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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20240930BHJP
   G03G 15/20 20060101ALI20240930BHJP
   B65H 37/04 20060101ALI20240930BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20240930BHJP
   B65H 45/14 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
G03G21/00 370
G03G15/20 510
B65H37/04 A
G03G15/00 432
B65H45/14
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020156213
(22)【出願日】2020-09-17
(65)【公開番号】P2022049918
(43)【公開日】2022-03-30
【審査請求日】2023-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中居 智朗
(72)【発明者】
【氏名】下村 正樹
(72)【発明者】
【氏名】西沢 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】松田 考平
(72)【発明者】
【氏名】嶋野 努
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-171607(JP,A)
【文献】特開2006-078545(JP,A)
【文献】特開2007-193004(JP,A)
【文献】特開2015-129840(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
G03G 15/20
G03G 15/00
B65H 37/04
G03G 15/00
B65H 45/14
B41J 29/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷用トナーを用いてシートにトナー像を形成し、かつ、粉末接着剤を前記シートに塗布する画像形成手段と、
前記画像形成手段によって前記シートに形成された前記トナー像及び前記シートに塗布された前記粉末接着剤を加熱して、前記トナー像を前記シートに定着させる定着手段と、
前記定着手段を通過した前記シートを、前記粉末接着剤が塗布された面を内側にして一枚のシートを二枚重ね状態に折り畳む折り手段と、
前記シートを加熱するための加熱部材と、前記加熱部材に当接する加圧部材とを有し、前記折り手段により折り畳まれた前記シートを前記加熱部材と前記加圧部材との間に形成されるニップ部に挟持して搬送しながら前記シートを加熱して、前記粉末接着剤により前記シートを接着する接着手段と、
を備え、
前記加熱部材は熱源を有し、前記加圧部材は熱源を有しておらず、
前記定着手段から前記折り手段へ向けて前記二枚重ね状態に折り畳まれる前の前記シートが搬送される時の前記シートの搬送方向前半部分が、前記接着手段の前記ニップ部において前記加熱部材と接触する、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記画像形成手段によって前記シートの第1面に前記印刷用トナーを用いて前記トナー像を形成して前記定着手段によって前記トナー像を前記第1面に定着させた後、前記シートを反転させ、前記画像形成手段によって前記シートの前記第1面とは反対の第2面に前記粉末接着剤を塗布して前記定着手段によって前記粉末接着剤を前記第2面に定着させ、さらに、前記折り手段によって前記第2面が内側となるように前記シートを折り畳んで前記接着手段によって接着する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記折り手段は、前記シートを挟持して搬送する折りローラ対と、前記折りローラ対のシート搬送方向において前記折りローラ対の上流側に延びる引き込み部と、前記定着手段から搬送されてきた前記シートの前記搬送方向前半部分を前記引き込み部に送り込むガイドローラと、を有し、前記シートの先端が前記引き込み部の端部に当接することで前記シートにたわみが生じた部分を先頭にして、前記折りローラ対が前記シートを挟持して搬送する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記加熱部材は、筒状のフィルムと、前記フィルムの内周側に配置され、前記フィルムを介して前記ニップ部を通過する前記シートを加熱するヒータと、を含み、
前記加圧部材は、前記フィルムを介して前記ヒータと当接するローラである、
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、給与明細書等の内容に秘匿性があり密封が必要な書類を作成する場合は、予め接着剤が塗布されたプレプリント紙を事前に用意し、バリアブルデータをプレプリント紙に印刷した後に、後処理として密封処理が行われていた。この方式では、接着剤の塗布等を必要とするプレプリント紙の作成に時間が掛かる上、必要数量の少ない用途では非効率であった。
【0003】
特許文献1では、電子写真プロセスを用いて画像形成用トナーに加えて接着用トナー(粉末接着剤)を使用することにより、普通紙を用いながら1台の装置で密封された書類を出力する画像形成装置を提案している。接着用トナーは画像形成用トナーよりも低い温度で溶融するよう設計されており、画像形成用トナーと同じく電子写真プロセスで転写されることで記録媒体であるシートに塗布される。その後、接着用トナー像が形成されている面が対向するようにシートを折り畳み、最後に接着用トナーを介してシートの接着面同士を密着させた状態で加熱することでシートを接着する。この方式は1台の画像形成装置で印刷工程及び接着工程が完結しているため、必要数量の少ない用途でも効率が良い。また、接着剤の加熱溶融により接着を行う方式は、強い圧力を必要としないため、装置の小型化や静音化に有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-171607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記文献の画像形成装置のように印刷工程及び接着工程を1台の装置で実施する場合、粉末接着剤は折り畳まれた状態でシートの内側となる面に塗布される一方で、会社のロゴや宛名等の内容は、折り畳まれた状態でシートの外側となる面に記録される。ここで、接着工程においてローラ又はフィルム等の加熱部材を介してシートを加熱する際に、折り畳まれたシートの外側の面に記録されている画像のトナーが溶融して加熱部材に転移し、加熱部材が一回転した後にシートに再付着する画像不良が生じる場合がある。このような画像不良を、以下、ホットオフセットという。ホットオフセットの発生を抑制するために接着工程における加熱温度を低下させると、折り畳まれたシートの内側に塗布されている粉末接着剤が十分に軟化せず、シート面同士の接着が不十分となる可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、ホットオフセットの抑制と接着性とを両立可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、印刷用トナーを用いてシートにトナー像を形成し、かつ、粉末接着剤を前記シートに塗布する画像形成手段と、前記画像形成手段によって前記シートに形成された前記トナー像及び前記シートに塗布された前記粉末接着剤を加熱して、前記トナー像を前記シートに定着させる定着手段と、前記定着手段を通過した前記シートを、前記粉末接着剤が塗布された面を内側にして一枚のシートを二枚重ね状態に折り畳む折り手段と、前記シートを加熱するための加熱部材と、前記加熱部材に当接する加圧部材とを有し、前記折り手段により折り畳まれた前記シートを前記加熱部材と前記加圧部材との間に形成されるニップ部に挟持して搬送しながら前記シートを加熱して、前記粉末接着剤により前記シートを接着する接着手段と、を備え、前記加熱部材は熱源を有し、前記加圧部材は熱源を有しておらず、前記定着手段から前記折り手段へ向けて前記二枚重ね状態に折り畳まれる前の前記シートが搬送される時の前記シートの搬送方向前半部分が、前記接着手段の前記ニップ部において前記加熱部材と接触する、ことを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ホットオフセットの抑制と接着性とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1に係る画像形成装置の概略図。
図2】実施例1に係る画像形成装置の装置本体に対する後処理ユニットの装着を説明するための図。
図3】実施例1に係る画像形成装置におけるシートの搬送経路を表す図。
図4】実施例1に係る画像形成装置におけるシートの他の搬送経路を表す図。
図5】実施例1に係る折り工程の内容を説明するための図(a~f)。
図6】実施例1に係る画像形成装置の外観を示す斜視図。
図7】実施例1に係る画像形成装置が出力する成果物を例示する図(a、b)。
図8】実施例1に係るプロセスカートリッジの概略図。
図9】実施例1に係る第1定着器の概略図。
図10】実施例1に係る後処理ユニット内部の概略図。
図11】実施例2に係る画像形成装置の概略図。
図12】実施例2に係る画像形成装置におけるシートの搬送経路を表す図。
図13】実施例2に係る画像形成装置におけるシートの他の搬送経路を表す図。
図14】実施例2に係る折り工程の内容を説明するための図(a~f)。
図15】実施例2に係る第1定着器の概略図。
図16】実施例2に係る後処理ユニット内部の概略図。
図17】比較例1に係る画像形成装置の概略図。
図18】比較例1に係る後処理ユニット内部の概略図。
図19】比較例2に係る画像形成装置の概略図。
図20】比較例2に係る接着ユニット内部の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の例示的な実施形態について説明する。
【実施例1】
【0011】
(全体の装置構成)
最初に、画像形成装置の全体構成について、図1図2図6を用いて説明する。図1は、実施例1に係る画像形成装置本体(以下、装置本体10と記載する)と、装置本体10と接続された後処理ユニット30と、を備えた画像形成装置1の断面構成を表す概略図である。画像形成装置1は、電子写真式の印刷機構を備えた装置本体10と、シート処理装置としての後処理ユニット30とによって構成される電子写真画像形成装置(電子写真システム)である。
【0012】
図6は画像形成装置1の外観を表す斜視図である。後処理ユニット30は、装置本体10の上部に装着されている。画像形成装置1は、下部にシートカセット8を有し、右側面部に開閉可能なトレイ20を有し、上面部に第1排出トレイ13を備えている。
【0013】
まず、装置本体10の内部構成を説明する。図1に示すように、装置本体10は、記録媒体としてのシートPを収納するシート収納部としてのシートカセット8と、画像形成手段としての画像形成ユニット1eと、定着手段としての第1定着器6と、これらを収容する筐体19と、備えている。装置本体10は、シートカセット8から給送されるシートPに画像形成ユニット1eによってトナー像を形成し、第1定着器6によって定着処理を施した印刷物を作成する印刷機能を有する。なお、記録媒体であるシートPとしては、例えば紙が用いられる。
【0014】
シートカセット8は、装置本体10の下部において筐体19に対して引き出し可能に挿入されており、多数枚のシートPを収納している。シートカセット8に収納されたシートPは、給送ローラ等の給送部材でシートカセット8から給送され、分離ローラ対によって1枚ずつ分離された状態で、搬送ローラ8aによって搬送される。また、開いた状態のトレイ20(図6)にセットされたシートを1枚ずつ給送することも可能である。
【0015】
画像形成ユニット1eは、4つのプロセスカートリッジ7n,7y,7m,7cと、スキャナユニット2と、転写ユニット3と、を備えたタンデム型の電子写真ユニットである。プロセスカートリッジとは、画像形成プロセスを担う複数の部品を一体的に交換可能にユニット化したものである。装置本体10には、筐体19に支持されるカートリッジ支持部9が設けられており、各プロセスカートリッジ7n,7y,7m,7cはカートリッジ支持部9に設けられた装着部9n,9y,9m,9cに着脱可能に装着される。なお、カートリッジ支持部9は、筐体19から引き出し可能なトレイ部材であってもよい。
【0016】
各プロセスカートリッジ7n,7y,7m,7cは、4つの粉体収容部104n,104y,104m,104cに収容される粉体の種類を除いて実質的に共通の構成を備えている。即ち、各プロセスカートリッジ7n,7y,7m,7cは、像担持体である感光ドラム101、帯電器である帯電ローラ102、粉体を収容する粉体収容部104n,104y,104m,104c、及び粉体を用いて現像を行う現像ローラ105と含む。
【0017】
4つの粉体収容部のうち、図中右側3つの粉体収容部104y,104m,104cには、シートPに可視像を形成するためのトナー(第1の粉体、粉体現像剤)として、それぞれイエロー、マゼンタ、シアンの印刷用トナーTy,Tm,Tcが収容されている。これに対し、図中最も左側の粉体収容部104nには、印刷後に接着処理を行うためのトナー(第2の粉体)である粉末接着剤Tnが収容されている。粉体収容部104y,104m,104cは、いずれも印刷用トナーを収容する第1収容部の例であり、粉体収容部104nは粉末接着剤を収容する第2収容部の例である。また、プロセスカートリッジ7y,7m,7cは、いずれも印刷用トナーを用いてトナー像を形成する第1プロセスユニットの例であり、プロセスカートリッジ7nは、所定の塗布パターンで粉末接着剤の像を形成する第2プロセスユニットの例である。
【0018】
本実施例では、テキスト等の黒色の画像を印刷する場合は、イエロー(Ty)、マゼンタ(Tm)、シアン(Tc)のトナーを重畳したプロセスブラックで表現する。ただし、例えば画像形成ユニット1eにブラックの印刷用トナーを用いる5つ目のプロセスカートリッジを追加し、黒色の画像をブラックの印刷用トナーで表現できるようにしてもよい。これに限らず、画像形成装置1の用途に応じて印刷用トナーの種類及び数は変更可能である。
【0019】
スキャナユニット2は、プロセスカートリッジ7n,7y,7m,7cの下方、かつシートカセット8の上方に配置されている。スキャナユニット2は、各プロセスカートリッジ7n,7y,7m,7cの感光ドラム101にレーザ光Gを照射して静電潜像を書き込む本実施例の露光手段である。
【0020】
転写ユニット3は、中間転写体(二次的な像担持体)としての転写ベルト3aを備えている。転写ベルト3aは、二次転写内ローラ3b及び張架ローラ3cに巻き回されたベルト部材であり、外周面において各プロセスカートリッジ7n,7y,7m,7cの感光ドラム101に対向している。転写ベルト3aの内周側には、各感光ドラム101に対応する位置に一次転写ローラ4が配置されている。また、二次転写内ローラ3bに対向する位置に、転写手段としての二次転写ローラ5が配置されている。二次転写ローラ5と転写ベルト3aとの間の転写ニップ5Nは、転写ベルト3aからシートPにトナー像が転写される転写部(二次転写部)である。
【0021】
第1定着器6は、二次転写ローラ5の上方に配置されている。図9は第1定着器6の詳細図である。第1定着器6は、加熱部材としての筒状のフィルム(エンドレスベルト)6aと、フィルム6aの内面に接触するヒータ6a1と、フィルム6aを介してヒータ6a1と共に定着ニップ6Nを形成する加圧部材としての加圧ローラ6bとを有する。フィルム6a及び加圧ローラ6bは、シートPを挟持して回転する回転体対(第1回転体対)として機能する。フィルム6aは、ポリイミド、ポリアミド、PEEK等の耐熱樹脂、又はステンレス等の金属からなる厚さ30~70μmの基層を有する。フィルム6aは、基層上に、シリコーンゴム等からなる厚さ0.2~1mmの弾性層と、PFA、PTFE等のフッ素樹脂からなる厚さ5~30μmの離型層を設けたものである。最表層である離型層は、溶融したトナー及び粉末接着剤と接するフィルム6aの表面となり、定着工程を終えた後のトナー表面は、フィルム6aの表面の形状が転写されたものとなる。そのため、フィルム表面の表面粗さ(Rz値)は、十分滑らかになるよう6μm以下とした。ここで示した表面粗さ(Rz値)は、表面粗さ測定器SE-3400((株)小阪研究所製)を用いて測定した値を用いた。
【0022】
加圧ローラ6bは、鉄やアルミニウム等からなる芯金6b1と、シリコーンゴム等からなる厚さ2~4mmの弾性層6b2とを有する。加圧ローラ6bの最表面に、さらにPFA、PTFE等のフッ素樹脂からなる離型層を設けてもよい。
【0023】
加熱手段(第1加熱手段)としてのヒータ6a1は、アルミナ等からなるセラミックスを主成分とする薄板状の基板6a11に、通電により発熱するAg/Pd(銀パラジウム)等の発熱抵抗体6a12と絶縁保護層(本実施例ではガラス層)6a13を有する。基板6a11にはサーミスター等の外部当接型の温度検知素子6a2が当接しており、画像形成装置1に搭載された制御部としてのCPU6a3に通じている。ヒータ6a1は、発熱抵抗体6a12に給電することにより昇温する。その昇温が温度検知素子6a2で検知され、CPU6a3はトライアック6a4を介して発熱抵抗体6a12への通電を制御する。例えば温度検知素子6a2の検知温度が所定の設定温度より低いとヒータ6a1が昇温するように発熱抵抗体6a12に供給する電力量を上げ、設定温度より高いと降温するように電力量を下げるよう制御することで、ヒータ6a1は一定温度に保たれる。
【0024】
ヒータ6a1はLCP(液晶ポリマ)等の耐熱樹脂製の保持部材6a5に保持されている。保持部材6a5はフィルム6aの回転を案内するガイド機能も有している。保持部材6a5は、金属製のステー6a6に取り付けられた不図示のバネから加圧ローラ6bに近付く方向の力を加えられている。加圧ローラ6bは、不図示のバネ部材等の加圧手段により、総圧10~30kgfの圧力でフィルム6aを介してヒータ6a1方向に圧接している。これにより、加圧ローラ6bと、ニップ部形成ユニットを構成するヒータ6a1及び保持部材6a5との間に、シート搬送方向の幅が5~11mmの定着ニップ6Nが形成される。
【0025】
加圧ローラ6bは、不図示のモータから動力を受けて図9における矢印r1方向に回転する。そして加圧ローラ6bが回転することによってフィルム6aが従動して回転する。未定着トナー画像を担持するシートPは、定着ニップ6NにおいてシートPのトナー像及び粉末接着剤Tnを担持している面(画像面、像担持面)をフィルム6aの外面に密着させながらフィルム6aと共に定着ニップ6Nをシート搬送方向に搬送される。この挟持搬送過程において、ヒータ6a1の熱がフィルム6aを介してトナーに付与され、トナーが加熱・加圧されることでシートP上に溶融定着される。定着ニップ6Nを通過したシートPは、定着されたトナー画像を保持したまま、フィルム6aから曲率分離される。本構成の特徴として、フィルムとヒータの熱容量が特に小さく、保持部材6a5も断熱性の高い材料で構成されるため、少ない供給熱量でより早く、フィルム6aの表面を高温にすることが可能である。
【0026】
筐体19には、装置本体10からシートPを排出するための開口部である排出口12(第1の排出口)が設けられており、排出口12には排出ユニット34が配置されている。本実施例の排出手段である排出ユニット34は、第1排出ローラ34aと、中間ローラ34bと、第2排出ローラ34cと、を有するいわゆる三連ローラを使用している。また、第1定着器6と排出ユニット34との間には、シートPの搬送経路を切り替えるフラップ状のガイドである切替ガイド33が設けられている。切替ガイド33は、軸部33aを中心に先端33bが図中矢印c方向に往復するように回動可能である。
【0027】
装置本体10は、両面印刷を行うための機構を備えている。排出ユニット34には不図示のモータが接続され、中間ローラ34bの回転方向を正転及び逆転可能に構成されている。また、主搬送路1mに対してループ状に接続された搬送路としての両面搬送路1rが設けられている。主搬送路1mを通過する間に第1面に画像形成されたシートPは、時計方向に回動した切替ガイド33(破線位置)によって第1排出ローラ34aと中間ローラ34bとによって挟持搬送される。シートPの進行方向後端が切替ガイド33を通過した後、切替ガイド33が反時計方向に回動する(実線位置)と共に中間ローラ34bが逆転し、シートPは両面搬送路1rへと反転搬送される。そして、シートPが表裏を反転した状態で主搬送路1mを再び通過する間に、シートPの第2面に画像形成される。両面印刷後のシートPは、反時計方向に回動した切替ガイド33(実線位置)に案内され、中間ローラ34bと第2排出ローラ34cによって挟持搬送され、装置本体10から排出される。
【0028】
また、装置本体10において搬送ローラ8a、転写ニップ5N及び定着ニップ6Nを通る搬送経路は、シートPに対する画像形成が行われる主搬送路1mを構成している。主搬送路1mは、画像形成時の主走査方向(主搬送路1mを搬送されるシートの搬送方向に垂直なシートの幅方向)から見た場合に、画像形成ユニット1eに対して水平方向の一方側を通って下方から上方に延びている。言い換えると、本実施例の装置本体10は、主搬送路1mが略鉛直方向に延びる、いわゆる垂直搬送型(縦パス型)のプリンタである。なお、鉛直方向に見た場合、第1排出トレイ13、中間パス15及びシートカセット8は互いに重なっている。そのため、水平方向に関して排出ユニット34がシートPを排出するときのシートの移動方向は、水平方向に関してシートカセット8からシートPが給送されるときのシートの移動方向とは反対向きとなる。
【0029】
また、図1の視点(画像形成時の主走査方向に見た場合)において、後処理ユニット30の第2排出トレイ35を除いた本体部分の水平方向の占有範囲は、装置本体10の占有範囲に収まっていると好適である。このように後処理ユニット30を装置本体10の上方の空間に収めることで、接着印刷機能を備えた画像形成装置1を、通常の縦パス型プリンタと同程度の設置空間に設置することが可能となる。
【0030】
(後処理ユニット)
図2に示すように、後処理ユニット30は装置本体10の上部に取り付けられている。後処理ユニット30は、折り手段としての折り器31と、接着手段(第2の定着手段)としての第2定着器32とが、筐体(第2の筐体)39に収容されて一体化された後処理ユニットである。
【0031】
図10は、本実施例の後処理ユニット30の内部構成を示す概略図あり、折り器31及び第2定着器32を模式的に表している。本実施例における第2定着器32の構成は、図10に示すように第1の定着器6と同一の構成とする。つまり、第2定着器32は、加熱部材としての筒状のフィルム(エンドレスベルト)32bと、加圧部材としての加圧ローラ32aを有する。そして、第2定着器32は、折り器31によって折り畳まれたシートPを、フィルム32bと加圧ローラ32aのニップ部である接着ニップ32N(第2定着ニップ)で挟持搬送する。フィルム32b及び加圧ローラ32aは、シートPを挟持して回転する回転体対(第2回転体対)として機能する。フィルム32bの内面側には第1定着器6と同じように加熱手段としてのヒータ32b1と温度検知素子32b2とが設けられている。フィルム32bが矢印r2方向に回転する加圧ローラ32aに従動回転することで、接着ニップ32NにシートPが挟持されて搬送される。その過程でシートPが加熱及び加圧されることで、シートPに塗布されている粉末接着剤Tnが再び軟化し、シートPは折り畳まれた状態で接着される。
【0032】
また、後処理ユニット30は、トレイ切替ガイド13aを回転自在に保持する第1排出トレイ13と、中間パス15と、第2排出トレイ35とが設けられている。第1排出トレイ13は、後処理ユニット30の上面に設けられていると共に、画像形成装置1全体の上面(図1)に位置している。後処理ユニット30が備える各部の機能は後述する。
【0033】
後処理ユニット30には、筐体39を装置本体10の筐体19(第1の筐体)に対して位置決めするための位置決め部(例えば、筐体19の凹部に係合する凸形状)が設けられている。また、後処理ユニット30には、装置本体10とは別の駆動源及び制御部が設けられており、後処理ユニット30のコネクタ36と装置本体10のコネクタ37が結合することで装置本体10と電気的に接続される。これにより、後処理ユニット30は、装置本体10を介して供給される電力を用いて、装置本体10に設けられた制御部からの指令に基づいて動作する状態となる。
【0034】
(プロセスカートリッジ)
各プロセスカートリッジ7n,7y,7m,7cは、先述したように、4つの粉体収容部104n,104y,104m,104cに収容される粉体の種類を除いて実質的に共通の構成を備えている。ここでは代表してプロセスカートリッジ7nについて説明する。図8はプロセスカートリッジ7nの概略構成を表す断面図である。プロセスカートリッジ7nは、感光ドラム101等を備えた感光体ユニットCCと、現像ローラ105等を備えた現像ユニットDTと、から成り立っている。
【0035】
感光体ユニットCCには、不図示の軸受を介して、ドラム状に成形された電子写真感光体(像担持体)である感光ドラム101が回転可能に取り付けられている。また感光ドラム101は、不図示の駆動手段(駆動源)としてのモータの駆動力を受けることによって、画像形成動作に際して図中時計回り方向(矢印w)に回転駆動される。さらに感光体ユニットCCには、感光ドラム101の周囲に感光ドラム101を帯電するための帯電ローラ102、クリーニング部材103が配置されている。
【0036】
現像ユニットDTには、感光ドラム101と接触して図中反時計回り方向(矢印d)に回転する現像剤担持体としての現像ローラ105が設けられている。現像ローラ105と感光ドラム101は、対向部(接触部)において互いの表面が同方向に移動するようにそれぞれ回転する。
【0037】
また現像ユニットDTには、図中時計回り方向(矢印e)に回転する現像剤供給部材としての現像剤供給ローラ(以下、単に「供給ローラ106」という。)が配置されている。供給ローラ106と現像ローラ105は、対向部(接触部)において互いの表面が同方向に移動するようにそれぞれ回転する。供給ローラ106は、現像ローラ105上に粉末接着剤(プロセスカートリッジ7y,7m,7cの場合は、印刷用トナー)を供給する。同時に、供給ローラ106は、現像ローラ105上に残留した粉末接着剤(プロセスカートリッジ7y,7m,7cの場合は、印刷用トナー)を現像ローラ105から剥ぎ取る作用をなす。また、現像ユニットDTには、供給ローラ106によって現像ローラ105上に供給された粉末接着剤(プロセスカートリッジ7y,7m,7cの場合は、印刷用トナー)の層厚を規制する現像剤規制部材としての現像ブレード107が配置されている。
【0038】
粉体収容部104nには、粉体として粉末接着剤(プロセスカートリッジ7y,7m,7cの場合は、印刷用トナー)が収納されている。また粉体収容部104n内には、回転自在に支持された搬送部材108が設けられている。搬送部材108は、図中時計回り方向(矢印f)に回転して粉体収容部104n内に収納された粉体を撹拌すると共に、上記現像ローラ105や供給ローラ106が設けられた現像室109へと粉体を搬送する。
【0039】
ここで、感光体ユニットCC、現像ユニットDTをそれぞれ別体として、感光体ユニットカートリッジ、現像ユニットカートリッジとし、画像形成装置本体に着脱可能に構成することも可能である。また、感光体及び現像剤担持体を有するプロセスカートリッジとは別に、粉体収容部104及び搬送部材108だけを有し、装置本体に着脱可能な粉体カートリッジとして構成することも可能である。
【0040】
(印刷用トナー)
本実施例の印刷用トナーTm,Tc,Tyとしては、従来公知の印刷用トナーを用いることができる。その中でも、熱可塑性樹脂を結着樹脂として用いた印刷用トナーが好ましい。熱可塑性樹脂は特に限定されることはなく、ポリエステル樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、スチレンアクリル系樹脂などの従来印刷用トナーに用いられるものを使用することができる。これらの樹脂を複数含有しても良い。その中でも、スチレンアクリル系樹脂を用いた印刷用トナーがより好ましい。また、印刷用トナー(印刷用現像剤)は、着色剤、磁性体、荷電制御剤、ワックス、外部添加剤を含有しても良い。
【0041】
(粉末接着剤)
また、本実施例の粉末接着剤Tnとしては、熱可塑性樹脂を含有する粉末接着剤を用いることができる。熱可塑性樹脂は特に限定されることはなく、ポリエステル樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、スチレンアクリル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオレフィン、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン-アクリル酸共重合樹脂などの公知の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの樹脂を複数含有しても良い。
【0042】
また、粉末接着剤Tnは、さらにワックスを含有することが好ましい。ワックスとしては、アルコールと酸とのエステル類であるエステルワックス、パラフィンワックスなどの炭化水素系ワックスなど、公知のワックスを用いることができる。
【0043】
また、粉末接着剤Tnは、着色剤を含んでいても良い。この着色剤としては、ブラック用着色剤、イエロー用着色剤、マゼンタ用着色剤、及びシアン用着色剤など公知の着色剤が使用可能である。粉末接着剤中の着色剤の含有量は、1.0質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましい。さらに、粉末接着剤Tnは、磁性体、荷電制御剤、ワックス、外部添加剤を含有しても良い。
【0044】
電子写真方式を利用してシートPに粉末接着剤による接着部を形成するためには、粉末接着剤Tnの重量平均粒子径は、5.0μm以上30μm以下であることが好ましく、6.0μm以上20μm以下であることがより好ましい。なお、接着性を満たすものであれば、粉末接着剤Tnとして印刷用トナーを用いても構わない。
【0045】
(粉末接着剤の製造例)
以下、粉末接着剤Tnの製造方法を例示する。まず、下記の材料を用意した。
・スチレン 75.0部
・n-ブチルアクリレート 25.0部
・ポリエステル樹脂 4.0部
(重量平均分子量(Mw)20000、ガラス転移温度(Tg)75℃、酸価8.2mgKOH/gのポリエステル樹脂)
・エチレングリコールジステアレート 14.0部
(エチレングリコールとステアリン酸をエステル化させたエステルワックス)
・炭化水素ワックス(HNP-9、日本精蝋製) 2.0部
・ジビニルベンゼン 0.5部
【0046】
上記材料を混合した混合物を60℃に保温し、T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、500rpmで撹拌し、均一に溶解し、重合性単量体組成物を調製した。
【0047】
一方、高速撹拌装置クレアミックス(エム・テクニック社製)を備えた容器中に0.10mol/L-NaPO水溶液850.0部及び10%塩酸8.0部を添加し、回転数を15000rpmに調整し、70℃に加温した。ここに、1.0mol/L-CaCl水溶液127.5部を添加し、リン酸カルシウム化合物を含む水系媒体を調製した。
【0048】
水系媒体中に上記重合性単量体組成物を投入後、重合開始剤であるT-ブチルパーオキシピバレート7.0部を添加し、15000回転/分の回転数を維持しつつ10分間造粒した。その後、高速撹拌機からプロペラ撹拌翼に撹拌機を変え、還流しながら70℃で5時間反応させた後、液温85℃とし、さらに2時間反応させた。
【0049】
重合反応終了後、得られたスラリーを冷却し、さらに、スラリーに塩酸を加えpHを1.4にし、1時間撹拌することでリン酸カルシウム塩を溶解させた。その後、スラリーの3倍の水量で洗浄し、ろ過、乾燥の後、分級して粉末接着剤粒子を得た。
【0050】
その後、粉末接着剤粒子100.0部に対して、外添剤として、ジメチルシリコーンオイル(20質量%)を用いて疎水化処理されたシリカ微粒子(1次粒子の個数平均粒径:10nm、BET比表面積:170m/g)2.0部を加えた。そして、シリカ微粒子を加えた粉末接着剤粒子を、三井ヘンシェルミキサ(三井三池化工機株式会社製)を用い、3000rpmで15分間混合して粉末接着剤を得た。得られた粉末接着剤の重量平均粒子径は6.8μmであった。
【0051】
(印刷用トナーの製造例)
次に、印刷用トナーTy,Tm,Tcの製造方法を例示する。まず、下記の材料を用意した。
・スチレン 60.0部
・着色剤 6.5部
(C.I.PigmenT Blue 15:3、大日精化社製)
【0052】
上記材料をアトライタ(三井三池化工機株式会社製)に投入し、さらに直径1.7mmのジルコニア粒子を用いて、220rpmで5時間分散させて、顔料分散液を得た。
【0053】
さらに、次の材料を用意した。
・スチレン 15.0部
・n-ブチルアクリレート 25.0部
・ポリエステル樹脂 4.0部
(重量平均分子量(Mw)20000、ガラス転移温度(Tg)75℃、酸価8.2mgKOH/gのポリエステル樹脂)
・ベヘン酸ベヘニル 12.0部
(ベヘン酸とベヘニルアルコールをエステル化させたエステルワックス)
・ジビニルベンゼン 0.5部
【0054】
上記材料を混合し、顔料分散液に加えた。得られた混合物を60℃に保温し、T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、500rpmで撹拌し、均一に溶解、分散し、重合性単量体組成物を調製した。
【0055】
一方、高速撹拌装置クレアミックス(エム・テクニック社製)を備えた容器中に0.10mol/L-NaPO水溶液850.0部及び10%塩酸8.0部を添加し、回転数を15000rpmに調整し、70℃に加温した。ここに、1.0mol/L-CaCl水溶液127.5部を添加し、リン酸カルシウム化合物を含む水系媒体を調製した。
【0056】
水系媒体中に上記重合性単量体組成物を投入後、重合開始剤であるT-ブチルパーオキシピバレート7.0部を添加し、15000回転/分の回転数を維持しつつ10分間造粒した。その後、高速撹拌機からプロペラ撹拌翼に撹拌機を変え、還流しながら70℃で5時間反応させた後、液温85℃とし、さらに2時間反応させた。
【0057】
重合反応終了後、得られたスラリーを冷却し、さらに、スラリーに塩酸を加えpHを1.4にし、1時間撹拌することでリン酸カルシウム塩を溶解させた。その後、スラリーの3倍の水量で洗浄し、ろ過、乾燥の後、分級してトナー粒子を得た。
【0058】
その後、トナー粒子100.0部に対して、外添剤として、ジメチルシリコーンオイル(20質量%)を用いて疎水化処理されたシリカ微粒子(1次粒子の個数平均粒径:10nm、BET比表面積:170m/g)2.0部を加えた。そして、シリカ微粒子を加えたトナー粒子を、三井ヘンシェルミキサ(三井三池化工機株式会社製)を用い、3000rpmで15分間混合してトナーを得た。得られた印刷用トナーの重量平均粒子径は、6.5μmであった。
【0059】
(重量平均粒子径の測定方法)
印刷用トナーTy,Tm,Tc及び粉末接着剤Tnの重量平均粒子径は、以下のようにして算出する。測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター MulTisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター MulTisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いる。なお、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行う。
【0060】
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解させて濃度が1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
【0061】
なお、測定、解析を行う前に、以下のように専用ソフトの設定を行う。専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
【0062】
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)MulTisizer 3専用のガラス製250mL丸底ビーカーに電解水溶液200mLを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーチューブのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100mL平底ビーカーに電解水溶液30mLを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、及び有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を0.3mL加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「UlTrasonic Dispersion SysTem TeTora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に3.3Lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを2mL添加する。
(4)上記(2)のビーカーを前述超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調製する。
(5)上記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー又は粉末接着剤を、10mgになるよう少量ずつ電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となるように適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前述(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナー又は粉末接着剤を分散させた前述(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が5%となるように調製する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒子径を算出する。
【0063】
(画像形成時の動作)
次に、本実施例の画像形成装置1が行う画像形成動作について、図1図8を用いて説明する。図3図4は、画像形成装置1におけるシートの搬送経路を表す図である。図5(a~f)は、折り工程の内容を説明するための図である。
【0064】
画像形成装置1に対して印刷すべき画像のデータ及び印刷の実行指令が入力されると、画像形成装置1の制御部はシートPを搬送して画像を形成し、必要に応じて後処理ユニット30による後処理を施す一連の動作(画像形成動作)を開始する。画像形成動作では、まず、図1に示すように、シートPがシートカセット8から1枚ずつ給送され、搬送ローラ8aを介して転写ニップ5Nへ向けて搬送される。
【0065】
シートPの給送に並行して、プロセスカートリッジ7n,7y,7m,7cが順次駆動され、感光ドラム101が図中時計回り方向(矢印w)に回転駆動される。このとき感光ドラム101は、帯電ローラ102によって表面に一様な電荷を付与される。また、スキャナユニット2が、画像データに基づいて変調したレーザ光Gを各プロセスカートリッジ7n,7y,7m,7cの感光ドラム101に照射して、感光ドラム101の表面に静電潜像を形成する。次に、各プロセスカートリッジ7n,7y,7m,7cの現像ローラ105に担持された粉体によって、感光ドラム101上の静電潜像が粉体像として現像される。
【0066】
なお、粉末接着剤Tnによって現像されることで感光ドラム101上に形成される粉末接着剤層は、視覚情報の伝達を目的としない点で、図形やテキスト等の画像を記録媒体に記録するための印刷用トナーのトナー像(通常のトナー像)とは異なっている。ただし、シートPに所定の塗布パターンで粉末接着剤Tnを塗布するために、電子写真プロセスによって塗布パターンに応じた形状で現像された粉末接着剤Tnの層も「トナー像」の1つとして考えてもよい。
【0067】
転写ベルト3aは、図中反時計回り方向(矢印v)に回転する。各プロセスカートリッジ7n,7y,7m,7cにおいて形成されるトナー像は、感光ドラム101と一次転写ローラ4との間に形成される電界によって、感光ドラム101から転写ベルト3aに一次転写される。
【0068】
ここで、図1に示すように、転写ベルト3aの回転方向において、粉末接着剤Tnを用いるプロセスカートリッジ7nが4つのプロセスカートリッジの中で最も上流に位置する。また、プロセスカートリッジ7nから転写ベルト3aの回転方向下流側に向かって、イエロー、マゼンタ、シアンのプロセスカートリッジ7y,7m,7cが順に並んでいる。従って、4種類のトナー像が転写ベルト3a上で重なると、粉末接着剤Tnが最下層(転写ベルト3aに接触する層)となり、その上にイエロー(Ty)、マゼンタ(Tm)、シアン(Tc)の印刷用トナーが順に重なった状態となる。
【0069】
転写ベルト3aに担持されて転写ニップ5Nに到達したトナー像は、二次転写ローラ5と二次転写内ローラ3bとの間に形成される電界によって、主搬送路1mを搬送されてきたシートPに二次転写される。その際、トナー層の上下は反転する。即ち、転写ニップ5nを通過したシートPには、最下層(シートPに接触する層)からシアン(Tc)、マゼンタ(Tm)、イエロー(Ty)の印刷用トナーが重なり、さらにその上に粉末接着剤Tnの層が形成される。従って、シートPに転写されたトナー像において、粉末接着剤Tnの層が最表面となる。
【0070】
その後、未定着トナー画像を担持するシートPは、定着ニップ6NにおいてシートPの画像面側をフィルム6aの外面に密着させながらフィルム6aと一緒に定着ニップ6Nを挟持搬送されていく。この挟持搬送過程において、ヒータ6a1の熱がフィルム6aを介してシートPの画像面に加えられ、印刷用トナーTy,Tm,Tc及び粉末接着剤Tnが溶融し、シートP上に定着される。定着ニップ6Nを通過したシートPは、定着されたトナー画像を保持したまま、フィルム6aから曲率分離され、シートPに定着した画像が得られる。
【0071】
片面印刷・両面印刷に依らず、装置本体10より排出されるシートPは、図3図4に示すように、中間ローラ34bと第2排出ローラ34cにより挟持され、トレイ切替ガイド13aにより第1経路R1もしくは第2経路R2へと搬送される。
【0072】
図3に示す第1経路R1は、後処理ユニット30を使わない通常印刷のモードにおいて、第1定着器6を通過したシートPが排出ユニット34によって第1排出トレイ13に排出される経路である。図4に示す第2経路R2は、接着印刷のモードにおいて、第1定着器6を通過したシートPが排出ユニット34、折り器31及び第2定着器32を介して第2排出トレイ35に排出される経路である。
【0073】
第2経路R2における第1定着器6と折り器31との間には、中間パス15が設けられている。中間パス15は、画像形成装置1の上面部(天面部)を通るシート搬送路であり、第1排出トレイ13の下側で第1排出トレイ13と略平行に延びている。なお、中間パス15及び第1排出トレイ13は、水平方向に関して折り器31に向かって鉛直方向の上方に傾斜している。従って、折り器31の入口(下記のガイドローラ対(31c,31d)は、装置本体10の出口(中間ローラ34bと第2排出ローラ34cのニップ)よりも鉛直方向で上方に位置する。
【0074】
折り器31は、第1ガイドローラ31c、第2ガイドローラ31d、第1折りローラ31a及び第2折りローラ31bの4本のローラと、引き込み部31eと、を有している。第1ガイドローラ31c及び第2ガイドローラ31dは、折り器31の上流側の搬送パス(本実施例では中間パス15)から受け取ったシートPを挟持して搬送するガイドローラ対である。第1折りローラ31a及び第2折りローラ31bは、シートPを折り曲げながら送り出す折りローラ対である。
【0075】
なお、第2経路R2に沿ったシートの搬送方向における第2排出ローラ34cから第1ガイドローラ31cまでの間隔M(図1)は、折り処理前のシートPの搬送方向の全長L(図5(a))よりも短くなるように構成されている。言い換えると、第2排出ローラ34cから第1ガイドローラ31cまでの間隔Mにより、後処理ユニット30によって処理可能なシートの搬送方向の長さの下限が定まる。この構成により、排出ユニット34からガイドローラ対に滞りなくシートPが受け渡される。
【0076】
図5(a~f)に沿って折り器31による折り処理を説明する。折り処理を実行する場合、第1ガイドローラ31c及び第1折りローラ31aは図中時計回り方向に、第2ガイドローラ31d及び第2折りローラ31bは図中反時計回りに回転する。まず、排出ユニット34から送り出されたシートPの先端qが、図5(a)に示すようにガイドローラ対(31c,31d)に引き込まれる。シートPの先端qは、図5(b)に示すように、ガイド壁31fにより上向きに案内されて第1折りローラ31aに接触し、互いに対向している第2折りローラ31bと第1ガイドローラ31cに引き込まれて引き込み部31eの壁31gに当接する。
【0077】
ガイドローラ対(31c,31d)によるシートPの引き込みに連れて、先端qは壁31gに摺接しながら引き込み部31eの奥へと進む。やがて、先端qは図5(c)に示すように引き込み部31eの端部31hに突き当たる。なお、引き込み部31eは、中間パス15の上方側で中間パス15と略平行に延びた空間を形成しており、図5(c)の段階で、シートPは第1ガイドローラ31cに巻き付いてU字型に曲がった状態となる。
【0078】
図5(c)の状態からガイドローラ対(31c,31d)によってさらにシートPが引き込まれると、図5(d)に示すように中腹部rでたわみが生じはじめる。やがて図5(e)に示すように、中腹部rが第1折りローラ31aに接することで、第2折りローラ31bから受ける摩擦力により折りローラ対(31a,31b)のニップ部に引き込まれる。そして、図5(f)に示すように、中腹部rを折り目として折り畳まれた状態で、折りローラ対(31a,31b)によって中腹部rを先頭にシートPが排出される。
【0079】
ここで、引き込み部31eの深さN(図5(e))、即ち折りローラ対(31a,31b)のニップ部から引き込み部31eの端部31hまでの距離は、シートPの全長Lの半分の長さに設定している。これにより、折り器31は、シートPを半分の長さで二つ折りにする処理(中折り)を実行可能である。なお、引き込み部31eの深さNを変えることで、折り目の位置を任意に変えることができる。
【0080】
以上説明した折り器31は折り手段の一例であり、例えばシートPにブレードを押し当ててローラ対のニップ部に押し込むことで折り目を形成する折り機構を用いてもよい。また、折り処理の内容は二つ折りに限らず、例えばZ折りや三つ折りのようにシート搬送方向の複数の位置でシートを折る折り機構を用いてもよい。この場合、第1定着器6から排出されるときのシートPの先端側の部分が、折り器31で折られた状態においてシートの外側に露出し、かつ、第2定着器32の熱源側であるフィルム32bと接触しつつ接着ニップ32Nを通過する構成とする。
【0081】
なお、本実施例の折り器31は、回転するローラと固定された引き込み部31eで構成されるため、往復運動をするブレードを用いる折り機構に比べて駆動機構の簡素化が可能である。また、本実施例の折り器31は、4本のローラ以外に、シート長さの半分の深さNを有する引き込み部31eを設ければよいため、後処理ユニット30の小型化が可能である。
【0082】
折り器31で折り畳まれたシートPは、第2定着器32に搬送され、接着ニップ32Nで挟持搬送されながら加熱・加圧される接着処理を受ける。シートPは、接着処理(粉末接着剤が塗布された画像面に対する2回目の熱定着)を受けることで、図10に示すように折り畳まれた状態のまま接着される。即ち、シートPが接着ニップ32Nを通過する際にシートP上の粉末接着剤Tnが加熱されて再び軟化した状態で加圧されることで、粉末接着剤Tnを介してシートPの内側の面同士が結合(接着)する。
【0083】
第2定着器32による接着処理を受けたシートPは、図4に示すように、後処理ユニット30の筐体39に設けられた排出口32z(第2の排出口)から図中左側に排出される。そして、装置本体10の左側面に設けられた第2排出トレイ35(図1参照)に収納される。以上で、シートPが第2経路R2を搬送される場合の画像形成の動作が終了する。
【0084】
図7(a)は、粉末接着剤Tnの塗布パターンの例を表し、図7(b)は完全接着の成果物(画像形成装置1の出力物)である接着印刷物の例である紙袋54を表している。この場合、画像形成ユニット1eは、シートPが折り畳まれたときに折り目53bを含めた三辺が結合されるように、コ字状の領域53aに粉末接着剤Tnを塗布する。そして、領域53aに塗布された粉末接着剤Tnの層が互いに向かい合うようにシートPが折り畳まれた後に接着処理が行われることで、一辺が開口部となった図7(b)の紙袋54が形成される。
【0085】
上記のように本実施例の画像形成装置1は、プレプリント紙ではない白紙等の原紙から、接着処理によって接着された成果物を出力することができる。なお、シートPに対する粉末接着剤Tnの塗布パターンによって、折り畳まれたシートPの結合箇所を変えることが可能となる。例えば文書を封入するための封筒や、給与明細書のように後で剥がすことを前提にした半接着の成果物を作成可能である。また、画像形成装置1が印刷用トナーを用いて記録する画像には、プレプリント紙を用いる場合のフォーマット(不変部分)と、個人情報等の可変部分とを含めることができる。また、プレプリント紙を記録媒体として使用し、可変部分の印刷処理と接着処理を行う用途で本実施例の画像形成装置1を使用すてもよい。
【0086】
(袋の製作動作)
本実施例の画像形成装置では、印刷用トナーを用いてシートPの片面又は両面に画像を記録する動作に並行して、所定の塗布パターンで粉末接着剤Tnを塗布し、折り処理及び接着処理を施した状態の成果物を出力することが可能である。従って、プレプリント紙ではない白紙等の原紙から、圧着処理によって圧着されかつ印刷情報を付加した成果物を出力することができる。図7(a)は、粉末接着剤を用いた接着処理によって袋状の成果物の一例である封筒を形成すると共に、封筒の表面又は裏面に印刷用トナーで画像53cを同時に記録した成果物の一例である。画像53cの例は、会社のロゴや宛先等である。
【0087】
このような成果物を出力する場合、原紙として用いるシートPの一方の面が成果物の外側となり、他方の面が成果物の内側となる。図9に示したように、本実施例の画像形成装置においては、両面印刷における第1面の画像形成動作として所定の塗布パターンで粉末接着剤Tnを塗布した後、第2面の画像形成動作として印刷用トナーで外側面用の画像53cを形成すれば良い。
【0088】
(定着工程と接着工程の条件設定)
この際、接着工程(第2の定着工程、第2の加熱工程)の温度や電力の条件によっては図7(b)の53dに示すような、ホットオフセットと呼ばれる画像不良が発生してしまうことがある。ホットオフセットは、以下のような原因で発生する。
【0089】
図10に示すように、粉末接着剤Tnは折り畳んだシートPの内側の面に形成されている。この粉末接着剤Tnを昇温させるために第2定着器32のヒータ32b1の温度を上げると、フィルム32bの温度も当然高くなる。フィルム32bの温度が過度に高くなってしまうと、フィルム32bに直接接触する(つまり、シートPの外側の面に記録されている)印刷用トナーの画像53cが、過度に溶融し液体状になり、フィルム32bに汚れとして付着してしまう。付着した汚れはフィルム32bが一回転した後にシートPに再付着し、図7(b)の画像不良53dとしてユーザーに認知される。このホットオフセットの発生を防止するためには、粉末接着剤Tnに必要な熱量を供給する一方で、第2定着器32のヒータ32b1の温度が高くなりすぎないようにする必要がある。すなわち、ホットオフセットと接着強度は、通常、トレードオフの関係にある。
【0090】
本実施例では、ホットオフセットの抑制と接着性との両立を図るため、第1定着器6から排出されるときのシートPの先端側が、折り器31で折られた後に第2定着器32の熱源側の部材であるフィルム6aと接触する配置を採用している。ここでいう「第1定着器6から排出されるとき」とは、第1面に粉末接着剤Tnが既に塗布されたシートの第2面に印刷用トナーのトナー像が転写された後、トナー像の定着を行うために第1定着器6を通過して排出されるときを指す。
【0091】
具体的には、定着ニップ6Nから折り器31へ向けてシートPが搬送されるときのシートPの先端(図5(a~d)及び図9の「q」)から、折り器31で折られた折り目(図5(e、f)及び図10の「r」)までの範囲を、シートPの先端側の部分である第1部分P1とする。また、本実施例ではシートPを二つ折りとするため、折り目からシートPの後端までの範囲を、シートPの後端側の部分である第2部分P2とする。言い換えると、第1部分P1は、シートPが第1定着器6を通過して折り器31へ向けて搬送される際に、先に定着ニップ6Nを通過する部分であり、第2部分P2は定着ニップ6Nを後から通過する部分である。
【0092】
図10に示すように、第1部分P1は、折り器31によってシートPが折り畳まれた状態でシートPの厚さ方向の一方側に露出する。また、第2部分P1は、折り器31によってシートPが折り畳まれた状態でシートPの厚さ方向の他方側に露出する。つまり、折り器31は、第1定着器6から折り器31へ向けて搬送されるシートPを、第1部分P1及び第2部分P2の粉末接着剤Tnが塗布された面(両面印刷の第2面)同士が向かい合うように二つ折りにする。そして、シートPが第2定着器32を通過する際に、第1部分P1が加熱部材としてのフィルム6aと接触し、第2部分P2が加圧部材としての加圧ローラ32aと接触するように、フィルム32b及び加圧ローラ32aが配置されている。このような配置の利点については以下で詳しく説明する。
【0093】
本実施例において、第1定着器6と第2定着器32のシート搬送速度は、同じ速度(具体的には210mm/sec)とした。また、ホットオフセットの抑制と接着性とを高いレベルで両立させるため、第1定着器6のヒータ6a1の目標温度(ヒータ温調温度)は170℃、第2定着器32のヒータ32b1の目標温度(ヒータ温調温度)は220℃とした。
【0094】
(ホットオフセットの抑制及び接着性の検証)
次に、比較例1と本実施例に関して、接着性とホットオフセットについて評価を行った。図17図18を用いて、比較例1について説明する。本実施例との違いは、第2定着器32における加熱部材と加圧部材の配置を入れ替えた点である。即ち、本比較例では、鉛直方向で上方側に加圧部材としての加圧ローラ32fが配置され、下方側に加熱部材としてのヒータ32e1を有するフィルム32eが配置されている。この配置により、比較例1では第1定着器6から排出され折り器31に搬送された際のシートPの先端側が、第2定着器32の加圧部材としての加圧ローラ32fと接触する。言い換えると、本比較例では、第1定着器6から排出されるときのシートPの先端側の部分(第1部分P1)が非熱源側の部材である加圧ローラ32fと接触する。また、第1定着器6から排出されるときのシートPの後端側の部分(第2部分P2)が熱源側の部材であるフィルム32eと接触する。画像形成装置のその他の構成は実施例1と共通である。
【0095】
評価を行う際のシートPとしては、キヤノン株式会社製の高白色用紙GF-C081(坪量81.4g/m)を用いた。接着強度の評価方法としては、袋の接着面に対して手で引きはがす方向に力を加えた際に接着面同士が接着を維持できるか否かを観察した。その際全く接着していなかったものを×、接着面がはがれてしまうものを△、先に紙が破れてしまい接着面がはがれなかったものを〇とした。また、ホットオフセットの評価として、ホットオフセットが全く発生していなかったものを○、僅かに発生していたものを△、発生していて画像品質として問題となるレベルを×とした。
【0096】
【表1】
【0097】
表1に示すように、本実施例では接着性とホットオフセットについて良好な結果が得られた。一方で、比較例1においては、接着性とホットオフセットを実施例1と同程度の水準で両立できる温調温度が無いことが分かる。この結果の差については、次のように考えられる。
【0098】
折られた状態のシートPが第2定着器32を通過するとき、第1定着器6から排出されるときのシートPの先端側の部分(第1部分P1)は、第1定着器6から排出されるときのシートPの後端側の部分(第2部分P2)に比べて、通常、温度が低下している。これは、第1部分P1の方が、定着ニップ6Nを通過してから接着ニップ32Nに到達するまでの間に、搬送ローラや搬送ガイド等との接触並びに搬送路内の雰囲気温度との差によって冷却されやすいからである。例えば、本実施例では、第1部分P1は折り器31の引き込み部31eに引き込まれて引き込み部31eの周壁部と接触して熱を奪われる一方で、第2部分P2は引き込み部31eを経由しない。また、例えばシートPの搬送途中で第1部分P1及び第2部分P2が同じ搬送ガイドに接触する場合、第1部分P1は搬送ガイドに熱を奪われやすく、第2部分P2は第1部分P1の熱で温まった搬送ガイドと接触するため温度が低下しにくい。また、第1部分P1の方が第2部分P2に比べて定着ニップ6Nの通過から接着ニップ32N到達までの経過時間が長いため、放熱が進みやすい。
【0099】
本実施例の構成では、第2定着器32到達時の温度が第2部分P2より低い第1部分P1が、第2定着器32の熱源側の部材であるフィルム32bと接触することになる。ヒータ32b1の熱は、フィルム32bを介してシートPの第1部分P1に伝わり、さらに第1部分P1を介してシートPの内側の接着面に塗布された粉末接着剤Tnに伝わる。粉末接着剤Tnが十分な接着強度を得るために適切な温度まで上昇する間に、第1部分P1上の印刷用トナーの画像53cの温度も上昇する。しかし、接着ニップ32N突入前の温度が比較的低いため、画像53cの温度が過度に上昇する前に粉末接着剤Tnの温度を接着に適した温度まで加熱することができる。この結果、第1部分P1上の画像53cによるホットオフセットの発生を抑制しつつ、粉末接着剤TnによってシートPの接着面同士を強固に接着できる。なお、第2部分P2上の画像53cについては、熱源側とは反対側の部材である加圧ローラ32aと接するため、ホットオフセットの懸念は小さい。
【0100】
一方、比較例の構成では、第2定着器32到達時の温度が第1部分P1より高い第2部分P2が、第2定着器32の熱源側の部材であるフィルム32bと接触することになる。この場合、ヒータ32b1の熱は、フィルム32bを介してシートPの第2部分P2に伝わり、さらに第2部分P2を介してシートPの内側の接着面に塗布された粉末接着剤Tnに伝わる。このとき、粉末接着剤Tnが十分な接着強度を得るために適切な温度まで上昇するように第2定着器の温調温度を高く設定すると、第2部分P2上の印刷用トナーの画像53cの温度が過度に上昇してホットオフセットが生じやすくなる。ホットオフセットを抑制するために第2定着器の温調温度を低く設定すると、粉末接着剤Tnの温度が十分に上昇しない結果、良好な接着性が得られにくい。このように、比較例の構成では、接着性とホットオフセットの抑制とを高い水準で両立することは難しいことが分かる。この結果は、第1定着器6のヒータ温調温度を160℃~180℃の範囲で変更して定着処理においてシートPに加える熱を調整した場合でも、同様の傾向であった。
【0101】
以上説明した通り、本実施例の構成によれば、ホットオフセットの抑制と十分な接着性との両立がより容易になることが分かる。
【実施例2】
【0102】
実施例2は、折り器38及び第2定着器32の構成が実施例1と異なっている。以下、実施例1と実質的に同一の構成及び作用を有する要素については、実施例1と共通の符号を付して説明を省略する。
【0103】
図11は、本実施例に係る画像形成装置1の断面構成を表す概略図である。折り器38を構成するローラ部材(38a~38d)及び引き込み部38e並びに中間パス15eの位置関係は、図1に示す実施例1の構成と異なっている。
【0104】
図12図13は、画像形成装置1におけるシートの搬送経路を表す図である。図12に示す第1経路R1は、後処理ユニット30を使わない通常印刷のモードにおいて、第1定着器6を通過したシートPが排出ユニット34によって第1排出トレイ13に排出される経路である。図13に示す第2経路R2は、接着印刷のモードにおいて、第1定着器6を通過したシートPが排出ユニット34、折り器38及び第2定着器32を介して第2排出トレイ35に排出される経路である。
【0105】
第2経路R2における第1定着器6と折り器38との間には、中間パス15が設けられている。中間パス15は、画像形成装置1の上面部(天面部)を通るシート搬送路であり、第1排出トレイ13の下側で第1排出トレイ13と略平行に延びている。なお、中間パス15及び第1排出トレイ13は、水平方向に関して折り器38に向かって鉛直方向の上方に傾斜している。従って、折り器38の入口(下記のガイドローラ対(38c,38d)は、装置本体10の出口(中間ローラ34bと第2排出ローラ34cのニップ)よりも鉛直方向で上方に位置する。
【0106】
折り器38は、第1ガイドローラ38c、第2ガイドローラ38d、第1折りローラ38a及び第2折りローラ38bの4本のローラと、引き込み部38eと、を有している。第1ガイドローラ38c及び第2ガイドローラ38dは、折り器38の上流側の搬送パス(本実施例では中間パス15)から受け取ったシートPを挟持して搬送するガイドローラ対である。第1折りローラ38a及び第2折りローラ38bは、シートPを折り曲げながら送り出す折りローラ対である。
【0107】
なお、第2経路R2に沿ったシートの搬送方向における第2排出ローラ34cから第1ガイドローラ38cまでの間隔M(図11)は、折り処理前のシートPの搬送方向の全長L(図14(a))よりも短くなるように構成されている。言い換えると、第2排出ローラ34cから第1ガイドローラ38cまでの間隔Mにより、後処理ユニット30によって処理可能なシートの搬送方向の長さの下限が定まる。この構成により、排出ユニット34からガイドローラ対に滞りなくシートPが受け渡される。
【0108】
図14(a~f)に沿って折り器38による折り処理を説明する。折り処理を実行する場合、第1ガイドローラ38c及び第1折りローラ38aは図中時計回り方向に、第2ガイドローラ38d及び第2折りローラ38bは図中反時計回りに回転する。まず、排出ユニット34から送り出されたシートPの先端qが、図14(a)に示すようにガイドローラ対(38c,38d)に引き込まれる。シートPの先端qは、図14(b)に示すように、ガイド壁38fにより下向きに案内されて第1折りローラ38aに接触し、互いに対向している第1折りローラ38aと第2ガイドローラ38dに引き込まれて引き込み部38eの壁38gに当接する。
【0109】
ガイドローラ対(38c,38d)によるシートPの引き込みに連れて、先端qは壁38gに摺接しながら引き込み部38eの奥へと進む。やがて、先端qは図14(c)に示すように引き込み部38eの端部38hに突き当たる。なお、引き込み部38eは、中間パス15の下方側で中間パス15と略平行に延びた空間を形成しており、図14(c)の段階で、シートPは第2ガイドローラ38dに巻き付いてU字型に曲がった状態となる。
【0110】
図14(c)の状態からガイドローラ対(38c,38d)によってさらにシートPが引き込まれると、図14(d)に示すように中腹部rでたわみが生じはじめる。やがて図14(e)に示すように、中腹部rが第2折りローラ38bに接することで、第2折りローラ38bから受ける摩擦力により折りローラ対(38a,38b)のニップ部に引き込まれる。そして、図14(f)に示すように、中腹部rを折り目として折り畳まれた状態で、折りローラ対(38a,38b)によって中腹部rを先頭にシートPが排出される。
【0111】
ここで、引き込み部38eの深さN(図14(e))、即ち折りローラ対(38a,38b)のニップ部から引き込み部38eの端部38hまでの距離は、シートPの全長Lの半分の長さに設定している。これにより、折り器38は、シートPを半分の長さで二つ折りにする処理(中折り)を実行可能である。なお、引き込み部38eの深さNを変えることで、折り目の位置を任意に変えることができる。
【0112】
以上説明した折り器38は折り手段の一例であり、例えばシートPにブレードを押し当ててローラ対のニップ部に押し込むことで折り目を形成する折り機構を用いてもよい。また、折り処理の内容は二つ折りに限らず、例えばZ折りや三つ折りを実行する折り機構を用いてもよい。なお、本実施例の折り器38は、回転するローラと固定された引き込み部38eで構成されるため、往復運動をするブレードを用いる折り機構に比べて駆動機構の簡素化が可能である。また、本実施例の折り器38は、4本のローラ以外に、シート長さの半分の深さNを有する引き込み部38eを設ければよいため、後処理ユニット30の小型化が可能である。
【0113】
図15は第1定着器6の詳細図である。本実施例の画像形成装置においては、両面印刷における第1面の画像形成動作として印刷用トナーで外側面用の画像53cを形成した後、第2面の画像形成動作として所定の塗布パターンで粉末接着剤Tnを塗布すれば良い。
【0114】
図16は、本実施例の後処理ユニット30の内部構成を示す概略図あり、折り器38及び接着手段としての第2定着器32を模式的に表している。接着印刷モードにおいて、折り器38を通過したシートPは、図16に示すように第2定着器32に搬送される。第2定着器32は、第1定着器6と同様に熱定着方式の構成を有する。即ち、第2定着器32は、加熱部材としてのヒータ32c1を有す筒状のフィルム(エンドレスベルト)32cと、加圧部材としての加圧ローラ32dからなる構成となっている。
【0115】
ここで、ヒータ32c1を有するフィルム32cが搬送路の下方側に配置され、加圧ローラ32dが搬送路の上方側に配置される点で実施例1の構成と異なっている。このため、図15及び図16に示すように、本実施例でも、第1定着器6から排出されるときのシートPの先端側の第1部分P1が、折り器38で折られた後に第2定着器32の熱源側の部材であるフィルム6aと接触する配置となっている。同様に、本実施例でも、第1定着器6から排出されるときのシートPの後端側の第2部分P2が、折り器38で折られた後に第2定着器32の非熱源側の部材である加圧ローラ32dと接触する。
【0116】
(定着工程と接着工程の条件設定)
本実施例では、ホットオフセットの抑制と接着性とを高いレベルで両立させるため、第1定着器6のヒータ6a1の目標温度(ヒータ温調温度)は170℃、第2定着器32のヒータ32c1の目標温度(ヒータ温調温度)は220℃とした。
【0117】
(ホットオフセットの抑制及び接着性の検証)
次に、比較例2と本実施例に関して、接着性とホットオフセットについて評価を行った。図19図20を用いて、比較例2について説明する。本実施例との違いは、第2定着器32における加熱部材と加圧部材の配置を入れ替えた点である。即ち、本比較例では、鉛直方向で下方側に加圧部材としての加圧ローラ32gが配置され、上方側に加熱部材としてのヒータ32h1を有するフィルム32hが配置されている。この配置により、比較例1では第1定着器6から排出され折り器38に搬送された際のシートPの先端側が、第2定着器32の加圧部材としての加圧ローラ32fと接触する。言い換えると、本比較例では、第1定着器6から排出されるときのシートPの先端側の部分(第1部分P1)が非熱源側の部材である加圧ローラ32fと接触する。また、第1定着器6から排出されるときのシートPの後端側の部分(第2部分P2)が熱源側の部材であるフィルム32hと接触する。画像形成装置のその他の構成は実施例1と共通である。また、検証方法については、実施例1の表1で示した検証試験と同様とする。
【0118】
【表2】
【0119】
表2に示すように、本実施例では接着性とホットオフセットについて良好な結果が得られた。一方で、比較例2においては、接着性とホットオフセットを実施例2と同程度の水準で両立できる温調温度が無いことが分かる。この結果の差については、実施例1と同様に、第1部分P1の方が第2部分P2に比べて第1定着器6の通過から第2定着器32への到達までの期間に冷却されやすいからだと考えられる。つまり、本実施例では、接着ニップ32N突入時の温度が低い第1部分P1の側からシートPを加熱するため、第1部分P1の印刷用トナー像が過度に溶融する前に粉末接着剤Tnを接着に適した温度まで上昇させることが出来る。一方、比較例2では、接着ニップ32N突入時の温度が高い第2部分P2の側からシートPを加熱するため、ヒータ温調温度を高くするとホットオフセットが発生しやすくなり、ヒータ温調温度を低くすると十分な接着性が得られにくい。この結果は、第1定着器6のヒータ温調温度を160℃~180℃の範囲で変更して定着処理においてシートPに加える熱を調整した場合でも、同様の傾向であった。
【0120】
以上説明した通り、本実施例の構成によれば、ホットオフセットの抑制と十分な接着性との両立がより容易になることが分かる。
【0121】
また、実施例1と比較すると、両面印刷における第2面の画像形成時に、粉末接着剤Tnを塗布すればよいことになる。そのため、実施例1と比べて、粉末接着剤Tnの温度が比較的高い状態のまま、折り器38での折り工程及び第2定着器32での接着工程を進めることができる。そのため、本実施例は、実施例1と比べて接着性について有利であり、例えば第2定着器32のヒータ温調温度をより低く設定しても十分な接着性が得られやすい。
【0122】
(その他の実施形態)
実施例1,2ではクイックスタート性に優れるフィルム方式の像加熱装置を第1定着器6及び第2定着器32として採用しているが、定着手段及び接着手段の構成はこれに限らない。例えば加圧ローラ6b,32aに圧接する加熱ローラを介してシートP上のトナー及び粉末接着剤を加熱する装置を第1定着器6又は第2定着器32として用いてもよい。加熱ローラは、例えば、金属製の円筒の外周部にシリコーンゴム等の弾性層及びフッ素樹脂等の離型層を形成したものである。また、フィルム方式におけるニップ形成ユニットは、ヒータがフィルムの内面に直接接触するものに限らず、ヒータが鉄合金やアルミ等の熱伝導性が高いシート材を介してフィルムに接触する構成であってもよい。また、加熱部材の加熱手段は発熱抵抗体を用いたものに限らず、例えばハロゲンランプ又は誘導加熱機構であってもよい。
【符号の説明】
【0123】
1…画像形成装置/1e…画像形成手段(画像形成ユニット)/6…定着手段(第1定着器)/31,38…折り手段(折り器)/32…接着手段(第2定着器)/32a,32d…加圧部材(加圧ローラ)/32b,32c…加熱部材(フィルム)/32N…ニップ部(接着ニップ)/Tn…粉末接着剤/Ty,Tm,Tc…印刷用トナー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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