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特許7562352竹粉末含有袋用フィルムの製造方法、ならびに袋の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】竹粉末含有袋用フィルムの製造方法、ならびに袋の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20240930BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20240930BHJP
   C08L 97/02 20060101ALI20240930BHJP
   C08L 23/04 20060101ALI20240930BHJP
   B65D 30/02 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
C08J5/18 CES
C08J3/20 Z
C08L97/02
C08L23/04
B65D30/02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020160086
(22)【出願日】2020-09-24
(65)【公開番号】P2022053312
(43)【公開日】2022-04-05
【審査請求日】2023-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】520357198
【氏名又は名称】諸藤 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(72)【発明者】
【氏名】諸藤 俊郎
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106916365(CN,A)
【文献】特開2016-023282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/18
C08J 3/20
C08L 97/02
C08L 23/04
B65D 30/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
竹粉末と相溶化剤とを混合し、加熱乾燥した第一の組成物を得る第一の混合工程と、
前記第一の組成物とポリエチレン樹脂とを混合し、混練してペレット化し乾燥した第二の組成物を得る第二の混合工程と、
前記第二の組成物をインフレーション成形したフィルムを得る成形工程とを有する、竹粉末含有袋用フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記相溶化剤が、低分子量エチレン・プロピレン共重合物、エチレンプロピレン共重合物の無水マレイン酸酸化物、および無水マレイン酸変性高密度ポリエチレンからなる群から選択される少なくとも1以上を含む請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記第一の混合工程が、前記竹粉末を70~95質量部と、前記相溶化剤を5~30質量部とを含む質量比率で混合し、
加熱温度70~120℃で30分以上加熱乾燥するものである請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記乾燥した後の前記第一の組成物の水分含有量が、0.5質量%以下である請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記第二の混合工程が、前記第一の組成物を3~35質量部と、前記ポリエチレン樹脂を65~97質量部とを含む質量比率で混合し、
溶融温度150~190℃で加熱混練してペレット化し、加熱温度70~120℃で30分以上乾燥するものである請求項1~4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記成形工程が、前記第二の組成物のペレット40~100質量部と、ポリエチレン樹脂のペレット0~60質量部とを、混合して成形するものである請求項1~5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
前記竹粉末が、180~320℃で過熱水蒸気処理され、平均繊維長400μm以下である請求項1~6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の竹粉末含有袋用フィルムを、ボトムシールまたはサイドシールで溶着部を設ける加工を行う加工工程を有する袋の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、竹粉末を用いた竹粉末含有袋用フィルムおよびその製造方法に関する。また、この袋用フィルムを用いた袋やその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
竹は、日本国内にも広く分布している植物である。竹は、竹林などとして、庭園を構成する要素の一つとして、風光明媚な景観にも利用されている。また、その加工性や強度、耐候性を利用して産業上も広範に利用されている。他方で、繁殖力が高く成長速度も速く、他の植物の成長を阻害したり防災効果は低いと考えられていることから、放置された竹林・竹藪の対策も問題となっている。このような竹を工業用の資材として利用することも検討されている。
【0003】
特許文献1は、熱重量減少の微分曲線において、180~320℃の温度範囲に実質的にピークを有さず、300~400℃の温度範囲にピークを有し、繊維長1000μm以下の繊維の含有量が80質量%以上であることを特徴とする竹繊維や、それを用いた複合材の製造方法等を開示している。
【0004】
特許文献2は、繊維長250μm以下の成分が80質量%以上で63~250μmの長さ範囲の短繊維を10質量%以上含む竹粉末末とプラスチックとを1:9~8:2の重量比で含有する組成物を溶融成形し、比重が1~2の範囲であることを特徴とする敷設用成形体を開示している。
【0005】
特許文献3は、熱可塑性プラスチックと平均アスペクト比が5以上の竹由来の粉体が質量比で80:20~30:70の範囲で混合されて押出成形又は射出成形されてなり、竹由来の粉体が長辺を溶融流動方向に配向され、溶融流動方向の熱膨張係数が30ppm/℃以下であることを特徴とする複合成形体を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-40701号公報
【文献】特開2014-9539号公報
【文献】特開2015-921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1~3は粉末状に加工した竹繊維を用いる技術に関する。これらは、適宜、竹繊維(竹粉末)を乾燥や焼成して用いている。これにより、竹を再利用でき、プラスチック樹脂が主たるものを用いるよりもカーボンオフセットに貢献することができる。しかし、このような組成物を用いて製造されているものは射出成形等で成形できるようなケースやカップ、トレー、カトラリーなどの厚みが厚いものに限られていた。そして、袋などのフィルム状のものは成形できていなかった。これは、竹の繊維を含み、この繊維が袋などに成形するときのフィルムの厚みを考慮すると破断起点となりやすく連続成形が難しいことや、成形温度の管理などが難しいことが理由と考えられる。
【0008】
係る状況下、本発明は、竹粉末を含み、袋の成形に適したフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
【0010】
<1> 竹粉末と相溶化剤とを混合し、加熱乾燥した第一の組成物を得る第一の混合工程と、
前記第一の組成物とポリエチレン樹脂とを混合し、混練してペレット化し乾燥した第二の組成物を得る第二の混合工程と、
前記第二の組成物をインフレーション成形したフィルムを得る成形工程とを有する、竹粉末含有袋用フィルムの製造方法。
<2> 前記相溶化剤が、低分子量エチレン・プロピレン共重合物、エチレンプロピレン共重合物の無水マレイン酸酸化物、および無水マレイン酸変性高密度ポリエチレンからなる群から選択される少なくとも1以上を含む前記<1>に記載の製造方法。
<3> 前記第一の混合工程が、前記竹粉末を70~95質量部と、前記相溶化剤を5~30質量部とを含む質量比率で混合し、加熱温度70~120℃で30分以上加熱乾燥するものである前記<1>または<2>に記載の製造方法。
<4> 前記乾燥した後の前記第一の組成物の水分含有量が、0.5質量%以下である前記<3>に記載の製造方法。
<5> 前記第二の混合工程が、前記第一の組成物を3~35質量部と、前記ポリエチレン樹脂を65~97質量部とを含む質量比率で混合し、溶融温度150~190℃で加熱混練してペレット化し、加熱温度70~120℃で30分以上乾燥するものである前記<1>~<4>のいずれかに記載の製造方法。
<6> 前記成形工程が、前記第二の組成物のペレット40~100質量部と、ポリエチレン樹脂のペレット0~60質量部とを、混合して成形するものである前記<1>~<5>のいずれかに記載の製造方法。
<7> 前記竹粉末が、180~320℃で過熱水蒸気処理され、平均繊維長400μm以下である前記<1>~<6>のいずれかに記載の製造方法。
<8> 前記<1>~<7>のいずれかに記載の竹粉末含有袋用フィルムを、ボトムシールまたはサイドシールで溶着部を設ける加工を行う加工工程を有する袋の製造方法。
<9> 竹粉末を3~30質量部、ポリエチレン樹脂を55~90質量部、相溶化剤を3~15質量部を含有し、厚み20~180μmである、竹粉末含有袋用フィルム。
<10> 前記<9>に記載の竹粉末含有袋用フィルムの面状部と、前記竹粉末含有袋用フィルムの溶着部を有する袋。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、竹粉末を含み袋の成形に適したフィルムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の製造方法に係るフロー図である。
図2】本発明の製造方法に用いるインフレーション成形装置の概要を示す図である。
図3】本発明に係る実施例において口金から吹出されたフィルムの像である。
図4】本発明に係る実施例により製造されロール状とした袋用フィルムの像である。
図5】本発明に係る実施例により製造された袋の像である。
図6】本発明に係る実施例により製造された袋の面状部を拡大した像である。
図7】本発明に係る実施例により製造された他の袋の使用状況の例を示す像である。
図8】本発明に係る実施例により製造された他の袋の像である。
図9】本発明に係る実施例により製造された他の袋の面状部を拡大した像である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値を含む表現として用いる。
【0014】
[本発明の竹粉末含有袋用フィルムの製造方法]
本発明の竹粉末含有袋用フィルムの製造方法は、竹粉末と相溶化剤とを混合し、加熱乾燥した第一の組成物を得る第一の混合工程と、前記第一の組成物とポリエチレン樹脂とを混合し、混練してペレット化し乾燥した第二の組成物を得る第二の混合工程と、前記第二の組成物をインフレーション成形したフィルムを得る成形工程とを有する。本願において、本発明の竹粉末含有袋用フィルムの製造方法を、単に「本発明の製造方法」と略記する場合がある。
本発明の製造方法によれば、竹粉末を含む袋に用いるフィルムをインフレーション成形で効率よく製造することができる。
【0015】
[本発明の竹粉末含有袋用フィルム]
本発明の竹粉末含有袋用フィルムは、竹粉末を3~30質量部、ポリエチレン樹脂を55~90質量部、相溶化剤を3~15質量部を含有し、厚み20~180μmである。本願において、本発明の竹粉末含有袋用フィルムを、単に「本発明の袋用フィルム」と略記する場合がある。
本発明の竹粉末含有袋用フィルムは、竹粉末を含み、袋の成形に適している。なお、本願において本発明の製造方法により本発明の袋用フィルムを製造することができ、本願においてそれぞれに対応する構成は相互に利用することができる。
【0016】
本発明者は、竹の有効活用の一つとして、竹繊維・竹粉末を用いてインフレーション成形によるフィルム化や、それを用いた袋の成形を検討した。しかし、竹繊維は強い繊維のため、解繊等して粉末化しても数百μm程度の大きさを有している。このため、インフレーション成形のように非常には薄い成形を行おうとすると、フィルム厚みに対して竹粉末が大きすぎるためか、単にポリエチレンと混合しても成形しにくいことが分かった。このような竹粉末の利用を検討するにあたって、インフレーション成形装置に混合する段階でカップリング材等を用いても直ちには分散せず、竹粉末を用いることは非常に難易度が高いものであった。しかし、種々検討した結果、予め相溶化剤を用いて竹粉末とポリエチレンとの分散させておくことで安定してインフレーション成形できることを見出して本発明に至った。本発明は係る知見に基づく。
【0017】
本発明の製造方法に係る工程の一例を示すフロー図である。本発明の製造方法は、竹粉末と相溶化剤を混合する工程S11と、工程S11で得られる第一の組成物と、ポリエチレン樹脂とを混合する工程S21と、工程S21で得られる第二の組成物をインフレーション成形する工程S31を有する。これにより、袋用フィルムを製造する。この袋用フィルムは、適宜各種の袋への成形を行って袋とすることができる。
【0018】
[第一の混合工程(S11)]
第一の混合工程は、竹粉末と、相溶化剤とを混合し、加熱乾燥した第一の組成物を得る工程である。インフレーション成形を行う主材としてポリエチレン樹脂を用いるが、ポリエチレン樹脂は竹粉末と混合されにくく、単にポリエチレン樹脂と竹粉末とを混合してホッパーに投入してもインフレーション成形では安定してフィルムを製造することができない。ここで相溶化剤をインフレーション成形装置のホッパー投入時に混合しても十分に混ざり合わず成形は安定せず、さらに竹粉末や相溶加材が保管時に吸湿していることも考えられる。このため、予め竹粉末と相溶化剤を混合して分散させ加熱して表面部分などで一部一体化させるようになじませて、さらに水分を除去するために乾燥する。これにより、後工程でのポリエチレンとの混合性を向上させ、水分による泡や厚みムラ、樹脂切れなどを防止できる。
【0019】
[竹粉末]
竹粉末含有フィルムには竹粉末を用いて含有させる。本発明における竹粉末は、竹を粉砕して繊維状として粉末化したものである。また、加熱乾燥して水分等のフィルム化の成形工程で揮発しやすい成分を低減したものを用いることが好ましい。竹粉末は、180~320℃で過熱水蒸気処理され、繊維長200~400μmであることが好ましい。
【0020】
竹は、広義には、イネ目イネ科タケ亜科のうち、木本のように茎が木質化する種の総称である。日本に生育する竹は600種あるといわれており、例えば、マダケ、モウソウチク(孟宗竹)、ハチク等が挙げられ、本発明にはいずれも用いることができる。また、竹とは幹、枝、葉、および根のいずれを用いてもよい。セルロース繊維成分が豊富で、量も多い幹部を好適に用いることができる。
【0021】
竹は、セルロース、ヘミセルロースおよびリグニンを主要な成分として含む。ヘミセルロースはセルロースとリグニン、あるいはセルロース同士を結合させる役割を担っている。本発明の竹粉末は、ヘミセルロースを低減したものを用いることが好ましい。
【0022】
竹粉末は、熱重量減少の微分曲線において、180~320℃の温度範囲に実質的にピークを有さず、300~400℃の温度範囲にピークを有し、繊維長1000μm以下の繊維を主とし、その含有量が80質量%以上であるものとすることができる。
【0023】
なお、竹粉末は、少なくとも50質量%以上のセルロース繊維を主成分とする竹粉末であり、セルロース繊維以外に、リグニン粉末やセルロース成分とリグニン成分両者の結合した粉末成分等の竹由来成分が含まれていてもよい。
【0024】
熱重量減少の微分曲線は、示差熱重量測定装置(Differential Thermal Gravimetrical Analyzer)等で測定することができる。180~320℃の温度範囲のピークは、ヘミセルロースの分解に基づくものであり、竹繊維がこの温度範囲に実質的にピークを有さないとは、竹繊維が実質的にヘミセルロースを含まないことを意味する。300~400℃の温度範囲のピークは、セルロースの分解に基づくものであり、竹繊維がこの温度範囲にピークを有するとは、竹繊維がセルロースを含むことを意味する。竹粉末は、実質的にヘミセルロースを含まず、セルロースに富むものを用いることが好ましい。竹粉末中のセルロースの含有量は、原材料である竹の種類や竹の部位によって異なる。例えば孟宗竹の場合、その幹部の組成は、セルロースが約50%であり、ヘミセルロースとリグニンがそれぞれ25%程度であることが知られている。
【0025】
竹粉末の繊維長は、顕微鏡観察で得ることができる。繊維長1000μm以下の質量%は、繊維長と質量が実質的に比例関係にあることに基づいて、繊維長の累積頻度%を測定して、これを質量%と置き換える方法により得る。
【0026】
竹粉末の繊維長は、好ましくは、1000~10μmであり、より好ましくは500~50μmである。繊維長が極端に大きい場合、その繊維長を保持したまま、均一に分散することが困難になるおそれがある。なお、繊維径は、150~1μmであることが好ましく、100~10μmであることがより好ましい。
【0027】
竹粉末の繊維長は、平均繊維長が、400μm以下であることが好ましい。平均繊維長は、1cm×1cm画像中の繊維について直接測定した竹繊維の繊維長の算術平均を用いることができる。平均繊維長が大きすぎると、フィルムが薄いことからも厚みムラ等の原因となったり、搬送時の破断起点となる恐れがある。平均繊維長は380μm以下が好ましく、350μm以下がさらに好ましい。平均繊維長の下限は特に設けなくてもよいが、平均繊維長を小さくするにはより細かい破砕が必要であり操作が難しい恐れがあるため、10μm以上や、50μm以上、100μm以上のような下限を設けてもよい。
【0028】
また、竹粉末は、平均アスペクト比が5以上であることが好ましい。竹粉末の繊維の平均アスペクト比とは、繊維の繊維長を繊維径で割った値の平均値であり、長い繊維ほど大きいアスペクト比を有する。竹粉末の平均アスペクト比は、5以上や10以上、15以上とすることができる。一方、竹粉末の平均アスペクト比の上限は特にないが、例えば最大100程度としてもよい。ここで、竹粉末の平均アスペクト比は、倍率を調整可能な顕微鏡観察で得られた1cm×1cm画像中の全繊維について画像統計処理方法で測定して得られるアスペクト比の算術平均値である。
【0029】
このような竹粉末は次のように製造されたものなどを用いることができる。竹粉末の製造は、竹を180~320℃の温度の常圧過熱水蒸気で加熱処理した後、解繊して繊維状としたものを用いることができる。解繊は、適宜の方法で行うことができ、例えば、水中等で弱い力を加えながら長い時間をかけて行うことができる。この場合、解繊後、乾燥して水分を除去、調整する。常圧過熱水蒸気で加熱処理することにより乾燥できた竹粉末に、水分を加えた後に再度の乾燥を行うことによるエネルギー消費を避け、また、短時間で目的とする繊維長の竹粉末を効率的に得るためには、破砕および粉砕のうちのいずれか一方または双方の方法により解繊することが好ましい。このとき、加熱処理時間は特に限定されないが、1~3時間であると、好適である。
【0030】
ここで、常圧過熱水蒸気とは、定容積状態で加熱して得られる加圧飽和水蒸気と異なり、膨張できる状態で100℃の水蒸気をさらに加熱して得られる、標準気圧下で100℃以上の過熱水蒸気をいう。
【0031】
常圧過熱水蒸気は、圧力が常圧であるため、例えば反応容器を用いる場合、容器の耐圧が不要であり、スケールアップが容易である。また、常圧過熱水蒸気によって分解除去される成分が、水蒸気流に乗って排出されるため、例えば反応容器を用いる場合、反応容器内で分解気化物が液化滞留しない。さらに、170℃の水への逆転移温度以上では、乾燥空気以上に処理物の乾燥速度が速くなるため、処理後の生成物の乾燥工程が不要である。
【0032】
加熱処理は、常圧反応容器内に竹を配置し、常圧過熱水蒸気を導入して行うことができる。この場合、竹を常圧反応容器の内部に収容できる寸法、例えば、最大寸法が数十cmになるように切って用いる。なお、大型の常圧反応容器を用いれば、竹の裁断は実質的にほとんど不要になる。
【0033】
また、加熱処理は、連続コンベアー上に常圧過熱水蒸気を吹き付けて行う方式を採用してもよく、この場合、竹の裁断は実質的に不要となり、また、連続処理により処理効率が高い。また、加熱処理は、ロータリーキルン内で常圧過熱水蒸気を吹き付けて行う方式を採用してもよく、この場合、竹と水蒸気との接触がより均一となり、さらに、竹の破砕および粉砕を装置内で同時に行うこともできるため、処理効率が高い。
【0034】
常圧過熱水蒸気の温度が180℃未満では、ヘミセルロースの除去が十分に行われないおそれがある。常圧過熱水蒸気の温度は、190℃以上や、200℃以上、210℃以上とすることがより好ましい。一方、常圧過熱水蒸気の温度が320℃を上回る場合、セルロースが分解、除去されて、竹粉末の歩留まりが低下するおそれがある。温度の上限は、300℃以下や、280℃以下としてもよい。
【0035】
加熱処理後の竹は、易分解性のヘミセルロースが分解し、揮発除去されているため、容易に粉砕することができる。破砕および粉砕は、適宜の装置を用いて行うことができる。また、このとき、粗破砕後に微粉砕を行う2段処理を行ってもよい。破砕あるいは粉砕後に、さらに篩分けを行った竹粉末とすることが好ましい。
【0036】
このような竹粉末は、アルカリ性や酸性物質を使った化学的な処理操作を実質的に伴なわず、また、高圧で処理したり、使用した化学物質を後処理することなく、簡易な方法で得ることができる。
【0037】
このような竹粉末は、特許第5656167号公報や、特許第5669072号公報、特許第5656174号公報を参照して、これらの竹繊維や竹粉末を利用することができる。
【0038】
[相溶化剤]
相溶化剤は、ポリエチレンと各種フィラーの複合材の製造のために設計されたものを用いることができる。例えば、低分子量エチレン・プロピレン共重合物や、エチレンプロピレン共重合物の無水マレイン酸酸化物、無水マレイン酸変性高密度ポリエチレンなどを用いることができる。低分子量エチレン・プロピレン共重合物の例としては、三井化学株式会社製の“ハイワックス(登録商標)110P”などがあげられる。エチレンプロピレン共重合物の無水マレイン酸酸化物の例としては、三井化学株式会社製の“ハイワックス(登録商標)1105A”をなどがあげられる。無水マレイン酸変性高密度ポリエチレンの例としては、三井化学株式会社製の“アドマー(登録商標)HE810”があげられる。
【0039】
[第一の組成物]
第一の混合工程は、竹粉末を70~95質量部と、相溶化剤を5~30質量部とを含む質量比率で混合することが好ましい。竹粉末は、75質量部以上や、80質量部以上としてもよい。また、竹粉末は90質量部以下や、88質量部以下としてもよい。相溶加材は、10質量部以上や、12質量部以上としてもよい。また相溶化剤は25質量部以下や、20質量部以下としてもよい。竹粉末と、相溶化剤は、常温で粉体などの固体のため、所定の質量比率となるように秤量し粉体状のまま混合して用いてもよい。
【0040】
[混合・乾燥]
竹粉末と相溶化剤を混合したものを、70~120℃で加熱して処理する。このような加熱により、竹粉末と相溶化剤が表面部分などで一部一体化する。加熱温度の下限は、80℃以上や、90℃以上とすることができる。加熱温度の上限は、110℃以下や105℃以下とすることができる。温度が低すぎると、十分に一体化しにくかったり、乾燥されにくかったり乾燥時間が長時間化するおそれがある。温度が高すぎると、劣化や揮発、黄変等が生じるおそれがある。
【0041】
このような加熱温度で、30分以上加熱乾燥することが好ましい。加熱乾燥時間は1時間以上がより好ましい。加熱乾燥時間が短すぎると水分を十分に除去できない可能性がある。また、加熱乾燥時間の上限は設けなくてもよいが、生産性などの観点から、12時間以下や10時間以下、8時間以下、4時間以下としてもよい。加熱乾燥は、定温乾燥機などに静置状態で雰囲気温度を上記温度として乾燥状態で乾燥することができる。
【0042】
[水分含有率]
乾燥した後の第一の組成物が、水分含有量が0.5質量%以下であることが好ましい。水分含有量を十分に低減しておくことで、フィルムを成形するときに気泡や厚みムラが生じることをより安定して防止することができる。竹粉末は保管中に吸湿して数%程度の水分を含有しているため、これを乾燥して除去する。水分含有量は、0.4質量%以下や0.3質量%以下としてもよい。水分含有量の下限は設けなくてもよく、検出下限程度としてもよい。また、乾燥時間などの製造効率を考慮して0.01質量%以上や0.02質量%以上、0.05質量%以上のような下限をもうけてもよい。水分含有率は、水分計などで測定することができる。水分含有量は、秤量約20グラム、乾燥温度105℃、測定時間10分での質量変化を水分含有量とすることができる。例えば、株式会社島津製作所の水分計「Moc63u」を用いて測定できる。
【0043】
[第二の混合工程(S21)]
第二の混合工程は、第一の組成物と、ポリエチレン樹脂とを混合して溶融ペレット化し乾燥した第二の組成物を得る工程である。第一の組成物は、粉体状などのため、そのままではインフレーション成形を行うときに供給口のホッパーから押出スクリューへの噛みこみが設定している比率のものとならない場合がある。またインフレーション成形装置の溶融混練のみではポリエチレン樹脂と十分に混合されない恐れがある。このため予備混合として第二の混合工程で溶融ペレット化する。また、溶融ペレット化で水分と接触する可能性があるためこれらの水分を乾燥する。
【0044】
[ポリエチレン]
ポリエチレンは、低密度ポリエチレンや、リニア低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、メタロセン触媒ポリエチレン、変成ポリエチレンなどの樹脂を用いることができる。特に、フィルムへの成形に適した、低密度ポリエチレンや、リニア低密度ポリエチレンを用いることが好ましい。
【0045】
第二の混合工程は、第一の組成物を3~35質量部、ポリエチレン樹脂を65~97質量部の質量比率で混合することが好ましい。第一の組成物は、5質量部以上や、8質量部以上、10質量部異常とすることができる。第一の組成物が多いほど相対的に竹粉末も増える。竹粉末が増えるほど、インフレーション成形時の竹粉末の影響が大きくなるため、本発明により製造することが有効となる。また、竹粉末が増えることで、バイオマス利用品としての有用性がより向上する。さらに高濃度に、第一の組成物は15質量部以上、18質量部以上や、20質量部以上含むものとしてもよい。また、第一の組成物は32質量部以下や、30質量部以下としてもよい。ポリエチレン樹脂は、70質量部以上としてもよい。またポリエチレン樹脂は80質量部以下としてもよい。
【0046】
第一の組成物と、ポリエチレン樹脂は、常温で粉体やペレットなどの固体のため、所定の質量比率となるように秤量し固体のまま混合(いわゆるドライブレンド)して用いてもよい。ポリエチレンの含有量が低すぎる場合、インフレーション成形に適した組成物を得られないおそれがある。ポリエチレンが過剰に多くなると相対的に自然環境由来の竹粉末が減少する。また、成形加工しにくくなり外観や物性のムラが生じて品質が悪化する恐れがある。
【0047】
第一の組成物と、ポリエチレン樹脂は混合して、溶融温度150~190℃で加熱混練してペレット化する。これは、ホッパーに投入した原料を加熱下で、モーターで回転させたスクリューで溶融混練してストランド状に押し出して所定の長さでペレットに切断する。このストランドやペレットは水中で冷却や固化することができる。溶融温度は、160℃以上や170℃以上としてもよい。
【0048】
第一の組成物とポリエチレン樹脂を混合したものを、70~120℃で乾燥する。これにより、ペレット化により吸着したり、ペレット周囲に付着した水分を除去する。加熱温度の下限は、80℃以上や、90℃以上とすることができる。加熱温度の上限は、110℃以下や105℃以下とすることができる。温度が低すぎると、乾燥されにくかったり、乾燥時間が長時間化したりするおそれがある。温度が高すぎると、劣化や揮発、黄変等が生じるおそれがある。
【0049】
乾燥は30分以上することが好ましい。乾燥時間は1時間以上や、2時間以上、3時間以上がより好ましい。乾燥時間が短すぎると水分を十分に除去できない可能性がある。また、加熱乾燥時間の上限は設けなくてもよいが、生産性などの観点から、24時間以下や12時間以下、8時間以下としてもよい。加熱乾燥は、定温乾燥機などに静置状態で雰囲気温度を上記温度として乾燥したり、熱風オーブンなどを用いて乾燥することができる。
【0050】
乾燥した後の第二の組成物が、水分含有量が0.5質量%以下であることが好ましい。水分含有量を十分に低減しておくことで、フィルムを成形するときに気泡や厚みムラが生じることをより安定して防止することができる。ペレット化した後、水中での冷却や保管時の吸湿等により数%程度の水分が付着等している場合があるため、これを乾燥して除去する。水分含有量は、0.4質量%以下や0.3質量%以下としてもよい。水分含有量の下限は設けなくてもよく、検出下限程度としてもよい。また、乾燥時間などの製造効率を考慮して0.01質量%以上や0.02質量%以上、0.05質量%以上のような下限をもうけてもよい。水分含有率は、水分計などで測定することができる。水分含有量は、秤量約20グラム、乾燥温度105℃、測定時間10分での質量変化を水分含有量とすることができる。例えば、株式会社島津製作所の水分計「Moc63u」を用いて測定できる。
【0051】
[その他の成分]
本発明の袋用フィルムは、竹粉末、相溶化剤、およびポリエチレン以外の成分(以下、「その他の成分」)を含有するものであってもよい。袋用フィルムにおいて、竹粉末、相溶化剤、およびポリエチレンが占める割合(「竹粉末+相溶化剤+ポリエチレン」/袋用フィルムの組成物)は、90質量%以上が好ましく、95質量%以上が好ましく、98質量%以上がより好ましい。この割合の上限は100質量%でもよく、99.5質量%以下や、99質量%以下としてもよい。その他の成分としては、ポリオレフィン系の樹脂のインフレーション成形などに利用されている、可塑剤や、耐候剤、色材、スリップ剤、消臭剤などを用いることができる。
【0052】
[成形工程(工程S31)]
成形工程は、第二の組成物をインフレーション成形してフィルムを得る工程である。成形工程は、第二の組成物に加えて各主成分を混合してもよく、例えばポリエチレン樹脂のペレットと混合して成形してもよい。混合比率としては、第二の組成物のペレット40~100質量部と、ポリエチレン樹脂のペレット0~60質量部とを、混合して成形するものとすることができる。
【0053】
[インフレーション成形]
成形工程は、インフレーション成形により行う。インフレーション成形は押し出し機からチューブ状に押し出され軟質化した樹脂に、気体を吹き込んで膨らませながら引き取ることで成形するフィルムの成形手法である。
【0054】
図2は、インフレーション成形装置の構造の概要を示すものである。インフレーション成形装置10は、インフレーション成形によりフィルム1を成形する装置である。ホッパー21から樹脂組成物を投入し、モーター22を回転させてスクリュー23を回転させて口金24から押し出す。この押し出し時に、図1における口金24の下部から上側に向けて矢印で示すように、空気などの気体を吹き込んでフィルム1を膨らませながら成形する。膨らんだフィルム1はガイド3や、ローラー31、ローラー32、ローラー33を介してロール4に巻き取られる。
【0055】
[押出温度]
インフレーション成形の口金24の押し出し温度は、160~200℃で成形することができる。本発明の袋用フィルムは、ポリエチレン樹脂が主たるものとなることから、ポリエチレンの成形温度に準じる条件で成形することができる。
【0056】
この成形にあたって、本発明の製造方法は、口金24の押し出し温度160~200℃で成形ことが好ましい。成形温度は、適宜、押し出し圧力や樹脂の分子量、混合比率、フィルム厚みなどを考慮して適宜設定することができる。好ましくは170℃以上であり、さらに好ましくは175℃以上である。また、195℃以下が好ましい。押出温度が低すぎると押出圧力が高くなりすぎて押出ができなかったり、分散しない恐れがある。押出温度が高すぎると、加熱により劣化して着色などが生じる場合がある。口金24の押出温度が所定を温度として、ホッパー21からあと口金までのスクリュー23に対応する流路の温度は段階的に昇温するものとする。
【0057】
成形するフィルムの厚みは、20~180μmとすることが好ましい。フィルムの厚みは、押し出し量や、口金の開口部の大きさ、引き取り速度などを調整することで調整することができる。フィルム厚みが薄すぎる場合、竹粉末がフィルム厚みより大きいものとなり応力が集中する場所となったりして、成形が困難となったり、厚みムラにより巻取りが困難となったり、袋状に成形したときの破断起点となる恐れがある。フィルム厚みが厚すぎる場合、剛性が高くなりすぎたりして、インフレーション成形に適さない場合がある。フィルム厚みの上限は150μm以下や、120μm以下、100μm以下としてもよい。また、フィルム厚みの下限は、30μm以上や40μm以上としてもよい。
【0058】
[袋の成形]
本発明の製造方法で製造した袋用フィルムは、ボトムシールや、サイドシール、周辺部材の取り付け、印刷などのインフレーション成形したフィルムの袋成形技術により加工することで、袋にすることができる。このとき、竹粉末を含むものの、ポリエチレンに均質に分散していることから、ヒートシールなどの熱可塑性樹脂の成形加工方法を採用した連続製造に適した加工にも適している。このようなフィルムの特性を利用して、袋用フィルムの面状部と、袋用フィルムの溶着部を有する袋とすることができる。
【0059】
本発明の竹粉末含有袋用フィルムは、竹粉末を3~30質量部、ポリエチレン樹脂を55~90質量部、相溶化剤を3~15質量部を含有する。竹粉末含有袋用フィルムにおいて、竹粉末は、5質量部以上や、8質量部以上としてもよい。また、竹粉末は、25質量部以下や、20質量部以下としてもよい。ポリエチレン樹脂は、60質量部以上や、70質量部以上としてもよい。また、ポリエチレン樹脂は、85質量部以下としてもよい。相溶化剤は、5質量部以上としてもよい。また、相溶化剤は12質量部以下や、10質量部以下としてもよい。
【実施例
【0060】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を変更しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0061】
[材料等]
・竹粉末(a):孟宗竹を切断して、過熱水蒸気処理時間2時間処理した。温度は210℃±5℃である。その後、粉砕して解繊し、平均繊維長約300μmとした竹粉末を用いた。
・相溶化剤(a):三井化学株式会社製の“ハイワックス(登録商標)1105A”(エチレンプロピレン共重合物の無水マレイン酸酸化物)
・相溶化剤(b):三井化学株式会社製の“ハイワックス(登録商標)110P”(低分子量エチレン・プロピレン共重合物)
・相溶化剤(c):三井化学株式会社製の“アドマー(登録商標)HE810”(無水マレイン酸変性高密度ポリエチレン)
・LLDPE(a):メタロセンLLDPEエボリュー(登録商標)“SP2520”(株式会社プライムポリマー) 密度:約925kg/m3(JIS K7112)
【0062】
[試験例1]
・第一の混合工程
竹粉末と、相溶化剤とを秤量し、ブレンダーで混合して、ステンレス製の深型バットに収容した。混合した試験組成物(1-1)~(1-5)に係る第一の組成物の混合比率を表1に示す。なお、表1には第二の混合工程で用いるポリエチレン樹脂の混合量も併せて示す。
混合した組成物を収容したバットを定温乾燥機に静置し乾燥した。乾燥温度は設定温度95℃(実温90~100℃)とし、2.5時間乾燥して、第一の組成物を得た。
【0063】
水分含有量は、株式会社島津製作所の水分計「Moc63u」を用いて測定した。約20gを秤量し、乾燥温度105℃、測定時間10分での質量変化を、水分含有量とした。
混合前の竹粉末(a)の水分含有率は3.7質量%であった。2.5時間乾燥後の試験組成物(1-1)~(1-5)にかかる第一の組成物は、検出下限以下であり、十分に乾燥されていることが確認された。
【0064】
【表1】
【0065】
・第二の混合工程
第一の混合工程で得られた第一の組成物と、ポリエチレン樹脂とを秤量し、二軸押出機のペレッターでペレット化した。混合した試験組成物(1-1)~(1-5)の混合比率を表1に示す。ペレット化の押出温度は、170℃としストランド状に押し出して切断して水中で冷却し固化させた。
水中から取り出したペレットをステンレス製の深型バットに容れた。その後、定温乾燥機に静置し、定温乾燥機で乾燥した。乾燥温度は設定温度95℃(実温90~100℃)とし、5時間乾燥した。
【0066】
水分含有率を第一の組成物と同様に、株式会社島津製作所の水分計「Moc63u」で測定した。5時間乾燥後の試験組成物(1-1)~(1-5)にかかる第二の組成物のペレットの水分含有率は、検出下限以下であり、十分に乾燥されていることが確認された。
【0067】
[試験例2]
試験例1で得られた竹粉末とポリエチレン樹脂と相溶化剤とを含む第二の組成物のペレット(試験組成物(1-1)~(1-5))を用いて、インフレーション成形を行った。
【0068】
[製造装置(インフレーション成形装置)]
製造試験に用いたインフレーション成形装置の主な仕様は以下のものである。
ダイス:50mm/70mmチューブ用 原反巾:100mm~300mm
厚み目安:20μm~130μm 押出量:10kg/h~20kg/h
引取速度:6m/min~60m/min ガゼット折込幅:最大50mm
巻取装置:最大巻径φ600mm 最大重量40kg
【0069】
1)試験例1で製造された試験組成物(1-1)50質量部と、LLDPE(a)50質量部とをペレット状で混合して、成形用の試験組成物とした。この各試験組成物について、前述したインフレーション成形装置(製造装置)を用いて、インフレーション成形した。製造時の条件として、口金温度185℃、冷却ブロワー38Hz、張力1.2kgfとして製造した。また、フィルムの狙い厚みは60μm、フィルム幅25cmとして製造した。
2)同様に、試験組成物(1-1)に代え、試験組成物(1-2)~(1-5)のそれぞれに順次切り替えて、インフレーション成形した。
【0070】
試験組成物(1―1)~(1-5)のいずれを用いても、狙い厚み相当の約60μmのフィルム厚みのフィルムを、巻取り長さ1000mについて安定して成形することができた。図3は、試験組成物(1-1)を用いて製造した時の口金(図2の口金24参照)周辺を撮像した像である。図4はロール状に巻き取ったフィルムの像である。このフィルムは、竹粉末の色により茶褐色を呈する。また、竹の香りを有する。このように、本発明に係る製造方法により、安定して、袋用フィルムを製造することができた。
【0071】
試験組成物(1-1)~(1-5)のいずれも袋用フィルムを得ることができたが、特に試験組成物(1-5)が最も安定していた。次に、試験組成物(1-1)、(1-3)、(1-2)、(1-4)の順により安定した成形ができた。
【0072】
[試験例3]
前述の実施例1に係る各試験組成物のフィルムを用いて、ボトムシール成形して袋を成形した。作成した袋を図5に示す。この袋は、上端側は溶断部で開口部となり、下端側は溶断部とその上方に溶着部を有し、袋として使用するときの底となっている。
【0073】
図6は袋の面状部を拡大した像である。図と同様に、竹粉末由来の黒色の粒状の成分が広く分散している。また、素地は半透明で茶褐色であり、厚さが厚いためより濃い色となっている。図7は、この袋に、荷物を収容した像である。袋として従来のポリエチレン袋とそん色なく使用できる強度を有し、半透明のため内容物がわずかに透けて見える。
【0074】
[試験例4]
試験例2に準じて、大型の装置で試験組成物(1)を用いてフィルム幅62cm、フィルム厚み30μmを成形した。このフィルムを用いて、ボトムシール成形して袋を成形した。作成した袋を図8に示す。この袋は、両側の幅方向に折り込むガゼット加工により、7cm折り込み部設けて、開口部を広げやすい加工を行った袋である。ガゼット加工後の幅w:48cm、高さh:80cmである。上端側、下端側のいずれも、搬送時に流れ方向に隣り合い別の袋となるフィルムとの溶断部を有している。
【0075】
また、上端、下端側のいずれにも溶断部から5~10mmの部分に溶着部を設けている。上端側は持ち手部となる幅方向の両端から約7cmまでは溶着部を有し、さらに内側には略M字状の切断を行い、開口部を設けている。
【0076】
図9は袋の面状部を拡大した像である。竹粉末由来の黒色の粒状の成分が広く分散している。また、素地は半透明で茶褐色である。
【0077】
[比較例1]
試験組成物(1-1)の質量比で予備混合や乾燥等を行うことなく、そのままドライブレンドで混合して、試験例2で用いたインフレーション成形装置の供給口に投入して成形を行った。竹粉末やポリエチレンの混合が安定せず十分に分散せず、竹粉末が偏ったり、水分に起因すると考えられる気泡が生じて、帯状に安定した成形ができなかったり、破断が生じ、安定したフィルム化ができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、竹粉を含む袋用フィルムに利用することができ、産業上有用である。
【符号の説明】
【0079】
1 フィルム
10 成形装置
21 ホッパー
22 モーター
23 スクリュー
24 口金
3 ガイド
31、32、33 ローラー
4 ロール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9