(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-27
(45)【発行日】2024-10-07
(54)【発明の名称】直流/直流コンバータ
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20240930BHJP
【FI】
H02M3/155 C
H02M3/155 P
(21)【出願番号】P 2020185700
(22)【出願日】2020-11-06
【審査請求日】2023-08-02
(31)【優先権主張番号】10-2020-0040005
(32)【優先日】2020-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞株式会社
【氏名又は名称原語表記】KIA CORPORATION
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金 重 輝
(72)【発明者】
【氏名】兪 定 模
(72)【発明者】
【氏名】李 鎔 在
(72)【発明者】
【氏名】黄 宰 豪
(72)【発明者】
【氏名】朴 柱 英
(72)【発明者】
【氏名】朴 宰 玄
【審査官】尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-055612(JP,A)
【文献】特開2013-192383(JP,A)
【文献】特開2018-207627(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00- 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1キャパシタと、
前記第1キャパシタの両端の間に相互直列関係で順次接続された第1スイッチ、第2スイッチ、第3スイッチ、及び第4スイッチと、
前記第1スイッチと前記第2スイッチとの接続ノード及び前記第3スイッチと前記第4スイッチとの接続ノードに、両端のそれぞれが接続された第2キャパシタと、
前記第2スイッチと前記第3スイッチとの接続ノードに一端が接続されたインダクタと、
前記第2キャパシタに短絡または開放故障が発生した場合に、出力電圧を検出した第1検出電圧と前記出力電圧に対する出力電圧指令とを比較した結果に基づいて、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチを同じ状態にPWM制御し、前記第3スイッチ及び前記第4スイッチを同じ状態にPWM制御するコントローラと、を含み、
前記出力電圧は、前記第1キャパシタの両端の電圧、または前記インダクタの他端と、前記第1キャパシタと前記第4スイッチとの接続ノードとの間の電圧であることを特徴とする直流/直流コンバータ。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記第2キャパシタに短絡または開放故障が発生した場合、前記第1検出電圧と前記出力電圧指令とを比較した結果に基づいて、前記インダクタに流れる電流に対する電流指令を生成し、前記電流指令と前記インダクタに流れる電流を検出した検出電流とを比較した結果に基づいて第1制御電圧指令を生成し、前記第1制御電圧指令と事前に設定された周波数を有する三角波とを比較した結果に基づいて、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチを同じ状態にPWM制御し、前記第3スイッチ及び第4スイッチを同じ状態にPWM制御することを特徴とする請求項1に記載の直流/直流コンバータ。
【請求項3】
前記コントローラは、
前記第1スイッチ及び前記第2スイッチを同じ状態にPWM制御し、前記第3スイッチ及び前記第4スイッチを同じ状態にPWM制御する場合、前記直流/直流コンバータの昇圧比を減少させることを特徴とする請求項1に記載の直流/直流コンバータ。
【請求項4】
前記コントローラは、
前記直流/直流コンバータの昇圧比を減少させるために、前記出力電圧指令を生成する上位制御器に前記直流/直流コンバータの制御状態を伝達することを特徴とする請求項3に記載の直流/直流コンバータ。
【請求項5】
前記コントローラは、
前記第1スイッチ及び前記第2スイッチを同じ状態にPWM制御し、前記第3スイッチ及び前記第4スイッチを同じ状態にPWM制御する場合、前記第1スイッチ乃至前記第4スイッチのスイッチング周波数を増加させることを特徴とする請求項1に記載の直流/直流コンバータ。
【請求項6】
前記コントローラは、
前記第1スイッチ及び前記第2スイッチを同じ状態にPWM制御し、前記第3スイッチ及び前記第4スイッチを同じ状態にPWM制御する場合、前記電流指令の大きさを制限することを特徴とする請求項2に記載の直流/直流コンバータ。
【請求項7】
前記コントローラは、
前記第1検出電圧と前記出力電圧指令との差に基づいて、前記インダクタに流れる電流に対する電流指令を生成する電圧制御部と、
前記電流指令と前記インダクタに流れる電流を検出した検出電流との差に基づいて第1制御電圧指令を生成する電流制御部と、
前記第2キャパシタに印加される電圧を検出した検出電圧と事前に設定された第2電圧指令との差及び前記検出電流の逆数に基づいて第2制御電圧指令を生成するフライングキャパシタ電圧制御部と、を含み、
前記第2キャパシタに短絡または開放故障が発生した場合、前記フライングキャパシタ電圧制御部の動作を停止させ、前記第1制御電圧指令と事前に設定された周波数を有する三角波とを比較した結果に基づいて、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチを同じ状態にPWM制御し、前記第3スイッチ及び前記第4スイッチを同じ状態にPWM制御することを特徴とする請求項1に記載の直流/直流コンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流/直流コンバータに関し、より詳細には、フライングキャパシタに開放または短絡故障が発生してフライングキャパシタの電圧を制御できない場合にも安定的に動作することができるフライング直流/直流コンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、直流/直流コンバータは、入力された直流電圧の大きさを所望の大きさに変換する装置であって、各種電気・電力分野に広く用いられている。
【0003】
従来の直流/直流コンバータとして、半導体スイッチのオン/オフ動作を用いてインダクタのエネルギー蓄積及びエネルギー放出の量をコントロールして直流から直流への電圧変換を行う技術が知られている。このような従来の直流/直流コンバータは、適用されるインダクタのサイズが大きく、その重量が重いという欠点がある。
【0004】
このようなインダクタのサイズ及び重量の問題を解消するために、キャパシタの充放電を利用してインダクタへの印加電圧を減少させることにより、インダクタによって提供されるインダクタンス値を減少させてインダクタを小型化及び軽量化する技術が開発された。
【0005】
このような技術の一つとして、複数のスイッチを直列接続し、その一部のスイッチの間にフライングキャパシタを備える直流/直流コンバータ(フライング直流/直流コンバータともいう)がある。
【0006】
従来のフライングキャパシタを備える直流/直流コンバータは、追加されたフライングキャパシタの電圧を一定のレベル(例えば、出力電圧の1/2)に制御しなければならないという点で、制御難易度が高い。
【0007】
もしフライングキャパシタに開放または短絡故障が発生した場合、フライングキャパシタの電圧を一定のレベルに制御することができないため、スイッチに過度に高い電圧が印加されることがあり、これによりスイッチの焼損が発生するという問題が生じるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第7746041号明細書
【文献】特許第6223609号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、フライングキャパシタに開放または短絡故障が発生してフライングキャパシタの電圧を制御できない場合にも安定的に動作することができるフライング直流/直流コンバータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するためになされた本発明の一態様による直流/直流コンバータは、第1キャパシタと、前記第1キャパシタの両端の間に相互直列関係で順次接続された第1スイッチ、第2スイッチ、第3スイッチ、及び第4スイッチと、前記第1スイッチと前記第2スイッチとの接続ノード及び前記第3スイッチと前記第4スイッチとの接続ノードに、両端のそれぞれが接続された第2キャパシタと、前記第2スイッチと前記第3スイッチとの接続ノードに一端が接続されたインダクタと、前記第2キャパシタに短絡または開放故障が発生した場合に、出力電圧を検出した第1検出電圧と前記出力電圧に対する出力電圧指令とを比較した結果に基づいて、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチを同じ状態にPWM制御し、前記第3スイッチ及び前記第4スイッチを同じ状態にPWM制御するコントローラと、を含み、前記出力電圧は、前記第1キャパシタの両端の電圧、または前記インダクタの他端と、前記第1キャパシタと前記第4スイッチとの接続ノードとの間の電圧であることを特徴とする。
【0011】
前記コントローラは、前記第2キャパシタに短絡または開放故障が発生した場合、前記第1検出電圧と前記出力電圧指令とを比較した結果に基づいて、前記インダクタに流れる電流に対する電流指令を生成し、前記電流指令と前記インダクタに流れる電流を検出した検出電流とを比較した結果に基づいて第1制御電圧指令を生成し、前記第1制御電圧指令と事前に設定された周波数を有する三角波とを比較した結果に基づいて、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチを同じ状態にPWM制御し、前記第3スイッチ及び前記第4スイッチを同じ状態にPWM制御し得る。
【0012】
前記コントローラは、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチを同じ状態にPWM制御し、前記第3スイッチ及び前記第4スイッチを同じ状態にPWM制御する場合には、前記直流/直流コンバータの昇圧比を減少させ得る。
前記コントローラは、前記直流/直流コンバータの昇圧比を減少させるために、前記出力電圧指令を生成する上位制御器に前記直流/直流コンバータの制御状態を伝達し得る。
前記コントローラは、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチを同じ状態にPWM制御し、前記第3スイッチ及び前記第4スイッチを同じ状態にPWM制御する場合、前記第1スイッチ乃至前記第4スイッチのスイッチング周波数を増加させ得る。
【0013】
前記コントローラは、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチを同じ状態にPWM制御し、前記第3スイッチ及び前記第4スイッチを同じ状態にPWM制御する場合には、前記電流指令の大きさを制限し得る。
【0014】
前記コントローラは、前記第1検出電圧と前記出力電圧指令との差に基づいて、前記インダクタに流れる電流に対する電流指令を生成する電圧制御部と、前記電流指令と前記インダクタに流れる電流を検出した検出電流との差に基づいて第1制御電圧指令を生成する電流制御部と、前記第2キャパシタに印加される電圧を検出した検出電圧と事前に設定された第2電圧指令との差及び前記検出電流の逆数に基づいて第2制御電圧指令を生成するフライングキャパシタ電圧制御部と、を含み、前記第2キャパシタに短絡または開放故障が発生した場合、前記フライングキャパシタ電圧制御部の動作を停止させ、前記第1制御電圧指令と事前に設定された周波数を有する三角波とを比較した結果に基づいて、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチを同じ状態にPWM制御し、前記第3スイッチ及び前記第4スイッチを同じ状態にPWM制御し得る。
【発明の効果】
【0015】
本発明の直流/直流コンバータによれば、フライング直流/直流コンバータのフライングキャパシタ電圧を制御することができない状態、すなわち、フライングキャパシタに短絡または開放故障が発生した場合に、インダクタに対して上部(上側)の第1及び第2スイッチを同じ状態となるようにPWM制御し、インダクタに対して下部(下側)の第3及び第4スイッチを同じ状態となるようにPWM制御して2レベル動作が行われるようにすることにより、フライング直流/直流コンバータの動作を中断なしに安定して制御することができる。
【0016】
特に、本発明の前記直流/直流コンバータによれば、2レベル制御時に昇圧比を減少させてスイッチの過電圧を防止し、スイッチング周波数をアップさせるか、または電流をディレーティングして発熱問題を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態による直流/直流コンバータの回路図である。
【
図2】本発明の一実施形態による直流/直流コンバータのコントローラをさらに詳細に示すブロック構成図である。
【
図3】本発明の一実施形態による直流/直流コンバータの電気的流れの状態を示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態による直流/直流コンバータの電気的流れの状態を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態による直流/直流コンバータの電気的流れの状態を示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態による直流/直流コンバータの電気的流れの状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態による直流/直流コンバータを詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態による直流/直流コンバータの回路図である。
【0020】
図1に示すように、本発明の一実施形態による直流/直流コンバータは、第1入出力端子T11と第2入出力端子T12との間に印加された直流電圧を昇圧して、第3入出力端子T21と第4入出力端子T22との間に提供するか、または、その反対に、第3入出力端子T21と第4入出力端子T22との間に印加された直流電圧を降圧して、第1入出力端子T11と第2入出力端子T12との間に提供する直流/直流コンバータである。
図1に示す例は、第1入出力端子T11と第2入出力端子T12との間にバッテリーBATが備えられ、バッテリーBATの電圧を昇圧して第3入出力端子T21と第4入出力端子T22との間に提供するコンバータになる。例えば、第3入出力端子T21と第4入出力端子T22との間には負荷が接続される。
【0021】
以下、主にバッテリーBATの電圧を昇圧して第3入出力端子T21と第4入出力端子T22との間に提供する例を説明するが、以下の説明を介して、その反対の電力の流れ、すなわち第3入出力端子T21と第4入出力端子T22との間に印加された電圧を降圧して第1入出力端子T11と第2入出力端子T22との間に提供する例も当業者であれば容易に具現し得る。
【0022】
本発明の一実施形態による直流/直流コンバータは、第3入出力端子T21と第4入出力端子T22とに両端のそれぞれが接続された第1キャパシタCDCと、第1キャパシタCDCの両端の間に相互直列関係で順次接続された第1スイッチS1、第2スイッチS2、第3スイッチS3、及び第4スイッチS4と、第1スイッチS1と第2スイッチS2との接続ノード及び第3スイッチS3と第3スイッチS4との接続ノードに、両端のそれぞれが接続された第2キャパシタCFCと、第2スイッチS2と第3スイッチS3との接続ノードに一端が接続されたインダクタLと、第1スイッチS1~第4スイッチS4のオン/オフ状態を制御するコントローラ10と、を含んで構成される。
【0023】
第1キャパシタC
DCは、第3入出力端子T21と第4入出力端子T22との間に接続される一種の平滑キャパシタである。
図1には示していないが、第1入出力端子T11と第2入出力端子T12との間にも追加の平滑キャパシタが接続されてもよい。
【0024】
第1スイッチS1~第4スイッチS4は、第1キャパシタCDCの一端から他端に向かって順次直列接続される。第1スイッチS1~第4スイッチS4のそれぞれは、絶縁ゲートバイポーラトランジスタIGBTで具現され、IGBTのゲートにコントローラ10のオン/オフ制御信号が入力されることにより、オン/オフ状態が制御される。なお、第1スイッチS1~第4スイッチS4は、IGBTを代替することが可能な、当該技術分野における公知の様々なスイッチング素子で具現し得る。
【0025】
第2キャパシタCFCは、フライングキャパシタであって、第1スイッチS1と第2スイッチS2との接続ノード、及び第3スイッチS3と第4スイッチS4との接続ノードに両端のそれぞれが接続される。
【0026】
図示しないが、本発明の一実施形態による直流/直流コンバータは、コントローラ10がスイッチ(S1~S4)のオン/オフ制御を行うための演算に必要な回路内情報を検出するための複数のセンサを備える。まず、第1入出力端子T11と第2入出力端子T12との間の電圧、または第3入出力端子T21と第4入出力端子T22との間の電圧VDCを検出するための電圧センサを備え、第2キャパシタCFCの電圧VFCを検出するための電圧センサを備え、インダクタLに流れる電流の大きさを検出するための電流センサを備える。これらの電圧センサ及び電流センサで検出された検出電圧及び検出電流は、コントローラ10に提供される。
【0027】
コントローラ10は、第1キャパシタCDCの両端の電圧、またはインダクタLの他端と、第1キャパシタCDCと第4スイッチS4との接続ノードとの間の電圧を検出した第1検出電圧の入力を受ける。ここで、第1検出電圧は、直流/直流コンバータが一定の電圧を昇圧または降圧して出力した出力電圧に該当するものであり、昇圧の場合には、第3入出力端子T21と第4入出力端子T22との間の電圧(すなわち、第1キャパシタCDCの電圧)を検出した値VDCとなり、降圧の場合には、第1入出力端子T11と第2入出力端子T12との間の電圧を検出した値となる。
【0028】
また、コントローラ10は、第1検出電圧VDCとそれに対する第1電圧指令とを比較してその誤差を演算する。ここで、第1電圧指令は、上位制御器などによって設定された直流/直流コンバータが出力しようとする電圧値である。
【0029】
また、フライングキャパシタである第2キャパシタCFCの状態が正常である場合、コントローラ10は、第2キャパシタCFCに印加される電圧を検出した検出電圧VFCの入力を受けて、事前に設定された第2電圧指令と比較してその誤差を演算する。ここで、第2電圧指令は、上位制御器などによって事前に設定された値であって、第1キャパシタCDCの電圧の略1/2に該当する値となる。特に、本発明の一実施形態において、コントローラ10は、第2キャパシタCFCに印加される電圧を検出した検出電圧VFCと第2電圧指令との誤差に、インダクタLに流れる電流を検出した検出電流を乗算した結果に基づいて、スイッチ(S1~S4)のオン/オフ状態をPWM(Pulse width Modulation)制御する。
【0030】
もし、第2キャパシタCFCに短絡または開放故障が発生して第2キャパシタCFCの電圧を適切に制御することができない場合には、コントローラ10は、第2電圧指令を生成する演算を行わず、第1電圧指令と第1検出電圧VDCとを比較した結果だけを用いて、スイッチ(S1~S4)のオン/オフ状態をPWM制御する。
【0031】
図2は、本発明の一実施形態による直流/直流コンバータのコントローラをさらに詳細に示すブロック構成図である。
【0032】
図2に示すように、本発明の一実施形態による直流/直流コンバータのコントローラ10は、電圧制御部11、電流制御部12、及びフライングキャパシタ電圧制御部13を含む。
【0033】
電圧制御部11は、第1入出力端子T11と第2入出力端子T12との間の電圧、または第3入出力端子T21と第4入出力端子T22との間の電圧を検出した検出電圧VDCを、事前に設定された第1電圧指令VDC
*と比較して誤差を演算する減算器111と、減算器111で演算された誤差を減少させるように比例積分制御するPI制御器112とを含む。PI制御器112は、比例積分制御を介して、減算器111で演算された誤差を減少させるインダクタLの電流に対する電流指令IL
*を出力する。
【0034】
電流制御部12は、電圧制御部11から提供されるインダクタLの電流指令IL
*とインダクタLに流れる電流を検出した検出電流ILとの誤差を演算する減算器121と、比例積分制御を介して減算器121の出力を減少させる第1制御電圧指令VDM
*を生成するPI制御器122とを含む。第1制御電圧指令VDM
*は、スイッチ(S1~S4)のオン/オフデューティの決定に使用される。
【0035】
図2は、電圧制御部11と電流制御部12が比例積分制御を行う例を示しているが、本発明はこれに限定されず、当技術分野における公知の様々な制御技法を適用し得る。
【0036】
フライングキャパシタ電圧制御部13は、第2キャパシタCFCに印加される電圧を検出した検出電圧VFCの入力を受けて、事前に設定された第2電圧指令VFC
*と比較してその誤差を演算する減算器131と、比例制御を介して減算器131の出力を減少させる制御指令を出力する比例制御器(P)132と、インダクタLの電流を検出した検出電流ILの逆数を演算する逆数演算器133と、比例制御器132の出力に逆数演算器133の演算結果を乗算して第2制御電圧指令VCM
*として出力する乗算器134と、を含んで構成される。
【0037】
本発明の一実施形態において、フライングキャパシタ電圧制御部13は、第2キャパシタCFCの電圧を制御できる状態でのみ動作する。例えば、第2キャパシタCFCに短絡または開放故障が発生して第2キャパシタCFCの電圧を制御できない場合には、フライングキャパシタ電圧制御部13の動作を中断し、電圧制御部11と電流制御部12で生成された第1制御電圧指令VDC
*のみを適用して第1スイッチS1~第4スイッチS4をPWM制御する。
【0038】
また、コントローラ10は、電流制御部12から出力される第1制御電圧指令VDM
*とフライングキャパシタ電圧制御部13から出力される第2制御電圧指令VCM
*とを合算して第1デューティ指令V1
*を生成する合算器141、入出力端の電圧を検出した検出電圧VDCから第1制御電圧指令VDM
*を減算する減算器142、第2制御電圧指令VCM
*に減算器142の減算結果を合算して第2デューティ指令V2
*を生成する第2合算器143、第1デューティ指令V1
*と三角波発生器146で発生した事前に設定された周波数を有する三角波とを比較した結果に基づいて、第1スイッチS1及び第4スイッチS4のオン/オフ状態を決定する第1スイッチング制御部(PWM)144、及び第2デューティ指令V2
*と三角波発生器146で発生した事前に設定された周波数を有する三角波とを比較した結果に基づいて、第2スイッチS2及び第3スイッチS3のオン/オフ状態を決定する第2スイッチング制御部(PWM)145をさらに含む。
【0039】
ここで、第2キャパシタCFCに短絡または開放故障が発生して第2キャパシタCFCの電圧を制御できない場合には、フライングキャパシタ電圧制御部13から第2制御電圧指令VCM
*が出力されないので、合算器141は、第1制御電圧指令VDC
*のみを第1スイッチング制御部144に提供して、第1スイッチS1及び第4スイッチS4をPWM制御する。
【0040】
また、コントローラ10は、第1スイッチング部151及び第2スイッチング部152を備えて、第2キャパシタCFCが正常状態である場合には、第1スイッチング部151を開放状態、第2スイッチング部152を短絡状態に制御し、第2キャパシタCFCが故障状態である場合には、第1スイッチング部151を短絡状態、第2スイッチング部152を開放状態に制御して、第1制御電圧指令VDC
*が第2スイッチング制御部145に提供されるようにすることにより、第2スイッチS2及び第3スイッチS3をPWM制御する。
【0041】
また、第2キャパシタCFCの電圧を制御できない場合には、第1スイッチング制御部144と第2スイッチング制御部145は、第1スイッチS1と第2スイッチS2が同じスイッチング状態を出力し、第3スイッチS3と第4スイッチS4が同じスイッチング状態を出力するように、内部的に三角波と第1制御電圧指令VDM
*との比較結果に応じた出力が調整されることも可能である。
【0042】
第2キャパシタCFCが正常状態である場合には、第1デューティ指令V1
*と第2デューティ指令V2
*は、第1制御電圧指令VDM
*と第2制御電圧指令VCM
*を用いて下記の数式1で表される。
【0043】
【0044】
ここで、第1制御電圧指令VDM
*は、直流/直流コンバータの出力電圧VDCに基づいて生成された値であって、出力に影響を及ぼす値であり、第2制御電圧指令VCM
*は、フライングキャパシタの電圧VFCに基づいて生成された値であって、フライングキャパシタの電圧VFC、または出力電圧VDCとフライングキャパシタの電圧VFCとの差(VDC-VFC)に影響を及ぼす。すなわち、第1制御電圧指令VDM
*は出力電流制御に利用され、第2制御電圧指令VCM
*はフライングキャパシタの電圧の制御に利用される。
【0045】
図3~
図6は、本発明の一実施形態による直流/直流コンバータの電気的流れの状態を示す図である。
【0046】
図3は、第1スイッチS
1と第2スイッチS
2がオンであり、第3スイッチS
3と第4スイッチS
4がオフである第1の状態を示すものであり、第1の状態は、インダクタLとスイッチ(S
2またはS
3)との接続ノードにキャパシタC
DCの電圧V
DCが全て印加された状態である。
【0047】
図4は、第1スイッチS
1と第3スイッチS
3がオンであり、第2スイッチS
2と第4スイッチS
4がオフである第2の状態を示すものであり、第2の状態は、インダクタLとスイッチ(S
2またはS
3)との接続ノードに、キャパシタC
DCの電圧V
DCからフライングキャパシタC
FCの電圧V
FCを差し引いた値が印加された状態である。
【0048】
図5は、第2スイッチS
2と第4スイッチS
4がオンであり、第1スイッチS
1と第3スイッチS
3がオフである第3の状態を示すものであり、第3の状態は、インダクタLとスイッチ(S
2またはS
3)との接続ノードに、フライングキャパシタC
FCの電圧V
FCが全て印加された状態である。
【0049】
図6は、第3スイッチS
3と第4スイッチS
4がオンであり、第1スイッチS
1と第2スイッチS
2がオフである第4の状態を示すものであり、第4の状態は、インダクタLとスイッチ(S
2またはS
3)との接続ノードに、電圧が印加されない状態である。
【0050】
図3~
図6に示す状態のうち、フライングキャパシタである第2キャパシタC
FCに電流が導通する第2の状態及び第3の状態の間に、フライングキャパシタC
FCに電圧変化が発生し、この状態の間にフライングキャパシタC
FCに充放電されるエネルギーは、第2の状態と第3の状態の割合、及びインダクタLに流れる電流量に影響される。
【0051】
これを数式化すると、下記の数式2で表される。
【0052】
【数2】
式中、「D
CM」は、フライングキャパシタC
FCに電流が流れる状態となるデューティを意味するものであり、フライングキャパシタ電圧制御部13の比例制御によって上記数式2の第3式のように決定される。数式2の第3式は、インダクタ電流I
Lの逆数を適用しない場合に決定されるデューティである。また、数式2において、「K
P」は比例制御器132の利得値である。
【0053】
上記の数式2をまとめると、下記の数式3が導出され、これに基づいて伝達関数を演算すると、下記の数式4が導出される。
【0054】
【0055】
【0056】
したがって、数式4の伝達関数を1次ローパスフィルタ形態の閉ループで制御するには、下記の数式5のような関係が成立しなければならない。
【0057】
【0058】
数式5によれば、比例制御のための利得がインダクタ電流に反比例する特性を持ってこそ線形的な制御特性が得られることが分かる。
【0059】
したがって、フライングキャパシタ電圧制御部13に、インダクタ電流ILの逆数を求める逆数演算器133を含めることにより、全体電流に対して安定した制御特性を得ることができる。
【0060】
ここで、フライングキャパシタ電圧制御部13内の制御器を、比例制御器132ではなく、比例積分(PI)制御器で具現することもできるが、比例積分(PI)制御器を適用する場合、積分器に蓄積された値が電流方向に応じて大きなデューティ脈動を発生させるので、インダクタ電流ILがゼロ電流となる付近で制御性が大幅に悪化するおそれがあるため、比例制御器を適用することが好ましい。
【0061】
一方、フライングキャパシタである第2キャパシタCFCに電流が導通する第2の状態及び第3の状態における出力電圧は、「VDC-VFC」及び「VFC」であり、正常状態では3レベルコンバータの出力における中間電圧0.5VDCを出力する。
【0062】
したがって、フライングコンバータの出力ポール電圧(インダクタLとスイッチ(S2またはS3)との接続ノードの電圧)が0.5VDCに近いほど、第2の状態及び第3の状態の活用頻度が高くなり、フライングコンバータの出力ポール電圧が0.5VDCから遠くなるほど、第1の状態または第3の状態の活用頻度が高くなる。また、フライングキャパシタCFCが0.5VDCに安定的に制御されている場合、第2の状態と第3の状態との割合は同等に形成される(すなわち、VCM
*=0)。
【0063】
しかし、第2キャパシタCFCに短絡または開放故障が発生した場合には、第2キャパシタCFCの電圧制御が不可能になり、上述したような3レベル動作が不可能になる。
【0064】
本発明の一実施形態では、第2キャパシタCFCに短絡または開放故障が発生して第2キャパシタCFCの電圧制御が不可能になった場合には、コンバータが2レベル動作するようにスイッチ(S1~S4)を制御する。
【0065】
このため、本発明の一実施形態は、インダクタLを基準にして上部スイッチである第1スイッチS1及び第2スイッチS2を互いに同じ状態となるように制御し、インダクタLを基準にして下部スイッチである第3スイッチS3及び第4スイッチS4を互いに同じ状態となるように動作させる。
【0066】
このような第2キャパシタC
FCの故障の際に制御を行う場合、
図3に示す第1の状態と
図6に示す第4の状態だけを有する2レベル制御が行われる。
【0067】
このような2レベル制御の際に、昇圧コンバータとして動作する場合は、スイッチ(S1~S4)の一部に直流電圧がすべて印加されるので、過電圧によるスイッチ焼損が発生するおそれがある。したがって、コントローラ10は、第2キャパシタCFCの電圧制御が不可能になって2レベル制御を行う場合、コンバータの昇圧比を下げるかまたは制限する制御を行うことが好ましい。これは、コントローラ10が上位制御器に第2キャパシタCFCの電圧制御が不可能であることを伝達するフラグを設定するなどの方法によって達成される。
【0068】
また、2レベル制御を行う場合、インダクタLのリップルが増加するのにつれて、損失が増加しながら発熱がさらに激しくなるおそれがある。このような発熱問題を解消するために、スイッチング周波数をアップさせてインダクタの損失を低減させる制御を行う。アップさせようとするスイッチング周波数の大きさは、事前に設定でき、三角波発生器146から出力される三角波の周波数を増加させてこれを達成する。
【0069】
システムの発熱を調整するための他の方策として、電流をディレーティングさせる方案がある。電流をディレーティングさせる方策は、電圧制御部12から出力される電流指令IL
*の大きさを、事前に設定された大きさに制限するリミッタ(図示せず)を電流制御部12の前段に追加し、2レベル制御が行われる場合にリミッタの動作を活性化させる方式で具現される。
【0070】
以上、本発明の特定の実施形態に関して図示及び説明したが、本発明の範疇内で本発明に多様な改良及び変化を加え得ることは、当技術分野における通常の知識を有する者にとっては自明である。
【符号の説明】
【0071】
10 コントローラ
11 電圧制御部
111 減算器
112 比例積分制御器(PI)
12 電流制御部
121 減算器
122 比例積分制御器(PI)
13 フライングキャパシタ電圧制御部
131 減算器
132 比例制御器(P)
133 逆数演算器
134 乗算器
141 合算器
142 減算器
143 第2合算器
144 第1スイッチング制御部(PWM)
145 第2スイッチング制御部(PWM)
146 三角波発生器
151 第1スイッチング部
152 第2スイッチング部