(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】剥離装置
(51)【国際特許分類】
B65H 41/00 20060101AFI20240930BHJP
【FI】
B65H41/00 B
(21)【出願番号】P 2020132053
(22)【出願日】2020-08-03
【審査請求日】2023-08-01
(31)【優先権主張番号】P 2019142439
(32)【優先日】2019-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】手島 慶
【審査官】松江川 宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-008276(JP,A)
【文献】特開2006-168929(JP,A)
【文献】特開2018-047968(JP,A)
【文献】特開2012-101864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 29/54-29/70,37/00-37/06,
41/00,45/00-47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長方形形状の保護シートが貼付された表示装置用パネルを支持する支持部と、
前記表示装置用パネルに向かって移動し、長手方向が前記保護シートの長手方向に交差する方向の粘着テープの粘着面を前記保護シートの長手方向の一端である剥離始端に圧着してから、前記表示装置用パネルから離れることにより、前記保護シートを前記剥離始端から剥離する圧着ツールと、
前記圧着ツールによる前記剥離始端の剥離に抗して、前記表示装置用パネルを前記支持部に押さえ付ける押さえと、
を有する剥離装置。
【請求項2】
前記押さえは、前記剥離始端が剥離されることにより生じた前記保護シートと前記表示装置用パネルとの間のスペースを、前記保護シートの剥離始端と反対側の剥離終端へ向かう方向に、前記表示装置用パネルに対して相対移動することによって、前記保護シートの全体を前記表示装置用パネルから剥離することを特徴とする
請求項1記載の剥離装置。
【請求項3】
前記粘着テープの長手方向の移動に従って、前記圧着ツールから外れた位置に移動する前記保護シートの下方に垂受部材が配置されていることを特徴とする
請求項1または2に記載の剥離装置。
【請求項4】
前記圧着ツールの近傍に、前記粘着テープの短手方向の位置の変位を規制するガイド部を有することを特徴とする
請求項1乃至3のいずれかに記載の剥離装置。
【請求項5】
前記支持部に支持された表示装置用パネルの前記保護シートの貼付位置を、前記圧着ツールによる剥離動作前及び剥離動作後に撮像する撮像部を有することを特徴とする
請求項1乃至4のいずれかに記載の剥離装置。
【請求項6】
粘着面が露出している時間が所定のしきい値を超えている粘着テープを、前記圧着ツールによる圧着位置から排出することにより、後続の粘着テープを前記圧着ツールに供給する給排機構を有することを特徴とする
請求項1乃至5のいずれかに記載の剥離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD)、有機ELディスプレイ(OLED)等の表示装置は、基板の上に回路及び信号線を形成する工程、基板を貼り合せて表示領域を構成する基板としてのパネルを形成する工程、パネルにおける表示領域の外側の端子に、駆動用のドライバIC等を取り付ける工程を経て製造される。
【0003】
ドライバICの実装方法として、従来から、COF(chip on film)等のドライバICを搭載したフレキシブルなフィルム状の電子部品を用いた方法が行われている。これは、パネルの表示領域の周囲から、表示面と平行な水平方向に露出して形成された端子に対して、電子部品の端子を圧着して接続する方法である。さらに、以上のような電子部品に対して、水平状態でプリント基板を圧着することにより、外部との接続を確保する配線を電気的に接続し、表示装置を製造していた。
【0004】
このような表示装置用のパネルと電子部品との端子同士の接続や電子部品とプリント基板との接続には、加熱圧着により、それぞれの部品の電極間の導電性が確保される異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)が用いられている。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のようなパネルには、製造工程における不具合を防止するために、保護シートが貼り付けられている。例えば、パネルの表示領域や電子部品を接続する領域には、傷つき防止のための保護シートが貼り付けられている。さらに、これとは別に、表示領域と電子部品を接続する領域との間に、パネルを補強するための保護シート(補強シート)が貼り付けられることがある。例えば、パネルが樹脂製であって、パネルの最終形態が表示領域とパネルの縁部との間で折り曲げられた形状となる場合がある。パネルが折り曲げられる部分は、折り曲げられ易くなるように、事前に、パネルの電子部品が圧着される側の反対側をレーザーによって薄く加工される。つまり、電子部品を接続する領域と表示領域との間に薄く加工された部分が存在する。
【0007】
このように薄く加工されてしまうと、その部分においてパネルの剛性が弱くなって不安定となり、電子部品の圧着に支障が生じる可能性がある。このため、薄く加工された部分に保護シートを貼り付けておいてパネルを補強しておき、電子部品圧着後、保護テープを剥がし、樹脂で覆ってからパネルを折り曲げる。
【0008】
一方、表示領域の保護シートは、電子部品を接続する領域の保護シートや薄く加工された部分の補強のための保護シートとは、分離して剥離可能に設けられている。これは、電子部品を接続する領域に電子部品を接続する際やさらに薄く加工された部分の保護シートを剥離する際に、表示領域の保護は継続しておく必要があるためである。つまり、表示装置用のパネルには、3つの独立した保護シートが貼り付けられることがある。
【0009】
これにより、電子部品を接続する領域の保護シートを剥離して、端子に電子部品を接続した後も、それ以外の領域には保護シートを貼り付けたままとする。そして、その後の工程で、薄く加工された部分の保護シートを剥離して、導電性部分を保護するために樹脂で覆う。しかしながら、電子部品を接続する領域の保護シートや、薄く加工された部分の補強のための保護シートは非常に幅が狭い(数mm程度)ため、手作業で剥離するにしても、自動的に剥離するにしても、目的の保護シートのみを確実に剥離することが難しく、効率的な剥離が行なえる装置が求められていた。
【0010】
本発明は、上述のような課題を解決するために提案されたものであり、表示装置用パネルに貼り付けられた保護シートの効率的な剥離が行える剥離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明の剥離装置は、長方形形状の保護シートが貼付された表示装置用パネルを支持する支持部と、長手方向が前記保護シートの長手方向に交差する方向の粘着テープの粘着面を、前記保護シートの長手方向の一端である剥離始端に圧着してから、前記表示装置用パネルから離れることにより、前記保護シートを前記剥離始端から剥離する圧着ツールと、前記圧着ツールによる前記剥離始端の剥離に抗して、前記表示装置用パネルを前記支持部に押さえ付ける押さえと、を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、表示装置用パネルに貼り付けられた保護シートの効率的な剥離が行える剥離装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態の剥離の対象となる保護シートが貼り付けられた表示装置用パネルを示す平面図である。
【
図3】圧着部、押さえ及び垂受部を示す斜視図である。
【
図5】圧着面、粘着テープ及び保護シートの位置を示す平面図である。
【
図8】実施形態の剥離手順を示すフローチャートである。
【
図9】圧着ツールによる保護シートの剥離始端の剥離動作を示す説明図である。
【
図10】押さえによる保護シートの全体の剥離動作を示す説明図である。
【
図11】圧着ツールによる保護シートの剥離始端の剥離動作を示す説明図である。
【
図13】粘着力の回復処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態(以下、本実施形態と呼ぶ)について、図面を参照して具体的に説明する。
【0015】
[表示装置用パネル]
図1を参照して、保護シートPSを剥離する対象となる表示装置用パネル(以下、単にパネルとする)Sを説明する。パネルSは、表示機能を有する表示部Dと、駆動回路を有する電子部品Fとの接続を行うための端子Tを有する部材である。端子Tは導電性を有する部材であり、パネルSの一方の面に、外縁を構成する辺に沿う方向に並べて配置されている。各端子Tは、複数の端子Tの並び方向に直交する方向に延びて、互いに平行となっている。このようなパネルSの端子Tには、例えば、COF等のドライバICを搭載したフレキシブルなフィルム状の電子部品Fが、異方性導電フィルム(ACF)を介した加熱圧着により接続される。
【0016】
パネルSの表示部Dを含む平面方向の領域を表示領域Adと呼ぶ。パネルSの端子Tを含む平面方向の領域のうち、電子部品Fが接続される領域を接続領域Acと呼ぶ。パネルSの表示領域Adと接続領域Acとの間の平面方向の領域を狭間領域Aiと呼ぶ。パネルSは矩形状であり、表示領域Adの外縁は、パネルSの外縁に近似し、パネルSの大半の領域を占める矩形状の領域である。接続領域Acは、パネルSの外縁の一辺に沿った矩形状の領域である。狭間領域Aiは、表示領域Adと接続領域Acとの間に沿った矩形状の領域である。狭間領域AiのパネルSは、曲げ易いように、裏面(端子Tが形成された面とは反対側の面)が薄く加工されている。接続領域Ac及び狭間領域Aiは、表示領域Adと比べて幅狭の領域である。
【0017】
パネルSの表面には、保護シートPSが貼り付けられている。この保護シートPSは、樹脂製であり、複数の領域に対して分離して剥離可能となるように、分割して設けられている。より具体的には、パネルSの表面の全体に貼り付けられた保護シートPSが、表示領域Ad、狭間領域Ai、接続領域Acの境界に直線状の切込みが入れられることによって、保護シートPSx、PSy、PSzに分離可能に設けられている。保護シートPSxは、表示領域Adに貼り付けられた矩形状のシートである。保護シートPSyは、接続領域Acに貼り付けられた矩形状のシートである。保護シートPSzは、狭間領域Aiに貼り付けられた矩形状のシートである。接続領域Ac及び狭間領域Aiは、表示領域Adと比べて幅狭の領域であるため、これを保護する保護シートPSy、PSzも、保護シートPSxに比べて幅狭の形状となっている。つまり、保護シートPSy、PSzは、長辺の長さが短辺の長さの2倍以上の短冊状又はテープ状の長方形状である。
【0018】
本実施形態では、剥離の対象となる保護シートPSは、狭間領域Aiを補強する保護シートPSzで説明する。
図1では、接続領域Acに保護シートPSyが図示されているが、本実施形態による剥離の前工程では、保護シートPSyは剥離され、端子Tに電子部品Fが接続されている。表示領域Adを保護する保護シートPSxは、表示部Dを保護するために、貼り付けられたままである。
【0019】
[粘着テープ]
本実施形態に使用される粘着テープTPは、パネルSに貼り付けられた短冊状の保護シートPSzを剥離するための部材である。
図2、
図3及び
図4に示すように、粘着テープTPは、樹脂製で、帯状の長尺の部材であり、一方の面が粘着性を有する。粘着テープTPは、後述する給排機構300によって、送り出し、巻き取りが行われる(
図2参照)。
【0020】
[概要]
次に、剥離装置100の概要を説明する。
図2に示すように、剥離装置100は、支持部200、給排機構300、圧着部400、押さえ部500、垂受部600、撮像部700、制御装置800を有する。支持部200は、基板である表示装置用パネルのパネルSを支持する。給排機構300は、圧着部400に、粘着テープTPの供給、排出を行う機構である。圧着部400は、圧着ツール410を有する。圧着ツール410が、粘着テープTPの粘着面を、保護シートPSzの一端に圧着してから、粘着テープTPと共にパネルSから離れることにより、粘着テープTPの粘着面に圧着された保護シートPSzを、当該一端から剥離する(
図9参照)。このように保護シートPSzが剥離を開始する一端を剥離始端Bとし、その反対側の他端を剥離終端Eとする。
【0021】
圧着ツール410は、粘着テープTPを保護シートPSzに押圧して圧着する圧着面411を有する(
図1参照)。圧着ツール410は圧着面411で、剥離始端Bを含む位置、つまり、剥離始端Bに重なる位置を圧着する。
【0022】
押さえ部500は、
図6に示すように、押さえ510を有する。押さえ510は、
図9に示すように、圧着ツール410によって保護シートPSzに圧着された粘着テープTPの上昇による保護シートPSzの剥離始端Bの剥離に抗して、パネルSを支持部200(
図2参照)に押さえ付ける。また、
図9に示すように、剥離始端Bが剥離されることにより、保護シートPSzとパネルSとの間にスペースが生じる。このスペースにおいて、押さえ510が、保護シートPSzの剥離終端Eへ向かう方向へ、パネルSに対して相対移動することによって、保護シートPSzの全体をパネルSから剥離する。
【0023】
垂受部600は、
図2に示すように、垂受部材610を有する。垂受部材610は、
図3に示すように、粘着テープTPに貼り付けられて、圧着ツール410から巻取リール331に掛けて移動する保護シートPSzの下方に配置されている。
【0024】
撮像部700は、支持部200に支持されたパネルSの保護シートPSzの貼付領域を、剥離動作前及び剥離動作後に撮像する。保護シートPSzの貼付領域とは、上記の狭間領域Aiであり、撮像時に保護シートPSzが存在するか否かは問わない。制御装置800は、剥離装置100の各部を制御する。
【0025】
圧着ツール410が、粘着テープTPを保護シートPSzに押圧するために移動する方向を圧着方向、これと逆の方向を初期剥離方向とする。圧着方向、初期剥離方向は、図中のZ方向に沿う方向に相当する。圧着面411に平行な平面において、パネルSが圧着面411に対向する位置に搬入される方向を搬入方向、搬出される方向を搬出方向とする。搬入方向、搬出方向は、図中のX方向に沿う方向に相当する。さらに、圧着面411に平行な平面において、搬入方向、搬出方向に直交し、押さえ510が保護シートPSzを剥離するために、剥離終端Eに向かって移動する方向を剥離動作方向、剥離始端Bに戻るために移動する方向を復帰方向とする。剥離動作方向、復帰ために相対移動する方向を圧着方向、方向は、図中のY方向に沿う方向に相当する。
【0026】
なお、本実施形態の剥離装置100は、圧着面411が水平となるように設置されている。したがって、圧着方向、初期剥離方向、Z方向は鉛直方向となる。以下の説明では、鉛直方向において、剥離装置100の設置面側を下、その反対側を上とする。また、Z方向の位置を高さと呼ぶ場合がある。但し、剥離装置100の設置方向は、これには限定されない。また、
図5に示すように、XY平面上の圧着面411の位置を、圧着位置APとする。圧着位置APは、例えば、XY平面の座標系における圧着面411が剥離始端Bを押さえるべき位置座標とする。但し、この圧着位置APは一点で特定されてもよいし、矩形の四隅等の複数の点で特定されてもよい。
【0027】
[支持部]
支持部200は、
図2に示すように、支柱211、移動テーブル220、駆動機構230、ステージ240、駆動機構250を有する。支柱211は、図示しない架台に立設された部材である。架台は設置面に設置されている。移動テーブル220は、圧着面411に平行な板状体であり、支柱221に圧着方向、初期剥離方向に移動可能に支持されている。駆動機構230は、移動テーブル220を圧着方向、初期剥離方向に移動させる機構である。駆動機構230としては、例えば、支柱221に設けられ、駆動源により回動するボールねじによって昇降するボールねじ機構を用いる。
【0028】
ステージ240は、パネルSの裏面を支持する載置面241を有する板状体である。載置面241は、圧着面411に平行な面である。載置面241には、図示しない空気圧回路に接続された吸引穴が設けられ、負圧によってパネルSを吸着保持する。つまり、ステージ240は、パネルSを保持する保持部として、バキュームチャックを有している。なお、保持部としては、静電チャック、メカチャックを用いることもできる。駆動機構250は、ステージ240を、X方向及びY方向に沿う2軸方向に移動させる機構である。駆動機構250は、例えば、モータ等の駆動源によって、ボールねじを回動させることによってスライダを移動させるリニアガイドを、互いに直交する方向で2段に重ねて備えた2軸機構によって構成する。ステージ240は、駆動機構250を介して移動テーブル220上に支持されることにより、パネルSを搬入方向、搬出方向に移動させることができ、圧着位置APへ保護シートPSzを位置決めすることができる。
【0029】
なお、圧着ツール410による粘着テープTPの圧着後、ステージ240が、パネルSを押さえ510から退避させる際には、駆動機構230による初期剥離方向(Z方向の下側)への動作、駆動機構250による復帰方向(Y方向の剥離始端B側)への動作を組み合わせることにより、斜め下方に移動する。
【0030】
[給排機構]
給排機構300は、
図2に示すように、本体部310、供給部320、排出部330を有し、粘着テープTPを、パネルSに貼り付けられた長方形形状の保護シートPSzの長手方向に交差する方向で、後述する圧着部400に供給する機構である。つまり、供給部320から送り出された粘着テープTPは、パネルSに貼り付けられた長方形形状の保護シートPSzの長辺に直交する方向に、圧着ツール410の圧着面411に接するように供給されて、排出部330に巻き取られる。本体部310は、略直方体形状のプレートであり、図示しない架台に、支持部200と隣接する位置に、後述する駆動機構430を介して立設されている。
【0031】
供給部320は、Y方向に平行な回動軸を有し、本体部310の上側に設けられた供給リール321、経路ローラ322を有する。供給リール321は、粘着テープTPが巻回され、回動により粘着テープTPが送り出されるリールである。供給リール321は、図示しないトルク制御装置を介して所望の回転抵抗で支持されており、後述の巻取りリール331の駆動に従って、粘着テープTPを所定長ずつ弛みなく送出可能に設けられている。ここで、トルク制御装置を介した所望の回転抵抗とは、後述する初期剥離において、保護シートPSzのパネルSに対する粘着力に抗して、粘着テープTPを弛み無く維持する回転抵抗である。
【0032】
経路ローラ322は、供給リール321から送り出された粘着テープTPの移動をガイドするとともに、粘着テープTPの移動方向を変換することにより、圧着部400に向かう方向に、粘着テープTPを送り出す。経路ローラ322の軸は、本体部310に対する位置が固定である。経路ローラ322には、エンコーダが設けられ、回転数をカウントすることにより、粘着テープTPの送出量を検出できる。
【0033】
排出部330は、Y方向に平行な回動軸を有し、供給部320の下方に設けられた巻取リール331、経路ローラ332を有する。巻取リール331は、圧着部400を通過し、保護シートPSzが圧着された粘着テープTPを巻き取るリールである。巻取リール331は、図示しないモータにより回動することにより、粘着テープTPを所定長ずつ巻き取り可能に設けられている。上述したように、この回動によって供給リール321から粘着テープTPが所定長ずつ送出されることになる。経路ローラ332は、圧着部400からの粘着テープTPの移動をガイドするとともに、移動方向を変換して巻取リール331に送り出す。
【0034】
[圧着部]
圧着部400は、
図2、
図3及び
図4に示すように、圧着ツール410、ガイド部420、駆動機構430を有する。圧着ツール410は、本体部310に配置された略直方体形の部材である。圧着ツール410は、圧着面411を有する。圧着面411は、支持部200のステージ240に平行に対向し、長方形状の平坦な面である。圧着面411の長辺は粘着テープTPの幅よりも長く、その長辺がY方向に沿うように配置されている。また、圧着面411の短辺の長さwsは、
図5に示すように、保護シートPSzの短辺、つまり幅wt以下の長さとすることが好ましい。これにより、隣接する保護シートPSxに粘着テープTPが接触することを防止する。
【0035】
また、圧着面411は、
図1、
図5に示すように、平面視で、保護シートPSzの剥離始端Bを含むように対向する。つまり、圧着面411の全面が保護シートPSzに重なるように圧着するのではなく、圧着面411の一部の面が、保護シートPSzからの長辺方向(Y方向)にはみ出すように圧着する。このとき、圧着位置APに対して、保護シートPSzの剥離始端Bが位置決めされて粘着テープTPが圧着される。このため、剥離始端Bが位置決めされる圧着位置APは、平面視で圧着面411の内側に設定されている。ここで、圧着ツール410の圧着面411の中心を圧着位置APとし、粘着テープTPは、粘着テープTPの幅の中心が圧着位置APと重なった状態で、例えば、粘着テープTPの幅hが15mmだった場合に、保護シートPSzに粘着する幅htが10mm程度、粘着しない幅hsが5mm程度となるように、保護シートPSzの剥離始端Bが圧着位置APに対して位置決めされて圧着される。
【0036】
ガイド部420は、
図4に示すように、供給リールと圧着ツール410との間で、圧着ツール410に連続して設けられ、粘着テープTPの幅方向の変位を規制する。ガイド部420は、摺動面421、ガイド面422を有する。摺動面421は、粘着テープTPの非粘着面に沿う面である。ガイド面422は、摺動面421から粘着テープTPの厚み方向に立ち上げられ、粘着テープTPを挟んで対向する一対の内壁である。ガイド面422に、粘着テープTPの両縁が接することにより、粘着テープTPの幅方向の変位が規制される。これにより、給排機構300によって送られる粘着テープTPを圧着面411上で安定して走行させることができる。また、ガイド部420は、圧着ツール410と共通の部材となっているので、部材数を低減でき、構成を簡略化でき、組み立て工数を削減できる。なお、ガイド面422と圧着面411との境界となる角および圧着ツール410のガイド面422とは反対側の側面と圧着面411との境界となる角には、丸みが形成されている。これにより、粘着テープTPの傷つきを防止して、移動をスムーズにしている。
【0037】
駆動機構430は、
図2に示すように、本体部310に配置された圧着ツール410を圧着方向及び初期剥離方向に移動させる機構である。駆動機構430は、例えば、モータ等の駆動源によって、ボールねじを回動させ、ガイドレールに沿って、本体部310を移動させるリニアガイド等で構成される。
【0038】
[押さえ部]
押さえ部500は、
図2に示すように、押さえ510、駆動機構520を有する。押さえ510は、支持部200のステージ240に平行な平板状の部材である。本実施形態においては、押さえ510は、Y方向のみ移動し、X方向、Z方向には動かず、固定である。押さえ510は、
図4に示すように、押圧部511、512、剥離部513を有する。押圧部511は、パネルSの表示領域Adを押さえる部位であり、以下、第1の押圧部と呼ぶ。押圧部512は、パネルSの接続領域Acを押さえる部位であり、以下、第2の押圧部と呼ぶ。剥離部513は、
図10に示すように、押さえ510が剥離動作方向に移動することによって、粘着テープTPに接しながら、粘着テープTPの全体を剥離する部位である。
【0039】
第1の押圧部511及び第2の押圧部512は、押さえ部500がパネルSを押さえる際に、
図6に示すように、パネルSに重なるが、剥離部513はパネルSに重ならない。そして、第1の押圧部511と第2の押圧部512との間隔は、圧着面411及び粘着テープTPを含む圧着ツール410が進入、退出可能となっている(
図11参照)。
【0040】
本実施形態の押さえ510の第1の押圧部511、剥離部513、第2の押圧部512は、連続することによりその内縁が略U字形、つまり一辺が破断した矩形状をなしている。この連続した内縁を、凹状の切欠部514と呼ぶ。切欠部514の側面は、支持部200に向かって広がるテーパ面515によって形成されている。これにより、切欠部514に、圧着ツール410とともに粘着テープTPが進入した際に、粘着テープTPの粘着面に接する切欠部514の面積が低減するので、粘着テープTPが切欠部514の側面に粘着することによる引っ掛かり等が発生し難い。また、このように第1の押圧部511、剥離部513、第2の押圧部512を連続した一部材とすることにより、押圧する部材と剥離する部材を別に用意する場合に比べて、構成の簡略化が可能となる。なお、パネルSの浮きを防止するためには、第1の押圧部511、第2の押圧部512によって、パネルSの表示領域Adと接続領域Acを押さえることが好ましいが、いずれか一方であってもよい。この場合、パネルSの浮きは外縁側から発生するので、押圧部512のみとし、パネルSの外縁側(接続領域Ac側)のみを押さえることでもよい。
【0041】
また、押さえ510のパネルSとは接しない面には、非粘着処理が施されることにより、粘着テープTPの貼り付きを防止している。例えば、押さえ510の表面に、樹脂による非粘着コーティング等がなされている。勿論、押さえ510の全面に、非粘着処理が施されてもよい。さらに、押さえ510のパネルSに接する面には、保護テープが貼り付けられることにより、パネルS及び保護シートPSxへの傷付きを防止している。例えば、押さえ510の表面にポリイミドを主体とするテープが貼り付けられている。
【0042】
駆動機構520は、
図6に示すように、押さえ510を剥離動作方向に移動させることにより、一端が剥離された保護シートPSzとパネルSとの間に剥離部513を挿入して、パネルSから保護シートPSzの全長に亘って、つまり全体を剥離させる(
図10参照)。また、駆動機構520は、押さえ510を復帰方向に移動させる。駆動機構520は、例えば、モータ等の駆動源によって、ボールねじを回動させることにより、ガイドレールに沿って押さえ510を支持するアーム521を移動させるリニアガイド522を用いる。
【0043】
[垂受部]
垂受部600は、
図2に示すように、垂受部材610、駆動機構620を有する。垂受部材610は、粘着テープTPの送り方向に沿って配置された板状の部材である。垂受部材610は、
図3に示すように、押さえ部500に隣接した水平面から連続して、上方に傾斜した複数の傾斜面と、さらに連続した水平面を有している。この垂受部材610は、保護シートPSzの全長より長い幅で、粘着テープTPの経路に沿って、押さえ部500の際から巻取リール331の外形に係る位置に達するまでの位置に設けられている。つまり、垂受部材610は、粘着テープTPが巻取リール331に巻き取られるまでの間、剥落した保護シートPSzを受け取れる形状となっている。なお、垂受部600の主用途は、剥離した保護シートPSzの電子部品Fへの付着の防止であるから、剥離されて巻取リール331に送られる保護シートPSzが電子部品Fに付着する可能性のある範囲を少なくともカバーできる長さ(粘着テープTPの送り方向の長さ)を有していれば良い。駆動機構620は、垂受部材610を、上下方向に移動させる機構である。例えば、駆動機構620としては、シリンダを用いる。このため、電子部品Fが接続されたパネルSを搬入する際、電子部品Fに垂受部610が接触しない様、垂受部610を退避させることができる。
【0044】
[撮像部]
撮像部700は、
図2に示すように、支持部200に支持されたパネルSを撮像する。撮像部700は、図示しない支持台によって、本体部310との位置が固定となるように支持されている。撮像部700は、保護シートPSzを剥離する前の狭間領域Aiと、保護シートPSzを剥離後の狭間領域Aiを撮像する。これにより、剥離が正常に行われたか否かが判断できる。撮像部700による撮像位置は、剥離前と剥離後で、ステージ240によって位置決めされる共通の位置である。
【0045】
撮像部700は、カメラを有する。カメラは、レンズ等を含む光学部材、撮像素子であるCCD、CCDの受光量に応じて画像データを生成する画像処理回路を有するCCDカメラである。カメラは、光源からの光の反射光を受光することにより撮像する。本実施形態では、光源として、例えば、保護シートPSx、PSy、PSzの境界が際立つ赤色の照明を用いる。
【0046】
[制御装置]
制御装置800は、
図2に示すように、剥離装置100の各部を制御する装置である。この制御装置800は、例えば、専用の電子回路若しくは所定のプログラムで動作するコンピュータ等によって構成できる。つまり、支持部200、給排機構300、圧着部400、押さえ部500、垂受部600、撮像部700の制御に関して、その制御内容がプログラムされており、PLCやCPUなどの処理装置により実行される。
【0047】
このような制御装置800の構成を、ブロック図である
図7を参照して説明する。すなわち、制御装置800は、機構制御部81、画像処理部82、移動量演算部83、移動指示部84、時間判定部85、巻取指示部86、状態判定部87、記憶部88、入出力制御部89を有する。機構制御部81は、支持部200の駆動機構230、駆動機構250、給排機構300、圧着部400の駆動機構430、押さえ部500の駆動機構520、垂受部600の駆動機構620、撮像部700を制御する。
【0048】
画像処理部82は、撮像部700が撮像した画像を、表示や位置判定に適した画像に変換する。移動量演算部83は、画像処理部82が処理した画像から、保護シートPSzの剥離始端Bの位置を判定し、圧着位置APへ移動するための移動量を演算する。例えば、画像処理部82が生成した白黒の2値画像に基づいて、剥離始端Bのラインの位置座標を判定する。
【0049】
この位置座標は、上記の圧着位置APの位置座標が設定されたXY平面の座標系における位置座標である。この座標系においては、圧着位置APの位置座標と、撮像部700の撮像位置の位置座標は固定であり、撮像部700により撮像された画像における位置座標を、座標系の位置座標に変換できる。このため、移動量演算部83は、画像から判定した剥離始端Bの位置座標から、圧着位置APの位置座標までのXYの移動量を求めることができる。なお、前回の圧着位置APの位置座標からのずれ量を求めて、このずれ量に基づいて、補正した移動量を求めてもよい。
【0050】
移動指示部84は、移動量演算部83により演算された移動量に従って、支持部200の駆動機構250が駆動されるように、機構制御部81に指示する。これにより、ステージ240におけるパネルSの位置にばらつきがあっても、剥離始端Bを圧着位置APへ正確に位置決めできる。
【0051】
時間判定部85は、制御装置800の内部の時計から取得される時間に基づいて、剥離装置100が剥離動作を停止した時点からの経過時間を求め、経過時間がしきい値以上となったか否かを判定する。なお、経過時間がしきい値を超えているか否かの判定は、例えば、日付が変わっているか否かによって行ってもよい。巻取指示部86は、経過時間がしきい値を超えていた場合に、粘着テープTPの粘着面が露出していた部分を巻き取って回収する動作を、給排機構300に行わせるように、機構制御部81に指示する。この巻き取りによる粘着テープTPの送り出し量としては、供給リール321から圧着面411までの粘着テープTPの経路中、粘着面が露出して経過時間がしきい値以上となった部分が、圧着面411から外れるような送り出し量があらかじめ設定されている。送り出し量は、経路ローラ322のエンコーダにより検知する。送り出し量は、例えば、粘着テープTPが供給リール321から離れた部分から圧着ツール410の圧着面411までの粘着テープTPの経路長分の長さとすることができる。
【0052】
状態判定部87は、撮像部700により撮像された画像に基づいて、保護シートPSzの状態を判定する。つまり、状態判定部87は、画像処理部82によって処理された画像に基づいて、保護シートPSzの有無、正常な形状との相違等を判断して、正常か否かを判定する。
【0053】
記憶部88は、本実施形態の制御に必要な情報を記憶する。例えば、上記のようなプログラムとともに、上記の撮像された画像、保護シートPSzの位置決めのための座標系及び位置座標、移動量、補正量、時間判定部85の判定のための時間のしきい値、粘着テープTPの送り出し量等が、記憶部88に記憶されている。入出力制御部89は、制御対象となる各部との間での信号の変換や入出力を制御するインタフェースである。
【0054】
さらに、制御装置800には、入力装置91、出力装置92が接続されている。入力装置91は、オペレータが、制御装置800を介して剥離装置100を操作するためのスイッチ、タッチパネル、キーボード、マウス等の入力手段である。上記のしきい値等は、入力装置91から所望の値を入力して設定することができる。
【0055】
出力装置92は、装置の状態を確認するための情報を、オペレータが認識可能な状態とするディスプレイ、ランプ、メータ、スピーカ、ブザー等の出力手段である。例えば、撮像部700により撮像された画像は、ディスプレイに表示され、オペレータが保護シートPSzの剥離を確認できる。また、時間判定部85により、経過時間がしきい値を超えていると判定された場合に、粘着テープTPの粘着力が低下したとして、ディスプレイ、ランプの点灯、スピーカ、ブザーからの音声により報知される。つまり、出力装置92は、粘着力の低下の報知手段として機能する。
【0056】
[動作]
剥離装置100の動作を、
図1~
図7に加えて、
図8のフローチャート、
図9~
図12の説明図、
図13のフローチャートを参照して説明する。
図9及び
図10は、
図6に示した矢視Mの図であり、
図11及び
図12は、
図6に示した矢視Nの図である。以下の説明では、押さえ510のパネルSに対向する面のZ方向の位置を、基準位置RPとする(
図9~
図12参照)。
【0057】
(粘着テープのセット)
まず、
図2に示すように、給排機構300に、粘着テープTPをセットする。すなわち、巻回された粘着テープTPを供給リール321に嵌め込む。そして、引き出した粘着テープTPが、経路ローラ322を経由して圧着ツール410のガイド部420を通り、圧着面411を覆う位置から、経路ローラ332を経由して巻取リール331に達するように張設する。そして、給排機構300により、保護シートPSzに圧着される粘着テープTPの粘着面が、圧着ツール410の圧着面411に送り出された後、供給リール321、巻取リール331の回転を停止し、粘着テープTPの動きを固定する。
【0058】
(剥離前の撮像)
一方、パネルSは、
図1に示すように、前工程において、接続領域Acから保護シートPSxが剥離され、電子部品Fが接続されている。このパネルSは、
図2に示すように、ステージ240に載置され、負圧により吸着保持される。そして、保護シートPSzの剥離動作前に、撮像部700がパネルSの狭間領域Aiを撮像する(ステップS101)。なお、垂受部材610は、電子部品Fが接続されたパネルSが搬入される際に、電子部品Fと接触しない高さである初期位置にある(
図11参照)。
【0059】
移動量演算部83は、撮像された画像から、剥離始端Bの位置座標を判定し、剥離始端Bが圧着面411に対向する位置に移動させるまでの移動量を求める(ステップS102)。移動指示部84は、算出された移動量に従った移動指示を機構制御部81に出力することにより、機構制御部81は支持部200の駆動機構250がステージ240を移動させる。これにより、
図9(A)、
図11(A)に示すように、圧着面411の圧着位置APに対向する位置に、保護シートPSzの剥離始端Bが位置決めされる(ステップS103)。
【0060】
なお、状態判定部87は、撮像部700により撮像され、画像処理部82によって処理された画像に基づいて、保護シートPSzの状態を判定する。保護シートPSzが無い、又は保護シートPSzの状態が異常と判断された場合は、正常でないとして、出力装置92のディスプレイ等によってその旨をオペレータに通知して、機構制御部81によってパネルSを排出させる。オペレータへの通知は、再度の撮像による保護シートPSzの状態判断を促す通知であってもよい。
【0061】
(初期剥離動作)
次に、
図9(B)、
図11(B)に示すように、駆動機構430の駆動により本体部310が下降して、本体部310に設けられている圧着ツール410も下降して、押さえ510の切欠部514に進入し、圧着面411を覆う粘着テープTPの粘着面が、基準位置RPに達する位置で停止する(ステップS104)。これにより、押さえ510のパネルSに対向する面と、粘着テープTPの粘着面とが同じ高さとなる。
【0062】
図9(C)、
図11(C)に示すように、駆動機構230によって支持部200のステージ240が、圧着部400に向かって上昇することにより、パネルSが押さえ510と圧着面411を覆う粘着テープTPの粘着面に押し付けられる(ステップS105)。これにより、保護シートPSzの剥離始端Bに、粘着テープTPが圧着される。
【0063】
そして、
図9(D)、
図11(D)に示すように、駆動機構430の駆動によって圧着ツール410が上昇することにより、粘着テープTPの粘着面に圧着された保護シートPSzの剥離始端Bも上昇して、パネルSから保護シートPSzの剥離始端Bが剥離される(初期剥離)(ステップS106)。このとき、
図1及び
図4に示すように、押さえ510の第1の押圧部511、第2の押圧部512が、接続領域Ac、表示領域Adを押さえているため、パネルSの浮き上がりが防止される。なお、本実施形態では、
図9(D)、
図10のように、保護シートPSyが剥離されているので、保護シートPSxとの段差が生じている。この段差によって不具合が生じるような場合には、第2の押圧部512の裏面に、厚めのポリイミドシート等を貼って段差を解消するように対応することができる。
【0064】
(全体剥離動作)
次に、
図10(A)に示すように、支持部200のステージ240が、斜め下方に移動して、パネルSが押さえ510から離される(ステップS107)。この動作は、Z方向のみの移動でパネルSを押さえ510から離してしまうと、剥離途中である保護シートPSzにかかる張力によって、粘着テープTPに圧着された保護シートPSzが粘着テープTPから剥離してしまう虞を回避する為である。つまり、剥離途中である保護シートPSzに張力を発生させずに、パネルSを押さえ510から離す為、Y方向とZ方向を複合した動作をしている。そして、駆動機構520によって押さえ510が剥離動作方向に移動することにより、保護シートPSzの全体を剥離させる(ステップS108)。ステージ240の移動により、パネルSは押さえ510から離れるので、押さえ510はパネルSとの接触なく移動が可能となる。
【0065】
詳説すると、
図10(B)に示すように、押さえ510が移動することにより、剥離部513の縁部が、保護シートPSzに接触する。そして、
図10(C)に示すように、押さえ510が継続して移動することにより剥離を進行させて行く。そして、
図10(D)に示すように、押さえ510の剥離部513が剥離終端E上に到達した時点で押さえ510の移動を停止させる。押さえ510の剥離部513が剥離終端Eに達することにより、保護シートPSzが全長に亘ってパネルSから剥離される。この時、剥離始端Bが粘着テープTPに粘着された保護シートPSzは、剥離終端Eが剥離部513の上面に載置された状態となる。この押さえ510の動作により、保護シートPSzと粘着テープTPが圧着している部分にかかる、保護シートPSzの張力のZ成分を小さくして剥離することが出来る。よって、保護シートPSzを確実にパネルSより剥離することが可能となる。
【0066】
(送り出し動作)
次に、
図12(A)に示すように、垂受部材610が基準位置RPより上方の初期位置(
図11参照)から基準位置RPよりも下に下降する(ステップS109)。そして、
図12(B)に示すように、給排機構300により粘着テープTPを送ることにより、保護シートPSzの粘着テープTPに粘着された剥離始端Bが移動し、それと共に剥離終端Eは剥離部513の上面から第2の押圧部512の上面を摺動して(
図10(D)参照)、保護シートPSzが、垂受部材610の上方に移動していく(ステップS110)。こうして、
図3に示すように、保護シートPSzの一端である剥離始端Bが粘着テープTPに貼り付けられた状態で、粘着テープTPが巻き取りリール331に巻き取られて回収され、同時に、粘着テープTPの新たな粘着面が、圧着面411の領域に来る。そして、駆動機構520によって押さえ510が復帰方向に移動し、初期位置に復帰する。なお、本実施形態では、粘着テープTPに、保護シートPSzが直交する方向に粘着され、回収されているが、厳密な直交方向にしなくても良い。
【0067】
(剥離後撮像)
支持部200の駆動機構230、駆動機構250が、ステージ240を撮像位置に移動させて、撮像部700が、パネルSの狭間領域Aiを撮像する。状態判定部87は、撮像された画像に基づいて、保護シートPSzが残存している等と判断した場合には、正常でないとして、出力装置92のディスプレイ等によってその旨をオペレータに通知する。
【0068】
以上の動作は、一つのパネルSの保護シートPSzを剥離する手順であるが、ステージ240に載置されたパネルSを交換して、上記の手順により、順次、パネルSの保護シートPSzを剥離することができる。このように、剥離された保護シートPSzは、粘着テープTPに端部が貼り付けられた状態で、次々と貼り付けられていき、粘着テープTPとともに巻取リール331に巻き取られて、回収される。
【0069】
(粘着力のチェック)
次に、粘着テープTPの粘着力をチェックして、粘着力の低下した粘着テープTPを排除する動作を、
図13のフローチャートを参照して説明する。粘着テープTPは、空気中に継続して晒されると時間の経過と共に粘着力が徐々に低下することがあることが知られている。そのため、時間判定部85は、動作停止から剥離動作開始までの経過時間を計測して、粘着力をチェックしている。つまり、剥離動作を停止した後、次に剥離動作を開始する際に、剥離動作を停止した時点からの経過時間が時間判定部85により判定される(ステップS201)。この判定された時間が、所定のしきい値を超える場合には(ステップS202)、巻取指示部86の指示により、給排機構300は、粘着テープTPの巻き取りを開始する(ステップS203)。
【0070】
エンコーダにより、所定量の送出が検出された場合には(ステップS204のYES)、送り出しと巻き取りを停止する(ステップS205)。ここで、所定量とは、例えば、粘着テープTPが供給リール321から離れた部分から圧着ツールの圧着面までの粘着テープTPの経路長分の長さである。これにより、時間が経過して、粘着テープTPの粘着力が低下した部分を使用しないようにすることができる。例えば、粘着面が露出してから24時間が経過した粘着テープTPの部分は、使用しないようにすることができる。
【0071】
[作用効果]
(1)本実施形態の剥離装置100は、長方形形状の保護シートPSzが貼付されたパネルSを支持する支持部210と、パネルSに向かって移動し、長手方向が保護シートPSzの長手方向に交差する方向の粘着テープTPの粘着面を保護シートPSzの長手方向の一端である剥離始端Bに圧着してから、パネルSから離れることにより、保護シートPSzを剥離始端Bから剥離する圧着ツール410と、を有する剥離装置。
【0072】
このように構成することにより、粘着テープTPによって、保護シートPSzの一端から剥離することにより、目的とする保護シートPSzの効率的な剥離を行うことができる。例えば、保護シートPSzの端部以外の部分から剥離する場合、両端の付着が継続しているため、より強い力が必要となり剥離のミスが生じ易いが、本実施形態では、一端から剥離するため、その後の剥離をスムーズに行うことができる。保護シートPSzの一端だけが粘着テープTPに貼り付けられて回収されるので、保護シートPSzの全長に亘って粘着テープTPに付着されて回収するよりも、粘着テープTPを節約することができる。
【0073】
(2)圧着ツール410の圧着後、粘着テープTPの上昇による保護シートPSzの剥離始端Bの剥離に抗して、パネルSを支持部200に押さえ付ける押さえ510を有する。このため、支持部200に支持されていても、剥離始端Bの剥離に追従してパネルSが浮き上がりやずれが生じてしまうことが防止され、剥離のミスが発生しにくい。例えば、保持部としてバキュームチャックを用いたとしても、剥離始端Bを剥離するときには、保持部の保持力に負けて、パネルSに浮き上がりやずれが生じる可能性がある。本実施形態では、押さえ510がパネルSを押さえることによって、このような不具合を防止できる。
【0074】
(3)押さえ510は、剥離始端Bが剥離されることにより生じた保護シートPSzとパネルSとの間のスペースを、保護シートPSzの剥離始端Bと反対側の剥離終端Eへ向かう方向に、パネルSに対して相対移動することによって、保護シートPSzの全体をパネルSから剥離する。このため、パネルSを押さえる部材と剥離する部材を共通化することができ、構成を簡略化しつつ、保護シートPSzの効率的な剥離を行うことができる。
【0075】
(4)粘着テープTPの長手方向の移動に従って、圧着ツール410から外れた位置に移動する剥離した保護シートPSzの下方に垂受部材610が配置されている。このため、剥離した保護シートPSzがパネルSや他の箇所に付着してしまうことを防止できる。
【0076】
(5)圧着ツール410の近傍に、粘着テープTPの短手方向の位置の変位を規制するガイド部420を有する。このため、粘着テープTPの蛇行等が防止され、圧着位置APに対する位置ずれを低減できる。
【0077】
(6)支持部200に支持されたパネルSの保護シートPSzの貼付位置を、保護シートPSzの剥離動作前及び剥離動作後に撮像する撮像部700を有する。これにより、既に保護シートPSzが剥離してしまっているパネルSに対して剥離動作を行ってしまうこと、保護シートPSzが剥離できていないパネルSを次工程に流してしまうことを防止できる。
【0078】
(7)粘着面が露出している時間が所定のしきい値を超えている粘着テープTPを、圧着ツール410による圧着位置APから排出することにより、後続の粘着テープTPを圧着ツール410に供給する給排機構300を有する。このため、粘着力が弱くなってしまった粘着テープTPを使用することを防止して、剥離ミスの発生を低減できる。
【0079】
[他の実施形態]
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、以下のような態様も含む。
(1)パネルSは、表示装置用の表示領域とリード等の導電性を有する部分を備え、保護シートPSが貼り付けられた基板であればよい。例えば、液晶パネル、有機ELパネル等、現在又は将来において利用可能な表示領域を有する基板であればよい。
【0080】
(2)ステージ240、圧着ツール410、押さえ510、垂受部材610の移動は、相対移動であればよい。つまり、圧着ツール410による粘着テープTPへの保護シートPSzの剥離始端Bへの圧着は、圧着ツール410側の移動によって行っても、ステージ240側の移動によって行っても、双方の移動によって行ってもよい。押さえ510によるパネルSの押さえ付けも、押さえ510側の移動によって行っても、ステージ240側の移動によって行っても、双方の移動によって行ってもよい。ステージ240に対する垂受部材610の移動も、ステージ240側の移動によって行っても、垂受部材610側の移動によって行っても、双方の移動によって行ってもよい。
【0081】
(3)また、圧着ツール410の圧着面411に、粘着テープTPを吸着する吸着装置を設けても良い。つまり、供給部320による粘着テープTPの送出後、吸着装置を作動させて、粘着テープTPを圧着面411に吸着させ、圧着する。その後、圧着ツール410を上昇させて、保護シートPSzを剥離し、吸着装置の吸引を解除する。この様な構成によれば、保護シートPSzの剥離時に、吸着装置による吸引力も加わって粘着テープTPを上昇させるので、より強力に保護シートPSzを剥離することができ、より確実に保護シートPSzの剥離が可能となる。
【0082】
(4)本実施形態では、保護シートPSzの剥離で説明したが、保護シートPSyを剥離する場合は、保護シートPSyの剥離始端を、圧着面411の圧着位置APに対向するように、パネルSを位置決めすれば、同様に、保護シートPSyの剥離が可能となる。
【0083】
以上、本発明の実施形態及び各部の変形例を説明したが、この実施形態や各部の変形例は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上述したこれら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明に含まれる。
【符号の説明】
【0084】
70 撮像部
81 機構制御部
82 画像処理部
83 移動量演算部
84 移動指示部
85 時間判定部
86 巻取指示部
87 状態判定部
88 記憶部
89 入出力制御部
91 入力装置
92 出力装置
100 剥離装置
200 支持部
210 支柱
220 移動テーブル
230 駆動機構
240 ステージ
241 載置面
250 駆動機構
300 給排機構
310 本体部
320 供給部
321 供給リール
322 経路ローラ
330 排出部
331 巻取リール
332 経路ローラ
400 圧着部
410 圧着ツール
411 圧着面
420 ガイド部
421 摺動面
422 ガイド面
430 駆動機構
500 押さえ部
510 押さえ
511 第1の押圧部
512 第2の押圧部
513 剥離部
514 切欠部
515 テーパ面
520 駆動機構
521 アーム
522 リニアガイド
600 垂受部
610 垂受部材
620 駆動機構
700 撮像部
800 制御装置