(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】トナー
(51)【国際特許分類】
G03G 9/097 20060101AFI20240930BHJP
C01B 33/12 20060101ALI20240930BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20240930BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
G03G9/097 375
C01B33/12 A
C08K3/36
C08L101/00
(21)【出願番号】P 2020179898
(22)【出願日】2020-10-27
【審査請求日】2023-10-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】細井 一人
(72)【発明者】
【氏名】辻本 大祐
(72)【発明者】
【氏名】松尾 龍一郎
(72)【発明者】
【氏名】坂本 一幸
(72)【発明者】
【氏名】小堀 尚邦
【審査官】福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-084095(JP,A)
【文献】特開2020-106759(JP,A)
【文献】特開2009-134073(JP,A)
【文献】特表2009-520667(JP,A)
【文献】特表2010-527882(JP,A)
【文献】特表2005-536611(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/08-9/097
C01B 33/12
C08K 3/36
C08L 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー粒子と、シリカ微粒子Aとを有するトナーであって、前記トナー粒子は結着樹脂を含有し、前記シリカ微粒子Aは前記トナー粒子の表面に付着または固着して存在し、
前記シリカ微粒子Aは、鉄原子を
150ppm以上2000ppm以下の濃度で含有し、
前記シリカ微粒子Aの一次粒子は、80nm以上200nm以下の個数平均粒径を有し、
前記トナー粒子の前記シリカ微粒子Aによる被覆率は、31.0%以上70.0%以下であることを特徴とするトナー。
【請求項2】
前記トナーにおける前記シリカ微粒子Aの含有割合が、前記トナーの質量に対して2.1質量%以上7.0質量%以下である請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記トナーにおける前記シリカ微粒子Aの固着率が、50質量%以上90質量%以下である請求項1または2に記載のトナー。
【請求項4】
前記シリカ微粒子Aは、アルミニウム原子を200ppm以上2000ppm以下の濃度で含有する請求項1~3のいずれか1項に記載のトナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法および静電記録法などに用いられる静電荷像を現像するためのトナーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式のフルカラー複写機が広く普及するに従い、さらなる高画質化に加え、長期使用時にも高品質な画像を安定的に出力することが要求されている。
【0003】
高画質化を達成するためには、現像・転写・定着といったプロセスにおいて、高い画像再現性を得ることが不可欠である。例えば転写プロセスにおいて、静電潜像担持体に現像されたトナーが効率良く中間転写体またはメディア上に転写されることで、高い画像再現性を獲得することが可能となる。
【0004】
高い転写性を獲得するためには、個々のトナーの粒子が転写バイアスによって受ける電界の力が、トナーと静電潜像担持体との付着力よりも大きくなる必要がある。付着力は、ファンデルワールス力に代表される非静電付着力と、静電的な鏡像力に代表される静電付着力とに大別される。
【0005】
特許文献1には、転写性を高めるためにトナー粒子を粒径の大きいシリカ微粒子で被覆することで、非静電付着力を下げる手段が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の技術により、高画質化という観点では転写性は改善されていた。しかし、Print on demand(POD)市場に対応するような高画質化という点で、ドット再現性の向上は改善の余地が残されている。
【0008】
そこで本発明は、優れた転写性を示し、ドット再現性が良好なトナーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るトナーは、
トナー粒子と、シリカ微粒子Aとを有するトナーであって、前記トナー粒子は結着樹脂を含有し、前記シリカ微粒子Aは前記トナー粒子の表面に付着または固着して存在し、
前記シリカ微粒子Aは、鉄原子を20ppm以上2000ppm以下の濃度で含有し、
前記シリカ微粒子Aの一次粒子は、80nm以上200nm以下の個数平均粒径を有し、
前記トナー粒子の前記シリカ微粒子Aによる被覆率は、31.0%以上70.0%以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、優れた転写性を示し、ドット再現性が良好なトナーを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明において、数値範囲を表す「○○以上××以下」や「○○~××」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限および上限を含む数値範囲を意味する。
【0013】
本発明に係るトナーは、トナー粒子と、シリカ微粒子Aとを有するトナーであって、前記トナー粒子は結着樹脂を含有し、前記シリカ微粒子Aは前記トナー粒子の表面に付着または固着して存在し、前記シリカ微粒子Aは、鉄原子を20ppm以上2000ppm以下の濃度で含有し、前記シリカ微粒子Aの一次粒子は、80nm以上200nm以下の個数平均粒径を有し、前記トナー粒子の前記シリカ微粒子Aによる被覆率は、31.0%以上70.0%以下である。
【0014】
本発明に係るトナーを用いることで、優れた転写性に加えてドット再現性が向上した効果を得ることができる。
【0015】
本発明に係るトナーにおいて、ドット再現性の向上効果が得られる理由は以下のように考えられる。
ドット再現性の向上を考えた場合、トナーの現像性をさらに高める必要があり、その為にはトナーの粒子の表層における帯電の均一性が重要となる。トナー粒子にシリカ微粒子を外添して得たトナーでは、トナーの粒子の表層におけるシリカ微粒子の分布が不均一な場合がある。特にシリカ微粒子の外添量が比較的多く、トナー粒子のシリカ微粒子による被覆率が30%を超えるような場合には、シリカ微粒子の分布を均一化することが難しい。シリカ微粒子の分布が不均一な状態では、帯電の高い部位と低い部位とがまばらに存在する。シリカ微粒子は電気抵抗が高いため、シリカ微粒子の不均一な分布によって帯電分布も不均一になりやすく、潜像に対して僅かにトナー像が乱れることでドット再現性に影響を及ぼす場合がある。
【0016】
本発明において、トナー粒子が表面に有するシリカ微粒子Aは、鉄原子を20ppm以上2000ppm以下の濃度で含有する。シリカ微粒子Aが鉄原子を上記の範囲内の濃度で含有することで、シリカ微粒子Aにおける電荷の動きを速める効果が得られる。そのため、トナーの粒子の表層において、シリカ微粒子Aが高電位に帯電した部位の電荷を周囲に逃がし緩和する効果を得ることができる。その結果、トナーの粒子の表層における帯電均一性が向上し、ドット再現性が良好となる。
【0017】
シリカ微粒子Aが鉄原子を20ppm以上の濃度で含有することで、シリカ微粒子Aが電荷の移動を促進させる効果を十分に得ることが可能となる。
また、シリカ微粒子Aが鉄原子を2000ppm以下の濃度で含有することで、導電性が過剰に高くなることによるトナーの帯電の漏えいを抑え、かぶり等の弊害を防ぐことができる。
【0018】
本発明に係るトナーにおいて、シリカ微粒子Aの一次粒子が80nm以上の個数平均粒径を有することで、長期間使用された場合においても、シリカ微粒子Aがトナー粒子に埋没せず、高いスペーサー効果と帯電の維持性とを長期間にわたって得ることができる。
また、シリカ微粒子Aの一次粒子が200nm以下の個数平均粒径を有することで、長期間使用された場合においても、現像器内での機械的負荷の影響によりシリカ微粒子Aがトナー粒子からキャリアや現像器内部材に移行することを抑制することができる。そのため、長期間にわたってトナーが使用された場合においても、高いスペーサー効果と帯電の維持性を長期間にわたって得ることができる。
【0019】
本発明に係るトナーにおいて、トナー粒子のシリカ微粒子Aによる被覆率が31.0%以上であることで、トナーの非静電付着力を十分に低減させることができ、高い転写性を得ることができる。
また、トナー粒子のシリカ微粒子Aによる被覆率が70.0%以下であることで、トナー粒子の表面におけるシリカ微粒子Aの分布の局所的な偏りが大きくなりすぎず、トナーの粒子において局所的に大きな帯電を有する部位が発生しにくい。
【0020】
本発明に係るトナーは、トナー粒子が上記の特徴を有するシリカ粒子Aをその表面に有することで、シリカ微粒子Aによる電荷ならし効果を十分に得ることが可能となる。その結果、トナーの粒子の表層における帯電均一性が向上する。その結果、ドット再現性が良好となる。
【0021】
さらに本発明に係るトナーにおけるシリカ微粒子Aの含有量は、トナーの粒子の表層における帯電均一性を向上させる観点から、トナーの質量に対して2.1質量%以上7.0質量%以下であることが好ましい。
【0022】
さらに本発明に係るトナーにおけるシリカ微粒子Aの固着率は、転写性およびドット再現性の長期間にわたる安定性の観点から、50質量%以上90質量%以下であることが好ましい。
【0023】
さらに本発明に係るトナーにおいて、シリカ微粒子Aの電荷移動の促進の観点から、シリカ微粒子Aはアルミニウム原子を200ppm以上2000ppm以下の濃度で含有することが好ましい。
【0024】
次に、好ましい態様などを記載する。
<シリカ微粒子A>
シリカ微粒子Aは、シリカ(即ちSiO2)を主成分とする粒子であり、燃焼法、溶融法、および水熱合成等の公知の製造方法で製造することが可能である。なかでも、高温高湿環境下で帯電を緩和する効果をさらに高める観点、および、高抵抗であり湿度の影響を受けにくいという観点から、燃焼法または溶融法で製造されたシリカ微粒子Aが好ましい。
【0025】
燃焼法は、シロキサン化合物を気化することによりシロキサンガスを窒素等のキャリアガスとともにバーナーへ導入し、例えば酸素等の支燃性ガスと拡散混合してシロキサンガスを燃焼させることでシリカ微粒子を生成させる方法である。また、別の燃焼法は、四塩化ケイ素を酸素、水素、例えば窒素等の希釈ガスとの混合ガスとともに、高温で燃焼させてシリカ微粒子(ヒュームドシリカ)を生成させる方法である。
【0026】
また、溶融法は、金属シリコン微粒子スラリーを火炎中に噴霧して酸化反応させながら球形化させてシリカ粒子を得る方法である。
【0027】
本発明においては、シリカ微粒子Aの一次粒子が有する個数平均粒径を、所望の値に制御する観点、および鉄原子を含有するという観点から、シロキサンガスを燃焼してシリカ微粒子を生成させる燃焼法が好ましい例として挙げられる。
【0028】
シロキサン化合物としては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等が挙げられる。
【0029】
本発明では、シリカ微粒子に鉄原子、好ましくはさらにアルミニウム原子を含有させることによって本発明で用いるシリカ微粒子Aを得ることができる。これら金属原子をシリカ微粒子Aに含有させる方法としては、シロキサン化合物の純度を調整して含有させることが挙げられる。
【0030】
さらに、シリカ微粒子Aは、その表面をシランカップリング剤、シリコーンオイルなどにより疎水化処理されていることが好ましい。シランカップリング剤としては、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)を用いることが好ましい。シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイルを用いることが好ましい。
【0031】
シランカップリング剤による表面処理の方法としては、特に限定されず、公知の手法を用いることができる。例えば、シリカ微粒子Aを撹拌することによってクラウド状としたものに、気化したシランカップリング剤を噴霧するか、蒸気で接触させる方法が一般的で好ましい。
【0032】
シランカップリング剤は、シリカ微粒子A100重量部あたり1重量部~80重量部の範囲の量で用いて表面処理することが好ましい。
【0033】
シリコーンオイルによる表面処理する方法としては、特に限定されず、公知の手法を用いることができる。例えば、有機ケイ素化合物で処理されたシリカ微粒子AとシリコーンオイルとをFMミキサーなどの混合機を用いて直接混合する方法や、シリカ微粒子Aにシリコーンオイルを噴霧する方法が挙げられる。又は、適当な溶剤にシリコーンオイルを溶解又は分散させた後、シリカ微粒子Aを加えて混合し、溶剤を除去する方法でもよい。
【0034】
シリコーンオイルは、シリカ微粒子A100重量部あたり1質量部~40質量部の範囲の量で用いて表面処理することが好ましい。
【0035】
本発明に係るトナーには、外添剤としてシリカ微粒子Aを単独で使用してもよいし、その他の外添剤の一種または複数種と、シリカ微粒子Aとを併用してもよい。
【0036】
<その他の外添剤>
本発明に係るトナーには、トナーの流動性の向上や摩擦帯電性量の調整のために、シリカ微粒子A以外の外添剤が添加されてもよい。
【0037】
シリカ微粒子A以外の外添剤としては、例えば、帯電補助剤、導電性付与剤、流動性付与剤、ケーキング防止剤、熱ローラ定着時の離型剤、滑剤、および研磨剤などの働きをする樹脂微粒子や無機微粒子が挙げられる。滑剤としては、ポリフッ化エチレン微粒子、ステアリン酸亜鉛微粒子、ポリフッ化ビニリデン微粒子が挙げられる。研磨剤としては、酸化セリウム微粒子、炭化ケイ素微粒子、チタン酸ストロンチウム微粒子が挙げられる。
本発明においては、シリカ微粒子A以外の外添剤としては、酸化アルミニウム(アルミナ)、チタン酸ストロンチウム、酸化チタン(チタニア)、および炭酸カルシウム等の無機微粒子が好ましい。
【0038】
<結着樹脂>
本発明におけるトナー粒子は、結着樹脂として、以下の重合体などを用いることが可能である。
ポリスチレン、ポリ-p-クロルスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレンおよびその置換体の単重合体;スチレン-p-クロルスチレン共重合体、スチレン-ビニルトルエン共重合体、スチレン-ビニルナフタリン共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-メタクリル酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;スチレン系共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂とビニル系樹脂が混合、または両者が一部反応したハイブリッド樹脂;ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、天然変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などが挙げられる。
これらの中でも、トナーの低温定着性および帯電性の観点から、結着樹脂としてポリエステル樹脂を用いることが好ましい。
【0039】
<ワックス>
本発明におけるトナー粒子には、ワックスを含有させてもよい。ワックスとしては、例えば、以下のものが挙げられる。
低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、アルキレン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスなどの炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスなどの炭化水素系ワックスの酸化物またはそれらのブロック共重合物;カルナバワックスなどの脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスなどの脂肪酸エステル類を一部または全部を脱酸化したもの。
これらの中でも、トナーの低温定着性および耐ホットオフセット性の観点から、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスなどの炭化水素系ワックスや、カルナバワックスなどの脂肪酸エステル系ワックスが好ましい。
【0040】
トナー粒子中のワックスの含有量は、トナー粒子中の結着樹脂100質量部に対して、1.0質量部以上20.0質量部以下であることが好ましい。
【0041】
<着色剤>
本発明におけるトナー粒子には、着色剤を含有させてもよい。着色剤としては、公知のイエロー着色剤、マゼンタ着色剤、シアン着色剤、およびブラック着色剤等を用いることができる。
ブラック着色剤としては、例えば、カーボンブラックや、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤およびシアン着色剤を用いて黒色に調色したもの等が挙げられる。
着色剤としては、顔料または染料を単独で使用してもよいし、染料と顔料とを併用してもよい。
トナー粒子中の着色剤の含有量は、トナー粒子中の結着樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上30.0質量部以下であることが好ましい。
【0042】
<現像剤>
本発明におけるトナーは、一成分系現像剤としても使用できるが、トナーの粒子の表面における電荷の局在化を抑制するために、トナーと、磁性キャリアと混合して、二成分系現像剤として用いることもできる。
磁性キャリアとしては、例えば以下のものを使用することができる。酸化鉄;鉄、リチウム、カルシウム、マグネシウム、ニッケル、銅、亜鉛、コバルト、マンガン、クロム、および希土類のような金属粒子、それらの合金粒子、それらの酸化物粒子;フェライトなどの磁性体。磁性体と、この磁性体を分散した状態で保持するバインダー樹脂とを含有する磁性体分散樹脂キャリア(いわゆる樹脂キャリア)。
トナーを磁性キャリアと混合して二成分系現像剤として使用する場合、二成分系現像剤における磁性キャリアの含有割合は、二成分系現像剤の全質量に対して、85質量%以上98質量%以下が好ましく、より好ましくは87質量%以上96質量%以下である。
【0043】
<トナーの製造方法>
トナー粒子を製造する方法としては、特に限定されないが、顔料などのトナー材料の分散の観点から粉砕法が好ましい。
【0044】
以下、粉砕法でのトナー製造手順について説明する。
原料混合工程では、トナー粒子を構成する材料として、例えば、結着樹脂、離型剤、着色剤、必要に応じて荷電制御剤等の他の成分を所定量秤量して配合し、混合する。
【0045】
混合装置の一例としては、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウタミキサ、メカノハイブリッド(日本コークス工業(株)製)などが挙げられる。
【0046】
次に、混合した材料を溶融混練して、結着樹脂中に顔料などを分散させる。その溶融混練工程では、加圧ニーダー、バンバリィミキサーなどのバッチ式練り機や、連続式の練り機を用いることができ、連続生産できる優位性から、1軸または2軸押出機が主流となっている。例えば、KTK型2軸押出機((株)神戸製鋼所製)、TEM型2軸押出機(東芝機械(株)製)、PCM混練機(池貝鉄工製)、2軸押出機(ケイ・シー・ケイ社製)、コ・ニーダー(ブス社製)、ニーデックス(日本コークス工業(株)製)などが挙げられる。さらに、溶融混練することによって得られる樹脂組成物は、2本ロール等で圧延され、冷却工程で水などによって冷却してもよい。
【0047】
ついで、樹脂組成物の冷却物は、粉砕工程で所望の粒径にまで粉砕される。粉砕工程では、例えば、クラッシャー、ハンマーミル、フェザーミルなどの粉砕機で粗粉砕した後、さらに、微粉砕機で微粉砕する。
その後、必要に応じて分級機や篩分機を用いて分級する。
【0048】
粉砕または分級した後の樹脂組成物は、例えば
図1に示す表面処理装置等を用いて表面処理してもよい。
図1に示す表面処理装置を用いた表面処理について以下に説明する。
【0049】
原料定量供給手段1により定量供給された混合物は、圧縮気体流量調整手段2により調整された圧縮気体によって、原料定量供給手段1の延長線上に設置された導入管3に導かれる。導入管3を通過した混合物は、導入管3の中央部に設けられた円錐状の突起状部材4により均一に分散され、放射状に広がる8方向の供給管5に導かれ熱処理が行われる処理室6に導かれる。
【0050】
このとき、処理室6に供給された混合物は、処理室6内に設けられた混合物の流れを規制するための規制手段9によって、その流れが規制される。このため処理室に供給された混合物は、処理室6内を旋回しながら熱処理された後、冷却される。
【0051】
供給された混合物を熱処理するための熱は、熱風供給手段7から供給され、分配部材12で分配され、熱風を旋回させるための旋回部材13により、処理室6内に熱風を螺旋状に旋回させて導入される。その構成としては、熱風を旋回させるための旋回部材13が、複数のブレードを有しており、その枚数や角度により、熱風の旋回を制御することができる。熱風は熱風供給手段出口11から供給される。
【0052】
熱処理されたトナー粒子は冷風供給手段8(冷風供給手段8-1、冷風供給手段8-2および冷風供給手段8-3)から供給される冷風によって冷却される。
【0053】
次に、冷却されたトナー粒子は、処理室の下端にある回収手段10によって回収される。なお、回収手段の先にはブロワー(不図示)が設けられ、それにより吸引搬送される構成となっている。
【0054】
また、粉体粒子供給口14は、供給された混合物の旋回方向と熱風の旋回方向が同方向になるように設けられており、熱球形化処理装置の回収手段10は、旋回された粉体粒子の旋回方向を維持するように、処理室の外周部に設けられている。さらに、冷風供給手段8から供給される冷風は、装置外周部から処理室内周面に、水平かつ接線方向から供給されるよう構成されている。
【0055】
続いて、樹脂組成物を微粉側と粗粉側に二分する。例えば、慣性分級方式のエルボージェット(日鉄鉱業(株)製)を用いて二分する。二分された熱処理トナー粒子それぞれの表面に、所望量の外添剤を外添処理する。外添処理する方法としては、下記の混合装置を外添機として用いて、撹拌・混合する方法が挙げられる。
混合装置:ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウタミキサ、メカノハイブリッド(日本コークス工業(株)製)、ノビルタ(ホソカワミクロン(株)製)等
その際、必要に応じて、さらに流動化剤等の外添剤を外添処理しても良い。
【0056】
本発明において、シリカ微粒子Aは、上記の加熱による表面処理(熱処理)の前に外添された後、熱処理によって、トナー粒子の表面に埋め込まれることが好ましい。これによりトナーにおけるシリカ微粒子Aの固着率が向上し、固着率を50質量%以上90質量%以下の好ましい範囲内に調整することが容易となる。
【0057】
また、シリカ微粒子Aを外添した後に表面処理を行い、その後、さらにシリカ微粒子Aを外添処理することが好ましい。これにより、トナー帯電時における表面電荷密度の均一性が向上し、転写性およびドット再現性をさらに向上させることができる。
【0058】
以下、各種測定方法について述べる。
<水洗処理方法>
水洗処理によりシリカ微粒子Aをトナーから抽出する。具体的には、イオン交換水10.3gにショ糖31.1g(キシダ化学(株)製)を溶解させたショ糖水溶液に、以下のコンタミノンN 6mLを以下の30mLのガラスバイアルに入れて十分に混合し、分散液を作製する。
コンタミノンN:非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤、和光純薬工業(株)製
ガラスバイアル:日電理化硝子(株)製、VCV-30、外径35mm、高さ70mm
このガラスバイアルにトナー1.0gを添加し、トナーが自然に沈降するまで静置して処理前分散液を作製する。この分散液を、振とう機(YS-8D型:(株)ヤヨイ製)にて、振とう速度:200rpmで5分間振とうし、シリカ微粒子Aをトナー粒子の表面から離脱させる。トナー粒子とトナー粒子の表面から脱離したシリカ微粒子Aとの分離は遠心分離機を用いて行う。遠心分離工程は3700rpmで30分間行う。トナー粒子の表面から離脱させたシリカ微粒子Aとトナーを各々吸引濾過することで採取し、乾燥させてシリカ微粒子Aと水洗後トナーを得る。
【0059】
<シリカ微粒子A中の金属元素の含有量の測定方法>
上記の水洗処理を繰り返し行って得られたシリカ微粒子Aに対して蛍光X線測定を行い、鉄原子およびアルミニウム原子の含有量を算出する。
各元素の蛍光X線測定は、JIS K 0119-1969に準ずるが、具体的には以下の通りである。
測定装置としては、例えば波長分散型蛍光X線分析装置「Axios」(PANalytical社製)を用いる。
PANalytical社が推奨する粉末測定専用のカップに専用のPP(ポリプロピレン)フィルムを底面に貼ったものにサンプル2gを秤量し、底面に均一厚に層を形成させて、ふたをする。ついで大気圧He雰囲気下においてFP法にてシリカ粒子におけるNaからUまでの元素を測定する。その際、検出された元素全てが酸化物であると仮定し、それらの総質量を100%として、ソフトウェアSpectraEvaluation(version 5.0L)にて総質量に対するFe2O3 、Al2O3の含有量(質量%)を酸化物換算値として求める。
【0060】
<シリカ微粒子Aの一次粒子が有する個数平均粒径の測定方法>
シリカ微粒子Aの一次粒子が有する個数平均粒径は、日立超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡S-4800((株)日立ハイテクノロジーズ)にて撮影されるトナー粒子の表面のシリカ微粒子A画像から算出することができる。S-4800の画像撮影条件は以下のとおりである。
【0061】
(1)試料作製
試料台(アルミニウム試料台15mm×6mm)に導電性ペーストを薄く塗り、その上にトナーを吹きつける。さらにエアブローして、余分なトナーを試料台から除去し十分乾燥させる。試料台を試料ホルダにセットし、試料高さゲージにより試料台高さを36mmに調節する。
【0062】
(2)S-4800観察条件設定
個数平均粒径の算出は、S-4800の反射電子像観察により得られた画像を用いて行う。反射電子像は二次電子像と比べて粒子のチャージアップが少ないため、粒径を精度良く測定することができる。
【0063】
S-4800の鏡体に取り付けられているアンチコンタミネーショントラップに液体窒素を溢れるまで注入し、30分間置く。S-4800の「PC-SEM」を起動し、フラッシング(電子源であるFEチップの清浄化)を行う。画面上のコントロールパネルの加速電圧表示部分をクリックし、[フラッシング]ボタンを押し、フラッシング実行ダイアログを開く。フラッシング強度が2であることを確認し、実行する。フラッシングによるエミッション電流が20~40μAであることを確認する。試料ホルダをS-4800鏡体の試料室に挿入する。コントロールパネル上の[原点]を押し試料ホルダを観察位置に移動させる。
【0064】
加速電圧表示部をクリックしてHV設定ダイアログを開き、加速電圧を[1.1kV]、エミッション電流を[20μA]に設定する。オペレーションパネルの[基本]のタブ内にて、信号選択を[SE]に設置し、SE検出器を[上(U)]および[+BSE]を選択し、[+BSE]の右の選択ボックスで[L.A.100]を選択し、反射電子像で観察するモードにする。同じくオペレーションパネルの[基本]のタブ内にて、電子光学系条件ブロックのプローブ電流を[Normal]に、焦点モードを[UHR]に、WDを[4.5mm]に設定する。コントロールパネルの加速電圧表示部の[ON]ボタンを押し、加速電圧を印加する。
【0065】
(3)焦点調整
操作パネルのフォーカスつまみ[COARSE]を回転させ、ある程度焦点が合ったところでアパーチャアライメントの調整を行う。コントロールパネルの[Align]をクリックし、アライメントダイアログを表示し、[ビーム]を選択する。操作パネルのSTIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を回転し、表示されるビームを同心円の中心に移動させる。次に[アパーチャ]を選択し、STIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を一つずつ回し、像の動きを止めるまたは最小の動きになるように合わせる。アパーチャダイアログを閉じ、オートフォーカスで、ピントを合わせる。その後、倍率を80,000(80k)倍に設定し、上記と同様にフォーカスつまみ、STIGMA/ALIGNMENTつまみを使用して焦点調整を行い、再度オートフォーカスでピントを合わせる。この操作を再度繰り返し、ピントを合わせる。ここで、観察面の傾斜角度が大きいと被覆率の測定精度が低くなりやすいので、ピント調整の際に観察面全体のピントが同時に合うものを選ぶことで、表面の傾斜が極力無いものを選択して解析する。
【0066】
(4)画像保存
ABCモードで明るさ合わせを行い、サイズ640×480ピクセルで写真撮影して保存する。この画像ファイルを用いて以下の解析を行う。トナー粒子一つに対して写真を1枚撮影し、少なくともトナー粒子25粒子以上について画像を得る。
【0067】
(5)画像解析
トナー粒子表面上の少なくとも300個のシリカ微粒子Aについて粒径を測定して、個数平均粒径を求める。本発明では画像解析ソフトImage-Pro Plus ver.5.0を用いて、上述した手法で得た画像を2値化処理することで個数平均粒径を算出することができる。
【0068】
<シリカ微粒子Aの被覆率>
日立超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡S-4800((株)日立ハイテクノロジーズ)にて撮影されたトナー表面画像を20個無作為にサンプリングする。
その画像情報を、画像解析ソフトImage-Pro Plus ver.5.0((株)日本ローパー)によって、トナー粒子表面部分とシリカ微粒子A部分との明度が異なることを利用して、2値化する。この2値化によって、シリカ微粒子A部分の面積SSiO2とトナー粒子部分の面積(シリカ微粒子A部分の面積も含む)STonerに分ける。
そして、シリカ微粒子Aによるトナー粒子の被覆率(%)σSiO2は、下式によって算出される。
σSiO2(%)=SSiO2/SToner×100
【0069】
<トナー中のシリカ微粒子Aの含有量の測定方法>
トナーに対して蛍光X線測定を行い、シリカ微粒子Aの含有量を算出する。
各元素の蛍光X線の測定は、JIS K 0119-1969に準ずるが、具体的には以下の通りである。
測定には、波長分散型蛍光X線分析装置「Axios」(PANalytical社製)と、測定条件設定および測定データ解析をするための付属の専用ソフト「SuperQ ver.4.0F」(PANalytical社製)とを用いる。なお、X線管球のアノードとしてはRhを用い、測定雰囲気は真空、測定径(コリメーターマスク径)は27mm、測定時間10秒間とする。また、測定にはプロポーショナルカウンタ(PC)を用いる。
測定サンプルとしては、専用のプレス用アルミリングの中にトナー約4gを入れて平らにならし、錠剤成型圧縮機を用いて、20MPaで、60秒間加圧し、厚さ約2mm、直径約39mmに成型したペレットを用いる。錠剤成型圧縮機としては、錠剤成型圧縮機「BRE-32」((株)前川試験機製作所製)を用いる。
上記の条件で測定を行い、得られたX線のピーク位置を基にケイ素元素を同定し、単位時間あたりのX線光子の数である計数率(単位:cps)からシリカ微粒子Aの含有量を算出する。
【0070】
<トナーにおけるシリカ微粒子Aの固着率の測定方法>
上記の水洗処理前後のトナーに対して蛍光X線測定を行い、トナーにおけるシリカ微粒子Aの固着率を算出する。
まず、上記の水洗処理を行う前のトナーに含まれるシリカ微粒子Aの定量を行う。シリカ微粒子Aの定量においては、波長分散型蛍光X線分析装置Axios advanced(PANalytical社製)を用いて、トナー中のケイ素元素強度を測定する。次に同様にして上記の水洗処理を行った後のトナーのケイ素元素強度を測定する。固着率は(水洗後のトナーのケイ素元素強度/トナー中のケイ素元素強度)×100(%)で求められる。
【0071】
<トナー粒子の重量平均粒径(D4)の測定方法>
トナー粒子の重量平均粒径(D4)は、以下の装置およびソフトを用いて、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行って算出することができる。
・50μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)
・測定条件設定および測定データ解析をするための上記装置に付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
【0072】
なお、測定、解析を行う前には、以下のように前記専用ソフトの設定を行う。
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を1μm以上30μm以下に設定する。
【0073】
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)「Multisizer 3」専用のガラス製250mL丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mLを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、解析ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
【0074】
(2)ガラス製の100mL平底ビーカーに前記電解水溶液約30mLを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3mL加える。
【0075】
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispension System Tetora150」(日科機バイオス社製)を用意する。この超音波分散器を備えた水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2mL添加する。
【0076】
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
【0077】
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
【0078】
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、トナーを分散した前記(5)の電解質水溶液をピペットを用いて滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
【0079】
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)を算出する。なお、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
【実施例】
【0080】
以下、製造例、実施例および比較例に基づいて具体的に本発明について説明する。しかしながら、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。なお、特に断りのない限り部は、全て質量基準である。
【0081】
<シリカ微粒子A1の製造例>
シリカ微粒子A1は拡散燃焼法によって以下のように製造した。
シリカ微粒子A1の製造にあたり、燃焼炉として、内炎および外炎が形成される二重管構造の炭化水素―酸素混合型バーナーを用いた。このバーナーは、バーナー中心部にスラリー噴射用の二流体ノズルが接地され、原料のケイ素化合物が導入されるように構成されている。また、二流体ノズルの周囲から炭化水素-酸素の可燃性ガスが噴射され、還元雰囲気である内炎および外炎を形成するように構成されている。可燃性ガスおよび酸素の量ならびに流量の制御により、雰囲気、温度および火炎の長さなどを調整することができる。
また、火炎中において、原料のケイ素化合物からシリカ微粒子が生成され、さらにシリカ微粒子が所望の粒径になるまで融着させることができる。その後、冷却し、生成されたシリカ微粒子をバグフィルターなどにより捕集することによって、所望の粒径のシリカ微粒子Aが得られる。
原料のケイ素化合物としては、鉄原子を150ppm、アルミニウム原子を500ppm含有するヘキサメチルシクロトリシロキサン化合物を用いて、シリカ微粒子A1を製造した。
次に、得られたシリカ微粒子A100質量部に対して、ヘキサメチルジシラザン4質量%で表面処理を行い、シリカ微粒子A1を得た。
得られたシリカ微粒子A1の一次粒子の個数平均粒径を表1に示した。またシリカ微粒子A1に含有される鉄含有量、アルミニウム含有量を表1に示す。
【0082】
<シリカ微粒子A2~A11の製造例>
シリカ微粒子A1の製造例において、一次粒子が有する個数平均粒径、鉄原子濃度、およびアルミニウム原子濃度を変化させてシリカ微粒子A2~A11を得た。各シリカ微粒子の一次粒子が有する個数平均粒径、鉄原子濃度、およびアルミニウム原子濃度を表1に示す。
【0083】
【0084】
<結着樹脂1の製造例>
以下の材料を用意した。
・ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン:多価アルコール総モル数に対して80.0mol%
・ポリオキシエチレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン:多価アルコール総モル数に対して20.0mol%
・テレフタル酸:多価カルボン酸総モル数に対して80.0mol%
・無水トリメリット酸:多価カルボン酸総モル数に対して20.0mol%
・チタンテトラブトキシド(エステル化触媒):0.51質量部
これらを、冷却管、攪拌機、窒素導入管、および、熱電対のついた反応槽(フラスコ)に投入した。そして、モノマー総量100部に対して、触媒として2-エチルヘキサン酸錫(エステル化触媒)を1.5部添加した。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、200℃の温度で撹拌しつつ、2.5時間反応させた。
さらに、フラスコ内の圧力を8.3kPaに下げ、1時間維持した後、180℃まで冷却し、そのまま反応させASTM D36-86に従って測定した軟化点が110℃に達したのを確認してから温度を下げて反応を止めた。
【0085】
<トナー1の製造例>
以下の材料を用意した。
・結着樹脂1 100部
・フィッシャートロプシュワックス(融点:90℃) 6部
・C.I.ピグメントブルー 15:3 4部
これらをヘンシェルミキサー(FM-75型、三井鉱山(株)製)で予備混合した後、二軸混練押し出し機(PCM-30型、株式会社池貝製)によって、160℃で溶融混練した。
得られた混練物を冷却し、ハンマーミルで1mm以下に粗粉砕した後、機械式粉砕機(T-250、ターボ工業(株)製)にて微粉砕した。
得られた微粉砕物を、ファカルティ(F-300、ホソカワミクロン社製)を用いて分級した。運転条件は、分級ローター回転数を11000rpm、分散ローター回転数を7200rpmとした。
これにより重量平均粒径(D4)6.0μmを有する負摩擦帯電性のトナー粒子1を得た。
【0086】
続いて、トナー粒子1を100部と、シリカ微粒子A1を2.5部とを、ヘンシェルミキサー(FM-10C型、日本コークス(株)製)を用いて、回転数2000rpm、回転時間2minで混合した。その後、
図1に示す表面処理装置を用いて熱処理を行い、熱処理トナー母粒子1を得た。表面処理装置の運転条件はフィード量=5kg/hr、熱風温度C=160℃、熱風流量=6m
3/min.、冷風温度E=-5℃、冷風流量=4m
3/min.、ブロワー風量=20m
3/min.、インジェクションエア流量=1m
3/min.とした。
得られた熱処理トナー母粒子1を、慣性分級方式のエルボージェット(日鉄鉱業(株)製)を用いて分級し、熱処理トナー母粒子1Mを得た。得られた熱処理トナー母粒子1Mは、重量平均粒径(D4)が5.5μmであった。
【0087】
次に、熱処理トナー母粒子1Mを100部と、チタン酸ストロンチウム粒子(一次粒子の個数平均径(D1)が15nm)を0.5部とをヘンシェルミキサー(FM-10C型、日本コークス(株)製)を用いて混合した。混合の条件は、回転数67s-1(4000rpm)、回転時間2minとした。その後、目開き54μmの超音波振動篩を通過させ、トナー1を得た。トナー1の重量平均粒径(D4)は5.5μmであった。トナー1のシリカ微粒子Aによる被覆率と、トナー1におけるシリカ微粒子Aの固着率とを表2に示す。
【0088】
【0089】
<トナー2~4の製造例>
トナー1の製造方法において、用いるシリカ微粒子Aの種類を、表2に示すように変更した以外はトナー1の製造方法と同様にして、トナー2~4を得た。トナー2~4の重量平均粒径(D4)はいずれも5.5μmであった。
【0090】
<トナー5および6の製造例>
トナー4の製造方法において、表2に示すように、熱処理温度を変化させた以外はトナー4の製造方法と同様にして、トナー5および6を得た。トナー5の重量平均粒径(D4)は5.2μm、トナー6の重量平均粒径(D4)は5.8μmであった。
【0091】
<トナー7の製造例>
トナー粒子1を100部と、シリカ微粒子A4を2.5部とをヘンシェルミキサー(FM-10C型、日本コークス(株)製)を用いて、回転数67s-1(4000rpm)、回転時間2minで混合した。その後、目開き150μmのメッシュで篩い、トナー7を得た。トナー7の重量平均粒径(D4)は5.0μmであった。
【0092】
<トナー8~17および比較トナー1~5の製造例>
トナー7の製造方法において、用いるシリカ微粒子Aの種類と、トナー粒子1に対するシリカ微粒子Aの添加量を、表2に示すように変更した。それ以外はトナー7の製造方法と同様にして、トナー8~17および比較トナー1~5を得た。トナー8~17および比較トナー1~5重量平均粒径(D4)はいずれも5.0μmであった。
【0093】
以上により製造したトナー2~17および比較トナー1~5について、シリカ微粒子Aによる被覆率と、シリカ微粒子Aの固着率とを表2に示す。
【0094】
<磁性コア粒子1の製造例>
フェライト原材料を以下の組成比となるように秤量した。
・Fe2O3 62.7部
・MnCO3 29.5部
・Mg(OH)2 6.8部
・SrCO3 1.0部
その後、直径1/8インチのステンレスビーズを用いた乾式振動ミルで5時間粉砕・混合した。得られた粉砕物をローラーコンパクターにて、約1mm角のペレットにした。
このペレットを目開き3mmの振動篩にて粗粉を除去した。次いで目開き0.5mmの振動篩にて微粉を除去した後、バーナー式焼成炉を用いて、窒素雰囲気下(酸素濃度0.01体積%)で、温度1000℃で4時間焼成し、仮焼フェライトを作製した。得られた仮焼フェライトの組成は、以下の通りであった。
(MnO)a(MgO)b(SrO)c(Fe2O3)d
上記式において、a=0.257、b=0.117、c=0.007、d=0.393
【0095】
該仮焼フェライトをクラッシャーで0.3mm程度に粉砕した後に、直径1/8インチのジルコニアビーズを用い、仮焼フェライト100部に対し、水を30部加え、湿式ボールミルで1時間粉砕した。さらに、得られたスラリーを、直径1/16インチのアルミナビーズを用いた湿式ボールミルで4時間粉砕し、フェライトスラリー(仮焼フェライトの微粉砕品)を得た。
該フェライトスラリーに、仮焼フェライト100部に対して分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム1.0部、バインダーとしてポリビニルアルコール2.0部を添加し、スプレードライヤー(大川原化工機社製)で、球状粒子に造粒した。得られた粒子を粒度調整した後、ロータリーキルンを用いて、650℃で2時間加熱し、分散剤やバインダーの有機成分を除去した。
【0096】
該焼成雰囲気をコントロールするために、電気炉にて窒素雰囲気下(酸素濃度1.00体積%)で、室温から温度1300℃まで2時間で昇温し、その後、温度1150℃で4時間焼成した。その後、4時間をかけて、温度60℃まで降温し、窒素雰囲気から大気に戻し、温度40℃以下で取り出した。
凝集した粒子を解砕した後に、磁力選鉱により低磁力品をカットし、目開き250μmの篩で篩分して粗大粒子を除去し、体積分布基準の50%粒径(D50)37.0μmの磁性コア粒子1を得た。
【0097】
<樹脂溶液1の調製>
以下の材料を用意した。
・シクロヘキシルメタクリレートモノマー 26.8質量%
・メチルメタクリレートモノマー 0.2質量%
・メチルメタクリレートマクロモノマー 8.4質量%
(片末端にメタクリロイル基を有する重量平均分子量5000のマクロモノマー)
・トルエン 31.3質量%
・メチルエチルケトン 31.3質量%
・アゾビスイソブチロニトリル 2.0質量%
上記材料のうち、シクロヘキシルメタクリレートモノマー、メチルメタクリレートモノマー、メチルメタクリレートマクロモノマー、トルエン、およびメチルエチルケトンを以下の装置にいれた。該装置は、還流冷却器、温度計、窒素導入管および攪拌装置を取り付けた四つ口のセパラブルフラスコである。そして窒素ガスを導入して充分に窒素雰囲気にした後、80℃まで加温し、アゾビスイソブチロニトリルを添加して5時間還流し重合させた。
得られた反応物にヘキサンを注入して共重合体を沈殿析出させた。
得られた沈殿物を濾別後、真空乾燥して樹脂を得た。
次いで、30部の該樹脂を、トルエン40部およびメチルエチルケトン30部の混合溶媒に溶解して、樹脂溶液1(固形分濃度30質量%)を得た。
【0098】
<被覆樹脂溶液1の調製>
以下の材料を用意した。
・樹脂溶液1(樹脂固形分濃度30%) 33.3質量%
・トルエン 66.4質量%
・カーボンブラック(Regal330;キャボット社製) 0.3質量%
(一次粒子の個数平均粒径:25nm、窒素吸着比表面積:94m2/g、DBP吸油量:75mL/100g)
これらを、ペイントシェーカーに投入し、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、1時間分散を行った。得られた分散液を、5.0μmのメンブランフィルターで濾過をおこない、被覆樹脂溶液1を得た。
【0099】
<磁性キャリア1の製造例>
常温で維持されている真空脱気型ニーダーに、被覆樹脂溶液1および磁性コア粒子1を投入した(被覆樹脂溶液1の投入量は、100部の磁性コア粒子1に対して樹脂成分として2.5部)。
投入後、回転速度30rpmで15分間撹拌し、溶媒が一定以上(80質量%)揮発した後、減圧混合しながら80℃まで昇温し、2時間かけてトルエンを留去した後に冷却した。
得られた磁性キャリアを、磁力選鉱により低磁力品を分別し、開口70μmの篩を通した後、風力分級器で分級し、体積分布基準の50%粒径(D50)が38.2μmの磁性キャリア1を得た。
【0100】
<現像剤1~17および比較現像剤1~5の製造例>
トナー1~17と磁性キャリア1とを、90部の磁性キャリア1に対してトナー1~17がそれぞれ10部となるように混合した。混合には、V型混合機(V-10型:格式会社徳寿製作所)を用い、0.5s-1、回転時間5minの条件で混合した。これにより現像剤1~17および比較現像剤1~5を得た。用いたトナーと、得られた現像剤との対応関係を表4に示す。
【0101】
【0102】
<実施例1~13、15~17、参考例1、および比較例1~5>
上記で得た現像剤1~17および比較現像剤1~5を用いて以下の評価を行った。
評価においては、画像形成装置として、キヤノン(株)製カラー複写機imagePRESS C850またはその改造機を用いた。
画像形成装置のシアン色用のステーションの現像器に、各現像剤を投入し、形成した画像についてかぶりの評価を、また、通紙耐久試験前後での転写性およびドット再現性の評価を行った。
転写性およびドット再現性の評価においては、通紙耐久試験として、温度23℃/相対湿度5%の印刷環境(以下「N/L」環境)の下で、画像比率5%のテストチャートを用い、10,000枚の画像形成を行った。
【0103】
転写性およびドット再現性の評価における通紙耐久試験の条件:
紙:高白色用紙GF-C081(81.4g/m2)(キヤノンマーケティングジャパン(株))
画像形成速度:A4サイズ、フルカラーで85枚/min
現像条件:現像コントラストを任意値で調整可能にし、本体による自動補正が作動しないように改造した。
【0104】
かぶりの評価においては、温度30℃/相対湿度80%の印刷環境(以下「H/H」環境)の下で画像形成を行った。
かぶりの評価における画像形成の条件:
紙:漂白紙CS-068(68.0g/m2)(キヤノンマーケティングジャパン(株))
画像形成速度:A4サイズ、フルカラーで85枚/min
現像条件:現像コントラストを任意値で調整可能にし、本体による自動補正が作動しないように改造した。
【0105】
各評価項目における評価方法を以下に示す。
<ドット再現性>
通紙耐久試験の前後について、ドット再現性の評価を以下により行った。
ハーフトーン(30h)画像を形成し、以下の基準に基づき評価した。
なお、30h画像とは、256階調を16進数で表示した値であり、00hをベタ白(非画像)とし、FFhをベタ画像(全面画像)とするときのハーフトーン画像である。
画像はデジタルマイクロスコープVHX-500(レンズワイドレンジズームレンズVH-Z100 (株)キーエンス製)を用い、ドット1,000個の面積を測定した。
【0106】
ドット面積の個数平均(S)とドット面積の標準偏差(σ)とを算出し、ドット再現性指数を以下の式により算出した。
ドット再現性指数(I)=σ/S×100
【0107】
ドット再現性は、ハーフトーン画像のドット再現性指数(I)で評価した。ドット再現性指数(I)は値が小さいほどドット再現性に優れていることを示している。
(評価基準)
A:Iが1.0未満
B:Iが1.0以上2.0未満
C:Iが2.0以上4.0未満
D:Iが4.0以上6.0未満
E:Iが6.0以上8.0未満
F:Iが8.0以上
結果を表5に示す。
【0108】
<転写性>
通紙耐久試験の前後において、転写性の評価を以下により行った。
ベタ(FFh)画像を形成し、以下の基準に基づき転写性を評価した。
一次転写後に感光体上に残ったトナーと一次転写前のトナーをそれぞれ透明なポリエステル製の粘着テープによりテーピングしてはぎ取った。はぎ取った粘着テープを紙上に貼り、その濃度を分光濃度計500シリーズ(X-Rite社)で測定した。
【0109】
以上により得られた一次転写前の濃度と、転写残の濃度の変化率を転写効率とし、以下の評価基準に基づいて評価を行った。C以上を本発明の効果が得られていると判断した。
(評価基準)
A:転写効率;90%以上
B:転写効率;85%以上90%未満
C:転写効率;80%以上85%未満
D:転写効率;80%未満
結果を表5に示す。
【0110】
<かぶり>
べた白(00h)画像を形成し、以下の基準に基づきかぶりを評価した。
測定は、反射率計リフレクトメーター(商品名:TC-6DS、東京電色社製)を用いて行った。画像形成後の白地部の9点について反射濃度を測定し、得られた値のうち最も低い値をDsとした。また、画像形成前の記録媒体の9点について反射濃度を測定し、得られた値の平均値をDrとした。
【0111】
Dr-Dsをかぶり量とし、かぶりの評価を行った。数値が小さいほどかぶりが少ないことを示す。
(評価基準)
A:かぶり量が1.00未満
B:かぶり量が1.00以上3.00未満
C:かぶり量が3.00以上
【0112】
【符号の説明】
【0113】
1.原料定量供給手段
2.圧縮気体流量調整手段
3.導入管
4.突起状部材
5.供給管
6.処理室
7.熱風供給手段
8.冷風供給手段
9.規制手段
10.回収手段
11.熱風供給手段出口
12.分配部材
13.旋回部材
14.粉体粒子供給口