(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20240930BHJP
【FI】
G03G15/20 510
G03G15/20 535
(21)【出願番号】P 2020143875
(22)【出願日】2020-08-27
【審査請求日】2023-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三谷 隆徳
(72)【発明者】
【氏名】西田 聡
(72)【発明者】
【氏名】原 淳
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-199309(JP,A)
【文献】特開2011-137933(JP,A)
【文献】特開2020-118785(JP,A)
【文献】特開2014-199307(JP,A)
【文献】特開2014-056149(JP,A)
【文献】特開2003-228246(JP,A)
【文献】特開2011-170102(JP,A)
【文献】特開2013-195947(JP,A)
【文献】特開2008-170882(JP,A)
【文献】特開2018-041065(JP,A)
【文献】特開2014-066851(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状の第1回転体と、
前記第1回転体の内側に配置された発熱体と、
前記第1回転体の外周面に当接し、トナー像をシートに定着させるニップ部を前記第1回転体と共に形成する第2回転体と、
前記第2回転体と共に前記第1回転体を挟むように前記第1回転体の内周面に摺接可能に設けられ、前記発熱体からの輻射熱を受けて前記ニップ部を加熱するニップ部材と、
前記発熱体からの輻射熱を前記ニップ部材に向けて反射する反射部材と、
前記反射部材を介して前記ニップ部材を支持する支持部材と、を備え、
前記支持部材は、第1位置と、前記第2回転体の回転軸線方向において前記第1位置とは異なる第2位置と、において、前記第2回転体へ向けて加圧方向に加圧される加圧状態と、前記加圧状態が解除される非加圧状態と、に遷移可能であり、
前記支持部材は、前記加圧状態において前記反射部材に接触する接触面を有し、
前記反射部材は前記接触面と接触するフランジ部を有し、
前記支持部材が前記加圧状態および前記非加圧状態のいずれであっても、前記フランジ部は前記回転軸線方向において湾曲しておらず、
前記接触面は、前記支持部材が前記非加圧状態である際に、前記回転軸線方向における前記第1位置と前記第2位置との間の中央部ほど前記第2回転体に近くなるように前記第2回転体に向けて湾曲している、
ことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記第2回転体は、前記支持部材が前記非加圧状態である際に、前記回転軸線方向における全長に亘って外径が一様である、
ことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記接触面と前記第2回転体の外周面との間の距離は、前記支持部材が前記非加圧状態である際に、前記回転軸線方向における前記第1位置と前記第2位置との間の中央位置において第1距離であり、前記回転軸線方向における前記第1位置と前記中央位置との間の第3位置において前記第1距離よりも長い第2距離である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記接触面と前記第2回転体の外周面との間の距離は、前記支持部材が前記加圧状態である際に、前記中央位置において第3距離であり、前記第3位置において第4距離であり、
前記第4距離と前記第3距離との差は、前記第2距離と前記第1距離との差よりも小さい、
ことを特徴とする請求項3に記載の定着装置。
【請求項5】
前記支持部材に対する前記加圧方向への加圧力を変更可能な変更機構を更に備え、
前記支持部材が前記加圧状態であり、かつ前記加圧力が第1加圧力である際に、前記反射部材は前記回転軸線方向における全長に亘って前記支持部材の前記接触面に接触し、
前記支持部材が前記加圧状態であり、かつ前記加圧力が前記第1加圧力よりも小さい第2加圧力である際に、前記反射部材の前記回転軸線方向における両端部は前記支持部材の前記接触面から離間している、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項6】
無端状の第1回転体と、
前記第1回転体の内側に配置された発熱体と、
前記第1回転体の外周面に当接し、トナー像をシートに定着させるニップ部を前記第1回転体と共に形成する第2回転体と、
前記第2回転体と共に前記第1回転体を挟むように前記第1回転体の内周面に摺接可能に設けられ、前記発熱体からの輻射熱を受けて前記ニップ部を加熱するニップ部材と、
前記発熱体からの輻射熱を前記ニップ部材に向けて反射する反射部材と、
前記反射部材を介して前記ニップ部材を支持する支持部材と、を備え、
前記支持部材は、第1位置と、前記第2回転体の回転軸線方向において前記第1位置とは異なる第2位置と、において、前記第2回転体へ向けて加圧方向に加圧される加圧状態と、前記加圧状態が解除される非加圧状態と、に遷移可能であり、
前記支持部材は、前記加圧状態において前記反射部材に接触する接触面を有し、
前記反射部材は前記接触面と接触するフランジ部を有し、
前記支持部材が前記加圧状態および前記非加圧状態のいずれであっても、前記フランジ部は前記回転軸線方向において湾曲しておらず、
前記第2回転体は、前記回転軸線方向において中央部に近づくほど外径が小さくなる、
ことを特徴とする定着装置。
【請求項7】
シートにトナー像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部により形成されたトナー像をシートに定着させる、請求項1乃至
6のいずれか1項に記載の定着装置と、を備える、
ことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートにトナー像を定着させる定着装置、及び定着装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子写真方式のレーザプリンタは、シートに転写されたトナー像に熱及び圧力を付与して、トナー像をシートに定着させる定着装置を有している。従来、筒状の定着ベルトと、定着ベルトを加熱する加熱ユニットと、定着ベルトと共にニップ部を形成する加圧ローラと、を有する定着装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
上記加熱ユニットは、輻射熱を発するハロゲンランプと、ハロゲンランプからの輻射熱を受けるニップ部材と、ハロゲンランプからの輻射熱をニップ部材に向けて反射する反射板と、ニップ部材を支持するステーと、を有している。反射板は、剛性の高いステーとニップ部材とによって挟まれることで、位置決めされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の定着装置では、ステーが撓むとステーに追従して反射板も撓んでしまう。特に、ステーは、ニップ部が加圧される加圧状態において、荷重を受けて撓んでしまうことがある。このようにステー及び反射板が撓むと、ニップ部に熱ムラが発生し、光沢ムラ等の画像不良が発生する虞があった。
【0006】
そこで、本発明は、画像不良を低減した定着装置及びこれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、定着装置において、無端状の第1回転体と、前記第1回転体の内側に配置された発熱体と、前記第1回転体の外周面に当接し、トナー像をシートに定着させるニップ部を前記第1回転体と共に形成する第2回転体と、前記第2回転体と共に前記第1回転体を挟むように前記第1回転体の内周面に摺接可能に設けられ、前記発熱体からの輻射熱を受けて前記ニップ部を加熱するニップ部材と、前記発熱体からの輻射熱を前記ニップ部材に向けて反射する反射部材と、前記反射部材を介して前記ニップ部材を支持する支持部材と、を備え、前記支持部材は、第1位置と、前記第2回転体の回転軸線方向において前記第1位置とは異なる第2位置と、において、前記第2回転体へ向けて加圧方向に加圧される加圧状態と、前記加圧状態が解除される非加圧状態と、に遷移可能であり、前記支持部材は、前記加圧状態において前記反射部材に接触する接触面を有し、前記反射部材は前記接触面と接触するフランジ部を有し、前記支持部材が前記加圧状態および前記非加圧状態のいずれであっても、前記フランジ部は前記回転軸線方向において湾曲しておらず、前記接触面は、前記支持部材が前記非加圧状態である際に、前記回転軸線方向における前記第1位置と前記第2位置との間の中央部ほど前記第2回転体に近くなるように前記第2回転体に向けて湾曲している、ことを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、定着装置において、無端状の第1回転体と、前記第1回転体の内側に配置された発熱体と、前記第1回転体の外周面に当接し、トナー像をシートに定着させるニップ部を前記第1回転体と共に形成する第2回転体と、前記第2回転体と共に前記第1回転体を挟むように前記第1回転体の内周面に摺接可能に設けられ、前記発熱体からの輻射熱を受けて前記ニップ部を加熱するニップ部材と、前記発熱体からの輻射熱を前記ニップ部材に向けて反射する反射部材と、前記反射部材を介して前記ニップ部材を支持する支持部材と、を備え、前記支持部材は、第1位置と、前記第2回転体の回転軸線方向において前記第1位置とは異なる第2位置と、において、前記第2回転体へ向けて加圧方向に加圧される加圧状態と、前記加圧状態が解除される非加圧状態と、に遷移可能であり、前記支持部材は、前記加圧状態において前記反射部材に接触する接触面を有し、前記反射部材は前記接触面と接触するフランジ部を有し、前記支持部材が前記加圧状態および前記非加圧状態のいずれであっても、前記フランジ部は前記回転軸線方向において湾曲しておらず、前記第2回転体は、前記回転軸線方向において中央部に近づくほど外径が小さくなる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、画像不良を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(a)は第1の実施の形態に係るプリンタを示す全体概略図、(b)は画像形成ユニットを示す模式図。
【
図3】(a)は比較例に係る非加圧状態の定着装置をシート搬送方向から視た模式図、(b)は比較例に係る加圧状態の定着装置をシート搬送方向から視た模式図。
【
図5】(a)は非加圧状態の定着装置をシート搬送方向から視た模式図、(b)は加圧状態の定着装置をシート搬送方向から視た模式図。
【
図7】(a)は第2の実施の形態に係る非加圧状態の定着装置をシート搬送方向から視た模式図、(b)は第2の実施の形態に係る加圧状態の定着装置をシート搬送方向から視た模式図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1の実施の形態>
[全体構成]
以下、本発明に係る実施の形態について、図面に基づいて説明をする。
図1(a)は、第1の実施に係る画像形成装置としてのプリンタ1を示す図である。
図1(a)に示すようにプリンタ1は、装置本体2と、装置本体2の上部に設けられた画像読取装置3とを備えており、装置本体2の内部にはシートに画像を形成する画像形成ユニット10が設けられている。
【0012】
画像形成ユニット10は、
図1(b)に示すように、電子写真方式の画像形成部100と、定着装置106と、を備えている。この画像形成部100は、画像形成動作の開始が指令されると、感光体である感光ドラム101が回転し、ドラム表面が帯電ローラ102によって一様に帯電される。すると、露光装置103が、画像読取装置3又は外部のコンピュータから送信された画像データに基づいてレーザ光を変調して出力し、感光ドラム101の表面を走査して静電潜像を形成する。この静電潜像は、現像装置104から供給されるトナーによって可視化(現像)されてトナー像Tとなる。
【0013】
このような画像形成動作に並行して、不図示のカセット又は手差しトレイに積載されたシートPを画像形成ユニット10へ向けて給送する給送動作が実行される。給送されたシートPは、画像形成部100による画像形成動作の進行に合わせて搬送される。
【0014】
そして、感光ドラム101に担持されたトナー像Tは、転写ローラ105によってシートPに転写される。トナー像転写後に感光ドラム101上に残ったトナーは、クリーニング装置107によって回収される。未定着のトナー像が転写されたシートPは、定着装置106へと受け渡される。定着装置106は、熱及び圧力を付与することでトナーをシートPに対して溶融及び固着し、トナー像TをシートPに定着させる。トナー像Tが定着したシートPは、排出ローラ対等によって、機外に排出される。
【0015】
[定着装置]
次に、本実施の形態に係る定着装置106について
図2を用いて説明する。
図2に示すように、定着装置106は、無端状の定着ベルト201と、定着ベルト201を加熱するための加熱ユニット200と、加熱ユニット200との間で定着ベルト201を挟む加圧ローラ202と、を備える。なお、定着ベルト201は、薄肉のフィルム状のものを含む。
【0016】
第1回転体としての定着ベルト201は、高熱伝導率で低熱容量であるポリイミド樹脂から構成され、可撓性を有する無端状のベルト(エンドレスベルト)である。なお、定着ベルト201は、他の樹脂や、ステンレスなどの金属で形成されてもよい。
【0017】
定着ベルト201は回転自在に設けられており、定着ベルト201の内周面には後述するニップ部材204との摺動性を確保するために、潤滑剤が塗布されている。そして、この定着ベルト201の回転軸線方向(以下、軸線方向Xとする)の両端部には、定着ベルト201の回転を案内するとともに定着ベルト201の回転軸線方向への移動を規制するために、不図示のガイド部材が設けられている。
【0018】
加熱ユニット200は、定着ベルト201の内周側に配設されており、ハロゲンランプ203、ニップ部材204、反射板205及び支持部材206を有している。発熱体としてのハロゲンランプ203は、定着ベルト201及びニップ部材204から間隔をあけて配置され、輻射熱を発して定着ベルト201を加熱するために設けられている。ハロゲンランプ203は、不図示の電源による給電量に応じて輻射熱の温度が変わる。本実施の形態の場合、ハロゲンランプ203が発する輻射熱の温度は、不図示の温度センサにより検出されるニップ部Nの温度が所定の目標温度に維持されるように、不図示の制御部によるハロゲンランプ203への給電量の制御に従って調整される。なお、ハロゲンランプに限らず、他の発熱体を適用してもよい。
【0019】
ニップ部材204は、回転する定着ベルト201に対し非回転に設けられ、定着ベルト201の内周面に摺接可能に軸線方向Xに延設された長尺状の部材である。上述のように、ハロゲンランプ203は、定着ベルト201を加熱するために輻射熱を発するが、その際に、ニップ部材204がハロゲンランプ203からの輻射熱を受ける。つまり、ニップ部材204は、ハロゲンランプ203に対向してハロゲンランプ203からの輻射熱を受ける受熱面204aを有する。
【0020】
反射部材としての反射板205は、ハロゲンランプ203から発せられる輻射熱をニップ部材204に向けて反射するための部材であり、ハロゲンランプ203を覆うようにハロゲンランプ203から所定の間隔をあけて配置されている。このため、反射板205は、赤外線及び遠赤外線の反射率が大きい例えばアルミニウム板を、断面が略U字状になるように湾曲して形成されている。この反射板205によってハロゲンランプ203からの輻射熱がニップ部材204に集められることで、ハロゲンランプ203からの輻射熱を効率よく利用して、ニップ部材204を介してニップ部Nを速やかに加熱することができる。
【0021】
より詳しくは、反射板205は、内面が輻射熱を受ける反射部205aと、反射部205aの両端部からシート搬送方向Y及びシート搬送方向Yとは反対方向に延びるフランジ部205bと、を有している。反射板205は、反射率の高い鏡面仕上げを施した、厚み400μmのアルミニウム板をプレス成型することで形成されている。反射板205は、形状を保持できる範囲で薄い方が望ましい。これは、反射板205の熱容量が大きくなると、ハロゲンランプ203からの熱が反射板205の昇温に消費される割合が大きくなり、ニップ部材204の加熱効率が低下してしまうためである。
【0022】
支持部材206は、ニップ部材204を支持するための所定の剛性を有する構造物であり、例えばステンレスやバネ鋼などの強度の優れた金属を用いて反射板205の外面に沿った形状に形成されている。より詳しくは、支持部材206は、ニップ部材204の短手方向であるシート搬送方向Y並びに加圧方向Zにおいて、反射板205のフランジ部205bを介してニップ部材204の両端部を支持している。
【0023】
反射板205は、フランジ部205bが加圧方向Zにおいて支持部材206及びニップ部材204によって挟持されるため、加圧方向Zにおける位置ずれが抑制される。また、剛性が高い支持部材206が、反射板205のフランジ部205bを支持していることで、反射板205の形状を軸線方向Xの全長に亘って良好に保持することができる。また、反射部205aと支持部材206との間には隙間が設けられており、ニップ部材204の熱が支持部材206へと逃げてしまうことを低減している。
【0024】
本実施の形態の場合、支持部材206がニップ部材204を加圧方向Zに加圧しており、加圧されたニップ部材204によって、定着ベルト201が内側から加圧ローラ202に向けて押圧されることで、より確実にニップ部Nを形成できるようにしている。
【0025】
加圧ローラ202は、定着ベルト201の外周面に当接し、かつ回転可能に支持されている。本実施の形態では、不図示の駆動モータにより加圧ローラ202が矢印方向へ所定の周速度で回転される。すると、ニップ部Nで生じる摩擦力によって、加圧ローラ202の回転力が定着ベルト201に伝達される。こうして、定着ベルト201は、加圧ローラ202により従動回転する(所謂、加圧ローラ駆動方式)。加圧ローラ202は、例えば回転軸としての金属製の芯金202Aの外周に弾性層202Bが形成され、弾性層202Bの外周にさらにPTFE、PFA、FEP等のフッ素樹脂からなる離型層202Cが形成されている。弾性層202Bは、内部に空隙を有している。弾性層202B及び離型層202Cは、第2回転体としてのローラ部202Rを構成している。
【0026】
芯金202Aは、軸線方向Xにおける両端部が不図示の軸受部によって回転可能に支持されている。そして、支持部材206は、不図示の加圧手段からの荷重によってニップ部材204を加圧方向Zに加圧し、定着ベルト201を加圧ローラ202に押圧している。これにより、加圧ローラ202の表面が弾性変形し、加圧ローラ202の表面と定着ベルト201の表面とによって、シート搬送方向Yに関して所定幅のニップ部Nが形成される。本実施の形態では、支持部材206の軸線方向Xにおける両端部にかかる荷重W1は、それぞれ9kgずつに設定され、計18kgの荷重が支持部材206に作用している。
【0027】
なお、加圧方向Zは、軸線方向X及びシート搬送方向Yに直交する方向であるまた、ニップ部材204は、定着ベルト201に直接接触するものに限らず、鉄合金やアルミ等の熱伝導性が高いシート材を介して定着ベルト201に接触してもよい。
【0028】
上記したように、ニップ部材204がハロゲンランプ203からの輻射熱及び反射板205により反射された輻射熱によって加熱されることで、定着ベルト201の温度が上昇する。未定着トナー像が形成されたシートPは、回転する定着ベルト201と加圧ローラ202とにより挟持搬送される際にニップ部Nで加熱及び加圧され、これにより、シートSにトナー像が定着される。
【0029】
[熱ムラが発生するメカニズム]
次に、
図3(a)乃至
図4を用いて、比較例において熱ムラが発生するメカニズムについて説明する。
図3(a)は、比較例に係る非加圧状態の定着装置をシート搬送方向Yから視た模式図である。
図3(b)は、比較例に係る加圧状態の定着装置をシート搬送方向Yから視た模式図である。加圧状態は、比較例としての支持部材1206が加圧ローラ202へ向けて加圧方向Zに加圧されている状態であり、非加圧状態は、支持部材1206の加圧状態が解除された状態、すなわち、支持部材1206に荷重W1がかかっていない状態である。
【0030】
支持部材1206は、
図3(a)に示すように、反射板205のフランジ部205bに接触する接触面1206aを有しており、接触面1206aは、支持部材1206が非加圧状態である際に、軸線方向Xに平行に延びている。
図3(b)に示すように、支持部材1206が加圧状態である際には、支持部材1206の軸線方向Xにおける両端部に荷重W1がそれぞれかかることで、支持部材1206の中央部が加圧ローラ202から離れるように撓む。
【0031】
支持部材1206が撓むことで、支持部材1206に追従して反射板205も軸線方向Xにおける中央部が加圧ローラ202から離れる方向に向かって撓む。このように反射板205が撓むことで、内部応力が発生し、反射板205が局所的に波打つように変形してしまうことがある。
【0032】
反射板205が局所的に波打つように変形した場合の輻射熱のムラについて、
図4を用いて説明する。
図4は、定着装置をシート搬送方向Yから視た模式図である。
図4に記載の矢印は、反射板205によって反射されるハロゲンランプ203からの輻射熱の進行方向のイメージを示している。
【0033】
反射板205は、例えば領域S1ではニップ部材204に近づくように凸状に変形し、領域S2ではニップ部材204から離れるように凹状に変形している。領域S1に近いニップ部材の領域S1’では、反射板205で反射した輻射熱の密度が小さくなるため、領域S1’の温度は上がりにくい。一方で、領域S2に近いニップ部材の領域S2’では、反射板205で反射した輻射熱の密度が大きくなるため、領域S2’の温度は上がりやすい。
【0034】
このように、比較例の定着器では、反射板205が変形することに起因して、ニップ部材204に温度ムラが発生する。そして、この状態でシートP上のトナー像Tを加熱定着すると、ニップ部Nの中で温度の高い領域に対応するトナー像Tのグロスが高くなり、光沢ムラが発生してしまう。
【0035】
[支持部材の形状]
次に、上述したような熱ムラ及び光沢ムラを抑制するための、本実施の形態に係る支持部材206の形状について説明する。
図5(a)は、非加圧状態の定着装置106をシート搬送方向Yから視た模式図である。
図5(b)は、加圧状態の定着装置106をシート搬送方向Yから視た模式図である。加圧状態は、本実施の形態の支持部材206が加圧ローラ202へ向けて加圧方向Zに加圧されている状態であり、非加圧状態は、支持部材206の加圧状態が解除された状態、すなわち、支持部材206に荷重W1がかかっていない状態である。支持部材206は、加圧状態及び非加圧状態に遷移可能である。
【0036】
図2及び
図5(a)(b)に示すように、支持部材206は、加圧状態において反射板205のフランジ部205bに接触する接触面206aを有している。支持部材206は、
図5(b)に示すように、加圧状態では、第1位置P1と、軸線方向Xにおいて第1位置P1とは異なる第2位置P2と、において、加圧ローラ202へ向けて加圧方向Zに加圧される。第1位置P1及び第2位置P2は、支持部材206の軸線方向Xにおける両端部近傍であり、これら第1位置P1及び第2位置P2には、荷重W1がそれぞれかかる。
【0037】
図5(a)に示すように、非加圧状態においては、支持部材206の第1位置P1及び第2位置P2には荷重W1がそれぞれ作用しておらず、支持部材206は変形していない。この時、支持部材206の接触面206aは、軸線方向Xにおける第1位置P1と第2位置P2との間の中央部206bほど加圧ローラ202のローラ部202Rに近くなるように、ローラ部202Rに向けて湾曲している。言い換えれば、接触面206aは、加圧ローラ202のローラ部202Rへと出っ張った正クラウン形状となっている。
【0038】
このため、接触面206aとローラ部202Rの外周面との間の距離は、支持部材206が非加圧状態である際に、軸線方向Xにおける第1位置P1と第2位置P2との間の中央位置CPにおいて、第1距離としての距離d1となる。なお、距離d1は、中央位置CPに位置する接触面206aの中央部206bと、ローラ部202Rの外周面と、の間の距離に相当する。
【0039】
また、接触面206aとローラ部202Rの外周面との間の距離は、軸線方向Xにおける第1位置P1と中央位置CPとの間の第3位置P3において、距離d1よりも長い第2距離としての距離d2となっている(d2>d1)。なお、本実施の形態では、ローラ部202Rは、支持部材206が非加圧状態である際に、軸線方向Xにおける全長に亘って外径が一様である。
【0040】
図5(b)に示すように、支持部材206が加圧状態となると、支持部材206の中央部が加圧ローラ202のローラ部202Rから離れるように変形する。この時、支持部材206の接触面206aは、中央部206bがローラ部202Rから離れるように変形する。接触面206aは、非加圧状態である際に予め中央部206bがローラ部202Rに向けて湾曲するように形成されていたので、加圧状態となることで、軸線方向Xに沿った平面に近い形状となる。この結果、支持部材206に支持された反射板205の波打ち変形を低減でき、光沢ムラを抑制することができる。
【0041】
なお、接触面206aとローラ部202Rの外周面との間の距離は、支持部材206が加圧状態である際に、中央位置CPにおいて第3距離としての距離d3であり、第3位置P3において第4距離としての距離d4である。この時、距離d3及び距離d4はほぼ等しいので、距離d4と距離d3との差Δ2は、距離d2と距離d1との差Δ1よりも小さい。すなわち、以下の式のようになる。
Δ2=(d4-d3)<Δ1=(d2-d1)
【0042】
以下では、本実施の形態、すなわち実施例1と、
図3(a)(b)で説明した比較例と、における、反射板205の波打ち並びに熱ムラ起因の光沢ムラの確認結果を説明する。比較例に係る支持部材1206の接触面1206aは、非加圧状態において略平面であるのに対し、実施例1に係る支持部材206の接触面206aは、非加圧状態において正クラウン形状である。
実施例1及び比較例における評価は、下記条件で行った。
環境:23℃/50%RH
本体:スループット27ppm(A4)、プロセススピード148mm/sec
シート:HP製LTRサイズ紙HP Brochure Paper 200 Glossy(坪量200g/m
2)を23℃/50%RH環境に48時間以上放置した放置紙
印刷画像:全面黒画像
【0043】
また、支持部材206,1206の撓み量は、支持部材206,1206の接触面206a,1206aの中央部が、非加圧状態から加圧状態となることで加圧ローラ202から離れる方向へ変形した量であると定義した。具体的には、定着ベルト201を支持部材206,1206の撓みに影響がない範囲で切り開き、加圧前後における支持部材206,1206の形状をハイトゲージで測定することで上記撓み量を求めた。
【0044】
また、反射板205の撓み量は、反射板205の軸線方向Xにおける中央部が、支持部材206,1206が非加圧状態から加圧状態となることで加圧ローラ202から離れる方向へ変形した量であると定義した。具体的には、ハロゲンランプ203を反射板205の撓みに影響がないように留意しながら取り外し、加圧前後における反射板205の内面の形状を、長手両端からハイトゲージで測定することで上記撓み量を求めた。
【0045】
また、反射板205の波打ちは、支持部材206,1206が加圧状態である際に、反射板205の内面を軸線方向Xから目視することで確認した。また、熱ムラ起因の光沢ムラは、印刷後の前面黒画像を目視することで確認した。
【0046】
上述したような評価方法で、実施例1並びに比較例の支持部材の撓み量、反射板の撓み量、反射板の波打ち、及び熱ムラ起因の光沢ムラについて表1に示す。
【表1】
上記表1から、実施例1では、反射板205の波打ちが低減され、更に熱ムラ起因の光沢ムラが抑制されていることが確認された。
【0047】
以上説明したように、本実施の形態では、接触面206aを、支持部材206が非加圧状態である際に、軸線方向Xにおける中央部206bほど加圧ローラ202のローラ部202Rに近くなるように形成した。これにより、光沢ムラ等の画像不良を低減することができる。
【0048】
[変形例]
図6は、第1の実施の形態の変形例に係る定着装置を示す模式図である。
図6に示すように、本変形例は、上述した第1の実施の形態に加えて、変更機構50,50を備えている。変更機構50は、支持部材206に対する加圧方向Zへの荷重、すなわち加圧力を変更可能である。変更機構50は、例えばプリンタ1の状態や印刷するシートの種類やジョブに応じて、荷重の大きさを変更できる。
【0049】
そして、本変形例では、反射板205は、加圧方向Zにおいて、支持部材206に固定されていない。例えば、支持部材206の軸線方向Xにおける両端部に、第1加圧力としての荷重W1が作用した場合、反射板205は、軸線方向Xにおける全長に亘って支持部材206の接触面206aに接触している。一方で、支持部材206の軸線方向Xにおける両端部に、荷重W1よりも小さい第2加圧力としての荷重W2が作用した場合、反射板205の軸線方向Xにおける両端部は、支持部材206の接触面206aから離間している。
【0050】
このように、反射板205を加圧方向Zにおいて支持部材206に固定しないことで、変更機構50によって支持部材206に作用する荷重が変更したとしても、反射板205の変形への影響が少ない。このため、反射板205の変形や破壊を抑制することができる。
なお、変更機構50は、例えば回転するカムを用いて支持部材206への荷重を変更する構成を適用することができる。
【0051】
<第2の実施の形態>
次いで、本発明の第2の実施の形態について説明するが、第2の実施の形態は、第1の実施の形態の支持部材及び加圧ローラを変更して構成したものである。このため、第1の実施の形態と同様の構成については、図示を省略、又は図に同一符号を付して説明する。
【0052】
図7(a)は、非加圧状態の第2の実施の形態に係る定着装置106Bをシート搬送方向Yから視た模式図である。
図7(b)は、加圧状態の定着装置106Bをシート搬送方向Yから視た模式図である。
【0053】
本実施の形態に係る定着装置106Bは、支持部材2206と、加圧ローラ2202と、を有している。加圧ローラ2202は、芯金202Aと、芯金202Aに取り付けられたローラ部2202Rと、を有している。第2回転体としてのローラ部2202Rは、支持部材2206が非加圧状態である際に、軸線方向Xにおいて中央部に近づくほど外径が小さくなっている。すなわち、ローラ部2202Rは、軸線方向Xにおける両端部よりも中央部の方が外径が小さい逆クラウン形状を有している。
【0054】
一方で、支持部材2206は、加圧状態において反射板205に接触する接触面2206aを有しており、接触面2206aは、支持部材2206が非加圧状態である際に、軸線方向Xに平行に延びている。
【0055】
図7(b)に示すように、支持部材2206が加圧状態となると、定着ベルト201を介してニップ部材204が加圧ローラ2202のローラ部2202Rを押圧する。本実施の形態に係るローラ部2202Rは、逆クラウン形状を有しているため、ニップ部Nのニップ圧は、軸線方向Xにおける中央部ほど弱くなる。
【0056】
このため、支持部材2206の撓みが小さくなり、反射板205の撓みも減少する。その結果、実施例1と同様に、反射板205の波打ちが低減され、熱ムラ起因の光沢ムラを抑制することができる。
【0057】
実際に、本実施の形態、すなわち実施例2における光沢ムラの抑制効果を確認した。実施例2に係る支持部材2206の接触面2206aは、非加圧状態において略平面であり、ローラ部2202Rの非加圧状態における逆クラウン量は、350μmである。なお、逆クラウン量とは、ローラ部202Rの軸線方向Xにおける両端部の外径と、中央部の外径と、の差の半分に相当する。
【0058】
実施例2における評価は、実施例1と同じ条件で行った。実施例2の支持部材の撓み量、反射板の撓み量、反射板の波打ち、及び熱ムラ起因の光沢ムラについて表2に示す。
【表2】
上記表2から、実施例2では、反射板205の波打ちが低減され、更に熱ムラ起因の光沢ムラが抑制されていることが確認された。このため、画像不良を低減することができる。
【0059】
<その他の実施形態>
既述のいずれの形態においても、支持部材の軸線方向Xにおける両端部に荷重を作用させていたが、これに限定されない。
図5(b)に示す位置よりも軸線方向Xにおいて内側において支持部材に荷重を作用させてもよい。
【0060】
また、第1の実施の形態と第2の実施の形態を組み合わせてもよい。例えば、第1の実施の形態よりも小さな曲率で接触面206aを構成し、更に第2の実施の形態よりも小さな曲率で逆クラウン形状のローラ部2202Rを有する加圧ローラ2202を構成し、これらを組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1:画像形成装置(プリンタ)/50:変更機構/100:画像形成部/106,106B:定着装置/201:第1回転体(定着ベルト)/202R,2202R:第2回転体(ローラ部)/203:発熱体(ハロゲンランプ)/204:ニップ部材/205:反射部材(反射板)/205b:フランジ部/206,2206:支持部材/206a,2206a:接触面/206b:中央部/CP:中央位置/d1:第1距離(距離)/d2:第2距離(距離)/d3:第3距離(距離)/d4:第4距離(距離)/P1:第1位置/P2:第2位置/P3:第3位置/W1:第1加圧力(荷重)/W2:第2加圧力(荷重)/X:回転軸線方向(軸線方向)/Z:加圧方向/Δ1,Δ2:差