(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】ハンド及びハンドの制御方法
(51)【国際特許分類】
B25J 15/00 20060101AFI20240930BHJP
B25J 15/08 20060101ALI20240930BHJP
B25J 15/06 20060101ALN20240930BHJP
【FI】
B25J15/00 C
B25J15/08 C
B25J15/06 A
(21)【出願番号】P 2020184710
(22)【出願日】2020-11-04
【審査請求日】2023-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【氏名又は名称】河部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 陽平
(72)【発明者】
【氏名】松浦 剛
(72)【発明者】
【氏名】尾立 圭巳
(72)【発明者】
【氏名】和田 寿夫
(72)【発明者】
【氏名】福田 裕章
【審査官】尾形 元
(56)【参考文献】
【文献】実開平6-66982(JP,U)
【文献】特開2008-23641(JP,A)
【文献】特開2014-65093(JP,A)
【文献】特開2013-223905(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1把持部と、
第2把持部とを備え、
前記第2把持部は、所定の軸上に位置するワークを把持するように構成されており、
前記第1把持部は、所定の開閉方向へ開閉する2つの第1指を有し、
前記第1指は、先端部を含む第1部分と基端部を含む第2部分とを有すると共に、前記第1部分を前記開閉方向へ投影させて形成される仮想領域が前記軸に干渉する干渉位置と前記仮想領域が前記軸に干渉しない非干渉位置との間で前記第1部分が移動するように屈曲又は湾曲するハンド。
【請求項2】
請求項1に記載のハンドにおいて、
前記第1把持部は、前記2つの第1指の前記第1部分でワークを把持した状態で前記第1部分を前記干渉位置まで移動させ、
前記第2把持部は、前記干渉位置に位置する前記第1部分から前記ワークを受け取るハンド。
【請求項3】
請求項2に記載のハンドにおいて、
前記第1把持部は、前記干渉位置において前記第2把持部に前記ワークを受け渡すときに、前記第1部分による前記ワークの把持を解放した状態で前記第1部分によって前記ワークを前記第2把持部に受け渡すための受け渡し姿勢にガイドするハンド。
【請求項4】
請求項3に記載のハンドにおいて、
前記第1把持部は、前記ワークの自重により前記ワークの一部を前記第1部分の上に係止させることによって前記ワークを前記受け渡し姿勢にガイドするハンド。
【請求項5】
請求項3に記載のハンドにおいて、
前記第1把持部は、前記第1部分による前記ワークの把持を解放することによって支持台の上に前記ワークを載置した状態で前記第1部分によって前記ワークを前記受け渡し姿勢にガイドするハンド。
【請求項6】
請求項2乃至5の何れか1つに記載のハンドにおいて、
前記第2把持部は、前記第1部分から前記ワークを受け取るときに、前記軸を中心に前記ワークを把持するハンド。
【請求項7】
請求項1に記載のハンドにおいて、
前記第1把持部は、前記2つの第1指の前記第1部分を前記干渉位置まで移動させた状態で、前記第2把持部が把持するための姿勢に前記ワークを前記第1部分によってガイドするハンド。
【請求項8】
請求項1に記載のハンドにおいて、
前記第2把持部は、ワークを把持し、
前記第1把持部は、前記第2把持部によって把持された前記ワークを屈曲又は湾曲した状態の前記第1指で把持するハンド。
【請求項9】
請求項1に記載のハンドにおいて、
前記第1把持部は、前記第1部分を前記干渉位置まで移動させ、
前記第2把持部は、把持したワークを前記干渉位置に位置する前記第1部分の上に一旦載置し、前記第1部分の上に載置された前記ワークを再び把持するハンド。
【請求項10】
請求項1に記載のハンドにおいて、
前記第2把持部は、前記軸の方向へ移動可能に構成され、
前記第1把持部は、互いに組み込まれた第1ワーク及び第2ワークのうち前記第1ワークを屈曲又は湾曲した状態の前記第1指で把持し、
前記第2把持部は、前記第2ワークを把持した状態で前記軸の方向へ移動することによって前記第1ワークと前記第2ワークとの相対位置を変更するハンド。
【請求項11】
第1把持部と、第2把持部とを備え、
前記第1把持部は、
開閉する2つの指を有し、前記2つの指によってワークを把持し、前記ワークを前記第2把持部へ受け渡すように構成され、
前記第2把持部は、所定の軸上で前記第1把持部から前記ワークを受け取り、前記軸を中心に前記ワークを把持
し、
前記第1把持部は、前記ワークを前記第2把持部へ受け渡す際に、前記2つの指による前記ワークの把持を解放して前記2つの指によって前記ワークを変位可能にガイドするハンド。
【請求項12】
請求項1に記載のハンドを制御するハンドの制御方法であって、
前記第1把持部が、前記2つの第1指の前記第1部分でワークを把持すること、
前記第1把持部が、前記ワークを把持した状態で前記第1部分を前記干渉位置まで移動させること、
前記第2把持部が、前記干渉位置に位置する前記第1部分から前記ワークを受け取ることとを含むハンドの制御方法。
【請求項13】
請求項1に記載のハンドを制御するハンドの制御方法であって、
前記第1把持部が、前記2つの第1指の前記第1部分を前記干渉位置まで移動させた状態で、前記ワークを前記第2把持部が把持するための姿勢に前記第1部分によってガイドすることと、
前記第2把持部が、前記第1把持部によってガイドされた前記ワークを把持することとを含むハンドの制御方法。
【請求項14】
請求項1に記載のハンドを制御するハンドの制御方法であって、
前記第2把持部が、ワークを把持することと、
前記第1把持部が、前記第2把持部によって把持された前記ワークを屈曲又は湾曲した状態の前記第1指で把持することとを含むハンドの制御方法。
【請求項15】
請求項1に記載のハンドを制御するハンドの制御方法であって、
前記第1把持部が、前記第1部分を前記干渉位置まで移動させることと、
前記第2把持部が、把持したワークを前記干渉位置に位置する前記第1部分の上に一旦載置することと、
前記第2把持部が、前記第1部分の上に載置された前記ワークを再び把持することとを含むハンドの制御方法。
【請求項16】
請求項1に記載のハンドを制御するハンドの制御方法であって、
前記第1把持部が、互いに組み込まれた第1ワーク及び第2ワークのうち前記第1ワークを屈曲又は湾曲した状態の前記第1指で把持することと、
前記第2把持部が、前記第2ワークを把持することと、
前記第2把持部が、前記第2ワークを把持した状態で前記軸の方向へ移動することによって前記第1ワークと前記第2ワークとの相対位置を変更することとを含むハンドの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ハンド及びハンドの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、吸着部と一対の指とを備えるハンドが開示されている。このハンドは、吸着部と一対の指とによって部品の姿勢を変更している。詳しくは、吸着部は、部品供給手段に収納された部品を吸着する。吸着部は、吸着した部品の姿勢を変更する。そして、吸着部は、姿勢を変更した部品を一対の指の間に移動させ、一対の指は、吸着部から部品を受け取る。こうして、吸着部が吸着したときとは異なる姿勢で、一対の指が部品を把持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ワークを把持するハンドにおいては、単にワークを把持するだけではなく、様々な動作を行うことができれば、ハンドが連結されるロボットアーム又は装置の動作量が低減される。そのため、1つのハンドによって様々な動作を実現することが望まれている。
【0005】
本開示の技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、1つのハンドにおける複数の把持部の協働によって様々な動作を実現できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のハンドは、第1把持部と、第2把持部とを備え、前記第2把持部は、所定の軸上に位置するワークを把持するように構成されており、前記第1把持部は、所定の開閉方向へ開閉する2つの第1指を有し、前記第1指は、先端部を含む第1部分と基端部を含む第2部分とを有すると共に、前記第1部分を前記開閉方向へ投影させて形成される仮想領域が前記軸に干渉する干渉位置と前記仮想領域が前記軸に干渉しない非干渉位置との間で前記第1部分が移動するように屈曲又は湾曲する。
【0007】
この構成によれば、第2把持部が所定の軸上のワークを把持すると共に、2つの第1指が屈曲又は湾曲することによって第1指の先端側の第1部分を干渉位置まで移動させることができる。2つの第1指は開閉可能に構成されているので、第1部分も開閉することができる。つまり、第1部分は、非干渉位置で開閉できるだけでなく、干渉位置でも開閉することができる。そのため、第1把持部と第2把持部とで協働して様々な動作を実現することができる。
【0008】
本開示の前記ハンドを制御するハンドの制御方法は、前記第1把持部が、前記2つの第1指の前記第1部分でワークを把持すること、前記第1把持部が、前記ワークを把持した状態で前記第1部分を前記干渉位置まで移動させること、前記第2把持部が、前記干渉位置に位置する前記第1部分から前記ワークを受け取ることとを含む。
【0009】
この構成によれば、開閉可能な第1指が屈曲又は湾曲するので、第1指の第1部分で把持したワークを干渉位置まで移動させて把持を解放することによって、ワークを第2把持部に受け渡すことができる。
【0010】
本開示の前記ハンドを制御するハンドの制御方法は、前記第1把持部が、前記2つの第1指の前記第1部分を前記干渉位置まで移動させた状態で、前記ワークを前記第2把持部が把持するための姿勢に前記第1部分によってガイドすることと、前記第2把持部が、前記第1把持部によってガイドされた前記ワークを把持することとを含む。
【0011】
この構成によれば、1つのハンドにおいて、第1把持部と第2把持部とで協働して、第2把持部によるワークの安定的な把持を実現することができる。
【0012】
本開示の前記ハンドを制御するハンドの制御方法は、前記第2把持部が、ワークを把持することと、前記第1把持部が、前記第2把持部によって把持された前記ワークを屈曲又は湾曲した状態の前記第1指で把持することとを含む。
【0013】
この構成によれば、第1指は、第1部分が干渉位置まで移動するように屈曲又は湾曲するので、第2把持部が把持したワークを第1指で把持することができる。つまり、第1把持部と第2把持部とで協働してワークを把持することができる。これにより、ワークの把持の安定性が向上する。
【0014】
本開示の前記ハンドを制御するハンドの制御方法は、前記第1把持部が、前記第1部分を前記干渉位置まで移動させることと、前記第2把持部が、把持したワークを前記干渉位置に位置する前記第1部分の上に一旦載置することと、前記第2把持部が、前記第1部分の上に載置された前記ワークを再び把持することとを含む。
【0015】
この構成によれば、第2把持部は、1つのハンドにおいてワークを持ち直すことができる。これにより、第2把持部は、ワークをより安定的に持ち直したり、把持する部分を変更してワークを持ち直したりすることができる。
【0016】
本開示の前記ハンドを制御するハンドの制御方法は、前記第1把持部が、互いに組み込まれた第1ワーク及び第2ワークのうち前記第1ワークを屈曲又は湾曲した状態の前記第1指で把持することと、前記第2把持部が、前記第2ワークを把持することと、前記第2把持部が、前記第2ワークを把持した状態で前記軸の方向へ移動することによって前記第1ワークと前記第2ワークとの相対位置を変更することとを含む。
【0017】
この構成によれば、第1指は、第1部分が干渉位置まで移動するように屈曲又は湾曲するので、第2把持部が把持したワークを第1指で把持することができる。そこで、互いに組み込まれた第1ワーク及び第2ワークのうち第1ワークを第1把持部が屈曲又は湾曲した第1指で把持し、第2ワークを第2把持部が把持することができる。その状態で第2把持部が第2ワークを軸方向へ移動させることによって、第1ワークと第2ワークとの相対位置を変更することができる。このような複雑な動作も1つのハンドで実現することができる。
【発明の効果】
【0018】
前記ハンドによれば、1つのハンドにおける複数の把持部の協働によって様々な動作を実現できるようにすることができる。
【0019】
前記ハンドの制御方法によれば、1つのハンドにおける複数の把持部の協働によって様々な動作を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、ロボットシステムの構成を示す模式図である。
【
図3】
図3は、
図2のIII-III線におけるハンドの断面図である。
【
図4】
図4は、第1指の第1部分を中心とする拡大断面図である。
【
図5】
図5は、
図3のV-V線における第1ハンドの断面図である。
【
図6】
図6は、第1指の第2部分を中心とする拡大断面図である。
【
図7】
図7は、ベースの内部が見える状態で第2ハンドを第1ハンドと反対側から見た概略図であって、第2指が全開状態となっている図である。
【
図8】
図8は、第2指を軸方向へ進出側から見た概略図である。
【
図9】
図9は、第2把持部を中心とする概略的な断面図である。
【
図10】
図10は、ベースの内部が見える状態で第2ハンドを第1ハンドと反対側から見た概略図であって、第2指が全閉状態となっている図である。
【
図11】
図11は、第2指が全閉状態となった第2把持部を中心とする概略的な断面図である。
【
図12】
図12は、ベースの内部が見える状態で第2ハンドを第1ハンドと反対側から見た概略図であって、第2指が全開状態となって軸方向へ進出した図である。
【
図14】
図14は、ベアリングユニットの概略構成を示す斜視図である。
【
図15】
図15は、ベースプレートの概略構成を示す斜視図である。
【
図17】
図17は、ベアリングホルダの概略構成を示す斜視図である。
【
図18】
図18は、第1把持部によってアングルを把持する状態を示す概略図である。
【
図19】
図19は、第1把持部によってアングルをベースプレートに載置する状態を示す概略図である。
【
図20】
図20は、第1把持部によってボルトを把持する状態を示す概略図である。
【
図21】
図21は、第2把持部が第1把持部からボルトを受け取る状態を示す概略図である。
【
図22】
図22は、第2把持部がボルトをネジ孔にねじ込む状態を示す概略図である。
【
図23】
図23は、第2把持部によってベアリングホルダを把持する状態を示す概略図である。
【
図24】
図24は、第2把持部によってベアリングホルダをアングルに挿入する状態を示す概略図である。
【
図25】
図25は、アングルに挿入されたベアリングホルダの一状態を端面側から視て示す概略図であり、第1指がザグリ穴に係止した状態を示す図である。
【
図26】
図26は、第2把持部によってボルトをアングルのネジ孔へねじ込む状態を示す概略図である。
【
図27】
図27は、第1把持部によってシャフトを把持する状態を示す概略図である。
【
図28】
図28は、第2把持部が第1把持部からシャフトを受け取る状態を示す概略図である。
【
図29】
図29は、第2把持部によってシャフトをベアリングホルダのベアリングに挿入する状態を示す概略図である。
【
図30】
図30は、ボルトの受け渡し動作において、第1把持部が屈曲動作を行った状態を示す概略図である。
【
図31】
図31は、第1部分の仮想領域を模式的に示す斜視図である。
【
図32】
図32は、ボルトの受け渡し動作において、ガイド動作を行った第1指を先端側から見た概略図である。
【
図33】
図33は、ボルトの受け渡し動作において、第1把持部がガイド動作を行った状態を示す概略図である。
【
図34】
図34は、シャフトの受け渡し動作において、第1把持部が屈曲動作を行った状態を示す概略図である。
【
図35】
図35は、シャフトの受け渡し動作において、第1把持部がガイド動作前にシャフトをトレー上に載置した状態を示す概略図である。
【
図36】
図36は、シャフトの受け渡し動作において、ガイド動作を行った第1指を先端側から見た概略図である。
【
図37】
図37は、シャフトの受け渡し動作後に、第1把持部及び第2把持部が協働把持動作を行った状態を示す概略図である。
【
図38】
図38は、持ち直し動作において、第2把持部がリングの1回目の把持を行う状態を示す概略図である。
【
図39】
図39は、持ち直し動作において、第1把持部が屈曲動作を行った状態を示す概略図である。
【
図40】
図40は、持ち直し動作において、第2把持部がリングを第1部分上に一旦載置した状態を示す概略図である。
【
図41】
図41は、持ち直し動作において、第2把持部がリングの2回目の把持を行った状態を示す概略図である。
【
図42】
図42は、第1把持部及び第2把持部によって協働把持されたプーリ及びシャフトをアングルへの組み込み位置まで搬送する状態を示す概略図である。
【
図43】
図43は、相対移動動作において、第1把持部及び第2把持部によってプーリ及びシャフトを把持した状態を示す概略図である。
【
図44】
図44は、相対移動動作において、第2把持部を移動させてシャフトをプーリに対して相対移動させた状態を示す概略図である。
【
図45】
図45は、第2把持部が相対移動動作後のプーリ及びシャフトを移動させた状態を示す概略図である。
【
図46】
図46は、その他の実施形態に係るハンドにおいて、第2把持部が第1把持部からボルトを受け取る状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0022】
図1は、ロボットシステム1000の構成を示す模式図である。
【0023】
ロボットシステム1000は、ロボット1100と、ロボット1100を制御する制御部1200とを備える。
【0024】
ロボット1100は、例えば、産業用ロボットである。ロボット1100は、ロボットアーム1110と、ロボットアーム1110の先端に連結されたハンド100とを有している。ロボット1100は、ロボットアーム1110によってハンド100を動作、即ち、移動させる。ハンド100は、いわゆるエンドエフェクタの1つである。ハンド100は、ワークWを把持する。さらに、ハンド100は、ワークWを持ち直したり、ワークWを他のワーク等へ組み込んだりする。
【0025】
図2は、ハンド100の正面図である。ハンド100は、第1ハンドH1と第2ハンドH2とを有している。第1ハンドH1と第2ハンドH2とは、共通のベース1に設けられている。第1ハンドH1及び第2ハンドH2は、それぞれ単独で処理を実行することも、協働して処理を実行することもできる。単独の処理は、例えば、第1ハンドH1又は第2ハンドH2がワークを把持する処理である。協働での処理は、例えば、第1ハンドH1から第2ハンドH2へワークを受け渡す処理や、第1ハンドH1と第2ハンドH2とでワークを把持する処理である。
【0026】
=第1ハンド=
第1ハンドH1は、ベース1と、ベース1に設けられた第1把持部2とを備えている。第1ハンドH1は、第1把持部2によってワークに対する様々な処理を実行する。
【0027】
図3は、
図2のIII-III線におけるハンド100の断面図である。つまり、
図3は、ベース1の内部が見える状態で、第1ハンドH1を第2ハンドH2側から見た図である。尚、
図3においては、ベース1の内部構成が概略的に図示されている。
【0028】
第1把持部2は、開閉する2つの第1指21を有している。詳しくは、第1把持部2は、ベース1から延びる2つの第1指21と、2つの第1指21を所定の開閉方向Aへ開閉させる開閉機構3と、2つの第1指21を屈曲させる屈曲機構4とを有している。さらに、各第1指21は、各第1指21に作用する衝撃を吸収する緩衝機構25を有している。
【0029】
2つの第1指21は、開閉機構3によって開閉方向Aへ互いに離間及び接近する。これにより、2つの第1指21は、ワークを把持したり、ワークの把持を解放したりする。この例では、開閉機構3は、2つの第1指21を独立に動作させる。つまり、第1ハンドH1は、2つの第1指21にそれぞれ対応する2つの開閉機構3を有している。2つの第1指21は、屈曲するように構成されており、屈曲機構4によって屈曲する。屈曲機構4は、2つの第1指21を一緒に動作させる。第1ハンドH1は、2つの第1指21で共通の1つの屈曲機構4を有している。開閉機構3及び屈曲機構4は、ベース1に設けられている。
【0030】
-第1指-
各第1指21は、
図2,3に示すように、先端部を含む第1部分22と基端部(ベース1側の端部)を含む第2部分23とを有している。第1部分22と第2部分23とは、関節24で連結されている。第1部分22は、開閉方向Aと平行な回転軸B回りに関節24を介して回転する。これにより、第1指21は、第1部分22が第2部分23に対して屈曲した屈曲状態及び第1部分22と第2部分23とが一直線状に延びた延伸状態に変化することができる。
【0031】
第2部分23は、ベース1に連結されている。第2部分23は、開閉方向Aと直交する延伸方向C1へベース1から延びている。第2部分23の先端に関節24が設けられている。
【0032】
第1部分22は、固定部分26と可動部分27とを有している。固定部分26及び可動部分27は、一直線状に並んで、延伸方向C2へ延びている。固定部分26は、関節24に連結されている。可動部分27は、緩衝機構25を介して、延伸方向C2へ移動可能に固定部分26に連結されている。可動部分27のうち、第1指21の延伸状態において第2ハンドH2の方を向く面は、第1ハンドH1から第2ハンドH2へワークを受け渡す際等にワークを支持する支持面21aとなっている。
【0033】
図4は、第1指21の第1部分22を中心とする拡大断面図である。緩衝機構25は、
図4に示すように、ボールスプライン28とバネ29とを有している。ボールスプライン28は、固定部分26と可動部分27とを連結している。ボールスプライン28は、可動部分27を固定部分26に対して延伸方向C2へ移動可能とし、可動部分27をボールスプライン28の軸回りに回転不能としている。バネ29は、固定部分26と可動部分27との間に圧縮状態で設けられている。バネ29は、延伸方向C2へ伸縮する。バネ29は、可動部分27を延伸方向C2へ押圧して、可動部分27を固定部分26から最も伸長した状態にしている。通常時は、第1部分22は、このように可動部分27が固定部分26から最も伸長した状態(以下、「通常状態」という)となっている。ボールスプライン28は、転動することによって可動部分27を延伸方向C2へ案内する転動体を有するものであり、バネ29は、可動部分27を弾性的に押圧するものである。
【0034】
一方、可動部分27の先端22a(以下、第1指21の先端22aまたは第1部分22の先端22aともいう)から延伸方向C2へ可動部分27に衝撃が作用すると、可動部分27が延伸方向C2において固定部分26の側へ移動し、バネ29が圧縮変形する。これにより、衝撃がバネ29によって吸収される。衝撃が無くなると、バネ29が伸長し、可動部分27は通常状態へ戻る。
【0035】
このように、第1指21は、第1部分22が回転軸B回りに回転することによって屈曲すると共に、第1指21へ作用する衝撃を第1部分22が伸縮することによって吸収する。
【0036】
-開閉機構-
図5は、
図3のV-V線における第1ハンドH1の断面図である。
図6は、第1指21の第2部分23を中心とする拡大断面図である。尚、
図5では、開閉機構3のギヤ列32及び屈曲機構4のギヤ列42の図示を一部省略している。
【0037】
各開閉機構3は、
図3,5に示すように、第1モータ31と、第1モータ31の駆動力を伝達するギヤ列32と、第1指21を開閉方向Aへ案内するガイド33とを有している。2つの開閉機構3は、ベース1内において互いに干渉しないように配置されている。
【0038】
第1モータ31は、例えば、サーボモータであり、エンコーダが設けられている。また、第1モータ31のドライバには、電流センサが設けられている。
【0039】
第1指21は、ガイド33に摺動可能に連結されている。具体的には、ガイド33は、開閉方向Aに延びる状態でベース1に設けられている。ガイド33には、ブロック33aが摺動可能に設けられている。第1指21の第2部分23は、ブロック33aに取り付けられている。
【0040】
ギヤ列32は、第1モータ31の駆動力を第1指21へ伝達する。例えば、ギヤ列32は、ラックアンドピニオンを形成するラック32a及びピニオン32bを含んでいる。ラック32aは、ブロック33aに取り付けられている。このとき、ラック32aは、開閉方向Aに延びている。すなわち、ラック32aの複数の歯は、開閉方向Aに並んでいる。ピニオン32bは、ラック32aに噛合している。これにより、ピニオン32bまで伝達された第1モータ31の回転力は、開閉方向Aへのラック32aの直進移動力に変換される。ラック32aが開閉方向Aへ移動すると、ラック32aと共にブロック33a及び第1指21も開閉方向Aへ移動する。
【0041】
このように構成された開閉機構3では、第1モータ31が駆動されると、第1モータ31の回転駆動力がギヤ列32によって伝達される。最終的に、回転駆動力は、ギヤ列32に含まれるラック32a及びピニオン32bによってブロック33aへ直進移動力として伝わる。ブロック33aは、ガイド33に沿って開閉方向Aへ移動する。ブロック33aと共に、第1指21も開閉方向Aへ移動する。開閉方向Aにおける第1指21の移動の向きは、第1モータ31の回転方向によって切り替えられる。また、第1指21の開閉方向Aにおける位置は、第1モータ31のエンコーダ出力に基づいて検出される。さらに、第1指21の移動時の第1モータ31の回転トルクは、電流センサの検出結果に基づいて検出される。
【0042】
開閉機構3は、各第1指21に設けられているので、2つの第1指21は、それぞれの開閉機構3によって互いに独立して開閉方向Aへ移動させられる。
【0043】
-屈曲機構-
屈曲機構4は、
図3,5,6に示すように、第2モータ41と、第2モータ41の駆動力を伝達するギヤ列42と、ギヤ列42を介して第2モータ41の駆動力が伝達される第1タイミングプーリ43と、関節24に設けられた第2タイミングプーリ44と、第1タイミングプーリ43の回転を第2タイミングプーリ44に伝達するタイミングベルト45とを有している。第1タイミングプーリ43、第2タイミングプーリ44及びタイミングベルト45は、1つの第1指21につき1セット設けられている。
【0044】
第2モータ41は、例えば、サーボモータであり、エンコーダが設けられている。また、第2モータ41のドライバには、電流センサが設けられている。
【0045】
ギヤ列42は、ウォームギヤ、ウォームホイール及び平歯車42a等を含んでいる。平歯車42aは、ボールスプライン46を介して回転可能に支持されている。詳しくは、ボールスプライン46は、開閉方向Aに延びる状態でベース1に設けられている。ボールスプライン46は、その軸Dを中心に回転可能にベース1に支持されている。平歯車42aは、ボールスプライン46に回転不能に設けられている。つまり、平歯車42aは、軸Dを中心として、ボールスプライン46と一体的に回転する。
【0046】
第1タイミングプーリ43は、ボールスプライン46に回転不能に設けられている。ボールスプライン46には、2つの第1タイミングプーリ43が設けられている。第1タイミングプーリ43は、軸Dを中心として、ボールスプライン46と一体的に回転する。つまり、平歯車42aの回転は、ボールスプライン46を介して、第1タイミングプーリ43に伝達される。それに加えて、第1タイミングプーリ43は、ボールスプライン46に対して軸Dの方向へ摺動可能となっている。
【0047】
さらに、各第1タイミングプーリ43は、対応する1つの第1指21に連結されている。詳しくは、第1タイミングプーリ43は、第2部分23のうちベース1側の端部に、軸Dを中心に回転可能に連結されている。つまり、第1指21がガイド33に沿って開閉方向Aへ移動すると、第1タイミングプーリ43は、第1指21と共にボールスプライン46の軸Dの方向へ移動する。そして、ボールスプライン46が回転する場合には、第1指21が回転することなく、第1タイミングプーリ43は、ボールスプライン46と共に回転する。
【0048】
第2タイミングプーリ44は、各第1指21の関節24において、第1部分22の固定部分26に回転不能に設けられている。つまり、第2タイミングプーリ44が回転すると、第1部分22が回転軸Bを中心に回転する。
【0049】
タイミングベルト45は、第1タイミングプーリ43及び第2タイミングプーリ44に巻回されている。タイミングベルト45は、第1タイミングプーリ43の回転を第2タイミングプーリ44に伝達する。
【0050】
このように構成された屈曲機構4では、第2モータ41が駆動されると、第2モータ41の回転駆動力は、ギヤ列42を介してボールスプライン46に伝達される。ボールスプライン46が軸D回りに回転すると、ボールスプライン46に設けられた第1タイミングプーリ43が軸D回りに回転する。第1指21は、ガイド33に連結されているので、回転しない。第1タイミングプーリ43の回転は、タイミングベルト45によって第2タイミングプーリ44に伝達される。第2タイミングプーリ44が回転すると、第1指21の第1部分22が回転軸Bを中心に回転する。これにより、第1指21が屈曲する。尚、第1部分22の回転角度によっては、第1部分22及び第2部分23が一直線状に並ぶ状態となる。
【0051】
回転軸B回りの第1部分22の回転の向き、即ち、第1指21の屈曲の向きは、第2モータ41の回転方向によって切り替えられる。また、第1部分22の回転軸B回りの回転位置、即ち、第1指21の屈曲の程度又は屈曲の角度は、第2モータ41のエンコーダ出力に基づいて検出される。さらに、第1指21の屈曲時の第2モータ41の回転トルクは、電流センサの検出結果に基づいて検出される。
【0052】
各第1指21に、一組の第1タイミングプーリ43、第2タイミングプーリ44及びタイミングベルト45が設けられている。各第1指21の第1タイミングプーリ43は、共通のボールスプライン46に設けられている。つまり、共通の第2モータ41の駆動によって、2つの第1指21が同時に且つ同様に屈曲する。屈曲の向き及び角度は、2つの第1指21で同じである。
【0053】
尚、第1指21は、ガイド33に沿って開閉方向Aへ移動し得る。このとき、第1タイミングプーリ43も、第1指21と共にボールスプライン46に沿って開閉方向Aへ移動する。つまり、開閉方向Aの任意の位置において、屈曲機構4は、第1指21を屈曲させることができる。
【0054】
-第1ハンドH1の動作の概略説明-
このように構成された第1ハンドH1は、開閉機構3によって2つの第1指21を開閉方向Aへ移動させることにより、2つの第1指21にワークを把持させることができる。例えば、第1ハンドH1は、開閉方向Aにおいて2つの第1指21を接近させる(閉じ動作させる)ことによりワークを把持することができる一方、開閉方向Aにおいて2つの第1指21を離隔させる(開き動作させる)ことによってもワークを把持することができる。
【0055】
また、第1ハンドH1は、開閉機構3によって2つの第1指21を独立して動作させることができるため、開閉方向Aにおいて第1ハンドH1の中心から偏心した位置でワークを把持することができる(以下、このような把持を偏心把持という)。ここでいう第1ハンドH1の中心は、例えば、第1指21の可動範囲の中心Q(以下、単に「可動範囲の中心Q」ともいう)である。より詳しくは、第1ハンドH1は、ワークの位置に応じて、2つの第1指21のそれぞれの移動量を調整して第1ハンドH1の中心から偏心した位置でワークを把持する。このように、第1ハンドH1は、ワークが第1ハンドH1の中心からずれている場合でも、2つの第1指21でワークを適切に把持することができる。
【0056】
また、第1ハンドH1は、
図2に示すように、2つの第1指21を屈曲させることができる。第1指21は、第1部分22を開閉方向Aへ投影させて形成される仮想領域(
図2において、第1部分22を紙面に直交する方向へ投影させて形成される領域)Xが後述する第2把持部5の軸Eに干渉する位置と仮想領域Xが軸Eに干渉しない位置との間で第1部分22が移動するように屈曲する。例えば、第1ハンドH1は、ワークを把持した状態の2つの第1指21を屈曲機構4によって屈曲させることができる。そのため、2つの第1指21を屈曲させることによっても、ワークを移動させたり、ワークの姿勢を変更したりすることが可能である。したがって、ロボットアーム1110の動作量を低減することができる。
【0057】
また、第1ハンドH1は、第1指21の第1部分22に作用する衝撃を緩衝機構25によって吸収することができる。そのため、例えば、第1ハンドH1をワークの位置に移動させる際、第1部分22の先端22aとワークの載置台とが接触することによって生ずる第1部分22への衝撃を吸収することができる。
【0058】
=第2ハンド=
第2ハンドH2は、第1ハンドH1と共通のベース1に設けられている。第2ハンドH2は、ワークを把持して、様々な処理を実行する。
【0059】
以下、第2ハンドH2についてさらに詳細に説明する。
図7は、ベース1の内部が見える状態で第2ハンドH2を第1ハンドH1とは反対側から見た概略図であって、第2指51が全開状態となっている図である。
【0060】
第2ハンドH2は、軸E上のワークを把持するように構成された第2把持部5を備えている。詳しくは、第2ハンドH2は、ワークを把持する第2把持部5と、第2把持部5を所定の軸E方向へ直進させる直進機構6と、第2把持部5を軸Eの回りの回転させる回転機構7とを備えている。第2把持部5は、ワークを把持する3本の第2指51と、3本の第2指51を開閉させるリンク機構52とを有する。第2ハンドH2は、第2把持部5によって把持されたワークを軸Eの回りに回転させながら軸E方向へ直進させることができる。これにより、第2ハンドH2は、例えば、ワークを孔に挿入したり、ネジ孔に螺合させたりする。以下、軸E方向において第2指51がベース1から進出する側を単に「進出側」と称し、軸E方向において第2指51がベース1へ後退する側を単に「後退側」と称する。
【0061】
第2ハンドH2は、第2指51を開閉させる開閉機構8をさらに備えていてもよい。第2ハンドH2は、第2把持部5による把持が解放された状態のワークを軸E方向へ押圧する押圧機構9をさらに備えていてもよい。第2ハンドH2は、第2指51を軸E方向へ弾性的に支持する緩衝機構10を備えていてもよい。
【0062】
-把持部-
図8は、第2指51を軸E方向へ進出側から見た概略図である。
図9は、第2把持部5を中心とする概略的な断面図である。
【0063】
第2把持部5は、3本の第2指51と、3本の第2指51を開閉させるリンク機構52とを有している。
【0064】
3本の第2指51は、
図8に示すように、軸Eを中心とする周方向において等間隔(即ち、120度間隔)に配置されている。3つの第2指51は、リンク機構52によって軸Eを中心に開閉するように構成されている。つまり、3つの第2指51は、軸Eを中心とする半径方向へ離間及び接近する。これにより、3つの第2指51は、ワークを把持したり、ワークの把持を解放したりする。さらに、3つの第2指51は、軸Eからの距離が互いに同じになるように開閉する。尚、3本の第2指51は、軸E回りに120度間隔で配置されているが、
図7では、構成をわかりやすく図示するために、2本の第2指51が軸E回りに180度間隔で配置された状態で図示している。
【0065】
各第2指51は、
図9に示すように、概ね軸E方向へ延びている。第2指51は、ベース51aと爪51bとを有している。爪51bは、ベース51aの先端に設けられている。爪51bは、第2指51の先端部を形成している。第2指51は、爪51bにおいてワークを把持する。
【0066】
リンク機構52は、複数のリンク53を有している。複数のリンク53は、3組の第1リンク53a及び第2リンク53bを含んでいる。図面においては、各リンクを区別して「53a」、「53b」と表記する場合と、各リンクを区別せずに「53」と表記する場合とがある。各第2指51に、1組の第1リンク53a及び第2リンク53bが連結されている。第1リンク53a及び第2リンク53bは、互いに交差するように配置され、それぞれの長手方向中央において互いに回転可能に連結されている。複数のリンク53は、軸Eを中心とする半径方向において3本の第2指51の内側に配置されている。
【0067】
第1リンク53aの一端部は、第2指51に回転可能に連結されている。詳しくは、第2指51のベース51aには、第2指51の延伸方向に延びる長孔51cが形成されている。第1リンク53aの一端部は、長孔51cに回転可能且つ摺動可能に連結されている。
【0068】
第2リンク53bの一端部は、第2指51に回転可能に連結されている。詳しくは、第2リンク53bの一端部は、第2指51のベース51aのうち長孔51cよりも第2指51の先端側の部分に回転可能に連結されている。
【0069】
-開閉機構-
開閉機構8は、
図7に示すように、リンク機構52を動作させることによって3本の第2指51を開閉させる。開閉機構8は、外筒81と、シャフト82と、リンク機構52を駆動する第3モータ83と、第3モータ83の駆動力をシャフト82に伝達するギヤ列84とを有している。
【0070】
外筒81及びシャフト82は、軸Eを軸心とするように、同軸状に軸E方向へ延びている。具体的には、外筒81は、軸Eを軸心とする略円筒状に形成されている。シャフト82は、軸Eを軸心とする略円柱状に形成されている。
【0071】
外筒81及びシャフト82において、軸E方向における一端部をそれぞれ第1端部81a及び第1端部82aと称し、軸E方向における他端部をそれぞれ第2端部81b及び第2端部82bと称する。第1端部81a及び第1端部82aは、軸E方向における進出側の端部である。第2端部81b及び第2端部82bは、軸E方向における後退側の端部である。第1端部81a及び第1端部82aには、第2把持部5が連結されている。
【0072】
外筒81は、ベース1に取り付けられた軸受12に軸E方向へ移動可能且つ軸E回りに回転可能に支持されている。
【0073】
シャフト82は、外筒81内に挿入される。外筒81とシャフト82とは、軸E回りに相対的に回転可能であり且つ軸E方向へ相対的に移動可能となっている。シャフト82の第1端部82aは、外筒81の第1端部81aから外側へ突出している。シャフト82の第2端部82bは、外筒81の第2端部81bから外側へ突出している。
【0074】
シャフト82は、第1端部82aを含むリンクシャフト82cと、第2端部82bを含むシャフト本体82dとに分割されている。リンクシャフト82cとシャフト本体82dとは、軸Eを中心に回転可能且つ軸E方向に移動不能に連結されている。第2端部82bには、雄ネジ82gが形成されている。
【0075】
リンクシャフト82cの先端、即ち、第1端部82aの先端には、
図9に示すように、押圧ブロック91が設けられている。
【0076】
外筒81の第1端部81aには、リンクシャフト82cを案内する略円筒状のリンクブロック81cが設けられている。リンクシャフト82cは、リンクブロック81cを貫通している。リンクシャフト82cとリンクブロック81cとの間には、僅かなクリアランスが設けられている。
【0077】
外筒81の第1端部81a及びシャフト82の第1端部82aには、リンク機構52が連結されている。具体的には、シャフト82の第1端部82a、具体的には押圧ブロック91に、第1リンク53aの一端部(第2指51に連結されていない端部)が回転可能に連結されている。外筒81の第1端部81a、具体的にはリンクブロック81cには、第2リンク53bの一端部(第2指51に連結されていない端部)が回転可能に連結されている。
【0078】
リンクシャフト82cが軸E方向へ移動すると、軸E方向において、第1リンク53aの一端部と第2リンク53bの一端部との相対位置が変化し、それに応じて、第2指51の軸E方向の位置及び軸Eを中心とする半径方向の位置が変化する。
【0079】
第3モータ83は、例えば、サーボモータであり、エンコーダが設けられている。また、第3モータ83のドライバには、電流センサが設けられている。第3モータ83は、
図7に示すように、ベース1に支持されている。
【0080】
ギヤ列84は、第3モータ83から順に並ぶ第1ギヤ列84a及び第2ギヤ列84cを含んでいる。
【0081】
第1ギヤ列84aは、複数の歯車を含んでいる。第1ギヤ列84aの複数の歯車は、軸Eと平行な軸回りに回転可能にベース1に支持されている。第1ギヤ列84aは、第3モータ83の回転駆動力をボールスプライン84bを介して第2ギヤ列84cに伝達する。ボールスプライン84bは、シャフト82の軸Eと平行に延びる軸Fを有している。ボールスプライン84bは、軸Fを中心に回転自在にベース1に支持されている。第1ギヤ列84aのうちの一の歯車(最終段の歯車)は、ボールスプライン84bに軸F回りに回転不能且つ軸F方向へ移動不能に連結されている。つまり、第1ギヤ列84aの歯車が回転すると、ボールスプライン84bは、軸F回りに回転する。
【0082】
第2ギヤ列84cは、ギヤボックス85に収容されている。第2ギヤ列84cは、第1歯車84d、第2歯車84e及び第3歯車84fを含んでいる。第1歯車84d、第2歯車84e及び第3歯車84fは、軸Eと平行な軸回りに回転可能にギヤボックス85に支持されている。
【0083】
第1歯車84dは、ボールスプライン84bを介して第1ギヤ列84aと連結されている。第1歯車84dは、ボールスプライン84bに軸F回りに回転不能且つ軸F方向へ移動可能に連結されている。つまり、第1歯車84dは、ボールスプライン84bと一体的に回転する。
【0084】
第3歯車84fの内周には、雌ネジが形成されている。第3歯車84fは、シャフト82の雄ネジ82gに螺合している。第2歯車84eは、第1歯車84dと第3歯車84fとの間に位置し、第1歯車84d及び第3歯車84fのそれぞれに噛合している。
【0085】
ギヤボックス85は、外筒81を軸E回りに回転可能に且つ軸E方向へ移動不能に支持している。シャフト82は、第3歯車84fを介してギヤボックス85に支持されている。また、ギヤボックス85は、シャフト82が軸E回りに回転しないように、シャフト82の軸E回りの回転を規制している。
【0086】
このように構成された開閉機構8の動作について説明する。
図10は、ベース1の内部が見える状態で第2ハンドH2を第1ハンドH1と反対側から見た概略図であって、第2指51が全閉状態となっている図である。
図11は、第2指51が全閉状態となった第2把持部5を中心とする概略的な断面図である。
【0087】
第3モータ83が駆動されると、第3モータ83の回転駆動力は、第1ギヤ列84aを介してボールスプライン84bに伝達される。ボールスプライン84bが軸F回りに回転すると、ボールスプライン84bに連結された第1歯車84dが軸F回りに回転する。第1歯車84dの回転は、第2歯車84eを介して第3歯車84fに伝達する。シャフト82は、軸E回りに回転しないので、第3歯車84fが回転すると、
図10に示すように、シャフト82は、第3歯車84fに対して軸E方向へ相対的に移動する。つまり、シャフト82は、外筒81に対して軸E方向へ相対的に移動する。軸E方向へのシャフト82の移動によって、
図11に示すように、第1リンク53aの一端部もシャフト82と共に軸E方向へ移動する。外筒81に連結された第2リンク53bの一端部とシャフト82に連結された第1リンク53aの一端部との軸E方向への相対位置が変化し、第1リンク53aと第2リンク53bとの相対関係が変化する。これにより、3つの第2指51は、軸Eを中心とする半径方向へ移動する。すなわち、3つの第2指51が開閉する。
【0088】
シャフト82の軸E方向への移動の向き、即ち、3つの第2指51の軸Eを中心として離間するか接近するかは、第3モータ83の回転方向によって切り替えられる。また、3つの第2指51の軸Eを中心とする半径方向の位置、即ち、3つの第2指51の開閉の程度は、第3モータ83のエンコーダ出力に基づいて検出される。さらに、3つの第2指51の開閉時の第3モータ83の回転トルクは、電流センサの検出結果に基づいて検出される。
【0089】
-直進機構及び回転機構-
前述の如く、第2把持部5は、外筒81及びシャフト82に連結されている。直進機構6は、外筒81及びシャフト82を軸E方向へ移動させることによって、第2把持部5を軸E方向へ直進させる。回転機構7は、外筒81及びシャフト82のリンクシャフト82cを軸E回りに回転させることによって第2把持部5を軸E回りに回転させる。尚、この例では、直進機構6と回転機構7との間で要素の一部が共通となっている。また、直進機構6は、開閉機構8との間で要素の一部が共通となっている。回転機構7は、開閉機構8との間で要素の一部が共通となっている。
【0090】
詳しくは、直進機構6は、
図7,10に示すように、第4モータ61と、第4モータ61の駆動力を伝達する第1ギヤ列62と、送りネジ機構63と、外筒81と、シャフト82とを有している。
【0091】
第4モータ61は、例えば、サーボモータであり、エンコーダが設けられている。また、第4モータ61のドライバには、電流センサが設けられている。第4モータ61は、ベース1に支持されている。
【0092】
第1ギヤ列62は、回転可能にベース1に支持された複数の歯車を有している。
【0093】
送りネジ機構63は、送りネジ64と、送りネジ64に噛合する直進要素としてのナット65とを有している。
【0094】
送りネジ64の軸Gは、軸Eと平行に延びている。送りネジ64は、第1ギヤ列62に含まれる一の歯車に回転不能に連結されている。すなわち、送りネジ64は、該一の歯車と一体的に軸G回りに回転する。
【0095】
ナット65は、送りネジ64に噛合している。ナット65は、ギヤボックス85に収容されている。ナット65は、軸G回りに回転しないように、ギヤボックス85によって回り止めされている。ナット65は、筒状に形成された本体65aと、本体65aに設けられたフランジ65bとを有している。
【0096】
ナット65は、緩衝機構10によって、ギヤボックス85に軸G方向、即ち、軸E方向へ弾性的に押し付けられている。詳しくは、緩衝機構10は、バネである。具体的には、緩衝機構10は、コイルバネである。緩衝機構10は、フランジ65bに対して軸E方向の進出側に配置されている。緩衝機構10は、フランジ65bとギヤボックス85との間で圧縮した状態となっている。緩衝機構10は、弾性力によって軸E方向の進出側へギヤボックス85をナット65へ押圧する。これにより、ナット65が軸G方向へ移動すると、ギヤボックス85もナット65と一体的に軸G方向、即ち、軸E方向へ移動する。
【0097】
外筒81及びシャフト82の構成は、前述の通りである。外筒81は、ギヤボックス85に軸E回りに回転可能に且つ軸E方向へ移動不能に支持されている。シャフト82は、第3歯車84fを介してギヤボックス85に支持されている。そのため、ギヤボックス85が軸E方向へ移動すると、外筒81及びシャフト82もギヤボックス85と共に軸E方向へ移動する。
【0098】
回転機構7は、
図7,10に示すように、第4モータ61と、第4モータ61の駆動力を伝達する第1ギヤ列62と、第4モータ61の駆動力を第1ギヤ列62から外筒81へさらに伝達する第2ギヤ列73と、外筒81と、シャフト82とを有している。つまり、回転機構7の第4モータ61、第1ギヤ列62、外筒81及びシャフト82は、直進機構6と共通である。
【0099】
第2ギヤ列73は、第5歯車73a及び第6歯車73bを含んでいる。第5歯車73a及び第6歯車73bは、軸E方向へ移動不能に且つ、軸Eと平行な軸回りに回転可能にギヤボックス85に支持されている。
【0100】
第5歯車73aは、ボールスプライン73cを介して第1ギヤ列62に含まれる一の歯車と連結されている。ボールスプライン73cの軸Hは、軸Eと平行に延びている。ボールスプライン73cは、軸H回りに回転不能に該一の歯車に連結されている。つまり、ボールスプライン73cは、該一の歯車と一体的に軸H回りに回転する。
【0101】
ボールスプライン73cには、第5歯車73aが軸H回りに回転不能且つ軸H方向へ移動可能に連結されている。つまり、第5歯車73aは、ボールスプライン73cと一体的に回転する。このとき、第5歯車73aは、ギヤボックス85に対して相対的に回転する。
【0102】
第6歯車73bは、外筒81に軸Eを中心に回転不能且つ軸E方向へ移動不能に連結されている。つまり、第6歯車73bは、外筒81と一体的に回転する。
【0103】
このように構成された直進機構6及び回転機構7の動作について説明する。
図12は、ベース1の内部が見える状態で第2ハンドH2を第1ハンドH1と反対側から見た概略図であって、第2指51が全開状態となって軸E方向へ進出した図である。
【0104】
第4モータ61が駆動されると、第4モータ61の回転駆動力は、第1ギヤ列62を介してボールスプライン73cに伝達される。ボールスプライン73cが軸H回りに回転すると、ボールスプライン73cの回転が第2ギヤ列73に伝達される。これにより、第6歯車73bが軸E回りに回転し、それと共に外筒81も軸E回りに回転する。外筒81の第1端部81aにはリンク53のうち第2リンク53bが連結されている。ここで、リンク53のうち第1リンク53aが連結されているリンクシャフト82cは、シャフト本体82dに対して軸E回りに自在に回転する。そのため、第2リンク53bが軸E回りに回転すると、第1リンク53aも第2リンク53bと共に軸E回りに回転する。その結果、3つの第2指51が軸E回りに回転する。
【0105】
尚、3つの第2指51が軸E回りに回転しても、第3モータ83が動作していない限り、シャフト本体82dは、回転しない。そのため、外筒81とシャフト82との軸E方向の相対位置は変化しない。その結果、3つの第2指51の開閉状態が変化することなく、3つの第2指51は、軸E回りに回転する。
【0106】
それと同時に、第4モータ61の回転駆動力は、第1ギヤ列62を介して送りネジ64に伝達される。送りネジ64が軸G回りに回転すると、送りネジ64に螺合するナット65が軸G方向へ移動する。ナット65が軸G方向へ移動すると、ギヤボックス85も軸G方向、即ち、軸E方向へ移動する。ギヤボックス85は、外筒81及びシャフト82を支持している。そのため、ギヤボックス85が軸E方向へ移動すると、外筒81及びシャフト82もギヤボックス85と一体的に軸E方向へ移動する。このとき、外筒81は、回転機構7によって軸E回りに回転されられている。つまり、外筒81は、軸E回りに回転しながら軸E方向へ直進する。
【0107】
また、ギヤボックス85は、開閉機構8の第2ギヤ列84cも支持している。そのため、ギヤボックス85が軸E方向へ移動する際には、第2ギヤ列84cもギヤボックス85と一体的に軸E方向へ移動する。第2ギヤ列84cに含まれる第1歯車84dは、ギヤボックス85に支持されている以外にボールスプライン84bにも連結されている。そのため、ギヤボックス85が軸E方向へ移動する際には、第1歯車84dは、ボールスプライン84bに沿って摺動して、ギヤボックス85と共に軸E方向へ移動する。このとき、第3モータ83が動作していない限りは、第1歯車84dは、ボールスプライン84bの軸F回りに回転することなく、軸E方向へ移動する。そのため、第2ギヤ列84cに含まれる歯車は、回転しない。これにより、ギヤボックス85が軸E方向へ移動する際に、外筒81とシャフト82との軸E方向の相対位置は変化しない。その結果、3つの第2指51の開閉状態が変化することなく、3つの第2指51は、軸E方向へ移動する。
【0108】
尚、第5歯車73aは、ギヤボックス85に支持されている以外にボールスプライン73cにも連結されている。ただし、第5歯車73aは、ボールスプライン73cに沿って軸H方向へ移動することができる。そのため、ギヤボックス85が軸E方向へ移動する際には、第5歯車73aは、ボールスプライン73cに沿って摺動して、ギヤボックス85と共に軸E方向へ移動する。ギヤボックス85が軸E方向へ移動しても、第5歯車73aは、ボールスプライン73cの回転を第6歯車73bへ適切に伝達する。
【0109】
-押圧機構-
押圧機構9は、第2把持部5による把持が解放された状態のワークを軸Eの方向へ押圧する。この例では、押圧機構9は、直進機構6と一体的に形成されている。すなわち、押圧機構9は、直進機構6との間で要素の一部が共通となっている。具体的には、押圧機構9は、
図7,10,12に示すように、第4モータ61と、第4モータ61の駆動力を伝達する第1ギヤ列62と、送りネジ機構63と、シャフト82と、シャフト82に設けられた押圧ブロック91(
図9,11参照)とを有している。
【0110】
前述の如く、第4モータ61の駆動力は、第1ギヤ列62によって送りネジ機構63に伝達される。送りネジ機構63は、ギヤボックス85等を介してシャフト82を軸E方向に直進させる。シャフト82のうちリンクシャフト82cの先端、即ち、第1端部82aの先端には、
図9に示すように、押圧ブロック91が設けられている。押圧ブロック91は、軸Eに直交する押圧面92を有している。第4モータ61の駆動によってシャフト82が軸E方向へ直進すると、押圧ブロック91が軸E方向へ直進する。
【0111】
押圧ブロック91には、リンク機構52のリンク53が連結されている。第2指51が開いた場合(少なくとも最大限開いた場合)には、押圧ブロック91よりも軸E方向の進出側のスペースから第2指51が軸Eを中心とする半径方向外側へ退避した状態となる。このように第2指51が開いた状態となることによって、押圧ブロック91が軸E方向へ直進する際に、ワークと第2指51が干渉することを回避することができる。つまり、第2指51に邪魔をされることなく、押圧ブロック91によってワークを押圧することができる。
【0112】
-緩衝機構-
図13は、緩衝機構10を中心とする拡大断面図である。尚、
図13においては、緩衝機構10の緩衝作用においてもベース1に対して相対的に移動しない部材、即ち、送りネジ64、ナット65、ボールスプライン73c及びボールスプライン84bは破線で図示されている。緩衝機構10は、送りネジ機構63のナット65とギヤボックス85と弾性的に連結している。具体的には、緩衝機構10は、ギヤボックス85内に収容されている。ギヤボックス85がナット65に対して軸E方向における後退側へ変位可能なようにナット65とギヤボックス85とを弾性的に連結している。ギヤボックス85には、外筒81及びシャフト82が支持されている。外筒81の第1端部81a及びシャフト82の第1端部82aには、リンク53を介して第2指51が連結されている。すなわち、緩衝機構10は、軸E方向における後退側へ第2指51が変位可能に、第2指51を弾性的に支持する。
【0113】
このような緩衝機構10は、軸E方向における後退側へ第2指51に力が作用すると、緩衝機構10が弾性変形、即ち、圧縮変形して、第2指51、リンク機構52、外筒81、シャフト82及びギヤボックス85が軸E方向における後退側へ一体的に移動する。こうして、第2指51へ作用する力が吸収される。
【0114】
-第2ハンドH2の動作の概略説明-
このように構成された第2ハンドH2は、第2指51によってワークを把持する際に、ワークを把持するのに適切な位置まで第2指51を直進機構6によって軸E方向へ移動させることができる。例えば、第2ハンドH2は、開いた状態の3つの第2指51をワークの近くまで直進機構6によって軸E方向へ移動させ、その後、3つの第2指51を閉じさせることによって第2指51でワークを把持する。尚、第2ハンドH2は、第2指51を開かせることによってワークを把持することもできる。
【0115】
また、第2ハンドH2は、第2指51でワークを把持した状態で、第2指51を軸E回りに回転させながら軸E方向へ直進させることができる。これにより、第2ハンドH2は、挿入結合される2つのワークの一方のワークを他方のワークに結合させる作業(以下、「結合作業」という)を行うことができる。結合作業には、2つのワークを嵌め合いによって結合させる嵌め合い作業と2つのワークをネジ結合させる螺合作業とを含む。嵌め合い作業には、一方のワークを他方のワークの内側に嵌め合わせる作業と、一方のワークを他方のワークの外側に嵌め合わせる作業とを含む。螺合作業には、雄ネジが形成された一方のワークを雌ネジが形成された他方のワークに螺合させる作業と、雌ネジが形成された一方のワークを雄ネジが形成された他方のワークに螺合させる作業とが含まれる。嵌め合い作業においては、第2ハンドH2は、一方のワークを第2指51で把持して軸E回りに回転させながら他方のワークに嵌め合わせるだけでなく、一方のワークを押圧ブロック91で軸E方向へ押圧することによって他方のワークへ嵌め合わせることもできる。
【0116】
さらに、第2ハンドH2では、第2指51でワークを把持する際又はワークの結合作業を行う際に第2指51へ軸E方向における後退側へ力が作用すると、第2指51が軸E方向において後退して、緩衝機構10がその力を吸収する。
【0117】
制御部1200は、例えばマイクロコントローラ等のコンピュータを備えたロボットコントローラである。制御部1200は、記憶されているロボットコントローラとしての基本プログラム等のソフトウェアを実行することにより、ロボットアーム1110およびハンド100の各種動作を制御する。具体的には、制御部1200は、ロボットアーム1110に内蔵されているアクチュエータ(図示省略)を制御することによりロボットアーム1110を動作させる。また、制御部1200は、第1モータ31及び第2モータ41を制御することにより、第1ハンドH1を動作させる。また、制御部1200は、第3モータ83及び第4モータ61を制御することにより、第2ハンドH2を動作させる。尚、制御部1200は、ハンド100とロボットアーム1110とで個別に設けられていてもよい。
【0118】
-組立作業-
前記のように構成されたハンド100によるベアリングユニット200の組立作業を一例として説明する。
図14は、ベアリングユニット200の概略構成を示す斜視図である。ベアリングユニット200では、ベースプレート210に固定されたアングル220にベアリング235及びベアリングホルダ230が取り付けられ、ベアリング235にシャフト250が挿入されている。このベアリングユニット200の組立作業は、ベースプレート210にアングル220を載置する作業(載置作業)と、アングル220をベースプレート210にボルト240によって締結する作業(第1締結作業)と、ベアリングホルダ230をアングル220の取付孔224に挿入する作業(ホルダ挿入作業)と、ベアリングホルダ230を位置決めする作業(位置決め作業)と、ベアリングホルダ230をアングル220にボルト240によって締結する作業(第2締結作業)と、ベアリングホルダ230に装着されているベアリング235にシャフト250を挿入する作業(シャフト挿入作業)とが含まれる。
【0119】
-各部品の説明-
このベアリングユニット200の組立作業では、部品として、ベースプレート210、アングル220、ベアリングホルダ230、ボルト240およびシャフト250が含まれる。
図15は、ベースプレート210の概略構成を示す斜視図である。
図16は、アングル220の概略構成を示す斜視図である。
図17は、ベアリングホルダ230の概略構成を示す斜視図である。
【0120】
ベースプレート210は、板状部材であり、平面視で矩形状に形成されている。ベースプレート210には、アングル220をボルト240によって締結するための2つのネジ孔211が設けられている。ネジ孔211は、ベースプレート210の厚み方向に貫通している。
【0121】
アングル220は、ベアリングホルダ230が取り付けられる部材である。アングル220は、第1プレート221と、第2プレート222とを有している。第1プレート221と第2プレート222とは、直角を成すように繋がっている。第2プレート222には、ベースプレート210のネジ孔211に対応する2つの貫通孔223が設けられている。つまり、貫通孔223は、アングル220をベースプレート210に取り付けるためのボルト240が挿入される孔である。第1プレート221には、第1プレート221の厚み方向に貫通し、ベアリングホルダ230が挿入される取付孔224が設けられている。
【0122】
また、第1プレート221には、取付孔224の周囲に複数(この例では、4つ)のネジ孔225が設けられている。ネジ孔225は、取付孔224に挿入されたベアリングホルダ230をアングル220にボルト240によって締結するための孔である。4つのうち2つのネジ孔225は、鉛直方向に並んでおり、残りの2つのネジ孔225は、水平方向に並んでいる。つまり、4つのネジ孔225は、取付孔224の周方向において互いに90度間隔で設けられている。なお、ネジ孔225は第1プレート221の厚み方向に貫通している。
【0123】
ベアリングホルダ230は、ベアリング235を保持するための部品である。この例では、既にベアリングホルダ230の内側にベアリング235が装着されている。ベアリング235には、シャフト250が挿入される貫通孔236が形成されている。ベアリングホルダ230は、ホルダ本体231と、フランジ232とを有している。ホルダ本体231は、円筒状に形成されている。フランジ232は、円環状に形成されており、ホルダ本体231の軸方向における端部の外周に一体形成されている。アングル220の取付孔224には、ホルダ本体231が挿入される。ホルダ本体231の外径は、取付孔224の孔径と略同じである。フランジ232には、アングル220のネジ孔225に対応する4つの貫通孔233が設けられている。つまり、貫通孔233は、ベアリングホルダ230をアングル220に取り付けるためのボルト240が挿入される孔である。各貫通孔233には、ボルト240の頭を収容するザグリ穴234が設けられている。
【0124】
ボルト240は、雄ネジが形成されたボルト本体241と、ボルト本体241の端部に設けられた円柱状の頭242とを有している(後述の
図20を参照)。
【0125】
以下に、各作業におけるハンド100の動作を詳細に説明する。尚、以下の作業においては、制御部1200が、ロボットアーム1110及びハンド100を後述のように動作させる。
【0126】
-載置作業-
図18は、第1把持部2によってアングル220を把持する状態を示す概略図である。
図19は、第1把持部2によってアングル220をベースプレート210に載置する状態を示す概略図である。この載置作業では、ベースプレート210は、水平方向に延びる状態で架台等に位置している。
【0127】
まず、第1ハンドH1の第1把持部2によってトレーT上のアングル220を把持する。詳しくは、アングル220は、第1プレート221が水平方向に延びる状態で、第2プレート222が鉛直方向に延びる状態でトレーT上に載置されている。ロボットアーム1110は、ハンド100を移動させて、第1把持部2をトレーTのアングル220の位置に位置させる。このとき、第1把持部2の2つの第1指21は、延伸状態で且つ開いた状態となっている。
図18に示すように、第1把持部2は、2つの第1指21を開閉方向Aにおいて互いに接近する向きへ移動させ、2つの第1指21によってアングル220を把持する。
【0128】
次に、第1把持部2は、把持したアングル220をベースプレート210に載置する。詳しくは、第1把持部2は、アングル220を把持した状態の2つの第1指21を屈曲させる。具体的には、第1プレート221が鉛直方向に延びた状態となるように、且つ、第2プレート222が下側に位置するように、第1指21が屈曲する。そして、
図19に示すように、ロボットアーム1110は、ハンド100を移動させて、第1把持部2に把持されたアングル220をベースプレート210における所定の位置に載置する。具体的には、ロボットアーム1110は、アングル220の貫通孔223の軸心がベースプレート210のネジ孔211の軸心に一致するようにアングル220をベースプレート210に載置する。
【0129】
以上の動作によって載置作業が完了する。
【0130】
-第1締結作業-
図20は、第1把持部2によってボルト240を把持する状態を示す概略図である。
図21は、第2把持部5が第1把持部2からボルト240を受け取る状態を示す概略図である。
図22は、第2把持部5がボルト240をネジ孔211にねじ込む状態を示す概略図である。
【0131】
まず、第1ハンドH1の第1把持部2によってトレーT上のボルト240を把持する。詳しくは、ロボットアーム1110は、ハンド100を移動させて、第1把持部2をトレーTのボルト240の位置に位置させる。このとき、第1把持部2の2つの第1指21は、延伸状態で且つ開いた状態となっている。また、ボルト240は、2つの第1指21の間に位置している。第1把持部2は、2つの第1指21を開閉方向Aにおいて互いに接近する向きへ移動させ、
図20に示すように、2つの第1指21によってボルト240を把持する。
【0132】
次に、第1把持部2は、ボルト240を第2ハンドH2の第2把持部5に受け渡す。詳しくは、第1把持部2は、ボルト240を把持した状態の2つの第1指21を屈曲させる。具体的には、第1把持部2は、第1指21を屈曲させて、第1部分22を開閉方向Aへ投影させて形成される仮想領域Xが軸Eに干渉する位置まで第1部分22を移動させる。仮想領域Xは、
図21において、第1部分22を紙面と直交する方向に投影した領域である。尚、
図21においては、仮想領域Xをわかりやすくするために、仮想領域Xを第1部分22よりも少し大きくして二点鎖線で図示している(
図28においても同様)。第1部分22を仮想領域Xが軸Eに干渉する位置まで移動させた結果、3つの第2指51が進退する軸Eの近傍にボルト240が位置するようになる。その後、第2ハンドH2は、第2指51を軸E方向へ移動させて、第1指21に把持されたボルト240の位置に第2指51を位置させる。このとき、3つの第2指51は開いた状態となっている。第2ハンドH2は、3つの第2指51を互いに接近するように移動させ、
図21に示すように、3つの第2指51によってボルト240を把持する。3つの第2指51は、ボルト240のボルト本体241の軸心が軸Eと一致する状態でボルト240の頭242を把持する。
【0133】
続いて、第2ハンドH2は、ボルト240をネジ孔211に螺合させる。詳しくは、ロボットアーム1110は、ハンド100を移動させて、第2把持部5に把持されたボルト240をベースプレート210のネジ孔211の上方、即ち、アングル220の貫通孔223の上方へ位置させる。このとき、ロボットアーム1110は、ボルト本体241の軸心を貫通孔223の軸心に略一致させる。第2ハンドH2は、回転機構7によって第2指51を回転させつつ直進機構6によって第2指51を下方へ移動させる。これにより、ボルト240は、
図22に示すように、貫通孔223に進入し、さらにネジ孔211にねじ込まれていく。最終的に、第2ハンドH2は、ボルト240が第2プレート222をベースプレート210に固定するまでボルト240をネジ孔211へねじ込む。
【0134】
これらの一連の動作が2か所のネジ孔211に対して行われることによって、最終的に、アングル220がベースプレート210にボルト締結される。
【0135】
以上の動作によって第1締結作業が完了する。
【0136】
-ホルダ挿入作業-
図23は、第2把持部5によってベアリングホルダ230を把持する状態を示す概略図である。
図24は、第2把持部5によってベアリングホルダ230をアングル220に挿入する状態を示す概略図である。
【0137】
まず、第2ハンドH2の第2把持部5によってトレーT上のベアリングホルダ230を把持する。詳しくは、ロボットアーム1110は、ハンド100を移動させて、第2把持部5をトレーTのベアリングホルダ230の位置に位置させる。ベアリングホルダ230は、フランジ232を上に、ホルダ本体231を下にした状態でトレーT上に載置されている。第2把持部5の3つの第2指51は、閉じた状態で、ホルダ本体231内のベアリング235の貫通孔236の内部へ挿入される。第2ハンドH2は、3つの第2指51を開かせて、
図23に示すように、3つの第2指51を貫通孔236の内周面に接触させる。これにより、第2把持部5は、3つの第2指51によってベアリングホルダ230を把持する。
【0138】
次に、第2ハンドH2は、ベアリングホルダ230をアングル220の取付孔224へ嵌め合わせる。詳しくは、ロボットアーム1110は、ハンド100を移動させて、第2把持部5に把持されたベアリングホルダ230をアングル220の取付孔224の側方に位置させる。このとき、ロボットアーム1110は、第2把持部5の軸E、即ち、ベアリングホルダ230の軸心を取付孔224の軸心に略一致させる。そして、ロボットアーム1110は、ハンド100を移動させ、ベアリングホルダ230のホルダ本体231を取付孔224へ接近させる。その後、第2ハンドH2は、回転機構7によって第2指51を回転させつつ直進機構6によって第2指51を軸E方向へ直進させる。これにより、ホルダ本体231が取付孔224内に進入していく。最終的に、第2ハンドH2は、
図24に示すように、ベアリングホルダ230のフランジ232が第1プレート221へ接触するまでベアリングホルダ230を取付孔224へ挿入する。
【0139】
以上の動作によってホルダ挿入作業が完了する。
【0140】
-位置決め作業-
図25は、アングル220に挿入されたベアリングホルダ230の一状態を端面232a側から視て示す図である。
【0141】
まず、ハンド100は、第1把持部2をベアリングホルダ230のフランジ232の端面232aにおける所定位置に押し付ける。ここで、フランジ232の端面232aは、ベアリングホルダ230の軸心K方向におけるフランジ232の端部の面である。詳しくは、ロボットアーム1110は、ハンド100を移動させて、第1把持部2をフランジ232の端面232aの側方に位置させる。このとき、第1把持部2の2つの第1指21は、延伸状態で且つ開いた状態となっている。そして、2つのうち一方の第1指21は、開閉機構3によって開閉方向Aにおける前述の所定位置に対応する位置に移動させられる。そして、ロボットアーム1110は、ハンド100をフランジ232に向かって移動させて、一方の第1指21を端面232aにおける所定位置に押し付ける。
【0142】
続いて、第1ハンドH1の第1把持部2によってベアリングホルダ230を回転させて位置決めを行う。詳しくは、ロボットアーム1110は、ハンド100を回転させて、第1把持部2の一方の第1指21をベアリングホルダ230の軸心K回りに回転させる。そして、
図25に示すように、端面232aに押し付けられている第1指21は、貫通孔233の位置まで回転すると、その貫通孔233のザグリ穴234に入り込む(係止する)。そして、ロボットアーム1110は、ハンド100をさらに回転させて、フランジ232の貫通孔233の軸心をアングル220のネジ孔225の軸心と一致させる。こうして、ベアリングホルダ230は所定の回転位置に位置決めされる。なお、
図25では、第1指21についてはその先端(即ち、第1部分22の先端22a)を図示している。また、
図25では、ベアリング235の図示を省略している。
【0143】
以上の動作によって位置決め作業が完了する。
【0144】
-第2締結作業-
図26は、第2把持部5によってボルト240をアングル220のネジ孔225へねじ込む状態を示す概略図である。
【0145】
まず、第1ハンドH1の第1把持部2によってトレーT上のボルト240を把持する。次に、第1把持部2は、ボルト240を第2ハンドH2の第2把持部5に受け渡す。これらの動作は、第1締結作業と同様である。
【0146】
続いて、第2ハンドH2は、ボルト240をアングル220のネジ孔225に螺合させる。詳しくは、ロボットアーム1110は、ハンド100を移動させて、第2把持部5に把持されたボルト240をアングル220のネジ孔225の側方、即ち、ベアリングホルダ230の貫通孔233の側方へ位置させる。このとき、ロボットアーム1110は、第2把持部5の軸E、即ち、ボルト240の軸心をネジ孔225の軸心に略一致させる。そして、ロボットアーム1110は、ハンド100を移動させ、ボルト240を貫通孔233へ少しだけ挿入する。その後、第2ハンドH2は、回転機構7によって第2指51を軸E回りに回転させつつ直進機構6によって第2指51を軸E方向へ直進させる。これにより、
図26に示すように、ボルト240が貫通孔233内に進入し、さらにネジ孔225へねじ込まれていく。最終的に、第2ハンドH2は、ボルト240がベアリングホルダ230のフランジ232がアングル220に固定されるまでボルト240をネジ孔225へねじ込む。
【0147】
これらの一連の動作が4か所のネジ孔225に対して行われることによって、最終的に、ベアリングホルダ230がアングル220にボルト締結される。
【0148】
以上の動作によって第2締結作業が完了する。
【0149】
-シャフト挿入作業-
図27は、第1把持部2によってシャフト250を把持する状態を示す概略図である。
図28は、第2把持部5が第1把持部2からシャフト250を受け取る状態を示す概略図である。
図29は、第2把持部5によってシャフト250をベアリングホルダ230のベアリング235に挿入する状態を示す概略図である。
【0150】
まず、第1ハンドH1の第1把持部2によってトレーT上のシャフト250を把持する。詳しくは、ロボットアーム1110は、ハンド100を移動させて、第1把持部2をトレーTのシャフト250の位置に位置させる。このとき、第1把持部2の2つの第1指21は、延伸状態で且つ開いた状態となっている。また、シャフト250は、2つの第1指21の間に位置している。第1把持部2は、2つの第1指21を開閉方向Aにおいて互いに接近する向きへ移動させ、
図27に示すように、2つの第1指21によってシャフト250を把持する。
【0151】
次に、第1把持部2は、シャフト250を第2ハンドH2の第2把持部5に受け渡す。詳しくは、第1把持部2は、シャフト250を把持した状態の2つの第1指21を屈曲させる。具体的には、第1把持部2は、第1指21を屈曲させて、第1部分22の仮想領域Xが軸Eに干渉する位置まで第1部分22を移動させる。その結果、3つの第2指51が進退する軸Eの近傍にシャフト250が位置するようになる。その後、第2ハンドH2は、第2指51を軸E方向へ移動させて、第1指21に把持されたシャフト250の位置に第2指51を位置させる。このとき、3つの第2指51は開いた状態となっている。第2ハンドH2は、3つの第2指51を互いに接近するように移動させ、
図28に示すように、3つの第2指51によってシャフト250を把持する。3つの第2指51は、シャフト250の軸心が軸Eと一致する状態でシャフト250の端部を把持する。
【0152】
次に、第2把持部5は、シャフト250をベアリングホルダ230のベアリング235へ挿入する。詳しくは、ロボットアーム1110は、ハンド100を移動させて、第2把持部5に把持されたシャフト250をベアリングホルダ230の側方に位置させる。このとき、ロボットアーム1110は、第2把持部5の軸E、即ち、シャフト250の軸心をベアリング235の貫通孔236の軸心に略一致させる。そして、ロボットアーム1110は、ハンド100を移動させ、シャフト250をベアリング235の貫通孔236の近傍に少しだけ押し付ける。その後、第2ハンドH2は、回転機構7によって第2指51を軸E回りに回転させつつ直進機構6によって第2指51を軸E方向へ直進させる。これにより、シャフト250が貫通孔236内に進入していく。このとき、第2ハンドH2は、第2把持部5によるシャフト250の把持を解放して、押圧機構9の押圧ブロック91でシャフト250を軸E方向へ押圧して、シャフト250を貫通孔236へ挿入する場合もある。最終的に、第2ハンドH2は、シャフト250が貫通孔236へ所定量、挿入されたところでシャフト250の挿入を停止する。
【0153】
以上の動作によってシャフト挿入作業が完了し、ベアリングユニット200の組立作業が完了する。
【0154】
このように構成されたハンド100は、第1把持部2と第2把持部5との協働によって様々な動作を実現することができる。例えば、前述のベアリングユニット200の組立作業においては、第1把持部2から第2把持部5へボルト240又はシャフト250の受け渡しを行うことができる。また、第1把持部2は、第2把持部5へボルト240又はシャフト250を受け渡す際に、ボルト240又はシャフト250を受け渡し姿勢にガイドすることができる。さらに、第2把持部5は、第1把持部2からボルト240又はシャフト250を受け取る際に、軸Eを中心にボルト240又はシャフト250を把持する(以下、このような把持を「センタリング把持」と称する)。さらにまた、第1把持部2及び第2把持部5は、協働してシャフト250を把持することができる。
【0155】
第1把持部2から第2把持部5へのボルト240の受け渡しについて説明する。
図30は、ボルト240の受け渡し動作において、第1把持部2が屈曲動作を行った状態を示す概略図である。
図31は、第1部分22の仮想領域Xを模式的に示す斜視図である。
図32は、ボルト240の受け渡し動作において、ガイド動作を行った第1指21を先端側から見た概略図である。
図33は、ボルト240の受け渡し動作において、第1把持部2がガイド動作を行った状態を示す概略図である。
【0156】
まず、
図20に示すように、第1把持部2がトレーT上のボルト240を把持する。この動作を「把持動作」と称する。第1把持部2は、第1部分22でボルト240を把持する。トレーT上に載置されたボルト240の軸心は、頭242の存在により、トレーTに対して平行となっていない。第1把持部2は、第1部分22の延伸方向C1がトレーTに対して垂直となる状態でボルト240を把持する。その結果、第1部分22の延伸方向C1とボルト240の軸心とが直交しない状態で、第1把持部2は、ボルト240を把持する。
【0157】
把持動作後、第1把持部2は、第1指21を屈曲させることによって、
図30,31に示すように、ボルト240を把持した状態の第1部分22を仮想領域Xが軸Eに干渉する位置(以下、「干渉位置」と称する)M1まで移動させる。この動作を「屈曲動作」という。
図31に示すように、仮想領域Xは、各第1指21の第1部分22に対して想定される。
図31では、仮想領域Xをわかりやすくするために、仮想領域Xを有限の領域として図示しているが、仮想領域Xは、開閉方向Aへ無限に延びる領域である。この例では、2本の第1指21は、同じ屈曲角度(第2部分23に対する第1部分22の角度)で屈曲するので、2つの第1部分22の仮想領域Xは、開閉方向Aに並んで一体的に形成される。仮想領域Xは、
図30においては、第1部分22を紙面と直交する方向に投影した領域である。
図30においては、仮想領域Xをわかりやすくするために、仮想領域Xを第1部分22よりも少し大きくして二点鎖線で図示している(以下の図面においても同様)。第1部分は、干渉位置M1と、仮想領域Xが軸Eに干渉しない第1部分22の位置(以下、「非干渉位置」と称する)M2との間で移動する。
図30において二点鎖線で表される第1部分22の位置が干渉位置M1と非干渉位置M2との境界である。二点鎖線の位置よりも第2把持部5側が干渉位置M1であり、その反対側が非干渉位置M2である。前述の把持動作を行う際には、第1部分22は、非干渉位置M2に位置している。
【0158】
第1把持部2は、回転軸B回りにおいて第1部分22が第2把持部5へ接近する側へ第1部分22を回転させ、第1部分22を干渉位置M1へ移動させる。第1把持部2は、第1指21の支持面21aが軸Eと直交する位置まで第1部分22を移動させる(この位置を「第1屈曲位置」という)。第1屈曲位置において、支持面21aは、第2把持部5と対向している。把持動作において、第1部分22の延伸方向C1とボルト240の軸心とが直交しない状態で第1指21がボルト240を把持したので、屈曲動作の完了時においては、ボルト240の軸心は軸Eと平行とはなっていない。
【0159】
屈曲動作が完了すると、第2把持部5は、干渉位置M1に位置する第1部分22からボルト240を受け取る。この動作を「受け取り動作」という。一方、第1把持部2は、ボルト240を干渉位置M1において第2把持部5へ受け渡す。この動作を「受け渡し動作」という。
【0160】
受け取り動作に先立ち、第2把持部5は、受け取り動作を可能な状態に準備しておく。具体的に、第2把持部5は、受け取り動作では第2指51を閉じることによってボルト240を把持するので、第2指51を開いた状態にしておく。さらに、第2ハンドH2は、第2把持部5を第1屈曲位置の第1部分22に接近する位置まで、直進機構6及び回転機構7によって移動させておく。
【0161】
受け渡し動作として、第1把持部2は、第1部分22によるボルト240の把持を解放した状態で第1部分22によってボルト240を第2把持部5に受け渡すための姿勢(以下、「受け渡し姿勢」と称する)にガイドする。この動作を「ガイド動作」という。
【0162】
ガイド動作では、第1把持部2は、
図32,33に示すように、第1指21を開いて、第1指21によるボルト240の把持を解放する。このとき、第1把持部2は、ボルト240の姿勢をガイドできる程度に第1指21を開く。具体的には、第1把持部2は、ボルト240が自重によって頭242を第1部分22の上、即ち、支持面21aに係止させる程度に、第1指21を開く。より具体的には、第1把持部2は、2つの第1部分22の間隔がボルト本体241の外径よりも大きく、頭242の外径よりも小さくなるように、第1指21を開く。これによって、ボルト240は、軸心を概ね鉛直方向に向けて第1部分22から吊り下げられた状態となる。ボルト240のこの姿勢が受け渡し姿勢である。第1部分22は、ボルト240を受け渡し姿勢にガイドしつつ、ボルト240の軸E方向の位置を決めている。
【0163】
その後、第2把持部5が受け取り動作を行う。第2ハンドH2は、開閉機構8を作動させ、第2指51を閉じる方向へ移動させる。第2把持部5では、第2指51は、リンク機構52に応じた軌跡を描いて開閉する。この例では、第2指51の全閉状態において第2指51の先端が軸E方向の最も進出側に位置するように、第2指51の先端が円弧状の軌跡を描く。受け取り動作の開始時の第2指51は、開いた状態となり且つ第1部分22の支持面21aに接近している。第2把持部5がボルト240を把持すべく第2指51を閉じると、第2指51は、閉じる途中で第1部分22の支持面21aに接触する。ここで、第2ハンドH2の緩衝機構10は、弾性変形することによって、第2把持部5を軸E方向の後退側へ変位させることができる。つまり、緩衝機構10の弾性変形によって、第2指51は、支持面21a上を摺動しながら閉じ方向へ移動できる。こうすることで、第2指51は、
図21に示すように、支持面21a上のボルト240の頭242を確実に把持することができる。
【0164】
さらに、第2把持部5は、ボルト240を把持する際には、軸Eを中心にボルト240を把持するセンタリング把持を行う。受け渡し姿勢にガイドされているボルト240の軸E方向に見た外形は、頭242の円形状である。そのため、第2把持部5によって頭242がセンタリング把持されると、ボルト240の軸心と軸Eとが一致するように頭242が把持される。
【0165】
以上のような第1把持部2から第2把持部5へのボルト240の受け渡しによれば、トレーT上に載置されたボルト240をボルト240の軸心が軸Eと一致した状態で頭242が把持されるように、第2把持部5がボルト240を把持することができる。第2把持部5がボルト240をこのような状態で把持することによって、第2ハンドH2は、次のボルト240の螺合作業に円滑に移行することができる。
【0166】
そして、ハンド100によれば、これらの動作を1つのハンド100に含まれる第1把持部2及び第2把持部5によって実現することができる。その結果、ロボットアーム1110の動作量を低減することができる。また、ロボットアーム1110以外の別のロボットアーム、装置又は治具等の必要性が低減される。
【0167】
次に、第1把持部2から第2把持部5へのシャフト250の受け渡しについて説明する。
図34は、シャフト250の受け渡し動作において、第1把持部2が屈曲動作を行った状態を示す概略図である。
図35は、シャフト250の受け渡し動作において、第1把持部2がガイド動作前にシャフト250をトレーT上に載置した状態を示す概略図である。
図36は、シャフト250の受け渡し動作において、ガイド動作を行った第1指21を先端側から見た概略図である。
【0168】
まず、
図27に示すように、第1把持部2がトレーT上のシャフト250を把持する。第1把持部2は、第1部分22でシャフト250を把持する。トレーT上に載置されたシャフト250の軸心は、トレーTに対して概ね平行となっている。第1把持部2は、第1部分22の延伸方向C1がトレーTに対して垂直となる状態でシャフト250を把持する。その結果、第1部分22の延伸方向C1とシャフト250の軸心とが略直交した状態で、第1把持部2は、シャフト250を把持する。
【0169】
把持動作後、第1把持部2は、第1指21を屈曲させることによって、
図34に示すように、シャフト250を把持した状態で第1部分22を干渉位置M1、具体的には、第1屈曲位置まで移動させる。把持動作において、第1部分22の延伸方向C1とシャフト250の軸心とが略直交する状態で第1指21がシャフト250を把持したので、屈曲動作の完了時においては、シャフト250の軸心は軸Eと略平行となっている。また、シャフト250は、トレーTから離れた状態となっている。
【0170】
屈曲動作が完了すると、第2把持部5は、干渉位置M1に位置する第1部分22からシャフト250を受け取る。
【0171】
このとき、第1把持部2は、ガイド動作を行う。ガイド動作では、ハンド100は、
図35に示すように、シャフト250の軸心方向の一端面(軸心方向におけるトレーTと接触する端面)252がトレーTに接触する位置までロボットアーム1110によって移動させられる。第1把持部2は、
図36に示すように、第1指21を開いて、第1指21によるシャフト250の把持を解放する。このとき、第1把持部2は、シャフト250の姿勢をガイドできる程度に第1指21を開く。具体的には、第1把持部2は、2つの第1部分22の間隔がシャフト250の外径よりも少し大きく且つ、2つの第1部分22が対向する方向へシャフト250が傾くのを規制できる程度の大きさになるように、第1指21を開く。シャフト250の軸心方向の一端面252は、シャフト250の軸心に対して直交している。そのため、シャフト250は、その自重によってトレーTに対して略直交するように自立する。シャフト250が倒れそうになっても、少なくとも2つの第1部分22が対向する方向へのシャフト250の傾きが規制され、シャフト250は自立する。すなわち、第1把持部2は、軸心が概ね鉛直方向を向く状態でシャフト250がトレーT上に立ち且つシャフト250の一部が支持面21aよりも第2把持部5側に突出するように、シャフト250の姿勢をガイドする。シャフト250のこの姿勢が受け渡し姿勢である。このように、第1把持部2は、第1部分22によるシャフト250の把持を解放することによって支持台としてのトレーTの上にシャフト250を載置した状態で第1部分22によってシャフト250を受け渡し姿勢にガイドする。
【0172】
その後、第2把持部5が受け取り動作を行う。第2ハンドH2は、開閉機構8を作動させ、第2指51を閉じる方向へ移動させる。第2指51は、前述の如く、支持面21a上を摺動しながら閉じ方向へ移動する。第2指51は、
図28に示すように、シャフト250のうち支持面21aから突出した部分を把持する。
【0173】
さらに、第2把持部5は、シャフト250を把持する際には、軸Eを中心にシャフト250を把持するセンタリング把持を行う。受け渡し姿勢にガイドされているシャフト250の軸E方向に見た外形は円形状である。そのため、第2把持部5によってシャフト250がセンタリング把持されると、シャフト250の軸心と軸Eとが一致するようにシャフト250が把持される。
【0174】
以上のような第1把持部2から第2把持部5へのシャフト250の受け渡しによれば、トレーT上に横たわっていたシャフト250は、最終的に、シャフト250の軸心が軸Eと一致した状態で第2把持部5に把持される。第2把持部5がシャフト250をこのような状態で把持することによって、第2ハンドH2は、次のシャフト250の挿入作業に円滑に移行することができる。
【0175】
そして、ハンド100によれば、これらの動作を1つのハンド100に含まれる第1把持部2及び第2把持部5によって実現することができる。その結果、ロボットアーム1110の動作量を低減することができる。また、ロボットアーム1110以外の別のロボットアーム、装置又は治具等の必要性が低減される。
【0176】
続いて、第1把持部2及び第2把持部5によるシャフト250の協働把持について説明する。
図37は、第1把持部2及び第2把持部5が協働把持動作を行った状態を示す概略図である。
【0177】
第2把持部5は、前述の如く、シャフト250の端部を把持する。そのため、シャフト250を第2把持部5だけで把持すると、シャフト250は、片持ち状に把持されることになる。そこで、ハンド100は、第2把持部5に加えて、第1把持部2によってシャフト250を把持することによって、シャフト250の把持の安定性を向上させる。このように第1把持部2及び第2把持部5によって協働してワークを把持することを「協働把持」と称する。
【0178】
具体的には、前述の第2把持部5によるシャフト250の受け取り動作が完了した後、第1把持部2は、屈曲した状態の第1指21でシャフト250を把持する。このとき、第1把持部2は、シャフト250の任意の部分を把持することができる。
【0179】
この例では、
図37に示すように、第1把持部2は、第1部分22を干渉位置M1であって、第1屈曲位置のときよりも第2把持部5から離れた位置(以下「第2屈曲位置」という)に移動させる。第2屈曲位置は、第2把持部5によって把持されたワーク、即ち、シャフト250を第1部分22が把持可能な位置である。第2屈曲位置の、延伸状態からの屈曲角度(即ち、回転軸Bを中心とする回転角度)は、第1屈曲位置の屈曲角度よりも小さい。
【0180】
第1部分22は、第2屈曲位置においてシャフト250を把持する。このように、第1部分22が第2屈曲位置においてシャフト250を把持することによって、シャフト250のうち比較的離れた2か所を第1把持部2及び第2把持部5で把持することができる。
【0181】
このように第1把持部2及び第2把持部5によってシャフト250を協働把持することによって、シャフト250を安定的に把持することができる。特に、シャフト250のように、ボルト240等に比べて大きな重量を有するワークには、協働把持が有効である。また、シャフト250は、この後、軸心が水平方向を向く状態に姿勢を変更され、ベアリング235に挿入される。このときに、第2把持部5だけでシャフト250を片持ち状に把持する場合には、シャフト250の自重によってシャフト250の軸心が軸Eに対して傾く虞がある。そのような作業をする上でも、協働把持は有効である。また、第1指21は、屈曲するので、高い自由度でシャフト250を把持することができる。
【0182】
そして、ハンド100によれば、これらの動作を1つのハンド100に含まれる第1把持部2及び第2把持部5によって実現することができる。その結果、ロボットアーム1110以外の別のロボットアーム又は装置等の必要性が低減される。
【0183】
さらに、ハンド100は、ベアリングユニット200の組立作業に含まれる動作以外にも、第1把持部2と第2把持部5との協働によって様々な動作を実現することができる。例えば、ハンド100は、第2把持部5で把持したワークを屈曲状態の第1指21上に一旦載置し、そのワークを再び把持する持ち直し動作、及び、互いに組み込まれた2つのワークをそれぞれ第1把持部2及び第2把持部5で把持して、2つのワークの相対位置を変更する相対移動動作を実現することができる。以下、各動作について説明する。
【0184】
-持ち直し動作-
図38は、持ち直し動作において、第2把持部5がリング310の1回目の把持を行う状態を示す概略図である。
図39は、持ち直し動作において、第1把持部2が屈曲動作を行った状態を示す概略図である。
図40は、持ち直し動作において、第2把持部5がリング310を第1部分22上に一旦載置した状態を示す概略図である。
図41は、持ち直し動作において、第2把持部5がリング310の2回目の把持を行った状態を示す概略図である。
【0185】
まず、第2把持部5は、トレーT上のリング310を把持する。この例では、リング310は、円筒状に形成されている。つまり、リング310の外周面及び内周面は、リング310の軸心と同心状の円周面である。また、トレーT上には2つのリング310が存在し、一方のリング310の上に他方のリング310が傾いた状態で重なっている。第2ハンドH2は、直進機構6及び回転機構7によって第2把持部5をトレーT上のリング310、具体的には、上に位置するリング310の位置に移動させる。このとき、3つの第2指51は、全閉状態となっている。第2ハンドH2は、
図38に示すように、3つの第2指51をリング310の内側に挿入する。その後、第2ハンドH2は、開閉機構8によって3つの第2指51を開かせる。第2把持部5は、第2指51の開き動作によってリング310を内側から把持する。第2把持部5のセンタリング把持によって、リング310の軸心は、第2把持部5の軸Eと概ね一致した状態となる。尚、第1把持部2は、非干渉位置M2であって、支持面21aが軸Eと直交し且つ下方を向く位置(この位置を「第3屈曲位置」という)に第1部分22が位置するように、第1指21を屈曲させておく。
【0186】
次に、第2ハンドH2は、直進機構6及び回転機構7によって、リング310を把持した状態の第2把持部5を軸E方向において後退させる。その後、第1把持部2は、
図39に示すように、第1指21を屈曲させ、第1部分22を干渉位置M1、具体的には、第1屈曲位置まで移動させる。これにより、リング310の下方に第1部分22が配置される。この例では、第1屈曲位置まで移動した第1部分22は、第2把持部5に把持されたリング310に下方から接触する。つまり、第1部分22は、リング310を下方から支持する状態となる。
【0187】
続いて、第2把持部5は、リング310の把持を解放して、
図40に示すように、リング310を干渉位置M1に位置する第1部分22の上に一旦載置する。
【0188】
その後、第2把持部5は、第1部分22の上に載置されたリング310を再び把持する。具体的には、第2ハンドH2は、直進機構6及び回転機構7によって第2把持部5を軸E方向において後退させ、第2指51をリング310の内側から抜く。そして、第2ハンドH2は、開閉機構8によって第2指51を全開状態とした後、直進機構6及び回転機構7によって第2把持部5を軸E方向において進出させて第1部分22に接近させる。その後、第2ハンドH2は、開閉機構8によって3つの第2指51を閉じさせる。第2把持部5は、
図41に示すように、第2指51の閉じ動作によってリング310を外側から把持する。このとき、第2把持部5のセンタリング把持によって、リング310の軸心は、第2把持部5の軸Eと一致した状態となる。
【0189】
このような持ち直し動作においては、第2把持部5による2回目の把持を第1部分22に安定的に載置されたワークに対して行うことによって、第2把持部5の軸Eとワークの中心とを精度よく一致させることができる。例えば、前述の例のように、リング310がトレーT上で傾いて載置されているような場合には、1回目の把持では、第2把持部5の軸Eとリング310の軸心とが概ね一致するものの、多少のズレが生じる可能性がある。1回目の把持の後にリング310を第1部分22に一旦載置することによって、リング310を比較的安定的な状態に置き直すことができる。この状態で2回目の把持を行うことによって、第2把持部5の軸Eとリング310の軸心とをより一致させることができる。
【0190】
あるいは、持ち直し動作によって、第2把持部5による1回目の把持と2回目の把持とでワークの把持する部分を変更することができる。例えば、持ち直し動作の次の作業のためにワークの把持の仕方が決まっている場合において、トレーT等からワークを把持する際にワークを所望の把持の仕方で把持できない又は所望の把持の仕方とは別の把持の仕方の方がワークを把持し易い場合もある。前述のリング310の例において、持ち直し動作の次の作業のためにリング310を外側から把持しておく必要がある場合において、トレーTからリング310を把持するときにはリング310を内側から把持する方が容易な場合がその例に相当する。尚、持ち直し動作の次の作業の把持が内側からのリング310の把持で、トレーTからの容易な把持が外側からのリング310の把持であってもよい。
【0191】
そして、ハンド100によれば、これらの動作を1つのハンド100に含まれる第1把持部2及び第2把持部5によって実現することができる。その結果、ロボットアーム1110の動作量を低減することができる。また、ロボットアーム1110以外の別のロボットアーム、装置又は治具等の必要性が低減される。
【0192】
-相対移動動作-
ここでは、シャフト330が挿入されたプーリ320をアングル220に取り付ける場合を例に相対移動動作を説明する。
図42は、第1把持部2及び第2把持部5によって協働把持されたプーリ320及びシャフト330をアングル220への組み込み位置まで搬送する状態を示す概略図である。
図43は、相対移動動作において、第1把持部2及び第2把持部5によってプーリ320及びシャフト330を把持した状態を示す概略図である。
図44は、相対移動動作において、第2把持部5を移動させてシャフト330をプーリ320に対して相対移動させた状態を示す概略図である。
図45は、第2把持部5が相対移動動作後のプーリ320及びシャフト330を移動させた状態を示す概略図である。
【0193】
プーリ320の軸孔にシャフト330が挿入され、プーリ320とシャフト330とは、同心状に組み込まれている。シャフト330の一端部には頭331が設けられ、シャフト330の他端部には雄ネジ332が形成されている。
【0194】
互いに組み込まれたプーリ320(第1ワークの一例)及びシャフト330(第2ワークの一例)のうち、第1把持部2は、プーリ320を把持し、第2把持部5は、シャフト330を把持している。第2把持部5は、シャフト330の軸心が軸Eと一致する状態で頭331を把持している。第1把持部2は、屈曲した状態の第1指21の第1部分22でプーリ320の外周面を把持している。
【0195】
ハンド100は、
図42に示すように、互いに組み込まれたプーリ320及びシャフト330のうちプーリ320を第1把持部2が把持し、シャフト330を第2把持部5が把持した状態で、プーリ320及びシャフト330をアングル220への組み込み位置まで搬送する。
【0196】
第1把持部2及び第2把持部5は、
図43に示すように、プーリ320及びシャフト330を把持した状態でアングル220の側方に位置している。アングル220には、ナット226が設けられている。ナット226には、シャフト330の雄ネジ332と螺合する雌ネジ(図示省略)が形成されている。アングル220には、ナット226に対応する位置に貫通孔(図示省略)が形成されている。第2把持部5の軸E、即ち、シャフト330の軸心とナット226の軸心とは略一致している。
【0197】
この状態から第2ハンドH2は、直進機構6及び回転機構7によって第2把持部5を軸E回りに回転させながら軸E方向の進出側に直進させる。第2把持部5は、シャフト330を把持した状態で軸Eの方向へ移動する。このとき、第1把持部2は、プーリ320を把持した状態で停止している。これにより、シャフト330がプーリ320に対して軸E方向へ移動する。軸E方向において、シャフト330の頭331がプーリ320へ接近していく。つまり、プーリ320とシャフト330との相対位置が変化する。シャフト330の雄ネジ332は、ナット226の雌ネジにねじ込まれていく。
【0198】
図44に示すように、シャフト330がプーリ320に対して所定の位置まで挿入されると、第2把持部5は一旦停止する。第1把持部2は、プーリ320の把持を解放する。
【0199】
その後、第2ハンドH2は、再び直進機構6及び回転機構7によって第2把持部5を軸E回りに回転させながら軸E方向の進出側に直進させる。プーリ320は、シャフト330と一体的に軸E回りに回転しながら軸E方向の進出側へ直進する。
図45に示すように、シャフト330がナット226に所定量ねじ込まれると、第2ハンドH2は、第2把持部5の回転及び直進を停止させる。その後、第2把持部5は、シャフト330の把持を解放する。
【0200】
このように、相対移動動作では、2つのワークの相対位置の変更をハンド100の第1把持部2及び第2把持部5によって実現することができる。その結果、ロボットアーム1110の動作量を低減することができる。また、ロボットアーム1110以外の別のロボットアーム又は装置等の必要性が低減される。
【0201】
以上のように、ハンド100は、第1把持部2と、第2把持部5とを備え、第2把持部5は、所定の軸E上に位置するワーク(例えば、ボルト240又はシャフト250)を把持するように構成されており、第1把持部2は、所定の開閉方向Aへ開閉する2つの第1指21を有し、第1指21は、先端部を含む第1部分22と基端部を含む第2部分23とを有すると共に、第1部分22を開閉方向Aへ投影させて形成される仮想領域Xが軸Eに干渉する干渉位置M1と仮想領域Xが軸Eに干渉しない非干渉位置M2との間で第1部分22が移動するように屈曲又は湾曲する。
【0202】
この構成によれば、第2把持部5が軸E上のワークを把持すると共に、2つの第1指21が屈曲又は湾曲することによって第1指21の第1部分22を干渉位置M1まで移動させることができる。2つの第1指21は開閉可能に構成されているので、第1部分22も開閉することができる。つまり、第1部分22は、非干渉位置M2で開閉できるだけでなく、干渉位置M1でも開閉することができる。例えば、第1部分22は、非干渉位置M2で把持したワークを干渉位置M1まで運んだり、干渉位置M1でワークの把持を解放したり、干渉位置M1でワークをガイド又は支持したりすることができる。そのため、第1把持部2と第2把持部5とで協働して様々な動作を実現することができる。
【0203】
また、第1把持部2は、2つの第1指21の第1部分22でワークを把持した状態で第1部分22を干渉位置M1まで移動させ、第2把持部5は、干渉位置M1に位置する第1部分22からワークを受け取る。
【0204】
すなわち、ハンド100の制御方法は、第1把持部2が、2つの第1指21の第1部分22でワークを把持すること、第1把持部2が、ワークを把持した状態で第1部分22を干渉位置M1まで移動させること、第2把持部5が、干渉位置M1に位置する第1部分22からワークを受け取ることとを含む。
【0205】
これらの構成によれば、開閉可能な第1指21が屈曲又は湾曲するので、第1把持部2は、第1指21の第1部分22で把持したワークを干渉位置M1まで移動させてワークの把持を解放することによって、第2把持部5にワークを受け渡すことができる。
【0206】
第1把持部2は、干渉位置M1において第2把持部5にワークを受け渡すときに、第1部分22によるワークの把持を解放した状態で第1部分22によってワークを第2把持部5に受け渡すための受け渡し姿勢にガイドする。
【0207】
この構成によれば、第1部分22は、干渉位置M1でワークを第2把持部5に受け渡すべくワークの把持を解放した後、さらにワークの姿勢をガイドする。これにより、第2把持部5へのワークの受け渡しを安定的に実現することができる。
【0208】
第1把持部2は、ワークの自重によりワークの一部(例えば、ボルト240の頭242)を第1部分22の上に係止させることによってワークを受け渡し姿勢にガイドする。
【0209】
この構成によれば、第1把持部2は、ワークの自重を利用してワークを受け渡し姿勢にガイドすることができる。つまり、第1把持部2は、簡易な動作でワークの姿勢をガイドすることができる。
【0210】
第1把持部2は、第1部分22によるワークの把持を解放することによってトレーT(支持台)の上にワーク(例えば、シャフト250)を載置した状態で第1部分22によってワークを受け渡し姿勢にガイドする。
【0211】
この構成によれば、第1把持部2は、ワークの自重とトレーTとを利用してワークを受け渡し姿勢にガイドすることができる。つまり、第1把持部2は、簡易な動作でワークの姿勢をガイドすることができる。
【0212】
第2把持部5は、第1部分22からワークを受け取るときに、軸Eを中心にワークを把持する。
【0213】
この構成によれば、第1把持部2から第2把持部5にワークを単に受け渡すだけでなく、第2把持部5はワークを受け取るときにワークの位置決めを行うことができる。
【0214】
第2把持部5は、ワークを把持し、第1把持部2は、第2把持部5によって把持されたワークを屈曲又は湾曲した状態の第1指21で把持する。
【0215】
すなわち、ハンド100の制御方法は、第2把持部5が、ワークを把持することと、第1把持部2が、第2把持部5によって把持されたワークを屈曲又は湾曲した状態の第1指21で把持することとを含む。
【0216】
これらの構成によれば、第1指21は、第1部分22が干渉位置M1まで移動するように屈曲又は湾曲するので、第2把持部5が把持したワークを第1指21で把持することができる。つまり、第1把持部2と第2把持部5とで協働してワークを把持することができる。これにより、ワークの把持の安定性が向上する。
【0217】
第1把持部2は、第1部分22を干渉位置M1まで移動させ、第2把持部5は、把持したワークを干渉位置M1に位置する第1部分22の上に一旦載置し、第1部分22の上に載置されたワークを再び把持する。
【0218】
すなわち、ハンド100の制御方法は、第1把持部2が、第1部分22を干渉位置M1まで移動させることと、第2把持部5が、把持したワークを干渉位置M1に位置する第1部分22の上に一旦載置することと、第2把持部5が、第1部分22の上に載置されたワークを再び把持することとを含む。
【0219】
これらの構成によれば、第2把持部5は、1つのハンド100においてワークを持ち直すことができる。これにより、第2把持部5は、ワークをより安定的に持ち直したり、把持する部分を変更してワークを持ち直したりすることができる。
【0220】
第2把持部5は、軸Eの方向へ移動可能に構成され、第1把持部2は、互いに組み込まれた第1ワーク(例えば、プーリ320)及び第2ワーク(例えば、シャフト330)のうち第1ワークを屈曲又は湾曲した状態の第1指21で把持し、第2把持部5は、第2ワークを把持した状態で軸Eの方向へ移動することによって第1ワークと第2ワークとの相対位置を変更する。
【0221】
すなわち、ハンド100の制御方法によれば、第1把持部2が、互いに組み込まれた第1ワーク及び第2ワークのうち第1ワークを屈曲又は湾曲した状態の第1指21で把持することと、第2把持部5が、第2ワークを把持することと、第2把持部5が、第2ワークを把持した状態で軸Eの方向へ移動することによって第1ワークと第2ワークとの相対位置を変更することとを含む。
【0222】
これらの構成によれば、第1指21は、第1部分22が干渉位置M1まで移動するように屈曲又は湾曲するので、第2把持部5が把持したワークを第1指21で把持することができる。そこで、互いに組み込まれた第1ワーク及び第2ワークのうち第1ワークを第1把持部2が屈曲又は湾曲した第1指21で把持し、第2ワークを第2把持部5が把持することができる。その状態で第2把持部5が第2ワークを軸E方向へ移動させることによって、第1ワークと第2ワークとの相対位置を変更することができる。このような複雑な動作も1つのハンド100で実現することができる。
【0223】
また、ハンド100は、第1把持部2と、第2把持部5とを備え、第1把持部2は、把持したワークを第2把持部5へ受け渡すように構成され、第2把持部5は、所定の軸E上で第1把持部2からワークを受け取り、軸Eを中心にワークを把持する。
【0224】
この構成によれば、第1把持部2から第2把持部5にワークを単に受け渡すだけでなく、第2把持部5はワークを受け取るときにワークの位置決めを行うことができる。
【0225】
《その他の実施形態》
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、前記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0226】
例えば、ハンド100は、ロボット1100以外の装置に組み込まれてもよい。
【0227】
第1指21は、第1部分22、第2部分23及び関節24を有して、屈曲するように構成されているが、第1指21は、湾曲するように構成されていてもよい。
【0228】
第2ハンドH2は、回転機構7及び/又は押圧機構9を省略することができる。また、直進機構6と回転機構7とが一体的ではなく、分離して形成されていてもよい。また、押圧機構9は、直進機構6と一体的に形成されているが、直進機構6と分離して形成されていてもよい。
【0229】
第1把持部2のガイド動作に関し、前述の説明では、第1把持部2は、ワークを把持し、屈曲動作を行った後にガイド動作を実行している。しかしながら、第1把持部2は、ワークの把持及び屈曲動作を行うことなく、ワークのガイド動作だけを行ってもよい。例えば、第2把持部5が把持したワーク(第1把持部2から受け渡されたか否かを問わない)、例えば、シャフト250を持ち直す際に、第1把持部2がシャフト250のガイド動作だけを行ってもよい。つまり、第1把持部2は、2つの第1指21の第1部分22を干渉位置M1まで移動させた状態で、第2把持部5が把持するための姿勢にワークを第1部分22によってガイドする。また、ハンド100の制御方法は、第1把持部2が、2つの第1指21の第1部分22を干渉位置M1まで移動させた状態で、第2把持部5が把持するための姿勢にワークを第1部分22によってガイドすることと、第2把持部5が、第1把持部2によってガイドされたワークを把持することとを含む。このような構成であっても、1つのハンド100において、第1把持部2と第2把持部5とで協働して、第2把持部5によるワークの安定的な把持を実現することができる。
【0230】
協働把持動作においては、第1把持部2と第2把持部5とで把持するワークは、単一のワークではなく、複数のワークが一体的に組み込まれた複合的なワークであってもよい。つまり、
図42に示すような互いに組み込まれたプーリ320及びシャフト330を第1把持部2及び第2把持部5によって把持する動作も協働把持動作に相当する。
【0231】
また、ハンド100は、以下のような捉え方もできる。ハンド100は、
図46に示すように、第1把持部2と、第2把持部5とを備え、第2把持部5は、所定の軸E上に位置するワークを把持するように構成されており、第1把持部2は、開閉する2つの第1指21を有し、第1指21は、先端部を含む第1部分22と基端部を含む第2部分23とを有すると共に、第2把持部5を軸E方向へ投影させて形成される仮想領域Yに第1部分22が干渉する位置と仮想領域Yに第1部分22が干渉しない位置との間で第1部分22が移動するように屈曲又は湾曲してもよい。この例では、仮想領域はY、3本の第2指51の外接円を軸E方向へ投影させて形成される領域である。すなわち、仮想領域Yは、円柱状に形成されている。好ましくは、外接円は、全開状態となった第2指51の外接円である。
【0232】
この構成によれば、第2把持部5が軸E上のワークを把持すると共に、2つの第1指21が屈曲又は湾曲することによって第1指21の第1部分22を仮想領域Yに干渉する位置まで移動させることができる。2つの第1指21は開閉可能に構成されているので、第1部分22も開閉することができる。つまり、第1部分22は、仮想領域Yに干渉しない位置で開閉できるだけでなく、仮想領域Yに干渉する位置でも開閉することができる。例えば、第1部分22は、把持したワークを仮想領域Yに干渉する位置まで運んだり、仮想領域Yに干渉する位置でワークの把持を解放したり、仮想領域Yに干渉する位置でワークをガイド又は支持したりすることができる。そのため、第1把持部2と第2把持部5とで協働して様々な動作を実現することができる。
【符号の説明】
【0233】
100 ハンド
240 ボルト(ワーク)
250 シャフト(ワーク)
310 リング(ワーク)
320 プーリ(第1ワーク)
330 シャフト(第2ワーク)
2 第1把持部
21 第1指
22 第1部分
23 第2部分
5 第2把持部
A 開閉方向
E 軸
M1 干渉位置
M2 非干渉位置
X 仮想領域