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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】回転機械
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/42 20060101AFI20240930BHJP
   F04D 29/056 20060101ALI20240930BHJP
   F02B 39/00 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
F04D29/42 K
F04D29/42 M
F04D29/056 B
F02B39/00 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020165541
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022057340
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2023-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】518131296
【氏名又は名称】三菱重工マリンマシナリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】山下 雅人
(72)【発明者】
【氏名】手塚 泰治
(72)【発明者】
【氏名】八木 健次
(72)【発明者】
【氏名】岩佐 幸博
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 仁一
(72)【発明者】
【氏名】金澤 真吾
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-063956(JP,A)
【文献】特開2016-084785(JP,A)
【文献】特開2018-084241(JP,A)
【文献】特開2005-351274(JP,A)
【文献】特開2016-050605(JP,A)
【文献】特開2016-186099(JP,A)
【文献】特開2005-344713(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104421206(CN,A)
【文献】特開2007-199024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/42
F04D 29/056
F02B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線に沿って回転する回転軸に連結されるインペラと、
前記軸線に沿って配置されるとともに前記インペラの外周側を取り囲むように環状に形成される第1ケーシングと、
前記軸線に沿って前記第1ケーシングに隣接して配置されるとともに環状に形成される第2ケーシングと、
前記軸線上の所定位置において前記軸線回りの周方向の複数箇所で前記第1ケーシングと前記第2ケーシングとを連結する連結部と、を備え、
前記連結部は、前記軸線に沿って延びる軸状に形成される第1締結ボルトと、前記軸線に沿って延びる軸状に形成される第2締結ボルトと、を有し、
前記第1ケーシングおよび前記第2ケーシングの少なくともいずれか一方には、前記軸線に沿って延びる複数の貫通穴が前記周方向に沿って間隔を空けて形成されており、
前記第1ケーシングおよび前記第2ケーシングは、複数の前記貫通穴に複数の前記第1締結ボルトおよび複数の前記第2締結ボルトを挿入した状態で連結されており、
前記第1締結ボルトは、前記第2締結ボルトよりも引張強度が高く、
前記第1締結ボルトおよび前記第2締結ボルトは、長さおよび外径が等しい回転機械。
【請求項2】
前記第1締結ボルトの引張強度は1200MPa以上であり、
前記第2締結ボルトの引張強度は1100MPa以下である請求項1に記載の回転機械。
【請求項3】
複数の前記貫通穴に挿入される前記第1締結ボルトの本数は、複数の前記貫通穴に挿入される前記第2締結ボルトの本数よりも多い請求項1または請求項2に記載の回転機械。
【請求項4】
複数の前記貫通穴は、複数の前記貫通穴のそれぞれから前記軸線までの距離が一定となるように配置されている請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の回転機械。
【請求項5】
前記第1ケーシングは、前記インペラによって圧縮された流体が流入する渦室を形成する部材である請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の回転機械。
【請求項6】
前記第1ケーシングは、前記インペラへ導かれる流体を流出させる渦室を形成する部材である請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の回転機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転機械および回転機械の補修方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、圧縮機やタービン等の回転機械において、内部に収容されるインペラ等の回転体が損傷して破断した場合に、破断した部材が装置の外部へ飛散しないように安全性を高めることが求められている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、渦室を形成する第1ケーシングと、第1ケーシングに対向配置された第2ケーシングとを、渦室の外周側と渦室の内周側の双方で締結部材により締結することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-16163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される回転機械においては、締結部材の引張強度を高めることで、破断した部材が装置の外部へ飛散しないように安全性を高めることができる。しかしながら、引張強度が高い締結部材(例えば、高力ボルト、超高力ボルトと呼ばれる部材)においては、鋼材が静的な応力を与えられてから所定時間経過後に突然破壊を生じる遅れ破壊と呼ばれる現象が発生することが知られている。
【0005】
したがって、締結部材の引張強度を高めることで破断した部材が外部へ飛散しないように安全性を高められるが、遅れ破壊によって回転機械の通常使用時に第1ケーシングと第2ケーシングとの締結力が弱まり、あるいは第1ケーシングと第2ケーシングとの連結が部分的に外れてしまう可能性がある。
【0006】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、内部に収容されるインペラが損傷して破断した場合に破断した部材が装置の外部へ飛散しないように安全性を高めつつ、締結ボルトの遅れ破壊による不具合を抑制することが可能な回転機械および回転機械の補修方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る回転機械は、軸線に沿って回転する回転軸に連結されるインペラと、前記軸線に沿って配置されるとともに前記インペラの外周側を取り囲むように環状に形成される第1ケーシングと、前記軸線に沿って前記第1ケーシングに隣接して配置されるとともに環状に形成される第2ケーシングと、前記軸線上の所定位置において前記軸線回りの周方向の複数箇所で前記第1ケーシングと前記第2ケーシングとを連結する連結部と、を備え、前記連結部は、前記軸線に沿って延びる軸状に形成される第1締結ボルトと、前記軸線に沿って延びる軸状に形成される第2締結ボルトと、を有し、前記第1ケーシングおよび前記第2ケーシングの少なくともいずれか一方には、前記軸線に沿って延びる複数の貫通穴が前記周方向に沿って間隔を空けて形成されており、前記第1ケーシングおよび前記第2ケーシングは、複数の前記貫通穴に複数の前記第1締結ボルトおよび複数の前記第2締結ボルトを挿入した状態で連結されており、前記第1締結ボルトは、前記第2締結ボルトよりも引張強度が高い。
【0008】
本開示の一態様に係る回転機械の補修方法は、回転機械の補修方法であって、前記回転機械は、軸線に沿って回転する回転軸に連結されるインペラと、前記軸線に沿って配置されるとともに前記インペラの外周側を取り囲むように環状に形成される第1ケーシングと、前記軸線に沿って前記第1ケーシングに隣接して配置されるとともに環状に形成される第2ケーシングと、を備え、前記第1ケーシングおよび前記第2ケーシングの少なくともいずれか一方には、前記軸線に沿って延びる複数の貫通穴が前記周方向に沿って間隔を空けて形成されており、複数の前記貫通穴に挿入されるとともに前記第1ケーシングと前記第2ケーシングとを連結する複数の第2締結ボルトの少なくとも一つを取り外す取り外し工程と、前記第2締結ボルトが取り外された前記貫通穴に第1締結ボルトを挿入して前記第1ケーシングと前記第2ケーシングとを連結する連結工程と、を備え、前記第1締結ボルトは、前記第2締結ボルトよりも引張強度が高い。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、内部に収容されるインペラが損傷して破断した場合に破断した部材が装置の外部へ飛散しないように安全性を高めつつ、締結ボルトの遅れ破壊による不具合を抑制することが可能な回転機械および回転機械の補修方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の第1実施形態に係る過給機を示す縦断面図である。
図2図1に示す過給機のA-A矢視端面図である。
図3図1に示す過給機のB-B矢視端面図である。
図4】本開示の第1実施形態に係る過給機の補修方法を示すフローチャートである。
図5】本開示の第2実施形態に係る過給機を示す縦断面図である。
図6図5に示す過給機のC-C矢視端面図である。
図7図5に示す過給機のD-D矢視端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔第1実施形態〕
以下、本開示の第1実施形態に係る過給機(圧縮機;回転機械)100について、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る過給機100を示す縦断面図である。図2は、図1に示す過給機100のA-A矢視端面図である。図3は、図1に示す過給機100のB-B矢視端面図である。
【0012】
本実施形態の過給機100は、吸入した気体(例えば、空気)を圧縮し、内燃機関に送り込む装置である。図1に示すように、本実施形態の過給機100は、タービン(図示略)と、遠心圧縮機10と、サイレンサ15(吸音装置)と、軸受ケーシング(第2ケーシング)20と、を備える。タービンと遠心圧縮機10とは、それぞれロータ軸30に連結されている。ロータ軸30は、軸受ケーシング20によって軸線X回りに回転可能な状態で支持されている。
【0013】
タービン(図示略)は、タービン翼が取り付けられるとともにロータ軸30に連結されるタービンディスク(図示略)を有する。タービンディスクは、内燃機関から排出されてタービン翼に導かれる排ガスによって、軸線X回りに回転する。タービンディスクが軸線X回りに回転することにより、タービンディスクが連結されたロータ軸30が軸線X回りに回転する。
【0014】
遠心圧縮機10は、過給機100の外部から流入する空気を圧縮し、内燃機関を構成するシリンダライナ(図示略)の内部と連通する掃気トランク(図示略)に圧縮した空気(以下、圧縮空気という。)を供給する装置である。遠心圧縮機10は、インペラ11と、案内筒12と、スクロールケーシング(第1ケーシング)13とを備える。
【0015】
インペラ11は、図1に示すように、軸線Xに沿って延びるロータ軸30に連結され、ロータ軸30が軸線X回りに回転するのに伴って軸線X回りに回転する。インペラ11は、軸線X回りに回転することにより、取込口11aから流入する空気を圧縮して吐出口11bから吐出する。
【0016】
図1に示すように、インペラ11は、ロータ軸30に取り付けられるハブ11cと、ハブ11cの外周面上に取り付けられるブレード11dとを備える。インペラ11には、ハブ11cの外周面と案内筒12の内周面により形成される空間が設けられ、この空間が複数枚のブレード11dにより複数の空間に仕切られている。インペラ11は、軸線X方向に沿って取込口11aから流入する空気に仕事を与えて軸線X方向に直交した径方向に吐出させ、吐出口11bから吐出された圧縮空気をディフューザ13eに流入させる。
【0017】
案内筒12は、インペラ11を軸線X回りに収容するとともに軸線Xに沿って吸入口12aから流入する空気を吐出口11bから吐出する筒状の部材である。案内筒12は、インペラ11とともに、軸線Xに沿って取込口11aから流入する空気を、軸線Xに直交する径方向に案内して吐出口11bへ導く。
【0018】
スクロールケーシング13は、吐出口11bから吐出された圧縮空気が流入するとともに、圧縮空気に付与された運動エネルギー(動圧)を圧力エネルギー(静圧)に変換する装置である。スクロールケーシング13は、案内筒12よりも軸線X方向に直交する径方向の外周側に配置されている。スクロールケーシング13は、軸線Xに沿って配置されるとともにインペラ11の外周側を取り囲むように環状に形成される。
【0019】
図1に示すように、スクロールケーシング13には、ディフューザ13eが取り付けられる。ディフューザ13eは、インペラ11の吐出口11bの下流側に配置される翼形の部材であり、吐出口11bから渦室13dに圧縮空気を導く流路を形成する。ディフューザ13eは、インペラ11の全周に設けられる圧縮空気の吐出口11bを囲むように設けられる。
【0020】
ディフューザ13eは、インペラ11の吐出口11bから吐出された圧縮空気の流速を減速させることにより、圧縮空気に付与された運動エネルギー(動圧)を圧力エネルギー(静圧)に変換する。ディフューザ13eを通過する際に流速が減速された圧縮空気は、ディフューザ13eと連通した渦室13dに流入する。渦室13dに流入した圧縮空気は、吐出配管(図示略)へと吐出される。
【0021】
軸受ケーシング20は、軸線X回りに環状に形成される部材であり、軸線Xに沿ってスクロールケーシング13に隣接して配置される。軸受ケーシング20は、連結部40によりスクロールケーシング13に連結されている。
【0022】
図1に示すように、連結部40は、軸線X上の位置X1において、軸線X回りの周方向CDの複数箇所でスクロールケーシング13と軸受ケーシング20とを連結するものである。図2に示すように、連結部40は、軸線Xに沿って延びる軸状に形成される締結ボルト(第1締結ボルト)41と、軸線Xに沿って延びる軸状に形成される締結ボルト(第2締結ボルト)42とを有する。締結ボルト41および締結ボルト42の外周面には、それぞれ雄ねじが形成されている。
【0023】
締結ボルト41および締結ボルト42は、長さおよび外径が等しい。一方、締結ボルト41の引張強度は、締結ボルト42の引張強度よりも高い。締結ボルト41の引張強度は、インペラ11が損傷して破断した場合に破断した部材が過給機100の外部へ飛散しないように安全性を確保できる強度とするのが望ましい。
【0024】
締結ボルト41の引張強度は、例えば、1200MPa(N/mm)以上とするのが望ましい。1200MPa(N/mm)以上の引張強度を有する締結ボルトとして、例えば、12G溶融亜鉛めっき高力ボルト「12GSHTB(登録商標)」を用いることができる。また、例えば、YAG300(マルエージング鋼)により形成されるボルトを採用することができる。締結ボルト41は、降伏強度を1080MPa(N/mm)以上とするのが更に好ましい。締結ボルト42の引張強度は、遅れ破壊が発生しにくい強度とするのが望ましく、例えば、1100MPa(N/mm)以下とするのが望ましい。
【0025】
軸受ケーシング20には、軸線Xに沿って延びる複数の貫通穴21が周方向CDに沿って間隔を空けて形成されている。スクロールケーシング13の貫通穴21と対向して配置される端面には、軸線Xに沿って延びる締結穴13aが形成されている。締結穴13aの内周面には、雌ねじが形成されている。
【0026】
スクロールケーシング13および軸受ケーシング20は、複数の貫通穴21に複数の締結ボルト41および複数の締結ボルト42を挿入した状態で連結されている。スクロールケーシング13および軸受ケーシング20は、締結ボルト41および締結ボルト42の外周面に形成される雄ねじを、締結穴13aの内周面に形成される雌ねじに係合させることにより連結される。
【0027】
図2に示すように、複数の貫通穴21は、複数の貫通穴21のそれぞれから軸線Xまでの距離が一定のD1となるように配置されている。図2に示す複数の貫通穴21は、軸線X回りの周方向CDに沿って、15度間隔で24箇所に配置されている。なお、複数の貫通穴21を周方向CDに沿って配置する箇所は、24箇所以外の任意の数とすることができる。
【0028】
図2に示すように、締結ボルト42は、24箇所の貫通穴21の4箇所に挿入される。締結ボルト42が挿入される貫通穴21は、周方向に45度間隔で8箇所に配置されている。一方、締結ボルト42よりも引張強度が高い締結ボルト41は、24箇所の貫通穴21のうちの20箇所に挿入される。締結ボルト41は、締結ボルト42が挿入される4箇所の貫通穴21を除く他の貫通穴21に挿入される。
【0029】
図2に示す例では、24箇所の貫通穴21の4箇所に締結ボルト42を挿入し、24箇所の貫通穴21の20箇所に締結ボルト41を挿入するものとしたが、他の態様であってもよい。例えば、締結ボルト42を挿入する箇所を8箇所や12箇所とし、その他の箇所に締結ボルト41を挿入するようにしてもよい。
【0030】
この場合、締結ボルト42を挿入する貫通穴21が配置される位置は、軸線Xに対して対称となる位置とするのが好ましい。また、締結ボルト42を挿入する貫通穴21が配置される位置は、周方向CDに沿って等間隔の位置とするのが好ましい。また、複数の貫通穴21に挿入される締結ボルト41の本数は、複数の貫通穴21に挿入される締結ボルト42の本数よりも多くするのが好ましい。
【0031】
サイレンサ15(吸音装置)は、遠心圧縮機10によって発生する騒音の一部を吸音して騒音レベルを低下させる装置である。サイレンサ15は、遠心圧縮機10の案内筒12の吸入口12aに取り付けられる。サイレンサ15は、図1に示す矢印に沿って径方向の外側から流入する空気の流通方向を軸線Xに沿った方向に転換させ、案内筒12の吸入口12aへ導く。
【0032】
サイレンサ15は、サイレンサケーシング(第2ケーシング)15aおよびサイレンサケーシング15bを備える。サイレンサケーシング15aおよびサイレンサケーシング15bは、軸線Xに沿って間隔を空けて配置されており、サイレンサケーシング15aとサイレンサケーシング15bとの間に空気を流通させる流路を形成する。
【0033】
サイレンサケーシング15aは、軸線X回りに環状に形成される部材であり、軸線Xに沿ってスクロールケーシング13に隣接して配置される。サイレンサケーシング15aは、連結部50によりスクロールケーシング13に連結されている。
【0034】
図1に示すように、連結部50は、軸線X上の位置X2において、軸線X回りの周方向CDの複数箇所でスクロールケーシング13とサイレンサケーシング15aとを連結するものである。図3に示すように、連結部50は、軸線Xに沿って延びる軸状に形成される締結ボルト(第1締結ボルト)51と、軸線Xに沿って延びる軸状に形成される締結ボルト(第2締結ボルト)52とを有する。締結ボルト51および締結ボルト52の外周面には、それぞれ雄ねじが形成されている。
【0035】
締結ボルト51および締結ボルト52は、長さおよび外径が等しい。一方、締結ボルト51の引張強度は、締結ボルト52の引張強度よりも高い。締結ボルト51の引張強度は、インペラ11が損傷して破断した場合に破断した部材が過給機100の外部へ飛散しないように安全性を確保できる強度とするのが望ましい。
【0036】
締結ボルト51の引張強度は、例えば、1200MPa(N/mm)以上とするのが望ましい。1200MPa(N/mm)以上の引張強度を有する締結ボルトとして、例えば、12G溶融亜鉛めっき高力ボルト「12GSHTB(登録商標)」を用いることができる。また、例えば、YAG300(マルエージング鋼)により形成されるボルトを採用することができる。締結ボルト51は、降伏強度を1080MPa(N/mm)以上とするのが更に好ましい。締結ボルト52の引張強度は、遅れ破壊が発生しにくい強度とするのが望ましく、例えば、1100MPa(N/mm)以下とするのが望ましい。
【0037】
サイレンサケーシング15aには、軸線Xに沿って延びる複数の貫通穴15cが周方向CDに沿って間隔を空けて形成されている。スクロールケーシング13の貫通穴15cと対向して配置される端面には、軸線Xに沿って延びる締結穴13bが形成されている。締結穴13bの内周面には、雌ねじが形成されている。
【0038】
スクロールケーシング13およびサイレンサケーシング15aは、複数の貫通穴15cに複数の締結ボルト51および複数の締結ボルト52を挿入した状態で連結されている。スクロールケーシング13およびサイレンサケーシング15aは、締結ボルト51および締結ボルト52の外周面に形成される雄ねじを、締結穴13bの内周面に形成される雌ねじに係合させることにより連結される。
【0039】
図3に示すように、複数の貫通穴15cは、複数の貫通穴15cのそれぞれから軸線Xまでの距離が一定のD2となるように配置されている。図3に示す複数の貫通穴15cは、軸線X回りの周方向CDに沿って、15度間隔で24箇所に配置されている。なお、複数の貫通穴15cを周方向CDに沿って配置する箇所は、24箇所以外の任意の数とすることができる。
【0040】
図3に示すように、締結ボルト52は、24箇所の貫通穴15cの4箇所に挿入される。締結ボルト52が挿入される貫通穴15cは、周方向に45度間隔で8箇所に配置されている。一方、締結ボルト52よりも引張強度が高い締結ボルト51は、24箇所の貫通穴15cのうちの20箇所に挿入される。締結ボルト51は、締結ボルト52が挿入される4箇所の貫通穴15cを除く他の貫通穴15cに挿入される。
【0041】
図2に示す例では、24箇所の貫通穴15cの4箇所に締結ボルト52を挿入し、24箇所の貫通穴15cの20箇所に締結ボルト51を挿入するものとしたが、他の態様であってもよい。例えば、締結ボルト52を挿入する箇所を8箇所や12箇所とし、その他の箇所に締結ボルト51を挿入するようにしてもよい。
【0042】
この場合、締結ボルト52を挿入する貫通穴15cが配置される位置は、軸線Xに対して対称となる位置とするのが好ましい。また、締結ボルト52を挿入する貫通穴15cが配置される位置は、周方向CDに沿って等間隔の位置とするのが好ましい。また、複数の貫通穴15cに挿入される締結ボルト51の本数は、複数の貫通穴15cに挿入される締結ボルト52の本数よりも多くするのが好ましい。
【0043】
次に本実施形態の過給機100の補修方法について図面を参照して説明する。図4は、本実施形態の過給機100の補修方法を示すフローチャートである。
本実施形態の補修方法は、スクロールケーシング13と軸受ケーシング20とが締結ボルト42のみで締結されており、かつスクロールケーシング13とサイレンサケーシング15aとが締結ボルト52のみで締結されている過給機100を補修する方法である。
【0044】
図4に示される補修方法を実行する前の過給機100は、スクロールケーシング13と軸受ケーシング20とが締結ボルト42のみで締結されており、かつスクロールケーシング13とサイレンサケーシング15aとが締結ボルト52のみで締結されているものとする。
【0045】
図4のステップS101(第1取り外し工程)で、作業者は、貫通穴21に挿入されている締結ボルト42の少なくとも1つを取り外す。締結ボルト42は、貫通穴21に挿入されるとともにスクロールケーシング13と軸受ケーシング20とを連結するボルトである。例えば、作業者は、図2に示す締結ボルト41の位置に挿入されている20本の締結ボルト42を取り外す。
【0046】
ステップS102(第1連結工程)で、作業者は、締結ボルト42が取り外された貫通穴21に締結ボルト41を挿入し、スクロールケーシング13の締結穴13aに締結し、スクロールケーシング13と軸受ケーシング20とを連結する。
【0047】
ステップS103(第2取り外し工程)で、作業者は、貫通穴15cに挿入されている締結ボルト52の少なくとも1つを取り外す。締結ボルト52は、貫通穴15cに挿入されるとともにスクロールケーシング13とサイレンサケーシング15aとを連結するボルトである。例えば、作業者は、図3に示す締結ボルト51の位置に挿入されている20本の締結ボルト52を取り外す。
【0048】
ステップS104(第2連結工程)で、作業者は、締結ボルト52が取り外された貫通穴15cに締結ボルト51を挿入し、スクロールケーシング13の締結穴13bに締結し、スクロールケーシング13とサイレンサケーシング15aとを連結する。
【0049】
以上の工程により、スクロールケーシング13と軸受ケーシング20とが締結ボルト42のみで締結されており、かつスクロールケーシング13とサイレンサケーシング15aとが締結ボルト52のみで締結されている過給機100が補修される。補修後の過給機100は、スクロールケーシング13と軸受ケーシング20とが複数の締結ボルト41と複数の締結ボルト42の双方で締結されたものとなる。また、補修後の過給機100は、スクロールケーシング13とサイレンサケーシング15aとが複数の締結ボルト51と複数の締結ボルト52の双方で締結されたものとなる。
【0050】
以上の説明において、締結ボルト41および締結ボルト42は、スクロールケーシング13に形成される締結穴13aに締結されるものとしたが、他の態様であってもよい。例えば、スクロールケーシング13に締結ボルト41および締結ボルト42が挿入される貫通穴を設けるようにしてもよい。この場合、貫通穴を通過した締結ボルト41および締結ボルト42にナットを締結することにより、スクロールケーシング13と軸受ケーシング20とを連結する。
【0051】
また、以上の説明において、締結ボルト51および締結ボルト52は、スクロールケーシング13に形成される締結穴13bに締結されるものとしたが、他の態様であってもよい。例えば、スクロールケーシング13に締結ボルト51および締結ボルト52が挿入される貫通穴を設けるようにしてもよい。この場合、貫通穴を通過した締結ボルト51および締結ボルト52にナットを締結することにより、スクロールケーシング13とサイレンサケーシング15aとを連結する。
【0052】
以上説明した本実施形態の過給機100は、以下の作用及び効果を奏する。
本実施形態の過給機100によれば、インペラ11の外周側を取り囲むように環状に形成されるスクロールケーシング13とスクロールケーシング13に隣接して配置される軸受ケーシング20とを連結する連結部40は、軸線Xに沿って延びる軸状に形成される締結ボルト51および締結ボルト52を有する。スクロールケーシング13および軸受ケーシング20は、複数の貫通穴21に複数の締結ボルト41と複数の締結ボルト42を挿入した状態で連結される。
【0053】
本開示に係る過給機100によれば、締結ボルト41は締結ボルト42よりも引張強度が高いため、締結ボルト52のみを用いてスクロールケーシング13および軸受ケーシング20を連結する場合に比べ、スクロールケーシング13と軸受ケーシング20とを連結する連結強度を高め、内部に収容されるインペラ11が損傷して破断した場合に破断した部材が装置の外部へ飛散しないように安全性を高めることができる。
【0054】
また、本実施形態の過給機100によれば、締結ボルト42は締結ボルト41よりも引張強度が低い。そのため、締結ボルト41のみを用いてスクロールケーシング13および軸受ケーシング20を連結する場合に比べ、締結ボルト41の遅れ破壊による不具合を抑制することができる。すなわち、締結ボルト41が遅れ破壊により破断したとしても、締結ボルト42によりスクロールケーシング13および軸受ケーシング20が連結された状態を維持することができる。
【0055】
また、本実施形態の過給機100によれば、締結ボルト41よりも引張強度が高い締結ボルト41の本数を締結ボルト42の本数よりも多くすることで、内部に収容されるインペラ11が損傷して破断した場合に破断した部材が装置の外部へ飛散しないように十分に安全性を高めることができる。
【0056】
また、本実施形態の過給機100によれば、複数の貫通穴21が軸線Xまでの距離が一定となるように配置されているため、軸線X回りの周方向CDの各位置におけるスクロールケーシング13および軸受ケーシング20の連結強度を均一にすることができる。
【0057】
また、本実施形態の過給機100によれば、締結ボルト41および締結ボルト42の長さおよび外径が等しいため、複数の貫通穴21の長さおよび内径を等しくすることができる。そのため、複数の貫通穴21を形成するのに要する工数を少なくすることができる。
【0058】
以上説明した本実施形態の過給機100の補修方法は、以下の作用及び効果を奏する。
本実施形態の過給機100の補修方法によれば、第1取り外し工程において、インペラ11の外周側を取り囲むように環状に形成されるスクロールケーシング13とスクロールケーシング13に隣接して配置される軸受ケーシング20とを連結する複数の締結ボルト42の少なくとも一つが取り外される。その後、第1連結工程において、締結ボルト42が取り外された貫通穴21に締結ボルト41を挿入してスクロールケーシング13と軸受ケーシング20とが連結される。
【0059】
本実施形態の過給機100の補修方法によれば、締結ボルト41は締結ボルト42よりも引張強度が高いため、締結ボルト42のみを用いてスクロールケーシング13および軸受ケーシング20を連結する場合に比べ、スクロールケーシング13と軸受ケーシング20とを連結する連結強度を高め、内部に収容されるインペラ11が損傷して破断した場合に破断した部材が装置の外部へ飛散しないように安全性を高めることができる。
【0060】
また、本実施形態の過給機100の補修方法によれば、締結ボルト42は締結ボルト41よりも引張強度が低い。そのため、締結ボルト41のみを用いてスクロールケーシング13および軸受ケーシング20を連結する場合に比べ、締結ボルトの遅れ破壊による不具合を抑制することができる。すなわち、締結ボルト41が遅れ破壊により破断したとしても、締結ボルト42によりスクロールケーシング13および軸受ケーシング20が連結された状態を維持することができる。
【0061】
〔第2実施形態〕
次に、本開示の第2実施形態に係る過給機200について、図面を参照して説明する。図5は、本実施形態に係る過給機200を示す縦断面図である。図6は、図5に示す過給機200のC-C矢視端面図である。図7は、図5に示す過給機200のD-D矢視端面図である。
【0062】
本実施形態の過給機200は、吸入した気体(例えば、空気)を圧縮し、内燃機関に送り込む装置である。図5に示すように、本実施形態の過給機200は、タービン210と、圧縮機(図示略)と、軸受ケーシング(第2ケーシング)220と、を備える。タービン210と圧縮機とは、それぞれロータ軸230に連結されている。ロータ軸230は、軸受ケーシング20によって軸線X回りに回転可能な状態で支持されている。
【0063】
タービン210は、タービン翼が取り付けられるインペラ211と、インペラ211を内部に収容するタービンケーシング(第1ケーシング)212と、出口ケーシング(第2ケーシング)213と、を備える。
【0064】
インペラ211は、タービンケーシング212の渦室212aから流入する気体(例えば、内燃機関から排出される排ガス)により軸線X回りに回転する駆動力が付与される。インペラ211に付与された駆動力によりロータ軸230が軸線X回りに回転し、ロータ軸230を介して連結される圧縮機が回転する。
【0065】
タービンケーシング212は、インペラ211を内部に収容するとともに内燃機関から気体が流入する渦室212aを有する。タービンケーシング212は、軸線Xに沿って配置されるとともにインペラ211の外周側を取り囲むように環状に形成される。
【0066】
出口ケーシング213は、渦室212aからインペラ211へ流入した気体を排出する流路を形成する。出口ケーシング213は、軸線X回りに環状に形成される部材であり、軸線Xに沿ってタービンケーシング212に隣接して配置される。出口ケーシング213は、連結部240によりタービンケーシング212に連結されている。
【0067】
図5に示すように、連結部240は、軸線X上の位置X3において、軸線X回りの周方向CDの複数箇所でタービンケーシング212と出口ケーシング213とを連結するものである。図6に示すように、連結部240は、軸線Xに沿って延びる軸状に形成される締結ボルト(第1締結ボルト)241と、軸線Xに沿って延びる軸状に形成される締結ボルト(第2締結ボルト)242とを有する。締結ボルト241および締結ボルト242の外周面には、それぞれ雄ねじが形成されている。
【0068】
締結ボルト241および締結ボルト242は、長さおよび外径が等しい。一方、締結ボルト241の引張強度は、締結ボルト242の引張強度よりも高い。締結ボルト241の引張強度は、インペラ211が損傷して破断した場合に破断した部材が過給機200の外部へ飛散しないように安全性を確保できる強度とするのが望ましい。
【0069】
締結ボルト241の引張強度は、例えば、1200MPa(N/mm)以上とするのが望ましい。1200MPa(N/mm)以上の引張強度を有する締結ボルトとして、例えば、12G溶融亜鉛めっき高力ボルト「12GSHTB(登録商標)」を用いることができる。また、例えば、YAG300(マルエージング鋼)により形成されるボルトを採用することができる。締結ボルト241は、降伏強度を1080MPa(N/mm)以上とするのが更に好ましい。締結ボルト242の引張強度は、遅れ破壊が発生しにくい強度とするのが望ましく、例えば、1100MPa(N/mm)以下とするのが望ましい。
【0070】
出口ケーシング213には、軸線Xに沿って延びる複数の貫通穴213aが周方向CDに沿って間隔を空けて形成されている。タービンケーシング212の貫通穴213aと対向して配置される端面には、軸線Xに沿って延びる締結穴212bが形成されている。締結穴212bの内周面には、雌ねじが形成されている。
【0071】
タービンケーシング212および出口ケーシング213は、複数の貫通穴213aに複数の締結ボルト241および複数の締結ボルト242を挿入した状態で連結されている。タービンケーシング212および出口ケーシング213は、締結ボルト241および締結ボルト242の外周面に形成される雄ねじを、締結穴212bの内周面に形成される雌ねじに係合させることにより連結される。
【0072】
図6に示すように、複数の貫通穴213aは、複数の貫通穴213aのそれぞれから軸線Xまでの距離が一定のD3となるように配置されている。図6に示す複数の貫通穴213aは、軸線X回りの周方向CDに沿って、30度間隔で12箇所に配置されている。なお、複数の貫通穴213aを周方向CDに沿って配置する箇所は、12箇所以外の任意の数とすることができる。
【0073】
図6に示すように、締結ボルト242は、12箇所の貫通穴213aの4箇所に挿入される。締結ボルト242が挿入される貫通穴213aは、周方向に90度間隔で4箇所に配置されている。一方、締結ボルト242よりも引張強度が高い締結ボルト241は、12箇所の貫通穴213aのうちの8箇所に挿入される。締結ボルト241は、締結ボルト242が挿入される4箇所の貫通穴213aを除く他の貫通穴213aに挿入される。
【0074】
図6に示す例では、12箇所の貫通穴21の4箇所に締結ボルト242を挿入し、12箇所の貫通穴21の8箇所に締結ボルト241を挿入するものとしたが、他の態様であってもよい。例えば、締結ボルト42を挿入する箇所を2箇所や3箇所とし、その他の箇所に締結ボルト41を挿入するようにしてもよい。
【0075】
この場合、締結ボルト242を挿入する貫通穴213aが配置される位置は、軸線Xに対して対称となる位置とするのが好ましい。また、締結ボルト242を挿入する貫通穴213aが配置される位置は、周方向CDに沿って等間隔の位置とするのが好ましい。また、複数の貫通穴213aに挿入される締結ボルト241の本数は、複数の貫通穴213aに挿入される締結ボルト242の本数よりも多くするのが好ましい。
【0076】
軸受ケーシング220は、軸線X回りに環状に形成される部材であり、軸線Xに沿ってタービンケーシング212に隣接して配置される。軸受ケーシング220は、連結部250によりタービンケーシング212に連結されている。
【0077】
図5に示すように、連結部250は、軸線X上の位置X4において、軸線X回りの周方向CDの複数箇所でタービンケーシング212と軸受ケーシング220とを連結するものである。図7に示すように、連結部250は、軸線Xに沿って延びる軸状に形成される締結ボルト(第1締結ボルト)251と、軸線Xに沿って延びる軸状に形成される締結ボルト(第2締結ボルト)252とを有する。締結ボルト251および締結ボルト252の外周面には、それぞれ雄ねじが形成されている。
【0078】
締結ボルト251および締結ボルト252は、長さおよび外径が等しい。一方、締結ボルト251の引張強度は、締結ボルト252の引張強度よりも高い。締結ボルト251の引張強度は、インペラ211が損傷して破断した場合に破断した部材が過給機200の外部へ飛散しないように安全性を確保できる強度とするのが望ましい。
【0079】
締結ボルト251の引張強度は、例えば、1200MPa(N/mm)以上とするのが望ましい。1200MPa(N/mm)以上の引張強度を有する締結ボルトとして、例えば、12G溶融亜鉛めっき高力ボルト「12GSHTB(登録商標)」を用いることができる。また、例えば、YAG300(マルエージング鋼)により形成されるボルトを採用することができる。締結ボルト251は、降伏強度を1080MPa(N/mm)以上とするのが更に好ましい。締結ボルト252の引張強度は、遅れ破壊が発生しにくい強度とするのが望ましく、例えば、1100MPa(N/mm)以下とするのが望ましい。
【0080】
軸受ケーシング220には、軸線Xに沿って延びる複数の貫通穴221が周方向CDに沿って間隔を空けて形成されている。タービンケーシング212の貫通穴221と対向して配置される端面には、軸線Xに沿って延びる締結穴212cが形成されている。締結穴212cの内周面には、雌ねじが形成されている。
【0081】
タービンケーシング212および軸受ケーシング220は、複数の貫通穴221に複数の締結ボルト251および複数の締結ボルト252を挿入した状態で連結されている。タービンケーシング212および軸受ケーシング220は、締結ボルト251および締結ボルト252の外周面に形成される雄ねじを、締結穴212cの内周面に形成される雌ねじに係合させることにより連結される。
【0082】
図7に示すように、複数の貫通穴221は、複数の貫通穴221のそれぞれから軸線Xまでの距離が一定のD4となるように配置されている。図7に示す複数の貫通穴221は、軸線X回りの周方向CDに沿って、30度間隔で12箇所に配置されている。なお、複数の貫通穴221を周方向CDに沿って配置する箇所は、12箇所以外の任意の数とすることができる。
【0083】
図7に示すように、締結ボルト252は、12箇所の貫通穴221の4箇所に挿入される。締結ボルト252が挿入される貫通穴221は、周方向に90度間隔で4箇所に配置されている。一方、締結ボルト252よりも引張強度が高い締結ボルト251は、12箇所の貫通穴221のうちの8箇所に挿入される。締結ボルト251は、締結ボルト252が挿入される4箇所の貫通穴221を除く他の貫通穴221に挿入される。
【0084】
図7に示す例では、12箇所の貫通穴221の4箇所に締結ボルト252を挿入し、12箇所の貫通穴221の8箇所に締結ボルト251を挿入するものとしたが、他の態様であってもよい。例えば、締結ボルト252を挿入する箇所を4箇所や3箇所とし、その他の箇所に締結ボルト251を挿入するようにしてもよい。
【0085】
この場合、締結ボルト252を挿入する貫通穴221が配置される位置は、軸線Xに対して対称となる位置とするのが好ましい。また、締結ボルト252を挿入する貫通穴221が配置される位置は、周方向CDに沿って等間隔の位置とするのが好ましい。また、複数の貫通穴221に挿入される締結ボルト251の本数は、複数の貫通穴221に挿入される締結ボルト252の本数よりも多くするのが好ましい。
【0086】
本実施形態によれば、インペラ211へ導かれる気体を流出させる渦室212aを有するタービンケーシング212を備えるの過給機200において、内部に収容されるインペラ211が損傷して破断した場合に破断した部材が装置の外部へ飛散しないように安全性を高めつつ、締結ボルトの遅れ破壊による不具合を抑制することができる。
【0087】
以上説明した本実施形態に記載の回転機械は、例えば以下のように把握される。
本開示に係る回転機械(100,200)は、軸線(X)に沿って回転する回転軸(30)に連結されるインペラ(11)と、前記軸線に沿って配置されるとともに前記インペラの外周側を取り囲むように環状に形成される第1ケーシング(13)と、前記軸線に沿って前記第1ケーシングに隣接して配置されるとともに環状に形成される第2ケーシング(15a,20)と、前記軸線上の所定位置(X1,X2)において前記軸線回りの周方向(CD)の複数箇所で前記第1ケーシングと前記第2ケーシングとを連結する連結部(40,50)と、を備え、前記連結部は、前記軸線に沿って延びる軸状に形成される第1締結ボルト(41,51)と、前記軸線に沿って延びる軸状に形成される第2締結ボルト(42,52)と、を有し、前記第1ケーシングおよび前記第2ケーシングの少なくともいずれか一方には、前記軸線に沿って延びる複数の貫通穴(15c,21)が前記周方向に沿って間隔を空けて形成されており、前記第1ケーシングおよび前記第2ケーシングは、複数の前記貫通穴に複数の前記第1締結ボルトおよび複数の前記第2締結ボルトを挿入した状態で連結されており、前記第1締結ボルトは、前記第2締結ボルトよりも引張強度が高い。例えば、第1締結ボルトの引張強度は1200MPa以上であり、第2締結ボルトの引張強度は1100MPa以下である。
【0088】
本開示に係る回転機械によれば、インペラの外周側を取り囲むように環状に形成される第1ケーシングと第1ケーシングに隣接して配置される第2ケーシングとを連結する連結部は、軸線に沿って延びる軸状に形成される第1締結ボルトおよび第2締結ボルトを有する。第1ケーシングおよび第2ケーシングは、複数の貫通穴に複数の第1締結ボルトと複数の第2締結ボルトを挿入した状態で連結される。
【0089】
本開示に係る回転機械によれば、第1締結ボルトは第2締結ボルトよりも引張強度が高いため、第2締結ボルトのみを用いて第1ケーシングおよび第2ケーシングを連結する場合に比べ、第1ケーシングと第2ケーシングとを連結する連結強度を高め、内部に収容されるインペラが損傷して破断した場合に破断した部材が装置の外部へ飛散しないように安全性を高めることができる。
【0090】
また、本開示に係る回転機械によれば、第2締結ボルトは第1締結ボルトよりも引張強度が低い。そのため、第1締結ボルトのみを用いて第1ケーシングおよび第2ケーシングを連結する場合に比べ、締結ボルトの遅れ破壊による不具合を抑制することができる。すなわち、第1締結ボルトが遅れ破壊により破断したとしても、第2締結ボルトにより第1ケーシングおよび第2ケーシングが連結された状態を維持することができる。
【0091】
本開示に係る回転機械において、複数の前記貫通穴に挿入される前記第1締結ボルトの本数は、複数の前記貫通穴に挿入される前記第2締結ボルトの本数よりも多い構成としてもよい。
本構成の回転機械によれば、第2締結ボルトよりも引張強度が高い第1締結ボルトの本数が第2締結ボルトの本数よりも多いため、内部に収容されるインペラが損傷して破断した場合に破断した部材が装置の外部へ飛散しないように十分に安全性を高めることができる。
【0092】
本開示に係る回転機械において、複数の前記貫通穴は、複数の前記貫通穴のそれぞれから前記軸線までの距離が一定となるように配置されている構成としてもよい。
本構成の回転機械によれば、複数の貫通穴が軸線までの距離が一定となるように配置されているため、軸線回りの周方向の各位置における第1ケーシングおよび第2ケーシングの連結強度を均一にすることができる。
【0093】
本開示に係る回転機械において、前記第1締結ボルトおよび前記第2締結ボルトは、長さおよび外径が等しい構成としてもよい。
本構成の回転機械によれば、第1締結ボルトおよび第2締結ボルトの長さおよび外径が等しいため、複数の貫通穴の長さおよび内径を等しくすることができる。そのため、複数の貫通穴を形成するのに要する工数を少なくすることができる。
【0094】
本開示に係る回転機械において、前記第1ケーシングは、前記インペラによって圧縮された流体が流入する渦室(13d)を形成する部材である構成としてもよい。
本構成の回転機械によれば、インペラによって圧縮された流体が流入する渦室を有する第1ケーシングを備える回転機械において、内部に収容されるインペラが損傷して破断した場合に破断した部材が装置の外部へ飛散しないように安全性を高めつつ、締結ボルトの遅れ破壊による不具合を抑制することができる。
【0095】
本開示に係る回転機械において、前記第1ケーシングは、前記インペラへ導かれる流体を流出させる渦室(212a)を形成する部材である構成としてもよい。
本構成の回転機械によれば、インペラへ導かれる流体を流出させる渦室を有する第1ケーシングを備える回転機械において、内部に収容されるインペラが損傷して破断した場合に破断した部材が装置の外部へ飛散しないように安全性を高めつつ、締結ボルトの遅れ破壊による不具合を抑制することができる。
【0096】
以上説明した本実施形態に記載の回転機械の補修方法は、例えば以下のように把握される。
本開示に係る回転機械の補修方法は、軸線に沿って回転する回転軸に連結されるインペラと、前記軸線に沿って配置されるとともに前記インペラの外周側を取り囲むように環状に形成される第1ケーシングと、前記軸線に沿って前記第1ケーシングに隣接して配置されるとともに環状に形成される第2ケーシングと、を備え、前記第1ケーシングおよび前記第2ケーシングの少なくともいずれか一方には、前記軸線に沿って延びる複数の貫通穴が前記周方向に沿って間隔を空けて形成されており、複数の前記貫通穴に挿入されるとともに前記第1ケーシングと前記第2ケーシングとを連結する複数の第2締結ボルトの少なくとも一つを取り外す取り外し工程(S101,S103)と、前記第2締結ボルトが取り外された前記貫通穴に第1締結ボルトを挿入して前記第1ケーシングと前記第2ケーシングとを連結する連結工程(S102,S104)と、を備え、前記第1締結ボルトは、前記第2締結ボルトよりも引張強度が高い。
【0097】
本開示に係る回転機械の補修方法によれば、取り外し工程において、インペラの外周側を取り囲むように環状に形成される第1ケーシングと第1ケーシングに隣接して配置される第2ケーシングとを連結する複数の第2締結ボルトの少なくとも一つが取り外される。その後、連結工程において、第2締結ボルトが取り外された貫通穴に第1締結ボルトを挿入して第1ケーシングと第2ケーシングとが連結される。
【0098】
本開示に係る回転機械の補修方法によれば、第1締結ボルトは第2締結ボルトよりも引張強度が高いため、第2締結ボルトのみを用いて第1ケーシングおよび第2ケーシングを連結する場合に比べ、第1ケーシングと第2ケーシングとを連結する連結強度を高め、内部に収容されるインペラが損傷して破断した場合に破断した部材が装置の外部へ飛散しないように安全性を高めることができる。
【0099】
また、本開示に係る回転機械の補修方法によれば、第2締結ボルトは第1締結ボルトよりも引張強度が低い。そのため、第1締結ボルトのみを用いて第1ケーシングおよび第2ケーシングを連結する場合に比べ、締結ボルトの遅れ破壊による不具合を抑制することができる。すなわち、第1締結ボルトが遅れ破壊により破断したとしても、第2締結ボルトにより第1ケーシングおよび第2ケーシングが連結された状態を維持することができる。
【符号の説明】
【0100】
10 遠心圧縮機
11 インペラ
13 スクロールケーシング(第1ケーシング)
13a,13b 締結穴
13d 渦室
15a,15b サイレンサケーシング
15c 貫通穴
20 軸受ケーシング(第2ケーシング)
21 貫通穴
30 ロータ軸
40,50 連結部
41,42,51,52 締結ボルト
100,200 過給機
210 タービン
211 インペラ
212 タービンケーシング(第1ケーシング)
212a 渦室
212b,212c 締結穴
213 出口ケーシング(第2ケーシング)
213a 貫通穴
220 軸受ケーシング(第2ケーシング)
221 貫通穴
230 ロータ軸
240,250 連結部
241,242,251,252 締結ボルト
CD 周方向
X 軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7