(102)によって出力される電荷の前記第2の読み取りが読み取られた前記画素(102)の冷却の間に少なくとも一部実施されるように、前記時間t
5の前に起こる、方法。
【請求項2】
前記時間t
2
は前記時間t
1
と前記時間t
3
との間にある、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法および前記センサ(100)は、前記センサ(100)の採取面と接触している指紋を採取するように構成される、請求項
2に記載の方法。
【請求項4】
αは、前記第2の測定期間に対する前記第1の測定期間の割合の値に等しい、請求項1
から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の測定期間は前記第2の測定期間と等しい、請求項1から
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の読み取りと前記第2の読み取りとの間に、前記読取回路のリセットまたは前記画素のリセットをさらに含む、請求項1から
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の測定値x
1および前記第2の測定値x
2は前記読取回路(116)に保存され、前記差x
1-αx
2は前記読取回路(116)において計算され、次いで、この差の結果が前記読取回路(116)の出力部において出力される、または、
前記第1の測定値x
1および前記第2の測定値x
2は前記読取回路(116)の出力部において連続的に出力され、前記差x
1-αx
2は前記読取回路(116)の外部で計算される、請求項1から
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記加熱期間t
2-t
0の値はおおよそ60μsから5000μsの間である、および/または、
前記第1の測定期間および前記第2の測定期間の各々はおおよそ60μsから5000μsの間である値を有する、および/または、
前記時間t
0および前記時間t
1は、前記加熱の開始と前記第1の読み取りの開始との間の時間がおおよそ0μsからおおよそ200μsの間となるように選択される、請求項1から
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
各々の感熱測定素子(104)は、第1および第2の電極(108、110)の間に配置される焦電材料(106)の少なくとも一部分によって形成される少なくとも1つの焦電キャパシタを備える、請求項1から
8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
各々の画素(102)の前記焦電キャパシタの前記第1および第2の電極(108、110)の一方は、前記画素(102)が属する横列のすべての前記画素(102)に共通する導電性部分によって形成される、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
同じ横列のすべての前記画素(102)の前記第1および第2の電極(108、110)の一方を形成する前記導電性部分は、前記横列の前記画素(102)の前記加熱要素(112)も形成する、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
各々の画素(102)の前記焦電キャパシタの前記第1および第2の電極(108、110)の他方は、前記画素(102)が属する縦列のすべての前記画素(102)に共通する導電性部分によって形成される、請求項
10または
11に記載の方法。
【請求項13】
各々の感熱測定素子(104)は、少なくとも1つのサーミスタもしくは少なくとも1つのダイオードを備える、および/または、各々の画素(102)において、前記感熱測定素子(104)は前記加熱要素(112)を形成する、請求項1から
8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記加熱要素(112)は、各々の画素(102)の前記感熱測定素子(104)をジュール効果によって加熱することができる、および/または、前記加熱要素(112)は、前記画素(102)の前記感熱測定素子(104)を加熱するために光を発することができる、請求項1から
13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つの感熱測定素子(106)を各々備える複数の画素(102)を備える熱パターンセンサ(100)であって、
少なくとも1つの画素(102)の前記感熱測定素子(104)を、前記少なくとも1つの画素(102)の前記感熱測定素子(104)による測定の間に加熱するように構成される少なくとも1つの加熱要素(112)と、
前記少なくとも1つの画素(102)の前記感熱測定素子(104)による測定の間に、前記少なくとも1つの画素(102)によって出力される電荷を読み取るように構成される少なくとも1つの読取回路(116)と、
請求項1から
14のいずれか一項に記載の採取方法を実施するように構成される制御手段(14)と
をさらに備える熱パターンセンサ(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱パターンセンサと熱パターンを採取するための方法とに関する。本発明は、熱検出による指紋採取を実行するために有利に使用される。
【背景技術】
【0002】
熱検出手段を備える指紋センサを製作することが知られている。これらの熱検出手段は、焦電キャパシタ、ダイオード、サーミスタ、または、より大まかには、それ自体が曝される温度の変化を、それ自体の端子における電位、それ自体によって発生させられる電流、もしくは、それ自体の電気抵抗の変化など、それ自体の電気パラメータの変化へと変換する任意の感熱素子であり得る。
【0003】
指紋検出は、米国特許第4394773号、米国特許第4429413号、および米国特許第6289114号の文献に記載されているように、指とセンサとの間の温度差を利用するいわゆる「受動的」なセンサによって実行できる。しかしながら、これらのセンサは、この温度差のみに依存する測定を実行するという欠点を有している。そのため、指とセンサとが同じ温度であるために出力において得られる信号レベルがゼロとなる状況、または、採取された画像のコントラストが変化し、そのため採取された画像のその後のデジタル処理の間に問題を引き起こす状況が生じ得る。
【0004】
受動的な熱センサによってもたらされるこれらの問題を排除するために、また、指が動かない静的な取得を実行できるようにするために、例えば米国特許第6091837号およびEP2385486A1の文献に記載されているものなど、いわゆる「能動的」なセンサが提案されてきた。
【0005】
このような能動的なセンサでは、各々の画素は、焦電材料の一部分が間に配置される2つの導電性電極から形成された焦電キャパシタと、加熱要素とを備える。この加熱要素は、特定の量の熱を画素において(具体的には、焦電材料の部分において)消散させ、画素の加熱は、指がセンサに存在する状態で特定の取得時間の後に測定される。
【0006】
各々の画素において、加熱要素によって提供された熱が、皮膚によって吸収されているか(指紋の隆線の存在下にある画素)、画素内に保持されているか(指紋の谷線の存在下にある画素)に依存して、採取されたプリントの隆線または谷線の存在を区別することが可能である。取得時間の終了時に、熱が皮膚によって吸収される隆線の存在下にある画素の温度は、熱が皮膚によって吸収されずに画素に残っている谷線の存在下にある画素の温度より低い。
【0007】
このようなセンサは、センサの画素と接触している要素(指紋採取の間の指)の、熱質量またはサーマル容量としても知られている熱容量を測定できる。得られる測定値は、センサの画素と、各々の画素に存在する要素の一部分(指紋の場合には隆線または谷線)との間の熱伝導率にも依存する。
【0008】
能動的な熱検出センサによる熱パターンの採取の間、センサの画素のすべてが、同じ方法で、同じ速さでの規則正しい手法で読まれ、別の言い方をすれば、すべての画素について同一の固定された測定期間で読み取られる。画素が接触している要素の熱測定を実行する時間に対応するこの測定期間は、一般に、指紋の隆線と谷線との間での良好なコントラストを得るように調節され、別の言い方をすれば、ノイズと比較して大きい信号レベルを得るのに十分な長さである。しかしながら、測定期間は、採取の全時間が使用者にとって受け入れ可能なままであるように、および、測定がセンサの表面における指の移動によって阻害されないように、長すぎてはいけない。
【0009】
能動的な熱検出センサにおいて実行される画素の読み取りは、例えば、各々の画素において発生させられる電荷の測定に対応でき、これは電荷積分器を用いて実施されるが、使用される熱検出手段に依存して他の方法が可能である。
【0010】
能動的な熱センサは、加熱によって引き起こされる温度の変化に敏感であるが、センサに存在する指とセンサ自体との間の温度の差によって誘導される変化にも敏感なままである。これらの2つの種類の変化によって発生させられる2つの信号が重なり合う。センサは、加熱によって引き起こされる温度の変化に対応するいわゆる「能動的」な信号を有するように概して構成され、その「能動的」な信号は、指とセンサとの間の温度の差に対応するいわゆる「受動的」な信号よりはるかに大きい。別の言い方をすれば、加熱によって誘導される温度の変化は、指とセンサとの間の初期の温度差(これは、センサが、例えば指と同じ温度にある場合にほとんどゼロであり得る)による温度の変化よりはるかに大きい。
【0011】
図1は、能動的な熱センサに配置されてから除去される指の指紋の読み取りの間に得られるいくつかの連続的な画像を示している。
図1に見られる画像は、1~12の番号が付けられており、先行する画像の取得に対して40msの期間で各々隔てられた連続的な採取に対応している。これらの画像では、発生した電荷のないことを反映する中立の色として灰色が使用されており、黒色および白色は、センサに位置付けられた要素がセンサより高温であるのか低温であるのかにそれぞれ応じた正の電荷または負の電荷の発生を反映している。
【0012】
指がセンサに配置されるとき、センサが能動的な熱センサであろうが受動的の熱センサであろうが、指とセンサとの間の温度差がゼロでない場合には、正の電荷または負の電荷(指がセンサより高温であるか低温であるかに依存するとともに、焦電材料の分極に依存する)が、指がセンサと接触している領域において発生させられる。したがって、
図1の画像2および3において、黒色として現れている指紋の隆線は、センサと接触する指の部分に対応している。この大きなコントラストは、この時間に指とセンサとの間に存在する温度の大きな差を反映している。
【0013】
センサにおける指の存在によって発生させられる電荷は、採取された画像において、センサの読取速度と、指がセンサに配置される速度とに依存して、より大きいコントラストまたはより小さいコントラストで、より迅速にまたはより遅く現れる。撮像装置によるこれらの電荷の読み取りの後、電荷は消え、その後の画像においてはもはや見えない。したがって、これらの電荷に関連するパターンのコントラストはその後の画像において低減する。
【0014】
別の現象が、センサへの指の接触の直後に生み出される。
図1の画像3では、画像2においてすでに見られる指紋の隆線の一部が、灰色ではなく白色になっている。実際、センサへの指の接触時、画素は大きく加熱される。これは、皮膚の温度がこの画像の採取の間にセンサの温度より高いため、画像2においては黒色で現れる隆線によってはっきりと見ることができる。次に、指とセンサ組立体とが冷却し、この冷却は、隆線と接触している画素について負の電荷の発生となり、そのため隆線は白色として現れる。
【0015】
次に、図の画像5および6に見られるように、温度平衡が達成させられる。
【0016】
センサの基板が指の熱質量より大きい熱質量を有し、センサを加熱する十分な時間がない場合、センサがその初期温度へと戻ろうとするため、指が除去されるときに反対の現象が生み出される。これは、指紋の隆線が白色になっている
図1の画像7および8に見られる。
【0017】
さらに、使用者は、指をセンサに置くときに完全に安定しているわけではなく、交互の受動的な接触および非接触のこの現象は、指紋の周辺において視認可能に残っている(画像4を見ると、周辺における指紋の隆線の一部は、指紋の隆線の他の部分と異なり、黒色のままであって灰色ではない)。
【0018】
同じ現象が、指がセンサ上で滑るときに生み出され、そこでは、隆線および谷線の存在のために、皮膚は、特定の画素から見て、接触していたのが次いで接触しなくなり、センサにおいて変化が誘導される。
【0019】
例えば、指によってセンサに加えられる圧力の変化による圧電効果による、または、指を通じた結合容量によって寄与される電荷(例えば、電磁環境によって発生させられる50Hzに等しい周波数を伴う信号)によるなど、センサにおいて電荷を発生させる他の迷現象も存在する。これらの迷現象によって発生するこれらの電荷は、「能動的」な熱効果によって発生させられる電荷に加えられ、そのため画像の取得を阻害する。
【0020】
センサへの迷現象の影響を制限するために、これらの信号を有用な信号に対して無視できるようにするために、センサによって生成される加熱出力を増加させることが可能である。しかしながら、このような解決策は、センサが、センサの加熱要素に供給するための電力が少ししかないチップカードまたは連結された物体の一部であり、迷現象の影響を相当に制限する度合いまで加熱出力を十分に増加させることができない場合などの、一部の用途には適していない。
【0021】
別の解決策は、測定期間を短縮するものであり、別の言い方をすれば、電荷の積分時間を短縮するものである。能動的な加熱の前のゆっくりとした変化は、その効果が低減されることになるが、これは、重要なのは測定の開始と終了との間の温度変化であるためである。しかしながら、この解決策は、得られるコントラストの低下をもたらすため、同じく満足できるものではない。
【0022】
実行される加熱の期間を増加させることも可能である。ここでも、迷現象に由来する信号が加熱期間と同時に増加させられるため、解決策は満足できるものではない。
【0023】
別の解決策は、過剰な迷効果が観察されるときに、採取の最初の画像と最後の画像とを保持しないことである。この解決策も、エネルギーが最初の画像と最後の画像とを採取するために不必要に無駄にされるため、満足できるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【文献】米国特許第4394773号
【文献】米国特許第4429413号
【文献】米国特許第6289114号
【文献】米国特許第6091837号
【文献】EP2385486A1
【文献】WO2017/093179A1
【文献】WO2018/020176A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明の目的は、実行される採取において迷現象の影響を制限または除去する、熱パターンを採取するためのセンサおよび方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
この目的のために、本発明は、少なくとも1つの感熱測定素子を各々備える複数の画素を備えるセンサにより熱パターンを採取するための方法を提案し、そのセンサは、
- 少なくとも1つの画素の感熱測定素子を、前記少なくとも1つの画素の感熱測定素子による測定の間に加熱するように構成される少なくとも1つの加熱要素と、
- 前記少なくとも1つの画素の感熱測定素子による測定の間に、前記少なくとも1つの画素によって出力される電荷を読み取るように構成される少なくとも1つの読取回路と、
をさらに備え、方法は、各々の画素について、少なくとも以下のステップ、すなわち、
- 画素の感熱測定素子を、時間t0に開始し、時間t0より後の時間t2に終了する加熱期間の間に加熱するステップと、
- 時間t1に開始し、時間t1より後の時間t3に終了する第1の測定期間の間に、画素によって出力される電荷の第1の読み取りを行い、第1の測定期間t3-t1の間に読み取られた電荷に対応する第1の測定値x1を提供するステップと、
- 時間t3より後の時間t4に開始し、時間t4より後の時間t5に終了する第2の測定期間の間に、画素によって出力される電荷の第2の読み取りを行い、第2の測定期間t5-t4の間に読み取られた電荷に対応する第2の測定値x2を提供するステップと、
- 差x1-αx2を計算するステップであって、αは正の実数に対応する、ステップと
の実施を含み、
加熱期間の半分超が第1の測定期間の間に実施され、加熱期間の半分未満が第2の測定期間の間に実施される。
【0027】
この方法では、電荷の第1の読み取りは、読み取りの画素の感熱測定素子の加熱段階の半分超の間に実施される。対照的に、電荷の第2の読み取りは、加熱段階の半分未満の間に実施され、そのため、読み取りの画素の冷却の間に少なくとも一部実施される。冷却の間、皮膚と接触している画素は、加熱とは逆に、画素の熱慣性に依存する特定の時間の後、皮膚と接触していない画素より迅速に冷却する。そのため、計算された差は、第1および第2の読み取りの間に得られた正の電荷と負の電荷とを蓄積し、延いては、手続きの終了において得られた測定信号を増大させることを可能にする。そのため、より良好なコントラストが、例えば、指紋が採取される指の隆線と接触している画素と、指紋が採取される指の谷線に相対して位置付けられる画素との間といった、熱パターンが採取される要素の異なる熱伝導率の部分と接触している画素同士の間で得られる。
【0028】
さらに、得られた2つの測定値から計算される差は、同一の期間の2つの電荷読み取りを通じて寄与が同一である迷現象のため、信号を低減または除去すらすることを可能にする。
【0029】
画素によって出力される電荷の第2の読み取りが画素の読み取りの冷却の間に少なくとも一部実施されるように、時間t2は時間t5の前に起こる。
【0030】
時間t2は時間t1と時間t3との間であり得る。この場合、加熱は第1の読み取りの間に停止させられ、第2の読み取りは画素の冷却段階の間に全体で実施される。
【0031】
有利には、方法およびセンサは、センサの採取面と接触している指紋を採取するように構成され得る。
【0032】
ここで、αは、第2の測定期間に対する第1の測定期間の割合の値に等しくなり得る。この場合、係数αは、第1の測定期間と第2の測定期間との間の差を埋め合わせることを可能にする。
【0033】
変形例では、αの値は、第1の測定期間と第2の測定期間との間の割合の値と異なってもよい。
【0034】
有利には、第1の測定期間は第2の測定期間と等しくできる。この場合、迷現象の寄与が電荷の第1の読み取りおよび第2の読み取りの各々において同一であるため、有利である。これらの迷現象は、差x1-x2(αが第2の測定期間に対する第1の測定期間の割合の値に等しいとき、この場合ではα=1である)を計算することを用いて完全に相殺される。
【0035】
方法は、画素の各々について差x1-αx2を計算した後、センサの各々の画素について計算された差x1-αx2の値から、採取された熱パターンの画像を計算するステップをさらに含み得る。
【0036】
方法は、第1の読み取りと第2の読み取りとの間に、読取回路のリセットまたは画素のリセットをさらに含んでもよい。
【0037】
方法は、
- 加熱期間t2-t0の値が、おおよそ60μsから5000μsの間、200μsから5000μsの間(例えば、画素の横列ごとの読み取りを実行するセンサについて)、もしくは、60μsから200μsの間(例えば、画素ごとの読み取りを実行するセンサについて)となる、および/または、
- 第2の測定期間の各々が、おおよそ60μsから5000μsの間、250μsから5000μsの間(例えば、画素の横列ごとの読み取りを実行するセンサについて)、もしくは、60μsから300μsの間(例えば、画素ごとの読み取りを実行するセンサについて)となる、および/または、
- 加熱の開始と第1の読み取りの開始との間の時間が、おおよそ0μsから200μsの間(例えば、画素の横列ごとの読み取りを実行するセンサについて)、もしくは、0μsから100μsの間(例えば、画素ごとの読み取りを実行するセンサについて)となるように、時間t0および時間t1が選択される
ようにされてもよい。
【0038】
有利には、t1はt0より後であり、別の言い方をすれば、加熱は第1の読み取りの開始の前に開始する。しかしながら、t0がt1より後である、または、さらにはt1と等しいことも可能であり、別の言い方をすれば、加熱は、第1の読み取りの開始の後、または、第1の読み取りの開始と同時に開始する。
【0039】
上記で与えられた値は、指標として提供されている。先に指示されている様々な期間の値は、センサの特性に依存し、具体的には、読取回路の感度、各々の画素の大きさ、および、センサに存在する層および材料の様々な厚さに依存する。
【0040】
方法は、
- 第1の測定値x1および第2の測定値x2は読取回路に保存され、差x1-αx2は読取回路において計算され、次いで、この差の結果が読取回路の出力部において出力される、または、
- 第1の測定値x1および第2の測定値x2は読取回路の出力部において連続的に出力され、差x1-αx2は読取回路の外部で計算される
ようにされてもよい。
【0041】
差x1-αx2の計算は、読取回路の外部で実行でき、別の言い方をすれば、測定値x1およびx2の各々のアナログからデジタルへの変換を実行した後に実行されてもよい。
【0042】
変形例では、第1の測定を実行した後、例えば読取回路の第1のキャパシタにおいて、読取回路におけるアナログ測定値x1を保持することが可能である。第2の測定を実行した後、アナログ測定値x2も、例えば読取回路の第2のキャパシタにおいて、読取回路において保持される。次に、アナログ測定値は、差x1-αx2の計算を用いて減算され、次に、この減算の結果は読取回路によってデジタル処理で変換されて出力される。この変形例は、読取回路の外部で減算を計算することを回避し、同時に読み取られた画素の数の規模を有するキャパシタのバンクという代償を払って、出力されるデータの数を半分にする。
【0043】
各々の感熱測定素子は、第1の電極と第2の電極との間に配置される焦電材料の少なくとも一部分によって形成される少なくとも1つの焦電キャパシタを備え得る。
【0044】
この場合、各々の画素の焦電キャパシタの第1の電極および第2の電極の一方は、前記画素が属する横列のすべての画素に共通する導電性部分によって形成され得る。
【0045】
さらに、同じ横列のすべての画素の第1の電極および第2の電極の一方を形成する導電性部分は、横列の画素の加熱要素も形成する。
【0046】
また、各々の画素の焦電キャパシタの第1の電極および第2の電極の他方は、前記画素が属する縦列のすべての画素に共通する導電性部分によって形成され得る。
【0047】
変形例では、各々の感熱測定素子は、少なくとも1つのサーミスタもしくは少なくとも1つのダイオードを備え得る、および/または、各々の画素において、感熱測定素子は加熱要素を形成し得る。
【0048】
読取回路は、積分器として設置される差動増幅器といった、少なくとも1つの増幅器を備え得る。読取回路は、読取ノイズを低減するために、「相関二重サンプリング法」(CDS)を作り出す少なくとも1つの要素を備え得る。
【0049】
加熱要素は、各々の画素の感熱測定素子をジュール効果によって加熱することができ得る、および/または、加熱要素は、画素の感熱測定素子を加熱するために光を発することができ得る。
【0050】
本発明は、少なくとも1つの感熱測定素子を各々備える複数の画素を備える熱パターンセンサにも関し、そのセンサは、
- 少なくとも1つの画素の感熱測定素子を、前記少なくとも1つの画素の感熱測定素子による測定の間に加熱するように構成される少なくとも1つの加熱要素と、
- 前記少なくとも1つの画素の感熱測定素子による測定の間に、前記少なくとも1つの画素によって出力される電荷を読み取るように構成される少なくとも1つの読取回路と、
- 先に記載されているような採取方法を実施するように構成される制御手段と
をさらに備える。
【0051】
本発明は、添付の図面を参照することによって、単に指標を用いて限定ではなく提供されている実施形態の記載を読むことでより良く理解されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】先行技術の能動的な熱センサに配置されてから除去される指の指紋の読み取りの間に得られる複数の連続的な画像を示す図である。
【
図2】本発明による熱パターンセンサを示す概略図である。
【
図3】本発明による熱パターンセンサの読取回路の第1の例示の実施形態を示す図である。
【
図4A】本発明による熱パターンセンサの2つの画素を示す図である。
【
図4B】画素の加熱段階の最中および後において、
図4Aに見られる2つの画素の出力部において得られる信号を示す図である。
【
図5】画素の加熱の最中および後において、指紋の谷線が位置付けられる画素と、指紋の隆線が位置付けられる画素との間で得られる信号における差を示す図である。
【
図6】本発明による採取方法の間に、画素の出力部において得られる電荷を示す図である。
【
図7】本発明による採取方法の間に実施される様々なステップをタイミング図の形態で示す図である。
【
図8A】第1の読み取りの結果だけを考慮することで得られた画像を示す図である。
【
図8B】第2の読み取りの結果だけを考慮することで得られた画像を示す図である。
【
図8C】第2の読み取りの結果を第1の読み取りの結果から減算することで得られた画像を示す図である。
【
図9A】第1の読み取りの結果だけを考慮することで得られた画像を示す図である。
【
図9B】第2の読み取りの結果だけを考慮することで得られた画像を示す図である。
【
図9C】第2の読み取りの結果を第1の読み取りの結果から減算することで得られた画像を示す図である。
【
図10】本発明による採取方法の実施の間に実行されるフィルタリング機能を示す図である。
【
図11】本発明による採取方法の実施の間に実行されるフィルタリング機能を示す図である。
【
図12】本発明による熱パターンセンサの読取回路の第2の例示の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下に記載されている様々な図の同一、同様、または同等の部品は、ある図から別の図への移行を容易にするために、同じ符号が与えられている。
【0054】
図に示された様々な部品は、図をより読み取りやすくするために、必ずしも一定の縮尺ではない。
【0055】
様々な可能性(変形例および実施形態)は、互いから排他的であるとして理解されるべきであり、一緒に組み合わされてもよい。
【0056】
熱パターンを採取するための方法は、
図2に概略的に示されているような熱パターンセンサ100を用いて実施される。
【0057】
センサ100は複数の画素102を備え、各々の画素102は熱検出要素または感熱測定素子を備える。
【0058】
センサ100の第1の構成によれば、各々の画素102は、画素102の感熱測定素子を形成する焦電キャパシタ104(
図3に見られる)を備える。
【0059】
センサ100は、特にTFTトランジスタを備えるとき、ガラス基板から製作され得る。変形例では、センサ100は、MOS技術を用いて製作されたトランジスタを備えるとき、例えばシリコンといった半導体基板から製作されてもよい。別の変形例によれば、使用される基板は、センサ100の要素が印刷技術によって有利に製作される、例えばポリイミド、ポリエチレンナフタレート(PEN)、またはポリエチレンテレフタレート(PET)を備えるといった柔軟な基板であり得る。
【0060】
センサ100の画素102は、
図2の線図における場合のように、画素102の複数の横列および複数の縦列を伴う配列を形成して配置され得る。画素102のピッチ、言い換えれば、2つの隣接する画素102の中心同士の間の距離は、例えば、おおよそ25μmから100μmの間である。
【0061】
図3は、下方電極108と上方電極110との間に配置される焦電材料106の一部分を備える焦電キャパシタ104を用いる画素102の例を描写している。一部分106の焦電材料は、有利には、ポリビニリデンフルオライド、すなわちPVDF、または、ポリフッ化ビニリデン-co-トリフルオロエチレン、すなわちP(VDF-TrFE)である。変形例では、焦電材料は、AlN、PZT、または、焦電キャパシタ104を形成するのに適する任意の他の焦電材料であり得る。焦電材料の一部分106の厚さは、例えばおおよそ500nmから10μmの間である。
【0062】
電極108、110は、例えば、おおよそ0.2μmに等しい厚さのチタニウムなどの金属材料、および/またはモリブデン、および/またはアルミニウム、および/またはインジウムスズ酸化物(ITO)などの導電性酸化物、および/または、PEDOT:PSSなどの導電性ポリマといった、少なくとも1つの導電性材料を各々備える。有利には上方電極110である電極のうちの一方、または、2つの電極108、110の各々は、例えばTi/TiN/AlCuの積層など、複数の導電性材料を積層することで形成され得る。電極108、110の各々の厚さは、例えばおおよそ0.05μmから1μmの間である。
【0063】
センサ100は、特定の量の熱を画素102の中に消散させ、具体的には焦電材料の一部分106の中に消散させる加熱要素112も備える。これらの加熱要素112は、例えば、焦電キャパシタ104の一方の側または他方の側に連結され、焦電キャパシタ104の電極108、110のうちの一方を製作するために使用される導電層のうちの1つから有利に形成された導電要素である。
【0064】
例えば、AlNの層、または、この層を製作するのに適する任意の他の材料の層に対応する保護層が、画素102の上方電極110の上方に配置される。保護層の厚さはおおよそ100nmからおおよそ100μmの間であり得る。保護層の上面は、例えば、指紋が検出されるように意図され、センサ100のこの採取面と接触している指など、検出される熱パターンが上方に位置付けられるセンサ100の採取面に対応する。
【0065】
有利な実施形態によれば、配列の同じ横列の画素102の各々の焦電キャパシタ104の電極108、110の一方は、この横列のすべての画素102に共通する同じ導電性部分によって形成されている。さらに、同じ横列の画素に共通するこれらの導電性部分が画素102の加熱要素112も形成することが、同じく可能である。このようなセンサを製作するための製作の詳細は、WO2017/093179A1の文献に記載されている。
【0066】
さらに、センサ100が、いわゆる「受動的」な画素102の配列、つまり、画素102内にトランジスタを備えない配列を備えることが可能であり、この場合、各々の画素102の焦電キャパシタの第1および第2の電極108、110の他方は、前記画素が属する縦列のすべての画素に共通する導電性部分によって形成される。このようなセンサを製作するための製作の詳細は、WO2018/020176A1の文献に記載されている。
【0067】
加熱要素112は、例えば、各々の画素102の感熱測定素子をジュール効果によって加熱することができる。焦電材料の一部分106の加熱は、この場合、加熱要素112を形成する導電要素に電流を通すことで達成される。得られる加熱の強さは、具体的には、導電要素を通過する電流の強さに依存する。
【0068】
導電要素に適用される加熱の電圧の値、延いては、導電要素において流れる電流の強さは、画素102において望まれる熱エネルギーを生成するために、使用される導電性材料の抵抗率に関して調節される。1つの画素当たりで消散される電力は、有利には、おおよそ0.05mWから1mWの間であり得る。
【0069】
変形例では、例えば光学的な加熱要素など、抗素子以外の加熱要素112が使用されてもよい。例えば、レーザーダイオードなどの1つまたは複数のLEDが、基板を介して送信され、画素102の焦電材料によって、画素102の電極108、110の一方によって、および/または、特定の吸収層によって吸収される放射を発してもよく、その特定の吸収層は、例えば、一部酸化されたITO、炭素、酸化クロム、さらには着色顔料で満たされたポリマから成り、電極108、110の一方の近くに、または、電極108、110の一方に直接、追加される。例えば、赤外線放射による加熱の場合、チタニウムおよび/またはITOの電極108、110はこの放射を吸収するために有利に使用され得る。有利には、放射は保護層によって吸収され得る。
【0070】
すべての画素102の電極108、110の一方、例えばすべての画素102の上方電極110が、誘電層を用いて加熱要素112から絶縁されるべき連続的な導電層を一緒に形成することが可能である。この場合におけるこの連続的な導電層は、加熱のスイッチオンまたはスイッチオフを許容する利点を有する遮蔽層を形成する一方で、感熱測定素子は電荷の積分を阻害することなく実行する。このような遮蔽層は、具体的には50Hzに等しい周波数の外乱といった、センサ100によって被られる外乱を制限もする。
【0071】
変形例では、この遮蔽層は、画素102の電極108、110とは別のものであってもよく、例えば、センサ100の感熱測定素子とセンサ100の採取面との間に配置される。
【0072】
センサ100の他の構成によれば、センサ100の感熱測定素子は焦電キャパシタではなく、例えば、サーミスタ、ダイオード、または任意の他の適切な感熱素子であることが可能である。
【0073】
感熱測定素子に加えて、センサ100は、画素102の加熱および読み取り段階の制御を可能にする制御手段114も備える。
【0074】
センサ100は、各々の画素102の出力部において出力される電荷の読み取りを可能にし、そのため、センサ100によって検出される熱パターンの読み取りを可能にする読取回路116も備える。
【0075】
変形例では、センサ100は、画素102の配列が位置付けられる平面の外部に制御回路および読取部116を備えてもよい。
【0076】
図3は、読取回路116の一部の第1の例示の実施形態を示しており、より正確には、センサ100の画素102のうちの1つの焦電キャパシタ104によって出力される電荷を読み取ることを可能にする電子要素を示している。
【0077】
図3に示された画素102は、電極108、110の間に配置される焦電材料の一部分106によって形成された焦電キャパシタ104を備える。下方電極108は接地に連結され、上方電極110は、画素102の読取電極を形成し、画素102の活動ノード118に連結されている。
【0078】
感熱測定素子が、例えば、サーミスタ、または、電流が温度ともに変化する任意の他の感熱測定素子である場合、この要素は、画素102の活動ノード118に連結された端子も備える。
【0079】
活動ノード118は、画素102の配列の縦列の下部に位置付けられる読取回路116の入力部に連結されている。ここに記載される例では、同じ縦列のすべての画素102の焦電キャパシタ104は、読取回路116の同じ入力部に並列で連結されている。読取回路116のこの入力部は、例えば演算増幅器などの差動増幅器である読取増幅器120の反転入力部に対応している。分極電位Vrefが増幅器120の非反転入力部に印加される。増幅器120の出力部は、キャパシタ122を介してその反転入力部へと戻るように閉じられる。スイッチ124が、キャパシタ122と並列に連結され、積分器をゼロにリセットし、キャパシタ122を放電させるために、キャパシタ122を短絡することを可能にしている。読取増幅器120の出力部は、CDS演算を生成し、次に得られた信号の増幅を生成し、次にアナログからデジタルへの変換を生成することができる回路126の入力部にも連結されている。
【0080】
センサ100の感熱測定素子がサーミスタに対応する場合、同じ縦列のすべての画素102のサーミスタは、読取回路116の同じ入力部に直列で連結され得る。この場合、この読取回路116は、出力される電流の読み取りに適している。この読取回路116は、例えば、出力された電流が通過する抵抗を備える。電流は、この抵抗の端子における電圧読取器を介して読み取ることができる。このような読取回路116は、センサ100の感熱測定素子がダイオードに対応する場合にも使用され得る。
【0081】
増幅器120、キャパシタ122、およびスイッチ124によって形成された電流積分器は、同じ縦列のすべての画素102に共通である。回路126は、読取増幅器120の出力部と回路126の出力部との間に多重化電子要素を追加することで、センサ100のすべての画素102に共通となり得る。
【0082】
ここで実施される採取方法の理解を容易にするために、
図4Aおよび
図4Bとの関連で以下において、2つの画素102a、102bの同時の加熱段階の最中および後の2つの画素102a、102bの温度が記載されている。
図4Bに示された曲線10aは、指紋の隆線2が位置付けられる第1の画素102aによって出力される信号に対応し、曲線10bは、指紋の谷線4が第2の画素102bに相対して、または第2の画素102bを向いて存在するとき、第2の画素102bによって出力される信号に対応する。そのため、皮膚とこの第2の画素102bとの間に接触はない。2つの画素102a、102bはセンサ100の2つの画素102に対応している。曲線10aおよび10bは、加熱が50μsに相当する時間に開始し、1050μsに相当する時間に停止されたときに得られた温度を表している。
【0083】
加熱の間、電荷が2つの画素102a、102bにおいて発生する。各々の画素102a、102bの焦電キャパシタの端子における電圧が読取回路116a、116bの電流積分器によって一定に保持されることから、電荷がキャパシタ122へと複製され、したがってキャパシタ122の端子における電圧が増加する。さらに、第1の画素102aに存在する指紋の隆線2の皮膚によって熱が吸収されることから、第1の画素102aのキャパシタ122の電圧の値は、谷線4に相対しておりそのため皮膚に接触していない第2の画素102bのキャパシタ122の電圧の値未満で増加する。
【0084】
図5に示された曲線は、画素102bと画素102aとの間で得られた測定信号の値の間の差に対応し、この差は2つの画素102a、102bの間のコントラストを表している。
【0085】
加熱される画素における熱の伝播時間のため、この画素には特定の熱慣性がある。この現象は、
図5の例では2000μsに相当する期間にわたって、加熱を停止した後(停止はt=1050μsにおいて生じさせられる)に信号の差が再び増加するという事実によって、
図5に示されている。次に、この曲線の傾斜が負になることが観察され、つまり、第1の画素102aが第2の画素102bより早く冷却し、そのため、2つの画素102a、102bによって出力される信号の間の差が低下する。
【0086】
以下において、
図6および
図7との関連で、特別な実施形態により実施される採取方法が記載される。
【0087】
方法の実施の間、
図6に示された曲線14aは、指紋の隆線2が位置付けられる第1の画素102aによって出力される信号に対応し、曲線14bは、指紋の谷線4が相対して位置付けられる第2の画素102bによって出力される信号に対応する。
図7は、方法の間に実施される様々なステップをタイミング図の形態で示している。
【0088】
以下に記載される方法は、横列ごとに実施され、別の言い方をすれば、センサの同じ横列のすべての画素102について同時に実施される。ステップは、センサの画素の横列の各々について繰り返される。しかしながら、例えば、画素ごとの読み取り、または、画素の単一の横列に対応しない画素の群を使用する画素群ごとの読み取りを実行することで、他の実施の変形例が可能である。
【0089】
図3に示されているような読取回路116について、スイッチ124は前もって閉じられている。次いで、積分キャパシタ122が放電され、端子における電位はゼロになり、そのため電荷積分器の出力部における電位はV
refに等しくなる。
【0090】
読み取られる横列の画素102の感熱測定素子の加熱は、読み取られる画素102の加熱要素112へと電流を通すことで、時間t
0(
図6ではt
0=50μs)に開始する。
【0091】
次に、読み取られる横列の画素102によって出力される電荷の第1の読み取りが、読み取られる横列の画素102のスイッチ124が開く時間に対応する時間t1(本明細書に記載された例ではt1=t0=50μs)に開始し、キャパシタ122の電圧の値が読み取られる時間t3に終結する第1の測定期間の間に実施される。読み取られる横列の画素102の焦電キャパシタにおいて発生させられる電荷の積分は、第1の測定期間の間に実行される。スイッチ124が開であるため、画素102の焦電キャパシタによって発生させられる電荷は、読み取られた画素102が連結されているキャパシタ122に向かって流れる。
【0092】
有利には、加熱は、加熱を実行する要素の切替によって引き起こされる電子的な外乱を制限するために、電荷の第1の読み取りの開始の前に開始する。さらに、2つの画素102a、102bの測定信号の間の差は、熱がセンサ100の表面に到達するまでの時間がなく、そのため画素102a、102bが同様の挙動を有するため、積分の開始において無視できる。しかしながら、加熱が電荷の第1の読み取りの開始の後に開始することも検討可能である(この場合、t1<t0)。
【0093】
焦電キャパシタ104に対応する測定要素では、作り出される電荷ΔQの変化は、焦電キャパシタ104の受ける温度の変化ΔTに比例し、以下の式によって表され得る。
ΔQ=γSΔT
ここで、γは、焦電キャパシタ104の焦電材料106の焦電係数に対応し、Sは焦電材料106の表面積に対応する。
【0094】
センサ100の焦電キャパシタ104の各々の受ける温度変化は、焦電キャパシタの上方に位置付けられるのが指紋の隆線であるのか谷線であるのかによって異なる。指紋の隆線が位置付けられる焦電キャパシタ104が受ける温度の変化はΔTridgeと呼ばれ、指紋の谷線が位置付けられる焦電キャパシタ104が受ける温度の変化はΔTvalleyと呼ばれる。
【0095】
感熱測定素子が、サーミスタ、または、より大まかには、例えばダイオードなど、その値が温度に依存する電流を発生させる感熱測定素子である場合、得られる電流Iは関数fに従って温度に依存し、別の言い方をすれば、I=f(T)である。この電流は、温度T0における具体的な測定値の関数として表すことができ、この場合には、I=I0f(T0, ΔT)である。
【0096】
時間t1において、指紋の隆線が位置付けられるサーミスタにおける電流の値はIridge_t1と呼ばれ、指紋の谷線が位置付けられるサーミスタにおける電流の値はIvalley_t1と呼ばれる。サーミスタによって発生させられる電流の値は、時間t1において読み取られる。
【0097】
ここに記載されている例示の実施形態では、第1の測定期間の間、加熱は停止させられる。加熱は、時間t2において停止させられる。加熱期間t2-t0は、例えば1000μsに等しい。
【0098】
加熱の停止(時間t
2)から開始して、読み取られた画素102の焦電キャパシタ104によって発生させられる電荷は、画素102が冷却することから、低下し始める。しかしながら、センサ100に存在する熱慣性のため、コントラストの値は、時間t
2の後、別の言い方をすれば、加熱を停止した後、特定の期間にわたって増加し続ける(
図5に関連して前述したように)。そのため、コントラストが低下するまで、この期間の間の電荷の積分を引き延ばすことが有利である。
【0099】
発生させられた電荷の第1の読み取りは時間t
3において停止させられる。第1の測定期間(t
3-t
1に等しい)は、例えば2000μsに等しい。時間t
3の値は、第1の読み取りの終わりが、指紋の隆線が位置付けられる画素102と、指紋の谷線が位置付けられる画素102との間のコントラストが低下し始めるとき(
図5の例では2000μs)に対応するように、注意深く選択され得る。しかしながら、例えばおおよそ1000μsから1300μsの間といった、加熱期間に近い積分期間または測定期間を選択することが可能である。
【0100】
この測定期間の終了時、焦電キャパシタは温度の特定の変化を受けており、焦電キャパシタによって発生させられ、キャパシタ122の各々によって保存された電荷は、この温度変化の結果である。この第1の測定によって測定された値はx1と呼ばれる。
【0101】
したがって、増幅器120の出力部における電位はVout=Q/Cref+Vrefであり、ここで、Qは第1の測定期間の間に発生させられる電荷に対応し、Crefはキャパシタ122の値に対応している。次に、この電位が、読み取られ、回路126のアナログデジタル変換器によってサンプリングされるか、または、別のキャパシタに保存される。
【0102】
時間t3において指紋の隆線が位置付けられている焦電キャパシタ104によって発生させられる電荷の値は、
Qridge_t3=γSΔTridge
であり、時間t3において指紋の谷線が位置付けられている焦電キャパシタ104によって発生させられる電荷の値は、
Qvalley_t3=γSΔTvalley
である。
【0103】
そのため、時間t3において、指紋の谷線が位置付けられる画素と、指紋の隆線が位置付けられる画素との間で得られるコントラストは、
Contrast=Qridge_t3-Qvalley_t3
Contrast=γS(ΔTridge-ΔTvalley)
である。
【0104】
そのため、得られるコントラストは、指紋の隆線が見いだされる画素と指紋の谷線が見いだされる画素との間の温度変化の差に関して、線形である。
【0105】
感熱測定素子がサーミスタ(または、より大まかには、その値が温度に依存する電流を発生させる感熱測定素子)である場合、発生させられる電流は時間t1および時間t3において読み取られる。時間t3において、指紋の隆線が位置付けられているサーミスタにおける電流の値は、
Iridge_t3=Iridge_t1f(Tridge, ΔTridge_t3)
であり、時間t3において、指紋の谷線が位置付けられているサーミスタにおける電流の値は、
Ivalley_t3=Ivalley_t3f(Tvalley, ΔTridge_t3)
である。
【0106】
関数fが、検討されている温度領域に対して、別の言い方をすれば、絶対温度で数度未満の変化に対して、局所的に線形であるとすると、この関数は、f(T0, ΔT)=a(T0+ΔT)+bの形で書くことができる。時間t3と時間t1との間の電流の差は、
ΔIridge_t3=Iridge_t3-Iridge_t1=Iridge_t1aΔTridge_t3
ΔIvalley_t3=Ivalley_t3-Ivalley_t1=Ivalley_t1aΔTvalley_t3
である。
【0107】
そのため、時間t3において、指紋の隆線が位置付けられる画素と、指紋の谷線が位置付けられる画素との間で得られるコントラストは、
Contrast_t3=ΔIridge_t3-ΔIvalley_t3
である。
【0108】
隆線の画素の初期温度と谷線の画素の初期温度とが実質的に等しいと仮定することで、
Iridge_t1≒Ivalley_t1≒It1
【0109】
得られるコントラストは次式に従って記載できる。
Contrast_t3=aIt1(ΔTridge_t3-ΔTvalley_t3)
【0110】
得られるコントラストは、焦電キャパシタと同様に、指紋の隆線が見いだされる画素と指紋の谷線が見いだされる画素との間の温度変化の差に関して、線形である。時間t3において得られるコントラストは正の値である。
【0111】
第1の測定期間の終了時に、取得されたデータが出力、変換、サンプリングなどを受ける待機時間(
図7における時間t
3から時間t
5の間)を設けることが可能である。この待機時間の間、スイッチ124は、キャパシタ122を放電するために閉位置へと切り替えられる。
図6では、このリセットは、読み取られた電荷、この場合には別の言い方をすれば、積分キャパシタ122に蓄積された電荷のゼロへのリセットとなる。この待機時間は、回路126のアナログデジタル変換器によって発生させられ得る電気的な外乱が電荷積分器を阻害するのを有利に防止する。
【0112】
このリセットの後、読み取られる横列の画素102によって出力される電荷の第2の読み取りが、時間t4から時間t5において終了する第2の測定期間の間に実施される。ここに記載される例では、第2の測定期間t5-t4は第1の測定期間t3-t1と等しい。
【0113】
画素102の加熱の間に一部実行される第1の読み取りと異なり、第2の読み取りは読み取られる横列の画素102を加熱することなく実施される。
【0114】
スイッチ124は時間t
4において開である。次に、第2の測定期間の間に、読み取られる横列の画素102の焦電キャパシタ104において積分が開始する。電荷は、この第2の測定期間の間に画素102の焦電キャパシタによって発生され続けるが、画素102が冷却段階にあることから、
図6に見られるように、これらの電荷はここでは負である。この第2の測定によって測定された値はx
2と呼ばれる。
【0115】
第2の測定の間に得られたコントラストは、線形性のため、ならびに、温度の変化が焦電性画素およびサーミスタを伴う画素について同様であることから、同じ方法で反転させられる。サーミスタを伴う画素について、得られるコントラストは次式に従って記載できる。
Contrast_t5=aIt1(ΔTridge_t5-ΔTvalley_t5)
【0116】
時間t5において得られるコントラストは負の値である。
【0117】
そのため、2つの測定の終了において実行される減算は、2つの測定のコントラストを減算することに相当し、次式によって表される。
Contrast_t5-Contrast_t3=aIt1((ΔTridge_t5-ΔTvalley_t3)-(ΔTridge_t5-ΔTvalley_t3))
【0118】
次に、読み取られた各々の画素102について、2つの測定値x1およびx2の間の差が計算される。この差の計算は、読取回路116の外部で実行でき、別の言い方をすれば、測定値x1およびx2の各々のアナログからデジタルへの変換を実行した後に実行されてもよい。
【0119】
変形例では、第1の測定x1を実行した後、例えば読取回路116の第1のキャパシタにおいて、読取回路116におけるアナログ測定値x1を保持することが可能である。第2の測定x2を実行した後、アナログ測定値x2も、例えば読取回路116の第2のキャパシタにおいて、読取回路116に保持される。次に、アナログ測定値は、2つの値x1およびx2の間の差の計算を用いて減算され、次に、この減算の結果は読取回路116によってデジタル処理で変換されて出力される。
【0120】
2つの画素102a、102bの間の差が、第1の読み取りx1については正であるが、第2の読み取りx2について負であるという事実のため、差はさらにより大きいコントラストとなり、一方、もし1回の読み取りが時間t1から時間t5の間に行われた場合には、より小さいコントラストが得られている。
【0121】
また、この差の計算は、これらの信号が実行された2つの読み取りに同じ影響を有するという事実のため、得られた結果から、ノイズに対応し、実施された採取に関連しない信号を除去することを可能にする。この差の計算は、具体的には、センサ100の固定パターンノイズ(FPN: Fixed Pattern Noise)の少なくとも一部を相殺することを可能にし、別の言い方をすれば、センサ100の出力部において導入される任意の一定のオフセットであり、センサ100に存在する任意の一定の漏れ電流でもある。
【0122】
そのため、2つの測定の終了時に実行される減算は、ここでは2つの測定のコントラストを加えることに相当する一方で、第1の読み取りおよび第2の読み取りに対して同じ影響を有するそれらの迷信号の効果を除去する。
【0123】
概して、異なる時間t0~t5の値、別の言い方をすれば、方法の様々な段階(加熱、第1の読み取り、第2の読み取り)の期間は、センサ100の構造の機能に調節される。
【0124】
上記のステップは、センサ100の画素の他の横列について繰り返される。
図7では、これらのステップが画素の第2の横列について見られる。
【0125】
画素の2つの連続する横列の読み取りの間に待機時間が生じてもよい。センサ100が画素102の受動的な配列を備える場合、別の言い方をすれば、画素102が画素を読み取ることを可能にするトランジスタを備えない場合(
図3における場合のように)、この待機時間は、読み取られたばかりの画素の横列を冷却させるために使用される。
【0126】
ここに記載されている方法では、第1の測定期間は第2の測定期間と等しい。変形例では、2つの測定期間が互いと異なることが可能である。この場合、各々の画素102の2つの読み取りの間に得られた2つの値x1と値x2との間で実行される減算は、第1の測定期間と第2の測定期間との間の差に応じて、2つの信号のこれらの2つの値に重み付けをすることで実行されてもよい。この場合、計算された差がx1-αx2であることを考慮することで、αの値は、第2の測定期間に対する第1の測定期間の割合の値に等しい。これは、2つの測定の期間の間の差に拘わらず一定と考えられる低周波数の迷信号を相殺することを可能にする。この場合、FPNは、この重み付けされた差の計算によって完全に補正されることはなくなるが、ソフトウェアを用いた工場での較正によって、FPNを完全に補正することが可能である。
【0127】
図8Aは、第1の読み取りの値x
1だけで計算された画像を示している。
図8Bは、第2の読み取りの値x2だけで計算された画像を示している(コントラストは、第2の読み取りの時間において画素が冷却段階にある一方で、第1の読み取りの間に画素は加熱段階にあるという事実のため、
図8Aと
図8Bとの間で反転されている)。
図8Cは、x
1の値とx
2の値との間の差の結果から計算された画像を表している。これらの図は、x
1の値とx
2の値との間の差の結果から計算される画像についてより良好なコントラストが得られるという事実を明確に示している。
【0128】
図9A~
図9Cは、
図8A~
図8Cに類似する手法では、第1の読み取りだけの結果を考慮して、第2の読み取りだけの結果を考慮して、および、第1の読み取りの結果から第2の読み取りの結果を減算することで、それぞれ得られた画像を示している。
【0129】
第1の読み取りの結果と第2の読み取りの結果との間で実行される減算は、第1の測定期間と第2の測定期間とが同一であるとき、周波数fについての伝達関数HであるH(f)の法線が以下の式の形態で表され得るフィルタリングを適用することも可能にする。
H(f)=sinc(fTint)*2*sin (2πfδt)
ここで、
【0130】
【0131】
- Tint 積分時間、別の言い方をすれば、第1の読み取りおよび第2の読み取りの一方の期間。
- δt 時間t4-t1の半分、別の言い方をすれば、第1の読み取りの開始と第2の読み取りの開始との間の時間の半分。
【0132】
図10は、各々の読み取りの間の待機時間が100μsに等しい状態で、2つの読み取りの各々の期間が1200μsにおいて同じであるときに得られる関数Hを示している。このフィルタであれば、周波数が50Hzから60Hzの間である電磁環境による迷信号が、2から3の間の係数で減衰される。例えば指紋の画像の取得の間、発生させられる他の受動的な信号または迷信号の周波数は、おおよそ10Hz未満である。このようなフィルタは、これらの迷信号の非常に大きな減衰を可能にする(例えば、20を超える減衰係数)。
【0133】
図11は、読み取りの各々の間の待機時間が50μsに等しい状態で、2つの読み取りの各々の期間が700μsにおいて同じであるときに得られる関数Hを示している。
図11は、この場合に、10Hz未満の周波数を伴う信号の減衰が、フィルタリング関数が
図10に示されている構成において得られるものよりさらに大きいことを示している。
【0134】
上記のすべての構成について、上記の方法は、相関二重サンプリング法(CDS)の動作をさらに実行することで実施され得る。この場合、画素の値(電荷または電流)は読み取りの各々の開始において読み取られる。次に、これらの値は読み取りの各々の終了において減算される。これらの動作は、画素に存在する固定されたノイズの大部分を除去することを可能にする。
【0135】
αの値は、第1の測定期間と第2の測定期間との間の割合の値と異なってもよい。したがって、パラメータαの値を変更することによって、より大きい重要性またはより小さい重要性を、値x1およびx2の一方または他方に、別の言い方をすれば、大まかには画素の加熱の間に実行される測定に、または、大まかには画素の冷却の間に実行される測定に与えることが可能である。1より大きい値または1より小さい値のパラメータαを有することが可能である。
【0136】
例えば、皮膚指紋の熱パターンに対応する熱パターン採取の場合、第2の測定期間に等しい第1の測定期間であれば、1より大きい値を伴うパラメータαの値の選択は、計算された差x1-αx2における画素の冷却の間に少なくとも一部実行される第2の測定の結果に、より大きな重要性を与えることができる。画素の冷却の間に得られる測定信号は、熱が拡がるのにより多くの時間があったために、より長い測定期間に起因して皮膚のより深い層を伴うことから、皮膚の第1の表面層に関する最終的な結果においてこれらのより深い層の重要性を増加させることが可能である。変形例では、1未満のパラメータαの値を取ることで、より大きな重要性が、皮膚の表面層について実行される第1の測定に与えられる。
【0137】
第2の例によれば、取得期間に依存しない、各々の画素において投入される同じ量の望ましくない電荷の形態での一定のノイズの存在において、第1の読み取りの期間と第2の読み取りの期間とが同一でないとき、パラメータα=1の値を有することは賢明であり得る。したがって、この固定されたノイズは差x1-αx2に存在しない。
【0138】
図2との関連で前述された特別な実施形態では、画素は横列選択のためのトランジスタを備えておらず、画素のアドレス指定は、画素の所望の横列を加熱することで、読み取りの間に実行される。
【0139】
変形例では、各々の画素102が横列選択のトランジスタを備えることが可能である。このような横列選択のトランジスタのゲートは、この場合、選択信号が適用されるように意図され、同じ横列の画素のすべての横列選択のトランジスタに共通のワイヤとして製作できる。横列選択のトランジスタのソース電極およびドレイン電極のうち第1のものは活動ノード118に連結され、選択トランジスタのドレイン電極およびソース電極のうち第2のものは読取回路116の入力部に連結され得る。
【0140】
このような変形例では、センサ100の動作は、横列選択のトランジスタが、それが属する画素の横列の読み取りの間にオン状態に設定されることを除いては、先に記載されたものと同様である。
【0141】
センサの画素102の測定を電圧として読み取ることを可能にする
図12に示されているものなど(いわゆる「能動的」な画素読み取り)、画素の他の構成も想定され得る。
【0142】
図3との関連で先に記載された例示の実施形態と同様に、各々の画素102は、活動ノード118に連結された焦電キャパシタを備え、延いては、横列選択の横列133を介して制御される横列選択のトランジスタ130を備える。各々の画素102にはリセットトランジスタ140も設けられており、リセットトランジスタ140のソース電極およびドレイン電極の一方はノード118に連結されており、リセットトランジスタ140のソース電極およびドレイン電極の他方にはリセット電圧V
resetが印加される。画素102をリセットするための制御信号がリセットトランジスタ140のゲートに適用される。このリセットは、積分の開始時に、ノード118の電位を既知の値(この場合、V
reset)において設定することを可能にし、読取が完了されると焦電キャパシタ104から電荷を排出することを可能にする。画素の横列選択のトランジスタ130の制御と同様に、リセットトランジスタ140の制御は画素102の横列全体に共通であり得る。
【0143】
ノード118が読取回路116に直接連結されている以前の例示の実施形態と異なり、ここでのノード118は、電圧フォロワを形成し、読取信号の増幅、別の言い方をすれば、画素102の焦電キャパシタ104によって発生させられる電荷で変化する電極110の電位の増幅を作り出す別のトランジスタ142のゲートに連結されている。供給電位がトランジスタ142のソース電極およびドレイン電極のうち第1のものに適用され、トランジスタ142のソース電極およびドレイン電極のうち第2のものがトランジスタ130のソース電極およびドレイン電極のうち第1のものに連結されている。トランジスタ130のソース電極およびドレイン電極のうち第2のものは、ゲインGの反転または非反転の増幅器144によって形成される読取回路116の入力部に連結されている。増幅器144の出力部はアナログデジタル変換器126の入力部に連結されている。電流供給源143が、電圧フォロワとして振る舞う動作域においてトランジスタ142を迅速に分極するために、増幅器144の入力部にも結合される。
【0144】
この第2の実施形態では、画素102の読み取りは、例えばMOSトランジスタといった、3つのトランジスタを用いて実行される。読み取りは、電圧において行われ、活動ノード118における電荷の流れを妨げるフォロワトランジスタ142によって提供される局所的な増幅から恩恵を受ける。TFT技術では、トランジスタは、例えばポリシリコンまたはIGZOから製作され得る。
【0145】
この第2の例示の実施形態は、焦電キャパシタによって発生させられる電荷の非破壊的な読み取りを作り出す。活動ノード118がリセットされないため、発生させられた電荷は保存される。
【0146】
前述した例では、加熱は電荷の第1の読み取りの間に停止させられる。別の言い方をすれば、時間t2は時間t1と時間t3との間である。変形例では、加熱は、電荷の第2の読み取りの間、別の言い方をすれば、時間t3の後、停止させられることが可能である。
【0147】
概して、時間t0~t5は、加熱期間の半分超が第1の測定期間の間に実施され、加熱期間の半分未満が第2の測定期間の間に実施されるように選択される。
【符号の説明】
【0148】
2 指紋の隆線
4 指紋の谷線
10a、14a 第1の画素102aによって出力される信号
10b 第2の画素102bによって出力される信号
100 熱パターンセンサ
102 画素
102a 第1の画素
102b 第2の画素
104 焦電キャパシタ
106 焦電材料
108 下電極
110 上電極
112 加熱要素
114 制御手段
116 読取回路
118 活動ノード
120 読取増幅器
122 キャパシタ
124 スイッチ
126 回路、アナログデジタル変換器
130 横列選択のトランジスタ
133 横列
140 リセットトランジスタ
142 トランジスタ
143 電流供給源
144 増幅器
Vref 分極電位
t0 加熱の開始の時間
t1 第1の測定期間の開始の時間
t2 加熱の終了の時間
t3 第1の測定期間の終了の時間
t4 第2の測定期間の開始の時間
t5 第2の測定期間の終了の時間