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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20240930BHJP
   B65H 5/06 20060101ALI20240930BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20240930BHJP
   G03G 15/16 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
G03G21/00 370
B65H5/06 J
G03G15/00 445
G03G21/00 510
G03G15/16
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020161532
(22)【出願日】2020-09-25
(65)【公開番号】P2022054367
(43)【公開日】2022-04-06
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169155
【弁理士】
【氏名又は名称】倉橋 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075638
【弁理士】
【氏名又は名称】倉橋 暎
(72)【発明者】
【氏名】田尻 剛士
(72)【発明者】
【氏名】辻村 宗士
【審査官】市川 勝
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-139132(JP,A)
【文献】特開2011-053555(JP,A)
【文献】特開2016-177168(JP,A)
【文献】特開2017-227882(JP,A)
【文献】特開2019-066830(JP,A)
【文献】特開2007-079159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
B65H 5/06
G03G 15/00
G03G 15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を担持する像担持体と、
1次転写部で前記像担持体からトナー像が1次転写される、回転可能な中間転写体と、
前記中間転写体を駆動する第1の駆動部と、
前記中間転写体に当接して2次転写部を形成し、前記2次転写部を通過する記録材に前記中間転写体からトナー像を2次転写させる2次転写部材と、
記録材を挟持する搬送部を形成し、前記2次転写部に記録材を送り込む、回転可能な搬送ローラと、
前記搬送ローラを駆動する第2の駆動部と、
前記第2の駆動部の駆動トルクを検知する検知部と、
前記第1の駆動部による前記中間転写体の回転速度又は前記第2の駆動部による前記搬送ローラの回転速度を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、記録材が前記搬送部と前記2次転写部との両方に挟持されて搬送されている第1の状態から、記録材の搬送方向の後端が前記搬送部を通過して記録材が前記搬送部及び前記2次転写部のうち前記2次転写部にのみ挟持されて搬送されている第2の状態に変化する際、前記第2の駆動部の駆動トルクの低下量を前記検知部により検知し前記検知部により検知される前記低下量が所定の低下量となるように、前記第1の駆動部による前記中間転写体の回転速度又は前記第2の駆動部による前記搬送ローラの回転速度を制御するとともに、前記所定の低下量を記録材に関する情報に基づいて変更することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記所定の低下量は、前記第1の状態での前記2次転写部における記録材の搬送速度と前記搬送部における記録材の搬送速度とが略等しい場合における、前記検知部により検知される前記低下量に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
記録材の搬送方向の先端が前記2次転写部に突入して前記第1の状態となった直後の前記検知部により検知される前記第2の駆動部の駆動トルクと、記録材の搬送方向の後端が前記搬送部を通過して前記第1の状態から前記第2の状態となった直後の前記検知部により検知される前記第2の駆動部の駆動トルクとの差分の絶対値に対する、前記第1の状態から前記第2の状態に変化する際に前記検知部により検知される前記第2の駆動部の駆動トルクの低下量の絶対値の割合は、80%以上、120%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
トナー像を担持する像担持体と、
1次転写部で前記像担持体からトナー像が1次転写される、回転可能な中間転写体と、
前記中間転写体を駆動する第1の駆動部と、
前記中間転写体に当接して2次転写部を形成し、前記2次転写部を通過する記録材に前記中間転写体からトナー像を2次転写させる2次転写部材と、
記録材を挟持する搬送部を形成し、前記2次転写部に記録材を送り込む、回転可能な搬送ローラと、
前記搬送ローラを駆動する第2の駆動部と、
前記第1の駆動部の駆動トルクを検知する検知部と、
前記第1の駆動部による前記中間転写体の回転速度又は前記第2の駆動部による前記搬送ローラの回転速度を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、記録材が前記搬送部と前記2次転写部との両方に挟持されて搬送されている第1の状態から、記録材の搬送方向の後端が前記搬送部を通過して記録材が前記搬送部及び前記2次転写部のうち前記2次転写部にのみ挟持されて搬送されている第2の状態に変化する際、前記第1の駆動部の駆動トルクの上昇量を前記検知部により検知し前記検知部により検知される前記上昇量が所定の上昇量となるように、前記第1の駆動部による前記中間転写体の回転速度又は前記第2の駆動部による前記搬送ローラの回転速度を制御するとともに、前記所定の上昇量を記録材に関する情報に基づいて変更することを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
前記所定の上昇量は、前記第1の状態での前記2次転写部における記録材の搬送速度と前記搬送部における記録材の搬送速度とが略等しい場合における、前記検知部により検知される前記上昇量に設定されていることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
記録材の搬送方向の先端が前記2次転写部に突入して前記第1の状態となった直後の前記検知部により検知される前記第1の駆動部の駆動トルクと、記録材の搬送方向の後端が前記搬送部を通過して前記第1の状態から前記第2の状態となった直後の前記検知部により検知される前記第1の駆動部の駆動トルクとの差分の絶対値に対する、前記第1の状態から前記第2の状態に変化する際に前記検知部により検知される前記第1の駆動部の駆動トルクの上昇量の絶対値の割合は、80%以上、120%以下であることを特徴とする請求項4又は5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記記録材に関する情報は、記録材の坪量に関する情報を含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記検知部の検知結果に基づいて前記第1の駆動部による前記中間転写体の回転速度を制御するものであり、該回転速度を変更した場合には、前記像担持体に対する画像の書き出しタイミングを変更することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
記録材は前記搬送部から前記2次転写部へと重力方向の下方から上方へと搬送されることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式や静電記録方式を用いた複写機、プリンタ、ファクシミリ装置などの画像成形装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式などを用いた画像形成装置として、中間転写体に形成されたトナー像を、2次転写部で、レジストローラ対などの搬送ローラ対にて搬送されてきた記録材に2次転写する構成のものがある。ここで、搬送ローラの直径が製造によるバラツキや耐久による削れなどにより変化した場合、記録材を一律の搬送速度で搬送できなくなる。その場合、記録材による2次転写部のトルク変動が発生する。そして、このトルク変動に起因して色ずれなどの画像のずれが発生することがある。
【0003】
特許文献1では、転写部のトルク変動を検知することにより、記録材の搬送速度を予測し、トルク変動が0となるように搬送ローラの回転数(回転速度)を変更する構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-038241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の方法では、記録材の後端がレジストローラを通過する前後の転写部のトルクの差分が0となるように制御した場合、記録材の後端がレジストローラを通過する際にレジストローラと転写部との間での記録材の引っ張りが残った状態となる。
【0006】
記録材の後端がレジストローラを通過した直後に記録材の引っ張りが急激に解放されると、記録材の姿勢が変わり、2次転写部での中間転写体と記録材との距離が急激に変動することで、転写する画像の乱れが発生することがある。
【0007】
また、記録材の種類(坪量など)に応じてトルク変動量が異なるため、記録材の姿勢の変動量も記録材の種類(坪量など)で異なり、画像の乱れのレベルがばらつくことがある。
【0008】
したがって、本発明の目的は、画像のずれを抑制しつつ、記録材が搬送ローラを通過した後の記録材の姿勢の変動を低減して画像の乱れを抑制することのできる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は本発明に係る画像形成装置にて達成される。要約すれば、本発明は、トナー像を担持する像担持体と、1次転写部で前記像担持体からトナー像が1次転写される、回転可能な中間転写体と、前記中間転写体を駆動する第1の駆動部と、前記中間転写体に当接して2次転写部を形成し、前記2次転写部を通過する記録材に前記中間転写体からトナー像を2次転写させる2次転写部材と、記録材を挟持する搬送部を形成し、前記2次転写部に記録材を送り込む、回転可能な搬送ローラと、前記搬送ローラを駆動する第2の駆動部と、前記第2の駆動部の駆動トルクを検知する検知部と、前記第1の駆動部による前記中間転写体の回転速度又は前記第2の駆動部による前記搬送ローラの回転速度を制御する制御部と、を有し、前記制御部は、記録材が前記搬送部と前記2次転写部との両方に挟持されて搬送されている第1の状態から、記録材の搬送方向の後端が前記搬送部を通過して記録材が前記搬送部及び前記2次転写部のうち前記2次転写部にのみ挟持されて搬送されている第2の状態に変化する際、前記第2の駆動部の駆動トルクの低下量を前記検知部により検知し前記検知部により検知される前記低下量が所定の低下量となるように、前記第1の駆動部による前記中間転写体の回転速度又は前記第2の駆動部による前記搬送ローラの回転速度を制御するとともに、前記所定の低下量を記録材に関する情報に基づいて変更することを特徴とする画像形成装置である。
【0010】
本発明の他の態様によると、トナー像を担持する像担持体と、1次転写部で前記像担持体からトナー像が1次転写される、回転可能な中間転写体と、前記中間転写体を駆動する第1の駆動部と、前記中間転写体に当接して2次転写部を形成し、前記2次転写部を通過する記録材に前記中間転写体からトナー像を2次転写させる2次転写部材と、記録材を挟持する搬送部を形成し、前記2次転写部に記録材を送り込む、回転可能な搬送ローラと、前記搬送ローラを駆動する第2の駆動部と、前記第1の駆動部の駆動トルクを検知する検知部と、前記第1の駆動部による前記中間転写体の回転速度又は前記第2の駆動部による前記搬送ローラの回転速度を制御する制御部と、を有し、前記制御部は、記録材が前記搬送部と前記2次転写部との両方に挟持されて搬送されている第1の状態から、記録材の搬送方向の後端が前記搬送部を通過して記録材が前記搬送部及び前記2次転写部のうち前記2次転写部にのみ挟持されて搬送されている第2の状態に変化する際、前記第1の駆動部の駆動トルクの上昇量を前記検知部により検知し前記検知部により検知される前記上昇量が所定の上昇量となるように、前記第1の駆動部による前記中間転写体の回転速度又は前記第2の駆動部による前記搬送ローラの回転速度を制御するとともに、前記所定の上昇量を記録材に関する情報に基づいて変更することを特徴とする画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、画像のずれを抑制しつつ、記録材が搬送ローラを通過した後の記録材の姿勢の変動を低減して画像の乱れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】画像形成装置の概略断面図である。
図2】記録材の搬送経路を示す概略断面図である。
図3】色ずれの模式図である。
図4】2次転写部のトルク変動、中間転写体の累積位置ずれの一例のグラフ図である。
図5】各色の画像の位置ずれ、各色の色ずれの一例のグラフ図である。
図6】2次転写部のトルク変動、中間転写体の累積位置ずれの他の例のグラフ図である。
図7】各色の画像の位置ずれ、各色の色ずれの他の例のグラフ図である。
図8】2次転写部のトルク変動、中間転写体の累積位置ずれの他の例のグラフ図である。
図9】各色の画像の位置ずれ、各色の色ずれの他の例のグラフ図である。
図10】従来の方法と実施例の方法とを比較した2次転写部のトルク変動、中間転写体の累積位置ずれのグラフ図である。
図11】実施例の方法による各色の画像の位置ずれ、各色の色ずれのグラフ図である。
図12】2次転写部及びレジニップ部の近傍の拡大断面図である。
図13】搬送モータのトルク変動のグラフ図である。
図14】搬送モータのトルク変動のグラフ図である。
図15】搬送モータのトルク変動のグラフ図である。
図16】2次転写部の搬送速度と搬送モータのトルク変動量との関係を示すグラフ図である。
図17】2次転写部の搬送速度と搬送モータのトルク変動量との関係を示すグラフ図である。
図18】ベクトル制御のブロック図である。
図19】モータとdq軸の関係を示す模式図である。
図20】実施例の制御の制御態様を示すブロック図である。
図21】実施例の制御のフローチャート図である。
図22】レジニップ部の搬送速度と搬送モータのトルク変動量との関係を示すグラフ図である。
図23】レジニップ部の搬送速度と作像モータのトルク変動量との関係を示すグラフ図である。
図24】2次転写部の搬送速度と作像モータのトルク変動量との関係を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0014】
1.画像形成装置の構成及び動作
図1は、本実施例の画像形成装置201の概略断面図である。なお、以下の説明において、画像成形装置201を正面から視た視点(図1の紙面手前側から奥側に視る視点)を基準にして上下左右の方向を表すものとする。
【0015】
図1に示すように、画像形成装置201は、画像形成装置本体201Aを有し、画像形成装置本体201Aには、記録材Pに画像を形成する画像形成部201Bが設けられている。また、画像形成装置本体201Aの上方には、略水平に設置された画像読取装置202が設けられており、この画像読取装置202と画像形成装置本体201Aとの間に、記録材Pの排出用の排出部(排出空間)Sが形成されている。
【0016】
画像形成手段である画像形成部201Bは、4ドラムフルカラー方式のものである。画像形成部201Bは、露光手段であるレーザスキャナ210と、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の4色のトナー像(トナー画像)を形成する4個のプロセスカートリッジ211と、を有している。ここで、各プロセスカートリッジ211は、像担持体としての回転可能なドラム型(円筒形)の感光体(電子写真感光体)である感光体ドラム212、帯電手段(帯電部材)である帯電器213、及び現像手段である現像器214を有している。また、画像形成部201Bは、プロセスカートリッジ211の上方に配置された中間転写ユニット201Cと、定着部220と、を有している。なお、画像形成装置本体201Aには、現像器214にトナーを供給するためのトナーカートリッジ215が設けられている。
【0017】
中間転写ユニット201Cは、駆動ローラ216a、テンションローラ216bを含む複数の張架ローラ(支持ローラ)に巻き掛けられた、無端状のベルトで構成された中間転写体である中間転写ベルト216を有している。なお、中間転写ベルト216の内周面側には、感光体ドラム212に対向した位置で中間転写ベルト216に当接する、1次転写手段(1次転写部材)である1次転写ローラ219が設けられている。1次転写ローラ219は、感光体ドラム212に向けて押圧され、感光体ドラム212と中間転写ベルト216とが接触する1次転写部(1次転写ニップ部)224が形成される。ここで、駆動ローラ216aは、ベルト駆動部230a(図20)を介して作像モータ230b(図20)に接続されている。中間転写ベルト216は、作像モータ230bから駆動力が伝達されたベルト駆動部230aにより駆動ローラ216aが回転駆動されることにより、図中矢印方向(反時計回り方向)に回転(周回移動)する。
【0018】
そして、例えばフルカラー画像の形成時には、1次転写ローラ219によって各感光体ドラム212上の負極性を持つ各色トナー像が順次中間転写ベルト216に多重転写される。中間転写ユニット201Cの駆動ローラ216aと対向する位置には、2次転写手段(2次転写部材)である2次転写ローラ217が設けられている。2次転写ローラ217は、駆動ローラ216aに向けて押圧される。これにより、駆動ローラ216aと2次転写ローラ217とが中間転写ベルト216を介して当接して、中間転写ベルト216と2次転写ローラ217とが接触する2次転写部(2次転写ニップ部)218が形成される。中間転写ベルト216上に形成されたトナー像は、2次転写部218で記録材Pに一括して転写される。
【0019】
2次転写部218の上部には定着部220が配置され、定着部220の上部には第1の排出ローラ対225a、第2の排出ローラ対225b及び両面反転部201Dが配置されている。両面反転部201Dは、正逆転可能な反転ローラ対222及び第1面に画像が形成された記録材Pをその第2面に画像を形成するために、再度、画像形成部201Bに搬送する再搬送通路Rなどが設けられている。
【0020】
また、画像形成装置本体201Aには、記録用紙などの記録材(転写材、記録媒体、シート)Pの給送手段としての複数の給送部201Eが設けられている。第1の給送手段である第1の給送部231は、記録材Pを収納する記録材収納手段(記録材収納部)である第1の給送カセット241、第1の給送カセット241から記録材Pを給送する給送手段(給送部材)である第1の給送ローラ対251、給送された記録材Pを搬送する搬送手段(搬送部材)である第1の引抜ローラ対261を有している。第1の給送ローラ対251にて1枚ずつ分離・給送された記録材Pは、第1の引抜ローラ対261を経由して搬送手段(搬送部材)であるレジストローラ対(搬送ローラ対)270に搬送され、レジストローラ対270により斜行が補正される。なお、本実施例における給送部201Eは、第1~第4の給送部231~234を有しており、それぞれ給送カセット241~244、給送ローラ対251~254、引抜ローラ対261~264を有している。また、搬送方向上流(下方)に配置される給送部は、記録材Pの給送時において、より搬送方向下流(上方)に配置される給送部の引抜ローラ対を利用する。例えば、第3の給送部233より記録材Pを給送する場合、第3の給送カセット243に収納された記録材Pは、第3の給送ローラ対253、第3の引抜ローラ対263、第2の引抜ローラ対262、第1の引抜ローラ対261を経由して、レジストローラ対270へ搬送される。
【0021】
さらに、画像形成装置本体201Aには、画像形成動作及び記録材給送動作などを制御する制御部(制御手段)280が設けられている。
【0022】
次に、画像形成装置201の画像形成動作について説明する。なお、ここでは第2の給送部232から記録材Pを給送する場合を例に挙げる。また、ここではフルカラー画像の形成時の動作を例に挙げる。ここで、4つのプロセスカートリッジ211に関する動作は、使用されるトナーの色が異なることを除いて実質的に同じである。本実施例では、中間転写ベルト216の移動方向に関して上流側から下流側へとY、M、C、Kの順番で各色用のプロセスカートリッジ211が配置されている。
【0023】
まず、原稿の画像情報が画像読取装置202によって読み取られると、この画像情報は画像処理された後、電気信号に変換されて画像形成部201Bのレーザスキャナ210に伝送される。画像形成部201Bでは、図中時計回り方向に回転駆動される感光体ドラム212の表面が、帯電器213によって所定の極性(本実施例では負極性)の所定の電位に一様に帯電処理される。帯電処理された感光体ドラム212の表面は、レーザスキャナ210からの、画像情報に応じて変調されたレーザ光により、順次走査露光される。これにより、各プロセスカートリッジ211の感光体ドラム212上に、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの画像の静電潜像(静電像)が順次形成される。本実施例では、一様に帯電処理された後に露光されることで電位の絶対値が低下した感光体ドラム212上の露光部(イメージ部)に、感光体ドラム212の帯電極性と同極性(本実施例では負極性)に帯電したトナーが付着する。本実施例では、現像時のトナーの帯電極性であるトナーの正規の帯電極性は負極性である。
【0024】
各感光体ドラム212上に形成された静電潜像は、各現像器214によって現像剤としての各色のトナーが供給されて現像(可視化)され、各感光体ドラム212上に各色のトナー像が順次形成される。各感光体ドラム212上の各色のトナー像は、各1次転写部224において、各1次転写ローラ219の作用によって、中間転写ベルト216上に順次重ね合わせて転写(1次転写)される。1次転写時に、1次転写ローラ219には、1次転写電源(図示せず)により、トナーの正規の帯電極性とは逆極性(本実施例では正極性)の1次転写電圧(1次転写バイアス)が印加される。これにより、中間転写ベルト216上にトナー像が形成される。
【0025】
また、このトナー像形成動作に並行して第2の給送部232に設けられた第2の給送ローラ対252から記録材Pが送り出される。送り出された記録材Pは、第2の引抜ローラ対262、第1の引抜ローラ対261を経由してレジストローラ対270に搬送され、レジストローラ対270により斜行が補正される。斜行が補正された後、記録材Pは、レジストローラ対270により2次転写部218まで搬送される。中間転写ベルト216上のトナー像は、2次転写部218において、2次転写ローラ217の作用によって、記録材P上に一括して転写(2次転写)される。2次転写時に、2次転写ローラ217には、2次転写電源(図示せず)により、トナーの正規の帯電極性とは逆極性(本実施例では正極性)の2次転写電圧(2次転写バイアス)が印加される。
【0026】
次に、トナー像が転写された記録材Pは、定着部220に搬送され、定着部220において熱及び圧力を受けて各色のトナーが溶融混色し、記録材Pにカラーの画像として定着される。画像が定着された記録材Pは、定着部220の上方に設けられた第1の排出ローラ対225aもしくは第2の排出ローラ対225bによって排出部Sに排出され、排出部Sの底面に突出された積載部223に積載される。なお、記録材Pの両面に画像を形成する際は、画像が定着された後、記録材Pは、反転ローラ対222により再搬送通路Rに搬送され、再度、画像形成部201Bに搬送される。
【0027】
2.搬送経路
次に、本実施例における記録材Pの搬送経路について更に詳しく説明する。図2は、第2の給送部232から記録材Pを給送し第1の搬出ローラ対225aより排出する場合の、記録材Pの搬送経路の概略図である。
【0028】
図2に示すように、第2の給送部232から給送される記録材Pの搬送経路は、第2の給送ローラ対252、第2の引抜ローラ対262、第1の引抜ローラ対261、レジストローラ対270、2次転写部218、定着部220、及び第1の搬出ローラ対225aから成る。第2の給送カセット242より給送された記録材Pは、図2中の矢印が示すように、各搬送ローラ対によって、装置の内部を大まかに重力方向の下方から上方へと搬送される。
【0029】
第2の給送ローラ対252は、一対の搬送部材であるフィードローラとリタードローラとによって構成され、これらの間にはニップ部が形成される。フィードローラとリタードローラは、それぞれ給送モータ(図示せず)に接続されており、この給送モータにより回転駆動される。第2の給送ローラ対252は、ピックアップローラ(図示せず)より送り出された記録材Pを1枚に分離し、ニップ部で挟持した記録材Pを第2の引抜ローラ対262へ向け搬送方向下流へと給送する。
【0030】
第2の引抜ローラ対262及び第1の引抜ローラ対261は、それぞれ一対の搬送部材である搬送ローラ対によって構成され、これらの間にはニップ部が形成される。これらの搬送ローラ対は、それぞれ引抜モータ(図示せず)に接続されており、この引抜モータにより回転駆動される。第2の引抜ローラ対262及び第1の引抜ローラ対261は、それぞれ搬送方向上流から搬送されてきた記録材Pを、ニップ部で挟持してさらに搬送方向下流へと搬送する。
【0031】
レジストローラ対270は、一対の搬送部材である第1のレジストローラ270aと第2のレジストローラ270bとによって構成され、これらの間のニップ部としてレジニップ部221が形成されている。第1のレジストローラ270aは、駆動部271a(図20)を介して搬送モータ271b(図20)に接続されている。第1のレジストローラ270aは、搬送モータ271bから駆動力が伝達された駆動部271aにより回転駆動される。第2のレジストローラ270bは、第1のレジストローラ270aに向けて押圧され、第1のレジストローラ270aの回転に伴って従動回転する。レジストローラ対270は、レジニップ部221において挟持した記録材Pを2次転写部218に向けて搬送する。なお、本実施例では、上述のように、レジストローラ対270を構成する第1、第2のレジストローラ270a、270bのうち第1のレジストローラ270aが回転駆動され、第2のレジストローラ270bは従動回転する。ただし、本発明は斯かる態様に限定されるものではなく、第1、第2のレジストローラ270a、270bの両方が、駆動源からの駆動力が伝達されて回転駆動されてもよい。
【0032】
2次転写部218は、駆動ローラ216aに内周面を支持された中間転写ベルト216と2次転写ローラ217との間のニップ部として形成されている。駆動ローラ216aは、ベルト駆動部230a(図20)を介して作像モータ230b(図20)に接続されている。駆動ローラ216aは、作像モータ230bから駆動力が伝達されたベルト駆動部230aにより回転駆動される。2次転写ローラ217は、駆動ローラ216a(中間転写ベルト216)に向けて押圧され、駆動ローラ216a(中間転写ベルト216)の回転に伴って従動回転する。駆動ローラ216aにバックアップされた中間転写ベルト216と2次転写ローラ217とは、2次転写部218に挟持された記録材Pに画像を転写するとともに、記録材Pを定着部220に向けて搬送する。なお、本実施例では、上述のように、2次転写ローラ217は従動回転する。ただし、本発明は斯かる態様に限定されるものではなく、駆動ローラ216a及び2次転写ローラ217の両方が、駆動源からの駆動力が伝達されて回転駆動されてもよい。
【0033】
定着部220は、定着ローラ及び加圧ローラを有しており、これらのローラの間のニップ部として定着ニップ部が形成されている。定着ローラ及び加圧ローラは、それぞれ定着モータ(図示せず)に接続されており、この定着モータにより回転駆動される。定着ローラ及び加圧ローラは、定着ニップ部に挟持された記録材P上のトナー像を記録材Pに定着させるとともに、記録材Pを排出部Sに向けて搬送する。
【0034】
各ニップ部間の搬送経路には、搬送される記録材Pを案内するガイド部(図示せず)が設けられており、搬送方向上流より搬送されてきた記録材Pの先端を搬送方向下流のニップ部へ案内する。図2に示すように、搬送経路は屈曲しており、記録材Pはガイド部で規制された空間に倣った形状に屈曲した状態で搬送される。また、記録材Pの第1面(オモテ面)側のガイド部と第2面(ウラ面)側のガイド部との間には多少の空間的余裕があるため、記録材Pは搬送方向に対し交差する方向(例えば垂直方向)に撓むことが可能である。搬送方向上流側の搬送ローラ対による記録材Pの搬送速度と搬送方向下流側の搬送ローラ対による記録材Pの搬送速度しだいで、その記録材Pが撓む程度は増減する。
【0035】
3.記録材に起因した色ずれ
<色ずれの原因>
図3は、記録材Pの搬送方向に画像上で生じる色ずれを説明するための模式図である。図中のY1、M1、C1、K1及びY2、M2、C2、K2は、画像情報にて記録材Pの搬送方向に関して対し等しい位置に配置された各色(それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)の画像を示している。図3(a)は色ずれしていない場合を表しており、図3(b)は色ずれしている場合を表している。通常、図3(a)に示すように、搬送方向に関して等しい位置に配置された各色の画像も、図3(b)に示すように、中間転写ベルト216の搬送速度変動などにより、搬送方向にずれて転写されることがある。ここでは、ある色(例えばイエロー)の転写位置に対する、各色の搬送方向の転写位置ずれを色ずれと呼称し、記録材Pの搬送方向を色ずれの負方向(記録材Pの搬送方向とは逆方向を色ずれの正方向)として表す。
【0036】
次に、記録材Pに起因した色ずれが発生する原理を説明する。記録材Pが2次転写部218に挟持されながら搬送される状態では、2次転写部218とレジニップ部221とでの記録材Pの搬送速度が異なると、記録材Pにテンション力が発生する。そして、2次転写部218、レジニップ部221の双方に対し、記録材Pの搬送方向に平行な力が作用する。
【0037】
まず、2次転写部218での記録材Pの搬送速度に対してレジニップ部221での記録材Pの搬送速度が遅い場合について説明する。このときは、2次転写部218とレジニップ部との間で記録材Pを引っ張り合う関係になっている。図4(a)のグラフの実線は、2次転写部218での記録材Pの搬送速度に対してレジニップ部221での記録材Pの搬送速度が遅い場合の2次転写部218のトルク変動を示している。2次転写部218に記録材Pの先端が突入した後、記録材Pのテンション力の影響で2次転写部218のトルクが徐々に大きくなり、記録材Pの後端がレジニップ部221を抜ける(通過する)と突然トルクが小さくなる。
【0038】
作用した力は、2次転写部218の駆動ローラ216aに定常駆動されている中間転写ベルト216の搬送速度を変動させる。図4(b)のグラフの実線は、2次転写部218とレジニップ部221との間で記録材Pを引っ張り合う関係になった場合の中間転写ベルト216の累積の位置ずれ量を示している。各感光体ドラム212と各1次転写ローラ219とで挟持された各1次転写部224において、各感光体ドラム212に対する中間転写ベルト216の搬送速度が変化すると、狙いの1次転写位置からずれた位置にトナー像が転写される。図5(a)は、各色のずれが重なった場合にそれぞれがどのような位置ずれになるかを示している。結果、イエロー基準で各色のずれ量を色ずれとした場合、図5(b)に示すように色ずれとなって表れる。
【0039】
次に、2次転写部218での記録材Pの搬送速度に対してレジニップ部221での記録材Pの搬送速度が速い場合について説明する。このときは、2次転写部218とレジニップ部との間で記録材Pを押し込み合う関係になっている。図6(a)のグラフの実線は、2次転写部218での記録材Pの搬送速度に対してレジニップ部221での記録材Pの搬送速度が速い場合の2次転写部218のトルク変動を示している。2次転写部218に記録材Pの先端が突入した後、記録材Pからのバックテンションの影響で2次転写部218のトルクが徐々に小さくなり、記録材Pの後端がレジニップ部221を抜けると突然トルクが大きくなる。
【0040】
作用した力は、2次転写部218の駆動ローラ216aに定常駆動されている中間転写ベルト216の搬送速度を変動させる。図6(b)のグラフの実線は、2次転写部218とレジニップ部221との間で記録材Pを押し込み合う関係になった場合の中間転写ベルト216の累積の位置ずれ量を示している。各感光体ドラム212と各1次転写ローラ219とで挟持された各1次転写部224において、各感光体ドラム212に対する中間転写ベルト216の搬送速度が変化すると、狙いの1次転写位置からずれた位置にトナー像が転写される。図7(a)は、各色のずれが重なった場合にそれぞれがどのような位置ずれになるかを示している。結果、イエロー基準で各色のずれ量を色ずれとした場合、図7(b)に示すように色ずれとなって表れる。
【0041】
これらの結果より、2次転写部218の駆動ローラ216aに力が作用してトルク変動ΔT1(図4(a))やΔT2(図6(a))が生じると、それが中間転写ベルト216の累積の位置ずれΔD1(図4(b))やΔD2(図6(b))となる。そのため、2次転写部218とレジニップ部221との間で記録材Pを引っ張り合う関係や押し込み合う関係にならないように記録材Pを搬送するのが望ましいことがわかる。
【0042】
<従来の方法の原理>
次に、従来の色ずれ低減方法を実施した場合の色ずれ低減の原理について説明する。なお、本実施例のものに対応する要素には本実施例と同一の符号を付して説明する。図8(a)のグラフの実線は、従来の色ずれ低減方法を実施した場合の2次転写部218のトルク変動を示している。記録材Pの先端が2次転写部218に突入してからトルクは徐々に大きくなる。しかし、従来の色ずれ低減方法では、記録材Pの後端がレジニップ部221を抜けるタイミング(記録材Pの後端がレジニップ部221を抜ける前後)でトルク変動が0になるようにレジストローラ270aの回転数(回転速度)を設定している。結果的に、ΔT3のトルク変動が生じているが、前述したΔT1(図4(a))やΔT2(図6(a))よりは小さいトルク変動量に抑えることができている。図8(b)のグラフの実線は、この場合の中間転写ベルト216の累積の位置ずれ量を示している。ΔD3の位置ずれが発生しているものの、前述のΔD1(図4(b))やΔD2(図6(b))よりも小さい位置ずれ量に抑えられている。そして、この場合、図9(a)、図9(b)にそれぞれ示すように、各色のずれ量や色ずれ量も、図5(a)、(b)、図7(a)、(b)に示したものよりも小さく抑えることができている。
【0043】
<本実施例の方法の原理>
次に、本実施例の色ずれ低減方法の原理について説明する。図10(a)のグラフの実線は、本実施例の色ずれ低減方法を実施した場合の2次転写部218のトルク変動を示している。本実施例の色ずれ低減方法では、記録材Pの先端が2次転写部218に突入してから記録材Pの後端がレジニップ部221を抜けるまでの間、トルクは略一定で変動していない。これは、レジニップ部221による記録材Pの搬送速度と2次転写部218による記録材Pの搬送速度とが略等しく、レジニップ部221と2次転写部218との間で記録材Pを引っ張り合う関係にも押し込み合う関係にもなっていないことを示す。一方、記録材Pの後端がレジニップ部221を抜けた直後にΔT5のトルク変動が生じている。レジニップ部221と2次転写部218との間で記録材Pを引っ張り合う関係にも押し込み合う関係にもなっていない場合、原理的にこのΔT5のトルク変動が生じる。
【0044】
図12を用いて、上記ΔT5のトルク変動の発生原理について説明する。図12は、レジニップ部221から2次転写部218までの記録材Pの搬送経路の拡大図である。図12(a)は、記録材Pの後端がレジニップ部221を抜ける前、図12(b)は、記録材Pの後端がレジニップ部221を抜けた後の記録材Pの姿勢を表している。
【0045】
図12(a)に示すように記録材P(図12(a)中のP1)がレジニップ部221と2次転写部218との両方に挟持されている状態のときに、2次転写部218が記録材Pから受ける力「Tpaper,1」は、下記式1で表される。
Tpaper,1=Tdrug,1+Tmass,1+Ttens,1 ・・・(式1)
【0046】
ここで、「Tdrug」は、記録材Pが搬送ガイド300から受ける摺動摩擦力による力、「Tmass」は、記録材Pの自重による力、「Ttens」は、記録材Pのテンション力による力である。
【0047】
一方、図12(b)に示すように記録材P(図12(b)中のP3)がレジニップ部221に挟持されていない状態になるときに、2次転写部218が記録材Pから受ける力「Tpaper,2」は、下記式2で表される。
Tpaper,2=Tdrug,2+Tmass,2+Ttens,2 ・・・(式2)
【0048】
今、レジニップ部221と2次転写部218との間で記録材Pを引っ張り合う関係にも押し込み合う関係にもなっていないことから、「Ttens,1」及び「Ttens,2」はゼロである。一方、レジニップ部221で挟持していた記録材Pの自重、及び搬送ガイド300による摺動摩擦力を、2次転写部218が負担することになるため、
Tmass,1<Tmass,2、及び
Tdrug,1<Tdrug,2
が成り立つ。
【0049】
上記関係と式1及び式2とから、
Tpaper,1<Tpaper,2
となる。故に、下記式3が成り立つ。
ΔT5=Tpaper,2-Tpaper,1>0 ・・・(式3)
【0050】
図10(b)のグラフの実線は、本実施例の色ずれ低減方法を実施した場合の中間転写ベルト216の累積の位置ずれ量を示している。本実施の色ずれ低減方法を実施した場合の色ずれ量は、図10(b)に示すように、ΔT4(図10(a))のトルク変動によって生じる位置ずれΔD4によって決まる。そして、図11(a)、図11(b)は、それぞれこの場合の各色のずれ量と色ずれ量とを示している。本実施例の色ずれ低減方法を実施した場合、各色のずれ量や色ずれ量は、図5(a)、(b)、図7(a)、(b)に示したものよりも小さく抑えることができている。
【0051】
ここで、従来の色ずれ低減方法を実施した場合の図8(a)に示す2次転写部218のトルク変動と、本実施例の色ずれ低減方法を実施した場合の図10(a)に示す2次転写部218のトルク変動とを比較する。記録材Pの先端が2次転写部218に突入してから記録材Pの後端がレジニップ部221を抜けるまでの区間の最大トルク変動ΔTは、従来の方法ではΔT3、本実施例の方法ではΔT4となる。この最大トルク変動ΔTは、記録材Pの先端が2次転写部218に突入する前のトルクと記録材Pの後端がレジニップ部221を抜けた後のトルクとの差である。そのため、従来の方法でのΔT3と、本実施例の方法でのΔT4と、は略等しい値となる。
【0052】
<従来の方法の課題>
次に、従来の色ずれ低減方法を実施した場合の課題について説明する。図8(a)のグラフの実線で示すように、従来の色ずれ低減方法では、記録材Pの後端がレジニップ部221を抜ける前のトルクTpreと、レジニップ部221を抜けた後のトルクTpostと、を等しくするために、次のようにしている。つまり、記録材Pの先端が2次転写部218に突入した後から徐々にトルクが上昇するように、レジストローラの回転数(回転速度)を設定している。これは、レジニップ部221と2次転写部218との間で記録材Pを引っ張り合う関係になっていることを示している。
【0053】
図12を用いて、従来の色ずれ低減方法を実施した場合の記録材Pの姿勢について説明する。図12(a)中のP1は、記録材Pがレジニップ部221と2次転写部218との間で引っ張り合いも押し込み合いもなく搬送されているときの姿勢(すなわち、本実施例の方法における姿勢)である。従来の色ずれ低減方法においてを実施した場合に、上述のようにレジニップ部221と2次転写部218との間で記録材Pを引っ張り合う関係になると(すなわち、レジニップ部221による記録材の搬送速度が2次転写部218による記録材の搬送速度に比べて相対的に遅い場合)、記録材Pの姿勢は図12(a)中のP2のようになる。そして、記録材Pの後端がレジニップ部221を抜けると、図12(b)中のP3のように記録材Pの引っ張りが解放されて記録材Pの姿勢が急激に変化する。この時、2次転写部218の近傍における中間転写ベルト216と記録材Pとの間隔Gが変動する。そして、この時に記録材Pに転写する画像の乱れが発生する。
【0054】
すなわち、従来の色ずれ低減方法を実施した場合、色ずれ量は小さく抑えられるが、画像の乱れが発生する。
【0055】
これに対し、本実施例の色ずれ低減方法を実施した場合は、記録材Pの後端がレジニップ部221を抜ける前後での記録材Pの姿勢は、図12(a)中のP1の状態から、図12(b)中のP3の状態へ移行するため、間隔Gの変動は十分に小さい。そのため、色ずれ量を小さく抑えつつ、画像の乱れを抑制することが可能である。このように、本実施例によれば、2次転写部218のトルク変動による画像のずれを抑制しつつ、記録材Pがレジストローラ270aを通過した後の記録材Pの姿勢の変動を低減して画像の乱れを抑制することができる。
【0056】
4.本実施例の制御の概要
本実施例における、レジニップ部221と2次転写部218との間で記録材Pを引っ張り合う関係にも押し込み合う関係にもならないようなレジストローラ270aの回転数(回転速度)を設定する方法について説明する。
【0057】
図13は、レジニップ部221と2次転写部218との間で記録材Pを引っ張り合う関係にも押し込み合う関係にもなっていないときの、レジストローラ270aを駆動する搬送モータ271bのトルク変動を示す。2次転写部218とレジニップ部221は、記録材Pを介して互いに作用反作用の力を及ぼし合っている。そのため、図13に示す搬送モータ271bのトルク変動の挙動は、図10(a)に示す2次転写部218のトルク変動の挙動を上下反転した挙動と相似な挙動である。記録材Pの先端が2次転写部218に突入してから記録材Pの後端がレジニップ部221を抜けるまでトルクは略一定で、記録材Pの後端がレジニップ部221を抜けた後にΔTrのトルクの低下が発生する。2次転写部218のトルク変動は、1次転写部224における感光体ドラム212による摺擦抵抗を受けるため、記録材Pに起因したトルク変動のみを検知しにくい場合がある。そのため、本実施例では、2次転写部218のトルク変動の代用として、レジニップ部221のトルク変動を搬送モータ271bのトルク変動を検知することで検知している。
【0058】
図15は、2次転写部218の記録材Pの搬送速度を駆動ローラ216aの回転数を変更することで変化させたときの、搬送モータ271bの実際のトルク変動を測定した結果を示すグラフ図である。搬送速度に応じてΔTrの値が変化している。ΔTr0は、2次転写部218とレジニップ部221との間で記録材Pを引っ張り合う関係にも押し込み合う関係にもなっていない状態でのトルク変動である。
【0059】
図16は、2次転写部218の記録材Pの搬送速度と搬送モータ271bのトルク変動ΔTrとの関係をプロットしたグラフ図である。図16は、横軸が2次転写部218の記録材Pの搬送速度、縦軸がΔTrである。2次転写部218の記録材Pの搬送速度によってΔTrは一意に決まる。そのため、予め目標とするΔTrが分かれば、それを目標として駆動ローラ216aの回転数を制御することで、2次転写部218の記録材Pの搬送速度を変更し、ΔTrを制御することが可能である。
【0060】
本実施例では、2次転写部218とレジニップ部221との間で記録材Pを引っ張り合う関係でも押し込み合う関係でもない場合のΔTr0を目標値とする。そして、実際のトルク変動ΔTrが目標値と略等しくなるように駆動ローラ216aの回転数(回転速度)を決定する。
【0061】
次に、記録材Pの種類、特に記録材Pの坪量(あるいは厚さ)が異なる場合のトルク変動ΔTrについて説明する。図17は、図16の場合よりも坪量が大きい記録材Pを用いた場合の、図16と同様の2次転写部218の記録材P(ここでは「厚紙」ともいう。)の搬送速度と搬送モータ271bのトルク変動ΔTrとの関係プロットしたグラフ図である。図17には、図16に示した記録材P(ここでは「普通紙」ともいう。)の場合のプロットも併せて示している。記録材Pの坪量が大きいと、前述の式1、式2における「Tmass,1」及び「Tmass,2」が大きくなり、ΔTrも大きくなる。よって、記録材Pの種類、特に記録材Pの坪量が異なると、2次転写部218の記録材Pの搬送速度が等しくてもトルク変動ΔTrは異なる値を持つ。すなわち、用いる記録材Pの坪量に応じて目標値とするΔTrを変更することが望ましい。
【0062】
このように、本実施例では、予め2次転写部218とレジニップ部221との間で記録材Pを引っ張り合う関係でも押し込み合う関係でもない場合の搬送モータ271bのトルク変動ΔTr0を求める。
【0063】
ここで、2次転写部218とレジニップ部221との間で記録材Pを引っ張り合う関係でも押し込み合う関係でもない場合は、2次転写部218による記録材Pの搬送速度と、レジニップ部221による記録材Pの搬送速度と、が略等しい場合である。つまり、2次転写部218における中間転写ベルト216の周速度(略駆動ローラ216aの周速度)と、レジニップ部221におけるレジストローラ270aの周速度と、が略等しい場合である。ここで、この周速度が略等しい場合には、2次転写部218における中間転写ベルト216の周速度(略駆動ローラ216aの周速度)に対するレジニップ部221におけるレジストローラ270aの周速度の比(周速比)が、95%以上、105%以下である場合が含まれる。この周速比が100%でない場合には、記録材Pの先端が2次転写部218に突入してから記録材Pの後端がレジニップ部221を抜けるまでに、図14に示すようにトルクが徐々に小さくなったり大きくなったりする。そのため、図14に示すように、記録材Pの後端がレジニップ部221を抜けた際に発生するトルク変動ΔTrが、図13に示す場合よりも小さくなったり大きくなったりする。この場合も、記録材Pの先端が2次転写部218に突入した直後のトルク(図14中のA)と記録材Pの後端がレジニップ部221を抜けた直後のトルク(図14中のB)との差分の絶対値に対する、記録材Pの後端がレジニップ部221を抜けた際のトルク変動ΔTrの絶対値の割合が80%以上、120%以下であれば、2次転写部218とレジニップ部221との間で記録材Pを引っ張り合う関係でも押し込み合う関係でもない場合、つまり2次転写部218による記録材Pの搬送速度と、レジニップ部221による記録材Pの搬送速度と、が略等しい場合に含まれるものとする。
【0064】
そして、本実施例では、上記2次転写部218とレジニップ部221との間で記録材Pを引っ張り合う関係でも押し込み合う関係でもない場合の搬送モータ271bのトルク変動ΔTr0を、記録材Pの種類、特に記録材Pの坪量の観点で区別される記録材Pの種類ごと(坪量の範囲ごとなど)に予め求める。このトルク変動ΔTr0は、駆動ローラ216aの回転数を制御するための目標値として、記録材Pの種類と関係付けたテーブルなどとして後述するメモリ282に予め記憶される。そして、後述するように、実際のトルク変動ΔTrが目標値として選択したトルク変動ΔTr0と略等しくなるように(トルク変動ΔTr0との差分が所定値以下となるように)、駆動ローラ216aの回転数が決定される。
【0065】
なお、トルクの検知結果は、上記それぞれのタイミングでのトルク(トルク変動)を代表できるように平均化処理した値を用いることができる。
【0066】
5.トルク変動の検知
次に、本実施例における、搬送モータ271bのトルク変動ΔTrを制御するために搬送モータ271bのトルク変動ΔTrを検知する方法について説明する。本実施例では、搬送モータ271bにステッピングモータを使用し、モータトルクを検知するために駆動制御方式はベクトル制御を用いる。
【0067】
<ベクトル制御>
次に、図18及び図19を参照して、モータ制御部157によって実行される、ステッピングモータ509のベクトル制御の概要について説明する。図18は、モータ制御部157の構成例を示すブロック図である。図18に示すモータ制御部157の基本的な構成は、ブラシレスDCモータ、ACサーボモータなどのモータで利用されている、静止座標系から回転座標系への座標変換を用いたインバータ制御に対応した構成である。
【0068】
モータ制御部157では、ベクトル制御部515から出力される、ステッピングモータ509の駆動電圧Vα、Vβに応じて、PWMインバータ506がステッピングモータ509へ駆動電流を供給することによって、ステッピングモータ509を駆動する。なお、図18に示すように、ベクトル制御部515は、速度制御器502、電流制御器503、504、及び座標変換器505、511によって構成されている。
【0069】
ここで、図19は、A相及びB相から成る2相のモータと回転座標系のdq軸との関係を示す図である。同図では、静止座標系における、A相及びB相の巻線に対応した軸をそれぞれα軸及びβ軸と定義している。また、静止座標系におけるα軸と、回転子(ロータ)として用いられる永久磁石の磁極によって作られる磁束の方向(d軸)との成す角度をθと定義している。この場合、ステッピングモータ509の出力軸の位置(回転位置)は、角度θによって表される。ベクトル制御では、図19に示すように、回転子の磁束方向に沿ったd軸と、d軸から90度進んだ方向に沿った(d軸と直交する)q軸とで表される、ステッピングモータ509の位置θを基準とした回転座標系が用いられる。
【0070】
モータ制御部157は、ステッピングモータ509へ供給する駆動電流を、ステッピングモータ509の位置θを基準とした回転座標系の電流値によって制御するベクトル制御を行う。ベクトル制御では、ステッピングモータ509のA相及びB相の巻線に流れる駆動電流に対応する電流ベクトルが、α軸及びβ軸で表される静止座標系から、d軸及びq軸で表される回転座標系に変換される。このような座標変換の結果、ステッピングモータ509に供給される駆動電流は、回転座標系において、直流のd軸成分(d軸電流)及びq軸成分(q軸電流)によって表される。この場合、q軸電流は、ステッピングモータ509にトルクを発生させるトルク電流成分に相当し、d軸電流は、ステッピングモータ509の回転子の磁束強度に影響する励磁電流成分に相当する。モータ制御部157は、回転座標系におけるq軸電流及びd軸電流を独立して制御することで、ステッピングモータ509のベクトル制御を実現する。
【0071】
具体的には、モータ制御部157は、ステッピングモータ509の位置及び回転速度を推定し、その推定結果に基づいてベクトル制御を行う。モータ制御部157は、図18に示すように、位置制御器501、速度制御器502、及び電流制御器503、504へのそれぞれのフィードバックに基づく3つの制御ループを含み、これらの制御ループによってベクトル制御を実現する。なお、図18に示すモータ制御部157において、ステッピングモータ509の位置θの推定は、誘起電圧演算部512及び位置演算部513によって行われる。また、ステッピングモータ509の回転速度ωの推定は、位置θの推定値に基づいて、速度演算部514によって行われる。
【0072】
位置制御器501を含む、最も外側の制御ループでは、ステッピングモータ509の位置θの推定値のフィードバックに基づいて、ステッピングモータ509の位置制御を行う。モータ制御部157には、制御部(システムコントローラ)280のCPU281(図20)から、ステッピングモータ509の位置指令値θ_refが与えられる(図18中の位置指令生成500)。位置制御器501は、位置演算部513からフィードバックされる、ステッピングモータ509の位置θの推定値の、位置指令値θ_ref(目標値)に対する偏差が0に近づくように、速度指令値ω_refを生成して出力する。このようにして、位置制御器501によるステッピングモータ509の位置制御が行われる。
【0073】
速度制御器502を含む制御ループでは、ステッピングモータ509の回転速度ωの推定値のフィードバックに基づいて、ステッピングモータ509の速度制御を行う。速度制御器502は、速度演算部514からフィードバックされる、ステッピングモータ509の回転速度ωの推定値の、速度指令値ω_ref(目標値)に対する偏差が0に近づくように、電流指令値iq_ref、id_refを生成して出力する。なお、電流指令値iq_ref、id_refは、静止座標系(αβ軸)から回転座標系(dq軸)への座標変換後の、回転座標系における電流指令値である。
【0074】
電流制御器503、504を含む制御ループでは、ステッピングモータ509の各相の巻線に流れる駆動電流の検出値のフィードバックに基づいて、ステッピングモータ509の各相の巻線に供給する駆動電流を制御する。ここで、ステッピングモータ509のA相及びB相の巻線にそれぞれ、
iα=I*cosθ’ ・・・ (式4a)
iβ=I*sinθ’ ・・・ (式4b)
なる電流が流れるものとする。この場合、回転座標系におけるd軸電流及びq軸電流(直流電流)の電流値id、iqは、次式に示す座標変換によって表される。
【0075】
id= cosθ*iα+sinθ*iβ ・・・ (式5a)
iq=-sinθ*iα+cosθ*iβ ・・・ (式5b)
【0076】
このような座標変換によって、静止座標系における、A相及びB相の巻線にそれぞれ流れる交流電流値iα、iβは、回転座標系における直流電流値iq、idに変換される。なお、q軸電流は、ステッピングモータ509にトルクを発生させるトルク電流成分(第1の電流成分)である。d軸電流は、ステッピングモータ509の回転子の磁束強度に影響する励磁電流成分(第2の電流成分)であり、ステッピングモータ509のトルクの発生には寄与しない。
【0077】
ステッピングモータ509のA相及びB相の巻線に流れる駆動電流は、PWMインバータ506とステッピングモータ509との間に設けられた電流検出部507、508によってそれぞれ検出される。電流検出部507、508によって検出された駆動電流の値は、A/D変換器510によってアナログ値からデジタル値へ変換されることで、CPU、又はFPGAなどのプログラミングデバイスによる取り込みが可能になる。A/D変換器510から出力される、静止座標系における電流値iα、iβは、座標変換器511及び誘起電圧演算部512へ入力される。
【0078】
座標変換器511は、式5a式5bによって、静止座標系(αβ軸)における電流値iα、iβを回転座標系(dq軸)における電流値iq、idへ変換して出力する。電流制御器503、504には、座標変換器511から出力される、回転座標系における検出された電流値iq、idと、速度制御器502から出力される、回転座標系における電流指令値iq_ref、id_refとの差分値が入力される。電流制御器503、504は、入力された差分値(すなわち、検出された電流値iq、idの、目標値である電流指令値iq_ref、id_refに対する偏差)が0に近づくように、回転座標系における電流値iq’、id’を生成及び出力する。なお、位置制御器501、速度制御器502、及び電流制御器503、504はそれぞれ、例えば、比例補償器及び積分補償器で構成され、PI制御によりフィードバック制御を実現する。
【0079】
座標変換器505は、電流制御器503、504から出力される、回転座標系における電流値iq’、id’を、次式によって、静止座標系における電流値iα’、iβ’へ逆変換する。
【0080】
iα’=cosθ*id’-sinθ*iq’ ・・・ (式6a)
iβ’=sinθ*id’+cosθ*iq’ ・・・ (式6b)
【0081】
座標変換器505は、静止座標系への座標変換後の電流値iα’、iβ’に応じた駆動電圧Vα、Vβを、フルブリッジ回路で構成されたPWMインバータ506、及び誘起電圧演算部512へ出力する。
【0082】
このようにして、ベクトル制御部515は、ステッピングモータ509の位置θを基準とした回転座標系(dq軸)の電流値によって、ステッピングモータ509の各相の巻線に供給する駆動電流を制御するベクトル制御を行う。ベクトル制御部515は、ステッピングモータ509の位置θの推定値のフィードバックに基づくベクトル制御の結果として、ステッピングモータ509へ供給する駆動電流に対応する駆動電圧Vα、Vβを出力する。なお、ベクトル制御では、通常、ステッピングモータ509のトルクの発生には寄与しない電流成分であるd軸電流は、値が0となるように制御される。すなわち、ベクトル制御部515では、電流指令値id_refが0に設定される。
【0083】
PWMインバータ506では、座標変換器505から入力された駆動電圧Vα、Vβによってフルブリッジ回路が駆動される。その結果、PWMインバータ506は、駆動電圧Vα、Vβに応じてステッピングモータ509の各相の巻線に駆動電流を供給することによって、ステッピングモータ509を駆動する。
【0084】
上述のiqを検知することで搬送モータ271bに発生させるトルクを検知することができる。記録材Pの後端がレジニップ部221を抜ける直前と抜けた直後のiqをそれぞれ検知することで、ΔTrを検知することが可能である。
【0085】
なお、搬送モータ271bは、ステッピングモータではなく、DCブラシレスモータを使用して、その電流値や電圧のPWM値などを検知してトルクの検知を行う構成でもよい。
【0086】
6.制御態様
図20は、本実施例における画像形成装置201の制御態様を説明するための概略ブロック図である。画像形成装置201は、制御部280を有する。制御部280は、演算処理を行う中心的素子である演算制御手段(演算制御部)としてのCPU281、記憶手段(記憶部)としてのROM、RAMなどのメモリ(記憶媒体)282などを有して構成される。書き換え可能なメモリであるRAMには、制御部280に入力された情報、検知された情報、演算結果などが格納され、ROMには制御プログラム、予め求められたデータテーブルなどが格納されている。CPU281とROM、RAMなどのメモリ282とは互いにデータの転送や読込みが可能となっている。なお、制御部280には、制御部280と外部の機器との間の通信を制御する入出力回路(図示せず)なども設けられている。
【0087】
制御部280は、画像形成装置201の各部を統括的に制御する。本実施例との関係では、制御部280には、制御部280の制御のもとで搬送モータ271bの駆動を制御するモータ制御部157が接続されている。モータ制御部157は、上述のように搬送モータ271bのトルクを検知するトルク検知手段(トルク検知部)としての機能も有する。モータ駆動部157は、搬送モータ271bのトルクの検知結果を示す信号を制御部280に入力する。また、制御部280には、制御部280の制御のもとで作像モータ230bの駆動を制御する作像モータ制御部158が接続されている。また、制御部280には、駆動ローラ216a、レジストローラ270aのうち少なくとも一方(本実施例では駆動ローラ216a及びレジストローラ270aのそれぞれ)の使用開始からの使用量に関する指標値を計数(カウント)して計数値(カウント値)を記憶する、計数手段としての記憶部で構成されたカウンタ301が接続されている。本実施例では、上記使用量に関する指標値としては、所定のサイズに換算した場合の印刷枚数(画像を形成した記録材Pの枚数)を用いた。ただし、この指標値は、画像形成装置201の動作に伴う、駆動ローラ216aやレジストローラ270aの使用量と相関する値であればよい。例えば、印刷時間、駆動ローラ216a(中間転写ベルト101)やレジストローラ270の走行距離(あるいは回転回数)、走行時間(あるいは回転時間)などを用いてもよい。制御部280は、記録材Pに画像を形成するごとに、カウンタ301にカウント値(印刷枚数)を更新(加算)して記憶させる。
【0088】
制御部280には、画像形成装置201に接続された画像読取装置やパーソナルコンピュータなどの外部装置(ホスト装置)から、画像形成信号(画像データ、制御指令)が入力される。制御部280は、この画像形成信号(ジョブの情報)に従って、画像形成装置201の各部を制御して、画像形成動作を実行させる。制御指令は、画像形成開始指示、記録材Pに関する情報や画像形成枚数などの画像形成条件に関する情報などを含む。なお、記録材Pに関する情報とは、普通紙、上質紙、光沢紙、グロス紙、コート紙、エンボス紙、厚紙、薄紙、紙質などの一般的な特徴に基づく属性(いわゆる、紙種カテゴリー)、坪量、厚さ、サイズ、剛性などの数値や数値範囲、あるいは銘柄(メーカー、商品名、品番などを含む。)などの、記録材Pを区別することのできる任意の情報を包含するものである。記録材Pに関する情報によって区別される記録材Pごとに、記録材Pの種類を構成するものと見ることができる。なお、記録材Pに関する情報は、例えば「普通紙モード」、「厚紙モード」といった、画像形成装置201の動作設定を指定する画像形成モードの情報に含まれていたり、画像形成モードの情報で代替されたりしてもよい。また、画像形成信号(ジョブの情報)の一部又は全てが、画像形成装置201に設けられた表示手段や入力手段を備えた操作部(図示せず)から制御部280に入力されてもよい。
【0089】
ここで、画像形成装置201は、1つの開始指示により開始される、単一又は複数の記録材Pに画像を形成して出力する一連の動作であるジョブ(印刷ジョブ、プリントジョブ)を実行する。ジョブは、一般に、画像形成工程、前回転工程、複数の記録材Pに画像を形成する場合の紙間工程、及び後回転工程を有する。画像形成工程は、実際に記録材Pに形成して出力する画像の静電像の形成、トナー像の形成、トナー像の1次転写、2次転写を行う期間であり、画像形成時とはこの期間のことをいう。より詳細には、画像形成時のタイミングは、上記静電像の形成、トナー像の形成、トナー像の1次転写、2次転写の各工程を行う位置で異なり、感光体ドラム212上や中間転写ベルト216上の画像形成領域が上記各位置を通過している期間に相当する。前回転工程は、開始指示が入力されてから実際に画像を形成し始めるまでの、画像形成工程の前の準備動作を行う期間である。紙間工程は、複数の記録材Pに対する画像形成を連続して行う際(連続印刷、連続プリント、連続画像形成)の記録材Pと記録材Pとの間に対応する期間である。後回転工程は、画像形成工程の後の整理動作(準備動作)を行う期間である。非画像形成時とは、画像形成時以外の期間であって、上記前回転工程、紙間工程、後回転工程、更には画像形成装置201の電源投入時又はスリープ状態からの復帰時の準備動作である前多回転工程などが含まれる。より詳細には、非画像形成時のタイミングは、感光体ドラム212上や中間転写ベルト216上の非画像形成領域が、上記静電像の形成、トナー像の形成、トナー像の1次転写、2次転写の各工程を行う各位置を通過している期間に相当する。なお、感光体ドラム212上や中間転写ベルト216上の画像形成領域とは、記録材Pに転写されて画像形成装置201から出力される画像が形成され得る領域であり、非画像形成領域は画像形成領域以外の領域である。
【0090】
7.シーケンス
次に、本実施例における色ずれ低減制御を含むジョブのシーケンスの一例について説明する。図21は、該シーケンスの概略を示すフローチャート図である。
【0091】
まず、制御部280は、ジョブの情報を受信すると、メモリ282のフラグを確認する(S101)。本実施例では、このフラグは、レジストローラ270aや駆動ローラ216aが交換された場合や、レジストローラ270aや駆動ローラ216aの使用量の増加により直径の変化量が所定値に達したと判断された場合にONとされる。なお、具体的には、レジストローラ270aや駆動ローラ216aが交換された際に操作者による操作部における操作に応じて、制御部280においてフラグがONとされる。また、制御部280において、レジストローラ270aや駆動ローラ216aの使用量に関するカウンタ301のカウント値が所定の閾値に達した場合に、フラグがONとされる。
【0092】
制御部280は、S101でフラグがOFFであると判断した場合は、通常通り作像動作(画像形成動作)を実行し(S102)、ジョブの動作を終了する。このとき、ジョブが複数枚の記録材Pに対する連続印刷のジョブの場合は、制御部280は、S101以降の手順を繰り返す。
【0093】
一方、制御部280は、S101でフラグがONであると判断した場合は、ジョブの情報に含まれる記録材Pの設定坪量を確認する(S103)。次に、制御部280は、メモリ282に記憶されている前述のようなテーブルに基づいて、坪量に対応した目標トルク変動ΔTr0を設定する(S104)。その後、制御部280は、作像動作を実行し(S105)、前述のようにしてΔTrを検知する(S106)。次に、制御部280は、検知したトルク変動ΔTrの値が目標トルク変動ΔTr0と略等しい(差分が所定値以下)か否かを判断する(S107)。そして、制御部280は、S107で略等しいと判断した場合は(「Yes」)、ジョブを終了する。このとき、ジョブが複数枚の記録材Pに対する連続印刷のジョブの場合は、制御部280は、S101以降の手順を繰り返す。
【0094】
また、制御部280は、S107で略等しくない(差分が所定値を超える)と判断した場合は(「No」)、検知した値トルク変動ΔTrが目標トルク変動ΔTr0より大きいか否かを判断する(S108)。そして、制御部280は、S108で大きいと判断した場合は(「Yes」)、2次転写部218の記録材Pの搬送速度を下げるために駆動ローラ216aの回転数(回転速度)の設定値を下げる(S109)。本実施例では、このとき、予め設定された所定の変更幅分だけ駆動ローラ216aの回転数の設定値を下げる。また、制御部280は、S108で大きくない(小さい)と判断した場合は(「No」)、2次転写部218の記録材Pの搬送速度を上げるために駆動ローラ216aの回転数の設定値を上げる(S110)。本実施例では、このとき、予め設定された所定の変更幅分だけ駆動ローラ216aの回転数の設定値を上げる。
【0095】
駆動ローラ216aの回転数を変更した場合、中間転写ベルト216の搬送速度が変更されるため、1次転写部224での感光体ドラム212から中間転写ベルト216への画像の転写位置が各色でずれる。これを防ぐために、制御部280は、予め計算されたずれ量に基づいてレーザスキャナ210の書き出しタイミングを変更する(S111)。その後、制御部280は、ジョブを終了する。このとき、ジョブが複数枚の記録材Pに対する連続印刷のジョブの場合は、制御部280は、S101以降の手順を繰り返す。今回のジョブ又は次回以降のジョブで次の記録材Pが搬送された場合も、以上の一連の動作を繰り返す。これにより、検知されるトルク変動ΔTrが目標トルク変動ΔTr0と略等しくなるまで、駆動ローラ216aの回転数の設定値の変更が実行される。
【0096】
なお、S109、S110において、図16図17に示したような関係に基づいて、検知した値トルク変動ΔTrと目標トルク変動ΔTr0との差分に対応する分だけ駆動ローラ216aの回転数の設定値を変更してもよい。
【0097】
また、ジョブにおいて画像を形成する記録材Pを用いてジョブの実行中に調整することに代えて、試験用の記録材を用いて駆動ローラ216aの回転数の設定を調整する調整モードを実行するようにしてもよい。ただし、調整のための時間などの削減のためには、ジョブにおいて画像を形成する記録材Pを用いてジョブの実行中に調整することが好ましい。
【0098】
このように、本実施例では、画像形成装置201は、トナー像を担持する像担持体212と、1次転写部224で像担持体212からトナー像が1次転写される、回転可能な中間転写体216と、中間転写体216を駆動する第1の駆動部230bと、中間転写体216に当接して2次転写部218を形成し、2次転写部218を通過する記録材Pに中間転写体216からトナー像を2次転写させる2次転写部材217と、記録材Pを挟持する搬送部221を形成し、2次転写部218に記録材Pを送り込む、回転可能な搬送ローラ270aと、搬送ローラ270aを駆動する第2の駆動部271bと、第2の駆動部271bの駆動トルクを検知する検知部157と、第1の駆動部230bによる中間転写体216の回転速度又は第2の駆動部271bによる搬送ローラ270aの回転速度(本実施例では第1の駆動部230bによる中間転写体216の回転速度)を制御する制御部280と、を有する。そして、制御部280は、記録材Pの搬送方向の後端が搬送部221を通過する際に、検知部157により検知される第2の駆動部271bの駆動トルクが、所定の変動量にて低下するように、第1の駆動部230bによる中間転写体216の回転速度又は第2の駆動部271bによる搬送ローラ270aの回転速度(本実施例では第1の駆動部230bによる中間転写体216の回転速度)を制御し、上記所定の変動量を記録材Pに関する情報に基づいて変更する。本実施例では、上記所定の変動量は、2次転写部218における記録材Pの搬送速度と、搬送部221における記録材Pの搬送速度と、が略等しくなるように設定されている。また、本実施例では、記録材Pの搬送方向の先端が2次転写部218に突入した直後の検知部157により検知される第2の駆動部271bの駆動トルクと、記録材Pの搬送方向の後端が搬送部221を通過した直後の検知部157により検知される第2の駆動部271bの駆動トルクとの差分の絶対値に対する、記録材Pの搬送方向の後端が搬送部221を通過する際に検知部157により検知される第2の駆動部271bの駆動トルクの変動量の絶対値の割合は、80%以上、120%以下である。また、本実施例では、記録材Pに関する情報は、記録材Pの坪量に関する情報を含む。特に、本実施例では、制御部280は、検知部157の検知結果に基づいて第1の駆動部230bによる中間転写体216の回転速度を制御するものであり、該回転速度を変更した場合には、像担持体212に対する画像の書き出しタイミングを変更する。
【0099】
以上説明したように、本実施例によれば、記録材Pの後端がレジニップ部221を抜ける前後の2次転写部218のトルクの差分が、記録材Pの種類、特に記録材Pの坪量に応じて異なる値となるように2次転写部218での記録材Pの搬送速度を調整する。これにより、色ずれを抑制しつつ、記録材Pがレジニップ部221を抜けた後の記録材Pの姿勢の変動を極力少なくして画像の乱れの発生を抑制することが可能となる。したがって、本実施例によれば、2次転写部218のトルク変動による画像のずれを抑制しつつ、記録材Pがレジストローラ270aを通過した後の記録材Pの姿勢の変動を低減して画像の乱れを抑制することができる。
【0100】
[実施例2]
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1の画像形成装置のものと同じである。したがって、本実施例の画像形成装置において、実施例1の画像形成装置のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、実施例1と同一の符号を付して、詳しい説明は省略する。
【0101】
本実施例では、実施例1に対して、駆動速度の変更対象、トルクの検知対象が異なる変形例について説明する。
【0102】
実施例1では、2次転写部218とレジニップ部221との間で記録材Pを引っ張り合う関係でも押し込み合う関係でもなくするように、2次転写部218の記録材Pの搬送速度を変更した。具体的には、駆動ローラ216aの回転数(回転速度)を変更した。これに対して、レジニップ部221の記録材Pの搬送速度を変更して、2次転写部218とレジニップ部221との間で記録材Pを引っ張り合う関係でも押し込み合う関係でもなくするようにしてもよい。具体的には、レジストローラ270aの回転数(回転速度)を変更する。
【0103】
図22は、レジニップ部221の記録材Pの搬送速度と搬送モータ271bのトルク変動ΔTrとの関係をプロットしたグラフ図である。図22には、記録材Pが普通紙の場合と厚紙の場合とのプロットを示している。レジニップ部221の記録材Pの搬送速度によってΔTrは一意に決まる。この場合、2次転写部218とレジニップ部221との間で記録材Pを引っ張り合う関係でも押し込み合う関係でもない場合のΔTr0を目標値とする。そして、実際のトルク変動ΔTrが目標値と略等しくなるようにレジストローラ270aの回転数を決定する。これにより、実施例1の場合と同様に、色ずれを抑制しつつ、記録材Pがレジニップ部221を抜けた後の記録材Pの姿勢の変動を極力少なくして画像の乱れの発生を抑制することが可能となる。
【0104】
また、実施例1では、レジニップ部221のトルク変動を検知した。これに対して、2次転写部218のトルク変動を検知してもよい。具体的には、中間転写ベルト216の駆動ローラ216aを駆動するモータ(作像モータ230b)のトルク変動を検知することで、2次転写部218のトルク変動を検知することができる。例えば、作像モータ230bが実施例1における搬送モータ271bと同様のステッピングモータで構成されている場合、実施例1における搬送モータ271bと同様にしてトルクを検知することができる。なお、作像モータ230bは、ステッピングモータではなく、DCブラシレスモータを使用してその電流値や電圧のPWM値などを検知してトルクの検知を行う構成でもよい。そして、この場合も、2次転写部218とレジニップ部221との間で記録材Pを引っ張り合う関係でも押し込み合う関係でもなくするために、駆動ローラ216a又はレジストローラ270aの回転数(回転速度)を変更することができる。
【0105】
図23は、レジニップ部221の記録材Pの搬送速度と2次転写部218のトルク変動ΔTとの関係をプロットしたグラフ図である。図23には、記録材Pが普通紙の場合と厚紙の場合とのプロットを示している。レジニップ部221の記録材Pの搬送速度によってΔTは一意に決まる。この場合、2次転写部218とレジニップ部221との間で記録材Pを引っ張り合う関係でも押し込み合う関係でもない場合のΔT0を目標値とする。そして、実際のトルク変動ΔTが目標値と略等しくなるようにレジストローラ270aの回転数を決定する。また、図24は、2次転写部218の記録材Pの搬送速度と2次転写部218のトルク変動ΔTとの関係をプロットしたグラフ図である。図24には、記録材Pが普通紙の場合と厚紙の場合とのプロットを示している。2次転写部218の記録材Pの搬送速度によってΔTは一意に決まる。この場合、2次転写部218とレジニップ部221との間で記録材Pを引っ張り合う関係でも押し込み合う関係でもない場合のΔT0を目標値とする。そして、実際のトルク変動ΔTが目標値と略等しくなるように駆動ローラ216aの回転数を決定する。これにより、実施例1の場合と同様に、色ずれを抑制しつつ、記録材Pがレジニップ部221を抜けた後の記録材Pの姿勢の変動を極力少なくして画像の乱れの発生を抑制することが可能となる。
【0106】
なお、レジストローラ270aの回転数を変更する場合は、駆動ローラ216aの回転数を変更する場合とは異なり、中間転写ベルト216の搬送速度は変更されないため、実施例1で説明したような画像書き出し位置の調整を省略することができる。
【0107】
このように、画像形成装置100は、中間転写体216を駆動する第1の駆動部230bの駆動トルクを検知する検知部(作像モータ制御部)158を有していてよい。そして、制御部280は、記録材Pの搬送方向の後端が搬送部221を通過する際に、検知部158により検知される第1の駆動部230bの駆動トルクが、所定の変動量にて上昇するように、第1の駆動部230bによる中間転写体216の回転速度又は第2の駆動部271bによる搬送ローラ270aの回転速度を制御し、上記所定の変動量を記録材Pに関する情報に基づいて変更することができる。この場合も、上記所定の変動量は、2次転写部218における記録材Pの搬送速度と、搬送部221における記録材Pの搬送速度と、が略等しくなるように設定されていてよい。また、この場合も、記録材Pの搬送方向の先端が2次転写部218に突入した直後の検知部158により検知される第1の駆動部230bの駆動トルクと、記録材Pの搬送方向の後端が搬送部221を通過した直後の検知部158により検知される第1の駆動部230bの駆動トルクとの差分の絶対値に対する、記録材Pの搬送方向の後端が搬送部221を通過する際に検知部158により検知される第1の駆動部230bの駆動トルクの変動量の絶対値の割合は、80%以上、120%以下であるようにすればよい。
【符号の説明】
【0108】
201 画像形成装置
212 感光体ドラム
216 中間転写ベルト
216a 駆動ローラ
217 2次転写ローラ
218 2次転写部
219 1次転写ローラ
230 作像モータ
270 レジストローラ対
270a レジストローラ
271b 搬送モータ
280 制御部
P 記録材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
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