(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】通信装置、制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 12/08 20210101AFI20240930BHJP
H04W 76/11 20180101ALI20240930BHJP
H04W 88/02 20090101ALI20240930BHJP
H04M 1/00 20060101ALI20240930BHJP
H04W 84/12 20090101ALI20240930BHJP
【FI】
H04W12/08
H04W76/11
H04W88/02 110
H04M1/00 V
H04W84/12
(21)【出願番号】P 2020162161
(22)【出願日】2020-09-28
【審査請求日】2023-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】吉川 佑生
【審査官】望月 章俊
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-516380(JP,A)
【文献】特開2019-12945(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0271709(US,A1)
【文献】Dan Harkins (HPE),privacy-for-password-identifiers, IEEE 802.11-20/0543r3 ,米国,IEEE, インターネット<URL:https://mentor.ieee.org/802.11/dcn/20/11-20-0543-03-000m-privacy-for-password-identifiers.docx>,2020年05月28日,[検索日 2024.08.06]
【文献】Ganesh Venkatesan (Intel Corporation),CID 1643 related discussion, IEEE 802.11-19/1489r0 ,米国,IEEE, インターネット<URL:https://mentor.ieee.org/802.11/dcn/19/11-19-1489-00-00az-cid-1643-related-discussion.pptx>,2019年09月04日,[検索日 2024.08.06]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W4/00-H04W99/00
H04B7/24-H04B7/26
H04M1/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信装置であって、
無線ネットワークを構築する他の通信装置との接続に、前記無線ネットワークのSSID(Service Set Identifier)および前記無線ネットワークのパスワードと異なる識別子を用いるかを、前記他の通信装置から受信したBeaconと、Probe Responseと、SAE Commitとの何れかに基づいて判定する判定手段と、
前記判定手段によって前記他の通信装置との接続に前記識別子を用いないと判定した場合は、前記識別子を入力する画面は表示せず、前記判定手段によって前記他の通信装置との接続に前記識別子を用いると判定した場合は、前記識別子を入力する画面を表示するように表示部を制御する表示制御手段と、
を有することを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記表示制御手段は、前記判定手段によって前記他の通信装置が用いる複数の前記パスワードの一部が前記識別子を用いると判定した場合は、前記識別子をオプションとして入力する画面を表示するように前記表示部を制御することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記表示制御手段は、前記他の通信装置との接続に前記識別子を用いないと判定した場合は、前記パスワードを入力する入力欄を有し、前記識別子を入力する入力欄を有さない画面を表示し、前記他の通信装置との接続に前記識別子を用いると判定した場合は、前記パスワードを入力する入力欄と、前記識別子を入力する入力欄とを有する画面を表示するように前記表示部を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記表示制御手段は、前記他の通信装置との接続に前記識別子を用いないと判定した場合は、前記パスワードを入力する入力欄を有し、前記識別子を入力する入力欄はグレーアウトしている画面を表示し、前記他の通信装置との接続に前記識別子を用いると判定した場合は、前記パスワードを入力する入力欄と、前記識別子を入力する入力欄とを有する画面を表示するように前記表示部を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の通信装置。
【請求項5】
前記判定手段は、BeaconまたはProbe Responseに含まれる情報が、前記他の通信装置が前記識別子を利用することを示す場合は、前記識別子を用いると判定し、前記他の通信装置が前記識別子を利用することを示さない場合は、前記識別子を用いないと判定することを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の通信装置。
【請求項6】
前記判定手段は、BeaconまたはProbe Responseに含まれるSAE Password Identifiers In Useに基づいて判定することを特徴とする請求項5に記載の通信装置。
【請求項7】
前記パスワードの入力を受け付ける受付手段と、
前記受付手段によって受け付けた前記パスワードを用いて前記他の通信装置にSAE Commitを送信する送信手段と、
前記送信手段によって送信した前記SAE Commitに対する応答を受信する受信手段をさらに有し、
前記判定手段は、前記受信手段によって受信した前記応答に含まれるStatus Codeに基づいて、前記他の通信装置との接続に前記識別子を用いるかを判定することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項8】
前記判定手段は、前記応答に含まれるStatus CodeがUNKNOWN_PASSWORD_IDENTIFIERであることに基づいて、前記他の通信装置との接続に前記識別子を用いると判定し、前記応答に含まれるStatus CodeがSuccessであることに基づいて、前記他の通信装置との接続に前記識別子を用いないと判定することを特徴とする請求項7に記載の通信装置。
【請求項9】
前記識別子は、WPA3(Wi-Fi Protected Access3)に準拠したパスワードIDであることを特徴とする請求項1から8の何れか1項に記載の通信装置。
【請求項10】
前記表示部は前記通信装置に備えられていることを特徴とする請求項1から9の何れか1項に記載の通信装置。
【請求項11】
通信装置の制御方法であって、
無線ネットワークを構築する他の通信装置との接続に、前記無線ネットワークのSSID(Service Set Identifier)および前記無線ネットワークのパスワードと異なる識別子を用いるかを、前記他の通信装置から受信したBeaconと、Probe Responseと、SAE Commitとの何れかに基づいて判定する判定工程と、
前記判定工程において前記他の通信装置との接続に前記識別子を用いないと判定した場合は、前記識別子を入力する画面は表示せず、前記判定工程において前記他の通信装置との接続に前記識別子を用いると判定した場合は、前記識別子を入力する画面を表示するように表示部を制御する表示制御工程と、
を有することを特徴とする制御方法。
【請求項12】
コンピュータを請求項1から10の何れか1項に記載の通信装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線ネットワークの接続情報の設定に関する。
【背景技術】
【0002】
現在Wi-Fi Allianceで策定されているWPA3(Wi-Fi Protected Access3)において、WLANの接続におけるパスワード認証の新しい方式を利用可能にすることが検討されている。WLANとは、Wireless Local Area Networkの略である。従来のWLANにおいて、無線ネットワークを構築するアクセスポイント(AP)に接続するには、APの識別子であるSSID(Service Set Identifier)と、対応するパスワードとをステーション(STA)に入力する必要がある。検討されているパスワード認証の新しい方式では、従来のSSIDとパスワードに加えて、パスワードに紐づいたパスワードID(Identifier)を用いることでアクセスポイントへの接続を可能にする。この場合、ユーザは、STAを接続させたい無線ネットワークに対応するSSIDを選択した後に、パスワードに加えてパスワードIDを入力し、無線ネットワークへの接続する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
WPA3では、パスワードとパスワードIDを利用する新たなパスワード認証だけでなく、従来のパスワードのみを利用するパスワード認証も利用可能である。しかし、STAのユーザには、APが新しいパスワード認証の方式を利用しているかいないかがわからないため、無線ネットワークへの接続にパスワードIDが必要かそうでないかがわからない。
【0005】
特許文献1では、入力されたパスワードに応じて、利用可能な暗号化方式と認証方式とを表示させる通信装置について開示されているが、パスワードからはパスワードIDの要不要は判断できない。
【0006】
上記を鑑み、本発明では、無線ネットワークへの接続にあたって、SSIDおよびパスワードとは異なる識別子が必要かを、容易に識別できるようにすることで利便性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の通信装置は、無線ネットワークを構築する他の通信装置との接続に、前記無線ネットワークのSSID(Service Set Identifier)および前記無線ネットワークのパスワードと異なる識別子を用いるかを、前記他の通信装置から受信したBeaconと、Probe Responseと、SAE Commitとの何れかに基づいて判定する判定手段と、前記判定手段によって前記他の通信装置との接続に前記識別子を用いないと判定した場合は、前記識別子を入力する画面は表示せず、前記判定手段によって前記他の通信装置との接続に前記識別子を用いると判定した場合は、前記識別子を入力する画面を表示するように表示部を制御する表示制御手段と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、無線ネットワークへの接続にあたって、SSIDおよびパスワードとは異なる識別子が必要かを容易に識別できるようになり、利便性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】通信装置103が属するネットワークの構成を示す図である。
【
図3】通信装置103のハードウェア構成を示す図。
【
図4】通信装置103が通信装置102との接続に必要な情報を入力する画面を表示する際に実行する処理を示したフローチャートである。
【
図5】通信装置103が通信装置102との接続処理を実行する際に実行する処理を示したフローチャートである。
【
図6】通信装置103が通信装置102との接続に必要な情報を入力する画面を表示し、接続処理を実行する際に実行する処理を示した別のフローチャートである。
【
図7】通信装置103が通信装置102との接続に必要な情報を入力する画面を表示する際に実行する処理の一例を示したシーケンス図である。
【
図8】通信装置103が通信装置102との接続に必要な情報を入力する画面を表示する際に実行する処理の別の一例を示したシーケンス図である。
【
図9】通信装置103が表示するグラフィカルユーザインタフェースの一例を示す図である。
【
図10】通信装置103が表示するグラフィカルユーザインタフェースの別の一例を示す図である。
【
図11】通信装置103が表示するグラフィカルユーザインタフェースの別の一例を示す図である。
【
図12】通信装置103が表示するグラフィカルユーザインタフェースの別の一例を示す図である。
【
図13】通信装置103が表示するグラフィカルユーザインタフェースの別の一例を示す図である。
【
図14】通信装置103が受信するBeaconフレームまたはProbe Responseフレームのフレームフォーマットの一例を示す図である。
【
図15】通信装置103が通信するRSNE(Robust Security Network Element)のフレームフォーマットの一例を示す図である。
【
図16】通信装置103が通信するExtended Capabilities elementのフレームフォーマットの一例を示す図である。
【
図17】通信装置103が通信するPassword Identifier elementのフレームフォーマットの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態において示す構成は一例に過ぎず、本発明は図示された構成に限定されるものではない。
【0011】
<実施形態1>
図1に、本実施形態にかかる通信装置103が参加するネットワークの構成を示す。通信装置102は、無線ネットワーク101を構築する役割を有するアクセスポイント(AP)として動作する通信装置である。また、通信装置103は、APによって構築された無線ネットワークに参加する役割を有するステーション(STA)として動作する通信装置である。
【0012】
各通信装置は、IEEE(米国電気電子学会、Institute of Electrical and Electronics Engineers)において策定されたIEEE802.11シリーズ規格に準拠した無線通信を実行可能である。IEEE802.11シリーズ規格とは、IEEE802.11a/b/g/n/ac/ax/be規格の少なくとも何れか一つのことである。
【0013】
各通信装置は、IEEE802.11シリーズ規格に加えて、Bluetooth(登録商標)、NFC、UWB、Zigbee、MBOAなどの他の通信規格に対応していてもよい。なお、UWBはUltra Wide Bandの略であり、MBOAはMulti Band OFDM Allianceの略である。なお、OFDMはOrthogonal Frequency Division Multiplexingの略である。また、NFCはNear Field Communicationの略である。UWBには、ワイヤレスUSB、ワイヤレス1394、Winetなどが含まれる。また、有線LANなどの有線通信の通信規格に対応していてもよい。
【0014】
通信装置102および通信装置103は、Wi-Fi Allianceによって策定されたWPA(Wi-Fi Protected Access)3に準拠した無線通信の暗号化方式および認証方式を実行可能である。また、各通信装置はWPA3に加えて、そのレガシー規格である、WPAおよびWPA2にも対応していてもよい。
【0015】
WPA3では、APに接続するための通信パラメータとしてSSIDとパスワードを用いる従来の方式に加えて、通信パラメータとしてSSIDとパスワードとパスワードID(Identifier)とを用いる方式を利用できる。APとの接続にパスワードIDを必要とするかどうかは、AP側の設定によって決定される。WPA3に対応したAPでは、パスワードIDを必須と設定することもできるし、任意と設定することもできるし、不要とする設定することもできる。パスワードIDが任意と設定されたAPに対しては、パスワードIDを用いても用いなくても接続することができる。AP側でのパスワードIDの設定がどうなっているかは、STAのユーザはわからないため、APとの接続にパスワードIDが必要かもわからない。このようなAPと接続を試みる場合に、例えば入力画面で常にパスワードIDの入力が可能であると、仮にAP側でパスワードIDが任意または不要に設定されている場合であっても、STAのユーザはパスワードIDが必須であると思う虞がある。あるいは、例えばSTA側の通信パラメータの入力画面で、パスワードIDの入力を任意として表示すると、仮にAP側でパスワードIDが必須と設定されている場合であっても、STAのユーザはパスワードIDが不要であると思う虞がある。そのため、本実施形態にかかる通信装置103は、AP側でパスワードIDに関する設定に基づいて、適切な通信パラメータの入力画面を表示することで、入力が必要な通信パラメータをユーザが容易に認識できるようにすることができる。
【0016】
通信装置102の具体例としては、無線LANルーターやPCなどが挙げられるが、これらに限定されない。通信装置102は、他の通信装置とIEEE802.11ax規格に準拠した無線通信を実行することができる通信装置であれば何でもよい。また、通信装置103の具体的な例としては、カメラ、タブレット、スマートフォン、PC、携帯電話、ビデオカメラなどが挙げられるが、これらに限定されない。通信装置103は、他の通信装置とIEEE802.11ax規格に準拠した無線通信を実行することができる通信装置であればよい。また、
図1のネットワークは1台のAPと1台のSTAによって構成されるネットワークであるが、APおよびSTAの台数はこれに限定されない。
【0017】
図2には、通信装置103の機能構成を示した。通信装置103は、無線LAN制御部201と、表示画面生成部202と、ユーザ入力解析部203と、UI制御部204と、記憶部205とを有する。なお、UIはユーザインタフェースの略である。
【0018】
無線LAN制御部201は、他の通信装置との間で無線信号の送受信を行うためのハードウェア、およびそれらを制御するプログラムを含んで構成される。無線LAN制御部201は、IEEE802.11シリーズ規格に従って、無線通信の制御を実行する。なお、
図2では通信装置103は無線LAN制御部201を1つ有するとしたが、これに限らず2以上の無線LAN制御部を有していてもよい。
【0019】
UI制御部204は、ユーザによる通信装置103に対する操作を受け付けるためのタッチパネルまたはボタン等のユーザインタフェースに関わるハードウェアおよびそれらを成業するプログラムを含んで構成される。UI制御部204のプログラムにより、
図3に示す入力部304から得られたユーザからの入力内容を後述のユーザ入力解析部203に送る。また、後述の表示画面生成部202で生成された画像を
図3に示す出力部305に送る。ほかにもUI制御部204は、例えば音声出力等の情報をユーザに提示するための機能も有する。
【0020】
ユーザ入力解析部203はUI制御部204で得られた情報を受け取り、ユーザが指示する内容を解析する。具体的には無線LAN制御部201によって実行する制御に関する情報の解析や、表示画面生成部202によって生成される画面関する情報を解析する。表示画面に関する情報は、表示画面生成部202に送信される。
【0021】
表示画面生成部202は、ユーザ入力生成部203から受け取った情報と、記憶部205にある情報からUIとして表示する内容を生成し、UI制御部204に送る。表示画面生成部202で生成する画面はユーザ入力や時間の経過によって変化しうる。
【0022】
記憶部205は、通信装置103が動作するプログラムおよびデータを保存するROMとRAM等を制御するプログラムを含んで構成される。
【0023】
図3には、本実施形態にかかる通信装置103のハードウェア構成を示した。通信装置103は、記憶部301、制御部302、機能部303、入力部304、出力部305、通信部306およびアンテナ307を有する。
【0024】
記憶部301は、ROMやRAM等の1以上のメモリにより構成され、後述する各種動作を行うためのコンピュータプログラムや、無線通信のための通信パラメータ等の各種情報を記憶する。ROMはRead Only Memoryの、RAMはRandom Access Memoryの夫々略である。なお、記憶部201として、ROM、RAM等のメモリの他に、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、DVDなどの記憶媒体を用いてもよい。また、記憶部301が複数のメモリ等を備えていてもよい。
【0025】
制御部302は、例えば、例えばCPUやMPU等の1以上のプロセッサにより構成され、記憶部301に記憶されたコンピュータプログラムを実行することにより、AP102全体を制御する。なお、制御部302は、記憶部301に記憶されたコンピュータプログラムとOS(Operating System)との協働により、通信装置103全体を制御するようにしてもよい。また、制御部302は、他の通信装置との通信において送信するデータや信号(無線フレーム)を生成する。なお、CPUはCentral Processing Unitの、MPUは、Micro Processing Unitの略である。また、制御部302がマルチコア等の複数のプロセッサを備え、複数のプロセッサにより通信装置103全体を制御するようにしてもよい。
【0026】
また、制御部302は、機能部303を制御して、無線通信や、撮像、印刷、投影等の所定の処理を実行する。機能部303は、通信装置103が所定の処理を実行するためのハードウェアである。
【0027】
入力部304は、ユーザからの各種操作の受付を行う。出力部305は、モニタ画面などの表示部やスピーカーを介して、ユーザに対して各種出力を行う。ここで、出力部305による出力とは、モニタ画面などの表示部への表示や、スピーカーによる音声出力、振動出力などであってもよい。なお、タッチパネルのように入力部304と出力部305の両方を1つのモジュールで実現するようにしてもよい。また、入力部304および出力部305は、夫々通信装置103と一体であってもよいし、別体であってもよい。
【0028】
通信部306は、IEEE802.11シリーズ規格に準拠した無線通信の制御を行う。また、通信部306は、有線LAN等の有線通信の制御を行ってもよい。通信部306は、アンテナ307を制御して、制御部302によって生成された無線通信のための信号の送受信を行う。通信装置103は、通信部306を複数有していてもよい。なお、通信装置103が、IEEE802.11シリーズ規格に加えて、NFC規格やBluetooth規格等に対応している場合、これらの通信規格に準拠した無線通信の制御を行ってもよい。また、通信装置103が複数の通信規格に準拠した無線通信を実行できる場合、夫々の通信規格に対応した通信部とアンテナを個別に有する構成であってもよい。通信装置103は通信部306を介して、画像データや文書データ、映像データ等のデータを通信装置102と通信する。なお、アンテナ307は、通信部306と別体として構成されていてもよいし、通信部306と合わせて一つのモジュールとして構成されていてもよい。
【0029】
アンテナ307は、IEEE802.11シリーズ規格に準拠した通信が可能なアンテナである。本実施形態では、通信装置103は1つのアンテナを有するとしたが、周波数帯ごとに異なるアンテナを有していてもよい。また、通信装置103は、アンテナを複数有している場合、各アンテナに対応した通信部306を有していてもよい。
【0030】
なお、通信装置102は通信装置103と同様のハードウェア構成を有する。
【0031】
図4には、通信装置103が通信装置102との接続に必要な情報を入力する画面を表示する際に実行する処理のシーケンス図を示した。通信装置103は、接続するAPの検索をユーザから指示されたことをトリガーに本シーケンスの処理を開始する。あるいはこれに限らず、通信装置103は所定の時間ごとに本シーケンスの処理を開始してもよいし、所定のアプリケーションを起動したことに応じて本シーケンスの処理を開始してもよい。
【0032】
通信装置103はAPを検索するためのスキャンを実行する(S401)。スキャンの方法は2種類ある。1つ目は、通信装置103がAPから送信されるBeaconフレームやProbe Responseフレームを待ち受けるPassiveスキャンである。この場合、通信装置103は信号を送信しないため、後述する他方のスキャンより省電力でスキャンを実行できる。また、DFS(Dynamic Frequency Selection)チャネルなど通信装置103から検索用の信号を送信することができない周波数帯においてスキャンする場合、この方法でスキャンする。通信装置103はBeaconフレームまたはProbe Responseフレームを受信すると、受信したフレームの送信元のAPを検出したAPとして、後述のS402でスキャン結果として表示する。
【0033】
2つ目は、通信装置103がProbe Requestフレームを送信し、APからの応答であるProbe Responseフレームを待ち受けるActiveスキャンである。この方法ではAPが自装置の情報を含めずにBeaconフレームを送信するステルスSSIDとして動作している場合であっても、該当のAPを検出することができる。通信装置103はProbe Responseフレームを受信すると、送信元のAPを検出したAPとして、後述のS402でスキャン結果として表示する。なお、Activeスキャンを実行している場合にも、Beaconフレームを受信すると送信元のAPを検出することができる。
【0034】
通信装置103は、何れか一方の方法によるスキャンのみを行ってもよいし、両方の方法によるスキャンを行ってもよい。また、通信装置103は本シーケンスが開始されたから所定の時間が経過するまでスキャンを実行する。あるいは、所定の数のAPを検出するまでスキャンを継続してもよいし、ユーザからスキャン終了の指示があるまでスキャンを継続してもよい。
【0035】
通信装置103は、スキャンを実行すると、その結果を表示部に表示する(S402)。このときに通信装置103が表示する画面に一例を
図9の(a)に示した。通信装置103はS401で検出したAPのSSIDを一覧にして表示する。なお、スキャン結果の出力は、これに限らず、音声で出力されてもよいし、印刷などによって出力されてもよい。
【0036】
次に、通信装置103は、ユーザがスキャン結果からAP(通信装置102)を選択したかを判定する(S403)。具体的には通信装置103はS402で表示したスキャン結果に一覧から、ユーザが所望のAPのSSIDを選択したかを判定する。ユーザによる選択は、タッチ画面のへのタッチによって行われてもよいし、音声入力によって行われてもよい。通信装置103は、ユーザによって選択されたAPのSSIDを枠で囲うように表示したり、該当のSSIDの周囲の背景の色を変更したりしてもよい。
【0037】
通信装置103は、ユーザが選択したAPがWPA3に対応しているかを判定する(S404)。具体的には通信装置103は、ユーザが選択したAPから受信したBeaconフレームまたはProbe Responseフレームに含まれる情報に基づいて判定する。
【0038】
図14には、通信装置103が受信したBeaconフレームまたはProbe Responseフレームのフレームフォーマットの一例を示した。
図14に示したフレームフォーマットは、Frame Controlフィールド1401、Durationフィールド1402、A1フィールド1403、およびA2フィールド1404を含む。
図14に示したフレームフォーマットは、さらにFrame Bodyフィールド1405、およびFCS(Frame Check Sequence)フィールド1406を含む。また、Frame Bodyフィールド1405には、RSNE(Robust Security Network Element)サブフィールド1407とECE(Extended Capabilities element)サブフィールド1408が含まれる。通信装置103は、
図14で示したフレームフォーマットの左端のフィールドであるFrame Controlフィールド1401から順に生成し、送信する。なお、
図14で示したフィールドおよびサブフィールドの少なくとも1つが省略されてもよい。
【0039】
図4のS404の判定は、RSNEサブフィールド1406に含まれる情報に基づいて判定される。
図15にRSNEサブフィールドのフレームフォーマットの一例を示した。RSNEサブフィールドには、本サブフィールドを送信する通信装置が使用する通信の暗号化方式やグループ鍵の暗号化方式、セキュリティの種類などを示す情報が含まれる。
【0040】
RSNEサブフィールドには、Element IDフィールド1501、Lengthフィールド1502、Versionフィールド1503、およびGroup Data Cipher Suiteフィールド1504が含まれる。RSNEサブフィールドにはさらに、Pairwise Cipher Suite Countフィールド1505、およびPairwise Cipher Suite Listフィールド1506が含まれる。RSNEサブフィールドには、これに加えて、AKM Suite Countフィールド1507およびAKM Suite Listフィールド1508が含まれる。RSNEサブフィールドを送信する通信装置は、
図15で示したフレームフォーマットの左端のElement IDフィールド1501から順に生成し、送信する。なお、
図15で示したフィールドの少なくとも1つが省略されてもよい。
【0041】
Element IDフィールド1501には、本サブフィールドがRSNEサブフィールドであることを示す値である48が入る。
【0042】
AKM Suite Listフィールド1508に含まれる値(Suite type)と、その値が示す認証方式の種類およびハッシュ関数との組み合わせを表1に示す。なお、表1に示した値と認証方式の種類およびハッシュ関数との対応関係は一例であって、これに限らない。
【0043】
【0044】
AKM Suite Listフィールド1508に、Suite Type=8もしくは9が含まれる場合、RSNEサブフィールドの送信装置はWPA3に対応していることを示す。よって、通信装置103は、選択されたAPから受信したAKM Suite Listフィールド1508に値として8または9が含まれている場合は、
図4のS404でYesと判定し、異なる値が含まれている場合はNoと判定する。
【0045】
なお、WPA3に対応していることを示すSuite Typeは8または9に限らず、例えば表1ではReservedとなっている値21がWPA3に対応していることを示してもよい。この場合、例えばSuite Type=21は、認証の種類はSAE、ハッシュ関数はSHA-384に対応していてもよい。このような場合、通信装置103はSuite Type=21の場合も
図4のS404でYesと判定する。
【0046】
なお、本実施形態では、S404において、選択されたAPがWPA3に対応するかを判定したが、これに加えて、あるいは代えて、WPA3以降にWi-Fi Allianceにおいて策定される規格(例えばWPA4など)に対応しているかを判定してもよい。この場合、Suite Typeが21以降の数の場合、WPA4などの、WPA3以降にWi-Fi Allianceによって策定される規格に準拠していると判定する。
【0047】
通信装置103は
図4のS404でNoと判定した場合、表示部にパスワードを入力させる画面を表示させる(S411)。選択されたAPがWPA3に対応していない場合、APは通信パラメータとしてパスワードIDを用いることもないので、通信装置103は、接続に必要な情報として、パスワードIDを入力させず、パスワードのみを入力させるような入力画面を表示する。この場合に通信装置103が表示する入力画面の一例を
図9の(b)に示した。
図9の(b)に示したUIには、パスワードIDの入力欄はなく、パスワードの入力欄のみが入力欄として表示されている。なお、これに限らず、通信装置103はパスワードIDの入力欄をグレーアウトして表示してもよい。あるいは通信装置103はパスワードIDの入力欄を表示するが、ユーザがパスワードIDの入力欄に入力を行うと、エラーを通知することでユーザに入力させないようにしてもよい。
【0048】
一方、通信装置103は、
図4のS404でYesと判定した場合、選択されたAPから受信したBeaconフレームまたはProbe Responseフレームに、ECEサブフィールド1408が含まれているかを判定する(S406)。該当のサブフィールドが含まれている場合、通信装置103は本ステップでYesと判定しS407の処理を行う。一方、該当のサブフィールドが含まれていない場合は、通信装置103は本ステップでNoと判定し、S413の処理を行う。
【0049】
S406でYesと判定された場合、通信装置103はECEサブフィールドに含まれる各種の情報を確認する。
図16にはECEサブフィールドのフレームフォーマットの一例を示した。本サブフィールドには、Element IDフィールド1601、Lengthフィールド1602、およびExtended Capabilitiesフィールド1603が含まれる。
【0050】
Element IDフィールド1601には、本サブフィールドがECEサブフィールドであることを示す値である127が含まれる。Extended Capabilitiesフィールド1603は、SAE Password Identifiers In Useサブフィールド1604を含む。さらに、Extended Capabilitiesフィールド1603は、SAE Password Identifiers Used Exclusivelyサブフィールド1606を含む。ECEサブフィールドの送信装置は、
図16で示したフレームフォーマットの左端のElement IDフィールド1601から順に生成して、送信する。なお、
図16で示したフィールドおよびサブフィールドの少なくとも1つが省略されてもよい。
【0051】
図4のS406においてYesと判定された場合、通信装置103は受信したECEサブフィールドに、
図16で示したSAE Password Identifiers In Useサブフィールド1604が含まれるかを判定する(S407)。SAE Password Identifiers In Useサブフィールド1604含まれているかは、ECEサブフィールドの長さに基づいて判定することができる。ECEサブフィールドが所定の長さ以上の場合、通信装置103はSAE Password Identifiers In Useサブフィールド1604が含まれていると判定する。一方、ECEサブフィールドの長さが所定の長さ未満の場合、通信装置103はSAE Password Identifiers In Useサブフィールド1604が含まれていないと判定する。ECEサブフィールドに該当のサブフィールドが含まれる場合、通信装置103はYesと判定し、S408の処理を行う。一方、ECEサブフィールドに該当のサブフィールドが含まれない場合は、通信装置103はNoと判定し、S413の処理を行う。
【0052】
通信装置103は、SAE Password Identifiers In Useサブフィールド1604がOnを示すかを判定する(S408)。SAE Password Identifiers In Useサブフィールド1604は該サブフィールドの送信装置がパスワードIDを利用するか否かを示す情報を含む。具体的には送信装置が利用するパスワードのうち、1以上のパスワードがパスワードIDを利用するかを示す。1以上のパスワードがパスワードIDを利用するパスワードであるとき、本サブフィールドの値は1となる。一方、ネットワークにアクセスするときに用いられるパスワードに送信装置がパスワードIDを設定していない場合、本サブフィールドの値は0となる。また、ネットワークにアクセスするときに用いられるパスワードそのものが送信装置によって設定されていない場合、本サブフィールドの値は0となる。また、送信装置がパスワードIDをいずれのパスワードに対しても設定しない場合も、本サブフィールドの値は0となる。SAE Password Identifiers In Useサブフィールド1604に値として1が含まれている場合、通信装置103は本ステップでYesと判定し、S409の処理を行う。一方、SAE Password Identifiers In Useサブフィールド1604に値として0が含まれている場合、通信相違t103は本ステップでNoと判定し、S411の処理を行う。
【0053】
次に、通信装置103は、受信したECEサブフィールドに、
図16で示したSAE Password Identifiers Used Exclusivelyサブフィールド1606が含まれるかを判定する(S409)。ECEサブフィールドに該当のサブフィールドが含まれている場合、通信装置103はYesと判定し、S410の処理を行う。一方、ECEサブフィールドに該当のサブフィールドが含まれていない場合、通信装置103はNoと判定し、S413の処理を行う。
【0054】
次に、通信装置103は、SAE Password Identifiers Used Exclusivelyサブフィールド1606がOnであるかを判定する(S410)。SAE Password Identifiers Used Exclusivelyサブフィールド1606は、該サブフィールドの送信装置が設定するパスワードがすべてパスワードIDを使用するか否かを示す情報を含む。送信装置が設定するパスワードが、すべてパスワードIDを使用するパスワードである場合、本サブフィールドに含まれる値は1となる。それ以外の場合、つまり少なくとも1つのパスワードがパスワードIDを使用しない場合、本サブフィールドに含まれる値は0となる。通信装置103は、SAE Password Identifiers Used Exclusivelyサブフィールド1606に含まれる値が1である場合、本ステップでYesと判定し、S412の処理を行う。一方、SAE Password Identifiers Used Exclusivelyサブフィールド1606に含まれる値が0である場合、通信装置103は本ステップでNoと判定し、S413の処理を行う。
【0055】
通信装置103は、パスワードとパスワードIDとの両方を入力可能な入力画面を表示部に表示する(S412)。この場合に、通信装置103が表示する画面の一例を
図10の(b)に示した。なお、
図10の(a)については
図9の(a)と同様である。
図10の(b)に示したUIには、パスワードIDの入力欄と、パスワードの入力欄との両方が入力欄として表示されている。ユーザはパスワードIDの入力欄が表示されているUIを見ることで、選択したAPとの接続にはパスワードだけでなくパスワードIDが必須であることを容易に認識することができる。なお、通信装置103は、本画面において、ユーザがパスワードとパスワードIDとの両方を入力するまで、画面上の「接続」ボタンをグレーアウトさせ、両方が入力されたことに応じて「接続」ボタンを押下可能に表示するように切り替えることができる。これにより、ユーザはより明確に、選択したAPとの接続にパスワードIDが必須であることを認識することができる。
【0056】
なお、S406、S407、S409、およびS410でNoと判定された場合、通信装置103は明らかに誤りであるパスワードを設定したSAE Commitを、ユーザが選択したAPに送信する(S413)。明らかに誤りであるパスワードとは、例えばパスワード長が0であるパスワードである。なお、通信装置103は本ステップで送信するSAE CommitにはパスワードIDを設定しない。
【0057】
あるいは、S406、S407、S409、およびS410でNoと判定された場合、通信装置103はS411の処理を行ってもよい。
【0058】
次に、通信装置103は、送信したSAE Commitに対する応答として、選択したAPからSAE Commitを受信する(S414)。
【0059】
通信装置103は、受信したSAE Commitに含まれるStatus CodeがSuccessを示すかを判定する(S415)。Status CodeがSuccessを示す場合、通信装置103は本ステップでYesと判定し、S416の処理を行う。一方、Status CodeがSuccessではない場合、通信装置103は本ステップでNoと判定し、S417の処理を行う。なお、Status CodeがSuccessではない場合とは、例えばStatus CodeがUNKNOWN PASSWORD IDENTIFIERやREFUSED、REFUSED_REASON_UNSPECIFIEDの場合である。
【0060】
なお、S413でSAE Commitを送信してから所定の時間が経過するまでに相手装置からSAE Commitを受信しなかった場合、通信装置103はS414およびS415をスキップしてS417の処理を行う。
【0061】
通信装置103は、S415でYesと判定した場合、パスワードを入力させ、かつパスワードIDをオプションとして入力させる画面を入力画面として表示する(S416)。S415でYesと判定される場合、つまりStatus CodeがSuccessの場合、選択されたAPが設定したパスワードの中にパスワードIDを必要としないものが含まれることが示される。ただし、パスワードの中にはパスワードIDが設定されているものが含まれる可能性がある。そのため、通信装置103は、パスワードIDをオプションとして入力可能に表示する画面を表示部に表示する。この場合に通信装置103が表示する画面の一例を
図11の(b)に示した。なお、
図11の(a)は
図9の(a)と同様である。
図11(b)に示したように、通信装置103は「パスワードIDを入力する」という選択肢を表示させることで、ユーザにパスワードIDの入力が必須ではなくオプションであることを容易に認識させることができる。
【0062】
図11の(b)において、「パスワードIDを入力する」選択肢が選択された場合に通信装置103が表示する画面の一例を
図12に示した。
図12に示したように、本画面にはパスワードIDの入力欄とパスワードの入力欄とが表示される。なお、通信装置103は、本画面において、ユーザがパスワードとパスワードIDとの両方を入力するまで、画面上の「接続」ボタンをグレーアウトさせ、両方が入力されたことに応じて「接続」ボタンを押下可能に表示するように切り替えてもよい。
【0063】
あるいは、通信装置103は、S416において、
図13の(b)に示したような画面を表示してもよい。なお、
図13の(a)は
図9の(a)と同様である。
図13の(b)には、パスワードの入力欄の他に、選択されたAPとの接続に関する設定を行うための画面に遷移するための「詳細オプション」という選択肢が表示される。ユーザは「詳細オプション」の選択によって遷移された画面において、パスワードIDを入力することができる。また、遷移後の画面において、パスワードIDに加えて、暗号化方式や利用する周波数帯なども設定できるようにしてもよい。
【0064】
S415でNoと判定した場合、通信装置103はパスワードとパスワードIDとの両方を入力可能な入力画面を表示部に表示する(S417)。本ステップの処理についてはS412と同様である。
【0065】
なお、通信装置103はS413の代わりにS416の処理を実行してもよい。つまり、通信装置103はSAE Commitを送信する代わりにパスワード入力画面を表示し、パスワードIDはオプション入力可能に表示してもよい。もしくは、通信装置103はS416の代わりにS411の処理を実行してもよい。つまり、通信装置103はSAE Commitを送信する代わりにパスワードの入力のみを行う入力画面を表示してもよい。
【0066】
以上、
図4に示したように、STAである通信装置103は、選択したAPから受信したBeaconフレームまたはProbe Responseフレームに含まれる情報に基づいて、該APとの接続にパスワードIDが必要であるかを判定する。そして、通信装置103は判定結果に基づいて適切な入力画面を表示することで、選択したAPとの接続にパスワードIDが必要であるかをユーザは容易に認識することができる。これにより、STAのユーザは選択したAPとの接続の際に、容易に必要な通信パラメータを設定できるようになる。
【0067】
図5には、通信装置103が通信装置102との接続処理を実行する際に実行する処理のフローチャートを示した。
図5の処理の開始のトリガーは
図4と同様である。
【0068】
通信装置103は
図4のフローチャートで示した処理を行い、接続を試行するAP(通信装置102)から受信したBeaconフレームまたはProbe Responseフレームに基づいて、表示する画面を選択する。
図5のS520~S524は
図4のフローチャートの処理に相当する。とくに、S522は
図4のS411に、S523は
図4のS412およびS417に、S524は
図4のS416に相当する。
【0069】
通信装置103は、表示部にパスワードIDの入力欄を有さず、パスワードの入力欄を有する入力画面を表示すると、ユーザがパスワードを入力したかを判定する(S501)。本判定は、ユーザがパスワードの入力欄に文字、数字、または記号を1文字以上入力したかに基づいて判定する。あるいは、通信装置103にデフォルトで設定されている複数の文字数以上の文字、数字、または記号の少なくとも何れか1つが入力されたかに基づいて判定してもよい。ユーザがパスワードを入力していない場合、通信装置103は本ステップでNoと判定し、再度S501の処理を行う。一方、ユーザがパスワードを入力した場合、通信装置103は本ステップでYesと判定し、S505の処理を行う。
【0070】
通信装置103は、表示部にパスワードIDの入力欄と、パスワードの入力欄とを有する入力画面を表示した場合、ユーザがパスワードを入力したかを判定する(S502)。本ステップの処理は、S501と同様に行われる。本ステップでNoと判定された場合、通信装置103は再度S502の処理を行う。本ステップでYesと判定された場合、通信装置103はS503の処理を行う。
【0071】
通信装置103は、ユーザがパスワードIDを入力したかを判定する(S503)。本ステップの判定は、S501に示したパスワードの場合と同様に判定される。本ステップでNoと判定された場合、通信装置103は再度S503の処理を行う。本ステップでYesと判定された場合、通信装置103はS505の処理を行う。なおS502とS503の処理は、順序が逆で会ってもよい。
【0072】
通信装置103は、パスワードIDをオプションとして入力可能で、かつパスワードの入力欄を有する入力画面を表示した場合、ユーザがパスワードを入力したかを判定する(S504)。本ステップの処理は、S501と同様である。本ステップでNoと判定された場合、通信装置103は再度S504の処理を行う。本ステップでYesと判定された場合、通信装置103はS505の処理を行う。
【0073】
通信装置103は、表示部に表示している「接続」ボタンを押下可能に切り替える(S505)。通信装置103は、ユーザがAPとの接続に必要な情報を入力するまでは、「接続」ボタンを押下できない状態で表示し、入力されてから押下可能な状態に切り替えることで、ユーザが必要な情報を入力する前に接続を試行してしまうことを防ぐことができる。なお、通信装置103は、「接続」ボタンを接続に必要な情報の入力状態に関わらず押下可能な状態で表示する場合、本ステップを省略する。
【0074】
通信装置103は、表示部に表示している「キャンセル」ボタンが押下されたかを判定する(S506)。「キャンセル」ボタンとは、APとの接続をキャンセルするボタンであって、S522~S524で表示された入力画面に表示されるボタンである。「キャンセル」ボタンが押下された場合、通信装置103は本ステップでYesと判定し、S520の処理を行う。あるいは、本ステップでYesと判定された場合、通信装置103は
図4のS402に戻ってもよいし、本フローチャートの処理を終了してもよい。「キャンセル」ボタンが押下されなかった場合、通信装置103は本ステップでNoと判定し、S507の処理を行う。なお、通信装置103は、S520~S524、およびS501~S505の処理と並行してS506の判定をおこなってもよい。
【0075】
通信装置103は、「接続」ボタンが押下されたかを判定する(S507)。「接続」ボタンがユーザによって押下された場合、通信装置103は本ステップでYesと判定し、S508の処理を行う。一方、「接続」ボタンが押下されなかった場合、通信装置103は本ステップでNoと判定し、S506の処理を行う。
【0076】
次に通信装置103は、接続するAPがWPA3に対応しているかを判定する(S508)。本ステップの判定は、
図4のS404と同様である。あるいは通信装置103は
図4のS404の判定結果を参照して本ステップの判定をおこなってもよい。本ステップでYesと判定された場合、通信装置103はS511の処理を行う。本ステップでNoと判定された場合、通信装置103はS509の処理を行う。
【0077】
通信装置103は、APにAuthentication Requestを送信する(S509)。次に、通信装置103はAPからのAuthentication Responseを受信する(S510)。なお、通信装置103はS509の処理を行ってから所定の時間が経過するまでにAuthentication Responseを受信しなかった場合、エラーを通知し、本フローの処理を終了してもよい。あるいは、通信装置103は、エラーを通知し、S522~S524の内、S509でAuthentication Requestを送信したAPとの接続を試行する際に表示した画面を表示するようにしてもよい。通信装置103はS510の処理を行うと、S515の処理を行う。
【0078】
APがWPA3に対応している場合、通信装置103はAPにSAE Commitを送信する(S511)。S523やS524で表示した入力画面に対してパスワードIDの入力があった場合、本ステップで送信されるSAE Commitには、パスワードIDそのものの値、あるいはパスワードIDに基づいて算出された値が情報として含まれる。
【0079】
パスワードIDまたはそのハッシュ値が含まれるPassword Identifier elementのフレームフォーマットの一例を
図17に示した。SAE Commitは
図14と同様のフレームフォーマットを有し、
図17のelementは、Frame Bodyフィールド1405に含まれる。Password Identifier elementは、Element IDフィールド1701、Lengthフィールド1702、Element ID Extensionフィールド1703、およびIdentifier フィールド1704を含む。通信装置103は、
図17で示したフレームフォーマットの左端のElement IDフィールド1701から順に生成して送信する。なお、
図17で示したフレームフォーマットの少なくとも1つのフィールドが省略されてもよい。
【0080】
Element IDフィールド1701には、Password Identifier elementであることを示す情報として、255という値が含まれる。Identifierフィールド1704には、入力画面を介して入力されたパスワードIDのそのままの値、もしくは入力されたパスワードIDに基づいて算出されたハッシュ値、もしくは復号可能な暗号化された値が含まれる。
【0081】
次に通信装置103は、APからのSAE Commitを受信する(S512)。SAE Commitは、Authenticationフレームの一種である。なお、通信装置103はS511の処理を行ってから所定の時間が経過するまでにSAE Commitを受信しなかった場合、エラーを通知し、本フローの処理を終了してもよい。あるいは、通信装置103は、エラーを通知し、S522~S524の内、S511でSAE Commitを送信したAPとの接続を試行する際に表示した画面を表示するようにしてもよい。
【0082】
通信装置103は、APにSAE Confirmを送信する(S513)。次に通信装置103は、APからSAE Confirmを受信する(S514)。SAE ConfirmはAuthenticationフレームの一種である。なお、通信装置103はS513の処理を行ってから所定の時間が経過するまでにSAE Confirmを受信しなかった場合、エラーを通知し、本フローの処理を終了してもよい。あるいは、通信装置103は、エラーを通知し、S522~S524の内、S513でSAE Confirmを送信したAPとの接続を試行する際に表示した画面を表示するようにしてもよい。通信装置103はS514の処理を行うと、S515の処理を行う。
【0083】
通信装置103は、APにAssociation Requestを送信する(S515)。通信装置103は、APからAssociation Responseを受信する(S516)。通信装置103はS515の処理を行ってから所定の時間が経過するまでにAssociation Responseを受信しなかった場合、エラーを通知し、本フローの処理を終了してもよい。あるいは、通信装置103は、エラーを通知し、S522~S524の内、S515でAssociation Requestを送信したAPとの接続を試行する際に表示した画面を表示するようにしてもよい。
【0084】
次に、通信装置103は、これまでのAPとの処理で生成したPMK(Pairwise Master Key)を基に、APと4way handshakeを行う(S517)。本ステップの処理を行うことで、通信装置103とAP(通信装置102)との接続は確立され、暗号化通信が開始される。
【0085】
以上、
図5に示した処理を行うことで、通信装置102と通信装置103との接続が確立される。
【0086】
図7には、本実施形態において、
図4のS413の処理を行う場合の、通信装置103の表示画面に関するシーケンスを示す。
【0087】
まず、通信装置103はスキャン結果を表示する(S701)。具体的には
図10の(a)に示したような画面を表示する。次に通信装置103は、ユーザによってSSIDが選択されたことを検出する(S702)。本シーケンスでは、
図4の処理の結果、S406、S407、S409、S410の何れかの処理でNoと判定された場合を想定する。通信装置103は、パスワードを0文字としてSAE Commitを通信装置102に送信する(S703)。これに対して、通信装置103はStatus Codeを設定したSAE Commitを通信装置103に送信する(S704)。通信装置103は、受信したSAE CommitのStatus Codeを確認する(S705)。ここでは、Status CodeがSuccessではなかった場合を想定する。通信装置103は、パスワードとパスワードIDとの入力欄を有する入力画面を表示する(S706)。具体的には
図10の(b)で示した画面を表示する。
【0088】
以上、本実施形態では、通信装置103はAPから受信したBeaconフレームまたはProbe Responseフレームに含まれる情報に基づいて、適切な通信パラメータの入力画面を表示する。これにより、ユーザは選択したAPとの接続に必要な情報を容易に認識することができ、とくにパスワードIDの入力が必須かどうかを容易に認識することができるようになる。
【0089】
<実施形態2>
実施形態1では、ユーザによってAPとの接続を指示される前に、パスワードIDが必要かを判定し、通信装置103が適切な通信パラメータの入力画面を表示した。本実施形態では、ユーザによってAPとの接続が指示された後に、パスワードIDが必要かを判定し、適切な画面表示を行う。実施形態2では、実施形態1と異なる点のみを説明する。
【0090】
通信装置103が参加するネットワークの構成は
図1と同様である。通信装置103の機能構成とハードウェア構成は、それぞれ
図2、
図3と同様である。
【0091】
図6には、通信装置103が通信装置102との接続に必要な情報を入力する画面を表示し、接続処理を実行する際に実行する処理を示した別のフローチャートを示した。
図6の処理の開始のトリガーは
図4と同様である。
【0092】
図6のS601~S603の処理は、
図4のS401~S403と同様である。通信装置103は、S603でYesと判定すると、通信装置103はパスワードを入力可能な入力画面を表示する(S604)。具体的には、通信装置103は
図9の(b)に示したような画面を表示する。あるいは、通信装置103は
図10の(b)に示したような画面を表示し、パスワードIDの入力欄をグレーアウトするなどして入力できないように表示してもよい。
【0093】
次に、通信装置103はユーザがパスワードを入力したかを判定する(S605)。通信装置103はパスワードが入力されていないと本ステップでNoと判定し、再度S605の処理を行う。一方、通信装置103は、パスワードが入力されると、本ステップでYesと判定し、S606の処理を行う。
【0094】
S606~S608の処理は、
図5のS505~S507の処理と同様である。
【0095】
次に、通信装置103は選択されたAPがWPA3に対応しているかを判定する(S609)。本ステップの判定方法は、
図4のS404と同様である。APがWPA3に対応している場合、通信装置103は本ステップでYesと判定し、S612の処理を行う。一方、APがWPA3に対応していない場合、通信装置103は本ステップでNoと判定し、S610の処理を行う。
【0096】
S610~S613の処理は、
図5のS509~S512と同様である。
【0097】
通信装置103は、受信したSAE Commitに含まれるStatus CodeがSuccessであるかを判定する(S614)。Status CodeがSuccessの場合、通信装置103は本ステップでYesと判定し、S615の処理を行う。一方、Status CodeがSuccessではない場合、通信装置103は本ステップでNoと判定し、S620の処理を行う。
【0098】
次に、通信装置103は、受信したSAE Commitに含まれるStatus CodeがUNKNOWN PASSWORD IDENTIFIERであるかを判定する(S620)。Status CodeがUNKNOWN PASSWORD IDENTIFIERではなかった場合、通信装置103は本ステップでNoと判定し、本フローの処理を終了する。一方、Status CodeがUNKNOWN PASSWORD IDENTIFIERであった場合、通信装置103は本ステップでYesと判定し、S621の処理を行う。
【0099】
Status CodeがUNKNOWN PASSWORD IDENTIFIERの場合、APとの接続にはパスワードIDが必要であるので、通信装置103は、パスワードIDの入力画面を表示する(S621)。通信装置103は、
図12のようなパスワードとパスワードIDと両方の入力欄を持つ画面を表示する。この場合、パスワードはS605で入力されたものが入力済みとして表示されてもよい。あるいは、通信装置103は、パスワードIDの入力欄のみを有する入力画面を表示してもよい。
【0100】
通信装置102は、ユーザによってキャンセルボタンが押下されたかを判定する(S622)。キャンセルボタンが押下された場合、通信装置103は本ステップでYesと判定し、S602の処理を行う。一方、キャンセルボタンが押下されなかった場合、通信装置103は本ステップでNoと判定し、S623の処理を行う。
【0101】
S623の処理は、
図5のS503と同様である。本ステップでYesと判定された場合、通信装置103はS612の処理を行う。この時送信されるSAE Commitには、S623で入力されたパスワードIDに基づく情報が含まれる。
【0102】
一方、S614でNoと判定された場合、通信装置103はS615の処理を行う。S615~619の処理は、
図5のS513~S517と同様である。
【0103】
以上、
図6に示した処理により、通信装置103はまずユーザにパスワードのみを入力させ、その後、必要に応じてパスワードIDの入力画面を表示する。これにより、ユーザはパスワードIDが必要な時を容易に認識することができる。
【0104】
図8には、本実施形態において
図6のS621の処理を行う場合のシーケンス図を示した。
【0105】
まず、通信装置103はスキャン結果を表示する(S801)。具体的には
図10の(a)に示したような画面を表示する。次に通信装置103は、ユーザによってSSIDが選択されたことを検出する(S802)。通信装置103は、パスワードの入力欄を有する入力画面を表示する(S803)。具体的には、通信装置103は
図9の(b)に示したような画面を表示する。あるいは、通信装置103は
図10の(b)に示したような画面を表示し、パスワードIDの入力欄をグレーアウトするなどして入力できないように表示してもよい。通信装置103は、ユーザから接続の指示を受け付ける(S804)。具体的には、通信装置103はユーザから「接続」ボタンの押下を受け付ける。
【0106】
次に、通信装置103はSAE Commit送信し(S805)、それに対する応答として通信装置102からSAE Commitを受信する(S806)。通信装置103は、受信したSAE Commitに含まれるStatus Codeを確認する(S807)。ここでは、Status CodeがUNKNOWN_PASSWORD_IDENTIFIERであったとする。通信装置103は、パスワードIDの入力画面を表示する(S808)。パスワードIDを入力されると、通信装置103は通信装置102に再度SAE Commitを送信し(S809)、応答としてSAE Commitを受信する(S810)。
【0107】
以上、本実施形態では、APとの接続を試みた後にパスワードIDが必要な場合はパスワードIDの入力画面を表示する。
【0108】
通信装置103は実施形態1の処理と実施形態2の処理との何れか一方のみを実行可能な通信装置であってもよいし、両方を実行可能な通信装置であってもよい。両方を実行可能な場合、通信装置103は実施形態1の処理と実施形態2の処理とをユーザ指示によって切り替えることができる。あるいは、これに限らず、実行しているアプリケーションに応じて、何れか一方の処理を実行してもよい。
【0109】
なお、実施形態1および実施形態2とは異なり、通信装置103はまずユーザにパスワードおよびパスワードIDの両方を入力させてから、APとの接続を試みてもよい。パスワードIDが不要な場合は、接続に失敗するので、その後、ユーザにパスワードのみの入力欄を有する入力画面を表示してもよい。
【0110】
なお、
図4から
図6に示した通信装置103のフローチャートの少なくとも一部または全部をハードウェアにより実現してもよい。ハードウェアにより実現する場合、例えば、所定のコンパイラを用いることで、各ステップを実現するためのコンピュータプログラムからFPGA上に専用回路を生成し、これを利用すればよい。FPGAとは、Field Programmable Gate Arrayの略である。また、FPGAと同様にしてGate Array回路を形成し、ハードウェアとして実現するようにしてもよい。また、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)により実現するようにしてもよい。
【0111】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0112】
101 ネットワーク
102 アクセスポイント
103 ステーション